特許拒絶査定不服審判
2024-015673
半導体熱源装置
- 審判番号
- 2024-015673
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2021-163809
- 請求日
- 2024年10月01日
- 審決日
- 2025年09月24日
- 公報発行日
- 2025年12月26日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】今井 直孝
- 審判長/審判官
- 審判長 梶尾 誠哉
- 審判官 綿引 隆
- 審判官 中野 浩昌
- 分類
- P18 .121-WZ (H02N)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2021-163809「半導体熱源装置」拒絶査定不服審判事件〔令和 5年 4月17日出願公開、特開2023- 54865〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、令和3年10月5日の出願であって、その手続の経緯の概要は以下のとおりである。
令和 5年10月20日付け:拒絶理由通知書
令和 6年 3月10日 :意見書の提出
同年 6月 4日付け:拒絶査定(以下、「原査定」という。)
同年10月 1日 :審判請求書の提出
令和 7年 4月23日付け:拒絶理由通知書(以下、この拒絶理由通知書で通知した拒絶理由を「当審拒絶理由」という。)
同年 7月13日 :意見書の提出
第2 本願発明
本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、願書に最初に添付した特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】
半導体(1)を、絶縁材(2)を介して熱電発電機 高温端(3)に固定し、起動用電源又は蓄電池(4)からの電力を高周波発振器(5)を用いて、半導体(1)を高周波数で作動させ発熱させ、その熱の一部を熱電発電機(6)により電力として回収し、その電力により高周波発振器(5)を用いて、半導体(1)を高周波数で作動させることにより発熱させ、熱源を得る半導体熱源装置。」
第3 当審拒絶理由の概要
本願発明に対する当審拒絶理由は、概略、本願発明は、以下の引用文献1に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。
引用文献1.特開2002-190687号公報
第4 引用文献の記載、引用発明等
1 引用文献1の記載
当審拒絶理由において引用した引用文献1には、以下の記載がある。
「【0002】
【従来の技術】コンピュータにおける演算素子や記憶素子などの電子機器は、最近では、益々高集積化され、それに伴い動作時の発熱量が増大し、冷却の必要性が従来に増した高くなってきている。例えばパーソナルコンピュータやサーバーなどで使用されているマイクロプロセッサー(MPU)の動作周波数が高くなってきており、そのために発熱量が増大し、誤動作を防止するために、より強力な冷却手段が必要になってきている。」
「【0013】
【発明の実施の形態】つぎに、図面を参照してこの発明を具体的に説明する。図1にこの発明に係る冷却装置の一例を原理的に示してあり、通電して動作することにより発熱する電子機器の一例である演算素子(CPU)1が、熱伝達手段に相当する熱拡散板2に熱授受可能に取り付けられている。・・・
【0015】したがってこの冷却・発電素子3には、蓄電池などの蓄電手段を含み、かつ外部から電力を導入することのできる電源部4が接続されている。そして、冷却・発電素子3とこの電源部4との間には、蓄電池から冷却・発電素子3に通電する状態と、冷却・発電素子3の起電力を蓄電池に充電する状態とに切り換えるこの発明の切換手段に相当するスイッチング機構5が設けられている。なお、電源部4は、前記演算素子1の電源となっている。
・・・
【0023】つぎに、この発明を携帯可能なノートブック型パソコンの演算素子を冷却する装置に適用した例を説明する。図2はその一例を模式的に示しており、マザーボート10およびキーボード(図示せず)などを備えた本体11に、液晶板を主体とするディスプレイ部12がヒンジ(図示せず)を介して回動自在に取り付けられている。
【0024】その本体11に収容されているマザーボート10の上面側には、通電して動作することにより発熱する電子機器、例えば演算素子1が装着されている。その演算素子1と図示しないキーボードとの間に、ヒートパイプを備えた熱伝達手段である熱拡散板2が配置されており、その熱拡散板2の中間部が、演算素子1の上面に熱授受可能に接触させられている。なお、この熱拡散板2と演算素子1との間にペースト状のサーマルジョイントなどの介在物を配置し、もしくは両者を熱伝導性の接着剤で固着することは任意である。
【0025】上記の熱拡散板2の一方の端部は、本体11の周辺部にまで延びて配置されており、その端部には、送風ファン(図示せず)を有するヒートシンク13が取り付けられている。また、熱拡散板2の他方の端部には、前述した冷却・発電素子3が熱授受可能に取り付けられている。具体的には、通電することにより熱を吸収しかつ加熱されることにより起電力を生じる面が、熱拡散板2に接触させられている。
・・・
【0028】そして、特には図示しないが、上記の演算素子1に通電して動作させ、また冷却・発電素子3に通電するとともにその起電力で充電する機能を備え、さらに外部から電力を導入できる電源部が備えられている。・・・
【0032】これに対して蓄電池によって上記のパソコンを動作させる場合、演算素子1に対しては蓄電池から通電されるが、冷却・発電素子3に対しては通電せずに、その起電力が蓄電池に供給される。すなわち、演算素子1に通電して動作させると、演算素子1が熱を発生し、その熱が熱拡散板2を介して冷却・発電素子3に伝達される。その冷却・発電素子3の他方の面がヒートパイプ6を介して冷却されているので、冷却・発電素子3では、熱拡散板2側の面とヒートパイプ6側の面との温度差に起因して起電力が生じる。
【0033】その結果、演算素子1で生じた熱の一部は、冷却・発電素子3によって電気エネルギーに変換され、その電力が蓄電池に供給されるので、演算素子1が冷却・発電素子3によって冷却される。なお、演算素子1で生じた熱の他の一部は、熱拡散板2を介してヒートシンク15に伝達され、ここから外部に放散させられ、したがって演算素子1は、間接的に強制空冷される。
【0034】したがってこの発明に係る冷却装置を使用したパソコンでは、外部の電力を使用している場合、および内蔵している蓄電池を使用している場合のいずれであっても、演算素子1などの電子機器が動作することにより生じた熱を、冷却・発電素子3によって吸収するので、単に空冷する以上の電子機器を冷却することができる。すなわち、演算素子1などの電子機器の冷却性能に優れているので、電子機器の容量や集積度さらには動作周波数を高くすることが可能になる。そして、特に、内蔵している蓄電池を使用する場合には、演算素子1で生じる熱の一部を電力として回収するので、電力の使用量がその分、削減され、蓄電池の使用継続時間が長くなる。言い換えれば、蓄電池を大型化する必要がなくなるため、パソコンの携帯性が良好になる。
【0035】
【発明の効果】以上説明したように、請求項1の発明によれば、外部から供給される電力を使用する場合、および蓄電手段の電力を使用する場合のいずれであっても、電子機器から熱を奪って電子機器を冷却することができ、特に蓄電手段の電力を使用する場合には、熱を電力に変換して回収するので、電力の消費を抑制することができ、携帯型の電子装置に好適な冷却装置とすることができる。」
2 引用発明及び引用文献1記載事項
(1)引用発明
上記1によれば、引用文献1には、以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているといえる。(括弧内の記載は、上記1の参照箇所を示す。)
「 マザーボート10及びキーボードなどを備えた本体11に、ディスプレイ部12がヒンジを介して回動自在に取り付けられており(【0023】)、
マザーボート10の上面側には、通電して動作することにより発熱する演算素子(CPU)1が装着されており(【0024】、【0013】)、
演算素子1とキーボードとの間に、ヒートパイプを備えた熱拡散板2が配置され、その熱拡散板2の中間部が、演算素子1の上面に熱授受可能に接触させられており(【0024】)、
熱拡散板2と演算素子1との間にペースト状のサーマルジョイントなどの介在物を配置し、もしくは両者を熱伝導性の接着剤で固着することは任意であり(【0024】)、
熱拡散板2の端部には、冷却・発電素子3が熱授受可能に取り付けられており(【0025】)、
演算素子1に通電して動作させ、また冷却・発電素子3に通電するとともにその起電力で充電する機能を備え、さらに外部から電力を導入できる、蓄電池を含む電源部4が備えられており(【0028】、【0015】)、
蓄電池によってパソコンを動作させる場合、演算素子1に通電して動作させると、演算素子1が熱を発生し、その熱が熱拡散板2を介して冷却・発電素子3に伝達され、冷却・発電素子3の他方の面がヒートパイプ6を介して冷却されているので、冷却・発電素子3では、熱拡散板2側の面とヒートパイプ6側の面との温度差に起因して起電力が生じ(【0032】)、
その結果、演算素子1で生じた熱の一部は、冷却・発電素子3によって電気エネルギーに変換され、その電力が蓄電池に供給され(【0033】)、
内蔵している蓄電池を使用する場合には、演算素子1で生じる熱の一部を電力として回収するので、電力の使用量がその分、削減され、蓄電池の使用継続時間が長くなり(【0034】)、
蓄電手段の電力を使用する場合には、熱を電力に変換して回収するので、電力の消費を抑制することができる(【0035】)、
ノートブック型パソコン(【0023】)。」
(2)引用文献1記載事項
また、上記1の【0002】及び【0034】によれば、引用文献1には、以下の事項(以下、「引用文献1記載事項」という。)が記載されているといえる。
「パーソナルコンピュータ(パソコン)で使用されているマイクロプロセッサー(MPU)や演算素子(CPU)の動作周波数は高く、そのために発熱量が増大していること。」
第5 対比・判断
1 本願発明と引用発明との対比
(1)「半導体(1)」について
本願明細書の【0008】の「パソコンのCPU等、高周波数で作動する半導体が発熱することが知られている。」との記載によれば、本願発明の「半導体(1)」は、「パソコンのCPU」を含むものである。
そうすると、引用発明の「ノートブック型パソコン」の「演算素子(CPU)1」は、本願発明の「半導体(1)」に相当する。
(2)「熱電発電機 高温端(3)」について
引用発明の「冷却・発電素子3」は、「熱拡散板2側の面とヒートパイプ6側の面との温度差に起因して起電力が生じ」るものであるところ、その態様は、熱によって電力を発生しているといえるから、本願発明の「熱電発電機」に相当する。
そして、引用発明では、「演算素子1が熱を発生し、その熱が熱拡散板2を介して冷却・発電素子3に伝達され」るから、「冷却・発電素子3」の「熱拡散板2側の面」は、加熱されて高温であり、「冷却・発電素子3」の「ヒートパイプ6側の面」は、冷却されて低温である。
そうすると、引用発明の「冷却・発電素子3」の「熱拡散板2側の面」は、本願発明の「熱電発電機 高温端(3)」に相当する。
また、引用発明は、「熱拡散板2の中間部が、演算素子1の上面に熱授受可能に接触させられており」、「熱拡散板2と演算素子1との間にペースト状のサーマルジョイントなどの介在物を配置し、もしくは両者を熱伝導性の接着剤で固着」され、「熱拡散板2の端部には、冷却・発電素子3が熱授受可能に取り付けられて」いるから、「演算素子(CPU)1」を「冷却・発電素子3」の「熱拡散板2側の面」に固定しているということができる。
(3)「起動用電源又は蓄電池(4)」について
引用発明の「蓄電池」は、本願発明の「蓄電池(4)」に相当する。
(4)「高周波発信器(5)」及び「半導体(1)を高周波数で作動させ発熱させ」ることについて
上記第4の2(2)の引用文献1記載事項のとおり、パーソナルコンピュータ(パソコン)で使用されているマイクロプロセッサー(MPU)や演算素子(CPU)の動作周波数は高く、そのために発熱量が増大しているところ、これらの動作周波数を高周波発振器を用いて発生させることは、本願の出願時における技術常識である。
そうすると、引用発明の「蓄電池によってパソコンを動作させる場合」、「演算素子1に通電して動作させると、演算素子1が熱を発生」することは、本願発明の「蓄電池(4)からの電力を高周波発振器(5)を用いて、半導体(1)を高周波数で作動させ発熱させ」ることに相当する。
(5)「その熱の一部を熱電発電機(6)により電力として回収」することについて
引用発明の「演算素子1で生じた熱の一部は、冷却・発電素子3によって電気エネルギーに変換され、その電力が蓄電池に供給され」ること、「内蔵している蓄電池を使用する場合には、演算素子1で生じる熱の一部を電力として回収する」ことは、本願発明の「その熱の一部を熱電発電機(6)により電力として回収」することに相当する。
(6)「その電力により高周波発振器(5)を用いて、半導体(1)を高周波数で作動させることにより発熱させ」ることについて
引用発明は、「演算素子1で生じる熱の一部を電力として回収する」ものであって、「熱を電力に変換して回収するので、電力の消費を抑制することができる」ものであるから、「演算素子1」を作動させるために、回収した電力を用いていることは明らかである。
そうすると、上記(4)及び(5)を踏まえれば、引用発明は、本願発明の「その電力により高周波発振器(5)を用いて、半導体(1)を高周波数で作動させることにより発熱させ」る構成を有しているといえる。
(7)「熱源を得る半導体熱源装置」について
引用発明の「ノートブック型パソコン」は、「演算素子1に通電して動作させると、演算素子1が熱を発生し、その熱が熱拡散板2を介して冷却・発電素子3に伝達され、冷却・発電素子3の他方の面がヒートパイプ6を介して冷却されているので、冷却・発電素子3では、熱拡散板2側の面とヒートパイプ6側の面との温度差に起因して起電力が生じ、その結果、演算素子1で生じた熱の一部は、冷却・発電素子3によって電気エネルギーに変換され、その電力が蓄電池に供給され」るものである。
そうすると、引用発明は、「半導体」である「演算素子1」が熱を発生することで「熱源」となり、その熱を「冷却・発電素子3」に供給し、そこで電気エネルギーに変換された電力を「蓄電池」にさらに供給するものである。
したがって、引用発明の「ノートブック型パソコン」は、本願発明の「熱源を得る半導体熱源装置」に相当する。
(8)上記(1)~(7)によれば、本願発明と、引用発明とは、以下の一致点及び相違点を有する。
[一致点]
「半導体(1)を、熱電発電機 高温端(3)に固定し、蓄電池(4)からの電力を高周波発振器(5)を用いて、半導体(1)を高周波数で作動させ発熱させ、その熱の一部を熱電発電機(6)により電力として回収し、その電力により高周波発振器(5)を用いて、半導体(1)を高周波数で作動させることにより発熱させ、熱源を得る半導体熱源装置。」
[相違点]
「半導体(1)を、熱電発電機 高温端(3)に固定」することについて、本願発明は、「絶縁材(2)を介して」固定しているのに対し、引用発明は、「演算素子(CPU)1」を、絶縁材を介して「冷却・発電素子3」の「熱拡散板2側の面」に固定しているのか不明な点。
2 相違点についての判断
引用発明において、「演算素子(CPU)1」を「冷却・発電素子3」の「熱拡散板2側の面」に固定する際に、どのような部材を介して固定するかは、適宜決定し得る設計的な事項である。
そうすると、引用発明において、「熱拡散板2」を絶縁材としたり、「熱拡散板2と演算素子1との間」の「ペースト状のサーマルジョイントなどの介在物」や「熱伝導性の接着剤」を絶縁材としたりして、「演算素子(CPU)1」と「冷却・発電素子3」の「熱拡散板2側の面」を、絶縁材を介して固定するように構成することは、当業者であれば容易に想到し得るものである。
3 請求人の主張について
請求人は、令和7年7月13日に意見書を提出しているが、その主張の内容を検討しても、上記1及び2の判断を左右するものではない。
4 小括
上記1~3のとおりであるから、本願発明は、引用発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
第6 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
J-PlatPatの審決検索トップを開きます。番号入力で「審判番号」を選び、下の番号を貼り付けて検索してください。
J-PlatPat 審決検索を開く
2024-015673