特許拒絶査定不服審判
2024-016294
光拡散シート、バックライトユニット、液晶表示装置及び情報機器
- 審判番号
- 2024-016294
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2021-045467外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2024年10月10日
- 審決日
- 2025年10月14日
- 公報発行日
- 2025年12月26日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】恵和株式会社
- 【請求人代理人】弁理士法人前田特許事務所
- 分類
- P18 .121-Z (G02B)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2021- 45467「光拡散シート、バックライトユニット、液晶表示装置及び情報機器」拒絶査定不服審判事件〔令和 4年10月 3日出願公開、特開2022-144447〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特願2021-45467号(以下「本件出願」という。)は、2021年(令和3年)3月19日を出願日とする特許出願であって、その後の手続経緯の概要は、以下のとおりである。
令和5年 8月 1日付け:拒絶理由通知
令和5年11月30日 :意見書の提出
令和5年11月30日 :手続補正書の提出
令和6年 2月 1日付け:拒絶理由通知
令和6年 4月 9日 :意見書の提出
令和6年 4月 9日 :手続補正書の提出
令和6年 7月12日付け:拒絶査定(以下「原査定」という。)
令和6年10月10日 :審判請求書の提出
第2 本願発明
本件出願の請求項1~9に係る発明は、それぞれ、令和6年4月9日に提出した手続補正書によって補正された特許請求の範囲の請求項1~9に記載された事項によって特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明1」という。)は次のものである。
「【請求項1】
光出射面となる第1面と、光入射面となる第2面とを有する光拡散シートであって、
前記第1面には、略逆多角錐状の複数の凹部が設けられ、
前記第2面は、算術平均粗さが0.1μm以下の平坦面であり、
拡散剤を含有せず、内部ヘイズが1.5%以下である
光拡散シート。」
第3 原査定の拒絶の理由の概要
原査定の拒絶の理由の概要は、次のとおりである。
●理由2:(進歩性)本件出願の請求項1~9に係る発明は、本件出願前に日本国内又は外国において電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった以下の文献に記載された発明に基づいて、本件出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
引用文献3:特開2020-86432号公報
第4 当合議体の判断
1 引用文献3の記載事項
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献3は、本件出願前に日本国内又は外国において電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明が記載されたものであるところ、そこには以下の記載がある。
なお、下線は当合議体が付したものであり、引用発明の認定や判断等に活用した箇所を示す。
(1) 「【技術分野】
【0001】
本発明は、光学シート、バックライトユニット、液晶表示装置及び情報機器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、スマートフォンやタブレット端末などの各種情報機器の表示装置として、液晶表示装置(以下、液晶ディスプレイということもある。)が広く利用されている。液晶ディスプレイのバックライトとしては、光源が液晶パネルの背面に配置される直下型方式、又は、光源が液晶パネルの側面の近傍に配置されるエッジライト方式が主流となっている。
【0003】
直下型バックライトを採用する場合、発光面においてLED(Light Emitting Diode)等の光源のイメージを消して面内輝度の均一性を上げるために、光源から、光源イメージを消すために使用される拡散部材(拡散板、拡散シート、拡散フィルム)までの距離を大きくすることが一般的である。
・・・中略・・・
【0007】
直下型バックライトを薄型化しつつ発光面の輝度均一性を向上させる方法としては、光源イメージを消すために使用される拡散シート等の光拡散性を高めること、例えば、拡散シート等に拡散剤を大量に含有させることが考えられる。その他、特開2012-42783号公報(以下、特許文献1という)には、凹部を有するレンズを複数配置した光学シートを用いることが提案されている。また、特開2008-03200号公報(以下、特許文献2という)には、隣接する3つのLED光源が正三角形の頂点を構成するようにLED光源を配置することが提案されている。」
(2) 「【発明が解決しようとする課題】
・・・中略・・・
【0012】
そこで、本発明は、液晶表示装置に用いられる直下型バックライトのさらなる薄型化に対しても、発光面における各光源と光源間領域との間に輝度ムラが生じることを十分に抑制できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記の目的を達成するために、本願発明者は、様々な表面形状を持つ光学シートを用いて、直下型バックライトの発光面における輝度均一性を調べた結果、従来着目されてきた光源の配置や光学シートの光拡散性以外に、光学シートの光反射特性が輝度均一性に大きな影響を及ぼしていることを見いだした。さらに、本願発明者は、光学シートにおける様々な表面形状と輝度均一性との関係を評価した結果、下記の本発明を想到した。」
(3) 「【発明の効果】
【0026】
本発明によると、光学シートの仮想平面に対して所定の投影面積を持つ微小領域を当該仮想平面に沿ってずらしながら、当該仮想平面の各位置での微小領域に含まれる凹凸形状を持った表面を平面近似し、当該平面近似した平面の傾斜角度を求めた場合に、各位置の微小領域の総面積に対する、傾斜角度が30°以上となる微小領域の総面積の比率が30%以上となるように、凹凸形状が制御されている。このため、各小型光源から光学シートに入射した光の反射、具体的には、光学シート内での多重反射や、光源が載置された反射シートと光学シートとの間での多重反射等が促進される。その結果、LED等の小型光源が複数配置された直下型バックライトにおいて光源と光学シートとの間の距離が小さくなったとしても、発光面における各小型光源と光源間領域との間に輝度ムラが生じることを十分に抑制することができる。
・・・中略・・・
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の実施形態に係る光学シート、バックライトユニット、液晶表示装置及び情報機器について、図面を参照しながら説明する。尚、本発明の範囲は、以下の実施の形態に限定されず、本発明の技術的思想の範囲内で任意に変更可能である。
【0029】
図1は、本実施形態に係る液晶表示装置の断面図の一例であり、図2は、本実施形態に係るバックライトユニットの断面図の一例であり、図3は、本実施形態に係る光学シートの断面図の一例である。
【0030】
図1に示すように、液晶表示装置50は、液晶表示パネル5と、液晶表示パネル5の下面に貼付された第1偏光板6と、液晶表示パネル5の上面に貼付された第2偏光板7と、液晶表示パネル5の背面側に第1偏光板6を介して設けられたバックライトユニット40とを備えている。液晶表示パネル5は、互いに対向するように設けられたTFT基板1及びCF基板2と、TFT基板1とCF基板2との間に設けられた液晶層3と、TFT基板1とCF基板2との間に液晶層3を封入するために枠状に設けられたシール材(図示省略)とを備える。
・・・中略・・・
【0035】
バックライトユニット40は、図2に示すように、反射シート41と、反射シート41上に2次元状に配置された複数の小型光源42と、複数の小型光源42の上側に設けられた光学シート43と、光学シート43の上側に順に設けられた第1プリズムシート44及び第2プリズムシート45と、第2プリズムシート45の上側に設けられた偏光シート46とを備える。
・・・中略・・・
【0038】
光学シート43は、図3に示すように、拡散層21と、拡散層21上に形成された凹凸形状層22とを有する。拡散層21は、例えばポリカーボネートを母材として構成され、母材100質量%に対して、例えば0.5~4質量%程度の拡散剤21aを含有する。拡散剤21aとしては公知の材料を適宜用いることができる。凹凸形状層22は、例えばクリアポリカーボネートから構成され、凹凸形状層22の表面には、例えば逆ピラミッド形状の凹部22aが2次元配列されている。凹部22aの頂角θは、例えば90°であり、凹部22aの配列ピッチpは、例えば100μm程度である。光学シート43は、拡散剤を含有し、表面に凹凸形状を持つ1層構造で構成してもよい。このように、光学シート43は、図3の形態に限られない。例えば、光学シートを、凹凸形状を設けた一層構造としてもよいし、凹凸形状を備えた層を含む3層以上の構造としてもよい。また、凹凸形状層は、上述のとおり逆ピラミッド形状の凹部を二次元配列するものに限られず、ランダムに凹凸を配置するようにしてもよい。
・・・中略・・・
【0049】
また、本実施形態においては、光学シート43の上面(第1プリズムシート44側の表面)に凹凸形状(凹部22a)を設けたが、凹凸形状は光学シート43の少なくとも一方の表面に設けられていればよい。すなわち、光学シート43の下面(小型光源42側の表面)又は両面(上面及び下面)に凹凸形状を設けてもよい。
・・・中略・・・
【0052】
凸部の形状としては、例えば、半球(上半分)、円錐、三角錐、四角錐、六角錐等を挙げることができ、凹部の形状としては、例えば、半球(下半分)、逆円錐、逆三角錐、逆四角錐、逆六角錐等を挙げることができる。
・・・中略・・・
【0054】
光学シート43の表面に複数の凸部や凹部が規則的に2次元配列される場合、複数の凸部や凹部は、光学シート43の表面全体に隙間無く設けられていてもよいが、一定の間隔(ピッチ)で設けられていてもよいし、ランダムな間隔で設けられていてもよい。」
(4) 「【0079】
(実施例及び比較例)
以下、実施例及び比較例に係る光学シートについて、図面を参照しながら説明する。
・・・中略・・・
【0081】
また、各例における輝度均一性の評価は、光源として用いるLEDの出光特性やLEDの配置などの影響を考慮し、普遍的な評価とするために、次のような手順で行う。まず、LEDを1つ点灯させた上で、当該LEDから一定の距離をあけて、評価対象の光学シートを配置し、その上にプリズムシートを2枚、互いの稜線が直交するように積層配置し、その上に偏光シート(例えば3M社製のDBEFシリーズ)を配置した状態において当該偏光シートの上側からLED像の2次元平面輝度を測定し、LED中心からの距離による輝度変化を求める。図9は、前述の2次元輝度測定にHI-LAND社製・RISACOLORを使用して得られたLED像の2次元輝度分布を示す。次に、LED中心点を通る直線(図9ではx軸方向に延びる白い線)に沿って、輝度変化曲線を抽出し、図10に示すように、横軸にLED中心からの距離、縦軸に最大輝度を1とする相対輝度をとったグラフで表し、相対輝度が0.5となるときの横軸方向のグラフ幅をFWHM(Full Width at Half Maximum)とし、相対輝度が0.1となるときの横軸方向のグラフ幅をFW0.1Mとして求める。FWHMが大きいほど、光の広がりが大きく、輝度均一性が向上しているので、FWHMを用いて、各例における輝度均一性の評価を行う。
・・・中略・・・
【0083】
(比較例1)
比較例1の光学シートの作製方法は次の通りである。まず、ベース樹脂100質量%に対して拡散剤を5質量%含んだ樹脂を押出成形によって製膜した後、2本の金属ロールのうち片方のロールとして、表面にランダムなマット形状(Ra(算術平均粗さ):4.5μm)を持ったロールを使用し、当該ロールを線圧30kg/cmで樹脂膜に圧着して当該ロールの表面形状を転写し、表面に凹凸形状を持つ単層の光学シート(厚み:1mm)を作製した。
・・・中略・・・
【0101】
(その他の実施形態)
図3に示す光学シート43は、拡散層21と、拡散層21上に形成された凹凸形状層22とを有していたが、これに代えて、図21に示すように、光学シート43を凹凸形状層22のみから構成してもよい。ここで、光学シート43における凹部22aが形成されていない面は、鏡面であってもよいし、或いは、マット面であってもよい。尚、図21において、図3に示す光学シート43と同じ構成要素には同じ符号を付している。
【0102】
図21に示す光学シート43(凹凸形状層22)においては、マトリックス樹脂100質量部に対して、拡散剤を0質量部以上4質量部以下、より好ましくは、0質量部以上2質量部以下、特に好ましくは、0質量部以上1質量部以下含有させてもよい。
【0103】
マトリックス樹脂は、好ましくは芳香族ポリカーボネート樹脂であり、一例として、二価フェノールとカーボネート前駆体とを界面重合法又は溶融法で反応させて得られるものであってもよい。
・・・中略・・・
【0109】
拡散剤は、好ましくはシリコーン系拡散剤であり、例えば、シロキサン結合を有し且つ平均粒子径が0.8μm以上12μm以下の球状微粒子であってもよい。拡散剤の平均粒子径が0.8μm未満である場合、拡散剤の添加量を変動させても十分な光拡散性を得ることが難しくなる傾向にある。また、平均粒子径が12μmよりも大きい場合、拡散剤の添加量を変動させても、良好な光拡散性を得ることが難しくなる傾向にある。一般的に用いることのできるシリコーン系拡散微粒子としては、シリカ、シリコーンレジン、シリコーンゴム、球状のシリコーンゴムパウダーの表面をシリコーンレジンで被覆した球状粉末であるシリコーン複合パウダー、及び、それらの組み合わせ等が挙げられ、特にシリコーン複合パウダーが好ましい。
【0110】
(その他の実施例)
実施例6~20の光学シートの作製方法は、次の通りである。まず、芳香族ポリカーボネート樹脂100質量部に対して、拡散剤としてシリコーン複合パウダー(平均粒子径:2.0μm)を、図22に示す組成になるように添加し、押出機で溶融混錬してT-ダイより押し出す。その後、2本の金属ロールのうち一方のロールとして、表面に高さ50μm、ピッチ100μm、頂角90°の正四角錘のピラミッド形状を持ったロールを使用し、他方のロールとして、実施例6~18では、表面にランダムなマット形状(表面粗さRa=4μm)を持ったロールを、実施例19、20では、表面に鏡面形状(表面粗さRa=0.01μm)を持ったロールを使用し、T-ダイより押し出された溶融樹脂を当該2つのロールで挟んで形状転写しながら冷却する。これにより、1つの表面に深さ45μmの凹(逆)ピラミッド形状を持ち、残りの表面に、図22に示す表面粗さRaのマット面又は鏡面を有し、図22に示す厚みを持つ単層の光学シートを作成した。
【0111】
このように作製された実施例6~20の光学シートのそれぞれの「表面形状(30°以上の傾斜角度を持つ面積の比率を含む)と表面粗さ」、「FWHM」、「FW0.1M」、「波長400nm~700nmの分光光線の透過率及び反射率の平均値」の各値を図22に示す。ここで、「FWHM」、「FW0.1M」、「波長400nm~700nmの分光光線の透過率及び反射率の平均値」は、光学シートのマット面又は鏡面側を入光側、逆ピラミッド面側を出光側として測定したものである。
【0112】
図22に示すように、実施例6~20の光学シートによると、拡散剤含有量が減少するほど、「FWHM」、「FW0.1M」がより大きくなり、拡散性能が向上する。具体的には、マトリックス樹脂100質量部に対して、拡散剤を0質量部以上4質量部以下含有させることが好ましく、0質量部以上2質量部以下含有させることがより好ましく、0質量部以上1質量部以下含有させることが特に好ましい。」
(5) 「【図1】
[図:0001429744000001.jpg]
【図2】
[図:0001429744000002.jpg]
【図3】
[図:0001429744000003.jpg]
・・・中略・・・
【図9】
[図:0001429744000004.jpg]
【図10】
[図:0001429744000005.jpg]
・・・中略・・・
【図21】
[図:0001429744000006.jpg]
【図22】
[図:0001429744000007.jpg]
」(当合議体中:便宜上、90度時計回りに回転して摘記した。)
2 引用文献3に記載された発明(引用発明)
上記1(4)によれば、引用文献3の【0110】~【0111】及び【図22】には、【0081】に記載された手順で輝度均一性(FWHM、FW0.1M等)の評価が行われた、実施例19に係る「光学シート」の発明として、次に示す発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。なお、角付き括弧内の数字は、引用発明の認定根拠とした引用文献3の段落番号を参考までに表記したものである。
「 芳香族ポリカーボネート樹脂100質量部に対して、拡散剤としてシリコーン複合パウダー(平均粒子径:2.0μm)を0.8質量部添加し、押出機で溶融混錬してT-ダイより押し出し、その後、2本の金属ロールのうち一方のロールとして、表面に高さ50μm、ピッチ100μm、頂角90°の正四角錘のピラミッド形状を持ったロールを使用し、他方のロールとして、表面に鏡面形状(表面粗さRa=0.01μm)を持ったロールを使用し、T-ダイより押し出された溶融樹脂を当該2つのロールで挟んで形状転写しながら冷却し、1つの表面に深さ45μmの凹(逆)ピラミッド形状を持ち、残りの表面に、表面粗さRaが0.02μmの鏡面を有し、210μmの厚みを持ち、(【0110】、【図22】)
FWHM、FW0.1M、波長400nm~700nmの分光光線の透過率及び反射率の平均値」の各値が、それぞれ4.53、11.19、59.1%及び40.3%であり、これらのうちFWHM、FW0.1Mは下記測定方法によって測定したものであり、
ここで、FWHM、FW0.1M、波長400nm~700nmの分光光線の透過率及び反射率の平均値は、光学シートの鏡面側を入光側、逆ピラミッド面側を出光側として測定したものである、(【0111】)
単層の光学シート。
(測定方法)
LEDを1つ点灯させた上で、当該LEDから一定の距離をあけて、評価対象の光学シートを配置し、その上にプリズムシートを2枚、互いの稜線が直交するように積層配置し、その上に偏光シートを配置した状態において当該偏光シートの上側からLED像の2次元平面輝度を測定し、LED中心からの距離による輝度変化を求め、次に、LED中心点を通る直線に沿って、輝度変化曲線を抽出し、横軸にLED中心からの距離、縦軸に最大輝度を1とする相対輝度をとったグラフで表し、相対輝度が0.5となるときの横軸方向のグラフ幅をFWHM(Full Width at Half Maximum)とし、相対輝度が0.1となるときの横軸方向のグラフ幅をFW0.1Mとして求める。
(【0081】)」
3 対比及び判断
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比すると、以下のとおりである。
ア 光出射面となる第1面と、光入射面となる第2面とを有する光拡散シート
(ア) 引用発明の「光学シート」の「FWHM」、「FW0.1M」、「波長400nm~700nmの分光光線の透過率及び反射率の平均値」は、「光学シートの鏡面側を入光側、逆ピラミッド面側を出光側として測定したものである」。
上記構成によれば、引用発明の「逆ピラミッド面」は「出光側」の面であるから、本願発明1の「光出射面となる第1面」に相当し、引用発明の「鏡面」は、「入光側」の面であるから、本願発明1の「光入射面となる第2面」に相当する。
したがって、引用発明の「光学シート」は、本願発明1の「光出射面となる第1面と、光入射面となる第2面とを有する」という要件を満たす。
(イ) さらに、引用発明の「光学シート」は、「押出機で溶融混錬してT-ダイより押し出し、その後、2本の金属ロールのうち一方のロールとして、表面に高さ50μm、ピッチ100μm、頂角90°の正四角錘のピラミッド形状を持ったロールを使用し」て「形状転写」したものであるから、引用発明の「光学シート」における「逆ピラミッド面」は、上記「一方のロール」の正四角錐のピラミッド形状が形状転写されたものである。加えて、上記「逆ピラミッド面」は「出光側」の面であることから、「光学シート」に入射した光が、上記「逆ミラミッド面」(第1面)において多重反射、すなわち、拡散されることは技術的にみて明らかである。
そうすると、本願発明1の「光拡散シート」と引用発明の「光学シート」とは、「光拡散シート」である点で共通する。
(ウ) 上記(ア)~(イ)によれば、本願発明1と引用発明とは、「光出射面となる第1面と、光入射面となる第2面とを有する光拡散シート」である点で一致する。
イ 略逆多角錐状の複数の凹部が設けられた第1面
引用発明の「逆ピラミッド面」の形状は、「一方のロールとして、表面に高さ50μm、ピッチ100μm、頂角90°の正四角錘のピラミッド形状を持ったロールを使用し」て、「形状転写し」て形成されたものであるから、引用発明の「逆ピラミッド面」は、本願発明1において「略逆多角錐状の複数の凹部が設けられ」とされる、「第1面」に相当する。
ウ 算術平均粗さが0.1μm以下の平坦面である第2面
引用発明の「鏡面」は、「表面粗さが0.02μm」であるから、本願発明1において「算術平均粗さが0.1μm以下の平坦面であり」とされる、「第2面」に相当する。
(2)一致点及び相違点
ア 一致点
上記(1)の対比結果によれば、本願発明1と引用発明とは、次の点で一致する。
「 光出射面となる第1面と、光入射面となる第2面とを有する光拡散シートであって、
前記第1面には、略逆多角錐状の複数の凹部が設けられ、
前記第2面は、算術平均粗さが0.1μm以下の平坦面である、
光拡散シート。」
イ 相違点
また、本願発明1と引用発明とは、次の点で相違する。
(相違点1)
本願発明1は、拡散剤を含有しないのに対し、引用発明は、「芳香族ポリカーボネート樹脂100質量部に対して、拡散剤を」「0.8質量部」含有する点。
(相違点2)
内部ヘイズが、本願発明1は、「1.5%以下である」のに対し、引用発明では不明である点。
(3)判断
技術的な関連性に鑑み、上記相違点1及び2をまとめて検討する。
引用発明は「単層の光学シート」の発明であるところ、上記1(4)によれば、引用文献3の【0112】には、「図22に示すように、実施例6~20の光学シートによると、拡散剤含有量が減少するほど、「FWHM」、「FW0.1M」がより大きくなり、拡散性能が向上する。」と記載されている。(下線は、当合議体が強調のために付したものである。)
そして、上記記載は、「単層の光学シート」であって、フィルム厚み、30°以上の傾斜角度を持つ面積の比率(%)、反対面の表面粗さ(Ra)が略同等である「実施例6~20の光学シート」において、マトリックス樹脂100質量部に対する拡散剤含有量が減少するほど、「FWHM」及び「FW0.1M」が大きくなり、特に、拡散剤含有量が「0」である実施例6の「FWHM」及び「FW0.1M」が最大であるという評価結果とも整合する。
そうしてみると、引用発明の「光学シート」において、輝度均一性(拡散性能)をさらに向上させるために、拡散剤を含有させない構成、すなわち、相違点1に係る本願発明1の構成とすることは当業者が容易に想到し得たことである。
そして、本願発明1における「内部ヘイズ」が、全ヘイズのうち、表面形状(具体的には第1面21aの凹部22)に起因する表面ヘイズを除いたものを意味すること(本件明細書の【0037】参照)に照らせば、上記のとおり、引用発明の「光学シート」を「拡散剤を含有させない」構成を採用した場合、光学シート内部に光を拡散させるものはほぼ存在しなくなることから、改良後の引用発明が、「光学シート」の内部ヘイズが1.5%以下である構成、即ち、相違点2に係る本願発明1の構成を具備したものとなることは明らかである。
(4)審判請求人の主張
ア 主張の内容
審判請求人は、令和6年10月10日付け審判請求書(4~5頁)において、概略、以下の点を主張する。
(ア)引用文献3の段落0112には、図22を参照して「実施例6~20の光学シートについて、拡散剤を0質量部以上1質量部以下含有させることが特に好ましい」と記載されているが、「0質量部以上1質量部以下」の範囲の中でも「0質量部」とすることを示唆する記載は何等ない点。
(イ)引用文献3において拡散剤を含有しない唯一の実施例である実施例6では、光入射面となる第2面の算術平均粗さを3.5μmとすることによって、平坦な光入射面を有する実施例19-20よりも優れた拡散性能が得られていること、また、「反対面の表面粗さ(Ra)」以外の条件(「拡散剤含有量」、「30°以上の傾斜角度を持つ面積の比率」、「フィルム厚み」)が同じである実施例17と実施例19との対比及び実施例18と実施例20との対比から、光入射面となる第2面の算術平均粗さが3μmを超える実施例17及び18の方が、平坦な光入射面を有する実施例19-20よりも優れた拡散性能を有していることから、上記評価結果に接した当業者は、「拡散剤含有量」が「0質量部以上1質量部以下」の範囲では、拡散剤含有量をさらに減少させる場合でも、光入射面となる第2面の算術平均粗さを3μm超に設定する方が良いと判断する点。
イ 判断
上記主張について検討する。
(ア)上記主張(ア)について
引用文献3の【0112】の記載(特に下線部)及び上記(3)で説示した評価結果(特に下線部)に照らせば、引用文献3の【0112】において、「0質量部以上1質量部以下含有させることが特に好ましい。」と記載されるにとどまり、当該数値範囲のうちさらに「0質量部」が好ましいという明示の記載がなくても、当業者は、引用発明において、拡散剤を含有させない構成を採用する動機づけは十分にあるといえる。
したがって、上記主張は採用すべき理由がない。
(イ)上記主張(イ)について
引用文献3の【図22】における実施例6と実施例19-20とを比較すると、「拡散剤含有量」を低減させる以外に、「反対面の表面粗さ(Ra)」を大きくすることによって、拡散性能を向上させられると認められる。
しかしながら、引用発明の光学シートにおいて、拡散性能を向上させるという課題に直面した当業者にとって、拡散剤含有量を低減させる方法と反対面の表面粗さ(Ra)を大きくする方法とのいずれを採るかは、適宜選択し得る事項に過ぎない。
以上によれば、審判請求人の主張はいずれも採用すべき理由がない。
4 小括
本願発明1は、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
第5 むすび
以上のとおり、本願発明1は、引用文献3に記載された発明に基づいて、本件出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本件出願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
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2024-016294