特許異議申立
2025-700717
枕および枕のコアユニット
- 審判番号
- 2025-700717
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2024-207068
- 登録番号
- 7660954
- 請求日
- 2025年07月10日
- 審決日
- 2026年01月05日
- 公報発行日
- 2026年02月27日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】株式会社Morght
- 【権利者代理人】橘 和之
- 【権利者代理人】古野 裕介
- 【異議申立人】竹内 紀子
- 審判長/審判官
- 審判長 柿崎 拓
- 審判官 川口 真一
- 審判官 長馬 望
- 分類
- P1651.113-Y (A47G) / P1651.121-Y (A47G)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第29条第1項第3号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7660954号発明「枕および枕のコアユニット」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7660954号の請求項1~9に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7660954号の請求項1~9に係る特許についての出願は、令和6年11月28日の特許出願であって、令和7年4月4日にその特許権の設定登録がされ、令和7年4月14日に特許掲載公報が発行された。その後、その特許に対し、令和7年7月10日に特許異議申立人 竹内 紀子は、特許異議の申立てを行い、さらに、令和7年8月8日付けの手続補正指令に対し、令和7年8月18日差出の手続補正書により、特許異議申立書の補正を行った。
第2 本件発明
特許第7660954号の請求項1~9の特許に係る発明(以下、「本件発明1」~「本件発明9」という。)は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1~9に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「 【請求項1】
枕本体の高さ方向に起立し、その頂面が枕本体の表面に沿った状態で格子状に配置された複数の柱状部材を含むコアユニットを備え、
前記柱状部材は、熱可塑性樹脂からなる多数の縮れた糸状繊維が絡まり合った状態で、前記糸状繊維の接触部分が溶着されて柱状の立体的形状が構成され、全体として弾性を有し、他の部材によらずに単独で立体的形状が維持される三次元網状構造体により構成され、
前記柱状部材のそれぞれは、前記枕本体内で自立的に前記高さ方向に起立する
ことを特徴とする枕。
【請求項2】
前記コアユニットは、前記枕本体の裏面に沿って延在する板状のベース部材を含み、
前記ベース部材は、前記三次元網状構造体により構成され、
前記柱状部材のそれぞれは、格子状に並んだ状態で、当該部材の底面が前記ベース部材の表面に間接的または直接的に連結される
ことを特徴とする請求項1に記載の枕。
【請求項3】
前記柱状部材は、内部に当該部材の形状に応じた収容スペースが形成され、通気性のある生地により構成された柱状部材収容部に収容され、
前記柱状部材収容部のそれぞれは、前記収容スペースに前記柱状部材が収容された状態で、当該収容部の底面が前記ベース部材の表面に連結される
ことを特徴とする請求項2に記載の枕。
【請求項4】
前記柱状部材収容部のそれぞれは、複数の隣り合う当該収容部が連結された状態で格子状に並んで配置される
ことを特徴とする請求項3に記載の枕。
【請求項5】
前記柱状部材は、当該部材を収容する収容部に収容されることなく、前記柱状部材の底面が直接、前記ベース部材の表面に連結される
ことを特徴とする請求項2に記載の枕。
【請求項6】
前記コアユニットの上側または下側の少なくとも一方の側に配置され、前記枕本体の幅方向に延在し、複数のパイプが収容されたパイプ収容部を備える
ことを特徴とする請求項1に記載の枕。
【請求項7】
前記パイプ収容部は、前記枕本体の幅方向の中央部から外側に向かうほど断面積が大きくなり、断面上に存在するパイプの量が多くなる
ことを特徴とする請求項6に記載の枕。
【請求項8】
前記柱状部材は、円柱状の円柱部材であり、
前記コアユニットでは、隣り合う部材が近接した状態で第1の方向に複数の前記円柱部材が並んで配置されると共に、隣り合う部材が近接した状態で前記第1の方向と交わる第2の方向に複数の前記円柱部材が並んで配置される
ことを特徴とする請求項1から7の何れか1項に記載の枕。
【請求項9】
枕本体の内部に存在する枕のコアユニットであって、
枕本体の高さ方向に起立し、その頂面が枕本体の表面に沿った状態で格子状に配置された複数の柱状部材を含み、
前記柱状部材は、熱可塑性樹脂からなる多数の縮れた糸状繊維が絡まり合った状態で、前記糸状繊維の接触部分が溶着されて柱状の立体的形状が構成され、全体として弾性を有し、他の部材によらずに単独で立体的形状が維持される三次元網状構造体により構成され、
前記柱状部材のそれぞれは、前記枕本体内で自立的に前記高さ方向に起立する
ことを特徴とする枕のコアユニット。」
第3 申立理由の概要
特許異議申立人 竹内 紀子が特許異議申立書で主張する特許異議申立理由の要旨は、次のとおりである。また、特許異議申立人は、特許異議申立書とともに、甲第1号証~甲第9号証を提出した(以下、「甲第1号証」等を「甲1」等という。)。
1 申立理由(特許法第29条第1項第3号:新規性)
本件発明1、9は、甲3に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当する発明である。
2 申立理由(特許法第29条第2項:進歩性)
本件発明1、9は、甲3に記載された発明から、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、本件特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
本件発明1~4、9は、甲1に記載された発明及び甲2に記載された事項から、本件発明5は、甲1に記載された発明、甲2に記載された事項及び甲5に記載された事項から、本件発明6は、甲1に記載された発明、甲2に記載された事項及び甲6に記載された事項から、本件発明7は、甲1に記載された発明、甲2に記載された事項、甲6に記載された事項及び甲7に記載された事項から、本件発明8は、甲1に記載された発明、甲2に記載された事項、甲8に記載された事項及び甲9に記載された事項から、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
<証拠一覧>
甲1:特開2017-104274号公報
甲2:国際公開第2023/008110号
甲3:特開2024-10303号公報
甲4:特開2019-180660号公報
甲5:国際公開第2015/125497号
甲6:特開2018-11722号公報
甲7:登録実用新案第3206174号公報
甲8:登録実用新案第3215570号公報
甲9:特開2010-162299号公報
第4 文献の記載
1 甲1の記載及び甲1発明
甲1には、次の事項が記載されている。
・「【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のたまご形の凸部を並設したことを特徴とする枕。
【請求項2】
前記複数のたまご形の凸部を形成したたまご形クッション材と、高さ調整をするための高さ調整用クッション材を折り畳み可能に連設してあることを特徴とする請求項1記載の枕。
【請求項3】
複数の袋部を連設した袋体を有し、1つの袋部に前記たまご形クッション材を収容し、他の袋部に前記高さ調整用クッション材を収容したことを特徴とする請求項1又は2記載の枕。」
・「【0012】
本発明に係る枕の特徴は、図1(b)に示すように頭部を支える、たまご形クッション材12を有する点にある。
その拡大図を図5に示す。
たまご形クッション材12はベース部12aの上に、たまご形をした凸部12bを縦方向と横方向とに碁盤目状に並設してある。
ベース部12aはスポンジ等でもよく、本実施例では布袋に綿を詰めてある。
凸部12bは、たまご形に縫合した小袋に羽毛を詰め、ベース部12a及び相互の凸部12bを図5(b)に示すように12c及び12dの部分で縫い付けてある。」
「図1
[図:0001432087000001.jpg]
」
「図4
[図:0001432087000002.jpg]
」
「図5
[図:0001432087000003.jpg]
」
・図1より、たまご形をした凸部12bは、枕10の高さ方向に起立し、その頂面が枕10の表面に沿った状態であるといえる。
・図1及びたまご形クッション材12は、「頭部を支える」(【0012】)ものであることより、たまご形をした凸部12bのそれぞれは、枕10内で自立的に高さ方向に起立しているといえる。
すると、甲1には、次の発明(以下「甲1発明1」、「甲1発明2」という。)が記載されていると認められる。
(甲1発明1)
「 枕10の高さ方向に起立し、その頂面が枕10の表面に沿った状態で縦方向と横方向とに碁盤目状に並設してある複数のたまご形をした凸部12bを含むたまご型クッション材12を備え、
前記たまご形をした凸部12bのそれぞれは、前記枕10内で自立的に前記高さ方向に起立する
枕10。」
(甲1発明2)
「 枕10の内部に存在する枕10のたまご型クッション材12であって、
枕10の高さ方向に起立し、その頂面が枕10の表面に沿った状態で縦方向と横方向とに碁盤目状に並設してある複数のたまご形をした凸部12bを含み、
前記たまご形をした凸部12bのそれぞれは、前記枕10内で自立的に前記高さ方向に起立する
枕10のたまご型クッション材12。」
2 甲3の記載及び甲3発明
甲3には、次の事項が記載されている。
・「【0021】
図1、図4に示す通り、本実施形態に係る枕1は、複数の三次元網状構造体51が積層されて構成される芯材5と複数の芯材5を覆うカバー10を有している。カバー10は、平面視において第1方向D1に延びる一対の長辺11、12と、前記第1方向D1に交差する第2方向D2に延びる一対の短辺13、14とを有する略長方形である。カバー10は、通気性が良好で、耐久性に優れた生地、例えば、三次元構造メッシュ、いわゆるダブルラッセル構造の生地等から形成されることが好ましい。一対の長辺のうち、一方の長辺12は中央において内方に若干湾曲している。
【0022】
枕1は、例えば、平面視において長辺11、12を50~70cm、短辺13、14を30~50cmとする略長方形である。ただし、形状は限定されず、例えば、長軸を50~80cm、短軸を30~60cmとする楕円形状でもよい。
【0023】
枕1は、使用者の後頭部が載置される中央部2と、横方向(D1およびD2方向)において該中央部2を囲う外周部3とを備え、外周部3におけるカバー10の内部が仕切り部材4により複数(ここでは4つ)の内部空間に仕切られている。仕切り部材4は、その上辺がカバー10の上面生地に縫合され、下辺がカバー10の下面生地に縫合され、枕1の厚み方向に延びる生地である。また、中央部2の内部空間と、外周部3の内部空間は縫合部21により仕切られている。
【0024】
図1および図4に示される通り、外周部3におけるカバー10内の内部空間は、カバー10に設けられた仕切り部材4によって、第1領域31、第2領域32、第3領域33、第4領域34に仕切られ、それぞれの領域に芯材5が収容される。仕切り部材4は、中央部2の外周に隣接し、一方の短辺13から他方の短辺14へ、長辺11と略平行に略直線状に延びる仕切り部材41と、中央部2の外周から仕切り部材41の反対方向に延び、長辺12の両端部に向けて延びる、仕切り部材42、43を含む。」
・「【0032】
三次元網状構造体51とは、線条の線径(直径)が0.3mm~1.5mmの熱可塑性樹脂からなる連続線条が不規則に部分的に溶着することによりループを形成した構造体である。図5、6で示されるように、三次元網状構造体51は、厚みが1.5~3cmの表面が平滑でかつ平坦なシート形状である。三次元網状構造体51の硬さは嵩密度(見掛け密度)、線径、合成樹脂の材質等を変更することで変更可能となる。嵩密度は、必要に応じて設計されるものであるが、好ましくは0.025g/cm3~0.2g/cm3である。嵩密度の制御は、三次元網状構造体51の製造時の押出機の樹脂押出速度や、引き取り機の回転数の制御によって実現できる。
【0033】
三次元網状構造体51は、収容されるべき領域に適合する形状に形成される。従って、本実施形態では、第1領域31の内部に収容される複数の三次元網状構造体51は、平面視略長方形、第2領域32の内部に収容される複数の三次元網状構造体51は、平面視で略山形、第3領域33および第4領域34の内部に収容される複数の三次元網状構造体51は、略台形の形状である。」
「【0038】
本発明に係る枕1は、カバー10と、収容できる最大の枚数の三次元網状構造体51をセットにした状態で販売され、使用者が、個人の体型やその日の体調に応じて、収容する三次元網状構造体の枚数や硬さなどを選択し、部分的に調整して使用できる。本発明に係る枕は、高さや硬さを部分的に、また容易に調整できるため、仰向け、横向き状態のいずれにおいても、使用者の体型、好みに容易に適応することができ、個人差に対応した寝心地を得ることができる。」
「図1
[図:0001432087000004.jpg]
」
「図4
[図:0001432087000005.jpg]
」
「図5
[図:0001432087000006.jpg]
」
・【0024】、【0033】及び【0038】の記載より、三次元網状構造体51は、仕切り部材4により仕切られたカバー10の内部空間に収容され、使用者に枕として使用されるものであるから、図1、4、5の記載もあわせてみると、複数の略長方形、略山形、略台形の形状である三次元網状構造体51が積層されて構成される芯材5が、その頂面が枕本体の表面に沿った状態で配置されており、枕1は、略長方形、略山形、略台形の形状である三次元網状構造体51が積層されて構成される芯材5を含む複数の芯材5を備えているといえる。
・同様に、略長方形、略山形、略台形の形状である三次元網状構造体51が積層されて構成される芯材5は、他の部材によらずに単独で立体的形状が維持されているといえる。
すると、甲3には、次の発明(以下「甲3発明1」、「甲3発明2」という。)が記載されていると認められる。
(甲3発明1)
「 枕1の仕切り部材4により仕切られたカバー10の内部空間に収容され、その頂面が枕本体の表面に沿った状態で配置された複数の略長方形、略山形、略台形の形状である三次元網状構造体51が積層されて構成される芯材5を含む複数の芯材5を備え、
前記略長方形、略山形、略台形の形状である三次元網状構造体51が積層されて構成される芯材5は、線条の線径(直径)が0.3mm~1.5mmの熱可塑性樹脂からなる連続線条が不規則に部分的に溶着することによりループを形成した略長方形、略山形、略台形の形状である構造体であり、他の部材によらずに単独で立体的形状が維持される三次元網状構造体51により構成され、
前記略長方形、略山形、略台形の形状である三次元網状構造体51が積層されて構成される芯材5のそれぞれは、前記枕1の仕切り部材4により仕切られたカバー10の内部空間に収容された
枕1。」
(甲3発明2)
「 枕1の内部に存在する枕1の複数の芯材5であって、
枕1の仕切り部材4により仕切られたカバー10の内部空間に収容され、その頂面が枕本体の表面に沿った状態で配置された複数の略長方形、略山形、略台形の形状である三次元網状構造体51が積層されて構成される芯材5を含み、
前記略長方形、略山形、略台形の形状である三次元網状構造体51が積層されて構成される芯材5は、線条の線径(直径)が0.3mm~1.5mmの熱可塑性樹脂からなる連続線条が不規則に部分的に溶着することによりループを形成した略長方形、略山形、略台形の形状である構造体であり、他の部材によらずに単独で立体的形状が維持される三次元網状構造体51により構成され、
前記略長方形、略山形、略台形の形状である三次元網状構造体51が積層されて構成される芯材5のそれぞれは、前記枕1の仕切り部材4により仕切られたカバー10の内部空間に収容された
枕1の複数の芯材5。」
第5 当審の判断
1 本件発明1について
(1)甲1を主引例とした場合
本件発明1と甲1発明1とを、その有する機能に照らして対比する。
・甲1発明1の「枕10」は、本件発明1の「枕本体」及び「枕」のそれぞれに相当する。
・甲1発明1の「縦方向と横方向とに碁盤目状に並設してある」及び「たまご型クッション材12」は、それぞれ本件発明1の「格子状に配置された」及び「コアユニット」に相当する。
・甲1発明1の「たまご形をした凸部12b」と、本件発明1の「柱状部材」は、「支持部材」という点で共通する。
そうすると、本件発明1と甲1発明1とは、次の点で一致し、次の点で相違する。
<一致点>
「 枕本体の高さ方向に起立し、その頂面が枕本体の表面に沿った状態で格子状に配置された複数の支持部材を含むコアユニットを備え、
前記支持部材のそれぞれは、前記枕本体内で自立的に前記高さ方向に起立する
枕。」
<相違点1-1>
格子状に配置された支持部材の形状に関し、本件発明1は、「柱状部材」であるのに対し、甲1発明1は、たまご形をした凸部12bである点。
<相違点2-1>
格子状に配置された支持部材の構造に関し、本件発明1は、「柱状部材」が、「熱可塑性樹脂からなる多数の縮れた糸状繊維が絡まり合った状態で、前記糸状繊維の接触部分が溶着されて柱状の立体的形状が構成され、全体として弾性を有し、他の部材によらずに単独で立体的形状が維持される三次元網状構造体により構成され」ているのに対し、甲1発明1は、そのような構成を有していない点。
以下、<相違点>について検討する。相違点1-1について検討する。
甲1発明1は、縦方向と横方向とに碁盤目状に並設してある(格子状に配置された)複数のたまご形をした凸部12bを備えているが、たまご形をした凸部12bは柱状部材であるとは認められない。また、甲1には、他に格子状に配置された柱状部材を設けることを示唆する記載もない。さらに、甲1発明1は、複数のたまご形をした凸部を格子状に配置することで、「仰向け寝時でも横向け寝時でも頭部の支えが安定し、吸湿性と発散性にも良好であり、寝心地がよい」(甲1の段落【0009】参照。)という効果を奏する発明であるので、たまご形をした凸部の形状を柱状に変更する動機はない。
また、甲2~9においても、枕本体内に格子状に配置された支持部材を柱状部材とすることについて、記載も示唆もされていない。したがって、甲1発明1において、甲2に記載された事項又は甲3~9に記載された事項を適用したとしても相違点1-1に係る本件発明1の発明特定事項を得ることは容易ではない。
そして、本件発明1は、上記相違点1-1に係る構成を有することにより、「使用者が枕に頭部を載せたときに、互いに独立した柱状部材が、個々の円柱部材に加わる外力の状況に応じて、個々の円柱部材の頂面が頭部に対向するように弾性変形しつつ反発し、頭部を支持する。このため、頭部による圧力(体圧)が、複数の柱状部材のそれぞれの頂面に対して適度に分散されつつ、頭部が、複数の頂面によって優しく包み込まれた状態で安定的に支持された状態となり、使用者の快適性が向上する。更に使用者が枕上で頭部を移動させたときは、その移動に応じて個々の円柱部材が、移動に伴う外力に応じて、個々の円柱部材の頂面が頭部に対向するように弾性変形しつつ反発し、頭部を支持する。これにより、頭部の移動中および移動後にわたって、頭部が複数の柱状部材のそれぞれの頂面によって支持され寝返りの動きをサポートすることで、使用者の快適性が向上する。」(段落【0007】参照)という格別顕著な効果を奏するものであるから、当該構成を当業者が適宜なし得た設計的事項とすることもできない。
以上のとおりであるから、甲1発明1において、上記相違点1-1に係る本件発明1の構成とすることは、当業者であっても容易に想到し得たことではない。
してみると、本件発明1は、相違点2-1について検討するまでもなく、甲1発明1、甲2~9に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(2)甲3を主引例とした場合
本件発明1と甲3発明1とを、その有する機能に照らして対比する。
・甲3発明1の「枕1」は、本件発明1の「枕本体」及び「枕」のそれぞれに相当する。
・甲3発明1の芯材5が「枕1の仕切り部材4により仕切られたカバー10の内部空間に収容され」た態様は、甲3の図1、4、5の記載を参照すると、芯材5は、収容されたカバー10の内部空間において、その底面が収容空間の下面に配置され、該下面から収容空間の上面に向けた高さ方向に延在しているので、本件発明1の柱状部材が「枕本体の高さ方向に起立」する態様に相当する。また、同様に、甲3発明1の芯材5が「前記枕1の仕切り部材4により仕切られたカバー10の内部空間に収容された」態様は、本件発明1の柱状部材が「前記枕本体内で自立的に前記高さ方向に起立する」態様に相当する。
・甲3発明1の「三次元網状構造体51」及び「複数の芯材5」は、それぞれ本件発明1の「三次元網状構造体」及び「コアユニット」に相当する。
・三次元網状構造体において、甲3発明1の「線条の線径(直径)が0.3mm~1.5mmの熱可塑性樹脂からなる連続線条が不規則に部分的に溶着することによりループを形成した略長方形、略山形、略台形の形状である構造体であ」る点と、本件発明1の「熱可塑性樹脂からなる多数の縮れた糸状繊維が絡まり合った状態で、前記糸状繊維の接触部分が溶着されて柱状の立体的形状が構成され、全体として弾性を有」する点は、「熱可塑性樹脂からなる多数の縮れた糸状繊維が絡まり合った状態で、前記糸状繊維の接触部分が溶着されて立体的形状が構成され、全体として弾性を有」する点で共通する。
・甲3発明1の「複数の略長方形、略山形、略台形の形状である三次元網状構造体51が積層されて構成される芯材5」と、本件発明1の「複数の柱状部材」は、「複数の部材」という点で共通する。
そうすると、本件発明1と甲3発明1とは、次の点で一致し、次の点で相違する。
<一致点>
「 枕本体の高さ方向に起立し、その頂面が枕本体の表面に沿った状態で配置された複数の部材を含むコアユニットを備え、
前記部材は、熱可塑性樹脂からなる多数の縮れた糸状繊維が絡まり合った状態で、前記糸状繊維の接触部分が溶着されて立体的形状が構成され、全体として弾性を有し、他の部材によらずに単独で立体的形状が維持される三次元網状構造体により構成され、
前記部材のそれぞれは、前記枕本体内で自立的に前記高さ方向に起立する
枕。」
<相違点1-3>
「三次元網状構造体により構成され」た部材の配置に関し、本件発明1では、「格子状に配置されて」いるのに対し、甲3発明1では、そのような構成を有していない点。
<相違点2-3>
「三次元網状構造体により構成され」た部材の形状に関し、本件発明1は、「柱状部材」であり、溶着されて「柱状」の立体的形状が構成されているのに対し、甲3発明1は、柱状部材であるかや、溶着されて柱状の立体的形状が構成されているかが不明である点。
以下、<相違点>について検討する。相違点1-3について検討する。
甲3発明1は、複数の略長方形、略山形、略台形の形状である三次元網状構造体51が積層されて構成される芯材5を枕の内部空間に収容したものであるが、三次元網状構造体51が積層されて構成される芯材5が格子状に配置されているとは認められない。また、甲3には、他に三次元網状構造体51が積層されて構成される芯材5を格子状に配置することを示唆する記載もない。
してみると、上記相違点1-3は、実質的な相違点であって、本件発明1は、甲3発明1であるといえない。
また、甲1、2、4~9においても、枕本体内に三次元網状構造体により構成された部材を格子状に配置することについて、記載も示唆もされていない。したがって、甲3発明1において、甲1、2、4~9に記載された事項を適用したとしても相違点1-3に係る本件発明1の発明特定事項を得ることは容易ではない。
そして、本件発明1は、上記相違点1-3に係る構成を有することにより、「使用者が枕に頭部を載せたときに、互いに独立した柱状部材が、個々の円柱部材に加わる外力の状況に応じて、個々の円柱部材の頂面が頭部に対向するように弾性変形しつつ反発し、頭部を支持する。このため、頭部による圧力(体圧)が、複数の柱状部材のそれぞれの頂面に対して適度に分散されつつ、頭部が、複数の頂面によって優しく包み込まれた状態で安定的に支持された状態となり、使用者の快適性が向上する。更に使用者が枕上で頭部を移動させたときは、その移動に応じて個々の円柱部材が、移動に伴う外力に応じて、個々の円柱部材の頂面が頭部に対向するように弾性変形しつつ反発し、頭部を支持する。これにより、頭部の移動中および移動後にわたって、頭部が複数の柱状部材のそれぞれの頂面によって支持され寝返りの動きをサポートすることで、使用者の快適性が向上する。」(段落【0007】参照)という格別顕著な効果を奏するものであるから、当該構成を当業者が適宜なし得た設計的事項とすることもできない。
以上のとおりであるから、甲3発明1において、上記相違点1-3に係る本件発明1の構成とすることは、当業者であっても容易に想到し得たことではない。
してみると、本件発明1は、相違点2-3について検討するまでもなく、甲3発明1及び甲1、2、4~9に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(3)甲4について
甲4について、令和7年8月18日差出の手続補正書の第3ページ第11~13行において、構成要件A、B、Dが開示されているとの記載がなされているので、以下検討する。
甲4には、少なくとも「格子状に配置された柱状部材」の構成について、記載も示唆もない。したがって、本件発明1は、甲1~3、5~9に記載された事項を考慮しても、甲4に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
2 本件発明9について
(1)甲1を主引例とした場合
本件発明9と甲1発明2とを、その有する機能に照らして対比する。
・甲1発明2の「枕10」は、本件発明9の「枕本体」及び「枕」のそれぞれに相当する。
・甲1発明2の「縦方向と横方向とに碁盤目状に並設してある」及び「たまご型クッション材12」は、それぞれ本件発明9の「格子状に配置された」及び「コアユニット」に相当する。
・甲1発明2の「たまご形をした凸部12b」と、本件発明9の「柱状部材」は、「支持部材」という点で共通する。
そうすると、本件発明9と甲1発明2とは、次の点で一致し、次の点で相違する。
<一致点>
「 枕本体の内部に存在する枕のコアユニットであって、
枕本体の高さ方向に起立し、その頂面が枕本体の表面に沿った状態で格子状に配置された複数の支持部材を含み、
前記支持部材のそれぞれは、前記枕本体内で自立的に前記高さ方向に起立する
枕のコアユニット。」
<相違点3-1>
格子状に配置された支持部材の形状に関し、本件発明9は、「柱状部材」であるのに対し、甲1発明2は、たまご形をした凸部12bである点。
<相違点4-1>
格子状に配置された支持部材の構造に関し、本件発明9は、「柱状部材」が、「熱可塑性樹脂からなる多数の縮れた糸状繊維が絡まり合った状態で、前記糸状繊維の接触部分が溶着されて柱状の立体的形状が構成され、全体として弾性を有し、他の部材によらずに単独で立体的形状が維持される三次元網状構造体により構成され」ているのに対し、甲1発明2は、そのような構成を有していない点。
以下、<相違点>について検討する。相違点3-1について検討する。
甲1発明2は、縦方向と横方向とに碁盤目状に並設してある(格子状に配置された)複数のたまご形をした凸部12bを備えているが、たまご形をした凸部12bは柱状部材であるとは認められない。また、甲1には、他に格子状に配置された柱状部材を設けることを示唆する記載もない。さらに、甲1発明2は、複数のたまご形をした凸部を格子状に配置することで、「仰向け寝時でも横向け寝時でも頭部の支えが安定し、吸湿性と発散性にも良好であり、寝心地がよい」(甲1の段落【0009】参照。)という効果を奏する発明であるので、たまご形をした凸部の形状を柱状に変更する動機はない。
また、甲2~9においても、枕本体内に格子状に配置された支持部材を柱状部材とすることについて、記載も示唆もされていない。したがって、甲1発明2において、甲2に記載された事項又は甲3~9に記載された事項を適用したとしても相違点3-1に係る本件発明9の発明特定事項を得ることは容易ではない。
そして、本件発明9は、上記相違点3-1に係る構成を有することにより、「使用者が枕に頭部を載せたときに、互いに独立した柱状部材が、個々の円柱部材に加わる外力の状況に応じて、個々の円柱部材の頂面が頭部に対向するように弾性変形しつつ反発し、頭部を支持する。このため、頭部による圧力(体圧)が、複数の柱状部材のそれぞれの頂面に対して適度に分散されつつ、頭部が、複数の頂面によって優しく包み込まれた状態で安定的に支持された状態となり、使用者の快適性が向上する。更に使用者が枕上で頭部を移動させたときは、その移動に応じて個々の円柱部材が、移動に伴う外力に応じて、個々の円柱部材の頂面が頭部に対向するように弾性変形しつつ反発し、頭部を支持する。これにより、頭部の移動中および移動後にわたって、頭部が複数の柱状部材のそれぞれの頂面によって支持され寝返りの動きをサポートすることで、使用者の快適性が向上する。」(段落【0007】参照)という格別顕著な効果を奏するものであるから、当該構成を当業者が適宜なし得た設計的事項とすることもできない。
以上のとおりであるから、甲1発明2において、上記相違点3-1に係る本件発明9の構成とすることは、当業者であっても容易に想到し得たことではない。
してみると、本件発明9は、相違点4-1について検討するまでもなく、甲1発明2、甲2~9に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(2)甲3を主引例とした場合
本件発明9と甲3発明2とを、その有する機能に照らして対比する。
・甲3発明2の「枕1」は、本件発明1の「枕本体」及び「枕」のそれぞれに相当する。
・甲3発明2の芯材5が「枕1の仕切り部材4により仕切られたカバー10の内部空間に収容され」た態様は、甲3の図1、4、5の記載を参照すると、芯材5は、収容されたカバー10の内部空間において、その底面が収容空間の下面に配置され、該下面から収容空間の上面に向けた高さ方向に延在しているので、本件発明9の柱状部材が「枕本体の高さ方向に起立」する態様に相当する。また、同様に、甲3発明2の芯材5が「前記枕1の仕切り部材4により仕切られたカバー10の内部空間に収容された」態様は、本件発明9の柱状部材が「前記枕本体内で自立的に前記高さ方向に起立する」態様に相当する。
・甲3発明2の「三次元網状構造体51」及び「複数の芯材5」は、それぞれ本件発明9の「三次元網状構造体」及び「コアユニット」に相当する。
・三次元網状構造体において、甲3発明2の「線条の線径(直径)が0.3mm~1.5mmの熱可塑性樹脂からなる連続線条が不規則に部分的に溶着することによりループを形成した略長方形、略山形、略台形の形状である構造体であ」る点と、本件発明9の「熱可塑性樹脂からなる多数の縮れた糸状繊維が絡まり合った状態で、前記糸状繊維の接触部分が溶着されて柱状の立体的形状が構成され、全体として弾性を有」する点は、「熱可塑性樹脂からなる多数の縮れた糸状繊維が絡まり合った状態で、前記糸状繊維の接触部分が溶着されて立体的形状が構成され、全体として弾性を有」する点で共通する。
・甲3発明2の「複数の略長方形、略山形、略台形の形状である三次元網状構造体51が積層されて構成される芯材5」と、本件発明9の「複数の柱状部材」は、「複数の部材」という点で共通する。
そうすると、本件発明9と甲3発明2とは、次の点で一致し、次の点で相違する。
<一致点>
「 枕本体の内部に存在する枕のコアユニットであって、
枕本体の高さ方向に起立し、その頂面が枕本体の表面に沿った状態で配置された複数の部材を含み、
前記部材は、熱可塑性樹脂からなる多数の縮れた糸状繊維が絡まり合った状態で、前記糸状繊維の接触部分が溶着されて立体的形状が構成され、全体として弾性を有し、他の部材によらずに単独で立体的形状が維持される三次元網状構造体により構成され、
前記部材のそれぞれは、前記枕本体内で自立的に前記高さ方向に起立する
枕のコアユニット。」
<相違点3-3>
「三次元網状構造体により構成され」た部材の配置に関し、本件発明9では、「格子状に配置されて」いるのに対し、甲3発明2では、そのような構成を有していない点。
<相違点4-3>
「三次元網状構造体により構成され」た部材の形状に関し、本件発明9は、「柱状部材」であり、溶着されて「柱状」の立体的形状が構成されているのに対し、甲3発明2は、柱状部材であるかや、溶着されて柱状の立体的形状が構成されているかが不明である点。
以下、<相違点>について検討する。相違点3-3について検討する。
甲3発明2は、複数の略長方形、略山形、略台形の形状である三次元網状構造体51が積層されて構成される芯材5を枕の内部空間に収容したものであるが、三次元網状構造体51が積層されて構成される芯材5が格子状に配置されているとは認められない。また、甲3には、他に三次元網状構造体51が積層されて構成される芯材5を格子状に配置することを示唆する記載もない。
してみると、上記相違点3-3は、実質的な相違点であって、本件発明9は、甲3発明2であるといえない。
また、甲1、2、4~9においても、枕本体内に三次元網状構造体により構成された部材を格子状に配置することについて、記載も示唆もされていない。したがって、甲3発明2において、甲1、2、4~9に記載された事項を適用したとしても相違点3-3に係る本件発明9の発明特定事項を得ることは容易ではない。
そして、本件発明9は、上記相違点3-3に係る構成を有することにより、「使用者が枕に頭部を載せたときに、互いに独立した柱状部材が、個々の円柱部材に加わる外力の状況に応じて、個々の円柱部材の頂面が頭部に対向するように弾性変形しつつ反発し、頭部を支持する。このため、頭部による圧力(体圧)が、複数の柱状部材のそれぞれの頂面に対して適度に分散されつつ、頭部が、複数の頂面によって優しく包み込まれた状態で安定的に支持された状態となり、使用者の快適性が向上する。更に使用者が枕上で頭部を移動させたときは、その移動に応じて個々の円柱部材が、移動に伴う外力に応じて、個々の円柱部材の頂面が頭部に対向するように弾性変形しつつ反発し、頭部を支持する。これにより、頭部の移動中および移動後にわたって、頭部が複数の柱状部材のそれぞれの頂面によって支持され寝返りの動きをサポートすることで、使用者の快適性が向上する。」(段落【0007】参照)という格別顕著な効果を奏するものであるから、当該構成を当業者が適宜なし得た設計的事項とすることもできない。
以上のとおりであるから、甲3発明2において、上記相違点3-3に係る本件発明9の構成とすることは、当業者であっても容易に想到し得たことではない。
してみると、本件発明9は、相違点4-3について検討するまでもなく、甲3発明2及び甲1、2、4~9に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
3 本件発明2~8について
本件発明2~8は、本件発明1をさらに特定し限定するものであって、本件発明1の相違点1-1及び2-1又は相違点1-3及び2-3に係る発明特定事項と同様の発明特定事項を備えるものであるから、前記1に示した本件発明1についての理由と同様の理由により、本件発明2~8は、甲1発明1、甲3発明1及び甲2、4~9に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
第6 むすび
したがって、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、請求項1~9に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1~9に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
審決本文(J-PlatPat)
J-PlatPatの審決検索トップを開きます。番号入力で「審判番号」を選び、下の番号を貼り付けて検索してください。
J-PlatPat 審決検索を開く
2025-700717