特許拒絶査定不服審判
2016-003201
電子計算機システム及び仮想マシン配置方法
- 審判番号
- 2016-003201
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2013-534691外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2016年03月01日
- 審決日
- 2017年05月26日
- 公報発行日
- 2017年07月28日
- 結論
- 原査定取消(特許/登録すべき)
- 分類
- P18 .121-WY (G06F)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第17条の2第3項、特許法第29条第2項、特許法第17条の2第5項第2号
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2013-534691「電子計算機システム及び仮想マシン配置方法」拒絶査定不服審判事件〔平成25年 3月28日国際公開、WO2013/042615、請求項の数(10)〕について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
原査定を取り消す。
本願の発明は、特許すべきものとする。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
本願は,2012年9月13日(優先権主張2011年9月22日,日本国,2011年10月18日,日本国)を国際出願日とする出願であって,平成27年2月23日付けで拒絶理由通知がされ,平成27年4月30日付けで手続補正がされ,平成27年11月27日付けで拒絶査定(原査定)がされ,これに対し,平成28年3月1日に拒絶査定不服審判の請求がされると同時に手続補正がされ,平成28年5月2日に前置報告がされたものである。
第2 原査定の概要
原査定(平成27年11月27日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。
本願請求項1-10に係る発明は,以下の引用文献1-5に基づいて,その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下,「当業者」という。)が容易に発明できたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
引用文献等一覧
1.特開2004-192612号公報
2.特開2011- 8822号公報
3.特開2010-190108号公報
4.特開2011- 82799号公報
5.特開2011- 13822号公報
第3 審判請求時の補正について
1.新規事項について
審判請求時の補正によって請求項1,8に追加された
「前記サーバの電源状態のオンまたはオフを表す変数と前記サーバに配置された仮想マシン数を表す変数に関する論理式を,
前記サーバに配置された仮想マシン数が1以上であれば前記電源状態は前記オンであること,ならびに,
前記サーバに配置された前記仮想マシン数が前記最大仮想マシン数を超えないという条件を利用して
線形不等式に変換することで,
前記サーバと前記電源装置と前記制御装置を含むデータセンタの省電力化問題を・・・少なくとも各サーバに配置すべき前記仮想マシン数を解として有する整数計画問題として定式化」する
という事項(以下,「事項A」という。)は,当初明細書の段落【0048】~【0052】,【0068】~【0072】に記載されている事項であるから,
上記事項Aは,当初明細書等に記載された事項であり,新規事項を追加するものではない。
また,他に,新規事項を追加する補正はない。
したがって,審判請求時の補正は,特許法第17条の2第3項の要件に違反しているものとはいえない。
2.補正の目的について
上記1.で検討したことから,上記事項Aは,補正前の請求項1に記載された発明特定事項である「整数計画問題」を限定的に減縮するものであり,また,その他の補正事項(「動作する際の単位サイズが設定される複数の」,「仮想マシンが配置されることによる消費電力と,実行可能な最大仮想マシン数がそれぞれ設定される」,「前記電源装置自身が定常的に消費する電力と,複数の前記サーバに供給する電力に応じて消費電力が設定される複数の」)も,補正前の請求項1に記載された発明特定事項である「仮想マシン」「複数のサーバ」「電源装置」をそれぞれ限定的に減縮するものである。
また,請求項6の「複数の」,「複数の」,「前記サーバでの前記消費電力と前記電源装置での前記消費電力とに・・・合算した」,「少なくとも各サーバに配置すべき前記仮想マシン数を解として有する整数計画問題として定式化し」との補正事項は,補正前の請求項6に記載された発明特定事項である「サーバ」「電源装置」「合計消費電力」「混合整数計画問題」をそれぞれ限定的に減縮するものであり,請求項8の補正事項については,上記請求項1と同様のことがいえる。
したがって,審判請求時の補正は,特許法第17条の2第5項第2号に規定される「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。
3.独立特許要件について
後記する「第4 本願発明」から「第6 対比・判断」までに示すように,補正後の請求項1-10に係る発明は,独立特許要件を満たすものである。
4.以上1.~3.のとおりであるから,審判請求時の補正は,特許法第17条の2第3項から第6項までの要件に違反しているものとはいえない。
第4 本願発明
本願請求項1-10に係る発明(以下,それぞれ「本願発明1」-「本願発明10」という。)は,平成28年3月1日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1-10に記載された事項により特定される発明であり,本願発明1は以下のとおりの発明である。
「 【請求項1】
動作する際の単位サイズが設定される複数の仮想マシンが配置されることによる消費電力と,実行可能な最大仮想マシン数がそれぞれ設定される複数のサーバと,
複数の前記サーバに電力を供給する複数の電源装置であって,前記電源装置自身が定常的に消費する電力と,複数の前記サーバに供給する電力に応じて消費電力が設定される複数の前記電源装置と,
複数の前記サーバに対する複数の前記仮想マシンの配置を制御する制御装置と,
を備え,
前記制御装置は,
前記サーバの電源状態のオンまたはオフを表す変数と前記サーバに配置された仮想マシン数を表す変数に関する論理式を,
前記サーバに配置された仮想マシン数が1以上であれば前記電源状態は前記オンであること,ならびに,
前記サーバに配置された前記仮想マシン数が前記最大仮想マシン数を超えないという条件を利用して
線形不等式に変換することで,
前記サーバと前記電源装置と前記制御装置を含むデータセンタの省電力化問題を前記仮想マシンの配置の関数として記述された,前記サーバでの前記消費電力と前記電源装置での前記消費電力との合計消費電力を目的関数とする,少なくとも各サーバに配置すべき前記仮想マシン数を解として有する整数計画問題として定式化し,前記整数計画問題を解き,前記整数計画問題の解に基づいて前記仮想マシンを配置することを特徴とする電子計算機システム。」
なお,本願発明2-10の概要は以下のとおりである。
本願発明2-7は,本願発明1を減縮した発明である。
本願発明8-10は,それぞれ本願発明1-3に対応する方法の発明であり,本願発明1-3とカテゴリ表現が異なるだけの発明である。
第5 引用文献,引用発明等
1.引用文献1について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1(特開2004-192612号公報)には,図面とともに次の事項が記載されている。
A 「【0003】
論理区分化とは,1つのマルチプロセッサ・システムを,あたかも2つのまたはそれ以上の独立システムのように動作させる機能のことである。各論理区画(logical partition)(LPAR)は,システム内のリソースの区分(division)を表す。・・・」
B 「【0008】
この問題は,電力を意識した仮想化データ処理システム,および本発明による対応する使用方法により解決される。本発明のシステムは,物理リソースのセットおよびハイパーバイザを含む。ハイパーバイザは,論理区画を生成し,物理リソースの少なくともいくつかをこれらの区画に割り当てる。システムは,どの区画にも割り当てられていない物理リソースが消費する電力を低減することができる。ハイパーバイザは,割り当てられなかった物理リソースの数を最大にするために論理区画に物理リソースを割り当てることができる。物理リソースは,プロセッサを含むことができ,ハイパーバイザは,区画に少なくとも1つのプロセッサの一部を割り当てることができる。・・・」
C 「【0022】
・・・区画は頻繁に行われない再割当てであるので,ハイパーバイザは,リソースを割り当てるために比較的複雑なアルゴリズムを実施することができる。電力を意識した区分化は,制約線形最適化問題またはビン・パッキング問題として定式化することができる。
【0023】
・・・このようにして,ハイパーバイザは,部分区画の一部を最小の数の物理リソース内にパックする。」
したがって,上記引用文献1には次の発明(以下,「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「プロセッサを含む物理リソースのセットと,
ハイパーバイザと
を備え,
前記ハイパーバイザは,
論理区画(LPAR)を生成し,
物理リソースの少なくともいくつかをこれらの区画に割り当てるために,電力を意識した区分化は,ビン・パッキング問題として定式化することができ,
割り当てられなかった物理リソースの数を最大にするために論理区画に物理リソースを割り当てる,
システム。」
2.引用文献2について
原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献2(特開2011-8822号公報)の段落【0017】には,「装置群への作業負荷の割当てや設備の運転能力を適切に制御することにより装置群の電力とさらに設備も合わせた総電力を削減し,データセンタに代表される情報処理システムの省電力運用を実現する」という技術的事項が記載されている。
3.引用文献3について
原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献3(特開2010-190108号公報)の段落【0043】-【0046】の記載からみて,当該引用文献3には,「線形計画問題は,目的関数と制約条件から構成されること」が記載されていると認められる。
4.その他の文献について
拒絶査定において周知技術を示す文献として引用された引用文献5(特開2011-13822号公報)の段落【0008】には「1台の旧型の物理サーバで仮想マシンをホストするよりも,2台の新型の物理サーバで仮想マシンをホストした方が,消費電力が小さくなる場合がある」と記載されている。
第6 対比・判断
1.本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比すると,次のことがいえる。
ア.引用発明における「プロセッサを含む物理リソースのセット」と本願発明1における「複数のサーバ」とは,ともに「論理的に割り当てられる複数のハードウェア資源」である点で共通し,引用発明における「論理区画(LPAR)」と本願発明1における「仮想マシン」とは,「論理的に構成される処理ユニット」である点で共通する。
イ.引用発明における「ハイパーバイザ」と本願発明1における「制御装置」とは,ハードウェア資源を「論理的に構成される処理ユニット」に割り当てる制御を行う「制御手段」である点で共通する。
ウ.引用発明における「ビン・パッキング問題」は,後記する点で相違するものの,所定の目的関数を最小化する「最適化問題」である点で,本願発明1における「整数計画問題」と共通する。
そして,引用発明では,当該最適化問題を「解き」,その「解」に基づいて,物理リソースを割り当てていることは明らかである。
エ.引用発明における「システム」と本願発明1における「電子計算機システム」とは,後記する相違点で相違するものの,共に「電子計算機システム」である点で共通する。
したがって,本願発明1と引用発明との間には,次の一致点,相違点があるといえる。
(一致点)
「論理的に割り当てられる複数のハードウェア資源と,
複数の前記ハードウェア資源を論理的に構成される処理ユニットに割り当てる制御手段と,
を備え,
前記制御手段は,
最適化問題を解き,前記最適化問題の解に基づいてハードウェア資源を,論理的に構成される処理ユニットに割り当てることを特徴とする電子計算機システム。」
(相違点)
(相違点1)
論理的に割り当てられる複数のハードウェア資源が,
本願発明1では,「動作する際の単位サイズが設定される複数の仮想マシンが配置されることによる消費電力と,実行可能な最大仮想マシン数がそれぞれ設定される複数のサーバ」であるのに対して,
引用発明では,「プロセッサを含む物理リソースのセット」である点。
(相違点2)
本願発明1では,「複数の前記サーバに電力を供給する複数の電源装置であって,前記電源装置自身が定常的に消費する電力と,複数の前記サーバに供給する電力に応じて消費電力が設定される複数の前記電源装置」を備えるのに対し,引用発明は,そのような構成を備えていない点。
(相違点3)
制御手段に関し,
本願発明1の制御装置は,「複数の前記サーバに対する複数の前記仮想マシンの配置を制御する」ものであるのに対して,
引用発明のハイパーバイザは,「論理区画に物理リソースを割り当てる」ものである点。
(相違点4)
最適化問題に関し,
本願発明1では,「前記サーバの電源状態のオンまたはオフを表す変数と前記サーバに配置された仮想マシン数を表す変数に関する論理式を,
前記サーバに配置された仮想マシン数が1以上であれば前記電源状態は前記オンであること,ならびに,
前記サーバに配置された前記仮想マシン数が前記最大仮想マシン数を超えないという条件を利用して
線形不等式に変換することで,
前記サーバと前記電源装置と前記制御装置を含むデータセンタの省電力化問題を前記仮想マシンの配置の関数として記述された,前記サーバでの前記消費電力と前記電源装置での前記消費電力との合計消費電力を目的関数とする,少なくとも各サーバに配置すべき前記仮想マシン数を解として有する整数計画問題として定式化」されるのに対して,
引用発明では,「割り当てられなかった物理リソースの数を最大にするために」,「ビン・パッキング問題として定式化する」点。
(2)相違点についての判断
ア.相違点1-4について
上記相違点1-4について検討すると,
本願発明1は,サーバに複数の仮想マシンを配置するものであり,その仮想マシンの各サーバでの配置数に応じて,各サーバで消費される電力を計算し,この各サーバでの消費電力と,各サーバへ電力を供給する電源装置での消費電力の合計消費電力を目的関数とし,これが最小となるように各サーバへの仮想マシンの配置数を決定するというものである。
一方,引用発明は,論理区画に物理リソースを割り当てる際に,割り当てる物理リソースの数をなるべく少なくすることで,消費電力を低減しようとするものであるが,例えば上記「第5 引用文献,引用発明等」の「4.その他の文献について」で引用した引用文献5(特開2011-13822号公報)の段落【0008】に「1台の旧型の物理サーバで仮想マシンをホストするよりも,2台の新型の物理サーバで仮想マシンをホストした方が,消費電力が小さくなる場合がある」と記載されているように,物理リソースの数を最小としても,消費電力が最小になるとは限らないというものである。
そうすると,本願発明1と引用発明とは,前提とする技術的構成が,仮想マシンをサーバに配置するものであるか,論理区画(LPAR)に物理リソースを割り当てるものであるかという点で相違するとともに,消費電力を低減するための具体的な手法の点でも全く相違しており,引用発明からは,本願発明1のような技術的課題は想起し得ない。
してみると,たとえ,
引用文献2に「装置群への作業負荷の割当てや設備の運転能力を適切に制御することにより装置群の電力とさらに設備も合わせた総電力を削減し,データセンタに代表される情報処理システムの省電力運用を実現する」という技術的事項が記載され,
引用文献3に「線形計画問題は,目的関数と制約条件から構成されること」が記載され,
引用文献5に「1台の旧型の物理サーバで仮想マシンをホストするよりも,2台の新型の物理サーバで仮想マシンをホストした方が,消費電力が小さくなる場合がある」と記載されているとしても,
これらの記載から,
引用発明において,
論理区画を仮想マシンに変更し,
物理リソースをサーバに変更し,
サーバへの仮想マシンの配置数に応じて,各サーバで消費される電力を計算し,
各サーバでの消費電力と,各サーバへ電力を供給する電源装置での消費電力の合計消費電力を目的関数とし,これが最小となるように各サーバへの仮想マシンの配置数を決定するように構成することが,当業者が容易に想到することができたとは認められない。
イ.したがって,本願発明1は,当業者であっても,引用発明,引用文献2に記載の発明及び周知技術に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。
2.本願発明2-7について
本願発明2-7は,本願発明1を減縮した発明であり,本願発明1と同一の構成を備えるものであるから,本願発明1と同じ理由により,当業者であっても,引用発明,引用文献2に記載の発明及び周知技術に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。
3.本願発明8-10について
本願発明8-10は,それぞれ本願発明1-3に対応する方法の発明であり,本願発明1-3とカテゴリ表現が異なるだけの発明であるから,本願発明1と同様の理由により,当業者であっても,引用発明,引用文献2に記載の発明及び周知技術に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。
第7 むすび
以上のとおり,原査定の理由によっては,本願を拒絶することはできない。
また,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって,結論のとおり審決する。
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