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特許拒絶査定不服審判

2016-000724

画像符号化装置、画像復号装置及びそれらのプログラム

審判番号
2016-000724
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2015-525679外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
請求日
2016年01月15日
審決日
2017年04月17日
公報発行日
2017年06月30日
結論
原査定取消(特許/登録すべき)
当事者
審判長/審判官
分類
P18 .121-WY (H04N) / P18 .536-WY (H04N) / P18 .537-WY (H04N)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項
データ出所
審決公報(SGML)

事件の表示

特願2015-525679「画像符号化装置、画像復号装置及びそれらのプログラム」拒絶査定不服審判事件〔平成27年 4月 2日国際公開、WO2015/045736、請求項の数(6)〕について、次のとおり審決する。

結論

【結 論】 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。

理由

【理 由】 第1 手続の経緯 本願は、2014年8月29日(優先権主張2013年9月30日 日本国)を国際出願日とする出願であって、平成27年7月8日付けで拒絶理由が通知され、平成27年8月31日付けで手続補正がされ、平成27年11月11日付けで拒絶査定がされたものである。 本件は、上記拒絶査定を不服として、平成28年1月15日付けで請求された拒絶査定不服審判であり、当審において、平成28年12月22日付けで拒絶理由(以下、「当審拒絶理由」という。)が通知され、平成29年2月15日付けで手続補正がされたものである。 第2 本願発明 本願の請求項1ないし6に係る発明は、平成29年2月15日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1ないし6に記載された事項により特定される以下のものと認められる。 なお、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)のA~Dについては、説明のために当審にて付したものである。 (以下、「構成A」、「構成B」・・・という。) 「 【請求項1】 A 変換ブロックに対する直交変換をスキップするか否かを判定する判定部と、 B 前記直交変換をスキップすると判定され、かつ、前記変換ブロックが所定サイズを有するという第1条件が満たされた場合に、或いは、異なる粗さを有する要素によって構成される第2の量子化行列を適用しない旨を行列適用フラグが示すという第2条件が満たされた場合に、等しい粗さを有する要素によって構成される第1の量子化行列を用いて、前記変換ブロックの量子化を行う量子化部とを備え、 C 前記量子化部は、前記変換ブロックが所定サイズを有しておらず、かつ、前記第2条件が満たされていない場合に、前記第2の量子化行列を用いて、前記直交変換が行われた変換ブロックの量子化を行う D ことを特徴とする画像符号化装置。 【請求項2】 前記第1の量子化行列を構成する要素は、前記画像符号化装置及び画像復号装置によって予め共有された値であり、 前記第2の量子化行列を構成する要素は、前記画像復号装置に伝送される値であることを特徴とする請求項1に記載の画像符号化装置。 【請求項3】 変換ブロックに対する逆直交変換をスキップするか否かを判定する判定部と、 前記逆直交変換をスキップすると判定され、かつ、前記変換ブロックが所定サイズを有するという第1条件が満たされた場合に、或いは、異なる粗さを有する要素によって構成される第2の量子化行列を適用しない旨を行列適用フラグが示すという第2条件が満たされた場合に、等しい粗さを有する要素によって構成される第1の量子化行列を用いて、前記変換ブロックの逆量子化を行う逆量子化部とを備え、 前記逆量子化部は、前記変換ブロックが所定サイズを有しておらず、かつ、前記第2条件が満たされていない場合に、前記第2の量子化行列を用いて、前記変換ブロックの逆量子化を行うことを特徴とする画像復号装置。 【請求項4】 前記第1の量子化行列を構成する要素は、画像符号化装置及び前記画像復号装置によって予め共有された値であり、 前記第2の量子化行列を構成する要素は、前記画像符号化装置から伝送される値であることを特徴とすることを特徴とする請求項3に記載の画像復号装置。 【請求項5】 コンピュータを、請求項1又は請求項2に記載の画像符号化装置として機能させるためのプログラム。 【請求項6】 コンピュータを、請求項3又は請求項4に記載の画像復号装置として機能させるためのプログラム。」 第3 拒絶査定(以下、「原査定」という。)の理由について 1.原査定の理由の概要 本願発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 記 引用例1.Yoshitaka Morigami, Kazushi Sato, Toshiyasu Sugio, Hisao Sasai, "On Transform Skip", Joint Collaborative Team on Video Coding (JCT-VC) of ITU-T SG16 WP 3 and ISO/IEC JTC 1/SC 29/WG 11 10th Meeting: Stockholm, SE, 11-20 July 2012, [JCTVC-J0184] 引用例2.Cuiling Lan, Jizheng Xu, Gary J. Sullivan, Feng Wu, "Intra transform skipping", Joint Collaborative Team on Video Coding (JCT-VC) of ITU-T SG 16 WP 3 and ISO/IEC JTC 1/SC 29/WG 11 9th Meeting: Geneva, CH, 27 April - 7 May 2012, [JCTVC-I0408] 2.原査定の理由の判断 (1)引用例の記載事項 (1-1)引用例1 原査定の拒絶の理由に引用例1として引用された「Yoshitaka Morigami, Kazushi Sato, Toshiyasu Sugio, Hisao Sasai, "On Transform Skip", Joint Collaborative Team on Video Coding (JCT-VC) of ITU-T SG16 WP 3 and ISO/IEC JTC 1/SC 29/WG 11 10th Meeting: Stockholm, SE, 11-20 July 2012, [JCTVC-J0184]」には、以下の事項が記載されている。 なお、仮訳は、当審にて訳したものである。 ア.「In the 9th JCTVC meeting Transform Skipping for Intra TUs has been proposed by JCTVC-I0408.」(page:1 Abstract) (仮訳) 「第9回JCTVC会合において、イントラTUに対する変換スキップは、JCTVC-I0408によって提案されている。」 イ.「8.6.3 Scaling process for transform coefficients ... The scaling factor mij is derived as follows. - If scaling_list_enable_flag is equal to 0 or transform_skip_flag[x0][y0][cIdx]is equal to 1, mij=16                      (8-245) - Otherwise(scaling_list_enable_flag is equal to 1 and transform_skip_flag[x0][y0][cIdx]is equal to 0), mij=ScalingFactor[SizeID][RefMatrixID][trafoType][i*nW+j] (8 246)」(page:9 下から7行~page:10 1行) (仮訳) 「8.6.3 変換係数のためのスケーリングプロセス ... スケーリングファクタmijは、次のように導かれる。 -もし、scaling_list_enable_flagが0に等しい、或いは、transform_skip_flag[x0][y0][cIdx]が1に等しいのであれば、 mij=16(8-245)である。 -さもなければ(scaling_list_enable_flagが1に等しく、かつ、transform_skip_flag[x0][y0][cIdx]が0に等しい。)、 mij=ScalingFactor[SizeID][RefMatrixID][trafoType][i*nW+j](8 246)である。」 上記記載ア.、イ.並びにこの分野における技術常識を考慮すると、引用例1には、以下の発明(以下、「引用発明」という。)が開示されている。 なお、引用発明のa,bについては、説明のために当審にて付したものである。(以下、「構成a」、「構成b」という。) 「a イントラTUに対する変換スキップに関し、変換係数のためのスケーリングファクタmijは、transform_skip_flag[x0][y0][cIdx]が1に等しい場合、或いは、scaling_list_enable_flagが0に等しい場合に、mij=16とし、 b transform_skip_flag[x0][y0][cIdx]が0に等しく、かつ、scaling_list_enable_flagが1に等しい場合に、mij=ScalingFactor[SizeID][RefMatrixID][trafoType][i*nW+j]とするスケーリングプロセス。」 (1-2)引用例2 原査定の拒絶の理由に引用例2として引用された「Cuiling Lan, Jizheng Xu, Gary J. Sullivan, Feng Wu, "Intra transform skipping", Joint Collaborative Team on Video Coding (JCT-VC) of ITU-T SG 16 WP 3 and ISO/IEC JTC 1/SC 29/WG 11 9th Meeting: Geneva, CH, 27 April - 7 May 2012, [JCTVC-I0408]」には、以下の事項が記載されている。 なお、仮訳は、当審にて訳したものである。 ウ.「For a 4x4 intra TU(both luma and chroma),we enable it to skip transform.」(page:1 下から12行) (仮訳) 「4×4のイントラTU(輝度と色差の両方)に対して、我々は変換をスキップすることを可能にする。」 エ.「We also tested transform skipping for TUs with larger sizes. The summary results are shown in Table 3. From the table, we can see that transform skipping for 4x4 TUs can obtain most gain of applying it to all TUs. While only applying transform skipping for 4x4 TUs can make the modification at the decoder simple and also reduce the encoder complexity on the decision for transform skipping.」(page:4 1~4行) (仮訳) 「我々は、より大きなサイズのTUに対する変換スキップもテストした。まとめた結果は、表3に示されている。その表から、4×4のTUに対する変換スキップが、全てのTUに対して、その適用の大部分の利得を得られることが理解できる。しかるに、4×4のTUに対する変換スキップを適用するだけで、デコーダを単純に変更でき、変換スキップに対する決定についてのエンコーダの複雑さも減らすことができる。」 上記記載エ.によれば、「より大きなサイズのTUに対する変換スキップもテスト」していることから、上記記載ウ.のように、4×4のTUに対してだけでなく、4×4よりも大きなサイズのTUに対して変換スキップを行うことも想定しているといえる。 すなわち、引用例2から、『4×4及び4×4よりも大きなサイズのTUに対して変換スキップをする』技術が開示されているといえる。 (2)対比 本願発明と引用発明を対比する。 (2-1)本願発明の構成Aについて 引用発明の「transform_skip_flag[x0][y0][cIdx]」は、直交変換をスキップするか否かのフラグである。そして、当該フラグが1か0かにより直交変換をスキップするか否かを判定して、スケーリングファクタmijの値を決定するものであるから、引用発明においても、そのようなフラグを判定する判定部を備えるものといえる。また、直交変換は、TUつまり変換ブロックに対して行われている。 そうすると、引用発明と本願発明の構成Aは、一致する。 (2-2)本願発明の構成Bについて 引用発明の構成aの「transform_skip_flag[x0][y0][cIdx]が1に等しい場合」は、直交変換をスキップする場合であり、本願発明の「前記直交変換をスキップすると判定され」た場合に対応する。 構成aの「scaling_list_enable_flag」は、スケーリングリストを適用するか否かのフラグであり、当該フラグが1か0かによりスケーリングリストを適用するか否かを決定するものである。 そして、構成aにより、「scaling_list_enable_flagが0に等しい場合に、mij=16」、すなわち、当該フラグが0に等しい場合、スケーリングファクタmijの全ての要素を等しい要素にしている。また、構成bにより、当該フラグが1に等しい場合、mij=ScalingFactor[SizeID][RefMatrixID][trafoType][i*nW+j]、すなわち、スケーリングファクタmijは異なる要素にしている。 そうすると、引用発明の構成aの「scaling_list_enable_flagが0に等しい場合」とは、スケーリングファクタmijの全ての要素を等しい要素にすること、すなわち、異なる要素の行列にしないことであるので、本願発明の「異なる粗さを有する要素によって構成される第2の量子化行列を適用しない旨を行列適用フラグが示すという第2条件が満たされた場合」に相当する。 構成aの「mij=16と」することは、先に検討したように、全ての要素を等しい要素にすることであるから、本願発明の「等しい粗さを有する要素によって構成される第1の量子化行列を用いて、前記変換ブロックの量子化を行う」ことに相当する。 したがって、引用発明の構成aと本願発明の構成Bは、「異なる粗さを有する要素によって構成される第2の量子化行列を適用しない旨を行列適用フラグが示すという第2条件が満たされた場合に、等しい粗さを有する要素によって構成される第1の量子化行列を用いて、前記変換ブロックの量子化を行う量子化部とを備え」る点で共通する。 しかし、第2条件が満たされた場合以外の第1の量子化行列を用いる条件に関して、引用発明は、「transform_skip_flag[x0][y0][cIdx]が1に等しい」という条件のみ、すなわち、本願発明の「前記直交変換をスキップすると判定され」という条件のみであるのに対し、本願発明は、「前記直交変換をスキップすると判定され、かつ、前記変換ブロックが所定サイズを有するという第1条件が満たされた場合」という条件である点で相違する。 (2-3)本願発明の構成Cについて 引用発明の構成bの「transform_skip_flag[x0][y0][cIdx]が0に等しく」とは、直交変換をスキップしない場合である。 構成bの「scaling_list_enable_flagが1に等しい場合」とは、構成aの「scaling_list_enable_flagが0に等しい場合」と反対のことを示すものである。 そして、上記(2-2)で検討したように、構成aの「scaling_list_enable_flagが0に等しい場合」が、本願発明の「異なる粗さを有する要素によって構成される第2の量子化行列を適用しない旨を行列適用フラグが示すという第2条件が満たされた場合」に相当する。 よって、構成bの「scaling_list_enable_flagが1に等しい場合」は、本願発明の「前記第2条件が満たされていない場合」に相当する。 構成bの「mij=ScalingFactor[SizeID][RefMatrixID][trafoType][i*nW+j]とする」ことは、スケーリングファクタmijを異なる要素にすることであり、本願発明の「第2の量子化行列」にすることに対応する。 そして、構成bは、直交変換をスキップしないのであるから、直交変換が行われているといえ、量子化行列を用いるのであるから、変換ブロックの量子化を行うものといえる。 また、引用発明においても、スケーリングファクタmijは、変換ブロックの量子化を行う際の量子化係数であるから、そのような量子化を行う量子化部を備えているといえる。 したがって、引用発明の構成bと本願発明の構成Cは、「前記量子化部は、ある条件が成立し、かつ、前記第2条件が満たされていない場合に、前記第2の量子化行列を用いて、前記直交変換が行われた変換ブロックの量子化を行う量子化部」という点で共通する。 しかし、ある条件が成立することに関して、引用発明は、「transform_skip_flag[x0][y0][cIdx]が0に等し」い場合であるのに対し、本願発明の構成Cは、「前記変換ブロックが所定サイズを有して」いない場合である点で相違する。 (2-4)本願発明の構成Dについて 引用発明は、画像を符号化する際に行われる制御であるから、本願発明のように、「画像符号化装置」での制御といえるので、引用発明は、本願発明の構成Dに相当する構成を有する。 (2-5)一致点・相違点 したがって、上記(2-1)~(2-4)により、本願発明と引用発明は、以下の点で一致ないし相違している。 (一致点) 「変換ブロックに対する直交変換をスキップするか否かを判定する判定部と、 異なる粗さを有する要素によって構成される第2の量子化行列を適用しない旨を行列適用フラグが示すという第2条件が満たされた場合に、等しい粗さを有する要素によって構成される第1の量子化行列を用いて、前記変換ブロックの量子化を行う量子化部とを備え、 前記量子化部は、ある条件が成立し、かつ、前記第2条件が満たされていない場合に、前記第2の量子化行列を用いて、前記直交変換が行われた変換ブロックの量子化を行うことを特徴とする画像符号化装置。」 (相違点1) 第2条件が満たされた場合以外の第1の量子化行列を用いる条件に関して、本願発明は、「前記直交変換をスキップすると判定され、かつ、前記変換ブロックが所定サイズを有するという第1条件が満たされた場合」という条件であるのに対し、引用発明は、「transform_skip_flag[x0][y0][cIdx]が1に等しい」という条件である点。 (相違点2) 第2の量子化行列を用いる場合のある条件に関して、本願発明は、「前記変換ブロックが所定サイズを有して」いない場合であるのに対し、引用発明は、「transform_skip_flag[x0][y0][cIdx]が0に等し」い場合である点。 (3)判断 相違点1について検討する。 上記(2-2)で検討したように、引用発明の「transform_skip_flag[x0][y0][cIdx]が1に等しい」という条件は、本願発明の「前記直交変換をスキップすると判定され」という条件に対応するので、相違点1は、本願発明は、「前記直交変換をスキップすると判定され」、かつ、「前記変換ブロックが所定サイズを有するという第1条件が満たされた場合」であるのに対し、引用発明は、「前記直交変換をスキップすると判定され」た場合のみであり、変換ブロックのサイズについての条件はない点といえる。 本願発明は、明細書に「なお、上述の各実施形態では、変換ブロックが変換スキップできるものであるときの例として、当該変換ブロックのサイズが4×4であるときを例に挙げたが、その他のサイズあってもよいし、該当するサイズが複数あってもよい。」(段落0159)と記載されているように、変換ブロックのサイズが4×4以外の場合にも、変換スキップできることを想定している。 そして、請求人は、平成29年2月15日付け意見書で、 「特に、国際標準化の場で採用される画像符号化方式では、処理負荷の観点から、全ての処理を常に適用するのではなく、最も効果がある場合にのみ特定の処理を適用し、多少の効果がある場合であってもそれ以外の場合には当該特定の処理を適用しないという制御が行われるのが一般的である。 このような観点から、補正後の請求項1に係る発明(以下、本発明)は、第1条件(及び第2条件)が満たされる場合を最も効果がある場合と考えて、所定サイズを有しており直交変換スキップが適用されている変換ブロックに対して第1の量子化行列(デフォルト量子化行列)を用いて量子化を行うように構成されており、所定サイズを有しない変換ブロックについては、直交変換スキップが適用されているブロックであっても、第2の量子化行列(伝送量子化行列)を用いて量子化を行うように構成されている。」 と主張するように、本願発明は、変換ブロックのサイズが4×4以外の場合にも、変換スキップが適用されているが、処理負荷の観点から、特に、「前記直交変換をスキップすると判定され、かつ、前記変換ブロックが所定サイズを有するという第1条件が満たされた場合」に、等しい粗さを有する要素によって構成される第1の量子化行列を用い、それ以外のサイズの場合には、変換スキップが適用されているブロックであっても、第2の量子化行列(伝送量子化行列)を用いて量子化を行うように構成したものである。 引用例1には、上記(1-1)ア.で摘出したように、「第9回JCTVC会合において、イントラTUに対する変換スキップは、JCTVC-I0408によって提案されている。」ことが記載されている。 そして、当該JCTVC-I0408についての文献である引用例2には、上記(1-2)で検討したように、『4×4及び4×4よりも大きなサイズのTUに対して変換スキップをする』技術が開示されている。 したがって、引用例2に記載された技術より、引用発明においても、様々なサイズのイントラTUに対して、変換スキップを可能にすることは、容易に想到し得るものである。 しかし、引用発明において、様々なサイズのイントラTUに対して、変換スキップを可能にする構成であっても、「前記直交変換をスキップすると判定され」た場合に、第1の量子化行列を用いるように設計するものであり、請求人が主張するように、「第1条件(及び第2条件)が満たされる場合を最も効果がある場合と考えて、所定サイズを有しており直交変換スキップが適用されている変換ブロックに対して第1の量子化行列(デフォルト量子化行列)を用いて量子化を行うように構成されており、所定サイズを有しない変換ブロックについては、直交変換スキップが適用されているブロックであっても、第2の量子化行列(伝送量子化行列)を用いて量子化を行うように構成」すること、すなわち、所定サイズを有しない場合には、直交変換スキップが適用されていても、第2の量子化行列を用いるようなことは想定し得ないものである。 したがって、引用発明と引用例2に記載された技術から、「前記直交変換をスキップすると判定され」るだけでなく、変換ブロックが所定サイズを有するという条件をわざわざ考慮するように設計することの動機付けがなく、「前記直交変換をスキップすると判定され、かつ、前記変換ブロックが所定サイズを有するという第1条件が満たされた場合」とすることが容易に想到し得るものであるとはいえない。 (4)小活 したがって、本願発明は、当業者が引用発明及び引用例2に記載された技術に基づいて容易に発明をすることができたとはいえない。 本願の請求項2に係る発明は、本願発明をさらに限定した発明であり、請求項3に係る発明は、本願発明の画像符号化装置に対応する画像復号装置であり、請求項4に係る発明は、請求項3に係る発明をさらに限定した発明であり、請求項5に係る発明は、コンピュータを、請求項1又は請求項2に記載の画像符号化装置として機能させるためのプログラムの発明であり、請求項6に係る発明は、コンピュータを、請求項3又は請求項4に記載の画像復号装置として機能させるためのプログラムの発明であり、上記相違点1と同様の相違点を有するから、いずれの発明も本願発明と同様に、当業者が引用発明及び引用例2に記載された技術に基づいて容易に発明をすることができたとはいえない。 第4 当審拒絶理由について 1.当審拒絶理由の概要 (1)第36条第6項第1号に関して 明細書の記載によれば、発明の課題を解決するためには、直交変換スキップを適用したブロックは、そのサイズに関わらず、量子化の粗さを高域であるほど粗くなるような伝送量子化行列を適用せずに、デフォルト量子化行列を適用すればよいと考えられるが、請求項に係る発明は、直交変換スキップを適用した場合でも、サイズが所定ではない場合には、伝送量子化行列を適用しており、発明の課題を解決するための手段が反映されていない。 (2)第36条第4項第1号に関して 発明の課題は、直交変換を行っていないブロックについて、量子化の粗さを高域であるほど粗くなるような伝送量子化行列を適用すると、画質が劣化するというものであるが、実施例は、サイズが4×4でなければ(図6のSa6がNO、図9のSa6がNO、図11のSa6がNO、図14のSa6がNO、図17のSg3がNO)、伝送量子化行列を適用することとなっており、サイズが4×4でない場合で直交変換スキップを適用したブロックについても、伝送量子化行列を適用するものとなるので、明細書には、どのように課題が解決されたかについて記載されていない。 (3)第36条第6項第2号に関して (3-1)請求項1に係る発明について 「前記直交変換をスキップすると判定され、かつ、前記符号化対象ブロックが所定サイズを有するという第1条件」は、4×4のサイズのときのみ直交変換スキップを適用することを踏まえると、同じ判定を2回行っていることとなり、判定を2段階にする意義が不明であり、請求項1に係る発明が不明確であるし、段落0159の記載を考慮した場合についても、請求項1に係る発明が不明確である。 (3-2)請求項3に係る発明について 「前記逆量子化部は、前記符号化対象ブロックが所定サイズを有しておらず」と記載されているが、当該記載より前に「符号化対象ブロック」という記載がなく、不明瞭な記載である。 2.当審拒絶理由の判断 (1)第36条第6項第1号、第36条第4項第1号に関して 上記1.の(1)と(2)をまとめて検討する。 請求人は、平成29年2月15日付け意見書で、 『本願発明は、変換ブロックのサイズが4×4以外の場合にも、変換スキップが適用されているが、処理負荷の観点から、最も効果がある場合と考えられている「前記直交変換をスキップすると判定され、かつ、前記変換ブロックが所定サイズを有するという第1条件が満たされた場合」に、等しい粗さを有する要素によって構成される第1の量子化行列を用い、それ以外のサイズの場合には、変換スキップが適用されているブロックであっても、第2の量子化行列(伝送量子化行列)を用いて量子化を行うように構成したものである。 このように、最も効果のあるサイズに対して本願発明の構成を採用することにより、処理全体として見れば、「直交変換を行ったブロックと直交変換を行わないブロックとが混在しているときに、主観的な画質が劣化してしまう」という課題を解決することができる。』 旨の主張をしており、当該主張は妥当なものである。 よって、第36条第6項第1号、第36条第4項第1号に関しての当審拒絶理由は解消した。 (2)第36条第6項第2号に関して (2-1)請求項1に係る発明について 請求人が、平成29年2月15日付け意見書で 「段落【0159】の記載は、直交変換スキップを適用することができる変換ブロックのサイズは4×4だけではないことを意図しており、本発明によれば、4×4、8×8、16×16、32×32の少なくとも1つのサイズの変換ブロックに対して直交変換スキップを適用することができる。 (中略) 本発明によれば、直交変換スキップを適用することができる変換ブロックのサイズ及び所定サイズが異なる場合であっても、同一の構成で実現できるため、『直交変換をスキップする判定』及び『変換ブロックが所定サイズを有する判定』の2種類が存在する技術的意義は存在する。」 と主張するように、変換ブロックのサイズが4×4のサイズのときのみでなく、4×4以外のサイズの場合にも、変換スキップできるものを想定しているので、判定を2段階にする技術的意義は存在する。 (2-2)請求項3に係る発明について 平成29年2月15日付けの手続補正により、請求項3の「復号対象ブロック」、「符号化対象ブロック」が、ともに、「変換ブロック」という記載に補正された。 よって、第36条第6項第2号に関しての当審拒絶理由は解消した。 (3)まとめ 上記(1)、(2)に示したように、当審拒絶理由は、全て解消した。 第5 むすび 以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することができない。 また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。

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2016-000724

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