特許拒絶査定不服審判
2016-003223
コンテキスト情報を用いるカメラOCR
- 審判番号
- 2016-003223
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2014-528410外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2016年03月02日
- 審決日
- 2017年04月10日
- 公報発行日
- 2017年05月26日
- 結論
- 原査定取消(特許/登録すべき)
- 当事者
- 【請求人】クアルコム,インコーポレイテッド
- 【請求人代理人】村山 靖彦
- 【請求人代理人】黒田 晋平
- 分類
- P18 .121-WY (G06K)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第1号、特許法第36条第4項第1号
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2014-528410「コンテキスト情報を用いるカメラOCR」拒絶査定不服審判事件〔平成25年 3月 7日国際公開、WO2013/032639、平成26年11月13日国内公表、特表2014-529822、請求項の数(26)〕について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
原査定を取り消す。
本願の発明は、特許すべきものとする。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯及び本願発明
1 手続の経緯
本件出願は、2012年(平成24年)8月6日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2011年8月29日、米国、2012年4月18日、米国)を国際出願日とする出願であって、その手続の経緯は、以下のとおりである。
平成26年 3月25日:手続補正
平成27年 3月 4日:拒絶理由の通知
平成27年 9月 7日:手続補正
平成27年10月27日:拒絶査定
平成27年11月 2日:拒絶査定の謄本の送達
平成28年 3月 2日:拒絶査定不服審判の請求
平成28年 3月 2日:手続補正
平成28年11月28日:拒絶理由の通知(当審)
平成29年 3月 3日:手続補正
2 本願発明
本願の請求項1~26に係る発明(以下、それぞれの発明を項番を用いて「本願発明1」等という。)は、平成26年3月25日付け、平成27年9月7日付け、平成28年3月2日付け、平成29年3月3日付け手続補正により補正された特許請求の範囲、明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1~26に記載した事項により特定されるとおりのものであるところ、その請求項1~26の記載は次のとおりのものである。
「 【請求項1】
OCRを実行するための方法であって、
デバイスに結合されたカメラを使用して画像を取得するステップと、
少なくとも1つのグラフィカルオブジェクトを含む前記画像の一部分を識別するステップと、
前記デバイスに結合されたマイクロフォンを使用して、音響入力を受信するステップと、
前記デバイスのロケーションを推定するステップと、
前記デバイスの前記推定されたロケーションに基づいて、前記画像に関連するコンテキストを推測するステップと、
前記画像に関連するコンテキストに基づいてグラフィカルオブジェクトの群を選択するステップと、
前記グラフィカルオブジェクトの群を使用して前記少なくとも1つのグラフィカルオブジェクトのOCR結果を改良するステップと
を含み、
前記デバイスの前記ロケーションが、前記マイクロフォンからの前記音響入力を使用して、前記ロケーションに関連付けられた署名トーンを解析して推定される、方法。
【請求項2】
前記OCR結果を改良するステップが、前記グラフィカルオブジェクトの群を使用してOCRを実行するステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記OCR結果を改良するステップが、
前記少なくとも1つのグラフィカルオブジェクトに対してOCRを実行することによって、前記少なくとも1つのグラフィカルオブジェクトに対する複数のOCR候補を生成するステップと、
前記グラフィカルオブジェクトの群を使用して、前記複数のOCR候補から1つのOCR候補を選択するステップと
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記OCR結果を使用して、前記推測されたコンテキストを改良するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記少なくとも1つのグラフィカルオブジェクトが、シンボル、文字、単語、標識、および数のうちの1つまたは複数を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記グラフィカルオブジェクトの群が、共通の特性を通じて互いに関連する複数のグラフィカルオブジェクトを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記グラフィカルオブジェクトの群が辞書を表現する、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記グラフィカルオブジェクトの群が辞書の改良版を表現する、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記デバイスの前記ロケーションが、前記デバイスのGPS要素を使用して推定される、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記デバイスの前記ロケーションが、セルタワーに関する信号の強度を使用して推定される、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
プロセッサと、
画像を取得するためのカメラと、
前記プロセッサに結合された非一時的コンピュータ可読記憶媒体と
を備え、前記非一時的コンピュータ可読記憶媒体が、
デバイスに結合された前記カメラを使用して画像を取得するステップと、
少なくとも1つのグラフィカルオブジェクトを含む前記画像の一部分を識別するステップと、
前記デバイスに結合されたマイクロフォンを使用して、音響入力を受信するステップと、
前記デバイスのロケーションを推定するステップと、
前記デバイスの前記推定されたロケーションに基づいて、前記画像に関連するコンテキストを推測するステップと、
前記画像に関連するコンテキストに基づいてグラフィカルオブジェクトの群を選択するステップと、
前記グラフィカルオブジェクトの群を使用して前記少なくとも1つのグラフィカルオブジェクトのOCR結果を改良するステップと
を含む方法を実装するために、前記プロセッサによって実行可能なコードを含み、
前記デバイスの前記ロケーションが、前記マイクロフォンからの前記音響入力を使用して、前記ロケーションに関連付けられた署名トーンを解析して推定される、デバイス。
【請求項12】
前記OCR結果を改良するステップが、前記グラフィカルオブジェクトの群を使用してOCRを実行するステップを含む、請求項11に記載のデバイス。
【請求項13】
前記OCR結果を改良するステップが、
前記少なくとも1つのグラフィカルオブジェクトに対してOCRを実行することによって、前記少なくとも1つのグラフィカルオブジェクトに対する複数のOCR候補を生成するステップと、
前記グラフィカルオブジェクトの群を使用して、前記複数のOCR候補から1つのOCR候補を選択するステップと
を含む、請求項11に記載のデバイス。
【請求項14】
前記OCR結果を使用して、前記推測されたコンテキストを改良するステップをさらに含む、請求項11に記載のデバイス。
【請求項15】
前記少なくとも1つのグラフィカルオブジェクトが、シンボル、文字、単語、標識、および数のうちの1つまたは複数を含む、請求項11に記載のデバイス。
【請求項16】
前記グラフィカルオブジェクトの群が、共通の特性を通じて互いに関連する複数のグラフィカルオブジェクトを含む、請求項11に記載のデバイス。
【請求項17】
前記グラフィカルオブジェクトの群が辞書を表現する、請求項11に記載のデバイス。
【請求項18】
前記グラフィカルオブジェクトの群が辞書の改良版を表現する、請求項11に記載のデバイス。
【請求項19】
前記デバイスの前記ロケーションが、前記デバイスのGPS要素を使用して推定される、請求項11に記載のデバイス。
【請求項20】
前記デバイスの前記ロケーションが、セルタワーに関する信号の強度を使用して推定される、請求項11に記載のデバイス。
【請求項21】
プロセッサに結合された非一時的コンピュータ可読記憶媒体であって、
デバイスに結合されたカメラを使用して画像を取得するステップと、
少なくとも1つのグラフィカルオブジェクトを含む前記画像の一部分を識別するステップと、
前記デバイスに結合されたマイクロフォンを使用して、音響入力を受信するステップと、
前記デバイスのロケーションを推定するステップと、
前記デバイスの前記推定されたロケーションに基づいて、前記画像に関連するコンテキストを推測するステップと、
前記画像に関連するコンテキストに基づいてグラフィカルオブジェクトの群を選択するステップと、
前記グラフィカルオブジェクトの群を使用して前記少なくとも1つのグラフィカルオブジェクトのOCR結果を改良するステップと
を含む方法を実装するために、前記プロセッサによって実行可能なコードを含み、
前記デバイスの前記ロケーションが、前記マイクロフォンからの前記音響入力を使用して、前記ロケーションに関連付けられた署名トーンを解析して推定される、非一時的コンピュータ可読記憶媒体。
【請求項22】
前記OCR結果を改良するステップが、前記グラフィカルオブジェクトの群を使用してOCRを実行するステップを含む、請求項21に記載の非一時的コンピュータ可読記憶媒体。
【請求項23】
前記OCR結果を改良するステップが、
前記少なくとも1つのグラフィカルオブジェクトに対してOCRを実行することによって、前記少なくとも1つのグラフィカルオブジェクトに対する複数のOCR候補を生成するステップと、
前記グラフィカルオブジェクトの群を使用して、前記複数のOCR候補から1つのOCR候補を選択するステップと
を含む、請求項21に記載の非一時的コンピュータ可読記憶媒体。
【請求項24】
OCRを実行するための装置であって、
デバイスに結合されたカメラを使用して画像を取得するための手段と、
少なくとも1つのグラフィカルオブジェクトを含む前記画像の一部分を識別するための手段と、
前記デバイスに結合されたマイクロフォンを使用して、音響入力を受信するための手段と、
前記デバイスのロケーションを推定するための手段と、
前記デバイスの前記推定されたロケーションに基づいて、前記画像に関連するコンテキストを推測するための手段と、
前記画像に関連する前記コンテキストに基づいてグラフィカルオブジェクトの群を選択するための手段と、
前記グラフィカルオブジェクトの群を使用して前記少なくとも1つのグラフィカルオブジェクトのOCR結果を改良するための手段と
を含み、
前記デバイスの前記ロケーションが、前記マイクロフォンからの前記音響入力を使用して、前記ロケーションに関連付けられた署名トーンを解析して推定される、装置。
【請求項25】
前記OCR結果を改良するための手段が、前記グラフィカルオブジェクトの群を使用してOCRを実行するための手段を含む、請求項24に記載の装置。
【請求項26】
前記OCR結果を改良するための手段が、
前記少なくとも1つのグラフィカルオブジェクトに対してOCRを実行することによって、前記少なくとも1つのグラフィカルオブジェクトに対する複数のOCR候補を生成するための手段と、
前記グラフィカルオブジェクトの群を使用して、前記複数のOCR候補から1つのOCR候補を選択するための手段と、
前記OCR結果を改良するのに前記選択されたOCR候補を使用するための手段と
を含む、請求項24に記載の装置。」
3 本願発明1の分説
本願発明1を分説すると次のとおりである。
(本願発明1)
(A)OCRを実行するための方法であって、
(B)デバイスに結合されたカメラを使用して画像を取得するステップと、
(C)少なくとも1つのグラフィカルオブジェクトを含む前記画像の一部分を識別するステップと、
(D)前記デバイスに結合されたマイクロフォンを使用して、音響入力を受信するステップと、
(E)前記デバイスのロケーションを推定するステップと、
(F)前記デバイスの前記推定されたロケーションに基づいて、前記画像に関連するコンテキストを推測するステップと、
(G)前記画像に関連するコンテキストに基づいてグラフィカルオブジェクトの群を選択するステップと、
(H)前記グラフィカルオブジェクトの群を使用して前記少なくとも1つのグラフィカルオブジェクトのOCR結果を改良するステップと
を含み、
(I)前記デバイスの前記ロケーションが、前記マイクロフォンからの前記音響入力を使用して、前記ロケーションに関連付けられた署名トーンを解析して推定される、
(J)方法。
((A)~(J)は、当審で付与した。以下各構成要件を「構成要件A」等という。)
第2 原査定の理由について
1 原査定の理由の概要
この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
記
請求項 1~33、36~68、71~76
引用文献1:特開2000-348142号公報
引用文献2:特開2003-178067号公報
引用文献3:特開2006-65477号公報
引用文献4:特開2011-134144号公報
引用文献5:特開2009-86349号公報
引用文献6:特開2003-108551号公報
引用文献7:特開2009-258871号公報
2 原査定の理由で引用された引用文献に記載された発明に基づく容易想到性について
(1)引用文献の記載事項
ア 引用文献1
(ア)引用文献1の記載事項
原査定の理由で引用された特開2000-348142号公報(引用文献1)には、「文字認識装置,文字認識方法,および文字認識方法を実行するプログラムを記録した記録媒体」(発明の名称)に関し、図面と共に次に掲げる事項が記載されている(下線は当審で付与した。)。
「【0008】
【発明の実施の形態】図1は,本発明の実施の形態に係る文字認識装置の全体概要を示すブロック図である。本実施の形態の文字認識装置は,単語辞書1,画像入力部2,文字列切り出し部3,文字切り出し部4,文字認識部5,位置情報取得部6,単語辞書選択部7,単語照合部8,出力部9から構成されている。
【0009】単語辞書1には,企業名と住所,電話番号と住所,あるいは個人名と住所などが対になって格納されている。単語辞書1としては例えばタウンページ等の電話帳データベースを用いることが考えられる。
【0010】画像入力部2では,企業名や電話番号,個人名を含む画像の入力を行う。これは,例えば看板や駅看板,ポスター等のプレート型の文字情報を含む画像である。文字列切り出し部3では,画像入力部2で入力された画像から,文字列画像を切り出す。文字サイズの変動が小さく,縦あるいは横一列に並んだ文字のかたまりを一文字列として切り出す。ここでは,例えば駅看板なら看板中に書かれた広告主名,電話番号,住所等の文字列が,ポスターならポスターのタイトルや連絡先等の複数行にまたがる文字列がすべて切り出されることになる。
【0011】文字切り出し部4では,文字列切り出し部3で切り出された文字列画像のすべてについて,1文字分ずつ文字画像を切り出し,文字サイズの算出を行う。この文字切り出し部4により,背景とのコントラストなどによって切り出された文字列画像の矩形領域から,さらに1文字単位の文字画像が切り出されることになる。次に,文字認識部5では,全文字列について,切り出された各文字画像の認識を行い,認識結果文字コード列を出力する。」
「【0015】次に単語辞書選択部7では,位置情報取得部6により取得された位置情報およびその誤差の範囲を利用して,単語辞書1の中で照合に使用する部分の選択を行う。これにより,単語照合に使用するレコードの数を,多数のレコードの中から数十件,あるいは数百件のレコードに絞り込むことが可能となる。
【0016】単語辞書1の選択は,例えば単語辞書1内の住所情報を緯度経度情報に変換したものと,位置情報取得部6で検出された緯度経度情報を用いて,誤差を含めた緯度経度の範囲に収まる範囲の辞書の選択を行うといった方法が考えられる。例えばインターネット版のタウンページ・データベースには,緯度経度情報が付与されているので(島健一,高橋克巳,三浦信幸,“インターネット版マルチメディア電話帳の構築”,オンラインプロシーディングス Japan World Wide Web Conference '95(1995)),それを単語辞書1として利用することにより,緯度経度情報を用いた単語辞書情報の絞り込みを行うこともできる。
【0017】単語照合部8では,文字認識部5で得られた文字コード列と,単語辞書選択部7で得られた単語辞書とを用いて単語照合を行い,一致文字数をカウントする。例えば,認識対象が一文字列の看板の場合には,単語辞書の企業名との単語照合を行う。また,複数の文字列が存在する認識対象の場合には,複数の文字列と複数のレコードとの間で単語照合を行うため,すべての組み合わせにおいて総当たりで単語照合を行い,一致文字数が最大となる組み合わせを求める。あるいは,書式解析等を利用して単語照合を行う文字列の認識結果を選択し,その一致文字数を算出してもよい。」
「【0024】上記処理において,文字列切り出し部3の処理を省略し,図3(B)に示すように,カメラ画像11からダイレクトに文字画像15を抽出し,それを文字認識部5で認識するようにしてもよい。
【0025】図2のステップ24では,文字画像を読み込んだ地点の位置情報を取得し,ステップ25では,前のステップ24で取得された位置情報をもとに単語辞書1の選択を行う。ここで,単語辞書1の選択とは,単語辞書1の中で使用するレコードを選択することを意味する。なお,単語辞書1が複数ある場合には,位置情報に基づいて適当な単語辞書1を選択することも含まれる。」
(イ)引用文献1に記載された発明
上記(ア)の記載によると、引用文献1には、文字認識装置における文字認識の動作が記載され、その動作を方法の発明として認定する。当該発明は次の構成を含む。
段落【0010】によると、文字認識装置は、「文字情報を含む含む画像を入力」し、段落【0024】によると、画像は、カメラ画像であるから、『文字情報を含むカメラ画像を入力』する。
段落【0010】によると、『文字列画像を切り出す』。
段落【0015】、【0008】によると、位置情報取得部は、『文字認識装置の位置情報を取得』する。
段落【0015】によると、『位置情報を利用して、単語辞書の中で照合に使用する部分の選択を行う』。
段落【0017】によると、『文字認識部で得られた文字コート列と選択された単語辞書の単語とを用いて単語照合を行い、一致文字をカウントし、一致文字数が最大となる単語を認識結果とする』。
以上より、引用文献1には、次の発明が記載されていると認められる。以下この発明を「引用発明1」という。
(引用発明1)
(1a)文字情報を含むカメラ画像を入力し、
(1b)文字列画像を切り出し、
(1c)文字認識装置の位置情報を取得し、
(1d)位置情報を利用して、単語辞書の中で照合に使用する部分の選択を行い、
(1e)文字認識部で得られた文字コード列と選択された単語辞書の単語とを用いて単語照合を行い、一致文字をカウントし、一致文字数が最大となる単語を認識結果とする、
(1f)方法。
((1a)~(1f)は、引用発明1の構成を区別するために付与した。以下各構成を「構成1a」等という。)
イ 引用文献6
原査定の理由で引用された特開2003-108551号公報(引用文献6)には、「携帯型機械翻訳装置、翻訳方法及び翻訳プログラム」(発明の名称)に関し、図面と共に次に掲げる事項が記載されている(下線は当審で付与した。)。
「【0022】図1において、携帯型機械翻訳装置1は、翻訳入力マイク2、音声認識処理部3、集音マイク4、機械翻訳処理部5、音声合成処理部6、翻訳出力スピーカ7、分野/状況辞書・コーパス8、翻訳環境判定部9及び基本翻訳辞書10によって構成されている。なお、翻訳処理は、異なる言語間の一方向又は双方向のいずれも可能であるが、説明を簡略化するために、通常第2言語が使用される環境において、第1言語の音声を第2言語の音声に変換する場合について説明する。
【0023】翻訳入力マイク2は、利用者が翻訳したい原文を音声で入力するためのものである。利用者の声だけを集音するように指向性が高いマイクロフォンを使用する。本実施の形態においては、周囲の環境の音や音声を集音するために、集音マイク4を備えている。集音マイク4としては指向特性が鋭くないものを用いる。翻訳入力マイク2及び集音マイク4からの音声信号は音声認識処理部3に供給される。
【0024】音声認識処理部3は翻訳入力マイク2からの音声信号をテキストデータ(文字データ)に変換して機械翻訳処理部5に出力する。この場合には、音声認識処理部3は第1言語についての音声認識を行う。
【0025】本実施の形態においては、音声認識処理部3は、集音マイク4によって集音された音響から人の声の音声信号を抽出して、抽出した音声信号をテキストデータに変換して翻訳環境判定部9に出力することもできるようになっている。なお、この場合には、音声認識処理部3は、集音マイク4からの音声信号から、第2言語の単語を抽出して、抽出した単語についての音声認識を行うようになっている。
【0026】分野/状況辞書・コーパス8は、分野毎及び状況毎の辞書及びコーパスによって構成されている。即ち、分野/ 状況辞書・コーパス8は分野/状況毎に準備された翻訳用辞書及び翻訳事例集である。分野/状況辞書・コーパス8としては、携帯型期間翻訳装置1が使用される環境に応じて、例えば、銀行辞書、交通辞書、ホテル辞書、病院辞書等の各種辞書及びコーパスが考えられる。基本翻訳辞書10は、分野に依存しない基本的な単語とその訳語が登録されたものである。
【0027】翻訳環境判定部9は音声認識処理部3から入力された単語と分野/辞書・コーパス8内の各辞書(コーパス)とを照合して、最もよく適合する分野/状況辞書・コーパスを翻訳環境として設定する。」
上記記載によると、引用文献6には、『集音された音響から人の声の音声信号を抽出して、抽出した音声信号をテキストデータに変換し、最もよく適合する分野/状況辞書・コーパスを翻訳環境として設定する』技術が記載されている。
(2)対比
本願発明1と引用発明1とを対比する。
ア 構成要件Aと構成1a~1fとを対比する。
引用発明1は、構成1a~1fからなる方法であって、文字情報を含む含むカメラ画像から、文字認識を行うから、OCRを実行しているといえる。
したがって、本願発明1と引用発明1とは、「OCRを実行するための方法」として一致する。
イ 構成要件Bと構成1aとを対比する。
引用発明1の「カメラ画像」は、カメラを使用して取得された画像であるから、引用発明1は、「カメラを使用して画像を取得するステップ」を含むといえる。
引用発明1は、カメラ画像の文字情報を文字認識するために、構成1c~1eにおいて、文字認識装置の位置情報により単語辞書の中で照合に使用する部分の選択を行うものであるから、カメラは、本願発明1の「デバイス」に相当する「文字認識装置」に結合されているといえる。
したがって、本願発明1と引用発明2とは、「デバイスに結合されたカメラを使用して画像を取得するステップ」を含む点で一致する。
ウ 構成要件Cと構成1bとを対比する。
引用発明1の「文字列画像」は、本願発明1の「グラフィカルオブジェクト」に相当する。
引用発明1における「文字列画像を切り出す」ためには、「文字列画像」を画像から識別しなければならないことは明らかである。
したがって、本願発明1と引用発明1とは、「少なくとも1つのグラフィカルオブジェクトを含む前記画像の一部分を識別するステップ」を含む点で一致する。
エ 構成要件Dについて
引用発明1は、「前記デバイスに結合されたマイクロフォンを使用して、音響入力を受信するステップ」を含んでおらず、本願発明1と相違する。
オ 構成要件Eと構成1cとを対比する。
引用発明1の「文字認識装置」は、本願発明1の「デバイス」に相当する。
また、「文字認識装置の位置情報を取得」することは、「前記デバイスのロケーションを推定する」ことといえる。
したがって、本願発明1と引用発明1とは、「前記デバイスのロケーションを推定するステップ」を含む点で一致する。
カ 構成要件F~Gと構成1dとを対比する。
引用発明1は、「位置情報を利用して、単語辞書の中で照合に使用する部分の選択を行」うものであり、「単語辞書の中で照合に使用する部分の選択を行」うことは、「グラフィカルオブジェクトの群を選択する」ことといえる。
したがって、本願発明1と引用発明1とは、「前記デバイスの前記推定されたロケーションに基づいて、グラフィカルオブジェクトの群を選択するステップ」を含む点で共通する。
しかしながら、当該ステップが、本願発明1においては、「前記デバイスの前記推定されたロケーションに基づいて、前記画像に関連するコンテキストを推測するステップ」と「前記画像に関連するコンテキストに基づいてグラフィカルオブジェクトの群を選択するステップ」とからなるのに対し、引用発明1においては、「前記デバイスの前記推定されたロケーションに基づいて、前記画像に関連するコンテキストを推測するステップ」と「前記画像に関連するコンテキストに基づいてグラフィカルオブジェクトの群を選択するステップ」とからなるものではない点で相違する。
キ 構成要件Hと構成1eとを対比する。
引用発明1は、「文字認識部で得られた文字コード列と選択された単語辞書の単語とを用いて単語照合を行い、一致文字をカウントし、一致文字数が最大となる単語を認識結果とする」から、「前記グラフィカルオブジェクトの群を使用して前記少なくとも1つのグラフィカルオブジェクトのOCR結果を改良する」といえる。
したがって、本願発明1と引用発明1とは、「前記グラフィカルオブジェクトの群を使用して前記少なくとも1つのグラフィカルオブジェクトのOCR結果を改良するステップ」を含む点で一致する。
ク 構成要件Iについて
上記エのとおり、引用発明は構成要件Dを含んでおらず、それに伴い、「前記デバイスの前記ロケーションが、前記マイクロフォンからの前記音響入力を使用して、前記ロケーションに関連付けられた署名トーンを解析して推定される」ものではなく、本願発明1と相違する。
ケ 構成要件Jと構成1fとを対比すると、「方法」として一致する。
コ 一致点、相違点
以上のとおりであるから、本願発明1と引用発明1との一致点、相違点は、次のとおりである。
(一致点)
OCRを実行するための方法であって、
デバイスに結合されたカメラを使用して画像を取得するステップと、
少なくとも1つのグラフィカルオブジェクトを含む前記画像の一部分を識別するステップと、
前記デバイスのロケーションを推定するステップと、
前記デバイスの前記推定されたロケーションに基づいて、前記画像に関連するコンテキストを推測するステップと、
前記画像に関連するコンテキストに基づいてグラフィカルオブジェクトの群を選択するステップと、
前記グラフィカルオブジェクトの群を使用して前記少なくとも1つのグラフィカルオブジェクトのOCR結果を改良するステップと
を含む、方法。
(相違点1)
本願発明1においては、「前記デバイスに結合されたマイクロフォンを使用して、音響入力を受信するステップ」を含むのに対し、引用発明1においては、当該ステップを含んでいない点で相違し、
それに伴い、本願発明1においては、「前記デバイスの前記ロケーションが、前記マイクロフォンからの前記音響入力を使用して、前記ロケーションに関連付けられた署名トーンを解析して推定される」のに対し、引用発明1においては、「前記デバイスの前記ロケーションが、前記マイクロフォンからの前記音響入力を使用して、前記ロケーションに関連付けられた署名トーンを解析して推定される」ものではない点
(相違点2)
「前記デバイスの前記推定されたロケーションに基づいて、グラフィカルオブジェクトの群を選択するステップ」が、
本願発明においては、「前記デバイスの前記推定されたロケーションに基づいて、前記画像に関連するコンテキストを推測するステップ」と「前記画像に関連するコンテキストに基づいてグラフィカルオブジェクトの群を選択するステップ」とからなるのに対し、
引用発明においては、「前記デバイスの前記推定されたロケーションに基づいて、前記画像に関連するコンテキストを推測するステップ」と「前記画像に関連するコンテキストに基づいてグラフィカルオブジェクトの群を選択するステップ」とからなるものではない点
(3)判断
相違点1について検討する。
上記(1)イのとおり、引用文献6には、「集音された音響から人の声の音声信号を抽出して、抽出した音声信号をテキストデータに変換し、最もよく適合する分野/状況辞書・コーパスを翻訳環境として設定する」技術が記載され、この技術は、辞書の選択する技術であって、この技術を引用発明1の「単語辞書の中で照合に使用する部分の選択」に適用することは、当業者が容易に着想することである。
したがって、引用発明1において、「前記デバイスに結合されたマイクロフォンを使用して、音響入力を受信するステップ」を含むようにすることは、当業者が容易になし得たことと認められる。
しかしながら、引用文献6に記載された技術は、音声信号をテキストデータに変換し、最もよく適合する分野/状況辞書・コーパスを翻訳環境として設定するものであり、音声信号をテキストデータに変換し、当該テキストデータから状況(ロケーション)を把握し、最も適合する辞書を選択するものと認められ、状況を把握する点においては、デバイスのロケーションを推定する点で本願発明1と共通するといえるが、引用文献6に記載された技術は、音声データを変換したテキストデータから状況を把握するものであって、ロケーションに関連付けられた署名トーンを解析して、ロケーションを推定するものではない。
そうすると、引用発明1に引用文献6に記載された技術を適用しても、「前記デバイスの前記ロケーションが、前記マイクロフォンからの前記音響入力を使用して、前記ロケーションに関連付けられた署名トーンを解析して推定される」ものにはならない。
原査定の理由に引用された他の引用文献をみても、「前記デバイスの前記ロケーションが、前記マイクロフォンからの前記音響入力を使用して、前記ロケーションに関連付けられた署名トーンを解析して推定される」ことを開示するものはない。
したがって、本願発明1は、引用文献1~7に記載された発明に基づいて、当業者が容易になし得たものとは認められない。
(4)まとめ
以上のとおり、本願発明1は、原査定の理由で引用された引用文献に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明できたものとは認められない。
本願発明2~10は、請求項1を引用しているので、本願発明1と同じ理由で、本願発明2~10は、原査定の理由で引用された引用文献に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明できたものとは認められない。
また、本願発明11は、本願発明1とカテゴリーが異なる発明であるから、本願発明1と同様に、本願発明11は、原査定の理由で引用された引用文献に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明できたものとは認められない。
本願発明12~20は、請求項11を引用しているので、本願発明11と同じ理由で、本願発明12~20は、原査定の理由で引用された引用文献に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明できたものとは認められない。
本願発明21は、本願発明1とカテゴリーが異なる発明であるから、本願発明1と同様に、本願発明21は、原査定の理由で引用された引用文献に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明できたものとは認められない。
本願発明22~23は、請求項21を引用しているので、本願発明21と同じ理由で、本願発明22~23は、原査定の理由で引用された引用文献に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明できたものとは認められない。
本願発明24は、本願発明1とカテゴリーが異なる発明であるから、本願発明1と同様に、本願発明24は、原査定の理由で引用された引用文献に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明できたものとは認められない。
本願発明25~26は、請求項24を引用しているので、本願発明24と同じ理由で、本願発明25~26は、原査定の理由で引用された引用文献に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明できたものとは認められない。
第3 当審拒絶理由について
1 当審拒絶理由の概要
(理由A)
この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前日本国内又は外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
記
請求項 1、2~8、10、14~15、34、35~41、43、47~48、67~69、70~72
引用文献2:特開2003-178067号公報
引用文献6:特開2003-108551号公報
(注:当審拒絶理由においては、「引用文献2」を「引用文献1」と表記し、「引用文献6」を「引用文献2」と表記したが、当審決においては、原査定の理由(上記第2の1)で引用した引用文献の番号に合わせ、「引用文献2」、「引用文献6」とした。)
(理由B)
この出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第1号及び第2号に規定する要件を満たしていない。
また、この出願は、発明の詳細な説明の記載について下記の点で、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。
記
(1)請求項1~69について
ア 請求項1、34、67について
(ア)「非テキストのコンテキスト」における「非テキスト」とは、どのようなことを意味しているのか明確でない。
(イ)「前記デバイスの前記ロケーションが、マイクロフォンからの音響入力を使用して推定される」が、どのようなことを意味しているのか明確でない。
(ウ)「前記画像が取得されたときの前記デバイスの環境に関連し、少なくとも1つのセンサを使用して獲得された前記環境に関連する情報に基づいて、前記画像に関連する非テキストのコンテキストを推測するステップ」(以下「構成要件1」という。)と、
「前記コンテキストを推測するステップが、
前記デバイスのロケーションを推定するステップと、
前記デバイスの前記推定されたロケーションに基づいて前記コンテキストを推測するステップと
を含み、
前記デバイスの前記ロケーションが、マイクロフォンからの音響入力を使用して推定される」(以下「構成要件2」という。)との関係が、明確でない。
イ 請求項1、34、67を引用する請求項も、請求項1、34、67と同じ記載不備がある。
(2)請求項70~72について
請求項70に係る発明は、請求項1の「方法」の発明を「物」の発明として「装置」の発明としたものであるから、上記(1)と同様の記載不備がある。
請求項70を引用する請求項も、請求項70と同じ記載不備がある。
(3)請求項9~13、16~33について
構成要件1、構成要件2、各請求項の記載の関係が明確でない。
各請求項に係る発明は、どのようにコンテキストを推測するのか明確でない。
また、構成要件1、構成要件2、各請求項の記載の構成によってコンテキストを推測することが、発明の詳細な説明のどの部分に対応しているのか明確でなく、各請求項に係る発明が、発明の詳細な説明に記載されているものとは認められない。
さらに、発明の詳細な説明は、当業者が各請求項に係る発明の実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものとは認められない。
(4)請求項42~46、49~66について
請求項34に係る発明は、請求項1に係る「方法」の発明を、物の発明として「デバイス」とした発明であって、請求項34に記載された「ステップ」は、請求項1に記載された「ステップ」と同じである。
そして、請求項42~46、49~66は請求項34を引用するものであり、請求項42~46、49~66は、請求項9~13、16~33にそれぞれ対応する。
そうすると、請求項42~46、49~66は、請求項9~13、16~33と同じ記載不備がある。
2 容易想到性について
(1)引用文献の記載事項
ア 引用文献2
(ア)引用文献2の記載事項
当審拒絶理由で引用された特開2003-178067号公報(引用文献2)には、「携帯端末型画像処理システム、携帯端末およびサーバ」(発明の名称)に関し、図面と共に次に掲げる事項が記載されている(下線は当審で付与した。)。
「【0050】次に、前処理後画像から抽出して抽出文字列を得る(ステップST22)。例えば、図4の前処理後画像402から抽出文字列403を抽出する。このような白黒の画像から文字列を抽出する処理には、従来のOCRで既に実現されている方式が用いられる。ステップST22で抽出した抽出文字列の内容を文字認識する(ステップST23)。文字認識の方法としては、文字列を構成する1文字のパターンを切出し、切出したパターンを認識辞書117と比較して文字コードに変換する方法が広く知られている。ここで、切出したパターンを文字コードに変換する際に、言語辞書118を参照することにより、言語的に整合性の高い文字認識結果を得ることができる。この方法も一般的である。例えば、図4に示す抽出文字列403に本処理を適用した場合、まず1文字づつ切出した文字パターン404を得、それら文字パターン404を文字コードに変換することで、テキスト化された文字認識結果405を得る。」
「【0083】実施の形態4.上記実施の形態1から3において、サーバが持つ文字列認識処理や翻訳処理は、一般用語を対象としたものである。しかし、例えば海外のレストランに入って郷土料理の名前を翻訳したい場合、あるいは海外の病院で診断書に記入された病名を翻訳したい場合等では、専門性の高い用語を翻訳する必要がある。このような場合は、十分な文字認識性能および翻訳性能を得ることが困難である。この課題に対しては、ユーザの指定や携帯端末のGPS(Global Positioning System)機能から得られたユーザの現在位置を基に、文字認識処理や翻訳処理に用いる各種辞書を適切な専門用語辞書に置き換えて処理を行うことで解決できる。実施の形態4はこれを実現するものである。
【0084】以下、実施の形態4について図20および図21を用いて説明する。図中、実施の形態1から3と共通な部分は同一の符号を付し、原則としてその説明を省略する。図20は実施の形態4による携帯端末型翻訳システムの構成を示すブロック図で、2001はGPS部、2002は専用認識辞書、2003は専用言語辞書、2004は第1専用翻訳辞書、2005は専用関連文辞書、2006は第2専用翻訳辞書、2007は地図データである。図21は認識条件指定の例を示す説明図で、2101は選択画面である。
【0085】次に動作について説明するが、まず、画像内文字列認識・翻訳サービスを実行する場合について説明する。ここでは実施の形態1から3と同様な処理により、画像撮像部105が文字列を含む画像を撮像して撮像画像を画像バッファ106に蓄積する。その後、送信画像制御部1401は、画像バッファ106に蓄積された1枚の画像を選択する。処理指示部104はサーバ109で行う処理サービスの種類とその実行条件を指定する。ここでは、処理サービスの種類として画像内文字列認識・翻訳サービスを指定する。
【0086】また、GPS部2001は、GPS機能により人工衛星の発信した電波から所持している携帯端末101の現在位置を取得する。データ送信部102は、送信画像制御部1401で選択した画像と、処理指示部104で指定した処理サービスの種類および携帯端末101に関する情報をサーバ109に送信する。ここで携帯端末101に関する情報としては、関連情報(例、機種コード)とGPS部2001で取得した携帯端末101の現在位置とが含まれる。
【0087】サーバ109では、実施の形態1から3と同様に、データ送信部102で送信した撮像画像に含まれる文字列を翻訳して、その結果を携帯端末101に送信する。ただしその際、処理制御部112は、GPS部2001で取得した携帯端末101の現在位置に基づいて地図データ2007の内容を参照して、携帯端末を所持するユーザが現在いる施設を特定する。そして、画像内文字列認識・翻訳部113で用いる各種の辞書を、特定された施設に対応する専用辞書に置き換える。具体的には、図1に示された認識辞書117と言語辞書118と第1翻訳辞書124を、専用認識辞書2002と専用言語辞書2003と第1専用翻訳辞書2004にそれぞれ置き換える。
【0088】ここで、地図データ2007には各種施設の位置情報が格納されており、GPS部2001で取得した携帯端末101の現在位置から、ユーザがどの施設にいるかを知ることができる。したがって、処理制御部112は、その施設に対応した専用辞書を選択する。例えば、ユーザがレストランにいる場合は、レストランで使用される確率が高い郷土料理のメニュー等を含んだ専用辞書を選択する。以降、画像内文字列認識・翻訳部113では、各専用辞書2002,2003,2004を用いて、実施の形態1から3と同様な処理を行う。そして、処理した翻訳結果を携帯端末101に送り、表示部107で表示する。以上が実施の形態4における画像内文字列認識・翻訳サービスの動作である。
【0089】次に、テキスト翻訳サービスの動作を説明する。まず実施の形態1と同様に、ユーザがキー入力部103により翻訳するキーワードを入力し、処理指示部104はサーバ109で行う処理サービスの種類としてテキスト翻訳サービスを指定する。データ送信部102は、キー入力部103で入力したキーワード、処理指示部104で指定した処理サービスの種類および携帯端末101に関する情報(機種コードと、GPS部2001で取得したユーザの現在位置)をサーバ109に送信する。
【0090】以降、実施の形態1と同様な処理で翻訳処理を行い、その結果を携帯端末101の表示部107に表示する。ただし、処理制御部112は、データ送信部102で指定された処理サービスの種類がテキスト翻訳サービスである場合、GPS部2001で取得した携帯端末101の現在位置に基づいて地図データ2007の内容を参照し、携帯端末101を所持するユーザが現在いる施設を特定する。そして、テキスト翻訳部119で用いる各種の辞書を特定された施設に対応する専用辞書に置き換える。具体的には、図1に示された関連文辞書123と第2翻訳辞書125を、専用関連文辞書2005と第2専用翻訳辞書2006にそれぞれ置き換える。以上が本実施の形態におけるテキスト翻訳サービスの動作である。
【0091】なお、上記の動作説明では、処理制御部112はGPS部2001で得たユーザの現在位置と地図データ2007に基づいて専用辞書の種類を選択するとしたが、代りに携帯端末101から直接に専用辞書の種類を指定するようにしても良い。例えば、処理指示部104により、表示部107に図21に示すような専用辞書の種類を表す選択画面2101を表示し、ユーザがその中から希望する専用辞書の種類を指定できるようにする。そして、データ送信部102がサーバ109に対して画像内文字列認識・翻訳サービスやテキスト翻訳サービスを依頼する際に、処理指示部104によりユーザが指定した専用辞書の種類を送信データに付けてサーバ109へ送信する。これにより、処理制御部112は、ユーザが指定した専用辞書を選択し画像内文字列認識・翻訳部113やテキスト翻訳部119の処理を実行するようにする。
【0092】以上のように、この実施の形態4によれば、ユーザにより指定するか、あるいはGPS部2001で得た携帯端末101の現在位置とサーバ109の持つ地図データ2007に基づいてユーザが現在いる施設を特定し、サーバの文字列認識処理や翻訳処理に用いる各種辞書を適切な専用辞書に置き換えるようにしたので、これにより翻訳結果の性能を向上させる効果が得られる。」
(イ)引用文献2に記載された発明
引用文献2の段落【0083】~【0092】に記載された「実施の形態4.」を方法の発明として認定する。当該発明は次の構成を含む。
段落【0085】によると、『画像撮像部が文字列を含む画像を撮像』する。
段落【0083】~【0092】に記載されている実施の形態4は、段落【0084】によると、実施の形態1と共通な部分があり、段落【0050】によると、『画像から文字列を抽出』する。
段落【0086】、【0087】によると、GPS部が、携帯端末の現在位置を取得し、サーバが、現在位置に基づいて、施設を特定するから、『携帯端末のロケーションを特定』する。
段落【0087】によると、文字認識に用いる辞書を、特定された施設に対応する専用辞書に置き換えるから、『前記ロケーションに基づいて、文字認識に用いる専用辞書を選択』する。
段落【0088】によると、『前記専用辞書を用いて文字認識を行う』。
以上より、引用文献2には、次の発明が記載されていると認められる。以下この発明を「引用発明2」という。
(引用発明2)
(2a)画像撮像部が文字列を含む画像を撮像し、
(2b)画像から文字列を抽出し、
(2c)携帯端末のロケーションを特定し、
(2d)前記ロケーションに基づいて、文字認識に用いる専用辞書を選択し、
(2e)前記専用辞書を用いて文字認識を行う
(2f)方法。
((2a)~(2f)は、引用発明2の構成を区別するために付与した。以下各構成を「構成2a」等という。)
イ 引用文献6
当審拒絶理由で引用された特開2003-108551号公報(引用文献6)は、原査定の理由で引用された上記引用文献6と同じであるから、上記第2の2(1)イを援用する。
(2)対比
本願発明1と引用発明2とを対比する。
ア 構成要件Aと構成2a~2eとを対比する。
引用発明2は、構成2a~2dからなる方法であって、文字列を含む画像を撮像し、文字認識を行うから、OCRを実行しているといえる。
したがって、本願発明1と引用発明2とは、「OCRを実行するための方法」として一致する。
イ 構成要件Bと構成2aとを対比する。
引用発明2の「画像撮像部」は、本願発明1の「デバイスに結合されたカメラ」に相当する。
したがって、本願発明1と引用発明2とは、「デバイスに結合されたカメラを使用して画像を取得するステップ」を含む点で一致する。
ウ 構成要件Cと構成2bとを対比する。
引用発明2の「文字列」は、本願発明1の「グラフィカルオブジェクト」に相当する。
引用発明2における「画像から文字列を抽出」することは、本願発明1における「少なくとも1つのグラフィカルオブジェクトを含む前記画像の一部分を識別する」ことといえる。
したがって、本願発明1と引用発明2とは、「少なくとも1つのグラフィカルオブジェクトを含む前記画像の一部分を識別するステップ」を含む点で一致する。
エ 構成要件Dについて
引用発明2は、「前記デバイスに結合されたマイクロフォンを使用して、音響入力を受信するステップ」を含んでおらず、本願発明1と相違する。
オ 構成要件Eと構成2cとを対比する。
引用発明2の「携帯端末」は、本願発明1の「デバイス」に相当する。
したがって、本願発明1と引用発明2とは、「前記デバイスのロケーションを推定するステップ」を含む点で一致する。
カ 構成要件F~Gと構成2dとを対比する。
引用発明2の「専用辞書」は、「グラフィカルオブジェクト」に相当する「文字列」が複数あるから、「グラフィカルオブジェクトの群」といえる。
したがって、本願発明1と引用発明2とは、「前記デバイスの前記推定されたロケーションに基づいて、グラフィカルオブジェクトの群を選択するステップ」を含む点で共通する。
しかしながら、当該ステップが、本願発明1においては、「前記デバイスの前記推定されたロケーションに基づいて、前記画像に関連するコンテキストを推測するステップ」と「前記画像に関連するコンテキストに基づいてグラフィカルオブジェクトの群を選択するステップ」とからなるのに対し、引用発明2においては、「前記デバイスの前記推定されたロケーションに基づいて、前記画像に関連するコンテキストを推測するステップ」と「前記画像に関連するコンテキストに基づいてグラフィカルオブジェクトの群を選択するステップ」とからなるものではない点で相違する。
キ 構成要件Hと構成2eとを対比する。
引用発明2の「前記専用辞書を用いて文字認識を行う」ことは、「前記グラフィカルオブジェクトの群を使用して前記少なくとも1つのグラフィカルオブジェクトの文字認識を行う」ことといえる。
したがって、本願発明1と引用発明2とは、「前記グラフィカルオブジェクトの群を使用して前記少なくとも1つのグラフィカルオブジェクトの文字認識を行うステップ」を含む点で共通する。
しかしながら、「文字認識」が、本願発明1においては、「OCR結果を改良する」ものであるのに対し、引用発明2においては、「OCR結果を改良する」ものではない点で相違する。
ク 構成要件Iについて
上記エのとおり、引用発明2は構成要件Dを含んでおらず、それに伴い、「前記デバイスの前記ロケーションが、前記マイクロフォンからの前記音響入力を使用して、前記ロケーションに関連付けられた署名トーンを解析して推定される」ものではなく、本願発明1と相違する。
ケ 構成要件Jと構成2fとを対比すると、「方法」として一致する。
コ 一致点、相違点
以上のとおりであるから、本願発明1と引用発明2との一致点、相違点は、次のとおりである。
(一致点)
OCRを実行するための方法であって、
デバイスに結合されたカメラを使用して画像を取得するステップと、
少なくとも1つのグラフィカルオブジェクトを含む前記画像の一部分を識別するステップと、
前記デバイスのロケーションを推定するステップと、
前記デバイスの前記推定されたロケーションに基づいて、グラフィカルオブジェクトの群を選択するステップと、
前記グラフィカルオブジェクトの群を使用して前記少なくとも1つのグラフィカルオブジェクトの文字認識を行うステップと
を含む、方法。
(相違点1)
本願発明1においては、「前記デバイスに結合されたマイクロフォンを使用して、音響入力を受信するステップ」を含むのに対し、引用発明2においては、当該ステップを含んでいない点で相違し、
それに伴い、本願発明1においては、「前記デバイスの前記ロケーションが、前記マイクロフォンからの前記音響入力を使用して、前記ロケーションに関連付けられた署名トーンを解析して推定される」のに対し、引用発明2においては、「前記デバイスの前記ロケーションが、前記マイクロフォンからの前記音響入力を使用して、前記ロケーションに関連付けられた署名トーンを解析して推定される」ものではない点
(相違点2)
「前記デバイスの前記推定されたロケーションに基づいて、グラフィカルオブジェクトの群を選択するステップ」が、
本願発明においては、「前記デバイスの前記推定されたロケーションに基づいて、前記画像に関連するコンテキストを推測するステップ」と「前記画像に関連するコンテキストに基づいてグラフィカルオブジェクトの群を選択するステップ」とからなるのに対し、
引用発明2においては、「前記デバイスの前記推定されたロケーションに基づいて、前記画像に関連するコンテキストを推測するステップ」と「前記画像に関連するコンテキストに基づいてグラフィカルオブジェクトの群を選択するステップ」とからなるものではない点
(相違点3)
「前記グラフィカルオブジェクトの群を使用して前記少なくとも1つのグラフィカルオブジェクトの文字認識を行う」における「文字認識」が、本願発明においては、「OCR結果を改良する」ものであるのに対し、引用発明2においては、「OCR結果を改良する」ものではない点
(3)判断
相違点1について検討する。
上記第2の2(1)イのとおり、引用文献6には、「集音された音響から人の声の音声信号を抽出して、抽出した音声信号をテキストデータに変換し、最もよく適合する分野/状況辞書・コーパスを翻訳環境として設定する」技術が記載され、この技術は、辞書の選択する技術であって、この技術を引用発明2の専用辞書の選択に適用することは、当業者が容易に着想することである。
したがって、引用発明2において、「前記デバイスに結合されたマイクロフォンを使用して、音響入力を受信するステップ」を含むようにすることは、当業者が容易になし得たことと認められる。
しかしながら、引用文献6に記載されて技術は、音声信号をテキストデータに変換し、最もよく適合する分野/状況辞書・コーパスを翻訳環境として設定するものであり、音声信号をテキストデータに変換し、当該テキストデータから状況(ロケーション)を把握し、最もよく適合する辞書を選択するものと認められ、状況を把握する点においては、デバイスのロケーションを推定する点で、本願発明1と共通するといえるが、引用文献6に記載されて技術は、音声データを変換したテキストデータから状況を把握するものであって、ロケーションに関連付けられた署名トーンを解析してロケーションを推定するものではない。
そうすると、引用発明2に引用文献6に記載された技術を適用しても、「前記デバイスの前記ロケーションが、前記マイクロフォンからの前記音響入力を使用して、前記ロケーションに関連付けられた署名トーンを解析して推定される」ものにはならない。
したがって、本願発明1は、引用文献2、引用文献6に記載された発明に基づいて、当業者が容易になし得たものとは認められない。
(4)まとめ
以上のとおり、本願発明1は、当審拒絶理由で引用された引用文献に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明できたものとは認められない。
本願発明2~10は、請求項1を引用しているので、本願発明1と同じ理由で、本願発明2~10は、当審拒絶理由で引用された引用文献に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明できたものとは認められない。
また、本願発明11は、本願発明1とカテゴリーが異なる発明であるから、本願発明1と同様に、本願発明11は、当審拒絶理由で引用された引用文献に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明できたものとは認められない。
本願発明12~20は、請求項11を引用しているので、本願発明11と同じ理由で、本願発明12~20は、当審拒絶理由で引用された引用文献に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明できたものとは認められない。
本願発明21は、本願発明1とカテゴリーが異なる発明であるから、本願発明1と同様に、本願発明21は、当審拒絶理由で引用された引用文献に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明できたものとは認められない。
本願発明22~23は、請求項21を引用しているので、本願発明21と同じ理由で、本願発明22~23は、当審拒絶理由で引用された引用文献に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明できたものとは認められない。
本願発明24は、本願発明1とカテゴリーが異なる発明であるから、本願発明1と同様に、本願発明24は、当審拒絶理由で引用された引用文献に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明できたものとは認められない。
本願発明25~26は、請求項24を引用しているので、本願発明24と同じ理由で、本願発明25~26は、当審拒絶理由で引用された引用文献に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明できたものとは認められない。
3 記載不備について
当審拒絶理由において指摘した事項は、平成29年3月3日付け手続補正により解消した。
第4 むすび
以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
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2016-003223