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特許拒絶査定不服審判

2024-015001

調光装置

審判番号
2024-015001
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2023-098325
請求日
2024年09月19日
審決日
2026年04月16日
公報発行日
2026年06月26日
結論
請求不成立
当事者
  • 【請求人】大日本印刷株式会社
  • 【請求人代理人】宮嶋 学
  • 【請求人代理人】堀田 幸裕
  • 【請求人代理人】村越 卓
審判長/審判官
  • 審判長 岡田 吉美
  • 審判官 横井 亜矢子
  • 審判官 野村 伸雄
分類
P18 .121-Z (G02F)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特願2023-98325「調光装置」拒絶査定不服審判事件〔令和5年8月3日出願公開、特開2023-107977〕について、次のとおり審決する。

結論

結 論 本件審判の請求は、成り立たない。

理由

理 由 1 手続の経緯 (1) 出願分割の経緯の概略 本願(特願2023-098325号)は、平成28年11月21日に出願された特願2016-226202号を最先の出願とする、いわゆる第5世代の分割出願であって、出願の分割の経緯は、次のとおりである。括弧内に当該出願の提出日を示す。 最先の出願 :特願2016-226202号(平成28年11月21日) 第1世代分割:特願2017-222076号(平成29年11月17日) 第2世代分割:特願2018-035352号(平成30年 2月28日) 第3世代分割:特願2019-079389号(平成31年 4月18日) 第4世代分割:特願2020-203602号(令和 2年12月 8日) 本願 :特願2023-098325号(令和 5年 6月15日) (2) 本願の手続の経緯の概略 本願の出願後の手続の経緯の概略は、次のとおりである。 令和5年 6月22日 :手続補正書の提出 同年12月15日付け:拒絶理由通知書 令和6年 2月20日 :意見書、手続補正書の提出 同年 3月15日付け:拒絶理由通知書 同年 5月21日 :意見書、手続補正書の提出 同年 6月14日付け:拒絶査定(以下「原査定」という。) (同月25日 :原査定の謄本の送達) 同年 9月19日 :審判請求書の提出 令和7年10月29日付け:拒絶理由通知書(以下「当審拒絶理由通知書」という。) 令和8年 1月27日 :意見書の提出(以下、単に「意見書」というときは、この意見書を指す。) 2 本願発明について (1) 本願発明の認定 本願の請求項2に係る発明(以下「本願発明」という。)は、令和6年5月21日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項2に記載された次に示す事項により特定されるとおりのものである。 「【請求項2】 曲面を有する第1光透過プレートと、第2光透過プレートと、調光セルと、を備える調光装置であって、 前記調光セルは、前記第1光透過プレートと前記第2光透過プレートとの間に配置され、第1樹脂基材を含む第1積層体と、第2樹脂基材を含む第2積層体と、前記第1積層体と前記第2積層体との間に設けられた液晶層と、を有し、 前記第1光透過プレートの曲面と前記調光セルとの間には光学透明粘着フィルムが充填され、 前記第2光透過プレートは、接着層を介して前記調光セルの他方側に取付けられており、 前記光学透明粘着フィルムは、前記第1光透過プレートの前記曲面及び前記調光セルに直接接着し、 前記第1光透過プレート及び前記第2光透過プレートはガラスプレートであり、 前記第1積層体と前記第2積層体との間にシール材が位置し、 前記光学透明粘着フィルムがOCR(Optical Clear Resin)により形成され、 前記第2光透過プレートと前記調光セルとの間に充填される前記接着層が、OCR(Optical Clear Resin)により構成されている、調光装置。」 (2) 本願発明の分説 検討の便宜上、本願発明の構成を次のように構成Xと構成Aから構成Eまでに分説する。また、参考図として、本願の【図3】、【図4A】、【図4B】及び【図34】を元に部材名を記入したものを掲載する。 <本願発明の分説> X 曲面を有する第1光透過プレートと、第2光透過プレートと、調光セルと、を備える調光装置であって、 A 前記調光セルは、前記第1光透過プレートと前記第2光透過プレートとの間に配置され、第1樹脂基材を含む第1積層体と、第2樹脂基材を含む第2積層体と、前記第1積層体と前記第2積層体との間に設けられた液晶層と、を有し、 B 前記第1光透過プレートの曲面と前記調光セルとの間には光学透明粘着フィルムが充填され、 C 前記第2光透過プレートは、接着層を介して前記調光セルの他方側に取付けられており、 B1 前記光学透明粘着フィルムは、前記第1光透過プレートの前記曲面及び前記調光セルに直接接着し、 D 前記第1光透過プレート及び前記第2光透過プレートはガラスプレートであり、 E 前記第1積層体と前記第2積層体との間にシール材が位置し、 B2 前記光学透明粘着フィルムがOCR(Optical Clear Resin)により形成され、 C1 前記第2光透過プレートと前記調光セルとの間に充填される前記接着層が、OCR(Optical Clear Resin)により構成されている、 X 調光装置。」 <参考図> 【図34】 [図:0001435707000001.jpg] 【図3】 [図:0001435707000002.jpg] 【図4A】 [図:0001435707000003.jpg] 【図4B】 [図:0001435707000004.jpg] (3) 課題・作用効果等に関連する明細書の発明の詳細な説明の記載 本願明細書の発明の詳細な説明の記載のうち、発明が解決しようとする課題及び作用効果等に関連する記載を抜粋すると、次の記載がある。 ア 技術分野、背景技術、発明の概要等(【0001】~【0047】) 「【技術分野】 【0001】 本発明は光の透過率を調整することができる調光装置に係り、特に、曲面に対して取り付けられる液晶駆動方式の調光セルを含む調光装置に関する。 【背景技術】 【0002】 従来より光の透過率を変えられる調光装置が知られており、例えば、電界の印加の有無に応じて整列状態が変動する懸濁粒子を利用したSPD(Suspended Particle Device)が知られている。またEC(Electrochromic)方式の調光装置、高分子分散型液晶(PDLC:Polymer Dispersed Liquid Crystal)を利用した調光装置、ガスクロミック方式の調光装置、サーモクロミック方式の調光装置及びフォトクロミック方式の調光装置なども知られている。 【0003】 例えば特許文献1は、SPDに使用されるラミネートフィルムを開示する。特許文献1に記載のSPDでは、液体媒質に懸濁粒子が混ぜられた懸濁液が使われており、電界が印加されない電源OFFの状態では粒子がランダムに配置されて光の透過を遮る。一方、電界が印加された電源ONの状態では粒子が整列し、SPD(セル)に入射した光の大部分がSPDを通過する。したがってユーザーは、懸濁液に印加する電界を制御することで、SPDの光の透過率を変えることができる。 【先行技術文献】 【特許文献】 【0004】 【特許文献1】特開2011-189751号公報 【発明の概要】 【発明が解決しようとする課題】 【0005】 調光セルによる光透過率の調整方式として、上述のSPDの他に液晶及び偏光板を利用する方式が考えられる。液晶及び偏光板を利用するタイプの調光セルは、簡素に構成可能であり、非常に高い遮光性能を確保することができる。 【0006】 例えば、車両の窓などに対して調光セルを適用する場合、遮光時には太陽光を適切に遮断するために、可視光波長域の光(すなわち可視光線)の透過率を1%未満に抑えることが求められ、場合によっては0.5%以下に抑えることが求められるケースもある。しかしながら上述のSPDを用いた調光セルは、遮光時における可視光線の透過率が1%~5%程度であるため、遮光性能に関して車両等の用途には必ずしも適していない。一方、偏光板を用いた調光セルは、遮光時の可視光線の透過率を0.1%以下にすることも可能であり、車両等の用途に関しても実用上十分な遮光性能を有する。 【0007】 またSPDを用いた調光セルと偏光板を用いた調光セルとを比較した場合、デザイン性、コスト、駆動電圧及び駆動速度等の様々な面で、偏光板を用いた調光セルの方が優れている。例えばSPDを用いた調光セルの遮光時の色味が「青」であるのに対し、偏光板を用いた調光セルの遮光時の色味は「黒」である。一般的に、青よりも黒の方が色の調和をとりやすく、デザイン性の観点からは、調光セルの周囲に配置する他のものの色味の選択が黒の方が容易である。またSPDを用いた調光セルは、偏光板を用いた調光セルに比べ、製造コストが高く、駆動電圧が高く、駆動速度も遅い。 【0008】 このようにSPDを用いた調光セルよりも偏光板を用いた調光セルの方が性能面で優れている点も多いため、「偏光板を用いた調光セル」は非常に有用である。 【0009】 一方、様々な用途への調光セルの応用を可能にするため、平面だけではなく曲面に対しても適用可能な調光セルのニーズが高まっている。そのため、所望の透光特性及び遮光特性を確保可能な「偏光板を用いた調光セル」を曲面に対して適切に適用するための技術が望まれている。 【0010】 一般に、液晶部材の配向を制御するための電極を保持する基材としてガラス基材が広く利用されているが、ガラス基材は非常に硬く柔軟性がない部材である。そのためガラス基板を備える調光セルは、形状が固定され、調光セルの製造後に調光セルの形状を変えることができない。したがってガラス基材を用いた調光セルは平面に対しては有効に適用可能であるが、様々な曲率を有しうる曲面に対しては必ずしも適切に適用することができない。その一方で、柔軟性に富む樹脂基材をガラス基材の代わりに使うことで、調光セルの製造後であっても調光セルの形状を変えることができ、取り付け対象の曲面に応じて調光セルを曲げることも可能である。 【0011】 ただし様々な剛性や弾性を持つ複数の部材から成る調光セルを曲面に対して適切に貼り付けることは必ずしも容易ではなく、シート状の調光セルには取り付け時に皺等の歪みが生じることがある。そのような皺等の歪みは、調光セルの光学特性に影響を及ぼして本来の透光性能及び遮光性能を損なうだけではなく、製品のデザインをも損なうため好ましくない。 【0012】 なお上述の特許文献1に開示のようなSPDを用いた調光セルは、曲面形状に形成可能ではあるが、取り付け対象に貼り合わせるタイプではないため、予め定められた形状で作る必要があり、様々な面形状に柔軟に対応することが難しい。 【0013】 本発明は上述の事情に鑑みてなされたものであり、調光セルを曲面に対して適切に取り付けることができ、高度な透光性能及び遮光性能を有する調光装置を提供することを目的とする。 …(中略)… 【発明の効果】 【0047】 本発明によれば、光学透明粘着フィルムを介して光透過プレートの曲面に調光セルが適切に取り付けられ、調光セルによって高度な透光性能及び遮光性能が発揮される。」 イ 発明を実施するための形態(【0050】~【0217】) 「【0050】 以下に説明する調光装置10は、光の透過率の調整が求められる様々な技術分野に応用可能であり、適用範囲は特に限定されない。例えば車両等の乗り物や建物の窓(天窓を含む)、ショーケース、及び室内に配置されるパーティション等、透光及び遮光の切り換えが求められる任意のデバイスとして本発明に係る調光装置10を使用することが可能である。また調光装置10を構成する各要素は既知の手法によって製造可能であり、任意の積層技術、フォトリソグラフィ技術及び/又は貼り合わせ技術を使って製造される。 …(中略)… 【0052】 図1は、調光装置10の一例を示す概略断面図である。 【図1】 [図:0001435707000005.jpg] 【0053】 本実施形態の調光装置10は、曲面20を有する光透過プレート21と、光(特に可視光線)の透過率が可変である調光セル22と、光透過プレート21の曲面20と調光セル22の一方側との間に配置される光学透明粘着フィルム(OCA:Optical Clear Adhesive Film)24とを備える。 【0054】 光透過プレート21は、紫外線阻害成分を含み、紫外線の透過を阻害しつつ、可視光線を透過させる。光透過プレート21は曲面20を有し、1又は複数のガラスプレートを含む。なお光透過プレート21は、紫外線阻害成分を必ずしも含んでいる必要はなく、紫外線阻害成分を含まない光透過プレート21に対しても後述の調光セル22及び光学透明粘着フィルム24を適用することは可能である。光透過プレート21は、例えば表面側及び裏面側のそれぞれに配置されるガラスプレート(合計2枚のガラスプレート)を有していてもよいし、強化ガラス等の一枚のガラスプレートを有していてもよい。また光透過プレート21はガラスプレート以外の部材を含んでいてもよく、例えば高剛性膜(例えばCOP(Cyclo Olefin Polymer(シクロオレフィンポリマー))樹脂層等)や熱反射膜等の任意の機能層が光透過プレート21に設けられていてもよい。 【0055】 光透過プレート21の曲面20は、特に限定されないが典型的には二次元曲面或いは三次元曲面であり、図示の光透過プレート21の曲面20は三次元曲面となっている。一般に、薄膜状の調光セル22を三次元曲面に皺を生じさせることなく貼り付けることは容易ではないが、後述の「光透過プレート21に対する調光セル22の取り付け技術」によれば、薄膜状の調光セル22を三次元曲面に対して皺を生じさせることなく貼り付けることが容易である。 【0056】 図2は、三次元曲面20aを説明するための図である。ここでいう三次元曲面20aは、単一の軸を中心として二次元的に曲がった二次元曲面、或いは、互いに平行な複数の軸を中心として異なる曲率で二次元的に曲がった二次元曲面とは区別されるものである。すなわち、三次元曲面20aは、互い対して傾斜した複数の軸の各々を中心として、部分的に又は全体的に曲がっている面を意味する。 【図2】 [図:0001435707000006.jpg] 【0057】 図示の光透過プレート21の一方の面(すなわち光学透明粘着フィルム24が付着される曲面20)は、全体として図2に示すように曲がっており、第1の軸A1を中心に第1の方向d1へ曲がるとともに、第2の軸A2を中心に第2の方向d2へも曲がっている。図示の例では、第1の軸A1及び第2の軸A2は共に図2に示すX方向及びY方向に対して傾斜しており、第1の軸A1は第2の軸A2に垂直である。 【0058】 このような光透過プレート21の曲面20に対し、調光セル22の一方側が光学透明粘着フィルム24を介して接着される。 【0059】 図3は、光学透明粘着フィルム24及び調光セル22の層構成を説明するための概略断面図である。上述のように調光セル22の一方側には光学透明粘着フィルム24が設けられる。また調光セル22のうち他方側にはハードコート層26が設けられている。 【図3】 [図:0001435707000007.jpg] 【0060】 本実施形態の光学透明粘着フィルム24は、OCAと呼ばれる透明粘着シートによって構成され、基材を含まず、膜厚がほぼ一定の粘着剤のみよって構成可能であり、例えば透明性に優れるアクリル系粘着剤等によって構成可能である。光学透明粘着フィルム24(OCA)は、剥離性に優れたシート(セパレーター(剥離材))によって粘着剤を挟み込むことで製造され、粘着剤及びセパレーターの積層体を所望形状に切り出し、セパレーターを取り除くことによって所望箇所に粘着剤(光学透明粘着フィルム24)を貼り付けることができる。光学透明粘着フィルム24は、例えばOCR(Optical Clear Resin)と呼ばれる透明粘着樹脂を塗工することにより形成することが出来る。 【0061】 調光セル22は多層構造を有し、光学透明粘着フィルム24側から外側に向かって(すなわち光透過プレート21から離間する方向へ)、図3に示すように「保護層47、偏光層48、保護層47、粘着層46、第1電極配向層43、液晶層49、第2電極配向層44、粘着層46、位相差補償フィルム45、粘着層46、保護層47、偏光層48、保護層47、粘着層46及びハードコート層26」が層状に順次設けられている。これらの層によって、「偏光板-電極層-配向膜-液晶層-配向膜-電極層-偏光板-ハードコート層」の積層構造が作られている。 …(中略)… 【0066】 図4Aは、第1電極配向層43の層構成を説明するための概略断面図である。本実施形態の第1電極配向層43は、第1偏光板41側から液晶層49側に向かって、ハードコート層53、第1樹脂基材29、ハードコート層53、インデックスマッチング層55、第1電極層31及び第1配向膜33が層状に順次設けられる。 【図4A】 [図:0001435707000008.jpg] 【0067】 図4Bは、第2電極配向層44の層構成を説明するための概略断面図である。本実施形態の第2電極配向層44は、液晶層49側から第2偏光板42側に向かって、第2配向膜34、第2電極層32、インデックスマッチング層55、ハードコート層53、第2樹脂基材30及びハードコート層53が層状に順次設けられる。 【図4B】 [図:0001435707000009.jpg] …(中略)… 【0070】 そして第1配向膜33と第2配向膜34との間には、図3に示すように、液晶層49の他にスペーサー52及びシール材36が設けられる。すなわち第1配向膜33と第2配向膜34との間には、第1配向膜33と第2配向膜34との間において液晶スペース35を区画するシール材36が設けられ、この液晶スペース35に液晶部材が充填されることで液晶層49が形成される。複数のスペーサー52は、少なくとも液晶スペース35に配置され、第1配向膜33及び第2配向膜34を支持するように離散的に配置される。各スペーサー52は、単一又は複数の部材によって構成可能であり、液晶スペース35のみにおいて積層方向へ延在してもよいし、一方の配向膜(例えば第2配向膜34)及び液晶スペース35を貫通するように積層方向へ延在してもよい。またスペーサー52はコア部と被覆部とを有し、当該被覆部が他方の配向膜(例えば第1配向膜33)と直接的に接触してもよい。したがって、例えば各スペーサー52のコア部が第2電極層32上から第2配向膜34を貫通しつつ第1配向膜33に至る直前まで液晶スペース35において延在し、第2配向膜34と同成分の被覆部がコア部上に設けられ、当該被覆部が第1配向膜33と直接的に接触することで、第1配向膜33及び第2配向膜34の間隔(セルギャップ)を各スペーサー52によって保持してもよい。 【0071】 シール材36は、液晶層49を構成する液晶部材の漏出を防ぐ役割を果たすとともに、第1電極配向層43(第1配向膜33)と第2電極配向層44(第2配向膜34)に接着して両者を相互に固定する役割を果たす。シール材36は、一般的には熱硬化性のエポキシ樹脂が用いられ、液晶スペース35への液晶部材の充填方式が真空注入方式の場合にはエポキシ樹脂製のシール材36を好適に用いることができる。なお液晶部材の充填方式としてODF(One Drop Fill)方式が用いられる場合には、熱硬化性及びUV硬化性(紫外線硬化性)を併せ持つハブリッドタイプの材料をシール材36として好適に用いることができる。これは、液晶が未硬化のシール材36に触れることは外観上の不具合を誘発するためである。したがってシール材36を構成する材料(シール材36の組成成分)に、例えば紫外線硬化型アクリル樹脂及びエポキシ樹脂が含まれることが好ましい。また液晶部材の漏出を防ぎつつ第1電極配向層43(第1配向膜33)及び第2電極配向層44(第2配向膜34)を相互に固定する観点から、シール材36の硬さ(硬度)は、デュロメーター(JIS K6253に準拠したタイプA;10N荷重)で測定した場合の最大ポイントが20以上90以下であることが好ましく、20以上50以下であることがより好ましい。またシール材36は、ガラス転移点(ガラス転移温度(Tg))が0℃以上60℃以下であることが好ましく、0℃以上40℃以下であることがより好ましい。 …(中略)… 【0078】 そして上述の機能層(図3に示す第1偏光板41、第1電極配向層43、第2電極配向層44、位相差補償フィルム45、第2偏光板42及びハードコート層26)は、隣接機能層同士が粘着層46によって接着され、一体的な積層構造を有する。この粘着層46を構成する成分は特に限定されず、接着対象の各層の特性に応じて粘着層46の構成成分が決められてもよい。本実施形態では、全ての粘着層46が光学透明粘着フィルム(すなわちOCA)24と同じ材料によって構成されるが、紫外線硬化性樹脂等の他の成分を含む粘着層46が用いられてもよいし、配置位置や接着対象に応じて他の箇所の粘着層46とは異なる成分を含む粘着層46が用いられてもよい。 【0079】 なお図3等に示す光透過プレート21、光学透明粘着フィルム24及び調光セル22の層構成は一例に過ぎず、他の機能層が調光セル22の一部として設けられてもよいし、他の機能部が調光セル22に対して付加的に設けられてもよい。例えば図示は省略したが、調光セル22及び光学透明粘着フィルム24の側部から光透過プレート21の曲面20の一部にわたって、保護材として機能するシール保護材を設けることができる。このシール保護材によって、光透過プレート21に対する調光セル22及び光学透明粘着フィルム24の接着力を補強できるだけではなく、調光セル22及び光学透明粘着フィルム24の隣接層間の接着力も補強できる。 【0080】 本件発明者は、鋭意研究の結果、曲面20(特に三次元曲面)に対して薄膜状の調光セル22を皺等の歪みなく貼り合わせるには、以下の条件を満たすように調光セル22及び光学透明粘着フィルム24を調整することが好ましいという知見を得るに至った。 【0081】 すなわち光学透明粘着フィルム24は、光学透明粘着フィルム24及び調光セル22が積層する方向に関する厚さが、50μm以上500μm以下であり、好ましくは200μm以上300μm以下であり、室温環境での貯蔵弾性率が、1×107Pa以上1×108Pa以下であることがさらに好ましい。光学透明粘着フィルム24の損失正接(tanδ)は0.5以上1.5以下が好ましく、さらに好ましくは0.7以上1.2以下である。 【0082】 光学透明粘着フィルム24は、光透過プレート21の曲面20と第1偏光板41(保護層47)とを接着する役割を果たすとともに、光透過プレート21の曲面20と第1偏光板41(保護層47)との間の曲率の相違を埋めるクッションとしての役割も果たす。したがって光学透明粘着フィルム24は、積層方向の厚さが小さ過ぎるとクッションとしての役割を適切に果たすことが難しくなる一方で、積層方向の厚さが大き過ぎると光透過プレート21の曲面に対して第1偏光板41(保護層47)を適切に固定することが難しくなる。また光学透明粘着フィルム24の貯蔵弾性率が大き過ぎると、調光セル22全体の剛性が大きくなって3次元的に形状が変化する曲面に対する追従性が不十分になる。一方、光学透明粘着フィルム24の貯蔵弾性率が小さ過ぎると、光学透明粘着フィルム24は流動性が増大し過ぎてしまい、光透過プレート21の曲面に対して第1偏光板41(保護層47)を適切に固定することが難しくなり、耐熱性等の信頼性が不十分になり通常の使用環境であっても発泡が生じる等の懸念がある。さらに光学透明粘着フィルム24の貯蔵弾性率が小さ過ぎると、光学透明粘着フィルム24の加工性が悪くなり、例えば光学透明粘着フィルム24をカットした際の糊のはみ出しに起因し、光学透明粘着フィルム24の望まれない分離が発生しうる。そのため皺等の歪みを生じさせることなく調光セル22を曲面20に対して適切に貼り合わせるには、光学透明粘着フィルム24の積層方向に関する厚さ及び貯蔵弾性率が上記範囲にあることが好ましいことを、本件発明者は新たに見出した。 …(中略)… 【0089】 以上説明したように本実施形態に係る調光装置10によれば、光透過プレート21の曲面20に対し、光学透明粘着フィルム24を介して調光セル22を歪みなく適切に貼り合わせることができる。特に本実施形態の調光セル22によれば、偏光板(第1偏光板41及び第2偏光板42)と液晶層49の配向制御との組み合わせによって調光制御が行われるため、簡素な構成で高度な透光性能及び遮光性能を実現することができる。 …(中略)… 【0210】 <光透過プレートによる調光セルの挟み込み構造> 本発明は、調光セル22が一対の光透過プレートによって挟まれる場合にも適用可能である。 …(中略)… 【0215】 図34は、調光装置10の他の例を示す概略断面図である。図34に示す調光装置10は、基本的に図33に示す調光装置10と同様に構成されているが、第2光透過プレート222は、接着層223を介して調光セル22の他方側に取り付けられている。 【図34】 [図:0001435707000010.jpg] 【0216】 接着層223の具体的な構成成分は特に限定されない。例えば、PVB(ポリビニルブチラール)等の接着性に優れた熱可塑性樹脂やその他の光透過性を有する粘着材によって、接着層223を構成することが可能である。 【0217】 図34の調光装置10においても、調光セル22は第1光透過プレート221及び第2光透過プレート222によって保護されるため、調光セル22はハードコート層26を有していなくてもよい。」 3 当審拒絶理由通知書における拒絶の理由の概要 当審拒絶理由通知書の拒絶の理由のうち、本願発明に対する理由2(進歩性の欠如)の概要は、次の理由を含むものである。 理由2(進歩性の欠如) 本願発明は、その出願前に発行された下記の引用文献5に記載された発明に基づいて、出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。 記 引用文献5.特開平6-18856号公報 4 引用文献5の記載事項及び引用発明の認定 (1) 引用文献5の記載事項 当審拒絶理由通知書の拒絶の理由において引用した、本願の出願前に発行された文献である引用文献5(特開平6-18856号公報)には、次の記載がある(なお、当合議体により、後記(2)の引用発明の認定に直接用いる記載に下線を付した。また、図面を最も関連する記載に続けて掲載した。)。 ア 特許請求の範囲 「【請求項1】相対向する内面にそれぞれ電極が形成された一対の樹脂フィルム間に液晶層を挟持してなり、3次曲面を有する一対の透明基板間に樹脂中間膜を介して挟持される3次曲面用液晶調光素子であって、 該樹脂フィルムの周縁端部に切り込み部が形成されていることを特徴とする3次曲面用液晶調光素子。」 イ 産業上の利用分野、発明が解決しようとする課題等(【0001】~【0008】) 「【0001】 【産業上の利用分野】本発明は、液晶素子の調光機能を利用した3次曲面用液晶調光素子に関する。 【0002】 【従来の技術】従来より、相対向する内面にそれぞれITO等の透明電極が形成された一対のPET(ポリエチレンテレフタレート)等の樹脂フィルムに、光硬化性樹脂等のマトリックス中に液晶が分散された液晶層を挟持してなる液晶調光素子が知られている(実開平1-136989号公報、実開平2-95321号公報参照)。 【0003】上記液晶調光素子は、電圧の印加により光の透過、散乱を制御することができ、例えばPVB(ポリビニルブチラール)などの樹脂中間膜を介して一対の無機ガラス等の透明基板に挟持されて、液晶調光ガラスとして使用に供されている。そして、この液晶調光ガラスは、例えば自動車のフロントガラスやサンルーフに利用されている(工業材料、1992年3月号(Vol.40,No.3)、P.47~51参照)。 【0004】 【発明が解決しようとする課題】ところで、サンルーフなどのような複曲面を有する3次曲面形状の液晶調光ガラスを製造する際に、以下のような問題がある。すなわち液晶調光素子を樹脂中間膜を介して一対のガラス基板に沿わせて合わせガラス化するときに、一対のガラス基板が複曲面を有する3次曲面ガラスの場合には、液晶調光素子に歪み応力が作用し、PET等の樹脂フィルムの特に周縁端部にシワが発生する。この結果、液晶調光素子を取り囲む樹脂中間膜に気泡が混入して、外観上問題となる。 【0005】このように、合わせガラス化する際に液晶調光素子を構成する樹脂フィルムにシワが発生するのは、樹脂フィルムにはITOなどの透明電極を蒸着により形成する必要があるので、樹脂フィルムとして高融点を有して耐熱性に優れた蒸着可能な材料を使用しなければならないからである。すなわち、上記合わせガラス化は、一般に加圧、加熱して行われ、このときPVBなどの樹脂中間膜は溶融して3次曲面ガラスの曲面に整合していくが、PET等の樹脂フィルムは高融点を有するため上記曲面に十分に整合することなく、特にその周縁端部にシワが発生しやすくなる。 【0006】本発明は上記実情に鑑みてなされたものであり、液晶調光素子の周縁端部の形状を工夫して、3次曲面ガラスに合わせガラス化しても、その周縁端部にシワが発生しにくい3次曲面用液晶調光素子を提供することを目的とする。 【0007】 【課題を解決するための手段】上記課題を解決する本発明の3次曲面用液晶調光素子は、相対向する内面にそれぞれ電極が形成された一対の樹脂フィルム間に液晶層を挟持してなり、3次曲面を有する一対の透明基板間に樹脂中間膜を介して挟持される3次曲面用液晶調光素子であって、該樹脂フィルムの周縁端部に切り込み部が形成されていることを特徴とする。 【0008】 【作用】上記したように本発明の3次曲面用液晶調光素子は、一対の樹脂フィルムの周縁端部に切り込み部が形成されている。この樹脂フィルムの周縁端部は、液晶調光素子を3次曲面を有する一対の透明基板に合わせガラス化する際に、歪み応力が集中的に作用してシワが発生しやすい部位である。そして、このシワが発生しやすい部位に切り込み部が形成されている。このため、本発明の液晶調光素子を3次曲面を有する一対の透明基板に樹脂中間膜を介して合わせガラス化しても、上記切り込み部により歪み応力が発散され、シワが発生しにくい。」 ウ 実施例(【0009】~【0016】) 【0009】 【実施例】以下、実施例により本発明を具体的に説明する。 本実施例は、本発明の3次曲面用液晶調光素子を用いて、3次曲面を有する液晶調光ガラスを作製したものである。図1にこの液晶調光ガラスの平面図を、図2に図1のA-A線断面図を示す。なお、この調光ガラスは、図1のA-A線と直角方向の断面形状が上の凸の形状をなし、全体として3次曲面のサンルーフ形状を有している。 【図1】 [図:0001435707000011.jpg] 【0010】本実施例に係る液晶調光ガラスは、一対のガラス基板1、1と、各ガラス基板1、1の内側に配された一対の樹脂中間膜2、2と、両樹脂中間膜2、2間に挟持された液晶調光素子3と、電極取り出し用の導電テープ4、4とから構成されている。なお、両ガラス基板1、1間の周縁部には、液晶調光素子3の外周を囲むように、上記樹脂中間膜2と一体的に樹脂周縁部2aが形成されている。 【図2】 [図:0001435707000012.jpg] 【0011】ガラス基板1は、ソーダ灰ガラスよりなり、厚さ2mmのものである。樹脂中間膜2は、EVA変性樹脂(商品名デュミラン、タケダ(株)製)よりなり、厚さ400μmのものである。液晶調光素子3は、一対の樹脂フィルム31、32と、各樹脂フィルム31、32の相対向する内面にそれぞれ形成された透明電極33、34と、両樹脂フィルム31、32に挟持された液晶層35とから構成されている。 …(中略)… 【0014】上記構成を有する液晶調光ガラスは以下のように製造した。まず、所定位置に切り込み部31a、32aが形成された樹脂フィルム31、32の一面上に真空蒸着により透明電極33、34を形成した。この相対向する内面に透明電極33、34が形成され、所定の間隔をおいて所定位置に保持された一対の樹脂フィルム31、32間に、PMMA及び二色性染料入りGHネマティック液晶の溶液を供給し、紫外線を照射してPMMAを硬化させて、液晶調光素子3を製造した。そして、液晶調光素子3の両端の所定部位の透明電極33、34上に、導電テープ4、4を貼り付けた。次いで、所定の3次曲面に成形された一対のガラス基板1、1間に、樹脂中間膜2、2を介して液晶調光素子3を挟持したものを、ゴム袋に入れ、1Paに真空引きしながら90℃で30分間保持して合わせガラス化し、本実施例の液晶調光ガラスを完成した。 …(中略)… 【0016】また、上記樹脂フィルム31、32として、PETの他にPES、PBT、TPX等を好適に用いることができ、その膜厚も50~200μm程度に適当に設定することができる。上記樹脂中間膜2も、上記EVA変性樹脂の他にPVB等を好適に用いることができ、その膜厚も30~400μm程度に適当に設定することができる。上記液晶層3も同様に、樹脂マトリックスとしてポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂等を、液晶としてZLI-1840、ZLI-1565(メルク社製)等を好適に用いることができ、その膜厚も5~50μm程度に適当に設定することができる。」 エ 発明の効果(【0017】) 「【0017】 【発明の効果】以上詳述しように本発明の3次曲面用液晶調光素子は、一対の樹脂フィルムの周縁端部に切り込み部が形成されているので、3次曲面を有する透明基板に樹脂中間膜を介して合わせガラス化する際にも、樹脂フィルムの周縁部にシワが発生しにくく、樹脂フィルムを取り囲む樹脂製中間膜に気泡が生じにくい。このため、本発明の液晶調光素子を用いれば、外観上良好な液晶調光ガラスを得ることが可能となる。 発明の液晶調光素子を3次曲面を有する一対の透明基板に樹脂製中膜を介して合わせガラス化しても、上記切り込み部により歪み応力が発散され、シワが発生しにくい。」 (2) 引用発明の認定 前記(1)に摘記した引用文献5の記載事項を総合すると、引用文献5には、実施例(【図2】)に係る次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。なお、認定の根拠となる記載箇所を括弧内に示した。 <引用発明> 「3次曲面用液晶調光素子を用いて作製された3次曲面を有する液晶調光ガラスであって、(【0009】) 一対のガラス基板1、1と、各ガラス基板1、1の内側に配された一対の樹脂中間膜2、2と、両樹脂中間膜2、2間に挟持された液晶調光素子3と、電極取り出し用の導電テープ4、4とから構成され、(【0010】) 両ガラス基板1、1間の周縁部には、液晶調光素子3の外周を囲むように、上記樹脂中間膜2と一体的に樹脂周縁部2aが形成され、(【0010】) 樹脂中間膜2は、EVA変性樹脂(商品名デュミラン、タケダ(株)製)よりなり、厚さ400μmのものであり、(【0011】) 液晶調光素子3は、一対の樹脂フィルム31、32と、各樹脂フィルム31、32の相対向する内面にそれぞれ形成された透明電極33、34と、両樹脂フィルム31、32に挟持された液晶層35とから構成され、(【0011】) 液晶調光ガラスは、所定の3次曲面に成形された一対のガラス基板1、1間に、樹脂中間膜2、2を介して液晶調光素子3を挟持したものを、ゴム袋に入れ、1Paに真空引きしながら90℃で30分間保持して合わせガラス化して完成される、(【0014】) 液晶調光ガラス。」 <引用発明参考図(【図2】)> [図:0001435707000013.jpg] 5 引用文献7、1、11、12の記載事項、周知技術及び技術常識の認定 (1) 引用文献7、1の記載事項及び周知技術1等の認定 ア 引用文献7の記載事項 当審拒絶理由通知書において引用した、本願の出願前に発行された文献である特開2007-61446号公報(以下「引用文献7」という。)には、次の記載がある。下線は当合議体が付したものであり、以下同様である。 「【技術分野】 【0001】 本発明は、光学素子が備えられた調光装置及び応用物品に関する。」 「【発明を実施するための最良の形態】 …(中略)… 【0042】 本発明に用いる光学素子として、非駆動時に透明状態または情報表示状態が安定に保持されるものを採用する。 …(中略)… 【0043】 その態様1は、液晶と高分子とを含む電気光学機能層を、少なくとも一方が透明な一対の電極付基板間に挟持し、電圧の印加に応じて該液晶の配向状態を変化させて光線透過状態と光線散乱状態とを呈するようにされた液晶光学素子であって、該高分子は、複数の柱状樹脂を形成し、該柱状樹脂は、その長軸方向が該電極付基板面の法線方向に略一致しているものと、当該法線方向からチルトしているものとが混在し、該電気光学機能層における該高分子の含有量を10wt%以上とし、該光線透過状態における該液晶の配向方向は、該基板面の法線方向に略一致している液晶光学素子である。 【0044】 図1にその模式的断面図を示す。この液晶/樹脂複合体素子40は、表基板41と裏基板42の間に配向膜43,49、樹脂/液晶複合体層45、スペーサ46、周辺シール47、マトリックス電極44,48が備えられている。図2は、液晶のプレチルト状態を示す模式図である。 【図1】 [図:0001435707000014.jpg] …(中略)… 【0075】 液晶光学素子1は、以下のようにして製造する。まず、第1電極63a面内に微量のスペーサー(不図示)を散布し、対向させた第1のガラス基板61a、及び第2のガラス基板61bの四辺を、注入孔を除いてエポキシ樹脂等のシール材で封止する。これにより、空セルが製造される。次に、真空注入法によって液晶組成物を空セル内に満たす。このとき、シール材として硬化後に透明となる材料を用いれば、表示体を透明状態とした際に、情報表示体の周辺部に至るまで、透明性を呈することができるので好ましい。 【0076】 硬化後に透明なシール材としては、エポキシ系、アクリル系、ウレタン系、エン-チオール系又はそれらの混合系などを挙げることができる。シール材の硬化は、熱硬化、光硬化等により行うことができる。また、前記スペーサにおいても透明状態における透過率を向上させるため、透明なものを用いることが好ましい。 …(中略)… 【0085】 また、透明パネルの一部又は全体が曲面体であってもよい。曲面体の曲面部(例えば、半円柱状部分など)に光学素子を設置するには、光学素子の基板をフィルム基板とし、柔軟構造を有する表示素子を採用すればよい。カイラルネマチック液晶光学素子をフィルム基板間に設けて、曲面化できる例が知られている。この場合、駆動ICなどはフィルム基板の端に相互の間隙を空けて設置し、ある程度の屈曲にたえるような構造にすればよい。 …(中略)… 【0176】 図18は、本実施形態に係るエスカレータ装置の模式的な斜視図である。エスカレータ装置30は、ハンドレール付き側壁31、側壁面支持台32、液晶光学素子33等を備える。エスカレータ装置30は左右に設けられたハンドレール付き側壁31に沿って昇降する多数の踏台が無端状に連結されている。ハンドレール付き側壁31は、曲面を持つ一対の透明板から構成されている。 【図18】 [図:0001435707000015.jpg] 【0177】 一対の透明板の間隙は、気体層となっている。この内部空間に液晶光学素子33が接着シート等を介して貼着せしめられている。接続配線やTCP,FPC等は、例えば側壁面支持台32の内部に設けることができる。ハンドレール付き側壁31の曲面部に液晶光学素子33を設置するには、液晶光学素子33の基板をフィルム基板とし、柔軟構造を有するものを採用すればよい。」 イ 引用文献1の記載事項 原査定において引用された、本願の出願前に発行された文献である特開2006-330100号公報(以下「引用文献1」という。)には、次の記載がある。 「【技術分野】 【0001】 本発明は、調光装置及びその製造方法に関する。」 「【発明を実施するための最良の形態】 …(中略)… 【0030】 図1(a)及び図1(b)は、本実施形態に係る調光装置の構成を模式的に示す斜視図である。本実施形態に係る調光装置10は、同図に示すように、一対の透明板たる第1透明板1及び第2透明板2、光学素子たる液晶光学素子3、接続配線4、フレーム5等が備えられている。 【0031】 第1透明板1及び第2透明板2(以降、これらをまとめて「第1透明板1等」とも言う)は、略同一の大きさの矩形状の平面体からなり、互いに対向配置されている。調光装置10の内部を保護し、筐体として機能するように調光装置10の前面と背面に配置されている。なお、第1透明板1及び第2透明板2は、平面体からなるものに限定されず、例えばそれぞれ独立に曲面状のものを用いてもよい。また、第1透明板1等の形状としては、用途やニーズに応じて例えば円形状等の任意の形状に変更することができる。 【0032】 第1透明板1等は、液晶光学素子3のための保護プレートとして機能するため、不撓性透明板が使用されることが好ましい。第1透明板1等は、ガラス若しくはポリカーボネートなどの透明樹脂を用いることができる。調光装置10の設置場所や用途に応じて、適切な材料を選択する。軽量化の観点からは、樹脂を利用することが好ましい。公共的な場所に設置する場合などにおいては、表面に傷がつきにくく、強度の点で優れたガラス板を使用することが好ましい。車両用に使用される強化ガラス、風冷強化法や化学強化法で製造した通常の強化ガラスを適用してもよい。また、二枚のガラスを樹脂層を介して積層したガラス構造を用いてもよい。必要に応じて第1透明板1等の外側表面にARコート(Anti Reflection Coating)付フィルム等を貼り合わせてもよい。 【0033】 液晶光学素子3は、第1透明板1と第2透明板2との間隙に配設されている。本実施形態においては、縦2×横2の合計4個の略同一サイズの矩形状の液晶光学素子3が並設されている。各液晶光学素子3のそれぞれを第1透明板1あるいは第2透明板2を介して視認可能なように互いに重ならないように略同一平面上に配設している。液晶光学素子3の詳細な構造については、後述する。 【図1】 [図:0001435707000016.jpg] …(中略)… 【0044】 図2は、図1(a)のA-A'切断部断面図である。同図に示すように、第1透明板1と液晶光学素子3、第2透明板2と液晶光学素子3とは、それぞれ間隙を持って対向配置されており、第1透明板1と第2透明板2との間隙に形成される空間に外部からの衝撃を緩和する透明固体層8が充填されている。すなわち、透明固体層8は、第1透明板1及び第2透明板2と、液晶光学素子3とが対向する間隙、第1透明板1と第2透明板2とが液晶光学素子3を介さずに直接対向している間隙に充填されている。 【図2】 [図:0001435707000017.jpg] …(中略)… 【0050】 透明固体層8は、可視域において光透過性が高いものが好ましい。また、第1透明板1及び第2透明板2と、液晶光学素子3とが一体となって一枚のガラス板であるかのように見えるように、透明固体層8の屈折率は、液晶光学素子3、第1透明板1、第2透明板2の接触面の屈折率に近似するものであることが好ましい。 【0051】 また、透明固体層8は、液状樹脂材料を第1透明板1と第2透明板2との間隙に形成された空間に注入し、注入後に硬化することができるものが好ましい。これにより液晶光学素子3への応力を効果的に抑制する透明固体層8を効率的に形成することができる。また、硬化による収縮の小さいものを選択することが好ましい。液状樹脂材料としては、重合性化合物と重合開始剤を少なくとも含むものであることが特に好ましい。硬化手段としては、熱によるもの、光によるものが好ましい。なお、透明固体層8としては、ゲル状のものも含む。 【0052】 透明固体層8を構成する主成分の樹脂として、シリコーン、(メタ)アクリル、ウレタンなどを挙げることができる。製造工程の簡易性から、好ましい透明樹脂の一つは、(メタ)アクリル樹脂である。例えば、Tg-10℃、ピークtanδ値1.2、可視透過率92%といった樹脂を用いることができる。 …(中略)… 【0060】 次に、液晶光学素子3の構造について説明する。図3は、本実施形態に係る液晶光学素子3の構成の一例を示す模式的断面図であり、図1におけるB-B'切断部断面図である。同図に示すように、本実施形態に係る液晶光学素子3は、第1の透明基板31、第2の透明基板32、第1透明電極33、第2透明電極34、調光層35、スペーサ36、周辺シール37、第1配向膜38、第2配向膜39等を備えている。 【図3】 [図:0001435707000018.jpg] 【0061】 第1の透明基板31と第2の透明基板32とは、略同一の大きさの矩形状のものからなり、互いに所定の間隙を持って対向配置されている。また,第1の透明基板31及び第2の透明基板32の一辺近傍に互いに非対向領域が形成されるように,透明基板を平行にずらして対向配置されている。すなわち、第1の透明基板31上の一辺近傍に第2の透明基板32と対向しない第1非対向領域31aが,第2の透明基板32上の一辺近傍に第1の透明基板31と対向しない第2非対向領域32aが形成されている。この第1非対向領域31a、第2非対向領域32aには、前述の接続配線4が固設されている。これにより、接続配線4の厚み方向の設計自由度を高めることができる。特に、液晶/高分子複合体からなる調光層35のように第1の透明基板31と第2の透明基板32との離間距離が小さい場合に有用である。また、液晶光学素子に接続配線を固設する製造工程の簡易化を図ることができる。 【0062】 第1非対向領域31a及び第2非対向領域32aの幅は、配設される接続配線4の本数に応じて適宜決定する。例えば、2本の接続配線4を配設する場合には、幅を7mm程度とすることができる。第1の透明基板31及び第2の透明基板32としては、透明なガラス基板、ポリエステルフィルム等のフィルム基板、これらの組み合わせからなる基板等を用いることができる。なお、第1の透明基板31及び第2の透明基板32の形状として、矩形状のものを例に挙げて説明したが、これに限定されるものではなく、例えば円形状のものを用いてもよい。」 ウ 周知技術1の認定 前記ア及びイに摘記した引用文献7、1の記載事項に例示されているように、次の技術事項は、当業者にとって周知技術であったと認められる(以下「周知技術1」という。)。 <周知技術1> 「液晶を用いた調光用の光学素子として、それぞれ樹脂基板を含む一対の積層体間にシール材を配置した液晶セルを用いること。」 エ 自明の技術事項Aの認定 前記イに摘記した引用文献1の記載事項に例示されているように、次の技術事項は、当業者にとって自明の技術事項であったと認められる(以下「自明の技術事項A」という。)。 <自明の技術事項A> 「透明板間に液晶セルを封止することに透明度の高い硬化性樹脂を用いることができること。」 (2) 引用文献11、12の記載事項及び技術常識アの認定 ア 引用文献11の記載事項 当審において新たに引用する、本願の出願前に発行された文献である特開2016-110224号公報(以下「引用文献11」という。)には、次の記載がある。 「【技術分野】 【0001】 本発明は、入力装置などに用いられる電極、およびその製造方法に関する。以下では、入力装置の代表例としてタッチパネルセンサーを例に挙げて説明するが、本発明はこれに限定されない。」 「【0070】 図12は、入力装置外付型の液晶表示装置の構成の一例を示す概略断面図である。図12に示す液晶表示装置40は、カバーガラス41、タッチパネル42、ディスプレイ43を有している。タッチパネル42として上述した図11の構造の入力装置が用いられうる。カバーガラス41、タッチパネル42、ディスプレイ43のそれぞれは、OCA(Optically Clear Adhesive、光学透明両面)テープ、またはOCR(Optical clear resin、光学透明樹脂)などの接着層44によって接着されている。ディスプレイ43には、図示していないがカラーフィルタ基板、液晶、TFT基板、バックライトユニット等が配設される。 【図12】 [図:0001435707000019.jpg] 」 イ 引用文献12の記載事項 当審において新たに引用する、本願の出願前に発行された文献である国際公開第2015/053089号(以下「引用文献12」という。)には、次の記載がある。 「技術分野 [0001] 本発明は、押圧検出装置及び押圧検出タッチパネルに関する。」 「[0017] 本実施形態の一例に係る押圧検出装置10について、図を用いて具体的に説明する。 図1は、本実施形態に係る押圧検出装置を備える押圧検出タッチパネルの一例について厚さ方向の断面を概略的に示す断面図である。 図2A~2Eは、本実施形態に係る押圧検出装置を押圧検出タッチパネルの内、押圧検出部材30の一例について厚さ方向の断面を概略的に示す断面図である。 [0018] 本実施形態の一例に係る押圧検出装置10は、加圧手段が接触して圧力が加えられる接触面12Aを有する被加圧部材12と、押圧検出部材30と、を備える。 …(中略)… また、この一例においては、粘接着層14が、被加圧部材12と位置検出部材32との間、位置検出部材32と押圧検出部材30との間、及び、押圧検出部材30における被加圧部材12が配置された側と反対側の面にも配置されている。(後略) [図1、2A] [図:0001435707000020.jpg] 」 「[0021] 押圧検出装置10は、被加圧部材12の接触面12Aに加圧手段が接触して圧力が加えられると、被加圧部材12と、位置検出部材32と、粘接着層14と、押圧検出部材30とそこに含まれる高分子圧電部材20と、が共に撓む。この撓みにより、高分子圧電部材20において、圧力が加えられた位置に電荷が発生する。 発生した電荷は、第1電極の端面に電気的に接続された第1取り出し電極26により取り出される。」 「[0023] 本実施形態の一例である押圧検出装置10は、位置検出部材32を備えている。 本実施形態の一例である位置検出部材32は、被加圧部材12の接触面12Aの反対側に、粘接着層14を介して配置されており、具体的には、この粘接着層14から順番に、第2電極22と、PETなどの耐熱性が高いフィルム24と、粘接着層14と、第2電極22と、PETなどの耐熱性が高いフィルム24と、から構成される。 第2電極22は、フィルム24又は被加圧部材12に接触して配置されていればよく、被加圧部材12の接触面12Aの反対側の面に、接触して配置されていてもよい。 位置検出部材32の詳細については、後述する。」 「[0101]<粘接着層> 本発明における粘接着層は、粘着性及び接着性を有する層である。粘接着層は、押圧検出装置における各部材の間に配置することができる。 本発明における押圧検出装置の場合、例えば、被加圧部材と高分子圧電部材との間に、粘接着層が配置されていることが好ましい。また、上述の位置検出部材を配置している場合、位置検出部材と高分子圧電部材との間に粘接着層が配置されていることが好ましい。 粘接着層としては両面をセパレータでラミネートしてある両面テープ(OCA;Optical Clear Adhensive)の粘接着層を用いることができる。 また、上記粘接着層は、溶剤系、無溶剤系、水系などの粘接着コート液、UV硬化型OCR(Optical Clear Resin)、ホットメルト接着剤、などを用いて形成することもできる。 [0102] OCAとしては、光学用透明粘着シートLUCIACSシリーズ(日東電工株式会社製)や高透明両面テープ5400Aシリーズ(積水化学工業株式会社製)、光学粘着シートOpteriaシリーズ(リンテック株式会社製)、高透明性接着剤転写テープシリーズ(住友スリーエム株式会社製)、SANCUARYシリーズ(株式会社サンエー化研製)などが挙げられる。 [0103] 粘着コート液としては、SKダインシリーズ(綜研化学株式会社製)、ファインタックシリーズ(DIC株式会社製)、ボンコートシリーズ、LKGシリーズ(藤倉化成株式会社製)、コーポニールシリーズ(日本合成化学工業株式会社製)などが挙げられる。 [0104] 粘接着層としては、高分子圧電部材の加熱を防ぐ観点から、OCAの粘接着層、OCRを用いて形成された粘接着層、高分子圧電部材以外の部材に粘接着コート液を塗布して形成した粘接着層、高分子圧電部材以外の部材にホットメルト接着剤を使用して形成した粘接着層が好ましい。 [0105] 粘接着層の材料には特に制限はないが、粘接着層は、樹脂を含むことが好ましい。 樹脂としては、例えば、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ウレタン樹脂、セルロース系樹脂、酢酸ビニル樹脂、エチレン-酢酸ビニル樹脂、エポキシ樹脂、ナイロン-エポキシ系樹脂、塩化ビニル樹脂、クロロプレンゴム系樹脂、シアノアクリレート系樹脂、シリコーン系樹脂、変性シリコーン系樹脂、水性高分子-イソシアネート系樹脂、スチレン-ブタジエンゴム系樹脂、ニトリルゴム系樹脂、アセタール樹脂、フェノール樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、メラミン樹脂、ユリア樹脂、臭素樹脂、デンプン系樹脂、ポリエステル樹脂、ポリオレフィン樹脂等が挙げられる。」 ウ 技術常識アの認定 前記ア及びイに摘記した引用文献11、12の記載事項に例示されているように、次の技術事項は、当業者にとって技術常識であったと認められる(以下「技術常識ア」という。)。 <技術常識ア> 「装置を構成する複数の光学部材を光の透過に悪影響を与えないように粘着又は接着するために、OCRを用いること。」 6 本願発明と引用発明の対比 (1) 対比分析 本願発明と引用発明を対比する。 ア 構成Xの観点(調光装置) (ア) 構成Xは、「曲面を有する第1光透過プレートと、第2光透過プレートと、調光セルと、を備える調光装置」に係る発明であることを特定するものである。 (イ)a 引用発明における「液晶調光ガラス」は、「一対のガラス基板1、1と」「液晶調光素子3」「から構成され」、「一対のガラス基板1、1」は「所定の3次曲面に成形された」ものである。ここで「ガラス基板1、1」が光透過性であることは明らかである。 そうすると、引用発明における「所定の3次曲面に成形された」「一対のガラス基板1、1」の一方及び他方は、それぞれ、本願発明における「曲面を有する第1光透過プレート」及び「第2光透過プレート」に相当する。 b また、引用発明における「一対の樹脂フィルム31、32と、各樹脂フィルム31、32の相対向する内面にそれぞれ形成された透明電極33、34と、両樹脂フィルム31、32に挟持された液晶層35とから構成され[る]」「液晶調光素子3」と、本願発明における「調光セル」は、調光素子の点において共通する。 (ウ) そうすると、構成Xの観点における本願発明の引用発明との一致点及び相違点は、それぞれ次のa及びbに示すとおりである。 a 構成Xの観点における一致点(構成X′) X′ 「曲面を有する第1光透過プレートと、第2光透過プレートと、調光素子と、を備える調光装置」の発明である点。 b 構成Xの観点における相違点(構成Xに係る相違点) 調光素子が、 本願発明においては「調光セル」であるのに対して、 引用発明においては、「一対の樹脂フィルム31、32と、各樹脂フィルム31、32の相対向する内面にそれぞれ形成された透明電極33、34と、両樹脂フィルム31、32に挟持された液晶層35とから構成され[る]」「液晶調光素子3」である点。 イ 構成Aの観点(調光セル) (ア) 構成Aは、「調光セル」が「前記第1光透過プレートと前記第2光透過プレートとの間に配置され、第1樹脂基材を含む第1積層体と、第2樹脂基材を含む第2積層体と、前記第1積層体と前記第2積層体との間に設けられた液晶層」を有することである。 (イ) 引用発明における「液晶調光素子3」は、「一対のガラス基板1、1」「の内側に配された一対の樹脂中間膜2、2」「間に挟持された」ものであるから、本願発明にいうところの「前記第1光透過プレートと前記第2光透過プレートとの間に配置され[た]」ものであるといえる。 (ウ)a 引用発明における「一対の樹脂フィルム31、32と、各樹脂フィルム31、32の相対向する内面にそれぞれ形成された透明電極33、34」が形成する「樹脂フィルム32」と「透明電極34」の積層体及び「樹脂フィルム31」と「透明電極33」の積層体は、それぞれ、本願発明における「第1樹脂基材を含む第1積層体」及び「第2樹脂基材を含む第2積層体」に相当する。 b また、引用発明における「液晶層35」は、本願発明における「液晶層」に相当する。 c そうすると、引用発明における「液晶調光素子3」は「一対の樹脂フィルム31、32と、各樹脂フィルム31、32の相対向する内面にそれぞれ形成された透明電極33、34と、両樹脂フィルム31、32に挟持された液晶層35とから構成され[る]」ものであるから、本願発明にいうところの「第1樹脂基材を含む第1積層体と、第2樹脂基材を含む第2積層体と、前記第1積層体と前記第2積層体との間に設けられた液晶層と、を有[する]」ものであるといえる。 (エ) 前記(イ)及び(ウ)の検討結果をまとめると、本願発明と引用発明は、構成Aの観点において、「構成Xに係る相違点」を除き、次のA′の点において一致する。 A′ 「調光素子」は「前記第1光透過プレートと前記第2光透過プレートとの間に配置され、第1樹脂基材を含む第1積層体と、第2樹脂基材を含む第2積層体と、前記第1積層体と前記第2積層体との間に設けられた液晶層」を有する点。 ウ 構成Bの観点(光学透明粘着フィルム) (ア) 構成Bは、「前記第1光透過プレートの曲面と前記調光セルとの間に」「光学透明粘着フィルムが充填され[る]」ことである。 (イ) 引用発明において、「液晶調光素子3」は「一対のガラス基板1、1」「の内側に配された一対の樹脂中間膜2、2」「間に挟持され[る]」ものであり、「液晶調光ガラスは、所定の3次曲面に成形された一対のガラス基板1、1間に、樹脂中間膜2、2を介して液晶調光素子3を挟持したものを、ゴム袋に入れ、1Paに真空引きしながら90℃で30分間保持して合わせガラス化して完成され[る]」から、「樹脂中間膜」の一方は「一対のガラス基板1、1」の一方の所定の3次曲面と「液晶調光素子3」の間に充填されるといえる。 (ウ) 「樹脂中間膜」は「EVA変性樹脂」よりなり、「液晶調光ガラス」において用いられるものであるから、透明であることは明らかである。そうすると、引用発明における「一対のガラス基板1、1」の一方の「所定の3次曲面」と「液晶調光素子3」の間の「樹脂中間膜」は、本願発明における「光学透明粘着フィルム」と、「透明フィルム」である点において共通する。 (エ) 前記(イ)及び(ウ)の検討結果をまとめると、本願発明と引用発明の構成Bの観点における一致点及び相違点は、「構成Xに係る相違点」を除くと、次のa及びbのとおりである。 a 構成Bの観点における一致点(B′) B′ 前記第1光透過プレートの曲面と前記調光素子との間に透明フィルムが充填される点。 b 構成Bの観点における相違点 「第1光透過プレートの曲面と前記調光素子との間に充填される透明フィルム」が、 本願発明においては、 「光学透明粘着フィルム」であるのに対して、 引用発明においては、 「EVA変性樹脂」よりなる「樹脂中間膜2」である点。 エ 構成Cの観点(接着層) (ア) 構成Cは、「第2光透過プレート」が「接着層を介して前記調光セルの他方側に取付けられて[いる]」ことである。 (イ) 引用発明において、「液晶調光素子3」は「樹脂中間膜2、2間に挟持され」、「樹脂中間膜2、2」は「一対のガラス基板1、1」「の内側に配され」「液晶調光ガラスは、所定の3次曲面に成形された一対のガラス基板1、1間に、樹脂中間膜2、2を介して液晶調光素子3を挟持したものを、ゴム袋に入れ、1Paに真空引きしながら90℃で30分間保持して合わせガラス化して、製造完成され[る]」から、「一対のガラス基板1、1」の他方は「樹脂中間膜2」によって「液晶調光素子3」の他方側に取り付けられるといえ、この「樹脂中間膜2」は本願発明における「接着層」に相当するといえる。 (ウ) したがって、本願発明と引用発明は、「構成Xに係る相違点」を除くと、構成Cの観点において次のC′の点において一致する。 C′ 第2光透過プレートは、接着層を介して前記調光素子の他方側に取付けられる点。 オ 構成B1の観点(光学透明粘着フィルム) (ア) 構成B1は、「光学透明粘着フィルムは、前記第1光透過プレートの前記曲面及び前記調光セルに直接接着[する]」ことである。 (イ) 引用発明において、「液晶調光ガラスは、所定の3次曲面に成形された一対のガラス基板1、1間に、樹脂中間膜2、2を介して液晶調光素子3を挟持したものを、ゴム袋に入れ、1Paに真空引きしながら90℃で30分間保持して合わせガラス化して完成され[る]」から、「樹脂中間膜2」が「所定の3次曲面に成形された一対のガラス基板1、1」と「液晶調光素子3」に直接接着することは明らかである。 (ウ) そうすると、本願発明は引用発明と構成B1の観点において、「構成Xに係る相違点」及び「構成Bに係る相違点」を除き、次の構成B1′の点において一致する。 B1′ 前記透明フィルムは、前記第1光透過プレートの前記曲面及び前記調光素子に直接接着する点。 カ 構成Dの観点(ガラスプレート) (ア) 構成Dは、「第1光透過プレート及び前記第2光透過プレートはガラスプレートであ[る]」ことである。 (イ) 前記ア(イ)aのとおり、引用発明において、本願発明における「曲面を有する第1光透過プレート」及び「第2光透過プレート」に相当するものは、「一対のガラス基板1、1」の一方及び他方であるから、引用発明は本願発明の構成Dを充足する。 (ウ) したがって、本願発明と引用発明は、構成Dの観点である次の点において一致する。 「第1光透過プレート及び前記第2光透過プレートはガラスプレートであ[る]」点。 キ 構成Eの観点(シール材) (ア) 構成Eは、「前記第1積層体と前記第2積層体との間にシール材が位置[する]」ことである。 (イ) 引用発明において「液晶調光素子3」はシール材を備えないから、本願発明は引用発明と構成Eの観点において相違する。 ク 構成B2の観点(光学透明粘着フィルム) (ア) 構成B2は、「光学透明粘着フィルムがOCR(Optical Clear Resin)により形成され[る]」ことである。 (イ) 前記ウの構成Bの観点での対比分析の検討結果も踏まえると、本願発明の引用発明との構成B2の観点における相違点は、構成Bに係る相違点を除くと、次のとおりである。 透明フィルムが、 本願発明においては、「OCR(Optical Clear Resin)により形成され[る]」のに対して、 引用発明においては、「EVA変性樹脂」よりなる点において相違する。 ケ 構成C1の観点(接着層) (ア) 構成C1は、「前記第2光透過プレートと前記調光セルとの間に充填される前記接着層が、OCR(Optical Clear Resin)により構成されている」ことである。 (イ) 前記エの構成Cの観点での対比分析の検討結果も踏まえると、本願発明の引用発明との構成C1の観点における相違点は、構成Xに係る相違点及び構成Cに係る相違点を除くと、次のとおりである。 「第2光透過プレートと前記調光素子の他方側に介在して両者を取付ける接着層」が、 本願発明においては、「OCR(Optical Clear Resin)により構成されている」のに対して、 引用発明においては、「EVA変性樹脂」よりなる点。 (2) 一致点及び相違点 前記(1)の対比分析の結果をまとめると、本願発明と引用発明の一致点及び相違点は、それぞれ次のア及びイに示すとおりである。 ア 一致点 「曲面を有する第1光透過プレートと、第2光透過プレートと、調光素子と、を備える調光装置であって、 前記調光素子は、前記第1光透過プレートと前記第2光透過プレートとの間に配置され、第1樹脂基材を含む第1積層体と、第2樹脂基材を含む第2積層体と、前記第1積層体と前記第2積層体との間に設けられた液晶層と、を有し、 前記第1光透過プレートの曲面と前記調光素子との間には透明フィルムが充填され、 前記第2光透過プレートは、接着層を介して前記調光素子の他方側に取付けられており、 前記透明フィルムは、前記第1光透過プレートの前記曲面及び前記調光素子に直接接着し、 前記第1光透過プレート及び前記第2光透過プレートはガラスプレートである、 調光装置」の発明である点。 イ 相違点 (ア) 相違点1 調光素子が、 本願発明においては、「調光セル」であって、 「(第1樹脂基材を含む)第1積層体と(第2樹脂基材を含む)前記第2積層体との間にシール材が位置[する]」のに対して、 引用発明においては、「一対の樹脂フィルム31、32と、各樹脂フィルム31、32の相対向する内面にそれぞれ形成された透明電極33、34と、両樹脂フィルム31、32に挟持された液晶層35とから構成され[る]」「液晶調光素子3」であり、 (第1樹脂基材を含む)第1積層体と、(第2樹脂基材を含む)第2積層体との間に位置するシール材を有しない点。 (イ) 相違点2 「第1光透過プレートの曲面と前記調光素子との間に充填される透明フィルム」が、 本願発明においては、 「光学透明粘着フィルム」であって、 「OCR(Optical Clear Resin)により形成され[る]」のに対して、 引用発明においては、 「EVA変性樹脂」よりなる「樹脂中間膜2」である点。 (ウ) 相違点3 「第2光透過プレートと前記調光素子の他方側に介在して両者を取付ける接着層」が、 本願発明においては、 「OCR(Optical Clear Resin)により構成されている」のに対して、 引用発明においては、 「EVA変性樹脂」よりなる点。 7 判断 (1) 相違点1について 「液晶を用いた調光用の光学素子として、それぞれ樹脂基板を含む一対の積層体間にシール材を配置した液晶セルを用いること」は、周知の技術事項である(前記「周知技術1」参照)。したがって、引用発明における液晶調光素子3に代えて、このような周知の液晶セルを採用し、相違点1に係る本願発明の構成を備えるようにすることは、当業者には自明の設計変更にすぎない。 (2) 相違点2、3について 「透明板間に液晶セルを封止することに透明度の高い硬化性樹脂を用いることができること」は、当業者には自明であるから(前記「自明の技術事項A」参照)、引用発明におけるEVA変性樹脂に代えて、透明度の高い硬化性樹脂を用いることは、当業者には自明の設計変更上の選択肢である。 そして、「装置を構成する複数の光学部材を光の透過に悪影響を与えないように粘着又は接着するために、OCRを用いること」は技術常識であるから(前記「技術常識ア」参照)、EVA変性樹脂に代えて透明度の高い硬化性樹脂を用いるに際して、透明度の高い硬化性の樹脂であるOCRを用いるようにすることは、当業者には自明の設計変更である。 かかる設計変更の結果、相違点2、3を充足することとなるから、引用発明において、相違点2、3に係る本願発明の構成を備えるようにすることは、当業者には自明の設計変更にすぎない。 (3) 総合評価 前記(1)及び(2)において検討したとおり、引用発明において、前記相違点1~3に係る本願発明の構成を備えるようにすることは、当業者には自明の設計変更にすぎず、引用発明に基づいて当業者が容易に想到し得たことである。 そして、相違点1~3を総合的に勘案しても、本願発明が奏する効果としては、当該構成のものとして当業者が予測・発見困難であり、かつ、格別顕著な効果を認めることはできない。 したがって、本願発明は、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 8 最新の意見書における請求人の主張について 請求人は、本願発明によれば、第1光透過プレートの曲面と調光セルとの間に充填される光学透明粘着フィルムと、第2光透過プレートと調光セルとの間に充填される接着層とが、いずれもOCRによって構成され、OCRが両者において共通に使用されるため、調光装置の製造において利便性が高いという有利な効果が奏されるのに対して、引用発明等においては、第1光透過プレートの曲面と調光セルとの間に充填される光学透明粘着フィルムと、第2光透過プレートと調光セルとの間に充填される接着層のいずれもOCRによって構成することの開示は無いから、本願発明は進歩性を有する旨主張している。 しかし、引用発明における液晶調光素子3を封止するEVA変性樹脂に代えて透明度の高い硬化性の樹脂であるOCRを選択することが当業者にとって自明の設計変更にすぎないことは、前記7(2)において説示したとおりであり、封止用の樹脂が表側と反対側で共通であるべきことは、自明のことにすぎず、共通の材料とすると利便性が高いことは本願発明の構成が奏する効果として自明のことにすぎないから、請求人の主張は前記7(3)の結論を左右するものではない。 9 むすび 以上検討のとおり、本願発明は、特許法29条2項の規定により、特許を受けることができない。 したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。

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2024-015001

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