特許拒絶査定不服審判
2014-011151
タンパク質からなる疣と新生物を溶解して除去できる薬物及びその用途
- 審判番号
- 2014-011151
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2012-525865外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2014年06月12日
- 審決日
- 2015年09月14日
- 公報発行日
- 2017年08月25日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 分類
- P18 .113-Z (A61K) / P18 .121-Z (A61K)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条1項3号
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第2項、特許法第29条
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2012-525865「タンパク質からなる疣と新生物を溶解して除去できる薬物及びその用途」拒絶査定不服審判事件〔平成23年 3月 3日国際公開、WO2011/023013、平成25年 1月24日国内公表、特表2013-502443〕について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
【理 由】
1 手続の経緯
本願は、2010年 6月 7日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2009年 8月24日 (CN)中華人民共和国)を国際出願日とする出願であって、平成25年 8月 1日付け拒絶理由通知に対して平成25年12月 6日に意見書及び手続補正書が提出された後、平成26年 2月 4日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成26年 6月12日に拒絶査定不服審判が請求されると同時に手続補正書が提出されたものである。
2 本願発明
本願の請求項1~5に係る発明は、平成26年 6月12日提出の手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1~5に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「 【請求項1】
病理組織と病原体を即時に溶解して除去できる薬物組成物において、前記薬物組成物は、
総重量100重量部に対して、
a)1.0~60.0部の水酸化ナトリウムおよび/または水酸化カリウムと、
b)局所麻酔作用を果たす0.25~1.0部の純粋な化合物であるテトラカイン、ブファリンおよび/またはメントールと、
c)余分である水と、
から成ることを特徴とする薬物組成物。
【請求項2】
請求項1に記載の薬物組成物を含む、病理組織および/または病原体を即時に溶解して除去する用の医薬。
【請求項3】
請求項2に記載の尖圭コンジローム(CA)、伝染性軟疣腫、皮膚癌、各種組織と臓器のポリープ、前癌病変、結節性痒疹、色素性母斑、鶏眼、尋常性疣贅、スキンタグなどを即時に溶解して除去する用の医薬。
【請求項4】
請求項2に記載の扁平疣贅、皮膚結核、結核様らい、老人斑、毛嚢炎を即時に溶解して除去する用の医薬。
【請求項5】
請求項2に記載の爪白癬、硬皮症、壊死した皮膚などを即時に溶解して除去する用の医薬。」
したがって、本願の請求項2に係る発明(以下「本願発明」という。)は次のとおりのものである。
「病理組織と病原体を即時に溶解して除去できる薬物組成物において、前記薬物組成物は、総重量100重量部に対して、
a)1.0~60.0部の水酸化ナトリウムおよび/または水酸化カリウムと、
b)局所麻酔作用を果たす0.25~1.0部の純粋な化合物であるテトラカイン、ブファリンおよび/またはメントールと、
c)余分である水と、
から成ることを特徴とする薬物組成物
を含む、病理組織および/または病原体を即時に溶解して除去する用の医薬。」
3 原査定の拒絶の理由及び引用刊行物に記載された発明
(1)原査定の拒絶の理由
本願発明に対する原査定の拒絶の理由は、
(i)本願発明は、(2)に示す引用刊行物に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない、
(ii)本願発明は、(2)に示す引用刊行物に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、
というものである。
(2)引用刊行物の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された、本願の優先日前に頒布された刊行物である、「中国特許公開第101433617号明細書」(以下「引用例1」という。)には、以下の事項が記載されている。(引用例1は中国語で記載されているので、図表及びその説明を除き、当審による訳文で示す。)
(ア)
「請求項1 イボを解消し取り除く八仙消毒クリームであって、その特徴は以下のように、配合比が(重量で)カンゾウ0-3.0、オウキン0-3.0、オウバク0-3.0、ダイオウ0-3.0、メントール0-1.0、水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウム2-60、水酸化カルシウム0-10、塩酸レボブピバカイン(またはがまの油、塩酸ブピババカイン、リドカイン、テトラカインまたはプロカイン)0.75-1.0 である点にある。
請求項2 請求項1に述べられているイボを解消し取り除く八仙消毒クリームであって、その特徴は以下のように、さらにカルボマー941を0-1.0、残量の水を100まで加える点にある。」(特許請求の範囲の第1/1頁第1~6行)
(イ)
「本発明は次のようにして実現される:イボを解消し取り除く八仙消毒クリームであって、その特徴は以下のように、配合比が(重量で)カンゾウ0-3.0、オウキン0-3.0、オウバク0-3.0、ダイオウ0-3.0、メントール0-1.0、水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウム2-60、水酸化カルシウム0-10、塩酸レボブピバカイン(またはがまの油、塩酸ブピバカイン、リドカイン、テトラカインまたはプロカイン)0.75-1.0 である点にある。
ここに述べられているイボを解消し取り除く八仙消毒クリームであって、その特徴は以下のように、さらにカルボマー941を0-1.0、残量の水を100まで加える点にある。
」(説明頁の第3/9頁第2~9行)
(ウ)
「薬剤中の各成分の作用:適度な濃度の水酸化ナトリウム(または水酸化カリウム)、水酸化カルシウムは迅速にタンパク質を溶解させ、1分から十数分以内に、イボ類、突起物(良性、悪性の腫瘍、膿腫を含む)及び各種の炎症組織を溶かし:オウキン、オウバク、ダイオウは抗菌抗病毒であり:カンゾウ、オウキンは免疫調節機能、有害な組織反応を抑制し:がまの油は抗炎症、抗癌及び局所麻酔作用を有する。メントールは爽やかで臭いを取り除き痛みを止め:塩酸レボブピバカインまたはその他の局所麻酔薬は局所麻酔鎮痛作用を有する。」(説明頁の第3/9頁第16行~第4/9頁第1行)
(エ)
「実施例1
0.5gのカンゾウ、0.5gのオウキン、0.5gのオウバク、0.5gのダイオウ、0.5gのメントール、20gの水酸化ナトリウム(または水酸化カリウム)、0.5gの水酸化カルシウム、1.0gの塩酸レボブピバカインに、賦形剤の0.25gのカルボマーを加え、さらに水を加えて100gとした後、乳化させれば、イボを解消し取り除く八仙消毒クリーム1号が得られる。
成分中のカンゾウ、オウキン、オウバク、ダイオウ、メントールは、粉砕して1000メッシュの粉末にする。
本製品は赤茶色のクリームである。本製品の特徴は病巣組織を直ちに溶かす作用を有し、尖圭コンジローム(CA)、皮膚癌、肉腫(各種組織及び器官の肉腫、癌発症前の病変)、皮膚血管癌、血管痣、魚の目、一般的なイボ、皮膚の突出物の治療に用いられる。
本クリーム製品を使用し、男性の包皮(尿道を含む)、肛門、女性の陰部(子宮、陰道を含む)などの部位の湿った液体を帯びた尖圭コンジロームを治療する場合については、附属図1、附属図4に示される通りとなる。つまり、綿棒で薬を塗った場合、その効果は絶大で、ピーナッツ大のイボが、十数秒以内に溶けて半透明の液体となる。図5に示されるように、イボの三分の一余の黒色の部分(血液の塊)についても、図2、図6に示されるようになる。その場合の中核部はCA組織の真皮が増生、拡張した毛細血管球団であるが、薬の作用から、色が黒色に変わり収縮して細くなっている。半透明の液体となり、さらに薬を数回塗ったところ、黒色の血の塊が継続的に溶けて萎縮し、または取り除かれるようになった。この一連の変化の過程は、3分から数十分であり、傷口がリアルタイムで収縮して細くなり、2、3日で癒合する。それは図3に示される通りである。小さくなったイボについては、竹製の棒で薬を塗り付ければ、正確に塗ることができる。2、3分後に溶けて根絶する。肉眼でイボの粒が取り除かれたことを確認した後、実施例2のイボを解消し取り除く八仙消毒クリーム2号を用いて、患部及びその周辺部に薬を塗りつけ、CAの「亜臨床」病巣部分を処理し、再発を減らす。それについては図7に示される通りとなっている。5分後、蒸留水綿球を用いて薬液を取り除き、治療を終了する。それは図8に示される通りである。このように迅速にリアルタイムでイボを解消し取り除くケースについては、国内外の関連する論文に同様の記載は見られない。」(説明頁の第5/9頁第1~20行)
(オ)
「実施例2
カンゾウ3g、オウキン3g、オウバク3g、ダイオウ1.0g、メントール1.0g、水酸化ナトリウム(または水酸化カリウム)2.5g、水酸化カルシウム10g、がまの油1.0g、賦形剤0.5g、カルボマー941を加え、さらに水を加えて100gとした後、乳化させれば、イボを解消し取り除く八仙消毒クリーム2号が得られる。
成分中のカンゾウ、オウキン、オウバク、ダイオウ、がまの油、メントールは、粉砕して200メッシュの粉末にする。
本製品は朱色のクリームである。各期の酒渣鼻、炎症性座瘡、各期慢性子宮頸炎、化膿性汗腺炎、肛門漏洩の内外口の処理、尖圭コンジロームの「亜臨床」病変の治療、内痔、外痔、膿腫、痛病、炎症性肉芽腫、環状肉芽腫、疥癬、胞子菌病に用いられる。
本処方剤の特徴は以下のとおりである。適切な薬を塗る回数、持続時間を掌握すれば、病巣組織に対して高い選択性作用を有し正常な組織を傷つけない。
例えば、各期の酒渣鼻、炎症性膿腫座瘡を治療する場合、クリームを患部に塗り、数分後に病変組織が溶け、膿液の毒液が溶出し、病変が収縮したら、溶けた液体を拭き取る。薬を1-2回塗ることで、病損がリアルタイムで取り除かれ、溶出がなくなる。翌日硬くなり、10-14日後にこれを取り除いた後、再び紅色の新しい組織が再生する。深刻な酒渣鼻の場合、例えば鼻贅期にあたる場合には、時期を区分し、数回に分けて薬を使用することができる。表面から内面に浸透し、突出物が溶けて、取り除かれる。現在、国内外の関連する論文においては、酒渣鼻及び顔面の炎症性座瘡を治療するこうしたタイプの薬物の調合及び方法が存在していない。また、その他の酒渣鼻及び炎症性膿腫座瘡を治療する薬物及び方法においても、このように迅速で高い治療作用を有するものはない。
また、肛門周辺膿腫の治療(附属図9)の場合、クリームを患部に塗る際の厚さは若干厚くし、10分後に患部から毒汁が溶出し、膿腫が破れ、膿腫内の血液が排出される(附属図10)。膿腫内の血液を拭き取り、再度薬を塗る。このように、膿腫液の溶出、膿腫液の拭き取り、薬を塗るといった作業を数回繰り返し、十数分後には、膿腫内の血液が全て排出され、膿腫による痛みがリアルタイムに消え、ドレナージを設置する必要がなくなり、数日で治癒する(附属図11)。その際の治療効果は切開して膿腫液を排出する場合よりも高い。その原因は、恐らく薬液が直に膿腫及びその周辺、病巣及び膿腫腔内に塗られることで、ウィルスが死滅され、毒汁が膿腫空洞に入るのを駆逐し、リアルタイムで破裂口から排出しつくされるためであると考えられる。」(説明頁の第6/9頁第13行~第7/9頁第16行)
(カ)
「実施例3
カンゾウ3g、オウキン3g、オウバク3g、ダイオウ1.0g、メントール1.0g、水酸化ナトリウム(または水酸化カリウム)3.0g、水酸化カルシウム10g、がまの油1.0g、賦形剤0.5g、カルボマー941を加え、さらに水を加えて100gとした後、乳化させれば、イボを解消し取り除く八仙消毒クリーム3号が得られる。
成分中のカンゾウ、オウキン、オウバク、ダイオウ、がまの油、メントールは、粉砕して200メッシュの粉末にする。
本製品は朱色のクリームである。扁平なイボ、伝染性軟疣、皮膚結核、類結核型ハンセン病、老人斑、毛嚢炎、結節性痒疹、火傷に適用される。
扁平なイボ、伝染性軟疣、老人斑、毛嚢炎、結節性痒疹を治療し、ピンセットまたは綿棒で正確に塗るとよい。皮疹が黒色に変われば、薬液を取り除くことができる。また、抗生物質を用いて治療した場合、数ヶ月で治療効果が見られるような皮膚結核、結核様型ハンセン病に対しては、本製品を皮疹上に塗れば、数分後に毒汁が溶出し、これを拭き取れば、皮膚の損傷した部分が萎縮し、一週間後に状況を見て再度薬を塗って治療することで、治療期間を短縮することができる。本製品を蒸留水またはミネラルウォーターで10倍に希釈してから患部に塗る場合、小面積のI-II度の火傷の傷または熱湯の傷であれば、迅速に痛みを止め、熱と毒と水疱を取り除き感染を防ぐことができる。」(説明頁の第7/9頁第17行~第8/9頁第10行)
(キ)
「実施例4
カンゾウ1.5g、オウキン1.5g、オウバク1.5g、ダイオウ1.5g、メントール1.0g、水酸化ナトリウム(または水酸化カリウム)2.5g、水酸化カルシウム10g、塩酸レボブピバカイン0.75g、賦形剤0.5g、カルボマー941を加え、さらに水を加えて100gとした後、乳化させれば、イボを解消し取り除く八仙消毒クリーム4号が得られる。
成分中のカンゾウ、オウキン、オウバク、ダイオウ、メントールは、粉砕して200メッシュの粉末にする。
本製品は朱色である。神経性皮膚炎、ローズロセア、白癬、水虫、乾癬、性病疱疹、帯状疱疹の治療に用いられる。
本製品は神経性皮膚炎、ローズロセア、白癬、水虫、乾癬の治療に用いられ、正確に薬を塗り、10-15分後に薬液を拭き取る。翌日再度状況を見て再度薬を塗る。
本製品は帯状疱疹の治療にも用いられ、水疱皮疹に塗り、約5分したら拭き取れば、水疱が取り除かれる。止痛が迅速で、3日から5日で治癒する。
本製品を用いて性病疱疹を治療する場合、水疱及びその周辺または疑いのある部分に塗る。約1分後に毒汁が水疱または水疱中から溶出する。3分から5分後にクリームを拭き取れば、水疱または疑いのある水疱が取り除かれ、痛みが止まる。翌日塊になり、4-5日でその塊が取れる。」(説明頁の第8/9頁第11行~第9/9頁第4行)
(ク)
「本発明の製剤で使用される主要な原料については、以下の通りである。
化学的に純粋な水酸化ナトリウム、水酸化カリウム
化学的に純粋な水酸化カルシウム
塩酸レボブピバカイン、カルボマー941については、薬局方規格に依拠する。
水については、純水または水道水を用いて本発明を実現することができる。」(説明頁の第9/9頁第11~15行)
(3)引用例1に記載された発明
記載事項(ア)及び記載事項(イ)に記載された成分のうち、その含有割合の範囲に0重量部が入るものは、含有されることを必要としない任意成分であると認められるから、引用例1には、
「水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウム2~60重量部、
塩酸レボブピバカイン、がまの油、塩酸ブピバカイン、リドカイン、テトラカインまたはプロカイン0.75~1.0重量部、及び
100重量部までの残部の水
を含む、イボを解消し取り除くクリーム。」
の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
4 対比
本願発明と引用発明とを対比する。
引用発明にいう「イボを解消し取り除くクリーム」は、引用例1の記載事項(ウ)~記載事項(キ)からみて、本願発明にいう「病理組織を溶解して除去する用の医薬」に相当する。
また、引用発明にいう「100重量部までの残部の水」とは、総重量を100重量部とすることを意味するので、引用発明にいう「水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウム2~60重量部」は本願発明にいう「総重量100重量部に対して、a)1.0~60.0部の水酸化ナトリウムおよび/または水酸化カリウム」に相当する。
したがって、両者は
「総重量100重量部に対して、
a)1.0-60.0部の水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウム、
c)余分である水
を成分とする、病理組織を溶解して除去する用の医薬。」
である点で一致し、
A.本願発明ではさらに「b)局所麻酔作用を果たす0.25~1.0部の純粋な化合物であるテトラカイン、ブファリンおよび/またはメントール」を成分とするのに対し、引用発明では「塩酸レボブピバカイン、がまの油、塩酸ブピバカイン、リドカイン、テトラカインまたはプロカイン0.75~1.0重量部」を成分とする点、及び
B.本願発明では医薬に含まれる薬物組成物、すなわち
「総重量100重量部に対して、
a)1.0~60.0部の水酸化ナトリウムおよび/または水酸化カリウムと、
b)局所麻酔作用を果たす0.25~1.0部の純粋な化合物であるテトラカイン、ブファリンおよび/またはメントールと、
c)余分である水と、
から成ることを特徴とする薬物組成物」が、「病理組織と病原体を即時に溶解して除去できる薬物組成物」とされるのに対し、引用発明ではその明記がされていない点、
で一応相違する。
5 当審の判断
上記相違点について検討する。
(1)相違点Aについて
(i)引用例1の記載事項(ク)には、主要な原料のうち、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウムは化学的に純粋なものを用いること、塩酸レボブピバカイン、カルボマー941は、薬局方規格に依拠するものを用いることが記載されている。薬局方規格は医薬品の成分として許容できる純度を規定していることから、薬局方規格に依拠する化合物とは純粋な化合物と同視できるものを意味するといえる。また、医薬品の技術分野において医薬品に含まれる化合物の含有割合は純粋な化合物としての含有割合で示すことが技術常識であるから、引用発明にいう「塩酸レボブピバカイン、がまの油、塩酸ブピバカイン、リドカイン、テトラカインまたはプロカイン」のうち、化合物名の示されるものは純粋な化合物を意味すると認められる。
そして、引用例1の記載事項(ウ)には、引用発明にいう「塩酸レボブピバカイン、がまの油、塩酸ブピバカイン、リドカイン、テトラカインまたはプロカイン」のうち「がまの油」が抗炎症、抗癌及び局所麻酔作用を有すること、及び「塩酸レボブピバカインまたはその他の局所麻酔薬」が局所麻酔鎮痛作用を有することが示されていることから、「テトラカイン」は「塩酸レボブピバカインまたはその他の局所麻酔薬」に該当し、局所麻酔鎮痛作用を有するものとして開示されているといえる。
してみると、引用発明における「塩酸レボブピバカイン、がまの油、塩酸ブピバカイン、リドカイン、テトラカインまたはプロカイン」として「純粋なテトラカイン」は引用例1に開示されているといえるし、本願発明におけるテトラカインの含有割合も引用発明におけるものと差異がない。よって、相違点Aは実質的な相違点であるとはいえない。
(ii)仮に、引用発明における「塩酸レボブピバカイン、がまの油、塩酸ブピバカイン、リドカイン、テトラカインまたはプロカイン」として「純粋なテトラカイン」が引用例1に開示されているといえないとしても、引用発明の使用時の痛みを軽減するために、引用発明にいう「塩酸レボブピバカイン、がまの油、塩酸ブピバカイン、リドカイン、テトラカインまたはプロカイン」から局所麻酔作用を有することの示されている「テトラカイン」を純粋な化合物として選択することは、当業者が容易に想到し得たことである。また、本願発明におけるテトラカインの含有割合は引用発明におけるものと差異がない。
また、仮に、「テトラカイン」を純粋な化合物として選択することが当業者の容易に想到し得たことではないとしても、引用例1の記載事項(ア)及び記載事項(イ)に記載され、含有されることを必要としない任意成分であると認められる「メントール」に関し、引用例1の記載事項(ウ)には「メントール」が爽やかで臭いを取り除き痛みを止める作用を有することが記載されているので、引用例1の記載事項(ア)及び記載事項(イ)に示された「メントール」の含有割合の範囲から好適な含有割合を選択して、「メントール」を純粋な化合物として引用発明に含有させることは当業者が容易に想到し得たことである。
そして、本願発明による効果は、本願明細書の発明の詳細な説明の段落0029に記載される「本製剤は患者の局部病理組織が比較的に細小で、痛みに比較的に敏感でない部位に生じる箇所にも利用されることができ、患者の全身麻酔または病理組織が局所麻酔された状況で、本薬物を局部に塗ることで、溶解範囲が広くなり、痛みに比較的に敏感な病理組織に適切し、速くて、かつ徹底的に溶解されることができる。」というものであると認めれるところ、この効果は、引用例1の記載事項(ウ)~記載事項(キ)に基づき当業者の予想できる程度のものであって、予想外に顕著なものとは認められない。
(2)相違点Bについて
引用例1の記載事項(ウ)には、引用発明が、水酸化ナトリウム(または水酸化カリウム)、水酸化カルシウムの作用により、迅速にタンパク質を溶解させ、1分から十数分以内に、イボ類、突起物(良性、悪性の腫瘍、膿腫を含む)及び各種の炎症組織を溶かすことが記載されている。また、引用例1の記載事項(エ)~記載事項(キ)には、引用発明により病理組織と病原体が十数秒から数十分の間に溶解除去できることが記載されている。
引用発明に含まれる成分には水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウムが含まれており、その含有量も本願発明と差異がないから、引用発明に含まれる
「水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウム2~60重量部、
塩酸レボブピバカイン、がまの油、塩酸ブピバカイン、リドカイン、テトラカインまたはプロカイン0.75~1.0重量部、及び
100重量部までの残部の水」は
「病理組織と病原体を即時に溶解して除去できる薬物組成物」であるといえ、相違点Bは実質的な相違点であるとはいえない。
6 むすび
したがって,本願発明は,引用例1に記載された発明であるから,特許法第29条第1項第3号に該当し,特許を受けることができず、また、本願発明は、引用例1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
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2014-011151