特許拒絶査定不服審判
2024-020441
データ変調方法、装置、機器および記憶媒体
- 審判番号
- 2024-020441
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2022-577692
- 請求日
- 2024年12月20日
- 審決日
- 2025年10月28日
- 公報発行日
- 2026年04月24日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】中興通訊股▲ふん▼有限公司
- 【請求人代理人】弁理士法人航栄事務所
- 審判長/審判官
- 審判長 土居 仁士
- 審判官 丸山 高政
- 審判官 鈴木 圭一郎
- 分類
- P18 .113-Z (H04L) / P18 .121-Z (H04L)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条、特許法第17条の2第6項、特許法第17条の2第5項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2022-577692「データ変調方法、装置、機器および記憶媒体」拒絶査定不服審判事件〔令和3年12月30日国際公開、WO2021/258974、令和5年7月19日国内公表、特表2023-530724〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、2021年(令和3年)5月27日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2020年6月22日(CN)中華人民共和国)を国際出願日とする出願であって、その手続の経緯の概要は以下のとおりである。
令和 6年 2月13日付け 拒絶理由通知書
5月 8日 意見書・手続補正書
8月26日付け 拒絶査定
12月20日 審判請求書・手続補正書
令和 7年 4月 9日 前置報告書
6月 4日 上申書
以下では、令和6年8月26日付け拒絶査定を「原査定」といい、同年12月20日の手続補正書による補正を「本件補正」という。
第2 補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
本件補正を却下する。
[理由]
1 本件補正の内容
本件補正前の請求項1、4及び8の記載を以下の(1)に示し、本件補正後の請求項1及び6の記載を以下の(2)に示し、本件補正に含まれる補正事項を以下の(3)に示す。
(1)本件補正前の請求項1、4及び8の記載
本件補正前の令和6年5月8日の手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1、4及び8の記載は以下のとおりである。
【請求項1】
N個のコンステレーションポイント変調シンボル{S(n)}を用いてデータ系列を変調し、前記N個のコンステレーションポイント変調シンボルが2グループの変調シンボルに分けられ、前記2グループの変調シンボルの位相差が所定の角度となり、nが0~N-1の整数であり、Nが4以上の偶数の整数であることと、
変調されたデータシンボルを物理リソース上で伝送することと、を含み、
前記N個のコンステレーションポイント変調シンボル{S(n)}を用いてデータ系列を変調することは、
コンステレーションポイント変調シンボル{S(n)}と、位相がθ度変化したコンステレーションポイント変調シンボル{ejθS(n)}とを交替に使用して前記データ系列を変調し、eが自然定数であり、jが虚数単位である、
データ変調方法。
【請求項4】
θがπ/2またはマイナスπ/2に等しい、
請求項1に記載の方法。
【請求項8】
コンステレーションポイント変調シンボル{S(n)}と、位相がθ度変化したコンステレーションポイント変調シンボル{ejθS(n)}とを交替に使用して前記データ系列を変調することは、
データシンボル位置番号が担持されているコンステレーションポイント変調シンボル{ejθkS(n)}を用いて前記データ系列を変調し、kが前記データシンボル位置番号を表すとともに、kが0~K-1の整数であり、Kが前記変調されたデータシンボルの数を表すことを含む、
請求項4に記載の方法。
(2)本件補正後の請求項1及び6の記載
本件補正後の特許請求の範囲の請求項1及び6の記載は、以下のとおりである。なお、下線は補正箇所を示すために請求人が付したものである。
【請求項1】
N個のコンステレーションポイント変調シンボル{S(n)}を用いてデータ系列を変調し、前記N個のコンステレーションポイント変調シンボルが2グループの変調シンボルに分けられ、前記2グループの変調シンボルのうち、一方のグループの変調シンボルの位相が同じであり、他方のグループの変調シンボルの位相が同じであり、前記2グループの変調シンボルの位相差が180度であり、nが0~N-1の整数であり、Nが4以上の偶数の整数であることと、
変調されたデータシンボルを物理リソース上で伝送することと、を含み、
前記N個のコンステレーションポイント変調シンボル{S(n)}を用いてデータ系列を変調することは、
コンステレーションポイント変調シンボル{S(n)}と、位相がθ度変化したコンステレーションポイント変調シンボル{ejθS(n)}とを交替に使用して前記データ系列を変調し、θがπ/2またはマイナスπ/2に等しく、eが自然定数であり、jが虚数単位である、
データ変調方法。
【請求項6】
コンステレーションポイント変調シンボル{S(n)}と、位相がθ度変化したコンステレーションポイント変調シンボル{ejθS(n)}とを交替に使用して前記データ系列を変調することは、
データシンボル位置番号が担持されているコンステレーションポイント変調シンボル{ejθkS(n)}を用いて前記データ系列を変調し、kが前記データシンボル位置番号を表すとともに、kが0~K-1の整数であり、Kが前記変調されたデータシンボルの数を表すことを含む、
請求項1に記載の方法。
(3)本件補正の補正事項
審判請求書の「審判請求人は、請求項1について、補正前の請求項2,4の内容を規定する補正を行いました。」との記載及び「この補正に伴い、審判請求人は、補正前の請求項2,4を削除し、請求項の番号を振り直す補正を行いました。」との記載(いずれの記載も審判請求書「3.本願発明が特許されるべき理由」「(1)本願発明の構成」)並びに前記(1)及び(2)によれば、本件補正前の請求項8に係る発明は、本件補正後の請求項6に係る発明と対応すると解される。
そうすると、本件補正前の請求項1を引用する請求項4を引用する請求項8に係る発明についての本件補正は、以下の補正事項1を含むと解される。
〈補正事項1〉
本件補正前の請求項1の
「前記2グループの変調シンボルの位相差が所定の角度となり」
との記載を、
「前記2グループの変調シンボルのうち、一方のグループの変調シンボルの位相が同じであり、他方のグループの変調シンボルの位相が同じであり、前記2グループの変調シンボルの位相差が180度であり」
と補正する。
2 本件補正の目的
補正事項1に係る補正は、本件補正前の請求項8に係る発明を特定する事項である「2グループの変調シンボル」について、「一方のグループの変調シンボルの位相が同じであ」ると限定し、さらに、「他方のグループの変調シンボルの位相が同じであ」ると限定し、加えて、「前記2グループの変調シンボルの位相差が所定の角度とな」るを「前記2グループの変調シンボルの位相差が180度であ」ると限定するものであって、本件補正の前後において産業上の利用分野及び解決しようとする課題を変えるものではない。
よって、補正事項1に係る本件補正は、特許法17条の2第5項2号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」(いわゆる限定的減縮)を目的とすると認められる。
3 本件補正の適否
本件補正後の請求項6に係る発明についての本件補正には、前記2のとおり、限定的減縮を目的とする補正が含まれるので、本件補正後の請求項6に係る発明(以下「本件補正発明」という。)が特許法17条の2第6項において準用する同法126条7項に規定する要件(いわゆる独立特許要件)に適合するかについて、以下、検討する。
(1)本件補正発明の認定
本件補正発明は、前記1(2)に示した請求項1を引用する請求項6に記載のとおりのものと認める。
なお、後の参照の便宜のため、請求項1及び6にA1~Iの記号を付して以下のように分説し、「発明特定事項A1」のようにして参照する。
【請求項1】
A1 N個のコンステレーションポイント変調シンボル{S(n)}を用いてデータ系列を変調し、
A2 前記N個のコンステレーションポイント変調シンボルが2グループの変調シンボルに分けられ、
A3 前記2グループの変調シンボルのうち、一方のグループの変調シンボルの位相が同じであり、他方のグループの変調シンボルの位相が同じであり、前記2グループの変調シンボルの位相差が180度であり、
A4 nが0~N-1の整数であり、Nが4以上の偶数の整数であることと、
B 変調されたデータシンボルを物理リソース上で伝送することと、
C を含み、
D 前記N個のコンステレーションポイント変調シンボル{S(n)}を用いてデータ系列を変調することは、
E1 コンステレーションポイント変調シンボル{S(n)}と、位相がθ度変化したコンステレーションポイント変調シンボル{ejθS(n)}とを交替に使用して前記データ系列を変調し、
E2 θがπ/2またはマイナスπ/2に等しく、
E3 eが自然定数であり、jが虚数単位である、
F データ変調方法。
【請求項6】
G コンステレーションポイント変調シンボル{S(n)}と、位相がθ度変化したコンステレーションポイント変調シンボル{ejθS(n)}とを交替に使用して前記データ系列を変調することは、
H データシンボル位置番号が担持されているコンステレーションポイント変調シンボル{ejθkS(n)}を用いて前記データ系列を変調し、kが前記データシンボル位置番号を表すとともに、kが0~K-1の整数であり、Kが前記変調されたデータシンボルの数を表すことを含む、
I 請求項1に記載の方法。
(2)引用文献の記載
原査定で引用されたPeruga Nasarre,Ismael, PHYSICAL WAVEFORM RESEARCH FOR BEYOND 52.6 GHZ IN 5G NR NETWORKS[online], 2020年01月, pp. i, 25-36, [retrieved on 2024-02-13], Retrieved from the Internet: <URL:https://trepo.tuni.fi/handle/10024/119209/Ismael_Peruga.pdf?sequence=2&isAllowed=y>には、以下の記載がある。なお、下線は強調のために当審で付した(以下同様)。
ア 34頁1~8行
「5.1.3 4PAM
4PAM is a digital pulse amplitude modulation where 4 different amplitudes are used to transmit the data. Each symbol carries 2 bits. The phase of the symbols remains constant between different symbols since 4PAM has a real constellation. The bits to symbol mapping is as follows
[図:0001433813000001.jpg]
where m is the decimal representation of the 2 bits c2k and c2k+1. The constellation is shown in the Figure 5.5.」
(当審訳:
5.1.3 4PAM
4PAMは、デジタルパルス振幅変調方式であり、データを伝送するために4つの異なる振幅を用いる。各シンボルは2ビットを伝送する。4PAMは実部コンステレーションを持つため、異なるシンボル間においてシンボルの位相は一定に保たれる。ビットからシンボルへのマッピングは以下のとおりである
[図:0001433813000002.jpg]
ここでmはc2k及びc2k+1の2ビットの10進表現である。コンステレーションは図5.5に示すとおりである。)
イ 34頁Figure 5.5
「
[図:0001433813000003.jpg]
Figure 5.5. 4PAM constellation」
(当審訳:
[図:0001433813000004.jpg]
図5.5 4PAMコンステレーション)
ウ 34頁9行~35頁5行
「5.2 Proposed modulations
In this section, the modulations that are not used in current communication systems or have not been found on the related literature, and have been studied in this work are presented.
5.2.1 π/2-4PAM and [1-D]π/2-4PAM
π/2-4PAM
This modulation is a modification of the previously explained 4PAM. The difference is now that every symbol, the constellation is rotated 90°(π/2 rad) in order to make the phase difference between 2 consecutive symbols 90°and not 180°as it is for normal 4PAM.
The mapping from bits to symbols is expressed as
[図:0001433813000005.jpg]
As it was for the π/2-BPSK, every other symbol is transmitted in the real domain and every other in imaginary domain.」
(当審訳:
5.2 提案されている変調方式
本節では、現行通信システムで使用されていない、あるいは関連文献で確認されていない、そして本研究で検討した変調方式を提示する。
5.2.1 π/2-4PAM及び[1-D]π/2-4PAM
π/2-4PAM
この変調方式は、前述の4PAMを改良したものである。違いは、各シンボル毎にコンステレーションを90°(π/2ラジアン)回転させ、連続する2つのシンボル間の位相差を、通常の4PAMの180°ではなく90°とする点にある。
ビットからシンボルへのマッピングは次のように表される
[図:0001433813000006.jpg]
π/2-BPSKと同様に、1つおきのシンボルは実部で、他の全ては虚部で伝送される。)
エ 35頁Figure 5.6
「
[図:0001433813000007.jpg]
Figure 5.6 π/2-4PAM constellation」
(当審訳:
[図:0001433813000008.jpg]
図5.6 π/2-4PAMコンステレーション)
(3)引用発明の認定
引用文献に記載された発明(以下「引用発明」という。)を認定するにあたり、以下のア~ウにおいて引用文献の記載を解釈し、それを踏まえて以下のエにおいて引用発明を認定する。
ア π/2-4PAMと4PAMとの関係の解釈
引用文献には、π/2-4PAMについて「この変調方式は、前述の4PAMを改良したものである。違いは、各シンボル毎にコンステレーションを90°(π/2ラジアン)回転させ、連続する2つのシンボル間の位相差を、通常の4PAMの180°ではなく90°とする点にある。」(前記(2)ウ)との記載があるから、π/2-4PAMを解釈するにあたり、「各シンボル毎にコンステレーションを90°(π/2ラジアン)回転させ、連続する2つのシンボル間の位相差を、通常の4PAMの180°ではなく90°とする点」以外については、4PAM(前記(2)ア及び(2)イ)の説明が妥当すると解釈される。
イ 式(5.7)及び(5.8)の解釈
引用文献には、「ビットからシンボルへのマッピングは以下のとおりである
[図:0001433813000009.jpg]
ここでmはc2k及びc2k+1の2ビットの10進表現である。」(前記(2)ア)と記載されている。
2ビットの数値は00、01、10及び11の4つであり、これらの数値の10進表現は、それぞれ0、1、2及び3である。よって、mは0~3の整数であると解される。
これらのmを式(5.7)に代入すると、以下のとおりとなる。
m=0の場合 sk≒-2.24
m=1の場合 sk≒-1.34
m=2の場合 sk≒-0.45
m=3の場合 sk≒ 0.45
上記skの値は、図5.5(前記(2)イ)に示されるコンステレーションと整合しない。図5.5のコンステレーションによれば、skは、約-1.3、約-0.4、約0.4及び約1.3の値を取る。
ここで、PAMを含む変調方式の技術常識によれば、コンステレーションは正負対称でないと伝送効率が悪くなるため、図5.5に示されるコンステレーションが妥当であると解される。
そうすると、式(5.7)には誤記があり、正しくは次式のとおりであると解され、これによれば、skの値は、m=0~3の場合に、それぞれおよそ-1.34、-0.45、0.45及び1.34となり、図5.5に示されるコンステレーションと整合する。
[図:0001433813000010.jpg]
上記は、式(5.8)のs^(s^はsの上に~を付したものを表す。以下同様。)についても同様であり、式(5.8)は、正しくは以下のとおりと解される。
[図:0001433813000011.jpg]
ウ π/2-4PAMのマッピングの解釈
前記イを踏まえると、π/2-4PAMは、c2k及びc2k+1の2ビットを、シンボルskにマッピングする変調方式であり、シンボルの添字kは、シンボル列のk番目のシンボルを表すと解され、π/2-4PAMのマッピングは、c2k及びc2k+1の2ビットの10進表現をmとした場合、次式に従うと解される。
[図:0001433813000012.jpg]
ここで、
[図:0001433813000013.jpg]
とおくと、π/2-4PAMのマッピングは、
[図:0001433813000014.jpg]
と表される。
エ p(m)の解釈
前記ウに示した次式
[図:0001433813000015.jpg]
によれば、p(m)の値は、m=0~3に対応して、p(0)≒-1.3、p(1)≒-0.4、p(2)≒0.4、p(3)≒1.3となり、これらは図5.6に示されるπ/2-4PAMコンステレーションの実軸上に位置する4つのシンボルポイントを表すと解される。よって、p(m)の集合を{p(m)}で表すと、集合{p(m)}は、コンステレーションにおける4つのシンボルポイントであると解される。
そして、p(0)及びp(1)は虚数成分を持たない負数であるから、複素数平面においてp(0)及びp(1)の位相は180度である。
また、p(2)及びp(3)は虚数成分を持たない正数であるから、複素数平面においてp(2)及びp(3)の位相は0度である。
オ 引用発明の認定
前記ア~エを踏まえると、前記(2)の記載によれば、引用文献には、次の引用発明が記載されていると認められる。なお、後の参照の便宜のため、引用発明をa~hに分説し、「構成a」のようにして参照する。
〈引用発明〉
a c2k及びc2k+1の2ビットを、シンボルskにマッピングする変調方式であるπ/2-4PAMであって、(前記ウ)
b π/2-4PAMのマッピングは
[図:0001433813000016.jpg]
と表され、
シンボルの添字kは、シンボル列のk番目のシンボルを表し、
mはc2k及びc2k+1の2ビットの10進表現であり、(前記ウ)
c 集合{p(m)}は、コンステレーションにおける4つのシンボルポイントであり、(前記エ)
d m=0~3であり、(前記エ)
e 1つおきのシンボルは実部で、他の全ては虚部で伝送され、(前記(2)ウ)
f p(0)及びp(1)の位相は180度であり、(前記エ)
g p(2)及びp(3)の位相は0度である、(前記エ)
h π/2-4PAM。
(4)対比
本件補正発明と引用発明とを対比する。
ア 発明特定事項A1について
発明特定事項A1は、「N個のコンステレーションポイント変調シンボル{S(n)}を用いてデータ系列を変調し、」というものである。
引用発明の「π/2-4PAM」は、「c2k及びc2k+1の2ビットを、シンボルskにマッピングする変調方式」(構成a)であるから、引用発明の該「マッピング」は、変調に他ならず、本件補正発明の「変調」に相当し、引用発明の「c2k及びc2k+1」は、本件補正発明の「データ系列」に相当する。
また、引用発明の「π/2-4PAMのマッピング」には、p(m)が用いられており(構成b)、「集合{p(m)}は、コンステレーションにおける4つのシンボルポイントであ」る(構成c)から、「集合{p(m)}」は、コンステレーションの4個のポイントに位置する変調されたシンボルを表すと解される。よって、「集合{p(m)}」は、本件補正発明の「N個のコンステレーションポイント変調シンボル{S(n)}」に相当し、本件補正発明の「変調」と引用発明の「マッピング」とは、「N個のコンステレーションポイント変調シンボル{S(n)}を用いて」行う点で一致する。
以上によれば、本件補正発明と引用発明とは、「N個のコンステレーションポイント変調シンボル{S(n)}を用いてデータ系列を変調」する点で一致する。
イ 発明特定事項A2について
発明特定事項A2は、「前記N個のコンステレーションポイント変調シンボルが2グループの変調シンボルに分けられ、」というものである。
引用発明の「集合{p(m)}」は、「p(0)及びp(1)の位相は180度であり」(構成f)、「p(2)及びp(3)の位相は0度である」(構成g)から、位相が0°のp(2)及びp(3)と、位相が180°p(0)及びp(1)とに分けられることが明らかである。
よって、本件補正発明と引用発明とは、「前記N個のコンステレーションポイント変調シンボルが2グループの変調シンボルに分けられ」る点で一致する。
ウ 発明特定事項A3について
発明特定事項A3は、「前記2グループの変調シンボルのうち、一方のグループの変調シンボルの位相が同じであり、他方のグループの変調シンボルの位相が同じであり、前記2グループの変調シンボルの位相差が180度であり、」というものである。
引用発明の「集合{p(m)}」のうち位相が0°のグループ(p(2)及びp(3))は、本件補正発明の「一方のグループ」に相当し、位相が180°のグループ(p(0)及びp(1))は、本件補正発明の「他方のグループ」に相当する。
そして、引用発明のp(2)及びp(3)のグループは、いずれも位相が0°であって、位相が等しい。
また、引用発明のp(0)及びp(1)のグループは、いずれも位相が180°であって、位相が等しい。
さらに、引用発明のp(2)及びp(3)のグループと、p(0)及びp(1)のグループとの位相差は、180°である。
よって、本件補正発明と引用発明とは、「前記2グループの変調シンボルのうち、一方のグループの変調シンボルの位相が同じであり、他方のグループの変調シンボルの位相が同じであり、前記2グループの変調シンボルの位相差が180度であ」る点で一致する。
エ 発明特定事項A4について
発明特定事項A4は、「nが0~N-1の整数であり、Nが4以上の偶数の整数であることと、」というものである。
前記アで触れたように、引用発明の「集合{p(m)}」は本件補正発明の「{S(n)}」に相当するから、引用発明のmは、本件補正発明のnに相当する。
引用発明の「m」は、「0~3であ」る(構成d)から、引用発明の「m」と本件補正発明の「n」とは、「0~N-1の整数である」点で一致する。
引用発明の「集合{p(m)}」は、「4つのシンボルポイント」(構成c)であるから、引用発明の「4」は、本件補正発明の「N」に相当し、両者は「Nが4以上の偶数の整数である」点で一致する。
よって、本件補正発明と引用発明とは、「nが0~N-1の整数であり、Nが4以上の偶数の整数であること」において一致する。
オ 発明特定事項Bについて
発明特定事項Bは、「変調されたデータシンボルを物理リソース上で伝送することと、」というものである。
引用発明では「1つおきのシンボルは実部で、他の全ては虚部で伝送され」る(構成e)から、変調されたデータシンボルは伝送されると解される。
そして、伝送を行うためには、当然、そのための物理リソースが必要であるから、本件補正発明と引用発明とは、「変調されたデータシンボルを物理リソース上で伝送すること」において一致する。
カ 発明特定事項Cについて
発明特定事項Cは、「を含み、」というものであり、これは、発明特定事項A1~Bを含むことを特定する。
そして、前記ア~オのとおり、引用発明は、発明特定事項A1~Bに相当する構成を含んでいる。
よって、本件補正発明と引用発明とは、発明特定事項A1~B「を含」む点で一致する。
キ 発明特定事項D、E1、G及びHについて
事案に鑑み、発明特定事項D、E1、G及びHについて対比する。
発明特定事項Dは、「前記N個のコンステレーションポイント変調シンボル{S(n)}を用いてデータ系列を変調することは、」というものであり、
発明特定事項E1は、「コンステレーションポイント変調シンボル{S(n)}と、位相がθ度変化したコンステレーションポイント変調シンボル{ejθS(n)}とを交替に使用して前記データ系列を変調し、」というものであり、
発明特定事項Gは、「コンステレーションポイント変調シンボル{S(n)}と、位相がθ度変化したコンステレーションポイント変調シンボル{ejθS(n)}とを交替に使用して前記データ系列を変調することは、」というものであり、
発明特定事項Hは、「データシンボル位置番号が担持されているコンステレーションポイント変調シンボル{ejθkS(n)}を用いて前記データ系列を変調し、kが前記データシンボル位置番号を表すとともに、kが0~K-1の整数であり、Kが前記変調されたデータシンボルの数を表すことを含む、」というものである。
(ア)まず、発明特定事項Hについて検討する。
引用発明の
[図:0001433813000017.jpg]
(構成bの数式の右辺、以下「ejπk/2p(m)」と表す。)は、本件補正発明の「ejθkS(n)」に相当し、引用発明の「k」は、「シンボル列のk番目のシンボルを表」す(構成b)から、本件補正発明の「データシンボル位置番号」である「k」に相当し、引用発明の「π/2」は本件補正発明の「θ」に相当する。
また、引用発明の「ejπk/2p(m)」は、コンステレーションのシンボルポイントである「p(m)」をπk/2ラジアン左に回転したものであるから、p(m)と同様に、コンステレーションのシンボルポイントである。そうすると、p(m)の集合{p(m)}がコンステレーションにおける4個のポイントに位置する変調されたシンボルを表す(前記ア)のと同様に、ejπk/2p(m)の集合{ejπk/2p(m)}も、コンステレーションにおける4個のポイントに位置する変調されたシンボルを表す。
以上によれば、引用発明の集合{ejπk/2p(m)}は、本件補正発明の「データシンボル位置番号が担持されているコンステレーションポイント変調シンボル{ejθkS(n)}」に相当する。
引用発明の「π/2-4PAM」は、「c2k及びc2k+1の2ビットを、シンボルskにマッピングする変調方式であ」り(構成a)、シンボルskは、「sk=ejπk/2p(m)と表され」る(構成b)から、引用発明は、集合{ejπk/2p(m)}を用いてデータ系列「c2k及びc2k+1」を変調すると解される。
引用発明において、いくつのシンボルが変調で生じるか、すなわち、kの最大値がいくつであるかは明記がないが、現実的に無限ではないことは明らかであり、生じたシンボルの総数をKで表すことは任意である。このとき、引用発明の「k」は、0~K-1の整数となることは明らかである。
以上によれば、本件補正発明と引用発明とは、「データシンボル位置番号が担持されているコンステレーションポイント変調シンボル{ejθkS(n)}を用いて前記データ系列を変調し、kが前記データシンボル位置番号を表すとともに、kが0~K-1の整数であり、Kが前記変調されたデータシンボルの数を表すこと」(以下「事項H」という。)において一致する。
(イ)次いで、発明特定事項G及びHについて検討する。
発明特定事項Gのうち、「コンステレーションポイント変調シンボル{S(n)}と、位相がθ度変化したコンステレーションポイント変調シンボル{ejθS(n)}とを交替に使用して前記データ系列を変調」の部分を、以下「事項G」という。
発明特定事項G及びHは、《事項Gすることは、事項Hを含む》ということを特定している。すなわち、本件補正発明では、事項Gすることは、事項Hを包含する概念として特定されている。
そうすると、引用発明の事項Hに対応する構成は、事項Gすることに含まれると解される。
よって、本件補正発明と引用発明とは、発明特定事項G及びHにおいて一致する。
(ウ)次いで、発明特定事項D及びE1について検討する。
発明特定事項D及びE1は、《前記N個のコンステレーションポイント変調シンボル{S(n)}を用いてデータ系列を変調することは、事項Gする》ことを特定している。
前記(イ)によれば、引用発明の事項Hに対応する構成は、事項Gすることに含まれるので、本件補正発明と引用発明とは発明特定事項E1(事項Gすること)において一致する。
そして、引用発明の事項Hに対応する構成は、構成bの数式に従って「c2k及びc2k+1の2ビットを、シンボルskにマッピングする変調方式」(構成a)であるから、前記アと同様に、引用発明の「ビットc2k及びc2k+1」が本件補正発明の「データ系列」に相当し、構成bの数式に現れるp(m)の集合{p(m)}が本件補正発明の「N個のコンステレーションポイント変調シンボル{S(n)}」に相当する。
そうすると、引用発明の事項Hに対応する構成は、発明特定事項Dの「前記N個のコンステレーションポイント変調シンボル{S(n)}を用いてデータ系列を変調すること」に相当するから、本件補正発明と引用発明とは、発明特定事項D及びE1において一致する。
ク 発明特定事項E2について
発明特定事項E2は、「θがπ/2またはマイナスπ/2に等しく、」というものである。
前記キ(ア)で触れたように、引用発明の「π/2」は本件補正発明の「θ」に相当する。
よって、本件補正発明と引用発明とは、「θがπ/2」「に等し」い点で一致し、ひいては「θがπ/2またはマイナスπ/2に等し」い点で一致する。
ケ 発明特定事項E3について
発明特定事項E3は、「eが自然定数であり、jが虚数単位である、」というものである。
引用発明の構成bの数式における「e」及び「j」が、それぞれ自然定数(ネイピア数)及び虚数単位を表すことは、明らかである。
よって、本件補正発明と引用発明とは、「eが自然定数であり、jが虚数単位である」点で一致する。
コ 発明特定事項Fについて
発明特定事項Fは、「データ変調方法。」というものである。
引用発明は「変調方式であるπ/2-4PAM」であって(構成a)、当該方式は「c2k及びc2k+1の2ビットを、シンボルskにマッピングする」こと(構成a)と、「シンボル」を「伝送」すること(構成e)との2つの手順を含むから、ビットからなるデータをシンボルに変調する方法であると解される。
よって、本件補正発明と引用発明とは「データ変調方法」である点で一致する。
サ 発明特定事項Iについて
発明特定事項Iは、「請求項1に記載の方法。」というものであり、これは発明特定事項A~Fを全て含むことを特定する。
そして、前記ア~コのとおり、本件補正発明と引用発明とは発明特定事項A~Fについて一致する。
よって、本件補正発明と引用発明とは、「請求項1に記載の方法」である点で一致する。
シ 一致点及び相違点
前記ア~オによれば、本件補正発明と引用発明とは、以下の一致点において一致し、相違点は存在しない。
〈一致点〉
「N個のコンステレーションポイント変調シンボル{S(n)}を用いてデータ系列を変調し、前記N個のコンステレーションポイント変調シンボルが2グループの変調シンボルに分けられ、前記2グループの変調シンボルのうち、一方のグループの変調シンボルの位相が同じであり、他方のグループの変調シンボルの位相が同じであり、前記2グループの変調シンボルの位相差が180度であり、nが0~N-1の整数であり、Nが4以上の偶数の整数であることと、
変調されたデータシンボルを物理リソース上で伝送することと、を含み、
前記N個のコンステレーションポイント変調シンボル{S(n)}を用いてデータ系列を変調することは、
コンステレーションポイント変調シンボル{S(n)}と、位相がθ度変化したコンステレーションポイント変調シンボル{ejθS(n)}とを交替に使用して前記データ系列を変調し、θがπ/2またはマイナスπ/2に等しく、eが自然定数であり、jが虚数単位である、
データ変調方法。」である点(請求項1)、及び、
「コンステレーションポイント変調シンボル{S(n)}と、位相がθ度変化したコンステレーションポイント変調シンボル{ejθS(n)}とを交替に使用して前記データ系列を変調することは、
データシンボル位置番号が担持されているコンステレーションポイント変調シンボル{ejθkS(n)}を用いて前記データ系列を変調し、kが前記データシンボル位置番号を表すとともに、kが0~K-1の整数であり、Kが前記変調されたデータシンボルの数を表すことを含む、
請求項1に記載の方法。」である点(請求項6)。
(5)判断
前記(4)シのとおり、本件補正発明と引用発明との間に相違点は存在しないから、本件補正発明は引用発明と同一である。
加えて、引用発明が本件補正発明と同じ構成を備える以上、引用発明が奏する効果は、本件補正発明のものと同じであると認められるため、本件補正発明は、当業者が引用発明に基づいて容易に発明をすることができたと認められる。
(6)請求人の主張についての判断
請求人は、概略、以下の主張1及び2を主張する。
〈主張1〉
データ変調分野において、ピーク対平均値比の低減と位相雑音の抑制を高い性能で同時に達成することは一般的に困難である。しかし、本願の技術的課題解決手段は、高周波シーンでのデータ伝送における高い位相雑音の問題を解決するだけでなく、信号のピーク対平均値比も低減できる。具体的には、補正後の請求項1においては、2つのグループの変調シンボルの一方が同じ位相を持ち、他方のグループも同じ位相を持ち、2つのグループの位相差が180度であることを規定しており、このような位相差により位相雑音の抑制性能を向上させることができる。さらに、コンステレーションポイント変調シンボル{S(n)}と位相がθ変化したコンステレーションポイント変調シンボル{ejθS(n)}とを交互に使用して変調することで、ピーク対平均値比を効果的に低減できる。特に、2つのグループの変調シンボル間の位相差が180度であり、θがπ/2または-π/2である場合、ピーク対平均値比の低減において高い性能が発揮される。
しかしながら、ピーク対平均値比の低減と位相雑音の抑制性能の向上を同時に達成する技術的課題解決手段は、拒絶査定で引用された文献1~4のいずれにも開示されていない。(審判請求書3.(2)、意見書にも同旨の記載有)
〈主張2〉
拒絶査定で引用された文献1(当審注:この審決の理由では引用していない。)は、π/2-4PAM変調、すなわち、cm∈{±1,±3}/√5を使用することを開示していますが、コンステレーションポイント変調シンボルは4つだけである。
一方、補正後の請求項1においては、位相変化θ後のコンステレーションポイント変調シンボル{S(n)}とコンステレーションポイント変調シンボル{ejθS(n)}を交替に使用してデータ系列を変調することが具体的に規定されている。すなわち、N=4の場合、コンステレーションポイント変調シンボルは合計で8つあり、これら8つのコンステレーションポイント変調シンボルはデータ系列を変調するために交互に使用される。
引用文献(当審注:拒絶査定で引用された文献2)は、いわゆるCPSKを開示しており、これは引用文献1のπ/2-4PAM変調と同様のものに関連している。拒絶査定で引用された文献2~4のいずれも、コンステレーションポイント変調シンボル{S(n)}とコンステレーションポイント変調シンボル{ejθS(n)}を交互に使用することは開示していない。(意見書「<理由1(新規性)、理由2(進歩性)について>」)
ア 主張1についての判断
請求人は、要するに、本件補正発明が位相雑音の抑制だけでなく、ピーク対平均値比も低減できる旨を主張する。しかしながら、以下の理由で、本件補正発明がピーク対平均値比を低減できるとは認められない。
(ア)請求人の主張におけるピーク対平均値比は、本願の明細書の「各グループ内の変調シンボルの最も小さいモジュラス値は、該グループ内の最も小さいモジュラス値の差の半分よりも大きく、変調シンボル間のモジュラス値の差をできるだけ低減し、信号ピーク対平均値比をより低くすることができる。」(【0031】)との記載及び「モジュラス値または電力によって異なる変調シンボルを区別することができ、」(【0029】)との記載によれば、ピーク対平均電力比(PAPR)のことであると認められる。
(イ)PAPRは、伝送における平均電力に対するピーク電力の比を表すものであるが、本件補正発明は、PAPRのみならず、伝送における平均電力及びピーク電力のいずれも特定していない。
(ウ)デジタル変調においては、各々のシンボルを伝送する際に必要な電力は変調方式においてシンボル毎に定まっており、そのシンボルの振幅(モジュラス値)により定まる。よって、伝送におけるピーク電力は、最大振幅を有するシンボルを伝送する際の電力として定まる。
そして、伝送における平均電力は、コンステレーションのシンボルS(n)を伝送する際の電力をP(n)とし、当該シンボルS(n)が伝送で生じる確率(生起率)をp(n)とした場合、ΣnP(n)p(n)で求められる。
そうすると、PAPRを求めるためには、各シンボルS(n)についてのP(n)とp(n)が必要となるところ、本件補正発明には、それらについて何も特定されていない。
(エ)請求人は、コンステレーションポイント変調シンボル{S(n)}と位相がθ変化したコンステレーションポイント変調シンボル{ejθS(n)}とを交互に使用して変調することで、ピーク対平均値比を効果的に低減できると主張するが、本件補正発明の{S(n)}及び{ejθS(n)}については、前記(ウ)のとおりその電力や生起率が特定されていないのであるから、これらを交互に用いたからといって、PAPRが低減できるとはいえない。本件補正発明の{S(n)}及び{ejθS(n)}は、両者の間の位相差がθであることがejθにて特定されているに過ぎず、これらを交互に使用することは、連続するシンボル間の位相差をθとする作用があるものの、シンボルの電力には影響せず、伝送におけるPAPRを左右しない。
(オ)以上、前記(ア)~(エ)のとおりであるから、請求人の主張は採用できない。
イ 主張2についての判断
請求人は、要するに、引用文献にはコンステレーションポイント変調シンボル{S(n)}とコンステレーションポイント変調シンボル{ejθS(n)}を交互に使用することが開示されていない、すなわち、引用発明は発明特定事項E1に係る構成を備えないと主張するが、前記(4)キのとおりであり、採用できない。
また、請求人は、本件補正発明のコンステレーションポイント変調シンボルが8つであることを主張するが、引用発明の構成bの数式によれば、引用発明のコンステレーションポイント変調シンボル({ejπk/2p(m)})は、約-1.3、約-0.4、約0.4及び約1.3の4個のシンボルと、これらをπ/2(90°)回転させた約-1.3j、約-0.4j、約0.4j及び約1.3jの4個のシンボルとからなる合計8個のシンボルからなり、本件補正発明と変わらない。
したがって、請求人の主張は採用できない。
(7)小括
以上によれば、本件補正発明は、特許法29条1項3号に規定する発明である引用発明と同一であり、かつ、当業者が引用発明に基づいて容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条1項の規定及び29条2項の規定により特許を受けることができない。
よって、本件補正発明は、特許出願の際独立して特許を受けることができるものではない。
4 本件補正についてのむすび
前記3によれば、本件補正は、特許法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に違反するので、同法159条1項の規定において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。
よって、前記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。
第3 本願発明
本件補正は上述のとおり却下されたため、本願の請求項8に係る発明(以下「本願発明」という。)は、前記第2[理由]1(1)に示した請求項1を引用する請求項4を引用する請求項8に記載のとおりのものと認める。
後の参照の便宜のため、請求項1、4及び8にA′1~I′の記号を付して以下のように分説し、「発明特定事項A′1」のようにして参照する。
【請求項1】
A′1 N個のコンステレーションポイント変調シンボル{S(n)}を用いてデータ系列を変調し、
A′2 前記N個のコンステレーションポイント変調シンボルが2グループの変調シンボルに分けられ、
A′3 前記2グループの変調シンボルの位相差が所定の角度となり、
A′4 nが0~N-1の整数であり、Nが4以上の偶数の整数であることと、
B′ 変調されたデータシンボルを物理リソース上で伝送することと、
C′ を含み、
D′ 前記N個のコンステレーションポイント変調シンボル{S(n)}を用いてデータ系列を変調することは、
E′1 コンステレーションポイント変調シンボル{S(n)}と、位相がθ度変化したコンステレーションポイント変調シンボル{ejθS(n)}とを交替に使用して前記データ系列を変調し、
E′3 eが自然定数であり、jが虚数単位である、
F′ データ変調方法。
【請求項4】
E′2 θがπ/2またはマイナスπ/2に等しい、
I′ 請求項1に記載の方法。
【請求項8】
G′ コンステレーションポイント変調シンボル{S(n)}と、位相がθ度変化したコンステレーションポイント変調シンボル{ejθS(n)}とを交替に使用して前記データ系列を変調することは、
H′ データシンボル位置番号が担持されているコンステレーションポイント変調シンボル{ejθkS(n)}を用いて前記データ系列を変調し、kが前記データシンボル位置番号を表すとともに、kが0~K-1の整数であり、Kが前記変調されたデータシンボルの数を表すことを含む、
I′′ 請求項4に記載の方法。
第4 原査定の拒絶の理由の概要
原査定の拒絶の理由の概要は、以下のとおりである。
1.(新規性)この出願の請求項1~9及び14~16に係る発明は、以下の文献1又は2に記載された発明であるから、特許法29条1項3号に該当し、特許を受けることができない。
2.(進歩性)この出願の請求項1~9及び11~16に係る発明は、以下の文献1又は2に記載された発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
この出願の請求項10に係る発明は、以下の文献1又は2に記載された発明並びに文献3及び4に示される周知技術に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
文献1.川崎 耀 他,位相回転を適用したDFT-s-OFDM信号のPAPR低減に関する考察,電子情報通信学会技術研究報告,日本,一般社団法人電子情報通信学会,2019年,Vol.118 No.489,pp.15-20
文献2.Peruga Nasarre,Ismael, PHYSICAL WAVEFORM RESEARCH FOR BEYOND 52.6 GHZ IN 5G NR NETWORKS[online], 2020年01月, pp. i, 25-36, [retrieved on 2024-02-13], Retrieved from the Internet: <URL:https://trepo.tuni.fi/handle/10024/119209/Ismael_Peruga.pdf?sequence=2&isAllowed=y>
文献3.特開2009-147637号公報
文献4.特表2015-536584号公報
第5 引用文献の記載事項
原査定の拒絶の理由で引用された文献2(この審決における引用文献に対応する。)の記載事項は、前記第2[理由]3(2)のとおりであり、当該記載から認定される引用発明は、前記第2[理由]3(3)のとおりである。
第6 本願発明と引用発明との対比・判断
本願発明の発明特定事項A′1、A′2及びA′4~F′(請求項2のE′2を含む。)は、それぞれ、本件補正発明の発明特定事項A1、A2及びA4~Fと同じことを特定する。
また、本願発明の発明特定事項G′及びH′は、本件補正発明の発明特定事項G及びHと同じことを特定する。
本願補正発明の発明特定事項A′3は、「前記2グループの変調シンボルの位相差が所定の角度となり、」というものであって、「前記2グループの変調シンボル」という発明特定事項について、本件補正発明で特定されていた「一方のグループの変調シンボルの位相が同じであり、他方のグループの変調シンボルの位相が同じであり、」との限定を削除し、かつ、本件補正発明で特定されていた「前記2グループの変調シンボルの位相差が180度であり、」との事項を、「前記2グループの変調シンボルの位相差が所定の角度となり、」に拡張したものである。
そして、本願発明の発明特定事項I′及びI′′並びに本件補正発明の発明特定事項Iは、引用関係を規定するに過ぎず、実質的な発明特定事項ではない。
そうすると、本願発明は、本件補正発明から、その発明特定事項である「2グループの変調シンボル」ついて、「一方のグループの変調シンボルの位相が同じであ」るとの限定及び「他方のグループの変調シンボルの位相が同じであ」るとの限定を削除し、さらに、「前記2グループの変調シンボルの位相差が180度であ」るとの事項から、位相差の具体的な数値限定を削除して、「前記2グループの変調シンボルの位相差が所定の角度とな」るとの事項に拡張したものである。
したがって、本願発明の発明特定事項を全て含み、さらに他の事項を付加したものに相当する本件補正発明が、前記第2[理由]3に示したとおり、引用発明と同一であり、かつ、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、引用発明と同一であり、かつ、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものと認められる。
第7 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明と同一であり、かつ、引用発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条1項及び2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2024-020441