特許拒絶査定不服審判
2025-001409
分析物検出のためのユニバーサルバイオセンサーシステム
- 審判番号
- 2025-001409
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2022-195499
- 請求日
- 2025年01月31日
- 審決日
- 2026年03月09日
- 公報発行日
- 2026年08月28日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】ファンダメンタル ソリューションズ コーポレーション
- 【請求人代理人】矢口 太郎
- 審判長/審判官
- 審判長 加々美 一恵
- 審判官 野村 伸雄
- 審判官 松本 隆彦
- 分類
- P18 .536-Z (G01N)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法36条4項1号
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第36条第4項第1号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2022-195499「分析物検出のためのユニバーサルバイオセンサーシステム」拒絶査定不服審判事件〔令和 5年 4月26日出願公開、特開2023- 59269〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、2017年(平成29)年12月21日(パリ条約による優先権主張外国庁受理、2016年12月22日 (US)米国、2017年7月6日 (US)米国)を国際出願日とする特願2019-534878号の一部を令和4年12月7日に新たな特許出願としたものであって、その主な手続きの経緯は、次のとおりである。
令和4年12月29日 :手続補正書、上申書の提出
令和5年 3月31日 :手続補正書、上申書の提出
令和6年 1月18日付け :拒絶理由通知
同年 7月19日 :意見書、手続補正書の提出
同年 9月24日付け :拒絶査定
令和7年 1月31日 :審判請求書の提出
同年 3月10日 :手続補正書(審判請求書を補正するもの)の提出
第2 本願発明
本願の請求項1~11に係る発明は、令和6年7月19日提出の手続補正書によって補正された特許請求の範囲の請求項1~11に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、次のとおりのものである。
「 【請求項1】
標的分析物を検出するためのバイオセンサーシステムであって、
(a)所定の種類の生体細胞と、
(b)前記生体細胞に関連するシグナル生成レポーターと、
(c)前記シグナル生成レポーターに関連する活性化メカニズムであって、前記活性化メカニズムが、
(i)前記生体細胞のpHまたは温度の変化;
(ii)前記生体細胞の電気的または磁気的性質の変化;
(iii)前記生体細胞内のGタンパク質共役受容体シグナル経路の活性化;
(iv)前記生体細胞内のホスファチジルイノシトール経路の活性化;
(v)ジアシルグリセロール、セラミド、または他の親油性メッセンジャー分子を放出する前記生体細胞内のシグナル伝達経路の活性化;
(vi)一酸化窒素、cAMP、cGMP、または他の環状ヌクレオチドを放出または生成する前記生体細胞内のシグナル伝達経路の活性化;
(vii)スーパーオキシド、過酸化水素、一酸化炭素、硫化水素、または他の二次酸化還元シグナル分子を放出または生成する前記生体細胞内のシグナル伝達経路の活性化;または
(viii)前記生体細胞によって発現される受容体の構造変化;
からなる群から選択される事象によって活性化される、前記活性化メカニズムと、
(d)前記活性化メカニズムに関連する非抗体ユニバーサル検出成分であって、前記非抗体ユニバーサル検出成分が、
(i)T細胞可変結合(VJ)領域、可変多様性結合(VDJ)領域、または他のT細胞受容体決定基;
(ii)合成ペプチド;
(iii)レクチン決定因子、炭水化物結合モジュール、または他の炭水化物結合決定因子;
(iv)脂質結合決定因子;
(v)金属または他の金属結合決定因子を結合するメタロチオン決定因子;
(vi)免疫受容体チロシン系阻害モチーフ(ITIM);
(vii)前記生体細胞内のシグナル伝達経路のFc結合部分に非共有結合するFc決定因子;または
(viii)前記生体細胞内のシグナル伝達経路のビオチンまたはストレプトアビジン結合部分に非共有結合するビオチンまたはストレプトアビジン決定因子;
からなる、前記非抗体ユニバーサル検出成分と、および
(e)前記ユニバーサル検出成分に関連する分析物結合成分であって、前記分析物結合成分は、前記ユニバーサル検出成分および標的分析物の両方に特異的である、前記分析物結合成分と、
を含む、バイオセンサーシステム。」
第3 原査定の拒絶の理由の概要
原査定における拒絶の理由のうち、本願発明に対する理由2(実施可能要件)の概要は、発明の詳細な説明の記載は、請求項1に係る発明について、当業者が実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものではないから、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしておらず、特許を受けることができない、というものである。
第4 当審の判断
1 実施可能要件違反の判断基準
本願発明は物の発明であるところ、物の発明について実施可能要件を充足するためには、発明の詳細な説明に、当業者が、発明の詳細な説明の記載及び出願時の技術常識に基づいて、過度の試行錯誤を要することなく、その物を生産し、使用することができる程度の記載があることを要する。
本願発明においては、物の発明を構成する各要素のうち「活性化メカニズム」、「非抗体ユニバーサル検出成分」について、それぞれ(i)~(viii)の選択肢がある。各選択肢はいずれも「活性化メカニズム」、「非抗体ユニバーサル検出成分」として具体的に採用可能な選択肢であるから、各選択肢それぞれについて、上記基準を満たしている必要がある。(仮に、本件出願時に実施可能でない具体的な選択肢が含まれている場合、本願出願後に無関係の第三者が当該選択肢を実施可能とする条件を実験等により初めて見出したといった事情があっても、本件出願人が当該選択肢に対して特許を取得できることとなってしまう。このような状況は、先願主義にもとるものであって、容認することはできない。)
そこで、以下この考え方に基づいて検討する。
2 発明の詳細な説明の記載
本願の発明の詳細な説明には、以下の記載がある。
「【0018】
シグナル生成レポーター
本発明の例示的実施形態は、生きた、改変バイオセンサー細胞によって産生または発現されるレポータータンパク質または酵素などのレポーター成分を含む。レポータータンパク質は、生きた、改変バイオセンサー細胞のサイトゾルにおける特定の所定の変化に応答して検出可能なシグナルを発する。本発明の特定の実施形態では、レポータータンパク質は、水生動物Aequorea Victoriaに由来するエクオリンなどの生物発光性発光タンパク質である。エクオリンは、生体シグナルセンサー細胞を操作して、さまざまなシグナル伝達経路の活性化に応答して光シグナルを生成するために使用され、そのように、生体細胞におけるエクオリンの産生を操作するための様々な方法は当業者によく知られている。特に、当業者は、適切な遺伝物質をバイオセンサー細胞に導入するために、例えば、細菌プラスミドベクターまたはウイルスベクターなどの任意の適切な遺伝子送達手段を選択し使用し得る。バイオセンサー細胞内のレポータータンパク質の産生は、導入された遺伝物質の発現によって制御されるだろう。当業者であれば、また、他の発光タンパク質または他の種類のレポータータンパク質、酵素、および分子を本発明の様々な代替の実施形態に組み込んで利用できることも理解するだろう。
【0019】
本発明の様々な実施形態において、レポーターは、少なくとも1つの生化学的経路の活性化および結果として生じる生体細胞の変化に応答して検出可能な変化を受ける蛍光特性を有するタンパク質であり得る。レポーターまたはレポータータンパク質は、オベリン、タラシコリン、ミトロコミン(ハリスタリン)、クリチン(フィアリジン)、ニモプシン、ベロビン、インド-1、フラ-2、キン-2、フルオ-3、Rhod-2、カルシウムグリーン、BAPTA、カメレオン(A.Miyawaki et al.,(1999)Proc.Natl.Acad.Sci.96,213540)、または同様の分子などの他のカルシウム感受性発光または蛍光分子であり得る。レポータータンパク質は、Ca2+結合ドメインおよび関連する蛍光タンパク質を含むキメラタンパク質であり得る。関連する蛍光タンパク質は、緑色蛍光タンパク質(GFP)であり得る。タンパク質は、ホスファチジルイノシトール経路(すなわち、本明細書に記載の実施形態で使用される経路)の他の成分と結合し、その蛍光を変え得る。一例は、ジアシルグリセロールと結合するように操作された蛍光タンパク質である。レポーターは、発光シグナルまたは蛍光シグナルを生じるように適合されている酵素であり得る。レポータータンパク質は、それぞれ発光シグナルまたは蛍光シグナルを生じるルシフェラーゼまたはアルカリホスファターゼなどの酵素であり得る。それはまた、蛍光タンパク質であり得るか、または蛍光、荷電、もしくは磁性ナノ粒子、ナノドット、もしくは量子ドットを含み得る。レポーターは、蛍光、紫外線、または可視特性を有する染料とすることができ、蛍光、紫外線、または可視特性は、少なくとも1つの生化学的経路の活性化および結果として生じる生体細胞の変化に応じて検出可能な変化を受ける。」
「【0020】
活性化剤メカニズム
本発明の例示的実施形態は、生きた、改変バイオセンサー細胞によって発現されるシグナル伝達経路の形態の活性化剤機構を含む。シグナル伝達経路は、生きた、改変細胞のサイトゾル内の少なくとも1つの生物学的プロセスを制御し、少なくとも1つの生物学的プロセスが起こると、レポータータンパク質に検出可能なシグナルを放出させる。本発明の特定の実施形態では、シグナル伝達経路は、受容体タンパク質などの細胞表面シグナル伝達分子の活性化に応答して細胞内Ca2+濃度の増加が誘導される任意の生化学的経路である。本発明で使用されるバイオセンサー細胞は、細胞表面シグナル伝達分子の活性化に応答して細胞質Ca2+の増加を生じさせ得る一組の生細胞から選択することができる。例えば、B細胞、T細胞、および肥満細胞は、B細胞受容体、T細胞受容体、およびFcイプシロン受容体(肥満細胞)などの細胞表面シグナル伝達分子の活性化に応答して、Ca2+濃度の増加を誘導する能力を有する。
【0021】
培養中で増殖する哺乳動物細胞は、典型的には特定の個々の細胞がCa2+濃度の増加を誘導する異なる能力を有する可能性がある細胞集団を生成するので、Ca2+シグナルを生成するために、頑強な能力を有する細胞の亜集団またはクローン細胞株を選択又はスクリーニングすることが有用である。これは、例えばエクオリン誘発閃光の誘発を分析することによって達成することができる。特に、細胞への導入遺伝子の導入によって作り出されたトランスフェクタントは、多数の独立した遺伝子挿入事象に由来する細胞の混合集団である。したがって、バイオセンサー細胞を構築するとき、導入された導入遺伝子の有用な発現レベルと共に効率的なシグナル伝達能力を有する細胞またはクローン細胞株の特定のサブセットをスクリーニングまたは選択することが有用である。高発現細胞の亜集団を選択するため、またはこの目的のためにクローン細胞株を作製するために蛍光活性化細胞選別(FACS)技術を使用することは特に有用である。
【0022】
前述のように、エクオリンは、特にそのようなシグナル伝達経路が生細胞内の細胞質Ca2+イオンの増加をもたらす場合、多種多様なシグナル伝達経路の活性化に応答して光シグナルを生成するように生きたバイオセンサー細胞を改変するために以前から使用されてきた。本発明の特定の実施形態において、レポータータンパク質としてエクオリンを産生するバイオセンサー細胞は、検出アッセイにおけるそれらの使用の前に、セレンテラジン(CTZ)を負荷される。この荷電工程はエクオリンを疎水性補欠分子族(例えば、CTZ)に共有結合させ、カルシウム(Ca2+)が結合すると、CTZは、立体構造変化を含む不可逆反応を受け、(469nmで)青色光を放射する。
【0023】
上記のように、シグナル伝達経路は、小胞体から細胞質ゾルへのカルシウムイオンの放出によって第一のシグナルを伝達し得、第二のシグナルは、カルシウムイオンに応答してレポーターによって放出され得る。このシグナル伝達経路は、B細胞、T細胞、肥満細胞、マクロファージ、およびその他の免疫細胞に見られるセカンドメッセンジャーカスケードで、細胞表面受容体の架橋がチロシンキナーゼを活性化し、それが次にホスホリパーゼCをリン酸化し、それがホスファチジルイノシトール4,5-ビスリン酸(PIP2)からイノシトール1,4,5-トリスリン酸(IP3)、およびジアシルグリセロールへと突き進み、その後、IP3はカルシウムチャネルを開き、小胞体などの細胞内貯蔵からカルシウムを放出するか、または細胞外カルシウムを取り込むことによって、細胞のサイトゾル中のカルシウム濃度を上昇させる。受容体の種類、細胞の種類、および所望のシグナル伝達方法に応じて、G-タンパク質-アデニリル環状-cAMP-タンパク質キナーゼAカスケードなどの代替のセカンドメッセンジャーカスケードを使用し得る。シグナル伝達経路はまた、ジアシルグリセロール、セラミド、または他の親油性セカンドメッセンジャー分子の放出によってシグナルを伝達することができ、レポーターはジアシルグリセロール、セラミド、または他の親油性セカンドメッセンジャー分子の放出に応答して第2のシグナルを放出する。シグナル伝達経路はまた、一酸化窒素(「NO」)、cAMP、cGMP、または他の環状ヌクレオチドの放出または産生によってシグナルを伝達することができ、レポーターはこの放出または産生に応答して第2のシグナルを放出する。シグナル伝達経路はまた、スーパーオキシド、過酸化水素、一酸化炭素、硫化水素、または他の二次レドックスメッセンジャーの放出または生成によってシグナルを伝達することができ、レポーターはスーパーオキシドの放出または生成に応答して第2のシグナルを放出する。過酸化水素、一酸化炭素、硫化水素、または他の二次酸化還元メッセンジャー分子。特定の実施形態において、活性化剤メカニズムは、細胞のpHもしくは温度の変化、または細胞の電気的もしくは磁気的性質の変化を含む。」
「【0024】
ユニバーサル検出成分
本発明の例示的実施形態は、標的分析物を認識するためのユニバーサル検出成分として機能する様々な非抗体シグナル伝達成分を含む。各シグナル伝達成分は、典型的には、それ自体受け取るように適合される分析物結合成分(本明細書では「検出分子」とも呼ぶ)を結合する、すなわち対象の特定の分析物を結合するように、受け取るように適合される。一実施形態では、シグナル伝達成分は、バイオセンサー細胞の表面に改変されて発現され、最終的に検出可能なシグナルを放出するレポータータンパク質をもたらすシグナル伝達経路を活性化するように適合された膜貫通キメラ融合タンパク質である。別の実施形態では、シグナル伝達成分は、シグナル伝達経路を活性化するように適合され、最終的に検出可能なシグナルを発するレポータータンパク質を生じさせるように細胞表面シグナルトランスデューサーに結合するように適合される、天然の受容体またはレポータータンパク質のような、細胞表面シグナルトランスデューサーに結合するように適合される、可溶性キメラ融合タンパク質である。さらに別の実施形態では、シグナル伝達成分はバイオセンサー細胞内に改変されて発現される可溶性キメラ融合タンパク質である。可溶性キメラ融合タンパク質は、細胞外シグナルトランスデューサー、例えばシグナル伝達経路を活性化するように適合されて最終的には検出可能なシグナルを放出するレポータータンパク質を生じさせる細胞表面シグナルトランスデューサーに結合される、天然の受容体またはレポータータンパク質のような、細胞表面シグナル伝達に結合される細胞外空間に分泌/排出される。
【0025】
本発明のキメラ融合タンパク質は、(i)少なくとも1つの種類の検出分子(例えば、可溶性抗体)に結合するように適合されるタンパク質の成分、(ii)生きた、改変バイオセンサー細胞によって通常発現されるレセプター複合体の成分を含みうる。いくつかの実施形態では、少なくとも1種類の検出分子に結合するように適合されるタンパク質の成分は、例えば、ストレプトGタンパク質のIgG結合ドメイン(本明細書ではIgGbpまたはIgbpと図中で呼ばれる)のような細菌結合タンパク質(すなわち、細菌に由来する抗体結合タンパク質)に由来し得る。可溶性抗体に対する結合タンパク質の親和性を高めるために、このIgG結合ドメインの縦列反復を含めることができる。代替の実施形態において、少なくとも1種類の検出分子に結合するように適合されているキメラ融合タンパク質の成分は、例えばマウスFcガンマRI(FcγRI)レセプターのような受容体タンパク質に由来する抗体結合ドメインである。様々な例示的実施形態では、生きた、改変バイオセンサー細胞によって通常発現される受容体複合体の成分は、IgM(B細胞バイオセンサー用)、Igα/β(B細胞バイオセンサー用)、IgE(肥満細胞バイオセンサー用)、CD19(B細胞バイオセンサー用)、CD3ゼータ(T細胞バイオセンサー用)、またはFcεRI(肥満細胞バイオセンサー用)である。
【0026】
本発明の非抗体シグナル伝達成分は、より大きなタンパク質分子に由来する選択されたタンパク質ドメインのような完全タンパク質配列または改変タンパク質断片のいずれかを含み得る。当業者であれば、より大きい分子の断片が合成遺伝子技術のような標準的な遺伝子工学技術を用いて作製され得ることを理解するだろう。キメラ融合タンパク質の態様として抗体結合モチーフを改変するために、より大きなタンパク質の断片を使用する場合、選択されたタンパク質断片の適切な立体配座の折り畳みを確実にするように改変されたタンパク質を設計することが重要である。したがって、タンパク質の二次構造を容易に形成しない短いスペーサーまたはリンカー成分を(融合タンパク質中に)含むことは有用である。例えば、グリシン、セリンおよびアラニンなどのアミノ酸の短い組み合わせをこれらのスペーサーまたはリンカー成分に使用することができる。例示的な実施形態において、アミノ酸配列グリシン(G)、セリン(S)、アラニン(A)、セリン(S)、グリシン(G)、セリン(S)、グリシン(G)は、改変タンパク質分子(配列番号19参照)中の受容体複合体の成分から結合ドメインを分離するために使用される。検出成分をシグナル伝達成分に接続するため、またはシグナル伝達成分の異なるセグメントを相互接続するために使用されるペプチドリンカーまたはスペーサーに関して、リンカーは典型的にはある成分のカルボキシル末端を別の成分のアミノ末端に結合する。ペプチドリンカーは、0~25アミノ酸長または任意の中間整数値で変化し得、典型的には、常にではないが、グリシン(G)およびセリン(S)のような親水性アミノ酸を含む。
【0027】
前述のように、各シグナル伝達成分は、対象の特定の分析物に結合する検出分子に結合する。分析物に結合した検出分子は、(i)膜貫通シグナル伝達成分に結合する、または(ii)それ自体が細胞表面シグナルトランスデューサー(例えば天然受容体)に結合することになるシグナル伝達成分のいずれかを行う。第1の状況では、それ自身が膜貫通非抗体シグナル伝達成分に結合する十分な数の分析物が十分な数の検出分子に結合すると、シグナル伝達成分の凝集がバイオセンサー細胞表面上で起こる。経路が活性化され、生物学的プロセスが起こり、検出可能なシグナルがレポータータンパク質によって放出される。第2の場合には、十分な数の分析物と十分な数の検出分子とそれ自身が適切な天然の受容体に結合する十分な数の非抗体シグナル伝達成分とが結合すると、細胞表面、シグナル伝達経路が活性化され、細胞内カルシウムの増加が起こり、検出可能な光がレポータータンパク質によって放出される。
【0028】
各シグナル本発明の例示的実施形態による第1の非抗体シグナル伝達成分は、GSASGSGリンカーを用いてIgM重鎖定常ドメイン(B細胞)に融合した細菌結合タンパク質(IgGbp)を含む。配列番号1は、シグナル伝達成分IgGbp-IgMのDNA配列を提供し、配列番号2は、シグナル伝達成分IgGbp-IgMのタンパク質配列を提供する。
【0029】
本発明の例示的実施形態による第2の非抗体シグナル伝達成分は、GSASGSGリンカーを用いてB細胞受容体のIgα/β成分に融合された細菌結合タンパク質(IgGbp)を含む。配列番号3は、シグナル伝達成分IgGbp-Igα/βのDNA配列を提供し、配列番号4は、シグナル伝達成分IgGbp-Igα/βのタンパク質配列を提供する。
【0030】
本発明の例示的実施形態による第3の非抗体シグナル伝達成分は、GSASGSGリンカーを用いてT細胞受容体のCD3ゼータ鎖に融合した細菌結合タンパク質(IgGbp)を含む。配列番号5は、シグナル伝達成分IgGbp-CD3ζのDNA配列を提供し、配列番号6は、シグナル伝達成分IgGbp-CD3ζのタンパク質配列を提供する。
【0031】
本発明の例示的実施形態による第4の非抗体シグナル伝達成分は、GSASGSGリンカーを用いてIgM重鎖定常ドメイン(B細胞)に融合したFcγRI抗体結合ドメインを含む。配列番号7は、シグナル伝達成分FcγRI-IgMのDNA配列を提供し、配列番号8は、シグナル伝達成分FcγRI-IgMのタンパク質配列を提供する。
【0032】
本発明の例示的実施形態による第5の非抗体シグナル伝達成分は、GSASGSGリンカーを用いてB細胞受容体のIgα/β成分に融合したFcγRI抗体結合ドメインを含む。配列番号9は、シグナル伝達成分FcγRI-Igα/βのDNA配列を提供し、配列番号10は、シグナル伝達成分FcγRI-Igα/βのタンパク質配列を提供する。
【0033】
本発明の例示的実施形態による第6の非抗体シグナル伝達成分は、GSASGSGリンカーを用いてT細胞受容体のCD3ゼータ鎖に融合したFcγRI抗体結合ドメインを含む。配列番号11は、シグナル伝達成分FcγRI-CD3ζのDNA配列を提供し、配列番号12は、シグナル伝達成分FcγRI-CD3ζのタンパク質配列を提供する。
【0034】
本発明に従う第7の例示的非抗体シグナル伝達成分は、GSASGSGリンカーを用いてIgE定常ドメイン(B細胞)に融合された細菌結合タンパク質(IgGbp)を含む。配列番号13は、シグナル伝達成分IgGbp-IgEのDNA配列を提供し、配列番号14は、シグナル伝達成分IgGbp-IgEのタンパク質配列を提供する。
【0035】
本発明による第8の例示的な非抗体シグナル伝達成分は、GSASGSGリンカーを用いてIgE定常ドメイン(B細胞)に融合したFcγRI抗体結合ドメインを含む。配列番号15は、シグナル伝達成分FcγRI-IgEのDNA配列を提供し、配列番号16は、シグナル伝達成分FcγRI-IgEのタンパク質配列を提供する。
【0036】
本発明による第9の例示的非抗体シグナル伝達成分は、GSASGSGリンカーを用いてT細胞受容体のCD3ゼータ鎖に融合した単量体ストレプトアビジンを含む。配列番号17は、シグナル伝達成分mSA-CD3ζのDNA配列を提供し、および配列番号18は、シグナル伝達成分mSA-CD3ζのタンパク質配列を提供する。単量体ストレプトアビジンは、ストレプトアビジン四量体を単量体に分解し、及び得られた単離されたサブユニットの溶解性を増強する突然変異を含むストレプトアビジンの組換え型である。
【0037】
様々な実施形態において、ユニバーサル検出成分は、抗体VDJ領域、Fabフラグメントまたは他の抗体決定基を含む。ユニバーサル検出成分は、T細胞VJ領域、VDJ領域、または他のT細胞受容体決定基を含み得る。ユニバーサル検出成分は、合成ペプチド、ペプチドではない小さな有機決定基、タンパク質またはペプチド決定基、レクチン決定基、炭水化物結合モジュール、または他の炭水化物結合決定基、脂質結合決定基、または金属または他の金属結合決定基を結合するメタロチオン決定基を含み得る。
【0038】
ユニバーサル検出成分は、生きた、生体細胞によって発現されるシグナル伝達経路に共有結合することが可能である。一例は、アンカー部分がシグナル伝達経路の一部である、すなわち、細胞の外側から細胞内にシグナルを伝達する膜アンカー抗体である。いくつかの実施形態では、ユニバーサル検出成分はモジュール式ではないが、シグナル伝達経路の不可欠な部分、例えばその経路を形成するキメラタンパク質の一部である。ユニバーサル検出成分は、シグナル伝達経路に非共有結合することができる。一例は、Fc受容体を担持する分子が膜を通してシグナルを伝達する、シグナル伝達分子上のFc受容体に外部的に結合した抗体である。他の実施形態では、ユニバーサル検出成分はモジュール式であり、シグナル伝達経路を含む細胞には、選択のユニバーサル検出成分を装填することができる。ユニバーサル検出成分は、シグナル伝達経路の一部に非共有結合する決定基を含むことができ、またはユニバーサル検出成分は、それをシグナル変換経路のFc結合部分に非共有結合するFc決定基を含み得る。ユニバーサル検出器成分は、それをシグナル伝達経路のビオチンまたは(ストレプト)アビジン結合部分に非共有結合させるビオチンまたは(ストレプト)アビジン決定基を含み得る。」
「【0039】
検体結合成分/検出分子
本発明の例示的な実施形態は、本明細書で「検出分子」とも呼ばれる少なくとも1種類の検体結合成分を含み、各検体結合成分は特定の標的検体に結合するようになっている。分析物結合成分は、バイオセンサー細胞によって決して発現されない可溶性抗体であり得る。本発明と共に使用される特定の分析物結合成分は、対象の標的分析物を明確に同定するその能力に基づいて選択される。例示的な実施形態では、分析物結合成分は、感染性物質などの特定の分析物に特異的な市販のIgGなどの可溶性抗体である。別の例示的な実施形態では、分析物結合成分は、例えば抗自己抗原抗体に特異的なビオチン化自己抗原分子などの所定の分析物に特異的なビオチン化分子(またはストレプトアビジン系分子)である。本発明による検出器または標的分子は、自己抗原または自己免疫疾患に関連する自己抗体を含み得る。代表的な自己免疫疾患または障害としては、慢性関節リウマチ(RA)、若年性RA(JRA)、1型糖尿病、全身性エリテマトーデス、橋本病、グレーブス病、強皮症、セリアック病、クローン病、潰瘍性大腸炎、シェーグレン症候群、多発性硬化症、グッドパスチャー症候群、アジソン病、ウェゲナー肉芽腫症、原発性胆汁性肝硬変、硬化性胆管炎、自己免疫性肝炎、多発性筋痛リウマチ、側頭動脈炎/巨細胞動脈炎、およびギランバレー症候群が挙げられる。検出分子または標的分子はまた、腫瘍特異的もしくは腫瘍関連抗原、またはEGFのような生物学的に活性な分子、インスリンおよび成長ホルモンを含むペプチドホルモン、サイトカイン、インターロイキン、インターフェロン、TNFなど、またはそのような生物学的に活性な分子に対する抗体ような抗原に対する抗体を含み得る。
【0040】
本発明のシステムは、IgG断片を含む検体結合成分をさらに含むことができ、IgG断片は一本鎖抗体または一本鎖ダイアボディであり得る。検出器はまた、アフィボディ(すなわち、改変された結合タンパク質)、アプタマー(例えば、リガンドに結合するように改変されたDNAまたはRNA分子)、または感染性ウイルスに対する可溶性受容体などの可溶性受容体であり得る。」
「【0068】
バイオセンサーの実施例I
図1a~1bを参照すると、本発明の例示的な実施形態による第1のバイオセンサー100は、エクオリン104を生成するように設計され、かつCTZ106で充填されてエクオリン/CTZ複合体を形成するジャーカットT細胞102を含む。この特定のバイオセンサーはまた、IgGbp-CD3ζ(配列ID番号5~6)である膜貫通非抗体シグナル伝達成分108を発現するように設計されているが、膜貫通非抗体シグナル伝達成分FcγRI-CD3ζ(配列ID番号11~12)もまたバイオセンサー100と共に使用することができる。バイオセンサー細胞102はまた、少なくとも1つのシグナル伝達経路110を含み、その活性化は細胞内Ca2+112の増加をもたらす。図1bに示すとおり、標的分析物116(例えば大腸菌0157)が結合している十分な量の検出分子114(例えば可溶性抗体)が膜貫通非抗体シグナル伝達成分108に結合すると、シグナル伝達経路110が活性化され、Ca2+112が増加し、エクオリン/CTZ複合体が立体構造の変化を起こして光電子増倍管120によって検出される光118のシグナル(光子)を放出し、スパイク122が試験装置にグラフィック表示され(下記参照)、試験中のサンプル内の標的分析物116の存在を指し示す。このディスプレイは、標的分析物116に関して定性的および定量的の両方であり得る。
【0069】
バイオセンサーの実施例II
図2a~図2bを参照すると、上述のように、本発明の例示的な実施形態による第2のバイオセンサー200は、エクオリン204を生成するように設計され、かつCTZ206で充填されてエクオリン/CTZ複合体を形成するMC/9(ATCC(登録商標)CRL-8306(商標))肥満細胞202を含む。この特定のバイオセンサーは、IgGbp-IgE(配列ID番号13~14)である可溶性非抗体シグナル伝達成分208に結合する天然のFcイプシロン受容体(すなわち、FcεRI)207を発現するが、非抗体シグナル伝達成分FcγRI-IgE.(配列ID番号15~16)もまたバイオセンサー200と共に使用することができる。図2bに示すとおり、標的分析物216(例えば、大腸菌0157)が結合している十分な数の検出分子214(例えば、可溶性抗体)が、すでに天然のFcイプシロン受容体207に結合している非抗体シグナル伝達成分208に結合すると、シグナル伝達経路210が活性化され、細胞内Ca2+212が増加し、エクオリン/CTZ複合体が立体配座の変化を起こして光電子増倍管220によって検出される光218のシグナル(光子)を放出し、スパイク222が試験装置にグラフィック表示され(下記参照)、試験中のサンプル内の標的分析物216の存在を指し示す。このディスプレイは、標的分析物216に関して定性的および定量的の両方であり得る。
【0070】
バイオセンサーの実施例III
図3a~図3bを参照すると、上述のように、本発明の例示的な実施形態による第3のバイオセンサー300は、エクオリン304を生成するように設計され、かつCTZ306で充填されてエクオリン/CTZ複合体を形成するMC/9(ATCC(登録商標)CRL-8306(商標))肥満細胞302を含む。この特定のバイオセンサーは、IgGbp-IgE(配列ID番号13~14)である非抗体シグナル伝達成分308に結合する天然のFcイプシロン受容体(すなわち、FcεRI)307を発現するが、非抗体シグナル伝達成分FcγRI-IgE.(配列ID番号15~16)もまたバイオセンサー300と共に使用することができる。この特定の実施形態では、バイオセンサー細胞302は、IgGbp-IgEを発現し、かつこの非抗体シグナル伝達成分を細胞外空間に排出するようにさらに設計されており、これは細胞表面に発現している天然のFcεRIに結合する。図3bに示すように、標的分析物316(例えば、大腸菌0157)が結合している十分な量の検出分子314(例えば、可溶性抗体)が、すでに天然のFcイプシロン受容体307に結合している非抗体シグナル伝達成分308に結合すると、シグナル伝達経路310が活性化され、細胞内Ca2+312が増加し、エクオリン/CTZ複合体が立体構造の変化を起こして光電子増倍管320によって検出される光318のシグナル(光子)を放出し、スパイク322が試験装置にグラフィック表示され(下記参照)、試験中のサンプル内の標的分析物316の存在を指し示す。このディスプレイは、標的分析物316に関して定性的および定量的の両方であり得る。
【0071】
バイオセンサーIVの実施例
図4を参照すると、本発明の例示的な実施形態による第4のバイオセンサー400は、エクオリンを生成し、かつmSA-CD3ζ(配列ID番号17~18)である膜貫通非抗体シグナル伝達成分408を発現するように設計されたバイオセンサー細胞402を含む。非抗体シグナル伝達成分mSA-CD3ζ(単量体ストレプトアビジン-CD3ζ)はビオチン化検出分子414に結合し、これは例えば上皮成長因子(EGF)のような標的分子416に特異的に結合する。例えば、抗EGFなどの抗標的分子抗体417は、上述のように、複数のシグナル伝達成分をクラスター化し、かつシグナル伝達を誘導する標的多量体を生成する。他の実施形態において、単量体ストレプトアビジン成分はビオチン化成分と置き換えられ、代わりの連結手段を用いてもよい。
【0072】
バイオセンサーVの実施例
図5を参照すると、本発明の例示的な実施形態による第5のバイオセンサー500は、エクオリンを生成し、かつmSA-CD3ζ(配列ID番号17~18)である膜貫通非抗体シグナル伝達成分508を発現するように設計されたバイオセンサー細胞502を含む。非抗体シグナル伝達成分mSA-CD3ζ(単量体ストレプトアビジン-CD3ζ)はビオチン化検出分子514に結合し、これはいくつかの実施形態では自己抗原分子である。ビオチン化検出分子514は標的分子516に特異的に結合し、これはいくつかの実施形態では抗自己抗原分子である。血清試料中の自己抗体は、上述したように、複数のシグナル伝達成分をクラスター化し、かつシグナル伝達を誘導する標的多量体を生成する。他の実施形態において、単量体ストレプトアビジン成分はビオチン化成分と置き換えられ、代わりの連結手段を用いてもよい。」
「【0076】
Fc受容体(FcR)は免疫グロブリンのFc部分に結合し、FcγRIおよびFcεRIを含む多くの種類のFc受容体が知られている。これらのFcRの構造的および機能的な結合特性は、Fridman,FASEB J.1991 Sep;5(12):2684-90を参照することにより組み込まれる。フリドマンによって開示された配列などの既知のFcRアミノ酸配列に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、87.5%、90%、92.5%、95%、97.5%、98%、99%の配列同一性または類似性を有するFcRまたはそれらの免疫グロブリン結合セグメントの変異体は、免疫グロブリン結合アミノ酸配列をコードする核酸の直接合成を含む本分野において周知の分子生物学的技術によって製造することができる。」
「【0099】
Fc受容体
本発明によって利用される受容体、例えばリガンドまたは検出器としては、代わりのFc含有キメラ受容体を挙げることができる。本明細書に記載のキメラ受容体は、免疫グロブリンのFc部分に対する結合親和性および特異性を有する細胞外ドメイン(「Fc結合剤」)、膜貫通ドメイン、少なくとも1つの共刺激シグナル伝達ドメイン、およびITAMを含む細胞質シグナル伝達ドメインを含む。キメラ受容体は、宿主細胞上で発現されると、細胞外リガンド結合ドメインが標的分子(例えば抗体またはFc融合タンパク質)および共刺激シグナル伝達ドメインに結合するために細胞外に位置するように構成され、ITAM含有細胞質シグナル伝達ドメインは、活性化および/またはエフェクターシグナル伝達を誘発するために細胞質内に位置している。いくつかの実施形態において、本明細書に記載のキメラ受容体構築物は、N末端からC末端にかけて、Fc結合剤、膜貫通ドメイン、少なくとも1つの共刺激シグナル伝達ドメイン、およびITAM含有細胞質シグナル伝達ドメインを含む。他の実施形態において、本明細書に記載のキメラ受容体構築物は、N末端からC末端にかけて、Fc結合剤、膜貫通ドメイン、ITAM含有細胞質シグナル伝達ドメイン、および少なくとも1つの共刺激シグナル伝達ドメインを含む。
【0100】
本明細書に記載のキメラ受容体はいずれも、Fc結合剤のC末端および膜貫通ドメインのN末端に位置することができるヒンジドメインをさらに含むことができる。あるいは、またはさらに、本明細書に記載のキメラ受容体構築物は、互いに連結するか、またはITAM含有細胞質シグナル伝達ドメインによって分離され得る、2つ以上の共刺激性シグナル伝達ドメインを含み得る。キメラ受容体コンストラクト中の細胞外Fc結合剤、膜貫通ドメイン、共刺激シグナル伝達ドメイン、およびITAM含有細胞質シグナル伝達ドメインは、直接またはペプチドリンカーを介して互いに結合することができる。
【0101】
本明細書に記載のキメラ受容体コンストラクトは、Fc結合剤、すなわち適切な哺乳動物(例えば、ヒト、マウス、ラット、ヤギ、ヒツジ、サル)の免疫グロブリン(例えば、IgG、IgA、IgM、またはIgE)のFc部分に結合することができる細胞外ドメインを含む。適切なFc結合剤は、哺乳動物Fc受容体または特定の細菌タンパク質(例えば、タンパク質A、タンパク質G)などの天然に存在するタンパク質に由来し得る。さらに、Fc結合剤は、本明細書に記載のIg分子のいずれかのFc部分に高い親和性および特異性で結合するように特異的に改変された合成ポリペプチドであり得る。例えば、そのようなFc結合剤は、免疫グロブリンのFc部分に特異的に結合する抗体またはその抗原結合断片であり得る。例としては、一本鎖可変フラグメント(scFv)、ドメイン抗体、またはナノボディが挙げられるが、これらに限定されるものではない。あるいは、Fc結合剤は、Kunitzドメイン、小型モジュラー免疫医薬品(SMIP)、アドネクチン、アビマー、アフィボディ、DARPin、またはアンチカリンなどのFc部分に特異的に結合する合成ペプチドであってもよく、これらはFcに対する結合活性についてペプチド結合ライブラリーをスクリーニングすることによって同定される。
【0102】
いくつかの実施形態において、Fc結合剤は哺乳動物Fc受容体の細胞外リガンド結合ドメインである。本明細書で使用されるように、「Fc受容体」は、多くの免疫細胞(B細胞、樹状細胞、ナチュラルキラー(NK)細胞、マクロファージ、好中球、肥満細胞、および好酸球を含む)の表面に発現する細胞表面結合受容体であり、抗体のFcドメインに対して結合特異性を示す。Fc受容体は、典型的には抗体のFc(フラグメント結晶化可能)部分に対する結合特異性を有する少なくとも2つの免疫グロブリン(Ig)様ドメインからなる。いくつかの例において、抗体のFc部分へのFc受容体の結合は、抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC)効果を誘発し得る。本明細書中に記載されるようなキメラ受容体を構築するために使用されるFc受容体は、野生型の同等物と比較してFcに対する親和性が増大または減少し得る天然の多型変異体(例えばCD16 V158変異体)であり得る。あるいは、Fc受容体は、Ig分子のFc部分への結合親和性を変化させる1つまたは複数の突然変異(例えば、最大10個のアミノ酸残基の置換)を有する野生型の同等物の機能的変異体であってもよい。いくつかの例において、その突然変異はFc受容体のグリコシル化パターン、つまりFcに対する結合親和性を変化させることができる。
【0103】
以下の表は、Fc受容体細胞外ドメインにおけるいくつかの例示的な多型を列挙する(例えば、Kim et al.,J. Mol.Evol.53:1-9,2001を参照のこと)。
【表1】
[図:0001437942000001.jpg]
【0104】
Fc受容体は、それが結合することができる抗体のアイソタイプに基づいて分類される。例えば、Fcガンマ受容体(FcγR)は一般に、その1つ以上のサブタイプ(すなわち、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4)などのIgG抗体に結合し、Fcアルファ受容体(FcαR)は一般に、IgA抗体に結合すし、Fcイプシロン受容体(FccR)は一般に、IgE抗体に結合する。いくつかの実施形態において、Fc受容体は、Fcガンマ受容体、Fcアルファ受容体、またはFcイプシロン受容体である。Fcガンマ受容体の例には、CD64A、CD64B、CD64C、CD32A、CD32B、CD16A、およびCD16Bが含まれるが、これらに限定されるものではない。Fcアルファ受容体の例は、FcαR1/CD89である。Fcイプシロン受容体の例としては、FcεRIおよびFcイプシロンRII/CD23が挙げられるが、これらに限定されるものではない。以下の表は、本明細書に記載のキメラ受容体を構築する際に使用するための例示的なFc受容体、およびそれらの対応するFcドメインに対する結合活性を列挙する。
【表2】
[図:0001437942000002.jpg]
」
(当審注:段落0104中の「IgA抗体に結合すし、」は「IgA抗体に結合し、」の誤記であり、「Fcイプシロン受容体(FccR)は一般に、」は「Fcイプシロン受容体(FcεR)は一般に、」の誤記であると認められる。)
「【0105】
本明細書に記載のキメラ受容体に使用するためのFc受容体のリガンド結合ドメインの選択は、当業者には明らかであろう。例えば、それはFc受容体の結合が望まれる抗体のアイソタイプおよび結合相互作用の望まれる親和性などの要因に依存し得る。いくつかの実施例において、(a)は、Fcに対する親和性を調節することができる天然に存在する多型を組み込んでいるCD16の細胞外リガンド結合ドメインである。いくつかの実施例において、(a)は、158位(例えば、バリンまたはフェニルアラニン)に多型を組み込んでいるCD16の細胞外リガンド結合ドメインである。いくつかの実施形態において、(a)は、そのグリコシル化状態およびそのFcに対する親和性を変化させる条件下で生成される。いくつかの実施形態では、(a)は、それを組み込んだキメラ受容体をIgG抗体のサブセットに対して特異的にする修飾を組み込んだCD16の細胞外リガンド結合ドメインである。例えば、IgGサブタイプ(例えば、IgG1)に対する親和性を増加または減少させる突然変異を組み込むことができる。
【0106】
他の実施形態において、Fc結合剤は、IgG分子のFc部分に結合することができる天然に存在する細菌タンパク質に由来する。本明細書に記載のキメラ受容体を構築するのに使用するためのFc結合剤は、全長タンパク質またはその機能的断片であり得る。タンパク質Aは、元来は細菌黄色ブドウ球菌の細胞壁に見出される42kDaの表面タンパク質である。これはそれぞれが三ヘリックス束に折り畳まれ、かつほとんどの抗体のFc領域およびヒトVH3ファミリー抗体のFab領域との相互作用を介してIgGを結合することができる5つのドメインからなる。タンパク質Gは、哺乳動物IgGのFab領域およびFc領域の両方に結合するC群およびG群のレンサ球菌において発現する約60kDaのタンパク質である。天然のタンパク質Gもアルブミンに結合するが、アルブミン結合を排除する組換え変異体が設計されている。
【0107】
キメラ受容体に使用するためのFc結合剤はまた、コンビナトリアルバイオロジーまたは定方向進化法を使用して新たに作製することもできる。タンパク質骨格(例えば、IgG由来のscFv、Kunitz型プロテアーゼ阻害剤由来のKunitzドメイン、アンキリンリピート、タンパク質A由来のZドメイン、リポカリン、フィブロネクチンIII型ドメイン、Fyn由来SH3ドメインなど)から始めて、表面上の一連の残基についてのアミノ酸側鎖は、変異型骨格の大きなライブラリーを作製するために無作為に置換することができる。大きなライブラリーから、最初に結合について選択し、続いてファージ、リボソーム、または細胞ディスプレイによって増幅することによって、Fcドメインのような標的に対する親和性を有する珍しい変異体を単離することが可能である。標的に対する最も高い親和性を有するタンパク質を単離するために、一連の選択および増幅を繰り返し使用することができる。
【0108】
本明細書に記載のいずれのFc結合剤も、治療用抗体のFc部分に対して適切な結合親和性を有し得る。本明細書中で使用される場合、「結合親和性」とは、見かけの会合定数またはKAをいう。KAは解離定数KDの逆数である。本明細書に記載のキメラ受容体のFc受容体ドメインの細胞外リガンド結合ドメインは、少なくとも10-5、10-6、10-7、10-8、10-9、10-10M、または抗体のFc部分よりも低いKDの結合親和性を有し得る。いくつかの実施形態において、Fc結合剤は、別の抗体、抗体のアイソタイプ、またはそれらのサブタイプに対するFc結合剤の結合親和性と比較して、抗体、抗体のアイソタイプ、またはそれらのサブタイプに対して高い結合親和性を有する。いくつかの実施形態において、Fc受容体の細胞外リガンド結合ドメインは、他の抗体、抗体のアイソタイプ、またはそのサブタイプに対するFc受容体の細胞外リガンド結合ドメインの結合と比較して、抗体、抗体のアイソタイプ、またはそのサブタイプに対して特異性を有する。高親和性結合を有するFcガンマ受容体には、CD64A、CD64B、およびCD64Cが含まれる。低親和性結合を有するFcガンマ受容体には、CD32A、CD32B、CD16A、およびCD16Bが含まれる。高親和性結合を有するFcイプシロン受容体はFcイプシロンRIであり、低親和性結合を有するFcイプシロン受容体はFcイプシロンRII/CD23である。
【0109】
Fc結合剤を含むFc受容体またはキメラ受容体(例えば、Fc受容体の細胞外リガンド結合ドメイン)に対する結合親和性または結合特異性は、平衡透析、平衡結合、ゲル濾過、ELISA、表面プラズモン共鳴、または分光法を含む様々な方法によって決定することができる。
【0110】
いくつかの実施形態において、Fc受容体の細胞外リガンド結合ドメインは、天然のFcガンマ受容体、Fcアルファ受容体、またはFcイプシロン受容体の細胞外リガンド結合ドメインのアミノ酸配列と少なくとも90%(例えば、91、92、93、94、95、96、97、98、99%)同一であるアミノ酸配列を含む。2つのアミノ酸配列の「同一性パーセント」は、Karlin and Altschul Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:5873-77,1993において修正されたKarlin and Altschul Proc.Natl.Acad.Sci.USA 87:2264-68,1990のアルゴリズムを用いて決定することができる。そのようなアルゴリズムは、Altschul,et al.J.Mol.Biol.215:403-10,1990のNBLASTおよびXBLASTプログラム(バージョン2.0)に組み込まれている。BLASTタンパク質の検索は、本開示のタンパク質分子と相同なアミノ酸配列を得るために、XBLASTプログラム、スコア=50、ワード長=3を用いて実施することができる。2つの配列間にギャップが存在する場合、Gapped BLASTは、Altschul et al.,Nucleic Acids Res.25(17):3389-3402,1997に記載されるように使用することができる。BLASTおよびGapped BLASTプログラムを利用する場合、それぞれのプログラム(例えば、XBLASTおよびNBLAST)のデフォルトのパラメータを使用することができる。」
「【0111】
本発明のさらに別の実施形態は、改変細胞を分析物と接触させるための空間または区画;リガンド、シグナル伝達経路、およびレポーターを含む改変細胞;および検出器を含むシステムを提供し、ユニバーサル検出成分が所定の検出成分に結合し、シグナル伝達経路は当該分析物のリガンドへの結合によって誘導される第一のシグナルを受け取り、当該第一のシグナルをレポーターに伝達し、前記レポーターはシグナル伝達経路からの第一シグナルを受け取ると第二の検出可能なシグナルを放出する。
【0012】
本発明のさらに別の実施形態は、改変細胞を所定の分析物と接触させるための空間または区画;リガンドと、光または別の検出可能なシグナルを放出する検出器にシグナルを構成的に伝達するシグナル伝達成分との集合体を含む改変細胞;および検出器を含むシステムを提供し、リガンドおよびシグナル伝達成分の集合体への所定の分析物の結合はシグナル伝達を減衰させ、かつレポーターによる光または他の検出可能なシグナルの放出を減衰させる。リガンドおよびシグナル伝達成分の集合体は粘着性アダプターによって維持され、当該粘着性アダプターが所定の分析物によって結合されると、リガンドおよびシグナル伝達成分の集合体を維持するその能力は弱まる。
【0113】
本発明のさらに別の実施形態は、改変細胞を所定の分析物と接触させるための空間または区画;リガンドと、所定の分析物に結合したときに阻害シグナルを伝達するシグナル伝達成分と、光または別の検出可能なシグナルを構成的に放出するレポーターとを含む改変細胞;および検出器を含むシステムを提供し、所定の分析物とユニバーサル検出成分との結合は、レポーターによる光または他の検出可能なシグナルの放出を減衰させる阻害シグナルを誘導する。この実施形態では、ユニバーサル検出成分は、免疫受容体チロシン系阻害モチーフ(ITIM)を含むことができる。ITIMは、Staub E,Rosenthal A,Hinzmann B(2004)."Systematic identification of immunoreceptor tyrosine-based inhibitory motifs in the human proteome".Cell Signal 16(4):435-456にさらに開示されており、この参照により組み込まれる。」
「図1
[図:0001437942000003.jpg]
」
「図2
[図:0001437942000004.jpg]
」
「図3
[図:0001437942000005.jpg]
」
「図4
[図:0001437942000006.jpg]
」
「図5
[図:0001437942000007.jpg]
」
3 当審の判断
前記2で摘記したとおり、発明の詳細な説明には、段落0018~0019に「シグナル生成レポーター」について、段落0020~0023に「活性化メカニズム」について、段落0024~0038に「ユニバーサル検出成分」について、段落0039~0040に「検体結合成分/検出分子」(本願発明における「分析物結合成分」に対応)について、それぞれ概要が説明され、段落0068~0072、図1~5に実施例が記載されている。以下、「活性化メカニズム」、「ユニバーサル検出成分」及び「実施例」について、判断する。
(1)活性化メカニズムについて
活性化メカニズムについては、段落0023に「シグナル伝達経路は、小胞体から細胞質ゾルへのカルシウムイオンの放出によって第一のシグナルを伝達し得、第二のシグナルは、カルシウムイオンに応答してレポーターによって放出され得る。このシグナル伝達経路は、B細胞、T細胞、肥満細胞、マクロファージ、およびその他の免疫細胞に見られるセカンドメッセンジャーカスケードで、細胞表面受容体の架橋がチロシンキナーゼを活性化し、それが次にホスホリパーゼCをリン酸化し、それがホスファチジルイノシトール4,5-ビスリン酸(PIP2)からイノシトール1,4,5-トリスリン酸(IP3)、およびジアシルグリセロールへと突き進み、その後、IP3はカルシウムチャネルを開き、小胞体などの細胞内貯蔵からカルシウムを放出するか、または細胞外カルシウムを取り込むことによって、細胞のサイトゾル中のカルシウム濃度を上昇させる。」と免疫細胞におけるカルシウムイオン濃度を上昇させるシグナル伝達系について記載があり、同段落には、他の活性化メカニズムに関して「受容体の種類、細胞の種類、および所望のシグナル伝達方法に応じて、G-タンパク質-アデニリル環状-cAMP-タンパク質キナーゼAカスケードなどの代替のセカンドメッセンジャーカスケードを使用し得る。シグナル伝達経路はまた、ジアシルグリセロール、セラミド、または他の親油性セカンドメッセンジャー分子の放出によってシグナルを伝達することができ、レポーターはジアシルグリセロール、セラミド、または他の親油性セカンドメッセンジャー分子の放出に応答して第2のシグナルを放出する。シグナル伝達経路はまた、一酸化窒素(「NO」)、cAMP、cGMP、または他の環状ヌクレオチドの放出または産生によってシグナルを伝達することができ、レポーターはこの放出または産生に応答して第2のシグナルを放出する。シグナル伝達経路はまた、スーパーオキシド、過酸化水素、一酸化炭素、硫化水素、または他の二次レドックスメッセンジャーの放出または生成によってシグナルを伝達することができ、レポーターはスーパーオキシドの放出または生成に応答して第2のシグナルを放出する。過酸化水素、一酸化炭素、硫化水素、または他の二次酸化還元メッセンジャー分子。特定の実施形態において、活性化剤メカニズムは、細胞のpHもしくは温度の変化、または細胞の電気的もしくは磁気的性質の変化を含む。」との記載があるが、例示されている各活性化メカニズムを「ユニバーサル検出成分」とどのように関連付けるのか具体的に記載されていない。
(2)「ユニバーサル検出成分」について
段落0024~0038の「ユニバーサル検出成分」の説明において、特に、段落0024で「ユニバーサル検出成分として機能する様々な非抗体シグナル伝達成分を含む」と記載されており、「シグナル伝達成分は、バイオセンサー細胞の表面に改変されて発現され、最終的に検出可能なシグナルを放出するレポータータンパク質をもたらすシグナル伝達経路を活性化するように適合された膜貫通キメラ融合タンパク質」、「シグナル伝達成分は、シグナル伝達経路を活性化するように適合され、最終的に検出可能なシグナルを発するレポータータンパク質を生じさせるように細胞表面シグナルトランスデューサーに結合するように適合される、天然の受容体またはレポータータンパク質のような、細胞表面シグナルトランスデューサーに結合するように適合される、可溶性キメラ融合タンパク質」、「シグナル伝達成分はバイオセンサー細胞内に改変されて発現される可溶性キメラ融合タンパク質」と記載され、「キメラ融合タンパク質」について、段落0025に「(i)少なくとも1つの種類の検出分子(例えば、可溶性抗体)に結合するように適合されるタンパク質の成分、(ii)生きた、改変バイオセンサー細胞によって通常発現されるレセプター複合体の成分を含みうる。」と説明され、レセプター複合体の成分として、「IgM(B細胞バイオセンサー用)、Igα/β(B細胞バイオセンサー用)、IgE(肥満細胞バイオセンサー用)、CD19(B細胞バイオセンサー用)、CD3ゼータ(T細胞バイオセンサー用)、またはFcεRI(肥満細胞バイオセンサー用)」が挙げられている。
そして、本願発明において(i)~(viii)で特定される各非抗体ユニバーサル検出成分については、段落0037において、「様々な実施形態において、ユニバーサル検出成分は、抗体VDJ領域、Fabフラグメントまたは他の抗体決定基を含む。ユニバーサル検出成分は、T細胞VJ領域、VDJ領域、または他のT細胞受容体決定基を含み得る。ユニバーサル検出成分は、合成ペプチド、ペプチドではない小さな有機決定基、タンパク質またはペプチド決定基、レクチン決定基、炭水化物結合モジュール、または他の炭水化物結合決定基、脂質結合決定基、または金属または他の金属結合決定基を結合するメタロチオン決定基を含み得る。」、段落0038において「ユニバーサル検出成分は、それをシグナル変換経路のFc結合部分に非共有結合するFc決定基を含み得る。ユニバーサル検出器成分は、それをシグナル伝達経路のビオチンまたは(ストレプト)アビジン結合部分に非共有結合させるビオチンまたは(ストレプト)アビジン決定基を含み得る。」と記載されている。また、「(vi)免疫受容体チロシン系阻害モチーフ(ITIM)」については、段落0113に説明されている。
しかし、シグナル伝達の起点となる成分については、段落0025の各免疫細胞用のもの(IgM、Igα/β、IgE、CD19、CD3ゼータ、FcεRI)しか具体的に記載されておらず、これらの成分から開始されるシグナル伝達(本願発明の「(c)」の「(iv)前記生体細胞内のホスファチジルイノシトール経路の活性化」に対応する。後述する(3)の記載を参照。)以外の(本願発明において特定される)活性化メカニズムとの関連において、非抗体ユニバーサル検出成分として、どのような成分を用いればよいか具体的に把握することができない。
(3)実施例について
前記2で摘記したとおり、段落0068~0072、図1~5には、バイオセンサーの5つの実施例が記載されている。5つの実施例における本願発明の各構成要件の具体的な開示は次のとおりである。
○実施例I(段落0068及び図1):
・非抗体ユニバーサル検出成分・・・「IgGbp-CD3ζ」である「膜貫通非抗体シグナル伝達成分108」及び「FcγRI-CD3ζ」
・分析物結合成分・・・「検出分子114(例えば可溶性抗体)」
・活性化メカニズム・・・「Ca2+112の増加をもたらす」「シグナル伝達経路110」
・シグナル生成レポーター・・・「Ca2+112が増加し、」「立体構造の変化を起こして」「光118のシグナル(光子)を放出」する「エクオリン/CTZ複合体」
○実施例II(段落0069及び図2):
・非抗体ユニバーサル検出成分・・・「Fcイプシロン受容体207に結合している」「IgGbp-IgE(配列ID番号13~14)である可溶性非抗体シグナル伝達成分208」及び「非抗体シグナル伝達成分FcγRI-IgE」
・分析物結合成分・・・「検出分子214(例えば、可溶性抗体)」
・活性化メカニズム・・・「細胞内Ca2+212が増加する」「シグナル伝達経路210」
・シグナル生成レポーター・・・「細胞内Ca2+212が増加し、」「立体配座の変化を起こして」「光218のシグナル(光子)を放出」する「エクオリン/CTZ複合体」
○実施例III(段落0070及び図3):
・非抗体ユニバーサル検出成分・・・「天然のFcイプシロン受容体(すなわち、FcεRI)307」に結合する「IgGbp-IgE(配列ID番号13~14)である非抗体シグナル伝達成分308」及び「非抗体シグナル伝達成分FcγRI-IgE」
・分析物結合成分・・・「検出分子314(例えば、可溶性抗体)」
・活性化メカニズム・・・「細胞内Ca2+312が増加する」「シグナル伝達経路310」
・シグナル生成レポーター・・・「細胞内Ca2+312が増加し、」「立体構造の変化を起こして」「光318のシグナル(光子)を放出」する「エクオリン/CTZ複合体」
○実施例IV(段落0071及び図4)
・非抗体ユニバーサル検出成分・・・「mSA-CD3ζ(配列ID番号17~18)」「(単量体ストレプトアビジン-CD3ζ)」「である膜貫通非抗体シグナル伝達成分408」
・分析物結合成分・・・「ビオチン化検出分子414」
・シグナル生成レポーター・・・「エクオリン」
○実施例V(段落0072及び図5)
・非抗体ユニバーサル検出成分・・・「mSA-CD3ζ(配列ID番号17~18)」「(単量体ストレプトアビジン-CD3ζ)」「である膜貫通非抗体シグナル伝達成分508」
・分析物結合成分・・・「ビオチン化検出分子514」
・シグナル生成レポーター・・・「エクオリン」
これらの実施例は、全てシグナル生成レポーターとして、エクオリンが用いられており、エクオリンはカルシウムイオン感受性である。
そして、実施例I、IV、Vで用いられている「CD3ζ」は、T細胞におけるシグナル伝達の上流を担う物質であり、このシグナル伝達の下流では、ホスファチジルイノシトール4,5-ビスリン酸(PIP2)からイノシトール1,4,5-トリスリン酸(IP3)、及びジアシルグリセロールへと進み、IP3によってカルシウムチャネルが開かれる。また、実施例Iの「IgGbp」、「FcγRI」は、抗体のFc領域に結合するドメインである。そうすると、実施例Iは、本願発明の「(iv)前記生体細胞内のホスファチジルイノシトール経路の活性化」である「(c)」の「活性化メカニズム」と「(vii)前記生体細胞内のシグナル伝達経路のFc結合部分に非共有結合するFc決定因子」である「(d)」の「非抗体ユニバーサル検出成分」を備えているといえ、実施例IV、Vは、本願発明の「(iv)前記生体細胞内のホスファチジルイノシトール経路の活性化」である「(c)」の「活性化メカニズム」と「(viii)前記生体細胞内のシグナル伝達経路のビオチンまたはストレプトアビジン結合部分に非共有結合するビオチンまたはストレプトアビジン決定因子」である「(d)」の「非抗体ユニバーサル検出成分」を備えているといえる。
また、実施例II、IIIでは、「Fcイプシロン受容体」に「IgGbp-IgE」又は「FcγRI-IgE」のIgEのFc領域に結合することでシグナル伝達が生じ、下流において、ホスホリパーゼCが活性化され、ホスファチジルイノシトール4,5-ビスリン酸(PIP2)からイノシトール1,4,5-トリスリン酸(IP3)、及びジアシルグリセロールへと進み、IP3によってカルシウムチャネルが開かれるから、実施例II、IIIは、本願発明の「(iv)前記生体細胞内のホスファチジルイノシトール経路の活性化」である「(c)」の「活性化メカニズム」と「(vii)前記生体細胞内のシグナル伝達経路のFc結合部分に非共有結合するFc決定因子」である「(d)」の「非抗体ユニバーサル検出成分」を備えているといえる。
発明の詳細な説明には、これらの実施例以外に段落0099~0110に、本願発明の「(d)」の「非抗体ユニバーサル検出成分」である「(vii)前記生体細胞内のシグナル伝達経路のFc結合部分に非共有結合するFc決定因子」に対応する「Fc受容体」についての説明が詳細に記載されている。しかし、これらの段落の記載において、「Fc受容体」を、本願発明における「(c)」の「活性化メカニズム」である「(i)前記生体細胞のpHまたは温度の変化」、「(ii)前記生体細胞の電気的または磁気的性質の変化」、「(iii)前記生体細胞内のGタンパク質共役受容体シグナル経路の活性化」、「(v)ジアシルグリセロール、セラミド、または他の親油性メッセンジャー分子を放出する前記生体細胞内のシグナル伝達経路の活性化」、「(vi)一酸化窒素、cAMP、cGMP、または他の環状ヌクレオチドを放出または生成する前記生体細胞内のシグナル伝達経路の活性化」、「(vii)スーパーオキシド、過酸化水素、一酸化炭素、硫化水素、または他の二次酸化還元シグナル分子を放出または生成する前記生体細胞内のシグナル伝達経路の活性化」に具体的にどのように関連付けるか記載されていない。
(4)総合的な検討
前記(1)~(3)を総合すると、本願の発明の詳細な説明においては、本願発明の「(d)前記活性化メカニズムに関連する非抗体ユニバーサル検出成分」について、「(vii)前記生体細胞内のシグナル伝達経路のFc結合部分に非共有結合するFc決定因子」又は、「(viii)前記生体細胞内のシグナル伝達経路のビオチンまたはストレプトアビジン結合部分に非共有結合するビオチンまたはストレプトアビジン決定因子」を、「(iv)前記生体細胞内のホスファチジルイノシトール経路の活性化」である「(c)」の「活性化メカニズム」と関連させたものが具体的に説明されている。
しかし、発明の詳細な説明の記載からは、本願発明の「(d)」の(i)~(viii)で特定される各「非抗体ユニバーサル検出成分」の中で具体的にどのような成分を、本願発明の「(c)」の(i)~(viii)で特定される各「活性化メカニズム」とどのように組み合わせて、どの細胞において実施すればよいかを前段落で言及した組み合わせ以外について把握することができない。
特に、「(c)」の「(i)前記生体細胞のpHまたは温度の変化」と「(ii)前記生体細胞の電気的または磁気的性質の変化」の「活性化メカニズム」に関しては、これらの変化を生じさせる経路及びその経路に対応する「シグナル生成レポーター」について、本願の出願時において、技術常識として知られていたとは認められない。そのため、例えば「(c)」の「(ii)」のうち「前記生体細胞の」「磁気的性質の変化」を選択肢として採用して本願発明を実施しようとした場合、どのような物質を「非抗体ユニバーサル検出成分」として採用するかについて、当該技術常識がない中で、当業者は選択をせざるを得ない。どのような物質が「非抗体ユニバーサル検出成分」として機能するかの指標がない状態で候補物質も十分に絞ることができないのであるから、「(d)」の(i)~(viii)に該当する多くの既存物質をいわば闇雲に実験系に適用し、それぞれの物質について磁気的性質の変化を測定し、所望のシグナルを得られるかを確認する作業が必要となり、当該作業は明らかに当業者に期待しうる以上の過度の試行錯誤を要すると認められる。
「(i)前記生体細胞のpHまたは温度の変化」と「(ii)前記生体細胞の電気的」「性質の変化」の「活性化メカニズム」についても同様である。
このため、本願発明を実施するにあたり、本願発明の詳細な説明には、過度の試行錯誤を要することなく、その物を生産し、使用することができる程度の記載がない。
(5)請求人の主張について
ア 請求人の主張
請求人は、請求の理由において以下の主張をしている。
「本願の請求項に記載の活性化メカニズム、非抗体ユニバーサル検出成分、分析物結合成分、および標的分析物間の機能的相互作用は、本願の明細書の段落および図において、非常に明確に説明および図示されております(例えば、本願の明細書段落[0020]~[0040]および[0068]~[0072]および図1a~5等参照)。この詳細な開示に基づき、特許請求の範囲に記載の技術を実施するために過度な実験は必要とせず、当業者であれば、開示された様々な生物学的構成要素の性質および特徴を理解し、特許請求の範囲に記載のシステムに関してそれらの互換性を理解するであろうと思量いたします。」
イ 主張に対する当審の判断
請求人の前記主張について検討する。
請求人が根拠する発明の詳細な説明の記載については、前記(1)~(3)で触れたとおりであるが、前記(4)で説示したように、少なくとも、「活性化メカニズム」の「(i)前記生体細胞のpHまたは温度の変化」と「(ii)前記生体細胞の電気的または磁気的性質の変化」については、本願の出願時において、技術常識であったとは認められず、発明の詳細な説明においても具体的に記載されていないため、このような変化と関連付けられる「ユニバーサル検出成分」としてどのような物を本願発明の(i)~(viii)で特定されるもの内で具体的に選択することができるのかを、発明の詳細な記載及び出願時の技術常識から当業者が把握することができない。
よって、請求人の前記主張は採用することができない。
(6)まとめ
以上のとおり、本願の発明の詳細な説明の記載は、当業者が本願発明の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものでないから、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。
第5 むすび
以上のとおり、本願は、本願発明について、発明の詳細な説明の記載が特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていないから、その余について検討するまでもなく、拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2025-001409