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特許拒絶査定不服審判

2024-007678

部分的にコーティングされた電極活物質の製造方法

審判番号
2024-007678
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2021-518513
請求日
2024年05月09日
審決日
2025年04月23日
公報発行日
2025年10月31日
結論
請求不成立
当事者
  • 【請求人】ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア
  • 【請求人代理人】江藤 聡明
  • 【請求人代理人】倉脇 明子
  • 【請求人代理人】山口 修
  • 【請求人代理人】稲垣 謙司
  • 【請求人代理人】長山 弘典
審判長/審判官
  • 審判長 井上 信一
  • 審判官 須原 宏光
  • 審判官 ▲高▼橋 徳浩
分類
P18 .121-WZ (H01M)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法29条2項
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特願2021-518513「部分的にコーティングされた電極活物質の製造方法」拒絶査定不服審判事件〔令和 2年 4月 9日国際公開、WO2020/069882、令和 4年 1月13日国内公表、特表2022-504208〕について、次のとおり審決する。

結論

結 論 本件審判の請求は、成り立たない。

理由

理 由 1.手続の経緯 本願は、2019年9月20日(パリ条約に基づく優先権主張外国庁受理 2018年10月2日 欧州特許庁)を国際出願日とする出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。 令和 2年 4月 7日 :特許協力条約第34条補正の翻訳文提出書 の提出 令和 5年 8月28日付け:拒絶理由通知 令和 5年11月27日 :意見書、手続補正書の提出 令和 6年 2月29日付け:拒絶査定(原査定) 令和 6年 5月 9日 :審判請求書の提出 令和 6年12月 5日付け:当審による拒絶理由通知 令和 7年 2月17日 :意見書、手続補正書の提出 2.本願発明 本願の請求項1ないし10に係る発明は、令和7年2月17日の手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし10に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、次のとおりである。 「部分的にコーティングされた電極活物質の製造方法であって、前記方法が、以下の工程: (a)一般式Li1+xTM1-xO2 [式中、TMは、 一般式(I) (NiaCobMnc)1-dM1d (I) (式中、 a+b+c=1であり、 aは、0.6~0.99の範囲であり、 bは、0.01~0.2の範囲であり、 cは、0~0.2の範囲であり、 dは、0~0.1の範囲であり、 M1は、Al、Mg、W、Mo、Ti及びZrの少なくとも1つである) による金属の組合せであり、 xは-0.05~0.2の範囲である] による電極活物質を提供する工程と、 (b)前記電極活物質を、水中に分散又はスラリー化された水不溶性の無機アルミニウム化合物を含有する水性製剤で処理する工程であって、水不溶性は25℃で0.1g未満のアルミニウム化合物/lの水の溶解度を意味する工程と、 (c)濾過により又は遠心分離機を用いて、水を分離する工程と、 (d)工程(c)から得られた物質を熱処理する工程と、 を含む、方法。」 3.拒絶の理由の概要 本願の請求項1に対して令和6年12月5日付けで当審が通知した拒絶理由のうちの理由1(進歩性)の概要は次のとおりである。 この出願の請求項1に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の引用文献1に記載された発明及び周知の技術事項(下記の引用文献2及び3に記載された技術事項)に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 記 引用文献1:Kwang Soo Yoo et al., “Surface Modification of Li(Ni0.6Co0.2Mn0.2)O2 Cathode Materials by Nano-Al2O3 to Improve Electrochemical Performance in Lithium-Ion Batteries”, Materials 2017, 6 November 2017, vol. 10, iss. 11, 1273 引用文献2:米国特許出願公開第2004/0258836号明細書 引用文献3:国際公開第2011/016334号 4.引用文献の記載及び引用発明 (1)引用文献1の記載事項 当審による拒絶の理由に引用された上記引用文献1(Kwang Soo Yoo et al., “Surface Modification of Li(Ni0.6Co0.2Mn0.2)O2 Cathode Materials by Nano-Al2O3 to Improve Electrochemical Performance in Lithium-Ion Batteries”, Materials 2017, 6 November 2017, vol. 10, iss. 11, 1273)には、「Experimental Procedure」について、以下の各記載がある(なお、下線は当審で付与した。)。 ア.「1. Introduction ・・・・・(中 略)・・・・・ Herein, we demonstrate the use of simple surface modification in water media to improve the electrochemical properties, especially high capacity and stable cycling, of the Li(Ni0.6Co0.2Mn0.2)O2 cathode. The Al2O3-coated Li(Ni0.6Co0.2Mn0.2)O2 cathode materials were prepared by mixing cathode powder with Al2O3 precursor in water, drying the mixed slurry, and then annealing at various temperatures. The effects of the Al2O3 coating on the structural and electrochemical properties of the Li(Ni0.6Co0.2Mn0.2)O2 cathode material were systematically investigated.」 (当審訳:1.はじめに ・・・・・(中 略)・・・・・ ここでは、水媒体中での簡単な表面改質により、Li(Ni0.6Co0.2Mn0.2)O2カソードの電気化学的特性、特に高容量と安定したサイクル特性を改善する方法を提示します。Al2O3でコーティングされたLi(Ni0.6Co0.2Mn0.2)O2カソード材料は、カソード粉末とAl2O3前駆体を水中で混合し、混合スラリーを乾燥させ、さまざまな温度でアニールすることで製造されました。Al2O3のコーティングがLi(Ni0.6Co0.2Mn0.2)O2カソード材料の構造的及び電気化学的特性に与える影響を体系的に調査しました。) イ.「2. Experimental Procedure The Li(Ni0.6Co0.2Mn0.2)O2 cathode material (d10/d50/d90 = 7.77/13.38/22.72 μm) was a commercially available powder obtained from Ningbo Jinhe Lithium Battery Material Co., Ltd (Ningbo, China). Aqueous alumina (Al2O3) sol was prepared with a concentration of 10 wt % by peptizing Boehmite (γ-AlO(OH)) powder in acidic water. This sol is viscous, translucent, and stable for several months. The Li(Ni0.6Co0.2Mn0.2)O2 powder was added to a mixture of the alumina sol and an additive of polymeric dispersant based on polyethylene glycol in deionized water. The slurry concentration was approximately 80 wt %. The amount of alumina sol that was used varied from 0.06 to 0.12 wt % as Al2O3 with respect to the Li(Ni0.6Co0.2Mn0.2)O2 powder and the additive 0.04 wt %. The mixture was mixed with a stirrer for 1 h, heated to remove the water while stirring, and then dried in an oven. The dried coated powder was subjected to heat treatment at various temperatures from 400 to 600 ℃ and holding times varying from 2 h to 10 h.」 (当審訳:2.実験手順 Li(Ni0.6Co0.2Mn0.2)O2カソード材料(d10/d50/d90=7.77/13.38/22.72μm)は、Ningbo Jinhe Lithium Battery Material Co.,Ltd(寧波、中国)から入手した市販の粉末であった。酸性水中でベーマイト(γ-AlO(OH))粉末をコロイド状態に分散することにより、濃度10重量%の水性アルミナ(Al2O3)ゾルを調製した。このゾルは粘性があり、半透明で、数か月間安定している。Li(Ni0.6Co0.2Mn0.2)O2粉末を、アルミナゾルと脱イオン水中のポリエチレングリコールをベースとする高分子分散剤の添加剤の混合物に加えた。スラリー濃度は約80重量%であった。使用したアルミナゾルの量は、Li(Ni0.6Co0.2Mn0.2)O2粉末及び添加剤0.04重量%に対して、Al2O3として0.06~0.12重量%であった。混合物をスターラーで1時間混合し、撹拌しながら加熱して水を除去し、次にオーブンで乾燥させた。乾燥したコーティング粉末を、400~600℃の様々な温度で、2時間~10時間の保持時間で熱処理にかけた。) (2)上記記載から、引用文献1には、次の技術的事項が記載されているものと認められる。 ア.引用文献1に記載の「実験手順」は、上記「(1)ア.」の[1.Introduction]の記載によれば、Al2O3でコーティングされたLi(Ni0.6Co0.2Mn0.2)O2カソード材料を製造するものである。 イ.上記「(1)イ.」の[2.Experimental Procedure]の記載によれば、実験手順において、Li(Ni0.6Co0.2Mn0.2)O2カソード材料の粉末を入手するものである。 ウ.上記「(1)イ.」の[2.Experimental Procedure]の記載によれば、実験手順において、酸性水中でベーマイト(γ-AlO(OH))粉末をコロイド状態に分散することにより、濃度10重量%の水性アルミナ(Al2O3)ゾルを調製するものである。 エ.上記「(1)イ.」の[2.Experimental Procedure]の記載によれば、実験手順において、Li(Ni0.6Co0.2Mn0.2)O2粉末を、アルミナゾルと高分子分散剤の添加剤の混合物に加えるものである。 オ.上記「(1)イ.」の[2.Experimental Procedure]の記載によれば、実験手順において、混合物を撹拌しながら加熱して水を除去し、次にオーブンで乾燥させるものである。 カ.上記「(1)イ.」の[2.Experimental Procedure]の記載によれば、実験手順において、乾燥したコーティング粉末を熱処理にかけるものである。 (3)以上のことから、上記記載を総合勘案すると、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。 「Al2O3でコーティングされたLi(Ni0.6Co0.2Mn0.2)O2カソード材料を製造する実験手順であって、当該実験手順において、 Li(Ni0.6Co0.2Mn0.2)O2カソード材料の粉末を入手し、 酸性水中でベーマイト(γ-AlO(OH))粉末をコロイド状態に分散することにより、濃度10重量%の水性アルミナ(Al2O3)ゾルを調製し、 Li(Ni0.6Co0.2Mn0.2)O2粉末を、アルミナゾルと高分子分散剤の添加剤の混合物に加え、 混合物を撹拌しながら加熱して水を除去し、次にオーブンで乾燥させ、 乾燥したコーティング粉末を熱処理にかける、 実験手順。」 5.対比 本願発明と引用発明とを対比する。 (1)引用発明における「Li(Ni0.6Co0.2Mn0.2)O2カソード材料」は、本願発明でいう「電極活物質」に相当する。また、引用発明における「実験手順」は、「Li(Ni0.6Co0.2Mn0.2)O2カソード材料を製造する」ものであり、本願発明でいう「製造方法」に相当する。更に、引用発明における「Li(Ni0.6Co0.2Mn0.2)O2カソード材料」は、「Al2O3でコーティングされた」ものであり、本願発明でいう「電極活物質」が「コーティングされた」ことに相当する。 したがって、本願発明と引用発明とは、「コーティングされた電極活物質の製造方法」である点では一致する。 しかしながら、「電極活物質」について、本願発明では、「部分的にコーティングされた」ものであることを特定するのに対して、引用発明では、「コーティングされた」ものではあるものの、当該コーティングが「部分的」であるか否か定かではない点で一応相違する。 (2)上記(1)に記載したように、引用発明における「Li(Ni0.6Co0.2Mn0.2)O2カソード材料」は、本願発明でいう「電極活物質」に相当する。また、引用発明における「Li(Ni0.6Co0.2Mn0.2)O2カソード材料の粉末を入手」することは、本願発明でいう「電極活物質を提供する工程」に相当する。そして、引用発明における「Li(Ni0.6Co0.2Mn0.2)O2カソード材料」は、「Ni0.6Co0.2Mn0.2」を構成元素に含んでなるものであるところ、かかるNi0.6Co0.2Mn0.2は、本願発明における一般式(I)による金属の組合せの一つに該当し(なお、この場合、a=0.6、b=0.2、c=0.2、d=0である。)、引用発明における「Li(Ni0.6Co0.2Mn0.2)O2カソード材料」は、本願発明における一般式Li1+xTM1-xO2による電極活物質であるものと認められる(なお、この場合、x=0である。)。 したがって、本願発明と引用発明とは、「(a)一般式Li1+xTM1-xO2 [式中、TMは、 一般式(I) (NiaCobMnc)1-dM1d (I) (式中、 a+b+c=1であり、 aは、0.6~0.99の範囲であり、 bは、0.01~0.2の範囲であり、 cは、0~0.2の範囲であり、 dは、0~0.1の範囲であり、 M1は、Al、Mg、W、Mo、Ti及びZrの少なくとも1つである) による金属の組合せであり、 xは-0.05~0.2の範囲である] による電極活物質を提供する工程」を含むものである点で一致する。 (3)引用発明における「Li(Ni0.6Co0.2Mn0.2)O2粉末」、「アルミナ(Al2O3)」、「アルミナゾルと高分子分散剤の添加剤の混合物」は、それぞれ、本願発明でいう「電極活物質」、「無機アルミニウム化合物」、「水性製剤」に相当する。また、引用発明における「水性アルミナ(Al2O3)ゾル」は、「酸性水中でベーマイト(γ-AlO(OH))粉末をコロイド状態に分散することにより」調整されたものであり、本願発明でいう「無機アルミニウム化合物」が、「水中に分散又はスラリー化された」ものである、という条件を充足している。 したがって、本願発明と引用発明とは、「(b)前記電極活物質を、水中に分散又はスラリー化された無機アルミニウム化合物を含有する水性製剤で処理する工程」を含むものである点では一致する。 しかしながら、「無機アルミニウム化合物」について、本願発明では、25℃で0.1g未満のアルミニウム化合物/lの水の溶解度を意味する「水不溶性」であることを特定するのに対して、引用発明では、アルミナ(Al2O3)ではあるものの、25℃で0.1g未満のアルミニウム化合物/lの水の溶解度を意味する「水不溶性」であるか否か定かではない点で一応相違する。 (4)引用発明における「水を除去」することは、本願発明でいう「水を分離する工程」に相当する。 したがって、本願発明と引用発明とは、「(c)水を分離する工程」を含むものである点では一致する。 しかしながら、当該「(c)水を分離する工程」について、本願発明では、「濾過により又は遠心分離機を用いて」実行することを特定するのに対して、引用発明では、混合物を撹拌しながら加熱して実行する点で相違する。 (5)引用発明における「オーブンで乾燥」させること、及び、「熱処理にかける」ことは、いずれも、本願発明でいう「熱処理する工程」に相当する。 したがって、本願発明と引用発明とは、「(d)工程(c)から得られた物質を熱処理する工程」を含むものである点で一致する。 よって、上記(1)ないし(5)によれば、本願発明と引用発明とは、 「コーティングされた電極活物質の製造方法であって、前記方法が、以下の工程: (a)一般式Li1+xTM1-xO2 [式中、TMは、 一般式(I) (NiaCobMnc)1-dM1d (I) (式中、 a+b+c=1であり、 aは、0.6~0.99の範囲であり、 bは、0.01~0.2の範囲であり、 cは、0~0.2の範囲であり、 dは、0~0.1の範囲であり、 M1は、Al、Mg、W、Mo、Ti及びZrの少なくとも1つである) による金属の組合せであり、 xは-0.05~0.2の範囲である] による電極活物質を提供する工程と、 (b)前記電極活物質を、水中に分散又はスラリー化された無機アルミニウム化合物を含有する水性製剤で処理する工程と、 (c)水を分離する工程と、 (d)工程(c)から得られた物質を熱処理する工程と、 を含む、方法。」 である点で一致し、次の点で相違する。 [相違点1] 「電極活物質」について、本願発明では、「部分的にコーティングされた」ものであることを特定するのに対して、引用発明では、「コーティングされた」ものではあるものの、当該コーティングが「部分的」であるか否か定かではない点。 [相違点2] 「無機アルミニウム化合物」について、本願発明では、25℃で0.1g未満のアルミニウム化合物/lの水の溶解度を意味する「水不溶性」であることを特定するのに対して、引用発明では、アルミナ(Al2O3)ではあるものの、25℃で0.1g未満のアルミニウム化合物/lの水の溶解度を意味する「水不溶性」であるか否か定かではない点。 [相違点3] 「(c)水を分離する工程」について、本願発明では、「濾過により又は遠心分離機を用いて」実行することを特定するのに対して、引用発明では、混合物を撹拌しながら加熱して実行する点。 6.判断 上記相違点1ないし相違点3について検討する。 (1)相違点1について 引用文献1のFigure 5(c)、(h)から、Al2O3のコーティング層はLi(Ni0.6Co0.2Mn0.2)O2粉末の表面の全体を覆ってはおらず、一部分のみを覆っていることが見てとれる。そうすると、引用発明においても、Al2O3はLi(Ni0.6Co0.2Mn0.2)O2カソード材料を部分的にコーティングしているといえ、上記相違点1は、実質的な相違点ではない。 また、仮に、上記相違点1が実質的な相違点であったとしても、電極活物質を製造する際に、コーティング層の一部に欠落等が生じ、部分的なコーティング層が形成されることは、普通に起こり得ることであり、引用発明においても、Al2O3がLi(Ni0.6Co0.2Mn0.2)O2カソード材料を部分的にコーティングした態様となることに、格別の困難性は認められない。 (2)相違点2について 引用発明において、水性アルミナ(Al2O3)ゾルは、酸性水中でベーマイト(γ-AlO(OH))粉末をコロイド状態に分散することにより調製されるものであるところ、一般的にアルミナ(Al2O3)は水不溶性の物質であること、コロイドは水溶液を形成していないこと、及び、本願の明細書の段落【0027】には、水に対する溶解度が25℃で0.1g未満のアルミニウム化合物/lという条件を充足する無機アルミニウム化合物として、Al2O3、Al2O3・aq及びAlOOHが列記されていることに鑑みれば、引用発明においても、水性アルミナ(Al2O3)ゾルに含有される無機アルミニウム化合物は、25℃で0.1g未満のアルミニウム化合物/lの水の溶解度を意味する水不溶性であるといえ、上記相違点2は、実質的な相違点ではない。 (3)相違点3について 例えば、当審による拒絶の理由に引用された上記引用文献2(米国特許出願公開第2004/0258836号明細書)(特に、段落[0068]を参照)、更には、上記引用文献3(国際公開第2011/016334号)(特に、段落[0046]を参照)に記載されているように、電極活物質を製造する際に、濾過により、または、遠心分離機を用いて、水を分離することは、周知の技術事項であり、引用発明において、水を除去する際に、混合物を撹拌しながら加熱する代わりに、上記周知の技術事項を採用し、相違点3に係る構成とすることも当業者が容易に想到し得たことである。 よって、本願発明は、引用発明及び周知の技術事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 7.審判請求人の主張について (1)審判請求人は、令和7年2月17日に提出した意見書において、「これに対して、引用文献1に記載されるカソード材料のTMに相当する組成は、Ni0.6Co0.2Mn0.2にとどまると認められます。即ち、本願請求項1に係る発明における電極活物質は、引用文献1に記載のカソード材料と比較して、Ni含有割合がより高く、且つCo含有割合がより低いという点で、明確に相違するものと思料します。」などと主張している。 しかしながら、上記「5.(2)」に記載したとおり、引用発明における「Li(Ni0.6Co0.2Mn0.2)O2カソード材料」の構成元素として含まれるNi0.6Co0.2Mn0.2は、本願発明における一般式(I)による金属の組合せの一つに該当し(なお、この場合、a=0.6、b=0.2、c=0.2、d=0である。)、引用発明における「Li(Ni0.6Co0.2Mn0.2)O2カソード材料」は、本願発明における一般式Li1+xTM1-xO2による電極活物質に含まれるものである。 (2)また、審判請求人は、令和7年2月17日に提出した意見書において、「また、引用文献2は、LiCoO2をベースカソード活性材料としてカスタマイズしたものを開示しています。ここで、引用文献2で開示されている反応は、遷移金属がコバルトであるカソード活性材料(LiCoO2)では可能と思われますが、TMの少なくとも50モル%がニッケルである材料ではほとんどあり得ないと思料します。・・・。当業者であれば、引用文献2を引用文献1と組み合わせることを容易想到し得ないものと思料します。また他方で、引用文献3は、アルミニウム化合物の水溶液を用いた正極材料の処理に関するものであり、アルミニウム化合物の溶解性の重要性を強調していると認められます(引用文献3の段落[0028]~[0030])。当業者であれば、このような技術を開示する引用文献3を引用文献1と組み合わせることを容易想到しないものと思料します。」などと主張している。 しかしながら、上記「6.(3)」に記載したとおり、引用文献2及び3は、電極活物質を製造する際に、濾過により、または、遠心分離機を用いて、水を分離することは、周知の技術事項であることを示すために提示した文献に過ぎず、引用文献2におけるカソード活性材料(LiCoO2)や、引用文献3におけるアルミニウム化合物の水溶液を用いた正極材料を、引用発明におけるLi(Ni0.6Co0.2Mn0.2)O2カソード材料に適用することを意図したものではない。そして、本願の明細書には、水を分離する工程(c)において、濾過により又は遠心分離機を用いて実行することによる、水分が分離・除去されること以上の格別の効果は記載されておらず、また、引用発明において、水を除去する際に、混合物を撹拌しながら加熱する代わりに、上記周知の技術事項である濾過または遠心分離機を適用することに対する阻害要因も見当たらないことから、引用発明に上記周知の技術事項を適用し、上記相違点3に係る構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。 よって、審判請求人の上記主張は採用できない。 8.むすび 以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、引用文献1に記載された発明及び周知の技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、本願は、その余の請求項について検討するまでもなく、拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。

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2024-007678

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