意匠補正却下不服審判
2024-500002
Graphical user interface
- 審判番号
- 2024-500002
- 法域
- 意匠
- 審判種別
- 補正却下不服審判(補正却下不服の審決)
- 出願番号
- 意願2022-501970外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 登録番号
- 1807063
- 請求日
- 2024年04月05日
- 審決日
- 2025年06月19日
- 公報発行日
- 2025年09月26日
- 結論
- 請求成立(取消)
- 当事者
- 【請求人】フェラーリ ソシエタ ペル アチオニ
- 【請求人代理人】伊東 忠重
- 【請求人代理人】伊東 忠彦
- 【請求人代理人】大貫 進介
- 分類
- D17 .1 -W (N3-1)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 意匠法17条の2第1項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 意匠法第17条の2第1項、意匠法第3条第1項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
意願2022-501970「Graphical user interface」において、令和5年10月6日付けでした手続補正に対してされた補正却下決定不服審判事件について、次のとおり審決する。
結論
結 論
原決定を取り消す。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、パリ条約による優先権(最初の出願:国際事務局、2022年
2月22日)を主張し、画像の部分について意匠登録を受けようとする、令和4年(2022年)8月19日の国際意匠登録出願(別紙第1参照)であって、その後の主な手続の経緯とその概要は以下のとおりである。
(1)原審は、令和5年(2023年)2月2日付けで、拒絶の通報を行った。その拒絶の理由は、本願意匠が、意匠法第3条第1項柱書に規定する工業上利用することができる意匠に該当せず、意匠登録を受けることができないとしたものであって、具体的には、以下のとおりである。
「画像の具体的な用途及び機能が不明確です。画像は「機器の操作の用に供される画像又は機器がその機能を発揮した結果として表示される画像」に該当する場合に限り、意匠登録を受けることができますので、画像の具体的な用途及び機能を明確に記載することが必要です。
なお、手続補正書を提出される場合、その内容が出願当初の願書の記載又は願書に添付した図面等の要旨を変更するものであるときは、その補正は却下されますのでご注意ください。」
(2)この拒絶通報に対して、出願人(審判請求人)代理人は、同年4月28日付けで、意匠の説明を変更する手続補正書及び意見書を提出した。手続補正書における補正の内容は以下のとおりである。
下線部は、当該手続補正書にて、出願当初の説明に追加された部分である。(当審注:下線は当審にて記載。以下同じ。)
「Design 3 relates to a graphical user interface showing a front view of a car travelling on a road and as displayed on a screen;this graphical user interface displays information about the vehicle’s travelling and is designed to help the user appreciate(realize)the position of the vehicle on the road while travelling; the broken lines are for the purpose of illustrating a generic background and form no part of the claimed design. 3)Front」(当審参考訳:「意匠3は、道路を走行する車の前方からの視点を画面に表示するグラフィカル・ユーザー・インターフェースに関するものであり、;このグラフィカル・ユーザー・インターフェースは車両の走行に関する情報を表示し、使用者は、走行中の車両が道路上でどの位置にあるかを認識する;破線は一般的な背景を説明するためのものであり、主張されている意匠の一部を構成するものではない。 3)正面図」)
(3)その後、原審は、同年6月30日付けで、令和5年4月28日付けの手続補正書を、以下の理由により、意匠法第17条の2第1項の規定に基づき、補正の却下の決定をした。
「上記手続補正書により、願書の意匠の説明の欄において、「this graphical user interface displays information about the vehicle’s travelling and is designed to help the user appreciate(realize)the position of the vehicle on the road while travelling」の記載を追加されましたが、出願当初の願書の記載及び添付図面は、単に、走行中の自動車の画像が開示されているにすぎず、他に、自動車の走行に関する情報を表示するものであり走行中にユーザーが道路上の車両の位置を認識しやすくするためのもの、であることを示す要素が何ら開示されていないので、この意匠の属する分野における通常の知識を有する者であったとしても、出願当初の願書の記載及び添付図面の内容から、一義的に、補正後の内容を当然に導き出すことができるとはいえず、上記手続補正書による補正は、出願当初の意匠の要旨を変更するものといわざるを得ません。」
(4)出願人代理人は、同年10月6日付けで、再び意匠の説明を変更する手続補正書(別紙第2参照)を提出し、併せて上申書を提出した。手続補正書における補正の内容は以下のとおりである。
「Design 3 relates to a graphical user interface showing a front view of a car travelling on a road and as displayed on a screen; this graphical user interface is for a driver to realize the position of the vehicle on the road; the broken lines are for the purpose of illustrating a generic background and form no part of the claimed design . 3)Front」(当審参考訳:「意匠3は、道路を走行する車の前方からの視点を画面に表示するグラフィカル・ユーザー・インターフェースに関するものであり、;このグラフィカル・ユーザー・インターフェースは、運転者が道路上の車両の位置を認識するためのものである。;破線は一般的な背景を説明するためのものであり、主張されている意匠の一部を構成するものではない。 3)正面図」)
(5)原審は、同年12月25日付けで、令和5年10月6日付けの手続補正書による補正に対して、以下の理由により、意匠法第17条の2第1項の規定に基づき、補正の却下の決定をした。
「上記手続補正書により、願書の意匠の説明の欄において、「this graphical user interface is for a driver to realize the position of the vehicle on the road」の記載を追加され、また、上申書において、「本願の図面に表された画像には、道路及び走行中の自動車が俯瞰的に表れていますので、・・・本願の画像意匠が、「道路と車両との位置関係」を、車内にいるユーザー(運転者)に把握させるためのものであることを当然に導き出すことができる」旨を上申されましたが、この意匠の属する分野における通常の知識に基づいて判断したとしても、出願当初の願書及び添付図面には、走行中の自動車やその周囲の風景等の画像が開示されているにすぎず、運転者が道路上の車両の位置を認識するためのものであることを示す要素が開示されていないので、道路及び走行中の自動車の画像が俯瞰的に表れていることを根拠に、補正後の内容を当然に導き出すことができるとは到底いえず、やはり、上記手続補正書による補正は、出願当初の意匠の要旨を変更するものといわざるを得ません。」
(6)請求人は、令和6年(2024年)4月5日付けで、 補正却下決定不服審判請求書をしたものである。
第2 請求人の主張
請求人は、令和6年(2024年)4月5日付けで審判請求書を提出し、補正の却下の決定を取り消すべき理由として、おおむね以下のとおり主張した。
「5.補正の根拠及び要旨の変更でない旨の説明
(1)本件補正が意匠審査基準第IV部第2章「4.2.1 その意匠の属する分野における通常の知識に基づいて当然に導き出すことができる同一の範囲のものに訂正する場合」に該当することについて
近年、自動運転技術や運転支援技術の急速な発展に伴い、従来はドライバーが目視で行っていた、例えば車間距離や車線内の走行位置、周囲の障害物といった走行状況の把握を人工衛星や車載センサーが行い、検出結果を車載ディスプレイに表示することが一般的に行われつつある現状があります。
そして、道路及び走行中の自動車を俯瞰的に表示した画像が、走行中の車両と道路との位置関係を表すものとして、例えば、以下の登録例もみられます。
(登録例1)意匠登録1715034号(当審注:図省略)
(登録例2)意匠登録1729404号(当審注:図省略)
そうすると、本願の図面に表された画像には、道路及び走行中の自動車が俯瞰的に表れていますので、上記のとおり近年の自動運転技術や運転支援技術の急速な発展も考慮すれば、本願意匠は、「意匠の説明」の欄に画像上に具体的な用途及び機能を表す、メータやインジケータ等の記載がなくても、本願の画像意匠が属する分野における通常の知識を有する者であれば、願書及び添付図面の記載から、本願の画像意匠が、「道路と車両との位置関係」を、車内にいるユーザー(運転者)に把握させるためのものであることを当然に導き出すことができるものと思料いたします。
したがいまして、令和5年10月6日付けの第2回目の手続補正書にて、願書の「意匠の説明」の欄に追加した記載内容は、意匠審査基準第IV部第2章「補正の却下」の「4.2.1 その意匠の属する分野における通常の知識に基づいて当然に導き出すことができる同一の範囲のものに訂正する場合」であって、出願当初の意匠の要旨を変更するものではないと思料いたします。
(2)画像意匠の用途及び機能の説明について
本願は、国際出願日を2022年2月22日とする国際登録出願(国際登録番号:DM/219474)に基づくパリ条約による優先権の主張を伴う、日本国を指定した国際登録出願であるところ、国際登録出願においては、意匠の操作又はその想定される利用方法に係る技術的な特徴に関する説明の記載は認められておりません(共通規則11(2))。
また、本願の国際登録出願時(2022年8月19日)において、ハーグ協定の加盟国は日本国を含め73か国ですが、画像意匠の用途機能の説明を必須としているのか、また、必須としているのであればどの程度の明確性が要求されるのかについては、締約国ごとに異なるものであるため、指定する全ての締約国の基準を満たす説明で国際登録出願を行うことは極めて困難です。
本件国際意匠登録出願においては、出願時に画像意匠の用途及び機能の説明がなされないことについて、上述のような事情があるにもかかわらず、日本国での審査においては一定程度の明確性を持った用途及び機能の説明を要求され、かつ、その用途及び機能の説明を追加する補正を行ったところ、要旨変更とした原審判断は、一つの出願で複数の国又は地域を指定する国際登録出願人にとってあまりに酷であり、昨今の知的財産制度の国際的な調和の流れ及びジュネーブ改正協定設置の目的からも逸脱する懸念もあるものと思料いたします。
したがって、日本国を指定した国際意匠登録出願の願書又は図面に対する補正が当初の意匠の要旨を変更するか否かの判断においては、国際登録出願特有の願書の記載要件も考慮の上、柔軟にご判断いただきたく、切にお願いいたします。
6.まとめ
以上のとおり、請求人は、令和5年10月6日に提出した第2回目の手続補正書にて、願書の「意匠の説明」の欄の記載を変更した補正は、意匠審査基準第IV部第2章「補正の却下」の「4.2.1 その意匠の属する分野における通常の知識に基づいて当然に導き出すことができる同一の範囲のものに訂正する場合」に該当するものであって、出願当初の願書の記載の要旨を変更するものではないと確信しております。
したがいまして、請求人が、令和5年10月6日に提出した第2回目の手続補正書による補正に対して、意匠法第17条の2第1項の規定により却下すべきものであるとした、令和5年12月25日付けの補正の却下の決定は取り消されるべきものです。」
第3 当審の判断
本願について、令和5年10月6日付けの手続補正書による補正(以下「本件補正」ともいう。)により、願書の記載についてした補正が、出願当初の願書の記載及び願書に添付した図面の要旨を変更するものであるか否かについて、以下検討する。
1 出願当初の願書及び願書に添付した図面
ア 出願当初の願書の記載
本願は、物品の部分について意匠登録を受けようとする意匠登録出願であり、本願の願書の記載によれば、本願意匠の意匠に係る物品を「Graphical user interface」(当審参考訳:「グラフィカル・ユーザー・インターフェース」。以下日本語訳で示す。)」とし、意匠の説明を「Design 3 relates to a graphical user interface showing a front view of a car travelling on a road and as displayed on a screen; the broken lines are for the purpose of illustrating a generic background and form no part of the claimed design. 3)Front (当審参考訳:「意匠3は、道路を走行する車の前方からの視点を画面に表示するグラフィカル・ユーザー・インターフェースに関するものであり、;破線は一般的な背景を説明するためのものであり、主張されている意匠の一部を構成するものではない。3)正面図)」としたものである。
イ 出願当初の願書に添付した図面
本願意匠の形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合(以下、「形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合」を「形状等」ともいう。)は、図面【3】(説明の記載によれば「正面図」)の1図に示されており、具体的には、略横長長方形状の外形枠線が破線で示され、その内側の略中央下寄りには、正面を向く車が実線で示され、その車の左側には、外形枠線の左下角から約45度で車の背後まで延びた後、車の背後に隠れる様に途切れつつ車の右側上部寄りから約15度の角度で右方向へ延び徐々に細くなる長緩曲線1本が実線で示され、車の右側には、外形枠線の右辺略中央部から略逆S字状に上方へ延び徐々に細くなる短曲線1本が実線で示されている。この長短の曲線は車道の縁と推認され、長緩曲線及び短曲線の間には道路の中央線と推認できる曲線が破線で示されている。また、長緩曲線及び短曲線より上方には、複数の樹木や山並みと推認できるものが破線で示されている。
そして、本願の意匠に係る物品が「グラフィカル・ユーザー・インターフェース」であることから、図に表されたのは画像であると認められる。
また、願書の「意匠の説明」に、「図面における破線部分は、意匠登録を受けようとしない部分を表している。」と記載されているから、本願は画像の部分として意匠登録を受けようとするもので、破線で示された部分以外の部分(以下「本願部分」という。)について意匠登録を受けようとするものである。
2 本件補正について
本件補正は、願書の「意匠の説明」に、出願当初の記載に「このグラフィカル・ユーザー・インターフェースは、運転者が道路上の車両の位置を認識するためのものである。」を加えた内容に変更する補正をしたものである。
3 本件補正が出願当初の要旨を変更するものであるか否か
本願の出願当初の願書の記載及び願書に添付の図面から総合的に判断すると、本願の画像は、道路を走行する車の画像であること、車を正面から見た画像であること、道路と車の位置関係を認識できる画像であること、利用者は、以上の、道路及び車の情報を画像で視認できること、が認定できる。
一方、道路及び車を俯瞰的に表示し、道路と車との関係が明確に表れる画像によって、道路と車の位置関係を運転者に情報提供する意匠が、本願出願前より公然知られていることからも明らかなとおり(例えば、以下の参考意匠1から参考意匠3)であって、同様の要素が含まれ、同様の態様での表示内容の画像であれば、同様の用途及び機能を有すると推認できることは、この意匠の属する分野における通常の知識に基づき当然に導き出すことができるところ、本件補正により、追加された意匠に係る物品の説明は、前記2のとおりであるから、この意匠の属する分野における通常の知識に基づいて当然に導き出すことができる同一の範囲を超えるものではなく、また、本件補正の内容は、本願意匠の要旨の認定に大きく影響を及ぼすものでもないから、本件補正は、意匠の要旨を変更しないというべきである。
参考意匠1 意匠登録第1715034号(別紙第3参照)
【発行日】令和4年(2022年)5月17日
【意匠に係る物品】車両情報表示用画像
参考意匠2 意匠登録第1629371号(別紙第4参照)
【発行日】平成31年(2019年)4月15日
【意匠に係る物品】情報提示機能付き電子計算機
参考意匠3 意匠登録第1649144号(別紙第5参照)
【発行日】令和2年(2020年)1月6日
【意匠に係る物品】周辺環境情報表示機能付き電子計算機
第4 むすび
以上のとおり、本件補正の内容は、本願意匠の要旨の認定に大きく影響を与えるものではないことから、本件補正は、意匠の要旨を変更しないというべきものであり、意匠法第17条の2第1項の規定により却下すべきものとすることはできない。
よって、結論のとおり審決する。
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