特許拒絶査定不服審判
2015-022633
実際の距離を推定するための較正されたハードウェアセンサ
- 審判番号
- 2015-022633
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2014-552233外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2015年12月24日
- 審決日
- 2017年06月12日
- 公報発行日
- 2017年12月28日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】クアルコム,インコーポレイテッド
- 【請求人代理人】村山 靖彦
- 【請求人代理人】黒田 晋平
- 分類
- P18 .121-WZ (G01B) / P18 .536-WZ (G01B) / P18 .537-WZ (G01B)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2014-552233「実際の距離を推定するための較正されたハードウェアセンサ」拒絶査定不服審判事件〔平成25年 7月18日国際公開、WO2013/106291、平成27年 4月 2日国内公表、特表2015-510113〕について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯・原査定の拒絶の理由
特許出願: 平成25年1月7日(パリ条約による優先権主張(外国庁受理2012年1月13日(優先日)、米国、2012年7月31日、米国)を伴う国際出願)
拒絶査定: 平成27年8月14日(送達日:同年同月24日)
拒絶査定不服審判の請求: 平成27年12月24日
手続補正: 平成27年12月24日
拒絶理由通知: 平成28年9月15日(発送日:同年同月16日)
手続補正: 平成28年12月8日
意見書: 平成28年12月8日
拒絶理由通知: 平成29年1月20日(発送日:同年同月23日)
手続補正: 平成29年4月21日(以下、「本件補正」という。)
意見書: 平成29年4月21日
そして、原査定の拒絶の理由は、本願の特許請求の範囲の請求項1ないし22に係る発明は、本願の優先日前に国内又は外国において頒布された刊行物である、特開平9-113266号公報(発明の名称:距離測定装置、出願人:株式会社ニコン、以下「引用例1」という。)、及び特開2010-78352号公報(発明の名称:距離測定装置、距離測定方法及び距離測定プログラム、出願人:富士通株式会社、以下「引用例2」という。)に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。
第2 本願発明
本件補正によって補正された明細書、特許請求の範囲、及び図面の記載からみて、本願の請求項1ないし20に係る発明は、その特許請求の範囲の請求項1ないし20に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、その請求項11に係る発明は次のとおりである。
「モバイルデバイスの傾きを推定するとともに前記モバイルデバイスをエンドポイントに向けるための傾き推定器と、
前記傾き推定器を較正するための較正器と、
信号を放出し、反射された信号に基づき前記モバイルデバイスとエンドポイントとの間の1次元の距離を推測するために前記反射された信号を検出するための信号放出器兼検出器と、
1次元の距離および前記モバイルデバイスの傾きに基づいて、前記モバイルデバイスと前記エンドポイントとの間の多次元距離を推定するための、モバイルデバイスからエンドポイントまでの距離推定器であって、多次元距離は水平隔離距離および垂直隔離距離を含む、モバイルデバイスからエンドポイントまでの距離推定器と、
1つまたは複数の距離を提示するためのディスプレイと、
前記モバイルデバイスからエンドポイントまでの距離推定器に結合された、第1のエンドポイントと第2のエンドポイントとの間のデバイスに依存しない距離を推定するための、デバイスに依存しない距離推定器であって、前記デバイスに依存しない距離が、前記第1および第2のエンドポイント間の水平離隔距離、絶対離隔距離、および垂直離隔距離を含む、デバイスに依存しない距離推定器と
を備え、
前記モバイルデバイスからエンドポイントまでの距離推定器が、前記信号放出器兼検出器に結合される、
実際の距離を推定するためのシステム。」(以下「本願発明」という。)
第3 引用例記載の事項・引用発明
a 引用例1
引用例1には、「距離測定装置」(発明の名称)に関し、次の事項(a)ないし(c)が図面とともに記載されている。(下線は当審による。以下同様。)
(a)
「【0022】図5は、請求項4~6に記載の発明を説明する図である。請求項4に記載の距離測定装置では、送信手段1は測定波を第1の方向と所定角度θa離れた第2の方向とに送信する。受信手段2は第1の方向から戻る測定波と第2の方向から戻る測定波とをそれぞれ受信する。
【0023】距離測定手段3は、受信手段2で受信される測定波の伝搬遅延に基づいて、第1の方向に位置する第1の反射点Cまでの距離L4と、第2の方向に位置する第2の反射点Dまでの距離L5とを測定する。距離算出手段5は所定角度θaと距離L4と距離L5とを用いて、
距離L6=(L42+L52-2・L4・L5・cosθa)1/2
に基づいて、第1の反射点Cから第2の反射点Dまでの距離L6を算出する。請求項5に記載の距離測定装置では、送信手段1は測定波を第1の方向と所定角度θa離れた第2の方向とに送信する。
【0024】受信手段2は第1の方向から戻る測定波と第2の方向から戻る測定波とをそれぞれ受信する。距離測定手段3は、受信手段2で受信される測定波の伝搬遅延に基づいて、第1の方向に位置する第1の反射点Cまでの距離L4と、第2の方向に位置する第2の反射点Dまでの距離L5とを測定する。
【0025】距離算出手段5は所定角度θaと距離L4と距離L5とを用いて、
水平距離L7=|L4-L5・cosθa|・L4/(L42+L52-2・L4・L5・cosθa)1/2
に基づいて、第1の反射点Cから装置直下の地点Eまでの水平距離L7を算出する。
【0026】請求項6に記載の距離測定装置では、送信手段1は測定波を第1の方向と所定角度θa離れた第2の方向とに送信する。受信手段2は第1の方向から戻る測定波と第2の方向から戻る測定波とをそれぞれ受信する。距離測定手段3は、受信手段2で受信される測定波の伝搬遅延に基づいて、第1の方向に位置する第1の反射点Cまでの距離L4と、第2の方向に位置する第2の反射点Dまでの距離L5とを測定する。距離算出手段5は所定角度θaと距離L4と距離L5とを用いて、
高さL8=L4・L5・sinθa/(L42+L52-2・L4・L5・cosθa)1/2
に基づいて、装置直下の地点Eから装置までの高さL8を算出する。」
(b)
「【0050】図9は、請求項4~6、9に記載の発明に対応する実施形態の構成図である。図9において、本体31にスイッチ32が配置され、スイッチ32の接点はマイクロプロセッサ47の第1の入力端子に接続される。マイクロプロセッサ47の第1の出力端子はパルス駆動回路34aを介して、レーザダイオード35aの入力端子に接続される。
【0051】また、マイクロプロセッサ47の第2の出力端子はパルス駆動回路34bを介して、レーザダイオード35bの入力端子に接続される。レーザダイオード35a、35bから出射されて、外部から戻ってくるパルス光を受光する位置に受光器40が配置され、受光器40の出力端子は増幅回路41を介して、コンパレータ42の入力端子に接続される。
【0052】コンパレータ42の出力端子はマイクロプロセッサ47の第2の入力端子に接続される。マイクロプロセッサ47の第3の出力端子は表示部43の入力端子に接続される。なお、請求項4~6に記載の発明と、上述の実施形態との対応関係については、送信手段1はレーザダイオード35aおよびレーザダイオード35bに対応し、受信手段2は受光器40に対応し、距離測定手段3はマイクロプロセッサ47およびコンパレータ42に対応し、距離算出手段5はマイクロプロセッサ47に対応する。
【0053】請求項9に記載の発明と、上述の実施形態との対応関係については、第1の送信手段はレーザダイオード35aに対応し、第2の送信手段はレーザダイオード35bに対応する。図10は、請求項4~6、9に記載の発明に対応する実施形態の動作を示す流れ図である。
【0054】以下、上述の実施形態の動作を図9、図10を用いて説明する。測定者がスイッチを入れると、第1のレーザダイオード35aから第1の方向に向けてパルス光が発生する(ステップS1)。レーザダイオード35aから出射されたパルス光は、図5に示されるように、第1の方向に位置する反射点Cで反射して戻り、受光器40で受光され、受光信号に変換される(ステップS2)。
【0055】受光信号は増幅回路41で増幅され、コンパレータ42は受光信号を受光タイミング信号に変換する(ステップS3)。マイクロプロセッサ47はパルス光発生から受光タイミング信号受信までの時間を測定し、第1の反射点Cまでの距離L4を算出する(ステップS4)。第2のレーザダイオード35bから、第1の方向より角度θa離れた第2の方向に向けて、パルス光が発生する(ステップS5)。
【0056】レーザダイオード35bから出射されたパルス光は第2の方向に位置する第2の反射点Dで反射して戻り、受光器40で受光され、受光信号に変換される(ステップS6)。受光信号は増幅回路41で増幅され、コンパレータ42は受光信号を受光タイミング信号に変換する(ステップS7)。
【0057】マイクロプロセッサ47はパルス光発生から受光タイミング信号受信までの時間を測定し、第2の反射点Dまでの距離L5を算出する(ステップS8)。マイクロプロセッサ47は角度θaと距離L4と距離L5とを用いて、
距離L6=(L42+L52-2・L4・L5・cosθa)1/2
に基づいて、第1の反射点Cから第2の反射点Dまでの距離である所望の2点間の距離L6を算出し、
水平距離L7=|L4-L5・cosθa|・L4/(L42+L52-2・L4・L5・cosθa)1/2
に基づいて、第1の反射点Cから装置直下の地点Eまでの水平距離L7を算出し、
高さL8=L4・L5・sinθa/(L42+L52-2・L4・L5・cosθa)1/2
に基づいて、装置直下の地点Eから距離測定装置までの高さL8を算出する。
【0058】そして、表示部43はこれらの距離を表示する(ステップS9)。このように、上述の実施形態の距離測定装置では、距離測定装置を測定したい高さに保持したまま、第1の方向に位置する第1の反射点Cまでの距離と、第1の方向から所定角度θa離れた第2の方向に位置する第2の反射点Dまでの距離とを測定して、「第1の反射点から第2の反射点までの距離」と「水平距離」と「距離測定装置の高さ」とを即座に算出することができる。」
(c)
「【0064】また、上述した請求項3に記載の発明に対応する実施形態の距離測定装置では、2つのレーダ装置を用いて、所定方向と鉛直方向との距離を一緒に測定したが、単一のレーザ装置におもりを取り付け、装置の向きを順次変えることにより、所定方向と鉛直方向とを個別に測定してもよい。また、上述した請求項4~6、9に記載の発明に対応する実施形態の距離測定装置では、所定角度θaを固定して測定しているが、それに限定されるものではない。
【0065】例えば、第1の方向あるいは第2の方向を可変する角度可変機構と、第1の方向と第2の方向とがなす角度θaを検出する角度検出手段とを備えてもよい。このような構成により、測定者は第1の方向あるいは第2の方向を自在に設定することができるので、装置の設置位置や設置方向にかかわらず、所望の水平距離や所望の2点間の距離をより迅速に測定することができる。」
上記記載(a)ないし(c)、及び図面の第5,9図の記載から、引用例1には、次の発明が記載されていると認められる。(対応する記載の段落番号を括弧書きで示す。)
「第1の方向と第2の方向とがなす角度θaを検出する角度検出手段と(【0065】)、
測定波を第1の方向と所定角度θa離れた第2の方向とに送信する送信手段1と、第1の方向から戻る測定波と第2の方向から戻る測定波とをそれぞれ受信する受信手段2と(【0022】)、受信手段2で受信される測定波の伝搬遅延に基づいて、第1の方向に位置する第1の反射点Cまでの距離L4と、第2の方向に位置する第2の反射点Dまでの距離L5とを測定する距離測定手段3と(【0023】)、
所定角度θaと距離L4と距離L5とを用いて、第1の反射点Cから装置直下の地点Eまでの水平距離L7及び装置直下の地点Eから装置までの高さL8を算出する距離算出手段5と(【0025】、【0026】)、
これらの距離を表示する表示部43と(【0058】)、
所定角度θaと距離L4と距離L5とを用いて、第1の反射点Cから第2の反射点Dまでの距離L6を算出する距離算出手段5と(【0023】)、
を備える、
距離測定装置。(【0022】)」(以下、「引用発明1」という。)
b 引用例2
引用例2には、「距離測定装置、距離測定方法及び距離測定プログラム」(発明の名称)に関し、次の事項(a)ないし(c)が図面とともに記載されている。
(a)
「【0001】
本発明は、携帯電話機等の携帯装置を用いた距離測定に関し、特に、距離測定を重力加速度情報と画像情報とを用いて行う距離測定装置、距離測定方法、及びそのプログラムに関する。」
(b)
「【0006】
ところで、携帯電話等の携帯装置に、既述のような距離測定機能を新たに搭載する場合には、機器を大型化する必要があり、小型化が進む携帯装置に搭載するのは困難である。また、携帯装置の演算能力は向上しているが、距離測定機能の制御処理の負荷は非常に大きく、携帯装置への導入が困難であった。」
(c)
「【0042】
携帯装置14を地表面に対して水平にした場合、即ち、静止した状態における鉛直方向の重力加速度gの測定状態を示す。距離測定における携帯装置14の傾斜角度は、図5に示すように、携帯装置14の加速度センサ3を備えた筐体部38が地表面と平行になる状態を基準として、0°とする。このときの重力加速度gの測定では、携帯装置14のカメラ7を地表面に水平にした状態で、加速度センサ3により加速度の測定を行う。
【0043】
このとき取得した重力加速度gの測定値は、後述の距離算出処理で利用してもよく、また、この測定は、基準点の確認処理のみを行い、目標物への距離算出処理では、重力加速度の一般値であるg=9.8〔m/s2 〕を利用してもよい。
【0044】
携帯装置14と地表面との傾斜角度がθの場合の重力加速度の算出について、図6に示す。傾斜角度θは、測定対象を表示部11に写した状態、即ち、補足した状態の角度である。ここで、傾斜角度0°の場合の重力加速度gについて、傾斜角度θ方向の値は、計算上、三角関数を利用すれば、(g×cos θ)となる。即ち、この値が、静止状態における、筐体部38の傾斜角度に対応する重力加速度成分である。
【0045】
次に、加速度センサ3で、静止状態における傾斜角度θの場合の加速度aout を測定すれば、上記の重力加速度gの角度θ方向の成分と一致するので、加速度aout は、
aout =g×cos θ ・・・(1)
の関係が成り立つ。重力加速度gは既知の値であるから、傾斜角度θの値は、
θ= cos-1(aout /g) ・・・(2)
となる。
【0046】
加速度センサ3により測定された加速度aout の値は、姿勢計測処理部6(図1)に送信され、上記の式(2) により、傾斜角度θを算出する。」
上記記載(a)ないし(c)、及び図面の第5~8図の記載から、引用例2には、次の発明が記載されていると認められる。
「携帯電話機等の携帯装置を用いた距離測定装置であって(【0001】)、
距離測定における携帯装置14の傾斜角度は、携帯装置14の加速度センサ3を備えた筐体部38が地表面と平行になる状態を基準として0°とし、携帯装置14のカメラ7を地表面に水平にした状態で、加速度センサ3により加速度の測定を行い(【0042】)、また静止状態における傾斜角度θの場合の加速度aout を測定すれば(【0045】)、傾斜角度0°の場合の重力加速度gについて、傾斜角度θ方向の値は(【0044】)、θ= cos-1(aout /g)により、傾斜角度θを算出する(【0045】、【0046】)、
距離測定装置。」(以下、「引用発明2」という。)
第4 対比
本願発明と引用発明1とを、主たる構成要件毎に、順次対比する。
まず、引用発明1において、「第1の方向と第2の方向とがなす角度θa」とは、少なくとも「送信手段1」及び「受信手段2」を含むデバイスが「第1の反射点C」及び「第2の反射点D」に向けられた状態でのデバイスの角度差にあたるものであるから、該角度θaを検出するということは、上記デバイスの角度(傾き)を検出することにほかならない。そうすると、引用発明1の「第1の方向と第2の方向とがなす角度θaを検出する角度検出手段」と、本願発明の「モバイルデバイスの傾きを推定するとともに前記モバイルデバイスをエンドポイントに向けるための傾き推定器」とは、「デバイスの傾きを推定するとともに前記デバイスをエンドポイントに向けるための傾き推定器」である点で共通する。
また、引用発明1における「測定波を第1の方向と所定角度θa離れた第2の方向とに送信する送信手段1と、第1の方向から戻る測定波と第2の方向から戻る測定波とをそれぞれ受信する受信手段2と、受信手段2で受信される測定波の伝搬遅延に基づいて、第1の方向に位置する第1の反射点Cまでの距離L4と、第2の方向に位置する第2の反射点Dまでの距離L5とを測定する距離測定手段3」と、本願発明における「信号を放出し、反射された信号に基づき前記モバイルデバイスとエンドポイントとの間の1次元の距離を推測するために前記反射された信号を検出するための信号放出器兼検出器」とは、「信号を放出し、反射された信号に基づき前記デバイスとエンドポイントとの間の1次元の距離を推測するために前記反射された信号を検出するための信号放出器兼検出器」である点で共通する。
さらに、引用発明1における「所定角度θaと距離L4と距離L5とを用いて、第1の反射点Cから装置直下の地点Eまでの水平距離L7及び装置直下の地点Eから装置までの高さL8を算出する距離算出手段5」と、本願発明における「1次元の距離および前記モバイルデバイスの傾きに基づいて、前記モバイルデバイスと前記エンドポイントとの間の多次元距離を推定するための、モバイルデバイスからエンドポイントまでの距離推定器であって、多次元距離は水平隔離距離および垂直隔離距離を含む、モバイルデバイスからエンドポイントまでの距離推定器」とは、「1次元の距離および前記デバイスの傾きに基づいて、前記デバイスと前記エンドポイントとの間の多次元距離を推定するための、デバイスからエンドポイントまでの距離推定器であって、多次元距離は水平隔離距離および垂直隔離距離を含む、デバイスからエンドポイントまでの距離推定器」である点で共通する。
また、引用発明1における「これらの距離を表示する表示部43」は、本願発明における「1つまたは複数の距離を提示するためのディスプレイ」に相当する。
次に、引用発明1における「所定角度θaと距離L4と距離L5とを用いて、第1の反射点Cから第2の反射点Dまでの距離L6を算出する距離算出手段5」と、本願発明における「前記モバイルデバイスからエンドポイントまでの距離推定器に結合された、第1のエンドポイントと第2のエンドポイントとの間のデバイスに依存しない距離を推定するための、デバイスに依存しない距離推定器であって、前記デバイスに依存しない距離が、前記第1および第2のエンドポイント間の水平離隔距離、絶対離隔距離、および垂直離隔距離を含む、デバイスに依存しない距離推定器」とは、「第1のエンドポイントと第2のエンドポイントとの間のデバイスに依存しない距離を推定するための、デバイスに依存しない距離推定器であって、前記デバイスに依存しない距離が、前記第1および第2のエンドポイント間の水平離隔距離を含む、デバイスに依存しない距離推定器」である点で共通する。
そして、引用発明1の「距離算出手段5」は、「所定角度θaと距離L4と距離L5とを用いて、・・・水平距離L7及び・・・高さL8を算出する」ものであるから、「測定波を第1の方向と所定角度θa離れた第2の方向とに送信する送信手段1と、第1の方向から戻る測定波と第2の方向から戻る測定波とをそれぞれ受信する受信手段2と、受信手段2で受信される測定波の伝搬遅延に基づいて、第1の方向に位置する第1の反射点Cまでの距離L4と、第2の方向に位置する第2の反射点Dまでの距離L5とを測定する距離測定手段3」に結合されていることは明らかであり、このことは、本願発明1において「前記モバイルデバイスからエンドポイントまでの距離推定器が、前記信号放出器兼検出器に結合される」ことと、「前記デバイスからエンドポイントまでの距離推定器が、前記信号放出器兼検出器に結合される」点で共通する。
また、引用発明1の「距離測定装置」は、以下の相違点を除き、本願発明の「実際の距離を推定するためのシステム」に相当する。
してみると、両者の一致点及び相違点は、以下のとおりである。
(一致点)
「デバイスの傾きを推定するとともに前記デバイスをエンドポイントに向けるための傾き推定器と、
信号を放出し、反射された信号に基づき前記デバイスとエンドポイントとの間の1次元の距離を推測するために前記反射された信号を検出するための信号放出器兼検出器と、
1次元の距離および前記デバイスの傾きに基づいて、前記デバイスと前記エンドポイントとの間の多次元距離を推定するための、デバイスからエンドポイントまでの距離推定器であって、多次元距離は水平隔離距離および垂直隔離距離を含む、デバイスからエンドポイントまでの距離推定器と、
1つまたは複数の距離を提示するためのディスプレイと、
第1のエンドポイントと第2のエンドポイントとの間のデバイスに依存しない距離を推定するための、デバイスに依存しない距離推定器であって、前記デバイスに依存しない距離が、前記第1および第2のエンドポイント間の水平離隔距離を含む、デバイスに依存しない距離推定器と
を備え、
前記デバイスからエンドポイントまでの距離推定器が、前記信号放出器兼検出器に結合される、
実際の距離を推定するためのシステム。」
(相違点)
相違点1:本願発明のシステムは、「モバイル」デバイスに関するものであるのに対し、引用発明1はモバイルデバイスの距離測定装置であるとはされていない点。
相違点2:本願発明は「傾き推定器を較正するための較正器」を備えるのに対し、引用発明1はそのような較正器を備えるとはされていない点。
相違点3:本願発明において「デバイスに依存しない距離推定器」は、「モバイルデバイスからエンドポイントまでの距離推定器に結合された」構成とされているのに対し、引用発明1はそのような構成とされていない点。
相違点4:本願発明において「デバイスに依存しない距離推定器」が推定する「第1のエンドポイントと第2のエンドポイントとの間のデバイスに依存しない距離」には、「絶対離隔距離、および垂直離隔距離」が含まれるとされているのに対し、引用発明1において算出されているのは、本願発明の「水平離隔距離」に相当する「第1の反射点Cから第2の反射点Dまでの距離L6」であるとされている点。
第5 判断
上記相違点について検討する。
相違点1,2について:上記引用発明2の内容に鑑みて、相違点1,2を併せて検討する。引用発明2は、携帯電話機等の携帯装置(本願発明の「モバイルデバイス」に相当。)を用いた距離測定装置であって、「携帯装置14の加速度センサ3を備えた筐体部38が地表面と平行になる状態を基準として0°とし、携帯装置14のカメラ7を地表面に水平にした状態で、加速度センサ3により加速度の測定を行い」、これを用いて「傾斜角度θを算出」するものである。これは基準となる0°での加速度を実測し、それを用いて傾斜角度の算出を行っているのであるから、「傾き推定器を較正するための較正器」を備えているといえる。そして、いずれも傾斜角度を利用する距離測定装置である引用発明1に引用発明2の構成を採用することは、当業者が容易になし得たものである。また、それにより新たな作用効果が奏されるものでもない。
相違点3について:引用発明1においては、「第1の反射点Cから第2の反射点Dまでの距離L6」の算出は「所定角度θaと距離L4と距離L5とを用いて」行われているが、距離L6の算出が「第1の反射点Cから装置直下の地点Eまでの水平距離L7」と、第2の反射点Dから装置直下の地点Eまでの水平距離との差分としても算出できることは、引用例1の図5からも自明といえる。したがって、引用発明1において、「第1の反射点Cから装置直下の地点Eまでの水平距離L7」を利用して距離L6を算出する(すなわち、水平距離L7を算出する距離算出手段(デバイスからエンドポイントまでの距離推定器)と距離L6を算出する距離算出手段(デバイスに依存しない距離推定器)とを結合することは、当業者が容易になし得たものである。
相違点4について:引用発明1において、所定角度θaと距離L4と距離L5とを用いれば、第1の反射点Cと第2の反射点Dが同一の高さにない場合であっても、この2点間の「絶対離隔距離、および垂直離隔距離」も算出可能であることは、技術常識の範ちゅうのものと言える。したがって、引用発明1において「絶対離隔距離、および垂直離隔距離」も算出するか否かは、必要に応じて適宜選択されるべき設計事項に過ぎない。
第6 むすび
したがって、本願発明は、引用発明1及び引用発明2に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
以上のとおりであるから、他の請求項に係る発明について審理するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2015-022633