特許異議申立
2025-700178
気象管理システム及び気象管理方法
- 審判番号
- 2025-700178
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2024-080687
- 登録番号
- 7532699
- 請求日
- 2025年02月12日
- 審決日
- 2025年05月08日
- 公報発行日
- 2025年06月27日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】株式会社東芝
- 【権利者代理人】水野 勝文
- 【権利者代理人】井出 真
- 【権利者代理人】須澤 洋
- 【権利者】東芝デジタルソリューションズ株式会社
- 【権利者代理人】水野 勝文
- 【権利者代理人】井出 真
- 【権利者代理人】須澤 洋
- 【異議申立人】安藤 宏
- 審判長/審判官
- 審判長 佐藤 智康
- 審判官 田川 泰宏
- 審判官 岡北 有平
- 分類
- P1651.121-Y (G01W)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7532699号発明「気象管理システム及び気象管理方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7532699号の請求項1~8に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7395048号の請求項1~8に係る特許(以下「本件特許」という。)についての出願は、令和5年3月16日に出願した特願2023-41975号の一部を令和6年5月17日に新たな特許出願として出願され、同年8月2日にその特許権の設定登録がされ、同年8月13日に特許掲載公報が発行された。その後、本件特許に対し、令和7年2月12日に異議申立人 安藤宏(以下「異議申立人」という。)は、特許異議の申立てを行った。
第2 本件発明
本件特許の請求項1~8に係る発明(以下、「本件発明1」~「本件発明8」という。)は、それぞれ、特許請求の範囲の請求項1~8に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】
気象レーダーの観測データを所定の判定基準に基づいて分類し、前記分類に基づく解析結果を出力する解析部と、
投稿者端末から投稿情報を受け付けるウェブサーバに投稿された気象関連投稿情報であって気象レーダーで観測された観測データにマッチングする前記気象関連投稿情報から把握される気象現象に基づいて、前記判定基準を変更する判定基準制御部と、
を有することを特徴とする気象管理システム。
【請求項2】
投稿者端末から投稿情報を受け付けるウェブサーバに投稿された気象関連投稿情報から、気象レーダーで観測された観測データの観測エリア及び観測時刻にマッチングする前記気象関連投稿情報を抽出する抽出部と、
抽出された前記気象関連投稿情報から把握される気象現象を、前記観測データに対応する気象現象として出力するデータ管理部と、
をさらに有することを特徴とする請求項1に記載の気象管理システム。 【請求項3】
前記解析部は、前記判定基準に基づいて前記観測データにおける降水粒子の種別判別処理を行い、判別された降水粒子の種別を出力することを特徴とする請求項1又は2に記載の気象管理システム。
【請求項4】
前記解析部は、前記判定基準を基づいて、前記観測データにおける上空の雲の中の降水粒子の種別判別処理を行い、前記種別判別処理の結果に基づいて地表に降り注ぐ降水粒子の種別を出力することを特徴とする請求項3に記載の気象管理システム。
【請求項5】
前記判定基準制御部は、前記観測データに対応する前記気象関連投稿情報から把握される気象現象と、前記解析部による前記観測データの解析結果とを比較し、同じ気象現象であると判定された場合は前記判定基準の変更処理を行わず、異なる気象現象であると判定された場合は前記観測データに対応する前記気象関連投稿情報から把握される気象現象に基づいて、前記判定基準の変更処理を行う、ことを特徴とする請求項1に記載の気象管理システム。
【請求項6】
前記判定基準制御部は、前記観測データに対応する前記気象関連投稿情報から把握される気象現象に基づいて前記判定基準を変更するとき、当該観測データの観測エリア及び観測時刻に基づいて、変更後の判定基準を適用する有効エリア及び有効時間を設定し、
前記解析部は、後続の観測データの観測エリア及び観測時刻が、前記有効エリア及び前記有効時間に対応する有効範囲内であるか否かを判定し、前記有効範囲内であると判定された場合、前記後続の観測データの解析処理に、変更後の判定基準を適用することを特徴とする請求項1又は5に記載の気象管理システム。
【請求項7】
コンピュータによって実行されるプログラムであって、前記コンピュータに、
気象レーダーの観測データを所定の判定基準に基づいて分類し、前記分類に基づく解析結果を出力する第1機能と、
投稿者端末から投稿情報を受け付けるウェブサーバに投稿された気象関連投稿情報であって気象レーダーで観測された観測データにマッチングする前記気象関連投稿情報から把握される気象現象に基づいて、前記判定基準を変更する第2機能と、
を実現させることを特徴とするプログラム。
【請求項8】
気象管理方法であって、コンピュータが、
気象レーダーの観測データを所定の判定基準に基づいて分類し、前記分類に基づく解析結果を出力するステップと、
投稿者端末から投稿情報を受け付けるウェブサーバに投稿された気象関連投稿情報であって気象レーダーで観測された観測データにマッチングする前記気象関連投稿情報から把握される気象現象に基づいて、前記判定基準を変更するステップと、
を実行する気象管理方法。」
第3 特許異議申立書に記載した申立ての理由の概要
令和7年2月12日に異議申立人が提出した特許異議申立書(以下、「特許異議申立書」という。)に記載した申立ての理由の概要は次のとおりである。
1 異議申立人の提出した証拠
異議申立人は、次の甲第1号証~甲第10号証(以下、それぞれ、「甲1」~「甲10」という。)を証拠として提出している。
甲第1号証(甲1):「気象庁の雨雲レーダーが点検で休止 ピンチを救った「ユーザー投稿」」、ウェザーニュース、 [online]、[2025年1月30日出力]、インターネット<https://weathernews.jp/s/topics/202110/270165/>
甲第2号証(甲2):「雨が降っているのにレーダーに雨雲が映っていないのはなぜ?」、ウェザーニュース、[online]、[2025年1月30日出力]。インターネット<https://web.archive.org/web/20220819105117/https://weathernews.jp/about_forecast/faq/qa04.html>
甲第3号証(甲3):「気象レーダー」、気象庁、[online]、[2025年1月30日出力]、インターネット<https://web.archive.org/web/20220719002248/https://www.jma.go.jp/jma/kishou/know/radar/kaisetsu.html>
甲第4号証(甲4):「ウェザーニューズ、首都圏の大雪に備える通知サービスを開始 スマホ&携帯向けに“首都圏大雪アラーム”の配信スタート ~400 万人のウェザーリポーターから送られてくる各地の情報から、積雪を徹底監視~」、WNI weathernews News Center、[online]、[2025年1月30日出力]、インターネット<https://weathernews.com/ja/nc/press/2013/130117_3.html>
甲第5号証(甲5):「雨と雪の境界は「気温」と「湿度」次第 ユーザー投稿でリアルタイム解析中」、ウェザーニュース、[online]、[2025年2月10日出力]、インターネット<https://weathernews.jp/s/topics/202202/100075/>
甲第6号証(甲6):小池 哲司、「ベイズ分類を用いた二重偏波レーダーによる降水種別判別 -クラスター分析による教師データの作成-」、測候時報第88巻(2021年度)、1ないし18頁、気象庁、[online]、[2025年2月10日出力]、インターネット<https://www.jma.go.jp/jma/kishou/books/sokkou/88/vol88p001.pdf>
甲第7号証(甲7):Nikola Besic,Jordi Figueras i Ventura, Jacopo Grazioli, Marco Gabella, Urs Germann, and Alexis Berne、”Hydrometeor classification through statistical clustering of polarimetric radar measurements: a semi-supervised approach”、[online]、Atmos. Meas. Tech. 9, 2016, p.4425-4445
甲第8号証(甲8):“ARM-DOE/pyart”、Github、[online]、[2025年1月30日出力]、インターネット<https://web.archive.org/web/20210306170230/https://github.com/ARM-DOE/pyart/>
甲第9号証(甲9):“Joshuawx/PyHail”、Github、[online]、[2025年1月30日出力]、インターネット<https://web.archive.org/web/20210812053037/https://github.com/joshua-wx/pyhail>
甲第10号証(甲10):「配信資料に関する技術情報(気象編)第308 号~レーダー毎極座標レーダーエコー強度GPV 及びレーダー毎極座標ドップラー速度GPV の提供について~」、気象庁観測部
2 申立理由
異議申立人の主張する特許異議の申立理由の概要は以下のとおりである。
(1)理由1(新規性)
本件発明1~3、5~8は、甲1に記載された発明であって、特許法29条1項3号に該当するから、本件特許は、同条同項の規定に違反してされたものである。
(2)理由2(進歩性)
本件発明1~8は、甲1~甲9に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件特許は、特許法29条2項の規定に違反してされたものである。
第4 異議申立人の提出した証拠の記載
1 甲1
(1)甲1の記載
甲1には、以下の記載がある。(なお、下線は合議体にて付与した。また、記載箇所の指摘は、特許異議申立書に添付された、ウェブページを紙出力したものに基づく。以下同じ。)
ア 「気象庁の雨雲レーダーが点検で休止 ピンチを救った「ユーザー投稿」
今日27日(水)10時過ぎから、千葉県柏市にある気象庁の「東京レーダー」が点検のため運用休止しています。しかし、タイミング悪く関東の南の海上では雨雲が発生し、昼頃に東京都心を含む広範囲で雨を降らせました。
気象庁の雨雲レーダーにはこの雨を降らせたエコーが映ることはありませんでしたが、ウェザーニュースアプリでは雨雲の予測を表示させることが出来ています。これを救ったのはウェザーニュースのアプリユーザーからの天気投稿でした。」(1頁)
イ 「雨雲レーダーにないのに降っている」
SNSなどでは「雨雲レーダーかかってないのに雨降ってる」や「雨雲が存在しない」などの声が多くなり、実際の空模様と合わないという戸惑いの声がみられました。
ウェザーニュースではアプリのユーザーから天気の投稿を募集していて、今日11時から14時の間には1万通を超える投稿がありました。
これにより、ウェザーニュースのユーザーは周囲のユーザーからの雨の報告を確認することができ、雨雲アラームなどのサービスを問題なく受け取ることができました。」(1頁)
ウ 「ユーザーの投稿を雨雲レーダーに反映
ウェザーニュースでは通常であれば、気象庁のレーダー観測を元にした雨雲の予測を提供しています。しかし、レーダーに何も映っていない以上、正確な予測を提供することは出来ない状況でした。
そこで、「ユーザー投稿などを反映した解析値」を元にした雨雲の予測を提供することを決め、昼休み中に緊急リリースを行いました。これにより、目先の雨雲の予測がより実際に近いかたちで表示可能となりました。」(2頁)
エ 「気象庁の雨雲レーダーは万能ではない
今回、気象庁の東京レーダーが点検のため運用と停止していましたが、このようにメンテナンスのためにレーダーを停止することは頻繁にあり、主に雨の降らない日の日中に停止されます。
1つのレーダーが休止していても、通常であれば近隣のレーダーが補完することは可能で、気象庁HPではアメダス等の雨量計の観測値で補完したレーダー画像を見ることが出来るのですが、今日の場合は雨雲の高さが低かったことや、雨量計では強い雨が観測されていなかったことで、補完がうまくいっていなかった可能性が考えられます。
このような場合にも、ウェザーニュースアプリのような「人の目」を活かした天気予報は精度の低下が抑えられます。」(2頁)
オ「
[図:0001423540000001.jpg]
」(1頁)
カ 「
[図:0001423540000002.jpg]
」(1頁)
キ 「
[図:0001423540000003.jpg]
[図:0001423540000004.jpg]
」(2頁)
(2)甲1に記載されているといえる事項
ア 上記(1)イの「ウェザーニュースではアプリのユーザーから天気の投稿を募集して」いるとの事項、上記(1)ウの「ウェザーニュースでは通常であれば、気象庁のレーダー観測を元にした雨雲の予測を提供しています。・・・途中省略・・・そこで、「ユーザー投稿などを反映した解析値」を元にした雨雲の予測を提供することを決め、昼休み中に緊急リリースを行いました。」との事項、上記(1)キの記載事項を踏まえると、ウェザーニュースアプリでは、取得した「気象庁のレーダー観測によるデータ」や「ユーザ投稿」等を用いた「雨雲の予測」を提供しているのであるから、甲1には、「ウェザーニュースアプリによって雨雲の予測に関する情報を管理・提供する方法」に関する事項が記載されているといえる。
イ 上記(1)ウの記載事項を踏まえると、甲1には、「通常は、気象庁のレーダー観測を元に、雨雲の予測を提供する」との事項が記載されているといえる。
ウ 上記(1)イの記載事項を踏まえると、甲1には、「アプリのユーザーから天気の投稿を募集する」との事項が記載されているといえる。
エ 上記(1)ウの記載事項及びキの図を踏まえると、甲1には、「気象庁のレーダー観測を元にした正確な雨雲の予測を提供することが出来ない状況において、ユーザー投稿などを反映した解析値を元にした雨雲の予測を提供する」との事項が記載されているといえる。
(3)甲1に記載されている発明
上記(1)及び(2)によれば、甲1には次の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されている。
(甲1発明)
「ウェザーニュースアプリによって雨雲の予測に関する情報を管理・提供する方法であって、(上記ア)
通常は、気象庁のレーダー観測を元に、雨雲の予測を提供し(上記イ)、
アプリのユーザーから天気の投稿を募集し(上記ウ)、
気象庁のレーダー観測を元にした正確な雨雲の予測を提供することが出来ない状況において、ユーザー投稿などを反映した解析値を元にした雨雲の予測を提供する(上記エ)、
方法」
2 甲2
甲2には、以下の記載がある。
「雨が降っているのにレーダーに雨雲が映っていないのはなぜ?
雨雲レーダーに雲が映っていないのにも関わらず、実際には雨が降っているという状況がしばしば発生します。
考えられる理由は主に2通りです。
レーダーが故障、または点検中の場合
レーダーが不得意とする気象状況の場合
1.レーダーの故障、点検中の場合
・・・画像省略・・・
雨雲レーダーは、気象庁の運用している気象レーダーの観測を基礎に、国土交通省の運用している気象レーダー、アメダスや自治体の設置している雨量計などのデータを加味して補正した結果を示しています。
ベースとなる気象庁の気象レーダーは全国の20か所で運用されていて、それぞれは重複する範囲を含む500km四方程度の範囲をカバーしています。
これらのレーダーは晴天時を中心に定期的に点検のため数時間単位で運用を休止しているほか、まれに機器障害や通信障害のため運用を休止することがあります。その場合は当該地域周辺で雨雲レーダーが通常よりも弱く表示されたり、全く雲が映らなくなる場合があります。
気象レーダーの運用状況は、気象庁ホームページのレーダー運用情報のページからご確認ください。」(1~2頁)
「2.レーダーが不得意とする気象状況の場合
気象レーダーが正常に運用中の場合でも、雨雲が実際よりも少なく表示される場合があります。
この説明をするために、まずは雨雲レーダーの仕組みを簡単に解説します。
・・・画像省略・・・
雨雲レーダー(気象レーダー)は、水平方向に360度回転するアンテナから電波を空中に向けて発射し、雨雲(雨粒が浮遊している状態)から反射してくる電波を捉えることで、その方向や距離、雨や雪の強さを観測する仕組みです。
気象庁の運用する気象レーダーは、数百km先までという広範囲を1台でカバーできるかわりに、レーダーから見て山かげになってしまう範囲など、外縁部に近づくほど低い雲を捉えるのが難しいエリアが多くなってしまいます。
いわゆる入道雲のような雨雲は、雲頂(雲の上部)の高さが1万m程度にまで達するため検知することは容易ですが、いわゆる霧雲のような低いところに存在して厚みもさほどないような雲であれば、実際には雨を降らせているのにもかかわらず気象レーダーでは捉えられないという状況が発生することがあります。
また、ゲリラ豪雨をもたらすような急速に発達する積雲についても、その初期段階においては雲の発達の速度に追いつけず、急な雨が降ったしばらく後にレーダーに表示されるという場合もあります。」(3~4頁)
「気象レーダーの欠点を補う観測網を強化中
気象レーダーは視覚的に雨雲の存在を理解しやすいという利点がある反面、上述のようなデメリットも存在します。
一方で、ウェザーニュースでは上記のような公共の気象レーダーに加え、独自に設置した小型の気象レーダーや、全国約13000か所の観測網(気象庁のアメダスは約1300か所)、そして全国のウェザーニュース利用者から寄せられる1日に5万通に及ぶ位置情報付きの天気投稿を分析し「天気予報」に反映しています。この技術や情報を活用し、雨雲レーダーの表示を改善出来るよう開発を進めています。
既に、ウェザーニュースアプリの天気予報Ch.内「5分ごとの天気」ではこの独自の解析結果が反映されているほか、アプリ内「10分天気予報Ch.」のマップで見る機能からは、周囲のユーザーからの投稿を地図上で確認出来るため、雨雲レーダーのように視覚的に雨の状況を確認出来ます。雨雲レーダーの表示が不審な場合は、これらの機能もご活用頂けますと幸いです。」(4頁)
「アプリ内に2種類ある「雨雲レーダー」について
ウェザーニュースアプリでは、2か所から別の種類の雨雲レーダーを見ることが出来ます。
ひとつはメニューリストにある「雨雲レーダーCh.」。こちらは気象庁の提供する「高解像度降水ナウキャスト」と「降水短時間予報」の組み合わせで、過去1時間の10分ごとのレーダー観測と、15時間先までの1時間ごとの予想をご覧頂けます。
もうひとつはアプリ下部の「レーダー」タブです。こちらは気象庁の「高解像度降水ナウキャスト」に加え、ウェザーニュース独自の解析・予報を加味したもので、過去24時間は10分ごと(過去1時間までは5分ごと)のレーダー観測と、1時間先までの5分ごとの予想、27時間先までの10分ごとの予想をご覧頂けます。ウェザーニュース独自の手法を使って解像度をさらに高めています。
両者で特に違いが大きいのは予測部分の表現です。あらゆる可能性を網羅したい場合は、両方の予測を見比べて想定しておくと、リスク軽減にいっそう役だつと思われます。」(4~5頁)
したがって、甲2には、以下の技術事項(以下、「甲2記載の技術事項」という。)が記載されているといえる。
(甲2記載の技術事項)
「全国のウェザーニュース利用者から寄せられる1日に5万通に及ぶ位置情報付きの天気投稿を分析し「天気予報」に反映し、雨雲レーダーの表示を改善出来るよう開発を進めており、既に、ウェザーニュースアプリの天気予報Ch.内「5分ごとの天気」ではこの独自の解析結果が反映されているほか、アプリ内「10分天気予報Ch.」のマップで見る機能からは、周囲のユーザーからの投稿を地図上で確認出来るため、雨雲レーダーのように視覚的に雨の状況を確認出来ること」
3 甲3
甲3には、以下の記載がある。
「気象レーダー観測の概要
気象レーダーは、アンテナを回転させながら電波(マイクロ波)を発射し、半径数百kmの広範囲内に存在する雨や雪を観測するものです。発射した電波が戻ってくるまでの時間から雨や雪までの距離を測り、戻ってきた電波(レーダーエコー)の強さから雨や雪の強さを観測します。また、戻ってきた電波の周波数のずれ(ドップラー効果)を利用して、雨や雪の動きすなわち降水域の風を観測することができます。さらに、令和2年3月から二重偏波気象ドップラーレーダーの導入を開始しています。二重偏波気象ドップラーレーダーは、水平方向と垂直方向に振動する電波(それぞれ水平偏波、垂直偏波という。)を用いることで、雲の中の降水粒子の種別判別や降水の強さをより正確に推定することが可能です。
(画像省略)」(1頁)
「気象庁のレーダー配置
レーダーの電波は空中を直進するため、進路上に山などの障害物があるとその裏側には届きません。また、地球表面が球面であるため、遠距離では電波が上空を通過し低いところの雨や雪を観測できなくなります。このため、遠くまで観測するためには、レーダーを山の上や鉄塔の上など高い場所に設置する必要があります。
わが国は山地が多いため、レーダーの設置場所によっては各レーダーが観測可能な範囲が地形の影響を受けます。このことを十分に考慮して、わが国の国土のほぼ全域をカバーするようにレーダーを配置しています。
(表及び画像省略)」(2~3頁)
「気象レーダーを利用する際の注意事項
気象レーダーは、レーダーから発した電波の反射波(エコー)を受信することにより降水を観測しますが、実際には降水がない場所でエコーが観測されたり、実際の降水よりも遥かに強い降水を示すエコーが観測されたりすることがあります。このような降水によらないエコーを判別することで、データの品質管理を行っていますが、まれに品質管理後にもそのようなデータが残ってしまうことがあります。ここでは注意すべきエコーの例をいくつか紹介します。」(6頁)
「●降水を過小評価するエコー
・降水による減衰
レーダー観測では、雨や雪の粒に反射された電波の強さから降水の強度を観測します。しかし、電波が反射されてアンテナまで戻ってくる経路上に強い降水がある場合(左図)や、レーダーサイト付近で降水が強くレドーム(アンテナを風雨や雪などから守る覆い)に水の膜ができているようなとき(右図)には、電波が減衰してしまい実際の降水よりも弱いエコーとして観測される点に注意が必要です。
(画像省略)」(8~9頁)
4 甲4
甲4には、以下の記載がある。
「ウェザーニューズ、首都圏の大雪に備える通知サービスを開始
スマホ&携帯向けに“首都圏大雪アラーム”の配信スタート
~400万人のウェザーリポーターから送られてくる各地の情報から、積雪を徹底監視~
株式会社ウェザーニューズ(本社:東京都港区、代表取締役社長:草開千仁)は、大雪による被害を少しでも軽減するため、本日、首都圏エリア(東京都、神奈川県、千葉県、埼玉県、茨城県、栃木県、群馬県)在住の方に向けて、スマホアプリ「ウェザーニュースタッチ」の通知サービス“スマートアラーム”に大雪モードを追加し、携帯サイト「ウェザーニュース」にて“首都圏大雪アラーム”を開始しました。これらは有料会員向けのサービスで、首都圏内にて積雪が観測され始めた際に、事前登録されたスマートフォンや携帯電話へ通知を送るサービスです。」(1頁)
「全国400万人から届く天気の報告と独自インフラを駆使し、気象状況を徹底監視!
首都圏在住の方は、北日本在住の方に比べ、大雪に対する備えが十分では無い場合が多く、時に、被害が大きくなることがあります。また、首都圏での積雪予報は難しく、限られた気象観測機から生成される予報モデルからでは、予報精度が低くなる場合があります。ウェザーニューズでは、400万人のウェザーリポーターから送られてくる現地の気象状況に加え、700台のライブカメラ、全国3000箇所に設置されている気象観測システム「ソラテナ」を活用し、今、どういう気象状況なのかを24時間態勢でモニタリングし、最新の予報に反映させています。14日に首都圏で見舞われた大雪(東京都心で8cm、横浜で14cm、千葉で8cmの積雪を観測)では、ウェザーリポーターからの報告により、当初の予報よりも積雪が2時間早まっていることが確認できたほか、予想以上の大雪となることが総合的に判断され、『首都圏で10年に1度の大雪』というメッセージをいち早く伝えることができました。
(画像省略)」(1頁)
「大雪の恐れが高まると、あなたのスマホや携帯に通知でお知らせ!
今回開始する“スマートアラーム大雪モード[スマホ向け]”や“首都圏大雪アラーム[携帯向け]”は、ウェザーリポーターまたは、10分天気予報利用者からの積雪報告を元に配信される新しいサービスで、スマートフォンや携帯電話の位置情報をもとに、そのエリアに特化した情報を確認できるのが特徴で、積雪情報の他に、交通情報や、今後の予想など24時間態勢で更新されている特設サイトへもアクセスすることができます。
(画像省略)」(1~2頁)
5 甲5
甲5には、以下の記載がある。
「雨と雪の境界は「気温」と「湿度」次第
ユーザー投稿でリアルタイム解析中
・・・画像省略・・・
今日2月10日の朝は、関東の広範囲で雨が降っていましたが、だんだんと雪に変わってきたところが増えてきました。
雨か雪かの境界は、「地上気温」と「湿度」で概ね見極めることが可能です。この「雨雪判別図」は、過去の研究からおおよその目安が教科書等にも掲載されています。
ただ、地域や気象状況によりこの境界線はずれが生じることがあるため、ウェザーニュースではユーザー投稿を活用して、リアルタイムに境界線を分析しています。」(1頁)
「15時 14時頃から23区で雪の範囲拡大
・・・画像省略・・・
14時前から東京23区で降水が強まり、連動して気温が低下し始め、雪に変わってきました。屋根や植え込みなどにもうっすらと雪の積もり始めているところがあります。
リアルタイム分析の結果、過去の経験則よりもやや高い気温でも雪になっている状況です。夜にかけて急速に状況が悪化することも想定されるため、注目が必要です。」(1頁)
「11時 9時以降は雪の範囲が拡大せず
・・・画像省略・・・
9時以降は東京都心での気温・湿度の観測値や、雪の範囲関東平野での雪の範囲に大きな変化がみられません。23区では主に雪まじりの雨で、積雪をもたらすほどにはなっていません。
リアルタイム分析の結果をみると、7時~9時にかけては、過去の経験則よりもやや高い気温でも雪・みぞれになっていた可能性が考えられます。」(2頁)
「8時 関東平野の北西側から雪に変わる
・・・画像省略・・・
東京都の多摩地方や埼玉県内などで雪の投稿が増えてきました。気温が予報通りに降下中で、都心では2.8℃、湿度95%となっています。
降水で湿度が高くなっている分、まだ23区東部では雨ですが、このまま気温が低下すればまもなく雪に変わってくる見通しです。」(2頁)
「5時 小さな雨雲が通過 降り始めは雨
・・・画像省略・・・
甲信地方では雪の投稿が多いものの、関東平野の大部分では雪ではなく雨となっています。東京都心の気温は4.3℃、湿度は70%で、あと1℃低いだけでも雪になりかねない状況です。
ただ、大気下層の東風が冷気の拡大を防いでいる状況で、すぐには雪に変わらない見通しです。」(2頁)
「解析の手法
今回のリアルタイム分析では、約50km四方ごとに区画を分け、範囲内で投稿された「現在天気」を位置情報と紐付け、1kmメッシュ解析気温と湿度に応じて図中にプロットし、傾向を導出しています。
ユーザー投稿はウェザーニュースアプリの「ウェザーリポート」機能、「5分ごとの天気」機能の報告メニューから、それぞれ投稿することが出来ます。予報精度の向上のために、ぜひご協力ください。」(2頁)
したがって、甲5には、以下の技術事項(以下、「甲5記載の技術事項」という。)が記載されているといえる。
(甲5記載の技術事項)
「雨か雪かの境界は、「地上気温」と「湿度」で概ね見極めることが可能であるが、地域や気象状況によりこの境界線はずれが生じることがあるため、ユーザー投稿を活用して、リアルタイムに境界線を分析すること」
6 甲6
甲6には、以下の記載がある。
「ベイズ分類を用いた二重偏波気象レーダーによる降水種別判別 ―クラスター分析による教師データの作成―」(1頁)
「二重偏波気象レーダーは水平と垂直の異なる偏波の電波を放射し,これまでの気象レーダーと比べて,降水粒子の扁平度と均一性に関する情報を新たに観測することが可能であり,そこから降水種別を推定することができる。第 1.1 図に雨滴及び雹の図を示す。雨滴(raindrops)は径が大きくなるにつれて空気抵抗により形が扁平する。一方,雹(hail)は径が大きくなっても丸く,雪も固形のためほとんど扁平は無い。また融解層(ブライトバンド)は,均一性に関する二重偏波情報を用いることにより判別が可能である。
(画像省略)」(1~2頁)
「・・・(表省略)・・・
第6.1図の(a)と(b)を比較すると、(b)の特徴から通常の降水の場合は氷点下の可能性が高い△z0 > 0[m]で、Zhh > 50[dBZ]の強いエコーのデータはない。一方(a)ではその部分に緑のクラスターがあり、雹もしくは霰と推定され、その下面に位置する(a)の紫のクラスターは雨と雹もしくは霰の混合した状態の可能性が高いと推測することができる。
こうした方法でクラスターと降水粒子の同定を他粒子でも行った。第6.1表に判別する降水粒子の種類を示す。
雨と霰もしくは雹との混合状態は雨/霰、雨/雹と記す。雨の弱・中・強、雨/霰と雨/雹、霰と雹、乾雪の弱・強はZhhの閾値を定めて分けている。
1)雨(弱)<20[dBZ]<雨(中)<40[dBZ]<雨(強)
2)35[dBZ]<雨/霰<50[dBZ]<雨/雹
3)30[dBZ]<霰<45[dBZ]<雹
4)乾雪(弱)<20[dBZ]<乾雪(強)
雨の弱・中・強はZhhやKdpから降水強度(mm/hr)も別に計算するため、降水強度で再度カテゴリーを計算し直した方が良いだろう。しかし霰と雹の違いは直径5mm未満・以上の氷粒と明確な定義があるため、厳密に分別するにはT-matrix法との比較や実観測との比較を行った後に教師データを再作成する必要がある。ただし、まれな現象であるため事例の収集に時間がかかると見込まれる。」(7頁)
「7.2 霰と雹の判別と発雷域との比較検証
もう一例として,降水種別判別の霰と雹の判別結果と,LIDEN標定結果及びレーダー雷解析(笹原,2011)とを比較することにより,降水種別判別の霰と雹の判別精度を評価した。通常の雷雲では雲中に霰や雹の存在が示唆されるが,逆に霰や雹が雲中に存在しても発雷するとは限らない。しかし霰と雹の判別域とLIDEN標定結果との比較はおおむねの判別傾向の評価には役に立つと考 えている。」(10頁)
「付録4 本手法で分類する降水種別の一覧
(表省略)」(18頁)
7 甲7
甲7には、以下の記載がある。(なお、外国語文献の訳文は異議申立人が提出した訳を採用した。以下同じ。)
「Hydrometeor classification through statistical clustering of polarimetric radar measurements: a semi-supervised approach」(4425頁)
(訳)
偏波レーダ測定の統計的クラスタリングによる降水粒子の分類:半教師ありアプローチ
「Abstract. Polarimetric radar-based hydrometeor classification is the procedure of identifying different types of hydrometeors by exploiting polarimetric radar observations.」(4425頁)
(訳)
要約。二重偏波レーダーによる降水粒子分類は、二重偏波レーダー観測を利用することによって異なる種類の降水粒子を特定する手順である。
「We illustrated some noteworthy properties of the proposed classification, which concern discrimination between different solid phase particles, hail detection performance and spatial homogeneity of the classification output.」(4439頁)
(訳)
我々は提案された分類のいくつかの注目すべき特性、すなわち、異なる固相粒子の区別、雹の検出能力、及び、分類出力の空間均一性に関する特性を説明した。
8 甲8
甲8には、以下の記載がある。
「The Python ARM Radar Toolkit (Py-ART)
The Python ARM Radar Toolkit, Py-ART, is an open source Python module containing a growing collection of weather radar algorithms and utilities build on top of the Scientific Python stack and distributed under the 3-Clause BSD license. Py-ART is used by the Atmospheric Radiation Measurement (ARM) Climate Research Facility for working with data from a number of precipitation and cloud radars, but has been designed so that it can be used by others in the radar and atmospheric communities to examine, processes, and analyze data from many types of weather radars.」(1頁)
(訳)
Python ARMレーダーツールキット(Py-ART)
Python ARMレーダーツールキット(Py-ART)は、Scientific Pythonスタック上に構築され、修正BSDライセンスの下で配布される気象レーダーアルゴリズムとユーティリティのコレクションが増え続けるオープンソースPythonモジュールです。Py-ARTは、大気放射線測定(ARM)気候研究施設によって、多数の降水レーダーおよび雲レーダーからのデータを処理するために使用されていますが、レーダーおよび大気コミュニティの他のユーザーが調査のために使用できるように設計されています。さまざまな種類の気象レーダーからのデータを処理し、分析します。
9 甲9
甲9には、以下の記載がある。
「Python Hail Retrieval Toolkit (PyHail)」(1頁)
(訳)
Python ひょう検出ツールキット(PyHail)
「Dependencies
・Py-ART」(1頁)
(訳)
「このツールキットは、Py-ARTツールキットを使用して気象レーダーのデータからひょうを検出する手段を提供します。」
「Hail Retrivals
・Hail Size Discrimination Algorithm - HSDA (Ortega et al. 2016)
・Hail Differential Reflectivity - HDR (Depue et al. 2007)
・Maximum Expected Size of Hail - MESH witt1998 (Witt et al. 1998)
・Maximum Expected Size of Hail - MESH mh2019_75/mh2019_95 (Murillo and Homeyer 2019)
・Accumulated Hail - hAcc (Wallace et al. 2019)
MESH is implemented for both pyart radar (PPI) and grid (Cartesian) data!」(1~2頁)
(訳)
ひょうの検出
・ひょうのサイズを区別するアルゴリズム-HSDA(オルテガら、2016年)
・ひょうの微分反射率-HDR(デピューら、2007年)
・ひょうの最大予測サイズ-MESH witt1998(ウィットら、1998年)
・ひょうの最大予測サイズ-MESH mh2019_75/mh2019_95(ムリロ及びホメヤー、2019年)
・積算したひょう-hAcc(ウォレスら、2019年)
MESHは、pyartレーダー(PPI)及びグリッド(デカルト)データの両方に実装されている。
10 甲10
甲10には、以下の記載がある。
「配信資料に関する技術情報(気象編)第 308 号
~レーダー毎極座標レーダーエコー強度 GPV 及び レーダー毎極座標ドップラー速度 GPV の提供について~ 」(1頁)
「平成22年3月から、気象レーダーの観測成果であるレーダー毎極座標レーダーエコー強度GPV及びレーダー毎極座標ドップラー速度GPVの提供を開始します」(1頁)
「3. データの概要
(1) レーダー毎極座標レーダーエコー強度
GPV 気象庁が保有する全国 20 台の気象レーダーで観測したエコー強度(基底反射 率(dBZ))を 10 分間隔で提供します。GPV の格子系は各レーダーを中心とす る仰角別の極座標格子 (方位、距離) で、方位分解能は 0.7°、距離分解能は 500m です。
(2) レーダー毎極座標ドップラー速度 GPV
気象庁が保有する気象ドップラーレーダーで観測したドップラー速度(m/s) を 10 分間隔で提供します。GPV の格子系は各レーダーを中心とする仰角別の極 座標格子 (方位、距離) で、方位分解能は 0.7°、距離分解能は 500m です。」(1頁)
「※3 基底反射率(エコー強度)のレベル値(0~252)
(表省略)」(6頁)
「※3基底視線速度(ドップラー速度)のレベル値【0~251】
(表省略)」(14頁)
第5 当審の判断
1 理由1(新規性)について
(1)本件発明8について
ア 対比
事案に鑑み、本件発明8と甲1発明とを対比する。
(ア)「気象管理方法であって、コンピュータが、」「実行する気象管理方法」について
甲1発明は、「ウェザーニュースアプリによって雨雲の予測に関する情報を管理・提供する方法」であり、上記「雨雲」は気象現象であるから、「気象管理方法」と称し得るものである。
また、甲1発明は「気象庁のレーダー観測を元に、雨雲の予測を提供」する、「アプリのユーザーから天気の投稿を募集」する、「気象庁のレーダー観測を元にした正確な雨雲の予測を提供することが出来ない状況において、ユーザー投稿などを反映した解析値を元にした雨雲の予測を提供」するという処理を実行する方法であるところ、これらの処理がコンピュータによって実行されるものであることは明らかである。
してみると、本件発明8と甲1発明は、「気象管理方法であって、コンピュータが、」所定の処理を「実行する気象管理方法」である点で一致する。
(イ)「気象レーダーの観測データを所定の判定基準に基づいて分類し、前記分類に基づく解析結果を出力するステップ」について
甲1発明は「気象庁のレーダー観測を元に、雨雲の予測を提供」するものであり、雨雲の予測を提供するに際しては、気象庁のレーダー観測から得られるデータを解析して雨雲の予測に関する情報を出力する必要があることは自明であるから、甲1発明は「気象庁のレーダー観測から得られるデータに基づく解析結果を出力する」ステップを有しているといえる。
そして、当該「気象庁のレーダー観測から得られるデータ」は、本件発明8の「気象レーダーの観測データ」に相当する。
ここで、本件発明8の「判定基準」について、段落【0019】の「二重偏波気象ドップラーレーダーでは、振幅の比によって降水粒子の形を推定することができる。」との記載、段落【0020】の「振幅の比による降水粒子推定では、湿った雪、乾いた雪、氷晶、霧雨、雨、あられ、ひょう、強雨といったカテゴリが予め用意される。例えば、振幅の比が所定値以上である場合、降水粒子がひょうであると判定(カテゴライズ)する。振幅の比を判定基準として設定し、観測データに基づいて、観測エリアにおける気象現象を推定する。」との記載、段落【0068】の「例えば、降水粒子推定処理の判定基準は、振幅の比が所定値X以上所定値Y未満の場合は「あられ」、振幅の比が所定値Y以上の場合は「ひょう」と判定し、気象現象の解析結果として、「あられ」や「ひょう」などを出力する。判定基準制御部222は、図6の例において、観測データAの振幅の比が所定値X以上所定値Y未満であったので「あられ」を解析結果として出力していたが、実際には「ひょう」が降っていたので、「あられ」と「ひょう」の境界閾値である所定値Yを、所定値Y1に変更する。所定値Y1は、所定値Yよりも小さい値であり、観測データで「ひょう」と判定される領域を広げる閾値変更を行う。」との記載、段落【0113】の「上記第2実施形態の気象管理装置200は、竜巻やつむじ風を対象として、アラート情報の出力及び判定基準の変更の各処理を行うことができる。判定基準の変更処理では、情報管理装置100が提供する真値(正解ラベル)に基づいて、竜巻の発生を判定するためのドップラー速度の閾値を変更することができる。また、上記第3実施形態の分類制御部124の機能も、竜巻やつむじ風、突風を対象に構成することもできる。」との記載などを参酌すると、「判定基準」は観測データ(振れ幅の比やドップラー速度など)に基づいて観測エリアにおける気象現象(あられ、ひょう、竜巻、つむじ風など)を推定する際の「境界閾値」と解される。
してみると、甲1発明は本件発明8の「判定基準」に対応する構成を備えていないので、甲1発明において提供(出力)される「雨雲の予測(解析結果)」は、本件発明8のように、「気象庁のレーダー観測から得られるデータを所定の判定基準に基づいて分類し、前記分類に基づく解析結果」であるともいえない。
してみると、甲1発明は、本件発明8と「気象レーダーの観測データに基づく解析結果を出力する」ステップを有しているという点で共通する一方、以下の点で相違する。
本件発明8において出力される「解析結果」は「気象レーダーの観測データを所定の判定基準に基づいて分類し、前記分類に基づく解析結果」であるのに対し、甲1発明において提供(出力)される「雨雲の予測(解析結果)」は、かかる事項が特定されていない点。
(ウ)「投稿者端末から投稿情報を受け付けるウェブサーバに投稿された気象関連投稿情報であって気象レーダーで観測された観測データにマッチングする前記気象関連投稿情報から把握される気象現象に基づいて、前記判定基準を変更するステップ」について
甲1発明は、「アプリのユーザーから天気の投稿を募集」するものであるから、甲1発明がユーザーの端末から天気の投稿を受信するサーバを備えることは自明であり、当該「ユーザーの端末」、「ユーザーの端末から天気の投稿を受信するサーバ」は、それぞれ、本件発明8の「投稿者端末」、「投稿者端末から投稿情報を受け付けるウェブサーバ」にそれぞれ相当する。
また、甲1発明において、アプリのユーザーからの投稿である「天気の投稿」及び「ユーザ投稿」は、本件発明8の「投稿者端末から投稿情報を受け付けるウェブサーバに投稿された気象関連投稿情報」に相当する。
してみると、甲1発明と本件発明8は、「投稿者端末から投稿情報を受け付けるウェブサーバに投稿された気象関連投稿情報を用いた処理を実行するステップ」を備える点で共通する一方で、以下の点で相違する。
本件発明8は、「(投稿者端末から投稿情報を受け付けるウェブサーバに投稿された気象関連投稿情報であって)気象レーダーで観測された観測データにマッチングする前記気象関連投稿情報から把握される気象現象に基づいて、前記判定基準を変更する」との処理を実行するのに対し、甲1発明には、かかる事項が特定されていない点。
イ 一致点及び相違点
上記(1)で対比した事項を踏まえると、本件発明8と甲1発明は、
「気象管理方法であって、コンピュータが、
気象レーダーの観測データに基づく解析結果を出力するステップと、
投稿者端末から投稿情報を受け付けるウェブサーバに投稿された気象関連投稿情報を用いた処理を実行するステップと、
を実行する気象管理方法。」
という点で一致し、以下の点で相違している。
(相違点1)
本件発明8において出力される「解析結果」は「気象レーダーの観測データを所定の判定基準に基づいて分類し、前記分類に基づく解析結果」であるのに対し、甲1発明において提供(出力)される「雨雲の予測(解析結果)」は、かかる事項が特定されていない点。
(相違点2)
本件発明8は、「(投稿者端末から投稿情報を受け付けるウェブサーバに投稿された気象関連投稿情報であって)気象レーダーで観測された観測データにマッチングする前記気象関連投稿情報から把握される気象現象に基づいて、前記判定基準を変更する」との処理を実行するのに対し、甲1発明には、かかる事項が特定されていない点。
ウ 判断
事案を鑑みて相違点2について検討する。
甲1には、本件発明8で特定されている「(投稿者端末から投稿情報を受け付けるウェブサーバに投稿された気象関連投稿情報であって)気象レーダーで観測された観測データにマッチングする前記気象関連投稿情報から把握される気象現象に基づいて、前記判定基準を変更する」という処理に対応する事項は記載も示唆もされておらず、また、本件特許の出願時の技術常識に鑑みて当業者であれば自明であるとの合理的な理由もない。
してみると、上記相違点2は、実質的な相違点であるから、その他の相違点について検討するまでもなく、本件発明8は甲1に記載された発明であるとはいえない。
エ 異議申立人の主張について
異議申立人は、特許異議申立書において、以下のとおり主張している。
「甲1発明の「アプリのユーザーから投稿された降雨の有無を含む天気の報告を気象レーダーの観測データを用いた降雨の有無又は降雨の強度の解析に反映させること」は、投稿から把握される気象現象(降雨の有無)を気象レーダーの観測データに基づく降雨の有無又は強度の解析に反映させる(解析に修正を加える)ことを通して、降雨の判断の基準を変更していることになるから、本件特許発明1の「前記気象関連投稿情報から把握される気象現象に基づいて前記判定基準を変更する」に相当する。」(異議申立書第31頁第12~17行)
上記主張について検討する。
甲1には「ユーザー投稿などを反映した解析値を元にした雨雲の予測を提供」することは記載されているが、ユーザー投稿から把握される気象現象に関する情報を、気象庁のレーダー観測を用いた降雨の有無又は降雨の強度の解析に反映されることは記載されていない。
よって、甲1に「アプリのユーザーから投稿された降雨の有無を含む天気の報告を気象レーダーの観測データを用いた降雨の有無又は降雨の強度の解析に反映させること」が記載されていることを前提とする異議申立人の上記主張は採用できない。
オ 小括
上記1のとおり、本件発明8と甲1発明との間には、少なくとも実質的な相違点2があるため、本件発明8は、甲1に記載された発明ではない。
(2)本件発明1について
本件発明1は、本件発明8の「気象管理方法」に係る発明を、「気象管理システム」として表現したものであり、少なくとも上記「(1)本件発明8について」で言及した相違点2に係る処理を実行するための構成が備わっているのであるから、上記「(1)本件発明8について」で検討したのと同様に、甲1に記載された発明ではない。
(3)本件発明2~6について
本件発明2~6は、本件発明1を直接的又は間接的に引用した発明であるから、上記「(2)本件発明1について」で示したのと同様の理由により、甲1に記載された発明ではない。
(3)本件発明7について
本件発明7は、本件発明8の「気象管理方法」に係る発明を、「プログラム」として表現したものであり、少なくとも上記「(1)本件発明8について」で言及した相違点2に係る処理を実行するための機能(第2機能)が備わっているのであるから、上記「(1)本件発明8について」で検討したのと同様に、甲1に記載された発明ではない。
2 理由2(進歩性)について
(1)本件発明8について
ア 一致点及び相違点
本件発明8と甲1発明とを対比すると、上記「1(1)イ」で示した上記一致点、相違点を有するものである。
イ 判断
事案に鑑み、上記相違点2について検討する。
甲2には、上記第4の2に示したとおりの技術事項が記載されている。
甲2記載の技術事項から、利用者から寄せられる位置情報付きの天気投稿を分析し天気予報に反映し、雨雲レーダーの表示を改善することが出願時において知られていたことは認められるものの、甲2には、利用者から寄せられる位置情報付きの天気投稿を天気予報に反映する際に、何らかの判定基準を変更することは記載されていない。すなわち、本件発明8のように「(投稿者端末から投稿情報を受け付けるウェブサーバに投稿された気象関連投稿情報であって)気象レーダーで観測された観測データにマッチングする前記気象関連投稿情報から把握される気象現象に基づいて、前記判定基準を変更する」との処理を行うことは記載されていない。
また、甲5には、上記第4の5に示したとおりの技術事項が記載されている。
甲5記載の技術事項から、ユーザ投稿を活用して、リアルタイムに雨か雪かの境界線を分析することが出願時において知られていたことは認められるものの、甲5には、ユーザ投稿を活用して境界線に関する何らかの判定基準を変更することは記載されていない。すなわち、本件発明8のように「(投稿者端末から投稿情報を受け付けるウェブサーバに投稿された気象関連投稿情報であって)気象レーダーで観測された観測データにマッチングする前記気象関連投稿情報から把握される気象現象に基づいて、前記判定基準を変更する」との処理を行うことは記載されていない。
そして、甲3~4、甲6~甲10には、上記第4の3~4,6~10に示したとおりの記載があるのみで、上記相違点2に係る構成は甲3~4、甲6~10のいずれにも記載されていない。
以上を踏まえると、甲1発明に甲2~甲10に記載された技術的事項を適用しても上記相違点2の構成に至らないことは明らかであり、また、上記相違点2に係る構成が本件特許の出願時の技術常識に鑑みて、周知技術であった又は当業者であれば自明であるとの合理的な理由もない。
したがって、本件発明8は、甲1発明及び甲2~甲10に記載された技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(2)本件発明1について
本件発明1は、本件発明8の「気象管理方法」に係る発明を、「気象管理システム」として表現したものであり、少なくとも上記相違点2に係る処理を実行するための構成が備わっているのであるから、上記「(1)本件発明8について」で検討したのと同様に、甲1発明、甲2~甲10に記載された技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(3)本件発明2~6について
本件発明2~6は、本件発明1を直接的又は間接的に引用した発明であるから、上記「(2)本件発明1について」で示したのと同様の理由により、甲1発明、甲2~甲10に記載された技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(4)本件発明7について
本件発明7は、本件発明8の「気象管理方法」に係る発明を、「プログラム」として表現したものであり、少なくとも上記「(1)本件発明8について」で言及した相違点2に係る処理を実行するための機能(第2機能)が備わっているのであるから、上記「(1)本件発明8について」で検討したのと同様に、甲1発明、甲2~甲10に記載された技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
第6 むすび
以上によれば、特許異議の申立ての理由(特許法29条1項、同法同条2項)及び異議申立人の提出した証拠によっては、本件特許の請求項1~8に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件特許の請求項1~8に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
審決本文(J-PlatPat)
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2025-700178