特許拒絶査定不服審判
2024-012013
電気化学セルの品質を評価するシステムおよび方法
- 審判番号
- 2024-012013
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2022-173055
- 請求日
- 2024年07月22日
- 審決日
- 2026年01月16日
- 公報発行日
- 2026年07月31日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】カムエクス パワー エルエルシー
- 【請求人代理人】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
- 【請求人代理人】森田 拓
- 【請求人代理人】前川 純一
- 【請求人代理人】永島 秀郎
- 【請求人代理人】上島 類
- 審判長/審判官
- 審判長 濱野 隆
- 審判官 谷垣 圭二
- 審判官 関口 英樹
- 分類
- P18 .121-Z (G01R)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2022-173055「電気化学セルの品質を評価するシステムおよび方法」拒絶査定不服審判事件〔令和 5年 1月24日出願公開、特開2023- 11772〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
1 手続の経緯
本願は、2017年(平成29年)11月10日を国際出願日とする外国語特許出願(特願2019-524191号)の一部を、令和4年10月28日に新たな外国語書面出願としたものであって(パリ条約による優先権主張 2016年11月10日(以下「優先日」という。) 米国)、その手続の経緯の概略は、次のとおりである。
令和4年10月28日 :翻訳文の提出
同年11月25日 :手続補正書の提出
令和5年10月18日付け:拒絶理由通知書
令和6年 1月19日 :意見書、手続補正書の提出
同年 3月21日付け:拒絶査定(以下「原査定」という。)
(同月26日 :原査定の謄本の送達)
同年 7月22日 :審判請求書、手続補正書の提出
2 本願発明について
(1) 本願発明の認定
本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、令和6年7月22日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された次に示す事項により特定されるとおりのものである。
「【請求項1】
電気化学セルにおける内部障害を検出する方法であって、前記方法は、
測定時間にわたって、それぞれ同じ極性を有する、第1の電気化学セルのテスト端子と第2の電気化学セルのテスト端子との間の電圧差もしくは電圧差変化率を測定するステップ、および、
前記測定に基づいて、前記第1の電気化学セルもしくは前記第2の電気化学セルを受容するステップ、または、
前記電気化学セルにおける内部障害を測定するステップに基づいて、前記第1の電気化学セルもしくは前記第2の電気化学セルを廃棄するステップ、
を含み、
電圧差を測定するステップのとき、前記測定は、前記測定時間にわたって、連続的に実行され、または、1つの測定の開始から次の測定の開始までの時間が5秒以下であるように迅速に連続して実行され、
前記電圧差は、300,000Ω超の抵抗の内部障害に起因する、
方法。」
(2) 本願発明の分説
検討の便宜上、本願発明の構成を次のように構成X’(X)と構成Aから構成Dまでに分説する。また、参考図として、本願の【図1】を元に部材名を記入したものを掲載する。
<本願発明の分説>
X’電気化学セルにおける内部障害を検出する方法であって、前記方法は、
A 測定時間にわたって、それぞれ同じ極性を有する、第1の電気化学セルのテスト端子と第2の電気化学セルのテスト端子との間の電圧差もしくは電圧差変化率を測定するステップ、および、
B 前記測定に基づいて、前記第1の電気化学セルもしくは前記第2の電気化学セルを受容するステップ、または、
前記電気化学セルにおける内部障害を測定するステップに基づいて、前記第1の電気化学セルもしくは前記第2の電気化学セルを廃棄するステップ、
を含み、
C 電圧差を測定するステップのとき、前記測定は、前記測定時間にわたって、連続的に実行され、または、1つの測定の開始から次の測定の開始までの時間が5秒以下であるように迅速に連続して実行され、
D 前記電圧差は、300,000Ω超の抵抗の内部障害に起因する、
X 方法。
<参考図>
[図:0001436661000001.jpg]
(3) 課題・作用効果等に関連する明細書の発明の詳細な説明の記載
本願明細書の発明の詳細な説明の記載のうち、発明が解決しようとする課題及び作用効果等に関連する記載を抜粋すると、次の記載がある。なお、下線は当合議体が付したものである。
「【0003】
技術分野
本開示は、広くは、電気化学セルの評価、例えば1つまたは複数の内部障害の有無の評価に関しており、より具体的には、電気化学セルにおける回路内部短絡を検出する目的での、セルの評価に関する。
【背景技術】
【0004】
リチウムイオンセルは、コンシューマエレクトロニクスからHEV/PHEV/EVのドライブトレインまでにわたる広範囲の用途において電源として用いられている。当該バッテリの化学的性質に関する安全性のリスクは、セルにおける回路内部短絡に発する破局的なセル障害の可能性を含む。こうした安全性障害の確率を低減すべく、セルメーカは、内部障害、例えば内部短絡を示唆しうる異常に高い自己放電の存在をスクリーニングするため、数日間もしくは数週間にわたってセルの保管を許容される、セルの品質監視の特徴規定を利用している。こうしたエージングの規定は、セルの組立てに直接に続いて、工場において管理されている。
【0005】
エージングステップは、現在、セルの品質を評価するため、かつセルのパフォーマンスを低下させるのみならず稀には後に激甚なセル障害を生じうる回路内部短絡をスクリーニングするために、必要である。エージングステップは、典型的には、エージング期間の経過にわたって、単一のセルの端子間の開放回路電圧における変化を検査することを含む。所定のレベルより大きな電圧減退を示したセルは、拒絶することができる。内部短絡の存在を示唆可能な開放回路電圧の変化を観察するテスト方法は、比較的感度が鈍く、したがって、回路内部短絡の一義的な検出には長い期間(例えば7日間から28日間)が必要となる。安定した開放回路電圧は、セルに重大な回路内部短絡がないことを示唆するが、予め定められた何らかの閾値より大きい開放回路電圧の減退は、異常に高いレートでの自己放電の存在または内部短絡の存在を示唆するものと見なされる。
【0006】
検出を可能とするために、内部短絡は、従来の検出プロセスを用いて、検出の閾値を超過するセル電圧の低下への充分な作用を形成しなければならず、すなわち、短絡のない正常なセルに認められるよりも格段に大きな電圧の低下を形成しなければならない。こうしたスクリーニングプロセスには時間がかかり、リチウムイオンセルの製造においてつねに全サイクル時間の大部分を占める。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
電気化学セルにおける内部短絡を迅速かつ効率的に検出するシステムおよびスクリーニング方法を創出することには、継続的な需要が存在する。内部障害のスクリーニングのテストには数週間もしくは数ヶ月かかることがあり、テストプロシージャはセルの電位の流出を生じうる。現行の電気化学セルのテストプロシージャの問題に対処する一解決手段として、2つ以上のセル間の差電圧を測定し、内部短絡、自己放電または他の障害の有無を判定することが挙げられる。本開示におけるシステムおよび方法は、1つまたは複数の回路内部短絡または許容不能に高いレートでのバッテリの自己放電の存在を識別することを含む、セル品質の評価を提供し、任意の化学的性質および任意の容量を有するセルに適用可能である。本開示のシステムおよび方法のいくつかの実施形態により、セルにおける内部障害、例えば内部短絡を、より迅速に、例えば通常使用されている従来の方法で必要な期間の1%未満で、かつ従来技術を用いる場合よりも大きな感度で、検出することができる。
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
いくつかの実施形態では、電気化学セルにおける1つまたは複数の内部障害を検出する方法は、それぞれ同じ極性を有する、第1の電気化学セルのテスト端子と第2の電気化学セルのテスト端子との間の電圧差または電圧差変化率を測定することを含む。電圧差または電圧差変化率はテスト期間にわたって測定されるが、このテスト期間は、測定時間または電圧が測定される時間とも称することができる。電圧差の測定に基づいて、第1の電気化学セルまたは第2の電気化学セルが受容される。電圧差の測定によって電気化学セルにおける内部障害が検出されると、電気化学セルは拒絶される。」
「【0021】
いくつかの実施形態では、本開示によるシステムおよび方法は、基準セルを使用している。任意に基準セルを用いると、システムは、(任意にシミュレートされた内部短絡または実際の内部短絡の尺度としての)125,000Ωの負荷に起因する異常な自己放電を、従来の方法を用いた場合の約14日間に比べ、約15分間で検出することができる。スクリーニングの前に、基準セルは任意にテストされており、内部短絡がほぼないことまたは代替的に既知のレベルの内部短絡を有することが判別されている。方法において標準的な基準セルを用いると、さらに、1時間未満で1,000,000Ωのシミュレートされた短絡を検出することができる。こうした高い抵抗のセル内部短絡は、従来の方法によっては検出されない。」
「【0036】
1つまたは複数の実施形態では、電圧測定装置20は、サブナノボルト(nV)領域の電圧測定分解能を提供可能な、1mVから2mVの最大フルスケール示度に対して設計された電圧測定回路を含むことができる。例えば、2mVのフルスケール測定での有意な(産業において「雑音」と見なされるものを上回る)16ビットの測定データは、31ピコボルト(pV)の分解能に相当する。個別セルの電圧のきわめて小さな変化は、きわめて高い抵抗に関連しており、小さな電流短絡は、高分解能の構成であってもその測定分解能を超える。対して、個別セルの全体電圧の測定には、例えば5ボルトから10ボルト(V)のフルスケールが要求される。目的に適合する電圧測定装置は、1mVの最大電圧を測定するように設計されており、4.2Vまでの全体セル電圧を用意しなければならない装置の分解能の4200倍までを提供可能である。ただし、本開示において説明する方法を利用することで、抵抗が大きくても、小さな電流短絡を検出して定量化することができる。
【0037】
本開示において説明する方法の付加的属性は、温度にともなうセル電圧の変化が、実質的にコモンモードパラメータとして現れることである(測定によって実質的に拒絶されることを意味する)。したがって、本開示の方法を用いれば、これ以外の場合には温度に起因するセル電圧の変化によって隠されてしまう内部障害、例えば内部短絡から生じるセルの電圧変化を識別することができる。各テストセルは温度に起因しては実質的に同等の正対負の端子電圧変化を受けるので、負の端子に接続されたセルの正の端子で測定される電圧は、温度変動に起因しては、低下する(または主としてゼロの)変化量を有する。ただし、限定を意図するものでないが、本開示のシステムおよび方法を使用する場合、制御された熱環境において保存およびテストされるセルは、典型的には温度変動を受けないことに注意されたい。当該方法は、電圧変化をもたらす障害が温度変化に起因するセルの電圧変化に比べて小さいために従来技術の方法では隠れてしまう、内部障害に起因する電圧変化への感度を提供する。本開示のシステムおよび方法は、種々のセルの反対極性の端子を共通に接続し、同じ極性を有する端子間の電圧を測定する測定構造を利用することによってこうした欠点を克服しており、これにより、温度にともなうセル電圧の変化は、当該測定構造によって実質的に拒絶されるコモンモード信号となる。」
「【0057】
例1
例1では、市販入手可能な2個の2.6Ah 18650セルにおいて、2セルテストアレイを形成するために負の端子を共通に接続し、残りの正の端子が開放回路にある、例示のシステムおよび方法を使用して、データを取得した。セルの正の端子間の電圧は、Keithley DMM7510 マルチメータを使用して測定し、約2時間までの期間にわたって追跡した。
【0058】
回路内部短絡は、いずれかのセルを挟んで負荷抵抗を配置することでシミュレートし、所定の期間にわたってセルの正の端子間の電圧を追跡した。試行に対して得られたデータを記しているが、この試行では、内部短絡をシミュレートする負荷抵抗は125キロオーム(kΩ)、250kΩ、500kΩおよび1メガオーム(MΩ)である。セル対に対する短絡なしの条件は下方のトレース線である。図3のグラフに記されたデータは、短絡なしの条件に対する「短絡なし」と標示された平坦な線の応答と、検出困難な低レベルの回路内部短絡に相当する抵抗領域に対する応答とを示している。」
「【図3】
[図:0001436661000002.jpg]
」
「【0059】
検出困難な抵抗レベル、例えば1MΩ、500kΩ、250kΩおよび125kΩの図3のグラフの結果は、上述したシステムおよび方法を使用して即座にかつ迅速に検出される。収集され図3のグラフに示されているデータは、2個のセル内部の自己放電レベルの相対測定として認識される。例1による方法は感度が高いので、セル内部での自己放電のきわめて小さいレベルの差も検出可能である。
…(中略)…
【0061】
回路内部短絡を監視する従来のアプローチは、同じセルの対向し合う端子間の開放回路電圧を測定することから成るが、図3のグラフに示した測定期間にわたっていかなる変化も記録しなかった。図3のグラフの結果により、例1の方法の、リチウムイオンセルにおける回路内部短絡の迅速かつ正確な検出という1つの利益が強調される。」
3 原査定における拒絶の理由の概要
原査定の拒絶の理由のうち、本願の請求項1に係る発明についての理由4(進歩性の欠如)の概要は、次のとおりである。
理由4(進歩性の欠如)
本願の請求項1に係る発明は、優先日前に発行された下記の引用文献に記載された発明に基づいて、優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
記
引用文献1.特開2010-231948号公報(主たる引用文献)
引用文献2.特開2003-157911号公報
4 引用文献1の記載事項及び引用発明の認定
(1) 引用文献1に記載された事項
原査定の拒絶の理由において引用された、優先日前に発行された文献である特開2010-231948号公報(以下「引用文献1」という。)には、次の記載がある(なお、当合議体により、後記(2)の引用発明の認定に直接用いる記載に下線を付した。)。
ア 【0001】~【0008】
「【技術分野】
【0001】
本発明は、電池内部での微小短絡の有無を検査する電池の内部短絡検査方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
上記検査対象とする電池、例えばマンガン乾電池やアルカリ乾電池等の一次電池をはじめ、ニッケルカドミウム電池、ニッケル水素電池やリチウムイオン電池等の二次電池(蓄電池)に代表される密閉型電池は、通信機器やOA機器といったポータブル機器用の電源として幅広く用いられている。また、特にニッケル水素電池やリチウムイオン電池等の二次電池は、電気自動車用電池、ハイブリッド自動車用電池、あるいは夜間電力貯蔵用電池としても用いられており、より大容量、高出力であるとともに、長期間の放置でも容量低下や内部抵抗の上昇が少ないなどの特性が要求されている。
【0003】
そして、これらの電池の多くは、正極と負極とをセパレータにより隔離してこれらを渦巻き状に捲回した、あるいは正極と負極とを隔離するようにセパレータを配して積層した電極群を金属製もしくは樹脂製のケースに挿入後、ケース内に電解液を注入し、封口板でケースの上部を密閉することによって製造される。
【0004】
このようにして製造される電池は、正極、負極の電極間が非常に薄いセパレータによって隔離されているため、電極群を作成する際に、電極の切断面のバリや活物質の脱落物などがセパレータを突き破って電極間を微小短絡させることがある。また、活物質材料の製造工程中に金属不純物や電池製造設備の金属摩耗くずなどが正極に混入した場合には、充電時に正極の電位によってそれらが電気化学的に溶解され、電解液中を拡散して負極に到達し、負極の電位でデンドライト析出して電極間を微小短絡させることがある。このように正極、負極が内部で微小短絡した電池は、充電後しばらく放置すると放電容量が大きく低下してしまうため、製造段階でこのような電池を選別する必要がある。また、ニッケル水素蓄電池やリチウムイオン蓄電池は通常、数セル~数十セル、多い場合には数百セルを直列に接続した組電池で使用されることが多く、その組電池中に1セルでも内部短絡した電池が含まれていた場合には、放置によって1セルだけ放電容量が下がったり、電圧が下がったりするため、使用中に1セルだけ過放電や逆充電の状態になることがあり、電池の安定性という点からも好ましくない。
【0005】
そこで従来は、例えば特許文献1に見られるように、初回充電前の二次電池の電極間に電流を通電し、通電中、並びに開放後の電極間の電圧の経時変化をそれぞれ計測することで二次電池内部の微小短絡の有無を検出するようにしている。すなわち、電極間が内部短絡していない場合は、通電により電圧が上昇または下降し、開放後に若干復元する。一方、電極間が内部短絡している場合は、通電された電流の一部が短絡部分を通過するため、電圧の変化速度が遅くなり、内部短絡の程度が大きい場合には電圧が一定値から変化しなくなる。また、電流を通電させたのちに電極を開放した場合には、短絡部を通じて放電するため、経時的に電圧が最初の値へと復元していく。このように、電圧の経時変化を計測することにより、電池の内部短絡の有無を判別するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000-28690号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、こうした電圧の経時変化を計測する際には、電池の出力電圧に合わせて計測器(電圧計)のレンジを設定する必要がある。このため、電池の電圧に比べて相対的に微小な電圧の経時変化を計測するには、その計測精度の低下が免れない。また、上記各電池は、短絡電流とは別に自己放電電流を発しており、特にリチウム電池にあっては、自己放電が小さいものの時間あたりの電圧変化も小さいため、この自己放電も考慮して内部短絡の有無を検査する必要がある。このような実情から、電圧の経時変化に基づいて電池の内部短絡の有無を正確に判別することは困難であり、その検査にかかる信頼性も自ずと低いものとなる。
【0008】
本発明は、こうした実情に鑑みてなされたものであり、電池の電圧もしくは電流の計測に基づいて高い信頼性のもとに電池の内部短絡の有無を検査することのできる電池の内部短絡検査方法を提供することを目的とする。」
イ 【0009】~【0013】
「【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、請求項1に記載の発明は、正極と負極とを有する電池の内部短絡の有無を検査する電池の内部短絡検査方法であって、複数の電池の一方の電極を互いに同極同士で電気的に接続するとともに、該複数の電池の一つを基準とし、基準とする電池と基準とする電池以外の電池との互いに開放された他方の電極間での電圧もしくは電流を計測し、該計測した電圧もしくは電流に基づいて前記基準とする電池以外の電池の内部短絡の有無を検査することを要旨とする。
【0010】
前述のように、電池に生じる内部短絡に起因する電圧変化は通常、電池の出力電圧に比べて相対的に微小なものとなる。また、電池自体の自己放電による電圧の低下も生じるため、これを除外してこの内部短絡による電圧変化、すなわち電圧の低下を検査する必要がある。この点、上記検査方法によるように、正極と負極とを有する複数の電池の一方を同極同士で電気的に接続する、すなわち検査対象とする電池の一方の電極を並列に接続して基準とする電池とそれ以外の電池との互いに開放された他方の電極間での電圧もしくは電流を測定すれば、検査対象とする電池自体の電圧及び自己放電が相殺され、電池の内部短絡に起因する電圧変化もしくは電流変化のみを計測することができるようになる。これにより、計測器(電圧計、電流計)により電池の内部短絡の有無を検査する上で、同計測器のレンジを内部短絡に起因して変化する電圧もしくは電流に合わせて設定することができ、ひいては、複数の電池の内部短絡の有無を高い信頼性のもとに検査することができるようになる。
【0011】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の電池の内部短絡検査方法において、前記計測の対象が前記電圧であり、前記基準とする電池と基準とする電池以外の電池との間での電圧差に対して許容できる内部短絡の度合いを判定するための判定値を設け、前記計測した電圧差が該判定値を超える電池を不良品として判別することを要旨とする。
【0012】
電池に内部短絡が生じた場合は、その度合いに応じて電池の電圧が低下するようになる。すなわち、内部短絡の度合いが軽度であるほど電池の電圧低下は小さく、内部短絡の度合いが重度であるほど電池の電圧低下は大きくなる。一方、電池に内部短絡が生じていない場合には、自己放電による電圧低下しか生じないため同電池の電圧低下は微小なものとなる。そこで例えば、内部短絡が生じていない電池(良品)を上記基準とする電池とし、この電池と内部短絡が生じている電池との電圧差を測定するようにすれば、これら電池間の電圧差は自ずと拡大されるようになる。このため、同検査方法によるように、この電圧差に対して上記判定値を設け、計測した電圧差がこの判定値を超える電池を許容できない内部短絡の生じた不良品として判別するようにすれば、こうした不良品の判別を簡便に行うことができるようになる。なお、これら電圧差は時間とともに拡大されるため、電池の初回充電後、所定の時間を置いたのちに検査することで、その検査精度をさらに高めることができるようにもなる。
【0013】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の電池の内部短絡検査方法において、前記電圧差を単位時間当たりの電圧変化量として計測することを要旨とする。
上述のように、電池に内部短絡が生じた場合にはこの電池の短絡部を通じた放電が起こるため、電池の出力電圧も経時的に低下するようになる。そして、この電圧の単位時間あたりの変化量は、電池の内部短絡の度合いが大きいほど大きくなり、電池の内部短絡の度合いが小さいほど、また内部短絡が生じていない場合ほど小さくなる。このため、同検査方法によるように、上記電圧差を単位時間当たりの電圧変化量として測定することとすれば電池の内部短絡の有無をより的確に判別することができるようになる。なお、この場合にも、内部短絡が生じた電池と内部短絡が生じていない電池との電圧差は時間とともに拡大されることから、微小な内部短絡を検査する上では、単位とする時間を長くとるほどその検査精度を高めることができるようになる。」
ウ 【0025】~【0027】、【図1】
「【発明を実施するための形態】
【0025】
(第1の実施の形態)
以下、本発明にかかる電池の内部短絡検査方法の第1の実施の形態について図1~図3を参照して説明する。
【0026】
本実施の形態において検査対象とする電池は、複数のニッケル水素蓄電池(単電池)を電気的に直列接続することによって構成される角形の密閉式電池である。本実施の形態ではまず、こうした角形密閉式電池を組み立てたのちに、同角形密閉式電池を構成する各単電池に対し同一の条件のもとに活性化処理を実施する。そして、内部短絡検査に先立ち、この活性化された各単電池を同一のSOC(充電状態:標準容量に対する充電量の割合)になるまで充電し、このSOCが同一となった各単電池に対して内部短絡検査を実施する。
【0027】
ここで、本実施の形態において検査対象とする上記角形密閉式電池は、図1に側方から見た一部断面構造を示すように、例えばニッケル水素蓄電池からなる単電池110を構成する電槽130を隔壁120を介して複数連結したものが同じく角形の一体電槽100に収容された状態で、各電槽130の上面開口が蓋体200により一体に封止されている。そして、これら各電槽130内には、正極板と負極板とがセパレータを介して積層された極板群140とその両側に接合された集電板150、160とからなる発電要素が電解液とともに収容されている。ここで、上記極板群140の正極板及び負極板は互いに反対側の側部に突出されることで正極板及び負極板のリード部141a、141bが構成され、これらリード部141a、141bの側端縁にそれぞれ上記集電板150、160が接合されている。また、上記隔壁120の上部には各電槽130の接続に用いられる貫通孔170が形成されており、これら集電板150、160の上部に突設されている接続突部151、161同士がこの貫通孔170を介してスポット溶接により接続されることによって、各々隣接する電槽130が電気的に直列に接続される。なお、上記貫通孔170のうち、両端の電槽130の各々外側に位置するもの、すなわち一体電槽100の端側壁上方の貫通孔170には正極または負極の接続端子TMが装着されている。そして、それら接続端子TMと集電板150または160の接続突部151または161とがスポット溶接により接続されることによって、こうして直列接続された電槽130、すなわち複数の単電池110の総出力がこれら接続端子TMから取り出される。」
「【図1】
[図:0001436661000003.jpg]
」
エ 【0032】~【0035】、【図2】
「【0032】
次に、このような角形密閉式電池を対象に実施される内部短絡の検査方法について説明する。
まず、上記製造された角形密閉式電池を構成する各単電池110のうち、電池の内部短絡検査に際して基準となる単電池110を選定する。この基準となる単電池110の選定に際しては、まず、上記製造された角形密閉式電池を構成する複数の各単電池110のうち任意の単電池110を選び、その単電池110が良品であるか否か、すなわち内部短絡が生じているか否かを判定する。なお、この判定も含め、以降の内部短絡検査に際しては、上記仮接続した各接続突部151、161間の電気的接続が一旦解除される。
【0033】
この良品判定では、上記選定された任意の単電池110に対して一定の電流を通電し、通電中の電圧の経時変化を計測する。そして、この計測される電圧値の経時変化が上記通電される電流の供給量に相関する場合には、この計測対象とされた単電池110を良品と判定し、この電池を基準電池110sとする。一方、上記計測される電圧の経時変化が、通電される電流の供給量を下回る場合には、この計測対象とされた電池に内部短絡が生じていると判定し、さらに他の単電池110を選定して、同じく内部短絡の有無を計測する。
【0034】
このようにして良品、すなわち内部短絡検査の実施に際して基準となる電池の判定が終了すると、次に、この良品と判定された電池110sを基準として内部短絡検査を行う。
この内部短絡検査に際しては、図2に示すように、まず、上記良品と判定された基準電池110sの負極と未検査の単電池110a~110eの各負極とを、すなわち同極同士をリード線300によって互いに電気的に接続する。そして、基準電池110sの正極と未検査の各単電池110a~110eの正極との間に、これら基準電池110sと未検査の各単電池110a~110eとの各電圧差を計測すべく電圧計VM1~VM5をリード線301~305によって接続する。」
「【図2】
[図:0001436661000004.jpg]
」
「【0035】
このようにして、基準電池110sと未検査の各単電池110a~110eとの同極同士が電気的に接続された内部短絡検査の検査回路が構成される。なお、本実施の形態においては、これら基準電池110sと未検査の各単電池110a~110eとの導通状態を切り替え可能とすべく、上記各電圧計VM1~VM5と未検査の各単電池110a~110eの正極との間にオン/オフ動作を切り替え可能なスイッチSw1~Sw5を設ける。これにより、これら各スイッチSw1~Sw5のオン/オフ動作に応じて、基準電池110sと未検査の各単電池110a~110eとの電圧差Vsa~Vseが電圧計VM1~VM5を通じて各別に計測されるようになる。また、これら各電圧計VM1~VM5には、その計測値を一括して取り組む検査装置TMG1が接続されており、この検査装置TMG1にて各電圧計VM1~VM5の計測値が一括管理される。なお、各単電池110a~110eに生じうる内部短絡に起因する電圧変化は、通常、各単電池110a~110eの電圧(「1.0V」)よりも相対的に微小であることに鑑み、本実施の形態では、こうした内部短絡に起因して変化する各電圧差Vsa~Vseを確実に検出すべく、各電圧計VM1~VM5の計測レンジを例えば数mV~数十mV程度の範囲で設定する。」
オ 【0036】~【0038】
「【0036】
次に、こうして構成された検査回路によって未検査の単電池110a~110eの内部短絡の有無を検査する。この検査では、まず、各スイッチSw1~Sw5のオン/オフ状態が、検査装置TMG1を通じてスイッチSw1から順に例えば5秒毎に一時的にオン状態とされることによって、オン状態とされたスイッチSw1~Sw5に応じて電圧計VM1~VM5により各電圧差Vsa~Vseが計測され、これら計測されたVsa~Vseの値が検査装置TMG1に取り込まれる。
【0037】
すなわち、まず、内部短絡検査の開始直後にスイッチSw1のみがオン状態とされることにより、基準電池110sと未検査の単電池110aとの電圧差Vsaが計測される。こうして基準電池110sと未検査の単電池110aとの電圧差Vsaの計測が終了するとスイッチSw1が再びオフ状態に維持される。次に、内部短絡検査の開始から5秒経過時にスイッチSw2のみがオン状態にされることにより、基準電池110sと未検査の単電池110bとの電圧差Vsbが計測され、再びスイッチSw2がオフ状態に維持される。
【0038】
その後は、同じく内部短絡検査の開始から10秒、15秒、20秒の経過時に応じて、スイッチSw3~スイッチSw5が順に一時的にオン状態とされることによって、その際の基準電池110sと未検査の各単電池110c~110eとの各電圧差Vsc、Vsd、Vseが順に計測される。このようにして、内部短絡検査の開始から5秒毎の各電圧差Vsa~Vseの値が計測され、これらの値が検査装置TMG1に取り込まれる。」
カ 【0039】~【0042】、【図3】
「【0039】
次に、こうして計測される各電圧差Vsa~Vseの計測結果に基づき検査装置TMG1を通じて実行される内部短絡の検査態様について図3を参照して説明する。なお、図3において、直線L0は、単電池110に内部短絡が生じた場合において、この内部短絡に伴う電池の電圧低下の推移を示したものあり、本実施の形態では、この直線L0を基準電池110sとの間での電圧差に対して許容できる内部短絡の度合い、すなわち不良品か否かを判定する判定値として用いる。」
「【図3】
[図:0001436661000005.jpg]
」
「【0040】
図3に一例を示すように、上記検査を通じて5秒毎に計測された各計測値は、基準電池110sと各単電池110a、110b、110d、110eとの各電圧差Vsa、Vsb、Vsd、Vseの値が、いずれも「0mV」となっている。これにより、これら各単電池110a、110b、110d、110eは良品、すなわち内部短絡が生じていないと判定された基準電池110sと同等の電圧を出力しているものと判断することができ、基準電池110sと同じく良品と判定することができる。また、これら各単電池は、内部短絡とは別途に自己放電による電圧低下が生じる場合があるものの、本実施の形態では、各単電池の同極同士を接続することで得られる各電圧差に基づいて内部短絡の有無を判定するようにしていることにより、この自己放電が相殺された値を検出することができる。このため、同図3に示すように、これら良品と判定された各単電池110a、110b、110d、110eとの各電圧差Vsa、Vsb、Vsd、Vseの値は、全て「0mV」となっており、このことからも、本実施の形態にかかる内部短絡検査方法によれば、検査対象とする単電池の自己放電が相殺された値が計測されていることが確認できる。
【0041】
一方、検査開始後10秒後に計測された基準電池110sと単電池110cとの電圧差Vscの値は、この図3の例では「11mV」となっている。すなわち、本内部短絡検査に先立ち、一旦「1.0V」まで充電された単電池110cの電圧が、次第に低下し、内部短絡検査の開始から10秒経過時において、少なくとも「11mV」の電圧低下が発生していることになる。これにより、この単電池110cは、それ自身の自己放電以外に起因する電圧の低下、すなわち内部短絡が生じているものと判定することができる。
【0042】
しかも、同図3に示されるように、内部短絡検査の開始から10秒経過した時点において、基準電池110sと単電池110cとの電圧差Vscの値「11mV」は、内部短絡の基準となる直線L0を上回っている。これにより本実施の形態の検査では、この単電池110cは、その内部短絡の度合いが基準電池110sに対して許容されうる内部短絡の度合いを超えた「不良品」として判定される。」
キ 【0043】~【0045】
「【0043】
以上説明したように、本実施の形態にかかる電池の内部短絡検査方法によれば、以下のような効果が得られるようになる。
(1)良品と判定された基準電池110sと検査対象とする複数の単電池110a~110eとを互いに同極同士で電気的に接続するとともに、互いに開放された他方の電極は各々電圧計VM1~VM5を介して基準電池110sと接続し、各々計測される電圧差Vsa~Vseに基づいて内部短絡の有無を検査することとした。このため、検査対象とする各単電池110a~110e自身の出力電圧(「1.0V」)及び自己放電が除外され、上記内部短絡に起因する比較的微少な電圧変化のみがそれら各電圧差Vsa~Vseとして計測されるようになる。これにより、こうした微小な電圧変化に応じて電圧計VM1~VM5の計測レンジを設定することができるようになり、ひいては、複数の電池の内部短絡の有無を高い信頼性のもとに検査することができるようになる。
【0044】
(2)内部短絡検査に先立ち、検査対象とする各単電池110a~110eを全て同一の条件、すなわち、(イ)同一の活性化処理を施すとともに、(ロ)同一のSOC(「1V」)に統一することとした。これにより、基準電池110sと各単電池110a~110eとの各電圧差Vsa~Vseに基づき内部短絡の有無を検査する上で、これら単電池間の個体差を最小とすることができ、ひいては電池の内部短絡の検査精度を高めることができるようになる。
【0045】
(3)基準電池110sと内部短絡の検査対象とする各単電池110a~110eとの各電圧差Vsa~Vseを計測するに際し、これら基準電池110sと単電池110a~110eとの導通状態を切り替え可能なスイッチSw1~Sw5を設けることとした。このため、電圧計VM1~VM5を通じて各電圧差Vsa~Vseを計測するタイミングを任意に設定することができる。これにより、各電圧差Vsa~Vseの推移、ひいては、単電池110a~110eの内部短絡に起因する電圧の低下を個別に、かつ任意の時点で検出することができるようになる。これにより、基準電池110sと各単電池110a~110eとの各電圧差Vsa~Vseに基づき内部短絡の有無を検査する上で、各単電池110a~110e毎にそれらの内部短絡の有無を高い精度のもとに検査することができるようになる。
…(後略)」
ク 【0058】~【0072】
「(他の実施の形態)
なお、上記各実施の形態は、以下のように変更して実施することもできる。
【0058】
・上記第1の実施の形態では、各電圧差Vsa~Vseの計測に際し、スイッチSw1~Sw5のオン/オフ状態をSw1から順に一つのスイッチのみを例えば5秒毎にオン状態とすることとした。これに限らず、基準電池110sとの電圧差を計測する単電池110a~110eの選択は任意であり、スイッチSw1~Sw5のうち複数のスイッチを同時にオン状態とすることとしてもよい。また、各電圧差Vsa~Vseを計測するタイミングは任意であり、5秒の間隔に限定されるものでもない。
【0059】
・上記第1の実施の形態では、図3に示したように、基準電池110sと各単電池110a~110eとの電圧差Vsa~Vseの計測回数をそれぞれ一回とした。これに限らず、基準電池110sと各単電池110a~110eとの電圧差Vsa~Vseをそれぞれ複数回計測するようにしてもよい。
…(中略)…
【0069】
・上記各実施の形態では、検査対象とする電池として5個の電池を用いることとした。これに限らず、基準とする電池と検査対象とする電池との電圧差に基づき電池の内部短絡の有無を検査する上では、検査対象とする電池は1個、あるいは6個以上であってもよい。
【0070】
・上記各実施の形態では、内部短絡検査の対象として、同一の工程で製造された電池を用いることとしたが、基準とする電池と検査対象とする電池との電圧差に基づき電池の内部短絡の有無を検査する上では、同一の仕様あるいは同一の電圧を有する電池であればよく、これに限定されるものではない。
【0071】
・上記各実施の形態では、基準電池110sとして予め検査された良品を用いることとした。これに限らず、基準とされる電池は、不良品を含めて、どのような電池を基準としてもよく、要は、基準とされる電池の一方の電極と検査対象とする電池の一方の電極とを同極同士で接続し、基準とされる電池と検査対象とする電池との互いに開放された他方の電極間の電圧差に基づき電池の内部短絡の有無を検査するものであればよい。
【0072】
・上記各実施の形態では、内部短絡検査の対象として、角形密閉式電池を構成するニッケル水素蓄電池(単電池)を用いることとした。これに限らず、上記構成される角形密閉式電池、あるいは、ニッケルカドミウム電池、リチウムイオン電池等の二次電池やマンガン乾電池やアルカリ乾電池等の一次電池であってもよい。」
(2) 引用発明の認定
前記(1)に摘記した引用文献1の記載事項を総合すると、引用文献1には、第1の実施の形態に係る次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。なお、認定の根拠となる記載箇所を括弧内に示した。
<引用発明>
「検査対象とする電池は、複数のニッケル水素蓄電池(単電池)を電気的に直列接続することによって構成される角形の密閉式電池である電池の内部短絡検査方法であって、(【0025】、【0026】)
角形密閉式電池を構成する各単電池110のうち、電池の内部短絡検査に際して基準となる単電池110を選定し、この基準となる単電池110の選定に際しては、角形密閉式電池を構成する複数の各単電池110のうち任意の単電池110を選び、その単電池110が良品であるか否か、すなわち内部短絡が生じているか否かを判定し、(【0032】)
内部短絡検査の実施に際して基準となる電池の判定が終了すると、次に、この良品と判定された電池110sを基準として内部短絡検査を行い、(【0034】)
この内部短絡検査に際しては、上記良品と判定された基準電池110sの負極と未検査の単電池110a~110eの各負極とを、すなわち同極同士をリード線300によって互いに電気的に接続し、そして、基準電池110sの正極と未検査の各単電池110a~110eの正極との間に、これら基準電池110sと未検査の各単電池110a~110eとの各電圧差を計測すべく電圧計VM1~VM5をリード線301~305によって接続し、(【0034】)
これら基準電池110sと未検査の各単電池110a~110eとの導通状態を切り替え可能とすべく、上記各電圧計VM1~VM5と未検査の各単電池110a~110eの正極との間にオン/オフ動作を切り替え可能なスイッチSw1~Sw5を設け、これにより、これら各スイッチSw1~Sw5のオン/オフ動作に応じて、基準電池110sと未検査の各単電池110a~110eとの電圧差Vsa~Vseが電圧計VM1~VM5を通じて各別に計測されるようになり、これら各電圧計VM1~VM5には、その計測値を一括して取り組む検査装置TMG1が接続されており、この検査装置TMG1にて各電圧計VM1~VM5の計測値が一括管理され、(【0035】)
内部短絡に起因して変化する各電圧差Vsa~Vseを確実に検出すべく、各電圧計VM1~VM5の計測レンジを例えば数mV~数十mV程度の範囲で設定するものであり、(【0035】)
こうして構成された検査回路によって未検査の単電池110a~110eの内部短絡の有無を検査し、この検査では、まず、各スイッチSw1~Sw5のオン/オフ状態が、検査装置TMG1を通じてスイッチSw1から順に例えば5秒毎に一時的にオン状態とされることによって、オン状態とされたスイッチSw1~Sw5に応じて電圧計VM1~VM5により各電圧差Vsa~Vseが計測され、これら計測されたVsa~Vseの値が検査装置TMG1に取り込まれ、(【0036】)
こうして計測される各電圧差Vsa~Vseの計測結果に基づき検査装置TMG1を通じて実行される内部短絡の検査態様について、単電池110に内部短絡が生じた場合において、この内部短絡に伴う電池の電圧低下の推移を示した直線L0を基準電池110sとの間での電圧差に対して許容できる内部短絡の度合い、すなわち不良品か否かを判定する判定値として用い、(【0039】)
検査を通じて5秒毎に計測された各計測値は、基準電池110sと各単電池との各電圧差の値が、いずれも「0mV」となっていれば、これら各単電池は良品、すなわち内部短絡が生じていないと判定された基準電池110sと同等の電圧を出力しているものと判断することができ、基準電池110sと同じく良品と判定することができ、(【0040】)
基準電池110sと単電池との電圧差の値が、内部短絡の基準となる直線L0を上回っていれば、この単電池は、その内部短絡の度合いが基準電池110sに対して許容されうる内部短絡の度合いを超えた「不良品」として判定されるものであり、(【0042】)
内部短絡検査の対象として、角形密閉式電池を構成するニッケル水素蓄電池(単電池)に限らず、リチウムイオン電池等の二次電池であってもよく、(【0072】)
良品と判定された基準電池110sと検査対象とする複数の単電池110a~110eとを互いに同極同士で電気的に接続するとともに、互いに開放された他方の電極は各々電圧計VM1~VM5を介して基準電池110sと接続し、各々計測される電圧差Vsa~Vseに基づいて内部短絡の有無を検査することとしたため、検査対象とする各単電池110a~110e自身の出力電圧及び自己放電が除外され、上記内部短絡に起因する比較的微少な電圧変化のみがそれら各電圧差Vsa~Vseとして計測されるようになり、これにより、こうした微小な電圧変化に応じて電圧計VM1~VM5の計測レンジを設定することができるようになり、ひいては、複数の電池の内部短絡の有無を高い信頼性のもとに検査することができる効果が得られるようになる、(【0043】)
電池の内部短絡検査方法。」
5 引用文献2に記載された事項及び技術常識1の認定
(1) 引用文献2に記載された事項
原査定の拒絶の理由において引用された、優先日前に発行された文献である特開2003-157911号公報(以下「引用文献2」という。)には、次の記載がある。なお、下線は当合議体が付したものである。
ア 【0001】
「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、高い起電力を有し、且つ充電によって繰り返し使用することが可能なリチウムイオン電池などにおける微小な内部短絡の有無を調べるための電池電圧測定装置および電池電圧測定方法並びに電池の製造方法に関する。」
イ 【0005】~【0014】
「【0005】非水電解質二次電池の代表的なリチウムイオン電池においては、まず、充電の際に正極からリチウムイオンが放出された後、そのリチウムイオンが負極の炭素の間隙にインサート(ドープ)される。そして、放電の際には負極からリチウムイオンが放出(脱ドープ)される。つまり、リチウムイオン電池においては、リチウムイオンの移動により電気エネルギーが生じるようになっている。
…(中略)…
【0008】この手法は一般的には次のような製造工程を経ることにより実施される。まず正極、負極およびセパレータを積層または積層し、巻き取り、電池筐体に組込み、電解液を含浸させる。次に、必要に応じて所定の条件で充電または充放電して活性化した後、品質を安定化するため一定期間以上放置する。この放置期間中の電圧変化から内部短絡があるものを選別し、最終的に良品のみを製品として出荷する。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】ところで、従来の非水電解質電池においては、その製造工程における電池の放置期間として数週間から1ヶ月程度設定するのが周知となっている。このような長期間の放置期間が必要である理由は、電池性能を含め品質を安定化させるためであることは云うまでもないが、前述したように微小の内部短絡電池を選別するための期間というのも放置する期間を長期化している一因となっている。
【0010】なぜなら、微小の内部短絡による電圧の低下速度が極めて小さい上に、通常、初回充電した電池が自然放電によっても次第に電圧が降下してくる。よって自然放電の電圧降下と内部短絡による電圧降下とを選り分けるのに長時間かかるためである。従って、在庫管理の面においても、内部短絡不良品の選別期間を短縮することは工業的に非常に重要な課題となっている。勿論、微小短絡品の電圧降下速度と自然放電のみによる電圧降下速度は、微視的には異なっているので、測定装置の分解能がより高く、測定誤差も少なければ、選別に必要な期間も短縮されることは容易に推測される。
【0011】しかし、量産工程でそのような測定を実施することは困難であるのが実状である。その理由は非水電解質電池の多くが3V以上の高い起電力を有するため、電池の開回路電圧(OCV)を測定するレンジでは、上記のような微妙な違いを短期間で判別するだけの分解能および測定精度を得るのが困難であるからに他ならない。
【0012】即ち、従来の電圧測定方法においては、非水電解質電池における微小な内部短絡による電圧異常を検出するための精度が低く、このため微小内部短絡の検出に長時間を要するという問題がある。
【0013】本発明はかかる問題点に鑑みてなされたもので、その第1の目的は、高起電力の非水電解質電池における微小な内部短絡による電圧異常の検出精度を確実に向上させることができ、また、検出に要する時間を大幅に短縮することができる電池電圧測定装置および電池電圧測定方法を提供することにある。
【0014】本発明の第2の目的は、微小な内部短絡の欠陥を有する不良品を容易に選別することができ、製造歩留りの向上した電池の製造方法を提供することにある。」
ウ 【0022】~【0029】、【図1】
「【0022】(第1の実施の形態)図1は、本発明の第1の実施の形態に係る電池電圧測定装置の回路構成を表すものである。」
「【図1】
[図:0001436661000006.jpg]
」
「【0023】この電池電圧測定装置は、被測定電池12の電圧挙動を測定し、微小な内部短絡の有無を調べるためのものであり、高分解能で基準電圧を発生する直流電圧発生器10と、高分解能で電圧を計測する電圧計測器11とを備えている。直流電圧発生器10は、その負極10aが接地されると共に、正極10bが電圧計測器11の同極(正極11b)と電気的に接続されている。
【0024】この電池電圧測定装置では、測定時において、直流電圧発生器10の負極10aと被測定電池12の負極12aとが電気的に接続(接地)されると共に、電圧計測器11の負極11aと被測定電池12の正極12bとが電気的に接続され、直流電圧発生器10の正極10bと被測定電池12の正極12bとの電位差、すなわち被測定電池12の電圧挙動が測定される。【0025】被測定電池12は、具体的には、例えば図2に示した非水電解質二次電池である。この非水電解質二次電池は、いわゆる円筒型といわれるものであり、ほぼ中空円柱状の電池缶21の内部に、電極である帯状の正極22と負極23とがセパレータ24を間にして巻回されてなる巻回電極体25を有している。電池缶21は、例えばニッケル(Ni)のめっきがされた鉄(Fe)により構成されており、一端部が閉鎖され他端部が開放されている。電池缶21の内部には、巻回電極体25を挟むように巻回周面に対して垂直に一対の絶縁板26,27がそれぞれ配置されている。
…(中略)…
【0029】この非水電解質二次電池は、基本的にリチウムイオンのドープおよび脱ドープの可能な正極22と負極23とから構成され、これらの電極22,23は、多孔物質等からなるセパレータ24を介して分解された状態で、有機溶媒にリチウム化合物を溶解した非水電解液中に浸漬されている。」
エ 【0058】~【0064】、【図3】
「【0058】(第2の実施の形態)図3は、本発明の第2の実施の形態に係る電池電圧測定装置の回路構成を表すものである。」
「【図3】
[図:0001436661000007.jpg]
」
「【0059】この電池電圧測定装置は、第1の実施の形態の直流電圧発生器10として基準電池40を用いるものである。基準電池40は、その正極40bが電圧計測器41の正極41bと電気的に接続されている。この電池電圧測定装置では、測定時において、基準電池40の負極40aと被測定電池42の負極42aとが電気的に接続されると共に、電圧計測器41の負極41aと被測定電池42の正極42bとが電気的に接続される。
【0060】本実施の形態では、非水電解質二次電池を複数個、同時に所定電圧で充電し、この充電された電池群から少なくとも1つの電池を選択し、この選択された電池を基準電池40とすると共に、電池群における基準電池40以外の電池を被測定電池42とする。なお、基準電池40が複数の非水電解質二次電池からなる場合には、上記のように充電した後の複数の非水電解質二次電池を電気的に並列接続したものとする。
【0061】そして、基準電池40および被測定電池42の同極同士を接続または接地し、基準電池40と被測定電池42との他方の極間の電位差を電圧計測器41において測定する。これにより高起電力の非水電解質電池における微小な内部短絡による電圧異常の検出精度を確実に向上させることができ、また、検出に要する時間を大幅に短縮することができる。以下、具体的な実施例について説明し、その効果を検証する。
【0062】(実施例2)被測定電池42は、この例では図2に示した非水電解質二次電池であるとする。但し、この非水電解液型二次電池の電池前駆体を充電する際に、試験に用いる数全てを同時に充電した。この同時充電は、電池間のバラツキを無くし、自然放電のカーブを同じにするために行うものである。全ての電池前駆体を同時に、充電電流500mAで10hr、上限電圧4.2Vで初回充電を行い電池とした。このときの充電容量は1800mAhであった。
【0063】試験数は11個とし、うち5個の電池に充電直後に正極と負極を100kΩ、200kΩ、300kΩ、400kΩ、500kΩの抵抗で短絡し、内部短絡を模した電池とした。そして、抵抗を接続していない電池から1つを無作為に選び基準電池40とした。
【0064】また、電圧計測器41として下記の表5の性能を有するディジタルマルチメータ7561((株)横川電機)を用いて、基準電池40と被測定電池42との同極(この例では正極)同士の電位差を測定した。」
(2) 技術常識1の認定
前記(1)に摘記した引用文献2の記載事項に例示されるように、次の技術事項は、当業者にとって技術常識であったと認められる。(以下「技術常識1」という。)
<技術常識1>
「製品として出荷する前のリチウムイオン電池において、正極と負極につながれた300kΩ超の抵抗と等価な、微少な内部短絡による電圧異常が生じうること。」
6 本願発明と引用発明の対比
(1) 対比分析
本願発明と引用発明を対比する。
ア 構成X’(X)の観点
(ア) 構成X’は、「電気化学セルにおける内部障害を検出する方法」の発明であることである。
(イ) 引用発明における「ニッケル水素蓄電池(単電池)」は、電気化学反応を生じさせる構成単位の一つであることが明らかであるから、本願発明における「電気化学セル」に相当する。
(ウ) 引用発明における「内部短絡」は、本願発明における「内部障害」に相当する。
(エ) 引用発明の「電池の内部短絡検査方法」は、「基準電池110sと単電池110cとの電圧差の値が、内部短絡の基準となる直線L0を上回っていれば、この単電池は、その内部短絡の度合いが基準電池110sに対して許容されうる内部短絡の度合いを超えた「不良品」として判定される」ため、「単電池」における「内部短絡」の検出を行う方法であるといえるから、前記(イ)及び(ウ)も踏まえると、本願発明の「電気化学セルにおける内部障害を検出する方法」に相当する。
(オ) したがって、本願発明と引用発明は、構成X’の観点に関し、次の点において一致する。
「電気化学セルにおける内部障害を検出する方法」の発明である点。
イ 構成Aの観点
(ア) 構成Aは、「測定時間にわたって、それぞれ同じ極性を有する、第1の電気化学セルのテスト端子と第2の電気化学セルのテスト端子との間の電圧差もしくは電圧差変化率を測定するステップ」を含むことである。
(イ) 引用発明における「基準電池110sの正極」と「未検査の各単電池110a~110eの正極」は、リード線によって互いに電気的に接続されるから、どちらも接続端子部を有することは自明であるところ、「基準電池110sの正極」の接続端子部と「未検査の各単電池110a~110eの正極」の接続端子部のうちのいずれか一方及び他方が、それぞれ、本願発明における「それぞれ同じ極性を有する、第1の電気化学セルのテスト端子」と「第2の電気化学セルのテスト端子」のうちの何れか一方及び他方に相当する。
(ウ) 引用発明においては、「基準電池110sの正極と未検査の各単電池110a~110eの正極との間に」「電圧計VM1~VM5をリード線301~305によって接続し」ていることから、引用発明における「基準電池110sと未検査の各単電池110a~110eとの電圧差Vsa~Vseが電圧計VM1~VM5を通じて各別に計測される」ステップは、前記(イ)も踏まえると、本願発明における「それぞれ同じ極性を有する、第1の電気化学セルのテスト端子と第2の電気化学セルのテスト端子との間の電圧差を測定するステップ」に相当する。
(エ)a 本願発明において「測定時間にわたって、」「測定する」ことについて、「測定時間にわたって」との記載から、時間間隔をおいて複数回測定することを意味すると解するのが相当である。
b 引用発明において、「電圧計VM1~VM5」による「各電圧差Vsa~Vse」の「計測」は、「各スイッチSw1~Sw5」の何れかが「一時的にオン状態とされる」時間においてなされることから、引用発明の「計測」について測定時間を観念することができる。
c そうすると、本願発明において「測定時間にわたって、」「測定する」ことと、引用発明において「各電圧差Vsa~Vse」を「計測」することは、「測定時間において、」「測定する」点で共通するものの、前記(エ)aにおける解釈を踏まえると、引用発明においては、時間間隔をおいて複数回測定するものではない。
(オ) 以上の検討結果を踏まえると、本願発明と引用発明の構成Aの観点における一致点及び相違点は、次のa及びbのとおりである。
a 構成Aの観点における一致点
「測定時間において、それぞれ同じ極性を有する、第1の電気化学セルのテスト端子と第2の電気化学セルのテスト端子との間の電圧差もしくは電圧差変化率を測定するステップ」を含む点。
b 構成Aの観点における相違点
測定時間において測定することについて、
本願発明においては、測定時間に「わたって」なされるのに対して、
引用発明においては、「各電圧差Vsa~Vseが計測され[る]」ことが時間間隔をおいて複数回行われていない点。
ウ 構成Bの観点
(ア) 構成Bは、「前記測定に基づいて、前記第1の電気化学セルもしくは前記第2の電気化学セルを受容するステップ、または、
前記電気化学セルにおける内部障害を測定するステップに基づいて、前記第1の電気化学セルもしくは前記第2の電気化学セルを廃棄するステップ」を含むことである(以下、「または」より前のステップを「ステップB1」といい、後のステップを「ステップB2」という。)。
(イ)a 本願発明におけるステップB2の構成についての解釈
(a) 本願発明の構成BにおけるステップB2は、「内部障害を測定する」とあるから、「測定」の対象が「電気化学セルにおける内部障害」であることを特定している。
(b) 他方、本願発明の構成Aにおいては、「第1の電気化学セルのテスト端子と第2の電気化学セルのテスト端子との間の電圧差もしくは電圧差変化率を測定する」とあり、「測定」の対象が「電圧差もしくは電圧差変化率」であることを特定していることから、構成Aの「測定」と構成Bの「測定」との関係をどのように整理すべきかが問題となる。
(c) ここで、構成X’には、「電気化学セルにおける内部障害を検出する」とあり、本願明細書の発明の詳細な説明における【0008】の「電圧差の測定に基づいて、第1の電気化学セルまたは第2の電気化学セルが受容される。電圧差の測定によって電気化学セルにおける内部障害が検出されると、電気化学セルは拒絶される。」(下線は当審において付した。)との記載があることを踏まえると、構成Bの「測定」は、構成Aの「電圧差もしくは電圧差変化率」の「測定」に基づいて「電気化学セルにおける内部障害」という状態を「検出」することを「測定」と表現したものにすぎず、構成Aの「電圧差もしくは電圧差変化率」の「測定」とは別に、新たな「測定」が構成Bにおいて行われていると解するのは適当ではない。
(d) そうすると、ステップB2の「前記電気化学セルにおける内部障害を測定するステップ」とは、「第1の電気化学セルのテスト端子と第2の電気化学セルのテスト端子との間の電圧差もしくは電圧差変化率の測定に基づいて、前記電気化学セルにおける内部障害を検出するステップ」を意味すると解するのが相当である。
b 引用発明の「良品」及び「不良品」の「判定」について
引用発明において「不良品か否かを判定する」ことは、前記4(1)アにおいて摘記した段落【0004】の記載を踏まえると、製造工程の最終段階において正極と負極が内部で微小短絡した電池を選別するために行われるといえるから、良品と判定された(微小短絡していない)電池は、受け入れられ(出荷に向けたラインに乗せられ)、不良品と判定された(微小短絡した)電池は、(出荷に向けたラインから)廃棄される(場合によっては廃棄された後、リサイクルされる)ことが明らかである。
(ウ) 前記イ(ウ)において検討したとおり、引用発明における「基準電池110sと未検査の各単電池110a~110eとの電圧差Vsa~Vseが電圧計VM1~VM5を通じて各別に計測される」ステップは、本願発明における「それぞれ同じ極性を有する、第1の電気化学セルのテスト端子と第2の電気化学セルのテスト端子との間の電圧差を測定するステップ」に相当する。
(エ) 前記(イ)b及び前記(ウ)を踏まえると、「基準電池110sと各単電池との各電圧差の値が、いずれも「0mV」となっていれば、これら各単電池は」「基準電池110sと同じく良品と判定する」ステップを備える引用発明は、本願発明におけるステップB1に相当する構成を備えるといえる。
(オ) また、前記(イ)a及びb並びに前記(ウ)を踏まえると、「基準電池110sと単電池との電圧差の値が、内部短絡の基準となる直線L0を上回っていれば、この単電池は、その内部短絡の度合いが基準電池110sに対して許容されうる内部短絡の度合いを超えた「不良品」として判定される」ステップを備える引用発明は、本願発明におけるステップB2に相当する構成を備えるといえる。
(カ) したがって、本願発明と引用発明は、構成Bの観点に関し、次の点において一致する。
「前記測定に基づいて、前記第1の電気化学セルもしくは前記第2の電気化学セルを受容するステップ、または、
前記電気化学セルにおける内部障害を測定するステップに基づいて、前記第1の電気化学セルもしくは前記第2の電気化学セルを廃棄するステップ」を含む点。
なお、本願発明においてステップB1及びB2は選択肢として特定されているところ、前記(イ)の解釈は、ステップB2に係るものであって、ステップB1とは関係がないから、引用発明がステップB2に相当する構成を備えないとしても、ステップB1にのみ着目して、本願発明と引用発明の対比を行えば足りることになる。
したがって、ステップB2に係る対比の議論の是非が、上記結論を左右するものではないし、そもそも、仮に引用発明がステップB2に相当する構成を欠くとしても、そのような構成の採否は設計上の微差にすぎないから、いずれにしても格別の事項ではない。
エ 構成Cの観点
(ア) 構成Cは、「電圧差を測定するステップのとき、前記測定は、前記測定時間にわたって、連続的に実行され、または、1つの測定の開始から次の測定の開始までの時間が5秒以下であるように迅速に連続して実行され[る]」ことである。
(イ) 引用発明は、本願発明の構成Cに相当する構成を備えていないから、本願発明と引用発明は、構成Cの観点に関し、次の点において相違する。
本願発明においては、「電圧差を測定するステップのとき、前記測定は、前記測定時間にわたって、連続的に実行され、または、1つの測定の開始から次の測定の開始までの時間が5秒以下であるように迅速に連続して実行され[る]」のに対して、
引用発明においては、「各電圧差Vsa~Vseが計測され[る]」ことが時間間隔をおいて複数回行われておらず、そのような構成を備えていない点。
オ 構成Dの観点
(ア) 構成Dは、「前記電圧差は、300,000Ω超の抵抗の内部障害に起因する」ことである。
(イ) 引用発明における「内部短絡の基準となる直線L0を上回ってい[る]」「基準電池110sと単電池との電圧差」は、「許容されうる」「度合いを超えた」「内部短絡」に起因するものであり、このことは、本願発明において「前記電圧差は、300,000Ω超の抵抗の内部障害に起因する」ことと、「前記電圧差は、所定の程度超の内部障害に起因する」点で共通する。
(ウ) 以上の検討結果を踏まえると、本願発明と引用発明の構成Dの観点における一致点及び相違点は、次のa及びbのとおりである。
a 構成Dの観点における一致点
「前記電圧差は、所定の程度超の内部障害に起因する」点。
b 構成Dの観点における相違点
内部障害の所定の程度について
本願発明においては、「300,000Ω」「の抵抗」を目安にするものであるのに対して、
引用発明においては、具体的な数値の特定がない点。
(2) 一致点及び相違点
前記(1)の対比分析の結果をまとめると、本願発明と引用発明は、次のアに示す一致点において一致し、後記イに示す相違点において相違すると認められる。
ア 一致点
「電気化学セルにおける内部障害を検出する方法であって、前記方法は、
測定時間において、それぞれ同じ極性を有する、第1の電気化学セルのテスト端子と第2の電気化学セルのテスト端子との間の電圧差もしくは電圧差変化率を測定するステップ、および、
前記測定に基づいて、前記第1の電気化学セルもしくは前記第2の電気化学セルを受容するステップ、または、
前記電気化学セルにおける内部障害を測定するステップに基づいて、前記第1の電気化学セルもしくは前記第2の電気化学セルを廃棄するステップ、
を含み、
前記電圧差は、所定の程度超の内部障害に起因する、
方法。」である点。
イ 相違点
(ア) 相違点1(構成A、C)
本願発明においては、測定時間において測定することが、測定時間に「わたって」なされるものであり、「電圧差を測定するステップのとき、前記測定は、前記測定時間にわたって、連続的に実行され、または、1つの測定の開始から次の測定の開始までの時間が5秒以下であるように迅速に連続して実行され[る]」のに対して、
引用発明においては、「各電圧差Vsa~Vseが計測され[る]」ことが時間間隔をおいて複数回行われていない点。
(イ) 相違点2(構成D)
内部障害の所定の程度について
本願発明においては、「300,000Ω」「の抵抗」を目安にするものであるのに対して、
引用発明においては、具体的な数値の特定がない点。
7 判断
(1) 相違点1について
ア 引用文献1における示唆について
引用文献1における前記4(1)クにおいて摘記した記載事項において、次の(ア)及び(イ)の示唆がある。
(ア) 基準電池と各単電池との電圧差の計測回数を一回に限らず、複数回としてもよいこと(【0059】参照)
(イ) 検査対象とする電池が5個に限らず、1個であってもよいこと(【0069】参照)
イ 「測定は、測定時間にわたって、連続的に実行され[る]」ことについて
引用発明において、「基準電池110sと未検査の各単電池110a~110eとの電圧差Vsa~Vse」の「計測」について、前記ア(ア)に示した引用文献1における示唆を踏まえて複数回行うことにより、「測定時間にわたって、連続的に実行され[る]」ような構成とすることは、当業者であれば適宜なし得たことである。
ウ 「測定は、測定時間にわたって、」「1つの測定の開始から次の測定の開始までの時間が5秒以下であるように迅速に連続して実行され[る]」ことについて
前記イにおいて検討した事項に加え、検査を迅速に進めることが検査工程の時間短縮の観点で好ましいことは当業者にとって明らかであるから、そのような観点からみて、必要であれば前記ア(イ)に示した引用文献1における示唆(検査対象は1個でもよいため「5秒毎」の計測に縛られないこと)も踏まえると、引用発明において、「電圧差」の「計測」の間隔が5秒以下となるようにすることにより、「測定は、測定時間にわたって、」「1つの測定の開始から次の測定の開始までの時間が5秒以下であるように迅速に連続して実行され[る]」ような構成とすることは、当業者であれば適宜なし得たことである。
エ まとめ
以上の検討結果を踏まえると、引用発明において、前記アに示した引用文献1における示唆を踏まえて、相違点1に係る本願発明の構成を備えるようにすることは、当業者にとって自明な設計事項にすぎない。
(2) 相違点2について
ア 技術常識1について
前記5(2)において技術常識1として認定したとおり、次の事項は技術常識である。
<技術常識1>
「製品として出荷する前のリチウムイオン電池において、正極と負極につながれた300kΩ超の抵抗と等価な、微少な内部短絡による電圧異常が生じうること。」
イ 動機について
ここで、電池の内部短絡の度合いが小さいほど、電池の安全性、性能、寿命等の観点で好ましいことが明らかであるから、当業者にとって、引用発明における「許容されうる内部短絡の度合い」として、できるだけ微少な短絡、すなわち、できるだけ高い抵抗値に相当する内部短絡を設定しようとする動機は存在するといえる。
ウ まとめ
以上の検討結果を踏まえると、「内部短絡検査の対象として、角形密閉式電池を構成するニッケル水素蓄電池(単電池)に限らず、リチウムイオン電池等の二次電池」を設定できる引用発明において、前記イの動機を契機として前記技術常識1を踏まえることにより、前記相違点2に係る本願発明の構成を備えるようにすることは、当業者にとって自明な設計事項にすぎない。
(3) 総合評価
前記(1)及び(2)において検討したとおり、引用発明において、前記相違点1及び2に係る本願発明の構成を備えるようにすることは、引用発明及び技術常識1に基づいて当業者が容易に想到し得たことである。
そして、前記相違点1及び2を総合的に勘案しても、本願発明が奏する効果としては、当該構成のものとして当業者が予測・発見困難であり、かつ、格別顕著な効果を認めることはできない。
したがって、本願発明は、引用発明及び技術常識1に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
8 請求人の主張について
(1) 請求人の主張内容
請求人は、審判請求書において、本願発明は、測定時間にわたって連続的に測定することが鍵であり、非常に小さい障害を迅速に検出することができるのに対して、引用発明においては、測定を電池間で5秒ごとに切り替えており一つの電池に対して測定を繰り返していないため、測定時間にわたって連続的に測定しておらず、本願発明のように小さい障害を迅速に検出することができない旨を主張している。
(2) 請求人の主張についての検討
請求人の主張は、前記相違点1に係る構成についてのものであるところ、前記7(1)において説示したとおり、引用発明において、引用文献1における示唆を踏まえて前記相違点1に係る構成を備えるようにすることは、当業者が容易に想到し得たことである。
したがって、請求人の主張は、前記7(3)の結論を左右するものではない。
9 むすび
以上検討のとおり、本願発明は、特許法29条2項の規定により、特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2024-012013