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特許無効審判

2010-800231

平底幅広浚渫用グラブバケット

審判番号
2010-800231
法域
特許
審判種別
無効審判(無効の審決)
出願番号
特願2004-153246外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
請求日
2010年12月14日
審決日
2017年10月06日
公報発行日
2018年08月31日
結論
請求不成立
当事者
審判長/審判官
分類
P1123.121-YA (B66C) / P1123.832-YA (B66C) / P1123.851-YA (B66C) / P1123.853-YA (B66C)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法169条2項民事訴訟法61条
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項、特許法第123条第1項第2号、特許法第181条第2項、特許法第134条の3第2項、特許法第134条の2第1項、特許法第169条第2項
データ出所
審決公報(SGML)

事件の表示

上記当事者間の特許第3884028号「平底幅広浚渫用グラブバケット」の特許無効審判事件についてした平成27年6月26日付け審決に対し、知的財産高等裁判所において審決取消しの判決(平成27年(行ケ)第10149号、平成28年8月10日判決言渡)があったので、更に審理の結果、次のとおり審決する。

結論

【結 論】 特許第3884028号の特許請求の範囲及び明細書を訂正特許請求の範囲及び訂正明細書のとおり訂正することを認める。 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。

理由

【理 由】 第1 手続の経緯 1 平成23年11月4日付け審決(以下、「一次審決」という。)までの経緯 特許第3884028号(以下、「本件特許」という。)の請求項1ないし4に係る発明についての出願は、平成16年5月24日に出願され、平成18年11月24日に特許権の設定登録がなされたものである。 その後、平成22年12月14日付けで請求人より本件特許の請求項1に係る発明について無効審判が請求され、平成23年3月14日付けで被請求人より訂正請求書並びに訂正請求書に添付して訂正明細書及び訂正特許請求の範囲が提出されるとともに同日付けで答弁書が提出され、同年4月28日付けで請求人より審判請求書の請求の理由、証拠方法及び添付書類の目録について補正する手続補正書が提出され、同年9月27日付けで請求人及び被請求人双方より口頭審理陳述要領書が提出され、同年10月18日に第1回口頭審理が実施され、請求人は同年9月27日付け口頭審理陳述要領書を陳述し、被請求人は同年9月27日付け口頭審理陳述要領書を陳述し、同口頭審理において審理を終結し、同年11月4日付けで、「訂正を認める。本件審判の請求は成り立たない。審判費用は、請求人の負担とする。」との審決がされた。 2 一次審決から平成26年4月24日付け審決(以下、「二次審決」という。)までの経緯 一次審決に対し、請求人は、平成23年12月13日付けで審決取消訴訟を提起し、知的財産高等裁判所において平成23年(行ケ)第10414号事件として審理された結果、平成25年1月10日付けで一次審決を取り消す旨の判決が言い渡され、同年10月9日付けで被請求人より訂正請求書並びに訂正請求書に添付して訂正明細書及び訂正特許請求の範囲が提出され、同年10月21日付けで被請求人より上申書が提出され、同年11月29日付けで請求人より審判事件弁駁書並びに審判請求書の請求の理由及び証拠方法について補正する手続補正書が提出され、同年12月9日(差出日)に請求人より上記審決取消訴訟において請求人及び被請求人が知的財産高等裁判所に提出した書類(請求人:訴状、準備書面、技術説明会資料、被請求人:答弁書、準備書面、技術説明会資料、乙各号証)を提出する旨の上申書及び該上申書に添付して該書類が提出され、同年12月17日(差出日)に請求人より同年11月29日付け手続補正書を補正する手続補正書が提出され、平成26年1月10日付けで平成25年11月29日付け手続補正書による無効理由3及び4を追加する補正を許可しない旨の補正の拒否の決定がされ、同年2月14日付けで被請求人より第2答弁書が提出され、同年4月9日付けで審理を終結し、同年4月24日付けで、「訂正を認める。特許第3884028号の請求項1に記載された発明についての特許を無効とする。審判費用は、被請求人の負担とする。」との審決がされた。 3 二次審決から平成27年6月26日付け審決(以下、「三次審決」という。)までの経緯 二次審決に対し、被請求人は、平成26年5月31日付けで審決取消訴訟を提起し、同年8月26日付けで被請求人より訂正2014-390124号事件として訂正審判が請求され、知的財産高等裁判所において平成26年(行ケ)第10136号事件として審理された結果、同年11月11日付けで平成23年法律第63号による改正前の特許法第181条第2項により二次審決を取り消す旨の決定をして、事件を特許庁に差し戻したものである。 そして、その後、同年12月1日付けで被請求人より第3答弁書が提出され、平成27年2月6日付けで請求人より審判事件弁駁書が提出され、同年4月3日付けで被請求人より第4答弁書が提出され、同年6月11日付けで審理を終結し、同年6月26日付けで「訂正を認める。特許第3884028号の請求項1に記載された発明についての特許を無効とする。審判費用は、被請求人の負担とする。」との審決がされた。 ところで、特許庁において、平成26年11月18日付け(発送日:同年11月20日)で、被請求人に対し、平成23年法律第63号による改正前の特許法第134条の3第2項に規定する訂正を請求するための期間(発送の日から10日)を指定したが、指定された期間内に訂正の請求がされなかったので、同法第134条の3第5項の規定により、訂正2014-390124号の請求書に添付された訂正特許請求の範囲及び訂正明細書を援用して、上記期間の末日である同年12月1日付けで本件審判の訂正の請求がされたものとみなされた。以下、訂正2014-390124号の審判請求書を「平成26年12月1日付け訂正請求書」という。 4 三次審決後の経緯 三次審決に対し、被請求人は、平成27年7月30付けで審決取消訴訟を提起し、知的財産高等裁判所において平成27年(行ケ)第10149事件として審理された結果、平成28年8月10日付けで三次審決を取り消す旨の判決(以下、「本件判決」という。)が言い渡され、確定したものである。 第2 訂正の適否についての判断 1 訂正の内容 平成26年12月1日付け訂正請求書において、被請求人が求めた訂正(以下、「本件訂正」という。)の内容は、次のとおりである(なお、下線は訂正箇所を示す。)。 (1)訂正事項a 本件特許の下記アに示す特許請求の範囲の記載を下記イに示す特許請求の範囲の記載へ訂正する。 ア 本件訂正前の特許請求の範囲の記載 「【請求項1】 吊支ロープを連結する上部フレームに上シーブを軸支し、左右一対のシェルを回動自在に軸支する下部フレームに下シーブを軸支するとともに、左右2本のタイロッドの下端部をそれぞれシェルに、上端部をそれぞれ上部フレームに回動自在に軸支し、上シーブと下シーブとの間に開閉ロープを掛け回してシェルを開閉可能にしたグラブバケットにおいて、 シェルを爪無しの平底幅広構成とするとともに、シェルを軸支するタイロッドの軸心間の距離を100とした場合、シェルの幅内寸の距離を60以上とし、かつ、側面視においてシェルの両端部がタイロッドの外方に張り出していることを特徴とする平底幅広浚渫用グラブバケット。 【請求項2】 上記シェルの上部にシェルカバーを密接配置し、該シェルカバーの一部に空気抜き孔を形成し、該空気抜き孔に、グラブバケットの内側から外側に掴み物が流出することを可能とし、掴み物が外側から内側に流入することはできないゴム蓋を有する蓋体を取り付けた請求項1記載の平底幅広浚渫用グラブバケット。 【請求項3】 上記シェルの上部にシェルカバーを密接配置し、該シェルカバーの一部に空気抜き孔を形成し、該空気抜き孔に、開閉式のゴム蓋を有する蓋体を取り付けた請求項1記載の平底幅広浚渫用グラブバケット。 【請求項4】 シェルカバーは左右対称なシェルカバー上段、シェルカバー中段、シェルカバー下段とから構成され、上記シェルカバー上段とシェルカバー中段との間に複数個の蓋体が配設されている請求項2又は3記載の平底幅広浚渫用グラブバケット。」 イ 本件訂正後の特許請求の範囲の記載 「【請求項1】 吊支ロープを連結する上部フレームに上シーブを軸支し、側面視において両側2ケ所で左右一対のシェルを回動自在に軸支する下部フレームに下シーブを軸支するとともに、左右2本のタイロッドの下端部をそれぞれシェルに、上端部をそれぞれ上部フレームに回動自在に軸支し、上シーブと下シーブとの間に開閉ロープを掛け回してシェルを開閉可能にしたグラブバケットにおいて、 シェルを爪無しの平底幅広構成とし、シェルの上部にシェルカバーを密接配置するとともに、前記シェルカバーの一部に空気抜き孔を形成し、該空気抜き孔に、シェルを左右に広げたまま水中を降下する際には上方に開いて水が上方に抜けるとともに、シェルが掴み物を所定容量以上に掴んだ場合にも内圧の上昇に伴って上方に開き、グラブバケットの水中での移動時には、外圧によって閉じられる開閉式のゴム蓋を有する蓋体を取り付け、正面視におけるシェルを軸支するタイロッドの軸心間の距離を100とした場合、側面視におけるシェルの幅内寸の距離を60以上とし、かつ、側面視においてシェルの両端部がタイロッドの外方に張り出すとともに、側面視においてシェルの両端部が下部フレームの外方に張り出し、更に、側面視においてシェルの両端部が下部フレームとシェルを軸支する軸の外方に張り出してなり、薄層ヘドロ浚渫工事に使用することを特徴とする平底幅広浚渫用グラブバケット(なお、前記正面視はシェルと下部フレームを軸支する軸の軸心方向から視たものであり、前記側面視はシェルと下部フレームを軸支する軸を軸心方向の側方から視たものとする)。 【請求項2】 シェルカバーは左右対称なシェルカバー上段、シェルカバー中段、シェルカバー下段とから構成され、上記シェルカバー上段とシェルカバー中段との間に複数個の蓋体が配設されている請求項1記載の平底幅広浚渫用グラブバケット。」 (2)訂正事項b 本件特許明細書の段落【0011】の記載を次のとおり訂正する。 「【0011】 本発明は上記目的を達成するために、吊支ロープを連結する上部フレームに上シーブを軸支し、側面視において両側2ケ所で左右一対のシェルを回動自在に軸支する下部フレームに下シーブを軸支するとともに、左右2本のタイロッドの下端部をそれぞれシェルに、上端部をそれぞれ上部フレームに回動自在に軸支し、上シーブと下シーブとの間に開閉ロープを掛け回してシェルを開閉可能にしたグラブバケットにおいて、シェルを爪無しの平底幅広構成とし、シェルの上部にシェルカバーを密接配置するとともに、前記シェルカバーの一部に空気抜き孔を形成し、該空気抜き孔に、シェルを左右に広げたまま水中を降下する際には上方に開いて水が上方に抜けるとともに、シェルが掴み物を所定容量以上に掴んだ場合にも内圧の上昇に伴って上方に開き、グラブバケットの水中での移動時には、外圧によって閉じられる開閉式のゴム蓋を有する蓋体を取り付け、正面視におけるシェルを軸支するタイロッドの軸心間の距離を100とした場合、側面視におけるシェルの幅内寸の距離を60以上とし、かつ、側面視においてシェルの両端部がタイロッドの外方に張り出すとともに、側面視においてシェルの両端部が下部フレームの外方に張り出し、更に、側面視においてシェルの両端部が下部フレームとシェルを軸支する軸の外方に張り出してなり、薄層ヘドロ浚渫工事に使用する平底幅広浚渫用グラブバケット(なお、前記正面視はシェルと下部フレームを軸支する軸の軸心方向から視たものであり、前記側面視はシェルと下部フレームを軸支する軸を軸心方向の側方から視たものとする)を提供する。」 (3)訂正事項c 本件特許明細書の段落【0012】の記載を次のとおり訂正する。 「【0012】 本発明は上記構成に加えて、シェルカバーは左右対称なシェルカバ一上段、シェルカバー中段、シェルカバー下段とから構成され、上記シェルカバー上段とシェルカバー中段との間に複数個の蓋体が配設されている。」 (4)訂正事項d 本件特許明細書の段落【0013】の記載を次のとおり訂正する。 「【0013】 本発明によって得られた平底幅広浚渫用グラブバケットによれば、シェルを爪無しの平底幅広構成とし、シェルの上部にシェルカバーを密接配置するとともに、正面視におけるシェルを軸支するタイロッドの軸心間の距離を100とした場合、側面視におけるシェルの幅内寸の距離を60以上とし、かつ、側面視においてシェルの両端部がタイロッドの外方に張り出すとともに、側面視においてシェルの両端部が下部フレームの外方に張り出し、更に、側面視においてシェルの両端部が下部フレームとシェルを軸支する軸の外方に張り出してなり、薄層ヘドロ浚渫工事に使用することにより、従来の丸底爪付きグラブバケットに較べてバケット本体の実容量が大きく、かつ、掴み物の切取面積を大きくして掴みピッチ回数を下げることにより作業能率を高めるとともに水の含有量を減らし、しかも掘り後が溝状とならずにヘドロを完全に浚渫することができる。特に土厚20cm~1メートル以内の薄層ヘドロ浚渫工事のように土厚が少なくなるほど平底幅広浚渫用グラブバケットの有用性が高くなる。」 (4)訂正事項e 本件特許明細書の段落【0015】の記載を次のとおり訂正する。 「【0015】 以下本発明にかかる平底幅広浚渫用グラブバケットの最良の実施形態を従来の構成と同一の構成部分に同一の符号を付して説明する。図1は本発明にかかるグラブバケットの正面図、図2は同側面図であり、図中の1,1は左右対称構成にかかる左右一対のシェル、2は下部フレーム、3は上部フレーム、4,4はタイロッドであり、左右に1本ずつ2本装備されている。左右一対のシェル1,1は側面視において両側2ケ所で下部フレーム2に軸5を介し回動自在に軸支され、左右のタイロッド4,4はその下端部が軸20,20によってシェル1,1に、上端部が上部フレーム3に回動自在に軸支されている。」 (5)訂正事項f 本件特許明細書の段落【0017】の記載を次のとおり訂正する。 「【0017】 シェル1,1は軸20,20によって回動自在に軸支されており、爪無しの平底幅広構成となっている。そして図1の正面視におけるタイロッド4,4の軸20,20の軸心間の距離A’を100とした場合、図2の側面視におけるシェル1,1の幅内寸B’の距離は60以上であり、かつ、図2に示すように、側面視においてシェル1,1の両端部がタイロッド4,4の外方に張り出すとともに、側面視においてシェル1,1の両端部が下部フレーム2の外方に張り出し、更に、側面視においてシェル1,1の両端部が下部フレーム2とシェル1,1を軸支する軸5の外方に張り出してなることが構成上の特徴となっている。なお、本発明において正面視とは、図1に示すようにシェル1,1と下部フレーム2を軸支する軸5の軸心方向から視たものであり、側面視とは、図2に示すようにシェル1,1と下部フレーム2を軸支する軸5を軸心方向の側方から視たものである。」 2 訂正の目的の適否、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものか否か及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否 (1)訂正事項aについて 訂正事項aの内、「側面視において両側2ケ所で」、「シェルの上部にシェルカバーを密接配置するとともに、前記シェルカバーの一部に空気抜き孔を形成し、該空気抜き孔に、シェルを左右に広げたまま水中を降下する際には上方に開いて水が上方に抜けるとともに、シェルが掴み物を所定容量以上に掴んだ場合にも内圧の上昇に伴って上方に開き、グラブバケットの水中での移動時には、外圧によって閉じられる開閉式のゴム蓋を有する蓋体を取り付け」、「側面視においてシェルの両端部が下部フレームの外方に張り出し、更に、側面視においてシェルの両端部が下部フレームとシェルを軸支する軸の外方に張り出してなり、」及び「薄層ヘドロ浚渫工事に使用す」という記載の追加は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、訂正事項aの内、「正面視における」、「側面視における」及び「(なお、前記正面視はシェルと下部フレームを軸支する軸の軸心方向から視たものであり、前記側面視はシェルと下部フレームを軸支する軸を軸心方向の側方から視たものとする)」という記載の追加は、「シェルを軸支するタイロッドの軸心間の距離」及び「シェルの幅内寸の距離」がどの方向からみたものかを明らかにするためのものであるから、明りようでない記載の釈明を目的とするものである。 また、「側面視において両側2ケ所で」については、本件特許の図2の記載に基づくものであり、「シェルの上部にシェルカバーを密接配置するとともに、前記シェルカバーの一部に空気抜き孔を形成し、該空気抜き孔に、シェルを左右に広げたまま水中を降下する際には上方に開いて水が上方に抜けるとともに、シェルが掴み物を所定容量以上に掴んだ場合にも内圧の上昇に伴って上方に開き、グラブバケットの水中での移動時には、外圧によって閉じられる開閉式のゴム蓋を有する蓋体を取り付け」については、本件特許の請求項2及び3の記載並びに明細書の段落【0018】、【0019】及び【0023】の記載に基づくものであり、「側面視においてシェルの両端部が下部フレームの外方に張り出し、更に、側面視においてシェルの両端部が下部フレームとシェルを軸支する軸の外方に張り出してなり、」については、本件特許の図2の記載に基づくものであり、「正面視における」については、本件特許の明細書の段落【0017】の記載及び図1の記載に基づくものであり、「側面視における」については、本件特許の明細書の段落【0017】の記載及び図2の記載に基づくものであり、「(なお、前記正面視はシェルと下部フレームを軸支する軸の軸心方向から視たものであり、前記側面視はシェルと下部フレームを軸支する軸を軸心方向の側方から視たものとする)」については、本件特許の図1及び図2の記載に基づくものであるので、訂正事項aは、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものではないから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものである。 さらに、訂正事項aは、訂正前の請求項2及び3を削除し、訂正前の請求項4を請求項2に繰り上げる訂正を含むものであるが、該訂正は特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 そして、訂正事項aは、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 (2)訂正事項bないしfについて 訂正事項bないしfは、特許請求の範囲を訂正したことに伴い、明細書の記載を特許請求の範囲の記載と整合させるためのものであるから、明りようでない記載の釈明を目的とするものである。 また、訂正事項bないしfは、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものではないから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 3 本件訂正後の請求項2に係る発明の独立特許要件について 本件補正の内、訂正事項aは、上記1のとおり、特許請求の範囲の減縮及び明りようでない記載の釈明を目的とするものであり、請求項2は請求項1を引用することから、請求項2についても、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正が行われている。そして、請求項2については、無効審判が請求されていないから、本件訂正後の請求項2に係る発明について、特許出願の際独立して特許を受けることができるものかどうかについて、検討する。 本件補正後の請求項2に記載された「シェルカバーは左右対称なシェルカバー上段、シェルカバー中段、シェルカバー下段とから構成され、上記シェルカバー上段とシェルカバー中段との間に複数個の蓋体が配設されている」という発明特定事項は、請求人が提出した何れの証拠方法にも記載も示唆もされておらず、周知であるともいえないし、また、当業者にとって設計的事項であるともいえない。 したがって、本件訂正後の請求項2に係る発明は、請求人の提出した証拠方法に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえず、特許法第29条第2項の規定に違反しているとはいえない。 また、他に本件訂正後の請求項2に係る発明が、特許を受けることができないものであるとする理由もない。 よって、本件訂正後の請求項2に係る発明は、特許出願の際独立して特許を受けることができるものである。 4 むすび したがって、上記訂正事項aないしfは、特許法第134条の2第1項ただし書き各号の規定に適合し、また、同条第5項で準用する同法第126条第3ないし5項の規定に適合するから、本件訂正を認める。 第3 請求人の主張の概要及び証拠方法 請求人は、審判請求書とともに下記甲第1ないし13号証を証拠方法として提出した。 また、平成23年4月28日付け手続補正書とともに下記甲第14ないし22号証を証拠方法として提出した。 さらに、同年9月27日付け口頭審理陳述要領書とともに下記甲23ないし26号証を提出した。 さらにまた、平成25年11月29日付け審判事件弁駁書及び同日付け手続補正書を提出し、その後、同年12月16日付け手続補正書(同年12月17日差出)とともに下記甲第27号証の1ないし36号証、甲第46ないし89号証を提出した。 さらにまた、平成27年2月6日付け審判事件弁駁書を提出した。 1 請求人の主張の概要 請求人の主張の概要は、次のとおりである(平成27年2月6日付け審判事件弁駁書第2ページ第10行ないし第48ページ第26行を参照。)。 「5 弁駁の趣旨 被請求人は、平成26年8月26日付の訂正審判請求により、請求項1に係る本件特許発明の内容を訂正した。当該訂正が訂正要件を満たすものであることは認める。しかしながら、訂正後の請求項1に係る本件特許発明は、以下の無効理由により無効とされるべきである。 6 請求の理由 (1)手続きの経緯 ・・・(略)・・・ (2)無効理由(無効審判請求の根拠) ア 無効理由1 (特許法第29条第2項違反)(特許法第123条第1項第2号) 請求項1に係る本件特許発明は、甲第1号証に記載の発明に、甲第4号証に開示された構成、甲第52号証に開示された構成、甲第2号証に開示された構成並びに周知技術1ないし4を適用することで当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定に違反して特許されたものであるから、進歩性欠如を理由として無効とされるべきものである。 イ 無効理由2 (特許法第29条第2項違反)(特許法第123条第1項第2号) 請求項1に係る本件特許発明は、甲第5号証に記載の発明に、甲第4号証に開示された構成、甲第52号証に開示された構成、甲第2号証に開示された構成並びに周知技術4を適用することで当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定に違反して特許されたものであるから、進歩性欠如を理由として無効とされるべきものである。 (3)本件特許を無効にすべき具体的理由 ・・・(略)・・・ 7 平成26年12月1日付の被請求人提出の第3答弁書に対する認否 ・・・(略)・・・」 2 証拠方法 甲第1号証:特開平9-151075号公報 甲第2号証:実願平4-49043号(実開平6-1457号)のCD-ROM 甲第3号証:登録実用新案第3005628号公報 甲第4号証:実願昭62-128283号(実開昭64-32888号)のマイクロフィルム 甲第5号証:特開2000-328594号公報 甲第6号証:実願昭58-106259号(実開昭60-16495号)のマイクロフィルム) 甲第7号証:実願昭60-141340号(実開昭62-50258号)のマイクロフィルム 甲第8号証:特開昭51-51104号公報 甲第9号証の1:甲第1号証の図1、2を等寸法に拡大した図面 甲第9号証の2:甲第1号証の図6、7を等寸法に拡大した図面 甲第10号証:甲第2号証の図5、3を等寸法に拡大した図面 甲第11号証:甲第3号証の図3、4を等寸法に拡大した図面 甲第12号証:本件特許発明で得られると主張する「作業効率を高める」という作用効果が、本件特許発明の構成とは無関係に得られることを立証するための図面 甲第13号証:本件特許発明で得られると主張する「作業効率を高める」という作用効果が、本件特許発明の構成とは無関係に得られることを立証するための図面 甲第14号証:特開2002-160889号公報 甲第15号証:特開2002-115263号公報 甲第16号証:登録実用新案第3046423号公報 甲第17号証:実願昭51-7598号(実開昭52-100671号)のマイクロフィルム 甲第18号証:特開昭49-37346号公報 甲第19号証:特開昭52-147859号公報 甲第20号証の1ないし5:株式会社光栄鉄工所のウェブページを紙媒体に印刷したもの 甲第21号証:甲第14号証の図7、8を等寸法に拡大した図面 甲第22号証:本件特許発明で得られると主張する「作業効率を高める」という作用効果が、本件特許発明の構成とは無関係に得られることを立証するための図面 甲第23号証:実公平6-15960号公報 甲第24号証:被請求人の一人である株式会社光栄鉄工所が2000年2月に頒布したクラムシェルバケットのリーフレット 甲第25号証:被請求人の一人である株式会社光栄鉄工所が1995年4月に頒布したWSグラブバケットのリーフレット 甲第26号証:実願昭48-3551号(実開昭49-137262号)のマイクロフィルム 甲第27号証の1ないし甲第36号証、甲第46号証ないし甲第89号証:個々の証拠の名称等については、下記第6の次の別紙(証拠説明書の写し)を参照。 甲第33号証:作業船 第273号(平成16年5月号)に掲載された「END工法 ~環境に優しいグラブ浚渫工法~」と題された報告(写し) 甲第49号証:東亜建設工業のウェブページ(写し) 甲第52号証:作業船 第243号(1999年5月号)の大旺建設株式会社が保有する第18龍王丸を紹介する記事(写し) 甲第84号証:機関誌「作業船」第95号の「密閉式水平掘削グラブバケット」を紹介する記事(写し) なお、無効理由1及び2において、証拠として具体的に引用されているのは、甲第1、2、4、5、16、17、26、49、52及び84号証のみである。 また、平成23年10月18日の第1回口頭審理において、甲第6及び8号証は撤回され、甲第20号証の1ないし5及び甲第23ないし25号証は参考資料に訂正されている。 第4 被請求人の主張の概要及び証拠方法 これに対して、被請求人は、答弁書を提出し、平成23年9月27日付けで口頭審理陳述要領書を提出した。 また、被請求人は、第2答弁書とともに下記乙第1ないし7号証を証拠方法として提出した。 さらに、被請求人は、平成26年12月1日付けで第3答弁書を提出し、平成27年4月3日付けで第4答弁書を提出した。 1 被請求人の主張の概要 被請求人の主張の概要は、次のとおりである(第4答弁書第2ページ第1行ないし第56ページ末行を参照。)。 「5.答弁の内容 ・・・(略)・・・ 第9 まとめ よって、請求人の主張する無効理由1,2は理由がなく、本件発明1は特許法第29条第2項に該当するものではない。 また、本件発明1は薄層ヘドロ浚渫工事に使用する浚渫用グラブバケットに革命的な作用効果をもたらした画期的バケットであり、本件発明以後の主流のバケットとなっており、その技術的価値は業界において高く評価されている。 よって、本件発明1に係る特許は維持されるべきである。」 2 証拠方法 乙第1号証:被請求人の技術部長「谷俊夫」の本件訴訟における陳述書の写し 乙第2号証:被請求人が大旺新洋から提供されていた甲52の図-1の改造前の原図の写し 乙第3号証:被請求人が大旺新洋から提供されていた甲52の図-1の原図の写し 乙第4号証:平成12年4月27日に撮影した甲52バケットの損傷状況の写真の写し 乙第5号証:平成11年11月26日付け「出張報告書」の写し 乙第6号証:平成12年5月9日付け「第18龍王丸殿向けGB補修報告書」の写し 乙第7号証:本件訴訟の技術説明会における被請求人の資料写し 第5 当審の判断 1 本件特許発明について 上記第2のとおり、本件訂正は認められるから、以下、本件訂正後の請求項1に係る発明を、本件特許発明という。 本件特許発明は、上記第2 1(1)イの【請求項1】のとおりのものである。 2 甲第1、2、4、5、16、26、49、52及び84号証の記載等 (1)甲第1号証の記載、甲第1号証に記載された事項及び甲1発明 甲第1号証には、「浚渫用グラブバケット」に関して、図面とともに概ね次の記載がある。 ア 「【請求項1】吊支ロープで吊下げられる上部フレームと、一対のシェル部からなるバケットと、該一対のシェル部を開閉自在に軸支した下部フレームと、前記上部フレームと前記一対のシェル部をそれぞれ連結する連結杆と、前記上部フレームに回転自在に軸支された上部シーブと、前記下部フレームに回転自在に軸支された下部シーブとからなり、前記上部シーブは、同軸に軸支された上部制振用シーブと任意の枚数の上部増力用シーブとからなり、前記下部シーブは、同軸に軸支された下部制振用シーブと任意の枚数の増力用シーブとからなり、バケット開閉用の開閉ロープを、前記上部制振用シーブの前後方向一側のロープ溝に沿わせたうえで下部制振用シーブの前後方向他側のロープ溝に導き、さらに該下部制振用シーブの下半分のロープ溝に巻き掛けて、順次、上部増力用シーブと下部増力用シーブとに巻き掛け、端末を上部フレームまたは下部フレームに固定したことを特徴とする浚渫用グラブバケット。」(【特許請求の範囲】の【請求項1】) イ 「【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は浚渫用グラブバケットに関する。さらに詳しくは、浚渫船のクレーンから吊下げたバケットを拡開して、水底の土砂をすくいとり、バケットを閉じて土砂を運搬船等に揚荷するための浚渫用グラブバケットに関する。 【0002】 【従来の技術】従来の浚渫用グラブバケットについて図6~9を参照して説明する。図6~7に示すように、対称に構成された一対のシェル部1A、1Bからなるバケット1は下部フレーム2に軸3を介し回動自在に軸支され、また左右の連結杆4A、4Bを介し上部フレーム5に回動可能に連結されている。上部フレーム5および下部フレーム2にはそれぞれ所定個数のシーブ51、52が回転自在に軸支されていて、これらのシーブ51、52間には浚渫船等のクレーンウインチから繰り出された開閉ロープ8が、図8に示すようにガイドロールユニット53を通した上で、前記シーブ51、52間に巻き掛けられ、その一端を上部フレーム5の側壁の固定金具9に係止されている。」(段落【0001】及び【0002】) ウ 「【0005】本発明はかかる事情に鑑み、バケットの吊上げ初期の揺れがほとんど発生せず、開閉ロープのロープ寿命も長くなる浚渫用グラブバケットを提供することを目的とする。」(段落【0005】) エ 「【0006】【課題を解決するための手段】請求項1記載の浚渫用グラブバケットは、吊支ロープで吊下げられる上部フレームと、一対のシェル部からなるバケットと、該一対のシェル部を開閉自在に軸支した下部フレームと、前記上部フレームと前記一対のシェル部をそれぞれ連結する連結杆と、前記上部フレームに回転自在に軸支された上部シーブと、前記下部フレームに回転自在に軸支された下部シーブとからなり、前記上部シーブは、同軸に軸支された上部制振用シーブと任意の枚数の上部増力用シーブとからなり、前記下部シーブは、同軸に軸支された下部制振用シーブと任意の枚数の増力用シーブとからなり、バケット開閉用の開閉ロープを、前記上部制振用シーブの前後方向一側のロープ溝に沿わせたうえで下部制振用シーブの前後方向他側のロープ溝に導き、さらに該下部制振用シーブの下半分のロープ溝に巻き掛けて、順次、上部増力用シーブと下部増力用シーブとに巻き掛け、端末を上部フレームまたは下部フレームに固定したことを特徴とする。請求項2記載の浚渫用グラブバケットは、前記上部シーブがバケットの前後方向と平行に設置され、前記下部シーブがバケットの前後方向に交差して設置され、そのシーブ前方が右寄りに、シーブ後方が左寄りに位置し、平面視において上部制振用シーブの前側のロープ溝と下部制振用シーブの前側のロープ溝がほぼ同じ位置にあることを特徴とする。請求項3記載の浚渫用グラブバケットは、前記上部制振用シーブのロープ溝に沿わせた開閉ロープを挟む位置にガイドシーブを取付けたことを特徴とする。 【0007】【発明の実施の形態】つぎに、本発明の実施形態を図面に基づき説明する。図1は本発明の一実施形態に係る浚渫用グラブバケット(以下、グラブバケットという)の側面図、図2は同グラブバケットの正面図、図3は開閉ロープ8の掛け廻し経路の説明図、図4は上部シーブ11、下部シーブ12およびガイドシーブ13の平面図、図5は本発明のグラブバケットにおける吊上げ初動における制振作用の説明図である。 【0008】図1~2において、1はバケットであり、対称に構成された一対のシェル部1A、1Bからなり、各シェル部1A、1Bは軸3で開閉自在に軸支され、下部フレーム2に取付けられている。また、各シェル部1A、1Bはそれぞれ連結杆4A、4Bの下端がピン連結され、その連結杆4A、4Bの上端が上部フレームに連結されている。この上部フレーム5の吊鐶6にはグラブバケット全体をクレーン等から吊下げるための吊支ロープ7が連結されている。 【0009】そして、上部フレーム5には、2枚の上部シーブ11が軸支され、下部フレーム2上には2枚の下部シーブ12が軸支されている。前記上部シーブ11は1枚の上部制振用シーブ11aと1枚の上部増力用シーブ11bからなり、いずれもバケット1の前後方向(図1の左右方向、図2の表裏方向)と平行に配置されている。そして、上部制振用シーブ11aの前後方向手前側(後側)のロープ溝に対向する位置に小径のガイドシーブ13が、上記フレーム5に軸支して取付けられている。前記下部シーブ12は1枚の下部制振用シーブ12aと1枚の下部増力用シーブ12bからなり、いずれもバケット1の前後方向に対し交差し、前方が右寄りに、後方が左寄りになっている。そして、図4に示すように、平面視において、上記上部制振用シーブ11aの前方側ロープ溝位置と下部制振用シーブ12aの前方側ロープ位置がほぼ一致し、上部増力用シーブ11bの後方側ロープ溝位置と下部制振用シーブ12aの後方側ロープ溝位置がほぼ一致し、上部増力用シーブ11bの前方側ロープ溝位置と下部増力用シーブ12bの前方側ロープ溝位置がほぼ一致している。 【0010】上記のごときシーブ配置の上部シーブ11と下部シーブ12との間に、バケット開閉用の開閉ロープ8はつぎのように掛け廻わされている。すなわち、図1および図3に示すように、クレーン等から吊下げられた開閉ロープ8は上部制振用シーブ11aとガイドシーブ13の間に入り、上部制振用シーブ11aの前後方向後側のロープ溝に沿わせたうえで、下部制振用シーブ12aの前後方向前側のロープ溝に導き、該制振用シーブ11aのロープ溝の下半分に掛け廻わし、ついで、上部増力用シーブ11b、下部増力用シーブ12bの順で掛け廻わし、端末8eを上部フレーム5に形成した固定金具9に係止している。 【0011】この実施形態のグラブバケットにおいて、バケット1を開閉するには、開閉ロープ8をクレーン等から繰り出すと、バケット1の自重によって図1に想像線で示すように開らき、開閉ロープ8を引き上げると上部シーブ11と下部シーブ12間の間隔が縮まってバケット1が閉じられる。」(段落【0006】ないし【0011】) オ 「【0016】 【発明の効果】請求項1の発明によれば、バケットを閉じるべく開閉ロープの引上げの瞬間に上向きの力が発生するが、上部制振用シーブに巻き掛けた部分の開閉ロープに発生する力と、下部制振用シーブに巻き掛けた部分の開閉ロープに発生する力が互いに相殺するので、バケット1の閉じ始めにバケット1を前後方向に揺らせる力はほとんど発生しない。・・・(略)・・・」(段落【0016】) カ 「【図面の簡単な説明】 【図1】本発明の一実施形態に係る浚渫用グラブバケットの側面図である。 【図2】本発明の一実施形態に係る浚渫用グラブバケットの正面図である。 ・・・(略)・・・ 【図6】従来のグラブバケットの側面図である。 【図7】従来のグラブバケットの正面図である。」 また、上記アないしカ及び図面の記載によれば、甲第1号証には、次の事項が記載されている。 キ 図1及び2の記載によれば、左右一対のシェル部1A、1Bは下部フレーム2に側面視において両側2ケ所で開閉自在に軸支されている。 ク 図1及び2の記載によれば、各シェル部1A、1Bは爪を具備しない平底状に構成されている。 なお、被請求人は、甲第1号証には、上記事項は記載されていない旨主張するが(第4答弁書第8ページ末行ないし第10ページ第16行を参照。)、図2からシェルが平底になっていることは明らかであるし、浚渫用である以上、爪を有する必要がなく、実際、図1にも爪は記載されていないことから、甲第1号証に、上記事項が記載されているというべきであり、被請求人の上記主張は採用できない。 ケ 図1及び2の記載によれば、側面視においてシェル部1A、1Bの両端部が下部フレーム2の外方に張り出している。 したがって、上記アないしケ及び図面の記載を総合すると、甲第1号証には、次の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。 「吊支ロープ7で吊下げられる上部フレーム5に上部シーブ11を軸支し、側面視において両側2ヶ所で左右一対のシェル部1A、1Bを開閉自在に軸支する下部フレーム2に下部シーブ12を軸支するとともに、左右一対のシェル部1A、1Bをそれぞれ連結する左右2本の連結杆4A、4Bが、上部フレーム5と左右一対のシェル部1A、1Bをそれぞれ連結しており、一方の連結杆4Aの下端部をシェル部1Aに、上端部を上部フレーム5に回動自在に軸支し、他方の連結杆4Bの下端部をシェル部1Bに回動自在に軸支し、該他方の連結杆4Bの上端部を上部フレーム5に固定し、上部シーブ11と下部シーブ12との間には、開閉ロープ8が巻き掛けられており、開閉ロープ8を繰り下ろすとシェル部1A、1Bは開き、開閉ロープ8を引き上げるとシェル部1A、1Bが閉じられるようにしたグラブバケットにおいて、 シェル部1A、1Bを爪無しの平底構成とし、かつ、側面視においてシェル部1A、1Bの両端部が下部フレーム2の外方に張り出している平底浚渫用グラブバケット。」 (2)甲第2号証の記載、甲第2号証に記載された事項 甲第2号証には、「グラブバケット」に関して、図面とともに概ね次の記載がある。 ア 「【請求項1】 シェルの口幅を開幅よりも大きく形成したことを特徴とするグラブバケット。」(【実用新案登録請求の範囲】の【請求項1】) イ 「【0001】 【産業上の利用分野】 本考案はグラブバケットに関し、特には砂利、砂の荷揚げや荷降ろし等を行うグラブバケットにおいて、開幅よりも口幅を広い形状とすることにより、安定性を高め、容重比を小さくして操作性を高めたものである。 【0002】 【従来の技術】 運搬船等に積載された砂利や砂を陸揚げするにはグラブバケットが用いられる。このグラブバケットは、荷役クレーンから吊支される揚重用のワイヤーロープにグラブバケットを連結して吊支し、グラブバケット内に砂利等を取り込むために、その底部が中央部で左右二つに開閉できるようになっている。 【0003】 このグラブバケットは通例ラッチアーム型と称する形式のものが用いられ、図7及び図8に示したように、シェル21,21に4本のアーム23が軸22で回動可能に連結されてアーム23の上端部に吊支体27が支持されるとともに、シェル21,21にはアーム24,24を連結し、そのアーム24,24は軸25を介して開閉可能に連結され、更にシェル21にラッチアーム26の一端部を連結し、軸25に回動可能に軸支して上端部に滑車30を回転自在に軸支している。滑車30は吊支体27に軸支された滑車29との間で開閉用ワイヤーロープ31が捲回されている。吊支体27は揚重用ワイヤーロープ32で吊り上げられる。」(段落【0001】ないし【0003】) ウ 「【0005】 【考案が解決しようとする課題】 しかしながら、従来のラッチアーム型のグラブバケットでは、容重比(重量/容量)は2.0が限界であって、これ以上は形状的に制約が有り、軽量化を図ることができない。また、シェルの開幅Wよりも口幅Lが小さいとともに、高さHがそれらに比べて長いので、グラブバケットの安定性が低く作業中に転倒することが有る。グラブバケットが転倒すると時間あたりの作業回数が減り、作業能率が低下する。」(段落【0005】) エ 「【0007】 そこで、本考案は上記事情に鑑み、砂利、砂の荷揚げや荷降ろし等を行うグラブバケットにおいて、開幅よりも口幅を広い形状とすることにより、安定性を高め、容重比を小さくして操作性を高めたグラブバケットを提供するものである。 【0008】 【課題を解決するための手段】 本考案は上記課題を解決するために、第1に、シェルの口幅を開幅よりも大きく形成したグラブバケットの構成を提供する。第2に、シェルの口幅を開幅よりも大きく形成するとともに、重量に対する容量の比が略1.0であるグラブバケットの構成を提供する。第3に、シェルの口幅を開幅よりも大きく形成するとともに、上部枠と下部枠とを接近させて設けるとともに、下部枠の上面に下部滑車を、上部枠の下面に上部滑車をそれぞれ設け、これらの滑車を介してシェルが開閉できるようにしたグラブバケットの構成を提供する。そして、これらの構成を総合して、シェルの口幅を開幅よりも大きく形成し、重量に対する容量の比が略1.0であって、上部枠と下部枠とを接近させて設けるとともに、下部枠の上面に下部滑車を、上部枠の下面に上部滑車をそれぞれ設け、これらの滑車を介してシェルが開閉できるようにしたグラブバケットの構成を提供する。」(段落【0007】及び【0008】) オ 「【0009】 【作用】 上記第1の構成の本考案によれば、作業中のグラブバケットの転倒が無くなり、作業能率が向上する。・・・(略)・・・ 【0010】 【実施例】 以下に本考案の一実施例を図面に基づき説明する。図1は本考案にかかるグラブバケットの一実施例を示すシェルを閉じた状態の斜視図、図2はシェルを開いた状態の斜視図である。図に示したように、左右一対でバケットを形成するシェル1,1の開幅方向の両端部をそれぞれ下部枠2に主軸3,3で回転可能に軸支し、それらのロッドアーム4,4の一方の上端部を上部枠5に回動可能に軸着し、他方の上端部を上部枠5に固着して連結している。 ・・・(略)・・・ 【0012】 シェル1の口幅方向の長さLは、開幅方向の長さWと同等又はそれ以上の長さを有して寸法的には従来のものに比べて著しく口幅が大きいのが特徴である。したがって、開幅に対して口幅が大きいから、安定性が高く、作業中に転倒することもなく、しかも掴み量が大きい。」(段落【0009】ないし【0012】) カ 「【0016】 また、従来のグラブバケットに比較すると、口幅が開幅よりも大きいために転倒しがたく、サイクルタイムのロスが少ないから、能率のよい作業ができる。・・・(略)・・・」(段落【0016】) キ 「【図面の簡単な説明】 【図1】本考案にかかるグラブバケットの一実施例を示す斜視図。 【図2】図1のシェルを開いた状態を示す斜視図。 【図3】図1の正面図。 【図4】図3の平面図。 【図5】図3の側面図。 【図6】図3のシェルを開いた状態を示す側面図。 【図7】従来例の正面図。 【図8】図7の側面図。」(【図面の簡単な説明】) また、上記アないしキ及び図面の記載によれば、甲第2号証には、次の事項が記載されている。 ク 図1ないし3の記載によれば、側面視において左右一対でバケットを形成するシェル1,1の両端部がロッドアーム4,4の外方に張り出している。 (3)甲第4号証の記載 甲第4号証には、「グラブバケット」に関して、図面とともに概ね次の記載がある。 ア 「掻取口を互いに突き合わせて海底土砂等を掻き取るための一対のバケットシェルを有し、該バケットシェルの上部に上記掻取口に連通すると共に上方に臨んで開口される上部開口部を有したグラブバケットにおいて、上記バケットシェルに、これを海中等から上方に吊り上げるときに上記上部開口部を閉じるための開閉手段を設けたことを特徴とするグラブバケット。」(明細書第1ページ第5ないし12行) イ 「第1図及び第2図に示すように、海底土砂等を掻き取る浚渫用のグラブバケット20は開閉自在な一対のバケットシェル21を有している。 これらバケットシェル21の下部には互いに突き合わされて海底土砂を掻き取るための掻取口22が形成されると共に、バケットシェル21の上部には掻取口22に連通する上部開口部23が上方に臨んで開口される。 具体的には各バケットシェル21はその基端部が下部枠に軸支されると共にロッド25を介して上部枠26に開閉自在に支持される。 下部支持枠24にはバケットシェル21を開閉するための開閉用シーブ27及び開閉用ロープ28が設けられ、上部支持枠26にはバケットシェル21を支持するための支持用ロープ29が設けられる。 特に本考案においてはバケットシェル21にはその上部に形成される上部開口部23を開閉するための開閉手段が設けられ、この開閉手段は本実施例においては鉄板あるいは硬質ゴム製のシェルカバー部材30により構成される。」(明細書第6ページ第9行ないし第7ページ第9行) ウ 「従って、第3図に示すように、荷を握持しながら海中でバケットグラブ21を上方に巻き上げるときにはシェルカバー部材30はその自重と水の抵抗を受けてバケットシェル21に押しつけられ上部開口部23を閉じることになる。・・・(略)・・・ また、シェルカバー部材30により上方開口部23が閉じられ、バケットシェル21内が密閉されることになり、海底土砂は外部に漏出することなくバケットシェル21内に保持される。・・・(略)・・・ 一方、海底土砂を掻き取るべく、グラブバケット21を海水中で落下させる場合にはシェルカバー部材30は水の抵抗を受け、バケットシェル21の上部を開放することになる。すなわち、第5図に示すように、バケツトシェル21の掻取口22から入り込んだ海水がシェルカバー部材30を上方に押し上げて上部開口部23から流出することになり、バケットシェル21にはその下方から上方に海水が通り抜けることになる。」(明細書第7ページ第18行ないし第9ページ第7行) エ 第5図の記載によれば、グラブバケット21を左右に広げたまま海水中で落下させる場合にシェルカバー部材30は上方に開くようになっている。 (4)甲第5号証の記載、甲第5号証に記載された事項及び甲5発明 甲第5号証には、「浚渫用クラムシェルバケット」に関して、図面とともに概ね次の記載がある。 ア 「【請求項1】 クレーンからの吊りロープによって吊り下げられる機体に上端を軸止された左右アームの下端部の支軸の回りに回動自在に右バケットと左バケットとを設け、これらの左右バケットの開口面の内側端縁同士を枢軸で結合すると共に、その枢軸を前記クレーンの開閉用ワイヤで昇降操作することによって、左右バケットを開閉及び移動させて海底の土砂を浚渫する浚渫用クラムシェルバケットにおいて、 前記左右バケットの前記開口面以外の部分を密閉構造とし、左右バケットの開口面の合わせ部にシール用パッキンを取り付け、かつ左右バケットの前記支軸部近傍に、空気抜き口とこの空気抜き口を開閉する空気抜き扉を設け、左右バケットが開いているときは前記空気抜き扉が前記空気抜き口を開放する位置にあり、左右バケットが閉じたときは前記空気抜き扉が前記空気抜き口を閉塞する位置にあるように前記空気抜き扉を構成したことを特徴とする浚渫用クラムシェルバケット。」(【特許請求の範囲】の【請求項1】) イ 「【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、海底の土砂やヘドロなどをすくい上げて浚渫を行うクラムシェルバケットに関する。」(段落【0001】) ウ 「【0002】 【従来の技術】クラムシェルバケットは、バケットの刃先部と左右バケットの底部で土砂を浚渫して、土運船に取り上げるものである。 【0003】クラムシェルバケットの従来例を図5~図8に示す。図5及び図6はバケットを開いた状態の正面図及び側面図、図7及び図8はバケットを閉じた状態の正面図及び側面図である。 【0004】これらの図において、1は機体、2及び3は機体1に上端を軸止された左アーム及び右アーム、4及び5は左右アーム2,3の下端部の支軸6,7の回りに回動自在に設けられた左バケット及び右バケット、8は左右のバケット4,5の開口面の内側端縁同士を結合した枢軸、9は枢軸8を昇降駆動するための滑車機構、10はクレーンからの吊りワイヤ、11は同じくクレーンからの開閉用ワイヤである。 【0005】この従来のクラムシェルバケットにおいては、図5に示すように左右のバケット4,5を全開した状態で海底まで落下させ、開閉用ワイヤ11を操作して左右バケット4,5を閉じ、海底土砂をすくう。次いで吊りワイヤ10を操作して図7,図8に示すように左右バケット4,5を閉じたまま引き上げ、土運船上で左右バケット4,5を開いて土砂を積み込む。」(段落【0002】ないし【0005】) エ 「【0009】本発明が解決しようとする課題は、一旦バケットですくい上げた汚泥や汚水を海中に落下させたりこぼすことがなく、またバケットに溜まった空気による浮力や汚泥巻き上げを解消することである。」(段落【0009】) オ 「【0013】図1~図4は本発明の実施例を示すもので、図1はバケットを閉じた状態の正面図、図2はその側面図、図3はバケットを開いた状態の正面図、図4はその側面図である。 【0014】これらの図において、従来例と同様な構成要素については同一の符号を付して説明を省略する。 【0015】本実施例の特徴は、クラムシェルの左右のバケット4,5を完全に箱形にして一面(開口面)だけで接地させるようにした。バケット4,5の上部の面には、D型ゴム(シール用パッキン)12を設け、バケット4,5の開閉により圧縮させて密閉するようにした。また、バケット4,5の左と右の背中の面に大きな空気抜き口13と空気抜き扉14を設置したことである。空気抜き扉14は、本実施例では板状であり、上端を水平な軸によって回動自在に構成されている。 【0016】この実施例によれば、図3に示すように、左右のバケット4,5を開いた状態で吊りワイヤ10を操作して海中にバケット4,5を落下させると、バケット4,5の底部(落下中は上部)に設けられている空気抜き扉14はほぼ垂直の位置にあって空気抜き口13を開放しており、バケット4,5の底部の空気は海中を落下中に完全に抜かれる。バケット4,5が海底に達すると、開閉用ワイヤ11を操作することによりバケット4,5の刃先が汚泥をすくい取り、バケット4,5が閉じると、D型ゴム12がバケット4,5の口を完全にシールし、図1に示すように空気抜き扉14も空気抜き口13を閉塞してバケット4,5は完全に密封状態となる。」(段落【0013】ないし【0016】) また、上記アないしオ及び図面の記載によれば、甲第5号証には、次の事項が記載されている。 カ 図2ないし4の記載によれば、左右バケット4,5は滑車機構9に側面視において両側2ケ所で開閉自在に軸支されている。 キ 図1ないし4の記載及び技術常識によれば、機体1には開閉用ワイヤ11が巻き掛けられる上シーブ(符号無し)が、滑車機構9には開閉用ワイヤ11が巻き掛けられる下シーブ(符号無し)が軸支されている。 ク 図1ないし4の記載によれば、左右バケット4,5は爪を具備しない平底状に構成されている。 なお、被請求人は、甲第5号証には、上記事項は記載されていない旨主張するが(第4答弁書第10ページ第26行ないし第13ページ第7行を参照。)、図2及び4からシェルが平底になっていることは明らかであるし、浚渫用である以上、爪を有する必要がなく、実際、図1及び3にも爪は記載されていないことから、甲第5号証に、上記事項は記載されているというべきであり、被請求人の上記主張は採用できない。 ケ 図1ないし4の記載によれば、側面視において左右バケット4,5の両端部が左右アーム2,3の外方に張り出している。 コ 上記オ及び図1ないし4の記載並びに技術常識によれば、左右バケット4,5の上部に左右バケット4,5の上部の面を構成するとともに、左右バケット4,5を箱形に構成する部材が密接配置されている。 したがって、上記アないしコ及び図面の記載を総合すると、甲第5号証には、次の発明(以下、「甲5発明」という。)が記載されていると認められる。 「吊りワイヤ10を連結する機体1に上シーブを軸支し、側面視において両側2ケ所で左右一対の左右バケット4,5を回動自在に軸支する滑車機構9に下シーブを軸支するとともに、左右2本の左右アーム2,3の下端部をそれぞれ左右バケット4,5に、上端部をそれぞれ機体1に回動自在に軸支し、上シーブと下シーブとの間に開閉用ワイヤ11を掛け回して左右バケット4,5を開閉可能にしたクラムシェルバケットにおいて、 左右バケット4,5を爪無しの平底構成とし、左右バケット4,5の上部に左右バケット4,5の上部の面を構成するとともに、左右バケット4,5を箱形に構成する部材を配置するとともに、かつ、側面視において左右バケット4,5の両端部が左右アーム2,3の外方に張り出している、ヘドロ浚渫工事に使用する平底浚渫用クラムシェルバケット。」 (5)甲第16号証の記載 甲第16号証には、「浚渫用グラブバケット」に関して、図面とともに概ね次の記載がある。 ア 「【請求項1】 上フレーム1と、 上フレーム1で開閉ロープ2を介して吊持した下フレーム4と、 下フレーム4に設けたシェル軸5で開閉自在に軸支した左右一対のバケットシェル6と、上フレーム1に連結されて、その下端側が各バケットシェル6に対して転回軸10を介して連結してある左右一対のアーム7とを備えているグラブバケットであって、 全閉状態において下フレーム4と対向する、バケットシェル6のシェル上壁13に水抜き口11が開口しており、 バケットシェル6に、水抜き口11を開閉する開閉体12と、開閉体12を開閉操作する操作機構とが設けてあることを特徴とする浚渫用グラブバケット。」(【請求項1】) イ 「【0002】 【従来の技術】 例えば、ヘドロ等の沈泥を浚渫する際には、グラブバケットから溢れ出る泥土や濁水で作業水域とその周辺域に水質汚濁が生じる。こうした事態を極力避けるために、半密閉状に構成したグラブバケットが従来用いられている。従来のグラブバケットは、図6に示すごとく左右一対のアーム40と、下フレーム41に支持される一対のバケットシェル42とを有し、バケットシェル42のシェル壁にダクト状の水抜き筒43が設けられていた。 【0003】 【考案が解決しようとする課題】 かかるグラブバケットによれば、沈泥に喰い込んだ全開状態のバケットシェル42を徐々に閉じ操作することによって、シェル内の濁水を水抜き筒43から排出しながらバケットシェル42を閉鎖できる。従って、バケットを引き揚げる際の汚水の散逸を抑止できる。しかし、バケットシェル42を全閉操作した状態においても、シェル内部が水抜き筒43を介してシェル外に通じている。そのため、バケット引き揚げ時に水抜き筒43から濁水や泥土が流出するのを避けられず、水質汚濁を十分に解消できない。」(段落【0002】及び【0003】) ウ 「【0005】 【課題を解決するための手段】 この考案のグラブバケットは、図2に示すごとく上フレーム1と、上フレーム1で開閉ロープ2を介して吊持した下フレーム4と、下フレーム4に設けたシェル軸5で開閉自在に軸支した左右一対のバケットシェル6と、上フレーム1に連結されて、その下端側が各バケットシェル6に対して転回軸10を介して連結してある左右一対のアーム7とを備えている。全閉状態において下フレーム4と対向する、バケットシェル6のシェル上壁13に水抜き口11を開口する。バケットシェル6には、水抜き口11を開閉する開閉体12と、開閉体12を開閉操作する操作機構を設ける。 ・・・(略)・・・ 【0007】 開閉体12は、バケットシェル6の内部に配置して、シェル内部に設けた軸19で揺動開閉自在に支持する。一端が開閉体12に対して同行揺動可能に連結され、他端がバケットシェル6外へ突出してある第1アーム23と、一端がアーム7に連結された第2アーム25とを相対屈折自在に連結して屈折リンク22を構成する。 【0008】 【作用】 開閉体12は操作機構で開閉操作されて、水抜き口11を開放ないし閉止できる。従って水抜き口11を開放した状態でバケットシェル6を操作すると、シェル内の濁水を水抜き口11から排出できる。バケットシェル6が全閉ないしはその直前の状態になった時点で、開閉体12が操作機構で閉じ操作されて水抜き口11を完全に閉止できるので、バケット引き揚げ時に内部の泥土が水抜き口11から外部に流出するのを阻止できる。 【0009】 水抜き口11をシェル上壁13に開口するのは、他のシェル周壁に水抜き口11を開口した場合に比べて、バケット引き揚げ時にシェル内部の泥土が流出しにくいのが理由のひとつである。他の理由は、泥土とシェル周壁との間に存在する濁水を、バケットシェル6で泥土をすくい込む際の泥土の流動作用によって、水抜き口11から支障なく排出でき、水抜きをより確実に行えるからである。」(段落【0005】ないし【0009】) エ 「【0012】 【実施例】 図1ないし図5はこの考案に係るグラブバケットの実施例を示す。図2において、グラブバケットは、上フレーム1と、上フレーム1で開閉ロープ2を介して吊持した下フレーム4と、下フレーム4に設けたシェル軸5で開閉自在に支持した左右一対のバケットシェル6と、上フレーム1と左右のバッケトシェル6との間に設けた左右一対のアーム7などで構成する。」(段落【0012】) (6)甲第26号証の記載 甲第26号証には、「全密閉式グラブバケツト」に関して、図面とともに概ね次の記載がある。 ア 「2 実用新案登録請求の範囲 相対向するシエルの中心合わせ面にパツキンを設けると共に各シエルの側面開口部をバケツトの開閉運動に同期して開閉するカバーを備えたグラブバケツトにおいて、各シエル11の上部開口部22をふさぐ上部開口カバー13を設けた全密閉式グラブバケット。」(実用新案登録請求の範囲) イ 「また、シエル1の上部開口部4を必要な場合には、第2図及び第3図に示すように滑車箱5の底面を利用してふさぐようにした全密閉式のグラブバケツトも従来から知られている。グラブバケツトは、つかみ物によつては必ずしも全密閉式にする必要はないが、つかみ物がヘドロのような流動物質等になると、侵入する水の抵抗によつて多くのつかみ物が流出するので全密閉式にしなければならない。しかし、上部開口部4を滑車箱5の底面を利用してふさぐようにしたものにおいては、バケツトが大型になるに従つて、一般的に滑車箱も大きくしなければならないので、バケツトを水中に投入した場合、滑車箱は大きな浮力抵抗を受けることになる。また、従来の密閉型バケツトのシエルは、上部開口部があいているので剛性が得にくく、外力による変形が生じやすい。このために、従来は、滑車箱を小さくして、シエル側面を長くし、反対にシエルと下部滑車の連結ピン6のピン間距離をせまくしているが、これによつて、開口部が小さくなりつかみ量が低下する欠点があつた。 本考案は、前述したような従来のものにおける欠点を除いた全密閉式グラブバケツトを得ることを目的とするものである。 以下、本考案を、その1実施例を示す添付図面の第4ないし8図に基づいて説明する。 第4図に示すように、相対向するシエル11、11の上部開口部12、12に上部開口カバー13、13をシエル11、11の内幅いつはいに固着するか、又は、取りはずし可能に装着する。 ・・・(略)・・・ 以上説明したように、この考案においては、シエル上部開口12から水が浸入しないように開口12を上部開口カバー13によつてふさぐことにより、流体物質等のつかみ物でも流出を防止することができるので、つかみ量の効率が良くなる。また、上部開口カバー13はシエル11の補強にもなると共にシエルの形状が・・・(略)・・・剛性を増し、外力による変形が従来のものよりも著しく減少するばかりでなく、シエルの形を広げてバケツトの開口幅を大きくし、つかみ量を増大させることができる。」(明細書第2ページ第1行ないし第5頁第4行) (7)甲第49号証の記載 甲第49号証には、「スーパーグラブバケット浚渫工法を開発」に関して、図面及び写真とともに概ね次の記載がある。 ア 「スーパーグラブバケット浚渫工法を開発 ~環境対応型高精度浚渫により汚染底泥にも対応~ 2003年10月27日 ◆「薄層浚渫支援システム」により、高精度の水平掘りを実現 ◆水抜き機構の採用により、余分な水の取り込みを極力抑えた浚渫が可能 ◆完全密閉機構の採用により、濁りの発生を抑制 ◆余分な土砂と水の取り込みを抑えることで、汚染底泥対策のトータルコストを低減 東亜建設工業はこのほど、福丸建設株式会社(社長:増田福一、本社:長崎県佐世保市)と共同で、近年問題となっている航路や泊地における重金属やダイオキシン類等で汚染された底泥の除去対策ニーズに対応した浚渫工法として、スーパーグラブバケット浚渫工法を開発しました。 本工法は、海洋土木工事でのノウハウを活かして弊社が開発した「薄層浚渫支援システム」(特許出願中)を使用することにより、薄層での水平掘り(水底を薄く均一に浚渫すること)を実現しました。 ●背景 全国的な港湾、河川、湖沼などの公共水域の底泥ダイオキシン類にかかわる調査が実施された結果、いくつかの河川や港湾で環境基準値を超える底泥が発見されました。汚染された底泥対策の一つとして、広い範囲を薄く浚渫する方法があります。しかし、従来型の密閉グラブバケットによる浚渫では、必要以上の厚さを浚渫してしまうことと、余剰水が多く発生してしまうという課題があるとともに、その余剰水の漏れにより水切り時における濁りの拡散が発生するという課題がありました。スーパーグラブバケット浚渫工法は、これらの課題点を克服する環境対応型の高精度浚渫工法です。」(第1ページ第6ないし24行) (8)甲第52号証の記載 甲第52号証には、「650m3/h 6連装トレミー砂撒船「第18龍王丸」」に関して、図面及び写真とともに概ね次の記載がある。 ア 「2.1 本船の概要 本船は関西国際空港II期工事に使用する砂撒船としてグラブ船を改造したものである。」(第10ページ右欄下から9ないし7行) イ 「2.2 揚砂用グラブ 揚砂用グラブ(20m3)はホッパーに均等に供給することを容易にするため従来型より幅広くし、作業効率の向上を図っている(図-2)。」(第11ページ左欄第1ないし4行) ウ 図-2において、本件特許発明における側面視、すなわち、シェルと下部フレームを軸支する軸を軸心方向の側方から見たものは、右側の図面に該当し、同図においては、側面視においてシェルの両端部がタイロッドの外方に張り出しており、シェルの両端部が下部フレームの外方及び下部フレームとシェルを軸支する軸の外方に張り出している。 したがって、甲第52号証には、「側面視においてシェルの両端部がタイロッドの外方に張り出すとともに、側面視においてシェルの両端部が下部フレームの外方に張り出し、更に、側面視においてシェルの両端部が下部フレームとシェルを軸支する軸の外方に張り出してなる構成」が開示されているものと認められる。 (9)甲第84号証の記載 甲第84号証には、「密閉式水平掘削グラブバケットについて」に関して、図面及び写真とともに概ね次の記載がある。 ア 「汚泥に含まれる有害物質は,メチル水銀化合物に起因する水俣病やカドミウムに起因するイタイイタイ病のように,魚介類や植物を介して人体に入り,公害病を引起すことになる。」(第22ページ左欄第8ないし11行) イ 「グラブバケットは,図-2に示す密閉式のもので,・・・(略)・・・この密閉式グラブバケットは,全閉状態においてシエル上面が密閉し,かつ左右のシエル刃先の隙間も密閉しており,水も漏らさない完全密閉構造を採用し,水中巻上過程における汚濁を防ぐようにした。また掘削過程における汚泥層の攪乱作用も,シエルの構造から従来のグラブバケットよりも少なくなっている。」(第23ページ左欄下から12行ないし第24ページ左欄第2行) ウ 「4.グラブバケットの水平掘削機構 1)水平掘削機構の必要性 現在,各地で計画中の汚泥の浚渫処理を必要とする場所では,在来地盤の上に汚泥層が0.3mとか0.5mの厚さで堆積している状況が確認されている。このような汚泥層をポンプ浚渫船によって浚渫しようとすると,含泥率がいちじるしく低下して,非能率的な工事を行なうことになり,余水の処理にも大きな設備を必要とする。また密閉式グラブバケットを装備するグラブ浚渫船によって浚渫しても,平坦な掘削軌跡が得られないために汚泥を掘り残したり,あるいは在来地盤も掘ってしまう結果になり処理場の容積を大幅に増す必要が生じたりする。このようなことから,グラブ浚渫船においては,平坦な掘削跡を得るための水平掘削機構が要望されるようになってきた。」(第25ページ左欄下から4行ないし右下欄第12行) 3 無効理由1について (1)甲1発明 甲第1号証には、上記第5 2(1)に記載したとおりの発明が記載されている。 (2)対比 本件特許発明と甲1発明とを対比する。 甲1発明における「吊支ロープ7」は、その機能、構造又は技術的意義からみて、本件特許発明における「吊支ロープ」に相当し、以下、同様に、「吊り下げられる」は「連結する」に、「上部フレーム5」は「上部フレーム」に、「上部シーブ11」は「上シーブ」に、「シェル部1A、1B」は「シェル」に、「開閉自在に軸支する」は「回動自在に軸支する」に、「下部フレーム2」は「下部フレーム」に、「下部シーブ12」は「下シーブ」に、「連結杆4A、4B」は「タイロッド」に、「上部シーブ11と下部シーブ12との間には、開閉ロープ8が巻き掛けられており、開閉ロープ8を繰り下ろすとシェル部1A、1Bは開き、開閉ロープ8を引き上げるとシェル部1A、1Bが閉じられるようにした」は「上シーブと下シーブとの間に開閉ロープを掛け回してシェルを開閉可能にした」に、それぞれ、相当する。 また、甲1発明における「左右一対のシェル部1A、1Bをそれぞれ連結する左右2本の連結杆4A、4Bが、上部フレーム5と一対のシェル部1A、1Bをそれぞれ連結しており、一方の連結杆4Aの下端部をシェル部1Aに、上端部を上部フレーム5に回動自在に軸支し、他方の連結杆4Bの下端部をシェル部1Bに回動自在に軸支し、該他方の連結杆4Bの上端部を上部フレーム5に固定し」は、本件特許発明における「左右2本のタイロッドの下端部をそれぞれシェルに、上端部をそれぞれ上部フレームに回動自在に軸支し」と、「左右2本のタイロッドの下端部をそれぞれシェルに、上端部をそれぞれ上部フレームに連結し」という限りにおいて、一致する。 さらに、甲1発明における「平底構成」及び「平底浚渫用グラブバケット」と本件特許発明における「平底幅広構成」及び「平底幅広浚渫用グラブバケット」は、それぞれ、「平底構成」及び「平底浚渫用グラブバケット」という限りにおいて、一致する。 したがって、本件特許発明と甲1発明とは、 「吊支ロープを連結する上部フレームに上シーブを軸支し、側面視において両側2ケ所で左右一対のシェルを回動自在に軸支する下部フレームに下シーブを軸支するとともに、左右2本のタイロッドの下端部をそれぞれシェルに、上端部をそれぞれ上部フレームに連結し、上シーブと下シーブとの間に開閉ロープを掛け回してシェルを開閉可能にしたグラブバケットにおいて、 シェルを爪無しの平底構成とした 平底浚渫用グラブバケット。」の点で一致し、次の7点で相違又は一応相違する。 ア 相違点1 「左右2本のタイロッドの下端部をそれぞれシェルに、上端部をそれぞれ上部フレームに連結し」に関し、本件特許発明においては、「左右2本のタイロッドの下端部をそれぞれシェルに、上端部をそれぞれ上部フレームに回動自在に軸支し」ているのに対して、甲1発明においては、「左右一対のシェル部1A、1Bをそれぞれ連結する2つの連結杆4A、4Bが、上部フレーム5と左右一対のシェル部1A、1Bをそれぞれ連結しており、一方の連結杆4Aの下端部をシェル部1Aに、上端部を上部フレーム5に回動自在に軸支し、他方の連結杆4Bの下端部をシェル部1Bに回動自在に軸支し、該他方の連結杆4Bの上端部を上部フレーム5に固定し」ている点(以下、「相違点1」という。)。 イ 相違点2 本件特許発明においては、「シェルの上部にシェルカバーを密接配置するとともに、前記シェルカバーの一部に空気抜き孔を形成し、該空気抜き孔に、シェルを左右に広げたまま水中を降下する際には上方に開いて水が上方に抜けるとともに、シェルが掴み物を所定容量以上に掴んだ場合にも内圧の上昇に伴って上方に開き、グラブバケットの水中での移動時には、外圧によって閉じられる開閉式のゴム蓋を有する蓋体を取り付け」るのに対して、甲1発明においては、そのように構成されているか否か不明である点(以下、「相違点2」という。)。 なお、請求人は、本件特許発明における「シェルの上部にシェルカバーを密接配置するとともに、前記シェルカバーの一部に空気抜き孔を形成し、該空気抜き孔に、シェルを左右に広げたまま水中を降下する際には上方に開いて水が上方に抜けるとともに、シェルが掴み物を所定容量以上に掴んだ場合にも内圧の上昇に伴って上方に開き、グラブバケットの水中での移動時には、外圧によって閉じられる開閉式のゴム蓋を有する蓋体を取り付け」という発明特定事項を、「シェルの上部にシェルカバーを密接配置する」、「前記シェルカバーの一部に空気抜き孔を形成し」及び「該空気抜き孔に、シェルを左右に広げたまま水中を降下する際には上方に開いて水が上方に抜けるとともに、シェルが掴み物を所定容量以上に掴んだ場合にも内圧の上昇に伴って上方に開き、グラブバケットの水中での移動時には、外圧によって閉じられる開閉式のゴム蓋を有する蓋体を取り付け」の3つに分けて、それぞれを相違点として検討しているが、いずれも、「シェルカバー」に関する発明特定事項であり、密接な関係があることから、このように相違点を認定した。 ウ 相違点3 本件特許発明においては、「正面視におけるシェルを軸支するタイロッドの軸心間の距離を100とした場合、側面視におけるシェルの幅内寸の距離を60以上とし」ているのに対して、甲1発明においては、そのように構成されているか否か不明である点(以下、「相違点3」という。)。 エ 相違点4 本件特許発明においては、「側面視においてシェルの両端部がタイロッドの外方に張り出すとともに、側面視においてシェルの両端部が下部フレームの外方に張り出し、更に、側面視においてシェルの両端部が下部フレームとシェルを軸支する軸の外方に張り出してなり」であるのに対して、甲1発明においては、側面視においてシェル部1A、1Bの両端部が下部フレーム2の外方に張り出しているものの、「側面視においてシェル部1A、1Bの両端部が連結杆4A、4B(本件特許発明における「タイロッド」に相当する。)の外方に張り出すとともに、更に、側面視においてシェル部1A、1Bの両端部が下部フレーム2とシェル部1A、1Bを軸支する軸の外方に張り出している」か否か不明である点(以下、「相違点4」という。)。 オ 相違点5 本件特許発明においては、「薄層ヘドロ浚渫工事に使用する」ものであるのに対し、甲1発明においては、そのようなものか不明である点(以下、「相違点5」という。)。 カ 相違点6 「平底構成」及び「平底浚渫用グラブバケット」に関し、本件特許発明においては、それぞれ、「平底幅広構成」及び「平底幅広浚渫用グラブバケット」であるのに対して、甲1発明においては、それぞれ、「平底構成」及び「平底浚渫用グラブバケット」である点(以下、「相違点6」という。)。 キ 相違点7 本件特許発明においては、「(なお、前記正面視はシェルと下部フレームを軸支する軸の軸心方向から視たものであり、前記側面視はシェルと下部フレームを軸支する軸を軸心方向の側方から視たものとする)」とされているのに対し、甲1発明においては、そのようにされているか不明な点(以下、「相違点7」という。)。 (3)相違点についての判断 ア 相違点1について 上記第5 2(3)によると、甲第4号証には、浚渫用グラブバケットにおいて、左右2本のロッド25の下端部をそれぞれバケットシェル21に、上端部をそれぞれ上部枠26に開閉自在に軸支することが記載され、上記第5 2(4)によると、甲第5号証には、浚渫用クラムシェルバケットにおいて、左アーム2、右アーム3の下端部をそれぞれ左バケット4、右バケット5に、上端部をそれぞれ機体1に開閉自在に軸支することが記載され、上記第5 2(5)によると、甲第16号証には、浚渫用グラブバケットにおいて、左右一対のアーム7の下端部をそれぞれバケットシェル6に、上端部をそれぞれ上フレーム1に開閉自在に軸支することが記載され、上記第5 2(6)によると、甲第26号証には、浚渫用グラブバケットにおいて、左右2本のロッド状部材の下端部をそれぞれシエル11、11に、上端部をそれぞれ上部フレーム状部材に回動自在に軸支することが記載され、上記第5 2(8)によると、甲第52号証には、揚砂用グラブにおいて、左右2本のロッド状部材の下端部をそれぞれシェル状部材に、上端部をそれぞれ上部フレーム状部材に回動自在に軸支することが記載されている。 したがって、グラブバケットにおいて、左右2本のタイロッドの下端部をそれぞれシェルに、上端部をそれぞれ上部フレームに回動自在に軸支することは周知(以下、「周知技術1」という。)である。 よって、グラブバケットに関する発明である甲1発明において、周知技術1を適用して、相違点1に係る本件特許発明の発明特定事項とすることは、当業者であれば容易に想到し得たことである。 なお、被請求人は、「ただし、甲1発明が周知技術1にかかる構成を採用することなく、甲1に記載された他の構成を採用しているのは、甲1発明が「バケットの吊上げ初期の揺れ防止」等の固有の課題を解決するために他ならない。即ち、相違点1にかかる片方の連結杆を固定する構成は甲1発明の課題解決のために必須の構成であり、甲1発明において周知技術1にかかる構成を採用することには阻害事由があり、動機付けもないといえる。」(第4答弁書第25ページ第12ないし17行を参照。)旨主張するが、甲第1号証に従来例として記載された図6及び7に記載された浚渫用グラブバケットも本発明の一実施形態として記載された図1及び2に記載された浚渫用グラブバケットも、「左右一対のシェル部1A、1Bをそれぞれ連結する2つの連結杆4A、4Bが、上部フレーム5と左右一対のシェル部1A、1Bをそれぞれ連結しており、一方の連結杆4Aの下端部をシェル部1Aに、上端部を上部フレーム5に回動自在に軸支し、他方の連結杆4Bの下端部をシェル部1Bに回動自在に軸支し、該他方の連結杆4Bの上端部を上部フレーム5に固定し」ており、該構成は、「バケットの吊上げ初期の揺れ防止」等の固有の課題の解決と何ら関係がない。 したがって、「相違点1にかかる片方の連結杆を固定する構成は甲1発明の課題解決のために必須の構成」であるとはいえないから、「甲1発明において周知技術1にかかる構成を採用することには阻害事由があ」るとはいえず、「動機付けもない」ともいえない。 よって、被請求人の上記主張は採用できない。 イ 相違点2について 判決は、「引用例3(当審注:甲第4号証、以下同様)のシェルカバー部材30は,バケットシェル21の上部に形成される上部開口部23に取り付けられた開閉手段であり,グラブバケット20が水中を移動するときには上部開口部23を閉じてバケットシェル21内を密閉するが,グラブバケット20が水中を降下するときなどには,上部開口部23を開放するものである。 また,前記アのとおり,周知例1(当審注:甲第16号証、以下同様)記載の浚渫用グラブバケットは,シェルの上部が密閉されたグラブバケットにおいて,シェル内部の濁水を排出する手段につき,従来技術の問題点を解決するものである。シェル上壁13は,シェルの上部を密閉するものであるが,開閉体12は,バケットシェル6の内部に設けられたもので,シェル内の濁水を排出する手段として水抜きをより確実に行い得るなどの利点からシェル上壁13に設けられた水抜き口11を,操作機構によって,濁水排出時には開放し,バケットシェル6が全閉ないしはその直前の状態になった時点で完全に閉止するものである。 さらに,前記イのとおり,周知例2(当審注:甲第26号証、以下同様)記載の浚渫用グラブバケットは,シェルが掴んだヘドロ等の流動物質の流出を防ぐために,相対向するシェル11,11の上部開口部12,12に上部開口カバー13,13をシェル11,11の内幅いっぱいに固着するか,又は,取り外し可能に装着することによって,上部開口部12,12を上部開口カバー13,13でふさぎ,シェル11,11を密閉するものである。 このように,引用例3のシェルカバー部材30は,バケットシェル21に取り付けられたものであり,それ自体が開閉する。周知例1のシェル上壁3は,シェルの上部が密閉されたグラブバケットにおけるシェルの一部を成すものであり,それ自体は開閉せず,開閉体12は,バケットシェル内部に設けられたもので,シェル上壁13に設けられた水抜き口11を開閉するものである。周知例2の上部開口カバー13,13は,シェルに装着されてシェル11,11の上部開口部12,12をふさぐものであり,それ自体が開閉することは開示されていない。 引用例3,周知例1及び2におけるこれらの各部材が,それぞれ構成及び機能等の技術的意義を異にすることは,明らかというべきである。したがって,これらがシェルの上部にシェルカバーを密接配置するという共通の構成を備えるとして同構成を周知技術と認定することはできない。」(判決書第51ページ第9行ないし第52ページ第11行)と判示しており、浚渫用グラブバケットにおいて、シェルの上部にシェルカバーを密接配置することが周知技術であるとはいえない。 また、上記第5 2(4)によると、甲第5号証には、浚渫用クラムシェルバケットにおいて、左右のバケット4,5の左と右の背中の面に大きな空気抜き口13と空気抜き扉14を設置することが記載され、上記第5 2(5)によると、甲第16号証には、浚渫用グラブバケットのバケットシェル6のシェル上壁に開口する水抜き口11を開閉する開閉体12であって、閉じた時にはバケットシェル6内を密閉する開閉体12を設けることが記載されている。 したがって、浚渫用グラブバケットにおいて、シェルの上部に空気抜き孔を形成することは周知(以下、「周知技術3」という。)である。 さらに、上記第5 2(3)によると、甲第4号証には、浚渫用のグラブバケット20において、開閉自在な一対のバケットシェル21の上部開口部23を閉じるための上方に開く硬質ゴム製のシェルカバー部材30であって、該シェルカバー部材30は、グラブバケット21を左右に広げたまま海水中で落下させる場合には上方に開いて海水が上部開口部23から流出し、荷を握持しながら海中でバケットグラブ21を上方に巻き上げるときには自重と水の抵抗を受けて閉じて海底土砂は外部に漏出することなくバケットシェル21内に保持されることが記載されている。 そして、甲第4号証に記載されたシェルカバー部材30は、その構造からみて、バケットシェル21が所定容量以上荷を掴んだ場合に、内圧の上昇によって上方に開くようになっていることは明らかである。 したがって、甲第4号証には、浚渫用グラブバケットにおいて、シェルの上部開口部に、シェルを左右に広げたまま水中を降下する際には上方に開いて水が上方に抜けるとともに、シェルが掴み物を所定容量以上に掴んだ場合にも内圧の上昇に伴って上方に開き、グラブバケットの水中での移動時には、外圧によって閉じられる開閉式のゴム蓋を有する蓋体を取り付けるという技術(以下、「甲4技術」という。)が記載されているといえる。 そして、判決は、「(イ) 相違点2は,シェルの構成に関するものである。しかし,引用例1(甲1)(当審注:甲第1号証、以下同様)には,専ら,バケットの吊上げ初期の揺れがほとんど発生せず,開閉ロープのロープ寿命も長くなる浚渫用グラブバケットの提供を課題として(【0005】),上部シーブ,下部シーブ,バケット開閉用の開閉ロープ及びガイドシーブの構成や位置によって上記課題を解決する発明が開示されており(【請求項1】~【請求項3】,【0006】,【0016】),シェルに関しては,特許請求の範囲及び発明の詳細な説明のいずれにも,「各シェル部1A,1Bは軸3で開閉自在に軸支され,下部フレーム2に取付けられている。」(【0008】)など,他の部材と共にグラブバケットを構成していることが記載されているにとどまり,シェル自体の具体的構成についての記載はない。引用例1においては,前記(1)ア(ア)のとおり,上記発明の一実施形態に係る浚渫用グラブバケットの側面図【図1】及び正面図【図2】に加え,従来のグラブバケットの側面図【図6】及び正面図【図7】において,シェルが図示されているにすぎない。 したがって,引用例1には,シェルの構成に関する課題は明記されていない。 (ウ) もっとも,引用例3(甲4)の考案の詳細な説明中の考案が解決しようとする問題点(前記(2)ア(イ)b),周知例1(甲16)の【0002】,【0003】(前記(3)ア(イ)),周知例2(甲26)の考案の詳細な説明中,従来技術の欠点について述べたもの(前記(3)イ(イ)a)及び引用例5(甲5)(当審注:甲第5号証、以下同様)の【0006】から【0008】(前記(4)ア(イ)c)によれば,本件特許出願の当時,浚渫用グラブバケットにおいて,シェルで掴んだ土砂や濁水等の流出を防止することは,自明の課題であったということができる。したがって,当業者は,引用発明1(当審注:甲1発明、以下同様)について,上記課題を認識したものと考えられる。 前記(3)ウのとおり,本件審決が周知技術2を認定したことは誤りであるが,当業者は,引用発明1において,上記課題を解決する手段として,周知例2に開示された「シェルが掴んだヘドロ等の流動物質の流出を防ぐために,相対向するシェル11,11の上部開口部12,12に上部開口カバー13,13をシェル11,11の内幅いっぱいに固着するか,又は,取り外し可能に装着することによって,上部開口部12,12を上部開口カバー13,13でふさぎ,シェル11,11を密閉する」構成を適用し,相違点2に係る本件発明の構成のうち,「シェルの上部にシェルカバーを密接配置する」構成については容易に想到し得たものと認められる。 しかしながら,前記(4)のとおり,シェルの上部に空気抜き孔を形成するという周知技術3は,シェルの上部が密閉されていることを前提として,そのような状態においてはシェル内部にたまった水や空気を排出する必要があり,この課題を解決するための手段である。引用例1には,シェルの上部が密閉されていることは開示されておらず,よって,当業者が引用発明1自体について上記課題を認識することは考え難い。当業者は,前記のとおり引用発明1に周知例2に開示された構成を適用して「シェルの上部にシェルカバーを密接配置する」という構成を想到し,同構成について上記課題を認識し,周知技術3の適用を考えるものということができるが,これはいわゆる「容易の容易」に当たるから,周知技術3の適用をもって相違点2に係る本件発明の構成のうち,「前記シェルカバーの一部に空気抜き孔を形成」する構成の容易想到性を認めることはできない。 (エ) また,前記(2)のとおり,引用例3には,海底から掻き取った海底土砂等をバケットシェル内に保持することを可能にし,かつ,水の抵抗を最小限にして,荷こぼれによる海水汚濁を防止し得るグラブバケットの提供を課題とし,同課題解決手段として,シェルの上部開口部の開閉手段を設けた旨が記載されていることから,当業者は,引用発明1において,シェルで掴んだ土砂や濁水等の流出を防止するという自明の課題を解決する手段として,シェルを密閉するために,「浚渫用グラブバケットにおいて,シェルの上部開口部に,シェルを左右に広げたまま水中を降下する際には上方に開いて水が上方に抜けるとともに,シェルが掴み物を所定容量以上に掴んだ場合にも内圧の上昇に伴って上方に開き,グラブバケットの水中での移動時には,外圧によって閉じられる開閉式のゴム蓋を有する蓋体を取り付けるという技術」である引用発明3(当審注:甲4技術、以下同様)の適用を容易に想到し得たものということができる。 しかし,引用発明1に引用発明3を適用しても,シェルの上部に上記のように開閉するゴム蓋を有する蓋体をシェルカバーとして取り付ける構成に至るにとどまり,相違点2に係る本件発明の構成には至らない。」(判決書第58ページ第13行ないし第60ページ第15行)と判示した。 よって、浚渫用グラブバケットに関する発明である甲1発明において、浚渫用グラブバケットに関する甲第26号証に開示された構成及び周知技術3並びに甲4技術を適用して、相違点2に係る本件特許発明の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。 ウ 相違点3について 判決は、「(ア) 本件発明の「正面視におけるシェルを軸支するタイロッドの軸心間の距離」につき,「正面視」は,シェルと下部フレームを軸支する軸の軸心方向から見たものを指す(【請求項1】)。引用発明2(当審注:甲第2号証に開示された構成、以下同様)においては,主軸3がシェル1,1を下部枠2に軸支するものであるから(【0010】),【図1】及び【図2】において,主軸3の軸心方向から見たシェル1を軸支するアーム4の軸心間の距離が,「正面視におけるシェルを軸支するタイロッドの軸心間の距離」に相当する。 また,本件発明の「側面視におけるシェルの幅内寸の距離」には,【図3】並びに【図1】及び【図2】において,主軸3の軸心方向の側方から見たシェル1の幅内寸の距離が相当する。 (イ) シェルは,主軸を回動軸として回転し,砂利や砂を掴んで取り込むのであるから,グラブバケットの開口の幅(開幅W)は,シェルとアームが回動可能に連結される2つの軸間の距離よりも広いということができる(【図2】参照)。そして,この軸間の距離は,アーム4の軸心間の距離に相当する。 そして,前記イのとおり,引用例2(当審注:甲第2号証、以下同様)には,シェルの口幅Lを開幅W以上に大きく形成する構成が開示されているから,シェルの口幅Lを,開幅Wより小さいアーム4の軸心間の距離よりも大きくした構成が開示されているものということができる。すなわち,アーム4の軸心間の距離を100とした場合,シェルの口幅Lが100よりも大きくなる構成が開示されている。 主軸3の軸心方向の側方から見たシェル1の幅内寸の距離は,シェルの厚みの分,シェルの口幅Lよりも小さくなることが明らかである。もっとも,前記イのとおり,引用例2には,砂利,砂の荷揚げや荷下ろし等を行うグラブバケットに係る発明が開示されており,その用途に鑑みると,前記のとおりアーム4の軸心間の距離を100とした場合,100よりも大きくなるシェルの口幅Lからシェルの厚みを差し引いたシェル1の幅内寸の距離が60未満になるほど,シェルの厚みが大きくなるとは考え難い。 以上によれば,引用例2には,「正面視におけるシェルを軸支するタイロッドの軸心間の距離に相当するアーム4の軸心間の距離を100とした場合,側面視におけるシェルの幅内寸の距離を60以上とする構成」(引用発明2-2(当審注:甲第2号証に開示された構成、以下同様))が開示されているものと認められる。 エ  相違点3の容易想到性について 引用発明1は,浚渫用グラブバケットであり,引用発明2-2は,砂利,砂の荷揚げや荷下ろし等を行う荷役用グラブバケットに係るものであるが,いずれのグラブバケットも対象物をすくい取って移動させるという用途において共通しており,作業の効率化のために掴み量を大きくすることは,自明の課題ということができる。 そして,引用発明2-2の構成,すなわち,正面視におけるシェルを軸支するタイロッドの軸心間の距離に相当するアーム4の軸心間の距離を100とした場合,側面視におけるシェルの幅内寸の距離を60以上とする構成は,シェルの口幅Lを開幅W以上に大きく形成する構成によるものであるところ,引用例2には,同構成によって,掴み量が大きくなる旨が明記されている(【0012】)。したがって,引用発明2-2は,掴み量の増大という効果を奏するものということができる。 以上によれば,当業者は,本件特許出願の当時,引用発明1において,作業の効率化のために掴み量を大きくするという自明の課題につき,前記のとおり対象物をすくい取って移動させるという共通の用途を有する荷役用グラブバケットにおいて掴み量の増大という効果を奏する引用発明2-2を適用し,相違点3に係る本件発明の構成とすることを,容易に想到し得たものということができる。」(判決書第63ページ第2行ないし第64ページ第20行)と判示した。 よって、甲1発明において、甲第2号証に開示された構成を適用して、相違点3に係る本件特許発明の発明特定事項とすることは、当業者であれば容易に想到し得たことである。 エ 相違点4について 上記第5 2(8)(特に図-2の右側図面を参照。)によると、甲第52号証には、「側面視においてシェルの両端部がタイロッドの外方に張り出すとともに、側面視においてシェルの両端部が下部フレームの外方に張り出し、更に、側面視においてシェルの両端部が下部フレームとシェルを軸支する軸の外方に張り出してなり」という構成が開示されている。 また、判決は、「対象物をすくい取って移動させる用途を備えたグラブバケットにおいては,掴み物の切取面積を大きくして掴み量を増大させることは,自明の課題ということができる。 そして,引用発明4(当審注:甲第52号証に開示された構成、以下同様)も,上記用途を備えたグラブバケットであり,前記イの構成においては,掴み物をすくい取るために対象物に食い込むシェルの部分が長くなるのであるから,上記構成が掴み物の切取面積を大きくして掴み量を増大させることも,自明ということができる。 以上によれば,当業者は,本件特許出願の当時において,引用発明1につき,上記自明の課題を解決する手段として,同じく対象物をすくい取って移動させる用途を備えたグラブバケットに係る引用発明4を適用し,相違点4に係る本件発明の構成を容易に想到することができたというべきである。」(判決書第68ページ第4ないし14行)と判示している。 よって、甲1発明において、甲第52号証に開示された構成を適用して、相違点4に係る本件特許発明の発明特定事項とすることは、当業者であれば容易に想到し得たことである。 オ 相違点5について 上記第5 2(5)によると、甲第16号証には、浚渫用グラブバケットをヘドロ等の沈泥の浚渫に使用することが記載され、上記第5 2(7)によると、甲第49号証には、浚渫用グラブバケットを薄層の重金属やダイオキシン類等で汚染された底泥の浚渫に使用することが記載され、上記第5 2(9)によると、甲第84号証には、浚渫用グラブバケットを、在来地盤の上に0.3mとか0.5mの厚さで堆積した汚泥を、掘り残したり、在来地盤をも掘ってしまう結果とならないように、平坦な掘削跡を得るようにして、有害物質を含む汚泥の浚渫に使用することが記載されている。 また、上記第5 2(4)によると、甲第5号証にも、浚渫用グラブバケットをヘドロの浚渫に使用することが記載されている。 したがって、浚渫用グラブバケットにおいて、「薄層ヘドロ浚渫工事に使用する」という用途は周知(以下、「周知技術4」という。)である。 なお、「薄層ヘドロ浚渫工事に使用する」は、クレーンの操作技術によって得られるグラブバケットの使い方(用法)であって、この特定により、「薄層ヘドロ」の「浚渫」に特に適していることをうかがえる構成を備えているものではないともいえる。 この点に関し、被請求人は、「本件発明1は、発明特定事項として採用した「構成要件J」の「薄層へドロ浚渫工事に使用する」は、クレーンの操作技術によって得られるグラブバケットの使い方(用法)を示すものではない。本件発明1の出願前には、切取深さが制限されていない一般的な浚渫工事に使用される丸底爪付きグラブバケットが薄層ヘドロ浚渫工事にも使用されていたのに対して(【0006】)、本件発明1は使用目的(用途)を「薄層ヘドロ浚渫工事」に特化し、シェルの切取面積を拡大することによって「薄層ヘドロ浚渫工事」の作業効率を大幅に向上させるグラブバケットであることを「構成要件J」において特定しているものである。よって、「構成要件J」の「薄層ヘドロ浚渫工事に使用する」ことは「薄層ヘドロ浚渫工事」の概念が公知であったことで評価される構成要件ではない。」(第4答弁書第29ページ下から8行ないし第30ページ第3行を参照。)旨主張するが、「薄層ヘドロ浚渫工事に使用する」という特定があるものが、「薄層ヘドロ浚渫工事に使用する」という特定がないものと比較して、構成として、具体的に何がどのように異なるのか、第4答弁書において何ら説明していないし、本件特許の明細書にも記載はない。したがって、被請求人の上記主張は採用できない。 よって、浚渫用グラブバケットに関する発明である甲1発明において、周知技術4を適用して、相違点5に係る本件特許発明の発明特定事項とすることは、当業者であれば容易に想到し得たことである。 カ 相違点6について 甲1発明において、甲第2号証に開示された構成を適用して、相違点3に係る本件特許発明の発明特定事項とすれば、シェルの幅内寸の距離は60以上となり、シェルの幅内寸の距離が50である従来のグラブバケットよりも幅広となることから、相違点6に係る本件特許発明の発明特定事項は、甲1発明において、甲第2号証に開示された構成を適用することで、当業者が容易に想到し得たことである。 キ 相違点7について 甲第1号証の図1は、浚渫用グラブバケットの正面図であり、図2は、浚渫用グラブバケットの側面図であるから、甲1発明においても、「正面視」は、「シェル部1A、1B」と「下部フレーム2」を軸支する軸を軸心方向から視たものであり、「側面視」は、「シェル部1A、1B」と「下部フレーム2」を軸支する軸を軸心方向の側方から視たものである。 したがって、相違点7は、実質的な相違点とはいえない。 (4)むすび 以上のとおり、相違点1及び相違点3ないし6に係る発明特定事項については当業者が容易に想到し得たものといえ、相違点7に係る発明特定事項については実質的な相違点とはいえないが、相違点2に係る発明特定事項は当業者が容易に想到することができたとはいえないのであるから、本件特許発明は、甲1発明、甲4技術、甲第2号証に開示された構成、甲第26号証に開示された構成、甲第52号証に開示された構成並びに周知技術1、3及び4に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできないので、無効理由1は理由がない。 5 無効理由2について (1)甲5発明 甲第5号証には、上記第5 2(4)に記載したとおりの発明が記載されている。 (2)対比 本件特許発明と甲5発明とを対比する。 甲5発明における「吊りワイヤ10」は、その機能、構造又は技術的意義からみて、本件特許発明における「吊支ロープ」に相当し、以下、同様に、「機体1」は「上部フレーム」に、「左右バケット4,5」は「シェル」に、「滑車機構9」は「下部フレーム」に、「左右アーム2,3」は「タイロッド」に、「開閉用ワイヤ11」は「開閉ロープ」に、「クラムシェルバケット」は「グラブバケット」に、それぞれ、相当する。 また、甲5発明における「バケット4,5の上部にバケット4,5の上部の面を構成するとともに、バケット4,5を箱形に構成する部材を配置」と本件特許発明における「シェルの上部にシェルカバーを密接配置するとともに、前記シェルカバーの一部に空気抜き孔を形成し、該空気抜き孔に、シェルを左右に広げたまま水中を降下する際には上方に開いて水が上方に抜けるとともに、シェルが掴み物を所定容量以上に掴んだ場合にも内圧の上昇に伴って上方に開き、グラブバケットの水中での移動時には、外圧によって閉じられる開閉式のゴム蓋を有する蓋体を取り付け」は、「シェルの上部にシェルの上部の面を構成する部材を配置する」という限りにおいて、一致する。 また、甲5発明における「平底構成」及び「平底浚渫用クラムシェルバケット」と本件特許発明における「平底幅広構成」及び「平底幅広浚渫用グラブバケット」は、それぞれ、「平底構成」及び「平底浚渫用グラブバケット」という限りにおいて、一致する。 してみると、本件特許発明と甲5発明とは、 「吊支ロープを連結する上部フレームに上シーブを軸支し、側面視において両側2ケ所で左右一対のシェルを回動自在に軸支する下部フレームに下シーブを軸支するとともに、左右2本のタイロッドの下端部をそれぞれシェルに、上端部をそれぞれ上部フレームに回動自在に軸支し、上シーブと下シーブとの間に開閉ロープを掛け回してシェルを開閉可能にしたグラブバケットにおいて、 シェルを爪無しの平底構成とし、シェルの上部にシェルの上部の面を構成する部材を配置するヘドロ浚渫工事に使用する平底浚渫用グラブバケット。」の点で一致し、次の6点で相違又は一応相違する。 ア 相違点8 シェルの上部にシェルの上部の面を構成する部材を配置する点に関し、本件特許発明においては、「シェルの上部にシェルカバーを密接配置するとともに、前記シェルカバーの一部に空気抜き孔を形成し、該空気抜き孔に、シェルを左右に広げたまま水中を降下する際には上方に開いて水が上方に抜けるとともに、シェルが掴み物を所定容量以上に掴んだ場合にも内圧の上昇に伴って上方に開き、グラブバケットの水中での移動時には、外圧によって閉じられる開閉式のゴム蓋を有する蓋体を取り付け」るのに対して、甲5発明においては、「バケット4,5の上部にバケット4,5の上部の面を構成するとともに、バケット4,5を箱形に構成する部材を配置する」点(以下、「相違点8」という。)。 なお、請求人は、本件特許発明における「シェルの上部にシェルカバーを密接配置するとともに、前記シェルカバーの一部に空気抜き孔を形成し、該空気抜き孔に、シェルを左右に広げたまま水中を降下する際には上方に開いて水が上方に抜けるとともに、シェルが掴み物を所定容量以上に掴んだ場合にも内圧の上昇に伴って上方に開き、グラブバケットの水中での移動時には、外圧によって閉じられる開閉式のゴム蓋を有する蓋体を取り付け」という発明特定事項を、「シェルの上部にシェルカバーを密接配置する」、「前記シェルカバーの一部に空気抜き孔を形成し」及び「該空気抜き孔に、シェルを左右に広げたまま水中を降下する際には上方に開いて水が上方に抜けるとともに、シェルが掴み物を所定容量以上に掴んだ場合にも内圧の上昇に伴って上方に開き、グラブバケットの水中での移動時には、外圧によって閉じられる開閉式のゴム蓋を有する蓋体を取り付け」の3つに分けて、2番目と3番目を相違点として検討しているが、いずれも、「シェルカバー」に関する発明特定事項であり、密接な関係があることから、このように相違点を認定した。 イ 相違点9 本件特許発明においては、「正面視におけるシェルを軸支するタイロッドの軸心間の距離を100とした場合、側面視におけるシェルの幅内寸の距離を60以上とし」ているのに対して、甲5発明においては、そのように構成されているか否か不明である点(以下、「相違点9」という。)。 ウ 相違点10 本件特許発明においては、「側面視においてシェルの両端部がタイロッドの外方に張り出すとともに、側面視においてシェルの両端部が下部フレームの外方に張り出し、更に、側面視においてシェルの両端部が下部フレームとシェルを軸支する軸の外方に張り出してなり」であるのに対して、甲5発明においては、側面視において左右バケット4,5の両端部が左右アーム2,3(本件発明における「タイロッド」に相当する。)の外方に張り出しているものの、側面視において左右バケット4,5の両端部が滑車機構9(本件特許発明における「下部フレーム」に相当する。)の外方に張り出しているとともに、更に側面視において左右バケット4,5の両端部が滑車機構9と左右バケット4,5を軸支する軸の外方に張り出しているか否か不明である点(以下、「相違点10」という。)。 エ 相違点11 本件特許発明においては、「薄層ヘドロ浚渫工事に使用する」ものであるのに対し、甲5発明においては、「ヘドロ浚渫工事に使用する」ものであるものの、「薄層ヘドロ浚渫工事に使用する」ものか不明である点(以下、「相違点11」という。)。 オ 相違点12 「平底構成」及び「平底浚渫用グラブバケット」に関し、本件特許発明においては、それぞれ、「平底幅広構成」及び「平底幅広浚渫用グラブバケット」であるのに対して、甲5発明においては、それぞれ、「平底構成」及び「平底浚渫用クラムシェルバケット」である点(以下、「相違点12」という。)。 カ 相違点13 本件特許発明においては、「(なお、前記正面視はシェルと下部フレームを軸支する軸の軸心方向から視たものであり、前記側面視はシェルと下部フレームを軸支する軸を軸心方向の側方から視たものとする)」とされているのに対し、甲5発明においては、そのようにされているか不明な点(以下、「相違点13」という。)。 (3)相違点についての判断 ア 相違点8について 判決は、「(イ) 前記2(4)アのとおり,引用発明5(当審注:甲5発明、以下同様)に関し,引用例5(当審注:甲第5号証、以下同様)には,シェル上部が密閉されている浚渫用グラブバケットが開示されている。したがって,引用発明5において,「浚渫用グラブバケットにおいて,シェルの上部開口部に,シェルを左右に広げたまま水中を降下する際には上方に開いて水が上方に抜けるとともに,シェルが掴み物を所定容量以上に掴んだ場合にも内圧の上昇に伴って上方に開き,グラブバケットの水中での移動時には,外圧によって閉じられる開閉式のゴム蓋を有する蓋体を取り付けるという技術」に係る引用発明3を適用すれば,相違点8に係る本件発明の構成に至るものということができる。 (ウ) 前記2(4)アによれば,引用例5には,○1(当審注:1のアラビア数字を○で囲んだ文字、以下、1、2等のアラビア数字を○で囲んだ文字を、○1、○2のように記載する。)バケット(シェル)が掴んだ土砂等の流出防止及びバケット内にたまった空気の排出を課題とし,○2同課題を解決するための手段として,左右バケットの開口面以外の部分を密閉構造とし,左右バケットの開口面の合わせ部にシール用パッキンを取り付けること,左右バケットの支軸部近傍に空気抜き口とそれを自動開閉する空気抜き扉を設けることを特徴とする構成を採用し,○3同構成により,上記課題を解決することができる旨が記載されている。 他方,前記2(2)アによれば,引用例3には,○1海底から掻き取った海底土砂等をバケットシェル内に保持することを可能にし,かつ,水の抵抗を最小限にして,荷こぼれによる海水汚濁を防止し得るグラブバケットの提供を課題とし,○2同課題を解決するための手段として,バケットシェルの上部に開口部を有するグラブバケットにおいて,バケットシェルに,これを上方に吊り上げるときに上部開口部を閉じるための開閉手段を設ける構成を採用し,○3同構成により,上記課題を解決することができる旨が記載されている。 このように,引用例5及び3は,いずれもシェルが掴んだ土砂等の流出防止を課題の1つとしている。 しかし,前記のとおり,引用例5には,上記流出防止及びバケット内にたまった空気の排出という課題を,左右バケットの開口面以外の部分を密閉構造とし,空気気抜き口及び空気抜き扉を設けるなどの前記構成により解決することができる旨記載されており,同構成自体に課題があることは,記載されていない。引用発明3の構成が,引用例5に記載された構成に比して,共通する課題である上記流出防止についてより優れた効果を奏するものとも認められない。また,引用例5のもう1つの課題であるバケット内にたまった空気の排出という課題は,引用発明3の構成によっても解決し得るものであるが,引用例5に記載された構成に比して,より優れた効果を奏するものとも認められない。 また,引用例3には,水の抵抗を最小限にすることを課題とする旨が記載されている。加えて,前記2(2)のとおり,引用例3には,シェルが掴み物を所定容量以上に掴んだ場合のことについての記載はないものの,シェルカバー部材30は,その構造にも鑑みれば,上記の場合においてバケットシェル21の内圧の上昇を受けて上方に開くものということができる。 しかし,引用例5において,水の抵抗やシェルが掴み物を所定容量以上に掴んだ場合に関する記載はなく,本件証拠上,それらがグラブバケットの自明の課題であるとも認めるに足りない。 以上によれば,当業者において,引用発明5に引用発明3を適用する動機付けが存在することは,認めるに足りないというべきである。 (エ) 前記2(3)ウのとおり,本件審決が引用例3,周知例1及び2から周知技術2を認定したのは誤りであるところ,周知例1記載の浚渫用グラブバケットは,シェルの上部が密閉されたグラブバケットにおいて,シェル内部の濁水を排出する手段につき,従来技術の問題点を解決するものであるが(前記2(3)ア),同グラブバケットの構造上,シェルが掴み物を所定容量以上に掴んだ場合に,水抜き口11を開閉する開閉体12が上方に開くことは考え難く,したがって,引用発明5に周知例1の構成を適用しても,相違点8に係る本件発明の構成に至らない。また,周知例2には,空気抜き孔が開示されておらず(前記2(3)イ),引用発明5に周知例2の構成を適用しても,相違点8に係る本件発明の構成に至らない。 前記2(4)のとおり,周知技術3は,周知例1及び引用例5から認定したものであり,引用発明5に周知例1の構成を適用しても相違点8に係る本件発明の構成に至らないのは,上記のとおりである。」(判決書第72ページ第8行ないし第74ページ第10行)と判示した。 したがって、浚渫用グラブバケットに関する発明である甲5発明において、浚渫用グラブバケットに関する甲第26号証に開示された構成及び周知技術3並びに甲4技術を適用して、相違点8に係る本件特許発明の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。 イ 相違点9について 上記第5 3(3)ウで示したように、甲第2号証には、正面視におけるシェルを軸支するタイロッドの軸心間の距離を100とした場合、側面視におけるシェルの幅内寸の距離を60以上とする構成が開示されている。 そして、上記第5 3(3)ウと同様の理由により、甲5発明において、甲第2号証に開示された構成を適用して、相違点9に係る本件特許発明の発明特定事項とすることは、当業者であれば容易に想到し得たことである。 ウ 相違点10について 上記第5 3(3)エで示したように、甲第52号証には、「側面視においてシェルの両端部がタイロッドの外方に張り出すとともに、側面視においてシェルの両端部が下部フレームの外方に張り出し、更に、側面視においてシェルの両端部が下部フレームとシェルを軸支する軸の外方に張り出してなり」という構成が開示されている。 そして、甲5発明において、甲第52号証に開示された構成を適用して、相違点10に係る本件特許発明の発明特定事項とすることは、当業者であれば容易に想到し得たことである。 エ 相違点11について 上記第5 3(3)オで、周知技術4として示したように、浚渫用グラブバケットにおいて、「薄層ヘドロ浚渫工事に使用する」という用途は、周知である。 したがって、甲5発明において、周知技術4を適用して、相違点11に係る本件特許発明の発明特定事項とすることは、当業者であれば容易に想到し得たことである。 オ 相違点12について 甲5発明において、甲第2号証に開示された構成を適用して、相違点9に係る本件特許発明の発明特定事項とすれば、シェルの幅内寸の距離は60以上となり、シェルの幅内寸の距離が50である従来のグラブバケットよりも幅広となることから、相違点12に係る本件特許発明の発明特定事項は、甲5発明において、甲第2号証に開示された構成を適用することで、当業者が容易に想到し得たことである。 カ 相違点13について 甲第5号証の図1及び3は、浚渫用グラブバケットの正面図であり、図2及び4は、浚渫用グラブバケットの側面図であるから、甲5発明においても、「正面視」は、「左右バケット4,5」と「滑車機構9」を軸支する軸を軸心方向から視たものであり、「側面視」は、「左右バケット4,5」と「滑車機構9」を軸支する軸を軸心方向の側方から視たものである。 したがって、相違点13は、実質的な相違点とはいえない。 (4)むすび 以上のとおり、相違点9ないし12に係る発明特定事項については当業者が容易に想到し得たものといえ、相違点13に係る発明特定事項については実質的な相違点とはいえないが、相違点8に係る発明特定事項は当業者が容易に想到することができたとはいえないのであるから、本件特許発明は、甲5発明、甲4技術、甲第2号証に開示された構成、甲第26号証に開示された構成、甲第52号証に開示された構成並びに周知技術3及び4に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできないので、無効理由2は理由がない。 第6 むすび 以上のとおり、請求人の主張する理由及び証拠方法によっては、本件特許発明についての特許を無効とすることはできない。 審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により、請求人が負担すべきものとする。 よって、結論のとおり審決する。

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2010-800231

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