特許拒絶査定不服審判
2024-017101
カミソリ刃
- 審判番号
- 2024-017101
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2022-560435
- 請求日
- 2024年10月25日
- 審決日
- 2026年01月07日
- 公報発行日
- 2026年06月26日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】ザ ジレット カンパニー リミテッド ライアビリティ カンパニー
- 【請求人代理人】弁理士法人谷・阿部特許事務所
- 審判長/審判官
- 審判長 本庄 亮太郎
- 審判官 藤江 大望
- 審判官 鈴木 貴雄
- 分類
- P18 .121-Z (B26B) / P18 .56 -Z (B26B) / P18 .575-Z (B26B)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第17条の2第5項第2号、特許法第17条の2第6項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2022-560435「カミソリ刃」拒絶査定不服審判事件〔2021年(令和3年)10月21日国際公開、WO2021/211811、令和5年5月23日国内公表、特表2023-521054〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、2021年(令和3年)4月15日(パリ条約による優先権主張 外国庁受理 2020年4月16日 (US)アメリカ合衆国)を国際出願日とする国際特許出願であって、その手続の経緯は、概略、以下のとおりである。
令和 4年10月 4日 :国内書面及び翻訳文の提出
令和 5年12月19日付け:拒絶理由通知書による拒絶の理由の通知
令和 6年 3月26日 :意見書及び手続補正書の提出
同年 6月17日付け:拒絶をすべき旨の査定
(拒絶査定、以下「原査定」という。)
同年10月25日 :本件審判(拒絶査定不服審判)の請求
本件審判の請求と同時:手続補正書の提出
第2 補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和6年10月25日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
1 本件補正の内容
(1)本件補正後の特許請求の範囲の請求項1
本件補正は、特許請求の範囲の全文を補正の対象とするものであって、本件補正により、特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおり補正がされた(下線は、補正箇所である。)。
「 【請求項1】
かみそり刃であって、
基板であって、
第1および第2の略平行な外側表面を含む第1の部分と、
分割線によって分離された略非対称の第1のセクションおよび第2のセクションを含む第2の部分であって、前記第1のセクションは第1のファセットおよび第3のファセットを備え、前記第2のセクションは第2のファセットを備え、前記第1のファセットは、前記第1の平行な外側表面から内向きに延在し、前記第2のファセットは、前記第2の平行な外側表面から内向きに延在し、前記第2のファセットと前記第3のファセットは、切断縁部を画定するように先端で収束し、前記分割線は、前記先端を通過し、前記第1の部分の前記第1の外側表面および前記第2の外側表面に対して略平行であり、前記第2のファセットは、前記第1のファセットおよび前記第3のファセットと比べて、前記分割線により接近して位置し、前記第2のファセットは、前記第3のファセットの長さよりも長い長さを有し、前記第1のファセットは、前記第1の部分の前記第1の外側表面から直接延在し、前記第3のファセットは、前記第1のファセットから直接延在する、第2の部分と、を備える、基板、
を備え、
前記先端から4マイクロメートルの距離において、前記第3のファセットから前記分割線までの第1の距離と、前記第2のファセットから前記分割線までの第2の距離との和が、1.0マイクロメートル~2.3マイクロメートルであり、
さらに、刃支持部材を備え、前記刃支持部材は、下部部分と、前記下部部分に対して100度~125度の角度で延在する上部部分と、を備えるかみそり刃。」
(2)本件補正前の特許請求の範囲の請求項1
本件補正前の(すなわち、令和6年3月26日提出の手続補正書により補正がされた)特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおりである。
「 【請求項1】
かみそり刃であって、
基板であって、
第1および第2の略平行な外側表面を含む第1の部分と、
分割線によって分離された略非対称の第1のセクションおよび第2のセクションを含む第2の部分であって、前記第1のセクションは第1のファセットおよび第3のファセットを備え、前記第2のセクションは第2のファセットを備え、前記第1のファセットは、前記第1の平行な外側表面から内向きに延在し、前記第2のファセットは、前記第2の平行な外側表面から内向きに延在し、前記第2のファセットと前記第3のファセットは、切断縁部を画定するように先端で収束し、前記分割線は、前記先端を通過し、前記第1の部分の前記第1の外側表面および前記第2の外側表面に対して略平行であり、前記第2のファセットは、前記第1のファセットおよび前記第3のファセットと比べて、前記分割線により接近して位置し、前記第2のファセットは、前記第3のファセットの長さよりも長い長さを有し、前記第1のファセットは、前記第1の部分の前記第1の外側表面から直接延在し、前記第3のファセットは、前記第1のファセットから直接延在する、第2の部分と、を備える、基板、
を備え、
前記先端から4マイクロメートルの距離において、前記第3のファセットから前記分割線までの第1の距離と、前記第2のファセットから前記分割線までの第2の距離との和が、1.0マイクロメートル~2.3マイクロメートルであるかみそり刃。」
2 本件補正の適否(補正の目的要件)
本件補正は、本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「かみそり刃」について、上記1(1)にて下線を付した補正箇所である、「下部部分と、前記下部部分に対して100度~125度の角度で延在する上部部分と、を備える」「刃支持部材を備え」ること(以下「補正事項」という。)を、具体的に限定するものであって、本件補正前の請求項1に記載された発明と本件補正後の請求項1に記載される発明とは、産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、本件補正は、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当する。
3 本件補正の適否(独立特許要件)
上記2のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものを含むことから、本件補正が特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか、すなわち、本件補正後の請求項1に係る発明(以下「本件補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか、いわゆる「独立特許要件」について、以下、検討する。
(1)検討する特許の要件
特許法第29条第2項(進歩性)
・引用する文献
ア 引用文献1
特表2005-509462号公報(原査定の引用文献1)
イ 引用文献2
特表2017-514667号公報(原査定の引用文献2)
ウ 周知例文献A
特表2020-505987号公報(公表日:令和2年2月27日)
エ 周知例文献B
特表2007-525279号公報
(2)本件補正発明の認定
本件補正発明は、上記1(1)の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものであると認める。
(3)引用文献1に記載された発明の認定
ア 引用文献1に記載された事項
引用文献1には、図面とともに、次の記載がある(下線は、公報に付されたものに加え、当審にて付した。以下同様。)。
(ア)発明の詳細な説明
「【技術分野】
【0001】
本発明は、CVDダイヤモンド切断用挿入体に係り、とりわけCVDダイヤモンドかみそり刃に関するものである。
【背景技術】
【0002】
剃ることによって人の毛髪を切ることは、要求の厳しい独特の用途である。毛髪自体は容易には切れないが曲がることができ、不適当に鈍い刃によって引っ張られると痛みを引き起こす。かみそり刃の最も重要な領域は、切断エッジから最初の40~150μmであると一般に認められており、この領域は、きれいに切断でき、切断負荷下で永久変形を示さず、できるだけ薄くて摩擦のないものでなければならない。」
「【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明による刃は、モノリシックな細長の切断エッジを有するCVDダイヤモンドの層を含む。
【0008】
本発明に係る刃にとって最も重要なことは、層がCVDダイヤモンドで作られて、細長のモノリシック切断エッジを有することである。切断エッジは単一材料からなるので、フランス特許第2536691号の刃のように接着領域によって妨害されない。切断エッジの長さは一般に少なくとも10mmで、好ましくは少なくとも20mmの長さを有する。刃がかみそり刃である場合には、その長さは一般的に30mmから45mmの範囲になる。
【0009】
CVDダイヤモンド層の形状は、刃が当てられるべき用途に応じて異なる。その形状は特にかみそり刃の場合には、一般に少なくとも1つのまっすぐな切断エッジをもち、広い意味で矩形、正方形、または三角形になる。
【0010】
CVDダイヤモンド層の厚さも、やはり刃が向けられるべき用途に応じて異なる。かみそり刃の場合には、CVDダイヤモンド層は一般的に50~400μmの範囲、好ましくは150~275μmの範囲にある厚さを有する。
【0011】
CVDダイヤモンドは、この技術分野では知られているように、化学蒸着によって製造されたダイヤモンドである。
【0012】
刃がかみそり刃である場合には、切断エッジの先端と切断エッジの先端へ連なっている層の領域との輪郭が重要である。これに関して、切断エッジの先端から40μmの距離における刃の有効全角は12~28°の範囲、好ましくは15~25°の範囲、さらに好ましくは17~23°の範囲にあることが望ましい。
【0013】
かみそり刃の有効全角および有効半角を、添付の図1および2によって図解する。まず図1には非対称かみそり刃が示されており、切断エッジ領域12を有する本体10を含む。切断エッジ領域12は内側に傾斜する面14、16を含む。面16は、その中に形成された特別な切子面18を有する。刃の切断エッジ先端または末端刃は20にある。
【0014】
刃の有効半角は、刃の中心を通過する線22と面14、16の1つの点24から引かれた線26との交点において形成された角である。点24はまた、一般的に刃の先端20から40μmの距離において線22に対して垂直に引かれた線34上にある。面16については、線26は面16と一致してはいない。有効半角は角28である。表面14については、点24からの線26は表面14と一致し、有効半角は角30である。有効全角は角28と角30との和である。」
「【0016】
本発明のさらなる一態様によれば、本発明の刃の切断エッジの先端は、60nm未満、好ましくは40nm未満、さらに好ましくは20nm未満の半径を有する。5nm未満の半径を有する先端を作製して使用することができる。刃の先端半径は図1においては符号32で示されている。
【0017】
本発明は、前記のように、人や動物の表面から毛髪を剃る場合のかみそり刃としての使用に拡張される。
【0018】
さらにまた本発明によれば、かみそりは前記のように、切断挿入体を含み、剃る動作に適したモノリシックな細長の切断エッジを提供するために、ホルダに取り付けられる。」
「【実施例】
【0021】
剃りなどに適用するために必要な性能を達成するために、切断エッジを製作する場合には、高度の注意が必要となる。これを達成するためには、下記の方法が適当であることがわかっている。
【0022】
1)CVDダイヤモンド層を、当技術分野では周知の方法を用いて基板の上に成長させる。この層は、一般的にはダイヤモンド基板の上にエピタキシャル成長させた単結晶であっても、または多結晶、Mo、W、Si、SiC、または炭化物形成元素などの基板の上に成長させたものであってもよい。さらにまた、ダイヤモンドをドープすることもドープしないことも可能であり、加工処理の促進のため所望の電気的特性を選択できる。代表的なドーパントはB、P、およびSであり、Bが好ましい任意選択肢である。ダイヤモンド層を概ね50~300μmの平均厚さに成長させて、次に片側または両側を研磨することもできる。多結晶ダイヤモンド層の場合には、研磨工程により、典型的な粗い成長面を除去し、刃に平坦な上面を作ることもできる。研磨後に、高度な研磨仕上げまたは100nmRa以下の粗さの研磨処理を行うこともできる。とりわけ、核形成面の近くに先端のある非対称な刃を作る場合には、核形成面の材料は一般に良好な切断エッジにはならないので、核形成側を研磨する(たとえば5~30μm除去する)ことも好ましい。」
「【0030】
本発明の実施例を以下に説明する。
【0031】
例1
多結晶CVDダイヤモンドの薄板を成長させたタングステン基板からこの薄板が離された。薄板は、宝石細工を基礎にした技術を用いてダイヤモンドの粗く成長した表面を除去することによって加工され、対向する平坦で平行な表面を有する。次に両表面を100nmRa以下の粗さにまで研磨して、核形成面から少なくとも5μmのダイヤモンドを除去し、厚さ約200μmの薄板または層を形成した。
【0032】
Nd:YAGレーザを使用してダイヤモンド薄板を切断して基本かみそり刃形状の半加工品を製作した。この場合、長さ40mm、幅4mm、厚さ200μmの寸法を有する矩形形状で、切断エッジは直角であった。
【0033】
ホルダを準備して、加工ホイールに垂直な線に対して70°の角度で、これらの刃の半加工品の積層体を保持した。半加工品をラッピングおよび研磨して、20°の有効全角を有する非対称刃を形成した。」
「【0035】
例2
例1において作られた刃の1つをレーザ切断によってさらに加工し、次に切断エッジをイオン・ビーム・ミリングにより、一次切子面と切断エッジとの間に置かれた核形成面に対して35°の角度で小さな(約5μm)の二次切子面を形成した。この二次切子面の追加は、先端から40μmにおける刃の有効全角を20°から約22°に僅かに増加させるためであった。
【0036】
次にこの刃を、剃るために適当なホルダに取り付けた。これは毛髪の切断または剃り、特に男性の顔面の髭を皮膚から切り離すのに有効であることがわかった。使用中は刃を、表面16が剃られている人の皮膚に確実に接触し、切断エッジ先端20が確実に毛髪を貫通切断して、剃られている人の皮膚を絶対に傷付けないように、ホルダに取り付けた。」
(イ)図面
「【図1】
[図:0001435746000001.jpg]
」
イ 引用文献1に記載されているといえる事項
上記アから、引用文献1には、次の事項が記載されているといえる。
(ア)上記ア(ア)の段落【0008】~【0011】の記載から、引用文献1には、CVDダイヤモンド層で作られた、切断エッジを有するかみそり刃に関する発明が記載されている。
(イ)上記ア(ア)の段落【0013】の記載から、引用文献1に図1として示されるかみそり刃は、非対称かみそり刃であって、切断エッジ領域12を有する本体10を含み、切断エッジ領域12は、内側に傾斜する面14及び面16を含むものである。また、上記ア(イ)の図1の図示内容を併せてみると、本体10は、切断エッジ領域12よりも図面左側に位置する領域(以下「本体左側領域」という。)を有しているといえる。そして、当該本体左側領域は、上記ア(ア)の段落【0022】の記載から、CVDダイヤモンド層の成長による当該層の厚みを画定する核形成面及び成長面の片側又は両側を研磨することで形成される一対の表面を有するといえ、上記ア(ア)の段落【0032】の「長さ40mm、幅4mm、厚さ200μmの寸法を有する」との記載や、上記ア(イ)の図1の図示内容を併せてみれば、核形成面及び成長面の片側又は両側を研磨することで形成される一対の表面は、その表面が平行に位置しているといえる(以下、本体左側領域の図面上側の面を「上側平行表面」といい、図面下側の面を「下側平行表面」という。次の参考図を参照。)。
<参考図:引用文献1の図1に、当審にて(イ)~(ウ)にて定義する「本体左側領域」、「上側平行表面」及び「下側平行表面」、並びに、切断エッジ領域12の「上側部分」及び「下側部分」の位置を追記>
「
[図:0001435746000002.jpg]
」
以上から、引用文献1に図1として示されるかみそり刃は、本体10を備え、当該本体10は、上側平行表面及び下側平行表面を含む本体左側部分と、切断エッジ領域12とを備える、といえる。
(ウ)上記ア(ア)の段落【0013】~【0014】の記載、及び、上記ア(イ)の図1の図示内容から、引用文献1に図1として示される非対称かみそり刃の切断エッジ領域12は、刃の中心を通過する線22よりも上側の、切子面18を有する面16を含む部分(以下「上側部分」という。)と、線22よりも下側の、面14を含む部分(以下「下側部分」という。)とに区分けすることができる(上記参考図を参照。)。そして、引用文献1に記載のかみそり刃は非対称かみそり刃である(上記(イ))から、当該上側部分と当該下側部分とは、略非対称であるといえる。
また、上記ア(ア)の段落【0013】の「切断エッジ領域12は内側に傾斜する面14、16を含む」との記載、及び、上記ア(イ)の図1(又は上記参考図)の図示内容から、面16は、上側平行表面から内側に傾斜し、面14は、下側平行表面から内側に傾斜しているといえる。さらに、上記ア(ア)の段落【0013】の「面16は、その中に形成された特別な切子面18を有する。刃の切断エッジ先端または末端刃は20にある。」との記載、段落【0016】の、刃の先端半径32のさらに好ましい例が20nm未満と微小であること、及び、上記ア(イ)の図1(又は上記参考図)の図示内容から、面14と切子面18は、刃の先端20で交わり、末端刃20を画定しているといえる。
以上から、引用文献1に図1として示される非対称かみそり刃における切断エッジ領域12は、刃の中心を通過する線22によって区分けされた略非対称の上側部分及び下側部分を含み、上側部分は、切子面18を有する面16を含み、下側部分は、面14を含み、面16は、上側平行表面から内側に傾斜し、面14は、下側平行表面から内側に傾斜し、面14と切子面18は、末端刃20を画定するように刃の先端20で交わる、といえる。
(エ)引用文献1に図1として示される非対称かみそり刃における線22は、上記(ウ)に示したように、刃の中心を通過するものであって、上記ア(イ)の図1(又は上記参考図)の図示内容を併せてみれば、刃の先端20を通過し、本体左側領域の上側平行表面及び下側平行表面に対して略平行である、といえる。また、上記ア(イ)の図1(又は上記参考図)の図示内容から、図1における切子面18の、線22に対する角度は、角28及び角30のそれぞれの角度よりも大きいことが看取される。この角度の関係は、段落【0013】~【0014】に、刃の有効半角である角28と角30との和が有効全角であること、段落【0012】に、その有効全角として、さらに好ましい範囲が17~23°であること、及び、段落【0035】記載の例2において、図1における「面16のうち刃の先端20側に形成される切子面18」と同様の位置に形成される「一次切子面と切断エッジとの間に置かれた二次切子面」が、核形成面に対して35°の角度をなすものであって、当該角度自体が、二次切子面の追加によって増加された先端から40μmにおける「有効全角」の22°よりも大きな角度を有すること、からも裏付けられる。してみると、切断エッジ領域12において、線22に対して垂直な任意の線(例えば、線34(段落【0014】)、又は、線34に平行な線)を引いた場合に、当該任意の線(例えば、線34)上の、面14(例えば、図1下側の点24)と線22との距離は、面16(例えば、図1上側の点24)と線22との距離に比べて短くなることは、幾何学的にみて明らかである。
以上から、引用文献1に記載の非対称かみそり刃においては、線22は、刃の先端20を通過し、本体左側領域の上側平行表面及び下側平行表面に対して略平行であり、面14は、切子面18を有する面16と比べて、線22により接近して位置している、といえる。
(オ)上記ア(ア)の段落【0013】の「切断エッジ領域12は内側に傾斜する面14、16を含む。面16は、その中に形成された特別な切子面18を有する。」との記載、及び、上記ア(イ)の図1(又は上記参考図)の図示内容からみて、面14は、切子面18の長さよりも長い長さを有するといえる。また、面16は、本体左側領域の上側平行表面から直接延在し、切子面18は、面16のうち刃の先端20側に位置するといえる。
以上から、引用文献1に記載の非対称かみそり刃における切断エッジ領域12においては、面14は、切子面18の長さよりも長い長さを有し、面16は、本体左側領域の上側平行表面から直接延在し、切子面18は、面16のうち刃の先端20側に位置する、といえる。
(カ)上記ア(ア)の段落【0012】、【0014】の記載、及び、上記ア(イ)の図1(又は上記参考図)の図示内容から、引用文献1に記載の非対称かみそり刃は、刃の先端20から40μmの距離において線22に対して垂直に引かれた線34と面14及び面16との交点である2つの点24から、刃の先端20へと引かれた2本の線26と線22とによりそれぞれ形成される角28と角30との和である有効全角が、さらに好ましい例として17~23°(段落【0012】)であり、また、切子面18の線22に対する角度は、角28及び角30のそれぞれの角度よりも大きい(上記(エ))といえる。
(キ)上記ア(ア)の段落【0018】、【0036】の記載から、引用文献1に記載の非対称かみそり刃は、ホルダに取り付けられるものである。
ウ 引用文献1に記載された発明
上記ア~イを含む引用文献1に記載された事項を本件補正後の請求項1の記載(上記1(1))に合わせて整理すると、引用文献1には、図1に示される非対称かみそり刃に関する、次の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。
「非対称かみそり刃であって、
本体10であって、
上側平行表面及び下側平行表面を含む本体左側領域と、
刃の中心を通過する線22によって区分けされた略非対称の上側部分及び下側部分を含む切断エッジ領域12であって、前記上側部分は、切子面18を有する面16を含み、前記下側部分は、面14を含み、前記面16は、前記上側平行表面から内側に傾斜し、前記面14は、前記下側平行表面から内側に傾斜し、前記面14と前記切子面18は、末端刃20を画定するように刃の先端20で交わり、前記線22は、前記刃の先端20を通過し、前記本体左側領域の前記上側平行表面及び前記下側平行表面に対して略平行であり、前記面14は、前記切子面18を有する前記面16と比べて、前記線22により接近して位置し、前記面14は、前記切子面18の長さよりも長い長さを有し、前記面16は、前記本体左側領域の前記上側平行表面から直接延在し、前記切子面18は、前記面16のうち前記刃の先端20側に位置する、切断エッジ領域12と、を備える、本体10、
を備え、
前記刃の先端20から40μmの距離において前記線22に対して垂直に引かれた線34と前記面14および前記面16との交点である2つの点24から、前記刃の先端20へと引かれた2本の線26と、前記線22とによりそれぞれ形成される角28と角30との和である有効全角が17~23°であり、切子面18の線22に対する角度は、角28及び角30のそれぞれの角度よりも大きく、
さらに、ホルダに取り付けられる非対称かみそり刃。」
(4)引用文献2に記載された技術的事項の認定
ア 引用文献2に記載された事項
引用文献2には、次の記載がある。
(ア)発明の詳細な説明
「【技術分野】
【0001】
本発明は、カミソリ、より具体的には、鋭く耐久性のある刃先を有するカミソリの刃に関する。
【背景技術】
【0002】
カミソリの刃は、典型的には、ステンレス鋼などの好適な基材材料で形成され、刃先は、最終的な先端がある半径を有するV字型形状で形成される。ダイヤモンド、非晶質ダイヤモンド、ダイヤモンド様炭素(DLC)材料、窒化物、炭化物、酸化物、又はセラミックなどの硬質コーティングは、強度、耐食性、及びヒゲ剃り能力を改善するために使用されることが多く、用いられる切削抵抗の低い、より薄い縁部の使用を可能にすると同時に、必要とされる強度を保持する。ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)外層は、摩擦を低減させるために使用することができる。ニオビウム、クロム、又はチタンを含む材料の中間層は、典型的にはステンレス鋼の基材と、DLCなどの硬化炭素コーティングとの間の結合の改善に役立ち得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
カミソリの刃の基材の形状を改善して、毛髪を切断するのに必要な切断具力を減少させることが望ましい。かかる切断具力の減少は、より快適なひげ剃りにつながる。」
「【発明を実施するための形態】
【0012】
ここで図1を参照すると、カミソリの刃10が示されている。カミソリの刃10は、先端12を有する楔形状の鋭い縁部(又は刃先)を有するステンレス鋼の本体部分又は基材11を含む。先端12は、好ましくは、先端12から広がる各縁部上の小平面14及び16を有する約125オングストロームから約500オングストロームまでの半径を有してもよい。基材11は、カミソリ先端12から4マイクロメートルの距離20で測定されたとき、約1.60マイクロメートルから1.75マイクロメートルまでの厚さ21を有する。」
「【0019】
下の表1は、本発明で企図される値のアウトラインである。距離と厚さの単位はマイクロメートルである。
【0020】
【表1】
[図:0001435746000003.jpg]
【0021】
厚さ及び厚さの比率は、ひげ剃りを改善するための骨格を提供する。厚さ及び厚さの比率は、縁部強度と低切削抵抗又は鋭さとの間のバランスを提供する。より小さい比率を有する基材は、最終的な縁部の破損を導く不適切な強度を有する。より厚い厚さを有する基材は、引く力(tug and pull)の増加、及びひげ剃り中のユーザーの不快感の増加を導く高い切削抵抗を有する。」
(イ)図面
「
[図:0001435746000004.jpg]
」
イ 引用文献2に記載された技術的事項
上記アから、引用文献2には、次の技術的事項(以下「引用文献2記載の技術的事項」という。)が記載されていると認められる。
「カミソリの刃10の先端12から4マイクロメートルの距離20において、小平面14から小平面16までの厚さが、1.60マイクロメートルから1.75マイクロメートルであること。」
(5)周知の技術的事項の認定
ア 周知例文献Aに記載された事項
周知例文献Aには、次の記載がある。
(ア)発明の詳細な説明
「【0026】
図3および図5a~図8に示すように、各切断部材24は、湾曲したブレード支持体34およびブレード25を備える。ブレード25は、シェービング方向の前方に向けられた刃先26を有する平鋼ストリップによって形成されている。各ブレード25は、シェービングされる皮膚の方を向いた上面27と、ハンドル2の方を向いた下面28とを有する。ブレード25の上面27と下面28は、それぞれ2つの平行な主表面29、30と、刃先26に向かって先細となる先細ファセット31、32とを備える。」
「【0028】
各ブレード25は、図4および図7により詳細に見られるブレード支持体34によって支持されている。例えば、ブレード支持体34は、屈曲した外形を有する鋼から作られた薄板金部品である。あるいは、ブレード支持体34は、屈曲した外形を有するプラスチックまたは他の適切な材料部分を含み得る。」
「【0034】
ブレード支持体34は以下を含む。
-実質的に細長い平らな下部35
-ブレード25と平行に延在する実質的に細長い平らな上部39
-上部39と下部35との間の細長い屈曲部36
【0035】
上部39は前述の屈曲部36から上面46に向かって上方に延在し、下部35は前述の屈曲部36から底面47に向かって下方に延在する。上面46、または底面47、あるいはその両方は、実質的に湾曲した表面である。これら湾曲面は、0.065mm~10mm(例えば、0.08mm~0.25mm)の曲率半径R1を有することができる。ブレード支持体34は、2つの対向面48、49を有する。下部35は実質的に平坦であり、また、その上部39も実質的に平坦であり、約104~120度(約112°)の角度で下部に対して傾斜している。シェービング平面Pに対する上部39およびブレード25の角度は、約22°でよい。図6にある、下部35に平行な平面と上部39に平行な平面との間の角度αは、60~76度(°)(約68°)である。」
「【0048】
ブレード25は、任意の既知の手段によって、例えばレーザースポット溶接によってブレード支持体34の上部39に固定される。ブレード25の下面28および上面27は、刃先26の後方においては実質的に平坦であり、先端は(2つの先細ファセット31、32を有し)細くなり、刃先26に収束する。ブレード25の下面28は、ブレード支持体34の上部39の上面73と接触しており、少なくとも1つのスポット溶接部75によってそこに固定されている。」
(イ)図面
「【図6】
[図:0001435746000005.jpg]
【図7】
[図:0001435746000006.jpg]
」
イ 周知例文献Bに記載された事項
周知例文献Bには、次の記載がある。
(ア)発明の詳細な説明
「【0016】
図3~図6を参照すると、細長いブレード28はそれぞれ、細長い屈曲した各支持体400上に支持され、この細長い屈曲した支持体400は、細長い下部ベース部分402と、細長い屈曲部分404と、細長いプラットフォーム部分406とを有し、この細長いプラットフォーム部分406上にブレード28が支持されていることが分かる。・・・
【0017】
図4~図6を参照すると、ブレード28は13個のスポット溶接410によってプラットフォーム部分406に接続され、これら13個の溶接部410は、溶接領域WAにてブレード28の金属を溶融して溶融金属を作製するレーザーによって適用され、この溶融金属は冷却するとプラットフォーム部分406への溶接部410を形成する。溶接領域WAは、ブレードがプラットフォーム部分に固定される取り付け領域である。溶接領域WAは、プラットフォーム部分406の平坦な部分FP内に位置する。刃先408からブレード端部450までのブレード長さLBは1mm未満であり、好ましくは0.9mm未満であり、最も好ましくは約0.85mmである。ブレード28は、プラットフォーム部分406上に支持される均一な厚さ部分412と、プラットフォーム部分406の前側端部452を越えて延在する先細部分412とを有する。
【0018】
細長い屈曲した金属支持体400は、0.010cm(0.004”)~0.023cm(0.009”)の厚さ(寸法T)からなる金属、好ましくは0.013cm(0.005”)~0.018cm(0.007”)の厚さからなる金属、及び最も好ましくは約0.015cm(0.006”)の厚さからなる金属から作製される。プラットフォーム部分406は、その前側端部452から屈曲部分404までの長さである長さLPを有し、この長さLPは0.7mm未満であり、好ましくは0.6mm未満であり、及び最も好ましくは約0.55mmである。屈曲部分404は、0.1mm未満、好ましくは0.09mm未満、及び最も好ましくは0.08mm未満である内側局率半径Rを有する。ベース部分402とプラットフォーム部分406との間の角度は、108°~115°、好ましくは10°(当審注:「110°」の誤記と認める。)~113°、最も好ましくは約111.5°である。」
(イ)図面
「【図7】
[図:0001435746000007.jpg]
」
ウ 周知の技術的事項
上記ア~イに例示されるように、次の技術は、本件優先日前において周知の事項(以下「周知の技術的事項」という。)であったと認められる。
「かみそり刃が刃支持部材に固定して支持され、当該刃支持部材は、下部部分と、下部部分に対して108°~115°の角度で延在する上部部分と、を備えること。」
(6)本件補正発明と引用発明1との対比
ア 相当関係
本件補正発明と引用発明1とを対比すると、発明を特定するための事項に次の相当関係があるといえる。
(ア)引用発明1における「非対称かみそり刃」は、その形状・構造・機能等からみて、本件補正発明における「かみそり刃」に相当し、以下同様に、「本体10」は「基板」に、「上側平行表面」及び「下側平行表面」は「第1および第2の略平行な外側表面」に、「本体左側領域」は「第1の部分」に、「線22」は「分割線」に、「線22によって区分けされた」は「分割線によって分離された」に、「上側部分」及び「下側部分」は「第1のセクションおよび第2のセクション」に、「切断エッジ領域12」は「第2の部分」に、それぞれ相当する。
(イ)引用発明1における「切子面18を有する面16」は、その形状・構造・配置からみて、本件補正発明における「第1のファセットおよび第3のファセット」に相当し、「切子面18」は「第3のファセット」に相当する。してみると、面16のうち切子面18を除いた部分、すなわち、上側平行表面から内側に傾斜し切子面18に達する部分は、「第1のファセット」に相当する。また同様に、引用発明1における「面14」は、本件補正発明における「第2のファセット」に相当し、「面16を含み」及び「面14を含み」は、「第1のファセットおよび第3のファセットを備え」及び「第2のファセットを備え」のそれぞれに相当する。さらに、引用発明1における「内側に傾斜し」は、本件補正発明における「内向きに延在し」に相当し、以下同様に、「刃の先端20」は「先端」に、「末端刃20を画定するように刃の先端20で交わり」は「切断縁部を画定するように先端で収束し」に相当する。
(ウ)引用発明1における「前記切子面18は、前記面16のうち前記刃の先端20側に位置する」点は、上記(イ)に示した「面16」と「切子面18」との関係性からみて、本件補正発明における「前記第3のファセットは、前記第1のファセットから直接延在する」点に相当する。
イ 一致点
上記アから、本件補正発明と引用発明1とは、次の一致点で一致する。
・一致点
「かみそり刃であって、
基板であって、
第1および第2の略平行な外側表面を含む第1の部分と、
分割線によって分離された略非対称の第1のセクションおよび第2のセクションを含む第2の部分であって、前記第1のセクションは第1のファセットおよび第3のファセットを備え、前記第2のセクションは第2のファセットを備え、前記第1のファセットは、前記第1の平行な外側表面から内向きに延在し、前記第2のファセットは、前記第2の平行な外側表面から内向きに延在し、前記第2のファセットと前記第3のファセットは、切断縁部を画定するように先端で収束し、前記分割線は、前記先端を通過し、前記第1の部分の前記第1の外側表面および前記第2の外側表面に対して略平行であり、前記第2のファセットは、前記第1のファセットおよび前記第3のファセットと比べて、前記分割線により接近して位置し、前記第2のファセットは、前記第3のファセットの長さよりも長い長さを有し、前記第1のファセットは、前記第1の部分の前記第1の外側表面から直接延在し、前記第3のファセットは、前記第1のファセットから直接延在する、第2の部分と、を備える、基板、
を備えるかみそり刃。」
ウ 相違点
他方、本件補正発明と引用発明1とは、次の相違点1~2で相違する。
(ア)相違点1
本件補正発明においては、「前記先端から4マイクロメートルの距離において、前記第3のファセットから前記分割線までの第1の距離と、前記第2のファセットから前記分割線までの第2の距離との和が、1.0マイクロメートル~2.3マイクロメートル」であるのに対し、
引用発明1においては、角28と角30との和である有効全角が17~23°であり、切子面18の線22に対する角度は、角28及び角30のそれぞれの角度よりも大きいものの、角30の角度及び切子面18の線22に対する角度がそれぞれ不明であるため、刃の先端20(前記先端)から4マイクロメートルの距離において、前記切子面18(前記第3のファセット)から前記線22(前記分割線)までの第1の距離と、前記面14(前記第2のファセット)から前記線22(前記分割線)までの第2の距離との和が、どの程度であるか、不明である点。
(イ)相違点2
本件補正発明においては、かみそり刃が「刃支持部材を備え、前記刃支持部材は、下部部分と、前記下部部分に対して100度~125度の角度で延在する上部部分と、を備える」のに対し、
引用発明1においては、非対称かみそり刃がホルダに取り付けられるものの、本件補正発明における刃支持部材に相当する部材を備えるか、不明である点。
(7)相違点についての判断
上記相違点1~2について検討する。
ア 上記相違点1について
(ア)上記(3)イ(エ)のとおり、引用文献1の段落【0013】~【0014】に図1を図解して記載される、非対称かみそり刃である引用発明1においては、角28と角30との和である有効全角が17~23°であり、切子面18の線22に対する角度は、角28及び角30のそれぞれの角度よりも大きいといえる。しかし、角30の角度及び切子面18の線22に対する角度がそれぞれ不明であるため、本件補正発明における第1の距離及び第2の距離に相当する長さについても不明である。
また、引用文献1には、段落【0031】~【0033】に記載の例1の非対称刃が、20°の有効全角を有し、段落【0035】に記載の例1の刃をさらに加工した例2の刃が、核形成面に対して35°の角度で5μmの長さの二次切子面を有することが開示される。図1として示される引用発明1の非対称かみそり刃と例1~2に示される非対称刃とは、刃の形状が異なると解されるものの、仮に、引用発明1における角30が例1の有効全角20°の半分の10°、切子面18の線22に対する角度が、例2の二次切子面と同様に35°であるとする。この仮定の場合、第1の距離及び第2の距離、並びに、その和は次のとおりとなり、本件補正発明に示される数値範囲とは異なる。
第1の距離:4×tan35°=約2.8マイクロメートル
第2の距離:4×tan10°=約0.7マイクロメートル
和 :約3.5マイクロメートル
(イ)一方、引用文献2には、上記(4)イに示した、引用文献2記載の技術的事項が開示される。
(ウ)引用発明1と引用文献2記載の技術的事項とは、髭を剃るためのかみそり刃である点で技術分野が関連し、また、引用文献1の段落【0002】には、切断エッジから最初の40~150μmの領域は、きれいに切断でき、切断負荷下で永久変形を示さず、できるだけ薄くて摩擦のないものとしたいとの課題が示され、引用文献2の段落【0001】~【0004】、【0021】には、鋭く耐久性のある刃先を有するカミソリの刃とすることで、縁部強度と低切削抵抗又は鋭さとの間のバランスを提供することが示されることから、引用発明1と引用文献2記載の技術思想とは、その刃先に求められる機能及び課題が共通するものであるといえる。
(エ)してみると、引用発明1において、非対称かみそり刃の先端20の形状をさらに改善するために、引用文献2記載の技術的事項を採用し、刃の先端20(前記先端)から4マイクロメートルの距離において、切子面18から面14までの厚さが1.60マイクロメートルから1.75マイクロメートルとなるように、角30、及び、切子面18の線22に対する角度を適宜調整して、第1の距離と第2の距離との和が1.60マイクロメートルから1.75マイクロメートルとすることで、上記相違点1に係る本件補正発明のようにすることは、当業者であれば容易に想到し得たことである。
イ 上記相違点2について
上記(5)ウに周知の技術的事項として示した事項は、本件出願の優先日前において当業者に周知の技術であった。
そして、引用発明1と周知の技術的事項とは、髭を剃るためのかみそり刃である点で技術分野が関連し、また、引用文献1の段落【0036】には、「使用中は刃を、表面16が剃られている人の皮膚に確実に接触し、切断エッジ先端20が確実に毛髪を貫通切断して、剃られている人の皮膚を絶対に傷付けないように、ホルダに取り付けた」と記載される。してみると、引用発明1の非対称かみそり刃を上記のようにホルダに安定して取り付けるために、引用発明1の非対称かみそり刃を当該周知の技術的事項である刃支持部材に固定して支持することで、相違点2に係る本件補正発明のようにすることは、当業者であれば容易に想到し得たことである。
ウ 本件補正発明の作用・効果について
上記相違点1~2を総合的に勘案しても、本件補正発明の奏する作用・効果は、引用発明1、引用文献2記載の技術的事項及び周知の技術的事項により奏する作用・効果から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。
なお、本件請求人は、令和6年10月25日提出の審判請求書において、本件補正発明は、刃支持部材を備え、前記刃支持部材は、下部部分と、前記下部部分に対して100度~125度の角度で延在する上部部分と、を備えることにより、本件明細書の段落【0053】に記載のように、剃毛の快適さを改善し、皮膚刺激を低減するために、剃毛中に皮膚から離間されるといった効果を奏するものであり、引用文献1に対して、単に引用文献2の記載の発明を組み合わせたとしても、上記の効果は得られないため、当業者といえども容易に想到し得たものではない旨を主張する。
しかしながら、上記イのとおり、下部部分と、前記下部部分に対して100度~125度の角度で延在する上部部分と、を備えた刃支持部材は、本件優先日前において周知の技術的事項であるといえ、また、引用文献1の段落【0036】には、「使用中は刃を、表面16が剃られている人の皮膚に確実に接触し、切断エッジ先端20が確実に毛髪を貫通切断して、剃られている人の皮膚を絶対に傷付けないように、ホルダに取り付けた」との明示的に記載されている。
そうすると、当該請求人の主張を採用することはできない。
(8)本件補正の適否(独立特許要件)の小括
したがって、本件補正発明は、引用発明1、引用文献2記載の技術的事項及び周知の技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
4 本件補正についてのむすび
上記3のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり、決定する。
第3 本件発明について
1 本件発明
本件補正は、上記第2のとおり却下されたので、本件出願の請求項1~13に係る発明は、令和6年3月26日提出の手続補正書により補正がされた特許請求の範囲の請求項1~13に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本件発明」という。)は、その請求項1に記載された事項により特定される、上記第2の[理由]1(2)に記載のとおりのものである。
2 原査定の拒絶の理由
原査定の本件発明に対する拒絶の理由(原査定に説示される令和5年12月19日付け拒絶理由通知書に記載された理由2)は、概略、次のとおりである。
・理由2(進歩性)
「本件発明は、本件出願の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった、引用文献1~2に記載された発明に基づいて、本件出願の優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。」
(なお、引用文献1~2は、上記第2の[理由]3(1)ア~イに示した文献である。)
3 各引用文献に記載された発明、技術的事項
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1~2に記載された事項、並びに、引用文献1に記載された引用発明1、及び、引用文献2記載の技術的事項は、上記第2の[理由]3(3)~(4)に示したとおりである。
4 対比
本件発明は、上記第2の[理由]3で検討した本件補正発明から、補正事項(上記第2の[理由]2)による限定を削除したものである。
そして、本件補正発明と引用発明1とを対比した際の相違点のうち、相違点2(上記第2の[理由]3(6)ウ(イ))は、当該補正事項に基づくものであるから、本件補正発明から補正事項を削除した本件発明と、引用発明1とを対比すると、両者は、相違点1(上記第2の[理由]3(6)ウ(ア))と同様の相違点のみで相違する。
5 相違点に対する判断
相違点1に係る本件補正発明が、前記第2の[理由]3(7)アに記載したとおり、引用発明1、及び、引用文献2記載の技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件発明も同様に、引用発明1、及び、引用文献2記載の技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
第4 むすび
以上のとおり、本件発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は、原査定の拒絶の理由のとおり、拒絶をされるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
J-PlatPatの審決検索トップを開きます。番号入力で「審判番号」を選び、下の番号を貼り付けて検索してください。
J-PlatPat 審決検索を開く
2024-017101