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特許拒絶査定不服審判

2015-022280

リン光体分離を通じて演色評価数を高めた放射体

審判番号
2015-022280
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2012-556065外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
請求日
2015年12月18日
審決日
2018年03月14日
公報発行日
2018年09月28日
結論
請求不成立
審判長/審判官
分類
P18 .121-WZ (H01L)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項
データ出所
審決公報(SGML)

事件の表示

特願2012-556065「リン光体分離を通じて演色評価数を高めた放射体」拒絶査定不服審判事件〔平成23年 9月 9日国際公開,WO2011/109097,平成25年 6月10日国内公表,特表2013-521647〕について,次のとおり審決する。

結論

【結 論】 本件審判の請求は,成り立たない。

理由

【理 由】 1 手続の経緯 本願手続の概要は,次のとおりである。 国際出願             平成23年 3月 2日 (パリ条約による優先権主張外国庁受理2010年3月3日(2件),2010年8月2日,2010年9月24日(2件),2010年12月19日(2件),2010年12月22日,2011年1月19日,2011年1月23日,2011年1月24日,2011年2月16日,いずれも米国。) 国際出願翻訳文(提出日)     平成24年11月 2日 手続補正書(提出日)          同年11月 2日 拒絶理由の通知(発送日)     平成25年10月25日 意見書(提出日)         平成26年 2月25日 手続補正書(提出日)          同年 2月25日 拒絶理由の通知(最後)(発送日)    同年 8月 5日 意見書(提出日)            同年12月26日 手続補正書(提出日)          同年12月26日 補正の却下の決定(起案日)    平成27年 4月 6日 補正の却下の決定(発送日)       同年 4月10日 拒絶理由の通知(最後)(発送日)    同年 4月10日 意見書(提出日)            同年 7月10日 手続補正書(提出日)          同年 7月10日 補正の却下の決定(起案日)       同年 8月12日 補正の却下の決定(発送日)       同年 8月18日 拒絶査定(起案日)           同年 8月12日 同 (謄本送達日)           同年 8月18日 審判請求書(提出日)          同年12月18日 手続補正書(提出日)          同年12月18日 補正の却下の決定(起案日)    平成28年11月18日 補正の却下の決定(発送日)       同年11月30日 拒絶理由の通知    (発送日)    同年11月22日 意見書(提出日)         平成29年 3月22日 手続補正書(提出日)          同年 3月22日 拒絶理由の通知(最後)(発送日)    同年 4月25日 意見書(提出日)            同年 7月25日 手続補正書(提出日)          同年 7月25日 拒絶理由の通知(最後)(発送日)    同年10月25日 意見書(提出日)         平成30年 1月25日 2 本願発明 本願に係る発明は,平成29年7月25日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1~13に係るものであり,そのうち請求項1に係る発明は,以下のとおりのもの(以下「本願発明」という。)である。なお,本願特許請求の範囲の請求項1の第4段落冒頭の「前記第2の変換材料」は,「第2の変換材料」の誤記と認める。 「【請求項1】 固体ランプであって, 平面状基板の上に接している複数の発光ダイオード(LED)と, 前記LED上に接している第1の変換材料であって,前記LEDからの光は前記第1の変換材料を透過し,前記第1の変換材料は前記LEDからの光の少なくとも一部を変換して再放射する,第1の変換材料と, 第2の変換材料が前記第1の変換材料に直接接触せず,前記第2の変換材料がドーム形であり,該ドームの底面が前記LEDが接している前記平面状基板と同じ基板上に接するように,開放空間によって前記第1の変換材料から隔てて配置される第2の変換材料であって,前記LEDからの光は前記第2の変換材料を通過し,前記第2の変換材料は前記LED光の少なくとも一部を波長変換して再放射する,第2の変換材料とを備えた 固体ランプ。」 3 刊行物に記載された発明 (1)引用例1: 特開2008-187195号公報 当審において平成29年10月25日に通知した拒絶理由(以下,単に「当審において通知した拒絶理由」という。)に引用され,本願の優先日前に日本国内において頒布された特開2008-187195号公報(以下「引用例1」という。)には,図3とともに以下の記載がある(下線は当審で付加。以下同様。)。 「【0007】 本発明は前記の問題点を解決するためのものであって,本発明の目的は高い色再現性と優れた色均一性を表すことができる白色発光装置を提供することにある。 【0008】 本発明の他の目的は,高い色再現性と優れた色均一性を表し,その製作費用を節減した白色光源モジュールを提供することにある。」 「【0034】 図3は本発明の他の実施形態による白色発光装置200及びこれを含む白色光源モジュール520を概略的に示した断面図である。図3の実施形態でも,青色LEDチップ103はチップオンボード(Chip-On―Board)方式で回路基板101上に直接実装されており,青色LEDチップ103及びこれにより励起される赤色蛍光体及び緑色蛍光体が単位区域の白色発光装置200を形成する。また,最大限の色再現性を有するように青色LEDチップ103,赤色蛍光体及び緑色蛍光体は,前述の主波長及び色座標範囲(即ち,443~455nmの主波長範囲,CIE1931色座標系上で(0.5448,0.4544),(0.7079,0.2920),(0.6427,0.2905)及び(0.4794,0.4633)からなる四角区域,(0.1270,0.8037),(0.4117,0.5861),(0.4197,0.5316)及び(0.2555,0.5030)からなる四角区域)内の主波長と色座標を有する。 【0035】 しかし,本実施形態では,赤色及び緑色蛍光体が樹脂包装部内に分散混入されているものではなく,蛍光体膜の形態で提供される。具体的に,図3に図示されたとおり,緑色蛍光体を含んだ緑色蛍光体膜205が青色LEDチップ103の表面に沿って薄く塗布されており,その上に半球形状の透明樹脂包装部230が形成されている。透明樹脂包装部230上には赤色蛍光体を含んだ赤色蛍光体膜207が樹脂包装部230の表面上に塗布されている。緑色蛍光体膜205と赤色蛍光体膜207は相互にその位置を変えることもできる。(即ち,赤色蛍光体膜207がLEDチップ103上に塗布され,緑色蛍光体膜205が樹脂包装部230上に塗布されることもできる)。緑色蛍光体膜205と赤色蛍光体膜207は,例えば,それぞれの蛍光体粒子を含んだ樹脂膜からなることができる。蛍光体膜207,205内に含まれた各蛍光体としては前述の窒化物系,硫化物系またはシリケート系蛍光体を使用することができる。 【0036】 前記の通り,緑色(または,赤色)蛍光体膜205または207,透明樹脂包装部230及び赤色(または緑色)蛍光体膜207または205の構成を具備することによって,出力される白色光の色均一性をより向上させることができる。樹脂包装部内に緑色及び赤色蛍光体(粉末混合物)を単純に分散させる場合,樹脂の硬化過程で蛍光体間の比重の差異により蛍光体が均一に分布できず,層分離が発生する恐れがあり,これにより単一白色発光装置内で色均一性が低くなる可能性がある。しかし,図3の実施形態のように,樹脂包装部230により分離された緑色蛍光体膜205と赤色蛍光体膜207を使用する場合,青色LEDチップ103から多様な角度に放出された青色光は,蛍光体膜205,207を通して比較的均一に吸収または透過するため,全体的により均一な白色光を得られるようになる(色均一性の追加的向上)。 【0037】 また,図3のように,透明樹脂包装部230により相互分離された蛍光体膜205,207を使用する場合,蛍光体による光損失を低めることができる。蛍光体粉末混合物が樹脂包装部内に分散混入されている場合,既に蛍光体によって波長変換された2次光(緑色光または赤色光)が光経路上にある蛍光体粒子により散乱され,光損失が発生する恐れがある。しかし,図3の実施形態では,薄い緑色または赤色蛍光体膜205または207により変換された2次光は,透明樹脂包装部230を透過するか,発光装置200の外側に放出されるため,蛍光体粒子に対する光損失が減少する。」 ウ ここで,図3は以下のものである。 上記段落【0034】~【0037】の記載とともに図3を参照すると,樹脂包装部230上に塗布された,赤色蛍光体膜207または緑色蛍光体膜205は,その周縁において回路基板101に接するように設けられていることが見て取れる。 エ 以上から,図3に示された「本発明の他の実施例」に注目すると,引用例1には以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。 「高い色再現性と優れた色均一性を表し,その製作費用を節減した白色光源モジュール520であって, 白色光源モジュール520は白色発光装置200を含み, 白色発光装置200においては,青色LEDチップ103がチップオンボード(Chip-On―Board)方式で回路基板101上に直接実装されており,青色LEDチップ103及びこれにより励起される赤色蛍光体及び緑色蛍光体が単位区域の白色発光装置200を形成しており, ここで,緑色蛍光体を含んだ緑色蛍光体膜205が青色LEDチップ103の表面に沿って薄く塗布されており,その上に半球形状の透明樹脂包装部230が形成されており,透明樹脂包装部230上には赤色蛍光体を含んだ赤色蛍光体膜207が樹脂包装部230の表面上に塗布されており,また,緑色蛍光体膜205と赤色蛍光体膜207は相互にその位置を変えることもでき(即ち,赤色蛍光体膜207がLEDチップ103上に塗布され,緑色蛍光体膜205が樹脂包装部230上に塗布されることもできる),緑色蛍光体膜205と赤色蛍光体膜207は,例えば,それぞれの蛍光体粒子を含んだ樹脂膜からなることができるものであり, 樹脂包装部230の表面上に塗布されている赤色蛍光体膜207または緑色蛍光体膜205は,その周縁において回路基板101に接するように設けられており, 青色LEDチップ103から多様な角度に放出された青色光は,蛍光体膜205,207を通して比較的均一に吸収または透過するため,全体的により均一な白色光を得られるようになり, 薄い緑色または赤色蛍光体膜205または207により変換された2次光は,透明樹脂包装部230を透過するか,発光装置200の外側に放出されるため,蛍光体粒子に対する光損失が減少するものである, 白色光源モジュール520。」 4 当審の判断 (1)対比 引用発明と本願発明とを対比する。 ア 引用発明の「青色LEDチップ103」であって「チップオンボード(Chip-On―Board)方式で回路基板101上に直接実装されて」いるものと,本願発明の「平面状基板の上に接している複数の発光ダイオード(LED)」とは,「平面状基板の上に接している発光ダイオード(LED)」である点で一致する。 イ 引用発明においては,「青色LEDチップ103及びこれにより励起される赤色蛍光体及び緑色蛍光体が単位区域の白色発光装置200を形成して」いるから,赤色蛍光体膜207が含む赤色蛍光体,及び緑色蛍光体膜205が含む緑色蛍光体は,ともに青色LEDチップ103からの光により励起されることは明らかである。また,白色発光装置200は,白色光を発光すべく,青色LEDチップ103が発する青色光,赤色蛍光体が発する赤色光,及び緑色蛍光体が発する緑色光のいずれも外部に放出するものであって,青色LEDチップ103が発する青色光は,その一部が赤色蛍光体膜207及び緑色蛍光体膜205それぞれが含む赤色蛍光体及び緑色蛍光体を励起するとともに,他の部分は,赤色蛍光体膜207及び緑色蛍光体膜205を通過することは明らかである。 よって,引用発明の「緑色蛍光体を含んだ緑色蛍光体膜205」及び「赤色蛍光体を含んだ赤色蛍光体膜207」は,ともに波長を変換するものであるから,本願発明でいう「変換材料」にあたるものといえる。 ウ 上記イのとおりであるから,引用発明において,「緑色蛍光体を含んだ緑色蛍光体膜205」または「赤色蛍光体を含んだ赤色蛍光体膜207」であって,「青色LEDチップ103の表面に沿って薄く塗布されて」いるものが発する光の少なくとも一部分は,「赤色蛍光体を含んだ赤色蛍光体膜207」または「緑色蛍光体を含んだ緑色蛍光体膜205」であって「樹脂包装部230の表面上に塗布されて」いるものを通過することは明らかである。 また,引用発明において,「緑色蛍光体を含んだ緑色蛍光体膜205」及び「赤色蛍光体を含んだ赤色蛍光体膜207」であって,「半球形状の透明樹脂包装部230」「の表面上に塗布され」たものは,本願発明でいう「ドーム形」であるものといえる。 エ 上記イのとおりであるから,引用発明の「緑色蛍光体を含んだ緑色蛍光体膜205」または「赤色蛍光体を含んだ赤色蛍光体膜207」であって,「青色LEDチップ103の表面に沿って薄く塗布されて」いるものは,本願発明の「前記LED上に接している第1の変換材料であって,前記LEDからの光は前記第1の変換材料を透過し,前記第1の変換材料は前記LEDからの光の少なくとも一部を変換して再放射する,第1の変換材料」に相当する。 オ 引用発明においては,「緑色蛍光体を含んだ緑色蛍光体膜205」(または赤色蛍光体を含んだ赤色蛍光体膜207)「が青色LEDチップ103の表面に沿って薄く塗布されており,その上に半球形状の透明樹脂包装部230が形成されて」いるところ,「透明樹脂包装部230上には赤色蛍光体を含んだ赤色蛍光体膜207」(または緑色蛍光体を含んだ緑色蛍光体膜205)「が樹脂包装部230の表面上に塗布されて」いるから, 上記イ,ウも参照すると, 当該「赤色蛍光体を含んだ赤色蛍光体膜207」または「緑色蛍光体を含んだ緑色蛍光体膜205」であって「樹脂包装部230の表面上に塗布されて」おり,さらに「樹脂包装部230の表面上に塗布されている赤色蛍光体膜207または緑色蛍光体膜205は,その周縁において回路基板101に接するように設けられて」いるものと, 本願発明の「第2の変換材料が前記第1の変換材料に直接接触せず,前記第2の変換材料がドーム形であり,該ドームの底面が前記LEDが接している前記平面状基板と同じ基板上に接するように,開放空間によって前記第1の変換材料から隔てて配置される第2の変換材料であって,前記LEDからの光は前記第2の変換材料を通過し,前記第2の変換材料は前記LED光の少なくとも一部を波長変換して再放射する,第2の変換材料」とは, 「第2の変換材料が前記第1の変換材料に直接接触せず,前記第2の変換材料がドーム形であり,該ドームの底面が前記LEDが接している前記平面状基板と同じ基板上に接するように,前記第1の変換材料から隔てて配置される第2の変換材料であって,前記LEDからの光は前記第2の変換材料を通過し,前記第2の変換材料は前記LED光の少なくとも一部を波長変換して再放射する,第2の変換材料」 である点で一致する。 カ 引用発明の「白色光源モジュール520」は,固体発光素子である「青色LEDチップ103」からなる「白色発光装置200」を含むものであるから,本願発明の「固体ランプ」に相当する。 キ よって,両者は以下の点で一致する。 「固体ランプであって, 平面状基板の上に接している発光ダイオード(LED)と, 前記LED上に接している第1の変換材料であって,前記LEDからの光は前記第1の変換材料を透過し,前記第1の変換材料は前記LEDからの光の少なくとも一部を変換して再放射する,第1の変換材料と, 前記第2の変換材料が前記第1の変換材料に直接接触せず,前記第2の変換材料がドーム形であり,該ドームの底面が前記LEDが接している前記平面状基板と同じ基板上に接するように,前記第1の変換材料から隔てて配置される第2の変換材料であって,前記LEDからの光は前記第2の変換材料を通過し,前記第2の変換材料は前記LED光の少なくとも一部を波長変換して再放射する,第2の変換材料とを備えた 固体ランプ。」 ク 一方両者は以下の各点で相違する。 《相違点1》 本願発明は,「平面状基板の上に接している複数の発光ダイオード(LED)」を備えるのに対して,引用発明は,「平面状基板の上に接している発光ダイオード(LED)」を備えるものの,「複数の発光ダイオード(LED)」を備えるものではない点。 《相違点2》 本願発明は,「開放空間によって前記第1の変換材料から隔てて配置される第2の変換材料」との構成を備えるのに対して,引用発明は,「前記第1の変換材料から隔てて配置される第2の変換材料」は備えるものの,「開放空間によって」隔てるとの構成は備えない点。 (3) 判断 上記各相違点について検討する。 ア 相違点1について 一般に,基板上に複数の発光ダイオードを設けて発光装置を構成することで所要の発光強度を得ることは,例えば以下の周知例1及び2にも示されているように,従来より周知の技術である。 そして,引用発明においても,必要とされる発光強度に応じて当該周知技術を適用することは,当業者が適宜になし得ることである。 よって,相違点1は当業者が適宜になし得た程度の事項である。 周知例1:特開2007-49019号公報 当審において通知した拒絶理由に引用され,本願の優先日前に日本国内において頒布された特開2007-49019号公報(以下「周知例1」という。)には,図18及び図19とともに,以下の記載がある。 「【0056】 [第10の実施の形態] 図18は,本発明の第10の実施の形態に係る発光装置を示す。本実施の形態は,第1の実施の形態において,基板12上に複数のLEDチップ14A,14B,14C,14Dを搭載してマルチチップの構成にするとともに,内面に蛍光体層21が塗布された封止部材23でLEDチップ14A~14Dを封止して,発光装置10を構成したものである。 【0057】 ・・・(中略)・・・ 【0061】 [第11の実施の形態] 図19は,本発明の第11の実施の形態に係る発光装置を示す。本実施の形態は,第10の実施の形態において,封止部材23の形状を表面が平坦な封止部材24に代えたものであり,その他の構成は第10の実施の形態と同様である。」 周知例2:国際公開第2010/13893号 当審において通知した拒絶理由に引用され,本願の優先日前に電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった国際公開第2010/13893号(以下「周知例2」という。)には,図7とともに,以下の記載がある。 「[73] FIG. 7 is a sectional view of a warm white light emitting apparatus according to the seventh exemplary embodiment of the present invention. Referring to FIG. 7, the warm white light emitting apparatus according to this exemplary embodiment includes a layer 190 containing a delay phosphor (hereinafter, referred to as a "delay phosphor layer"). The delay phosphor layer 190 mayreduce the flickering of an AC LED 112. An encapsulant 140, which encapsulates both the first and second LED-phosphor combinations 110 and 120, may be made of a silicon or epoxy material and is coated with the delay phosphor layer 190.」 (日本語訳;「図7は,本発明の第7の実施例によるウォームホワイト発光装置の断面図を示す。図7を参照すると,本実施例によるウォームホワイト発光装置は,遅延蛍光体が含まれた層(以下,遅延蛍光体層という)190を有する。遅延蛍光体層190は,前記AC LED112のちらつき現象を低減するためのものである。封止材140は,第1のLED‐蛍光体の組合せ110と第2のLED‐蛍光体の組合せ120との両方を封止し,例えば,シリコンまたはエポキシ材質であり,遅延蛍光体層190がコーティングされる。」) イ 相違点2について 一般に,発光素子から隔てた位置に波長変換材料を配置する発光装置において,当該波長変換材料として,配置した際に内部空間が設けられるような形状にあらかじめ成型したものを用いることで製造工程を簡略化する技術は,例えば以下の周知例1,3及び4にも示されているように,従来より周知の技術である。 一方,引用発明は,製作費用を節減することを目的(引用例1の段落【0008】)としたものであるところ,一方の蛍光体膜を透明樹脂包装部230上に設けることは,引用例1の段落【0035】~【0037】に記載されているとおり,緑色蛍光体膜205と赤色蛍光体膜207とを相互に分離した構造を形成するためであって,白色光源モジュールの動作の点から見て,緑色蛍光体膜205と赤色蛍光体膜207の間を満たす材料の存在自体が必須でないことは明らかである。 それゆえ,引用発明において,上記周知技術を適用して,製造工程を簡略化して製作費用を節減することは当業者が適宜になし得たことである。 よって,相違点2は当業者が適宜になし得た程度の事項である。 周知例1:特開2007-49019号公報 前記周知例1には,図1とともに,さらに以下の記載がある。 「【0012】 [第1の実施の形態] (発光装置の構成) 図1は,本発明の第1の実施の形態に係る発光装置を示す。この発光装置1は,上面に配線パターン11A,11Bが形成されている基板12と,配線パターン11A,11Bの端部に金バンプ13A,13Bを介して基板12上に搭載された発光素子としてのLEDチップ14と,LEDチップ14に対して空間が形成されるようにして基板12上に設 けられた光透過性部材としての封止部材15と,封止部材15の内面に設けられた蛍光体層21とを備える。 【0013】 ・・・(中略)・・・ 【0015】 封止部材15は,エポキシ,アクリル等の光透過性の樹脂材の成形等により,LEDチップ14の発光中心から等距離のドーム形を成し,ほぼ均一な厚みになるように形成されている。従って,封止部材15でLEDチップ14を封止したとき,封止部材15内には,空気層となる空間が形成される。この封止部材15は,その周縁をLEDチップ14を中心にして基板12上に接着等により固定される。なお,封止部材15は,他の材料,例えば,光透過性のガラス材を用いることもできる。 【0016】 蛍光体層21は,LEDチップ14から放射される青色光によって励起されることにより,黄色光を発する珪酸塩系の蛍光体を用いて形成されている。LEDチップ14から放射され,蛍光体層21を透過した青色光と,蛍光体層21から放射される黄色光との混合により白色光が生成される。なお,蛍光体層21は,前記珪酸塩系のほか,例えば,YAG(Yttrium Aluminum Garnet)蛍光体等のガーネット系の蛍光体を用いることもできる。また,近紫外光(405nm)LED+蛍光体や紫外線発光LED+蛍光体の組み合わせでもよい。 【0017】 また,蛍光体層21は,封止部材15の内面に上記した蛍光体を塗布して形成し,或いは,封止部材15の内面に嵌合するドーム状の1つの部品にすることもできる。さらに,蛍光体を封止部材15に添加することもできる。この添加は,蛍光体層21と併用し,或いは蛍光体層21に代えて用いることができる。」 周知例3:特表2008-523639号公報 当審において通知した拒絶理由に引用され,本願の優先日前に日本国内において頒布された特表2008-523639号公報(以下「周知例3」という。)には,図4,図5,図6A~6Hとともに,以下の記載がある。 「【0043】 図4は,本発明の他の実施形態の分解斜視図を示しており,図1Hに対応する可能性がある。図4に示されるように,固体金属ブロック100は,空洞110をその中に備え,複数の間隔の開けられた電気線をその上に備える。図4に,第1の電気線130a’が示されている。しかし,単一の第2の電気線ではなく,複数の第2の電気線330a’,330b’および330c’が,例えば白色光源用の赤色,緑色および青色半導体発光デバイスを実現するように空洞110に取り付けることができる複数の半導体発光デバイス150’に接続するように,設けられてもよい。封入剤160およびレンズ保持器180が示されている。レンズ保持器180の他の構成は,レンズ170を固体金属ブロック100に取り付けるためのリッジおよび/または他の従来の取付け手段を実現してもよい。また,理解されることであろうが,エポキシ樹脂または他の接着剤がレンズ保持器180で使用されてもよい。本発明のいくつかの実施形態では,レンズ保持器180は,また,追加の上部ヒートシンク能力を実現することがある。図5は,図4の組み立てられたパッケージを示している。 【0044】 ・・・(中略)・・・ 【0048】 これから説明する本発明のいくつかの実施形態は,蛍光体を含むコーティングをレンズに設ける。他の実施形態では,レンズが,その中に分散された蛍光体を含む。 【0049】 図6A~6Hは,本発明の様々な実施形態に従った透明な光学素子の断面図である。これらの光学素子は,以下でも説明されるように,半導体発光デバイスを実装するために使用することができる。 【0050】 図6Aに示されるように,本発明のいくつかの実施形態に従った透過光学素子は,透明なプラスチックを含むレンズ170を備える。本明細書で使用されるとき,用語「透明な」は,半導体発光デバイスからの光放射が,完全に吸収または完全に反射されることなく材料を通過することができることを意味する。レンズ170は,その中に分散された蛍光体610を含む。当業者によく知られているように,レンズ170は,ポリカーボネート材料および/または,透過光学素子を作製するために使用される他の従来のプラスチック材料を含んでもよい。さらに,蛍光体610は,セリウム添加YAGおよび/または他の従来の蛍光体を含む任意の従来の蛍光体を含むことができる。いくつかの特定の実施形態では,蛍光体は,セリウム添加イットリウムアルミニウムガーネット(YAG:Ce)を含む。他の実施形態では,ナノ蛍光体が使用されることがある。蛍光体は当業者によく知られており,本明細書でさらに説明する必要はない。 【0051】 図6Aにおいて,蛍光体610はレンズ170の中に均一に分散されている。対照的に,図6Bでは,蛍光体620はレンズ170の中に不均一に分散されている。例えば,より高い強度および/または異なる色の領域を実現するように,および/または照明されたときレンズ170に様々な特徴を実現するように,蛍光体620の様々なパターンが形成されてもよい。図6A~6Bでは,レンズ110はドーム状レンズである。本明細書で使用されるときに,用語「ドーム」および「ドーム状」は,おおむねアーチ形表面の外形を有する構造を意味し,規則正しい半球状構造ならびに,形が偏心しおよび/または他の特徴,構造および/または表面を有し規則正しい半球を形成しない他のおおむねアーチ形構造を含む。 【0052】 ・・・(中略)・・・ 【0058】 当業者は理解することであろうが,図6A~6Hの実施形態は別個の実施形態として示されたが,図6A~6Hの様々な要素は,要素の様々な組合せおよび部分組合せで一緒に 使用されてもよい。したがって,例えば,内側コーティング640と外側コーティング630,均一に分布された蛍光体610と不均一に分布された蛍光体620,発光デバイス150,取付け基板100,空洞110,内部コア650および封入剤680の組合せは,一緒に使用されてもよい。さらに,図6A~6Hの実施形態は,本明細書で開示されるいずれの他の実施形態と組み合わされてもよい。」 周知例4:特開2009-267039号公報 当審において通知した拒絶理由に引用され,本願の優先日前に日本国内において頒布された特開2009-267039号公報(以下「周知例4」という。)には,図4とともに,以下の記載がある。 「【0075】 次に本発明の実施例3を詳述する。図4は本発明の発光装置の実施例3を示す模式断面図である。尚,実施例2と同一要素には同一番号を付し重複する説明は一部省略する。ここで,実施例3の特徴は基本的な構成は実施例2と同様であるが,LEDチップ4等を封止する封止部材が無く,封止外層8の内部は中空なことである。 【0076】 図4において,30は本発明の実施例3の発光装置である。この発光装置30は基本的な構成は実施例2の発光装置20と同様であるが,LEDチップ4等を封止する封止部材が無く,LEDチップ4やワイヤ6a,6bを覆う封止外層8は,強度の強い透光性樹脂等によって形成され,封止外層8の内部は中空である。 【0077】 ここで,実施例2と同様に,発光装置30の封止外層8は第1の発光体層として青色蛍光体10Bを含有し,発光素子表面層21は第2の発光体層として緑色蛍光体10Gを含有し,ダイボンド剤5は第3の蛍光体層として赤色蛍光体10Rを含有する。これにより,青色蛍光体10BはLEDチップ4からの出射光11によって青色光12Bを発光し,緑色蛍光体10Gは緑色光12Gを発光し,赤色蛍光体10Rは赤色光12Rを発光する。 【0078】 ・・・(中略)・・・ 【0080】 尚,実施例3はLEDチップ4やワイヤ6a,6bを封止する封止部材が無いが,封止外層8によってLEDチップ4やワイヤ6a,6bは,外部との気密が保たれ,また機械的に保護されているので特に問題はない。また,封止部材を無くすことで,製造工程を簡略化出来るメリットがある。」 (4)なお,請求人は,平成30年1月25日に提出した意見書において,本願発明は,光キャビティ効果により,高い効率とともに放射の均一性が得られるものであり,これは,第1の変換材料,第2の変換材料と開放空間(キャビティ)の界面では屈折率差が大きいので光は高い反射率で反射され,そのため光の屈折,散乱の効果が大きくなるためと考えられ,また,光キャビティ効果は開放空間の形状に制限されるとの記載はないから,本願の図13,14の構成に限られるものではなく,同図4,5のようなドーム型の構成でも発揮される旨を主張する。 しかしながら,上記主張における,「第1の変換材料,第2の変換材料と開放空間(キャビティ)の界面では屈折率差が大きいので光は高い反射率で反射され,そのため光の屈折,散乱の効果が大きくなるため」との説明によれば,第1の変換材料自体および第2の変換材料自体において内部反射を繰り返す(一般に,開放空間よりも,第1の変換材料および第2の変換材料の部分の方が屈折率は高いといえるから。)ことも生じ,そうすると,光の損失を当然に伴うこととなるから,上記「高い効率」が得られることと整合しない。 ところで,「光キャビティ効果」に関して,本願明細書には,段落【0026】において,「効率を高める一方法は,放射体と遠隔リン光体との間の空間内に引き起こされる光キャビティ効果を用いるものである。」と記載され,これに続いて,「遠隔リン光体構成では,チップ上にリン光体コーティングを有する実施例に比べて,高反射キャビティの設計においてより高い柔軟性がもたらされうる。」と記載されている。さらに,「光キャビティ」を備える,図13,14等に示される構成に関して,本願明細書には,段落【0065】において,「LEDチップ252は,上で説明されているキャリアに類似しているキャリア260に装着することができ,図示されている実施例では,LEDチップ252及びキャリア260は光キャビティ254内に装着されうる。他の実施例では,光キャビティをLEDチップの周りのキャリアに装着することができる。キャリア260は,上で説明されているようにLEDチップ252間の露出されている表面上に反射層262を有することができ,光キャビティ254は,光キャビティ254の頂部開口部から外へ光を向け直す反射面264を有することができる。」と記載されている。 上記各記載から見ると,「光キャビティ」あるいは「光キャビティ効果」とは,LEDチップを取り囲むような構造,及びそれにより形成される空間であって,反射面264を設けることにより外へ光を向け直して,効率を高めるものと解することが相当であり,本願明細書の他の記載を参照しても,前記請求人が主張するような作用は読み取れない。また,本願明細書には,「光キャビティ」あるいは「光キャビティ効果」が,それらを有しないものに比して「放射の均一性」の向上に寄与する旨の記載もない。 そうすると,単に「開放空間」を備えることが,「光キャビティ効果」に結びつくものとはいえない。よって,前記請求人の主張は,特許請求の範囲の記載に基づかないものである。 また,引用発明においても「青色LEDチップ103から多様な角度に放出された青色光は,蛍光体膜205,207を通して比較的均一に吸収または透過するため,全体的により均一な白色光を得られるようにな」ることから,放射の均一性が向上するものであり,また,「薄い緑色または赤色蛍光体膜205または207により変換された2次光は,透明樹脂包装部230を透過するか,発光装置200の外側に放出されるため,蛍光体粒子に対する光損失が減少するものであ」って,効率が向上するものでもあるから,請求人が主張する,前記本願発明に係る各効果は,格別なものとはいえない。 (4)まとめ 以上検討したとおり,本願発明は,周知技術を勘案して,引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 5 むすび 以上のとおりであるから,他の請求項について検討するまでもなく,本願は拒絶すべきものである。 よって,結論のとおり審決する。

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2015-022280

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