審決検索MVP
← 検索一覧に戻る
特許拒絶査定不服審判

2025-004407

アンテナ基板

審判番号
2025-004407
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2021-024039
請求日
2025年03月21日
審決日
2025年11月25日
公報発行日
2026年02月27日
結論
請求不成立
当事者
  • 【請求人】日本特殊陶業株式会社
  • 【請求人代理人】田邊 淳也
審判長/審判官
  • 審判長 高野 洋
  • 審判官 鈴木 圭一郎
  • 審判官 寺谷 大亮
分類
P18 .121-Z (H01Q)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特願2021- 24039「アンテナ基板」拒絶査定不服審判事件〔令和 4年 8月30日出願公開、特開2022-126137〕について、次のとおり審決する。

結論

結 論 本件審判の請求は、成り立たない。

理由

理 由 第1 手続の経緯 本願は、令和3年2月18日の出願であって、その手続の経緯の概要は以下のとおりである。 令和 6年 5月24日付け 拒絶理由通知書 8月 2日 意見書・手続補正書 10月22日付け 拒絶理由通知書 11月21日 意見書・手続補正書 令和 7年 2月18日付け 拒絶査定 3月21日 審判請求書 以下では、令和7年2月18日付け拒絶査定を「原査定」という。 第2 本願発明 本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、令和6年11月21日の手続補正書によって補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものであると認める。なお、後の参照の便宜のため、請求項1を以下のようにA~Kに分説し、「発明特定事項A」のようにして参照する。 【請求項1】 A アンテナ基板であって、 B 平板状のセラミック誘電体である第1誘電体層と、 C 前記第1誘電体層の上面側に配置された平板状のセラミック誘電体である第2誘電体層と、 D 前記第1誘電体層と、前記第2誘電体層との間に配置された枠状のセラミック誘電体である第1中間誘電体層と、 E 前記第1誘電体層の上面に設けられた給電素子と、 F 前記第2誘電体層の上面に設けられた無給電素子であって、前記第1誘電体層の厚み方向で前記給電素子と重なる位置に設けられた無給電素子と、 を備え、 G 前記給電素子が収容され、前記第1誘電体層の上面と、前記第1中間誘電体層の内周面と、前記第2誘電体層の下面とによって区画される第1中空領域が形成され、 H 前記給電素子は、前記第1中空領域内で、前記厚み方向で前記無給電素子と重なる位置において、前記第2誘電体層の下面と空間を介して配置され、 I 前記アンテナ基板の外部領域と、前記第1中空領域とを連通する貫通孔が形成され、 J 前記給電素子のうち、前記第1誘電体層に接していない表面、または、前記無給電素子のうち、前記第2誘電体層に接していない表面の少なくともいずれか一方は、誘電体によって被膜されていないことを特徴とする、 K アンテナ基板。 第3 原査定の理由の概要 原査定の理由の概要は、以下のとおりである。 (進歩性)この出願の請求項1~5に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された以下の引用文献1に記載された発明及び引用文献2及び引用文献3に示される周知技術に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。 引用文献1.国際公開第2020/066604号 引用文献2.特開平2-256305号公報(周知技術を示す文献) 引用文献3.特開平7-74532号公報(周知技術を示す文献) 第4 文献の記載内容 以下の1では、引用文献1の記載と、それにより認定される引用発明を示す。 以下の2では、周知技術を示すために引用する文献の記載を示し、それらにより認定される周知技術を示す。 1 引用文献1について 原査定の理由で引用された国際公開第2020/066604号(以下「引用文献1」という。)には、以下の(1)の記載があり、以下の(2)の発明が記載されていると認められる。 (1)引用文献1の記載 引用文献1には、以下の事項が記載されている。なお、下線は強調のために当審で付した(以下同様)。 ア 「[0001] 本開示は、アンテナモジュール、通信装置およびアレイアンテナに関し、より特定的には、アンテナモジュールを広帯域化するための技術に関する。」 イ 「[0019] (アンテナモジュールの構造) 図2は、実施の形態1に係るアンテナモジュール100の平面図(上段)および断面図(下段)である。図2を参照して、アンテナモジュール100は、放射電極121,122と、誘電体基板160と、接地電極GNDと、RFIC110とを備える。下段の断面図は、平面図における、給電素子である放射電極121の給電点SP1を通II-II面での断面図である。なお、以下の説明においては、図2中のZ軸の正方向を上面側、負方向を下面側と称する場合がある。 [0020] 以下の説明において、放射電極121が給電素子であり、放射電極122が無給電素子である例について説明するが、放射電極121および放射電極122の双方が給電素子であってもよい。あるいは、逆に、放射電極121が無給電素子であり、放射電極122が給電素子であってもよい。 [0021] 誘電体基板160は、誘電体基板160の法線方向(図のZ軸方向)からアンテナモジュール100を平面視した場合に略矩形形状を有しており、第1辺161~第4辺164を有する。図2の誘電体基板160の例では、短辺側が第1辺161および第3辺163であり、長辺側が第2辺162および第4辺164となっている。第2辺162および第4辺164は、第1辺161と隣り合っている。第3辺163は、第1辺161と対向している。 [0022] 誘電体基板160は、複数の誘電体層が積層された多層構造を有する。誘電体基板160の各誘電体層は、たとえば、エポキシ、ポリイミドなどの樹脂で形成される。また、誘電体層は、より低い誘電率を有する液晶ポリマー(Liquid Crystal Polymer:LCP)、フッ素系樹脂、あるいは低温同時焼成セラミックス(LTCC:Low Temperature Co-fired Ceramics)などを用いて形成されてもよい。誘電体基板160の一方の主面(下面)には、はんだバンプ130を介してRFIC110が実装されている。 [0023] 誘電体基板160の周囲には、各辺に沿って所定の間隔で複数の柱状導体145が配置されている。この複数の柱状導体145は、誘電体基板160の内部で接地電極GNDに接続されている。複数の柱状導体145は、誘電体基板160の側面側のシールドとして機能する。なお、図3以降で後述するアンテナモジュールにおいては、当該柱状導体145の記載を省略している。 [0024] 誘電体基板160の下面に近い層に、接地電極GNDが配置される。誘電体基板160の他方の主面(上面)に近い層には、矩形形状の放射電極122(第1放射電極)が配置される。また、放射電極122と接地電極GNDとの間の層には、矩形形状の放射電極121(第2放射電極)が配置される。放射電極121と放射電極122とは、アンテナモジュール100を平面視した場合に、それぞれの対角線の交点(すなわち中心)が一致するように重なっている。なお、図2の例においては、放射電極122が放射電極121よりも大きくなっているが、2つの放射電極のサイズが同じ場合であってもよいし、放射電極121の方が大きい場合であってもよい。 [0025] 放射電極121は、給電線140を介してRFIC110と電気的に接続されている。給電線140は、接地電極GNDを貫通して放射電極121における給電点SP1に接続される。給電点SP1は、放射電極121において、放射電極121の中心から、X軸に沿った第2辺162側にオフセットした位置に配置される。これにより、放射電極121からは、Y軸方向を偏波方向とする電波が放射される。 [0026] なお、放射電極122が給電素子とされる場合には、給電線140は、たとえば、放射電極121を貫通し、空洞部150を通るビアによって放射電極122の給電点に接続されてもよい。あるいは、給電線140は、空洞部150を迂回して誘電体基板160の内部を経由して放射電極122に接続されてもよい。 [0027] 誘電体基板160において、放射電極121と放射電極122との間の層には空洞部150が形成されている。誘電体基板160は、空洞部150よりも上面側に、第1辺161で支持された層(以下、「梁部」とも称する。)165を含み、この梁部165に放射電極122が配置されている。梁部165の周囲には、第2辺162~第4辺164に沿って開口部152が形成されており、当該開口部152は空洞部150まで貫通している。 [0028] 上述のような複数の放射電極がスタックされたスタック型のアンテナモジュールにおいては、放射電極から放射することができる電波の周波数帯域幅は、放射電極と接地電極との間の電磁界結合の強さ、および放射電極間の電磁界結合の強さによって定まることが知られている。電磁界結合の強さが強くなるにつれて周波数帯域幅は狭くなり、電磁界結合の強さが弱くなるにつれて周波数帯域幅は広くなる。 [0029] 一般的に、放射電極から放射される電波の周波数帯域幅を拡大するためには、誘電体基板の厚みを厚くすることが必要となる。一方で、スマートフォンなどのアンテナモジュールが適用される通信装置においては、小型化および薄型化が要求されるため、誘電体基板の厚みを厚くすると、装置の小型化および薄型化を阻害する要因になり得る。 [0030] ここで、電磁界結合の強さは、2つの電極間の実効誘電率によっても影響される。より具体的には、実効誘電率が高いと電磁界結合は強くなり、実効誘電率が低いと電磁界結合は弱くなる。すなわち、2つの電極間の実効誘電率を低減することにより、周波数帯域幅を拡大することができる。 [0031] 本実施の形態1のアンテナモジュール100においては、上述のように、放射電極121と放射電極122との間に空洞部150が形成されている。一般的に、空気の誘電率は、誘電体基板160を形成する誘電体の誘電率よりも低い。そのため、当該空洞部150を形成することによって、放射電極121と放射電極122との間の実効誘電率を低減することができる。その結果、放射電極121と放射電極122との間の電磁界結合を弱めることができる。したがって、本実施の形態1のアンテナモジュール100においては、モジュール全体のサイズを大きくすることなく、周波数帯域幅を拡大することができる。 [0032] また、空洞部150を形成することによって、誘電体内での電気エネルギの損失が低減できるため、アンテナモジュールにおける効率を向上することができる。」 ウ 「[0038] (変形例) 次に、図4~図10を用いて、変形例のアンテナモジュール100A~100Gについて説明する。 [0039] 図4は、変形例1に係るアンテナモジュール100Aの平面図および断面図である。アンテナモジュール100Aは、RFIC110からの給電線140が接続される給電点がアンテナモジュール100と異なっている例である。具体的には、アンテナモジュール100Aにおける放射電極121の給電点SP1Aは、放射電極121の中心から第1辺161側にオフセットした位置となっている。アンテナモジュール100Aにおいては、放射電極121から放射される電波の偏波方向は、図4のX軸方向となる。 [0040] 図5~図8の変形例2~5は、誘電体基板160の上面における開口部152がアンテナモジュール100と異なっている例である。具体的には、図5の変形例2に係るアンテナモジュール100Bにおいては、開口部152は第3辺163に沿った部分のみに形成されており、梁部165は第1辺161、第2辺162、および第4辺164によって支持されている。 [0041] 図6の変形例3に係るアンテナモジュール100Cにおいては、開口部152は第2辺162および第4辺164に沿った部分に形成されており、梁部165は第1辺161および第2辺162で支持されている。図7の変形例4に係るアンテナモジュール100Dにおいては、開口部152は隣り合う2辺(第2辺162および第3辺163)に沿った部分に形成されており、梁部165は第1辺161および第4辺164によって支持されている。 [0042] 図8は、変形例5に係るアンテナモジュール100Eの平面図および断面図である。図8において、下段の断面図は、給電点SP1および開口部152を通る面VIII-VIIIに沿った断面図である。アンテナモジュール100Eにおける開口部152は、図5~図7のようなスリット状ではなく、比較的小さな円形であり、第3辺163の近傍に形成されている。なお、図8のような開口部152の個数は複数でもよく、また形成される場所についても異なっていてもよい。」 エ 図2 [図:0001431948000001.jpg] オ 図8 [図:0001431948000002.jpg] (2)引用発明の認定 上記(1)イの記載によれば、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。なお、後の参照の便宜のために、引用発明をa~kに分説し、「構成a」のようにして参照する。 a 放射電極121,122と、誘電体基板160を備えるアンテナモジュール100であって、([0019]) b 誘電体基板160は、複数の誘電体層が積層された多層構造を有し、([0022]) c 誘電体基板160は、セラミックスを用いて形成され、([0022]) d 誘電体基板160において、放射電極121と放射電極122との間の層には空洞部150が形成され、誘電体基板160は、空洞部150よりも上面側に、第1辺161で支持された層(以下、「梁部」とも称する。)165を含み、この梁部165に放射電極122が配置され、([0027]) e 梁部165の周囲には、第2辺162~第4辺164に沿って開口部152が形成されており、当該開口部152は空洞部150まで貫通され([0027])、 f 誘電体基板160の下面に近い層に、接地電極GNDが配置され、([0024]) g 誘電体基板160の主面(上面)に近い層には、矩形形状の放射電極122が配置され、([0024]) h 放射電極122と接地電極GNDとの間の層には、矩形形状の放射電極121が配置され、([0024]) i 放射電極121が給電素子であり、放射電極122が無給電素子であり、([0020]) j 放射電極121と放射電極122とは、アンテナモジュール100を平面視した場合に、それぞれの対角線の交点(すなわち中心)が一致するように重なる([0024]) k アンテナモジュール100([0019]) 2 周知技術ついて (1)周知文献1の記載 原査定で周知技術を示すために引用された特開平2-256305号公報(以下「周知文献1」という。)には次の記載がある。 ア 「第1図及び第2図は本発明の一実施例に係るマイクロストリップアンテナ1を示し、誘電体基板2の第1板面部2a及び第2板面部2bに、接地導体3及び本発明にいう第1素子たる放射素子4並びに第2素子たる無給電素子9が形成されている。 誘電体基板2は、平板状の第1板面部2aと、これに平行な円形板の第2板面部2bとが連結部2cを介して接続されて成り、これらが一体的に成形される。このとき、第2図に示すように、接地端子5と給電端子6を備えたコネクタ7が一体に成形される。接地端子5は筒体で、略中央部に形成したフランジ部表面が第1板面部2aの裏面に露呈するように配置される。また、給電端子6は接地端子5の中心軸上に延在する例えば銅線で構成され、絶縁体6aを介して接地端子5に支持されると共に、第1板面部2aの表面側に延出し先端部が若干露出するように配置される。 そして、誘電体基板2の表裏面に、円形の放射素子4及び無給電素子9が配設されるべき所定形状部分を除く第3図に斜線で示した部分にマスキングが施され、導体の真空蒸着が行なわれる。即ち、高真空中にて導体を熱により蒸発させ誘電体基板2の表裏面に堆積させる。これにより、マスキングした部分を除き誘電体基板2の表裏面に導体の薄膜、即ち導体層が形成される。而して、放射素子4、無給電素子9、及び接地導体3が誘電体基板2の表裏面に密着形成される。このとき、給電端子6の先端は、第1板面部2aの表面に形成された放射素子4と接合され、また接地端子5の筒体外周及びフランジ部表面が接地導体3と接合され、電気的に接続される。 尚、放射素子4及び無給電素子9は対向して設けられ、これらの形状は同一とされるが、円形に限ることなく、矩形等どのような形状であってもよい。また、第2板面部2bは必ずしも無給電素子9と同一形状である必要はなく、例えば第4図に示すように形成し、その板面上の二点鎖線で示した部分に無給電素子9を蒸着することとしてもよい。」(第3頁左下欄第11行~第4頁左上欄10行) イ 第1図 [図:0001431948000003.jpg] ウ 第2図 [図:0001431948000004.jpg] (2)周知文献2の記載 原査定で周知技術を示すために引用された特開平7-74532号公報(以下「周知文献2」という。)には、次の記載がある。 ア 「【請求項1】誘電体基板上に形成され、給電伝送線により直接給電が行なわれる給電素子と、 上記給電素子により誘電体または空間を介して給電が行われる放射素子と、 上記給電素子の中央部またはその近傍に配置され、上記放射素子を上記給電素子上に支持する、誘電体で構成された支持柱とを備えたことを特徴とするマイクロストリップアンテナ。」 イ 「【0002】 【従来の技術】図5は、例えば Peter Peregrinvs Ltd の Handbook of MICROSTRIP ANTENNASに示された従来の電磁結合型マイクロストリップアンテナの構造図の一例である。ここで、図において、1は電波を空間に放射するための放射素子、2は放射素子1に対し給電を行なうための給電素子、3は写真食刻等により放射素子1が形成された放射素子基板、4は写真食刻等により給電素子2が形成された給電素子基板、5は放射素子基板3を給電素子基板4に固定するための支持柱であり、給電素子基板4の給電素子2が形成された領域の外に互いに対向するように離れて2本設けられている。また、6は給電素子基板4の放射素子基板3が配置された面とは反対側の面に形成された地導体である。 【0003】次に動作について説明する。給電素子2は同軸線路またはストリップ線路などにより直接給電され、給電素子基板4上に配置された誘電体、または金属等で構成された支持柱5を介して、給電素子基板4と一定の間隔を保持し配置された放射素子1と電磁結合される。これにより給電素子2と放射素子1とが電気的に結合して共振し、放射素子1より電波が空間に放射される。このとき、放射素子1は空間を介して地導体6上に配置される構造となるため、放射にかかわる等価的な比誘電率εeff は、静電近似をすれば以下の式で表される。」 ウ 図5 [図:0001431948000005.jpg] (3)周知文献3の記載 当審で周知技術を示すために本審決で引用する特開平2-252304号公報(以下「周知文献3」という。)には、次の記載がある。なお、当該周知文献3は、本願明細書の【背景技術】を説明するために提示された先行技術文献である。 ア 「本発明は、放射素子を励振素子と電磁結合したアンテナにおいて、給電線路と励振素子の群、放射素子の群及び金属遮蔽板を各々異なる層に形成して、それぞれ別個に最適な設計ができる平面アンテナである。 すなわち、第1図に示すように、複数の誘電体層と複数の導体層とが交互に積層されており、最下層に全面導体である接地導体1、誘電体2からなる層、複数の給電線路4および複数の励振素子3を構成する導体層、誘電体8aからなる層、他の導体と絶縁され、かつ複数の励振素子3と対に電磁結合された複数の無給電放射素子9を構成する導体層、誘電体8bからなる層、電波放射のための複数の開口部6を有する金属遮蔽板7の順に重ねられ、かつ、各々の励振素子3、無給電放射素子9及び電波放射のための開口部6が互いにその積層体のなす平面での位置がほぼ一致するように重ねられた平面アンテナである。」(第2頁左下欄第6行~右下欄第3行) イ 第1図(a)及び(b) [図:0001431948000006.jpg] 第1図(b)によれば、無給電放射素子9はポリエステルフィルム10の上面に形成されている。 (4)周知技術の認定 周知文献1には、放射素子4及び放射素子4に対向した無給電素子9からなるマイクロストリップアンテナ1において、放射素子4及び無給電素子9を誘電体基板2の表面に形成することが記載されている。 また、周知文献2には、給電素子2及び給電素子2と電磁結合された放射素子1からなる電磁結合型マイクロストリップアンテナにおいて、給電素子2を写真食刻等により給電素子基板4に形成し、放射素子1を写真食刻等により放射素子基板3に形成し、基板は誘電体基板であることが記載されている。 さらに、周知文献3には、放射素子を励振素子と電磁結合したアンテナにおいて、誘電体2からなる層、複数の励振素子3を構成する導体層、誘電体8aからなる層、他の導体と絶縁され、かつ複数の励振素子3と対に電磁結合された複数の無給電放射素子9を構成する導体層、誘電体8bからなる層が順に重ねられ、無給電放射素子9はポリエステルフィルム10の上面に形成されていることが記載されている。 よって、周知文献1、2及び3によれば、放射素子及び無給電素子からなるアンテナにおいて、放射素子及び無給電素子を、多層基板などの誘電体基板の表面に形成することは、本願出願前に周知(以下「周知技術」という。)であったと認められる。 第5 対比 1 発明特定事項A及びKについて 発明特定事項Aは、「アンテナ基板であって、」というものであり、発明特定事項Kは、「アンテナ基板」というものである。 本願発明の「アンテナ基板」は、発明特定事項B~Dの「誘電体層」、発明特定事項Eの「給電素子」、発明特定事項Fの「無給電素子」を備えるものである。してみれば、引用発明の「アンテナモジュール100」は、「放射電極121,122と、誘電体基板160を備える」(構成a)ものであることから、本願発明の「アンテナ基板」に相当する。 よって、本願発明と引用発明とは、発明特定事項A及びKにおいて一致する。 2 発明特定事項B、C及びDについて 発明特定事項Bは、「平板状のセラミック誘電体である第1誘電体層と、」というものである。また、発明特定事項Cは、「前記第1誘電体層の上面側に配置された平板状のセラミック誘電体である第2誘電体層と、」というものであり、発明特定事項Dは、「前記第1誘電体層と、前記第2誘電体層との間に配置された枠状のセラミック誘電体である第1中間誘電体層と、」というものである。 引用発明の「誘電体基板160」は「複数の誘電体層が積層された多層構造」(構成b)であり、また、「誘電体基板160」における「放射電極121と放射電極122との間の層」に「空洞部150が形成され」(構成d)ている。これらのこと及び図2から、「誘電体基板160」の中間部分は空洞部が形成されている誘電体層であるといえる。また、「誘電基板160」の空洞部150が形成されている層は、その層を法線方向から平面視した場合、誘電体によって空洞部150が取り囲まれている構造であることは明らかであるため、「枠状」の誘電体層といえる。 一方、引用発明の「誘電体基板160」には、「空洞部150よりも上面側に、第1辺161で支持された誘電体層(以下、「梁部」とも称する。)165」(構成d)を含むものであることから、空洞部150が形成されている層よりも上面側には誘電体層が形成されている。そして、「梁部165の周囲」には、「開口部152が形成され」(構成e)ているから、上面側の層は開口部を有する誘電体層である。さらに、「誘電基板160」は「多層構造」(構成b)であることから、上面側の層が「平板状」であることは明らかであり、「枠状」の誘電体層よりも上面側には、「平板状」の誘電体層があるといえる。 次に、引用発明の「誘電体基板160」は「誘電体基板160の下面に近い層に、接地電極GNDが配置」(構成f)されていることから、空洞部150が形成されている層よりも下面側には、接地電極GNDが配置される誘電体層が形成されている。接地電極GND配置される誘電体層は、図2を参照すると、「枠状」の誘電体層よりも下面側の層である。そして、「誘電基板160」は「多層構造」であることから、誘電体層が「平板状」であることは明らかであり、「枠状」の誘電体層よりも下面側には、「平板状」の誘電体層があるといえる。 そして、引用発明の「誘電体基板160」は「セラミックスを用いて形成」(構成c)されているので、「枠状」の誘電体層と、「枠状」の誘電体層よりも上面側の「平板状」の誘電体層、「枠状」の誘電体層よりも下面側の「平板状」の誘電体層は、いずれもセラミック誘電体である。 そうすると、引用発明の「枠状」の誘電体層よりも下面側の「平板状」の誘電体層は、本願発明の「第1誘電体層」に相当する。そして、本願発明の「第1誘電体層」と引用発明の「枠状」の誘電体層よりも下面側の「平板状」の誘電体層は、発明特定事項Bの「前記平板状のセラミック誘電体である」点で一致する。 また、引用発明の「枠状」の誘電体層よりも上面側の「平板状」の誘電体層は、本願発明の「第2誘電体層」に相当する。そして、「枠状」の誘電体層よりも上面側の「平板状」の誘電体層は、「枠状」の誘電体層よりも下面側の「平板状」の誘電体層に対して、上面側に配置されていることは明らかであるから、本願発明の「第2誘電体層」と引用発明の「枠状」の誘電体層よりも上面側の「平板状」の誘電体層は、発明特定事項Cの「前記第1誘電体層の上面側に配置された平板状のセラミック誘電体である」点で一致する。 さらに、引用発明の「枠状」の誘電体層は、本願発明の「第1中間誘電体層」に相当する。そして、「枠状」の誘電体層はこれら2つの「平板状」の誘電体層の間に配置されているので、本願発明の「第1中間誘電体層」と引用発明の「枠状」の誘電体層は、発明特定事項Dの「前記第1誘電体層と、前記第2誘電体層との間に配置された枠状のセラミック誘電体である」点で一致する。 よって、本願発明と引用発明とは、発明特定事項B、C及びDにおいて一致する。 なお、後の参照の便宜のため、以下の図に示すように、引用発明における、「枠状」の誘電体層よりも下面側の「平板状」の誘電体層、「枠状」の誘電体層よりも上面側の「平板状」の誘電体層、及び「枠状」の誘電体層については、それぞれ、「下部誘電体層A」、「上部誘電体層C」及び「中間誘電体層B」と称することにする。 引用文献1の図2 [図:0001431948000007.jpg] 3 発明特定事項E及びFについて 発明特定事項Eは、「前記第1誘電体層の上面に設けられた給電素子と、」というものであり、発明特定事項Fは、「前記第2誘電体層の上面に設けられた無給電素子であって、前記第1誘電体層の厚み方向で前記給電素子と重なる位置に設けられた無給電素子と、」というものである。 引用発明は、「放射電極121が給電素子であり、放射電極122が無給電素子」(構成i)であることから、引用発明の「放射電極121」及び「放射電極122」は、それぞれ本願発明の「給電素子」及び「無給電素子」に相当する。 また、引用発明の「放射電極121と放射電極122」は、「アンテナモジュール100を平面視した場合に、それぞれの対角線の交点(すなわち中心)が一致するように重なる」(構成j)位置に設けられている。ここで、「アンテナモジュール100を平面視した場合」とは、図2からも明らかなように、多層構造の誘電体基板160を厚み方向(図2のZ軸方向)から平面視した場合である。そうすると、本願発明の「無給電素子」と引用発明の「放射電極122」は、誘電体基板160の「厚み方向で前記給電素子と重なる位置に設けられ」ている点で共通する。 次に、引用発明の「放射電極122」については、「空洞部150よりも上面側に、第1辺161で支持された層」(構成d)に配置されていることから、「上部誘電体層C」に形成されている。 また、引用発明の「放射電極122と接地電極GNDとの間の層には、矩形形状の放射電極121が配置」(構成h)されている。ここで、「放射電極122と接地電極GNDとの間の層」は、「中間誘電体層B」又は「下部誘電体層A」が該当するが、「中間誘電体層B」は空洞部150を形成する層であって、放射電極121を形成する層ではないから、「放射電極121」は「下部誘電体層A」に形成されている。 さらに、「放射電極121」及び「放射電極122」は、図2を参照すると、それぞれ「下部誘電体層A」の内部及び「上部誘電体層C」の内部に設けられている。 してみれば、本願発明の「給電素子」と引用発明の「放射電極121」は、「第1誘電体層に設けられている」点で共通し、また、本願発明の「無給電素子」と引用発明の「放射電極122」は、「第2誘電体層に設けられている」点で共通する。 ただし、本願発明は、「給電素子」が「第1誘電体層の上面」に設けられているのに対して、引用発明は、「放射電極121」が「下部誘電体層A」の内部に設けられている点で相違し、本願発明は、「無給電素子」が「第2誘電体層の上面」に設けられているのに対して、引用発明は、「放射電極122」が「上部誘電体層C」の内部に設けられている点で相違している。 4 発明特定事項Gについて 発明特定事項Gは、「前記給電素子が収容され、前記第1誘電体層の上面と、前記第1中間誘電体層の内周面と、前記第2誘電体層の下面とによって区画される第1中空領域が形成され、」というものである。 引用発明の「空洞部150」は、本願発明の「第1中空領域」に相当する。 引用発明の「中間誘電体層B」は、上記2でも述べたように、その中間誘電体層Bを法線方向から平面視した場合「枠状」であるから、引用発明の「中間誘電体層B」にも内周面があることは明らかである。また、「空洞部150」は、「下部誘電体層C」の上面と「上部誘電体層A」の下面と「中間誘電体層B」の内周面とによって区画されていることも明らかである。 そうすると、本願発明の「第1中空領域」と引用発明の「空洞部150」は「前記第1誘電体層の上面と、前記第1中間誘電体層の内周面と、前記第2誘電体層の下面とによって区画されて」「中空領域が形成」されている点で共通する。 ただし、本願発明は、「第1中空領域」に「給電素子が収容され」ているのに対し、引用発明は、「空洞部150」に「放射電極121」が収容されていない点で相違している。 5 発明特定事項Hについて 発明特定事項Hは、「前記給電素子は、前記第1中空領域内で、前記厚み方向で前記無給電素子と重なる位置において、前記第2誘電体層の下面と空間を介して配置され、」というものである。 上記3のとおり、引用発明の「放射電極121」は、誘電体基板160の厚み方向(図2のZ軸方向)で「放射電極122」と重なる位置である。また、引用発明の「誘電体基板160」の「下部誘電体層A」には「放射電極121」が形成され、「上部誘電体層C」には「放射電極122」が形成されている。そして、上記4のとおり「下部誘電体層A」と「上部誘電体層C」の間には中空領域として空間が形成されている。 そうすると、引用発明の「放射電極121」は、多層構造の誘電体基板160の厚み方向で「放射電極122」と重なる位置において、「上部誘電体層C」の下面と空間を介して配置されている。 してみれば、本願発明の「給電素子」と引用発明の「放射電極121」は、「前記厚み方向で前記無給電素子と重なる位置において、前記第2誘電体層の下面と空間を介して配置され」ている点で共通する。 ただし、本願発明は、「給電素子」が「第1中空領域内で」、「配置され」ているのに対して、引用発明は、「放射電極121」が「空洞部150」内に配置されていない点で相違している。 6 発明特定事項Iについて 発明特定事項Iは、「前記アンテナ基板の外部領域と、前記第1中空領域とを連通する貫通孔が形成され、」というものである。 引用発明の「誘電体基板160」は、「空洞部150よりも上面側に、第1辺161で支持された層(以下、「梁部」とも称する。)165を含み」(構成d)、「梁部165の周囲には、第2辺162~第4辺164に沿って開口部152が形成されており、当該開口部152は空洞部150まで貫通され」(構成e)るものである。ここで、「開口部152」とは、図2を参酌すると、上部誘電体層Cに形成され、アンテナモジュール100の外部領域と空洞部140とを連通する貫通した開口部分のことである。 してみれば、本願発明と引用発明とは、「前記アンテナ基板の外部領域と、前記第1中空領域とを連通する」「貫通」した開口部分が「形成され」ている点で共通する。 ただし、貫通した開口部分が、本願発明は、「孔」であるのに対し、引用発明は、上部誘電体層Cの第2辺162~第4辺164に沿って形成されている開口であって、「孔」といえる形状ではない点で相違している。 7 発明特定事項Jについて 発明特定事項Jは、「前記給電素子のうち、前記第1誘電体層に接していない表面、または、前記無給電素子のうち、前記第2誘電体層に接していない表面の少なくともいずれか一方は、誘電体によって被膜されていないことを特徴とする、」というものである。 上記3のとおり、引用発明の「放射電極121」は、「下部誘電体層A」の上面ではなくて、「下部誘電体層A」の内部に形成されており、「誘電体によって被膜されていない」とはいえない。 同様に、引用発明の「放射電極122」は、図2を参照すると、「上部誘電体層C」の上面ではなくて、「上部誘電体層C」の内部に形成されており、「誘電体によって被膜されていない」とはいえない。 してみれば、給電素子及び無給電素子について、本願発明は、「前記給電素子のうち、前記第1誘電体層に接していない表面、または、前記無給電素子のうち、前記第2誘電体層に接していない表面の少なくともいずれか一方は、誘電体によって被膜されていない」のに対し、引用発明は、そのように「誘電体によって被膜されていない」ことは特定されていない点で相違している。 8 一致点、相違点 以上によれば、本願発明と引用発明とは、以下の点で一致し、相違する。 [一致点] アンテナ基板であって、 平板状のセラミック誘電体である第1誘電体層と、 前記第1誘電体層の上面側に配置された平板状のセラミック誘電体である第2誘電体層と、 前記第1誘電体層と、前記第2誘電体層との間に配置された枠状のセラミック誘電体である第1中間誘電体層と、 前記第1誘電体層に設けられた給電素子と、 前記第2誘電体層に設けられた無給電素子であって、前記第1誘電体層の厚み方向で前記給電素子と重なる位置に設けられた無給電素子と、 を備え、 前記第1誘電体層の上面と、前記第1中間誘電体層の内周面と、前記第2誘電体層の下面とによって区画される第1中空領域が形成され、 前記給電素子は、前記厚み方向で前記無給電素子と重なる位置において、前記第2誘電体層の下面と空間を介して配置され、 前記アンテナ基板の外部領域と、前記第1中空領域とを連通する貫通した開口部分が形成される、 アンテナ基板。 [相違点1] 本願発明は、「給電素子」が「第1誘電体層の上面」に設けられているのに対して、引用発明は、「放射電極121」が「下部誘電体層A」の内部に設けられている点。 [相違点2] 本願発明は、「無給電素子」が「第2誘電体層の上面」に設けられているのに対して、引用発明は、「放射電極122」は「上部誘電体層C」の内部に設けられている点。 [相違点3] 本願発明は、「第1中間領域」に「給電素子が収容され」ているのに対し、引用発明は、「空洞部150」に「放射電極121」が収容されていない点。 [相違点4] 本願発明は、「給電素子」が「第1中空領域内で」、「配置され」ているのに対して、引用発明は、「放射電極121」が「空洞部150」内に配置されていない点。 [相違点5] 貫通した開口部分が、本願発明は、「孔」であるのに対し、引用発明は、上部誘電体層Cの第2辺162~第4辺164に沿って形成されている開口であって、「孔」といえる形状ではない点。 [相違点6] 給電素子及び無給電素子について、本願発明は、「前記給電素子のうち、前記第1誘電体層に接していない表面、または、前記無給電素子のうち、前記第2誘電体層に接していない表面の少なくともいずれか一方は、誘電体によって被膜されていない」のに対し、引用発明は、そのように「誘電体によって被膜されていない」ことは特定されていない点。 第6 判断 1 相違点1~4及び6について 相違点1及び2については、引用発明の給電素子である「放射電極121」及び無給電素子である「放射電極122」が、いずれも誘電体層160のうち「下部誘電体層A」及び「上部誘電体層C」の上面に形成されていることが特定されていないものである。そして、相違点3及び4では、相違点1で述べたように「下部誘電体層A」の上面に給電素子が形成されていないため、「下部誘電体層A」の上面によって区画される「空洞部150」に、給電素子が収容又は配置されないことになる。また、相違点6も相違点1及び2で述べたように、「下部誘電体層A」の上面に「放射電極121」が形成されておらず、「上部誘電体層C」の上面に「放射電極122」が形成されていないため、「放射電極121」が「下部誘電体層A」に接していない表面が「誘電体によって被膜されていない」ことになり、さらに、「放射電極122」が「上部誘電体層C」に接していない表面が「誘電体によって被膜されていない」ことになる。 したがって、相違点1~4及び6については、「放射電極121」及び「放射電極122」の誘電体層への形成に関することであるので、まとめて検討することにする。 放射素子及び無給電素子からなるアンテナにおいて、放射素子及び無給電素子を多層基板などの誘電体基板の表面に形成することは、本願出願前に周知技術であったと認められる(上記第4、2)。 そして、引用発明と周知技術は、いずれも給電素子及び無給電素子からなるアンテナであり、誘電体基板に形成した給電素子と無給電素子は空間を介して電磁的な結合によって機能させている点で共通し、さらに、引用発明は、多層構造を有するアンテナ(構成a、b)であるところ、周知文献3の記載から明らかなように、多層構造を有するアンテナにおいても、放射素子及び無給電素子を誘電体基板の表面に形成する構成は、従前から用いられているから、引用発明において、これらの素子を誘電体の表面に設けて上記相違点1及び2の構成とすることは、当業者が適宜選択し得たことであり、誘電体層の内部に設けている点に格別の技術的意義は認められない。 また、上記相違点1の構成とすることで、引用発明の「放射電極121」が「下部誘電体層A」の上面に形成され、「空洞部150」に収容又は配置される構成になること、すなわち、上記相違点3及び4の構成となることは明らかである。 さらに、上記相違点1及び2の構成とすることで、引用発明の「放射電極121」のうち、「下部誘電体層A」に接していない表面、または、「放射電極121」のうち、「上部誘電体層C」に接していない表面が「誘電体によって被膜」されていない構成になること、すなわち、上記相違点6の構成になることも明らかである。 2 相違点5について 上記第4、1(1)ウ及びオによれば、引用文献1には、引用発明の上部誘電体層Cに形成された開口部152の変形例5が記載されている。すなわち、引用発明の上部誘電体層Cに形成された開口部152については「梁部165の周囲に」「第2辺162~第4辺164に沿って」「形成」(構成e)された開口としているが、変形例5(特に図8を参照)については、そのような開口ではなく、「比較的小さな円形」とした開口、つまり「孔」といえる開口とするものが記載されている。 したがって、引用発明の上部誘電体層Cに形成された開口部152を変形することは、変形例5のように当業者が適宜なし得た設計事項であり、開口部152を「孔」とすることについては何ら格別なことではない。 3 効果についての判断 これらの相違点を総合的に勘案しても、本願発明の奏する作用効果は、引用発明及び周知技術の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。 4 請求人の主張について 請求人は、審判請求書の「3-2.対比」において、引用文献1には、外部領域と連通した空間に一部が誘電体により被膜されていない給電素子および無給電素子の構成について開示も示唆もされていない旨、主張している(以下「主張1」という。)。また、引用文献2で開示されている技術は、位置ずれを抑制するために異なる誘電体基板を積層することを回避し、1つの誘電体基板に対して異なる高さ位置の板面部2a,2bを形成し、形成された板面部2a,2b上に給電素子及び無給電素子を配置するため、積層構造を有する引用文献1のアンテナモジュールに対して、「異なる誘電体基板を積層することを回避したパッチアンテナにおける技術」が記載された引用文献2の技術を組み合わせる動機付けは当然存在せず、さらに、組み合わせることには阻害要因が存在する旨、主張している(以下「主張2」という。)。さらに、引用文献3の開示発明は、図1に示されるように「支持柱5を給電素子2の表面を覆うように配置されたパッチアンテナにおける技術」であり、「パッチアンテナにおける技術」との審査官の技術認定は誤りであり、引用文献1に記載されたアンテナモジュールでは、引用文献3の給電素子2に相当する「放射電極121」の表面に、引用文献3の支持柱5のような構造が存在することは考慮されていない旨、主張している(以下「主張3」という。)。 上記主張1について検討する。 請求人の上記主張1は、上記1で述べたように相違点6の構成についてである。してみれば、引用発明において、給電素子である「放射電極121」、及び無給電素子である「放射電極122」を各誘電体層の内部に設けているのに変えて、上記周知技術のように各誘電体層の上面に設けることは、当業者が適宜なし得たものであり、その際、引用発明の「放射電極121」のうち、「下部誘電体層A」に接していない表面、または、「放射電極121」のうち、「上部誘電体層C」に接していない表面が「誘電体によって被膜」されていない構成となることは明らかである。 よって、請求人の主張1は採用することができない。 上記主張2について検討する。 上記1のとおり、引用発明と引用文献2などに記載されている周知技術は、いずれも給電素子及び無給電素子からなるアンテナであり、基板に形成した給電素子と無給電素子は空間を介して電磁的に結合させて機能させている点で共通するものである。してみれば、引用文献2が、1つの誘電体基板に対して異なる高さ位置の板面部2a,2bを形成し、形成された板面部2a,2b上に給電素子及び無給電素子を配置するものであったとしても、誘電体基板である板面部2a,2bの表面に給電素子及び無給電素子を配置し、給電素子及び無給電素子を、空間を介して電磁的に結合させて機能させているものであることから、引用発明に引用文献2等に記載されている周知技術を適用する動機付けは存在し、また、アンテナの機能を鑑みても、組み合わせることに阻害要因があるとは認められない。 上記主張3について検討する。 令和6年10月22日付けの拒絶理由通知では、引用文献3については、特に、段落[0002]、図5、6について参照をしている。すなわち、段落[0002]、図5については、上記の第4、2(3)に記載のとおりであり、図1に示されるような「支持柱5を給電素子2の表面を覆うように配置されたパッチアンテナにおける技術」ではない。 よって、請求人の主張3は採用することができない。 5 小括 したがって、本願発明は、引用発明及び引用文献1に記載された技術並びに周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 第7 むすび 以上のとおり、本願発明は、引用発明及び引用文献1に記載された技術並びに周知技術に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。

審決本文(J-PlatPat)

J-PlatPatの審決検索トップを開きます。番号入力で「審判番号」を選び、下の番号を貼り付けて検索してください。

J-PlatPat 審決検索を開く
2025-004407

番号・当事者・条文・審決分類・商標の称呼が一致(または近い)審決を機械的に集めた候補です。判断内容は各審決の本文でご確認ください。

同じ当事者の審決114件(日本特殊陶業株式会社)
  • 2025-015038拒絶査定不服審判 / 2026-08-21 / 原査定取消(特許/登録すべき)圧電アクチュエータ
    同じ当事者: 日本特殊陶業株式会社
  • 2024-020816拒絶査定不服審判 / 2026-07-21 / 原査定取消(特許/登録すべき)セラミックスヒータおよび保持部材
    同じ当事者: 日本特殊陶業株式会社
  • 2025-008868拒絶査定不服審判 / 2026-07-06 / 原査定取消(特許/登録すべき)保持装置
    同じ当事者: 日本特殊陶業株式会社
  • 2024-016193拒絶査定不服審判 / 2026-03-25 / 原査定取消(特許/登録すべき)複合部材、接合体、および、保持装置
    同じ当事者: 日本特殊陶業株式会社
  • 2024-013499拒絶査定不服審判 / 2026-03-02 / 原査定取消(特許/登録すべき)スパークプラグ
    同じ当事者: 日本特殊陶業株式会社
検索でもっと見る →
同じ論点・分野の審決(審決分類)125件(121・H01Q)
  • 2025-006965拒絶査定不服審判 / 2026-05-26 / 原査定取消(特許/登録すべき)身体装着用医療デバイスのためのバッテリアンテナ配置
    共通の審決分類: 121・H01Q
  • 2024-016912拒絶査定不服審判 / 2025-07-15 / 原査定取消(特許/登録すべき)通信装置
    共通の審決分類: 121・H01Q
  • 2024-008441拒絶査定不服審判 / 2024-12-09 / 請求不成立車両用アンテナグレージング
    共通の審決分類: 121・H01Q
  • 2023-006396拒絶査定不服審判 / 2024-11-12 / 原査定取消(特許/登録すべき)アンテナ構造及び移動端末
    共通の審決分類: 121・H01Q
  • 2023-022126拒絶査定不服審判 / 2024-05-15 / 原査定取消(特許/登録すべき)路側機及び交通通信システム
    共通の審決分類: 121・H01Q

メモ・タグ(非公開)

あなただけに表示されます。審決本文の公開範囲は変わりません。

メモとタグは Pro の機能です。ログイン/Proでメモを保存