特許拒絶査定不服審判
2015-013290
正確な位置判定のためのRFタグ読取器
- 審判番号
- 2015-013290
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2012-556596外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2015年07月13日
- 審決日
- 2016年10月12日
- 公報発行日
- 2017年04月28日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】タレス・カナダ・インク
- 【請求人代理人】特許業務法人アテンダ国際特許事務所
- 分類
- P18 .121-Z (H01Q) / P18 .575-Z (H01Q)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第17条の2第6項、特許法第29条第2項、特許法第17条の2第3項、特許法第17条の2第5項第2号
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2012-556596「正確な位置判定のためのRFタグ読取器」拒絶査定不服審判事件〔平成23年 9月15日国際公開、WO2011/110882、平成25年 6月10日国内公表、特表2013-521737〕について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
本願は、2010年3月10日(国際事務局受理)を国際出願日とする出願であって、原審において平成26年7月9日付けで拒絶理由が通知され、同年11月12日付けで誤訳訂正されたが、平成27年2月23日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年7月13日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに、同日付けで手続補正されたものである。
第2 補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成27年7月13日付けの手続補正を却下する。
[理由]
1.本願発明と補正後の発明
平成27年7月13日付け手続補正(以下「本件補正」という。)は、本件補正前の平成26年11月12日付けで誤訳訂正された特許請求の範囲の請求項1に記載された
「無線周波数(RF)タグを使用し正確に位置決めするシステムであって且つ該システムは走行表面に沿って進むものであって、
前記走行表面上に配置されたRFタグから信号を受信するよう構成された位相アレイを形成する少なくとも2つのアンテナと、
前記少なくとも2つのアンテナと結合されており、主RF信号出力および位置検出信号出力を備えるRFタグ位置判定ユニットであって、前記少なくとも2つのアンテナのそれぞれによって受け取った信号から位置検出信号を生成し、前記位置検出信号出力へ伝送するように構成されているRFタグ位置判定ユニットとを備える。」
という発明(以下「本願発明」という。)を、
「無線周波数(RF)タグを使用し正確に位置決めするシステムであって且つ該システムは走行表面に沿って進むものであって、
前記走行表面上に配置されたRFタグから信号を受信するよう構成された位相アレイを形成する少なくとも2つのアンテナであって、前記少なくとも2つのアンテナは前記走行表面に沿って配置されており、且つ、前記少なくとも2つのアンテナの受信可能区域の一部が重なった2つのアンテナと、
前記少なくとも2つのアンテナと結合されており、主RF信号出力および位置検出信号出力を備えるRFタグ位置判定ユニットであって、前記少なくとも2つのアンテナのそれぞれによって受け取ったRFタグのIDを検出するための信号から位置検出信号を生成し、前記位置検出信号出力へ伝送するように構成されているRFタグ位置判定ユニットとを備える。」
という発明(以下「補正後の発明」という。)に変更することを含むものである。
2.新規事項の有無、シフト補正、補正の目的要件について
請求項1に係る補正は、国際出願日における国際特許出願の明細書、請求の範囲又は図面の翻訳文(誤訳訂正後の明細書、請求の範囲等)に記載した事項の範囲内において、補正前の特許請求の範囲の請求項1に記載された、「2つのアンテナ」に関し、「前記少なくとも2つのアンテナは前記走行表面に沿って配置されており、且つ、前記少なくとも2つのアンテナの受信可能区域の一部が重なった2つのアンテナ」と限定し、また、「受け取った信号」に関し、「受け取ったRFタグのIDを検出するための信号」と限定して、特許請求の範囲を減縮するものであるから、特許法第17条の2第3項及び第4項の規定に適合するとともに、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
請求項15、18についての補正も同様である。
3.独立特許要件について
請求項1についての上記補正は特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるから、上記補正後の発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるのかどうか(特許法第17条の2第6項で準用する同法第126条第7項の規定に適合するかどうか)について以下に検討する。
(1)補正後の発明
上記「1.本願発明と補正後の発明」の項で補正後の発明として認定したとおりである。
(2)引用発明及び周知技術
A 原審の拒絶理由に引用された特開2009-73397号公報(以下「引用例」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。
イ.「【技術分野】
【0001】
この発明は、列車運行制御を行うために必要な列車の位置を検知する列車位置検知装置および移動無線機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の列車位置検知装置は、列車に搭載され、電力波と呼ばれる電波を送信するトランスポンダ車上子と、駅の停止位置許容範囲となる軌道内に設置され、車上子からの電波を受信する地上子とで構成されている(例えば特許文献1参照)。
特許文献1に記載された従来技術では、地上子が、軌道内の列車停止領域に列車の進行方向に沿って軌道内に設置した3つのコイル(コイル1、コイル2、コイル3)を備えている。軌道内のコイルの位置は、コイル1が列車停止領域より手前の領域、コイル2が列車停止領域、コイル3が列車停止定位置より先の領域となるようにしている。列車が停止した時、トランスポンダ車上子は地上子上に存在し、地上子では、トランスポンダ車上子からの電波の各コイルによる受信レベルを計測し、受信レベルの強弱からトランスポンダ車上子がどのコイル上に位置するのかを判定する。判定の結果、トランスポンダ車上子がコイル1上に位置する場合には列車が停止領域よりも手前に位置(ショート)し、また、コイル2上に位置する場合には列車が停止領域に位置(ジャスト)し、また、コイル3上に位置する場合には列車が停止領域よりも先に位置(オーバー)していると検知している。」(3頁)
ロ.「【0009】
実施の形態1.
図1は、この発明の実施の形態1による列車位置検知装置の機能構成を示すブロック図である。
図において、列車位置検知装置は、列車に搭載される移動無線機100と軌道脇に設置される固定無線機200を備えている。移動無線機100は、アレイアンテナ(受信手段)101、受信部(受信手段)102、電波到来角演算部(電波到来角演算手段)103、列車位置演算部(列車位置演算手段)104および位置補正値記憶部105を備えている。一方、固定無線機200は、アンテナ201、増幅部202および信号生成部203を備えている。ここで、アレイアンテナ101と受信部102による機能はレーダなどで用いられるもの同様である。
【0010】
次に動作について説明する。
固定無線機200において、信号生成部203は、所定の周波数、振幅あるいは位相を持つ送信信号を生成して出力する。また、所定の周波数、振幅あるいは位相で変調したID信号を出力する。信号生成部203からの送信信号は、増幅部202で電力増幅されてアンテナ201に出力される。アンテナ201は、入力された送信信号を電波として放射する。
列車が固定無線機200のある場所に到来すると、固定無線機200から放射された電波は、列車に搭載されている移動無線機100のアレイアンテナ101で受信され受信部102に出力される。ここで、アレイアンテナ101は、例えば複数アンテナ素子を列車の進行方向と略並行に直線状に配列した構成とする。また、後述する電波到来角演算部103で用いる高分解能電波到来角推定技術によっては、平面配列、曲面状など任意形状のアンテナ配列としてもよい。
【0011】
受信部102では、固定無線機200からの電波成分を取り出して増幅し受信信号として電波到来角演算部103に出力する。電波到来角演算部103では、入力された受信信号に基づいて固定無線機200からの電波の到来角度を演算し、算出した電波到来角を列車位置演算部104に出力する。ここで、電波到来角は受信信号の周波数、振幅、位相などから演算される。また、電波到来角推定技術としては、レーダなどで用いる方法と同じで、例えばMUSIC(MUltiple SIgnal Classification)法や最尤推定法などを用いる。また、他の高分解能電波到来角推定技術を用いてもよい。電波到来角は、図2に示すように、矢印の方向へ移動無線機100が移動するものとすると、軌道300と直交する方向から電波が到来した時の値を0度とし、0度を境に正負で表される値で出力される。
【0012】
列車位置演算部104では、電波到来角演算部103から入力された電波到来角に基づいて列車位置を算出する。また、列車位置を求める際に、後述するように位置補正値記憶部105に記憶されている補正値を用いて補正を行う。
列車位置演算部104において電波到来角から列車位置を求める具体的な方法について図3で説明する。移動無線機100が通る軌道300が直線で、軌道300の矢印方向を列車の進行方向とする。固定無線機200と軌道300間の距離をY、固定無線機200から軌道300へ下ろした垂線の足の座標をX0、移動無線機100の位置をX1、軌道300上の予め決めた基準列車位置をX2、固定無線機200からの電波到来角をθ1とする。また、固定無線機200と基準列車位置X2を結んだ直線と、軌道300と直交し基準列車位置X2を通過する垂線とのなす角を基準角θ2とする。
【0013】
図3において、距離Y、位置X1とX0間の距離D1および電波到来角θ1の間には(1)式の関係が成り立つ。
tan(θ1)=D1/Y (1)
よって、距離D1は、電波到来角θ1の正接と距離Yを乗算した(2)式で求められる。
D1=Y×tan(θ1) (2)
また、同様にX2とX0間の距離D2は、基準角θ2の正接と距離Yを乗算した(3)式で求められる。
D2=Y×tan(θ2) (3)
ここで、距離D1およびD2の解としては、正、負となる場合があるが、正の距離はX0よりも手前の場所に位置することを意味し、負の距離はX0を通過した場所に位置することを意味する。また、求められた距離がゼロの時は、X0と一致していることを意味する。
【0014】
また、距離D1から距離D2を引いた距離をD3とすると、D3は(4)式より基準列車位置X2とX1との距離となる。
D3=D1-D2=X1-X2 (4)
ここでも同様に距離D3は正負の距離として表され、正の距離の時はX2よりも手前にX1が存在し、負の距離の時はX2よりを通過した場所にX1が存在することを意味する。また、D3がゼロの時は、基準列車位置X2上に位置することを意味する。以上のようにして基準列車位置X2に対する列車位置D3を求めることができる。
【0015】
固定無線機200と軌道間300の距離Yと基準角θ2を、予め決められた所定の距離に固定無線機200を設置することで既知の定数として、列車位置演算部104の演算時に用いる。この定数、距離Yと基準角θ2を、固定無線機200で保持しておき、送信信号の電波に付加して移動無線機100に無線伝送するようにしてもよい。移動無線機100では、受信した距離Yと基準角θ2を列車位置演算部104に入力して列車位置の演算に用いることになる。また、距離Yと基準角θ2は、別伝送形態の鉄道用トランスポンダを利用して伝送するようにしてもよい。その場合、鉄道用トランスポンダは、例えば自動列車停止装置(ATS)に用いられているトランスポンダを利用でき、列車にトランスポンダ車上子、軌道内にトランスポンダ地上子を設置し、トランスポンダ車上子の送信に対してトランスポンダ地上子が応答することになる。トランスポンダ地上子を列車停止位置よりも手前に設置し、応答時にトランスポンダ地上子は距離Yと基準角θ2をトランスポンダ車上子に伝送する。得られた距離Yおよび基準角θ2は移動無線機100内の列車位置演算部104へ入力される。
【0016】
ところで、移動無線機100は列車に搭載する際に常に同じ条件で搭載できるとは限らない。例えば、移動無線機100が取り付けられる箇所が車両の型によって異なる場合がある。すなわち、上述した固定無線機200と軌道300間の距離Y、電波到来角をθ1および基準角θ2が列車によって異なってしまう。そのため、移動無線機100は、距離Y、角度θ1および角度θ2に係る自機の補正値を予め位置補正値記憶部105に記憶しておく。列車位置演算部104は、この補正値に基づいてY、θ1およびθ2を補正し、補正した値を用いて(1)式から(4)式の処理を行うことで、移動無線機100の搭載される位置にかかわらず列車位置を精度良く求めることができる。
【0017】
なお、マルチパスの影響を低減するために、固定無線機200から送信して移動無線機100で受信される電波に円偏波を用いてもよい。円偏波を用いた際は、電波が反射すると偏波の向きが変わる為に反射波の影響を取り除くことができる。
また、耐ノイズ性を向上するために、固定無線機200から放射される電波は、予め設定したM系列やGOLD系列や直交系列などの符号やこれらの符号を組み合わせた符号を用いてBPSK(Binary Phase Shift Keying)変調して送信し、移動無線機100で復調するようにしてもよい。
【0018】
図4は、列車停止位置検知装置の適用例を示すが、列車の停止位置を精度良く検知するための設置例である。この場合は、固定無線機200が駅ホームの屋根やホーム脇の電柱等に設置され、移動無線機100が列車上に設置されている状態を表している。
なお、列車の車両数やホーム構造によって列車毎に停止位置が異なる場合は、列車毎に基準角θ2を設定することで所定の場所に基準列車位置を設定すればよい。また、駅ホームの構造やホームの数に応じて、固定無線機200を複数設置してもよい。そのような場合には、固定無線機毎に固定無線機IDとそのIDに対応した距離Y、角度θ1および角度θ2から列車の停止位置を検知することになる。さらに、駅ホームに進入する前から列車位置を検知することにより、列車停止位置までの距離が得られ、得られた距離から列車の速度制御を行うことが可能となる。」(4~6頁)
引用例の記載及び図面並びにこの分野における技術常識を考慮すると、上記イ.の【0001】における「この発明は、列車運行制御を行うために必要な列車の位置を検知する列車位置検知装置および移動無線機に関するものである。」との記載、上記ロ.の【0009】における「図において、列車位置検知装置は、列車に搭載される移動無線機100と軌道脇に設置される固定無線機200を備えている。」との記載、同ロ.の【0012】における「列車位置演算部104において電波到来角から列車位置を求める具体的な方法について図3で説明する。移動無線機100が通る軌道300が直線で、軌道300の矢印方向を列車の進行方向とする。」との記載、及び図1~3によれば、引用例の移動無線機(100)は、固定無線機(200)を使用し列車の位置を検知し、軌道に沿って列車進行方向に進むものである。
また、上記ロ.の【0010】における「列車が固定無線機200のある場所に到来すると、固定無線機200から放射された電波は、列車に搭載されている移動無線機100のアレイアンテナ101で受信され受信部102に出力される。」との記載、同ロ.の【0010】における「固定無線機200において、信号生成部203は、所定の周波数、振幅あるいは位相を持つ送信信号を生成して出力する。また、所定の周波数、振幅あるいは位相で変調したID信号を出力する。」との記載、及び図1~4によれば、引用例の移動無線機(100)は、軌道脇に設置された固定無線機(200)からID信号を受信するように構成されているアレイアンテナ(101)を備えている。ここで、同ロ.の【0010】における「アレイアンテナ101は、例えば複数アンテナ素子を列車の進行方向と略並行に直線状に配列した構成とする。」との記載によれば、アレイアンテナ(101)は、列車進行方向に略平行に直線状に配置されている。
また、上記ロ.の【0009】における「移動無線機100は、アレイアンテナ(受信手段)101、受信部(受信手段)102、電波到来角演算部(電波到来角演算手段)103、列車位置演算部(列車位置演算手段)104および位置補正値記憶部105を備えている。」との記載、同ロ.の【0018】における「固定無線機毎に固定無線機IDとそのIDに対応した距離Y、角度θ1および角度θ2から列車の停止位置を検知することになる。」との記載、同ロ.の【0011】における「電波到来角演算部103では、入力された受信信号に基づいて固定無線機200からの電波の到来角度を演算し、算出した電波到来角を列車位置演算部104に出力する。」との記載、同ロ.の【0012】における「列車位置演算部104では、電波到来角演算部103から入力された電波到来角に基づいて列車位置を算出する。」との記載、及び図1~4によれば、引用例の移動無線機(100)は、電波到来角演算部(103)及び列車位置演算部(104)を備えており、アレイアンテナ(101)のそれぞれによって受信した固定無線機(200)のIDを検知するためのID信号を用いて列車位置を算出し、列車位置を出力するように構成されている。
したがって、引用例には、以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。
「固定無線機(200)を使用し列車の位置を検知する移動無線機(100)であって且つ該移動無線機(100)は軌道に沿って列車進行方向に進むものであって、
軌道脇に設置された固定無線機(200)からID信号を受信するように構成されたアレイアンテナ(101)であって、前記アレイアンテナ(101)は列車進行方向に略平行に直線上に配列されているアレイアンテナ(101)と、
前記アレイアンテナ(101)と接続されており、列車位置出力を備える電波到来角演算部(103)及び列車位置演算部(104)であって、前記アレイアンテナ(101)のそれぞれによって受信した固定無線機(200)のIDを検知するためのID信号を用いて列車位置を算出し、列車位置出力を出力するように構成されている電波到来角演算部(103)及び列車位置演算部(104)とを備える。」
B 原審の拒絶査定に周知例として挙げられた特開2009-274637号公報には、図面とともに以下の事項が記載されている。
イ.「【技術分野】
【0001】
この発明は、列車に対して地上情報を送信する無電源地上子を使用して列車が駅の定位置範囲内に停止したか否を判定する情報伝送装置に関するものである。」(2頁)
ロ.「【0014】
図1はこの発明の情報伝送装置の概略構成図である。情報伝送装置は、図1(a)の平面図に示すように、列車1が走行するレール2間に設けられた無電源地上子3と、列車1に搭載された情報送受信装置4と車上アンテナ5とを有する。
【0015】
無電源地上子3は、図2の構成図に示すように、複数の無線ICタグ、例えばRFID(Radio Frequency Identification)タグ6a~6x(以下、RFIDタグという)を有し、RFIDタグ6a~6xが例えば4列5行でマトリックス状に配置されている。このRFIDタグ6a~6xは電池を内蔵しないで、車上アンテナ5から送信される無線波をエネルギとして格納された情報を車上アンテナ5に返信するパッシブ型であり、それぞれ異なる識別子ID1~ID24が設定され、同じ地上情報を有する。この地上情報はレスポンスタイムを短くするためデータ量を小さくしている。
【0016】
列車1に搭載された情報送受信装置4はRFIDリーダ7と情報処理装置8を有する。RFIDリーダ7は車上アンテナ5を介して例えば周波数13.56MHzの無線波を地上に送信し、無電源地上子3と電磁結合したとき無電源地上子3のRFIDタグ6a~6xから送信される情報を、車上アンテナ5を介して順次受信する。情報処理装置8はRFIDリーダ7で受信した情報を処理して列車1の位置を判定する。」(4頁)
また、原審の拒絶査定に周知例として挙げられた特開2007-131157号公報には、図面とともに以下の事項が記載されている。
ハ.「【技術分野】
【0001】
本発明は、軌道上を走行する保守用車の乗員に対して、作業に関する地点情報を報知するための技術に関する。」(3頁)
ニ.「【0038】
図1に示すように、保守用車用地点情報報知システムは、軌道の枕木等の上に設置される地上子10と、保守用車の先頭部分に設けられ、地上子10から信号を受信し、地点情報の音声データを出力するための車上子20と、保守用車の運転台に設けられ、保守用車の乗員に対して地点情報を音声で報知するための報知装置30とを備えている。
【0039】
このうち、地上子10は、RFIDタグ12を耐候性を有する樹脂性のケース内に納めた識別情報送信用のユニットである。RFIDタグ12は、周知のメモリ、制御回路及び通信回路からなるICチップとアンテナとを内蔵している。このRFIDタグ12は、車上子20から照射される電波によって電力供給を受け、メモリに記憶されている情報を送信するいわゆるパッシブ・タグである。RFIDタグ12に内蔵されているメモリには、地点情報を識別するための識別情報(本実施形態では番号であり、以下においては識別番号と称す。)が記憶されている。このメモリの記憶内容は、専用のリーダライタ等によって電気的に書き換え可能である。」(7頁)
ホ.「【0065】
例えば、地上子10の設置位置は、軌道の枕木上に限らず、例えば、軌道沿いに存在する構造物やトンネルの壁面等に取り付けてもよく、車上子20との通信が可能な範囲であれば、線路(列車を走らせるための軌道とこれを支持するための路盤、構造物を包含している地帯を指す)内のどのような位置にも設置可能である。」(11頁)
したがって、上記記載に見られるように「列車の位置を検出するシステムにおいて、RFタグを用いること。」は、周知の技術ということができる。また、「RFタグを軌道と軌道の間に配置すること。」は、周知の技術ということができる。
(3)対比・判断
補正後の発明と引用発明とを対比する。
a.引用発明の「固定無線機(200)」と、補正後の発明の「無線周波数(RF)タグ」とは、後述する相違点を除いて、「無線装置」という点で一致する。
b.引用発明の「列車の位置を検知する移動無線機(100)」は、列車の位置をアレイアンテナ(101)により位置決めするから、「位置決めするシステム」ということができる。
c.引用発明の「軌道(300)の列車進行方向に進む」は、補正後の発明の「走行表面」が、例えば、レールであるから、補正後の発明の「走行表面に沿って進む」ということができる。
d.引用発明の「軌道脇に設置された固定無線機(200)」と、補正後の発明の「前記走行表面上に配置されたRFタグ」とは、後述する相違点を除いて、「特定の位置に配置された無線装置」という点で一致する。
e.引用発明の「列車進行方向に略平行に直線上に配列され」は、上記c.の対比を考慮すると、補正後の発明の「前記走行表面に沿って配置され」ということができる。
f.本願明細書段落【0008】における「3つ以上のアンテナを使用して、アンテナアレイを形成することができる。少なくともいくつかの実施形態では、個々のアンテナ110、112の代わりに、単一の位相アレイアンテナを使用することができる。」との記載によれば、補正後の発明の「位相アレイを形成する少なくとも2つのアンテナであって、前記少なくとも2つのアンテナの受信可能区域の一部が重なった2つのアンテナ」は、単一の位相アレイアンテナを含むと解される。
一方、引用発明の「アレイアンテナ(101)」は、略平行に直線状に配列した複数のアンテナ素子を用いて電波到来角を求めるものであり、位相アレイアンテナであることは明らかである。
したがって、補正後の発明の「位相アレイを形成する少なくとも2つのアンテナであって、前記少なくとも2つのアンテナの受信可能区域の一部が重なった2つのアンテナ」に含まれる。
g.引用発明の「列車位置出力」は、補正後の発明の「位置検出信号出力」に相当する。
h.引用発明の「電波到来角演算部(103)及び列車位置演算部(104)」と、補正後の発明の「RFタグ位置判定ユニット」とは、後述する相違点を除いて、「無線装置位置判定装置」という点で一致する。
i.引用発明の「固定無線機(200)のIDを検知するためのID信号を用いて列車位置を算出し」と、補正後の発明の「RFタグのIDを検出するための信号から位置検出信号を生成し」とは、後述する相違点を除いて、「無線装置のIDを検出するための信号から位置検出信号を生成し」という点で一致する。
したがって、補正後の発明と引用発明は、以下の点で一致ないし相違している。
(一致点)
「無線装置を使用し位置決めするシステムであって且つ該システムは走行表面に沿って進むものであって、
特定の位置に配置された無線装置から信号を受信するよう構成された位相アレイを形成する少なくとも2つのアンテナであって、前記少なくとも2つのアンテナは前記走行表面に沿って配置されており、且つ、前記少なくとも2つのアンテナの受信可能区域の一部が重なった2つのアンテナと、
前記少なくとも2つのアンテナと結合されており、位置検出信号出力を備える無線装置位置判定装置であって、前記少なくとも2つのアンテナのそれぞれによって受け取った無線装置のIDを検出するための信号から位置検出信号を生成し、前記位置検出信号出力へ伝送するように構成されている無線装置位置判定装置とを備える。」
(相違点1)
一致点の「位置決めするシステム」に関し、
補正後の発明は、「正確に」位置決めするものであるのに対し、引用発明は、「正確に」位置決めするものであるか明らかでない点。
(相違点2)
一致点の「無線装置」に関し、
補正後の発明は、「RFタグ」であるのに対し、引用発明は、「固定無線機(200)」である点。
加えて、
「無線装置」の配置位置に関し、
補正後の発明の「RFタグ」は、「前記走行表面上に配置されて」いるのに対し、引用発明の「固定無線機(200)」は、「軌道脇に設置されて」いる点。
(相違点3)
補正後の発明は、位置検出信号出力の他に「主RF信号出力」を備えるのに対し、引用発明は、「主RF信号出力」について明らかでない点。
(相違点4)
一致点の「無線装置位置判定装置」に関し、
補正後の発明は、「RFタグ位置判定ユニット」であるのに対し、引用発明は、「電波到来角演算部(103)及び列車位置演算部(104)」である点。
そこで、まず、上記相違点2ないし4についてまとめて検討する。
上記「(2)引用発明及び周知技術」の項Bのとおり、「列車の位置を検出するシステムにおいて、RFタグを用いること。」は、周知技術である。
ここで、本願明細書段落【0004】【0005】の記載、及び図1並びに技術常識を参酌すれば、補正後の発明の「前記走行表面上に配置されたRFタグ」は、レール表面のみならず、レールとレールの間に配置されたRFタグを含むものと解するのが自然である。
そして、上記「(2)引用発明及び周知技術」の項Bのとおり、「RFタグを軌道と軌道の間に配置すること。」は、周知技術であり、上記ホ.の【0065】にも記載されているように、引用発明の固定無線機やRFタグは、通信可能な範囲であれば軌道脇やレールとレールの間等の任意の位置に設置可能であることは当業者に明らかである。
そうすると、引用発明にこれらの周知技術を適用することにより、引用発明の「固定無線機(200)」に換え、「RFタグ」を採用し、そして、RFタグの配置について、RFタグを軌道と軌道の間に配置すること、すなわち、上記相違点2に係る構成のようにすることは、当業者が容易に想到し得ることである。
その際、引用発明の「電波到来角演算部(103)及び列車位置演算部(104)」を「RFタグ位置判定ユニット」に設計変更すること(相違点4)は、RFタグを採用することに伴い当然に導かれることである。
また、引用発明は、「列車位置出力」のみであるところ、RFタグを用いる装置においてID信号を出力することは普通のことであるから、引用発明の「列車位置出力」に加えて、補正後の発明のように「主RF信号出力」を備えること(相違点3)は、当業者が必要に応じ適宜なし得ることである。
次に、上記相違点1について検討する。
引用発明は、「アレイアンテナ(101)」「電波到来角演算部(103)及び列車位置演算部(104)」により列車位置を算出するところ、列車の位置検知の精度を向上させることは当然のことであるから、補正後の発明のように「正確に」位置決めすることは、当業者が適宜なし得ることである。
そして、補正後の発明の作用効果も、引用発明及び周知技術から当業者が容易に予測できる範囲のものである。
以上のとおり、補正後の発明は引用発明及び周知技術に基づいて容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
4.結語
したがって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
第3 本願発明について
1.本願発明
平成27年7月13日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願発明は、上記「第2 補正却下の決定 1.本願発明と補正後の発明」の項の「本願発明」のとおりのものと認める。
2.引用発明及び周知技術
引用発明は、上記「第2 補正却下の決定」の項中の「3.独立特許要件について」の項中の「(2)引用発明及び周知技術」の項で認定したとおりである。
3.対比・判断
本願発明は上記補正後の発明から本件補正に係る限定を省いたものである。
そうすると、本願発明の構成に本件補正に係る限定を付加した補正後の発明が、上記「第2 補正却下の決定」の項中の「3.独立特許要件について」の項で検討したとおり、引用発明及び周知技術に基づいて容易に発明できたものであるから、本願発明も同様の理由により、容易に発明できたものである。
4.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、その余の請求項に論及するまでもなく拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2015-013290