特許異議申立
2024-701076
情報処理システム及び情報処理プログラム
- 審判番号
- 2024-701076
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2023-114133
- 登録番号
- 7478404
- 請求日
- 2024年11月05日
- 審決日
- 2025年01月10日
- 公報発行日
- 2025年02月28日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】ポケットサイン株式会社
- 【異議申立人】サイバートラスト 株式会社
- 【異議申立人代理人】平野 高志
- 【異議申立人代理人】那須 健人
- 審判長/審判官
- 審判長 吉田 美彦
- 審判官 林 毅
- 審判官 松崎 孝大
- 分類
- P1651.111-Y (G06F)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第1項第1号
- データ出所
- 審決公報(XML)
結論
結 論
特許第7478404号の請求項1~12に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7478404号の請求項1~12に係る特許についての出願は、令和5年7月12日に出願され、令和6年4月24日にその特許権の設定登録がされ、令和6年5月7日に特許掲載公報が発行された。その後、その特許に対し、令和6年11月5日に特許異議申立人 サイバートラスト株式会社(以下、単に「申立人」という。)は、特許異議の申立てを行った。
第2 本件特許発明
特許第7478404号の請求項1~12の特許に係る発明(以下、「本件特許発明1」~「本件特許発明12」という。)は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1~12に記載された事項により特定される次のとおりのものである。なお、本件特許発明1におけるA、B、…、Iは、令和6年11月5日に提出された特許異議申立書第11~12ページの記載を援用して付した分説記号であり、各分説記号が付された構成を、以下、「構成要件A」…「構成要件I」などという。
1 本件特許発明1
A ユーザからの第1情報源に対応する第1認証情報及び第2情報源に対応する第2認証情報のユーザ端末への入力により、前記第1認証情報及び前記第2認証情報を受付ける認証情報受付部と、
B 前記ユーザの本人確認に利用可能な有形物である本人確認可能媒体を前記ユーザが前記ユーザ端末に近づけて、前記ユーザ端末により前記本人確認可能媒体を読取る読取部と、
C 前記本人確認可能媒体を前記ユーザが前記ユーザ端末に一回近づけることで行われる一回の読取処理が行われている間に、前記本人確認可能媒体に前記第1認証情報及び前記第2認証情報を送信する認証情報送信部と、
D 前記一回の読取処理が行われている間において、前記本人確認可能媒体において前記第1認証情報及び前記第2認証情報が認証された場合に、該本人確認可能媒体に記憶されている、前記第1認証情報に対応する第1情報源の第1情報及び前記第2認証情報に対応する第2情報源の第2情報を取得する情報取得部とを備え、
E 前記第1情報源は、公的個人認証サービスにおいて利用可能な利用者証明用電子証明書又は署名用電子証明書であり、
F 前記第2情報源は、公的機関により提供される券面事項入力補助アプリケーション又は券面事項確認アプリケーションであって、
G 前記第1情報は、前記第1情報源が利用者証明用電子証明書の場合は該利用者証明用電子証明書における個人情報を含まない情報であり、前記第1情報源が署名用電子証明書の場合は該署名用電子証明書における情報であって、
H 前記第2情報は、前記第2情報源が前記券面事項入力補助アプリケーションの場合は該券面事項入力補助アプリケーションにおける個人情報であり、前記第2情報源が券面事項確認アプリケーションである場合は前記券面事項確認アプリケーションにおける個人情報である
I ことを特徴とする情報処理システム。
2 本件特許発明2
前記認証情報受付部は、前記ユーザによる前記ユーザ端末への前記第1認証情報又は前記第2認証情報のいずれか一方の認証情報が入力されることにより、該第1認証情報及び該第2認証情報を受付ける、又は、前記ユーザ端末に表示される一つの入力画面上で、前記ユーザが前記第1認証情報及び前記第2認証情報を入力することにより、前記第1認証情報及び前記第2認証情報を同時に受付ける
ことを特徴とする請求項1に記載の情報処理システム。
3 本件特許発明3
前記有形物は、公的個人認証サービスにおいて個人に対して発行される電子証明書を記憶したICチップを搭載し、且つ、本人確認に利用可能な本人確認カードであることを特徴とする請求項2に記載の情報処理システム。
4 本件特許発明4
前記ユーザが利用するサービスの選択を受付けるサービス選択受付部をさらに備え、
前記情報取得部は、前記サービス選択受付部により選択された前記サービスに対応する前記第1情報源の前記第1情報及び前記第2情報源の前記第2情報を取得する
ことを特徴とする請求項1に記載の情報処理システム。
5 本件特許発明5
前記ユーザからの前記第1認証情報及び前記第2認証情報の前記ユーザ端末への入力がされる入力画面において、前記サービス選択受付部により受付けられた前記サービスに対応する前記第1情報源の名称及び前記第2情報源の名称を表示させる名称表示部をさらに備えることを特徴とする請求項4に記載の情報処理システム。
6 本件特許発明6
前記情報取得部により取得された前記利用者証明用電子証明書の情報、券面事項入力補助アプリケーションにおける個人情報、券面事項確認アプリケーションにおける個人情報、及び署名用電子証明書の情報の少なくともいずれかの認証を行う認証部と、
前記認証部により前記利用者証明用電子証明書の情報及び前記券面事項入力補助アプリケーションにおける個人情報若しくは前記券面事項確認アプリケーションにおける個人情報、又は、署名用電子証明書の情報の認証が行われた場合に、前記ユーザに関するユーザ認証登録を行うユーザ認証登録部と、
前記認証部により前記利用者証明用電子証明書の情報又は署名用電子証明書の情報の認証が行われ、且つ、前記ユーザ認証登録部により前記ユーザ認証登録が既に行われている場合に、ログイン処理を行うログイン処理部と
をさらに備えることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の情報処理システム。
7 本件特許発明7
コンピュータを、
ユーザからの第1情報源に対応する第1認証情報及び第2情報源に対応する第2認証情報のユーザ端末への入力により、前記第1認証情報及び前記第2認証情報を受付ける認証情報受付部と、
前記ユーザの本人確認に利用可能な有形物である本人確認可能媒体を前記ユーザが前記ユーザ端末に近づけて、前記ユーザ端末により前記本人確認可能媒体を読取る読取部と、
前記本人確認可能媒体を前記ユーザが前記ユーザ端末に一回近づけることで行われる一回の読取処理が行われている間に、前記本人確認可能媒体に前記第1認証情報及び前記第2認証情報を送信する認証情報送信部と、
前記一回の読取処理が行われている間において、前記本人確認可能媒体において前記第1認証情報及び前記第2認証情報が認証された場合に、該本人確認可能媒体に記憶されている、前記第1認証情報に対応する第1情報源の第1情報及び前記第2認証情報に対応する第2情報源の第2情報を取得する情報取得部として機能させるための情報処理プログラムであって、
前記第1情報源は、公的個人認証サービスにおいて利用可能な利用者証明用電子証明書又は署名用電子証明書であり、
前記第2情報源は、公的機関により提供される券面事項入力補助アプリケーション又は券面事項確認アプリケーションであって、
前記第1情報は、前記第1情報源が利用者証明用電子証明書の場合は該利用者証明用電子証明書における個人情報を含まない情報であり、前記第1情報源が署名用電子証明書の場合は該署名用電子証明書における情報であって、
前記第2情報は、前記第2情報源が前記券面事項入力補助アプリケーションの場合は該券面事項入力補助アプリケーションにおける個人情報であり、前記第2情報源が券面事項確認アプリケーションである場合は前記券面事項確認アプリケーションにおける個人情報である
ことを特徴とする情報処理プログラム。
8 本件特許発明8
前記認証情報受付部は、前記ユーザによる前記ユーザ端末への前記第1認証情報又は前記第2認証情報のいずれか一方の認証情報が入力されることにより、該第1認証情報及び該第2認証情報を受付ける、又は、前記ユーザ端末に表示される一つの入力画面上で、前記ユーザが前記第1認証情報及び前記第2認証情報を入力することにより、前記第1認証情報及び前記第2認証情報を同時に受付ける
ことを特徴とする請求項7に記載の情報処理プログラム。
9 本件特許発明9
前記有形物は、公的個人認証サービスにおいて個人に対して発行される電子証明書を記憶したICチップを搭載し、且つ、本人確認に利用可能な本人確認カードであることを特徴とする請求項8に記載の情報処理プログラム。
10 本件特許発明10
前記ユーザが利用するサービスの選択を受付けるサービス選択受付部としてさらに機能させ、
前記情報取得部は、前記サービス選択受付部により選択された前記サービスに対応する前記第1情報源の前記第1情報及び前記第2情報源の前記第2情報を取得する
ことを特徴とする請求項7に記載の情報処理プログラム。
11 本件特許発明11
前記ユーザからの前記第1認証情報及び前記第2認証情報の前記ユーザ端末への入力がされる入力画面において、前記サービス選択受付部により受付けられた前記サービスに対応する前記第1情報源の名称及び前記第2情報源の名称を表示させる名称表示部をさらに備えることを特徴とする請求項10に記載の情報処理プログラム。
12 本件特許発明12
前記情報取得部により取得された前記利用者証明用電子証明書の情報、券面事項入力補助アプリケーションにおける個人情報、券面事項確認アプリケーションにおける個人情報、及び署名用電子証明書の情報の少なくともいずれかの認証を行う認証部と、
前記認証部により前記利用者証明用電子証明書の情報及び前記券面事項入力補助アプリケーションにおける個人情報若しくは前記券面事項確認アプリケーションにおける個人情報、又は、署名用電子証明書の情報の認証が行われた場合に、前記ユーザに関するユーザ認証登録を行うユーザ認証登録部と、
前記認証部により前記利用者証明用電子証明書の情報又は署名用電子証明書の情報の認証が行われ、且つ、前記ユーザ認証登録部により前記ユーザ認証登録が既に行われている場合に、ログイン処理を行うログイン処理部と
してさらに機能させることを特徴とする請求項7から11のいずれかに記載の情報処理プログラム。
第3 申立理由の概要
申立人は、以下の証拠を提出し、以下の申立理由に基づいて、請求項1~12に係る特許を取り消すべきものである旨主張する。
1 申立理由
本件特許発明1~12は、甲第1号証、甲第2号証及び甲第3号証に記載のとおり、本件特許出願前に日本国内において公然知られた発明であるから、特許法第29条第1項第1号に該当する。
2 証拠方法
甲第1号証:マイナンバーカード・インフォ(自治体向け)vol.12
甲第2号証:「マイナンバーカードのアプリの概要」(URL : https://www.digital.go.jp/policies/mynumber/pros-and-safety)
甲第3号証:総務省ホームページ(URL : https://www.soumu.go.jp/kojinbango_card/kojinninshou-01.html)
なお、甲第2号証、甲第3号証に係る上記URLはいずれも申立人が特許異議申立書に添付して提出した証拠説明書によるものであるが、甲第3号証については、実際に提出された証拠を参酌すれば、そのURLとしては、「https://www.digital.go.jp/assets/contents/node/basic_page/field_ref_resources/68bc86d6-94d7-4fe8-a592-302d78828e1f/d8c514f8/20231102_policies_mynumber_pros-and-safety_outline_01.pdf」が正しいものと認められる。
また、以下において、甲第1号証~甲第3号証を、「甲1」~「甲3」という場合がある。
第4 各甲号証に開示されている事項
1 甲第1号証
(1)甲第1号証の記載事項
ア 表紙
[図:0001419374000001.jpg]
イ 第3ページ
[図:0001419374000002.jpg]
ウ 第4ページ
[図:0001419374000003.jpg]
エ 第5ページ
[図:0001419374000004.jpg]
オ 第5ページ(上記エ)の一部を拡大したもの
[図:0001419374000005.jpg]
(2)甲1発明
甲1において、○の中に数字がある記号は、<1>、<2>…との表記で代用する。
上記(1)イの「登録時」を参酌すると、甲1には、マイナンバーカードを図書館カードとして利用する際の登録処理として、<1>、<2>…の数字の順序で処理がなされるものと認められる。また、「職員」、「利用者」は、操作を行う主体と認められる。
また、上記(1)ウより、上記(1)イの「MKPF」は「マイキープラットフォーム」のことであり、「PPID」は「サービス固有」の「ユーザ識別子」のことである。
また、上記(1)エ及びオを参酌すれば、上記(1)イの「券面事項入力補助APを活用(4pin入力)」、「電子利用者証明(4pin入力)」はそれぞれ、「券面事項入力補助APを活用するためにその4桁のパスワードの入力」、「電子利用者証明のために利用者証明用電子証明書の4桁のパスワードの入力」といい得るものである。
さらに、上記(1)エを参酌すれば、上記(1)イの「利用者が図書館に備付けの端末に表示された内容」は「カード認証画面」のことであり、また、上記(1)イの「ICカードリーダにマイナンバーカードを置」く操作により、「マイナンバーカードの読み取りを開始」するものと認められる。
そうすると、(1)より、甲第1号証には、次の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。
「以下の各処理からなる、マイナンバーカードを図書館カードとして利用する際の登録処理
<1>利用者が職員へ「マイナンバーカードを図書館カードとして使用したい」と申出
<2>職員が図書館システムへアクセスし、職員用ディスプレイに表示された「マイナンバーカードで新規ユーザー登録」を選択
<3>マイキープラットフォーム(MKPF)へ情報連携
<4>MKPF上で、利用者が図書館に備付けの端末に表示されたカード認証画面に従って、ICカードリーダにマイナンバーカードを置くことにより、マイナンバーカードの読み取りを開始し、次の2点を実施。
・氏名・住所・生年月日・性別を入力(生年月日はMKPF上に登録)(券面事項入力補助APを活用するためにその4桁のパスワードの入力)
・電子利用者証明のために利用者証明用電子証明書の4桁のパスワードの入力
<5>MKPF上で、サービス固有のユーザ識別子(PPID)を自動発行
<6>図書館システムへ、氏名・住所・生年月日・性別及びPPIDを連携
<7>連携された氏名等以外に必要な項目があれば手動で登録
<8>マイナンバーカードの図書館カード化完了」
2 甲第2号証の開示事項
[図:0001419374000006.jpg]
3 甲第3号証の開示事項
[図:0001419374000007.jpg]
[図:0001419374000008.jpg]
…(中略)…
[図:0001419374000009.jpg]
第5 当審の判断
1 公知発明の認定について
上記第4(1)アによれば、甲1は、デジタル庁が自治体に向けた令和5年6月30日付けの文書と認められるが、本件特許出願より先に、不特定の者に秘密でないものとしてその内容が知られたかどうかまでは必ずしも明らかではない。
もっとも、甲1は、公益性の高いマイナンバーカードに関するものであって、かつ、自治体に提供されたものであることに鑑みれば、本件特許出願より先にその内容が日本国内において公然知られた蓋然性が高い。よって、甲1の開示事項から把握できる甲1発明は、本件特許出願より先に日本国内において公然知られた発明(公知発明)と認められる。
なお、甲2は、公知日が不明であるので、甲1の開示事項に甲2の開示事項を参酌して1つの公知発明を認定することはできない。
また、甲3は、著作権表示により、2009年に作成されたものと認められるものの、その公知日は不明である。仮に、2009年頃に公知となったと認められたとしても、甲3には、「利用者証明用電子証明書(新規)」とあるように、甲3は、マイナンバーカードに係るシステムの開発過渡期に作成されたものと認められるため、甲1に記載されたものと同一のシステムに係るものとはいえず、やはり、甲1の開示事項に甲3の開示事項を参酌して1つの公知発明を認定することはできない。
なお、申立人は、甲1のみならず、甲2、甲3を参酌して1つの公知発明を認定することができる根拠について具体的に説明していない。
2 本件特許発明1について
(1)対比
本件特許発明1と甲1発明とを対比する。
ア 構成要件Aについて
甲1発明の「利用者」、「図書館に備付けの端末」及び「ICカードリーダ」はそれぞれ、本件特許発明1の「ユーザ」、「ユーザ端末」に相当する。
また、甲1発明の「利用者証明用電子証明書」、「券面事項入力補助AP」と、本件特許発明1の「第1情報源」、「第2情報源」とは、「第1オブジェクト」、「第2オブジェクト」である点において共通する。
また、パスワードは認証情報といい得るものであるから、甲1発明の「利用者証明用電子証明書の4桁のパスワード」、「券面事項入力補助APを活用するためにその4桁のパスワード」の各々と、本件特許発明1の「第1情報源に対応する第1認証情報」、「第2情報源に対応する第2認証情報」の各々とは、「第1オブジェクトに対応する第1認証情報」、「第2オブジェクトに対応する第2認証情報」である点において共通する。
甲1発明においては、「MKPF」(マイキープラットフォーム)上で、「利用者証明用電子証明書の4桁のパスワード」及び「券面事項入力補助APを活用するためにその4桁のパスワード」が入力されるところ、「MKPF」は、これら2つのパスワードを受け付ける受付部を備えているといえる。
以上より、「MKPF」が備える、2つのパスワードを受け付ける受付部と、本件特許発明1の「ユーザからの第1情報源に対応する第1認証情報及び第2情報源に対応する第2認証情報のユーザ端末への入力により、前記第1認証情報及び前記第2認証情報を受付ける認証情報受付部」とは、「ユーザからの第1オブジェクトに対応する第1認証情報及び第2オブジェクトに対応する第2認証情報のユーザ端末への入力により、前記第1認証情報及び前記第2認証情報を受付ける認証情報受付部」である点において共通する。
イ 構成要件Bについて
甲1発明は、「マイナンバーカード」は、「図書館カード」として利用することを目的とするものであるところ、図書を借りる利用者の本人確認に利用可能なものであるといえる。加えて、「マイナンバーカード」は、「ICカードリーダ」により読み取られるものであるところ、「ICカードリーダ」と通信可能な手段を含む有体物であって、本人確認可能媒体といい得るものである。
そうすると、甲1発明において、「ICカードリーダにマイナンバーカードを置くこと」は、本件特許発明1における「前記ユーザの本人確認に利用可能な有形物である本人確認可能媒体を前記ユーザが前記ユーザ端末に近づけ」ることに相当する。
また、甲1発明において、「マイナンバーカードの読み取り」は、本件特許発明1の「前記ユーザ端末により前記本人確認可能媒体を読取る」ことに相当する。
そして、甲1発明において、「MKPF」は、「マイナンバーカードの読み取り」のための手段である読取部を備えているといえる。
よって、甲1発明において、「MKPF」が備える「マイナンバーカードの読み取り」のための読取部は、本件特許発明1の「前記ユーザの本人確認に利用可能な有形物である本人確認可能媒体を前記ユーザが前記ユーザ端末に近づけて、前記ユーザ端末により前記本人確認可能媒体を読取る読取部」に相当する。
ウ 構成要件C及びDについて
甲1発明は、「マイナンバーカードの読み取り」を開始して、
「氏名・住所・生年月日・性別を入力(生年月日はMKPF上に登録)(券面事項入力補助APを活用するためにその4桁のパスワードの入力)」と
「電子利用者証明のために利用者証明用電子証明書の4桁のパスワードの入力」とを実施するものであるが、「マイナンバーカード」に2つの「4桁のパスワード」を送信する処理、「マイナンバーカード」において2つの「4桁のパスワード」が認証された場合に、「マイナンバーカード」に記憶されている情報を取得する処理、さらに、これら送信する処理及び取得する処理が「一回の読取処理」が行われている間になされることは具体的に特定されていない。
よって、甲1発明は、構成要件C及びDを有しない。
エ 構成要件Eについて
上記アを参酌すれば、甲1発明と、本件特許発明1の「前記第1情報源は、公的個人認証サービスにおいて利用可能な利用者証明用電子証明書又は署名用電子証明書であり」とは、「前記第1オブジェクトは利用者証明用電子証明書であり」である点において共通する。
オ 構成要件Fについて
上記アを参酌すれば、甲1発明と、本件特許発明1の「前記第2情報源は、公的機関により提供される券面事項入力補助アプリケーション又は券面事項確認アプリケーションであって」とは、「前記第2オブジェクトは、公的機関により提供される券面事項入力補助アプリケーションであって」である点において共通する。
カ 構成要件G及びHについて
上記ウを参酌すれば、甲1発明は、構成要件G及びHを有しない。
キ 構成要件I
甲1発明の「MKPF」は、後述する相違点を除いて、本件特許発明1の「情報処理システム」に相当する。
(2)一致点、相違点、
本件特許発明1と甲1発明とは、以下の点において一致ないし相違する。
(一致点)
ユーザからの第1オブジェクトに対応する第1認証情報及び第2オブジェクトに対応する第2認証情報のユーザ端末への入力により、前記第1認証情報及び前記第2認証情報を受付ける認証情報受付部と、
前記ユーザの本人確認に利用可能な有形物である本人確認可能媒体を前記ユーザが前記ユーザ端末に近づけて、前記ユーザ端末により前記本人確認可能媒体を読取る読取部と、
を備え、
前記第1オブジェクトは、利用者証明用電子証明書であり、
前記第2オブジェクトは、券面事項入力補助アプリケーションである、
ことを特徴とする情報処理システム。
(相違点)
・相違点1
共通点である「第1オブジェクト」が、本件特許発明1においては、「第1情報源」であるのに対し、甲1発明において、「利用者証明用電子証明書」が、情報源であることを具体的に特定していない点。
・相違点2
共通点である「第2オブジェクト」が、本件特許発明1においては、「第2情報源」であるのに対し、甲1発明において、「券面事項入力補助AP」が、情報源であることを具体的に特定していない点。
・相違点3
本件特許発明1は、「前記本人確認可能媒体を前記ユーザが前記ユーザ端末に一回近づけることで行われる一回の読取処理が行われている間に、前記本人確認可能媒体に前記第1認証情報及び前記第2認証情報を送信する認証情報送信部」を備えるのに対し、甲1発明において、当該認証情報送信部について具体的に特定していない点。
・相違点4
本件特許発明1は、「前記一回の読取処理が行われている間において、前記本人確認可能媒体において前記第1認証情報及び前記第2認証情報が認証された場合に、該本人確認可能媒体に記憶されている、前記第1認証情報に対応する第1情報源の第1情報及び前記第2認証情報に対応する第2情報源の第2情報を取得する情報取得部」を備えるのに対し、甲1発明は、当該情報取得部について具体的に特定していない点。
・相違点5
本件特許発明1における「利用者証明用電子証明書」は「公的個人認証サービスにおいて利用可能な」ものであるのに対し、甲1発明における「利用者証明用電子証明書」は、この点について具体的に特定していない点。
・相違点6
本件特許発明1における「券面事項入力補助アプリケーション」は「公的機関により提供される」ものであるのに対し、甲1発明における「券面事項入力補助AP」は、この点について具体的に特定していない点。
(3)相違点についての判断
上記各相違点に係る本件特許発明1の構成は、本件特許出願時における技術常識とは認められず、仮に、甲2及び甲3の開示事項が本件特許出願時に公知であり、甲1発明と同じシステムに係るものであるとしても、少なくとも、構成要件C、D、G及びHに係る事項は、甲2及び甲3には開示されているとは認められないため、甲1ないし甲3に開示された事項から、本件特許発明1が、本件特許出願時に日本国内において公然知られた発明であったとはいえない。
なお、構成要件C及びDについてさらに検討するに、明細書の【0040】の記載「上記のように認証情報が認証情報受付部44Aにより受付けられた後、ユーザ端末40の表示画面には図6(d)のような本人確認可能媒体を読取部44Bで読み取るための読取画面が表示され、ユーザに本人確認可能媒体の読み取り方の説明などが示される。そして、ユーザは当該説明の内容に従って、マイナンバーカード等の本人確認可能媒体をユーザ端末40に読み取らせる。具体的には、ユーザは、自身の本人確認に利用可能である本人確認可能媒体である本人確認カード(マイナンバーカード)をユーザ端末40の背面等の所定部分に一度かざすことによって、ユーザ端末40の読取部44Bが当該本人確認カードを読取る(ステップS23)。ここで、本人確認可能媒体である本人確認カードをユーザ端末40により「読取る」は、例えば、ユーザ端末40(スマートフォン、PC等)と本人確認可能媒体との間でNFC、インターネット等を用いた通信を行うことであってもよい。」及び【0042】の記載「ここで、読取部44Bによって一回の読取処理で読取られた本人確認カード(本人確認可能媒体)とは、例えば、ユーザ端末40に一回のみかざした、或いは近づけた、本人確認可能媒体(マイナンバーカード等)であってもよい。また、ユーザ端末40と一回のみ通信を行った(ユーザ端末40との通信の開始から終了までのプロセスが一回のみである)本人確認可能媒体であってもよい。」によれば、構成要件C及びDにおける「前記本人確認可能媒体を前記ユーザが前記ユーザ端末に一回近づけることで行われる一回の読取処理」とは、本人確認可能媒体をユーザ端末に一度近づけたときに行われる本人確認可能媒体とユーザ端末との間の一回の通信処理、と解される。他方、甲1発明においては、「ICカードリーダにマイナンバーカードを置くことにより、マイナンバーカードの読み取りを開始」した後で、「パスワード」の入力がなされる構成であるところ、ICカードリーダにマイナンバーカードを置いて、読み取りを開始した時点で少なくとも一回の通信処理が実行されるものと認められるが、この時点では、まだ「パスワード」は入力されていないため、当該「パスワード」を送信等することは不可能である。よって、甲1発明において、仮に、MKPFが「パスワード」を「マイナンバーカード」に送信する送信処理を実行し、「マイナンバーカード」において「パスワード」が認証された場合に、「マイナンバーカード」から所定の情報を取得する取得処理を実行するように構成されているとしても、当該送信処理と取得処理とが「前記本人確認可能媒体を前記ユーザが前記ユーザ端末に一回近づけることで行われる一回の読取処理が行われている間」になされることにはならない。(なお、本件特許明細書の【0040】及び図6の記載によれば、「認証情報」を受け付けた後で「本人確認可能媒体をユーザ端末40に読み取らせる」よう構成されていることにより、「一回の読み取り処理が行われている間」に送信処理及び取得処理を可能としているものと認められる。すなわち、本件特許発明1と、甲1発明とは、媒体(カード)の読み取り開始と、認証情報(パスワード)の入力処理との先後関係が逆である点において本質的に異なっている。付言するに、甲2、甲3にも、パスワードを入力してからマイナンバーカードの読み取りを開始することは記載されていない。)
以上より、上記各相違点(特に、構成要件C及びD)は、形式的なもの又は軽微なものとはいえず、実質的なものであるから、本件特許発明1は、甲1~甲3の記載から、本件特許出願時に日本国内において公然知られた発明とはいえない。
(4)申立人の主張について
既に述べたように、申立人は、甲2及び甲3の公知性について何ら具体的な説明をしておらず、さらに、甲3に記載されたシステムと、甲1に開示されたシステムとの同一性についても何ら説明がない。
また、申立人は、構成要件C及びDに関して、次のように主張する。
「 甲第1号証5頁には、カード認証画面としてマイナンバーカードの読取を開始するとの記載があり、その次にパスワード入力画面が現れる仕組みが記載されている。また甲第3号証の上記記載からは、マイナンバーカードをパソコンに接続したICカードリーダライタに近づけることでマイナンバーカードを読み取ることが予定されていることが分かる。これらの記載から、マイナンバーカードをICカードリーダライタに一回近づけることで行われる一回の読取処理が行われている間に、パスワード入力画面にて入力したパスワードを、ICカードリーダライタを通じてマイナンバーカードに送信することが分かる。よって、ここでいうICカードリーダライタは構成要件Cの認証情報送信部と一致する。
甲第1号証5頁には、マイナンバーカードにおいてパスワードが認証された場合に、同意画面としてPPID(同号証4頁で「利用者証明用電子証明書に紐づく、各サービス毎に固有のユーザ識別子」と定義されている。)の連携及び(基本)4情報連携に対する同意画面が登場することが記載されており、基本4情報といった個人情報の取得が可能となることを示唆している。また甲第2号証には、券面事項入力補助アプリケーションではマイナンバー及び/又は基本4情報を確認、利用することが記載されている。さらに甲第3号証の「マイナンバーカードに格納される公的個人情報認証サービスについて」に続く説明図では、利用者証明用電子証明書で利用されるデータの概要として「公開鍵+電子証明書」と記載されている。よって、一回の読取処理が行われている間において、マイナンバーカードにおいて各パスワードが認証された場合に、該マイナンバーカードに記憶されている、各パスワードに対応する利用者証明用電子証明書の公開鍵及び電子証明書並びに券面事項入力補助アプリケーションにおける個人情報を、マイキープラットフォームにて取得することになり、これは構成要件Dの情報取得部と一致する。」
上記主張において、申立人は、甲1においては、マイナンバーカードの読取を開始した後でパスワードを入力することを認識しつつも、マイナンバーカードをICカードリーダライタに一回近づけることで行われる一回の読取処理が行われている間に送信処理及び取得処理が行われるものであると主張しているが、その根拠を明らかにしていない。
よって、構成要件C及びDに係る上記主張を含め、申立人の主張はいずれも採用することができない。
3 本件特許発明2~6について
本件特許発明2~6は、本件特許発明1の構成をすべて含むものであるところ、本件特許発明1と同様に、甲1~甲3の記載から、本件特許出願時に日本国内において公然知られた発明とはいえない。
4 本件特許発明7~12について
本件特許発明7~12の各々は、本件特許発明1~6の各々を「情報処理プログラム」の発明として特定したものであるところ、本件特許発明1~6と同様に、甲1~甲3の記載から、本件特許出願時に日本国内において公然知られた発明とはいえない。
第6 むすび
したがって、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、請求項1~12に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1~12に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2024-701076