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特許拒絶査定不服審判

2023-006902

データの処理方法及び装置

審判番号
2023-006902
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2020-541650
請求日
2023年04月26日
審決日
2025年05月20日
公報発行日
2025年10月31日
結論
請求不成立
当事者
  • 【請求人】董福田
  • 【請求人代理人】山本 修
  • 【請求人代理人】宮前 徹
  • 【請求人代理人】松尾 淳一
  • 【請求人代理人】大房 直樹
審判長/審判官
  • 審判長 吉田 美彦
  • 審判官 山崎 慎一
  • 審判官 脇岡 剛
分類
P18 .537-WZ (G06F)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第36条
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特願2020-541650「データの処理方法及び装置」拒絶査定不服審判事件〔令和 1年 8月 8日国際公開、WO2019/149204、令和 3年 5月20日国内公表、特表2021-513146〕について、次のとおり審決する。

結論

結 論 本件審判の請求は、成り立たない。

理由

理 由 第1 手続の経緯 本願は、2019年(平成31年)1月30日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2018年(平成30年)2月1日(以下、「優先日」という。)、中国)を国際出願日とする出願であって、令和3年9月28日付けで拒絶の理由が通知され、令和4年1月4日に意見書とともに手続補正書が提出され、同年5月31日付けで拒絶の理由が通知され、同年9月1日に意見書とともに手続補正書が提出され、同年12月23日付けで拒絶査定(謄本送達日同年12月27日。以下、「原査定」という。)がなされ、これに対して令和5年4月26日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに手続補正がなされたところ、当該手続補正は、同年11月28日付けで補正却下の決定により却下され、同日に当審により拒絶の理由が通知され、令和6年5月27日に意見書とともに手続補正書が提出されたところ、同年8月27日付けで当審により拒絶理由通知(以下、「当審拒絶理由通知」という。)がなされ、令和7年1月27日に意見書とともに誤訳訂正書が提出されたものである。 第2 本件発明 本願請求項1~38に係る発明(以下、「本件発明1」~「本件発明38」という。)は、令和7年1月27日付け誤訳訂正書の特許請求の範囲(以下、単に「特許請求の範囲」という。)の請求項1~38に記載された、次のとおりのものと認められる。なお、下線は補正された箇所を示すものとして請求人が付したものである。 「 【請求項1】 データの処理方法であって、 コンピュータに、 データのスケールを設定するステップであって、前記データは、電子地図の表示や空間の分析算出に用いられるデータであるステップと、 前記データのスケールに応じて、前記データ間の相互関係を分析算出するステップと、 設定された処理タイプに対応する処理方法に従って、前記相互関係に応じて前記データを処理するステップであって、分析算出されたデータ間の相互関係に応じて、インデックスを確立しデータを分析管理することを含む、ステップと、 を実行させ、 前記分析算出されたデータ間の相互関係に応じて、インデックスを確立しデータを分析管理するプロセスは、 予め設定されたインデックス確立条件を満たすデータと、インデックスが確立されたデータ間の相互関係を満たすデータとに対して、次のレベルインデックスを継続的に確立し、インデックス確立条件を満たさないデータと、インデックスが確立されたデータ間の相互関係を満たさないデータとに対して、次のレベルインデックスを確立しない、ことを含むことを特徴とする方法。 【請求項2】 前記データは、マクロデータセット、1つのオブジェクトを記述するデータ、座標データ、及びマイクロデータビットのうちのいずれか1つ又は複数の組み合わせを含み、 前記データのスケールは、データのマクロとミクロを示す変数であり、 データは、スケールが大きい場合に、スケールが小さい場合よりもマクロであり、スケールが小さい場合に、スケールが大きい場合よりもミクロであることを特徴とする請求項1に記載の方法。 【請求項3】 前記データのスケールは、データ自体の空間スケール、又は時間スケールを含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。 【請求項4】 前記データのスケールは、観測データのスケール、又は空間データのスケールを含み、前記観測データのスケールは、空間データがコンピュータに表示される際の拡大率を含み、前記空間データのスケールは、空間データの解像度を含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。 【請求項5】 前記データ間の相互関係は、空間関係、時間関係、スケール関係のうちのいずれか1つ又は複数の組み合わせを含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。 【請求項6】 前記設定された処理タイプに対応する処理方法に従って、前記の相互関係に応じて前記データを処理するプロセスは、 異なるスケールでのデータ間の相互関係に基づいて、データのインデックスの確立、記憶、読み取り、伝送、表示、データの分析を処理すること、 又は、 異なるスケールとデータ間の相互関係とに基づいて、前記データのインデックスの記憶、読み取り、伝送、表示、データの分析を処理することを含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。 【請求項7】 インデックスを確立しデータを分析管理する方法であって、 コンピュータに、 データのスケールを設定するステップであって、前記データは、電子地図の表示や空間の分析算出に用いられるデータであるステップと、 前記データのスケールに応じて、前記データ間の相互関係を分析算出するステップと、 設定された処理タイプに対応する処理方法に従って、前記の相互関係に応じて前記データを処理するステップであって、分析算出されたデータ間の相互関係に応じて、インデックスを確立しデータを分析管理することを含む、ステップと、 を実行させ、 前記分析算出されたデータ間の相互関係に応じて、インデックスを確立しデータを分析管理するプロセスは、 予め設定されたインデックス確立条件を満たすデータと、インデックスが確立されたデータ間の相互関係を満たすデータとに対して、次のレベルインデックスを継続的に確立し、インデックス確立条件を満たさないデータと、インデックスが確立されたデータ間の相互関係を満たさないデータとに対して、次のレベルインデックスを確立しない、ことを含むことを特徴とする方法。 【請求項8】 前記設定されたデータのスケールは、予め設定されたスケール、一時的に設定されたスケール、又は、データ処理プロセスで算出されたスケールを含み、 前記設定されたデータのスケールに応じて、インデックスのレベルを特定し、 前記特定されたインデックスのレベルに応じて、データを管理し検索する、ことを含むことを特徴とする請求項7に記載の方法。 【請求項9】 前記予め設定されたインデックス確立条件は、所定のデータ範囲、データ量、データの数のうちの1つ又は複数の指標の組み合わせを含むことを特徴とする請求項7に記載の方法。 【請求項10】 前記データ範囲は、データ自体の範囲、又は、前記設定されたデータのスケールに応じて算出された範囲を含むことを特徴とする請求項9に記載の方法。 【請求項11】 前記分析算出されたデータ間の相互関係に応じて、インデックスを確立しデータを分析管理するプロセスは、 インデックス確立条件を満たすデータと、インデックスが確立されたデータ間の相互関係を満たすデータとに対して、次のレベルインデックスを継続的に確立し、前記次のレベルのインデックスを、インデックスのインデックスを管理するインデックス項目で管理し、前記インデックスを管理するインデックス項目により、管理されるインデックスを検出可能であり、 インデックス確立条件を満たさないデータと、インデックスが確立されたデータ間の相互関係を満たさないデータとを、インデックスの管理データのインデックス項目で管理し、前記データを管理するインデックス項目により、データを検出可能である、ことを含むことを特徴とする請求項7に記載の方法。 【請求項12】 前記分析算出されたデータ間の相互関係に応じて、インデックスを確立しデータを分析して管理するプロセスは、 インデックス確立条件を満たすデータと、前記設定されたデータのスケールに応じてデータ間の関係が重畳であると分析算出されたデータとに対して、次のレベルインデックスを継続的に確立し、 前記次のレベルのインデックスが次のレベルのデータのスケールに対応する、ことを含み、 前記次のレベルのデータのスケールの設定には、現在のレベルのスケール算出による取得、外部からの付与の方法で設定することを含むことを特徴とする請求項7に記載の方法。 【請求項13】 前記分析算出されたデータ間の相互関係に応じて、インデックスを確立しデータを分析して管理するプロセスは、 インデックス確立条件を満たすデータと、前記設定されたデータのスケールに応じて空間データを構成する座標点が1点に重畳すると分析算出されたデータに対して、次のレベルインデックスを継続的に確立することを含むことを特徴とする請求項12に記載の方法。 【請求項14】 前記インデックスを確立し、データを分析して管理する方法のプロセスは、 前記設定されたデータのスケールに応じて、データセットのデータ、オブジェクトを記述又は表現するデータ、及びマイクロデータビットのデータのうちのいずれか1つ又は複数の組み合わせに対して、統合インデックスを確立し、 前記統合インデックスをデータの分析管理に使用する、ことを含み、 前記データの分析管理は、データの記憶、クエリ、読み取り、伝送、表示、分析、空間関係の算出のうちのいずれか1つ又は複数の組み合わせを含むことを特徴とする請求項7に記載の方法。 【請求項15】 データを管理し記憶する方法であって、 コンピュータに、 確立されたインデックスに応じて、データを管理し記憶することを実行させ、 前記データのインデックスは、請求項7-14のいずれか一項に記載の方法で確立されることを特徴とする方法。 【請求項16】 前記確立されたインデックスに応じて、データを管理し記憶するプロセスは、 前記インデックスのデータを管理するインデックス項目を、データを管理し記憶するオブジェクトとし、前記データを管理し記憶するオブジェクトを、記憶データブロック、記憶レコード又は記憶ファイルを含む形式でデータの管理及び記憶を行うことを含むことを特徴とする請求項15に記載の方法。 【請求項17】 データを管理し記憶する方法であって、 コンピュータに、 データのスケールを設定するステップであって、前記データは、電子地図の表示や空間の分析算出に用いられるデータであるステップと、 前記データのスケールに応じて、前記データ間の相互関係を分析算出するステップと、 分析算出されたデータ間の相互関係に応じて、データの管理及び記憶を行うステップであって、分析算出されたデータ間の相互関係に応じて、インデックスを確立しデータを分析管理し、確立されたインデックスに応じて、データを管理し記憶することを含む、ステップと、 を実行させ、 前記分析算出されたデータ間の相互関係に応じて、インデックスを確立しデータを分析管理するプロセスは、 予め設定されたインデックス確立条件を満たすデータと、インデックスが確立されたデータ間の相互関係を満たすデータとに対して、次のレベルインデックスを継続的に確立し、インデックス確立条件を満たさないデータと、インデックスが確立されたデータ間の相互関係を満たさないデータとに対して、次のレベルインデックスを確立しない、ことを含むことを特徴とする方法。 【請求項18】 前記データのスケールを設定するプロセスは、 異なるスケールでのデータ間の関係の簡易度に応じて、データ管理の初期スケールを設定することを含むことを特徴とする請求項17に記載の方法。 【請求項19】 前記データのスケールを設定するプロセスは、 データを重畳させるスケールをデータ管理の初期スケールとして設定することを含み、 前記データの重畳には、全てのデータが1つの重畳を形成すること、データが複数の重畳を形成すること、又は1つのデータの複数の座標点が重畳を形成することを含むことを特徴とする請求項18に記載の方法。 【請求項20】 前記分析算出されたデータ間の相互関係に応じて、データの管理及び記憶を行うプロセスは、 前記データ間の相互関係が重畳であるデータをデータ管理ユニットとし、 前記データ管理の初期スケールに応じて、新しいデータスケールを設定し、 前記新しいデータスケールに応じて、データ間の相互関係を分析算出し、データ間の関係が単なる重畳関係ではない場合、データを、このスケールでのデータ記憶ユニットとし、データ管理条件を満たし、且つデータ間が依然として重畳であるデータを、前記新しいデータスケールでのデータ管理ユニットとし、新しいデータスケールを再設定し、上記のプロセスを繰り返す、ことを含み、 前記データ管理条件を満たすことは、データの数、データ量、データ範囲のうちの1つ又は複数の組み合わせを含み、 前記データ範囲は、前記新しいデータスケールでのデータのデータ表示範囲を含むことを特徴とする請求項19に記載の方法。 【請求項21】 データ表示の方法であって、 コンピュータに、 表示データのスケールに応じて、データのスケールを特定するステップと、 前記データのスケールに応じて、データのインデックスで、表示を必要とするデータを検索するステップであって、前記データのインデックスは、請求項7-14のいずれか一項に記載の方法で確立される、ステップと、 データを表示するために前記表示を必要とするデータを読み取るステップと、 を実行させることを特徴とする方法。 【請求項22】 前記表示データのスケールに応じて、データに対応するスケールを確定するプロセスは、前記データ表示のスケールに応じて、データのスケールを直接特定すること、又は、前記データ表示のスケールに応じて、算出によりデータのスケールを特定することを含むことを特徴とする請求項21に記載の方法。 【請求項23】 前記データのスケールに応じて、データのインデックスで、表示を必要とするデータを検索するプロセスは、以下の方式のいずれか1つ又は複数の組み合わせを含み、 検出されたインデックスを管理するインデックス項目を表示データとして表示させ、 検出されたデータのうち前記データのスケールに対応する部分のデータを表示データとして表示させ、 検出されたデータのうち前記データのスケールに対応する部分のデータビットでのデータを表示データとして表示させ、 検出されたデータを表示データとして表示させ、 他の重畳関係を有するデータを代わりに、検出されたデータのうちの1つ又は複数を表示データとして表示させることを特徴とする請求項21に記載の方法。 【請求項24】 データを分析算出する方法であって、 コンピュータに、 データに対応するインデックスに応じて分析算出を行うステップであって、前記データに対応するインデックスは、請求項7-14のいずれか一項に記載の方法で確立されるステップと、 データのうち異なるスケールに対応するデータにより分析算出を行うステップと、 を実行させることを特徴とする方法。 【請求項25】 前記分析算出には、スケールに関する分析算出、又は、スケールに関しない分析算出を含み、 前記分析算出は、データの空間関係の算出、アグリゲーション分析、又はヒートマップ分析を含むことを特徴とする請求項24に記載の方法。 【請求項26】 前記の分析算出のプロセスは、 前記スケールに関する分析算出は、スケールに対応するインデックスと、データとにより分析算出を行うことを含むことを特徴とする請求項25に記載の方法。 【請求項27】 前記したインデックスに応じてデータの分析算出を行うプロセスは、 前記インデックスでのデータの異なるスケールに対応するインデックスデータの空間関係に応じて、分析算出を行うことを含むことを特徴とする請求項24に記載の方法。 【請求項28】 前記データに対応するインデックスに応じて、分析算出を行うプロセスは、 インデックスの分析算出により、データ間に、ある空間関係を明確に有すること、又は、ある空間関係を有する可能性があることを含むと特定する、ことを含むことを特徴とする請求項27に記載の方法。 【請求項29】 前記したデータのうち異なるスケールに対応するデータにより分析算出を行うプロセスは、 まず、データのうちあるスケールで対応するデータが少なく、算出量が小さいデータを使用して分析算出を行い、前記分析算出はデータ間が特定の関係を有することを求める場合、前記したデータのうちあるスケールで対応するデータが少なく、算出量が小さいデータを使用して分析算出を行った結果のうち、ある関係を有する可能性があるものが存在する場合、データ間がある空間関係を明確に有すると分析算出されたまで、前記ある関係対応を有する可能性があるものに対応するデータのうちあるスケールで対応するより多くのデータを使用してさらに分析算出を行う必要があることを特徴とする請求項24に記載の方法。 【請求項30】 データをプログレッシブに伝送する方法であって、 コンピュータに、 増分データを要求する必要がある場合、増分データ要求を送信するステップであって、前記要求に要求スケールパラメータを含む、ステップ、 前記要求スケールパラメータと、インデックスのスケールとに基づいて分析して得られた増分データを受信するステップであって、前記増分データはインデックスの増分データである、ステップ、 及び/又は、 前記要求スケールパラメータと、データのスケールとに基づいて分析して得られた増分データを受信するステップであって、前記増分データはデータの増分データである、ステップ を実行させ、 前記インデックスは、請求項7-14のいずれか一項に記載の方法で確立されることを特徴とする方法。 【請求項31】 要求送信側が以前にキャッシュされたデータをキャッシュしている場合、前記以前にキャッシュされたデータは、以前にキャッシュされたインデックスのうち相応するスケールに対応するインデックスデータ、及び/又は、以前にキャッシュされたデータのうち相応するスケールに対応するデータを含むことを特徴とする請求項30に記載の方法。 【請求項32】 要求送信側が以前にキャッシュされたデータをキャッシュしている場合、具体的なステップは、 現在のスケールパラメータを特定し、 以前にキャッシュされたデータに対応する最高レベルのスケールパラメータを取得し、 前記以前にキャッシュされたデータに対応する最高レベルのスケールパラメータと、前記現在のスケールパラメータとの関係を判断して、データを要求する必要があるかどうかを特定し、必要である場合、後続のステップを継続して実行し、必要でない場合、終了し、増分データ要求を送信し、前記要求には、前記現在のスケールパラメータ、要求スケールパラメータと呼ばれる、以前にキャッシュされたデータのうち対応する最高レベルのスケールパラメータを含み、 前記要求スケールパラメータと、インデックスのスケールパラメータとに基づいて分析して得られた増分データを受信し、前記増分データはインデックスの増分データであり、 前記要求スケールパラメータと、データのスケールパラメータとに基づいて分析して得られた増分データを受信し、前記増分データはデータの増分データであり、 前記受信した増分データを前記以前にキャッシュされたデータに挿入する、ことを含むことを特徴とする請求項31に記載の方法。 【請求項33】 データをプログレッシブに伝送する方法であって、 コンピュータに、 要求送信側から送信された、要求スケールパラメータを含む増分データ要求を受信するステップと、 前記要求スケールパラメータと、インデックスにおけるスケールとに基づいて分析処理を行って、インデックスのうち増分条件を満たすインデックスデータを増分データとして特定するステップ、及び/又は、前記要求スケールパラメータと、データにおけるスケールとに基づいて、分析処理を行って、データのうち増分条件を満たすデータを増分データとして特定するステップと、 前記増分データを前記要求送信側に送信するステップと、 を実行させ、 前記インデックスは、請求項7-14のいずれか一項に記載の方法で確立されることを特徴とする方法。 【請求項34】 要求送信側に以前にキャッシュされたインデックスとデータが記憶されている場合、前記要求スケールパラメータは、現在のスケールパラメータ及び/又は以前にキャッシュされたデータに対応するスケールパラメータを含むことを特徴とする請求項33に記載の方法。 【請求項35】 前記増分データ要求に対応する増分データを取得するプロセスは、 要求スケールパラメータにおける現在のスケールパラメータに基づいてインデックスとデータに対して分析処理を行って、現在の分析結果を取得し、 前記要求スケールパラメータに以前にキャッシュされたスケールパラメータを含んでいる場合、そのプロセスは、 要求スケールパラメータにおける以前にキャッシュされたスケールパラメータに基づいてインデックスとデータに対して分析処理を行って、以前の分析結果を取得することを含み、 前記現在の分析結果のうち増分条件を満たすデータを増分データとして特定し、前記現在の分析結果のうち増分条件を満たすデータを増分データとして特定するステップの具体的なプロセスは、 前記現在の分析結果であり、且つ前記以前の分析結果ではないデータを増分データとして特定することを含み、 前記要求スケールパラメータに以前にキャッシュされたスケールパラメータを含まない場合、そのプロセスは、 現在の分析結果のデータを増分データとし、 前記現在のスケールパラメータを増分データの現在の最高レベルのスケールパラメータとし、 前記増分データを要求送信側に送信することを含む、ことを含むことを特徴とする請求項33に記載の方法。 【請求項36】 データの処理装置であって、 データのスケールを特定するためのスケール設定ユニットであって、前記データは、電子地図の表示や空間の分析算出に用いられるデータであるスケール設定ユニット、 前記データのスケールに応じて、前記データ間の相互関係を分析算出するためのデータ分析ユニット、 設定された処理タイプに対応する処理方法に従って、前記相互関係に応じて前記データを処理するためのデータ処理ユニットとを含み、 前記データ処理ユニットは、分析算出されたデータ間の相互関係に応じて、インデックスを確立しデータを分析管理し、 前記分析算出されたデータ間の相互関係に応じて、インデックスを確立しデータを分析管理するプロセスは、 予め設定されたインデックス確立条件を満たすデータと、インデックスが確立されたデータ間の相互関係を満たすデータとに対して、次のレベルインデックスを継続的に確立し、インデックス確立条件を満たさないデータと、インデックスが確立されたデータ間の相互関係を満たさないデータとに対して、次のレベルインデックスを確立しない、ことを含むことを特徴とする装置。 【請求項37】 インデックスを確立しデータを分析管理する装置であって、 データのスケールを特定するためのスケール設定ユニットであって、前記データは、電子地図の表示や空間の分析算出に用いられるデータであるスケール設定ユニットと、 前記データのスケールに応じて、前記データ間の相互関係を分析算出するためのデータ分析ユニットと、 分析算出されたデータ間の相互関係に応じて、インデックスを確立しデータを分析管理するためのインデックス生成ユニットとを含み、 前記分析算出されたデータ間の相互関係に応じて、インデックスを確立しデータを分析管理するプロセスは、 予め設定されたインデックス確立条件を満たすデータと、インデックスが確立されたデータ間の相互関係を満たすデータとに対して、次のレベルインデックスを継続的に確立し、インデックス確立条件を満たさないデータと、インデックスが確立されたデータ間の相互関係を満たさないデータとに対して、次のレベルインデックスを確立しない、ことを含むことを特徴とする装置。 【請求項38】 データを管理し記憶する装置であって、 データのスケールを特定するためのスケール設定ユニットであって、前記データは、電子地図の表示や空間の分析算出に用いられるデータであるスケール設定ユニットと、 前記データのスケールに応じて、前記データ間の相互関係を分析算出するためのデータ分析ユニットと、 分析算出されたデータ間の相互関係に応じて、データの管理及び記憶を行うための管理及び記憶ユニットとを含み、 前記管理及び記憶ユニットは、分析算出されたデータ間の相互関係に応じて、インデックスを確立しデータを分析管理し、確立されたインデックスに応じて、データを管理し記憶し、 前記分析算出されたデータ間の相互関係に応じて、インデックスを確立しデータを分析管理するプロセスは、 予め設定されたインデックス確立条件を満たすデータと、インデックスが確立されたデータ間の相互関係を満たすデータとに対して、次のレベルインデックスを継続的に確立し、インデックス確立条件を満たさないデータと、インデックスが確立されたデータ間の相互関係を満たさないデータとに対して、次のレベルインデックスを確立しない、ことを含むことを特徴とする装置。」 第3 当審拒絶理由通知 令和6年8月27日付け当審拒絶理由通知の概要は以下のとおりである。(なお、以降において、下線は当審で強調のために付加したものであって、以下同様である。) 1.(委任省令要件)この出願は、発明の詳細な説明の記載が下記の点で、特許法36条4項1号に規定する要件を満たしていない。 2.(実施可能要件)この出願は、発明の詳細な説明の記載が下記の点で、特許法36条4項1号に規定する要件を満たしていない。 3.(明確性)この出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法36条6項2号に規定する要件を満たしていない。 記 ●理由1(委任省令要件)、理由2(実施可能要件)について ・請求項 1~38 ・備考 本件明細書の発明の詳細な説明には、例えば、段落【0002】、【0010】~【0011】を参照すると、本件発明の課題の1つは、マクロとミクロは互いに対応する概念であり、通常、スケールで表されるデータのスケールは、客観的に存在する固有スケールと主観的に設定された非固有スケールに分けられ、従来の方法は、データの構造、記憶、インデックス、空間関係の分析算出に関して、まだ、客観的に存在する固有スケールと主観的に設定された非固有スケールの間の統合という問題を解決できなかったところ、例えば、地図表示の場合には、客観的に存在する固有スケールと主観的に設定された非固有スケールとの部分の統合を解決し、地図表示の性能のボトルネックを解決したが、システムの他の機能は実現できなく、逆に、さらに多くの新しいボトルネックが発生してしまう点(以下、下線部を「本件課題」という。)にあるものと理解される。(【0002】) そして、その解決手段として、すべての問題はインデックスの問題にまとめられ、インデックスの問題が解決される限り、他のボトルネックの問題に対して、解決でき、簡単なインデックス関係で任意の複雑な空間データの構成、管理、記憶、クエリ、伝送、表示、及び分析を実現すること(【0010】)や、インデックスは、非固有スケールと固有スケールとの統合により、データの読み取り、伝送、表示、分析算出などのユーザーが異なるスケールで(非固有スケール)、部分と全体、マクロデータとミクロデータを調べ、異なるスケールでデータを分析算出する性能という問題を解決すること(【0011】)などを、一応読み取ることはできる。 しかしながら、上記記載において、「客観的に存在する固有スケール」及び「主観的に設定された非固有スケール」が、それぞれ具体的に何を意味するものか、「データの構造、記憶、インデックス、空間関係の分析算出」とは、それぞれどのようなものを意味するものか、「システムの他の機能」とは何か、「さらに多くの新しいボトルネック」とはどのようなものであるのかについては、何も説明されていないから、発明の技術上の意義を理解するために必要な事項の記載があるとはいえない。 さらに、上記記載中、解決手段として例示される、「すべての問題はインデックスの問題にまとめられ」るのは、どのような機序によるものであるのか、「インデックスの問題」とは何で、その「解決」は、どのようになされるのか、「簡単なインデックス関係」とは何のことを意味し、何故、「任意の複雑な空間データの構成、管理、記憶、クエリ、伝送、表示、及び分析を実現する」ことができるのか、「インデックス」が、何故、どのようにして、「非固有スケールと固有スケールとの統合により、データの読み取り、伝送、表示、分析算出などのユーザーが異なるスケールで(非固有スケール)、部分と全体、マクロデータとミクロデータを調べ、異なるスケールでデータを分析算出する性能という問題など」を解決できるのか、本件明細書の発明の詳細な説明の他の箇所の記載を参酌しても、理解することはできない。 したがって、本件明細書の発明の詳細な説明には、発明が解決しようとする課題及びその解決手段その他のその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が発明の技術上の意義を理解するために必要な事項の記載は一切無く、本件明細書に接した当業者が、過度の試行錯誤を要することなく、本件発明1~38を実施することができる程度に発明の構成等の記載があるともいえないから、本件明細書の発明の詳細な説明の記載は、特許法36条4項1号に定める要件を満たしていない。 ●理由3(明確性)について ・請求項 1~38 ・備考 特許請求の範囲の請求項1には、「データ」、「データのスケール」、「データ間の相互関係」、「設定された処理タイプに対応する処理方法に従って、前記相互関係に応じて前記データを処理するステップ」、「分析算出されたデータ間の相互関係に応じて、インデックスを確立しデータを分析管理すること」、「予め設定されたインデックス確立条件を満たすデータ」、「インデックスが確立されたデータ間の相互関係を満たすデータ」、「次のレベルインデックスを継続的に確立」すること、「インデックス確立条件を満たさないデータ」、「インデックスが確立されたデータ間の相互関係を満たさないデータ」、及び、「次のレベルインデックスを確立しない」ことのそれぞれについて、特段の定義ないし特定事項は記載されていない。 特許請求の範囲の請求項1には、上記に示したとおりの事項が記載されているところ、「データ」とは、具体的にどのような情報であるのかが不明確であり、この点は、請求項2の「前記データは、マクロデータセット、1つのオブジェクトを記述するデータ、座標データ、及びマイクロデータビットのうちのいずれか1つ又は複数の組み合わせを含み」との記載を参酌しても不明確である。 また、「データスケール」とは、具体的にどのような情報であるのかが不明確であり、この点は、請求項2の「前記データのスケールは、データのマクロとミクロを示す変数であり、データは、スケールが大きい場合に、スケールが小さい場合よりもマクロであり、スケールが小さい場合に、スケールが大きい場合よりもミクロである」との記載、請求項3の「前記データのスケールは、データ自体の空間スケール、又は時間スケールを含む」との記載、請求項4の「前記データのスケールは、観測データのスケール、又は空間データのスケールを含み、前記観測データのスケールは、空間データがコンピュータに表示される際の拡大率を含み、前記空間データのスケールは、空間データの解像度を含む」との記載を参酌しても不明確である。 また、「データ間の相互関係」とは具体的にどのような関係であるのかが不明確であり、この点は、請求項5の「前記データ間の相互関係は、空間関係、時間関係、スケール関係のうちのいずれか1つ又は複数の組み合わせを含む」との記載を参酌しても不明確である。 また、「設定された処理タイプに対応する処理方法に従って、前記相互関係に応じて前記データを処理するステップ」との記載は、具体的にどのような処理を特定しているのかが不明確であり、この点は、請求項6の「前記設定された処理タイプに対応する処理方法に従って、前記の相互関係に応じて前記データを処理するプロセスは、異なるスケールでのデータ間の相互関係に基づいて、データのインデックスの確立、記憶、読み取り、伝送、表示、データの分析を処理すること、又は、異なるスケールとデータ間の相互関係とに基づいて、前記データのインデックスの記憶、読み取り、伝送、表示、データの分析を処理することを含む」との記載を参酌しても不明確である。 また、「分析算出されたデータ間の相互関係に応じて、インデックスを確立しデータを分析管理する」との記載は、「分析算出」が、具体的にどのような算出を行うものか不明確であり、上記したとおり、「データ」とは具体的にどのような情報であるかが不明確であるから、「分析算出されたデータ間の相互関係に応じ」るとは、具体的に何の情報の何の相互関係に応じることを意味するものかも不明確である。 さらに、「インデックス」とは、具体的にどのような情報であるか不明確であり、したがってこれを「確立」するとは、具体的にどのような処理を行うことを意味するものか、不明確である。 そして、上記「インデックス」が不明確であることにより、「予め設定されたインデックス確立条件を満たすデータ」及び「インデックスが確立されたデータ間の相互関係を満たすデータ」のそれぞれが、具体的にどのようなデータを意味するものか不明確であり、さらに、「インデックス」が不明確であることから、「次のレベルインデックス」も不明確であり、したがって「次のレベルインデックスを継続的に確立」するとは、具体的にどのような処理を行うことを意味するものかも不明確である。 また、「インデックス確立条件を満たさないデータ」及び「インデックスが確立されたデータ間の相互関係を満たさないデータ」のそれぞれが、具体的にどのようなデータを意味するものか不明確であり、さらに、「次のレベルインデックスを確立しない」とは、具体的にどのような処理を行うことを意味するものかも不明確である。 また、請求項1において上記で指摘した事項と共通する事項を有する独立項である、請求項7、請求項17、請求項36~38についても、同様に不明確である。 そして、特許請求の範囲に記載された事項は、本件明細書の発明の詳細な説明に、ほぼそのままの記載があるのみで、特許請求の範囲に記載された各事項が示す意味内容、さらには、どのような情報ないし概念が含まれるのかを、具体的に示す事項の記載は一切見当たらない。 そうすると、特許請求の範囲の各請求項に記載された事項について、本件明細書の記載及び図面を考慮し、当業者の本件出願当時(本件優先日当時)における技術常識を基礎としたとしても、特許請求の範囲に記載されたものに、どのような技術内容が包含されるかを明確に特定した上峻別して解釈することは到底できない。このことは、本件特許請求の範囲が定める技術的範囲を明確に特定することができないことを意味し、本件特許請求の範囲に記載された事項に類似する方法ないし装置を実施しようとする第三者に不測の不利益をもたらすことは明白である。 そして、上記理由1及び2の項でも指摘したとおり、本件明細書の発明の詳細な説明には、発明が解決しようとする課題及びその解決手段その他の発明の技術上の意義を理解するために必要な事項が記載されていないことと相俟って、なお一層、特許請求の範囲の記載を不明確にするものといわざるを得ない。 してみれば、本件特許請求の範囲の記載は、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確であるというほかない。 第4 当審の判断 上記第3に示した、当審拒絶理由通知において指摘した点につき、判断する。 1 特許法36条4項1号(委任省令要件及び実施可能要件)について (1)はじめに 特許法36条4項1号は、「発明の詳細な説明」の記載については、「発明が解決しようとする課題及びその解決手段その他のその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が発明の技術上の意義を理解するために必要な事項」(特許法施行規則24条の2)により「その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものである」ことを、その要件として定めている。同規定の趣旨は、特許制度は、発明を公開した者に対して、技術を公開した代償として一定の期間の独占権を付与する制度であるが、仮に、特許を受けようとする者が、第三者に対して、発明が解決しようとする課題及びその解決手段その他の発明の技術上の意義を理解するために必要な事項を開示することなく、また、発明を実施するための明確でかつ十分な事項を開示することなく、独占権の付与を受けることになるのであれば、有用な技術的思想の創作である発明を公開した代償として独占権が与えられるという特許制度の目的を失わせることになりかねず、そのような趣旨から、特許明細書の「発明の詳細な説明」に、上記事項を記載するよう求めたものである。 そして、同号の要件を充足するためには、明細書の発明の詳細な説明に、当業者が、明細書の発明の詳細な説明の記載及び出願当時の技術常識に基づいて、過度の試行錯誤を要することなく、その発明を実施することができる程度に発明の構成等の記載があることを要することから、まず、本件明細書の発明の詳細な説明に、発明が解決しようとする課題及びその解決手段その他の発明の技術上の意義を理解するために必要な事項の開示があるか否かについて検討する。(委任省令要件) 次に、本件明細書の発明の詳細な説明において、過度の試行錯誤を要することなく、その発明を実施することができる程度に発明の構成等が記載されているか否かについて検討する。(実施可能要件) (2)発明の詳細な説明の記載について 本件明細書(令和7年1月27日付け誤訳訂正書によって補正された明細書。以下、単に「本件明細書」という。)の発明の詳細な説明には、段落【0002】、【0010】~【0011】を参照すると、次の事項の記載が認められる。 「【0002】 マクロとミクロは互いに対応する概念であり、通常、スケールで表される。データのスケールは、客観的に存在する固有スケールと主観的に設定された非固有スケールに分けられる。例えば、地理的研究オブジェクトのミクロとマクロは、地理的固有時空間スケールに基づいており、地理的研究の視点のミクロとマクロは地理的非固有の時空間スケールに基づいている。GISでは、空間データが客観的に存在する固有のスマクロとミクロを反映し、電子地図の表示や空間の分析算出が主観的に設定された非固有のマクロとミクロを反映するように具現する。従来の方法は、データの構造、記憶、インデックス、空間関係の分析算出に関して、まだ、客観的に存在する固有スケールと主観的に設定された非固有スケールの間の統合という問題、例えば、地図とデータとの間、地図とデータの座標点との間、さらに、座標点のデータビットとの間の対立と統合を解決できなく、地図は、異なる縮尺で、必要なデータが異なり、必要なデータの座標点、及び座標点のデータビットは異なり、従来の方法は、まだ、これらの問題を解決できない。大量の空間データによって引き起こされるサーバー、伝送、表示のプレッシャーを解決するには、最終的に、サーバーを用いて空間データを前処理し、まず、特定の主題スタイルに従って、一枚の地図ピクチャにレンダリングし、次に、ピラミッド構造のグリッドに従って地図を、異なるレベルのグリッドピクチャにカットし、各レベルのスライスを符号化し、スライスの持つ一意のインデックス値を特定する必要がある。クライアントで拡大、縮小により空間データを閲覧する場合に、クライアントは、現在の表示範囲の座標に応じて、相応するスライスインデックス規格に従って、相応するスライスインデックスを直接算出しサーバーに送信し、サーバーは相応するスライスデータをクライアントに伝送し表示させる。地図表示の場合に客観的に存在する固有スケールと主観的に設定された非固有スケールとの部分の統合を解決し、地図表示の性能のボトルネックを解決したが、システムの他の機能は実現できなく、逆に、さらに多くの新しいボトルネックが発生してしまう。 …(中略)… 【0010】 すべての問題はインデックスの問題にまとめられ、インデックスの問題が解決される限り、他のボトルネックの問題に対して、解決でき、解決すべき上記のインデックスの問題はスライスのインデックスのすべての利点を持つ必要があるが、データを空間関係に応じて分散して記憶することができ、データをカットした後に分散して記憶するのではなく、インデックスにより、簡単と複雑の統合を実現し、即ち、簡単なインデックス関係で任意の複雑な空間データの構成、管理、記憶、クエリ、伝送、表示、及び分析を実現する。 【0011】 インデックスは、非固有スケールと固有スケールとの統合により、データの読み取り、伝送、表示、分析算出などのユーザーが異なるスケールで(非固有スケール)、部分と全体、マクロデータとミクロデータを調べ、異なるスケールでデータを分析算出する性能という問題を解決し、有限と無限との対立、即ち、データの固有スケールと主観的に設定された非固有スケールとのフュージョン、マクロデータセットのデータから、データを構成する最小のデータビットのデータまでは、主観的に設定された非固有尺とデータ固有スケールとの統合を反映できる。」 (3)本件発明の課題及び解決手段について 上記(2)の記載によると、本件発明の課題の1つは、マクロとミクロは互いに対応する概念であり、通常、スケールで表されるデータのスケールは、客観的に存在する固有スケールと主観的に設定された非固有スケールに分けられ、従来の方法は、データの構造、記憶、インデックス、空間関係の分析算出に関して、まだ、客観的に存在する固有スケールと主観的に設定された非固有スケールの間の統合という問題を解決できなかったところ、例えば、地図表示の場合には、客観的に存在する固有スケールと主観的に設定された非固有スケールとの部分の統合を解決し、地図表示の性能のボトルネックを解決したが、システムの他の機能は実現できなく、逆に、さらに多くの新しいボトルネックが発生してしまう点(以下、下線部を「本件課題」という。)にあるものと理解される。(【0002】) そして、その解決手段として、すべての問題はインデックスの問題にまとめられ、インデックスの問題が解決される限り、他のボトルネックの問題に対して、解決でき、簡単なインデックス関係で任意の複雑な空間データの構成、管理、記憶、クエリ、伝送、表示、及び分析を実現すること(【0010】)や、インデックスは、非固有スケールと固有スケールとの統合により、データの読み取り、伝送、表示、分析算出などのユーザーが異なるスケールで(非固有スケール)、部分と全体、マクロデータとミクロデータを調べ、異なるスケールでデータを分析算出する性能という問題を解決すること(【0011】)などを、一応読み取ることはできる。 (4)判断 しかしながら、上記(2)に示した記載において、「客観的に存在する固有スケール」及び「主観的に設定された非固有スケール」が、それぞれ具体的に何を意味するものか、「データの構造、記憶、インデックス、空間関係の分析算出」とは、それぞれどのようなものを意味するものか、「システムの他の機能」とは何か、「さらに多くの新しいボトルネック」とはどのようなものであるのかについては、何も説明されておらず、また、本件明細書の上記(2)に摘記した箇所以外の箇所にも、「客観的に存在する固有スケール」及び「主観的に設定された非固有スケール」についての定義や説明は無く、「データの構造、記憶、インデックス、空間関係の分析算出」とは、それぞれどのようなものを意味するものか、「システムの他の機能」とは何か、「さらに多くの新しいボトルネック」とはどのようなものであるのかについての説明は認められないから、発明の技術上の意義を理解するために必要な事項の記載があるとはいえない。また、これらが、本件明細書に明示的な説明も無くとも、当業者が理解できる技術常識が存在したともいえない。 さらに、上記(2)に示した記載中、解決手段として例示される、「すべての問題はインデックスの問題にまとめられ」るのは、どのような機序によるものであるのか、「インデックスの問題」とは何で、その「解決」は、どのようになされるのか、「簡単なインデックス関係」とは何のことを意味し、何故、「任意の複雑な空間データの構成、管理、記憶、クエリ、伝送、表示、及び分析を実現する」ことができるのか、「インデックス」が、何故、どのようにして、「非固有スケールと固有スケールとの統合により、データの読み取り、伝送、表示、分析算出などのユーザーが異なるスケールで(非固有スケール)、部分と全体、マクロデータとミクロデータを調べ、異なるスケールでデータを分析算出する性能という問題など」を解決できるのか、本件明細書の発明の詳細な説明の他の箇所の記載を参酌しても、理解することはできない。また、これらが、本件明細書に明示的な説明も無くとも、当業者が理解できる技術常識が存在したともいえない。 本件明細書には、本件発明1~本件発明38の構成要件をほぼそのまま転記した記載(例えば本件明細書段落【0014】~【0058】、【0064】~【0073】及び図1、【0074】~【0078】及び図2、【0079】~【0093】及び図3、【0094】~【0105】及び図4、【0106】~【0115】及び図5、【0116】~【0126】及び図6、【0127】~【0137】及び図7、【0138】~【0139】及び図8、【0140】~【0142】及び図9、並びに、【0143】及び図10など。)のほかは、発明が解決しようとする課題及びその解決手段その他の発明の技術上の意義を理解するために必要な事項の記載は認められない。 そして、上記本件明細書の発明の詳細な説明における発明が解決しようとする課題及びその解決手段その他の発明の技術上の意義を理解するために必要な事項の記載の欠缺は、その発明を実施する当業者に対して、過度の試行錯誤を強いる結果を招来するものであるから、本件明細書の発明の詳細な説明には、本件発明1~38を実施することができる程度に発明の構成等の記載があるとはいえず、本件明細書の発明の詳細な説明の記載は、特許法36条4項1号に定める要件を満たしていない。 (5)令和7年1月27日に提出された意見書について ア 意見書における主張 当審拒絶理由通知に対し、令和7年1月27日に提出された意見書において審判請求人は、次のように主張している。 「(3)理由1および2に対する意見 …(中略)… 明細書の「GISでは、空間データが客観的に存在する固有のスマクロとミクロを反映し、電子地図の表示や空間の分析算出が主観的に設定された非固有のマクロとミクロを反映するように具現する」の記載により、「固有スケール」は客観的に存在する物体そのもののスケールであり、「非固有スケール」は、客観的に存在する物体に対応する電子地図の表示や空間の分析算出を行うときに設定されたスケールである。 「データの構造、記憶、インデックス、空間関係の分析算出」について、明らかに電子地図の表示や空間の分析算出など、非固有スケールを具備するデータを用いる時の処理に関わる。このようなプロセスにおいて、データの構造(作成)、記憶、インデックス(インデックス確立)、空間関係の分析算出などの具体的な意味はいずれも文字通りの意味であり、具体的な内容は当該分野における常識となっている。 「システムの他の機能」については、それ以前の記載によれば、「システム」は、サーバーが空間データを前処理して一意のインデックス値を持つスライスを生成し、クライアントが表示する内容に対応するスライスインデックスを直接算出しサーバーに送信し、サーバーが相応するスライスデータをクライアントに伝送し表示させるシステムである。このようなシステムでは、空間データはスライスの形で存在するため、元の空間データのように空間分析や計算に使用することはできない。したがって、「システムのその他の機能」とは、元の空間データに対して実行できるさまざまな処理によってもたらされる機能を指す。さらに、上記のようにサーバーが画像スライスを保存する場合、保存するデータ量が増加し、サーバーが他の内容を保存することも困難になる。その他の内容を保存することも、「システムのその他の機能」に相当する。 「さらに多くの新しいボトルネック」については、前述の通り、保存するデータの量が増えることで、少なくともストレージ上新たなボトルネックが発生する。 また、明細書には以下のことが記載される。 スクリーンのデータ表示の観点から、スクリーンのスケール、画素のスケールは限られ、データは電子スクリーンの画素に表示され、見える画素の数は限られ、1つの画素はある時点に1つのデータしか表示できなく、つまり、あるスクリーンに表示できるデータの最大値は不変であり、データの無限大とは関係なく、スクリーンの解像度にのみ依存する。 (1)描画は、最終的に見えるデータのみを描画できることであり、表示効率とデータ量との矛盾が解消される。 (2)伝送は、これらのデータのみをネットワークを介してフロント端末に伝送することであり、ネットワーク帯域幅とデータ量との矛盾が解消される。 (3)読み取りは、これらのデータのみを読み取り、且つこれらのデータを1つのファイルにまとめて記憶することであり、磁気ディスクによる読み取りのプレッシャーが解消される。 (4)クエリは、データのみを読み取る重要な点は、インデックスでこれらのデータのみが検出され、そして、データを要求するクライアントは自分でインデックスに従ってクエリと検索を行い、データがインデックスのインデックス項目に応じてサーバーに分散して記憶され、クライアントが、インデックスにより、読み取るデータファイル内のデータブロックを検索し、サーバーにデータクエリのプレッシャーがないことである。そして、インデックスのデータ量は十分に小さく、且つ、データ量の増加に比例して増加することはできなく、そうでなければ、一定量のデータに到達すると、インデックスのネットワーク伝送がボトルネックになってしまう。 「すべての問題はインデックスの問題にまとめられ」るのは、どのような機序によるものであるのか、「インデックスの問題」とは何で、その「解決」は、どのようになされるのか、「簡単なインデックス関係」とは何のことを意味し、何故、「任意の複雑な空間データの構成、管理、記憶、クエリ、伝送、表示、及び分析を実現する」ことができるのかについて、上記記載によれば、クライアントの表示内容は限られているため、表示内容に基づいてインデックスを決定し、インデックスデータの量が十分に小さければ、クエリ時のボトルネックを解決できる。そのため、読み取り時にはこれらのデータのみが自然に読み取られ、読み取り時のプレッシャーが軽減される。さらに、伝送時には伝送量が削減され、描画時には表示効率が向上する。 「インデックス問題」とは、表示される内容に基づいて決定できるインデックスをどのように確立するかを指す。その「解決」は本願発明である。「簡単なインデックス関係」とは、インデックスが確立された後、クライアント上でインデックスが計算されてサーバーに送信され、サーバーがデータをクライアントに送信し、クライアント上描画する一連のプロセスが比較的に単純になることを意味する。「任意の複雑な空間データの構成、管理、記憶、クエリ、伝送、表示、及び分析を実現する」理由は、前述のように空間データのクエリ、読み取り、伝送、描画プロセスにおけるボトルネックを解決することに該当する。 「インデックス」が「非固有スケールと固有スケールとの統合により、データの読み取り、伝送、表示、分析算出などのユーザーが異なるスケールで(非固有スケール)、部分と全体、マクロデータとミクロデータを調べ、異なるスケールでデータを分析算出する性能という問題など」を解決する具体的な処理は上記の通りである。これが可能な理由は、前述のボトルネックを解決し、使用されるストレージリソース、ネットワーク転送リソース、ディスク読み取り性能、クライアントおよびサーバーの計算リソースを低減できるためである。 要約すると、本発明の課題の1つは、画面上に地図を表示するときに、インデックスを使用して、クエリ、読み取り、送信、および描画プロセスにおけるボトルネックを軽減することである。 したがって、本願明細書の記載は、当業者にとって理解可能であり、実現可能性等の問題はない。」 イ 意見書の主張に対する判断 (ア)「客観的に存在する固有スケール」及び「主観的に設定された非固有スケール」について 請求人は、本件明細書の「GISでは、空間データが客観的に存在する固有のスマクロとミクロを反映し、電子地図の表示や空間の分析算出が主観的に設定された非固有のマクロとミクロを反映するように具現する」との記載(以下、「明細書記載事項1」という。)から、「固有スケール」は「客観的に存在する物体そのもののスケール」であり、「非固有スケール」は、「客観的に存在する物体に対応する電子地図の表示や空間の分析算出を行うときに設定されたスケール」であることを釈明しているものの、意味が不明である。 すなわち、明細書記載事項1からは、「GIS」では、「空間データが客観的に存在する固有のスマクロとミクロを反映」すること、及び、「電子地図の表示や空間の分析算出が主観的に設定された非固有のマクロとミクロを反映するように具現する」ことなどを読取ることはできるものの、「空間データが客観的に存在する固有のスマクロとミクロを反映」や、「電子地図の表示や空間の分析算出が主観的に設定された非固有のマクロとミクロを反映するように具現する」といった文章は、それ自体何を意味するものか、日本語として不明確というほかない。 さらに、明細書記載事項1が、「固有スケール」及び「非固有スケール」の説明をするものであるかの如くの主張であるものの、明細書記載事項1には、そもそも“スケール”という用語は用いられておらず、「固有スケール」及び「非固有スケール」といった用語も存在しない。「固有」及び「非固有」の用語は、「固有のスマクロ(当審注:原文ママ)とミクロ」や「非固有のマクロとミクロ」といった文脈でのみ使用されていることから、明細書記載事項1から、「固有スケール」及び「非固有スケール」が何を表しているのかを読取ることは到底できないし、本件優先日前の技術常識を補ったとしても理解不能である。 したがって、意見書によってもなお、「客観的に存在する固有スケール」及び「主観的に設定された非固有スケール」を正しく理解した上、本件明細書の発明の詳細な説明の記載を、本願出願時の技術常識を踏まえ、本件発明1~38を当業者が実施することができる程度に明確かつ十分に記載したものであるとすることはできない。 (イ)「データの構造、記憶、インデックス、空間関係の分析算出」について 請求人は、「データの構造、記憶、インデックス、空間関係の分析算出」とは、「明らかに電子地図の表示や空間の分析算出など、非固有スケールを具備するデータを用いる時の処理に関わる」ものであることを釈明しているものの、「非固有スケールを具備するデータを用いる時の処理」が具体的に何の「処理」であるかは、「データの構造、記憶、インデックス、空間関係の分析算出」との文からは読み取ることができない。 そしてまた、請求人は、「データの構造(作成)、記憶、インデックス(インデックス確立)、空間関係の分析算出などの具体的な意味はいずれも文字通りの意味であり、具体的な内容は当該分野における常識となっている」ことも釈明しているものの、「データの構造(作成)」は、特許請求の範囲の請求項1に記載されているように、「データ」が、「電子地図の表示や空間の分析算出に用いられるデータである」としても、その「構造」や「作成」が具体的にどのようなものであることをいうものかは、様々な種類のデータが存在することが技術常識であるところ、一意に決めることはできず、「インデックス(インデックス確立)」も、どのようなデータに対するどのようなインデックス(指標)をいうものかも不明であり、「空間関係の分析算出」も、何の何に対する「空間関係」をいうものか、さらに、その「分析算出」とは、具体的にどのような「分析」や「算出」がなされるのか、「文字通り」に解釈したとしても、具体的な処理を想起することは、本件優先日前の技術常識(「当該分野における常識」)を補ったとしても不明である。 また、「当該分野における常識」とは、具体的にどのようなものであって、そのことを示す根拠も示していない。 したがって、意見書によってもなお、「データの構造、記憶、インデックス、空間関係の分析算出」を正しく理解した上、本件明細書の発明の詳細な説明の記載を、本願出願時の技術常識を踏まえ、本件発明1~38を当業者が実施することができる程度に明確かつ十分に記載したものであるとすることはできない。 (ウ)「システムの他の機能」について 請求人は、「システムの他の機能」とは、「元の空間データに対して実行できるさまざまな処理によってもたらされる機能」であると釈明しているものの、「元の空間データ」とは何を意味するものか、そして当該「元の空間データ」に対して「実行できる様々な処理」とは具体的にどのような処理を言うものか、いずれも不明であり、「元の空間データに対して実行できるさまざまな処理」が技術常識であったとする本件優先日前の技術常識も存在しない。 したがって、意見書によってもなお、「システムの他の機能」を正しく理解した上、本件明細書の発明の詳細な説明の記載を、本願出願時の技術常識を踏まえ、本件発明1~38を当業者が実施することができる程度に明確かつ十分に記載したものであるとすることはできない。 (エ)「さらに多くの新しいボトルネック」について 請求人は、「さらに多くの新しいボトルネック」とは、「保存するデータの量が増えることで」発生する、「少なくともストレージ上新たなボトルネック」を意味するものと釈明しているものの、そもそも、保存するデータの量が何故増えるのか、とりわけ、明細書段落【0002】に記載された、「地図表示の場合に客観的に存在する固有スケールと主観的に設定された非固有スケールとの部分の統合を解決し、地図表示の性能のボトルネックを解決したが、システムの他の機能は実現できなく、逆に、さらに多くの新しいボトルネックが発生してしまう」との記載からして、「さらに多くの新しいボトルネックが発生してしまう」のは、「地図表示の場合に客観的に存在する固有スケールと主観的に設定された非固有スケールとの部分の統合を解決し、地図表示の性能のボトルネックを解決」する一方で、「システムの他の機能は実現でき」ずに、このこととは、「逆に」発生するものと理解されるところ、そもそも、何故「地図表示の場合に客観的に存在する固有スケールと主観的に設定された非固有スケールとの部分の統合を解決」されるのかも不明であるし、地図表示の場合の、客観的に存在する固有スケールと主観的に設定された非固有スケールとの部分の統合の解決というのは、何が何に対して解決され、また当該解決とは逆に、どのようなボトルネックが発生するのかも理解できない。さらに、当該「さらに多くの新たなボトルネック」が何であるかを示す本件優先日前の技術常識も存在しない。 したがって、意見書によってもなお、「さらに多くの新しいボトルネック」を正しく理解した上、本件明細書の発明の詳細な説明の記載を、本願出願時の技術常識を踏まえ、本件発明1~38を当業者が実施することができる程度に明確かつ十分に記載したものであるとすることはできない。 (オ)「すべての問題はインデックスの問題にまとめられ」る機序について 請求人は、「上記記載」、すなわち、「スクリーンのデータ表示の観点から、スクリーンのスケール、画素のスケールは限られ、データは電子スクリーンの画素に表示され、見える画素の数は限られ、1つの画素はある時点に1つのデータしか表示できなく、つまり、あるスクリーンに表示できるデータの最大値は不変であり、データの無限大とは関係なく、スクリーンの解像度にのみ依存する。 (1)描画は、最終的に見えるデータのみを描画できることであり、表示効率とデータ量との矛盾が解消される。 (2)伝送は、これらのデータのみをネットワークを介してフロント端末に伝送することであり、ネットワーク帯域幅とデータ量との矛盾が解消される。 (3)読み取りは、これらのデータのみを読み取り、且つこれらのデータを1つのファイルにまとめて記憶することであり、磁気ディスクによる読み取りのプレッシャーが解消される。 (4)クエリは、データのみを読み取る重要な点は、インデックスでこれらのデータのみが検出され、そして、データを要求するクライアントは自分でインデックスに従ってクエリと検索を行い、データがインデックスのインデックス項目に応じてサーバーに分散して記憶され、クライアントが、インデックスにより、読み取るデータファイル内のデータブロックを検索し、サーバーにデータクエリのプレッシャーがないことである。そして、インデックスのデータ量は十分に小さく、且つ、データ量の増加に比例して増加することはできなく、そうでなければ、一定量のデータに到達すると、インデックスのネットワーク伝送がボトルネックになってしまう。」との記載(以下、「主張記載」という。)から、「クライアントの表示内容は限られているため、表示内容に基づいてインデックスを決定し、インデックスデータの量が十分に小さければ、クエリ時のボトルネックを解決できる」こと、及びそのことから、「読み取り時にはこれらのデータのみが自然に読み取られ、読み取り時のプレッシャーが軽減される」とともに、「伝送時には伝送量が削減され、描画時には表示効率が向上する」こと(以上、まとめて「主張効果」という。)を読取ることができる旨を釈明するものと解される。 しかしながら、主張記載は、単に本件明細書段落【0005】~【0009】の記載を転記したものに過ぎず、また、主張効果は、単に主張記載を要約したに過ぎないものであるから、「すべての問題はインデックスの問題にまとめられ」るのが、どのような機序によるものであるのかについては、なお依然として不明である。 したがって、意見書によってもなお、「すべての問題はインデックスの問題にまとめられ」る機序について正しく理解した上、本件明細書の発明の詳細な説明の記載を、本願出願時の技術常識を踏まえ、本件発明1~38を当業者が実施することができる程度に明確かつ十分に記載したものであるとすることはできない。 (カ)「インデックスの問題」及びその「解決」について 請求人は、意見書において、「インデックス問題」とは、「表示される内容に基づいて決定できるインデックスをどのように確立するか」を指し、その「解決」は、「本願発明である」旨を釈明しているものの、「本願発明である」ところの、「インデックス問題」の「解決」手段に関しては、上記(オ)に示したとおり、本件明細書の発明の詳細な説明には、上記主張記載についての記載はあるものの、何ら具体的な問題、さらには「本願発明」たる具体的解決手段の記載は認められず、例えば「インデックス」をどのような「表示される内容に基づいて決定」するのか、当該「決定」された「インデックス」はどのように「確立」されるのか、については何も記載されていないから、意見書によってもなお、「インデックスの問題」及びその「解決」について正しく理解した上、本件明細書の発明の詳細な説明の記載を、本願出願時の技術常識を踏まえ、本件発明1~38を当業者が実施することができる程度に明確かつ十分に記載したものであるとすることはできない。 (キ)「簡単なインデックス関係」と、「任意の複雑な空間データの構成、管理、記憶、クエリ、伝送、表示、及び分析を実現する」ことについて 請求人は、意見書において、「「簡単なインデックス関係」とは、インデックスが確立された後、クライアント上でインデックスが計算されてサーバーに送信され、サーバーがデータをクライアントに送信し、クライアント上描画する一連のプロセスが比較的に単純になることを意味」し、「「任意の複雑な空間データの構成、管理、記憶、クエリ、伝送、表示、及び分析を実現する」理由は、前述のように空間データのクエリ、読み取り、伝送、描画プロセスにおけるボトルネックを解決することに該当する」旨を釈明している。 しかしながら、「簡単なインデックス関係」が、「インデックスが確立された後、クライアント上でインデックスが計算されてサーバーに送信され、サーバーがデータをクライアントに送信し、クライアント上描画する一連のプロセスが比較的に単純になることを意味」するとは、日本語として意味するところが不明である。 そもそも、「インデックスが確立され」るとは、どのようなデータに対して、どのような「インデックス」を「確立」することを意味し、また当該「確立」とはどのような処理を行うことを意味するものか、「インデックス」の「計算」とは何か、「サーバー」から「クライアント」に「送信され」るのは何か、「クライアント上描画する一連のプロセス」とは何か、「比較的に単純になる」とは、何に対して何がどの程度「単純になる」ことをいうものか、いずれも不明である。 また、「「任意の複雑な空間データの構成、管理、記憶、クエリ、伝送、表示、及び分析を実現する」理由」が、「前述のように空間データのクエリ、読み取り、伝送、描画プロセスにおけるボトルネックを解決することに該当する」とは、日本語として意味するところが不明である。 例えば、本件明細書の段落【0010】には、「すべての問題はインデックスの問題にまとめられ、インデックスの問題が解決される限り、他のボトルネックの問題に対して、解決でき、解決すべき上記のインデックスの問題はスライスのインデックスのすべての利点を持つ必要があるが、データを空間関係に応じて分散して記憶することができ、データをカットした後に分散して記憶するのではなく、インデックスにより、簡単と複雑の統合を実現し、即ち、簡単なインデックス関係で任意の複雑な空間データの構成、管理、記憶、クエリ、伝送、表示、及び分析を実現する。」(以下、「明細書記載事項2」という。)と記載され、当該記載からは、全ての問題がインデックスの問題に帰着すること、インデックスの問題が解決されることによって、他のボトルネックの問題も解決できること、解決すべきインデックスの問題は、スライスのインデックスの全ての利点を持つことによって、データを空間関係に応じて分散して記憶することができること、データをカットした後に分散して記憶するのではなく、インデックスによって、簡単と複雑の統合が実現されること、そして、当該簡単と複雑の統合の実現とは、「簡単なインデックス関係で任意の複雑な空間データの構成、管理、記憶、クエリ、伝送、表示、及び分析を実現」することであることなどを、字義として読み取ることができるものの、「前述のように空間データのクエリ、読み取り、伝送、描画プロセスにおけるボトルネックを解決すること」が、「簡単なインデックス関係で任意の複雑な空間データの構成、管理、記憶、クエリ、伝送、表示、及び分析を実現する」理由であるとの説明は、上記明細書記載事項2の記載とも符合せず、日本語として意味するところが不明である。 したがって、意見書によってもなお、「簡単なインデックス関係」と、「任意の複雑な空間データの構成、管理、記憶、クエリ、伝送、表示、及び分析を実現する」ことについて正しく理解した上、本件明細書の発明の詳細な説明の記載を、本願出願時の技術常識を踏まえ、本件発明1~38を当業者が実施することができる程度に明確かつ十分に記載したものであるとすることはできない。 (ク)「インデックス」と、「非固有スケールと固有スケールとの統合により、データの読み取り、伝送、表示、分析算出などのユーザーが異なるスケールで(非固有スケール)、部分と全体、マクロデータとミクロデータを調べ、異なるスケールでデータを分析算出する性能という問題など」の解決について 請求人は、意見書において、「「インデックス」が「非固有スケールと固有スケールとの統合により、データの読み取り、伝送、表示、分析算出などのユーザーが異なるスケールで(非固有スケール)、部分と全体、マクロデータとミクロデータを調べ、異なるスケールでデータを分析算出する性能という問題など」を解決する具体的な処理は上記の通りである。これが可能な理由は、前述のボトルネックを解決し、使用されるストレージリソース、ネットワーク転送リソース、ディスク読み取り性能、クライアントおよびサーバーの計算リソースを低減できるためである。」旨を釈明している。 しかしながら、「「インデックス」が「非固有スケールと固有スケールとの統合により、データの読み取り、伝送、表示、分析算出などのユーザーが異なるスケールで(非固有スケール)、部分と全体、マクロデータとミクロデータを調べ、異なるスケールでデータを分析算出する性能という問題など」を解決する具体的な処理」が、「上記の通り」であるとされるが、当該「上記」が、具体的に上記アの主張におけるどの部分の処理をいうものか、不明である。 また、「「インデックス」が「非固有スケールと固有スケールとの統合により、データの読み取り、伝送、表示、分析算出などのユーザーが異なるスケールで(非固有スケール)、部分と全体、マクロデータとミクロデータを調べ、異なるスケールでデータを分析算出する性能という問題など」を解決」できる理由は、「前述のボトルネックを解決し、使用されるストレージリソース、ネットワーク転送リソース、ディスク読み取り性能、クライアントおよびサーバーの計算リソースを低減できるため」であると釈明されているが、「前述のボトルネック」の「解決」とは何で、その解決がどのようになされることを意味するものか、いずれも不明である。 したがって、意見書によってもなお、「インデックス」と、「非固有スケールと固有スケールとの統合により、データの読み取り、伝送、表示、分析算出などのユーザーが異なるスケールで(非固有スケール)、部分と全体、マクロデータとミクロデータを調べ、異なるスケールでデータを分析算出する性能という問題など」の解決について正しく理解した上、本件明細書の発明の詳細な説明の記載を、本願出願時の技術常識を踏まえ、本件発明1~38を当業者が実施することができる程度に明確かつ十分に記載したものであるとすることはできない。 (6)小括 したがって、本件明細書の発明の詳細な説明には、意見書において主張される、確立されたインデックスの量が十分に小さいこと、データの量の増加に比例して増加しないこと、インデックスの実際の適用はネットワークに対する要求が少ないという利点があること、インデックス確立方法の最適化の仕方、及び、インデックスの確立、検索、読み取り、伝送、表示、データ分析などの各段階でかかる計算量と時間が節約されることなどの、本件発明1~38に係る技術上の意義を理解するために必要な事項、及び、その具体的解決手段や課題解決の機序等に関する記載は、一切認められない。(委任省令違反) そして、このような、本件発明1~38に対応する本件明細書の発明の詳細な説明における記載の欠缺は、本件発明1~38を実施しようとする者に対し、本件優先日当時の技術常識に基づいたとしても、上記本件課題の解決がなされるよう、過度の試行錯誤を強いることとなるというべきであって、本件明細書の発明の詳細な説明の記載は、本件発明を実施することができる程度に発明の構成等が記載されているとはいえない。(実施可能要件違反) したがって、本願は、本件明細書の発明の詳細な説明の記載が、特許法36条4項1号に規定する要件を満たしたものであるとはいえない。 2 特許法36条6項2号(明確性要件)について (1)はじめに 特許法36条6項2号は、特許請求の範囲の記載に関し、特許を受けようとする発明が明確でなければならない旨規定する。同号がこのように規定した趣旨は、仮に、特許請求の範囲に記載された発明が明確でない場合には、特許の付与された発明の技術的範囲が不明確となり、第三者に不測の不利益を及ぼすことがあり得るので、そのような不都合な結果を防止することにある。 そして、特許を受けようとする発明が明確であるか否かは、特許請求の範囲の記載だけではなく、願書に添付した明細書の記載及び図面を考慮し、また、当業者の出願当時における技術的常識を基礎として、特許請求の範囲の記載が、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確であるか否かという観点から判断されるべきであるから、以下、この観点にしたがって、本件特許請求の範囲の記載について検討する。 (2)特許請求の範囲の記載について ア 本件発明1~6について 特許請求の範囲の請求項1には、次のとおりの記載が認められる。 「データの処理方法であって、 コンピュータに、 データのスケールを設定するステップであって、前記データは、電子地図の表示や空間の分析算出に用いられるデータであるステップと、 前記データのスケールに応じて、前記データ間の相互関係を分析算出するステップと、 設定された処理タイプに対応する処理方法に従って、前記相互関係に応じて前記データを処理するステップであって、分析算出されたデータ間の相互関係に応じて、インデックスを確立しデータを分析管理することを含む、ステップと、 を実行させ、 前記分析算出されたデータ間の相互関係に応じて、インデックスを確立しデータを分析管理するプロセスは、 予め設定されたインデックス確立条件を満たすデータと、インデックスが確立されたデータ間の相互関係を満たすデータとに対して、次のレベルインデックスを継続的に確立し、インデックス確立条件を満たさないデータと、インデックスが確立されたデータ間の相互関係を満たさないデータとに対して、次のレベルインデックスを確立しない、ことを含むことを特徴とする方法。」 請求項1には、「データ」、「データのスケール」、「データ間の相互関係」、「設定された処理タイプに対応する処理方法に従って、前記相互関係に応じて前記データを処理するステップ」、「分析算出されたデータ間の相互関係に応じて、インデックスを確立しデータを分析管理すること」、「予め設定されたインデックス確立条件を満たすデータ」、「インデックスが確立されたデータ間の相互関係を満たすデータ」、「次のレベルインデックスを継続的に確立」すること、「インデックス確立条件を満たさないデータ」、「インデックスが確立されたデータ間の相互関係を満たさないデータ」、及び、「次のレベルインデックスを確立しない」ことのそれぞれについて、特段の定義ないし特定事項は記載されていない。 なお、上記請求項1に記載された各事項それぞれについて、請求項1を引用する請求項2~6には、その内容がさらに特定されている。 イ 本件発明7~16、21、24~35について 請求項7は、独立形式で記載された請求項であり、次のとおりの記載が認められる。 「インデックスを確立しデータを分析管理する方法であって、 コンピュータに、 データのスケールを設定するステップであって、前記データは、電子地図の表示や空間の分析算出に用いられるデータであるステップと、 前記データのスケールに応じて、前記データ間の相互関係を分析算出するステップと、 設定された処理タイプに対応する処理方法に従って、前記の相互関係に応じて前記データを処理するステップであって、分析算出されたデータ間の相互関係に応じて、インデックスを確立しデータを分析管理することを含む、ステップと、 を実行させ、 前記分析算出されたデータ間の相互関係に応じて、インデックスを確立しデータを分析管理するプロセスは、 予め設定されたインデックス確立条件を満たすデータと、インデックスが確立されたデータ間の相互関係を満たすデータとに対して、次のレベルインデックスを継続的に確立し、インデックス確立条件を満たさないデータと、インデックスが確立されたデータ間の相互関係を満たさないデータとに対して、次のレベルインデックスを確立しない、ことを含むことを特徴とする方法。」 請求項8~16、21、24~35は、独立請求項である請求項7を直接または間接的に引用するものである。 また、請求項7は、請求項1の「データの処理方法」を、「インデックスを確立しデータを分析管理する方法」に変更したものである。 ウ 本件発明17~35について 請求項17は、独立形式で記載された請求項であり、次のとおりの記載が認められる。 「データを管理し記憶する方法であって、 コンピュータに、 データのスケールを設定するステップであって、前記データは、電子地図の表示や空間の分析算出に用いられるデータであるステップと、 前記データのスケールに応じて、前記データ間の相互関係を分析算出するステップと、 分析算出されたデータ間の相互関係に応じて、データの管理及び記憶を行うステップであって、分析算出されたデータ間の相互関係に応じて、インデックスを確立しデータを分析管理し、確立されたインデックスに応じて、データを管理し記憶することを含む、ステップと、 を実行させ、 前記分析算出されたデータ間の相互関係に応じて、インデックスを確立しデータを分析管理するプロセスは、 予め設定されたインデックス確立条件を満たすデータと、インデックスが確立されたデータ間の相互関係を満たすデータとに対して、次のレベルインデックスを継続的に確立し、インデックス確立条件を満たさないデータと、インデックスが確立されたデータ間の相互関係を満たさないデータとに対して、次のレベルインデックスを確立しない、ことを含むことを特徴とする方法。」 請求項18~35は、独立請求項である請求項17を直接または間接的に引用するものである。 また、請求項17は、請求項7の「インデックスを確立しデータを分析管理する方法」を「データを管理し記憶する方法」とした上、「設定された処理タイプに対応する処理方法に従って、前記の相互関係に応じて前記データを処理するステップ」を「分析算出されたデータ間の相互関係に応じて、データの管理及び記憶を行うステップ」とし、請求項7の「インデックスを確立しデータを分析管理する」を、「確立されたインデックスに応じて、データを管理し記憶する」に変更したものである。 エ 本件発明36~38について 請求項36~38はそれぞれ、概ね、独立請求項である、請求項1、7及び17に対してカテゴリー表現を「装置」に変えたものである。 (3)特許請求の範囲に記載された各事項に関する検討 特許請求の範囲の請求項1には、上記(2)アに示したとおりの事項が記載されているところ、「データのスケール」とは、具体的にどのような情報であるのかが不明確であり、この点は、請求項2の「前記データのスケールは、データのマクロとミクロを示す変数であり、データは、スケールが大きい場合に、スケールが小さい場合よりもマクロであり、スケールが小さい場合に、スケールが大きい場合よりもミクロである」との記載、請求項3の「前記データのスケールは、データ自体の空間スケール、又は時間スケールを含む」との記載、請求項4の「前記データのスケールは、観測データのスケール、又は空間データのスケールを含み、前記観測データのスケールは、空間データがコンピュータに表示される際の拡大率を含み、前記空間データのスケールは、空間データの解像度を含む」との記載を参酌しても不明確である。 また、「データ間の相互関係」とは具体的にどのような関係であるのかが不明確であり、この点は、請求項5の「前記データ間の相互関係は、空間関係、時間関係、スケール関係のうちのいずれか1つ又は複数の組み合わせを含む」との記載を参酌しても不明確である。 また、「設定された処理タイプに対応する処理方法に従って、前記相互関係に応じて前記データを処理するステップ」との記載は、具体的にどのような処理を特定しているのかが不明確であり、この点は、請求項6の「前記設定された処理タイプに対応する処理方法に従って、前記の相互関係に応じて前記データを処理するプロセスは、 異なるスケールでのデータ間の相互関係に基づいて、データのインデックスの確立、記憶、読み取り、伝送、表示、データの分析を処理すること、 又は、 異なるスケールとデータ間の相互関係とに基づいて、前記データのインデックスの記憶、読み取り、伝送、表示、データの分析を処理することを含む」との記載を参酌しても不明確である。 また、「分析算出されたデータ間の相互関係に応じて、インデックスを確立しデータを分析管理する」との記載は、「分析算出」が、具体的にどのような算出を行うものか不明確であり、「分析算出されたデータ間の相互関係に応じ」るとは、具体的に何の情報の何の相互関係に応じることを意味するものかも不明確である。 さらに、「インデックス」とは、具体的にどのような情報であるか不明確であり、したがってこれを「確立」するとは、具体的にどのような処理を行うことを意味するものか、不明確である。 そして、上記「インデックス」が不明確であることにより、「予め設定されたインデックス確立条件を満たすデータ」及び「インデックスが確立されたデータ間の相互関係を満たすデータ」のそれぞれが、具体的にどのようなデータを意味するものか不明確であり、さらに、「インデックス」が不明確であることから、「次のレベルインデックス」も不明確であり、したがって「次のレベルインデックスを継続的に確立」するとは、具体的にどのような処理を行うことを意味するものかも不明確である。 また、「インデックス確立条件を満たさないデータ」及び「インデックスが確立されたデータ間の相互関係を満たさないデータ」のそれぞれが、具体的にどのようなデータを意味するものか不明確であり、さらに、「次のレベルインデックスを確立しない」とは、具体的にどのような処理を行うことを意味するものかも不明確である。 また、請求項1において上記で指摘した事項と共通する事項を有する独立項である、請求項7、請求項17、請求項36~38についても、同様に不明確である。 そして、上記1(2)に示したとおり、特許請求の範囲に記載された事項は、本件明細書の発明の詳細な説明に、ほぼそのままの記載があるのみで、特許請求の範囲に記載された上記各事項が示す意味内容、さらには、どのような情報ないし概念が含まれるのかを、具体的に示す事項の記載は一切見当たらない。 また、上記各事項が、本件出願当時(本件優先日当時)における技術常識であったとする根拠も見いだせない。 そうすると、特許請求の範囲の各請求項に記載された事項について、本件明細書の記載及び図面を考慮し、当業者の本件出願当時(本件優先日当時)における技術常識を基礎としたとしても、特許請求の範囲に記載されたものに、どのような技術内容が包含されるかを明確に特定した上峻別して解釈することは到底できない。このことは、本件特許請求の範囲が定める技術的範囲を明確に特定することができないことを意味し、本件特許請求の範囲に記載された事項に類似する方法ないし装置を実施しようとする第三者に不測の不利益をもたらすことは明白である。 そして、上記1の項でも指摘したとおり、本件明細書の発明の詳細な説明には、発明が解決しようとする課題及びその解決手段その他の発明の技術上の意義を理解するために必要な事項が記載されていないことと相俟って、なお一層、特許請求の範囲の記載を不明確にするものといわざるを得ない。 してみれば、本件特許請求の範囲の記載は、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確であるというほかない。 (4)令和7年1月27日に提出された意見書について ア 意見書における主張 当審拒絶理由通知に対し、令和7年1月27日に提出された意見書において審判請求人は、次のように主張している。 「(4)理由3に対する意見 補正後の請求項1は、データが電子地図の表示や空間の分析算出に使用されることを明確にしている。 電子地図の表示や空間の分析算出に用いられるデータにについて、そのデータに対してスケールを設定することは、当該技術分野において常用技術手段である。空間データがコンピュータに表示される際の拡大率でも、空間データの解像度でも、電子地図の表示によくデータに対して設定されるスケールである。さらに、データに時間スケールを持たせ、データを該当する時間の客観物体に対応させてもよい。 電子地図の表示や空間の分析算出に用いられるデータについては、データが客観物体に対応するため、異なる客観物体に対応するデータ間には空間的な関係が存在することは明らかであり、また、同じ客観物体に対応するデータ間にも重畳の空間関係がある。データに時間スケールがある場合、データ間には明らかに時間関係がある。例えば、同一または近接した客観物体に対応する異なるスケールのデータが存在する場合、データ間にもスケール関係があることは明らかである。 「設定された処理タイプに対応する処理方法に従って、前記相互関係に応じて前記データを処理する」については、請求項1の記載によれば、少なくとも「分析算出されたデータ間の相互関係に応じて、インデックスを確立しデータを分析管理する」と理解できる。他の処理方法については、当業者は、例えば背景技術のようにスライスの生成を行ったり、データの削除、結合を行ったりすることなど、当分野公知常識に基づいて考えることができる。なお、請求項1は、「分析算出されたデータ間の相互関係に応じて、インデックスを確立しデータを分析管理する」以外の処理について何ら限定するものではない。 「分析算出されたデータ間の相互関係に応じて、インデックスを確立しデータを分析管理する」について、「分析算出」とは、前述の「前記データのスケールに応じて、前記のデータ間の相互関係を分析算出する」を指すことは明らかであり、該当内容について審判官は不明確な点を指摘していない。さらに、上記のように「データ」、「データのスケール」及び「相互関係」の意味が明確であれば、当業者は「分析算出」の意味を理解することができる。 データ管理の分野において、「インデックス」とは、データベースの検索速度を向上させるために作成される索引を意味することは、当然ながら当業者にはよく知られている。また、「インデックスを確立しデータを分析管理する」こともデータ管理の分野における常識であり、請求項1には、その具体的過程はその後の記載によって説明される。 審判官は、「インデックス」が不明確であることにより、「予め設定されたインデックス確立条件を満たすデータ」及び「インデックスが確立されたデータ間の相互関係を満たすデータ」のそれぞれが不明確であり、さらに、「インデックス」が不明確であることから、「次のレベルインデックス」「次のレベルインデックスを継続的に確立」も不明確である。しかし、前述の通り、「インデックス」の意味は明確なので、この問題は存在しない。 「予め設定されたインデックス確立条件を満たすデータ」というのは、データ管理の分野では常識である。当業者であれば、「インデックスが確立されたデータ間の相互関係を満たすデータ」の意味は、インデックス確立済みデータに対してデータ間の相互関係に基づいて区別され、そのうち、ある相互関係を満たすデータであることは理解できる。例えば一例として、明細書には、「データ管理条件を満たし、且つ、データ間が依然として重畳であるデータを、前記新しいデータスケールでのデータ管理ユニットとし、新しいデータスケールを再設定し、上記プロセスを繰り返し」ことが言及されている。つまり、この例では、データ管理条件を満たすデータは「予め設定されたインデックス確立条件を満たすデータ」であり、データ間が依然として重畳であるデータは「インデックスが確立されたデータ間の相互関係を満たすデータ」である。 マルチレベルで段階的にインデックスを確立することは、この分野では一般的な技術的手段であり、異なるデータに対しては、1つのインデックス確立後に次のレベルのインデックス確立を続けるか続けないかを選択することも、採用できる技術手段である。したがって、「次のレベルインデックス」「次のレベルインデックスを継続的に確立」「次のレベルインデックスを確立しない」の意味も明確である。 したがって、「前記データは、電子地図の表示や空間の分析算出に用いられるデータである」ことを明確にすることにより、請求項1のそれぞれの技術的特徴の具体的な意味を、本願記載の、電子地図の表示や空間の分析算出の分野、データ管理分野における常識及び常用技術手段に基づいて理解することができる。」 イ 意見書の主張に対する判断 (ア)「データ間の相互関係」、及び、「設定された処理タイプに対応する処理方法に従って、前記相互関係に応じて前記データを処理するステップ」について 請求人は、「データ間の相互関係」、及び、「設定された処理タイプに対応する処理方法に従って、前記相互関係に応じて前記データを処理するステップ」について、「「設定された処理タイプに対応する処理方法に従って、前記相互関係に応じて前記データを処理する」については、請求項1の記載によれば、少なくとも「分析算出されたデータ間の相互関係に応じて、インデックスを確立しデータを分析管理する」と理解できる。他の処理方法については、当業者は、例えば背景技術のようにスライスの生成を行ったり、データの削除、結合を行ったりすることなど、当分野公知常識に基づいて考えることができる。なお、請求項1は、「分析算出されたデータ間の相互関係に応じて、インデックスを確立しデータを分析管理する」以外の処理について何ら限定するものではない。」旨の釈明を行っているものの、当審拒絶理由通知で指摘した、「データ間の相互関係」とは具体的にどのような関係であるのかについての釈明は無く、また、「設定された処理タイプに対応する処理方法に従って、前記相互関係に応じて前記データを処理する」ことが具体的にどのような処理を意味しているのかについての釈明も無いことから、意見書の釈明によってもなお、「データ間の相互関係」、及び、「設定された処理タイプに対応する処理方法に従って、前記相互関係に応じて前記データを処理するステップ」については不明確というほかない。 (イ)「分析算出されたデータ間の相互関係に応じて、インデックスを確立しデータを分析管理すること」について 請求人は、「分析算出されたデータ間の相互関係に応じて、インデックスを確立しデータを分析管理すること」について、「「分析算出」とは、前述の「前記データのスケールに応じて、前記のデータ間の相互関係を分析算出する」を指すことは明らかであ」る旨、「「データ」、「データのスケール」及び「相互関係」の意味が明確であれば、当業者は「分析算出」の意味を理解することができる」旨、「データ管理の分野において、「インデックス」とは、データベースの検索速度を向上させるために作成される索引を意味することは、当然ながら当業者にはよく知られている。また、「インデックスを確立しデータを分析管理する」こともデータ管理の分野における常識であり、請求項1には、その具体的過程はその後の記載によって説明される」旨の釈明を行っている。 しかしながら、上記(ア)で示したとおり、意見書において、「データ間の相互関係」が具体的にどのような関係をいうものかの釈明は無く、誤訳訂正書により、「データ」が「電子地図の表示や空間の分析算出に用いられるデータである」ことが明確になり、そのスケールが、「データのスケール」であることが明確となり、「分析算出」が、当該「データ」が用いられる「空間の分析算出」のことを意味することが明確となったとしても、なお依然として、「分析算出」や、「分析管理」が、具体的にどのような「算出」や「管理」を行うことをいうものかは不明確といわざるを得ない。 また、「データ管理の分野において、「インデックス」とは、データベースの検索速度を向上させるために作成される索引を意味すること」が当業者によく知られていたとしても、「「インデックスを確立しデータを分析管理する」こと」が「データ管理の分野における常識であ」るとする根拠は示されておらず、「インデックス」の「確立」や「データ」の「分析管理」が、具体的にどのような処理を行うことを意味するものかについての釈明も無い。 また、「インデックスを確立しデータを分析管理する」ことにおける「データ管理の分野における常識」とは、どのような常識をいうものかも不明である。 したがって、意見書の釈明によってもなお、「分析算出されたデータ間の相互関係に応じて、インデックスを確立しデータを分析管理すること」については不明確というほかない。 (ウ)「予め設定されたインデックス確立条件を満たすデータ」、及び、「インデックスが確立されたデータ間の相互関係を満たすデータ」について 請求人は、「予め設定されたインデックス確立条件を満たすデータ」について、「データ管理の分野では常識であ」り、「当業者であれば、「インデックスが確立されたデータ間の相互関係を満たすデータ」の意味は、インデックス確立済みデータに対してデータ間の相互関係に基づいて区別され、そのうち、ある相互関係を満たすデータであることは理解でき」る旨の釈明をしている。 しかしながら、意見書においては、「予め設定されたインデックス確立条件を満たすデータ」が「データ管理の分野では常識であ」る根拠は示されておらず、「インデックス確立済みデータ」における、「データ間の相互関係」とは具体的にどのようなデータをいうものか、そして「データ間の相互関係に基づいて区別され」る「ある相互関係を満たすデータ」とは具体的にどのようなデータをいうものかについては、何ら釈明されていない。 さらに、本件明細書の「データ管理条件を満たし、且つ、データ間が依然として重畳であるデータを、前記新しいデータスケールでのデータ管理ユニットとし、新しいデータスケールを再設定し、上記プロセスを繰り返し」との記載を根拠に、「データ管理条件を満たすデータ」が、「予め設定されたインデックス確立条件を満たすデータ」であって、「データ間が依然として重畳であるデータ」が、「インデックスが確立されたデータ間の相互関係を満たすデータ」である旨も主張しているが、そもそも、「データ管理条件を満たすデータ」や「データ間が依然として重畳であるデータ」が具体的に何のデータのことをいうものかについては何ら釈明されておらず、また、本件優先日前の技術常識ともいえないから、意見書の釈明によってもなお、「予め設定されたインデックス確立条件を満たすデータ」、及び、「インデックスが確立されたデータ間の相互関係を満たすデータ」については不明確というほかない。 (エ)「次のレベルインデックスを継続的に確立」すること、「インデックス確立条件を満たさないデータ」、「インデックスが確立されたデータ間の相互関係を満たさないデータ」、及び、「次のレベルインデックスを確立しない」ことについて 請求人は、意見書において、「マルチレベルで段階的にインデックスを確立すること」が「この分野では一般的な技術的手段」であり、「異なるデータに対しては、1つのインデックス確立後に次のレベルのインデックス確立を続けるか続けないかを選択することも、採用できる技術手段である」旨の釈明を行っている。 しかしながら、「この分野では一般的な技術的手段」であるとされる、「マルチレベルで段階的にインデックスを確立すること」が、具体的にどのような処理をいうものかについては釈明は無く、また、「異なるデータ」に対して、「1つのインデックス確立後に次のレベルのインデックス確立を続けるか続けないかを選択すること」が、「採用できる技術手段」であるとしても、そもそも、「異なるデータ」が何で、「1つのインデックス確立後に次のレベルのインデックス確立を続けるか続けないかを選択すること」と、例えば「次のレベルインデックスを継続的に確立」したり、「次のレベルインデックスを確立しな」かったりすることとの関係についても、意見書においては、何ら釈明されていない。 したがって、意見書の釈明によってもなお、「次のレベルインデックスを継続的に確立」すること、「インデックス確立条件を満たさないデータ」、「インデックスが確立されたデータ間の相互関係を満たさないデータ」、及び、「次のレベルインデックスを確立しない」ことについては不明確というほかない。 (5)小括 以上に検討したとおり、特許請求の範囲の請求項1~38に記載された各事項は、それぞれ、具体的に何を行うことを意味するものであるのか、当該特許請求の範囲の記載のみでは明らかではなく、また、願書に添付した明細書の記載及び図面を考慮し、また、当業者の出願当時における技術的常識を基礎としたとしても、不明確である。 したがって、特許請求の範囲の記載は、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確であるというべきものであって、特許請求の範囲の記載は、請求項1~38について、特許法36条6項2号に定める要件を満たすものとはいえない。 第5 むすび 以上のとおり、本願は、特許法36条4項1号及び特許法36条6項2号に規定する要件を満たしていない。 したがって、本願は拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。

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2023-006902

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