特許無効審判
2015-800073
導電性材料の製造方法、その方法により得られた導電性材料、その導電性材料を含む電子機器、発光装置、発光装置製造方法
- 審判番号
- 2015-800073
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 無効審判(無効の審決)
- 出願番号
- 特願2009-512355
- 登録番号
- 特許第5212364号(P5212364)
- 請求日
- 2015年03月25日
- 審決日
- 2018年04月09日
- 公報発行日
- 2019年06月28日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】堀田 信太郎
- 【被請求人】日亜化学工業 株式会社
- 【被請求人代理人】鮫島 睦
- 【被請求人代理人】言上 惠一
- 【被請求人代理人】山尾 憲人
- 【被請求人代理人】田村 啓
- 【被請求人代理人】玄番 佐奈恵
- 【被請求人代理人】牧野 知彦
- 審判長/審判官
- 審判長 深沢 正志
- 審判官 大嶋 洋一
- 審判官 小田 浩
- 分類
- P1123.121-YAA(H01B) / P1123.832-YAA(H01B) / P1123.841-YAA(H01B) / P1123.851-YAA(H01B) / P1123.857-YAA(H01B)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項特許法123条1項2号特許法169条2項民事訴訟法61条
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第134条の2第1項、特許法第134条の2第9項、特許法第126条第5項、特許法第29条第2項、特許法第123条第1項第2号、特許法第126条第6項、特許法第29条、特許法第169条第2項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
上記当事者間の特許第5212364号「導電性材料の製造方法,その方法により得られた導電性材料,その導電性材料を含む電子機器,発光装置,発光装置製造方法」の特許無効審判事件についてされた平成28年12月14日付け審決に対し,知的財産高等裁判所において請求項9ないし11に係る発明に対する部分の審決取消しの判決(平成29年(行ケ)第10032号,平成29年11月 7日)があったので,審決が取り消された部分の請求項に係る発明についてさらに審理のうえ,次のとおり審決する。
結論
【結 論】
特許第5212364号の特許請求の範囲を訂正後の請求項1,〔2,3〕,9,〔10,11〕について訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり訂正することを認める。
特許第5212364号の請求項1ないし3,9ないし11に係る発明についての審判の請求は,成り立たない。
審判の総費用は,これを27分し,その13を被請求人の負担とし,その余を請求人の負担とする。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
本件特許第5212364号についての手続の経緯の概要は,以下のとおりである。
特許出願(特願2009-512355号)
国内優先(特願2008-7583号)
優先日 平成20年 1月17日
国際出願(PCT/JP2009/050212号)
国際出願日 平成21年 1月 9日
出願審査請求書 平成21年 3月18日
拒絶理由通知書(発送日) 平成24年 6月 5日
手続補正書・意見書 平成24年 8月 6日
特許査定(発送日) 平成25年 1月29日
登録日 平成25年 3月 8日
無効審判請求 平成27年 3月24日付け
被請求人:答弁書 平成27年 6月12日付け
審理事項通知書(発送日) 平成27年 7月29日
請求人 :口頭審理陳述要領書 平成27年 9月15日付け
被請求人:口頭審理陳述要領書 平成27年 9月15日付け
口頭審理 平成27年 9月29日
被請求人:上申書 平成27年 9月29日付け
被請求人:上申書 平成27年 9月30日付け
請求人 :上申書 平成27年10月16日付け
被請求人:上申書 平成27年10月30日付け
審決の予告 平成28年1月27日
被請求人:答弁書 平成28年4月1日付け
被請求人:訂正請求書 平成28年4月1日付け
請求人 :弁駁書 平成28年6月17日付け
訂正拒絶理由通知書(発送日) 平成28年8月9日
請求人 :意見書 平成28年9月7日付け
被請求人:意見書 平成28年9月8日付け
被請求人:上申書 平成28年9月28日付け
審決(1次): 平成28年12月14日
被請求人:審決取消訴訟提起
(平成29年(行ケ)第10032号) 平成29年1月25日
審決取消訴訟判決言渡
(審決中,請求項9ないし11に係る部分の取り消し)
平成29年11月7日
審理再開通知書 平成29年12月18日付け
請求人:上申書 平成30年1月10日付け
請求人:上申書 平成30年1月12日付け
第2 訂正の請求について
1 訂正請求の内容
本件審判の手続において,被請求人より平成28年4月1日付けで提出された訂正請求書で,特許権者が求めている訂正(以下「本件訂正」という。)の内容は,以下のとおりである。(当審注.訂正箇所に下線を付した。)(請求項1ないし3,9ないし11についての部分以外は省略する。以下同じ。)
・訂正事項1-1
特許請求の範囲の請求項1において,
「前記銀の粒子が,0.1μm~l5μmの平均粒径(メジアン径)を有する銀の粒子からなる第1導電性材料用組成物を焼成して,」
とあるのを,
「前記銀の粒子が,0.1μm~l5μmの平均粒径(メジアン径)を有する銀の粒子からなる第1導電性材料用組成物を焼成することにより,前記銀の粒子と前記金属酸化物の粒子との接触部にて,前記金属酸化物の粒子から前記銀の粒子に酸素を供給させることによって,」
と訂正する。
・訂正事項2-1
特許請求の範囲の請求項2において,
「前記第1導電性材料用組成物が,…請求項1に記載の導電性材料の製造方法。」
とあるのを,
「導電性材料の製造方法であって,
前記方法が,
銀の粒子と金属酸化物の粒子とを含む第1導電性材料用組成物であり,前記銀の粒子が0.1μm~15μmの平均粒径(メジアン径)を有する銀の粒子からなる第1導電性材料用組成物を焼成して,前記銀の粒子が互いに隣接する部分において融着し,それにより発生する空隙を有する導電性材料を得ることを含み,
前記第1導電性材料用組成物が,…導電性材料の製造方法。」
と訂正する(請求項2の記載を引用する,請求項3も同様に訂正する)。
・訂正事項2-2
特許請求の範囲の請求項2において,
「沸点300℃以下の有機溶剤または水を更に含む」
とあるのを,
「沸点300℃以下の有機溶剤または水を更に含み,
前記第1導電性材料用組成物が,前記金属酸化物の粒子を還元する還元剤として機能する成分を含まない,」
と訂正する(請求項2の記載を引用する,請求項3も同様に訂正する)。
・訂正事項9-1
特許請求の範囲の請求項9において,
「前記銀の粒子が,0.1μm~15μmの平均粒径(メジアン径)を有する銀の粒子からなる」
とあるのを,
「前記銀の粒子が,2.0μm~15μmの平均粒径(メジアン径)を有する銀の粒子からなる」
と訂正する。
・訂正事項9-2
特許請求の範囲の請求項9において,
「前記銀の粒子が互いに隣接する部分において融着し,」
とあるのを,
「前記銀の粒子が互いに隣接する部分において融着し(但し,銀フレークがその端部でのみ融着している場合を除く),」
と訂正する。
・訂正事項10-1
特許請求の範囲の請求項10において,
「前記第2導電性材料用組成物が,沸点300℃以下の有機溶剤または水を更に含む請求項9に記載の導電性材料の製造方法。」
とあるのを,
「導電性材料の製造方法であって,
前記方法が,
銀の粒子を含む第2導電性材料用組成物であって,前記銀の粒子が,2.0μm~15μmの平均粒径(メジアン径)を有する銀の粒子からなる第2導電性材料用組成物を,酸素,オゾン又は大気雰囲気下で150℃~320℃の範囲の温度で焼成して,前記銀の粒子の一部を局部的に酸化させることにより,前記銀の粒子が互いに隣接する部分において融着し,それにより発生する空隙を有する導電性材料を得ることを含み,
前記第2導電性材料用組成物が,沸点300℃以下の有機溶剤または水を更に含む導電性材料の製造方法。」
と訂正する(請求項10の記載を引用する,請求項11も同様に訂正する)。
・引用関係の解消の求め
訂正後の請求項2の記載については,引用関係の解消を目的とする訂正であり,この訂正後の請求項2の記載を引用する訂正後の請求項3の記載は訂正後の請求項2の記載を引用するものであるから,訂正後の請求項2の訂正が認められる場合には,請求項2および3は,請求項1とは別途訂正することを求める。
訂正後の請求項10の記載については,引用関係の解消を目的とする訂正であり,この訂正後の請求項10の記載を引用する訂正後の請求項11の記載は訂正後の請求項10の記載を引用するものであるから,訂正後の請求項10の訂正が認められる場合には,請求項10および11は,請求項9とは別途訂正することを求める。
2 訂正の適否について
以下,訂正前の各請求項に係る発明は「本件発明1」などといい,併せて「本件発明」という。また,本件特許の願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面を「本件明細書等」という。また,本件訂正後の各請求項に係る発明を「本件訂正発明1」などという。
(1)訂正事項1-1について
訂正の前後の請求項1の記載は,以下のとおりである。
[訂正前]
「【請求項1】
導電性材料の製造方法であって,
前記方法が,
銀の粒子と金属酸化物の粒子とを含む第1導電性材料用組成物であり,前記銀の粒子が,0.1μm~15μmの平均粒径(メジアン径)を有する銀の粒子からなる第1導電性材料用組成物を焼成して,前記銀の粒子が互いに隣接する部分において融着し,それにより発生する空隙を有する導電性材料を得ることを含む方法。」
[訂正後]
「【請求項1】
導電性材料の製造方法であって,
前記方法が,
銀の粒子と金属酸化物の粒子とを含む第1導電性材料用組成物であり,前記銀の粒子が,0.1μm~15μmの平均粒径(メジアン径)を有する銀の粒子からなる第1導電性材料用組成物を焼成することにより,前記銀の粒子と前記金属酸化物の粒子との接触部にて,前記金属酸化物の粒子から前記銀の粒子に酸素を供給させることによって,前記銀の粒子が互いに隣接する部分において融着し,それにより発生する空隙を有する導電性材料を得ることを含む方法。」
ア 訂正の目的について
訂正事項1-1は,請求項1において「銀の粒子からなる第1導電性材料用組成物を焼成」する際に,「銀の粒子と金属酸化物の粒子との接触部にて,金属酸化物の粒子から銀の粒子に酸素を供給させることによって」銀の粒子が互いに隣接する部分において融着するという技術的事項を追加したものであり,特許請求の範囲の減縮を目的としたものである。
したがって,訂正事項1-1は,特許法第134条の2第1項ただし書第1号に規定する「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。
イ 願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
本件明細書等の記載から本件発明は,次の作用機序(以下,「本件作用機序」という。)を利用したものと認められる。
本件発明において,導電性材料が形成されるメカニズムは明確ではないが,以下のように推測できる。酸化剤である酸素,オゾンもしくは大気雰囲気下で,0.1μm~15μmの平均粒径を有する銀粒子を含む組成物を焼成すると,銀粒子と銀粒子の一部が局部的に酸化され,その酸化により形成した酸化銀が,銀粒子と接触する部分において,酸素を触媒的にやり取りし,酸化還元反応を繰り返す工程を経て,導電性材料が形成されると推測できる。酸化剤である金属酸化物存在下で,0.1μm~15μmの平均粒径を有する銀粒子を含む組成物を焼成する場合には,既に含まれている金属酸化物が,銀粒子と接触する部分において,酸素を触媒的にやり取りし,酸化還元反応を繰り返す工程を経て,導電性材料が形成されると推測できる(本件明細書等の段落【0020】)。
実施例2~5の結果から,銀粒子と酸化銀(I)粒子とを含む混合粒子,及び,銀粒子と酸化銀(II)粒子との混合粒子の場合は,発熱量が比較的大きいことが確認できた。この発熱量は,各酸化銀粒子単独を加熱した際に発生する発熱量よりも,重量換算で数十倍以上の大きな発熱であった。このことより,銀粒子と酸化銀粒子とが,接触部で反応していることが確認できた。また酸素が存在しない窒素雰囲気下でも銀粒子と酸化銀粒子とを含む混合粒子を加熱することにより,融着が発生していることが確認できた。すなわち,酸化銀粒子が銀粒子と反応し,酸素供給源となっていることが推測できる(同前【0090】)。
そうすると,願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面には,酸化剤である金属酸化物存在下で,「前記銀の粒子が,0.1μm~15μmの平均粒径(メジアン径)を有する銀の粒子からなる第1導電性材料用組成物を焼成することにより,前記銀の粒子と前記金属酸化物の粒子との接触部にて,前記金属酸化物の粒子から前記銀の粒子に酸素を供給させることによって,前記銀の粒子が互いに隣接する部分において融着し,それにより発生する空隙を有する導電性材料を得ることを含む方法。」が記載されているものと認められる。
したがって,訂正事項1-1は,願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり,特許法第134条の2第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。
ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更する訂正ではないこと
本件明細書等には,従来技術において,酸化銀等の銀化合物の微粒子を還元性有機溶剤へ分散したペースト状導電性組成物を基板上に塗布して加熱し配線を製造する方法が知られていたが,ミクロンオーダーの銀粒子を使用した場合,高い反応熱によりガスが大量発生し,不規則なボイドが形成されて導電性組成物が破壊されやすくなったり,取扱上の危険性があるという問題点があり(同前【0004】~【0007】,【0010】),銀ナノ粒子を含む導電性組成物を用いると,銀ナノ粒子の値段が高いという問題点があったこと(同前【0009】,【0010】)が記載されており,本件発明は,安価かつ安定な導電性材料用組成物を用いて得られる導電性材料を製造する方法を提供することを目的とするとの記載があるから(同前【0012】),本件発明1の目的は,従来技術においてミクロンオーダーの銀粒子を使用する際にガスが大量発生することによる問題を解消するとともに,値段が高い銀ナノ粒子を使用することなく,導電性材料を製造することにあると認められる。
そして,本件訂正発明1においては,その目的を,「銀の粒子が,0.1μm~15μmの平均粒径(メジアン径)を有する銀の粒子からなる」という構成,及び「第1導電性材料用組成物を焼成することにより,前記銀の粒子と前記金属酸化物の粒子との接触部にて,前記銀の粒子が互いに隣接する部分において融着し」という構成を備えることによって達成している。
すなわち,本件訂正発明1に加えた「第1導電性材料用組成物を焼成することにより,前記銀の粒子と前記金属酸化物の粒子との接触部にて,前記金属酸化物の粒子から前記銀の粒子に酸素を供給させること」という構成は,本件発明1の,特に,大量のガスを発生させることなく導電性材料を得るという目的のためであり,当該構成を加えたことによって,本件発明1の目的を変更するものではない。
したがって,訂正事項1-1は,本件発明1-1が達成しようとする目的及び効果を変更するものではなく,特許法第134条の2第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。
(2)訂正事項2-1について
ア 訂正の目的について
訂正事項2-1は,訂正前の請求項2が請求項1の記載を引用する記載であるところ,請求項間の引用関係を解消して,独立形式請求項へ改めるための訂正であって,特許法第134条の2第1項ただし書第4号に規定する「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とする訂正である。
イ 願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
本件明細書等の段落【0021】には,「【0021】
前記のように,本発明は,導電性材料の第1の製造方法であって,前記方法は,0.1μm~15μmの平均粒径(メジアン径)を有する銀粒子と,金属酸化物とを含む第1導電性材料用組成物を焼成して,導電性材料を得ることを含むことを特徴とする。(省略)また,この第1の製造方法によれば,焼成により前記銀粒子が互いに隣接する部分のみが融着するため,空隙が発生し,柔軟性に富んだ膜状の導電性材料を形成することが可能であるという利点がある。」と記載されていることから,訂正事項2-1は,本件明細書に記載された事項である。
よって,訂正事項2-1は,願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり,特許法第134条の2第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。
ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更する訂正ではないこと
上記アから明らかなように,訂正事項2-1は,引用関係の解消を目的とするものであり,カテゴリーや対象,目的を変更するものではないから,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものには該当せず,特許法第134条の2第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。
(3)訂正事項2-2について
訂正後の請求項2は,以下のとおりである。
「【請求項2】
導電性材料の製造方法であって,
前記方法が,
銀の粒子と金属酸化物の粒子とを含む第1導電性材料用組成物であり,前記銀の粒子が,0.1μm~15μmの平均粒径(メジアン径)を有する銀の粒子からなる第1導電性材料用組成物を焼成して,前記銀の粒子が互いに隣接する部分において融着し,それにより発生する空隙を有する導電性材料を得ることを含み,
前記第1導電性材料用組成物が,沸点300℃以下の有機溶剤または水を更に含み,
記第1導電性材料用組成物が,前記金属酸化物の粒子を還元する還元剤として機能する成分を含まない,導電性材料の製造方法。」
ア 訂正の目的について
訂正事項2-2は,第1導電性材料用組成物が,前記金属酸化物の粒子を還元する還元剤として機能する成分を含まない,ことを特定事項として追加するものであり,特許請求の範囲の減縮を目的としたものである。
したがって,訂正事項2-2は,特許法第134条の2第1項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
本件明細書等には,従来技術において,酸化銀等の銀化合物の微粒子を還元性有機溶剤へ分散したペースト状導電性組成物を基板上に塗布して加熱し配線を製造する方法が知られていたが,ミクロンオーダーの銀粒子を使用した場合,高い反応熱によりガスが大量発生し,不規則なボイドが形成されて導電性組成物が破壊されやすくなったり,取扱上の危険性があるという問題点があり(本件明細書等の段落【0004】~【0007】,【0010】),銀ナノ粒子を含む導電性組成物を用いると,銀ナノ粒子の値段が高いという問題点があったこと(同前【0009】,【0010】)が記載されており,本件発明は,安価かつ安定な導電性材料用組成物を用いて得られる導電性材料を製造する方法を提供することを目的とするとの記載がある(同前【0012】)。
したがって,本件発明の目的は,従来技術である酸化銀等の銀化合物の微粒子を還元性有機溶剤へ分散したペースト状導電性組成物を基板上に塗布して加熱し配線を製造する方法において,還元性有機溶剤を加熱することによりガスが大量発生することによる問題を解消するとともに,値段が高い銀ナノ粒子を使用することなく,導電性材料を製造することにあると認められる。
また,本件作用機序により,「金属酸化物が銀粒子と接触する部分において,酸素を触媒的にやり取りし,酸化還元反応を繰り返す」のであるから他に還元剤として機能する成分は不要であることが当業者は理解できる。
そうすると,本件発明は,金属酸化物の還元剤による反応に起因する大量のガスの発生を抑制するために,本件作用機序を利用することにより,その原因となる還元剤を使用しないこと,すなわち,第1導電性材料用組成物が,前記金属酸化物の粒子を還元する還元剤として機能する成分を含まないことが開示されているものと認められる。
したがって,訂正事項2-2は,願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり,特許法第134条の2第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。
ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更する訂正ではないこと
訂正事項2-2は,第1導電性材料用組成物が,前記金属酸化物の粒子を還元する還元剤として機能する成分を含まない,という事項を付加したものであり,カテゴリーや対象,目的を変更するものではないので,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものには該当しない。
したがって,訂正事項2-2は,特許法第134条の2第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。
(4)訂正事項9-1について
ア 訂正の目的についての検討
訂正事項9-1は,請求項9において,銀の粒子の平均粒径(メジアン径)を2.0μm~15μmに限定するものである。
訂正前の請求項9に記載された特許発明において,銀の粒子の平均粒径(メジアン径)は0.1μm~15μmであると特定されている。
訂正事項9-1は訂正後の請求項9に記載された特許発明において,銀の粒子の平均粒径(メジアン径)を「2.0μm~15μm」に限定することによって,特許請求の範囲を減縮しようとするものである。
したがって,訂正事項9-1は,特許法第134条の2第1項ただし書き第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるかについての検討
本件明細書等の段落【0085】には,
「実施例1~5および比較例1~5において,混合粒子の示差走査熱量計(DSC)にて発熱挙動を確認した。…混合粒子の組成と,測定雰囲気と,発熱開始温度と,発熱量と,測定後の融着有無の結果を表1に示す。表1中,『銀』は,平均粒径2.0μm~3.2μmの銀粒子(福田金属箔粉工業株式会社製,製品名「AgC-239」)…を意味する。」
と記載されており,段落【0086】には,
「また,用いた銀粒子は,以下のとおりである。
福田金属箔粉工業株式会社製,製品名「AgC-239」は平均粒径(メジアン径)が2.0μm~3.2μm,比表面積が0.6~0.9m2/gである。」
と記載されており,段落【0087】の表1には,銀の粒子を含む第2導電性材料用組成物を用いた実施例1の試験結果が記載されている。これらの記載によれば,本件明細書等に記載の実施例1において,平均粒径(メジアン径)が2.0μm~3.2μmの銀の粒子を含む第2導電性材料用組成物が用いられている。
以上より,訂正前の請求項9に記載された銀の粒子の平均粒径(メジアン径)の数値範囲「0.1μm~15μm」の下限値を変更して新たな数値範囲「2.0μm~15μm」とする訂正は,新たな数値範囲の下限値「2.0μm」が本件明細書等の発明の詳細な説明に記載されており,かつ新たな数値範囲「2.0μm~15μm」が本件明細書等の特許請求の範囲の請求項9に記載された数値範囲「0.1μm~15μm」に含まれていることから,新たな技術的事項を導入するものではない。
したがって,訂正事項9-1は,願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり,特許法第134条の2第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。
ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更する訂正であるかについての検討
訂正事項9-1は,訂正前の発明特定事項(銀の粒子の平均粒径(メジアン径))を限定するものであり,カテゴリーや対象,目的を変更するものではない。
したがって,訂正事項9-1は,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものには該当せず,特許法第134条の2第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。
(5)訂正事項9-2について
訂正後の請求項9は,以下のとおりである。
「【請求項9】
導電性材料の製造方法であって,
前記方法が,
銀の粒子を含む第2導電性材料用組成物であって,前記銀の粒子が,2.0μm~15μmの平均粒径(メジアン径)を有する銀の粒子からなる第2導電性材料用組成物を,酸素,オゾン又は大気雰囲気下で150℃~320℃の範囲の温度で焼成して,前記銀の粒子が互いに隣接する部分において融着し(但し,銀フレークがその端部でのみ融着している場合を除く),それにより発生する空隙を有する導電性材料を得ることを含む方法。」
ア 訂正の目的についての検討
訂正事項9-2は,本件訂正前の請求項9における「前記銀の粒子が互いに隣接する部分において融着し,」を,「前記銀の粒子が互いに隣接する部分において融着し(但し,銀フレークがその端部でのみ融着している場合を除く),」とするものである。したがって,本件訂正前の請求項9においては,「銀の粒子」の形状に限定がなく,融着の態様は,「互いに隣接する部分において融着」とされていたところ,本件訂正後の請求項9においては,訂正事項9-2により,「但し,銀フレークがその端部でのみ融着している場合を除く」と付加されたことにより,「銀の粒子」の形状が「銀フレーク」で,その融着箇所が「その端部でのみ融着している」との態様のものが除かれている。
「フレーク」とは,「薄片」,すなわち,「うすい切れ端。うすいかけら」を意味し,「端」とは,物の末の部分,先端,中心から遠い,外に近い所,へり,ふちを意味するとされるから,「銀フレークがその端部でのみ融着している場合を除く」ことにより,少なくとも,銀フレーク,すなわち銀の薄片が,そのへりの部分でのみ融着する態様のものは除外されることになり,本件訂正後の請求項9は,本件訂正前の請求項9よりも,その範囲が減縮されるというべきである。
したがって,訂正事項9-2は,特許法第134条の2第1項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるかについての検討
訂正事項9-2は,いわゆる「除くクレーム」とする訂正であるが,甲5号証に記載された事項を訂正前のクレームから除いただけであり,訂正前の本件明細書等から導かれる技術的事項に何ら新たな技術的事項を導入するものではない。
したがって,訂正事項9-2は,願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり,特許法第134条の2第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。
ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更する訂正であるかについての検討
訂正事項9-2は,本件訂正前の請求項9における「前記銀の粒子が互いに隣接する部分において融着し,」を,「前記銀の粒子が互いに隣接する部分において融着し(但し,銀フレークがその端部でのみ融着している場合を除く),」とするものである。すなわち,請求項9において,銀の粒子の互いに隣接する部分における融着について「銀フレークがその端部でのみ融着している場合を除く」という限定を加えるものである。
したがって,訂正事項9-2は,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものには該当せず,特許法第134条の2第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。
(6)訂正事項10-1について
ア 訂正の目的についての検討
訂正事項10-1は,訂正前の請求項10が請求項9の記載を引用する記載であるところ,請求項間の引用形式を解消して,独立請求項に改めるための訂正である。
また,訂正事項10-1は,請求項10において,銀の粒子の平均粒径(メジアン径)を2.0μm~15μmに限定し,特許請求の範囲を減縮しよすとするものである。
したがって,訂正事項10-1は,特許法134条の2第1項ただし書第4号に規定する「他の請求項を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とするものであり,かつ,特許法第134条の2第1項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるかについての検討
本件明細書等の段落【0020】には,「本発明の導電性材料を製造する方法において,導電性材料が形成されるメカニズムは明確ではないが,以下のように推測できる。」,「酸化剤である酸素,オゾンもしくは大気雰囲気下で,0.1μm~15μmの平均粒径を有する銀粒子を含む組成物を焼成すると,銀粒子と銀粒子の一部が局部的に酸化され,その酸化により形成した酸化銀が,銀粒子と接触する部分において,酸素を触媒的にやり取りし,酸化還元反応を繰り返す工程を経て,導電性材料が形成されると推測できる。」,「酸化剤である金属酸化物存在下で,0.1μm~15μmの平均粒径を有する銀粒子を含む組成物を焼成する場合には,既に含まれている金属酸化物が,銀粒子と接触する部分において,酸素を触媒的にやり取りし,酸化還元反応を繰り返す工程を経て,導電性材料が形成されると推測できる。」との記載があり,「酸化剤である酸素,オゾンもしくは大気雰囲気下」,「酸化剤である金属酸化物存在下」という2つの状況において,いずれも金属酸化物(酸化銀を含む)が銀粒子と接触する部分において,酸素を触媒的にやり取りし,酸化還元反応を繰り返す工程を経て,融着が生じるとの作用機序が推測できることを開示している。
前記段落【0020】では,「銀粒子を含む組成物」を焼成の対象としており,沸点300℃以下の有機溶剤又は水を更に含む組成物が排除されることの記載も示唆もないこと,「本発明において,前記第2導電性材料用組成物は,沸点300℃以下の有機溶剤または水を更に含んでもよい。」(本件明細書等の段落【0049】)との記載があることからすれば,前記段落【0020】の作用機序は,第2導電性材料用組成物が,沸点300℃以下の有機溶剤又は水を更に含む場合にも妥当すると解釈するのが自然である。
また,本件明細書等には,実施例34として,銀粒子(福田金属箔粉工業株式会社製,製品名「AgC-239」,2.5g)と,沸点が300℃以下の243℃である2-エチル-1,3-ヘキサンジオール(0.44g)を含む第2導電性材料用組成物を得て,この組成物をスタンピング法でAg/Niメッキにてパターニングした発光装置用酸化アルミニウム基板上へ塗布し,実施例35では,実施例34で作製した第2導電性材料用組成物を接合塗料として用いて発光素子をマウントした基板において,有機溶剤の沸点である243℃よりも低い200℃で,大気雰囲気下で1時間加熱することにより,接合材料中の粒子の融着が確認できたことが開示されているところ(同前【0138】~【0140】),有機溶剤を含んだ第2導電性材料用組成物を200℃で大気雰囲気下において加熱することにより銀の粒子が融着するとの実施例について,前記段落【0020】の作用機序が妥当しないと見るべき根拠はない。
そうすると,本件訂正発明10における「融着」が「前記銀の粒子の一部を局部的に酸化させること」に起因して生じるものであることを明示する記載は,願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面にないとはいえず,新規事項の追加には当たらない。
したがって,訂正事項10-1は,願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり,特許法第134条の2第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。
ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更する訂正ではないこと
本件明細書等には,従来技術において,酸化銀等の銀化合物の微粒子を還元性有機溶剤へ分散したペースト状導電性組成物を基板上に塗布して加熱し配線を製造する方法が知られていたが,ミクロンオーダーの銀粒子を使用した場合,高い反応熱によりガスが大量発生し,不規則なボイドが形成されて導電性組成物が破壊されやすくなったり,取扱上の危険性があるという問題点があり(同前【0004】~【0007】,【0010】),銀ナノ粒子を含む導電性組成物を用いると,銀ナノ粒子の値段が高いという問題点があったこと(同前【0009】,【0010】)が記載されており,本件発明は,安価かつ安定な導電性材料用組成物を用いて得られる導電性材料を製造する方法を提供することを目的とするとの記載があるのであるから(同前【0012】),本件発明の目的は,従来技術においてミクロンオーダーの銀粒子を使用する際にガスが大量発生することによる問題を解消するとともに,値段が高い銀ナノ粒子を使用することなく,導電性材料を製造することにあると認められる。
そして,本件発明10においては,その目的を,「銀の粒子が,0.1μm~15μmの平均粒径(メジアン径)を有する銀の粒子からなる」という構成,及び「第2導電性材料用組成物を,酸素,オゾン又は大気雰囲気下で150℃~320℃の範囲の温度で焼成して,前記銀の粒子が互いに隣接する部分において融着し」という構成を備えることによって達成している。
他方,本件訂正発明10は,大量のガスを発生させることなく導電性材料を得るという目的を達成するため,「前記銀の粒子の一部を局部的に酸化させることにより,前記銀の粒子が互いに隣接する部分において融着し」という構成を備えている上,銀の粒子が,0.1μm~15μmの平均粒径(メジアン径)を有するものから,2.0μm~15μmの平均粒径(メジアン径)を有するものに訂正されたことにより,訂正前に比べて銀の粒子径がより大となっており,値段が高い銀ナノ粒子を使用することなく導電性材料を得るという目的及び効果について,より限定されたものとなっており,訂正事項10-1による訂正は,本件発明10が達成しようとする目的及び効果を変更するものではない。
したがって,訂正事項10-1は,特許法134条の2第9項で準用する126条第6項に適合するものである。
3 むすび
本件訂正のうち訂正事項1-1は,特許法第134条の2第1項ただし書き第1号を目的とするものであり,同条第9項で準用する特許法第126条第5項及び第6項に適合するので,訂正後の請求項1について訂正を認める。
本件訂正のうち訂正事項2-1は,特許法第134条の2第1項ただし書き第4号を目的とするものであり,同条第9項で準用する特許法第126条第5項及び第6項に適合し,本件訂正のうち訂正事項2-2は,特許法第134条の2第1項ただし書き第1号を目的とするものであり,同条第9項で準用する特許法第126条第5項及び第6項に適合するので,訂正後の請求項2について訂正を認め,請求項2の記載を引用する請求項3についても訂正を認める。
本件訂正のうち訂正事項9-1,9-2は,特許法第134条の2第1項ただし書き第1号を目的とするものであり,同条第9項で準用する特許法第126条第5項及び第6項に適合するので,訂正後の請求項9について訂正を認める。
本件訂正のうち訂正事項10-1は,特許法第134条の2第1項ただし書第4号及び第1号に掲げる事項を目的とするものであり,かつ,同条第9項で準用する特許法第126条第5項及び第6項に適合するので,訂正後の請求項10,11について訂正を認める。
なお,請求人が提出した平成30年1月10日付け及び同年1月12日付けの上申書における主張は,上記判断に反しており,採用する事はできない。
第3 本件訂正発明
上記第2より,本件特許5212364号の請求項1ないし3,9ないし11に係る発明は,次のとおりのものであると認める。
「【請求項1】
電性材料の製造方法であって,
前記方法が,
銀の粒子と金属酸化物の粒子とを含む第1導電性材料用組成物であり,前記銀の粒子が,0.1μm~15μmの平均粒径(メジアン径)を有する銀の粒子からなる第1導電性材料用組成物を焼成することにより,前記銀の粒子と前記金属酸化物の粒子との接触部にて,前記金属酸化物の粒子から前記銀の粒子に酸素を供給させることによって,前記銀の粒子が互いに隣接する部分において融着し,それにより発生する空隙を有する導電性材料を得ることを含む方法。
【請求項2】
導電性材料の製造方法であって,
前記方法が,
銀の粒子と金属酸化物の粒子とを含む第1導電性材料用組成物であり,前記銀の粒子が,0.1μm~15μmの平均粒径(メジアン径)を有する銀の粒子からなる第1導電性材料用組成物を焼成して,前記銀の粒子が互いに隣接する部分において融着し,それにより発生する空隙を有する導電性材料を得ることを含み,
前記第1導電性材料用組成物が,沸点300℃以下の有機溶剤または水を更に含み,
記第1導電性材料用組成物が,前記金属酸化物の粒子を還元する還元剤として機能する成分を含まない,導電性材料の製造方法。
【請求項3】
前記有機溶剤が,低級アルコール,または,低級アルコキシ,アミノおよびハロゲンからなる群から選択される1以上の置換基を有する低級アルコールを含む請求項2に記載の導電性材料の製造方法。
【請求項9】
導電性材料の製造方法であって,
前記方法が,
銀の粒子を含む第2導電性材料用組成物であって,前記銀の粒子が,2.0μm~15μmの平均粒径(メジアン径)を有する銀の粒子からなる第2導電性材料用組成物を,酸素,オゾン又は大気雰囲気下で150℃~320℃の範囲の温度で焼成して,前記銀の粒子が互いに隣接する部分において融着し(但し,銀フレークがその端部でのみ融着している場合を除く),それにより発生する空隙を有する導電性材料を得ることを含む方法。
【請求項10】
導電性材料の製造方法であって,
前記方法が,
銀の粒子を含む第2導電性材料用組成物であって,前記銀の粒子が,2.0μm~15μmの平均粒径(メジアン径)を有する銀の粒子からなる第2導電性材料用組成物を,酸素,オゾン又は大気雰囲気下で150℃~320℃の範囲の温度で焼成して,前記銀の粒子の一部を局部的に酸化させることにより,前記銀の粒子が互いに隣接する部分において融着し,それにより発生する空隙を有する導電性材料を得ることを含み,
前記第2導電性材料用組成物が,沸点300℃以下の有機溶剤または水を更に含む導電性材料の製造方法。
【請求項11】
前記有機溶剤が,低級アルコール,または,低級アルコキシ,アミノおよびハロゲンからなる群から選択される1以上の置換基を有する低級アルコールを含む請求項10に記載の導電性材料の製造方法。」
第4 請求人の主張
1 これに対して,請求人は,「特許第5212364号の特許請求の範囲の請求項1ないし3,請求項9ないし11に係る発明についての特許を無効とする,審判費用については被請求人の負担とする,との審決を求める。」との審決を求め,証拠方法として,以下の甲第1号証-甲第29号証(枝番を含む。以下同じ。)を提出している。
また,請求人は,平成27年9月29日の口頭審理で,審判請求書,及び,平成27年9月15日付け口頭審理陳述要領書を陳述した。
さらに,請求人は,平成27年10月16日付けで上申書を提出し,平成28年6月17日付けで弁駁書を提出し,平成28年9月7日付けで意見書を提出し,及び平成30年1月10日付け,同年1月12日付けで上申書を提出した。
・甲第1号証:特開2005-267900号公報
・甲第2号証:特開2006-24808号公報
・甲第2-1号証:特開2004-58466号公報
・甲第3-1号証:特開2007-019106号公報
・甲第3-2号証:特開2006-147457号公報
・甲第3-3号証:特開平6-13756号公報
・甲第3-4号証:特開2004-217978号公報
・甲第4号証:特表2007-527102号公報
・甲第5号証:特表2005-509293号公報
・甲第6号証:特開2007-324523号公報
・甲第7号証:特開2003-8161号公報
・甲第8号証:特表2003-525974号公報
・甲第9号証:特開2006-32511号公報
・甲第10号証:特開2001-15817号公報
・甲第10-1号証:特開2007-180059号公報
・甲第11号証:特開2002-368285号公報
・甲第12号証:特開昭61-148883号公報
・甲第13号証:特開平7-11364号公報
・甲第14号証:特開2004-172160号公報
・甲第15号証:特開2006-135267号公報
・甲第16号証:特開2006-66519号公報
・甲第17号証:特開2005-310820号公報
・甲第18号証:特開2007-214162号公報
・甲第19号証:特開2003-8071号公報
・甲第20号証:特開2004-335920号公報
・甲第20-1号証:特開2004-319454号公報
・甲第20-2号証:特開2004-277688号公報
・甲第20-3号証:特開2004-362950号公報
・甲第20-4号証:特開2005-298661号公報
・甲第20-5号証:特開平6-61602号公報
・甲第20-6号証:WO2004-055843号公報
・甲第20-7号証:特開平10-88206号公報
・甲第20-8号証:特開2001-49309号公報
・甲第20-9号証:特開2003-55701号公報
・甲第20-10号証:特開2007-294355号公報
・甲第21号証:WO2006-95611号公報
・甲第22号証:特開2003-303999号公報
・甲第23号証:特開2005-136224号公報
・甲第24号証『tokugikon 2009.1.30.no.252 寄稿1「除くクレーム」の知財高裁大合議部判決について 審判26部門 相田義明』の写し(ウェブページhttps://www.tokugi kon.jp/gikonshi/252kiko1,検索日平成28年 5月30日)
・甲第25号証「特願2003-543099(甲第5号証特表2005- 509293号公報)に対する起案日平成20年4月15日付けの拒絶査 定」の写し(ウェブページ https://www.j-platpa t.inpit.go.jp/web/tokujitsu/pfwj/ BTmPFWJ_GM402GetContents,検索日平成28年 6月17日)
さらに,請求人は,平成30年1月10日付けの上申書に添付して,以下の甲第26-1号証~甲第29-3号証を提出した。
・甲第26-1号証:理化学事典第3版,玉虫文一他編,株式会社岩波書店 ,pp.334-335,510-511,1971年5月20日
・甲第26-2号証:「銀」の項目,化学事典,大木道則他編,株式会社東京化学同人,1996年10月1日発行
・甲第26-3号証:「銀」の項目,新金属データブック,隅元豊,株式会 社ホーマット,pp.177-180,1984年2月1日発行
・甲第26-4号証:実用非鉄小辞典改訂5版,産業新聞社,pp.64- 67,平成18年11月発行
・甲第26-5号証:特開2007-207604号公報
・甲第26-6号証:特開2005-48236号公報
・甲第26-7号証:化学大事典9 縮刷版,共立出版株式会社,pp.7 43,744,750,昭和39年3月15日
・甲第26-8号証:「ここまできた導電性接着剤技術」,菅沼克昭編,株 式会社工業調査会,pp.40-43,74-76,2004年1月20 日
・甲第26-9号証:理化学事典第3版増補版,玉虫文一他編,株式会社岩波書店 ,pp.334-335,1985年2月15日
・甲第27-1号証:「Kinetics of Reaction an d Adsorption in the System Silver -Oxygen」,Arthur F Benton他,JOURNAL OF THE AMERICAN CHEMICAL SOCIETY, Vol.56,pp.255-263,1934年2月7日
・甲第27-1-1号証:「THE CATALYTIC SYNTHES IS OF WATER VAPOR IN CONTACT WITH METALLIC SILVER」,Arthur F Benton他 ,JOURNAL OF THE AMERICAN CHEMICAL SOCIETY,Vol.48,pp.3027-3046,1926年 12月16日
・甲第27-1-2号証:「THE SYNTHESIS OF WATE R WITH A SILVER CATALYST.II.ENERG Y OF ACTIVATION AND MECHANISM」,Ar thur F Benton他,JOURNAL OF THE AME RICAN CHEMICAL SOCIETY,Vol.51,pp. 7-18,1929年1月8日,
・甲第27-1-3号証:「THE DISSOCIATION PRES SURE OF SILVER OXIDE BELOW 200°」, Arthur F Benton他,JOURNAL OF THE A MERICAN CHEMICAL SOCIETY,Vol.54,p p.2186-2194,1932年6月6日
・甲第27-2号証:「銀薄膜の耐食性に及ぼす合金元素添加効果」,大西 隆他,神戸製鋼技報,Vol.52,No.2,pp.17-22,20 02年9月
・甲第27-3号証:「Semiconducting optical properties of silver/silica mesop orous composite」,Weiping Cai他,App l.Phys.Lett.Vol.73, No.19,pp.2709 -2711,1998年11月9日
・甲第27-3-1号証:「The Mechanism of the Selective Oxidation of Ethylene t o Ethlene Oxide」,P.A.Kilty他,Catal . Rev. Sci. Eng.pp.1-16,1974年
・甲第27-3-2号証:「IDENTIFICATION OF OXY GEN COMPLEXES ADSORBED ON SILVER AND THEIR FUNCTION IN THE CATALYT IC OXIDATION OF ETHYLENE」, P.A. K ilty他,Proc.5th Int.Congr.Catalysi s,In press Paper Number 64 pp.929 -943,発行日不明
・甲第27-4号証:特開2002-334618号公報
・甲第27-5号証:特開2007-138287号公報
・甲第28-1号証:平成29年(行ケ)第10032号審決取消事件 準備書面(原告( 被請求人)その1)平成29年3月17日
・甲第28-2号証:平成29年(行ケ)第10032号審決取消事件 準備書面(原告( 被請求人)その2)平成29年6月29日
・甲第29-1号証:特願2003-543099号の国際出願翻訳文 提出書 平成16年3月10日
・甲第29-2号証:「マンガでわかる危険物乙4類試験:第2版」,三宅 正志監修,株式会社オーム社,pp.168-173,平成19年2月2 5日
・甲第29-3号証:「危険物乙類4種マスタブック」,石井助次郎,株式 会社電気書院,pp.68-69,1989年12月20日
2 そして,請求人が,審判請求書,口頭審理において主張したことを整理すると,無効理由について,概ね次のように主張しているものと認められる。
無効理由(特許法第29条第2項)の概要
下記アないしキのとおり,本件特許の請求項1ないし3,9ないし11に係る各発明は,その優先日前に日本国内又は外国において頒布された刊行物である甲第1号証-甲第29号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって,本件特許の請求項1ないし3,9ないし11に係る発明は,特許法第123条第1項第2号に該当し,無効とすべきものである。
ア 本件の請求項1に係る特許発明は,甲第1号証等に記載された発明に基づき,当業者が容易に発明することができたものであるので,特許法第29条第2項の規定より特許を受けることができないものであり,その特許は,特許法第123条第1項第2号の規定に該当し,無効とすべきである。
イ 本件の請求項2に係る特許発明は,甲第1号証等に記載された発明に基づいて,当業者が容易に発明することができたものであるので,特許法第29条第2項の規定より特許を受けることができないものであり,その特許は,特許法第123条第1項第2号の規定に該当し,無効とすべきである。
ウ 本件の請求項3に係る特許発明は,甲第1号証等に記載された発明に基づいて,当業者が容易に発明することができたものであるので,特許法第29条第2項の規定より特許を受けることができないものであり,その特許は,特許法第123条第1項第2号の規定に該当し,無効とすべきである。
エ 本件の請求項9に係る特許発明は,甲第5号証等に記載された発明に基づき,当業者が容易に発明することができたものであるので,特許法第29条第2項の規定より特許を受けることができないものであり,その特許は,特許法第123条第1項第2号の規定に該当し,無効とすべきである。
オ 本件の請求項9に係る特許発明は,甲第4号証等に記載された発明に基づき,当業者が容易に発明することができたものであるので,特許法第29条第2項の規定より特許を受けることができないものであり,その特許は,特許法第123条第1項第2号の規定に該当し,無効とすべきである。
カ 本件の請求項10に係る特許発明は,甲第4号証または甲第5号証等に記載された発明に基づいて,当業者が容易に発明することができたものであるので,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり,その特許は,特許法第123条第1項第2号に該当し,無効とすべきである。
キ 本件の請求項11に係る特許発明は,甲第5号証に記載された発明に基づいて,また,甲第4号証または甲第5号証に記載された発明および甲第6号証,甲第8号証,甲第1号証に記載された周知技術に基づいて,当業者が容易に発明することができたものであるので,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり,その特許は,特許法第123条第1項第2号に該当し,無効とすべきである。
第5 被請求人の主張
被請求人は,平成27年6月12日付けの答弁書によれば,「『本件審判請求は成り立たない。審判費用は請求人の負担とする。』との審決を求める。」との審決を求め,上記答弁書によれば,請求人の主張する無効理由が,請求項1ないし3,9ないし11に係る発明について成り立たないと主張している。
また,被請求人は,答弁書に添付して,以下の乙第1号証-乙第7号証を,平成27年9月15日付け口頭審理陳述要領書に添付して,以下の乙第8号証-乙第13号証を提出している。
さらに,被請求人は,平成27年9月29日の口頭審理で,上記答弁書,平成27年9月15日付け口頭審理陳述要領書,平成27年9月29日付け上申書の記載を陳述した。
そして,被請求人は,平成27年9月30日付けで,乙第14号証を添付して上申書を提出し,平成27年10月30日付けで上申書を提出し,平成28年1月27日(発送日)の審決の予告に対して,平成28年4月1日付けで答弁書,訂正請求書を提出し,平成28年8月9日(審決の予告の日)訂正拒絶理由通知書に対して,平成28年9月8日付で意見書を提出し,平成28年9月28日付けで上申書を提出した。
・乙第1号証 日本金属学会誌(1976)第40巻26-32頁,α-鉄 の表面自己拡散係数におよぼす酸素ポテンシャルの影響,新居和嘉,吉原 一紘著
・乙第2号証 はんだ付の基礎と応用,大澤直著,工業調査会,2000年 6月25日発行
・乙第3号証 ハイテク文庫1(審決注:○に1) Q&A拡散接合,大橋 修著,産報出版株式会社,1993年6月20日発行
・乙第4号証 特開2003-318217号公報
・乙第5号証 日亜化学工業株式会社,第二部門生産本部,材料加工技術統 括部,材料技術部 第1課 蔵本 雅史氏による平成27年6月10日付 報告書
・乙第6号証 特開2007-138287号公報
・乙第7号証 特開2006-228804号公報
・乙第8号証 神戸製鋼技報 Vol.52No.2(Sep.2002),「FT-IRによる銅表面 酸化第一銅(Cu2O)の定量解析」,大脇武史著
・乙第9号証の1 平成23年度神奈川県ものづくり技術交流会 要旨集, 「銅表面酸化膜がワイヤーボンディング性に与える影響」,八坂慎一著
(http://www.kanagawa-iri.jp/wp-content/uploads/filebase/koryukai/2011/3PM-C05.pdf)
・乙第9号証の2 神奈川県産業技術センターのウェブサイトの写し
(http://www.kanagawa-iri.jp/)
・乙第9号証の3 神奈川県産業技術センター「支援成果・研究成果」のウ ェブサイトの写し(bttp://www.kanagawa-iri.jp/researchresults.html)
・乙第9号証の4 神奈川県産業技術センター「ものづくり技術交流会」の ウェブサイトの写し
(http://www.kanagawa-iri.jp/researchresults/exchange_meeting.html)
・乙第9号証の5 神奈川県産業技術センター「平成23年度ものづくり技 術交流会 要旨集」のウェブサイトの写し
(http://www.kanagawa-iri.jp/researchresults/exchange_meeting/yoshi-h23.html)
・乙第10号証の1 キャノンマシナリー株式会社 研究開発センターの研 究報告,極低酸素分圧制御技術
(http://www.canon-machinery.co.jp/new-business/SUB3/sub3.htm)
・乙第10号証の2 キャノンマシナリー株式会社のウェブサイトの写し
(http://www.canon-machinery.co.jp/index_j.html)
・乙第10号証の3 キャノンマシナリー株式会社「新事業・新分野の研究 」のウェブサイトの写し
(http://www.canon-machinery.co.jp/new-business/new-business.html)
・乙第11号証 日亜化学工業株式会社 第二部門生産本部 材料・加工技 術統括部材料技術部 国宗哲平氏および山下恵祥氏による平成27年9月 11日付報告書の写し
・乙第12号証の1 一般社団法人電子情報技術産業協会半導体部会 半導 体ロ-ドマップ専門委員会 平成20年度報告 第8章
(http://semicon.jeita.or.ip/STRJ/report/2008/08.pdf)
・乙第12号証の2 一般社団法人電子情報技術産業協会半導体部会「半導 体ロ-ドマップ専門委員会」のウェブサイトの写し
(http://semicon.jeita.or.jp/STRJ/)
・乙第12号証の3 半導体ロードマップ専門委員会「2008年度STRJ年度 報告書」のウェブサイトの写し(http://semicon.jeita.or.jp/STRJ/report/2008)
・乙第13号証 特許第4611590号公報
・乙第14号証 エレクトロニクス実装学会誌 Vol.12 No.2(2009), 「酸化銀マイクロ粒子を用いた接合技術」,守田俊章,保田雄亮,
井出英一,廣瀬明夫著,110-113ページ
・乙第15号証 特開平7-118701号公報
・乙第16号証 国際公開WO03/041165号公報
・乙第17号証 日亜化学工業株式会社,第二部門生産本部,材料・加工技 術統括部材料技術部 第一課 課長 蔵本 雅史氏による平成28年3月 28日付け報告書(写)
・乙第18号証の1 福田金属箔粉工業株式会社発行,導電材料カタログ( 第17号証の添付書類1)
・乙第18号証の2 福田金属箔工業株式会社の「製品カタログ」の「導電 材料(シルコート)」のウェブページの写し(http://www.f ukuda-kyoto.co.jp/03product/data1 -07.html)(乙第17号証の添付書類2)
・乙第18号証の3 福田金属箔粉工業株式会社の「製品カタログ」の「A gC-224」のデータシートのウェブページの写し(http://w ww.fukuda-kyoto.co.jp/03product/a gc-224.html)(第17号証の添付書類3)
・乙第18号証の4 福田金属箔粉工業株式会社の「製品カタログ」の「A gC-239」のデータシートのウェブページの写し(http://w ww.fukuda-kyoto.co.jp/03product/a gc-239.html)(乙第17号証の添付書類4)
・乙第18号証の5 2007年4月27日に公開されていた福田金属箔粉 工業株式会社の「製品カタログ」の「導電材料(シルコート)」のウェブ ページの写し(https://web.archive.org/we b/20070427013417/http://www.fukud a-kyoto.co.jp/03product/data1-07. html)(乙第17号証の添付書類5)
・乙第18号証の6 2007年4月30日に公開されていた福田金属箔粉 工業株式会社の「製品カタログ」の「AgC―224」のデークシートウ ェブぺージの写し(httpS://web.archive.org/ web/20070430203524/http://www.fuk uda-kyoto.co.jp/03product/agc-224 .html)に第17号証の添付書類6)
・乙第18号証の7 2007年4月30日に公開されていた福田金属箔粉 工業株式会社の「製品カタログ」の「AgC‐239」のデータシートの ウェブぺージの写し(https://web.archive.org /web/20070430203441/http://www.fu kuda‐kyoto.co.jp/03product/agc―23 9.html)に第17号証の添付書類7)
・乙第18号証の8 ウイキぺディア「インターネツト・アーカイブ」のウ エブぺージの写し(https://jp.wikipedia.org /wiki/%E3%82%A4%E3%83%B3%E3%82%BF %E3%83%BC%E3%83%8D%E3%83%83%E3%83 %88%E3%83%BB%E3%82%A2%E3%83%BC%E3 %82%AB%E3%82%A4%E3%83%96)(乙第17号証の 添付書類8)
・乙第19号証 特願2003-543099号(甲5)の審査過程で提出 された平成20年3月17日付けの意見書
第6 無効理由について
1 本件訂正発明1について
1-1 本件訂正発明1
本件訂正発明1は,「第3 本件訂正発明」で認めたとおりであり,再掲すると,以下のとおりである。
「【請求項1】
電性材料の製造方法であって,
前記方法が,
銀の粒子と金属酸化物の粒子とを含む第1導電性材料用組成物であり,前記銀の粒子が,0.1μm~15μmの平均粒径(メジアン径)を有する銀の粒子からなる第1導電性材料用組成物を焼成することにより,前記銀の粒子と前記金属酸化物の粒子との接触部にて,前記金属酸化物の粒子から前記銀の粒子に酸素を供給させることによって,前記銀の粒子が互いに隣接する部分において融着し,それにより発生する空隙を有する導電性材料を得ることを含む方法。」
1-2 甲第1号証の記載事項
本件特許に係る出願の優先権の主張の日(以下「本件の優先日」という。)前に頒布された刊行物である甲第1号証には,「導電性ペースト及びその製造方法」(発明の名称)に関して,図1-2とともに,以下の事項が記載されている。(下線は,当審で付与した。以下同じ。)
(甲1a)「【請求項1】
銀と,酸化銀と,該酸化銀を還元する性質をもった有機化合物とから構成されていることを特徴とする導電性ペースト。
【請求項2】
前記有機化合物中において,前記銀と前記酸化銀は,それぞれ独立した粒子をなしていることを特徴とする請求項1に記載の導電性ペースト。」
(甲1b)「【技術分野】
【0001】
本発明は,導電性膜,導電性配線,電極等を形成することのできる導電性ペースト及びその製造方法に関する。」
(甲1c)「【背景技術】
【0002】
従来より,導電性ペーストとしては,銀微粒子,バインダ,溶剤等が混合されてなる銀導電性ペーストが用いられている。例えば,銀導電性ペーストを基材表面に塗布,乾燥することによって,導電膜を形成できる。
しかし,このような銀導電性ペーストにより形成された導電膜では,以下に示されたように金属銀が本来有する導電性が得られなかった。
銀導電性ペーストにより形成された導電膜内において,銀微粒子同士は物理的に接触しているのみであり,更に銀微粒子同士の接触抵抗が生じるため,導電膜の導電性が,金属銀に比べて劣ったものとなる。
更に,バインダ含有量が多くなると,銀微粒子間にバインダが介在し,導電膜の導電性が大幅に低下してしまう場合がある。
【0003】
そこで,銀導電性ペーストを塗布後,高温で加熱することにより,銀微粒子を溶融させ,銀微粒子同士が融着した導電膜を形成し,導電性を向上させる試みもなされている。
しかし,この場合,500℃以上の高温に加熱する必要があり,耐熱性の高い基材のみにしか使用できず,用途が限定されてしまう。また高温度に加熱する必要があるため,製造設備に係るコストやランニングコストが高くなってしまう問題点があった。
【0004】
一方,銀微粒子の代わりに,酸化銀微粒子を含有する導電性ペーストも提案されている。酸化銀微粒子を含有する導電性ペーストを基材等の表面に塗布後,加熱し,酸化銀微粒子を還元して銀微粒子とする。還元されたばかりの活性な銀粒子同士が融着するため,導電性に優れた導電膜を形成できる。
しかしながら以下の式(1)に示されたように酸化銀が還元反応によって銀となるためには,400℃程度の高温にする必要があり,200℃以下の低温では還元反応が十分に起こらず,優れた導電性が得られない場合があった。
【0005】
Ag2O→2Ag+1/2O2 (1)
【0006】
そこで,導電性ペーストに還元剤を添加することによって,酸化銀微粒子の還元反応の低温度化を図る試みも行われている。
しかし,導電性ペーストを基材表面に塗布後,加熱する際,還元剤等が分解して分解生成ガスが発生したり,酸化銀微粒子の還元によって酸素ガスが発生し,これらガスによって導電膜中にポア(空隙)が形成され,非常にポアが多く,密度の低い銀の導電膜となる場合があった。
このようなポアを多く含み,密度の低い導電膜では,金属銀が本来有する導電性が得られず,また十分な膜強度が得られない場合があった。(省略)」
(甲1d)「【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は,上記した事情に鑑みなされたものであり,緻密で,優れた導電性と膜強度を有する導電膜を形成できる導電性ペースト及びその製造方法を提供することを目的とする。」
(甲1e)「【発明の効果】
【0009】
本発明の導電性ペーストによれば,銀と共に酸化銀が含有されたことによって,銀が含まれておらず酸化銀のみが含有されている従来の導電性ペーストに比べて,導電性ペースト中の酸化銀の含有量が少なくてよく,この酸化銀を還元するために必要となる有機化合物の含有量も低減できる。
これにより,酸化銀を還元する性質をもった有機化合物の分解生成ガスの発生量を低減でき,かつ酸化銀の還元によって生成される酸素ガスの量も低減できるため,これらガスによって導電膜中に形成されるポアの量を大幅に低減できる。
このため,緻密な導電膜を形成できるため,優れた導電性が得られ,かつ優れた膜強度が得られる。
【0010】
導電性ペーストが,銀粒子と酸化銀粒子を含有する場合,通常の塗布方法を用いて基板等の基材上に塗布した後,加熱すると,導電性ペースト中の酸化銀粒子が還元されて活性な銀粒子となり,この還元されたばかりの活性な銀粒子を介して,導電性ペーストに含有されていた銀粒子同士とを融着させることができる。
このように,酸化銀粒子が還元されて生成した活性な銀粒子を介して,導電性ペーストに含有されていた銀粒子同士が融着されるため,銀粒子間の接触抵抗を低減できる。更に,前記したように,ポアが少なく緻密な導電膜が形成されるため,更に優れた導電性が得られ,かつ優れた膜強度が得られる。」
(甲1f)「【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の導電性ペースト及びその製造方法の最良の形態について説明する。
なお,この形態は,発明の趣旨をより良く理解させるために具体的に説明するものであり,特に指定のない限り,本発明を限定するものではない。
[第一の実施形態]
図1は,本実施形態の導電性ペーストの一例を示す模式図である。この導電性ペースト11は,銀と,酸化銀と,酸化銀を還元する性質をもった有機化合物12とから少なくとも構成されたものである。特に,銀と酸化銀とは,それぞれ粒子をなし,銀粒子13と酸化銀粒子14として導電性ペースト11中に含有されている。
ここで,前記銀とは,銀単体すなわち金属銀である。
【0014】
導電性ペースト11中に含まれる酸化銀粒子14としては,酸化銀(I)(Ag2O),酸化銀(II)(AgO),三酸化銀(Ag2O3),一酸化三銀(Ag3O)等の酸化銀から構成されている粒子が挙げられる。
酸化銀粒子14としては,特に限定されないが,粒子の一部又は全てが酸化数の低い酸化銀(I)又は一酸化三銀(Ag3O)から構成されている酸化銀粒子が好ましい。
酸化銀(I)又は一酸化三銀(Ag3O)は,酸化数が低いため,還元されて銀粒子となるために受容する電子の数が少なくて済み,酸化銀を還元させるための有機化合物12の量を低減でき,この有機化合物12の分解生成ガスの発生量を低減できる。
また,酸化銀(I)又は一酸化三銀(Ag3O)は,還元によって生成される銀の量に対して,還元によって生成される酸素ガスの量が少なく,酸素ガスによって導電膜中に形成されるポアの量を低減できる。
【0015】
酸化銀粒子14の平均一次粒子径は,5nm以上,500nm以下が好ましい。これにより,酸化銀粒子14の表面積が大きいため,酸化銀粒子14は反応性に富み,また酸化銀粒子14と,酸化銀を還元する性質をもった有機化合物12との接触面を大きくすることができる。このため,酸化銀粒子14が還元されやすくなり,100℃以上,200℃以下の低温度で酸化銀粒子14を還元させることができる。
【0016】
酸化銀粒子14は,その平均一次粒子径が5nm以上,500nm以下であると共に,導電性ペースト11中の全ての酸化銀粒子14の一次粒子径が5nm以上,500nm以下であることが更に好ましい。
このような酸化銀粒子14は,粒度が揃っているため充填性に優れる。このため,酸化銀粒子14が銀粒子13同士の粒子間に高濃度に充填しやすく,この酸化銀粒子14が含有された導電性ペースト11を用いることによって,緻密な導電膜を形成できる。
【0017】
酸化銀粒子14の平均一次粒子径が500nmよりも大きい場合,酸化銀粒子14の表面積が小さく,酸化銀粒子14は反応し難くなり,また酸化銀粒子14と,酸化銀を還元する性質をもった有機化合物12との接触面が小さくなってしまう。このため,酸化銀粒子14を還元させるためには200℃よりも高い温度で加熱しなければならなくなるため,好ましくない。
また,酸化銀粒子14の平均一次粒子径が5nmよりも小さい場合,酸化銀粒子14は凝集しやすく,均一に分散した粒子とすることが難しい。このため,凝集体を多く含有してしまい,酸化銀粒子14と,酸化銀を還元する性質をもった有機化合物12との接触面が小さくなってしまうため,好ましくない。」
(甲1g)「【0019】
導電性ペースト11に含有されている銀粒子13は,銀から構成されている粒子である。
銀粒子13の平均一次粒子径は,20nm以上,15μm以下が好ましい。これにより,銀粒子13は,酸化銀粒子14と均一に混合されやすく,銀粒子13同士の粒子間に酸化銀粒子14が分散した状態とすることができる。このため,酸化銀粒子14が還元されて活性な銀粒子となる際,この活性な銀粒子を介して,導電性ペースト11中に含有されていた銀粒子13同士が融着しやすくなる。
【0020】
特に,銀粒子13の平均一次粒子径が前記した範囲である場合,銀粒子13の平均一次粒子径に対する酸化銀粒子14の平均一次粒子径の比を十分に小さくすることができる。これにより,酸化銀粒子14の含有量が少量であっても,銀粒子13の表面に酸化銀粒子14が付着した状態とすることができる。
銀粒子13の表面に酸化銀粒子14が付着している場合,酸化銀粒子14を介して銀粒子13同士が接触した状態となりやすい。このため,酸化銀粒子14が還元されて活性な銀粒子となると,この活性な銀粒子を介して,導電性ペースト11中に含有されていた銀粒子13同士は,確実にかつ容易に融着される。
【0021】
このように,酸化銀粒子14の含有量が少量であっても,酸化銀粒子14が還元されて生成した銀粒子を介して,導電性ペースト11中に含有されていた銀粒子13同士を融着できるため,必要となる酸化銀粒子14の含有量を低減できる。
これにより,酸化銀粒子14を還元する性質をもった有機化合物12の分解生成ガスの発生量を更に低減でき,かつ酸化銀粒子14の還元によって生成される酸素ガスの量も更に低減できるため,ガスによって形成されるポアの量を更に低減でき,より緻密な導電膜を形成でき,より優れた導電性と膜強度が得られる。
【0022】
銀粒子13は,その平均一次粒子径が20nm以上,15μm以下であると共に,導電性ペースト11中の全ての銀粒子13の一次粒子径が20nm以上,15μm以下であることが更に好ましい。
このような銀粒子13は,粒度が揃っているため充填性に優れる。このため,この銀粒子13が含有された導電性ペースト11を用いることによって,緻密な導電膜を形成できる。」
(甲1h)「【0025】
導電性ペースト11中の銀粒子13の含有量(CA)に対する酸化銀粒子14の含有量(CO)の比(CO/CA)(質量比)は,1/100以上,1/1以下が好ましい。
これにより,銀粒子13同士の粒子間に十分な量の酸化銀粒子14が分散した状態とすることができる。このため,酸化銀粒子14が還元されて活性な銀粒子となると,この活性な銀粒子を介して,導電性ペースト11中に含有されていた銀粒子13同士は,確実にかつ容易に融着される。
【0026】
前記CO/CAが1/100よりも小さい場合,導電性ペースト11中の酸化銀粒子14の含有量が少ないため,銀粒子13同士の粒子間に酸化銀粒子14が分散した状態とすることが難しくなる。このため,酸化銀粒子14が還元されて生成した活性な銀粒子を介して,導電性ペースト11中に含有されていた銀粒子13同士が融着し難くなるため,好ましくない。
前記CO/CAが1/1よりも大きい場合,導電性ペースト11中の酸化銀粒子14の含有量が多いため,酸化銀を還元するために有機化合物12の含有量を多くする必要がある。
このため,導電性ペースト11を面状の基材等に塗布後,加熱する際,前記有機化合物12の分解生成ガスが多く発生し,また酸化銀粒子14の還元によって多くの酸素ガスが発生し,これらガスによって多くのポアが生じ密度の低い導電膜となってしまうため好ましくない。」
(甲1i)「【0027】
前述した酸化銀粒子14又は銀粒子13の粒子形状は,特に限定されないが,板状,針状が好ましい。これにより,酸化銀粒子14同士,銀粒子13同士,又は酸化銀粒子14と銀粒子13とは,面接触することになり,接触面積を大きくすることができる。また,銀粒子13の充填性が向上し,銀粒子13間の粒子間隔を低減できる。
このため,酸化銀粒子14が還元されて生成した活性な銀粒子を介して,導電性ペースト11中に含有されていた銀粒子13同士が融着する際,銀粒子13間の導電パスが形成されやすくなる。これにより,銀粒子13同士は,面接触した状態で融着し,導電パスが多数形成されて緻密な導電膜となり,優れた導電性と膜強度が得られる。
【0028】
また,球状の酸化銀粒子14に比べて,板状又は針状の酸化銀粒子14は,粒子の表面積が大きく,酸化銀を還元する性質をもった有機化合物12との接触面積を大きくすることができる。このため酸化銀粒子14は前記有機化合物12によって還元されやすくなり,銀粒子13同士をより確実に融着させることができる。
なお,酸化銀粒子14又は銀粒子13の一部の粒子の粒子形状が,板状又は針状であればよく,例えば,板状の粒子と針状の粒子との混合物,板状の粒子又は針状の粒子と,球状等の他の粒子形状の粒子との混合物等であっても構わない。
【0029】
酸化銀粒子14の粒子形状が,板状又は針状の場合,酸化銀粒子14の平均一次粒子径は,5nm以上,500nm以下が好ましい。これにより,酸化銀粒子14と,酸化銀を還元する性質をもった有機化合物12との接触面積を十分に大きくすることができる。このため酸化銀粒子14が還元されやすくなり,少量の有機化合物12で,かつ低温度で酸化銀粒子14を還元させることができる。
また,銀粒子の13粒子形状が,板状又は針状の場合,銀粒子13の平均一次粒子径は,20nm以上,10μm以下が好ましい。これにより,銀粒子13表面に酸化銀粒子14が付着しやすくなり,少量の酸化銀粒子14で銀粒子13同士を確実に融着させることができる。
ここで,板状の粒子の一次粒子径とは,粒子の長径を言い,針状の粒子の一次粒子径とは,粒子の長さを言う。」
(甲1j)「【0030】
次に,酸化銀を還元する性質をもった有機化合物12について説明する。
この酸化銀を還元する性質をもった有機化合物12は,100℃以上,200℃以下で加熱されると,酸化銀粒子14を還元する性質を有するものである。
前記有機化合物12としては,一般に還元剤として利用されているものに限定されず,テルピネオール,イソホロン,ポリエチレングリコール,ポリプロピレングリコール,エチルセルロース等のバインダや溶媒として利用されるものも適用できる。
酸化銀を還元する性質をもった有機化合物12として,前記したバインダや溶媒として利用されるものを用いることによって,バインダや溶剤を還元剤として併用できる。
【0031】
前記有機化合物12として適用できる化合物のうち,一般に還元剤として利用されているものとしては,特に限定されないが,分子構造中に,置換基としてヒドロキシル基を有するベンゼン環を備えたもの,又は有機酸が好ましく,これにより100℃以上,200℃以下の低温度で酸化銀粒子を還元できる。
更に,分解温度の低い有機化合物12が好ましく,また,還元剤として機能した後の反応生成物(酸化物)の沸点,分解温度が比較的低いものが好ましい。これにより,導電性ペーストを基材等に塗布後,加熱して導電膜を形成する際,酸化銀を還元する性質をもった有機化合物12の反応生成物(酸化物)が残留有機物としてほとんど残留せず,残留有機物による導電性の低下を抑制できる。
【0032】
前記置換基としてヒドロキシル基を有するベンゼン環を備えた分子構造の有機化合物12としては,特に限定されないが,例えば,フェノール,ヒドロキノン,ピロカテキン,レゾルシン,オルシン,クルシオール,ピロガロール,フロログルシン,ヒドロキシヒドロキノン,ジヒドロキシナフタレン等が挙げられる。
また,ベンゼン環を2つ以上備えていても構わず,またヒドロキシル基と共に他の置換基を有していても構わない。
特に,ヒドロキノン,ピロカテキン,レゾルシンは,還元力が比較的強く,また還元剤として機能した後の反応生成物(酸化物)の沸点,分解温度が比較的低いため,好ましく用いることができる。前記したヒドロキノン,ピロカテキン,レゾルシンのうち1種以上が含有された導電性ペーストを基材等に塗布後,加熱して導電膜を形成した際に,還元性を有する有機化合物12の反応生成物(酸化物)が残留有機物としてほとんど残留しないため,残留有機物による導電性の低下を抑制できる。
【0033】
前述した有機酸としては,特に限定されないが,例えば,アスコルビン酸,ゲンチシン酸,プロトカテク酸,没食子酸,蟻酸,酢酸,シュウ酸,クエン酸等が挙げられる。
特に,蟻酸は,還元力が比較的強く,また還元剤として機能した後の反応生成物(酸化物)の沸点,分解温度が比較的低く,導電性ペーストを基材等に塗布後,加熱して導電膜を形成した際に,蟻酸の反応生成物(酸化物)が残留有機物としてほとんど残留せず,好ましく用いることができる。
【0034】
有機化合物12の含有量は,酸化銀粒子14の粒子径,有機化合物12の種類によって異なるが,酸化銀粒子14に対して1質量%以上,30質量%以下が好ましく,これにより酸化銀粒子14をほぼ完全に還元でき,かつ有機化合物12の反応生成物(酸化物)が導電膜中にほとんど残留しないようにすることができる。
酸化銀粒子14に対する有機化合物12の含有量が1質量%未満の場合,酸化銀粒子14が還元されずに残留してしまうため好ましくない。また,酸化銀粒子14に対する有機化合物12の含有量が30質量%よりも多い場合,有機化合物12の反応生成物(酸化物)が導電膜中に残留し,導電膜の導電性画低下してしまうため好ましくない。
【0035】
また,導電性ペースト11には溶剤が含有され,導電性ペースト11の流動性等が調整されている。
前記溶剤としては,銀粒子13,酸化銀粒子14,有機化合物12を混合,分散できるものであれば特に限定されず使用できる。例えばテルピネオール,イソホロン,ジグライム,シクロヘキサノン,ブチルセロソルブ,メタノール,エタノール,トルエン,テトラデカン,プロピレングリコールモノブチルエーテル等から選択された1種,又は2種以上の混合溶剤が挙げられる。
前記溶剤群のうち,テルピネオール,イソホロン,ジグライム,プロピレングリコールモノブチルエーテル等は,100℃以上,200℃以下で加熱されると,酸化銀を還元する性質を有するため,酸化銀を還元する有機化合物12として併用できる。」
(甲1k)「【0036】
導電性ペースト11を,スクリーン印刷,グラビア印刷,オフセット印刷,スピンコート,ディップコート,バーコート,インクジェット等の通常の塗布方法を用いて基板等の基材上に塗布した後,100℃以上,200℃以下の低温度で加熱することによって,導電性ペースト11中の酸化銀粒子14が還元されて銀粒子となり,この還元されたばかりの活性な銀粒子を介して,導電性ペースト11中に含有されていた銀粒子13同士が融着し,導電膜や導電配線となる。」
(甲1l)「【0037】
本実施形態によると,導電性ペースト11中に銀粒子13と共に,酸化銀粒子14が含有されたことによって,導電性ペースト11を基材等に塗布後,加熱すると,酸化銀粒子14が,酸化銀を還元する性質をもった有機化合物12によって還元されて活性な銀粒子となり,この活性な銀粒子を介して,導電性ペースト11中に含有されていた銀粒子13同士を融着させることができる。
このため,銀粒子が含まれておらず酸化銀粒子のみが含有されている従来の導電性ペーストに比べて,導電性ペースト11中の酸化銀粒子14の含有量が少なくてよく,この酸化銀粒子14を還元するために必要となる酸化銀を還元する性質をもった有機化合物12の含有量も低減できる。
これにより,前記有機化合物12の分解生成ガスの発生量を低減でき,かつ酸化銀粒子14の還元によって生成される酸素ガスの量も低減できるため,ガスによって形成されるポアの量を大幅に低減できる。このため,前記導電性ペースト11を用いることによって,緻密な導電膜を形成できる。
【0038】
また,酸化銀粒子が含まれておらず銀粒子のみが含有されている従来の導電性ペーストでは,導電膜としたとき,銀粒子同士が物理的に接触しているのみであった。
これに比べて本実施形態では,酸化銀粒子14が還元されて生成した活性な銀粒子を介して,導電性ペースト11に含有されていた銀粒子13同士が融着されており,銀粒子13間の接触抵抗を低減できる。更に,前記したように,形成された導電膜中にはポアが少なく緻密であるため,更に優れた導電性が得られ,かつ優れた膜強度が得られる。
【0039】
なお,導電性ペースト11には,用途,目的に応じてエチルセルロース,エポキシ樹脂等の樹脂バインダ等が含有されていても構わない。
また,銀粒子13,酸化銀粒子14は,銀,酸化銀以外の化合物を含有していても構わない。また,導電性ペースト11中には,金,銅等の金属粒子が含有されていても構わない。」
(甲1m)「【実施例】
【0050】
以下,実施例により本発明を具体的に説明するが,本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
[実施例1]
銀粒子13として,粒子形状が球状であり,粒子の一次粒子径が20nm以上,10μm以下の範囲内にあり,平均一次粒子径が2μmの粉末を用意した。
また,酸化銀粒子14として,粒子形状が球状であり,全ての粒子の一次粒子径が5nm以上,500nm以下の範囲内にあり,平均一次粒子径が100nmの粉末を用意した。
導電性ペースト11中の銀粒子13の含有量(CA)に対する酸化銀粒子14の含有量(CO)の比(CO/CA)(質量比)が1/20となるように,銀粒子粒子13と酸化銀粒子14の混合比を調整して銀粒子13と酸化銀粒子14を混合した。
【0051】
前記した銀粒子13と酸化銀粒子14と,樹脂バインダとしてエチルセルロースと,溶剤としてα-テルピネオールとを混合した後,三本ロールミルを用いて混練して導電性ペースト11を作製した。
ここで,エチルセルロースとα-テルピネオールとは,200℃以下で加熱されると酸化銀を還元する性質をもった有機化合物12である。また,導電性ペースト11中のエチルセルロースの含有量は1質量%であり,α-テルピネオールの含有量は10質量%であり,かつ酸化銀粒子14に対する酸化銀を還元する性質をもった有機化合物12の含有量が5質量%となるように,エチルセルロースとα-テルピネオールの含有量を調整した。
得られた導電性ペースト11をガラス基板に塗布した後,150,180,200℃で30分加熱し,銀導電膜を作製した。
【0052】
[実施例2]
酸化銀粒子14として,粒子の一次粒子径が5nm以上,500nm以下の範囲内にあり,平均一次粒子径が50nmの粉末を用いた以外は,実施例1と同様にして導電性ペースト11を作製し,この導電性ペースト11を用いて銀導電膜を作製した。」
(甲1n)【0055】の【表1】から,
「実施例1」の「加熱温度」200℃における「比抵抗値」が,3.8×10-6Ω・cmであること,
「実施例2」の「加熱温度」200℃における「比抵抗値」が,3.1×10-6Ω・cmであること,
「比較例1」の「加熱温度」200℃における「比抵抗値」が,8.2×10-6Ω・cmであることを読み取ることができる。
(甲1o)「【0056】
比較例1で得られた銀導電膜の比抵抗率は,8.0×10-6Ω・cmよりも高く,導電性に劣ることがわかった。
銀粒子13が含まれていないため,導電性ペースト中の酸化銀の含有量が多く,酸化銀粒子14の還元によって酸素ガスが多量に発生することになる。このため,酸素ガスによって銀導電膜中にポアが多数形成されて膜密度が低下し,これにより銀導電膜の導電性が低下したと考えられる。
【0057】
これに対して,実施例1~3で得られた銀導電膜の比抵抗率は,6.0×10-6Ω・cm以下の低い値であり,優れた導電性を有することがわかった。
実施例1,2では,導電性ペースト11中に,銀粒子13と共に酸化銀粒子14が含有されたことによって,導電性ペースト11をガラス基板に塗布後,加熱すると,酸化銀を還元する性質をもった有機化合物12によって酸化銀粒子14が還元されて活性な銀粒子となり,この活性な銀粒子を介して,導電性ペースト11中に含有されていた銀粒子13同士が融着する。このように銀粒子13同士が融着されることによって,銀粒子13間の接触抵抗を低減できる。
更に,酸化銀粒子14と共に銀粒子13が含有されており,導電性ペースト11中の酸化銀粒子14の含有量は,比較例1に比べて少ないため,ポアが少なく緻密な銀導電膜が形成される。
以上により,優れた導電性が得られたと考えられる。
【0058】
特に,実施例1~3で得られた銀導電膜のうち,実施例1で得られた銀導電膜に比べて実施例2で得られた銀導電膜の比抵抗率が低い。
実施例1に比べて,実施例2では,導電性ペースト11中の酸化銀粒子14の平均一次粒子径が小さいため,銀粒子13同士の粒子間や,銀粒子13表面に,酸化銀粒子14が存在しやすくなる。このため,銀粒子13同士は,酸化銀粒子14を介して,より確実に接触した状態となり,銀粒子13が酸化銀粒子14を介して接触していない箇所を低減できる。
このため,酸化銀粒子14が還元されて活性な銀粒子となると,この活性な銀粒子を介して,導電性ペースト11中に含有されていた銀粒子13同士は,確実にかつ容易に融着され,これにより実施例1に比べて比抵抗率が低減したと考えられる。
【0059】
また,実施例3で得られた銀導電膜では,実施例1~3の中で最も低い比抵抗率が得られた。
この実施例3の導電性ペースト21中には,コアシェル構造の複合粒子25が含有されており,この複合粒子25同士は,互いにシェル層25bで接触する。このため,酸化銀を還元する性質をもった有機化合物22によって複合粒子25のシェル層25bの酸化銀が還元されると,酸化銀は活性な銀となり,この活性な銀から構成されたシェル層25bを介して,複合粒子25同士は,確実にかつ容易に融着され,これにより最も小さい比抵抗率が得られたと考えられる。」
(甲1p)「【0060】
[実施例4]
銀粒子13として,粒子形状が板状であり,平均一次粒子径が3μm,平均粒子厚さが100nmの粒子を用い,かつ酸化銀粒子14として,粒子形状が板状であり,平均一次粒子径が500nm,平均粒子厚さが50nmの粒子を用いた以外は,実施例1と同様にして導電性ペースト11を作製し,この導電性ペースト11を用いて銀導電膜を作製した。
なお,前記粒子の平均一次粒子径は,粒子の長径の平均値である。
[実施例5]
銀粒子13として,粒子形状が針状であり,平均粒子長さが3μmの粒子を用い,かつ酸化銀粒子14として,粒子形状が針状であり,平均粒子長さが500nmの粒子を用いた以外は,実施例1と同様にして導電性ペースト11を作製し,この導電性ペースト11を用いて銀導電膜を作製した。」
(甲1q)「【0064】
実施例1~3の銀導電膜に比べて,実施例4~7の銀導電膜では,より低い比抵抗率が得られた。
粒子形状が板状又は針状の場合,粒子同士が面接触することになり,接触面積を大きくすることができ,また粒子間隔を低減できる。
実施例4,5では,銀粒子13の粒子形状が板状又は針状であるため,銀粒子13同士は,面接触した状態で融着し,導電パスが多数形成されて緻密な銀導電膜となる。
同様に,実施例6,7では,複合粒子25の粒子形状が板状又は針状であるため,複合粒子25同士は,面接触した状態で融着し,導電パスが多数形成されて緻密な銀導電膜となり,優れた導電性と膜強度が得られる。」
(甲1r)「【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明の導電性ペーストをガラス基板等の基材に塗布後,200℃以下の低温度で加熱すると,緻密で,優れた導電性と膜強度を有する導電性膜となるため,プリント回路基板や,メンブレン回路等の印刷回路基板等の回路配線を形成する際に利用できる。また,各種電極への電子部品の端子やリード線の接着等にも利用できる。」
1-3 本件訂正発明1についての当審の判断
(1)引用発明1
ア 上記摘記(甲1a)-(甲1r)の記載を総合すると,甲第1号証には,次の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。
「銀粒子13として,粒子形状が球状であり,粒子の一次粒子径が20nm以上,10μm以下の範囲内にあり,平均一次粒子径が2μmの粉末を用意する工程と,
酸化銀粒子14として,粒子形状が球状であり,全ての粒子の一次粒子径が5nm以上,500nm以下の範囲内にあり,平均一次粒子径が100nmの粉末を用意する工程と,
導電性ペースト11中の前記銀粒子13の含有量(CA)に対する前記酸化銀粒子14の含有量(CO)の比(CO/CA)(質量比)が1/20となるように,前記銀粒子13と前記酸化銀粒子14の混合比を調整して前記銀粒子13と前記酸化銀粒子14を混合する工程と,
前記した銀粒子13と酸化銀粒子14と,樹脂バインダとしてエチルセルロースと,溶剤としてα-テルピネオールとを混合した後,三本ロールミルを用いて混練して前記導電性ペースト11を作製する工程であって,
前記エチルセルロースと,前記α-テルピネオールとは,200℃以下で加熱されると酸化銀を還元する性質をもった有機化合物12であり,また,前記導電性ペースト11中の前記エチルセルロースの含有量は1質量%であり,前記α-テルピネオールの含有量は10質量%であり,かつ前記酸化銀粒子14に対する酸化銀を還元する性質をもった前記有機化合物12の含有量が5質量%となるように,エチルセルロースとα-テルピネオールの含有量を調整したものである,前記導電性ペースト11を作製する工程と,
得られた前記導電性ペースト11をガラス基板に塗布する工程と,
次いで,200℃で30分加熱する工程であって,
当該加熱する工程において,前記導電性ペースト11中に,前記銀粒子13と共に前記酸化銀粒子14が含有されたことによって,酸化銀を還元する性質をもった前記有機化合物12によって前記酸化銀粒子14が還元されて活性な銀粒子となり,この活性な銀粒子を介して,前記導電性ペースト11中に含有されていた前記銀粒子13同士が融着される工程とを有し,
このように前記銀粒子13同士が融着されることによって,前記銀粒子13間の接触抵抗が低減され,比抵抗値が3.8×10-6Ω・cmである優れた導電性を備えた,銀導電膜を作製する方法であって,
銀が含まれておらず酸化銀のみが含有されている従来の導電性ペーストに比べて,導電性ペースト中の酸化銀の含有量が少なくてよく,この酸化銀を還元するために必要となる有機化合物の含有量も低減でき,これにより,酸化銀を還元する性質をもった有機化合物の分解生成ガスの発生量を低減でき,かつ酸化銀の還元によって生成される酸素ガスの量も低減できるため,これらガスによって導電膜中に形成されるポアの量を大幅に低減できる,緻密な導電膜を形成でき,優れた導電性が得られ,かつ優れた膜強度が得られる,
銀導電膜を作製する方法。」
イ なお,請求人は,審判請求書の第14ページにおいて,甲第1号証に記載された発明及び甲第1号証記載発明の効果を,以下のように認定している。
「α.優れた導電性と膜強度が得られる導電膜の製造方法であって,
前記方法が,
β.(b-1)銀粒子と,(b-2)酸化銀粒子とを含む導電性ペーストであり,
前記銀粒子が,(b-3)20nm~15μmの平均一次粒子径を有する銀粒子からなる導電性ペーストを
γ.加熱して,
δ.銀粒子同士は,面接触した状態で融着し,導電パスが多数形成された導電膜となり,
ε.導電膜中にポア(空隙)が形成された
α.導電膜を得ることを含む方法。」
[甲第1号証記載発明の効果]
「20nm~15μmの平均一次粒子径を有する(実施例1では2μmの平均一次粒子径を有する)銀粒子と酸化銀粒子を用いて,100~200℃程度の低温で焼成して,6.0×10-6Ω・cm以下の低い抵抗値の銀導電膜を形成できる」
しかしながら,甲第1号証の上記摘記(1a)の「【請求項1】銀と,酸化銀と,該酸化銀を還元する性質をもった有機化合物とから構成されていることを特徴とする導電性ペースト。」等の記載からも明らかなように,甲第1号証には,導電性ペーストが,「酸化銀を還元する性質をもった有機化合物」を含むものであることを前提とした発明が開示されているだけであって,請求人が認定する,導電性ペーストが,「酸化銀を還元する性質をもった有機化合物」を含まない場合を許容するような上位概念の発明が開示されているとまでは認めることができない。
そこで,甲第1号証に記載された発明を,請求人の主張する発明特定事項及び効果に加えて,「酸化銀を還元する性質をもった有機化合物」を含むことが明確となるように,甲第1号証の実施例等の記載に基づいて,上記(ア)のように認定した。
(2)対比(本件訂正発明1と引用発明1)
ア 本件訂正発明1と引用発明1とを対比する。
イ 引用発明1によって作製された銀導電膜の比抵抗値は,3.8×10-6Ω・cmであり,優れた導電性を備えているから,導電性材料といえる。
したがって,引用発明1の「銀導電膜」と,本件訂正発明1の「導電性材料」とは,「導電性材料」である点で一致する。
ウ 引用発明1の「銀粒子13」は,「粒子形状が球状であり,粒子の一次粒子径が20nm以上,10μm以下の範囲内にあり,平均一次粒子径が2μmの粉末」であるのに対して,本件訂正発明1の「銀の粒子」は,「0.1μm~15μmの平均粒径(メジアン径)を有する銀の粒子」である。
そうすると,引用発明1の「銀粒子13」と,本件訂正発明1の「銀の粒子」とは,下記の相違点1-1を除き,「所定の粒径を有する銀の粒子」である点で一致する。
エ 「酸化銀」は,「金属酸化物」の一種であるから,引用発明1の「酸化銀粒子14」と,本件訂正発明1の「金属酸化物の粒子」とは,「金属酸化物の粒子」である点で一致する。
オ 本件訂正発明1の「銀の粒子と金属酸化物の粒子とを含む第1導電性材料用組成物」については,以下のように理解することができる。
(ア)引用発明1の「導電性ペースト11」は,「銀粒子13と酸化銀粒子14と,樹脂バインダとしてエチルセルロースと,溶剤としてα-テルピネオールとを混合した後,三本ロールミルを用いて混練」して作製したものであるから,「導電性ペースト11」は,「銀粒子13」と「酸化銀粒子14」と,「エチルセルロース」と,「α-テルピネオール」とを含む「組成物」であるといえる。
しかも,引用発明1の「導電性ペースト11」は,導電性材料である「銀導電膜」を作製するための「組成物」であるから,引用発明1の「導電性ペースト11」は,「導電性材料用組成物」であるともいえる。
したがって,引用発明1の「導電性ペースト11」と,本件訂正発明1の「第1導電性材料用組成物」とは,「導電性材料用組成物」である点で一致する。
さらに,引用発明1の「導電性ペースト11」は,「銀粒子13と酸化銀粒子14と,樹脂バインダとしてエチルセルロースと,溶剤としてα-テルピネオールとを混合した後,三本ロールミルを用いて混練」して作製したものであるから,引用発明1の「導電性ペースト11」が,「銀の粒子」と「金属酸化物の粒子」とを含むことは,明らかである。
(イ)そうすると,引用発明1の「導電性ペースト11」と,本件訂正発明1の「第1導電性材料用組成物」とは,「銀の粒子と金属酸化物の粒子とを含む第1導電性材料用組成物」である点で一致するともいえる。
カ 「焼成」とは,「成形体中の不安定成分(結晶水,塩類,バインダーなど)を分解,除去し,各成分間の反応を進行させて安定な化合物を形成し,同時に焼結によって収縮,ち密化させて,一定形状,強度の焼結体を得ること。」(「JIS工業用語大辞【第4版】1996年10月20日第4版第3刷発行,829ページ(財)日本規格協会)といった程度の意味で用いられている用語であり,また,「焼結」とは,「非金属あるいは金属の粉体を加圧成形したものを融点以下の温度で熱処理した場合,粉体間の結合が生じ成形した形で固まる現象。」(「岩波 理化学辞典 第5版」1998年12月25日第5版第3刷発行,823ページ,株式会社 岩波書店)といった程度の意味で用いられている用語である。
そして,引用発明1の「得られた前記導電性ペースト11をガラス基板に塗布する工程と,次いで,200℃で30分加熱する工程」は,「導電性ペースト11」に含まれる「酸化銀を還元する性質をもった前記有機化合物12によって前記酸化銀粒子14が還元されて活性な銀粒子となり,この活性な銀粒子を介して,前記導電性ペースト11中に含有されていた前記銀粒子13同士が融着し」,「銀導電膜」が作製されるものである。
そうすると,前記「200℃」という温度は,「銀」及び「酸化銀」の融点よりも低く,かつ,前記「200℃」の加熱によって,「有機化合物12」及び「酸化銀粒子」等による反応が進行し,「前記銀粒子13同士が融着し」,一定形状,強度を備えた「銀導電膜」が作製されるのであるから,引用発明1の「200℃で30分加熱する工程」は,「導電性ペースト11」を「焼成」する工程であるということができる。
キ さらに,引用発明1は,「ポアが少なく緻密な銀導電膜が形成される」ものであるから,引用発明1の前記「導電性ペースト11」を「焼成」する工程を経て作製された「銀導電膜」は,少量の「ポア」,すなわち「空隙」を有しているものと理解できる。
また,引用発明1における,「前記銀粒子13同士が融着し」は,日本語の通常の理解として,「銀粒子13」と,他の「銀粒子13」とが,互いに隣接する部位において融着する様子を示しているものと理解することが自然であり,このことは,上記摘記(甲1i)の段落【0027】において,「酸化銀粒子14同士,銀粒子13同士,又は酸化銀粒子14と銀粒子13とは,面接触する」と記載され,甲第1号証において,「酸化銀粒子14」と,「銀粒子13」との接触が,「銀粒子13同士」の接触と,「酸化銀粒子14と銀粒子13と」の接触として,区別して書き分けられた上で,これに続いて,「銀粒子13同士は,面接触した状態で融着し,導電パスが多数形成されて緻密な導電膜となり,優れた導電性と膜強度が得られる。」として,「銀粒子13同士」の融着について説明していることからも明らかと認められる。
そして,融着される銀粒子同士が,それぞれにおける隣接する部分で融着されることは明らかである。
そうすると,引用発明1の「ポア」,すなわち「空隙」は,前記「200℃」の加熱によって,「有機化合物12」及び「酸化銀粒子」等による反応が進行し,「前記銀粒子13同士が融着し」,一定形状,強度を備えた「銀導電膜」が作製されることによって形成されたものであり,焼成において,粒子同士の融着が,当該粒子が互いに隣接する部分において起こることは普通のことであるから,引用発明1の前記空隙は,「前記銀粒子13」が互いに隣接する部分において融着し,それにより発生したものであると理解することができる。
したがって,引用発明1と本件訂正発明1とは,下記相違点1-2を除いて「第1導電性材料用組成物を焼成して,前記銀の粒子が互いに隣接する部分において融着し,それにより発生する空隙を有する導電性材料を得る」という点で一致する。
ク してみれば,本件訂正発明1と引用発明1との一致点と相違点は次のとおりとなる。
ケ 一致点
「導電性材料の製造方法であって,
前記方法が,
銀の粒子と金属酸化物の粒子とを含む第1導電性材料用組成物であり,前記銀の粒子が,『所定の粒径』を有する銀の粒子からなる第1導電性材料用組成物を焼成して,前記銀の粒子が互いに隣接する部分において融着し,それにより発生する空隙を有する導電性材料を得ることを含む方法。」
コ 相違点
相違点1-1
本件訂正発明1では,「銀の粒子」の「所定の粒径」が,「0.1μm~15μmの平均粒径(メジアン径)を有する」と特定されているのに対して,引用発明1では,「粒子形状が球状であり,粒子の一次粒子径が20nm以上,10μm以下の範囲内にあり,平均一次粒子径が2μm」と特定されている点。
相違点1-2
本件訂正発明1では,「前記銀の粒子と前記金属酸化物の粒子との接触部にて,前記金属酸化物の粒子から前記銀の粒子に酸素を供給させることによって,前記銀の粒子が互いに隣接する部分において融着し」ているのに対して,引用発明1では,金属酸化物の粒子から前記銀の粒子に酸素を供給させることについて明示されていない点。
(3)相違点についての判断(本件訂正発明1と引用発明1)
相違点1-2について検討する。
相違点1-2に係る「前記銀の粒子と前記金属酸化物の粒子との接触部にて,前記金属酸化物の粒子から前記銀の粒子に酸素を供給させることによって,前記銀の粒子が互いに隣接する部分において融着している」点については,いずれの証拠にも記載されておらず,また示唆もない。
引用発明1においては「酸化銀を還元する性質を持った有機化合物」を用いて酸化銀を還元するものであるから,相違点1-2に係る「銀の粒子」に「酸素を供給させることによって」という異なる反応を利用する動機付けがない。
本件訂正発明1は,当該相違点1-2を有することにより,本発明の導電性材料を製造する方法によれば,接着剤を含む導電性材料組成物を用いる必要が無く,安価かつ安定な導電性材料用組成物を用いて,低い電気抵抗値を生じる導電性材料を得ることができる(本件明細書等の段落【0020】)という格別な効果を奏する。
(4)小活
したがって,本件訂正発明1は,他の相違点を検討するまでもなく,甲第1号証に記載された事項に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものとは認められない。
2 本件訂正発明2について
2-1 本件訂正発明2
本件訂正発明2は,「第3 本件訂正発明」で認めたとおりであり,再掲すると,以下のとおりである。
「【請求項2】
導電性材料の製造方法であって,
前記方法が,
銀の粒子と金属酸化物の粒子とを含む第1導電性材料用組成物であり,前記銀の粒子が,0.1μm~15μmの平均粒径(メジアン径)を有する銀の粒子からなる第1導電性材料用組成物を焼成して,前記銀の粒子が互いに隣接する部分において融着し,それにより発生する空隙を有する導電性材料を得ることを含み,
前記第1導電性材料用組成物が,沸点300℃以下の有機溶剤または水を更に含み,
前記第1導電性材料用組成物が,前記金属酸化物の粒子を還元する還元剤として機能する成分を含まない,導電性材料の製造方法。」
2-2 本件訂正発明2についての当審の判断
(1)対比(本件訂正発明2と引用発明1)
ア 引用発明1の導電性ペースト11が含む「α-テルピネオール」の沸点は,220℃程度であるから,本件訂正発明2の「沸点300℃以下の有機溶剤」に相当する。
そうすると,本件訂正発明2と引用発明1とを対比すると,前記1-3(2)アないしクを参照すると,以下のイの点で一致し,以下のウの点で相違する。
イ 一致点
「導電性材料の製造方法であって,
前記方法が,
銀の粒子と金属酸化物の粒子とを含む第1導電性材料用組成物であり,前記銀の粒子が,『所定の粒径』を有する銀の粒子からなる第1導電性材料用組成物を焼成して,前記銀の粒子が互いに隣接する部分において融着し,それにより発生する空隙を有する導電性材料を得ることを含み,前記第1導電性材料用組成物が,沸点300℃以下の有機溶剤または水を更に含む,方法。」
ウ 相違点
相違点2-1
本件訂正発明2では,「銀の粒子」の「所定の粒径」が,「0.1μm~15μmの平均粒径(メジアン径)を有する」と特定されているのに対して,引用発明1では,「粒子形状が球状であり,粒子の一次粒子径が20nm以上,10μm以下の範囲内にあり,平均一次粒子径が2μm」と特定されている点。
相違点2-2
本件訂正発明2では,「前記第1導電性材料用組成物が,前記金属酸化物の粒子を還元する還元剤として機能する成分を含まない」のに対して,引用発明1では,酸化銀を還元する性質をもった前記有機化合物12を含むものである点。
(2)相違点についての判断(本件訂正発明2と引用発明1)
相違点2-2について検討する。
相違点2-2に係る「前記第1導電性材料用組成物が,前記金属酸化物の粒子を還元する還元剤として機能する成分を含まない」点について,前記1(1)イで検討したように,甲第1号証の上記摘記(1a)の「【請求項1】銀と,酸化銀と,該酸化銀を還元する性質をもった有機化合物とから構成されていることを特徴とする導電性ペースト。」等の記載からも明らかなように,引用発明1には,導電性ペーストが,「酸化銀を還元する性質をもった有機化合物」を含むものであることを前提とした発明が開示されている。そうすると,引用発明1に対して,前記第1導電性材料用組成物が,前記金属酸化物の粒子を還元する還元剤として機能する成分を含まないとすることは,引用発明1に対して相反する方向性を目指すものであり,動機付けが欠ける。
また,本件訂正発明2は,当該相違点2-2を有することにより,本発明の導電性材料を製造する方法によれば,特に,急激な反応熱による分解ガス発生という問題無く,安価かつ安定な導電性材料用組成物を用いて,低い電気抵抗値を生じる導電性材料を得ることができるという格別な効果を奏する(【0019】-【0020】)。
(3)小活
したがって,本件訂正発明2は,他の相違点を検討するまでもなく,甲第1号証に記載された事項に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものとは認められない。
3 本件訂正発明3について
本件訂正発明3は,本件訂正発明2を引用する発明であり,本件訂正発明2の発明特定事項を全て備え,さらに「前記有機溶剤が,低級アルコール,または,低級アルコキシ,アミノおよびハロゲンからなる群から選択される1以上の置換基を有する低級アルコールを含む」点を追加した構成である。
したがって,本件訂正発明2が,甲第1号証に記載された事項に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものとは認められない以上,本件訂正発明3は,甲第1号証に記載された事項に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものとは認められない。
4 本件訂正発明9について
4-1 本件訂正発明9
本件訂正発明9は,「第3 本件訂正発明」で認めたとおりであり,再掲すると,以下のとおりである。
「【請求項9】
導電性材料の製造方法であって,
前記方法が,
銀の粒子を含む第2導電性材料用組成物であって,前記銀の粒子が,2.0μm~15μmの平均粒径(メジアン径)を有する銀の粒子からなる第2導電性材料用組成物を,酸素,オゾン又は大気雰囲気下で150℃~320℃の範囲の温度で焼成して,前記銀の粒子が互いに隣接する部分において融着し(但し,銀フレークがその端部でのみ融着している場合を除く),それにより発生する空隙を有する導電性材料を得ることを含む方法。」
4-2 甲第5号証を主引例とした場合の進歩性についての当審の判断
(1)甲第5号証の記載事項
本件の優先日前に頒布された刊行物である甲第5号証には,「焼結金属フレーク」(発明の名称)に関して,図1-5とともに,以下の事項が記載されている。
(甲5a)「【請求項1】
金属フレークのネットワークを含み,前記フレークが端部を有し,フレークがその端部でのみ焼結して開放孔が少なくとも隣接するフレークのいくつかの間で画定されるように隣接するフレークの端部に融合する,多孔質の,可撓性の,弾性のある熱伝導性材料。
【請求項2】
溶媒および結合剤が実質上存在しない請求項1に記載の熱伝導性材料。
【請求項3】
約10GPa以下の貯蔵弾性率を有する請求項1に記載の熱伝導性材料。
【請求項4】
約1×10-6オーム/cm~約1×10-4オーム/cmの電気抵抗を有する請求項1に記載の熱伝導性材料。」
(甲5b)「【請求項9】
a)溶媒および端部を有する導電性金属フレークを含む導電性ペーストを形成すること,および
b)導電性ペーストを金属フレークの融点以下の温度に加熱し,それによって前記溶媒を蒸発し,前記フレークをその端部でのみ焼結し,このようにして開放孔が少なくとも隣接するフレーク間に画定されるように隣接するフレークの端部を融合し,それによって金属フレークのネットワークを形成することを含む,多孔質の,可撓性の,弾性のある熱伝導性材料を形成する方法。
【請求項10】
熱伝導性材料層をマイクロチップに貼付する後続のステップをさらに含む請求項9に記載の方法。
【請求項11】
熱伝導性材料層をマイクロチップとヒートスプレッダの間に貼付する後続のステップをさらに含む請求項9に記載の方法。
【請求項12】
熱伝導性材料をマイクロチップに貼付し,熱伝導性材料の第2の面をヒートスプレッダに貼付する後続のステップをさらに含む請求項9に記載の方法。
【請求項13】
前記フレークが,アルミニウム,銅,鉛,亜鉛,スズ,金,パラジウム,およびその合金ならびにその組み合わせからなる群から選択される金属を含む請求項9に記載の方法。
【請求項14】
前記フレークが銀を含む請求項9に記載の方法。
【請求項15】
前記フレークが約0.1μm~約2μmの厚さ,および約3μm~約100μmの直径を有する請求項9に記載の方法。
【請求項16】
前記溶媒が揮発性有機溶媒を含む請求項9に記載の方法。
【請求項17】
前記揮発性有機溶媒が,エタノール,プロパノール,およびブタノールからなる群から選択される請求項9に記載の方法。
【請求項18】
前記揮発性有機溶媒がブタノールを含む請求項9に記載の方法。
【請求項19】
前記フレークが,約100℃~約200℃の範囲の温度に加熱される請求項9に記載の方法。
【請求項20】
a)溶媒および端部を有する導電性金属フレークを含む導電性ペーストを形成すること,
b)導電性ペーストの層をマイクロチップとヒートスプレッダの間に貼付し,このようにして複合材料を形成すること,
c)前記複合材料を金属フレークの融点以下の温度に加熱し,それによって溶媒を蒸発し,前記フレークをその端部でのみ焼結し,したがって少なくともいくつかの隣接するフレークの間に開放孔が画定されるように隣接するフレークの端部を融合し,前記マイクロチップと前記ヒートスプレッダの間に熱伝導性材料層を形成し,その熱伝導性材料が金属フレークのネットワークを含むこととを含む,マイクロチップから熱を伝導して取り去る方法。」
(甲5c)「【技術分野】
【0001】
本発明は,回路基板および集積回路パッケージの製造に関する。より詳細には,本発明は集積回路パッケージ用の低貯蔵弾性率の電気的伝導性熱界面に関する。」
(甲5d)「【発明が解決しようとする課題】
【0006】
それらの熱放散装置を熱放射素子に取り付けるために,熱的または電気的界面を使用することは当分野で知られている。しかし,従来の界面にはいくつかの欠点があることが知られている。半導体産業に使用される界面は典型的に金属界面または導電性充填剤を充填したポリマー接着剤を含む。半田,銀,金などの金属界面は,低い抵抗を提供するが貯蔵弾性率が高く,大きなICダイには適さない。さらに,ポリマー接着剤は非常に低いモジュラスである得るが,それらの抵抗はあまりにも高い。チップから放射される熱量が多くなると,集積回路パッケージまたは半導体ダイと共に使用する,高い熱的および電気的伝導性と同様に低いモジュラスを有する熱界面が必要となる。また,それらの界面は約200℃以下などの低温で組み立ておよび加工が可能であることが必要である。」
(甲5e)「【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明はこの問題の解決を提供する。本発明によって,多孔質の,可撓性の,弾性のある熱伝導性材料が形成され,その材料は金属フレークのネットワークを含む。それらの熱伝導性材料は,最初に揮発性有機溶媒と導電性金属フレークを含む導電性ペーストを形成することによって製造することが好ましい。導電性ペーストは金属フレークの融点以下の温度に加熱され,それによって溶媒が蒸発し,その端部でのみフレークが焼結する。フレークの端部は,少なくともいくつかの隣接するフレークの間に開放孔が画定されるように隣接するフレークの端部と融合し,それによって金属フレークのネットワークが形成される。このネットワーク構造によって,熱伝導性材料は約10GPa未満の低い貯蔵弾性率を有し,一方で良好な電気的抵抗特性を有することが可能になる。」
(甲5f)「【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明は,金属フレークのネットワークを含む,多孔質の,可撓性の,弾性のある熱伝導性材料を提供し,前記フレークは端部を有し,そのフレークはその端部でのみ焼結して,少なくともいくつかの隣接するフレークの間に開放孔が画定されるように,隣接するフレークの端部と融合する。
【0009】
さらに,本発明は,
a)溶媒と,端部を有する導電性金属フレークとを含む導電性ペーストを形成すること,および
b)導電性ペーストを金属フレークの融点以下の温度に加熱し,それによって溶媒を蒸発し,フレークをその端部でのみ焼結し,したがって少なくともいくつかの隣接するフレークの間に開放孔が画定されるように隣接するフレークの端部を融合させ,それによって金属フレークのネットワークを形成することを含む,多孔質の,可撓性の,弾性のある熱伝導性材料を形成する方法を提供する。
【0010】
本発明はさらに,
a)溶媒と,端部を有する導電性金属フレークとを含む導電性ペーストを形成すること,b)マイクロチップと熱拡散器の間に導電性ペースト層を貼付し,それによって複合材料を形成すること,
c)複合材料を金属フレークの融点以下の温度に加熱し,それによって溶媒を蒸発し,フレークをその端部でのみ焼結し,したがって少なくともいくつかの隣接するフレークの間に開放孔が画定されるように隣接するフレークの端部を融合させ,マイクロチップとヒートスプレッダの間に熱伝導性材料層を形成し,その熱伝導性材料が金属フレークのネットワークを含むこととを含む,マイクロチップから熱を伝導して取り去る方法を提供する。
【0011】
本発明は金属フレークのネットワークを含む,多孔質の,可撓性の,弾性のある熱伝導性材料に関する。最初に金属フレークと溶媒の混合物を含む導電性ペーストが形成される。ペーストは,混合などの従来の知られた任意の方法を用いて形成することができる。
【0012】
金属フレークは,アルミニウム,銅,亜鉛,スズ,金,パラジウム,鉛,およびその合金ならびにその組み合わせなどの金属を含むことが好ましい。フレークは銀を含むことが最も好ましい。フレークは好ましくは約0.1μm~約2μm,より好ましくは約0.1μm~約1μm,最も好ましくは約0.1μm~0.3μmの厚さを有する。フレークは好ましくは約3μm~100μm,より好ましくは約20μm~約100μm,最も好ましくは約50μm~約100μmの直径を有する。最も好ましい実施形態では,各フレークはフレークの中心よりも薄い端部を有する。
【0013】
溶媒は金属フレークの融点を下げる働きをすることが好ましい。溶媒は約200℃以下の沸点を有する揮発性有機溶媒を含むことが好ましい。適切な揮発性有機溶媒は,エタノール,プロパノール,およびブタノールなどのアルコールを非限定的に含む。好ましい揮発性有機溶媒はブタノールを含む。
【0014】
導電性ペーストは,溶媒が蒸発して金属フレークがその端部でのみ焼結するように加熱される。フレークはこのようにして,少なくともいくつかの隣接するフレーク間に開放孔が画定されるように隣接するフレークの端部で融合し,それによって多孔質の,可撓性で弾性のある,実質上溶媒と結合剤を含まない熱伝導性材料が形成される。導電性ペーストの加熱は,金属フレークの融点以下の温度で行われることが好ましい。好ましい実施形態では,加熱は約100℃~約200℃の温度範囲で行われ,より好ましくは約150℃~約200℃,最も好ましくは約175℃~約200℃である。
【0015】
好ましい実施形態では,熱伝導性材料は熱伝導性材料層の形で製造される。これは導電性ペーストの層を実質上平坦な基板の表面に塗布し,導電性ペースト層を上記のように加熱して熱伝導性材料層を形成することによって行われることが好ましい。次いで熱伝導性材料層を,場合によって基板から取り外すことができる。適切な基板の例には,ヒートスプレッダ,シリコンダイ,およびヒートシンクが非限定的に含まれる。好ましい基板はシリコンダイを含む。ペーストは注射器からの分注などの任意の知られた従来技術を用いて塗布することができる。熱伝導性材料層は約10μm~約50μmの厚さを有することが好ましく,より好ましくは約10μm~35μm,最も好ましくは約20μm~約30μmである。熱伝導性材料層は約10GPa未満の貯蔵弾性率を含むことが好ましく,より好ましくは約1GPa~約5GPa,最も好ましくは約1GPa~約3GPaである。また,熱伝導性材料層は約1×10-6オーム/cm~約1×10-4オーム/cmの電気抵抗を含むことが好ましく,より好ましくは約1×10-6オーム/cm~約5×10-5オーム/cm,最も好ましくは約1×10-6オーム/cm~約2×10-5オーム/cmである。
【0016】
この発明の熱伝導性材料を,金属表面とシリコンダイ間や熱放射物品と熱吸収物品間などの熱界面など,種々の目的に使用することができる。好ましい一実施形態では,熱伝導性材料層の第1の面を熱放射物品に貼付される。適切な熱放射物品の例にはマイクロチップ,マルチチップモジュール,レーザーダイオードなどが非限定的に含まれる。好ましい熱放射物品はマイクロチップを含む。次いで,熱伝導性材料層の第2の面を場合によって熱吸収物品に貼付することができる。適切な熱吸収物品の例には,ヒートスプレッダ,ヒートシンク,蒸気チャンバー,ヒートパイプなどが非限定的に含まれる。好ましい熱吸収物品はヒートスプレッダを含む。それらの熱放射または熱吸収物品は,当分野で知られる任意の適切な従来の方法を用いて,熱伝導性材料層に貼付することができる。最も好ましい実施形態では,熱放射物品と熱吸収物品の間に貼付された導電性ペースト層を含む複合材料を最初に形成することによって熱伝導性材料層を形成する。次いで複合材料全体を加熱して,熱放射物品と熱吸収物品の間に熱伝導性材料を形成する。本発明の熱伝導性材料は特にマイクロエレクトロニクス装置の製造に有用である。」
(甲5g)「【0017】
以下の非制限的な実施例は本発明を例示するのに役立つ。本発明の成分の割合の変化および要素の代替は当業者には明らかであり,本発明の範囲内であることが認識されよう。
【実施例1】
【0018】
銀フレークを有機溶媒と混合して均質なペーストを形成した。少なくとも4種のペーストを混合した。ペーストの金属フレークに対する有機溶媒の比率を以下の表1に示す。
【0019】
【表1】
<<「表1:フレークに対する溶媒の比率」の記載を省略>>
【0020】
次いでペーストを注射器に充填し,ペーストの粘度をHaake粘度計を用いて1℃コーンおよびプレートで測定した。測定は22s-1および40s-1で行った。調製した異なる材料の粘度を表2に示す。
【0021】
【表2】
<<「表2:22S-1および40S-1での粘度」の記載を省略>>
表に示したように,ロット#1とロット#2は両方とも,約4000cps程度の類似した粘度であった。これは,それらが両方とも同じ成分の混合比であるので予測できた。しかし,ロット#3とロット#4は粘度が大きく異なり,これは,それらのそれぞれの成分の混合比と相関付けることができる。
【0022】
次いで,材料を以下の表3に示すような4種の異なる硬化プロファイルで硬化した。硬化は以下の手順を用いて行った。
【0023】
1)以下のようにしてプロファイル毎に最低3個のスライドを調製した。
a)1インチ×3インチのガラススライドをイソプロピルアルコールで洗浄し空気乾燥した。
b)ガラススライドをガラススライド支持具に配置してしっかり固定した。
c)ガイドとして支持具に刻んだ線を用い,テープの紐をスライドの長手に平行に100ミル離して置いた。使用した紐の長さは少なくとも2.5インチであった。
d)テープの下には,皺または気泡はなかった。
2)銀ペーストをスライドの一方の端に置いた。スライドの面に約30度の角度に保った剃刀の刃を用いて,銀ペースト材料をスライドの他の端に向かって引き,材料をテープ紐の間に絞り出した。
3)テープを注意深く取り除いた。
4)材料をオーブン中で硬化した。
【0024】
【表3】
<<「表3:ペースト処方の硬化プロファイル」の記載を省略>>
【0025】
次いで硬化した材料を,その体積抵抗について試験した。ロット#1と2は同じ成分混合比であるので,ロット#2は試験しなかった。体積抵抗は以下の手順を用いて試験した。
【0026】
1)硬化した材料の断面積(μm2)をテープ紐に沿った3つの異なる位置で測定した。
2)抵抗測定はヒューレットパッカード(Hewlett-Packard)の4点プローブ,モデル番号34401Aを用いて行った。
3)抵抗測定を記録し,抵抗を以下の式を用いて求めた。
【0027】
P=R(A/2.54)cm
式中,P=比抵抗,オーム・cm
R=測定された抵抗,オーム
A=断面積,cm2
2.54=一対の内部電極間の距離,cm
【0028】
結果を以下の表4に示す。結果から,材料はプロファイル3では焼結しなかったことが観察される。これは150℃のピーク温度が銀の焼結には低すぎたためである。
【0029】
【表4】
<<「表4:材料の体積抵抗率の結果(オーム・cm)」の記載を省略>>
【0030】
焼結金属フレークの3種の金属面に対する接着強度をダイせん断を用いて試験し,銀ペーストの結合強度を求めた。試験面は,ニッケル板面,銀スポットめっき面,裸の銅面の上に銀ペーストを塗布することによって形成した。金属面をリードフレームに貼付し,オーブン中で硬化した。
【0031】
硬化したサンプルは以下の手順によって試験した。
【0032】
1)基板をダイせん断試験機上の適切な支持具にセットした。
2)ダイせん断工具の先端を試験する要素の最も広い側に対して位置合わせした。ダイせん断工具を基板に直角に,かつ基板面に接触しないようにできるだけ基板に近づけてセットした。
3)試験機のパネルの「試験(TEST)」ボタンを押してせん断試験サイクルを開始した。
4)せん断試験サイクルが完了した後,パネルに表示された力のレベルを記録した。
5)ステップ1から4をその基板上で全ての要素をせん断するまで繰り返した。
6)基板上の要素について平均せん断強度を計算した。
【0033】
結果から,硬化プロファイル1は産業用には高すぎ,一方プロファイル3は材料を十分焼結させないことが観察された。プロファイル3は,150℃のピーク温度が銀を焼結させるには低すぎたため,焼結しなかった。したがって,接着の測定はプロファイル2と4についてのみ行った。この実験に使用したペーストのロットはロット#3である。結果を以下の表5に示す。
【0034】
【表5】
<<「表5:ロット3のダイせん断接着結果」の記載を省略>>
表5に示すように,材料はニッケルめっき面上では焼結せず,一方裸の銅面上の接着はやや低かった。高温で銅が酸化し,したがって表面の焼結の障壁になった。しかし銀のスポットめっき面は200℃のピーク温度で良好な接着を与えた。接着は180℃では極端に低かった。プロファイル2の破損モードがダイ/ペースト界面であり,一方プロファイル4ではペースト基板界面であったことに留意されたい。これは,プロファイル4の低い硬化プロファイルで焼結がより少なく,したがって材料内部で破損したことを示している。しかしプロファイル2の200℃での硬化では焼結のレベルが高かった。破損の界面は,裸のシリコンへの接着が低いダイ/ペースト界面に移った。
【0035】
次いで,ロット#4の接着をプロファイル2を用いて試験した。結果を以下の表6に示す。
【0036】
【表6】
<<「表6:ロット#4のダイせん断接着結果」の記載を省略>>
表6に示すように,銀のスポットめっき面の接着が最も高く,裸の銅面が続いた。この実験においてニッケルめっき面が最小の接着を示した。しかし,この特別の材料ロットは,ロット#3に較べて銀スポットめっき面への接着が極めて低いことを示した。これはロット#4内の有機溶媒の量がより高いレベルにあったためであろう。
【0037】
解析および結論
この3種類の材料を混合し,粘度がそれらの有機物の含有量の混合比に依存することが見出された。これらのペーストの全ては焼結可能であった。4種の異なる焼結プロファイルを用いた。銀フレークは180℃以上で焼結できることを見出した。焼結した材料の体積抵抗率は銀充填エポキシ接着剤よりも低いが,銀ガラスおよび半田の伝導性に匹敵することが見出された。これらのペーストの接着は主として温度に依存していた。また,それが接着される表面に依存していた。特に,金属化したダイ表面(例えば銀で)はより良好な面であろう。ダイの表面とは別に,材料はニッケルめっき面にはよく焼結することができなかったが,銀スポットめっき面へは良好に接着した。
【0038】
本発明を好ましい実施形態を参照して詳細に示し説明したが,当分野の通常の技術者であれば,本発明の精神および範囲から逸脱することなく,種々の変更および修正を加えることができることが容易に認識されよう。請求項は開示された実施形態,上記で論じた代替および全てのそれらの同等事項を包含するものと解釈される。」
(甲5h)甲第5号証の上記摘記において記載を省略した,「表1:フレークに対する溶媒の比率」には,「ロットナンバー」「1」の「フレークに対する有機物の比率」が「フレーク50gmに溶媒4ml」であることが,
また,「表3:ペースト処方の硬化プロファイル」には,「硬化プロファイル1」が,「2時間で40℃から280℃に上昇」,「280℃で1時間保持」,「1時間で280℃から40℃に降下」であることが,
そして,「表4:材料の体積抵抗率の結果(オーム・cm)」には,「ロット#」「1」の「硬化プロファイル1」における体積抵抗率の結果が,「0.000010」オーム・cmであることが記載されている。
また,「表4:材料の体積抵抗率の結果(オーム・cm)」の下側には,「+(審決注:クローバー状の模様の下に縦線が付された記号) 示した値は,サンプルが清浄な乾燥空気(CDA)なしに硬化された結果である。」と記載されており,そして,「表4:材料の体積抵抗率の結果(オーム・cm)」の「ロット#」「3」の「硬化プロファイル2」,「硬化プロファイル4」および「ロット#」「4」の「硬化プロファイル2」に「+(審決注:クローバー状の模様の下に縦線が付された記号)」が付されている。
(2)引用発明5
上記摘記(甲5a)-(甲5h)の記載を総合すると,甲第5号証には,次の発明(以下「引用発明5」という。)が記載されていると認められる。
「a)有機溶媒,および,端部を有する約0.1μm~約2μmの厚さ,および約3μm~約100μmの直径を有す導電性金属フレークを含む導電性ペーストを形成すること,および
b)前記導電性ペーストを前記金属フレークの融点以下の温度に加熱し,それによって前記溶媒を蒸発し,前記金属フレークをその端部でのみ焼結し,このようにして開放孔が少なくとも隣接する前記金属フレーク間に画定されるように隣接する前記金属フレークの端部を融合し,それによって前記金属フレークのネットワークを形成することを含む,多孔質の,可撓性の,弾性のある熱伝導性材料を形成する方法であって,
前記金属フレークが銀フレークであり,
前記銀フレークに対する溶媒の比率が,フレーク50gmに溶媒4mlであり,
前記金属フレークの融点以下の温度が,280℃であり,
前記加熱による焼結が,オーブン中での硬化によるものであり,
前記硬化プロファイルが,2時間で40℃から280℃に上昇,280℃で1時間保持,1時間で280℃から40℃に降下するものであり,
前記熱伝導性材料の体積抵抗率が,0.000010オーム・cmである
多孔質の,可撓性の,弾性のある熱伝導性材料を形成する方法。」
(3)対比(本件訂正発明9と引用発明5)
ア 本件訂正発明9と引用発明5とを対比する。
イ 引用発明5によって作製された熱伝導性材料の体積抵抗率は,0.000010オーム・cmである。
一方,本件明細書等の段落【0093】には,「[実施例6]・・・得られた配線の電気抵抗は4.9×10-5Ω・cmであった。」と記載されており,4.9×10-5Ω・cmの電気抵抗を有する配線は,本件明細書等において,「導電性材料」として扱われているものと認められる。
そうすると,引用発明5の体積抵抗率は,0.000010オーム・cmである熱伝導性材料は,4.9×10-5Ω・cmの電気抵抗を有する前記配線よりも優れた導電性を備えているから,導電性材料といえる。
したがって,引用発明5の「多孔質の,可撓性の,弾性のある熱伝導性材料」と,本件訂正発明9の「導電性材料」とは,「導電性材料」である点で一致する。
ウ 引用発明5の「銀フレーク」は,「端部を有する約0.1μm~約2μmの厚さ,および約3μm~約100μmの直径を有す導電性金属フレーク」であるのに対して,本件訂正発明9の「銀の粒子」は,「0.2μm~15μmの平均粒径(メジアン径)を有する銀の粒子」である。
一方,本件明細書等の段落【0045】には,「本発明における銀粒子の形態は限定されないが,例えば,球状,扁平な形状,多面体等が挙げられる。」と記載されており,端部を有する約0.1μm~約2μmの厚さ,および約3μm~約100μmの直径を有す導電性金属フレークは,扁平な形状の一種であるといえるから,引用発明5の「銀フレーク」と,本件訂正発明9の「銀の粒子」とは,下記の相違点9-1を除き,「所定の粒径を有する銀の粒子」である点で一致する。
エ(ア)引用発明5の「導電性ペースト」は,「銀フレーク」と「有機溶媒」とを含む「組成物」であるといえる。
しかも,引用発明5の「導電性ペースト」は,導電性材料である「多孔質の,可撓性の,弾性のある熱伝導性材料」を作製するための「組成物」であるから,引用発明5の「導電性ペースト」は,「導電性材料用組成物」であるともいえる。
したがって,引用発明5の「導電性ペースト」と,本件訂正発明9の「第2導電性材料用組成物」とは,「導電性材料用組成物」である点で一致する。
さらに,引用発明5の「導電性ペースト」は,「有機溶媒,および,端部を有する約0.1μm~約2μmの厚さ,および約3μm~約100μmの直径を有す導電性金属フレークを含む導電性ペースト」として形成されていることから,引用発明5の「導電性ペースト」が,「銀の粒子」を含むことは,明らかである。
(イ)次に,本件発明に係る特許請求の範囲の請求項9における「銀の粒子を含む第2導電性材料用組成物」の意味内容について検討する。
特許法29条1項及び2項所定の特許要件,すなわち,特許出願に係る発明の新規性及び進歩性について審理するに当たっては,この発明を同条1項各号所定の発明と対比する前提として,特許出願に係る発明の要旨が認定されなければならないところ,この要旨認定は,特段の事情のない限り,特許請求の範囲の記載に基づいてされるべきであり,特許請求の範囲の記載の技術的意義が一義的に明確に理解することができないとか,あるいは一見してその記載が誤記であることが発明の詳細な説明の記載に照らして明らかであるなどの特段の事情がある場合に限って,発明の詳細な説明の記載を参酌することが許されるにすぎないと解すべきである。
これを本件についてみると,本件発明に係る特許請求の範囲の請求項9の記載は,上記「第2 本件発明」のとおり,「導電性材料の製造方法であって,前記方法が,銀の粒子を含む第2導電性材料用組成物であって,前記銀の粒子が,0.1μm~15μmの平均粒径(メジアン径)を有する銀の粒子からなる第2導電性材料用組成物を,酸素,オゾン又は大気雰囲気下で150℃~320℃の範囲の温度で焼成して,前記銀の粒子が互いに隣接する部分において融着し,それにより発生する空隙を有する導電性材料を得ることを含む方法。」というものである。
そして,本件訂正発明9の,前記「銀の粒子を含む第2導電性材料用組成物」における,「含む」という用語は,「成分・要素としてもつ。」という程度の意味を有する用語と解されるから,本件訂正発明9の「第2導電性材料用組成物」が,「銀の粒子」以外の,任意の成分,例えば,「有機溶媒」をも含み得ることは,特許請求の範囲の記載に基づいて明らかである。
さらに,このような要旨認定を妨げる特段の事情,例えば,特許請求の範囲の記載の技術的意義が一義的に明確に理解することができないとか,あるいは一見してその記載が誤記であることが発明の詳細な説明の記載に照らして明らかであるなどの事情を認めることはできない。
(ウ)そうすると,引用発明5の「導電性ペースト」と,本件訂正発明9の「第2導電性材料用組成物」とは,「銀の粒子を含む導電性材料用組成物」である点で一致するともいえる。
オ 「焼成」とは,「成形体中の不安定成分(結晶水,塩類,バインダーなど)を分解,除去し,各成分間の反応を進行させて安定な化合物を形成し,同時に焼結によって収縮,ち密化させて,一定形状,強度の焼結体を得ること。」(「JIS工業用語大辞【第4版】1996年10月20日第4版第3刷発行,829ページ(財)日本規格協会)といった程度の意味で用いられている用語であり,また,「焼結」とは,「非金属あるいは金属の粉体を加圧成形したものを融点以下の温度で熱処理した場合,粉体間の結合が生じ成形した形で固まる現象。」(岩波 理化学辞典 第5版」1998年12月25日第5版第3刷発行,823ページ,株式会社 岩波書店)といった程度の意味で用いられている用語である。
そうすると,引用発明5の「焼結」は,「導電性ペースト」を「焼成」して,銀フレークをその端部でのみ結合,すなわち融着させる工程であるということができる。
カ さらに,引用発明5は,「前記金属フレークをその端部でのみ焼結し,このようにして開放孔が少なくとも隣接する前記金属フレーク間に画定されるように隣接する前記金属フレークの端部を融合し,それによって前記金属フレークのネットワークを形成することを含む,多孔質の,可撓性の,弾性のある熱伝導性材料を形成する」ものである。
そして,「多孔質」の材料が,その内部に空隙を有することは,「多孔質」の定義から明らかといえる。
また,引用発明5は,「隣接する前記金属フレーク間に画定されるように隣接する前記金属フレークの端部を融合」するものであるから,当該「隣接する前記金属フレーク」が,「互いに隣接する部分において融着」していることは自明といえる。
したがって,本件訂正発明9と引用発明5とは,下記の相違点9-1,9-2,9-3を除き,所定の粒径を有する銀の粒子を含む導電性材料用組成物を,所定の雰囲気下で150℃~320℃の範囲の温度で焼成して,前記銀の粒子が互いに隣接する部分において融着し,それにより発生する空隙を有する導電性材料を得ることを含む方法である点で一致するということができる。
キ してみれば,本件訂正発明9と引用発明5との一致点と相違点は次のとおりとなる。
一致点
「導電性材料の製造方法であって,
前記方法が,
銀の粒子を含む第2導電性材料用組成物であって,前記銀の粒子が,所定の粒径を有する銀の粒子からなる第2導電性材料用組成物を,所定の雰囲気下で150℃~320℃の範囲の温度で焼成して,前記銀の粒子が互いに隣接する部分において融着し,それにより発生する空隙を有する導電性材料を得ることを含む方法。」
相違点
相違点9-1
本件訂正発明9では,「銀の粒子」の「所定の粒径」が,「2.0μm~15μmの平均粒径(メジアン径)を有する」と特定されているのに対して,引用発明5では,「約0.1μm~約2μmの厚さ,および約3μm~約100μmの直径」と特定されている点。
相違点9-2
本件訂正発明9では,「所定の雰囲気」が,「酸素,オゾン又は大気雰囲気下」と特定されているのに対して,引用発明5では,「オーブン中」と記載されているだけであって,当該オーブンにおける雰囲気が明記されていない点。
相違点9-3
本件訂正発明9では,第2導電性材料用組成物の焼成により,「銀の粒子が互いに隣接する部分において融着」するが,「銀フレークがその端部でのみ融着している場合を除く」ものと特定されているのに対し,引用発明5では,金属フレークをその端部でのみ焼結して,隣接する金属フレークの端部を融合すると特定されている点。
(4)相違点についての判断(本件訂正発明9と引用発明5)
相違点9-3について検討する。
引用発明5のフレークは,「好ましくは約0.1μm~約2μm,より好ましくは約0.1μm~約1μm,最も好ましくは約0.1μm~約0.3μmの厚さを有」し,「好ましくは約3μm~約100μm,より好ましくは約20μm~約100μm,最も好ましくは約50μm~約100μmの直径を有する」(甲第5号証の段落【0012】)薄片状の粒子である。また,「端部」とは,「最も好ましい実施形態では,各フレークはフレークの中心よりも薄い端部を有する」との記載(同前【0012】)のとおり,「中心」と対比して特定される部分であり,フレークのへりを意味する。そして,引用発明5は,かかる端部を有する銀フレークを用い,「その端部でのみ焼結するように加熱」して「隣接するフレークの端部で融合」して(同前【0014】),熱伝導性材料を形成する方法である。
これに対し,本件訂正発明9における銀粒子の形態は,「限定されないが,例えば,球状,扁平な形状,多面体等が挙げられる」(本件明細書等の段落【0045】)とあり,球状,多面体等,特定の形態に限られない任意の形態の銀粒子が用いられ,かかる銀粒子を「酸化銀が,銀粒子と接触する部分」,「金属酸化物が,銀粒子と接触する部分」(同前【0020】),「銀粒子が互いに隣接する部分」(同前【0021】,【0022】)において融着させて,導電性材料を製造する方法である。したがって,本件訂正発明9においては,銀の粒子としてフレーク状のものを用いた場合でも,フレークの端部同士が隣接する部分に限らず,それ以外のフレークが互いに隣接する部分,例えばフレークの中心同士,又はフレークの端部とフレークの中心との間でも融着が生じて,導電性材料が形成される上,「その端部でのみ融着している場合」は除かれているのであるから,フレークの端部のみが融合した導電性材料は得られない。このように,本件訂正発明9では,引用発明5とは得られる導電性材料が異なっており,引用発明5の製造方法は,本件訂正発明9の「前記銀の粒子が互いに隣接する部分において融着し(但し,銀フレークがその端部でのみ融着している場合を除く),それにより発生する空隙を有する導電性材料を得る方法」とは異なることが明らかである。
そして,引用発明5は,銀フレークを端部でのみ焼結させて,端部を融合させる方法を開示するにとどまり,焼成の際の雰囲気やその他の条件を選択することによって,銀の粒子の融着する部位がその端部以外の部分であり,端部でのみ融着する場合は除外された導電性材料が得られることを当業者に示唆するものではないから,引用発明5に基づいて,当業者が相違点9-3に係る構成を想到することはできない。
(5)小括1
よって,その余の点について判断するまでもなく,本件訂正発明9は,当業者が,引用発明5に基づき容易に想到できるということはできない。
4-3 甲第4号証を主引用例とした場合の進歩性についての当審の判断
(1)甲第4号証の記載事項
甲第4号証には,「相互接続用のナノスケールの金属ペーストおよび使用方法」(発明の名称)に関して,図1-7とともに,以下の事項が記載されている。
(甲4a)「【請求項7】
デバイスおよび基板上の接点に位置決めされ,かつこれらの間に挟まれた500nm以下のサイズを有する金属または金属合金粒子を焼結するステップであって,前記金属または金属合金粒子から,デバイスおよび基板との機械的,熱的,または電気的な相互接続の1つまたは複数を実施する金属または金属合金層を形成する前記焼結ステップ
を含むことを特徴とする,デバイスと基板との機械的,熱的,または電気的な接続の少なくとも1つを実施する相互接続の形成方法。
【請求項8】
デバイスと基板との少なくとも一方の,少なくとも1つの電気接点に,前記金属または金属合金粒子を堆積させるステップをさらに含むことを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記堆積させるステップは,スクリーニング,プリンティング,またはステンシル処理によって実施されることを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記金属または金属合金粒子は100nm以下のサイズのものであることを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項11】
焼結ステップ中に,デバイスおよび基板を一緒に保持するステップをさらに含むことを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項12】
前記金属または金属合金は,銀または銀合金であることを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項13】
前記金属または金属合金は,前記焼結ステップの前に,前記金属または金属合金粒子の凝集を減少させまたは防止するのに十分な量で存在する金属または金属合金に結合した分散剤と,前記金属または金属合金粒子の焼結温度よりも低い揮発温度を有する結合剤とを含むペーストの形で存在することを特徴とする請求項7に記載の方法。」
(甲4b)「【技術分野】
【0001】
本発明は,全体として,電子デバイス,特に使用中に高温を発生するデバイスまたは高温適用例で使用されるデバイスを相互接続するのに使用される材料に関する。さらに本発明は,全体として,ダイ接着などの相互接続の製作中,高圧をかける必要性を低下させまたは除去する製作方法に関する。」
(甲4c)「【背景技術】
【0002】
全ての半導体チップは,電子製品内で機能するように,基板に固定または取着しなければならない。これらのチップを相互接続する最先端技術では,典型的な場合,鉛または鉛フリーのはんだ合金,あるいはエポキシなどの導電性ポリマー接着剤が使用される。しかし,これらの材料は熱的性質に乏しく,チップから発生した熱を放散しない。また,電気的性質にも乏しく,電力の損失を効果的に減少させることができず,機械的強度および信頼性に対する堅牢さにも乏しい。さらに,はんだ合金の低融解温度およびエポキシの低分解温度のため,これらの材料は一般に,SiCまたはGaNチップなどのいくつかのチップを高温で機能させるのに適していない。
(甲4d)【0003】
マイクロスケールの金属粉末ペーストの焼結は,電気回路パターンの生成のため,ハイブリッド電子パッケージで一般に使用される。しかし,高処理温度(>600℃)であることが,電子部品を基板と接合する際のその使用を妨げている。現在は,実施の際,デバイスが耐えられるよう十分低い温度でリフローするはんだを使用している。低融解温度であることの利点は,高温適用例での高温動作または使用の要件を満たすことができないので,はんだ合金の欠点になる。さらに,はんだ材料は,銅および銀などのその他の材料に比べて,電気的および熱的性質に比較的乏しく,かつ耐疲労性に乏しく,そのため電子システム全体の性能に悪影響を及ぼす。」
(甲4e)「【発明が解決しようとする課題】
【0005】
電子部品を取着するために商用の銀金属ペーストを使用する圧力支援焼結が論じられた(例えば,非特許文献1および2参照)。商用の銀金属ペースト中の金属粉末は,典型的な場合,マイクロメートル範囲の粒径を有する。粒径が大きいので,通常の焼成条件下で,高い焼結温度が必要である(600℃以上)。低い焼成温度では,焼結プロセスを支援するために,アセンブリに高圧をかける。しかし,圧力をかけることは,製造の難しさが増すと共に,それに対応して生産コストも増加するので,望ましくないとすることができる。圧力をかけると,処理中のデバイスに損傷を与える可能性も高くなる。」
(甲4f)「【課題を解決するための手段】
【0006】
500nm程度またはそれ未満,最も好ましくは100nm程度またはそれ未満(例えば1~100nm)の非常に微細な導電性金属および金属合金粒子を使用することによって,稠密化した金属相互接続を,比較的低い温度での焼結によりかつ低い圧力しか必要とせずにまたは圧力を全く必要とせずに確立できることが発見された。本発明の材料は,はんだペーストまたはエポキシと同様に,付着させ処理することができる(例えば,定量吐出(dispensing),ステンシル/スクリーン印刷など)。しかし,微細な粉末およびその組成物で形成された接合の熱的,電機的,および機械的性質は,伝統的な鉛または鉛フリーのはんだ,エポキシ材料,さらにミクロンサイズの粉末(低温で焼結した)よりもはるかに優れている。
【0007】
ナノスケール範囲の金属粒子を使用することによって,結合温度(すなわち,本発明の文脈においては焼結温度)を低下させ,かつ高印加圧力の必要性を除去しまたは低下させることが可能である。高印加圧力の必要性がないので,既存のハイブリッドマイクロエレクトロニクス処理技法および製作装置を利用することが可能であり,したがって,そのような部品の大量生産が可能になる。本発明のナノ粉末は,既知の技法を使用して調製することができ,またはミクロンサイズの粉末の場合に匹敵する価格で直接購入することができる。分散剤は,ペーストの混合中に,望ましくない/低い銀粒子の投入をもたらす可能性のある粒子の凝集を減少させるのに使用することが好ましい。本発明のナノ粉末は,好ましくは分散剤と一緒に,好ましくは所望の焼結温度よりも低い揮発温度を有するポリマー結合剤と組み合わせることができる。好ましくは金属または金属合金粉末の焼結温度に近付くまで揮発することのない結合剤を使用すると,焼結は,組成物全体にわたってより均一に生ずるので,より稠密な相互接続の実現が支援される(すなわち結合剤は,好ましくは,粒子の大部分が融合を開始するまで,熱源により近い縁部の金属または金属合金粉末が,隣接する粒子と融合し始めないように選ばれ,かつ組成物に配合される)。結合剤中の,金属または金属合金粉末の分散は,超音波または機械的方法,あるいはこれらの組合せによって促進することができる。
【0008】
本発明の組成物には,広範な適用例がある。例えばこの組成物は,コンピュータ内のシリコン集積回路チップ,または電源内のシリコンパワーチップ,または電気通信モジュール内の光電子チップを結合するのに使用することができる。また,金属が700℃または800℃よりも高い温度で融解するような銀粉末および銀合金の場合,本発明は,例えばSiCまたはGaNパワーチップなど,高温で動作することのできる半導体チップを取着するのに適している。すなわち比較的低い温度(例えば300℃程度)で,ナノ粉末(サイズが500nm未満であるもの,最も好ましくはサイズが100nmより小さいもの)の形をとる銀または銀合金を焼結することにより,商用の鉛および鉛フリーのはんだならびに導電性エポキシの場合のように,相互接続が融解する危険を冒すことなく,高温で動作することのできる稠密な導電性金属相互接続が実現される。これらのチップを高温で動作させることができるので,その冷却要件が削減され,製品の製造および動作における材料およびエネルギーの節約へとつながる。
【0009】
本発明のナノ銀ペーストは,その高融解温度および低処理温度により,シリコンデバイスとヒートシンクとの取着以外の適用例にも有用である。ペーストは,SiC,GaN,およびダイヤモンドなど,高温で動作する必要のあるワイドバンドギャップのデバイスを,取着/相互接続するのに使用することができる。また,発光ダイオード(LED)および半導体レーザなど,多量の熱を発生させるデバイスの取着にも有用である。」
(甲4g)「【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
ナノスケール金属ペーストの焼結は,マイクロメートルサイズの金属粉末で必要とされた高処理温度および高処理圧力という要件が回避されるので,電気相互接続を形成するための実行可能な解決策であることが発見された。ナノスケール金属ペースト中の金属粉末は,500nm未満の粒径を有することが好ましく,粒径は,100nm未満であることが最も好ましい(例えば,1~100nmまたは1~60nmなど)。
【0012】
本発明の粒子内の,好ましい金属または金属合金は,銀または銀合金である。これは,金に比べて低いコストである点,および通常の雰囲気中で焼成され易い点を併せ持っているからである。はんだリフローの場合に匹敵する温度で処理するが,はんだでは不可能な,後続のより高い温度への曝露に耐えることができる。
【0013】
適切なナノ銀粉末(例えば,粒径が500または100nm未満)は,およそ1ドル/gのコストで,様々なサイズで様々な供給元から市販されている。例示的な商業上の供給元には,NanostructuredAmorphousMaterialsInc.,InframatAdvancedMaterials,Inc.,SumitomoelectricU.S.A.,Inc.,およびKemcoInternationalAssociatesが含まれる。ナノ銀粉末は,様々な適用例で使用されている。例えば銀は,カーペット,ナプキン,および手術用マスクなどの布製品への抗菌添加剤として使用することができる。銀は,体内で広範な病原生物を死滅させることが医学的に立証され,また比較的安全でもある。このため,数多くの供給元が,体内の細菌生物を攻撃するために銀コロイドを使用することをさかんに勧めている。Samsungも,冷蔵庫の生産ラインにおいて食品保存を強化するために,銀ナノ粒子を使用している。銀ナノ粉末は,その抗菌性のため,練り歯磨き,歯ブラシ,石鹸,ならびにソックスなどの消費製品における添加剤としても使用される。電子的適用例では,銀ナノ粉末が,導電性トレース,抵抗,電極,光学フィルタ,およびEMI遮蔽で使用するために販売されている(高温適用例で使用される,低温での焼結による相互接続の生成のための適用は,これまで,本発明が本明細書に記述されるまで認められていない)。ナノ銀粒子は,塗料,ガラス,インク,および化粧品中の着色剤としても使用される。」
(甲4h)「【0016】
図1を参照すると,ナノ銀粒子10は,この銀粒子10を分散させて凝集を防止する分散剤12と,取扱いおよび乾燥処理中にペーストの亀裂を防止する結合剤14と,ある場合には,スクリーンまたはステンシル印刷(基板にペーストを付着させるための現在実施されている方法)が可能になるように,ペーストの粘度を調節するシンナー16とを含むペースト中に,好ましく使用されている。広く様々な分散剤12は,脂肪酸,魚油,ポリ(ジアリルジメチルアンモニウムクロライド)(PDDA),ポリアクリル酸(PAA),ポリスチレンスルホン酸(PSS)なども含めて,本発明の実施の際に使用することができる。
【0017】
図1に示すように,脂肪酸または魚油の場合,分散剤12は,水素結合またはその他の手段によって,極性頭部基をナノ銀粒子10の表面に結合することができ,疎水性末端は,隣接する粒子を相互に引き離して間隔を空け,凝集を防止するのに役立つ。凝集は,固体の投入を少なくし,最終的に,電気的,熱的,または機械的性質に乏しい相互接続をもたらす。
【0018】
好ましい結合剤14は,最高300℃で妨害されることなく粉末を稠密化することが可能なテルピネオール(沸点220℃)などの低沸点有機物でよい。その他の適切な結合剤14の例には,例えば,ポリビニルアルコール(PVA),ポリビニルブチラール(PVB),およびワックスが含まれる。結合剤14の性質(例えば揮発温度)は,ナノ粉末の焼結動態に一致する必要があり(すなわち結合剤は,焼結温度よりも低い温度で沸騰し,揮発し,またはその他の方法で分解しなければならない),かつ取着されるデバイスによって課せられた温度限界に一致する必要がある。以下により詳細に論じられるように(例えば,比較例1および実施例1参照),結合剤14の適切な選択または配合を用いることによって,粒子のより均一な焼結を確実にすることができる。ステンシル処理およびその他の操作の実施を可能にするのに必要とされる,ペーストの粘度を低下させるには,Heraus,Inc.製のRV912などのシンナー16を,添加することができる。結合剤14の選択に応じて,テルピネオールをシンナー16として使用することができる。シンナーの選択は広範囲に及び,製作元のニーズ,材料の選択,およびその他の要因に依存する。適切なシンナーには,Heraeus HVS 100,テキサノール,テルピネオール,Heraeus RV-372,Heraeus RV-507などが含まれ得る。結合剤14のように,シンナー16の揮発温度は,金属粒子10の焼結動態に一致すべきである。結合剤14およびシンナー16の全ての添加は,適用例に応じて変わり,例えば,最大で20重量%またはそれ以上を構成することができる(ある実施形態では,好ましい重量%が5~20%の間である)。
【0019】
図2は,本発明で使用することができるナノスケール金属ペーストを配合するための,2段階手順を示す。サイズが500nm未満,最も好ましくは直径が100nmである市販の金属粒子20を,アセトン24に溶解した魚油またはその他の適切な分散剤22と組み合わせる。これにより,表面に結合した分散剤を有する粒子の易流動性粉末(凝集していない)26が得られる。粉末26を,シンナーなどの担体に分散させまたは溶解した結合剤28を含む溶液27と組み合わせ,それによって最終的に,結合剤材料中に分散された金属粒子を含むペースト30が得られる。金属粒子の分散は,金属粉末の加熱および焼結が防止されるように,室温または低温水浴を使用した超音波浴への浸漬によって補助することができる。さらに,撹拌,振動などの機械的なメカニズムを使用して,結合剤中の金属粒子の分散を補助することができる。図2に示すプロセスでは,超音波処理中に,銀粒子を脂肪酸分散剤に分散させる際,過剰なアセトンをかなり役立てることができる。さらに,無極性アセトンは,遠心分離することなく,銀と脂肪酸との混合物から容易に分離される。図2のプロセスは,粒子分散ステップがペーストの質調節とは別であるので,ペーストの質制御がより容易になるという利点を有する。
【0020】
図2は,溶解した分散剤を金属粒子と組み合わせた状態を例示するが,上述のCarey Lea法によって作製された粒子は,表面に水素結合したクエン酸部分を有することができ,このクエン酸塩を分散剤として役立てることができることを理解すべきである。あるいは,図2に示すものと同様の手法で,クエン酸部分の代わりに長鎖脂肪酸または魚油分散剤を用いることができる。
【0021】
図3は,本発明の実施における,電子部品と基板との取着の例示的なプロセスを示す。最初に,ナノスケール銀粉末32をポリマー34と合わせて,ナノスケール銀ペースト36を形成する。図1および2と併せて論じられるように,結合剤中への銀粉末の分散は,超音波法によって増強しまたは増大させることができる。ナノスケール銀粉末32は,低沸点の有機溶媒(例えば,テルピネオール)およびシンナー(例えば,Heraeus製RV 912)を添加することによって,ペースト36形態に変換することができる。シリコンまたはワイドバンドギャップデバイスなどの電子デバイス38を,ナノ粉末ペースト36を焼結することによって基板40に接合することができ,それによって,このデバイス38と取付け基板40との間に中実な結合層が形成される。図3に示すプロセスは,銀粒子,銀合金,ならびにその他の金属および金属合金と共に用いることができる。
【0022】
金および銀めっきを使用して,本発明の実施における相互接続を改善することができる。例えば,銅の酸化を防止するには,酸化銅が相互拡散によって銀との良好な結合を形成できないので,ナノスケール銀ペースト36をスクリーニングし,ステンシル処理し,または印刷する前に,金または銀の薄い被覆をデバイス(図示せず)の結合部位および/または接点に付着させることができる。銀または金の被膜を利用することは,現在市販されている高性能電子パッケージ内の銅基板が通常は既に金で被覆されているので,現在の実施状態からの著しいずれをもたらすものではない。
【0023】
本発明の実施に際して低温が好ましく使用されることを除き,電気デバイス38と基板40との接合方法は,ハイブリッド電子パッケージで実施されるような従来の金属ペースト焼成技法に類似している。焼成温度は,金属粒子のサイズ(マイクロメートルサイズのものと対照的に,ナノスケール(好ましくは直径が100nm未満))に起因して,はんだリフローと同等であることが好ましく,必要に応じて,焼結金属粉末層との緊密な接触が維持されるように適度に加えられた力だけが必要になる可能性がある。図3に示すように,ナノスケール金属ペーストは,典型的な場合,厚膜(例えば,20から100マイクロメートルの厚さ)パターンの形で基板上にスクリーンまたはステンシル印刷され,その上に,デバイスが取り付けられる。デバイスを配置した後,ダイを適度な力で押し下げ,焼結を行いながら所定位置に保持することができる。膜の厚さ,粒子のサイズ,および粒子の材料(例えば,銀または銀合金)に応じて,焼結時間および温度が変わる。多くの適用例では,焼結温度が少なくとも250℃であり,所要時間は一般に2分以上である。焼結は,従来のベルトオーブン内で半連続操作により,あるいは,ボックスオーブン/炉内でバッチ式操作により実施することができる。図3は,低温焼結操作の後,トレースまたはその他の接点と電気接触している基板40に機械的に添着した電気デバイス38を示す。以下により詳細に論じるように,このプロセスによって形成された相互接続は,焼結で使用されるよりも非常に高い温度(例えば,およそ600℃,700℃,もしくは900℃,またはそれ以上)で動作することのできる稠密な導電性金属である。」
(甲4i)【0025】の【表1】から,「焼結ナノ銀ペースト」の「密度」が,「8.58g/cm3(多孔性のためバルクAg約80%)」であることを読み取ることができる。
(甲4j)「【0026】
ミクロンサイズの銀の代わりに,本発明の実施に際して使用されるナノスケール銀は,主に,焼結温度をほどんどのはんだの処理範囲にまで低下させる。そのため,これら相互接続材料の代替例として使用することが可能になる。焼結温度は,粒子のサイズおよび形態に影響を受け易い。非常に速い拡散速度を有する銀は,その粒径を十分小さくした場合,その融解温度(962℃)よりも十分低い温度で焼結することができるので,特に魅力的である。現行の銀ペースト材料は,妥当な強度および密度が得られるよう,600℃を超える温度で焼成しなければならない。定められた焼成スケジュールは,通常,ペーストを900℃程度に持っていき,それを稠密化することである。しかし,銀粒子のサイズが100nm未満である本発明のナノスケール銀ペーストの場合,100℃程度に低い温度で稠密化を開始することができる(しかし,これは望ましい温度範囲ではない)。
【0027】
適正なタイプの分散剤,結合剤,および溶媒を添加することにより,非常に速い稠密化速度が可能になりかつ高密度だけではなくデバイスおよび基板に対する良好な接着も実現されるよう,好ましい焼成温度に到達するまで(約280から300℃)焼結の開始を遅くすることができる。したがって,粒径の減少の他,ペーストの使用可能性に関する重要な要素とは,焼結温度のすぐ下の温度で揮発し燃焼することができる分散剤および結合剤系を,選択することである。結合剤系がペーストから非常に早く離れる場合,銀ナノ粒子は,より低い温度で焼結を開始することになり,その結果,動態の低下と共に,非稠密化メカニズム,例えば表面拡散の活性化が生じ,より高い目標焼結温度であっても稠密化することが難しいミクロ構造が得られる。結合剤系成分が,所望の焼成温度よりも高い温度で燃焼する場合,ポリマー成分が粒子間の広範な接触を妨げるので,銀粒子は適正に焼結しない。500nmというトップサイズ(伝統的に「ナノスケール」と見なされるサイズ範囲にはないサイズ)は,焼結温度が上昇しそれに伴って所望の範囲を超える可能性があるので,また当然ながら,もはやはんだの代替例として適当でないので,この技法の実施限界である。今日まで実施され,また本明細書で報告された実験研究のほとんどは,商用のAgペースト以外,100nm以下の粉末に関して行われている。
【0028】
図4a~bは,本発明のナノ銀ペーストが,共晶PbSn,共晶AuSn,および導電性エポキシに比べて優れた相対導電率および熱伝導率をもたらすことを示している。図4cは,焼結ナノ銀ペーストの弾性率が,相互接続の適用例に関して満足のいくものであることを示している。
【0029】
図5aおよび5bは,300℃で10分間焼結した銀ペーストのSEM画像である。図5aは,本発明による焼結ナノスケール銀ペーストのSEM画像を示し,それに対して図5bは,マイクロメートルサイズの銀を含む焼結した市販の銀ペースト(Heraeus C1075)のSEM画像を示す。図5aは,比較的高い密度(約80%)が,300℃で10分間のナノスケール銀ペーストの焼結から得られることを示し,これは,グリーン密度(焼結前に投入された銀粉末のみ。すなわち有機体は含まれない)の約2倍である。図5bは,マイクロメートルサイズの銀を含む商用ペーストを同じ条件下で焼成した状態を示す。しかしミクロ構造は,非常に多孔質であり,最小限の稠密化がある。具体的に,図5bの構造における唯一の変化は,鮮明な接触がなくなったことである。これらのフィーチャをアニールすると,ペーストが稠密化することが困難になる。
【0030】
図6は,銀粉末の,商業上の供給元のウェブサイト(Ferroのウェブサイト参照)から得られたグラフを示し,これは,温度の上昇に伴う様々なサイズの銀粉末の収縮を示している。本明細書に提示される実験と併せて,このグラフのデータから,本発明のナノスケール銀ペーストが,サイズの減少と共により低い温度で焼結できることが実証される。」
(甲4k)「【0034】
3)本発明による,ナノ銀ペーストによる取着/相互接続は,融解によってではなく拡散プロセスを通して銀ナノ粒子が圧密を受ける焼結プロセスを通して実現される。そのようにすることによって,高処理温度が回避される。一方,バルク状の銀の融点はナノ銀粒子の焼結温度よりも非常に高いので,相互接続は,処理温度よりも高い温度で動作することができる。要するに,本発明のナノ粉末焼結技法は,高温適用例のための低温結合溶液である。焼結温度は,粉末の粒径をより小さくすることによって著しく低下させることができる。上記にて示すように,かつ比較例3で論ずるように,銀の焼結温度は,マイクロメートルサイズの粒子の代わりにナノスケール粒子を用いることによって,劇的に低下させることができる。したがって焼結温度を,多くのはんだ合金のリフロー温度にまで低下させることが可能である。」
(甲4l)「【実施例1】
【0038】
結合剤系組成物による,銀の稠密化の調節方法
本発明のペースト中にある金属粒子の稠密化温度/速度の調節は,結合剤系に進入する成分のタイプを調節することによって実現することができる。特に,銀の任意の所与の粒径(あるいはその他の金属または金属合金)に対し,焼成温度を上昇または低下させることが可能である。例えば,上記にて論じたようなナノ銀ペーストなどの稠密化の効果的な開始の増加が望まれる場合,この開始は,結合剤系成分の代わりに,所望のまたは目標とするピーク処理温度に厳密に一致するように,より高い温度で燃焼する代替例を用いることによって,実現することができる(例えば結合剤系は,金属または金属合金粒子の焼結温度と同じかまたはわずかに低い温度(例えば50℃,または30℃,または10℃以内)で揮発しまたはその他の方法で分解するように選ばれる)。これには,その温度に達したときに素早く稠密化するナノスケール銀が維持され,したがって処理時間が短く保たれるという追加の利点がある。
【0039】
ピーク処理温度を300℃以下に限定する必要のない適用例がある。例えば炭化ケイ素は,金またはその合金を使用して,600℃程度に高い温度で結合することができるが,空気中で焼成したときに導体パッドに関する問題がある。本発明の技法は,より高い密度およびより強い結合が実現されるように,より高い温度で焼成することのできるペーストを作製するのに使用することができる(しかしそれでも,焼結温度までナノ銀粒子を維持することが望まれるので,600℃より低い)。この技法の例示的な実施例を,図7a~7bに示すが,これらは,100nmの粒子および異なる炭素鎖長(したがって異なる完全燃焼温度)の脂肪酸を含有するナノ銀ペーストを450℃で焼結したものである。図7aの焼成済みペーストは,図7bのペーストよりも著しく稠密なミクロ構造を有していた。図7aのペースト中の,PVBおよびより長い鎖の脂肪酸(C-24)のより高い完全燃焼温度によって,加熱中の依然として低い温度にある間,100nm粒子の凝集および焼結反応が妨げられ,したがって,焼結温度での稠密化速度が速くなる。焼結温度まで加熱しながら当初の粒径(またはそのほとんど)を維持できることが(したがってアニールを,焼結プロセスにより必要とされるエネルギーから保護することが),その結果をもたらす助けとなった。
【0040】
本発明を,その好ましい実施形態に関して述べてきたが,当業者なら,添付の特許請求の範囲の趣旨および範囲内で修正を加えることにより,本発明を実施することができることを理解されよう。」
(甲4m)図6は,焼結される種々の粒径の銀に関する膨張/収縮曲線を示すグラフであって,400nm銀粉末が,300℃において,略-6%の膨張を示していることを読み取ることができる。
(2)引用発明4
上記摘記(甲4a)-(甲4m)の記載を総合すると,甲第4号証には,次の発明(以下「引用発明4」という。)が記載されていると認められる。
「デバイスおよび基板上の接点に位置決めされ,かつこれらの間に挟まれた500nm以下のサイズを有する金属粒子を焼結するステップであって,前記金属粒子から,デバイスおよび基板との電気的な相互接続を実施する金属層を形成する前記焼結ステップ
を含む相互接続の形成方法において,
前記金属粒子は,銀であって,前記銀は,金に比べて低いコストである点,および通常の雰囲気中で焼成され易い点を併せ持っており,はんだリフローの場合に匹敵する温度で処理するが,はんだでは不可能な,後続のより高い温度への曝露に耐えることができるものであり,さらに,適切なナノスケール範囲の金属粒子であるナノ銀粉末(例えば,粒径が500nm未満)は,およそ1ドル/gのコストで,様々なサイズで様々な供給元から市販されているものであり,
前記金属粒子は,前記焼結ステップの前に,前記金属粒子の凝集を減少させまたは防止するのに十分な量で存在する金属粒子に結合した分散剤と,前記金属粒子の焼結温度よりも低い揮発温度を有する結合剤とを含むペーストの形で存在するものであり,
稠密化した金属相互接続を,比較的低い温度での焼結によりかつ低い圧力しか必要とせずにまたは圧力を全く必要とせずに確立する,
相互接続の形成方法。」
(3)対比(本件訂正発明9と引用発明4)
ア 本件訂正発明9と引用発明4とを対比する。
イ 引用発明4の「デバイスおよび基板との電気的な相互接続を実施する金属層」と,本件訂正発明9の「導電性材料」とは,いずれも「導電性材料」である点で一致する。
ウ 引用発明4の「500nm以下のサイズ」を有する銀と,本件訂正発明9の「0.1μm~15μmの平均粒径(メジアン径)」を有する銀の粒子とは,下記の相違点9-3を除き,「所定の粒径を有する銀の粒子」である点で一致する。
エ 引用発明4の「500nm以下のサイズ」の「銀」と,「分散剤」と,「結合剤」とを含む「ペースト」と,本件訂正発明9の「銀の粒子を含む第2導電性材料用組成物」とは,「銀の粒子を含む」「導電性材料用組成物」である点で一致する。
オ 「焼成」とは,「成形体中の不安定成分(結晶水,塩類,バインダーなど)を分解,除去し,各成分間の反応を進行させて安定な化合物を形成し,同時に焼結によって収縮,ち密化させて,一定形状,強度の焼結体を得ること。」(「JIS工業用語大辞【第4版】1996年10月20日第4版第3刷発行,829ページ(財)日本規格協会)といった程度の意味で用いられている用語であり,また,「焼結」とは,「非金属あるいは金属の粉体を加圧成形したものを融点以下の温度で熱処理した場合,粉体間の結合が生じ成形した形で固まる現象。」(岩波 理化学辞典 第5版」1998年12月25日第5版第3刷発行,823ページ,株式会社 岩波書店)といった程度の意味で用いられている用語である。
そして,引用発明4は,「焼結」により,「稠密化した金属相互接続を」「確立」するものである。
そうすると,引用発明4の「焼結」は,「銀」の金属粒子を「焼成」して,前記「銀」の金属粒子を互いに隣接する部分において融着させる工程であるということができる。
カ さらに,引用発明4は,「焼結」のメカニズムによって,その「デバイスおよび基板との電気的な相互接続を実施する金属層」の内部に空隙を有することは明らかといえる。
キ してみれば,本件訂正発明9と引用発明4との一致点と相違点は次のとおりとなる。
一致点
「導電性材料の製造方法であって,
前記方法が,
銀の粒子を含む第2導電性材料用組成物であって,前記銀の粒子が,所定の粒径を有する銀の粒子からなる第2導電性材料用組成物を,焼成して,前記銀の粒子が互いに隣接する部分において融着し,それにより発生する空隙を有する導電性材料を得ることを含む方法。」
相違点
相違点9-4
本件訂正発明9では,「銀の粒子」の「所定の粒径」が,「2.0μm~15μmの平均粒径(メジアン径)を有する」と特定されているのに対して,引用発明4では,「500nm以下のサイズを有する」と特定されている点。
相違点9-5
本件訂正発明9では,「酸素,オゾン又は大気雰囲気下で150℃~320℃の範囲の温度」で焼成しているのに対して,引用発明4では,特定されていな点。
(4)相違点についての判断(本件訂正発明9と引用発明4)
ア 相違点9-4について
甲第8号証には,2つの工作物の間(IGBTs,MOS-FETs,ダイオード,サイリスタ等の出力構造素子と,冷却体を有している担持体との間)の熱伝導性接着剤継目及び2つの工作物の間の熱伝導性接着剤継目の製造法(甲第8号証の明細書の段落【0001】,【0002】,【0040】)との技術分野において,熱伝導性粉末が混合されている,接着剤からなる層を有する継目よりも高い熱伝導率を有する,2つの工作物の間の熱伝導性接着剤継目を提供するため(同前【0027】),有機液体と微粒状銀粉末とを含むペースト5を100℃~250℃,有利に150℃~250℃の低い温度で加熱することによって,空隙32がスポンジ状に散在する銀粉末からなる焼結された層3が形成されること(同前【0041】,【0043】,【0048】,【0055】,【0056】,【0059】,【0060】,【0067】,【0077】,【0078】),工作物1と2との間に配置された焼結された層3の平面状表面31上の開口33は,液状エポキシ樹脂のような硬化可能な液状接着剤で充填され,できるだけ全ての空隙32及び開口33が接着剤で充填されるまで実施されること(同前【0071】~【0073】),銀を250℃未満で焼結させるためには,酸化雰囲気は避けられないこと(同前【0081】),銀粉末は,O2含有雰囲気中,例えば空気中で150℃からの低い温度で焼結を開始することが確認されたこと(同前【0082】)等が記載されている。よって,甲第8号証に記載された技術の焼結温度は,100℃~250℃,有利に150℃~250℃である。
これに対し,引用発明4は,500nm程度又はそれ未満(最も好ましくは100nm未満)の銀のナノ粉末を使用することによって,稠密化した金属相互接続を,比較的低い温度(例えば300℃程度)での焼結によりかつ低い圧力しか必要とせずに又は圧力を全く必要とせずに確立できる(甲第4号証の明細書の段落【0006】~【0008】)というものであること,引用発明4には,銀粒子のサイズが100nm未満のナノスケール銀ペーストの場合には,100℃程度で稠密化を開始することができるものの,望ましい温度範囲ではないこと(同前【0026】),多くの適用例では焼結温度が少なくとも250℃であること(同前【0023】)の記載があることからすると,引用発明4の焼結温度は,最低でも250℃,望ましくは300℃であると認められる。
このように,甲第8号証に記載された技術の焼結温度は,100℃~250℃,有利に150℃~250℃とされる(甲第8号証の明細書の段落【0077】)のであり,引用発明4の焼結温度は甲第8号証に記載された技術の焼結温度よりも高い温度範囲を想定しているから,引用発明4に対して,甲第8号証に記載された技術の焼結条件を適用する動機付けは存在しない。
かえって,甲第4号証では,従来技術であるエポキシ樹脂が低分解温度であるため,SiC又はGaNチップなどのいくつかのチップを高温で機能させるのに適していないとの問題点(甲第4号証の明細書の段落【0002】)を挙げた上で,導電性エポキシの場合のように,相互接続が融解する危険を冒すことなく,高温で動作することのできる稠密な導電性金属相互接続が実現される(同前【0008】)という効果を奏するとしているのであるから,引用発明4は,エポキシ樹脂の分解温度よりも高い温度での使用を想定していると認められるのに対し,甲第8号証に記載された技術は,焼結の後にエポキシ樹脂を吸い込ませる工程を有するものであるから(甲第8号証の明細書の段落【0071】~【0073】),引用発明4に対して甲第8号証に記載された技術を適用することには,阻害要因があるというべきである。
そうすると,当業者が,引用発明4に甲第8号証に記載された技術を適用して,相違点9-4に係る構成を想到することもできない。
イ 相違点9-5について
上記アに加えて,甲第4号証には,「通常の雰囲気中で焼成され易い点を併せ持っている」との記載がある(甲第4号証の明細書の段落【0012】)ものの,「通常の雰囲気」が何であるかは示されておらず,「通常の雰囲気」が大気雰囲気であることが技術常識であるとも認められないから,引用発明4から相違点9-5に係る「酸素,オゾン又は大気雰囲気」との構成を想到することはできない。
(5)小括2
よって,その余の点について判断するまでもなく,本件訂正発明9は,当業者が,引用発明4に基づき容易に想到できるということはできない。
5 本件訂正発明10について
5-1 本件訂正発明10
本件訂正発明10は,「第3 本件訂正発明」で認めたとおりであり,再掲すると,以下のとおりである。
「【請求項10】
導電性材料の製造方法であって,
前記方法が,
銀の粒子を含む第2導電性材料用組成物であって,前記銀の粒子が,2.0μm~15μmの平均粒径(メジアン径)を有する銀の粒子からなる第2導電性材料用組成物を,酸素,オゾン又は大気雰囲気下で150℃~320℃の範囲の温度で焼成して,前記銀の粒子の一部を局部的に酸化させることにより,前記銀の粒子が互いに隣接する部分において融着し,それにより発生する空隙を有する導電性材料を得ることを含み,
前記第2導電性材料用組成物が,沸点300℃以下の有機溶剤または水を更に含む導電性材料の製造方法。」
5-2 甲第5号証を主引例とした場合の進歩性についての当審の判断
(1)対比(本件訂正発明10と引用発明5)
本件訂正発明10と引用発明5とを対比すると,以下の点で相違する。
相違点
相違点10-1
本件訂正発明10では,「酸素,オゾン又は大気雰囲気下」で焼成するの対して対して,引用発明5では,「オーブン中」と記載されているだけであって,当該オーブンにおける雰囲気が明記されていない点。
相違点10-2
本件訂正発明10では,「銀の粒子の一部を局部的に酸化させることにより,前記銀の粒子が互いに隣接する部分において融着」することが特定されているのに対し,引用発明5ではそのような特定がなされていない点。
相違点10-3
本件訂正発明10では,「銀の粒子」の「所定の粒径」が,「2.0μm~15μmの平均粒径(メジアン径)を有する」と特定されているのに対して,引用発明5では,「約0.1μm~約2μmの厚さ,および約3μm~約100μmの直径」と特定されている点。
相違点10-4
本件訂正発明10では,「前記第2導電性材料用組成物が,沸点300℃以下の有機溶剤または水を更に含む」のに対して,引用発明5では,特定されていない点。
(2)相違点に対する判断(本件訂正発明10と引用発明5)
相違点10-2について検討する。
引用発明5は,端部を有する銀フレークを用いて,端部でのみ銀フレークを融合させ,もって熱伝導性材料を形成する方法である。
甲第5号証には,銀フレークの融合について,「導電性ペーストを金属フレークの融点以下の温度に加熱し,それによって溶媒を蒸発し,フレークをその端部でのみ焼結し,したがって少なくともいくつかの隣接するフレークの間に開放孔が画定されるように隣接するフレークの端部を融合させ,それによって金属フレークのネットワークを形成することを含む,多孔質の,可撓性の,弾性のある熱伝導性材料を形成する方法を提供する。」との記載(甲第5号証の明細書の段落【0009】)があり,溶媒の蒸発等によりフレークの端部で融点を降下させることによって,銀フレークの端部でのみの融合を可能にしていることが開示されている一方,焼成過程で銀フレークを酸化させることについての記載はなく,銀フレークの一部を局部的に酸化させることによって,銀フレークを焼結させることの開示があるとはいえない。
甲第5号証の表4のうち,硬化プロファイル2で焼結されたロット#3には「†」の符号が付されているところ,同表のキャプションによれば,かかる符号の付されたものは,「サンプルが清浄な乾燥空気(CDA)なしに硬化された結果である。」とあるから,CDAなしに硬化された結果であると認められるところ,これについても焼結して硬化している(同前【0028】)のであるから,引用発明5の製造方法は,銀フレークを酸化させ得ない雰囲気であるCDAなしの雰囲気中でも,銀フレークの焼結を可能とするものであると認められる。
したがって,引用発明5は,銀の粒子の一部の局部的な酸化によって,銀の粒子間を融着させるものではない。
そして,甲第5号証には,銀フレークの一部を局部的に酸化させることによって,銀フレークを端部でのみ焼結できるということは記載も示唆もされておらず,引用発明5の焼成プロセスを変えることによって何らかの課題が解決されることも示唆されていないから,引用発明5において銀の粒子の一部を局部的に酸化させる動機付けはない。
(3)小括1(本件訂正発明10と引用発明5)
本件訂正発明10は,当業者が,引用発明5に基づいて容易に想到できるとはいえない。
5-3 甲第4号証を主引例とした場合の進歩性についての当審の判断
(1)対比(本件訂正発明10と引用発明4)
本件訂正発明10と引用発明4とを対比すると,少なくとも下記相違点10-5で相違する。
相違点10-5
本件訂正発明10では,「酸素,オゾン又は大気雰囲気下で150℃~320℃の範囲の温度で焼成して」いるのに対して,引用発明4では,特定されていない点。
(2)相違点に対する判断(本件訂正発明10と引用発明4)
本件訂正発明10と引用発明4との相違点10-5は,本件訂正発明9と引用発明4との相違点9-5と同じであるから,当業者が相違点10-5に係る構成を容易に想到できたものではないことは,前記4-3(3),(4)のとおりである。
(3)小括2(本件訂正発明10と引用発明4)
本件訂正発明10は,当業者が,引用発明4に基づいて容易に想到できるとはいえない。
6 本件訂正発明11について
本件訂正発明11は,本件訂正発明10を引用する発明であり,本件訂正発明10の発明特定事項を全て備え,さらに「前記有機溶剤が,低級アルコール,または,低級アルコキシ,アミノおよびハロゲンからなる群から選択される1以上の置換基を有する低級アルコールを含む」点を追加した構成である。
したがって,本件訂正発明10が,甲第5号証または甲第4号証に記載された発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものとは認められない以上,本件訂正発明11は,甲第5号証または甲第4号証に記載された発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものとは認められない。
7 無効理由のまとめ
以上のとおりであるから,本件訂正発明1ないし3,9ないし11は,甲第1号証,甲第4号証,甲第5号証などに記載された発明に基いて,その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者がその優先日前に容易に発明をすることができたものではない。
したがって,本件訂正発明1ないし3,9ないし11について,無効理由は,理由がない。
第7 むすび
以上のとおりであるから,特許5212364号の請求項1ないし3,9ないし11に記載された発明についての特許は,特許法第29条第2項の規定に違反するものではなく,同法第123条第1項第2号に該当せず,無効とすべきものではない。
審判の総費用は,特許法第169条第2項で準用する民事訴訟法第61条の規定により,これを27分し,その13を被請求人の負担とし,その余を請求人の負担とする。
よって,結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
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2015-800073