特許拒絶査定不服審判
2024-010052
乗員検知装置、ドライバモニタリングシステム、および、表示装置
- 審判番号
- 2024-010052
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2023-515909
- 請求日
- 2024年06月18日
- 審決日
- 2025年06月30日
- 公報発行日
- 2025年09月26日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】三菱電機モビリティ株式会社
- 【請求人代理人】弁理士法人山王内外特許事務所
- 審判長/審判官
- 審判長 山本 信平
- 審判官 中尾 麗
- 審判官 西山 智宏
- 分類
- P18 .121-WZ (B60R) / P18 .537-WZ (B60R)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第29条第1項第3号、特許法第29条
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2023-515909「乗員検知装置、ドライバモニタリングシステム、および、表示装置」拒絶査定不服審判事件〔令和4年10月27日国際公開、WO2022/224326〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
この出願(以下「本願」という。)は、2021年(令和3年)4月20日を国際出願日とする日本語特許出願であって、その手続の経緯の概要は以下のとおりである。
令和5年 7月26日付け:拒絶理由通知(発送日:同年8月1日)
令和5年 8月31日 :意見書及び手続補正書の提出
令和5年11月20日付け:拒絶理由通知(発送日:同年11月28日)
令和6年 1月15日 :意見書及び手続補正書の提出
令和6年 4月16日付け:拒絶査定(発送日:同年4月30日)
令和6年 6月18日 :審判請求書の提出
令和7年 2月26日付け:拒絶理由通知(発送日:同年3月4日)
令和7年 4月25日 :意見書及び手続補正書の提出
第2 本願発明
本願の請求項1-7に係る発明は、令和7年4月25日の手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1-7に記載されたとおりのものであるところ、請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、以下のとおりである(下線は補正された箇所を示す。)。
「 【請求項1】
前部座席よりも前方にて運転席および助手席を含む前記前部座席と対向するように表示装置が設置されている車両においてドライバおよび助手席乗員を検知するための乗員検知装置であって、
車室内へ電波を送信する送信部と、
前記送信部が送信した前記電波の、前記ドライバおよび前記助手席乗員からの反射電波を受信する受信部とを備え、
前記表示装置は、表示部と前記表示部の外縁を囲む外枠とを有し、
前記のとおり設置された状態の前記表示装置における、前記外枠の上辺、下辺、左辺、または右辺のいずれか1箇所に搭載される
ことを特徴とする乗員検知装置。」
第3 当審において通知した拒絶の理由
当審において令和7年2月26日付けで通知した本願発明に対する拒絶理由の理由2(特許法第29条第2項)の概要は以下のとおりである。
本願発明は、その出願前に日本国内または外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった以下の引用文献1に記載された発明及び引用文献2に記載された技術に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
1.特開2007-22186号公報
2.国際公開第2019/009125号
第4 当審の判断
(1)引用文献の記載事項
ア 引用文献1
引用文献1には、図面とともに、以下の事項が記載されている(下線は、当審において付与した。以下同様。)。
(ア)「【0012】
図1に示すように、車両用脱臭装置1は、車両用空気調和装置内に組み込まれており、インテークドア2と、ファン3と、オゾン発生器4と、操作部5と、乗員検出手段6と、オゾン濃度センサ7と、表示部8と、降雨センサ9と、コントローラ10とを備えている。」
(イ)「【0018】
表示部8は、インストルメントパネルに配置され、コントローラ10によって表示内容などが制御される。」
(ウ)「【0020】
乗員検出手段6は、車室内に人間やペット等の動物がいないことを検出するものであり、ドアをロックするドアロック機構20と、シートベルトが使用状態か否かを検出するシートベルトセンサ21と、乗員が着席しているか否かを検出する着座センサ22と、ドアが開いているか否かを検出するドア開センサ23と、赤外線の放射や人間等が発する熱(赤外線)によって、車内に人間や動物がいるか否かを検出する乗員検知センサである赤外線センサ24と、インテリジェントキー等の電波式施開錠制御手段25と、車体に振動があるか否かを検出する振動センサ26と、その他の移動物検知手段27とを備えている。
【0021】
他の移動物検知手段27は、車内外の一定範囲内に移動物(人間、動物)があるか否かを検出するもので、フィールドセンサ、動体センサ、ミリ波レーダ、超音波センサ、マトリックス赤外線センサ、カメラ、セキュリティ装置などである。」
(エ)「【0043】
この実施形態では、乗員検知センサとして赤外線センサ24が使用されているが、赤外線以外の無接触で人間や動物の存在を検出できるものを使用しても良いことはもちろんである。」
(オ)「【0049】
図16(a)、(b)の第7設置パターンでは、ミニバンタイプの車両にあって、インストルメントパネルの位置と車室の天井中央位置の2箇所に赤外線センサ24,24が設置されている。図17(a)、(b)の第8設置パターンでは、セダンタイプの車両にあって、インストルメントパネルの位置と車室の天井中央位置の2箇所に赤外線センサ24,24が設置されている。」
(カ)上記(オ)の記載事項及び図17の図示内容から、インストルメントパネルの位置に配置された赤外線センサ24がドライバ及び助手席乗員を検出するためのものと認められる。
上記記載事項を総合し、本願発明の記載ぶりに則って整理すると、引用文献1には以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
[引用発明]
「インストルメントパネルに表示部8が配置されている車両においてドライバ及び助手席乗員を検出する乗員検出手段6であって、
ドライバ及び助手席乗員を検出する赤外線センサ24と、
ミリ波レーダなどであり、車内外に移動物(人間、動物)があるか否かを検出するその他の移動物検知手段27
とを備え、
前記赤外線センサ24に代えて、赤外線以外の無接触で人間や動物の存在を検出できるものを使用しても良い、
前記インストルメントパネルの位置に設置される
乗員検出手段6。」
イ 引用文献2
引用文献2には、図面とともに、以下の事項が記載されている。
(ア)「[0001] 本発明は、乗員撮影装置に係わり、特に、インストルメントパネルに表示装置が設けられている車両において乗員を撮影するための乗員撮影装置に関する。」
(イ)「[0007] 上記の目的を達成するために、本発明の乗員撮影装置は、インストルメントパネルに表示装置が設けられている車両において乗員を撮影するための乗員撮影装置であって、表示装置に内蔵され、入射面が乗員側に向けられたカメラレンズを備えることを特徴とする。
このように構成された本発明においては、乗員との間に遮蔽物のないインストルメントパネル上の表示装置にカメラレンズが内蔵されているので、乗員を確実に撮影することができると共に、インストルメントパネルのデザイン性の悪化を避けることができる。」
(ウ)「[0015] 本発明による乗員撮影装置によれば、インストルメントパネルのデザイン性を損なうことなく、乗員の顔を確実に撮影することができる。」
(エ)「[0018] 図1に示すように、車室1の前部には、フロントウインドシールド2の下方において車幅方向に延びるインストルメントパネル4が設けられている。インストルメントパネル4の車両前後方向後側の面における運転席側の部分(図1においては左側の部分)には開口が形成され、この開口にコラムシャフト6が挿通されており、コラムシャフト6にステアリングホイール8が取り付けられている。また、インストルメントパネル4の車幅方向中央部の上面には、ディスプレイ10(表示装置、車載機器)が立設されている。
[0019] 本発明の第1実施形態による乗員撮影装置12は、ディスプレイ10に内蔵されたカメラ14を備えており、このカメラ14によりドライバを撮影する。乗員撮影装置12により撮影されたドライバの顔画像は、ドライバの運転状態の検出や感情の推定に利用される。
例えば、ドライバの顔画像に基づき瞼の下がり度合や瞳孔の開き度合いを検出し、これらの検出値に基づいてドライバの眠気を推定することができる。
また、ドライバの顔画像に基づき視線方向や視線の移動速度を検出し、これらの検出値に基づきわき見運転の有無を判断することができる。
また、ドライバの顔画像に基づき口角の上り方や目じりのしわの有無等を検出し、これらの検出値に基づきドライバの笑顔判定を行うこともできる。
[0020] 次に、図2により、本発明の第1実施形態による乗員撮影装置12の具体的な構成を説明する。図2は、図1に示したインストルメントパネル4に設けられたディスプレイ10の正面図である。
[0021] 図2に示すように、ディスプレイ10は、表示部16と、表示部16の外縁を囲む外枠18とを有している。表示部16としては、例えば液晶ディスプレイや有機ELディスプレイ等の平板型ディスプレイの前面にタッチスクリーンを設けたタッチパネル式ディスプレイを用いることができる。外枠18は、インストルメントパネル4の車幅方向中央部の上面に固定され、表示部16の外縁を保持すると共に、表示部16の外周部を隠す化粧板としての機能も有する。
[0022] 乗員撮影装置12は、ディスプレイ10に内蔵されたカメラ14及び発光部20を備えている。
カメラ14は、入射面が乗員側に向けられたカメラレンズ22と、カメラレンズ22により結像した入射光を電気信号に変換する図外のイメージセンサ(例えばCCDやCMOS)とを有する。カメラレンズ22は、ディスプレイ10の外枠18の車幅方向運転席側且つ上下方向上側の端部(図2においてはディスプレイ10の左上端)に内蔵されており、カメラレンズ22自体がディスプレイ10の外枠18の外側に露出しないようになっている。また、カメラレンズ22は、ドライバの目がカメラレンズ22の視野に含まれるように方向付けられている。」
(オ)「[0035] 次に、本発明の実施形態のさらなる変形例を説明する。
上述した実施形態においては、カメラレンズ22がディスプレイ10やハザードランプスイッチ24の外枠18、28の車幅方向運転席側且つ上下方向上側の端部に内蔵され、発光部20が外枠18、28の車幅方向助手席側且つ上下方向下側の端部に内蔵されていると説明したが、これとは異なる配置を採用してもよい。
例えば、カメラレンズ22が外枠18、28の車幅方向運転席側且つ上下方向上側の端部に内蔵され、発光部20が外枠18、28の車幅方向助手席側且つ上下方向上側の端部に内蔵されるようにしてもよい。あるいは、カメラレンズ22が外枠18、28の車幅方向運転席側且つ上下方向下側の端部に内蔵され、発光部20が外枠18、28の車幅方向助手席側且つ上下方向下側の端部に内蔵されるようにしてもよい。
また、カメラレンズ22及び発光部20を外枠18、28とは異なる部分(例えば表示部16やスイッチ本体26と外枠18、28との間隙等)でディスプレイ10やハザードランプスイッチ24に内蔵するようにしてもよい。
[0036] また、上述した実施形態においては、乗員撮影装置12がドライバを撮影すると説明したが、ドライバ以外の乗員(助手席や後席の乗員)を撮影するようにしてもよい。この場合、カメラレンズ22は、ディスプレイ10の外枠18における車幅方向運転席側の端部以外の位置に設けられるようにしてもよい。」
上記記載事項を総合すると、引用文献2には以下の技術(以下「引用文献2記載技術」という。)が記載されていると認められる。
[引用文献2記載技術]
「車室1の前部に設けられたインストルメントパネル4の車幅方向中央部の上面にディスプレイ10が立設されている車両においてドライバや助手席乗員を撮影するカメラ14であって、
前記ディスプレイ10は、表示部16と前記表示部16の外縁を囲む外枠18とを有し、
前記のとおり立設された状態の前記ディスプレイ10における、前記外枠18の上側の端部又は下側の端部に内蔵される、
インストルメントパネルのデザイン性を損なうことなく、乗員を確実に撮影することができる
カメラ14。」
(2)対比
本願発明と引用発明とを対比すると、後者の「表示部8」は前者の「表示装置」に相当し、以下同様に、「インストルメントパネルに表示部8が配置されている」態様は「前部座席よりも前方にて運転席および助手席を含む前記前部座席と対向するように表示装置が設置されている」態様に、「車両」は「車両」に、「検出する」は「検知するための」に、「乗員検出手段6」は「乗員検知装置」に、それぞれ相当する。
後者の「ドライバ及び助手席乗員を検出する赤外線センサ24」と前者の「車室内へ電波を送信する送信部と、前記送信部が送信した前記電波の、前記ドライバおよび前記助手席乗員からの反射電波を受信する受信部」とは、「ドライバおよび助手席乗員を検知するセンサ」という限りにおいて一致する。
後者の「前記インストルメントパネルの位置に設置される乗員検出手段6」と前者の「前記表示装置は、表示部と前記表示部の外縁を囲む外枠とを有し、前記のとおり設置された(当審注:「前部座席よりも前方にて運転席および助手席を含む前記前部座席と対向するように」「設置された」を意味する。)状態の前記表示装置における、前記外枠の上辺、下辺、左辺、または右辺のいずれか1箇所に搭載される」「乗員検知装置」とは、「前部座席よりも前方にて前記前部座席と対向するように搭載される乗員検知装置」という限りにおいて一致する。
してみれば、両者の一致点及び相違点は、次のとおりである。
[一致点]
「前部座席よりも前方にて運転席および助手席を含む前記前部座席と対向するように表示装置が設置されている車両においてドライバおよび助手席乗員を検知するための乗員検知装置であって、
前記ドライバおよび前記助手席乗員を検知するセンサを備え、
前記前部座席よりも前方にて前記前部座席と対向するように搭載される
乗員検知装置。」
[相違点1]
「ドライバおよび助手席乗員を検知するセンサ」に関し、本願発明は、「車室内へ電波を送信する送信部と、前記送信部が送信した前記電波の、前記ドライバおよび前記助手席乗員からの反射電波を受信する受信部」であるのに対し、引用発明は、「ドライバ及び助手席乗員を検出する赤外線センサ24」である点。
[相違点2]
「前部座席よりも前方にて前記前部座席と対向するように搭載される乗員検知装置」に関し、本願発明は、「前記表示装置は、表示部と前記表示部の外縁を囲む外枠とを有し、前記のとおり設置された(前部座席よりも前方にて運転席および助手席を含む前記前部座席と対向するように設置された)状態の前記表示装置における、前記外枠の上辺、下辺、左辺、または右辺のいずれか1箇所に搭載される」「乗員検知装置」であるのに対し、引用発明は、「前記インストルメントパネルの位置に設置される乗員検出手段6」である点。
(3)判断
ア 上記相違点1について検討する。
引用発明は、赤外線センサ24に代えて、赤外線以外の無接触で人間や動物の存在を検出できるものを使用しても良いものである。そして、センサの種類は、コストや要求される検出精度等に応じて、当業者が適宜選択し得るものである。また、引用発明は、電波により無接触で移動物の存在を検出できるミリ波レーダなどである移動物検知手段27を備えるものである。さらに、電波により対象物を検出するセンサは、例示するまでもない周知の技術でもある。
してみると、引用発明のドライバ及び助手席乗員を検出する赤外線センサ24に代えて、車室内へ電波を送信する送信部と、前記送信部が送信した前記電波の、前記ドライバおよび前記助手席乗員からの反射電波を受信する受信部とからなるセンサを使用することは、当業者が適宜なし得ることである。
したがって、引用発明において、相違点1に係る本願発明の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得ることである。
イ 上記相違点2について検討する。
引用文献2記載技術のディスプレイ10は、表示部と前記表示部の外縁を囲む外枠とを有する表示装置であるといえる。そして、引用文献2記載技術のカメラ14は、前部座席よりも前方にて運転席および助手席を含む前記前部座席と対向するように設置された状態の表示装置における、外枠の上辺、下辺、左辺、または右辺のいずれか1箇所に搭載される乗員検知装置であるといえる。
インストルメントパネルのデザイン性を損なわないという課題は、極めて周知であり、引用発明も当然内在している。してみると、当該課題を解決するために、引用発明において引用文献2記載技術を採用し、表示部8(表示装置)は、表示部と前記表示部の外縁を囲む外枠とを有し、乗員検出手段6(乗員検知装置)は、前部座席よりも前方にて運転席および助手席を含む前記前部座席と対向するように設置された状態の表示装置における、外枠の上辺、下辺、左辺、または右辺のいずれか1箇所に搭載されるようにすることは、当業者が容易に想到し得ることである。
したがって、引用発明において引用文献2記載技術を採用し、相違点2に係る本願発明の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得ることである。
ウ 効果について
上記相違点1及び2を総合的に勘案しても、本願発明の奏する作用効果は、引用発明、引用文献2記載技術の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。
エ 令和7年4月25日の意見書における主張について
審判請求人は、令和7年4月25日の意見書において、以下のように主張している。
a 「(ア)審判官殿の容易想到性の判断について
審判官殿は旧本願発明1の容易想到性について、上記(1)イ(ア)d(d)で引用発明1の赤外線センサ24の搭載箇所についての容易想到性(容易想到性判断1)を、同d(e)で該赤外線センサ24を「車室内へ電波を送信する送信部と、前記送信部が送信した前記電波の、前記ドライバおよび前記助手席乗員からの反射電波を受信する受信部」に代えることの容易想到性(容易想到性判断2)を、それぞれ説示されています。
しかし、審判官殿のこの論理立ては、容易想到性判断1及び2に係る引用発明1の変更を順に直列的に行うという複数の段階を有するものであって、いわゆる《容易の容易》の論理にあたり、引用発明1からこのような複数の段階を経て旧本願発明1の構成に至ることは格別の努力を要するものであり、当業者にとって容易であったということはできないと思料します(知財高裁平成28(行ケ)第10186号判決ご参照)。
また、旧本願発明1と引用発明1との間の相違点(相違点1,2)について、引用発明1から前記容易想到性判断1に基づいて容易想到とご判断された審判官殿ご創出の発明に対し前記容易想到性判断2に係るさらなる変更を加える点で、審判官殿の前記論理立ては、特許法第29条第1項第3号にいう「特許出願前に日本国内又は外国において,頒布された刊行物に記載された発明」に基づく容易想到性の論理には該当しないものと思料します。
よって、旧本願発明1に係る審判官殿の理由2についてのご判断は、その論理構造の点で成り立たないものと思料します。」
b 「(イ)旧本願発明1が進歩性を有すること
仮に引用発明1に対し前記引用文献2技術事項が適用できたとしましても、上記イのとおりですので、その結果得られる構成はカメラをセンサとし、ドライバまたはドライバ以外の乗員(助手席や後席の乗員)を撮影する乗員撮影装置であり、相違点1,2のうち少なくともセンサの種別に関する相違点が充たされず(相違事項a)、さらに、少なくとも、検知対象(ドライバおよび助手席乗員)についての新たな相違点(相違事項b)が生じることとなります。
相違事項aにつきましては拒絶理由において上記容易想到性の判断2として、引用文献1の記載事項をもとにその容易想到性を説示されています。
しかし、この容易想到性の判断2は、前提となる容易想到性の判断1に対し、上記(ア)で申し上げた《容易の容易》の論理に該当します。
また、このことを措くとしましても、「超音波センサ」は電波を介在するセンサではありませんし、引用発明1が赤外線センサとは別途に「無接触で人間や動物の存在を検出できるものとしてミリ波レーダ…等の電波を送信する送信部と、検出対象物からの反射電波を受信する受信部」を既に備えることが、なぜ、引用発明1の「赤外線以外の無接触で人間や動物の存在を検出できるものを使用しても良いもの」との示唆に対し、同種のミリ波レーダを重複して同種の目的のために使用するとの、冗長な機器構成の選択を動機づけるのか技術的に不明です。
さらに、赤外線センサと電波を用いる送受信センサとは同等・可換な手段ではなく、検出可能な対象物の種別や、検出対象とセンサとの好適な位置関係、得られる検出結果の内容が相違するというのが技術常識であるところ、赤外線センサの使用で作用効果を奏している引用発明1について、別種のセンサに置き換える動機づけ自体が乏しいといえますし、検出結果や検出可能な対象等が大きく異なることとなるセンサ種の変更が、適宜であるとか設計事項であるということはできません。」
c 「エ 補正後の新請求項1に係る発明(新本願発明1)が非容易想到であること
(中略)
よって、引用発明1及び引用文献2技術事項に基づいて該各相違点を備える構成に至る容易想到性の論理には、上記ウ(ア)と同様の論理構造上の不成立性と、上記ウ(イ)と同様の技術的な論理付けについての不成立性が存在します。」
上記aの主張に関しては、上記ア及びイにおいて相違点1及び2について検討したとおり、相違点1及び2は、それぞれ別個に並列的に変更できるものであるから、「引用発明1の変更を順に直列的に行うという複数の段階を有する」論理付けを行っているとはいえない。したがって、審判請求人の上記aの主張は採用することはできない。
上記bにおける「このことを措くとしましても、「超音波センサ」は電波を介在するセンサではありませんし、引用発明1が赤外線センサとは別途に「無接触で人間や動物の存在を検出できるものとしてミリ波レーダ…等の電波を送信する送信部と、検出対象物からの反射電波を受信する受信部」を既に備えることが、なぜ、引用発明1の「赤外線以外の無接触で人間や動物の存在を検出できるものを使用しても良いもの」との示唆に対し、同種のミリ波レーダを重複して同種の目的のために使用するとの、冗長な機器構成の選択を動機づけるのか技術的に不明です。
さらに、赤外線センサと電波を用いる送受信センサとは同等・可換な手段ではなく、検出可能な対象物の種別や、検出対象とセンサとの好適な位置関係、得られる検出結果の内容が相違するというのが技術常識であるところ、赤外線センサの使用で作用効果を奏している引用発明1について、別種のセンサに置き換える動機づけ自体が乏しいといえますし、検出結果や検出可能な対象等が大きく異なることとなるセンサ種の変更が、適宜であるとか設計事項であるということはできません。」との主張に関しては、上記アにおいて相違点1について検討したとおりであるから、採用することができない。審判請求人が主張するとおり、「検出可能な対象物の種別や、検出対象とセンサとの好適な位置関係、得られる検出結果の内容が相違するというのが技術常識である」としても、これらの技術常識を考慮して、センサの種類を選択し、センサの置換を行うことは、当業者であれば容易になし得ることであるといえる。
よって、審判請求人の令和7年4月25日の意見書における主張は採用することができない。
第5 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び引用文献2記載技術に基づいて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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