特許拒絶査定不服審判
2022-004704
インク、インクジェット記録方法及びモットリングの改善方法
- 審判番号
- 2022-004704
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2017-093513
- 請求日
- 2022年03月31日
- 審決日
- 2024年10月01日
- 公報発行日
- 2024年12月27日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】日本化薬株式会社
- 審判長/審判官
- 審判長 門前 浩一
- 審判官 長谷川 真一
- 審判官 村守 宏文
- 分類
- P18 .121-WZ (C09D)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2017- 93513「インク、インクジェット記録方法及びモットリングの改善方法」拒絶査定不服審判事件〔平成29年12月21日出願公開、特開2017-222842〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
この出願(以下「本願」ともいう。)は、平成29年5月10日(優先権主張 平成28年5月11日(以下「優先日」という。))を出願日とする出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。
令和2年10月21日付け:拒絶理由通知書(発送は10月23日)
同年12月11日 :意見書、手続補正書の提出
令和3年 5月10日付け:拒絶理由通知書(発送は5月12日)
同年 7月 9日 :期間延長請求書の提出(指定期間を2カ月延 長)
同年 9月 2日 :意見書、手続補正書の提出
令和4年 1月17日付け:拒絶査定(謄本発送は1月19日)
同年 3月31日 :審判請求書の提出
令和5年11月15日付け:拒絶理由通知書(発送は11月20日)
令和6年 1月16日 :期間延長請求書の提出(指定期間を1カ月延 長)
同年 1月18日 :上申書の提出
同年 2月13日 :意見書の提出
第2 本願発明及び本願明細書の記載
1 本願発明
本願の請求項1~14に係る発明は、令和3年9月2日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1~14に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は次のとおりである。
「【請求項1】
キナクリドン顔料、C.I.ピグメントレッド 150、分散剤、ノニオン界面活性剤、及び1,2-ヘキサンジオールを含有するインクであって、インクの総質量に対する1,2-ヘキサンジオールの含有量が1質量%より多く、20質量%未満であるインク。」
2 本願明細書には次の記載がある。
「【0003】
インクジェット記録に用いられる記録メディアは、インク受容層の有無により、2種類に大別される。高精細な印刷の分野で使用される記録メディアとしては、インク受容層を有しない記録メディアも多く用いられる。インク受容層を有しない記録メディアは、一般にインクの吸収能力が低い。このため、インク受容層を有しない記録メディアに水系インクで記録を行うと、インクが吸収されずに不規則な画像ムラを生じるモットリングが生じやすい。モットリングが生じた画像は、その品質が極めて劣化し、実用に耐えない。このため、インク受容層を有しない記録メディアを使用したときでも、モットリングを生じない水性インクが強く求められている。
【0004】
インクジェットインクに用いられる着色剤は、顔料と染料に大別される。一般に、顔料は各種の堅牢性に優れ、染料は彩度等の色相に優れるとされる。このため、顔料インクにおいては複数の顔料を配合し、望みの色相を得る方法が提案されている。
【0005】
・・・
特許文献4~11には、キナクリドン顔料と、アゾ顔料を含有するインクが開示されている。
・・・
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
・・・
【特許文献6】特表2011-526322号公報
・・・
【特許文献9】特開2015-013971号公報
・・・
【特許文献11】国際公開2014/156569号ガゼット
・・・」
「【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、インク受容層を有さない記録メディアに記録したときでもモットリングを生じない水性インク、それを用いるインクジェット記録方法及びモットリングの改善方法の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、前記の課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、キナクリドン顔料、アゾ顔料、水溶性樹脂、ノニオン界面活性剤、及び特定量のアルカンジオールを含有するインクにより、前記の課題を解決できることを見出し、本発明を完成させた。・・・」
「【0012】
[キナクリドン顔料]
前記キナクリドン顔料としては、C.I.ピグメントバイオレット及びC.I.ピグメントレッドから選択されるキナクリドン顔料が挙げられる。そのようなキナクリドン顔料は、例えばオンラインで利用できるカラーインデックス インターナショナルの検索画面から、容易に検索することができる。それらの中では、C.I.ピグメントバイオレット 19、C.I.ピグメントレッド 122及びPR202から選択される顔料が好ましく、C.I.ピグメントバイオレット 19及びC.I.ピグメントレッド 122から選択される顔料がより好ましい。・・・
【0013】
[アゾ顔料]
前記アゾ顔料としては、C.I.ピグメントレッドから選択されるアゾ顔料が挙げられる。そのようなアゾ顔料は、例えばオンラインで利用できるカラーインデックス インターナショナルの検索画面から、容易に検索することができる。それらの中では、PR150が好ましい。」
「【0016】
[分散剤]
前記の分散剤としては、水溶性樹脂と水不溶性樹脂の両方が挙げられる。
着色剤に対する分散剤の使用量は、着色剤を1部として通常0.1部~1部、好ましくは0.1部~0.6部、より好ましくは0.2部~0.5部である。このような範囲で分散剤を使用すると、優れた分散液の安定性、及び/又は良好な記録画像を得ることができる。」
「【0020】
[ノニオン界面活性剤]
ノニオン界面活性剤としては、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンドデシルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル等のエーテル系;ポリオキシエチレンオレイン酸エステル、ポリオキシエチレンジステアリン酸エステル、ソルビタンラウレート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンモノオレエート、ソルビタンセスキオレエート、ポリオキシエチレンモノオレエート、ポリオキシエチレンステアレート等のエステル系;2,4,7,9
-テトラメチル-5-デシン-4,7-ジオール、3,6-ジメチル-4-オクチン-3,6-ジオール、3,5-ジメチル-1-ヘキシン-3-オール等のアセチレングリコール(アルコール)系;日信化学社製 商品名サーフィノール104、105PG50、82、420、440、465、485、485W、オルフィンSTG;ポリグリコールエーテル系(例えば、SIGMA-ALDRICH社製のTergItol 15-S-7等);等が挙げられる。
・・・
また、前記エチレンオキシ、プロピレンオキシ及びブチレンオキシの中ではエチレンオキシが好ましい。このようなノニオン界面活性剤としては、前記サーフィノール420、440、465、485、485W等が挙げられる。
ノニオン界面活性剤は、1種類を使用することも、2種類以上を併用することもできる。
ノニオン界面活性剤の総含有量は、インクの総質量に対して通常0.1~3%、好ましくは0.1~1%である。0.1%以上の含有量で界面活性剤としての効果が得られ、3%以下の含有量で顔料の分散安定性が良好となる。」
「【0044】
本発明により得られる効果として、以下の効果を挙げることができる。すなわち、本発明のインクは保存安定性が優れ、様々な記録メディアに記録した画像の定着性も優れる。本発明のインクは、各種の記録メディアに記録してもモットリング現象を生じないため、高画質な記録画像を得ることができる。
また、本発明のインクを用いてインクジェット記録をしたとき、記録メディアに付着したときのインクドットの真円度が高く、平滑性があり、光沢感を損なわない記録画像が得られる。
さらに、本発明のインクで記録された画像は、耐水性、耐光性、耐熱性、耐酸化ガス(例えば耐オゾンガス)性等の各種堅牢性に優れる。」
第3 拒絶の理由
令和5年11月15日付けで、当審が通知した拒絶理由は、次の理由を含むものである。
理由(進歩性) 本願発明1は、その優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の文献に記載された発明に基いて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
記
引用文献1:特表2011-526322号公報(当審注:前記第2の2【0006】の特許文献6)
引用文献2:特開2015-13971号公報(当審注:前記第2の2【0006】の特許文献9)
引用文献3:国際公開第2014/156569号(当審注:前記第2の2【0006】の特許文献11に相当)
第4 当審の判断
当審は、以下に示すとおり、令和6年2月13日提出の意見書の内容を考慮しても、上記第3に記載した拒絶理由は解消していないと判断する。
1 引用文献1~3の記載事項
(1)引用文献1
引用文献1には、次の事項が記載されている。
「【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビヒクルと、前記ビヒクルに分散された顔料着色剤とを含み、前記顔料着色剤が、ピグメントレッド146、ピグメントレッド184、ピグメントレッド269およびこれらの組み合わせからなる群から選択される第1の顔料と、ピグメントレッド122、ピグメントバイオレット23およびこれらの組み合わせからなる群から選択される第2の顔料とを含む、マゼンタインクジェットインク。
【請求項2】
ピグメントレッド146およびピグメントレッド122を含み、ピグメントレッド146対ピグメントレッド122の重量比が、約2:3~約5:1の範囲内である請求項1に記載のインク。
【請求項3】
ピグメントレッド146およびピグメントバイオレット23を含み、ピグメントレッド146対ピグメントバイオレット23の重量比が、約4:1~約25:1の範囲内である請求項1に記載のインク。
【請求項4】
ピグメントレッド184およびピグメントレッド122を含み、ピグメントレッド184対ピグメントレッド122の重量比が、約2:3~約5:1の範囲内である請求項1に記載のインク。
【請求項5】
ピグメントレッド184およびピグメントバイオレット23を含み、ピグメントレッド184対ピグメントバイオレット23の重量比が、約4:1~約25:1の範囲内である請求項1に記載のインク。
【請求項6】
ピグメントレッド269およびピグメントレッド122を含み、ピグメントレッド269対ピグメントレッド122の重量比が、約2:3~約5:1の範囲内である請求項1に記載のインク。
【請求項7】
前記ビヒクルが、水性ビヒクルである請求項1に記載のインク。」
「【0002】
本発明は、特定の顔料着色剤の組み合わせを含むマゼンタインクジェットインクに関する。本発明はまた、マゼンタインクジェットインクの製造方法およびこのマゼンタインクを含むインクジェットインクセットにも関する。
【背景技術】
【0003】
インクジェット印刷はノンインパクト印刷プロセスであり、インク液滴を、紙等の基材に付着して、所望の画像を形成するものである。インクジェットプリンタは、インクセットを備えており、フルカラー印刷については、典型的に、シアン、マゼンタおよびイエローインク(CMY)を含んでいる。インクセットはまた一般的にブラックインクを含む(CMYK)。インクの着色剤は、インクビヒクルに可溶(染料)または不溶(顔料)とすることができる。」
「【0007】
様々な公知のマゼンタインクジェットインク着色剤は、顔料も染料も、良好な色特性を有する印刷画像を与えているが、より高い光学密度、彩度および/またはより低コストの代替着色剤が尚求められている。本発明は、改善された光学密度、彩度、色相およびコストを有する組成物を提供することにより、このニーズを満たすものである。
【0008】
本発明の一実施形態は、ビヒクルと、ビヒクルに分散された顔料着色剤とを含み、顔料着色剤が、ピグメントレッド146(PR146)、ピグメントレッド184(PR184)、ピグメントレッド269(PR269)およびこれらの組み合わせからなる群から選択される第1の顔料と、ピグメントレッド122(PR122)、ピグメントバイオレット23(PV23)およびこれらの組み合わせからなる群から選択される第2の顔料とを含む、マゼンタインクジェットインクを提供する。」
「【0051】
本明細書で用いるSurfynol(登録商標)465は、Air Products(Allentown,PA,U.S.A.)より市販されている界面活性剤である。
【0052】
本明細書で用いるGlycereth-26は、平均エトキシル化値が26のグリセリンのポリエチレングリコールエーテルである。」
「【0058】
分散剤による顔料の処理によって、分散液を形成することにより、顔料を安定化することができる。本明細書で用いる「分散剤」という用語は、概して、同じく当該技術において知られている「分散剤」および「懸濁剤」という用語と同義である。
【0059】
分散剤は、例えば、米国特許第4,597,794号明細書、同第5,085,698号明細書、同第5,519,085号明細書、同第6,143,807号明細書、米国特許出願公開第2008/0071007号明細書に開示されているような任意の好適な分散剤とすることができる。」
「【0068】
インクに存在する着色剤の量は、インクの総重量を基準として、典型的には、約0.1重量%~約10重量%の範囲内、より典型的には、約0.5重量%~約8重量%の範囲内である。」
「【0070】
ビヒクル
インクビヒクルは、着色剤の液体キャリア(または媒体)であり、水性または非水性とすることができる。好ましい実施形態において、ビヒクルは、水性ビヒクルである。
【0071】
好適な水性ビヒクル混合物の選択は、所望の表面張力および粘度、選択した着色剤、インクの乾燥時間、およびインクが印刷される基材の種類等の特定の用途の要件に応じて異なる。本発明で用いてよい水溶性有機溶媒の代表例は、米国特許第5,085,698号明細書に開示されたものである。
【0072】
水と水溶性溶媒の混合物を用いる場合は、水性ビヒクルは、典型的に、約30%~約95%の水を含有し、残り(すなわち、約70%~約5%)は水溶性溶媒となるであろう。本発明の組成物は、水性ビヒクルの総重量を基準として、約60%~約95%の水を含有していてよい。
【0073】
インク中の水性ビヒクルの量は、インクの総重量を基準として、典型的に、約70%~約99.8%、特に、約80%~約99.8%である。
【0074】
水性ビヒクルは、グリコールエーテルまたは1,2-アルカンジオール等の界面活性剤または浸透剤を含めることにより、即時浸透(急速乾燥)させることができる。好適な界面活性剤としては、エトキシル化アセチレンジオール(例えば、Air Productsより市販されているSurfynols(登録商標)シリーズ)、エトキシル化第1級(例えば、Shellより市販されているNeodol(登録商標)シリーズ)および第2級(例えば、Union Carbideより市販されているTergitol(登録商標)シリーズ)アルコール、スルホサクシネート(例えば、Cytecより市販されているAerosol(登録商標)シリーズ)、オルガノシリコーン(例えば、Witcoより市販されているSilwet(登録商標)シリーズ)およびフルオロ界面活性剤(例えば、DuPontより市販されているZonyl(登録商標)シリーズ)が挙げられる。
【0075】
グリコールエーテルまたは1,2-アルカンジオールの添加量は、適切に決めなければならないが、インクの総重量を基準として、典型的に、約1重量%~約15重量%の範囲、より典型的には、約2重量%~約10重量%の範囲内である。界面活性剤は、インクの総重量を基準として、典型的に、約0.01%~約5%、特に、約0.2%~約2%の量で用いてよい。」
「【0090】
基材
基材は、任意の好適な基材とすることができるが、本発明は、紙、特に「普通」紙およびフォト光沢紙等の専用紙に印刷するのに特に好適である。」
「【0091】
以下の実施例により、本発明を例示する。ただし、それに限定されるものではない。
【実施例】
【0092】
ポリマー1
ポリマー1は、ベンジルメタクリレート(BzMA)およびメタクリル酸(MAA)の重量比が90/10BzMA/MAAのランダムコポリマーである。数平均分子量(Mn)は約5,000g/モルである。ポリマー1は、米国特許出願公開第2005/0090599号明細書の開示内容に従って調製され、2-ピロリドン溶媒中濃縮溶液として回収された。
【0093】
分散液
以下の表Aに挙げた水性分散液は、ポリマー1を分散剤として用いて調製された。顔料対分散剤重量比は2.5:1である。成分をまず高速分散機(HSD)で混合してから、YTZ(登録商標)媒体を用いて媒体ミルで粉砕した。各粉砕した分散液を、限外濾過により精製して、分散剤に取り込まれた溶媒を全て除去して、顔料12%の最終の水中分散液とした。総分散液の約0.2重量%の量のProxel(商標)GXLを添加して、微生物の成長を抑制した。同じく表Aに挙げてあるのは、用いた各顔料について対応の色指数名についての商品名である。
【0094】
【表1】
[図:0001416899000001.jpg]
【0095】
測色
インクジェットプリンタが基材に書き込む被覆率は、通常、プリンタソフトウェアにより制御され、プリンタ設定で設定することができる。印刷は、100%の被覆率をターゲットとする選択された標準印刷モードで行った。100%被覆率のこの設定は、インクジェットプリンタが、印刷している領域の少なくとも100%を覆うだけの十分な液滴/ドットを発射することを意味する。この結果、通常、広がった、部分的に重なり合ったドットとなる。報告された光学密度(OD)値は、100%被覆率で印刷された領域の1つについてのものである。
【0096】
光学密度、彩度、色相および色域体積を、Greytag-Macbeth Spctrolino分光計を用いて測定した。色相(hab)および彩度(C*ab)値は、式hab=tan-1(b*/a*)に従ったCIELAB色空間L*、a*およびb*項に基づくものである。角度は、適切な象限およびC*ab=(a*2+b*2)1/2について調整する。測定および定義は、当該技術分野において周知されている。例えば、米国材料試験協会(ASTM)インターナショナルにより発行されたASTM Standard E308およびPrinciples of Color Technology,Billmeyer and Saltzman,3rd Ed.,Roy Berns editor,John Wiley & Sons,Inc.(2000)を参照のこと。
・・・
【0099】
インクを、Canon i560プリンタに装填して印刷した。用いた基材としては、Xerox4200紙、Hewlett Packard多目的紙(「HP Multipurpose」)およびHewlett Packard明白色紙(「HP Bright White」)がある。
・・・
【0112】
例4
インク6A-6Dを、表4Aによる分散液AおよびGならびに他の成分を用いて調製した。インク6Dは、唯一の着色剤としてPR269(分散液G中)を含む比較例のインクである。
【0113】
【表8】
[図:0001416899000002.jpg]
【0114】
インク6A-6Dを例1に記載したとおりにして印刷した。様々な紙での印刷特性を表4Bにまとめてある。結果によれば、本発明のインク6A-6Cは、唯一の着色剤としてPR122を含むインク1Aに比べて、適切な色相、良好な彩度および好ましい光学密度を有していたことが分かった。
【0115】
【表9】
[図:0001416899000003.jpg]
」
(2)引用文献2
引用文献2には、次の事項が記載されている。
「【特許請求の範囲】
【請求項1】
2種以上の顔料を含有する水不溶性ポリマー粒子Aと、水不溶性ビニルポリマー粒子Bを含むインクジェット記録用水系インクの製造方法であって、少なくともアゾ顔料とキナクリドン顔料とを、水不溶性ポリマーaの存在下で水に分散して、顔料を含有する水不溶性ポリマー粒子Aの分散処理物を得る工程Iを有する、インクジェット記録用水系インクの製造方法。
【請求項2】
アゾ顔料が、ピグメントレッド150、ピグメントレッド269及びピグメントレッド48:3から選ばれる1種又は2種以上の顔料である、請求項1に記載のインクジェット記録用水系インクの製造方法。
【請求項3】
キナクリドン顔料が、ピグメントレッド122、ピグメントレッド202及びピグメントバイオレット19から選ばれる1種又は2種以上の顔料である、請求項1又は2に記載のインクジェット記録用水系インクの製造方法。」
「【0002】
インクジェット記録方式は、非常に微細なノズルからインク液滴を記録媒体に直接吐出し、付着させて、文字や画像を得る記録方式である。この方式は、フルカラー化が容易で、かつ安価であり、記録媒体として普通紙が使用可能、被印字物に対して非接触、という数多くの利点があるため普及が著しい。
最近では、印刷物に耐候性や耐水性を付与するために、着色剤として顔料を用いるインクが広く用いられている。
また一方で、オフセットコート紙のような低吸液性のコート紙、又はポリ塩化ビニル樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエステル樹脂等の非吸液性樹脂のフィルムを用いた商業印刷向けの記録媒体への印刷が求められてきている。
これら低吸収性、非吸収性の記録媒体では、インクの浸透が起きにくいため、定着性が不十分となりやすく、定着性を向上させるために樹脂粒子等を配合すると光沢性が低下するという問題もあった。」
「【0009】
本発明のインクジェット記録用水系インクの製造方法は、保存安定性、吐出性に優れ、オフセットコート紙等の低吸収性記録媒体に印字した際に、印字濃度、光沢度、及び画像再現性に優れる効果を奏する。その理由は定かではないが、以下のように考えられる。
キナクリドン顔料は顔料粒子間の凝集力が強く、アゾ顔料は顔料粒子間の凝集力が相対的に弱いと考えられる。そのため、アゾ顔料と、キナクリドン顔料とを、水不溶性ポリマーaの存在下で水に分散することで、キナクリドン顔料の間にアゾ系顔料が均一に含まれた分散構造となって水不溶性ポリマーa中に含有され、顔料を含有する水不溶性ポリマー粒子Aとなると考えられる。アゾ顔料を含むことによりキナクリドン顔料間の凝集力が弱くなり、顔料を含有する水不溶性ポリマー粒子Aの凝集が抑制されるために保存安定性が向上し、さらに乾燥時の粘度が低下し、吐出性にも優れ、画像再現性も優れると考えられる。また、水不溶性ビニルポリマー粒子Bと共に低吸水性の記録媒体に吐出した際には、低吸水性の記録媒体上で平滑にドット径が広がり易くなり、印字濃度及び光沢度が向上すると考えられる。」
「【0012】
〔顔料を含有する水不溶性ポリマー粒子A〕
<顔料>
本発明においては、単独顔料を用いた水系インクよりも、保存安定性、吐出性、及び低吸収性記録媒体に印字した際の印字濃度、光沢度、及び画像再現性を向上させる観点から、顔料を含有する水不溶性ポリマー粒子Aの顔料として、少なくともアゾ顔料とキナクリドン顔料を用いる。アゾ顔料及びキナクリドン顔料は、それぞれ1種又は2種以上を用いることができる。
アゾ顔料は、モノアゾ顔料、ジアゾ顔料、アゾレーキ顔料を包含する。
好ましいモノアゾ顔料、ジアゾ顔料、アゾレーキ顔料の具体例としては、C.I.ピグメント・レッド1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、14、15、16、17、18、21、22、23、31、32、33、41、48、48:1、48:2、48;3、48:4、48:5、49、52、52:1、52:2、53:1、54、57:1、58、60:1、63、64:1、68、95、112、114、119、136、144、146、147、150、164、166、170、171、175、176、178、183、184、185、187、188、193、200、208、210、211、213、214、220、221、238、239、242、245、247、251、253、258、262、266、268、及び269が挙げられる。
より好ましいアゾ顔料としては、C.I.ピグメント・レッド150、同269、及び同48:3が挙げられる。
【0013】
好ましいキナクリドン顔料の具体例としては、C.I.ピグメント・レッド122、同202、同207、同209、同282、C.I.ピグメント・バイオレット19(α型)、及びC.I.ピグメント・バイオレット19(β型)が挙げられる。より好ましいキナクリドン顔料としては、C.I.ピグメント・レッド122、同202、及びC.I.ピグメント・バイオレット19(β型)が挙げられる。
なお、これらの顔料には2種以上の顔料成分を結晶状態で合成する固溶体顔料を含まない。
これらの顔料の色相は、オフセット印刷のマゼンタ色を再現する、マゼンタ色、赤色、オレンジ等の有彩色が挙げられる。」
「【0014】
<水不溶性ポリマーa>
顔料を含有する水不溶性ポリマー粒子Aを構成する水不溶性ポリマーaは、アゾ顔料とキナクリドン顔料を水系媒体中に分散させ、分散を安定に維持するために用いられる。水不溶性ポリマーaは、イオン性モノマー(a-1)由来の構成単位、芳香族環を有する疎水性モノマー(a-2)由来の構成単位、及び後述する式(1)で表される親水性ノニオン性モノマー(a-3)由来の構成単位を含有することが好ましい。
水不溶性ポリマーaは、イオン性モノマー(a-1)、芳香族環を有する疎水性モノマー(a-2)、及び式(1)で表される親水性ノニオン性モノマー(a-3)を、公知の方法により付加重合して得ることができる。」
「【0032】
(各成分の含有量等)
工程I-1における顔料の含有量は、顔料水分散体の分散安定性及び水系インクの保存安定性、吐出性を向上させる観点、顔料水分散体の生産性を向上させる観点から、顔料混合物中、10質量%以上が好ましく、12質量%以上がより好ましく、15質量%以上が更に好ましく、そして、30質量%以下が好ましく、25質量%以下がより好ましく、20質量%以下が更に好ましい。
また、顔料としては、少なくともアゾ顔料とキナクリドン顔料が用いられるが、アゾ顔料とキナクリドン顔料の質量比〔アゾ顔料/キナクリドン顔料〕は、低吸水性の記録媒体に印字した印字物の乾燥性を早め、印字濃度、光沢度及び耐光性を向上させる観点から、好ましくは5/95以上、より好ましくは10/90以上、更に好ましくは12/88であり、そして、好ましくは65/35以下、より好ましくは55/45以下、更に好ましくは52/48以下である。キナクリドン顔料をより多く用いることで耐光性が向上する。」
「【実施例】
【0070】
以下の製造例、実施例及び比較例において、「部」及び「%」は特記しない限り「質量部」及び「質量%」である。
(1)ポリマーの重量平均分子量の測定
N,N-ジメチルホルムアミドに、リン酸及びリチウムブロマイドをそれぞれ60mmol/Lと50mmol/Lの濃度となるように溶解した液を溶離液として、ゲルクロマトグラフィー法〔東ソー株式会社製GPC装置(HLC-8120GPC)、東ソー株式会社製カラム(TSK-GEL、α-M×2本)、流速:1mL/min〕により、標準物質としてポリスチレンを用いて測定した。
【0071】
(2)顔料を含有する水不溶性ポリマー粒子A及び水不溶性ビニルポリマー粒子Bの平均粒径の測定
レーザー粒子解析システム「ELS-8000」(大塚電子株式会社製)を用いてキュムラント解析を行い測定した。測定条件は、温度25℃、入射光と検出器との角度90°、積算回数100回であり、分散溶媒の屈折率として水の屈折率(1.333)を入力した。測定濃度は、5×10-3質量%(固形分濃度換算)で行った。
なお、実施例で用いた水不溶性ビニルポリマー粒子B(アニオン性自己架橋水系アクリル樹脂「Neocryl A1127」)の平均粒径は63.2nmであった。
【0072】
(3)顔料水分散体の固形分濃度の測定
30mlのポリプレピレン製容器(φ=40mm、高さ=30mm)にデシケーター中で恒量化した硫酸ナトリウム10.0gを量り取り、そこへサンプル約1.0gを添加して、混合させた後、正確に秤量し、105℃で2時間維持して、揮発分を除去し、更にデシケーター内で更に15分間放置し、質量を測定した。揮発分除去後のサンプルの質量を固形分として、添加したサンプルの質量で除して固形分濃度とした。
【0073】
(4)記録媒体の純水との接触時間100m秒での吸水量
自動走査吸液計(熊谷理機工業株式会社製、KM500win)を用いて、23℃、相対湿度50%の条件下にて、純水の接触時間100msにおける転移量を測定し、100m秒の吸水量とした。測定条件を以下に示す。
「Spiral Method」
Contact Time : 0.010~1.0(sec)
Pitch(mm) : 7
Length Per Sampling(degree) : 86.29
Start Radius(mm) : 20
End Radius(mm) : 60
Min Contact Time(ms) : 10
Max Contact Time(ms) : 1000
Sampling Pattern(1-50) : 50
Number of Sampling Points(>0) : 19
「Square Head」
Slit Span(mm) : 1
Slit Width(mm) : 5
汎用光沢紙「OKトップコートプラス」(王子製紙株式会社製)は4.9g/m2であった。
【0074】
製造例1(水不溶性ポリマーa溶液の製造)
2つの滴下ロート1及び2を備えた反応容器内に、表1の「初期仕込みモノマー溶液」に示すモノマー、溶媒、重合開始剤、重合連鎖移動剤を入れて混合し、窒素ガス置換を行い、初期仕込みモノマー溶液を得た。
一方、表1の「滴下モノマー溶液1」に示すモノマー、溶媒、重合開始剤、合連鎖移動剤を混合して、滴下モノマー溶液1を得、滴下ロート1中に入れて、窒素ガス置換を行った。
また、表1の「滴下モノマー溶液2」に示すモノマー、溶媒、重合開始剤、重合連鎖移動剤を混合して、滴下モノマー溶液2を得、滴下ロート2中に入れて、窒素ガス置換を行った。
窒素雰囲気下、反応容器内の初期仕込みモノマー溶液を攪拌しながら77℃に維持し、滴下ロート1中の滴下モノマー溶液1を3時間かけて徐々に反応容器内に滴下した。次いで滴下ロート2中の滴下モノマー溶液2を2時間かけて徐々に反応容器内に滴下した。滴下終了後、反応容器内の混合溶液を77℃で0.5時間攪拌した。次いで前記の重合開始剤2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)(和光純薬工業株式会社製、商品名:V-65)1.1部をメチルエチルケトン47.3部に溶解した重合開始剤溶液を調製し、該混合溶液に加え、77℃で0.5時間攪拌することで熟成を行った。前記重合開始剤溶液の調製、添加及び熟成を更に5回行った。次いで反応容器内の反応溶液を80℃に1時間維持し、固形分濃度は45.2%になるようにメチルエチルケトン約200部を加えてポリマーa溶液を得た。
得られた水不溶性ポリマーaの重量平均分子量は28,258であった。
【0075】
なお、用いたモノマーの詳細は下記のとおりである。
メタクリル酸:和光純薬工業株式会社製
ベンジルメタクリレート:和光純薬工業株式会社製
スチレン:和光純薬工業株式会社製
スチレン系マクロモノマー:「AS-6(S)」(東亜合成株式会社製)(有効分濃度50%、数平均分子量6000)
メトキシポリエチレングリコールモノメタクリレート(m=23):NKエステルTM-230G(新中村化学工業株式会社製)
【0076】
【表1】
[図:0001416899000004.jpg]
」
「【0077】
実施例1
(1)顔料水分散体1の製造
製造例1で得られた水不溶性ポリマーa溶液(固形分濃度45.2%)44.2部を、メチルエチルケトン(MEK)36.1部と混合し、水不溶性ポリマーaのMEK溶液を得た。
容積が2Lのディスパーに該水不溶性ポリマーaのMEK溶液を投入し、翼径40mmφの攪拌翼で1400rpmの条件で撹拌しながら、イオン交換水176.8部、5N水酸化ナトリウム水溶液6.1部、及び25%アンモニア水溶液1.3部を添加して、水酸化ナトリウムによる中和度が85%、アンモニアによる中和度が40%となるように調整し、0℃の水浴で冷却しながら、1400rpmで15分間撹拌した。
次いで、アゾ顔料としてピグメントレッド150(PR150)、及びキナクリドン顔料としてピグメントレッド122(PR122)を、質量比(PR150/PR122)が30/70の割合で60部加え、7000rpmで3時間撹拌した。得られた顔料混合物をマイクロフルイダイザー「M-110EH-30XP」(Microfluidics社製)を用いて150MPaの圧力で20パス分散処理し、分散処理物を得た(工程I-1)。固形分濃度は25.0%であった。
前記工程で得られた分散処理物324.5部を2Lナスフラスコに入れ、イオン交換水216.3部を加え(固形分濃度15.0%)、減圧蒸留装置「ロータリーエバポレーター N-1000S」(東京理化器械株式会社製)を用いて、回転数50rpmで、32℃に調整した温浴中、0.09MPaの圧力で3時間保持して、有機溶媒を除去した。更に、温浴を62℃に調整し、圧力を0.07MPaに下げて固形分濃度25%になるまで濃縮した(工程I-2)。(表2の「アゾ顔料とキナクリドン顔料の混合方法」の欄の「方法1」は、この方法をいう。)
得られた濃縮物を500mlアングルローターに投入し、高速冷却遠心機「himac CR22G」(日立工機株式会社製、設定温度20℃)を用いて7000rpmで20分間遠心分離した後、液層部分を5μmのメンブランフィルター「Minisart」(Sartorius社製)で濾過した。
ろ液300部(顔料55.1部、水不溶性ポリマーa 18.4部)にイオン交換水48.4部を添加し、更にグリセリン18.4部とプロキセルLVS 0.74部を添加し、70℃で1時間攪拌した。25℃に冷却後、前記5μmフィルターでろ過し、更に固形分濃度は20.0%になるようにイオン交換水を加えて、顔料水分散体1を得た。
得られた顔料水分散体1中の顔料を含有する水不溶性ポリマー粒子Aの〔顔料/ポリマー〕質量比は75/25であり、平均粒径は130nmであった。
【0078】
(2)水系インク1の製造
前記(1)で得られた顔料水分散体1を用いて、インクジェット記録用水系インク1を調製した。インク中に顔料4%、水不溶性ビニルポリマー粒子B5%となるように以下の組成(合計100部)にて配合した(工程II)。pH電極「6337-10D」(株式会社堀場製作所製)を使用した卓上型pH計「F-71」(株式会社堀場製作所製)を用いて、25℃におけるインクのpHを測定したところ、9.0であった。
【0079】
<組成A>
顔料水分散体1(グリセリン5%含有)26.7部
水不溶性ビニルポリマー粒子B アニオン性自己架橋水系アクリル樹脂「Neocryl A1127」(DSM NeoResins社製、固形分44%、平均粒径は63.2nm) 11.4部
プロピレングリコール(和光純薬工業株式会社製) 20部
ジプロピレングリコールモノメチルエーテル(和光純薬工業株式会社製) 10部
サーフィノール104PG50(日信化学工業株式会社製、プロピレングリコール、有効分50%) 0.60部
エマルゲン120(花王株式会社製、ポリオキシエチレンラウリルエーテル) 0.60部
イオン交換水 30.7部
得られた混合液を前記5μmフィルターで濾過し、水系インク1を得た。水系インク1の物性を表2に示す。
なお、有機溶媒の沸点は、以下の計算式により、有機溶媒の含有量(質量%)で重み付けした加重平均値で193℃と算出される。
[〔プロピレングリコールの含有量(質量%)×プロピレングリコールの沸点(188℃)〕+〔グリセリンの含有量(質量%)×グリセリンの沸点(290℃)〕+〔ジプロピレングリコールモノメチルエーテルの含有量(質量%)×ジプロピレングリコールモノメチルエーテルの沸点(190℃)〕]/[プロピレングリコールの含有量(質量%)+グリセリンの含有量(質量%)+ジプロピレングリコールモノメチルエーテルの含有量(質量%)]
=[0.203×188℃〕+[0.013×290℃〕+〔0.1×190℃〕]/[0.203+0.013+0.1]=193℃
(当審注:「[〔0.203×188℃〕+〔0.013×290℃〕+〔0.1×190℃〕]/[0.203+0.013+0.1]=193℃」と当審は理解した。)
【0080】
実施例2~7、比較例2~9
実施例1において、アゾ顔料及びキナクリドン顔料を表2に記載の顔料及び質量比に変更した以外は、実施例1と同様にして、水系インク2~7及び9~16を得た。各水系インクのpHは8.6~9.0の範囲であった。結果を表2に示す。
・・・
【0082】
なお、実施例1~7、及び比較例1~9で用いた顔料の詳細は下記のとおりである。
PR48:3:富士色素株式会社製、FUJI RED 5R 763
PR122:大日精化株式会社製、Chromofine Red 6111T
PR150:トーヨーカラー株式会社製、LIONOGEN RED LX10231
PR202:DIC株式会社製、QUIND Magenta 202 228-6843
PR269:山陽色素株式会社製、Permanent Carmine 3810
PV19(γ型):Clariant社製、Inkjet Magenta E5B02
PV19(β型):Clariant社製、Hostaperm Red Violet ER02
【0083】
<インクジェット記録方法による印刷物の作製と評価>
上記実施例及び比較例で得られた水系インク1~16を、ピエゾ方式インクジェットプリンター(リコー株式会社製、型番:GX2500)のヘッドに充填し、オフセットコート紙(王子製紙株式会社製、品番:OKトップコート+、坪量104.7g/m2、接触時間100m秒における吸水量4.9g/m2、60°光沢度;44)に写真モード(解像度1200ドット/インチ)で印字(Duty10%~100%までを10%刻み)し、印字物を25℃湿度50%で24時間放置した。
得られた水系インクを用いて、下記の方法により、水系インクの粘度、平均粒径、保存安定性、吐出性、粘度、平均粒径、ドット径、印字濃度、光沢度、色相及び色相角(画像再現性)、耐光性を評価した。結果を表5に示す。
(当審注:「表5」は、「表2」の誤記と当審は理解した。)
・・・
【0089】
(7)光沢度
印字物のDuty100%で印字したマゼンタの光沢度(60°)を光沢計「HANDY GLOSSMETER」(日本電色工業株式会社製、品番:PG-1M)を用いて測定を行った。値が大きいほど、光沢度に優れる。
・・・
【0093】
【表2】
[図:0001416899000005.jpg]
【0094】
表2から、アゾ顔料とキナクリドン顔料とを水不溶性ポリマーaの存在下で水に分散する工程を有する方法により得られた実施例1~7のインクは、アゾ顔料の顔料分散体とキナクリドン顔料の顔料分散体をそれぞれ製造した後に、混合する方法により得られた比較例1のインクに比べ、保存安定性と吐出性に優れていることが分かる。また、実施例1~7と比較例2~9との対比から、アゾ顔料とキナクリドン顔料の2種を併用することにより、保存安定性、吐出性、色相角及び耐光性を満足するインクが得られることが分かる。」
(3)引用文献3
引用文献3には、次の事項が記載されている。
「請求の範囲
[請求項1] 着色剤としてC.I.ピグメントレッド150及びキナクリドン顔料と、水とを含有する、着色分散液。
[請求項2] 前記キナクリドン顔料が、C.I.ピグメントレッド122及びC.I.ピグメントレッド202から選択される少なくとも1種類である、請求項1に記載の着色分散液。
[請求項3] 請求項1又は2に記載の着色分散液と、水溶性有機溶剤とを含有する、インクジェット記録に用いるインク組成物。
[請求項4] インク組成物が含有する着色剤の総含有量が、インク組成物の総質量に対して、質量基準で0.5~7%である、請求項3に記載のインク組成物。
・・・
[請求項17] 請求項3乃至13のいずれか一項に記載のインク組成物の液滴を、記録信号に応じて吐出させて、被記録材に付着させることにより記録を行う、インクジェット記録方法。
[請求項18] 前記被記録材が情報伝達用シートである、請求項17に記載のインクジェット記録方法。
・・・
[請求項20] 前記情報伝達用シートがキャストコート紙である、請求項18に記載のインクジェット記録方法。
[請求項21] 前記情報伝達用シートがコート紙又はアート紙である、請求項18に記載のインクジェット記録方法。
[請求項22]前記情報伝達用シートが、コロナ放電処理、プラズマ処理、及びフレーム処理から選択される少なくとも1種類の表面改質処理が施されたシートである、請求項20又は21に記載のインクジェット記録方法。」
「[0013] 本発明により、保存安定性、再分散性、及び濾過性に優れ、発色性、彩度、及び耐光性のバランスが良好なインク組成物、これを用いるインクジェット記録方法、及びこれらにより着色された着色体が提供できる。」
「発明を実施するための形態
[0014] 以下、本発明のインク組成物について詳細に説明する。
本明細書において、「C.I.」とは、カラーインデックスの略語である。
また、本明細書中、「%」及び「部」数については、特に断りのない限り、実施例等も含めていずれも質量基準で記載する。
また、本明細書中、「C.I.ピグメントレッド」は、特に断りのない限り、以下「PR」という。
[0015] 上記着色分散液は、PR150とキナクリドン顔料との少なくとも2種類の着色剤を含有し、さらに少なくとも水を含有する。
このうち、キナクリドン顔料としては、ジ置換キナクリドン顔料が好ましく、中でも赤色のジ置換キナクリドン顔料がより好ましい。ジ置換キナクリドン顔料とは、無置換キナクリドンのベンゼン環上の任意の2つの水素原子が、水素原子以外の置換基により置換された化学構造を有するキナクリドン顔料を意味する。水素原子以外の置換基としては、例えば、メチル基、メトキシ基、塩素原子等が挙げられる。それらの中でも、PR122及びPR202から選択される少なくとも1種類の顔料が好ましく、発色性を考慮すると、前者がより好ましい。
[0016] PR150は、不溶性モノアゾ赤色顔料である。不溶性モノアゾ赤色顔料としては、様々な構造式を有する顔料が知られているが、色相、透明性、発色性、彩度、耐光性等の観点から、PR150とキナクリドン顔料との併用が特に優れる。
[0017] 上記インク組成物は、上記の着色分散液と水溶性有機溶剤とを含有する、インクジェット記録に用いるインク組成物である。
上記インク組成物が含有する着色剤の総含有量としては、通常0.5~7%、好ましくは1~7%、より好ましくは2~7%、さらに好ましくは3~6%である。
0.5%以上とすることで記録画像の発色性が良好なものとなり、7%以下とすることで吐出性が良好なものとなる。」
「[0042] 高分子分散剤としては、スチレン及びその誘導体;ビニルナフタレン及びその誘導体;α,β-エチレン性不飽和カルボン酸の脂肪族アルコールエステル;アクリル酸及びその誘導体;マレイン酸及びその誘導体;イタコン酸及びその誘導体;フマール酸及びその誘導体;酢酸ビニル、ビニルアルコール、ビニルピロリドン、アクリルアミド、及びその誘導体;等よりなる群の単量体から選択される、少なくとも2つの単量体(好ましくは、このうち少なくとも1つが親水性の単量体)からなる共重合体(ブロック共重合体、ランダム共重合体、グラフト共重合体)、及び/又はそれらの塩等が挙げられる。上記各種の共重合体及び/又はそれらの塩等は単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
高分子分散剤の質量平均分子量としては、おおよそ1000~30000、好ましくは1250~25000、より好ましくは1500~20000程度である。また、酸価としては、おおよそ80~300、好ましくは90~275、より好ましくは100~250程度である。
これら分散剤は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
分散剤は市販品として入手することも可能であり、その具体例としては、いずれもBASF社製の、ジョンクリルTM61J、67、68、450、55、555、586、678、680、682、683、690;B-36;等が挙げられる。」
「[0068] インク受容層を有さない情報伝達用シートとしては、グラビア印刷、オフセット印刷等の用途に用いられるコート紙、アート紙等の各種の用紙;ラベル印刷用途に用いられるキャストコート紙;等が挙げられる。
インク受容層を有さない情報伝達用シートを被記録材として用いるときは、着色剤の定着性等を向上させる目的で、被記録材に対して表面改質処理を施すことも好ましく行われる。
[0069] 上記の表面改質処理としては、コロナ放電処理、プラズマ処理、及びフレーム処理から選択される少なくとも1種類の処理を施すことが好ましい。これらの処理については、公知のいずれの方法を用いてもよい。また、これらの処理の効果は、経時的に減弱することが一般的に知られている。このため、情報伝達用シートに表面改質処理を施したときは、時間を置かずにインクジェット記録を連続して行うことが好ましい。」
「[0078](A)分散液の調製
[調製例1]
冷却管を取付けた3つ口フラスコにジョンクリル68(25部)、トリエタノールアミン(13.3部)、及びイオン交換水(61.7部)を加え、150rpmで撹拌しながら90℃に昇温して溶液とし、ジョンクリル68を25%含有する水溶液を得た。
下記表1中の「ジョンクリル68」は、このジョンクリル68を25%含有する水溶液を意味する。
[0079](B)水性分散液の調製
[調製例2]:レッド分散液の調製(1)
ジ置換キナクリドン系赤色顔料としてPR122(クラリアント社製InkjetMagentaE02VP2621)を用い、下記表1に記載した各成分を混合し、サンドグラインダーで1500rpmの条件下、15時間分散処理を行った。得られた液をイオン交換水で希釈し、分散用ビーズを濾過分離し、着色剤の含有量が15%となるようにイオン交換水で調整してレッド分散液を調製した。この分散液を「分散液1」とする。
また、分散液1のpHは7.7、着色剤の平均粒子径は77nm、粘度は5.4mPa・sであった。
なお、下記表1及び表2中、成分の量を示す数値はいずれも「部」数であり、「-」を記載したものは、その成分を含まないことを意味する。また、「水」はイオン交換水を使用した。また、「オルフィンSK-14」は消泡剤であり、濾過により除去されるため各実施例及び比較例のインク組成物中には含有されない。
[0080][調製例3及び4]:レッド分散液の調製(2)~(3)
上記の調製例2で使用した各成分とその使用量を、下記表1に記載した各成分とその使用量に変更する以外は調製例2と同様にして、分散液2及び3をそれぞれ得た。
[0081][表1]
[図:0001416899000006.jpg]
[0082][実施例1~5]:本発明のインクの調製
上記のようにして調製した分散液1及び2を使用し、下記表2に記載の各成分と混合した後、3μmのメンブランフィルターで夾雑物を濾別することにより、評価試験用の、本発明の実施例1~5のインク組成物をそれぞれ得た。
表2中の略号等は、以下の意味を表す。
GLY:グリセリン
DEG:ジエチレングリコール
2-PY:2-ピロリドン
DGMBE:ジエチレングリコールモノブチルエーテル
NE-15:ハイテノールTMNE-15
GXL(s):プロクセルTMGXL(s)
なお、表2中の「PR122(%)」は、各インク組成物中に含有する着色剤の総質量中における、「PR122の含有量(質量%)」を意味する。
[0083][表2]
[図:0001416899000007.jpg]
」
「[0104]
本発明のインク組成物は、保存安定性、再分散性、及び濾過性に優れるとともに、発色性、彩度、及び耐光性のバランスが良好であるため、インクジェット記録用マゼンタインクとして極めて有用である。」
2 引用文献に記載された発明
引用文献1の段落【0113】の表4Aには、実施例のインク6A~6Cとして、分散液A、分散液G、2-ピロリドン、1,2-ヘキサンジオール、グリセロール、Glycereth-26、エチレングリコール、Surfynol 465、水からなるインクが記載されており、実施例のインク6A~6Cのいずれのインクにおいても1,2-ヘキサンジオールの含有量はインクの総重量に対して2.0重量%であることが記載されている。ここで、同段落【0092】、【0093】、【0094】の表Aの記載から、分散液A及び分散液Gはそれぞれ、ベンジルメタクリレートおよびメタクリル酸のランダムコポリマーであるポリマー1を分散剤として用いた水性分散液に顔料としてピグメントレッド122(分散液A)、ピグメントレッド269(分散液G)をそれぞれ含有させたものである。
ここで、引用文献1の段落【0052】の記載から、Glycereth-26は、グリセリンのポリエチレングリコールエーテルである。
そうすると、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」ともいう。)が記載されていると認められる。
<引用発明>
「ピグメントレッド122とピグメントレッド269からなる顔料と、ベンジルメタクリレートおよびメタクリル酸のランダムコポリマーであるポリマー1を分散剤として用いた水性分散液と、Surfynol 465と、1,2-ヘキサンジオールと、2-ピロリドンと、グリセロールと、グリセリンのポリエチレングリコールエーテルと、エチレングリコールと、水を含有するインクであって、1,2-ヘキサンジオールの含有量がインクの総重量に対して2重量%であるインク。」
3 対比
本願発明と引用発明とを対比する。
引用発明の「ピグメントレッド122」、「Surfynol 465」はそれぞれ、本願明細書の段落【0012】、【0020】に、「キナクリドン顔料」、「ノニオン界面活性剤」の例として記載されているから、本願発明の「キナクリドン顔料」、「ノニオン界面活性剤」に相当する。
また、引用発明の「ベンジルメタクリレートおよびメタクリル酸のランダムコポリマーであるポリマー1」である「分散剤」は、本願発明の「分散剤」に相当し、引用発明の「1,2-ヘキサンジオールの含有量がインクの総重量に対して2重量%である」は、本願発明の「1,2-ヘキサンジオールの含有量が1質量%より多く、20質量%未満である」を充足する。
さらに、引用発明の「ピグメントレッド269」と、本願発明の「C.I.ピグメントレッド 150」はともに、「アゾ顔料」である点で共通している。
そうすると、本願発明と引用発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。
<一致点>
「キナクリドン顔料、アゾ顔料、分散剤、ノニオン界面活性剤、及び1,2-ヘキサンジオールを含有するインクであって、インクの総質量に対する1,2-ヘキサンジオールの含有量が1質量%より多く、20質量%未満であるインク。」
<相違点>
インクに含まれるアゾ顔料について、本願発明1は、「C.I.ピグメントレッド 150」であるのに対して、引用発明は、「ピグメントレッド269」である点。
4 相違点についての検討
(1)引用文献2を副引例として
引用文献2の段落【0009】には、「アゾ顔料を含むことによりキナクリドン顔料間の凝集力が弱くなり、顔料を含有する水不溶性ポリマー粒子Aの凝集が抑制されるために保存安定性が向上し、さらに乾燥時の粘度が低下し、吐出性にも優れ、画像再現性も優れる」ことが記載されており、同段落【0012】には好ましいアゾ顔料として、C.I.ピグメントレッド150が、ピグメントレッド269と並列して記載されており、同段落【0077】~【0079】、表2には、実施例1として、キナクリドン顔料であるC.I.ピグメントレッド122と、アゾ顔料であるC.I.ピグメントレッド150を組み合わせたインクが記載されている。
そして、引用文献1の段落【0074】には、インクの水性ビヒクルにおいて、「グリコールエーテルまたは1,2-アルカンジオール等の界面活性剤または浸透剤を含めることにより、即時浸透(急速乾燥)させることができる」旨記載されており、引用文献2の段落【0002】には、従来のインクでは、「低吸収性、非吸収性の記録媒体では、インクの浸透が起きにくいため、定着性が不十分となりやすい」旨記載されているから、引用文献1と引用文献2に記載されたインクは、記録媒体に対する浸透性を高めるという共通の技術課題を有しているといえる。
また、引用文献1の請求項6によると、引用発明のピグメントレッド269は、ピグメントレッド122と組み合わせてマゼンタ色のインクを提供する機能を有するアゾ顔料であるところ、引用文献2の段落【0012】によると、引用文献2に記載されたC.I.ピグメントレッド150も、ピグメントレッド122と組み合わせて、マゼンタ色のインクを提供する機能を有する顔料である。
してみると、引用文献2に記載されたインクと共通の技術課題を有する引用発明において、アゾ顔料をピグメントレッド269から、同等の機能を有するピグメットレッド150に置き換えることは当業者にとって格別困難なこととは認められない。
(2)引用文献3を副引例として
引用文献3の請求項1、同段落[0083]の表2の実施例1~5には、キナクリドン顔料とC.I.ピグメントレッド150とを組み合わせた顔料を着色剤に用いたインクが記載されており、同段落[0015]~[0016]、[0104]には、キナクリドン顔料とピグメントレッド150との併用は、色相、透明性、発色性、彩度、耐候性等の観点から特に優れており、マゼンダインクとして極めて有用である旨記載されている。
一方、引用文献1の段落【0007】には、色相や彩度等が改善されたマゼンタインクを提供することが発明の目的である旨記載されているから、引用文献1と引用文献3に記載されたマゼンタインクは、少なくとも、色相、彩度が改善されたものを提供するという共通の技術課題を有していると認められる。
そうすると、引用発明において、色相、彩度をさらに改善するために、ピグメントレッド269を、キナクドリン顔料と併用したときに特に優れているとされる「C.I.ピグメントレッド 150」に置き換えることは当業者にとって構成上容易に想到しうるものである。
(3)本願発明の効果について
本願明細書には、特定のアゾ顔料とキナクリドン顔料を併用した着色剤と、分散剤と、ノニオン活性剤とを含むインクにおいて、1,2-ヘキサンジオールを1質量%より多く、20質量%未満の量を含有させることにより、モットリング現象が観察されず、実用的な画像が得られる(S評価)、又は、モットリング現象がわずかに観察されるが、実用的には問題がない画像が得られる(A評価)ことが示されている(段落【0045】~【0058】、表1~3を参照)。
ここで、引用発明は、1,2-ヘキサンジオールをインクの総重量に対して2重量%含み、分散剤と、ノニオン界面活性剤と、アゾ顔料とキナクリドン顔料を含むインクであるところ、引用文献1の段落【0074】には、「水性ビヒクルは、グリコールエーテルまたは1,2-アルカンジオール等の界面活性剤または浸透剤を含めることにより、即時浸透(急速乾燥)させることができる。」と記載され、同段落【0075】には、「グリコールエーテルまたは1,2-アルカンジオールの添加量は、適切に決めなければならないが、インクの総重量を基準として、典型的に、約1重量%~約15重量%の範囲、より典型的には、約2重量%~約10重量%の範囲内である。」と記載されているから、引用発明のインクは、記録媒体に即時浸透できるもの、すなわち、記録媒体への吸収性が良好なものであることが理解できる。
そして、モットリング現象は、インクの吸収性が低いことにより生じる現象であることは技術常識である(必要であれば、特開2010-247528号公報の段落【0005】の「印刷用塗工紙に対してインクジェット記録方式により画像形成を試みた場合、特に、均一に画像印字するベタ画像領域では、モットリング(近傍のインク液滴同士が寄り集まって定着し、不規則な画像ムラを生じる現象)・・・等により品質低下を引き起こすことが知られている。これは、印刷用塗工紙が、インク吸収性が低いことにより生ずる現象であり」の記載を参照のこと)。
そうすると、記録媒体への吸収性が良好である引用発明は、モットリング現象を生じにくいという効果を奏することが当業者であれば理解できる。
さらに、アゾ顔料の種類が異なることのみにより、モットリング現象を抑制する効果に大きな差が生じるとは考えにくい。
してみると、本願発明の効果の程度は、当業者が本願発明の構成が奏するであろうと予測できる効果と比較して、顕著で、かつ、予測できないものではない。
(4)請求人の主張について
ア 請求人は、令和6年2月13日に提出された意見書において、おおむね次のとおり主張する。
本願発明における「C.I.ピグメントレッド 150」と、引用発明におけるC.I.ピグメントレッド269を用いた比較試験を行い、本願発明のインク組成物が進歩性を有することを実証した。
すなわち、本願発明におけるC.I.ピグメントレッド 150、並びに、キナクリドン顔料であるピグメントレッド122及びピグメントバイオレット19を含む試験例1のインクと、引用発明におけるピグメントレッド269、並びに、キナクリドン顔料であるピグメントレッド122及びピグメントバイオレット19を含む試験例2のインクとを、王子製紙製コート紙OKトップコートに、100%Dutyのベタ画像となるようインクジェット記録を行い、光沢度についての比較試験を行ったところ、20°における光沢度を光沢度1、60°における光沢度を光沢度2とした場合、試験例1のインクの光沢度は、光沢度1が16.6、光沢度2が59.2であり、試験例2のインクの光沢度は、光沢度1が8.1、光沢度2が40.2であり、試験例1のインクの方が、試験例2のインクよりも顕著に優れる光沢度を有していることが立証された。
したがって、光沢度において顕著に優れる性能を示すことを、「ピグメントレッド122」と「ピグメントレッド150」の組み合わせで解決できることは、たとえ当業者であっても容易に想到し得ないから、本願発明は、進歩性を有する。
イ 以下、上記請求人の主張について検討する。
(ア)前記第2の2に摘記した本願明細書の段落【0044】には、「本発明により得られる効果として、以下の効果を挙げることができる。すなわち、本発明のインクは保存安定性が優れ、様々な記録メディアに記録した画像の定着性も優れる。本発明のインクは、各種の記録メディアに記録してもモットリング現象を生じないため、高画質な記録画像を得ることができる。また、本発明のインクを用いてインクジェット記録をしたとき、記録メディアに付着したときのインクドットの真円度が高く、平滑性があり、光沢感を損なわない記録画像が得られる。」と記載されている。
(イ)このうち、「モットリング現象を生じない」という効果についてのみ、実施例において、「ピグメントレッド 150」と、キナクドリン顔料とを含む、本願発明の特定事項を満たすインク組成のものが優れていることが定量的に示されており、「平滑性があり、光沢感を損なわない記録画像が得られる」という効果については、「ピグメントレッド 150」と、キナクリドン顔料とを組み合わせたものが優れた効果を奏することは、本願明細書において定量的な記載もなく、実施例等でも具体的に示されていない。むしろ、前記第2の2に摘記した本願明細書の段落【0016】の記載から、光沢感を損なわない良好な記録画像は分散剤を適切に添加することによると当業者であれば読み取るといえ、出願時の明細書からは読み取れない効果である。
(ウ)ここで、光沢感についての効果を以下、検討する。
a 引用文献2の段落【0093】の表2の比較例4においては、ピグメントレッド150を単独で用いた場合の平滑度が110であるのに対し、ピグメントレッド169を単独で用いた場合の平滑度が101となっている。
b そして、前記第3の2で摘記した引用文献2の段落【0032】の記載からみて、アゾ顔料であるピグメントレッド150をキナクリドン顔料であるピグメントレッド122に対して多く加えることで光沢度が向上することが知られていることから、引用文献2の段落【0093】の表2の実施例1(30/70)、実施例2(50/50)の単純比較はできないものの、ピグメントレッド150及びピグメントレッド269をピグメントレッド122と同じ量比で混合した場合には、前記aの結果からみて、ピグメントレッド150の方がピグメントレッド269に比べ光沢度が高くなることは当業者が予測できることである。
(エ)そうすると、本願発明が奏する光沢感についての効果について検討したとしても、本願発明の効果の程度は、当業者が本願発明の構成が奏するであろうと予測できる効果と比較して、顕著で、かつ、予測できないものと評価することはできない。
(オ)また、上記意見書に示された比較試験には、C.I.ピグメントレッド 150、並びに、キナクリドン顔料であるピグメントレッド122及びピグメントバイオレット19を含む特定の組成の試験例1のインクが、C.I.ピグメントレッド 150の代わりにC.I.ピグメントレッド 269を含む試験例2のインクよりも光沢度が優れていることが示されているものの、本願発明のごく一部の態様についてその効果を示すものであるから、効果の顕著性は認められない。
(カ)特に、本願発明は、キナクリドン顔料の種類が特定のものに限定されていないところ、引用文献2の段落【0093】の表2には、実施例3、6、7として、同じ種類のアゾ顔料(PR48:3)に、異なる種類のキナクリドン顔料を混合したインクの光沢度の測定結果が記載されており、組み合わせるキナクリドン顔料の種類が異なると、光沢度が変化する傾向(PR122、PV19β、PR202の順に光沢度が低くなる傾向)があることが読み取れるから、本願発明において、試験例1以外のキナクリドン顔料を含むものが、必ずしも、光沢感が優れるとは認められない。
(キ)以上より、本願発明が、予測できない顕著に優れた効果を奏するとは認められないから、上記請求人の主張は採用できない。
(5)むすび
したがって、本願発明は、依然として、引用文献1に記載された発明、並びに、引用文献2又は3に記載された技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
第5 結語
以上のとおりであるから、本願発明、すなわち、本願の請求項1に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2022-004704