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特許拒絶査定不服審判

2025-005874

トルクリミッタ

審判番号
2025-005874
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2023-121402
請求日
2025年04月17日
審決日
2026年06月29日
公報発行日
2026年09月25日
結論
請求不成立
当事者
  • 【請求人】株式会社オリジン
  • 【請求人代理人】弁理士法人愛宕綜合特許事務所
審判長/審判官
  • 審判長 石井 孝明
  • 審判官 岩瀬 昌治
  • 審判官 小川 恭司
分類
P18 .121-Z (F16D) / P18 .572-Z (F16D)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第17条の2第5項、特許法第29条第2項、特許法第17条の2第5項第1号
データ出所
審決公報(XML)

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特願2023-121402「トルクリミッタ」拒絶査定不服審判事件〔令和 7年 2月 6日出願公開、特開2025- 18022〕について、次のとおり審決する。

結論

結 論 本件審判の請求は、成り立たない。

理由

理 由 理 由 第1 手続の経緯 本願は、令和5年7月26日の出願であって、その手続の経緯は概ね以下のとおりである。 令和6年 8月 7日付け:拒絶理由通知書 令和6年10月11日 :意見書、手続補正書の提出 令和7年 1月 6日付け:拒絶査定 令和7年 4月17日 :審判請求書、手続補正書の提出 第2 令和7年4月17日にされた手続補正についての補正の却下の決定 [補正の却下の決定の結論] 令和7年4月17日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。 [理由] 1 本件補正の内容 (1)本件補正後の特許請求の範囲の記載 本件補正により、特許請求の範囲の記載は、次のとおり補正された。(下線は、令和7年4月17日の手続補正書に記載されたとおり。) 「 【請求項1】 固定のハウジングと、前記ハウジングに収容される、筒状の外輪と、前記外輪内で共通の回転軸を中心として回転可能な片側部材及び他側部材とを備え、 前記ハウジングと前記外輪との間には、前記外輪が前記ハウジングに対して回転する際に前記外輪に制動トルクを付与する制動トルク付与手段が配設されており、 前記片側部材は単一部材により構成されて片側係合片を有すると共に、前記他側部材は単一部材により構成されて他側係合片を有し、 前記外輪は断面円形の内周面を有し、前記外輪の内側には、前記片側部材の前記片側係合片と、前記他側部材の前記他側係合片とが組み合わせて配置されていて、 前記他側係合片の外面には前記外輪の内周面と対向するカム面が形成され、前記カム面の周方向の端部の断面形状は径方向外側に向かって周方向に傾斜して直線状に延びており、前記カム面と前記外輪の内周面との間には、転動体が配置されており、 前記片側部材が正逆いずれの方向に回転しても、前記外輪は前記制動トルクによって保持されたまま、前記片側係合片が前記他側係合片と共に前記転動体を押して、前記片側部材から前記他側部材への回転は無負荷乃至軽負荷で伝達される一方、前記他側部材が正逆いずれの方向に回転しても、前記転動体が前記外輪の内周面と前記カム面の周方向の端部との間で噛み込み、前記他側部材から前記片側部材への回転は前記制動トルクに抗して伝達されうる、トルクリミッタ。 【請求項2】 前記カム面は凹状であって、前記カム面の周方向両側に位置する2つの前記端部の断面形状は共に径方向外側に向かって周方向外側に傾斜して直線状に延びている、トルクリミッタ。 【請求項3】 周方向両側に位置する2つの前記端部に沿う2つの直線の内角は165乃至175度である、請求項2に記載のトルクリミッタ。 【請求項4】 前記制動トルク付与手段は前記外輪の外周面に装着されたコイルばねであって、前記コイルばねは線材が螺旋状に巻回された巻回部と前記巻回部の軸方向両端において夫々前記線材が径方向外方に屈曲された2つのフック部とを備え、 前記コイルばねが自由状態にあるときの前記巻回部の内径は円筒形状である前記外輪の外径よりも小さく、 前記2つのフック部の各々は周方向の異なる位置に配置され、前記2つのフック部は前記ハウジングの内周面に形成されたフック溝に挿入されて前記コイルばねは前記ハウジングに対して回転不能であり、前記外輪が前記ハウジングに対して回転しようとすると、前記2つのフック部のいずれかが前記フック溝にて前記巻回部が拡径する方向に相対的に押される、請求項1に記載のトルクリミッタ。 【請求項5】 前記ハウジング内には前記転動体に制動トルクを付与する補助制動トルク付与手段が配設されている、請求項1に記載のトルクリミッタ。 【請求項6】 前記補助制動トルク付与手段は前記転動体を軸方向に付勢するウェーブワッシャーである、請求項5に記載のトルクリミッタ。」 (2)本件補正前の特許請求の範囲の記載 本件補正前の令和6年10月11日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の記載は次のとおりである。 「【請求項1】 固定のハウジングと、前記ハウジングに収容される、筒状の外輪と、前記外輪内で共通の回転軸を中心として回転可能な片側部材及び他側部材とを備え、 前記ハウジングと前記外輪との間には、前記外輪が前記ハウジングに対して回転する際に前記外輪に制動トルクを付与する制動トルク付与手段が配設されており、 前記外輪は断面円形の内周面を有し、前記外輪の内側には、前記片側部材に付設された片側係合片と、前記他側部材に付設された他側係合片とが組み合わせて配置されていて、 前記他側係合片の外面には前記外輪の内周面と対向するカム面が形成され、前記カム面の周方向の端部の断面形状は径方向外側に向かって周方向に傾斜して直線状に延びており、前記カム面と前記外輪の内周面との間には、転動体が配置されており、 前記片側部材が回転すると、前記外輪は前記制動トルクによって保持されたまま、前記片側係合片が前記他側係合片と共に前記転動体を押して、前記片側部材から前記他側部材への回転は無負荷乃至軽負荷で伝達される一方、前記他側部材が回転すると、前記転動体が前記外輪の内周面と前記カム面の周方向の端部との間で噛み込み、前記他側部材から前記片側部材への回転は前記制動トルクに抗して伝達されうる、トルクリミッタ。 【請求項2】 前記カム面は凹状であって、前記カム面の周方向両側に位置する2つの前記端部の断面形状は共に径方向外側に向かって周方向外側に傾斜して直線状に延びている、請求項1に記載のトルクリミッタ。 【請求項3】 周方向両側に位置する2つの前記端部に沿う2つの直線の内角は165乃至175度である、請求項2に記載のトルクリミッタ。 【請求項4】 前記制動トルク付与手段は前記外輪の外周面に装着されたコイルばねであって、前記コイルばねは線材が螺旋状に巻回された巻回部と前記巻回部の軸方向両端において夫々前記線材が径方向外方に屈曲された2つのフック部とを備え、 前記コイルばねが自由状態にあるときの前記巻回部の内径は円筒形状である前記外輪の外径よりも小さく、 前記2つのフック部の各々は周方向の異なる位置に配置され、前記2つのフック部は前記ハウジングの内周面に形成されたフック溝に挿入されて前記コイルばねは前記ハウジングに対して回転不能であり、前記外輪が前記ハウジングに対して回転しようとすると、前記2つのフック部のいずれかが前記フック溝にて前記巻回部が拡径する方向に相対的に押される、請求項1に記載のトルクリミッタ。 【請求項5】 前記ハウジング内には前記転動体に制動トルクを付与する補助制動トルク付与手段が配設されている、請求項1に記載のトルクリミッタ。 【請求項6】 前記補助制動トルク付与手段は前記転動体を軸方向に付勢するウェーブワッシャーである、請求項5に記載のトルクリミッタ。」 2 本件補正の適否 上記1(1)及び(2)によれば、本件補正前は請求項2が請求項1の従属請求項であったが、本件補正後は請求項2が独立請求項となった。 そのため、本件補正における請求項2に係る補正に着目して、以下本件補正の適否について検討する。 上記1(2)に示すとおり、本件補正前の特許請求の範囲における独立請求項は請求項1のみであるところ、この本件補正前の請求項1に記載した発明特定事項と本件補正後の請求項2に記載した発明特定事項とを比較すると、本件補正後の請求項2からは、本件補正前の請求項1に記載した発明特定事項の全てが削除されているのであるから、本件補正後の請求項2は、本件補正前の請求項1に記載した発明特定事項を限定したものではないことは明らかである。 そして、前述のとおり、本件補正前の特許請求の範囲における独立請求項は請求項1のみであったから、この請求項1を引用する本件補正前の請求項2~6に記載した発明特定事項と比較しても、本件補正後の請求項2は、本件補正前の請求項2~6に記載した発明特定事項を限定したものではないことも明らかである。 以上のとおりであるから、本件補正における請求項2に係る補正は、特許法17条の2第5項2号の特許請求の範囲の減縮を目的としたものに該当しない。 また、本件補正後の請求項2とする補正は、特許法第17条の2第5項第1号に規定する請求項の削除、同項第3号に規定する誤記の訂正、及び、同項第4号に規定する明りょうでない記載の釈明のいずれかを目的としたものに該当しないことも明らかである。 以上のとおりであるから、上記請求項2に係る補正以外の補正について検討するまでもなく、本件補正は、特許法第17条の2第5項各号に掲げる目的に該当しない。 3 本件補正についてのむすび よって、本件補正は、特許法第17条の2第5項の規定に違反するものであるから、同法第159条第1項において読み替えて準用する同用第53条第1項の規定により却下すべきものである。 よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。 第3 本願発明について 1 本願発明 本件補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1~6に係る発明(以下、請求項1に係る発明は「本願発明1」という。)は、令和6年10月11日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1~6に記載された事項により特定される、前記第2の1(2)に記載のとおりである。 2 原査定の拒絶の理由 原査定の拒絶の理由の1つは、概ね、次のとおりである。 この出願の請求項1~3に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献3に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 引用文献3:特開2013-204622号公報 3 引用文献3の記載事項 (1)原査定の拒絶の理由で引用された上記引用文献3には、図面とともに、次の記載がある。 「【請求項1】 一定間隔で外方向に延びる入力係合片を有する入力部材と、前記入力係合部と互いに入り込んで係合することができる出力係合片を備える出力部材と、円筒状内面と円筒状外面とを有する外輪部材と、互いに隣り合う前記入力係合片と前記入力係合片との間であって前記出力係合片の先端面と前記外輪部材の前記円筒状内面との間に位置する係合部材とを備え、前記出力部材に働く逆入力は前記係合部材が前記出力係合片の先端面と前記外輪部材の前記円筒状内面との間にロックされることにより前記入力部材に伝達されない逆入力遮断クラッチにおいて、 前記入力係合片の回転方向の側端面の内の一方は前記出力係合片と前記係合部材との双方に当接する構造になっており、前記入力係合片の回転方向の前記側端面の内の他方は前記出力係合片だけに当接し、前記係合部材には当接しない構造になっており、 前記入力係合片は、一方の回転方向に対しては前記出力係合片と前記係合部材との双方を直接押して入出力伝達を行い、他方の回転方向に対しては前記出力係合片を直接押すことができるが前記係合部材を直接押すことができず、前記係合部材が前記出力部材と前記外輪部材とをロックすることを特徴とする逆入力遮断クラッチ。 【請求項2】 請求項1において、 前記外輪部材の前記円筒状外面との間に設定トルクを生じる摩擦部材を前記外輪部材の前記円筒状外面に備え、 前記入力部材に働く前記入力が前記一方の回転方向であるときには前記入力が直接的に前記出力部材に伝達され、前記入力部材に働く前記入力が前記他方の回転方向であるときには前記係合部材によってロックされた前記出力部材と前記外輪部材とが回転して、前記入力が前記外輪部材を通して前記出力部材に伝達されることを特徴とする逆入力遮断クラッチ。」 「【0001】 本発明は、転動体の噛み込みを利用した逆入力遮断クラッチ及びこれを用いたトルクリミッタに関する。」 「【0018】 [実施形態1] 本発明に係る逆入力遮断クラッチの基本的な構造を有する実施形態1について図1~図3により説明する。これら図に示すようにこの逆入力遮断クラッチは主に、時計方向、反時計方向の入力を受ける入力部材1、図示しない負荷が結合される出力部材3、ローラ又はボールなどからなる係合部材5、及び円筒状内面7Aを有する外輪部材7などを組み合わせたものからなる。出力部材3、係合部材5及び外輪部材7は、前掲の特許文献2に記載されたものと基本的には同様であるので説明を簡単にする。 【0019】 この実施形態1の入力部材1は、基本的には前掲の特許文献2に記載されたものと同様であるが、図1~図3に示すように各入力係合片1Aが左右非対称である構造であることが大きな特徴である。不図示の入力係合部から一定間隔で外輪部材7の方向(放射外方向)に延びる5個の入力係合片1Aを備える。各入力係合片1Aは、入力によって時計方向(矢印X方向)に回転するときには出力部材3の出力係合片3Bと係合部材5との両者に当接する構造になっている。他方、入力係合片1Aは、入力によって反時計方向(矢印Y方向)に回転するときには出力部材3だけに当接する構造になっている。」 「【0023】 この実施形態1では、出力軸部3Aの中心点Zを通って紙面の表裏方向に延びる不図示の直線の方向を軸線方向と言う。図1~図3に示す入力部材1、出力部材3、外輪部材7は軸線方向に適当な長さを有する。また、係合部材5がローラのときには軸線方向に適当な長さを有する小さい円柱状のものからなる。入力部材1の前記入力係合部は不図示のモータの回転軸などに結合された入力軸に固定される。出力部材3は不図示の機器などの可動部材である負荷に結合される。外輪部材7内で入力部材1が安定に回転動作を行うように、入力係合片1Aの最外側面と外輪部材7の円筒状内面7Aとの間には微小な間隙があるのが好ましい。入力係合片1A、出力係合片3B及び係合部材5はそれぞれ互いに合同である。」 「【0024】 この実施形態1では入力係合片1A、出力係合片3B及び係合部材5はそれぞれ5個であるが、それぞれ3個以上であれば逆入力遮断クラッチとして動作する。出力係合片3Bの先端面3Cは緩やかな湾曲又はV字状、あるいは平坦になっており、係合部材5を支持する支承面を形成する。係合部材5が出力係合片3Bの先端面3Cのほぼ中央に位置するときには、係合部材5は出力部材3と外輪部材7とをロックしないが、係合部材5が出力係合片3Bの先端面3Cのいずれかの端側に偏ったときに、出力部材3の先端面3Cと外輪部材7の円筒状内面7Aとの間に食い込んでこれらをロックする。 【0025】 なお、外輪部材7は円筒状内面7Aを有するリング状のものであり、この逆入力遮断クラッチが動作するときには、係合部材5が外輪部材7の円筒状内面7Aに接触しながら回転方向に動くので、円筒状内面7Aは滑らかであることが好ましい。入力部材1、出力部材3の出力軸部3Aと出力係合片3B、係合部材5は外輪部材7に内蔵される。図示しないが、外輪部材7から入力部材1の入力軸及び出力部材3の出力軸が軸線方向を外部まで延びる。外輪部材7は必要に応じて不図示のハウジング部材に納められる。」 「【0032】 [実施形態2] 本発明に係る逆入力遮断クラッチの実施形態2について図4と図5とにより説明する。実施形態2に係る逆入力遮断クラッチは、前述した実施形態1に係る逆入力遮断クラッチに摩擦部材9及びハウジング部材11を付加したところが異なり、入力が矢印X方向の場合には実施形態1と同様にして入力が出力部材3に直接伝達され、入力が矢印Y方向の場合には外輪部材7を通して出力部材3に伝達される。以下では、主にこの異なる点に関連する部分について説明する。 【0033】 実施形態2の摩擦部材9は、フック部9Aを両端に備えたスプリングコイルである。図4、図5では手前のフック部9Aだけを示している。摩擦部材9は外輪部材7の円筒状外面7Bに巻きつけられ、一対のフック部11Aはハウジング11の係止溝11Aに係止される。外輪部材7の回転する方向は前記スプリングコイルの巻方向とは反対方向、つまり前記スプリングコイルが緩む方向であり、外輪部材7は前記スプリングコイルの巻方向と同方向には回転しない。外輪部材7と摩擦部材9との間に予め決められた設定トルクを生じる。」 「【0035】 この実施形態2に係る逆入力遮断クラッチの基本的な動作について説明する。入力が矢印X方向の場合には、前述したように実施形態1と同様に各入力係合片1Aが出力部材3と係合部材5とに直接当接してこれらを押して回転し、入力が出力部材3に直接伝達される。このとき、外輪部材7と摩擦部材9との間には実質的に回転力がかからないので、外輪部材7が摩擦部材9に対して回転することはない。」 (2)上記(1)から、次のことがわかる。 ア 実施形態2に係る逆入力遮断クラッチは、前述した実施形態1に係る逆入力遮断クラッチに摩擦部材9及びハウジング部材11を付加したところが異なるだけであるから、実施形態2の構成については実施形態1に係る記載を参照すれば良く、また、請求項2の「前記外輪部材の前記円筒状外面との間に設定トルクを生じる摩擦部材を前記外輪部材の前記円筒状外面に備え」との記載に着目すると、請求項1を引用する請求項2の記載は、実施形態2の摩擦部材9に対応する構成を特定していること。(【0032】) イ 出力部材3が逆入力により反時計方向に回転し、係合部材5が出力係合片3Bの先端面3Cの端側に偏ったときに、出力部材3の先端面3Cと外輪部材7の円筒状内面7Aとの間に食い込んでこれらをロックし、前記逆入力が外輪部材7と摩擦部材9との間に予め決められた設定トルクを超えると、出力部材3から入力部材1へ回転が伝達されうること。(【0024】及び図4) (3)上記(1)及び(2)を踏まえ、実施形態2に着目すると、引用文献3には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 「ハウジング部材11と、一定間隔で外方向に延びる入力係合片1Bを有する入力部材1と、前記入力係合片1Bと互いに入り込んで係合することができる出力係合片3Bを備える出力部材3と、円筒状内面7Aと円筒状外面7Bとを有するリング状のものである外輪部材7と、互いに隣り合う前記入力係合片1Bと前記入力係合片1Bとの間であって前記出力係合片3Bの先端面3Cと前記外輪部材7の前記円筒状内面7Aとの間に位置する係合部材5とを備え、 前記入力部材1、前記出力部材3の出力軸部3Aと前記出力係合片3B、前記係合部材5は前記外輪部材7に内蔵され、 前記外輪部材7から前記入力部材1の入力軸及び前記出力部材3の前記出力軸部3Aが、前記出力軸部3Aの中心点Zを通る直線の方向である軸線方向を外部まで延び、 前記外輪部材7の前記円筒状外面7Bとの間に設定トルクを生じる摩擦部材9を前記外輪部材7の前記円筒状外面7Bに備え、前記摩擦部材9は、フック部9Aを両端に備えたスプリングコイルであり、前記外輪部材7の前記円筒状外面7Bに巻きつけられ、前記一対のフック部9Aは前記ハウジング11の係止溝11Aに係止され、前記外輪部材7と前記摩擦部材9との間に予め決められた設定トルクを生じ、 前記出力係合片3Bの前記先端面3Cは緩やかなV字状になっており、前記係合部材5を支持する支承面を形成し、 入力が時計方向の場合には、前記入力係合片1Aが前記出力部材3と前記係合部材5とに直接当接してこれらを押して回転し、入力が出力部材3に直接伝達され、前記外輪部材7と前記摩擦部材9との間には実質的に回転力がかからず、 前記出力部材3が逆入力により反時計方向に回転し、前記係合部材5が前記出力係合片3Bの前記先端面3Cの端側に偏ったときに、前記出力部材3の前記先端面3Cと前記外輪部材7の前記円筒状内面7Aとの間に食い込んでこれらをロックし、前記逆入力が前記外輪部材7と前記摩擦部材9との間に予め決められた設定トルクを超えると、前記出力部材3から前記入力部材1へ回転が伝達されうる、 逆入力遮断クラッチ。」 4 本願発明1と引用発明との対比 本願発明1と引用発明を対比する。 引用発明の「ハウジング11」、「一定間隔で外方向に延びる入力係合片1Bを有する入力部材1」、「前記入力係合部1Bと互いに入り込んで係合することができる出力係合片3Bを備える出力部材3」及び「円筒状内面7Aと円筒状外面7Bとを有するリング状のものである外輪部材7」は、それぞれ本願発明1の「ハウジング」、「片側部材」、「他側部材」及び「筒状の外輪」に相当するから、引用発明の「前記入力部材1、前記出力部材3の出力軸部3A」「は前記外輪部材7に内蔵され」「前記外輪部材7から前記入力部材1の入力軸及び前記出力部材3の前記出力軸が、前記出力軸部3Aの中心点Zを通る直線の方向である軸線方向を外部まで延び」ていることは、本願発明1の「前記外輪内で共通の回転軸を中心として回転可能な片側部材及び他側部材とを備え」ることに相当する。 引用発明の「フック部9Aを両端に備えたスプリングコイルであり、外輪部材7の円筒状外面7Bに巻きつけられ、前記一対のフック部9Aはハウジング11の係止溝11Aに係止され」「前記外輪部材7の前記円筒状外面7Bに備え」て「前記外輪部材7の前記円筒状外面7Bとの間に設定トルクを生じる」ことは、本願発明1の「前記ハウジングと前記外輪との間に」「配設されており」、「前記外輪が前記ハウジングに対して回転する際に前記外輪に制動トルクを付与する」ことに相当するから、引用発明の「摩擦部材9」は、本願発明1の「制動トルク付与手段」に相当する。 引用発明の「外輪部材7」は「リング状のものであ」り「円筒状内面7A」を「有する」ことは、本願発明1の「前記外輪は断面円形の内周面を有し」ていることに相当する。 引用発明の「入力係合片1B」及び「出力係合片3B」は、それぞれ本願発明1の「片側係合片」及び「他側係合片」に相当するから、引用発明の「一定間隔で外方向に延びる入力係合片1Bを有する」「前記入力部材1、前記出力部材3の」「出力係合片3B」「は前記外輪部材7に内蔵され」、「入力係合片1Bと」「出力係合片3B」が「互いに入り込んで係合することができる」ことは、本願発明1の「前記外輪の内側には、前記片側部材に付設された片側係合片と、前記他側部材に付設された他側係合片とが組み合わせて配置されてい」ることに相当する。 引用発明の「係合部材5」は、本願発明1の「転動体」に相当し、引用発明の「前記出力係合片3Bの先端面3C」は、本願発明1の「前記他側係合片の外面」に相当するから、引用発明の「前記出力係合片3Bの前記先端面3Cは緩やかなV字状になっており、前記係合部材5を支持する支承面を形成し」たことは、本願発明1の「前記他側係合片の外面には前記外輪の内周面と対向するカム面が形成され、前記カム面の周方向の端部の断面形状は径方向外側に向かって周方向に傾斜して直線状に延びており」ということに相当し、引用発明の「前記出力係合片3Bの先端面と前記外輪部材7の前記円筒状内面7Aとの間に」「係合部材5」が「位置する」ことは、本願発明1の「前記カム面と前記外輪の内周面との間には、転動体が配置されており」ということに相当する。 引用発明の「入力が時計方向の場合には、前記入力係合片1Aが前記出力部材3と前記係合部材5とに直接当接してこれらを押して回転し、入力が出力部材3に直接伝達され、前記外輪部材7と前記摩擦部材9との間には実質的に回転力がかからず」ということは、本願発明1の「前記片側部材が回転すると、前記外輪は前記制動トルクによって保持されたまま、前記片側係合片が前記他側係合片と共に前記転動体を押して、前記片側部材から前記他側部材への回転は無負荷乃至軽負荷で伝達される一方」に相当する。 引用発明の「前記出力部材3が逆入力により反時計方向に回転し、前記係合部材5が前記出力係合片3Bの前記先端面3Cの端側に偏ったときに、前記出力部材3の前記先端面3Cと前記外輪部材7の前記円筒状内面7Aとの間に食い込んでこれらをロックし、前記逆入力が前記外輪部材7と前記摩擦部材9との間に予め決められた設定トルクを超えると、前記出力部材3から前記入力部材1へ回転が伝達されうる」ことは、本願発明1の「前記他側部材が回転すると、前記転動体が前記外輪の内周面と前記カム面の周方向の端部との間で噛み込み、前記他側部材から前記片側部材への回転は前記制動トルクに抗して伝達されうる」ことに相当する。 引用発明の「逆入力クラッチ」は本願発明1の「トルクリミッタ」に相当する。 そうすると、本願発明1と引用発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。 【一致点】 「ハウジングと、筒状の外輪と、前記外輪内で共通の回転軸を中心として回転可能な片側部材及び他側部材とを備え、 前記ハウジングと前記外輪との間には、前記外輪が前記ハウジングに対して回転する際に前記外輪に制動トルクを付与する制動トルク付与手段が配設されており、 前記外輪は断面円形の内周面を有し、前記外輪の内側には、前記片側部材に付設された片側係合片と、前記他側部材に付設された他側係合片とが組み合わせて配置されていて、 前記他側係合片の外面には前記外輪の内周面と対向するカム面が形成され、前記カム面の周方向の端部の断面形状は径方向外側に向かって周方向に傾斜して直線状に延びており、前記カム面と前記外輪の内周面との間には、転動体が配置されており、 前記片側部材が回転すると、前記外輪は前記制動トルクによって保持されたまま、前記片側係合片が前記他側係合片と共に前記転動体を押して、前記片側部材から前記他側部材への回転は無負荷乃至軽負荷で伝達される一方、前記他側部材が回転すると、前記転動体が前記外輪の内周面と前記カム面の周方向の端部との間で噛み込み、前記他側部材から前記片側部材への回転は前記制動トルクに抗して伝達されうる、トルクリミッタ。」 【相違点1】 「ハウジング」について、本願発明1は「固定の」であるのに対し、引用発明は当該構成について特定されていない点。 【相違点2】 「筒状の外輪と、前記外輪内で共通の回転軸を中心として回転可能な片側部材及び他側部材」について、本願発明1は「前記ハウジングに収容される」のに対し、引用発明は当該構成について特定されていない点。 5 判断 上記相違点について判断する。 引用発明における「前記摩擦部材9は、フック部9Aを両端に備えたスプリングコイルであり、前記外輪部材7の前記円筒状外面7Bに巻きつけられ、前記一対のフック部9Aは前記ハウジング11の係止溝11Aに係止され」ているものであるところ、「ハウジング11」が何にも固定されていない状態では、「前記外輪部材7と前記摩擦部材9との間に予め決められた設定トルクを生じ」得ないから、引用発明の「ハウジング11」を何かに固定し、相違点1に係る本願発明1のように構成することは、当業者が引用発明を具体化するにあたり設計上適宜になし得たことであり、このようなことは当業者の通常の創作の発揮に過ぎない。 また、引用文献3には「外輪部材7は必要に応じて不図示のハウジング部材に納められる。」(【0025】)と記載されているから、「ハウジング部材11」を備えた引用発明において、「前記入力部材1、前記出力部材3の出力軸部3Aと前記出力係合片3B、前記係合部材5」が「内蔵され」た「外輪部材7」を「ハウジング部材11」に収容させて、相違点2に係る本願発明1のように構成することは、当業者が引用発明を具体化するにあたり設計上適宜になし得たことであり、このようなことは当業者の通常の創作の発揮に過ぎない。 そして、これらの相違点を総合的に勘案しても、本願発明1の奏する作用効果は、引用発明の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。 したがって、本願発明1は、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 第4 むすび 以上のとおり、本願発明1は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。

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2025-005874

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