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意匠無効審判

2024-880002

枕

審判番号
2024-880002
法域
意匠
審判種別
無効審判(無効の審決)
出願番号
意願2022-024705
登録番号
1743512
請求日
2024年02月15日
審決日
2025年03月25日
公報発行日
2025年06月27日
結論
請求成立(無効)
当事者
  • 【請求人】株式会社 カインズ
  • 【請求人代理人】稲葉 良幸
  • 【請求人代理人】佐藤 力哉
  • 【請求人代理人】宮本 龍太朗
  • 【請求人代理人】林 美和
  • 【請求人代理人】茜ヶ久保 公二
  • 【被請求人】株式会社 太陽
審判長/審判官
  • 審判長 前畑 さおり
  • 審判官 渡邉 久美
  • 審判官 清野 貴雄
分類
D1113.113-Z (C1-1) / D1113.121-Z (C1-1)
条文(本文から自動抽出・参考)
意匠法第3条、意匠法第3条第2項、意匠法第48条、意匠法第52条、特許法第169条
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

上記当事者間の意匠意匠登録第1743512号「枕」の意匠登録無効審判事件について、次のとおり審決する。

結論

結 論 意匠意匠登録第1743512号の登録を無効とする。 審判費用は被請求人の負担とする。

理由

理 由 第1 手続の経緯 本件意匠登録第1743512号の意匠(以下「本件登録意匠」という。別紙第1参照)は、令和4年10月27日に意匠登録出願(意願2022―24705)されたものであって、令和5年1月11日付けで登録査定がなされ、同年4月26日に意匠権の設定の登録がなされた後、同年5月9日に意匠公報が発行され、その後、当審において、概要、以下の手続を経たものである。 令和6年2月15日 審判請求書の提出 同年4月18日付け 請求書副本の送達通知 同年7月 3日付け 書面審理通知 令和7年3月13日付け 審理終結通知 第2 請求の趣旨及び理由 請求人は、令和6年2月15日に審判請求書を提出し、「登録第1743512号意匠の登録を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求める。」と請求し、その理由として、要旨以下のとおり主張し、その主張事実を立証するため、甲第1号証から甲第3号証を提出した。 1 請求の理由 (1)意匠登録の無効理由の要点 ア 意匠法3条1項3号(新規性)違反 本件意匠登録に係る意匠(以下「本件意匠」という。)は、意匠登録出願より前に、公然知られた意匠である中国の意匠公報(甲3)に掲載された意匠(以下「甲3意匠」という。)に類似するものであるから、意匠法3条1項3号の規定により意匠登録を受けることができないものであり、本件意匠登録は、同法48条1項1号により無効とされるべきである。 イ 意匠法3条2項(創作非容易性)違反 本件登録意匠は、その出願日前にその意匠の属する分野における通常の知識を有する者が、甲3意匠等に基づいて容易に創作をすることができたものであるから、意匠法3条2項の規定により意匠登録を受けることができないものであり、本件意匠登録は、同法48条1項1号により無効とされるべきである。 (2)本件意匠登録を無効とすべき理由1(意匠法3条1項3号(新規性)違反) 以下、本件意匠と甲3意匠の構成態様等を特定したうえで(下記ア及びイ)、本件意匠が甲3意匠に類似すること(下記ウ)について説明する。 ア 本件意匠 まず、本件意匠の構成について、基本的構成態様と具体的構成態様に分けて特定する。 [基本的構成態様] A 下端部がわずかに側方に膨出した円錐台形状の基台部と、基台部上にドーム状に形成された球欠部とを備える。 B 基台部は、周面全体にわたって、縦横方向に複数の壁部が形成され、その壁部に区画された略正方形状の有底穴を備える。 C 球欠部は、球面全体にわたって、縦方向及び左右斜め方向に複数の壁部が形成され、その壁部の端部は基台部の壁部の端部と一致しており、その壁部に区画された略正三角形状の穴を備える。 [具体的構成態様] D 基台部は、正面視で、上底と下底との長さの比が、略1対1.2であり、上底の長さと有底穴の横方向長さが略10対1であり、当該有底穴は、浅底で、略正方形状であり、基台部の縦方向に対して6個形成されるとともに、横方向に概ね48個形成される。 E 基台部は、底面視で、大中小の3つの円が形成されており、小円、中円及び大円の直径の比が、略1対1.2対1.4であり、中円と大円の間隙は、白色のメッシュ様素材で形成されている。 F 球欠部は、平面視で、壁部は基台部上に複数の球欠断面により形成され、その直径の長さと三角形状の穴の一辺の長さの比が、略12対1であり、当該穴が縦(垂直)方向に最大で概ね28個、横(水平)方向に最大で概ね16個並べられている。 イ 甲3意匠 甲3意匠は、2022年7月26日に中国知識産権局により公告された中国意匠公報CN307467979Sに掲載された意匠で、その名称(意匠に係る物品)を「午睡枕」とするものである。 その基本的態様は以下のとおりである。 [基本的構成態様] a 下端部がわずかに側方に膨出した円錐台形状の基台部と、基台部上にドーム状に形成された球欠部とを備える。 b 基台部は、周面全体にわたって、縦横方向に複数の壁部が形成され、その壁部に区画された略正方形状の有底穴を備える。 c 球欠部は、球面全体にわたって、横方向及び左右斜め方向に複数の壁部が形成され、その壁部の端部は基台部の壁部の端部と一致しており、その壁部に区画された略正三角形状の穴を備える。 [具体的構成態様] d 基台部は、正面視で、上底と下底との長さの比が、略1:1.2であり、上底の長さと有底穴の横方向長さが略13対1であり、当該有底穴は、略正方形状であり、基台部の縦方向に対して6個形成されるとともに、横方向に概ね48個形成される。 e 基台部は、底面視で、大中小の3つの円模様が形成されており、小円、中円及び大円の直径の比が、略1対1.1対1.2であり、小円の内側には、横方向及び左右斜め方向に複数の線模様により、区画された略正三角形模様が形成されている。 f 球欠部は、平面視で、壁部は、基台部上に複数の球欠断面により形成され、その直径の長さと三角形状の穴の一辺の長さの比が、略14対1であり、当該穴が横(水平)方向に最大で概ね29個、縦(垂直)方向に最大で概ね16個並べられている。 ウ 本件意匠と甲3意匠との対比 (ア)両意匠に係る物品 本件意匠の意匠に係る物品が「枕」であるのに対し、甲3意匠の意匠に係る物品は「午睡枕」であり、これを和訳すれば「枕」であるから、いずれも同一の物品である。 (イ)両意匠の共通点と差異点 (a)共通点 本件意匠と甲3意匠とは、基本的構成態様(A~C、a~c)のすべてにおいて共通する。 また、本件意匠と甲3意匠とは、具体的構成態様において、以下の点において共通する。 (i)基台部が、正面視で、上底と下底との長さの比が、略1:1.2である点、有底穴が、浅底で、略正方形状であり、基台部の縦方向に対して6個形成され、横方向に概ね48個形成されている点(具体的構成態様D、dの一部)。 (ii)基台部が、底面視で、大中小の3つの円模様が形成されている点(具体的構成態様E、eの一部)。 (iii)球欠部は、平面視で、壁部は、基台部上に複数の球欠断面により形成され、当該有底穴が縦(垂直)方向に最大で16個並べられている点(具体的構成態様F、fの一部)。 (b)差異点 本件意匠と甲3意匠とは、具体的構成態様において、以下の点において相違する。 (i)基台部が、正面視で、上底の長さと有底穴の横方向長さが、本件意匠では略10対1であるのに対して、甲3意匠では略13対1である点(具体的構成態様D、dの一部)。 (ii)基台部は、底面視で、小円、中円及び大円の直径の比が、本件意匠では略1対1.2対1.4であるのに対して、甲3意匠では略1対1.1対1.2である点、及び、本件意匠では中円と大円の間隙は白色のメッシュ素材で形成されているのに対して、甲3意匠では小円の内側には、横方向及び左右斜め方向に複数の線模様により、区画された略正三角形模様が形成されている点(具体的構成態様E、eの一部)。 (iii)球欠部は、平面視で、その直径の長さと三角形状の有底穴の一辺の長さの比が、本件意匠では略12対1であるのに対して、甲3意匠では略14対1である点、及び、本件意匠では当該有底穴が縦(垂直)方向に最大で概ね28個並べられているのに対して、甲3意匠では当該穴が横(水平)方向に最大で概ね29個並べられている点(具体的構成態様F、fの一部)。 エ 類否判断 上述のとおり、本件意匠と甲3意匠は、その骨格的構成である基本的構成態様のすべてにおいて共通する。そして、この基本的構成態様における共通点が、両意匠の類否判断に与える影響は、極めて甚大である。 また、本件意匠と甲3意匠は、具体的構成態様D、dの一部、具体的構成態様E、eの一部、及び具体的構成態様F、fの一部においても共通するが、これらには、基台部が、正面視で、上底と下底との長さの比が、略1:1.2である点、有底穴が浅底で略正方形状である点、基台部の縦横方向における有底穴の数(具体的構成態様D、dの一部)、球欠部は、平面視で、壁部は、基台部上に複数の球欠断面により形成されている点(具体的構成態様F、fの一部)など、いずれも基本的構成を支える、基台部、球欠部の形状に関わる構成において共通しており、これらの共通点が両意匠の類否判断に与える影響は極めて大きい。 他方、本件意匠と甲3意匠は、基台部の構成において、上底の長さと有底穴の横方向長さが、略10対1であるか(本件意匠では)、略13対1であるか(甲3意匠)で異なるが(具体的構成態様D、dの一部)、その差異は、わずかな割合の差に過ぎず、微差といえるものであって、これらの差異点が両意匠の類否判断に与える影響は極めて小さい。 また、本件意匠と甲3意匠は、基台部が、底面視で、小円、中円及び大円の直径の比が、略1対1.2対1.4であるか(本件意匠)、略1対1.1対1.2であるか(甲3意匠)で異なるが(具体的構成態様E、eの一部)、その差異は、わずかな割合の差であり微差に過ぎないばかりか、そもそも、本件意匠に係る物品である枕が、通常使用時には底面を接地して用いられ、需要者が底面を視認する機会は極限られることから、底面視における差異が類否判断に与える影響はほぼない。同様に、基台部の底面視においては、本件意匠で中円と大円の間隙は白色のメッシュ様素材が用いられているのに対して、甲3意匠では小円の内側には、横方向及び左右斜め方向に複数の線模様により、区画された略正三角形模様が形成されている点で異なるが(具体的構成態様E、eの一部)、やはりこのような差異も通常使用時には視認できない底面視における差異であるから、類否判断に与える影響は小さい。 さらに、本件意匠と甲3意匠は、球欠部において、平面視で、その直径の長さと三角形状の有底穴の一辺の長さの比が、略12対1であるか(本件意匠)、略14対1であるか(甲3意匠)、及び、当該有底穴が縦(垂直)方向に最大で概ね28個並べられているか(本件意匠)、当該有底穴が横(水平)方向に最大で概ね29個並べられているか(甲3意匠)で異なるが(具体的構成態様F、fの一部)、その差異は、わずかな割合の差であるか、わずかな個数の差に過ぎず、微差といえるものであって、これらの差異点が両意匠の類否判断に与える影響は極めて小さい。 以上の本件意匠と甲3意匠における共通点及び差異点の評価を踏まえれば、共通点が類否判断に与える影響は極めて甚大であるのに対して、差異点が類否判断に与える影響はいずれも小さいから、差異点が共通点を凌駕するなどとは到底いえず、したがって、需要者に視覚を通じて起こさせる両意匠の美感は共通するものであるといわざるを得ない。 オ 小括 以上のとおり、本件意匠と甲3意匠が類似することは明らかであり、意匠法3条1項3号の規定に違反して登録されたことは明白である以上、同48条1項1号により無効にされるべきものである。 (3)本件意匠登録を無効とすべき理由2(意匠法3条2項(創作非容易性)違反) 本件意匠は、上述のとおり本件意匠登録を無効とすべき理由1(意匠法3条1項3号(新規性)違反)によって無効とされるべきものである。 しかし、仮に無効理由1によって無効とならない場合であっても、本件意匠は甲3意匠に基づき、その意匠の属する分野における通常の知識を有する者が容易に創作することができたものであるから、意匠法第3条第2項違反により無効とされるべきである。 ア 意匠法第3条第2項について 意匠法3条2項は、物品との関係を離れた抽象的なモチーフとして日本国内において広く知られた形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合(周知のモチーフ)を基準として、それからその意匠の属する分野における通常の知識を有する者(当業者)が容易に創作することができた意匠でないことを登録要件としたものであり、上記の周知のモチーフを基準として、当業者の立場からみた意匠の着想の新しさないし独創性を問題とするものである(最高裁昭和45年(行ツ)第45号同49年3月19日第三小法廷判決・民集28巻2号308頁、最高裁昭和48年(行ツ)第82号同50年2月28日第二小法廷判決・裁判集民事114号287頁参照)。 イ 本件意匠と甲3意匠について この点、本件意匠と甲3意匠は、基本的構成態様のすべてにおいて共通するほか、具体的構成態様D、dの一部、具体的構成態様E、eの一部、及び具体的構成態様F、fの一部においても共通し、具体的構成態様の以下の点において異なるものであるが、その差異は、いずれもわずかな割合の差であるか、わずかな個数の差、または本物品の底面視における差異であり、微差といえるものである。 そうすると、本件意匠は、甲3意匠と比較した場合に、当業者の立場からみた意匠の着想の新しさないし独創性を見出すことはできないから、甲3意匠から容易に創作できたものである。 [本件意匠と甲3意匠との具体的構成態様における差異点] (i)基台部が、正面視で、上底の長さと有底穴の横方向長さが、本件意匠では略10対1であるのに対して、甲3意匠では略13対1である点(具体的構成態様D、dの一部)。 (ii)基台部は、底面視で、小円、中円及び大円の直径の比が、本件意匠では略1対1.2対1.4であるのに対して、甲3意匠では略1対1.1対1.2である点、及び、本件意匠では中円と大円の間隙に白色のメッシュ様素材が用いられているのに対して、甲3意匠では小円の内側には、横方向及び左右斜め方向に複数の線模様により、区画された略正三角形模様が形成されている点(具体的構成態様E、eの一部)。 (iii)球欠部は、平面視で、その直径の長さと三角形状の有底穴の一辺の長さの比が、本件意匠では略12対1であるのに対して、甲3意匠では略14対1である点、及び、本件意匠では当該有底穴が縦(垂直)方向に最大で概ね28個並べられているのに対して、甲3意匠では当該有底穴が横(水平)方向に最大で概ね29個並べられている点(具体的構成態様F、fの一部)。 ウ 小括 以上より、本件意匠は、甲3意匠に基づき、その意匠の属する分野における通常の知識を有する者が容易に創作することができたことは明白であるから、本件意匠が仮に無効理由1に該当しない場合であっても、意匠法48条1項1号により無効にされるべきものである。 (4)むすび 以上より、本件意匠は、甲3意匠と類似するものであるから、意匠法3条1項3号の規定により意匠登録を受けることができないものであり、本件意匠登録は、同法48条1項1号により、無効とすべきである。 また、仮に、本件意匠が意匠法3条1項3号の規定により意匠登録を受けることができないものであると判断されない場合であっても、本件意匠は、甲3意匠に基づいてその意匠の属する分野における通常の知識を有する者が容易に創作することができたものであるから、意匠法3条2項の規定により意匠登録を受けることができないものであり、本件意匠登録は、同法48条1項1号により、無効とすべきである。 2 証拠方法 (1)甲第1号証 意匠原簿(意匠登録第1743512号) (2)甲第2号証 意匠公報(意匠登録第1743512号) (3)甲第3号証 中国国家知識産権局発行意匠公報(CN307467979S) 第3 答弁の趣旨及び理由 審判長は、被請求人に対し、審判請求書の副本を送達し、期間を指定して答弁書の提出を求めたが、被請求人からの応答はなかった。 第4 書面審理及び審理終結 当審は、本件審判について、両当事者に対し、令和6年7月3日付けで書面審理に付す旨を通知し、令和7年3月13日付けで審理を終結する旨を通知した。 第5 当審の判断 1 本件登録意匠 本件登録意匠(意匠登録第1743512号)は、願書及び願書に添付された図面の記載によれば、意匠に係る物品を「枕」とし、その形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合(以下「形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合」を「形状等」という。)を、願書及び願書に添付した図面に表されたとおりとしたものであり、具体的な形状等は、以下のとおりである。(別紙第1参照) (1)基本的構成態様 A1 全体は、略円錐台形状とした基台部と、基台部の頂部を略半球状に膨出した球欠部から構成されたものであって、基台部の周側面及び球欠部の表面全面に、格子状のリブと当該リブによって区画された多数の穴を形成したものである。 A2 全体の横幅(最大径):高さの比率は、約3:2である。また、球欠部の高さ:基台部の高さの比率は、約1:1.3であり、球欠部の横幅(下端部):基台部の横幅(最大径)の比率は、約1:1.2である。 各部の形状等として、 (2)球欠部 B1 球欠部は、略半球面状の全体にわたって、縦方向及び左右斜め方向の複数のリブが三角格子状に形成され、それらリブの上端は球欠断面状に形成され、基台部に続くリブ端部の左右位置は、基台部の各縦リブと一致しており、当該リブによって区画された略正三角形状の穴を多数形成している。多数の略正三角形状の穴の配列は、6つずつの頂点を突き合わせるようにして隙間なく並べた態様である。 B2 球欠部の略正三角形状の穴は、平面視で、三角形の一辺の長さ:球欠部の直径の比率が、約1:16であり、当該穴が縦(垂直)方向に最大で約28個、横(水平)方向に最大で約16個並べられている。 (3)基台部 C1 基台部は、下端部がわずかに側方に膨出した略円錐台形状で、周側面全体にわたって、縦横方向の複数のリブが格子状に形成され、そのリブによって区画された略正方形状の浅底の有底穴を多数形成している。多数の略正方形状の穴の配列は、各辺同士を合わせて上下左右に隙間なく並べた態様である。 C2 基台部の略正方形状の有底穴は、正面視で、穴の横幅:基台部の上端の横幅の比率が約1:10であり、基台部の縦方向に対して6個形成するとともに、周方向に約48個形成している。 (4)底面 D1 略円形の底面には、同心円状に大中小の3つの円が形成されており、小円:中円:大円の直径の比率が、約1:1.1:1.4であり、中円と小円の間の円環部を白色、その余りの部分を中灰色の色調としている。 2 無効理由の要点 請求人が主張する無効理由の要旨は、以下のとおりである。 (1)無効理由1 本件登録意匠は、本件登録意匠の出願前、2022年7月26日に中国知識産権局が発行した、公告番号307467979Sの外観設計専利公報(甲第3号証)に記載された意匠に類似する意匠であり、意匠法3条1項3号の規定により意匠登録を受けることができないものであるから、同法48条1項1号により、無効とすべきである。 (2)無効理由2 本件登録意匠は、本件登録意匠の出願前、2022年7月26日に中国知識産権局が発行した、公告番号307467979Sの外観設計専利公報(甲第3号証)に記載された意匠に基づいて、その意匠の属する分野における通常の知識を有する者が容易に創作をすることができたものであり、意匠法3条2項の規定により意匠登録を受けることができないものであるから、同法48条1項1号により、無効とすべきである。 3 無効理由の判断 (1)無効理由1 請求人は、前記に示すとおり、本件登録意匠は、本件登録意匠の出願前に頒布された甲第3号証に記載された意匠と類似するものであり、意匠法3条1項3号の規定により意匠登録を受けることができないものであるので、同法48条1項1号により、無効とすべきであると主張しているから、以下、本件登録意匠が、甲第3号証の意匠と類似する意匠であるか否かについて検討する。 ア 証拠の説明 甲第3号証に記載された意匠(以下「甲3意匠」という。別紙第2参照)は、審判請求書に添付された甲第3号証の訳文によれば、中華人民共和国の国家知識財産局が、2022年7月26日に発行した意匠権公告公報に記載の意匠(物品名:「昼寝用枕」、公告番号CN307467979S)である。 (ア)意匠に係る物品 甲3意匠の意匠に係る物品は「昼寝用枕」である。 (イ)形状等 以下、甲3意匠の図面の向きを本件登録意匠の図面の向きに合わせて(平面図を右に90度回転させて)認定し、対比する。 a 基本的構成態様 a1 全体は、略円錐台形状とした基台部と、基台部の頂部を略半球状に膨出した球欠部から構成されたものであって、基台部の周側面及び球欠部の表面全面に、格子状のリブと当該リブによって区画された多数の穴を形成したものである。 a2 全体の横幅(最大径):高さの比率は、約3.4:2である。また、球欠部の高さ:基台部の高さの比率は、約1:1.3であり、球欠部の横幅(下端部):基台部の横幅(最大径)の比率は、約1:1.2である。 各部の形状等として、 b 球欠部 b1 球欠部は、略半球面状の全体にわたって、縦方向及び左右斜め方向の複数のリブが三角格子状に形成され、それらリブの上端は球欠断面状に形成され、基台部に続くリブ端部の左右位置は、基台部の各縦リブと一致しており、当該リブによって区画された略正三角形状の穴を多数形成している。多数の略正三角形状の穴の配列は、6つずつの頂点を突き合わせるようにして隙間なく並べた態様である。 b2 球欠部の略正三角形状の穴は、平面視で、三角形の一辺の長さ:球欠部の直径の比率が、約1:15であり、当該穴が縦(垂直)方向に最大で約29個、横(水平)方向に最大で約16個並べられている。 c 基台部 c1 基台部は、下端部がわずかに側方に膨出した略円錐台形状で、周側面全体にわたって、縦横方向の複数のリブが格子状に形成され、そのリブによって区画された略正方形状の浅底の有底穴を多数形成している。多数の略正方形状の穴の配列は、各辺同士を合わせて上下左右に隙間なく並べた態様である。 c2 基台部の略正方形状の有底穴は、正面視で、穴の横幅:基台部の上端の横幅の比率が約1:16であり、基台部の縦方向に対して6個形成するとともに、周方向に約48個形成している。 d 底面 d1 略円形の底面には、同心円状に大中小の3つの円が形成されており、小円:中円:大円の直径の比率が、約1:1.1:1.3であり、小円の内側には、縦方向及び左右斜め方向に複数の線模様により、区画された略正三角形模様が多数形成されている。 イ 本件登録意匠と甲1意匠の形状等の対比 本件登録意匠と甲3意匠の形状等においては、以下の共通点と相違点が認められる。 A 形状等の共通点 全体の基本的構成の共通点として、 (共通点1)全体の基本的構成が、略円錐台形状とした基台部と、基台部の頂部を略半球状に膨出した球欠部から構成されたものであって、基台部の周側面及び球欠部の表面全面に、格子状のリブと当該リブによって区画された多数の穴を形成したものである点(A1及びa1)。 (共通点2)球欠部の高さ:基台部の高さの比率は、約1:1.3であり、球欠部の横幅(下端部):基台部の横幅(最大径)の比率は、約1:1.2である点(A2及びa2)。 球欠部の形状等の共通点として、 (共通点3)球欠部は、略半球面状の全体にわたって、縦方向及び左右斜め方向の複数のリブが三角格子状に形成され、それらリブの上端は球欠断面状に形成され、基台部に続くリブ端部の左右位置は、基台部の各縦リブと一致しており、当該リブによって区画された略正三角形状の穴を多数形成しており、多数の略正三角形状の穴の配列は、6つずつの頂点を突き合わせるようにして隙間なく並べた態様である点(B1及びb1)。 (共通点4)球欠部の略正三角形状の穴は、平面視で、横(水平)方向に最大で約16個並べられている点(B2及びb2)。 基台部の形状等の共通点として、 (共通点5)基台部は、下端部がわずかに側方に膨出した略円錐台形状で、周側面全体にわたって、縦横方向の複数のリブが格子状に形成され、そのリブによって区画された略正方形状の浅底の有底穴を多数形成しており、多数の略正方形状の穴の配列は、各辺同士を合わせて上下左右に隙間なく並べた態様である点(C1及びc1)。 (共通点6)基台部の略正方形状の有底穴は、基台部の縦方向に対して6個形成するとともに、周方向に約48個形成している点(C2及びc2)。 底面の形状等の共通点として、 (共通点7)略円形の底面には、同心円状に大中小の3つの円が形成されている点(D1及びd1)。 B 形状等の相違点 (相違点1)全体の横幅(最大径):高さの比率について、本件登録意匠は約3:2である(A2)のに対して、甲3意匠は約3.4:2である(a2)点。 (相違点2)球欠部の略正三角形状の穴について、本件登録意匠は、三角形の一辺の長さ:球欠部の直径の比率が、約1:16であり、当該穴が縦(垂直)方向に最大で約28個並べられている(B2)のに対し、甲3意匠は、同比率が約1:15、縦の配列数が最大で約29個である(b2)点。 (相違点3)基台部の略正方形状の有底穴について、本件登録意匠は、正面視で、穴の横幅:基台部の上端の横幅の比率が約1:10である(C2)のに対し、甲3意匠は、同比率が約1:16である(c2)点。 (相違点4)底面の3つの円について、本件登録意匠は、小円:中円:大円の直径の比率が、約1:1.1:1.4であり、中円と小円の間を白色、その余りの部分を中灰色の色調としている(D1)のに対し、甲3意匠は、同比率が、約1:1.1:1.3であり、小円の内側には、縦方向及び左右斜め方向に複数の線模様により、区画された略正三角形模様が多数形成されている(d1)点。 ウ 両意匠の類否判断 (ア)両意匠の意匠に係る物品 両意匠の意匠に係る物品は、記載は異なるが、いずれも、寝るときに頭部の下に据えて頭部の支えに使用する「枕」であるから、両意匠は用途及び機能において一致する。 したがって、両意匠の意匠に係る物品は同一である。 (イ)形状等の共通点及び相違点の評価 両意匠の意匠に係る物品は、枕であるから、これを購入し使用する者が主たる需要者である。そして、枕は、その底面を下向きに載置し、上面に使用者の頭部を乗せて使用されるから、需要者は、主に上面や側面を上から見下ろすように枕を観察するということがいえる。 a 共通点の評価 (共通点1)は、両意匠の形状等を概括的に捉えたものであるが、略円錐台形状の基台部と略半球状に膨出した球欠部とが一体となって形成された全体的な形状等は、両意匠のほかにあまり見られないから、意匠の特徴として印象づけられるものであって、意匠全体の美感に与える影響は大きい。 (共通点2)は、全体の高さ、横幅の比率に関するものであるが、概括的なものであるから、これのみでは、意匠全体の美感に与える影響は小さい。 (共通点3)~(共通点6)は、枕の上面及び周側面の形状に係るものであり、枕の弾力性や通気性といった性能を発揮する構造が外観形状に表れたものとして強い印象を与えること、上面や側面を上から見下ろす際に目に付きやすいことから、それぞれ、意匠全体の美感に与える影響は大きい。 (共通点7)は、底面の模様に係るものであるが、通常の使用に際してはほとんど観察する機会がないから、意匠全体の美感に与える影響は非常に小さい。 b 相違点の評価 (相違点1)について、全体の横幅と高さの比率において、甲3意匠が本件登録意匠よりも若干横長であるが、その差はごく僅かであって、ほとんど目立たないから、(相違点1)が意匠全体の美感に与える影響は小さい。 (相違点2)及び(相違点3)について、球欠部の略正三角形状の穴や基台部の略正方形状の有底穴の寸法比率、穴の配列数の相違であるが、いずれの差も、その部分のみを注視して観察しなければわからないほど僅かなものであって、ほとんど目立たないから、(相違点2)及び(相違点3)が意匠全体の美感に与える影響は小さい。 (相違点4)について、底面の模様及び色彩に係る相違であるが、通常の使用に際してはほとんど観察する機会がないから、(相違点4)が意匠全体の美感に与える影響は非常に小さい。 (ウ)形状等の類否判断 両意匠の形状等における共通点及び相違点の評価に基づき、意匠全体として総合的に観察した場合、両意匠は、(共通点1)及び(共通点3)~(共通点6)において、共通する印象を大きく与えるのに対して、(相違点1)~(相違点4)が意匠全体に与える影響はいずれも小さいものに過ぎないから、これらの相違点を合わせても、意匠全体としては共通する美感を強く起こさせるものといえる。そうすると、本件登録意匠と甲3意匠は、形状等において類似するといわざるを得ない。 (エ)両意匠の類否判断 したがって、本件登録意匠と甲3意匠は、意匠に係る物品が同一で、その形状等において類似するから、両意匠は類似する。 エ 小括 以上によれば、本件登録意匠は、甲3意匠と類似するから、意匠法3条1項3号に掲げる意匠に該当する。 したがって、請求人が主張する本件登録意匠の無効理由1には、理由がある。 (2)無効理由2 請求人は、前記に示すとおり、本件登録意匠は、本件意匠の出願前に頒布された甲第3号証に記載された意匠(甲3意匠)に基づいて、その意匠の属する分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に創作することができたものであり、意匠法3条2項の規定により意匠登録を受けることができないものであるので、意匠法48条1項1号により無効とすべきであると主張しているから、以下、本件登録意匠が、甲3意匠に基づいて、当業者が容易に創作することができたものであるか否かについて検討する。 ア 証拠の説明 甲3意匠の認定については、前記3(1)アにおいて認定したとおりである。 イ 創作容易性の判断 本件登録意匠の形状等は、甲3意匠の形状等をほとんどそのまま表し、その上で、全体の横幅と高さの比率を、若干縦長のものとし、球欠部の略正三角形状の穴及び基台部の略正方形状有底穴について、全体の大きさに対する穴の寸法比率及び穴の配列数を僅かに増減し、また、底面の模様及び色彩について一部変更を加えた程度のものといえる。そして、これらは寸法比率や構成要素の配列数の若干の増減といった、ありふれた手法による変更であるか、あるいは、底面という通常の使用に際してほとんど観察する機会がない部位に係る、意匠全体の美感にほとんど影響を与えない僅かな変更であって、これらの点に当業者の立場からみた意匠の着想の新しさや独創性があるとはいえない。 したがって、本件登録意匠は、甲3意匠に基づいて当業者が容易に創作をすることができた意匠といわざるを得ず、意匠法3条2項に規定する意匠に該当する。 したがって、請求人が主張する本件登録意匠の無効理由2には、理由がある。 第6 むすび 以上のとおりであるから、請求人の主張する無効理由1及び無効理由2について理由があり、本件登録意匠は、意匠法3条1項3号に掲げる意匠及び同条2項に規定する意匠に該当し、その登録は、同法48条1項1号により無効とすべきものである。 審判に関する費用については、意匠法52条で準用する特許法169条2項で準用する民事訴訟法61条の規定により、被請求人が負担すべきものとする。 よって、結論のとおり審決する。

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2024-880002

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