特許拒絶査定不服審判
2024-001260
カラーフィルタ用着色組成物およびカラーフィルタ
- 審判番号
- 2024-001260
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2019-226999
- 請求日
- 2024年01月24日
- 審決日
- 2024年11月29日
- 公報発行日
- 2025年02月28日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】artience株式会社
- 【請求人】東洋ビジュアルソリューションズ株式会社
- 審判長/審判官
- 審判長 里村 利光
- 審判官 橿本 英吾
- 審判官 宮澤 浩
- 分類
- P18 .121-WZ (G02B)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条、特許法第36条第6項第2号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2019-226999「カラーフィルタ用着色組成物およびカラーフィルタ」拒絶査定不服審判事件〔令和 3年 6月24日出願公開、特開2021- 96342〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 事案の概要
1 手続等の経緯
特願2019-226999号(以下「本件出願」という。)は、令和元年12月17日に出願された特許出願であって、その手続等の経緯の概要は、以下のとおりである。
令和 5年 7月 4日付け:拒絶理由通知書
同年 8月31日 :意見書、手続補正書の提出
同年 9月 5日付け:拒絶理由通知書
同年10月17日 :意見書、手続補正書の提出
同年11月 2日付け:補正の却下の決定(令和5年10月17日に提出された手続補正書による手続補正を却下するものである。)
同年 同月 同日付け:拒絶査定(以下「原査定」という。)
令和 6年 1月24日 :審判請求書、手続補正書の提出
同年 8月 5日付け:拒絶理由通知書(以下「先の通知書」という。)
同年10月 2日 :意見書、手続補正書の提出
2 本願発明
本件出願の請求項1~4に係る発明は、令和6年10月2日にした手続補正後の特許請求の範囲の請求項1~4に記載された事項によって特定されるとおりのものと認められ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、次のものである。
「 着色剤(A)、光重合性単量体(B)、アルカリ可溶性感光性樹脂(C)、光重合開始剤(D)、酸性樹脂型分散剤、および有機溶剤を含み、
着色剤(A)は、緑色顔料を含み、
アルカリ可溶性感光性樹脂(C)は、全単量体単位中、多環脂環式単量体単位、および芳香環含有単量体単位を合計40~65質量%(ただし、42.9質量%以下を除く)含み、かつ、全単量体単位中、多環脂環式単量体単位を28.5~48.9質量%(ただし、34.5質量%以下を除く)含む、カラーフィルタ用着色組成物。」
3 原査定の拒絶の理由の概要
本願発明についての原査定の拒絶の理由は、本願発明は、本件出願前に、日本国内又は外国において、電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない、という理由を含むものである。
(引用例等一覧)
引用例1:特開2016-38584号公報
第2 当合議体の判断
1 引用例1の記載
原査定の拒絶の理由で引用された、特開2016-38584号公報(以下、同じく「引用例1」という。)は、本件出願前に日本国内又は外国において電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明を記載するものであるところ、そこには以下の記載がある。なお、下線は、当合議体が付したものであり、引用発明の認定及び判断等に活用した箇所を示す(以下、同様である。)。
(1)「【背景技術】
【0002】
従来、液晶表示装置等に用いられるカラーフィルタを製造する方法としては、顔料分散法、染色法、電着法、印刷法が知られている。中でも、分光特性、耐久性、パターン形状及び精度等の観点から、平均的に優れた特性を有する顔料分散法が最も広範に採用されている。
【0003】
近年、カラーフィルタに対して、より高透過、高輝度、高コントラスト且つ高色域化が要求されている。カラーフィルタの色を決める色材としては、耐熱性、耐光性等の観点から一般には顔料が用いられているが、中でも固有の透過吸収スペクトルが可視光波長領域でバックライトの蛍光体スペクトルと合致するものが好適に用いられている。例えば、緑色顔料としては古くからハロゲン化銅フタロシアニン緑色顔料が各種黄色顔料との組み合わせにより実用化されている。
【0004】
・・・略・・・
さらに、近年においては高コントラスト化、安定性と現像性向上の両立を目的とした顔料分散液の開発が進められている。例えば、特許文献3には、顔料、溶剤および分散剤を含有し、該顔料がハロゲン化亜鉛フタロシアニンを含有し、該分散剤が、親溶媒性を有するAブロック及び窒素原子を含む官能基を有するBブロックからなるブロック共重合体であり、そのアミン価が80mgKOH/g以上150mgKOH/g以下(有効固形分換算)である分散剤を含有する、顔料分散液、およびその用途が記載されている。」
(2)「【0006】
本発明者らが特許文献1及び2に記載の顔料分散液及び着色樹脂組成物を検討したところ、顔料分散液の粘度が高く、取り扱い性が不十分であり、該顔料分散液を用いた場合には着色樹脂組成物を工業的に製造することが困難であることが見出された。
また、本発明者らが特許文献3に記載の顔料分散液及び着色樹脂組成物を検討したところ、着色力が低く一定の色度を達成するためには塗布膜厚を厚くしなければならないことが見出された。
本発明は従来技術の上述の課題に鑑みてなされたもので、その目的は、取り扱い性が良好であり、高着色化、高輝度化を両立できる顔料分散液、それを含有する着色樹脂組成物、この着色樹脂組成物を用いて作成した画素を有するカラーフィルタ、このカラーフィルタを有する液晶表示装置及び有機EL表示装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、特定のハロゲン化亜鉛フタロシアニン緑色顔料と特定の分散剤を用いることによって、取扱い性が良好であり、かつ、高着色化、高輝度化を両立できることを見出し、本発明を完成するに至った。即ち本発明の要旨は以下のとおりである。
【0008】
[1](A)顔料、(B) 分散剤、及び(C)溶剤を含有する顔料分散液であって、
(A)顔料が、塩素原子を3.5質量%以上含有するハロゲン化亜鉛フタロシアニン緑色顔料を含み、
(B)分散剤が、下記式(1)で表される繰り返し単位、及び下記式(2)で表される繰り返し単位を有する分散剤(b)を含有し、
分散剤(b)における下記式(1)で表される繰り返し単位の含有割合が、下記式(1)で表される繰り返し単位と下記式(2)で表される繰り返し単位の含有割合の合計に対して60モル%以下であることを特徴とする顔料分散液。」
(3)「【0117】
[2-1]バインダー樹脂
バインダー樹脂としては、前述したように、どのような手段により硬化する着色樹脂組成物とするかにより、好ましい樹脂は異なる。光重合性樹脂組成物の場合、バインダー樹脂としては、・・・略・・・各公報等に記載される公知の高分子化合物を使用することができるが、好ましくは
[2-1-1]:エポキシ基含有(メタ)アクリレートと、他のラジカル重合性単量体との共重合体に対し、該共重合体が有するエポキシ基の少なくとも一部に不飽和一塩基酸を付加させてなる樹脂、或いは該付加反応により生じた水酸基の少なくとも一部に多塩基酸無水物を付加させて得られる、アルカリ可溶性樹脂
[2-1-2]主鎖にカルボキシル基を含有する直鎖状アルカリ可溶性樹脂
[2-1-3]前記カルボキシル基含有樹脂のカルボキシル基部分に、エポキシ基含有不飽和化合物を付加させた樹脂
[2-1-4](メタ)アクリル系樹脂
[2-1-5]カルボキシル基を有するエポキシ(メタ)アクリレート樹脂等が挙げられる。以下、これら各樹脂について説明する。
【0118】
[2-1-1]エポキシ基含有(メタ)アクリレートと、他のラジカル重合性単量体との共重合体に対し、該共重合体が有するエポキシ基の少なくとも一部に不飽和一塩基酸を付加させてなる樹脂、或いは該付加反応により生じた水酸基の少なくとも一部に多塩基酸無水物を付加させて得られるアルカリ可溶性樹脂
特に好ましい樹脂の一つとして、「エポキシ基含有(メタ)アクリレート5~90モル%と、他のラジカル重合性単量体10~95モル%との共重合体に対し、該共重合体が有するエポキシ基の10~100モル%に不飽和一塩基酸を付加させてなる樹脂、或いは該付加反応により生じた水酸基の10~100モル%に多塩基酸無水物を付加させて得られるアルカリ可溶性樹脂」が挙げられる。
【0119】
そのエポキシ基含有(メタ)アクリレートとしては、例えば、グリシジル(メタ)アクリレート、3,4-エポキシブチル(メタ)アクリレート、(3,4-エポキシシクロヘキシル)メチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートグリシジルエーテル等が例示できる。中でもグリシジル(メタ)アクリレートが好ましい。これらのエポキシ基含有(メタ)アクリレートは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0120】
上記エポキシ基含有(メタ)アクリレートと共重合させる他のラジカル重合性単量体としては、下記一般式(V)で表される構造を有するモノ(メタ)アクリレートが好ましい。
【0121】
【化14】
[図:0001419056000001.jpg]
・・・略・・・
【0123】
中でも、一般式(V)で表される構造としては、下記式(Va)、(Vb)、又は(Vc)で表される構造が好ましい。
バインダー樹脂にこれらの構造を導入することによって、本発明の着色樹脂組成物をカラーフィルタや液晶表示素子に使用する場合に、該着色樹脂組成物の耐熱性を向上させたり、該着色樹脂組成物を用いて形成された画素の強度を増すことが可能である。
【0124】
尚、一般式(V)で表される構造を有するモノ(メタ)アクリレートは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0125】
【化15】
[図:0001419056000002.jpg]
【0126】
前記一般式(V)で表される構造を有するモノ(メタ)アクリレートとしては、当該構造を有する限り公知の各種のものが使用できるが、特に下記一般式(VI)で表されるものが好ましい。
【0127】
【化16】
[図:0001419056000003.jpg]
【0128】
式(VI)中、R89は水素原子又はメチル基を示し、R90は前記一般式(1)の構造を示す。
前記エポキシ基含有(メタ)アクリレートと、他のラジカル重合性単量体との共重合体において、前記一般式(VI)で表される構造を有するモノ(メタ)アクリレートに由来する繰返し単位は、「他のラジカル重合性単量体」に由来する繰返し単位中、5~90モル%含有するものが好ましく、10~70モル%含有するものが更に好ましく、15~50モル%含有するものが特に好ましい。」
(4)「【0136】
本発明において、前記エポキシ基含有(メタ)アクリレートと前記他のラジカル重合性単量体との共重合体としては、エポキシ基含有(メタ)アクリレートに由来する繰返し単位5~90モル%と、他のラジカル重合性単量体に由来する繰返し単位10~95モル%と、からなるものが好ましく、前者20~80モル%と、後者80~20モル%とからなるものが更に好ましく、前者30~70モル%と、後者70~30モル%とからなるものが特に好ましい。
【0137】
エポキシ基含有(メタ)アクリレートが少なすぎると、後述する重合性成分及びアルカリ可溶性成分の付加量が不十分となる場合があり、一方、エポキシ基含有(メタ)アクリレートが多すぎて、他のラジカル重合性単量体が少なすぎると、耐熱性や強度が不十分となる可能性がある。
続いて、エポキシ樹脂含有(メタ)アクリレートと、他のラジカル重合性単量体との共重合体のエポキシ基部分に、不飽和一塩基酸(重合性成分)と、多塩基酸無水物(アルカリ可溶性成分)とを反応させる。」
(5)「【0140】
更に、共重合体のエポキシ基に不飽和一塩基酸を付加させたときに生じる水酸基に付加させる「多塩基酸無水物」としては、公知のものが使用できる。
例えば、・・・略・・・テトラヒドロ無水フタル酸、・・・略・・・等の二塩基酸無水物;無水トリメリット酸、・・・略・・・等の三塩基以上の酸の無水物が挙げられる。中でも、テトラヒドロ無水フタル酸、・・・略・・・が好ましい。これらの多塩基酸無水物は1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0141】
このような成分を付加させることにより、本発明で用いるバインダー樹脂にアルカリ可溶性を付与することができる。
これらの多塩基酸無水物は、通常、前記共重合体が有するエポキシ基に、不飽和一塩基酸を付加させることにより生じる水酸基の10~100モル%に付加させるが、好ましくは20~90モル%、より好ましくは30~80モル%に付加させる。この付加割合が多すぎると、現像時の残膜率が低下する場合があり、少なすぎると溶解性が不十分となる可能性がある。尚、当該水酸基に多塩基酸無水物を付加させる方法としては、公知の方法を採用することができる。」
(6)「【0293】
<分散樹脂A>
以下の手順にて分散樹脂Aを合成した。
まず、反応槽として冷却管を付けたセパラブルフラスコを準備し、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート400質量部を仕込み、窒素置換したあと、攪拌しながらオイルバスで加熱して反応槽の温度を90℃まで昇温した。
【0294】
一方、モノマー槽中にジメチル-2,2’-[オキシビス(メチレン)]ビス-2-プロペノエート30質量部、メタクリル酸60質量部、メタクリル酸シクロヘキシル110質量部、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート5.2質量部、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート40質量部を仕込み、連鎖移動剤槽にn-ドデシルメルカプタン5.2質量部、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート27質量部を仕込み、反応槽の温度が90℃に安定してからモノマー槽および連鎖移動剤槽から滴下を開始し、重合を開始させた。温度を90℃に保ちながら滴下をそれぞれ135分かけて行い、滴下が終了して60分後に昇温を開始して反応槽を110℃にした。
【0295】
3時間、110℃を維持した後、セパラブルフラスコにガス導入管を付け、酸素/窒素=5/95(v/v)混合ガスのバブリングを開始した。次いで、反応槽に、メタクリル酸グリシジル39.6質量部、2,2’-メチレンビス(4-メチル-6-t-ブチルフェノール)0.4質量部、トリエチルアミン0.8質量部を仕込み、そのまま110℃で9時間反応させた。
室温まで冷却し、分散樹脂Aとして、重量平均分子量8000、酸価101mgKOH/gの重合体溶液を得た。
・・・略・・・
【0305】
<バインダー樹脂A>
以下の手順にてバインダー樹脂Aを合成した。
プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート145質量部を窒素置換しながら攪拌し120℃に昇温した。ここにスチレン20質量部、グリシジルメタクリレート57部およびトリシクロデカン骨格を有するモノアクリレート(日立化成(株)製FA-513M)82質量部を滴下し、更に120℃で2時間攪拌し続けた。次ぎに反応容器内を空気置換に変え、アクリル酸27質量部にトリスジメチルアミノメチルフェノール0.7質量部およびハイドロキノン0.12質量部を投入し、120℃で6時間反応を続けた。その後、テトラヒドロ無水フタル酸(THPA)52質量部、トリエチルアミン0.7質量部を加え、120℃3.5時間反応させた。こうして得られたバインダー樹脂AのGPCにより測定したポリスチレン換算の重量平均分子量Mwは約15000であった。」
(7)「【0308】
(実施例1~3、比較例1~6)
表2に記載の緑色顔料、黄色顔料、分散剤と、溶剤としてプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート60.00質量部、分散樹脂として分散樹脂Aを固形分換算で1.63質量部、直径0.5mmのジルコニアビーズ225質量部をステンレス容器に充填し、ペイントシェーカーにて6時間分散させて、実施例1~3及び比較例1~6の緑色顔料分散液を調製した。
【0309】
【表2】
[図:0001419056000004.jpg]
【0310】
<着色樹脂組成物の調製>
前記の各顔料分散液に表3に示す他の成分を混合して、着色樹脂組成物を調製した。
【0311】
【表3】
[図:0001419056000005.jpg]
」
2 引用例1に開示された技術的事項及び引用発明
(1)引用例1に開示された技術的事項
上記1の記載によれば、引用例1には、次のような技術的事項が開示されていると認められる。
ア 【表3】の「着色樹脂組成物」(【0310】)は、色材を含み、色材は緑色顔料を含むこと(【表2】)。
イ 【表3】の「着色樹脂組成物」(【0310】)は、「光重合性モノマー」、「光重合開始系成分」及び「溶媒1」~「溶媒3」を含み、前記「溶媒1」、「溶媒2」及び「溶媒3」は、それぞれ「プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート」、「プロピレングリコールモノメチルエーテルア」及び「3-エトキシプロピオン酸エチル」であること。
ウ 【0308】及び【表2】から、上記アの色材は分散樹脂Aを含んでいると認められる。そして、分散樹脂Aは、酸価101mgKOH/gであること(【0295】)。
エ 【表3】の「着色樹脂組成物」(【0310】)は「バインダー樹脂A」を含み、バインダー樹脂Aは、【0305】について記載された手順にて合成されたものであって、以下の成分に由来する構造を含むこと(【0305】)。
・トリシクロデカン骨格を有するモノアクリレート(日立化成(株)製FA-513M)82質量部
・スチレン20質量部
・グリシジルメタクリレート57部
・アクリル酸27質量部
・テトラヒドロ無水フタル酸(THPA)52質量部
オ 【表3】の「着色樹脂組成物」(【0310】)はカラーフィルタ用着色樹脂組成物であること(【0006】)。
(2)引用発明
上記(1)のア~エを総合すると、引用例1には、実施例1(【0308】~【0311】)として、次の「カラーフィルタ用着色樹脂組成物」の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
(当合議体注:引用発明における丸括弧内の記載は、引用例1から引用発明を認定した際の認定根拠とした箇所を示すものである。)
「色材、光重合性モノマー、バインダー樹脂A、光重合開始系成分、酸価101mgKOH/gの分散樹脂A及び、溶媒1~3を含み、(上記(1)ア~ウ)
色材は、緑色顔料を含み、(上記(1)ア)
溶媒1、溶媒2及び溶媒3は、それぞれ「プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート」、「プロピレングリコールモノメチルエーテルア」及び「3-エトキシプロピオン酸エチル」であり(上記(1)イ)、
バインダー樹脂Aが以下の成分に由来する構造を含む、カラーフィルタ用着色樹脂組成物。(上記(1)エ及びオ)
・トリシクロデカン骨格を有するモノアクリレート(日立化成(株)製FA-513M)82質量部
・スチレン20質量部
・グリシジルメタクリレート57部
・アクリル酸27質量部
・テトラヒドロ無水フタル酸(THPA)52質量部」
(以下、上記5つの成分をまとめて「本件成分」という。)
3 対比及び判断
(1)対比
ア 着色剤(A)、光重合性単量体(B)、アルカリ可溶性感光性樹脂(C)、光重合開始剤(D)、酸性樹脂型分散剤及び、有機溶剤
引用発明の「色材」、「光重合性モノマー」、「光重合開始系成分」及び「酸価101mgKOH/gの分散樹脂A」は、それぞれ本願発明の「着色剤(A)」、「光重合性単量体(B)」、「光重合開始剤(D)」及び「酸性樹脂型分散剤」に相当する。
また、引用発明の「バインダー樹脂A」は、本件成分に由来する構造(共重合体の側鎖グリシジル基に、エチレン性不飽和二重結合及びカルボキシル基が導入された構造)を有するから、本願発明の「アルカリ可溶性感光性樹脂(C)」に相当する。
さらに、引用発明の「溶媒1」、「溶媒2」、「溶媒3」は、それぞれ「プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート」、「プロピレングリコールモノメチルエーテル」及び「3-エトキシプロピオン酸エチル」であるから、本願発明の「有機溶剤」に相当する。
イ 緑色顔料
本願発明と引用発明とは、着色剤(A)が緑色顔料を含む点で共通する。
ウ 多環脂環式単量体単位及び芳香環含有単量体単位
引用発明の「トリシクロデカン骨格を有するモノアクリレート(日立化成(株)製FA-513M)」及び「スチレン」は、本願発明の「多環脂環式単量体単位」及び「芳香環含有単量体単位」に相当する。
エ アルカリ可溶性感光性樹脂(C)に係る含有量
(ア)全単量体単位について
先の通知書で指摘したように、本願発明で特定された含有量の対比(計算)に当たっては、本願発明の「全単量体単位中、多環脂環式単量体単位、および芳香環含有単量体単位」及び「全単量体単位中、多環脂環式単量体単位」における「全単量体単位」として、「テトラヒドロ無水フタル酸」を含めるべきか否かを明確にする必要があるところ、本件出願の明細書(以下「本件明細書」という。)には、上記含有量に係る数値範囲の技術的意義について、「カラーフィルタ用着色組成物は上記アルカリ可溶性感光性樹脂(C)を含むことで、残渣の原因となる分散剤や光重合性単量体(B)のアルカリ可溶性感光性樹脂(C)に対する親和性が向上し、現像時にアルカリ可溶性感光性樹脂(C)と共に溶解されやすくなるため、現像での残渣を抑制できる。」(【0035】)と記載されている。
ここで、「テトラヒドロ無水フタル酸」は、その反応過程から、本願発明の「カラーフィルタ用着色組成物」から得られるカラーフィルタに取り込まれて、バインダー樹脂の側鎖にカルボキシル基を導入するものであって、これが分散剤や光重合性単量体(B)との親和性に大きく影響することは明らかである。したがって、上記技術的意義に照らせば、「テトラヒドロ無水フタル酸」を「全単量体単位」に含めて上記含有量を計算すべきことは,技術的にみて自然な解釈といえる。そして、このような解釈を妨げる本件明細書の記載や技術常識を発見しない。かえって、令和6年10月2日に提出した意見書の「(5-1)特許法第36条第6項第2号」における請求人の主張と整合する。
(イ)多環脂環式単量体単位の含有量、多環脂環式単量体単位、および芳香環含有単量体単位の合計含有量
上記(ア)を前提として、本願発明の下記含有量を計算すると以下のとおりであり、これらが後記(2)に示す相違点となる。
多環脂環式単量体単位の含有量:
34.5質量%(=82/(20+82+57+27+52)×100)
多環脂環式単量体単位、および芳香環含有単量体単位の合計含有量:
42.9質量%(=(20+82)/(20+82+57+27+52)×100)
オ カラーフィルタ用着色組成物
本願発明と引用発明とは、カラーフィルタ用着色組成物の発明である点で共通する。
(2)一致点及び相違点
上記(1)の対比結果を踏まえると、本願発明と引用発明とは、
「着色剤(A)、光重合性単量体(B)、アルカリ可溶性感光性樹脂(C)、光重合開始剤(D)、酸性樹脂型分散剤、および有機溶剤を含み、
着色剤(A)は、緑色顔料を含み、
アルカリ可溶性感光性樹脂(C)は、多環脂環式単量体単位、および芳香環含有単量体単位を含む、カラーフィルタ用着色組成物。」
という点で一致し、次の点で相違する。
(相違点1)
本願発明では、アルカリ可溶性感光性樹脂(C)の多環脂環式単量体単位及び芳香環含有単量体単位の含有量について、「全単量体単位中、多環脂環式単量体単位、および芳香環含有単量体単位を合計40~65質量%(ただし、42.9質量%以下を除く)含み、かつ、全単量体単位中、多環脂環式単量体単位を28.5~48.9質量%(ただし、34.5質量%以下を除く)含む」と規定されているのに対して、引用発明の含有量を計算すると、全単量体単位中、多環脂環式単量体単位、および芳香環含有単量体単位を合計42.9質量%含み、かつ、全単量体単位中、多環脂環式単量体単位を34.5質量%含む点。
(3)判断
ア 相違点1について
引用例1の【0137】等の記載によれば、引用発明のトリシクロデカン骨格を有するモノアクリレート及びスチレンの含有割合は、引用例1の記載の発明の目的を達成する範囲内で、設計変更可能なものと理解される。
すなわち、引用例1には、バインダー樹脂に含まれる「他のラジカル重合性単量体」(引用例1に記載された各実施例におけるトリシクロデカン骨格を有するモノアクリレート及びスチレンが該当する。)に関して、「エポキシ基含有(メタ)アクリレートが少なすぎると、後述する重合性成分及びアルカリ可溶性成分の付加量が不十分となる場合があり、一方、エポキシ基含有(メタ)アクリレートが多すぎて、他のラジカル重合性単量体が少なすぎると、耐熱性や強度が不十分となる可能性がある。」(【0137】)と記載されており、エポキシ基含有(メタ)アクリレートと他のラジカル重合性単量体の含有量の比は調整の余地があり、カラーフィルタに必要な仕様、例えば、より耐熱性や強度の向上が求められる仕様に応じて、他のラジカル重合性単量体の割合を相対的に大きくすることが示唆されている。そして、その調整幅について、引用例1には、「エポキシ基含有(メタ)アクリレートと前記他のラジカル重合性単量体との共重合体としては、エポキシ基含有(メタ)アクリレートに由来する繰返し単位5~90モル%と、他のラジカル重合性単量体に由来する繰返し単位10~95モル%と、からなるものが好ましく、前者20~80モル%と、後者80~20モル%とからなるものが更に好ましく、前者30~70モル%と、後者70~30モル%とからなるものが特に好ましい。」(【0136】)と記載されている。
そうしてみると、より耐熱性及び強度が向上したカラーフィルタを求める当業者は、【0136】~【0137】の記載ないし示唆にしたがって、引用発明の「トリシクロデカン骨格を有するモノアクリレート」及び「スチレン」の含有割合を大きく調整することには十分な動機づけが認められ、その調整量の目安として、例えば、引用例1の【0136】において更に好ましいと推奨されている、エポキシ基含有(メタ)アクリレート20モル%に対して80モル%程度を採用し、相違点1に係る本願発明の数値範囲に想到することは、当業者が容易になし得たことである。
なお、引用例1の【0140】~【0141】の記載によれば、他のラジカル重合性単量体の含有割合を大きくするとエポキシ基含有(メタ)アクリレートの含有割合が小さくなり、エポキシ基に不飽和一塩基酸を付加させたときに生じる水酸基に付加させる多塩基酸無水物(テトラヒドロ無水フタル酸)はその分減るよう調整する余地があるが、テトラヒドロ無水フタル酸は、トリシクロデカン骨格を有するモノアクリレート及びスチレンの含有割合の計算において分母として算入されることになるから、引用発明の各含有量は増加する方向に働くのであって、【0141】において「より好ましくは」とされる調整幅を考慮すれば、調整後の値が相違点1に係る数値範囲の上限値を超えることはない。
イ 小括
以上のとおりであるから、引用発明において、引用例1に記載に基づき、相違点1に係る本願発明の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。
(4)発明の効果について
本願発明の実施例は、本件明細書に記載の実施例のうち、実施例27、28、30、31、66、67、69,70のみであると認められる(本件明細書の【0108】)。
実施例27、28、30、31は、着色組成物A1-26を含んでいる(本件明細書の【表5】)。着色組成物A1-26は、R1を含んでいる(本件明細書の【0151】、【0152】)。そして、R1はアルカリ可溶性感光性樹脂であり、多環脂環式単量体単位及び芳香環含有単量体単位を含んでいる。したがって、これらの実施例において、全単量体単位中、多環脂環式単量体単位及び芳香環含有単量体単位の合計含有割合及び、全単量体単位中の多環脂環式単量体単位の含有割合を計算するには、R1を計算に含める必要がある。そして、この点は、実施例66、67、69,70についても同様である。
以上を前提とした計算結果は、以下の表のとおりである。
[図:0001419056000006.jpg]
表から明らかなように、上記いずれの実施例も本願発明の数値範囲を満たさない。
したがって、請求人が意見書で主張する有利な効果は実証されておらず、参酌する余地がない。
(なお、参考例(当初明細書の上記以外の実施例)についても、本願発明の数値範囲を満たさない。)
(5)請求人の主張について
平成6年10月2日に提出された意見書において、請求人は、「引用文献1には、バインダー樹脂が含有する単量体単位を本願発明1の数値範囲に変更できる旨の記載およびパターン断面形状向上に関する効果の記載がありません。そのため、パターン断面形状を向上させるため引用文献1のカラーフィルタ用着色組成物で使用するバインダー樹脂を全単量体単位中、多環脂環式単量体単位、および芳香環含有単量体単位を合計40~65質量%(ただし、42.9質量%以下を除く)含み、かつ、全単量体単位中、多環脂環式単量体単位を28.5~48.9質量%(ただし、34.5質量%以下を除く)含むに置換する動機付けがありません。引用文献2~4にも前記動機付けがありません。」(3頁12~19行)と主張している。
しかしながら、動機付けが十分存在することは、上記(3)で示したとおりである。したがって、上記主張は採用できない。
第3 むすび
本願発明は、特許法29条2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本件出願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2024-001260