特許拒絶査定不服審判
2016-000491
インサート成形体
- 審判番号
- 2016-000491
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2011-250729外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2016年01月12日
- 審決日
- 2017年04月11日
- 公報発行日
- 2017年07月28日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】ポリプラスチックス株式会社
- 【請求人代理人】正林 真之
- 分類
- P18 .113-Z (B29C) / P18 .121-Z (B29C) / P18 .575-Z (B29C)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条1項3号特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第29条第1項第3号、特許法第17条の2第6項、特許法第162条、特許法第17条の2第5項第2号
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2011-250729「インサート成形体」拒絶査定不服審判事件〔平成25年 5月30日出願公開、特開2013-103472〕について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
本願は、平成23年11月16日の出願であって、平成27年3月9日付けで拒絶理由が通知され、同年5月15日に意見書及び特許請求の範囲についての手続補正書が提出されたが、同年10月15日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、平成28年1月12日に拒絶査定不服審判が請求されると同時に特許請求の範囲についての手続補正書が提出されたので、特許法162条所定の審査がされた結果、同年3月15日付けで同法164条3項所定の報告がされ、同年10月21日に請求人より上申書が提出されたものである。
第2 補正の却下の決定
[結論]
平成28年1月12日付けの手続補正を却下する。
[理由]
1 平成28年1月12日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)の内容
本件補正は、特許請求の範囲を変更する補正であって、本件補正の前後における特許請求の範囲の請求項4の記載は、それぞれ以下のとおりである。
・ 本件補正前
「【請求項4】
樹脂部材と、インサート部材と、を備え、
前記樹脂部材は、ウエルド部又は溶着部を有し、前記インサート部材上に形成され、
前記ウエルド部又は前記溶着部の近傍であって、前記インサート部材の表面に薄肉部、コーナー部、溝部、凹部又は凸部が形成される、インサート成形体。」
・ 本件補正後
「【請求項4】
射出成形体である樹脂部材と、金属部材であるインサート部材と、を備え、
前記樹脂部材は、ウエルド部又は溶着部を有し、前記インサート部材上に形成され、
前記ウエルド部又は前記溶着部の近傍であって、前記インサート部材の表面に薄肉部、コーナー部、溝部、凹部又は凸部が形成される、インサート成形体。」
本件補正は、上記請求項4に係る補正(以後、当該請求項4に係る補正を、「補正事項ア」という。)を含むものである。
2 補正事項アの目的
補正事項アは、補正前の請求項4に記載された発明を特定するために必要な事項である「樹脂部材」及び「インサート部材」について、それぞれ「射出成形体である樹脂部材」及び「金属部材であるインサート部材」へ補正するものであって、しかも、補正の前後で、請求項4に記載の発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題は変わらないから、当該補正事項アは、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
なお、補正事項アは、いわゆる新規事項を追加するものではないと判断される。
3 独立特許要件違反の有無について
上記2のとおりであるから、本件補正後の請求項4に記載された発明(以下「本願補正発明4」という。下記4)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(補正事項アが、特許法第17条の2第6項で準用する同法第126条第7項の規定に適合するか。いわゆる独立特許要件違反の有無)について検討するところ、補正事項アは当該要件に違反すると判断される。
すなわち、本願補正発明4は、下記引用文献に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
引用文献 : 特開2010-274439号公報
以下、特許を受けることができない理由を、下記5において詳述する。
なお、引用文献は、平成27年3月9日付け拒絶理由通知における引用文献1である。
4 本願補正発明4
本願補正発明4は、平成28年1月12日に提出された手続補正書の特許請求の範囲の請求項4に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。
本願補正発明4
「射出成形体である樹脂部材と、金属部材であるインサート部材と、を備え、
前記樹脂部材は、ウエルド部又は溶着部を有し、前記インサート部材上に形成され、
前記ウエルド部又は前記溶着部の近傍であって、前記インサート部材の表面に薄肉部、コーナー部、溝部、凹部又は凸部が形成される、インサート成形体。」
5 本願補正発明4が特許を受けることができない理由
(1) 引用文献の記載事項
本願の出願前に頒布された刊行物であることが明らかな特開2010-274439号公報(以下、単に「引用文献」という。)には、以下の事項が記載されている。なお、下線については、当審において付与した。
ア 「【請求項1】
成形品に有する枠状部の任意の一辺にある充填末端部を中心として左右にそれぞれ1つ以上設けた樹脂の流動規制部とを備えたことを特徴とする射出成形金型装置。
【請求項5】
前記流動規制部それぞれの上部に配置され樹脂の流れを分断する抜き曲げ形状の連結開口穴と、前記充填末端部の上部に配置される連結穴を有し、前記樹脂に挟み込まれて成形品と一体なるインサート部品を備え、前記連結開口穴と前記連結穴により前記充填末端部への樹脂の流れを創出することを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載の射出成形金型装置。」(特許請求の範囲の請求項1、5)
イ 「【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、前記従来の構成における図12(a)に示すような製品では、流動規制部20を設けそれによって金型内の成形空間の流路断面積を絞り、片側からの樹脂の流れを止めるため、樹脂の流動を止めた側のフローフロント(流動先端部)では、もう一方から流れてくる樹脂のフローフロントより先に冷却固化を始める。そのため、樹脂の会合部分では強いウェルドラインが発生するという課題を有している。ウェルドラインとは、2つ以上のフローフロントが会合した場所に発生するVノッチ状や糸状の細い線状痕をいう。
また、図12(b)で示す成形品形状の-Y方向と+Z方向の面が製品外観面で、流動規制部20で片側からの樹脂の流れが止められるため、充填末端部が流動規制部20により流路断面積を絞られた流動規制部20の上部35になり、前述したウェルドラインが製品外観面(流動規制部の上部35)に発生し外観不良となる課題を有している。
さらに、図13(a),(b)で示すように、この流動規制部20の形状自体が、製品の外観面に露出されてしまい製品の外観を損ねるという課題も有している。
本発明は、前記従来の課題を解決するものであり、流動規制部の形状が製品の外観面に露出されることなく、また、樹脂の流れを止めることなく制限することで充填末端部を制御するため、強いウェルドラインの発生を抑え、製品の外観面に樹脂の充填末端部が発生することを防止する射出成形金型装置を提供することを目的とする。」(段落【0005】~【0008】)
ウ 「(実施の形態3)
図7(a)は本発明の実施の形態3における枠状部内にインサート部品を有する成形品を示す図、図7(b)は流動規制部近傍の拡大斜視図、図7(c)はインサート部品の拡大斜視図、図8は本実施の形態3における充填末端部の樹脂流動の工程(a)~(e)のフロー図である。
図7(a)に示すように、実施の形態1における成形品1に有する枠状部2内の開口4がインサート部品11で構成されている。図7(b)に示すように、インサート部品11は枠状部2の樹脂に挟み込まれる形で成形品12と一体となっている。また図7(c)に示すように、インサート部品11には樹脂の流動を誘導する抜き曲げ形状13と、連結穴14と抜き曲げ形状13を打ち抜いて作成するときにできる連結開口穴15を有している。
図8において、図4,6と同じ構成要素については同じ符号を用い、重複する説明を省略する。工程(a)~(e)は充填末端部6の正面,左側面,下側面方向での樹脂の流れを時系列で表している。
図7に示すゲート部3より射出された樹脂は成形空間を流れ、インサート部品11で区切られた+Z方向と-Z方向の2つの成形空間を流れながら流動規制部20を有する充填末端部6に到達する。
図8の工程(a)では、正面,下側面方向で樹脂のフローフロントは左右両側から充填末端部6に向け進行していく。左側面方向のF-F断面には樹脂のフローフロントはまだ到達していない。
・・・
下側面方向では、+Z方向の成形空間は、インサート部品11の抜き曲げ形状13と接触する。インサート部品11の抜き曲げ形状13は、この抜き曲げ形状13を打ち抜いて作成するときにできる+Z方向と-Z方向の成形空間をつなげる連結開口穴15を有している。この連結開口穴15より、+Z方向の成形空間を流れる樹脂のフローフロントは-Z方向の成形空間に流れ込もうとするが、-Z方向の成形空間からも+Z方向の成形空間に樹脂が流れ込んでくるためこの連結開口穴15の位置で+Z方向の樹脂と-Z方向の樹脂のフローフロントが会合する。
-Z方向の成形空間は、流動規制部20の三角形状により成形品12の+Z方向に流路が規制される。そのため、流動規制部20に接触した樹脂のフローフロントは流動規制部20の形状に沿って流れ、成形品12の+Z方向に進行していく。しかし、流動規制部20の頂点付近には、インサート部品11の抜き曲げ形状13と+Z方向と-Z方向の成形空間をつなぐ連結開口穴15があり、抜き曲げ形状13により+Z方向の成形空間に流れ込む樹脂と-Z方向の成形空間に流れ込む樹脂の流れに分断される。
左側面方向のF-F断面には樹脂のフローフロントはまだ到達していない。
図8の工程(c)では、正面,下側面方向で樹脂のフローフロントは左右両側からおのおのの流動規制部20,抜き曲げ形状13の形状を越えて進行していく。
正面方向では、+Z方向の成形空間は、充填末端部6付近のF-F断面で左右方向からの樹脂のフローフロント同士が会合する。
-Z方向の成形空間は、実施の形態1における図4の工程(c)の正面方向の流れとほぼ同様となる。
下側面方向では、+Z方向の成形空間は、インサート部品11の抜き曲げ形状13により分断された-Z方向の樹脂が連結開口穴15を介して流れ込んでくる。これにより+Z方向の成形空間を流れる樹脂の流れは、成形品12の+Z方向の部分が先行して流れ、充填末端部6付近のF-F断面で左右方向からの樹脂のフローフロントは成形品12の+Z方向の部分から会合する。
-Z方向の成形空間は、インサート部品11の抜き曲げ形状13により流れが分断されるものの、その後は、実施の形態1における図4の工程(c)の下側面方向の流れとほぼ同様となる。
左側面方向のF-F断面は、成形品12の+Z方向から樹脂が充填され、成形品12の-Z方向に向けて流れは進行していく。
図8の工程(d)では、正面,下側面方向で樹脂のフローフロントは左右両側から充填末端部6付近で会合する。
正面方向では、+Z方向の成形空間は、F-F断面の位置で樹脂の充填が完了する。
-Z方向の成形空間は、実施の形態1における図4の工程(d)の正面方向の流れとほぼ同様となる。
下側面方向では、+Z方向の成形空間は樹脂の充填が完了し、左右方向の樹脂の会合部分にある連結穴14から-Z方向に向けて樹脂が流れ込む。-Z方向は、左右両側の先行している成形品12の+Z方向の樹脂のフローフロントと、インサート部品11の連結穴14を介して-Z方向の成形空間に流れ込む樹脂のフローフロントが、充填末端部6付近で成形品12の+Z方向から-Z方向に向けて会合していく。会合した樹脂は成形品12の+Z方向から-Z方向に進む流れへと方向を変え進行していく。
左側面方向のF-F断面は、成形品12の+Z方向から、成形品12の-Z方向に向けて流れが進行し、+Z方向の成形空間が充填された後、インサート部品11の連結穴14を介して、-Z方向の成形空間へと、成形品12の+Z方向から、成形品12の-Z方向に向けて進行していく。
図8の工程(e)では、正面,下側面,左側面方向共に樹脂の充填は完了する。
正面方向では、+Z方向の成形空間はF-F断面の位置で樹脂の充填が完了する。
-Z方向の成形空間は、枠状部2の内周側でF-F断面の位置が最終の充填末端部6となり樹脂の充填を完了する。
下側面方向では、+Z方向の成形空間は樹脂の充填が完了し、左右方向の樹脂の会合部分にある連結穴14から-Z方向に向けて樹脂が流れ込む。
-Z方向の成形空間は、左右方向からの樹脂のフローフロントと+Z方向からの樹脂のフローフロントが充填末端部6付近で会合し成形品12の-Z方向でF-F断面の位置が最終充填末端部6となり樹脂の充填を完了する。
左側面方向では、枠状部2の内周側で成形品12の-Z方向でF-F断面の位置が最終の充填末端部6となり樹脂の充填を完了する。
インサート部品11があっても、このような樹脂の流れを流動規制部20とインサート部品11により創出することで、充填末端部6を制御するため、強いウェルドラインの発生を抑え、成形品12の外観面に樹脂の充填末端部6が発生することを防止することが可能となる。」(段落【0057】~【0085】)
エ 「
」(図7、8)
(3)引用文献に記載された発明
引用文献には、上記(2)ア~エ、特にアの請求項1を引用する請求項5の射出成形装置で成形されたインサート成形体として、
「成形品に有する枠状部の任意の一辺にある充填末端部を中心として左右にそれぞれ1つ以上設けた樹脂の流動規制部を備えた射出成形金型により成形され、前記流動規制部それぞれの上部に配置され樹脂の流れを分断する抜き曲げ形状の連結開口穴と、前記充填末端部の上部に配置される連結穴を有し、前記樹脂に挟み込まれて成形品と一体なるインサート部品を備え、前記連結開口穴と前記連結穴により前記充填末端部への樹脂の流れを創出する射出成形金型装置により成形されたインサート成形体。」に係る発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されていると認める。
また、上記(2)ウ、エに記載の実施の形態3で成形されたインサート成形体として、
「インサート部品11は、枠状部2の樹脂に挟み込まれる形で成形品と一体となっており、インサート部品11には、樹脂の流動を誘導する抜き曲げ形状13と、連結穴14と、抜き曲げ形状13を打ち抜いて作成するときにできる連結開口穴15を有し、充填末端部6の左右両側に流動規制部20を有している射出成形金型装置により成形されたインサート成形体。」に係る発明(以下、「引用発明2」という。)が記載されていると認める。
(4)本願補正発明4と引用発明1との対比・判断
引用発明1における「インサート成形体」は、射出成形金型装置により成形されているから、本願補正発明4の「射出成形体である樹脂部材」を有していることは明らかである。
引用発明1における「充填末端部」は、引用文献の上記(2)イの「樹脂の流動を止めた側のフローフロント(流動先端部)では、もう一方から流れてくる樹脂のフローフロントより先に冷却固化を始める。そのため、樹脂の会合部分では強いウェルドラインが発生する・・・本発明は、前記従来の課題を解決するものであり、流動規制部の形状が製品の外観面に露出されることなく、また、樹脂の流れを止めることなく制限することで充填末端部を制御するため、強いウェルドラインの発生を抑え、製品の外観面に樹脂の充填末端部が発生することを防止する」との記載から、本願補正発明4の「ウエルド部」に相当する。
また、引用発明1における「充填末端部」は、インサートによって流れが分断された樹脂が再度合流する部分で形成されるとみるのが自然である(上記(2)エの7図(a)参照)から、本願補正発明4と同様に、「インサート部材上に形成されている」といえる。
引用発明1の射出成形金型装置における「充填末端部を中心として左右にそれぞれ1つ以上設けた樹脂の流動規制部」によって成形されるインサート成形体の対応する樹脂部分は、当該「流動規制部」が設けられている容積分だけ凹部が形成されることになるから(上記(2)エの図7(b)参照のこと)、引用発明1においても、充填末端部(ウエルド部)を中心として左右それぞれにインサート部材と一体となった、インサート部材の表面に樹脂部材の薄肉部が形成されているといえる。また、当該薄肉部は、上記(2)イの「樹脂の流れを止めることなく制限することで充填末端部を制御するため、強いウェルドラインの発生を抑え」との記載によれば、強いウエルドを発生させないように設けられているものであるから、当然に、充填末端部、すなわちウエルド部の近傍に設けられているものと認められる。
そうすると、両者は、
「射出成形体である樹脂部材と、インサート部材と、を備え、
前記樹脂部材は、ウエルド部を有し、前記インサート部材上に形成され、
前記ウエルド部の近傍であって、前記インサート部材の表面に薄肉部が形成される、インサート成形体。」
の点で一致し、以下の点で相違している。
<相違点1>
インサート部材に関し、本願補正発明4は「金属部材である」と特定するのに対し、引用発明1は、この点を特定しない点。
以下、相違点について検討する。
相違点1について
引用発明1に用いられているインサート部材は、引用発明1の課題である「強いウエルドラインの発生を抑えること」においての、ウエルドラインの発生原因となっているもの(インサート部材が存在することで初めてウエルドラインが発生する)であって、かかるウエルドラインは、当該インサート部材の材質によらず発生するものである。
そして、インサート部材として、金属部材を利用することは周知慣用な事項(要すれば、特開2010-46832号公報、特開2009-220420号公報、特開2010-195000号公報、特開2006-159862号公報参照のこと)である。
そうすると、引用発明1のインサート部材として周知の部材である金属部材を選択することは、当業者が適宜なし得たことといえ、格別な効果が奏されるとはいえない。
また、本願明細書に記載の「インサート成形体を構成する樹脂部材に脆弱部が形成されている場合であっても、インサート成形体が温度変化のある環境に曝されることによって生じる、樹脂部材の割れの問題を抑制できる」との効果については、引用発明においても、ウエルド部の近傍に薄肉部を有していることにより、強いウエルドラインの発生が抑えられているのであるから、前記効果は、引用発明においても既に達成されている効果であると認められる。
したがって、本願補正発明4は、引用発明1に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。
(5)本願補正発明4と引用発明2との対比・判断
引用発明2は、射出成形金型装置により成形された枠状部2の樹脂に挟み込まれる形で成形品と一体となったインサート成形体であるから、本願補正発明4の「射出成形体である樹脂部材とインサート部材」とを備えることは明らかである。
引用発明2における「充填末端部6」は、上記(4)での対比と同様に、本願補正発明4の「ウエルド部」に相当し、本願補正発明4と同様に「インサート部材上に」形成されているといえる。
引用発明2における「流動規制部20」によって、成形されるインサート成形体の対応する樹脂部分は、当該「流動規制部20」が設けられている容積分だけ凹部が形成されることになるから(上記(2)エの図7(b)参照のこと)、引用発明2においても、充填末端部6(ウエルド部)を中心として左右それぞれにインサート部材と一体となった、インサート部材の表面に樹脂部材の薄肉部が形成されているといえる。また、当該薄肉部は、上記(4)での対比と同様に、強いウエルドを発生させないようにするものであるから、当然に、充填末端部、すなわちウエルド部の近傍に設けられているものと認められる。
また、引用発明2における「樹脂の流動を誘導する抜き曲げ形状13」は、インサート部材に設けられていて、上記(2)ウ、エの記載によれば、抜き曲げ形状13が設けられる位置は、「流動規制部20」が設けられる位置と同じ位置であることから、上記(3)での検討のとおり、引用発明2においても、ウエルド部(充填末端部6)の近傍であって、インサート部材の表面に、凹部又は凸部(抜き曲げ形状13)が形成されているといえる。
さらに、引用発明2における「連結穴14」は、上記(2)ウ、エの摘示から、インサート部材に設けられた穴であって、充填末端部6の近傍に設けられているといえるから、引用発明2においても、ウエルド部(充填末端部6)の近傍であって、インサート部材の表面に、凹部(連結穴14)が形成されているということができる。
そうすると、両者は、
「射出成形体である樹脂部材と、インサート部材と、を備え、
前記樹脂部材は、ウエルド部を有し、前記インサート部材上に形成され、
前記ウエルド部の近傍であって、前記インサート部材の表面に薄肉部、溝部、凹部又は凸部が形成される、インサート成形体。」
の点で一致し、以下の点で相違している。
<相違点2>
インサート部材に関し、本願補正発明4は「金属部材である」と特定するのに対し、引用発明2は、この点を特定しない点。
以下、相違点について検討する。
相違点2について
上記(4)の相違点1と同様に、引用発明2のインサート部材として周知の部材である金属部材を選択することは、当業者が適宜なし得たことといえ、効果についても、格別な効果が奏されるとはいえない。
したがって、本願補正発明4は、引用発明2に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。
(6)まとめ
本願補正発明4は、引用発明1又は引用発明2に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるので、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
6 補正の却下の決定のむすび
以上のとおりであるから、上記補正事項アを含む本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
第3 本願発明について
1 本願発明
平成28年1月12日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1~5に係る発明は、平成27年5月15日提出の手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1~5に記載されたとおりのものであって、そのうち、請求項4に係る発明(以下、「本願発明4」という。)は、以下のとおりである。
「樹脂部材と、インサート部材と、を備え、
前記樹脂部材は、ウエルド部又は溶着部を有し、前記インサート部材上に形成され、
前記ウエルド部又は前記溶着部の近傍であって、前記インサート部材の表面に薄肉部、コーナー部、溝部、凹部又は凸部が形成される、インサート成形体。」
2 引用刊行物とその記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願前に日本国内において頒布された特開2010-274439号公報の記載事項及び引用発明1及び2は、上記第2の5(2)及び(3)に記載したとおりである。
3 対比・判断
(1)本願発明4と引用発明1との対比・判断
上記第2の5(4)での対比のとおりであって、本願発明4と引用発明1との間に相違点は存在しない。
そうすると、本願発明4は、引用文献に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない発明である。
また、仮に相違点があったとしても、当業者が容易に想到し得たものといえる。
(2)本願発明4と引用発明2との対比・判断
上記第2の5(5)での対比のとおりであって、本願発明4と引用発明2との間に相違点は存在しない。
そうすると、本願発明4は、引用文献に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない発明である。
また、仮に相違点があったとしても、当業者が容易に想到し得たものといえる。
第4 むすび
以上のとおりであるから、本願発明4、すなわち請求項4に係る発明は、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものである、あるいは、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願はこの理由により拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2016-000491