特許拒絶査定不服審判
2016-000167
再循環システムに組み込まれた、断続的な誘電加熱による熱処理を備えた化学合成法
- 審判番号
- 2016-000167
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2013-022076
- 請求日
- 2016年01月06日
- 審決日
- 2017年06月27日
- 公報発行日
- 2018年01月26日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】アルディヴィア エスアー
- 【請求人代理人】太田 恵一
- 審判長/審判官
- 審判長 國島 明弘
- 審判官 川端 修
- 審判官 日比野 隆治
- 分類
- P18 .113-WZ (B01J) / P18 .121-WZ (B01J)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条1項3号特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2013- 22076「再循環システムに組み込まれた、断続的な誘電加熱による熱処理を備えた化学合成法」拒絶査定不服審判事件〔平成25年 7月18日出願公開、特開2013-139033〕について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
【理 由】
1.手続の経緯
本願は、2003年(平成15年)12月17日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2002年12月23日、フランス)を国際出願日とする特願2004-567012号の一部を、平成21年5月25日に新たな特許出願(特願2009-125351号。以下、「子出願」という。)とし、さらに子出願の一部を、平成25年2月7日に新たな特許出願としたものであって、平成25年12月13日付けで拒絶理由が通知され、平成26年6月24日付けで意見書及び補正書が提出され、平成27年1月29日付けで最後の拒絶理由が通知され、同年8月6日付けで意見書及び補正書が提出され、同年8月28日付けで拒絶査定がされ、これに対し、平成28年1月6日付けで拒絶査定不服の審判請求がされ、同年11月15日付けで当審より拒絶理由(以下、「当審拒絶理由」という。)が通知され、平成29年4月20日付けで意見書が提出されたものである。
2.本願発明
本願の請求項1~7に係る発明は、平成27年8月6日付けの手続補正書によって補正された特許請求の範囲の請求項1~7に記載された事項により特定されるとおりのものであり、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、以下のとおりのものと認める。
「気体でない化合物の化学合成における熱処理方法であり、誘電加熱が断続的に行われること、つまり、一つまたは複数の反応物質が、再循環システムに組み込まれた断続的な仕方で、周波数の範囲が3MHz~300GHzである電磁波にかけられることを特徴とする方法。」
3.当審拒絶理由の概要
当審拒絶理由の概要は、本願発明は、本願の優先日前に頒布された特開2000-119216号公報(以下、「引用例」という。)に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない、また、本願発明は、引用例に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。
4.引用例の記載について
引用例には、「(メタ)アクリレ―トエステルおよびポリエステル(メタ)アクリレ―トの製造方法」(発明の名称)について、次の記載がある(下線は、当審が付与した。)。
(1)「【0010】本発明は、反応器内において、触媒の存在下に、マイクロ波加熱によって、アクリル酸またはメタクリル酸を、モノヒドロキシ含有化合物またはポリヒドロキシ含有化合物と反応させることを含んで成る、アクリレートエステル、メタクリレートエステル、ポリエステルアクリレートまたはポリエステルメタクリレートを製造する方法に関する。」
(2)「【0013】マイクロ波は、・・・。一般に、発生の周波数は約300MHz~30GHzの範囲であり、対応する波長は約1m~1mmである。理論的には、この範囲のいずれの周波数も、効果的に使用することができるが、約850~950MHzまたは約2300~2600MHzを包含する商業的に利用可能な範囲の周波数を使用するのが好ましい。・・・(略)・・・」
(3)「【0021】水、揮発物、および/または他の副生物を、反応混合物から除去して、所望の最適エステル化度を得るのが好ましい。しかし、マイクロ波エネルギーを使用して(メタ)アクリレートエステルを生成するために、水または副生物を除去することは、本発明にとって重要ではない。水が除去される場合に、熱源としてマイクロ波エネルギーを使用して最適な結果が得られる。当業者に既知の従来の水除去法を使用することができ、マイクロ波閉じ込め区域内(マイクロ波適用と適合することを条件とする)、またはマイクロ波閉じ込め領域の外側、または両方の組み合わせにおいて、行うことができる。
【0022】・・・(略)・・・
【0023】さらに、反応混合物の乾燥がマイクロ波閉じ込めキャビティの外部で行われ、乾燥反応混合物が次の反応のためにマイクロ波区域に戻される連続リサイクルループにおいて、マイクロ波キャビティ内またはキャビティ外部において、既知の方法による水または水蒸気の物理的吸着、除去を包含する方法も使用することができる。Aldrich Chemical Company から入手可能なDRIERITE(登録商標)のような吸湿および/または吸着剤、あるいは分子篩、五酸化燐および酸化バリウムのような水反応性物質は全て、水輸送を補助するスパージガスの存在または不存在において、反応混合物蒸気から水を除去するために使用することができる有効な手段である。さらに、炭化水素溶媒のような共沸剤、または過剰の反応物、例えば、(メタ)アクリル酸またはポリオール、あるいは吸着乾燥剤で補助するかまたは補助しない、大気条件または真空条件における蒸発も、有効な水除去法として用いることができる。蒸発法は、Adlrich Chemical Companyから入手可能なNAFION(登録商標)のような材料、または膜技術分野において既知の他の膜を使用する、パーベーパレーション/膜法も包含される。」
(4)「【0024】マイクロ波エネルギーは、連続的または断続的に、反応混合に適用することができる。反応に適用されるマイクロ波エネルギーの量を調節して、反応混合物の内部温度の過熱を防止し、従って、(メタ)アクリレートエステルまたはポリエステル(メタ)アクリレートの望ましくない重合を最少限にするかまたは防止するのが好ましい。しかし、反応混合物の温度は、出発物質の反応性を高めて最終生成物を形成するのに充分な高さでなければならない。マイクロ波エネルギーの投入量を調節する方法は、マイクロ波をパルスにする方法、および/または加熱のために減少した電力を使用する方法を包含する。
【0025】反応混合物の内部温度を調節する第一の方法は、マイクロ波の適用をパルスにすることである。これは、所定時間にわたってマイクロ波を適用し、次に、所定期間にわたってマイクロ波を反応混合物に適用しないことによって行うことができる。マイクロ波が適用されない時間は、システムへのエネルギーの投入を即座に停止し、反応混合物内のみの伝導性加熱によって反応混合物をある温度状態(a temperature state)に平衡させる。種々の手段によって攪拌を適用してもよく、またはしなくてもよい。」
(5)「【0032】さらに、反応混合物を、断続または連続マイクロ波衝撃によって所定の時間にわたって高温に維持して、マイクロ波エネルギーの投入およびそれによって生じる誘導加熱の結果として、少なくとも5%のヒドロキシ基のエステルへの転化を行うことができる。好ましくは少なくとも50%のヒドロキシ基の転化、最も好ましくは少なくとも85%のヒドロキシ基の転化を行うのに充分な時間にわたって、反応混合物が高温に維持される。反応混合物の内部温度が室温より高い温度、例えば30℃、一般に約50℃~約180℃に維持されるように、マイクロ波エネルギーが反応混合物に適用される。反応混合物の温度が約110℃~150℃に維持されるのが好ましい。」
(6)「【0035】本発明の方法は、回分法、段階回分半連続法、または連続法によって行うことができる。段階回分法においては、反応混合物のマイクロ波への曝露を、中間冷却段階を用いてまたは用いずに行うことができる。混合物の反応区域への循環を、連続法または半連続法において行うことができる。」
(7)「【0042】前記に概略を記載した本発明の方法は、一段階回分法、多段階回分(半連続回分)法、連続法、またはこれらを組み合わせた方法に適用することができる。半連続または連続法においては、限定されないが、蠕動ポンプ、加圧、または他の従来の循環法を包含する当分野において既知の方法によって、反応物および/または反応混合が、装填されおよび/または循環される。目的とする結果に依存して、サンプルを、マイクロ波区域に複数回で循環させるか、または単一パスにおいて該区域に通すことができる。冷却は、目的とする結果に依存して、循環プロセスの種々の段階に含むことができる。反応物は、連続的、段階的、あるいは個々にまたは混合物として、工程の間に添加することができる。」
5.引用発明の認定
(1)上記「4(1)」の【0010】には、引用例に記載された発明は、反応器内において、触媒の存在下に、マイクロ波加熱によって、アクリル酸またはメタクリル酸を、モノヒドロキシ含有化合物またはポリヒドロキシ含有化合物と反応させることを含んで成る、アクリレートエステル、メタクリレートエステル、ポリエステルアクリレートまたはポリエステルメタクリレートを製造する方法であることが記載されている(審決注:公用文の用字用語例に従って「又は」等と記載すべき場合であっても、引用例に記載されたとおりに、「または」等と記載する場合もある。また、以下、該方法を単に、「特定の製造方法」ということもある。)。
(2)上記「4(2)」の【0013】には、上記特定の製造方法におけるマイクロ波加熱に用いられるマイクロ波の周波数は、約300MHz~30GHzの範囲であり、いずれの周波数も使用することができることが記載されている。
(3)上記「4(3)」の【0021】には、上記特定の製造方法では、水、揮発物、および/または他の副生物を、反応混合物から除去することが行われ、「水除去」は、マイクロ波閉じ込め区域内、またはマイクロ波閉じ込め領域の外側、または両方の組み合わせにおいて行うことができることが記載されている。
また、同【0021】には、アクリル酸またはメタクリル酸を、モノヒドロキシ含有化合物またはポリヒドロキシ含有化合物と反応させると、上記副生成物を含む反応混合物が得られることが記載されている。
(4)上記「4(3)」の【0023】の「反応混合物の乾燥がマイクロ波閉じ込めキャビティの外部で行われ、乾燥反応混合物が次の反応のためにマイクロ波区域に戻される連続リサイクルループにおいて、マイクロ波キャビティ内またはキャビティ外部において、既知の方法による水または水蒸気の物理的吸着、除去を包含する方法も使用することができる。」という記載によれば、「反応混合物の乾燥」として、「既知の方法による水または水蒸気の物理的吸着、除去を包含する方法も使用することができる」のであるから、該「反応混合物の乾燥」は、上記(3)で述べた「水除去」を意味することは明らかである。
そして、該記載から、上記特定の製造方法では、反応混合物の乾燥がマイクロ波閉じ込めキャビティの外部で行われ、反応混合物から水が除去された乾燥反応混合物が次の反応のためにマイクロ波区域に戻される連続リサイクルループが採用され得るということができる。
ここで、同【0023】の「マイクロ波閉じ込めキャビティ」とは、同【0023】の「マイクロ波キャビティ」及び「マイクロ波区域」であって、同【0021】の「マイクロ波閉じ込め区域」でもあり(以下、これらを単に、「マイクロ波キャビティ」と表記する。)、さらに、上記「4(1)」の【0010】の「本発明は、反応器内において、触媒の存在下に、マイクロ波加熱によって、アクリル酸またはメタクリル酸を、モノヒドロキシ含有化合物またはポリヒドロキシ含有化合物と反応させることを含んで成る、アクリレートエステル、メタクリレートエステル、ポリエステルアクリレートまたはポリエステルメタクリレートを製造する方法に関する。」という記載からみて、上記マイクロ波キャビティにおいて、「アクリル酸またはメタクリル酸」と「モノヒドロキシ含有化合物またはポリヒドロキシ含有化合物」との混合物に対してマイクロ波加熱がなされ、反応が行われることは明らかである。
また、上記マイクロ波キャビティは、反応が行われる区域であるから、上記「4(6)」の【0035】に記載された「混合物の反応区域」でもあることも明らかである。
(5)上記「4(4)」の【0024】には、マイクロ加熱に用いられるマイクロ波エネルギーは、連続的または断続的に、適用することが記載されている。
そして、同【0024】及び【0025】には、「反応に適用されるマイクロ波エネルギーの量を調節して、反応混合物の内部温度の過熱を防止し、従って、(メタ)アクリレートエステルまたはポリエステル(メタ)アクリレートの望ましくない重合を最少限にするかまたは防止するのが好まし」く、「反応混合物の内部温度を調節する第一の方法は、マイクロ波の適用をパルスにすることであ」って、「これは、所定時間にわたってマイクロ波を適用し、次に、所定期間にわたってマイクロ波を反応混合物に適用しないことによって行うことができる」ことが記載されている。
(6)上記「4(5)」の【0032】「反応混合物を、断続または連続マイクロ波衝撃によって所定の時間にわたって高温に維持して、マイクロ波エネルギーの投入およびそれによって生じる誘導加熱の結果として、少なくとも5%のヒドロキシ基のエステルへの転化を行うことができる。」という記載において、「マイクロ波衝撃」とは、「マイクロ波エネルギーの投入」であって、上記「4(4)」の【0025】に記載された「マイクロ波を適用」することであることは明らかである。
そうすると、上記(5)で述べたように、上記特定の製造方法において、「反応混合物の内部温度を調節する第一の方法は、マイクロ波の適用をパルスにすることであ」って、マイクロ波の適用が、パルスにしたもの、すなわち、所定時間にわたって行われ、次に、所定期間にわたって行われないようにすることで、反応混合物の内部温度が調節され、所望の反応が行われるということができる。
(7)上記(1)~(6)から、引用例には、
「反応器内において、触媒の存在下に、マイクロ波加熱によって、アクリル酸またはメタクリル酸を、モノヒドロキシ含有化合物またはポリヒドロキシ含有化合物と反応させることを含んで成る、アクリレートエステル、メタクリレートエステル、ポリエステルアクリレートまたはポリエステルメタクリレートを製造する方法において、
反応器は、マイクロ波キャビティを備え、
マイクロ波キャビティに対するマイクロ波の適用は、所定時間にわたって行われ、次に、所定期間にわたって行われないようにし、
該マイクロ波の周波数は、約300MHz~30GHzの範囲であり、
反応混合物の乾燥がマイクロ波キャビティの外部で行われ、反応混合物から水が除去された乾燥反応混合物が次の反応のためにマイクロ波キャビティに戻される連続リサイクルループが用いられる方法。」(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
6.対比・判断
本願発明と引用発明とを対比する。
(1)引用発明の「触媒の存在下に、マイクロ波加熱によって、アクリル酸またはメタクリル酸を、モノヒドロキシ含有化合物またはポリヒドロキシ含有化合物と反応させることを含んで成る、アクリレートエステル、メタクリレートエステル、ポリエステルアクリレートまたはポリエステルメタクリレートを製造する方法(特定の製造方法)」における「アクリレートエステル、メタクリレートエステル、ポリエステルアクリレートまたはポリエステルメタクリレート」及び「加熱」は、本願発明の「気体でない化合物」及び「熱処理」にそれぞれ相当し、該方法は、本願発明の「気体でない化合物の化学合成における熱処理方法」に相当する。
(2)引用発明の「アクリル酸またはメタクリル酸」と「モノヒドロキシ含有化合物またはポリヒドロキシ含有化合物」は、本願発明の「一つまたは複数の反応物質」に相当する。
(3)引用発明の上記特定の製造方法における「マイクロ波加熱」は、本願発明の「誘電加熱」に相当する。
そして、引用発明の「マイクロ波加熱」の「マイクロ波」は、本願発明の「電磁波に相当し、該「マイクロ波加熱」に用いられる「マイクロ波の周波数」の範囲は、本願発明の、誘電加熱に用いられる電磁波の周波数の範囲に含まれる。
また、引用発明の「マイクロ波キャビティに対するマイクロ波の適用は、所定時間にわたって行われ、次に、所定期間にわたって行われないように」する構成は、本願発明の「誘電加熱が断続的に行われること」、及び「一つまたは複数の反応物質が」「断続的な仕方で」「電磁波にかけられること」に相当する。
(4)引用発明の「応混合物の乾燥がマイクロ波キャビティの外部で行われ、反応混合物から水が除去された乾燥反応混合物が次の反応のためにマイクロ波キャビティに戻される連続リサイクルループ」は、本願発明の「再循環システム」に相当し、引用発明と本願発明とは、「再循環システム」を備える点で共通する。
(5)上記(1)~(4)より、本願発明と引用発明とは、「気体でない化合物の化学合成における熱処理方法であり、再循環システムを備え、誘電加熱が断続的に行われること、つまり、一つまたは複数の反応物質が、断続的な仕方で、周波数の範囲が3MHz~300GHzである電磁波にかけられる方法。」である点で一致し、次の相違点で相違する。
(相違点)
一つまたは複数の反応物質が電磁波にかけられることが、本願発明は、「再循環システムに組み込まれた」のに対し、引用発明の誘電加熱は、どこで行われているか不明な点。
ここで、相違点について検討する。
引用発明は、「連続リサイクルループ」を備えて、マイクロ波加熱によって反応が行われているのであるから、該マイクロ波加熱は、該「連続リサイクルループ」に組み込まれているといえる。
そうすると、上記相違点は、実質的な相違点ではない。
また、上記相違点が実質的な相違点だとしても(引用発明の誘電加熱は、どこで行われているか不明だとしても)、引用例に示唆されたような、混合物を反応区域にポンプ等によって循環させ、マイクロ波加熱を用いて反応を行う装置において、マイクロ波加熱を循環経路に組み込むことは周知である(必要であれば、原査定の拒絶理由で引用された引用文献2(特開平6-178931号公報の次の記載及び【図3】、
「【0083】一般に、ループ状回路において反応室に通される試料、標準物、反応物、又はすすぎ液のような物品はいずれも、反応室の上流側で回路に接続する管によって回路に送給又は導入される。また、反応生成物は反応室に通されないから反応室の下流側で回収される。したがって反応生成物の流出管は反応室の下流に設けられる。
【0084】本発明による化学反応装置のループ状回路100は、マイクロ波案内13のマイクロ波照射キャビティ3内に設置される反応室2、この反応室2の流出個所に設置される冷却区域26、試料の体積の調節装置14、及び循環装置27(当審注:循環ポンプ)を備える。・・・(略)・・・
【0098】試料と第1反応物とで成る混合物が容器29へ送られ、それから反応室2に流入し、ここで加熱される(操作d)。その以前にマイクロ波発生器が作動されている。
【0099】試料と第1反応物との第1反応の生成物は冷却区域26のコイル28に通して冷却される。
【0100】第1反応生成物は回路100内を流れ続け、そして管52 を通して供給される第2反応物の注入ポンプ322 が始動させられ且つ弁92 が開かれる。これによって第2反応物がループ状回路100内に導入される(操作c)。次に弁92 は閉じられ、そしてポンプ322 は停止される。
【図3】
」、特開昭51-41679号公報の次の記載及び第1図(Fig.1)、
「図面を参照するに、反応器系はループ1からなり、ループには経路2および3から流体媒体が入つて経路4より出る。粒状接触物質は経路5よりループに導入され、反応生成物と共に経路4より排出される。流体媒体および接触物質はポンプ6によりループの周囲に循環される。系にマイクロ波エネルギーを適用するためにマイクロ波反応部分7が設けられる。(3頁右上欄1~8行)
第1図
」、並びに、特開2000-133435号公報の次の記載及び【図16】、
「【0037】前記図14に示されたマイクロ波液体加熱ユニットを組み込んだ、液体循環加熱装置を図16に示す。液体供給ラインから供給された低温の液体が3方弁を介してマイクロ波連続液体加熱ユニットを経由して処理漕に導入される。その際にマイクロ波液体加熱ユニットにより加熱が行われる。処理漕に所定の液体が導入された後、処理漕内液体レベルセンサーにより薬液供給が3方弁の動作により停止され、液体循環ポンプにより処理漕内の液体が連続してマイクロ波液体加熱ユニットに循環供給が開始され、液体がマイクロ波液体加熱ユニット内で昇温加熱される。処理漕内またはマイクロ波液体加熱ユニットと処理漕間に設置された温度センサーにより液体温度が測定され、その出力が温調制御器に入力され、温調制御器の作動によって所定の液体温度となるようにマイクロ波液体加熱ユニットのマイクロ波の印可が制御される。
【図16】
」を参照されたい。)
そうすると、上記相違点が実質的な相違点だとしても(引用発明の誘電加熱は、どこで行われているか不明だとしても)、引用例に示唆されたような、混合物を反応区域にポンプ等によって循環させ、マイクロ波加熱を用いて反応を行う装置において、マイクロ波加熱を循環経路に組み込むことは周知であるから、本願発明は、引用発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
7.請求人の主張について
請求人は、審判請求書において、「引用文献1(引用例)には、『再循環システムに組み込まれた断続的な仕方で』という特定がありません」と主張している。
仮に、引用例の記載からは、引用発明におけるマイクロ波加熱が、連続リサイクルループに組み込まれている点が、直ちには導かれないとしても、引用発明の上記特定の製造方法について、引用例の上記「4(6)」の【0035】には、混合物が反応区域に循環する、連続法または半連続法によって行うことができることが示唆され、上記「4(7)」の【0042】には、該循環は、蠕動ポンプ等による既知の方法によって行われることが示唆されているのであるから、上記「6」で述べたように、周知技術に照らせば、「再循環システムに組み込まれた」ものとすることは、当業者が容易に想到し得ることである。
また、請求人は、平成29年4月20日付けの意見書において、引用発明では、反応が過熱の問題なく進行する場合、マイクロ波エネルギーを断続的に適用する必要がなく、本願発明と引用発明では、誘電加熱が断続的に行われる目的が全く異なり、引用例を読んだ当業者は、引用例には自明な温度制御方法が記載されているだけであり、引用例の記載から本願発明に想到する動機づけとなるものはなく、本願発明のように、断続的なマイクロ波加熱が、産業レベルのボリュームを非常に短時間で処理しながら、必要なアプリケータの数を大幅に減少させることができることに想到することはない旨主張している。
しかしながら、上記「5(5)」で述べたように、引用例の「4(4)」の【0024】及び【0025】には、「反応に適用されるマイクロ波エネルギーの量を調節して、反応混合物の内部温度の過熱を防止し、従って、(メタ)アクリレートエステルまたはポリエステル(メタ)アクリレートの望ましくない重合を最少限にするかまたは防止するのが好まし」く、「反応混合物の内部温度を調節する第一の方法は、マイクロ波の適用をパルスにすることであ」って、「これは、所定時間にわたってマイクロ波を適用し、次に、所定期間にわたってマイクロ波を反応混合物に適用しないことによって行うことができる」ことが記載されていて、引用例には、反応混合物の内部温度を調節するために、加熱が断続的に行われることが記載されていることから、請求人が主張するように、「マイクロ波エネルギーを断続的に適用する必要がな」いということはできず、請求人の上記主張は採用できない。
さらに、請求人は、同意見書において、上記特開平6-178931号公報には、図3に示す実施例の装置を使っての一連の試料の湿式化学反応のプロセスを記述した段落0094~0106から明らかなように、断続的なマイクロ波加熱の適用を成す目的のために同じ反応物質を再循環することを記載していない旨主張している。
しかしながら、同公報には「試料と第1反応物とで成る混合物が容器29へ送られ、それから反応室2に流入し、ここで加熱され・・・その以前にマイクロ波発生器が作動され(【0088】)・・・試料と第1反応物との第1反応の生成物は冷却区域26のコイル28に通して冷却され(【0099】)・・・第1反応生成物は回路100内を流れ続け(【0100】)」ることが記載されており、「第1反応生成物は回路100内を流れ続け」るものである以上、同じ反応物質を再循環させことを記載していないということはできず、請求人の上記主張は採用できない。
8.むすび
以上のとおり、本願発明(本願の請求項1に係る発明)は、引用発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない、また、本願発明は、引用発明及び周知技術に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、その余の請求項について論及するまでもなく,本願は拒絶すべきものである。
よって結論のとおり審決する。
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2016-000167