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特許拒絶査定不服審判

2024-015538

陥凹板ばねサスペンションシステム

審判番号
2024-015538
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2022-148496
請求日
2024年09月27日
審決日
2025年06月30日
公報発行日
2025年12月26日
結論
請求不成立
当事者
  • 【請求人】ラッシーニ サスペンショネス ソシエダ アノニマ デ カピタル ヴァリアブレ
  • 【請求人代理人】弁理士法人深見特許事務所
審判長/審判官
  • 審判長 八木 誠
  • 審判官 中尾 麗
  • 審判官 山本 信平
分類
P18 .121-Z (B60G) / P18 .113-Z (B60G)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法29条1項3号特許法29条2項
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項、特許法第17条の2第6項、特許法第29条第1項第3号、特許法第17条の2第5項第2号
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特願2022-148496「陥凹板ばねサスペンションシステム」拒絶査定不服審判事件〔令和5年3月29日出願公開、特開2023-43886〕について、次のとおり審決する。

結論

結 論 本件審判の請求は、成り立たない。

理由

理 由 第1 手続の経緯 本願は、令和4年9月16日に出願された外国語書面出願であって(パリ優先権主張2021年9月16日、米国)、その手続の経緯の概略は次のとおりである。 令和 5年 1月13日 :翻訳文の提出 同年 1月20日 :手続補正書の提出 同年12月 8日付け:拒絶理由通知書 令和 6年 3月12日 :意見書、手続補正書の提出 同年 5月14日付け:拒絶査定(以下「原査定」という。) (同月28日 :原査定の謄本の送達) 同年 9月27日 :審判請求書、手続補正書の提出 第2 令和6年9月27日にされた手続補正についての補正の却下の決定 [補正の却下の決定の結論] 令和6年9月27日にされた手続補正を却下する。 [理由] 1 本件補正の内容 (1) 本件補正後の特許請求の範囲 令和6年9月27日にされた手続補正書による補正(以下「本件補正」という。)後の特許請求の範囲の請求項1の記載は、以下のとおりである(下線部は、補正箇所を示す。)。 「車両用板ばねサスペンションシステムであって、 車軸と、 頂部側と、底部側と、側縁の対とを有する板ばねとを備え、前記側縁の少なくとも1つは、前記側縁から内方に延びる凹部の対を画定し、前記凹部の対のそれぞれの凹部は、前記板ばねの前記側縁に位置する凹部壁によって画定され、前記頂部側および底部側は、前記板ばねの厚みを画定し、前記車両用板ばねサスペンションシステムはさらに、 前記板ばねを前記車軸に作動的に連結するクランプアセンブリを備え、前記クランプアセンブリはU字形バーの対を含み、前記U字形バーの一部は前記板ばねの前記凹部の対内に配置され、 前記凹部は、前記板ばねの前記厚みに沿って開放しており、 前記凹部の頂部領域は、前記凹部壁から離れるように延在するスカラップ形状の壁によって画定され、 前記頂部領域における前記スカラップ形状の壁は、前記凹部壁を前記板ばねの前記頂部側に接続する湾曲セグメントである、板ばねサスペンションシステム。」 (2) 本件補正前の特許請求の範囲 本件補正前の令和6年3月12日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1の記載は、以下のとおりである。 「車両用板ばねサスペンションシステムであって、 車軸と、 頂部側と、底部側と、側縁の対とを有する板ばねとを備え、前記側縁の少なくとも1つは、前記側縁から内方に延びる凹部の対を画定し、前記凹部の対のそれぞれの凹部は、前記板ばねの前記側縁に位置する凹部壁によって画定され、前記頂部側および底部側は、前記板ばねの厚みを画定し、前記車両用板ばねサスペンションシステムはさらに、 前記板ばねを前記車軸に作動的に連結するクランプアセンブリを備え、前記クランプアセンブリはU字形バーの対を含み、前記U字形バーの一部は前記板ばねの前記凹部の対内に配置され、 前記凹部は、前記板ばねの前記厚みに沿って開放している、車両用板ばねサスペンションシステム。」 2 本件補正の適否 本件補正は、本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「凹部」について、「前記凹部の頂部領域は、前記凹部壁から離れるように延在するスカラップ形状の壁によって画定され、前記頂部領域における前記スカラップ形状の壁は、前記凹部壁を前記板ばねの前記頂部側に接続する湾曲セグメントである」ことを限定するものである。そして、本件補正前の請求項1に記載された発明と本件補正後の請求項1に記載された発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 そこで、本件補正後の請求項1に記載された発明(以下「本件補正発明」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否か(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)について以下に検討する。 (1) 本件補正発明 本件補正発明は、上記1(1)に記載したとおりのものである。 (2) 引用文献に記載された事項及び引用発明等の認定 ア 引用文献1に記載された事項及び引用発明の認定 原査定の拒絶の理由で引用された、本願の優先日前に発行された文献である実願昭54-124211号(実開昭56-42406号)のマイクロフィルム(以下「引用文献1」という。)には、次の記載がある(下線は当審で付した。以下同様。)。 (ア)引用文献1に記載された事項 a 「3.考案の詳細な説明 この考案はFRP(繊維強化プラスチック)製リーフスプリングとアクスルハウジングの取付構造の改良に関するものである。」(第2頁第1~4行) b 「第3図はこの考案の一実施例の取付状態の斜視図、第4図はその分解斜視図である。図において、10は車両の両側において車両の前後方向に車体に掛設したFRP製リーフスプリングであり、各種強化繊維やこれらの織物に樹脂を含浸後、加熱硬化して板状に形成している。一方、11は車両の後部において車両の横方向に設けたアクスルハウジングであり、図外のアクスルを内装するものである。そして、このアクスルハウジング11は、その両端に前記リーフスプリング10を組付け、アクスルハウジング11から車体への振動伝達をこのリーフスプリング10によって吸収するようにしているのである。 ここで、前記リーフスプリング10のアクスルハウジング11取付位置両側には、リーフスプリング10の巾寸法を大きくした拡巾部12,12をアクスルハウジング11の外径寸法に略等しく形成し、その両端に巾方向の段差部13,13を夫々形成する。そして、この段差部13,13をスプリング10の長手方向から挾むように夫々の段差部13,13に係合するU字ボルト14,14をアクスルハウジング11に嵌合し、ナット15,15を用いてアクスルハウジング11とリーフスプリング10とを締結しているのである。」(第4頁第13行~第6頁第5行) c 「尚、リーフスプリング10に形成する段差部は、U字ボルトと長手方向に係合し得るものであれば、第5図(A),(B)に夫々示すように、スプリング10の両側にU字ボルト14の径に略等しい凹部21,21を形成したり、U字ボルト14の全巾に略等しい凹部22,22を形成するようにしてもよい。この場合、リーフスプリング10の強度の低下を招かないようにすることは勿論必要である。」(第8頁第12行~第9頁第4行) d 「 [図:0001429725000001.jpg] 」 e 「 [図:0001429725000002.jpg] 」 f 「 [図:0001429725000003.jpg] 」 (イ) 引用文献1の記載から認定できる事項 a 前記(ア)の摘記事項b及び摘記事項d、eの図3、図4の記載からみて、引用文献1には、次の技術事項が記載されていると認められる(以下「認定事項A」という。)。 「リーフスプリング10が頂部側と、底部側と、側縁の対とを有し、頂部側および底部側は、リーフスプリングの厚みを画定すること。」 b 前記(ア)の摘記事項b、c及び摘記事項fの図5(A)の記載から、引用文献1には、次の技術事項が記載されていると認められる(以下「認定事項B」という。)。 「リーフスプリング10の側縁から内方に延びる凹部21、21が、側縁に位置する凹部壁によって画定され、リーフスプリング10の厚みに沿って開放していること。」 (ウ) 引用発明の認定 前記(ア)において摘記した事項及び前記(イ)において認定した事項を総合すると、引用文献1には次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 「リーフスプリングとアクスルハウジングの取付構造であって、 アクスルハウジングと、 頂部側と、底部側と、側縁の対とを有するリーフスプリング10(認定事項A)とを備え、前記側縁は、リーフスプリング10の側縁から内方に延びる凹部21、21が形成され、凹部21、21は前記リーフスプリング10の前記側縁に位置する凹部壁によって画定され(認定事項B)、前記頂部側および底部側は、前記リーフスプリング10の厚みを画定し(認定事項A)、リーフスプリングとアクスルハウジングの取付構造はさらに、 前記リーフスプリング10を前記アクスルハウジングに組付けるU字ボルト14、14とナット15、15を備え、U字ボルト14、14とナット15、15はU字ボルト14、14を含み、前記U字ボルト14、14は前記凹部21、21と長手方向に係合し、 前記凹部21、21は、前記リーフスプリング10の前記厚みに沿って開放している(認定事項B)、リーフスプリングとアクスルハウジングの取付構造。」 イ 引用文献2~4の記載事項及び技術常識等の認定 (ア) 引用文献2に記載された事項 原査定の拒絶の理由で引用された、本願の優先日前に発行された文献である実願平1-95450号(実開平3-35332号)のマイクロフィルム(以下「引用文献2」という。)には、次の記載がある。 a 「[産業上の利用分野] 本考案は、板ばね式の車両用懸架装置に関する。」(第1頁第11~14行) b 「[従来の技術] 従来の板ばねを使用した車両用懸架装置は、第3図に示したように複数板のばね板1aを重ねてセンターボルト2で固定して成る板ばねlを、その両端の目玉3に挿通されるビン等を介して車体フレーム(図示せず)に取り付けると共に、中央部に配設した一対のUボルト4,4によって車軸(図示せず)に取り付けている。」(第1頁第15行~第2頁第2行) c 「[考案が解決しようとする課題] しかるに上記装置においては、板ばね1の作動時に、センターボルト2と接するボルト孔2aの中心を通る横断面はその前後の横断面に比較し、ボルト穴の分だけ断面積が小さくなるだけでなく、応力が集中する。 そのため、ボルト孔2aの部分からばね板1aの折損を起こし易かった。 この点を解消するために、従来は例えば第4図及び第5図のようにボルト孔2aの上端(引張側)にポンチでプレスして面取り4,5をしたり、あるいは第6図のように熱間ブレス加工により各ばね板1aにダボ6を形成し、このダボ6の中央にボルト孔2aを設けることにより、ボルト孔2aの孔強度の向上を図っていた。」(第2頁第3~16行) d 「 [図:0001429725000004.jpg] 」 e 「 [図:0001429725000005.jpg] 」 (イ) 引用文献3に記載された事項 当審において新たに引用する、優先日前に発行された文献である特開2005-256082号公報(以下「引用文献3」という。)には、次の記載がある。 a 「【0004】 特に、自動車の駆動系に使用されるシャフトは、軸受等を介して自動車本体に保持されるため摺動部を有し、この摺動部に潤滑油を供給するため、軸部に横穴(油穴)が設けられている。そのため、軸部がトルクを伝達する際にはこの横穴(油穴)の端部に応力集中が生じ、ここから破壊が生じるおそれが高い問題がある。」 b 「【0020】 ・・・図2の横穴の断面図に示すように、応力集中を緩和する目的で横穴4の端部aに面取りが行われる場合がある・・・」 c 「【図2】 [図:0001429725000006.jpg] 」 (ウ) 引用文献4に記載された事項 当審において新たに引用する、優先日前に発行された文献である実願昭60-195942号(実開昭62-104036号)のマイクロフィルム(以下「引用文献4」という。)には、次の記載がある。 a 「〔産業上の利用分野〕 この考案は、FRP重ね板ばねに関する。」(第1頁第18~19行) b 「〔考案が解決しようとする問題点〕 しかしなから、FRP板ばねに関しては、成形後に、センタボルト挿通用のセンタボルト孔を穿孔すると、FRP仮ばねを構成している素材の繊維材が切断されて強度等、特に、破壊強度を低下させることになり、ばね板に曲げ応力が加わった場合に孔の回り及び孔付近に大きな剪断力が発生し、FRP板ばね素材に割れ等が生ずる原因となっている。更に、詳細に説明すると、板ばねの中央に上方への荷重がかかり、それに対し板ばねの両端にその荷重に抗するための大きさ半分の反力が発生し、板ばねの長手方向に曲げ応力が発生する。この曲げ応力の発生によって板ばねの中央の孔の回り及び孔付近に長手方向に伸長する剪断応力が生じ、その剪断応力の大きさは孔の回りで最大値となり、長手方向に離れるに従って小さくなる。そのため孔の縁部から板ばねの長手方向にひび、割れ等が生じるという問題点があった。 この考案の目的は、上記の問題点を解消することであり、FRP重ね板ばねにおけるFRP板ばねにセンタボルト孔を形成したにもかかわらず孔の回り及び孔付近の剪断応力の発生を緩和し、センタボルト孔の回り及びその付近にひび、割れ等が発生しないように構成したFRP重ね板ばね構造を提供することである。」(第2頁第16行~第3頁第20行) c 「第4図(イ)には、この考案によるFRP重ね板ばね構造10に使用されているFRP板ばね2の別の実施例が示されている。FRP板ばね2のセンタボルト孔7の回りには凹部12が形成されており、凹部12の形状は側面が傾斜面を有する截頭円錐形状であり、しかも第4図(ロ)に示すようにFRP板ばね2の両面に形成されている。言い換えれば、センタボルト孔7の回りは両面を面取りした形状に構成されている。」(第7頁第7~15行) d 「〔考案の効果〕 この考案によるFRP重ね板ばね構造は、以上のように構成されており、FRP板ばねの孔の回りが面取り、座くり等によって凹部が形成され、FRP板ばねの板厚が薄く形成されている。 その結果として、孔の回り及び孔付近の曲げ応力を低下させることができ、剪断応力を小さくすることができるので、その部分の剪断応力を緩和することができる。 それ故に、FRP板ばねの孔の回り及び孔付近からの割れ、ひび等が発生ずるような現象を防止することができる。」(第8頁第5~15行) e 「 [図:0001429725000007.jpg] 」 (エ) 技術常識1の認定 前記(ア)~(ウ)に示した引用文献2~4の摘記事項に例示されているように、次の技術事項は、当業者にとって技術常識であったと認められる(以下「技術常識1」という。)。 「部材の厚み方向の孔の端部に応力が集中すること。」 (オ) 周知技術1の認定 前記(ア)~(ウ)に示した引用文献2~4の摘記事項に例示されているように、次の技術事項は、当業者にとって周知の技術であったと認められる(以下「周知技術1」という。)。 「部材の厚み方向の孔の端部を面取りすることで該孔への応力集中を緩和できること。」 (3) 本件補正発明と引用発明との対比 本件補正発明と引用発明とを対比する。 ア 引用発明における「アクスルハウジング」は本件補正発明における「車軸」に相当し、以下同様に、「リーフスプリング10」は「板ばね」に、「U字ボルト14、14とナット15,15」は「クランプアセンブリ」に、「U字ボルト14、14」は「U字形バーの対」に、それぞれ相当する。 イ 引用文献1の第4頁第14行~第5頁第1行のリーフスプリング10が「車両の前後方向に車体に掛設」されたとの記載、第8頁第12行~第9頁第2行の「U字ボルト14の径に略等しい凹部21、21」が「スプリング10の両側に」「形成」され「U字ボルトと長手方向に係合し得るものであ」るとの記載、及び、第4図、第5図(A)を踏まえると、引用発明における「凹部21、21」は「U字ボルト14」の一部が凹部内に配置された「対」をなすものといえるから、引用発明の「凹部21、21」は本件補正発明の「凹部の対」に相当し、後者の「前記側縁は、リーフスプリング10の側縁から内方に延びる凹部21、21が形成され、凹部21、21は前記リーフスプリング10の前記側縁に位置する凹部壁によって画定され」る態様は前者の「前記側縁の少なくとも1つは、前記側縁から内方に延びる凹部の対を画定し、前記凹部の対のそれぞれの凹部は、前記板ばねの前記側縁に位置する凹部壁によって画定され」る態様に相当する。 ウ 上記ア、イを踏まえると、後者の「前記U字ボルト14、14は前記凹部21、21と長手方向に係合」する態様は前者の「前記U字形バーの一部は前記板ばねの前記凹部の対内に配置され」る態様に相当する。また、引用発明の第5頁第6~10行の「アクスルハウジング11は、その両端に前記リーフスプリング10を組付け、アクスルハウジング11から車体への振動伝達をこのリーフスプリング10によって吸収するようにしている」との記載を踏まえると、後者の「前記リーフスプリング10を前記アクスルハウジングに組付ける」態様は前者の「前記板ばねを前記車軸に作動的に連結する」態様に相当する。 エ 上記ア~ウを踏まえると、後者の「リーフスプリングとアクスルハウジングの取付構造」は前者の「板ばねサスペンションシステム」に相当する。 オ したがって、本件補正発明と引用発明とは、次の一致点で一致し相違点1で相違する。 〔一致点〕 「車両用板ばねサスペンションシステムであって、 車軸と、 頂部側と、底部側と、側縁の対とを有する板ばねとを備え、前記側縁の少なくとも1つは、前記側縁から内方に延びる凹部の対を画定し、前記凹部の対のそれぞれの凹部は、前記板ばねの前記側縁に位置する凹部壁によって画定され、前記頂部側および底部側は、前記板ばねの厚みを画定し、前記車両用板ばねサスペンションシステムはさらに、 前記板ばねを前記車軸に作動的に連結するクランプアセンブリを備え、前記クランプアセンブリはU字形バーの対を含み、前記U字形バーの一部は前記板ばねの前記凹部の対内に配置され、 前記凹部は、前記板ばねの前記厚みに沿って開放している 板ばねサスペンションシステム。」 〔相違点1〕 本件補正発明では、「前記凹部の頂部領域は、前記凹部壁から離れるように延在するスカラップ形状の壁によって画定され、前記頂部領域における前記スカラップ形状の壁は、前記凹部壁を前記板ばねの前記頂部側に接続する湾曲セグメントである」のに対して、引用発明では、凹部21、21の頂部領域の形状が明らかでない点。 (4) 判断 ア 「部材の厚み方向の孔の端部を面取りすることで該孔への応力集中を緩和できること」は周知技術(前記周知技術1参照)である。 そして、「部材の厚み方向の孔の端部に応力が集中すること」は技術常識(前記技術常識1参照)であり、「応力集中」とは構造物の一部に切欠き、穴などが存在し、断面が急変するとその付近に応力分布のかく乱が起こり、局部的に応力が増大する現象(必要であれば、機械工学便覧新版9刷A4-94頁を参照。)であるところ、部材の厚み方向の孔の端部と同様に、形状が急激に変化する箇所である引用発明における凹部21、21の端部においても、応力集中の問題は内在する課題であって、かかる課題を解決するために、凹部21、21の頂部領域への応力集中を緩和する手段を設ける必要があることを踏まえると、引用発明において、前記周知技術1を採用する動機付けは十分にあるというべきである。 したがって、引用発明において、周知技術1を採用して、凹部の頂部領域を面取りして凹部壁から離れるように延在するスカラップ形状の壁を設けることは、当業者であれば容易に想到し得たことであり、スカラップ形状の壁の具体的な形状を、湾曲したものとするか、平面とするかは、当業者が適宜決定し得る設計的事項である。 イ 審判請求人の主張についての検討 請求人は、審判請求書において、 「ア) 審査官殿は、令和6年5月28日付の拒絶査定において 「<請求項4-7について> 引用文献2(特に第2頁第4行-第16行、第4-5図)に記載されているように、孔部に面取りをして応力集中の緩和、孔強度の向上を図ることは周知技術に過ぎない。引用文献1の凹部においても、応力集中の緩和、強度の観点から、上記周知技術を適用することで、スカラップ形状の壁としての面取り部を設け、請求項4-7に係る構成とすることは当業者が容易に想到し得たことである。」と述べています。しかし、上記の主張は、引用文献1の発明に引用文献2に記載の技術的事項を適用することに対して阻害要因が存在するという点で妥当性を有しません。 イ) 引用文献2の第2頁第4行-第19行では下記の通り記載されています(下線は本審判請求書で付与)。 「しかるに上記装置においては、板ばね1の作動時に、センターボルト2と接するボルト孔2aの中心を通る横断面はその前後の横断面に比較し、ボルト穴の分だけ断面積が小さくなるだけでなく、応力が集中する。そのため、ボルト孔2aの部分からばね板1aの折損を起こし易かった。 この点を解消するために、従来は例えば第4図及び第5図のようにボルト孔2aの上端(引張側)にポンチでプレスして面取り4、5をしたり、あるいは第6図のように熱間プレス加工により各ばね板1aにダボ6を形成し、このダボ6の中央にボルト孔2aを設けることにより、ボルト孔2aの孔強度の向上を図っていた。 しかしながら、上記のいずれの手段もばね板1aの折損を防止するには充分な効果を有しなかった。」 ウ) すなわち、引用文献2において、孔部の面取りを施すこと(第2頁第4行-第16行、第4-5図)は、突出部を有するばね板(第3頁第4行-第4頁第16行、第1-3図)と比較して、孔部の強度を向上させてばね板の折損を防止するという課題に関して作用効果が劣る例として記載されています。 エ) そのため、当業者であれば引用文献1に開示されている板ばねの凹部に対して、孔部の面取りを適用することを考えません。 オ) 従って、本願の出願前に、本願の解決課題および解決手段のいずれも知らない当業者が各引用文献に接することが仮にできたとしても、その当業者が補正後の本願発明に想到することは極めて困難であり、補正後の本願発明は、各引用文献に対して十分に新規性および進歩性を有しているものと思料致します。」 と主張する。 しかしながら、上記アに説示したとおり、部材の厚み方向の孔の端部を面取りすることで該孔への応力集中を緩和できることは、引用文献2ないし4(上記2のイ(ア)~(ウ)参照。)にみられるように、本願の優先日前に周知である。 そして、引用発明に当該周知技術を採用することが容易なことも、上記アにて説示したとおりである。 したがって、審判請求人の主張は採用することができない。 ウ 独立特許要件についての当審の判断のまとめ 以上検討のとおり、本件補正発明は、引用発明、技術常識1及び周知技術1に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない。 (5) 本件補正の適否についての当審の判断のまとめ 前記(4)に示したとおり、本件補正発明は、特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるから、本件補正は、特許法第17条の2第6項で準用する同法第126条第7項の規定に違反するものであり、同法第159条第1項で読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。 よって、前記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。 第3 本願発明について 1 本願発明 本件補正は、前記第2のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、本件補正前の特許請求の範囲の請求項1(前記第2 1(2)参照。)に記載された事項により特定されるとおりのものである。 2 原査定における拒絶の理由の概要 原査定における本願発明に対する拒絶の理由の概要は、次のとおりである。 理由2(新規性)本願発明は、その出願(優先日)前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明である引用文献1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。 理由3(進歩性)この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願(優先日)前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 記 引用文献1:実願昭54-124211号(実開昭56-42406号)のマイクロフィルム 3 引用文献に記載された事項及び引用発明の認定 引用文献1に記載された事項、引用文献1に記載された事項から認定できる事項及び引用発明の認定は、前記第2の2(2)アにおいて示したとおりである。 4 対比・判断 前記第2の2を参照すると、本願発明は、本件補正発明の「前記凹部は、前記板ばねの前記厚みに沿って開放しており、前記凹部の頂部領域は、前記凹部壁から離れるように延在するスカラップ形状の壁によって画定され、前記頂部領域における前記スカラップ形状の壁は、前記凹部壁を前記板ばねの前記頂部側に接続する湾曲セグメントである、」との記載から下線部分を省いたものであるから、本願発明と引用発明には相違点は存在しない。そうすると、本願発明は引用発明と同一である。 また、本願発明は、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 5 むすび 以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第1項第3号に該当するため、又は、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。 したがって、本願は、その余の請求項を検討するまでもなく、拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。

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2024-015538

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    共通の審決分類: 113・B60G、121・B60G
  • 2018-700239異議申立 / 2018-06-21 / 維持自動車用足回り部品及びその製造方法
    共通の審決分類: 113・B60G、121・B60G
  • 2024-008589拒絶査定不服審判 / 2025-12-18 / 原査定取消(特許/登録すべき)分散型アクティブサスペンションシステム用のアキュムレータ
    共通の審決分類: 121・B60G
  • 2022-008333拒絶査定不服審判 / 2023-02-28 / 原査定取消(特許/登録すべき)リアサスペンション装置、および車両の走行方法
    共通の審決分類: 121・B60G

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