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特許拒絶査定不服審判

2024-008910

種子コーティング用顔料組成物

審判番号
2024-008910
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2021-513211
請求日
2024年05月29日
審決日
2025年09月26日
公報発行日
2026年03月27日
結論
請求不成立
当事者
  • 【請求人】サン ケミカル コーポレイション
  • 【請求人代理人】青木 篤
  • 【請求人代理人】三橋 真二
  • 【請求人代理人】鶴田 準一
  • 【請求人代理人】南山 知広
  • 【請求人代理人】渡辺 陽一
  • 【請求人代理人】中村 和広
審判長/審判官
  • 審判長 居島 一仁
  • 審判官 立澤 正樹
  • 審判官 野村 伸雄
分類
P18 .121-WZ (A01C)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特願2021-513211「種子コーティング用顔料組成物」拒絶査定不服審判事件〔令和 2年 3月19日国際公開、WO2020/055591、令和 4年 1月 4日国内公表、特表2022-500027〕について、次のとおり審決する。

結論

結 論 本件審判の請求は、成り立たない。

理由

理 由 第1 手続の経緯 本願は、2019年(令和元年)8月28日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2018年9月10日(以下「優先日」という。)、米国)を国際出願日とする外国語特許出願であって、その手続の経緯の概略は、次のとおりである。 令和 3年 4月21日 :翻訳文の提出 令和 5年 4月24日付け:拒絶理由通知書 同年 8月 1日 :意見書、手続補正書の提出 同年 9月 5日付け:拒絶理由通知書(最後) 同年12月11日 :意見書、手続補正書の提出 令和 6年 1月22日付け:補正の却下の決定 同日付け:拒絶査定(以下「原査定」という。) (同月30日 :原査定の謄本の送達) 同年 5月29日 :審判請求書、手続補正書の提出 令和 7年 5月 8日付け:拒絶理由通知書(以下、同書で通知された 拒絶理由を「当審拒絶理由」という。) 同年 8月 8日 :意見書、手続補正書(以下、同書による補 正を「本件補正」という。)の提出 第2 本願発明について 本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、本件補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、その請求項1の記載は次のとおりのものである。 「【請求項1】 1種以上のフィラー粒子と1種以上の顔料を含むシードコーティング顔料組成物であって、前記顔料が1種以上の金属酸化物被覆フィラー粒子であり、前記顔料が総フィラー粒子の1重量%~30重量%を含み、前記フィラー粒子が、天然マイカ、合成マイカ、ガラス、グラファイト、グラフェン、六方晶窒化ホウ素、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、ケイ酸アルミニウムカリウム、ケイ酸アルミニウムナトリウム、硫酸第二鉄、硫酸亜鉛、硫酸カリウム、硫酸マグネシウム、硫酸ナトリウム、カオリン、フィロシリケートクレー、石灰質頁岩、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、酸化カルシウム、ケイ酸カルシウム、石灰マグネシウム、モンモリロナイトクレー、アタパルジャイトクレー、ベントナイト、ヘクトライト、ウォラストナイト、微小酸化鉄、パイロフィライト、パーライト、カルサイト、珪藻土、バーミキュライト、ココナッツシェル、木粉、砂、ソープストーン、二酸化ケイ素、アルミニウム、亜鉛、銅、真鍮、タルク、ドロマイト、石膏、ゼオライト、およびこれらの混合物からなる群より選ばれ、但し前記フィラー粒子がオキシ塩化ビスマスではない、シードコーティング顔料組成物。」 第3 当審拒絶理由の概要 本願発明は、本件補正前(令和6年5月29日に提出された手続補正書による補正後のもの)の請求項1に係る発明を補正したものであるところ、当審拒絶理由は、本件補正前の請求項1に係る発明に対する次の理由を含むものである。 理由2(進歩性欠如)この出願の請求項1に係る発明は、その優先日前に発行された下記の引用文献1に記載された発明に基いて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。 記 1.特表2003-508575号公報 第4 引用文献1の記載事項及び引用発明の認定 1 引用文献1の記載事項 当審拒絶理由で引用され、本願の優先日前に発行された引用文献1(特表2003-508575号公報)には、次の事項が記載されている。下線は当合議体が付したものである。 「【請求項1】 成分Aが粉体状又は分散体状の被覆又は非被覆BiOCl顔料を含み、成分Bが真珠光沢のある顔料,薄片状、針状又は球形の着色剤,及び/又は充填剤を含む、少くとも2つの成分を含むことを特徴とする分散体状又は粉体状の顔料混合物。 【請求項2】 成分AがFe2O3、カルミンレッド、ベルリンブルー又は酸化クロムグリーンで被覆されているBiOCl顔料を含むことを特徴とする、請求項1記載の顔料混合物。 【請求項3】 成分Bが雲母、Fe2O3、ガラス、TiO2、SiO2、Al2O3、ポリマー又はグラファイト薄片をベースとする真珠光沢のある顔料であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の顔料混合物。」 「【0004】 (発明の開示) 驚いたことに、上述の欠点の全くない顔料混合物が見出された。本発明の顔料混合物は、成分Aが粉体又は分散体状の被覆又は被覆されていないBiOCl顔料を含み、成分Bが特に雲母、SiO2、ガラス、Al2O3、TiO2、グラファイト又はポリマーの薄片をベースとする真珠光沢顔料,薄片状、針状又は球状の着色剤及び/又は充填剤を含む、少くとも2つの成分からなる。 【0005】 成分BをBiOCl顔料と混合すると、適用系に対して向上した金属性の光沢を与えることが可能となり、色彩効果が向上し、目新らしい色彩効果が得られる。同時に、この顔料混合物は、実質的に見えない状態から強力な隠蔽まで変化させることができる、すなわちコントロールできる隠蔽力にすぐれている。加えて、最終製品の機能性が改善される。本発明の顔料混合物を含む組成物は、すぐれた皮膚感、高い皮膚親和性、長期使用性、変化し得る隠蔽力、望ましければ金属性の光沢、最終製品中への混合の申し分のない容易さ、及び比較的高い光安定性を有する。 【0006】 この発明はしたがって少くとも2つの成分からなる顔料混合物に関するものであり、ここで成分Aは粉体状又は分散体状の、被覆されているか又は被覆されていないBiOCl顔料を含み、成分Bは真珠光沢の顔料,薄片状、針状又は球状の着色剤及び/又は充填剤を含む。 【0007】 本発明はまた、本発明の顔料混合物のペンキ、塗料、有価証券印刷用インクを含む印刷インク、プラスチック、プラスチックフィルム、種子の仕上げ用の粉体コーティング及び特に化粧用組成物中への使用に関する。 【0008】 粉体状のBiOCl顔料は成分Bといかなる割合ででも混合することができる。成分Aの成分Bに対する割合は好ましくは1:90から90:1であり、特に好ましくは1:50から50:1、さらに好ましくは1:20から20:1である。」 「【0029】 本発明の顔料混合物は、ペンキ、粉体塗料、塗料、印刷インク、有価証券印刷インク、プラスチック、人工真珠及び宝石物品、農業用シート、種子の被覆、ボタンペーストの着色用に使用でき、さらに例えば口紅、爪マニキュア(ワニス)、化粧スティック、パウダーコンパクト、メーキャップ、シャンプー、ルースパウダー及びゲルなどの化粧用組成物中に使用できる。」 2 引用発明の認定 引用文献1には、その特許請求の範囲の請求項3に記載された顔料組成物について、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる(引用発明等の認定に用いた段落番号等を参考までに括弧内に付した。)。 「成分Aが粉体状又は分散体状の被覆又は非被覆BiOCl顔料を含み、成分Bが真珠光沢のある顔料,薄片状、針状又は球形の着色剤,及び/又は充填剤を含む、少くとも2つの成分を含み、(【請求項1】) 成分AがFe2O3、カルミンレッド、ベルリンブルー又は酸化クロムグリーンで被覆されているBiOCl顔料を含み、(【請求項2】) 成分Bが雲母、Fe2O3、ガラス、TiO2、SiO2、Al2O3、ポリマー又はグラファイト薄片をベースとする真珠光沢のある顔料であり、(【請求項3】) 成分BをBiOCl顔料と混合すると、適用系に対して向上した金属性の光沢を与えることが可能となり、色彩効果が向上し、目新らしい色彩効果が得られ、(【0005】) ペンキ、粉体塗料、塗料、印刷インク、有価証券印刷インク、プラスチック、人工真珠及び宝石物品、農業用シート、種子の被覆、ボタンペーストの着色用に使用でき、さらに例えば口紅、爪マニキュア(ワニス)、化粧スティック、パウダーコンパクト、メーキャップ、シャンプー、ルースパウダー及びゲルなどの化粧用組成物中に使用できる(【0029】) 顔料混合物。」 第5 本願発明と引用発明の対比 1 対比分析 本願発明と引用発明を対比する。 (1) 基本的な相当関係について 引用発明の「粉体状又は分散体状の被覆又は非被覆BiOCl顔料」は、本願発明の「顔料」に、 引用発明の「充填剤」は、本願発明の「フィラー」に、 引用発明の「顔料混合物」は、本願発明の「顔料組成物」に、 それぞれ相当する。 (2) 本願発明の「1種以上のフィラー粒子と1種以上の顔料を含むシードコーティング顔料組成物であって、」との特定事項について 引用発明は、「成分Aが粉体状又は分散体状の被覆又は非被覆BiOCl顔料を含み、成分Bが真珠光沢のある顔料,薄片状、針状又は球形の着色剤,及び/又は充填剤を含む、少くとも2つの成分を含[む]」「顔料混合物」と本願発明の「1種以上のフィラー粒子と1種以上の顔料を含む顔料組成物」は、「1種以上のフィラー」「と1種以上の顔料を含む」「顔料組成物」である点で一致し、引用発明の充填剤が、粒子であるのか不明である点及び顔料組成物について、本願発明は、「シードコーティング」をするものであるのに対し、引用発明は、「ペンキ、粉体塗料、塗料、印刷インク、有価証券印刷インク、プラスチック、人工真珠及び宝石物品、農業用シート、種子の被覆、ボタンペーストの着色用に使用でき、さらに例えば口紅、爪マニキュア(ワニス)、化粧スティック、パウダーコンパクト、メーキャップ、シャンプー、ルースパウダー及びゲルなどの化粧用組成物中に使用できる」ものである点で相違する。 (3) 本願発明の「前記顔料が1種以上の金属酸化物被覆フィラー粒子であり、前記顔料が総フィラー粒子の1重量%~30重量%を含み、」との特定事項について 顔料について、本願発明は、「1種以上の金属酸化物被覆フィラー粒子であり、前記顔料が総フィラー粒子の1重量%~30重量%を含[む]」ものであるに対し、引用発明は、「成分AがFe2O3、カルミンレッド、ベルリンブルー又は酸化クロムグリーンで被覆されているBiOCl顔料を含[む]」ものである点で相違する。 (4) 本願発明の「前記フィラー粒子が、天然マイカ、合成マイカ、ガラス、グラファイト、グラフェン、六方晶窒化ホウ素、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、ケイ酸アルミニウムカリウム、ケイ酸アルミニウムナトリウム、硫酸第二鉄、硫酸亜鉛、硫酸カリウム、硫酸マグネシウム、硫酸ナトリウム、カオリン、フィロシリケートクレー、石灰質頁岩、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、酸化カルシウム、ケイ酸カルシウム、石灰マグネシウム、モンモリロナイトクレー、アタパルジャイトクレー、ベントナイト、ヘクトライト、ウォラストナイト、微小酸化鉄、パイロフィライト、パーライト、カルサイト、珪藻土、バーミキュライト、ココナッツシェル、木粉、砂、ソープストーン、二酸化ケイ素、真珠光沢顔料、アルミニウム、亜鉛、銅、真鍮、タルク、ドロマイト、石膏、ゼオライト、およびこれらの混合物からなる群より選ばれ、但し前記フィラー粒子がオキシ塩化ビスマスではない、」との特定事項について フィラーについて、本願発明は、「粒子」であり、「天然マイカ、合成マイカ、ガラス、グラファイト、グラフェン、六方晶窒化ホウ素、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、ケイ酸アルミニウムカリウム、ケイ酸アルミニウムナトリウム、硫酸第二鉄、硫酸亜鉛、硫酸カリウム、硫酸マグネシウム、硫酸ナトリウム、カオリン、フィロシリケートクレー、石灰質頁岩、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、酸化カルシウム、ケイ酸カルシウム、石灰マグネシウム、モンモリロナイトクレー、アタパルジャイトクレー、ベントナイト、ヘクトライト、ウォラストナイト、微小酸化鉄、パイロフィライト、パーライト、カルサイト、珪藻土、バーミキュライト、ココナッツシェル、木粉、砂、ソープストーン、二酸化ケイ素、真珠光沢顔料、アルミニウム、亜鉛、銅、真鍮、タルク、ドロマイト、石膏、ゼオライト、およびこれらの混合物からなる群より選ばれ、但し前記フィラー粒子がオキシ塩化ビスマスではない」のに対し、引用発明は、粒子と特定されておらず、材質も特定されていない点で相違する。 (5) 本願発明の「シードコーティング顔料組成物。」との特定事項について 顔料組成物について、本願発明は、「シードコーティング」をするものであるのに対し、引用発明は、「ペンキ、粉体塗料、塗料、印刷インク、有価証券印刷インク、プラスチック、人工真珠及び宝石物品、農業用シート、種子の被覆、ボタンペーストの着色用に使用でき、さらに例えば口紅、爪マニキュア(ワニス)、化粧スティック、パウダーコンパクト、メーキャップ、シャンプー、ルースパウダー及びゲルなどの化粧用組成物中に使用できる」ものである点で相違する。 2 一致点及び相違点 前記1の対比分析の結果をまとめると、本願発明と引用発明の一致点及び相違点は、次のとおりである。 【一致点】 「1種以上のフィラーと1種以上の顔料を含む顔料組成物。」 【相違点1】 顔料について、本願発明は、「1種以上の金属酸化物被覆フィラー粒子であり、前記顔料が総フィラー粒子の1重量%~30重量%を含[む]」ものであるに対し、引用発明は、「成分AがFe2O3、カルミンレッド、ベルリンブルー又は酸化クロムグリーンで被覆されているBiOCl顔料を含[む]」ものである点。 【相違点2】 フィラーについて、本願発明が、「粒子」であり、「天然マイカ、合成マイカ、ガラス、グラファイト、グラフェン、六方晶窒化ホウ素、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、ケイ酸アルミニウムカリウム、ケイ酸アルミニウムナトリウム、硫酸第二鉄、硫酸亜鉛、硫酸カリウム、硫酸マグネシウム、硫酸ナトリウム、カオリン、フィロシリケートクレー、石灰質頁岩、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、酸化カルシウム、ケイ酸カルシウム、石灰マグネシウム、モンモリロナイトクレー、アタパルジャイトクレー、ベントナイト、ヘクトライト、ウォラストナイト、微小酸化鉄、パイロフィライト、パーライト、カルサイト、珪藻土、バーミキュライト、ココナッツシェル、木粉、砂、ソープストーン、二酸化ケイ素、真珠光沢顔料、アルミニウム、亜鉛、銅、真鍮、タルク、ドロマイト、石膏、ゼオライト、およびこれらの混合物からなる群より選ばれ、但し前記フィラー粒子がオキシ塩化ビスマスではない」のに対し、引用発明は、粒子と特定されておらず、材質も特定されていない点。 【相違点3】 顔料組成物について、本願発明は、「シードコーティング」をするものであるのに対し、引用発明は、「ペンキ、粉体塗料、塗料、印刷インク、有価証券印刷インク、プラスチック、人工真珠及び宝石物品、農業用シート、種子の被覆、ボタンペーストの着色用に使用でき、さらに例えば口紅、爪マニキュア(ワニス)、化粧スティック、パウダーコンパクト、メーキャップ、シャンプー、ルースパウダー及びゲルなどの化粧用組成物中に使用できる」ものであるである点。 第6 判断 1 相違点1及び2について 事案に鑑み相違点1及び2を合わせて検討する。 (1) 本願発明の「前記顔料が総フィラー粒子の1重量%~30重量%を含[む]」ことについて 本願発明の「前記顔料が総フィラー粒子の1重量%~30重量%を含[む]」ことに関して、本願の明細書の【0015】に、「いくつかの実施形態では、フィラー粒子は、フィラー粒子と顔料粒子の合計(総フィラー粒子)の約70%~約99%、例えば、約75%~約95%、約75%~約85%である。いくつかの実施形態では、顔料組成物は、約50重量%~約99重量%、例えば約80重量%~約99重量%のフィラーを含む。いくつかの実施形態では、顔料組成物は、約1重量%~約50重量%、例えば約1重量%~約20重量%の顔料粒子を含む。いくつかの実施形態では、顔料組成物は、約50重量%~約99重量%のフィラーおよび約1重量%~約50重量%の顔料粒子、例えば約80重量%~約99重量%のフィラーおよび約1重量%~約20重量%の顔料粒子を含む。いくつかの実施形態では、顔料組成物は、総フィラー粒子の約1重量%~約30重量%、例えば約5重量%~約25重量%、および約5重量%~約15重量%、の顔料を含んでいる。」と記載され、顔料組成物が総フィラー粒子の約1重量%~30重量%の顔料を含むことは、任意性の高い広い数値範囲の中から適宜選択・設計し得る程度の記載に留まるものである。また、同【0032】に10%の実施例が記載されている。 これらの記載を参酌しても、本願の明細書には当該範囲の上限下限の技術的意義を示す特段の記載も示唆もされておらず、他の段落等にもそのようなことを示す記載も示唆もないと解することができるから、本願発明の当該範囲は、当業者が通常の創作活動の範囲で行う最適化等の範囲で適宜なし得る程度の事項といえる。 (2) 引用発明からの容易想到性について 引用発明は、「成分BをBiOCl顔料と混合すると、適用系に対して向上した金属性の光沢を与えることが可能となり、色彩効果が向上し、目新らしい色彩効果が得られ[る]」ものである。 そうすると、引用発明の「BiOCl顔料」を、色彩効果が向上し、目新らしい色彩効果が得られるように、Fe2O3などの金属酸化物で被覆し、適宜の色彩効果を付与するようになすことは、当業者が適宜なし得た設計的事項である。 その際に、前記(1)を踏まえると、引用発明の「粉体状又は分散体状の被覆又は非被覆BiOCl顔料」が、「粉体状又は分散体状の被覆又は非被覆BiOCl顔料」及び「充填剤」に対して、1重量%~30重量%含むようになすことは、当業者が適宜なし得た設計的事項である。 また、引用発明の「充填剤」においても、当業者は形態や材料を選択し得るものであるといえ、充填剤の形態として、粒子状のものは例示するまでもなく周知であるから、充填剤を粒子状とし、さらに、引用発明の「成分B」が「雲母、Fe2O3、ガラス、TiO2、SiO2、Al2O3、ポリマー又はグラファイト薄片をベースとする真珠光沢のある顔料」も含んでいることからみて、充填剤の材料としても、雲母、Fe2O3、ガラス、SiO2、Al2O又はグラファイト薄片などの適宜の材料を選択するといえ、オキシ塩化ビスマスでないものを選択することも特段の技術的な困難性もないといえる。 したがって、引用発明において、相違点1及び2に係る本願発明の構成とすることは、当業者が適宜なし得た設計的事項である。 2 相違点3について 引用発明は、「ペンキ、粉体塗料、塗料、印刷インク、有価証券印刷インク、プラスチック、人工真珠及び宝石物品、農業用シート、種子の被覆、ボタンペーストの着色用に使用でき、さらに例えば口紅、爪マニキュア(ワニス)、化粧スティック、パウダーコンパクト、メーキャップ、シャンプー、ルースパウダー及びゲルなどの化粧用組成物中に使用できる」ものである。 そして、引用発明から出発した当業者は、前記使用できるものの中から、選択するところ、引用発明の顔料混合物を、種子の被覆として使用することは、当業者が選択し得た事項にすぎない。 したがって、引用発明において、相違点3に係る本願発明の構成とすることは、当業者が選択し得た事項にすぎない。 3 本願発明の効果について 本願発明の作用効果は、引用発明の奏する作用効果から予測される範囲のものにすぎず、格別顕著なものということもできない。 4 請求人の主張について (1) 請求人は、引用文献1には本願発明の特定事項である「顔料が総フィラー粒子の1重量%~30重量%を含む」ことは記載されていない旨主張している。 しかしながら、前記1で説示したとおりである。 (2) 請求人は、引用文献1には顔料混合物の用途の1つとして、種子の仕上げ用コーティングが記載されているが、種子の仕上げ用コーティングとしての具体的な開示はなく、種子コーティングに適した組成物は、種子を発芽させることができ、種子に毒性がなく、コーティングが少なくとも部分的に水溶性であるものでなければならない旨主張している。 しかしながら、本願発明には、顔料組成物が、種子に対して毒性がなく、コーティングが少なくとも部分的に水溶性であることについて、特定されておらず、前記主張は、本願発明の構成要素に基づく主張ではない。 さらに、仮に、本願発明が、顔料組成物が、シードコーティングと特定していることから、種子に毒性がなく、コーティングが少なくとも部分的に水溶性であるという機能を有するとの主張であるとしても、引用発明の顔料混合物を種子の被覆として使用する場合に、種子に毒性がなく、コーティングが少なくとも部分的に水溶性である機能というように、種子の機能を阻害しないものや法規制等を考慮したものを選択することは、当業者の通常の創作活動の範囲のことにすぎない。 (3) 請求人は、本願発明の効果として、「種子の乾燥を助け、流動性を改善すること」及び「高い彩度と良好な玉虫色効果を維持」すること(【0006】)である旨主張している。 しかしながら、まず、種子の流動性は、種子の形状やシードコーティングをした場合にはさらにシードコーティングの組成等によって異なるものといえるが、本願の明細書等の記載を参酌しても、本願発明のどのような特定事項による作用機序に基づきり、種子の流動性が改善され、格別の効果等奏するかが明らかとはいえずし、表4の例9-7(発明)及び例9-11(比較)が、ともに平均時間5.2(kg/分)であり、流動性は改善されていないことからみて、本願発明が「種子の乾燥を助け、流動性を改善する」との効果を有するとの主張は、本願発明の構成に基づくものとはいえず、仮に効果があるとしても格別のものとまではいえず、採用できない。 また、本願発明のどのような特定事項によって、「高い彩度と良好な玉虫色効果を維持」する効果を奏するのか判然としない。すなわち、本願の明細書等には、「真珠光沢顔料と有機発色団を併用すると、種子は玉虫色の効果を示し」(【0007】)と記載され、表4には、例7-7(発明)が例7-10(比較)よりも彩度が高いことを示しているものの、例7-7(発明)と例7-10(比較)は、有機レッド顔料を含むものであり、また、「維持」は物や状態を保ち続けることを意味する用語であることから、本願の明細書等の記載等を参酌しても、本願発明より発揮される効果であるのかが不明であるので採用できない。 (4) したがって、請求人の主張は、上記1~3に示した判断を左右するものではなく、採用することができない。 5 小括 以上検討のとおり、本願発明は、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 第7 むすび 以上のとおり、本願発明は、特許法29条2項の規定により、特許を受けることができない。 したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。

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2024-008910

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