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特許拒絶査定不服審判

2024-006867

走査型電子顕微鏡および走査型電子顕微鏡の2次電子検出方法

審判番号
2024-006867
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2023-094642
請求日
2024年04月23日
審決日
2026年03月30日
公報発行日
2026年06月26日
結論
請求不成立
当事者
  • 【請求人】株式会社ホロン
  • 【請求人代理人】岡田 守弘
審判長/審判官
  • 審判長 藤田 年彦
  • 審判官 波多江 進
  • 審判官 野村 伸雄
分類
P18 .561-WZ (H01J) / P18 .572-WZ (H01J) / P18 .574-WZ (H01J) / P18 .55 -WZ (H01J)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第17条の2第5項、特許法第17条の2第3項
データ出所
審決公報(XML)

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特願2023- 94642「走査型電子顕微鏡および走査型電子顕微鏡の2次電子検出方法」拒絶査定不服審判事件〔令和 5年 8月 8日出願公開、特開2023-110072〕について、次のとおり審決する。

結論

結 論 本件審判の請求は、成り立たない。

理由

理 由 第1 手続の経緯 本願は、令和元年9月20日に出願した特願2019-171588号の一部を令和5年6月8日に新たな特許出願としたものであって、その手続の経緯の概略は次のとおりである。 令和 6年 1月12日付け:拒絶理由通知書 同年 2月16日 :意見書、手続補正書の提出 同年 4月 1日付け:拒絶査定 (同月 9日 :原査定の謄本の送達) 同年 4月23日 :審判請求書、手続補正書の提出 令和 7年 7月 9日付け:拒絶理由通知書 同年 7月17日 :意見書、手続補正書の提出 同年12月 8日付け:拒絶理由通知書(最後)(以下、この拒絶理由通知書で通知された拒絶理由を「当審拒絶理由」という。) 同年12月15日 :応対記録 同年12月23日 :意見書、手続補正書の提出 第2 令和7年12月23日にされた手続補正についての補正の却下の決定 [補正の却下の決定の結論] 令和7年12月23日にされた手続補正を却下する。 [補正の却下の決定の理由] 1 本件補正の内容 令和7年12月23日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)は、特許請求の範囲についてする補正であって、本件補正前(令和7年7月17日にされた手続補正後)の特許請求の範囲の請求項1~6及び本件補正後の特許請求の範囲の請求項1~6の記載は、それぞれ次の(1)及び(2)に示すとおりである。下線は補正箇所を示す。 (1) 本件補正前 「【請求項1】 1次電子をサンプルに照射し、該サンプルから放出された2次電子を検出して該サンプルの2次電子画像を生成する走査型電子顕微鏡において、 1次電子を生成して加速する1次電子照射系と、 前記1次電子照射系で生成された1次電子について、偏向に伴って該1次電子を分散させる第1制御装置と、 前記第1制御装置で偏向された1次電子を逆方向に偏向するに伴って該1次電子を逆分散して前記分散の無い1次電子の状態に戻し、かつ結像系の軸に一致させてサンプルに照射させると共に、該サンプルから放出された2次電子を前記1次電子と逆方向に偏向に伴って該2次電子を分散させる、少なくとも磁界で構成し、前記1次電子の走路と前記2次電子の走路とを軸対称に構成した第2制御装置と、 前記第2制御装置で偏向されて結像系の軸に一致させた後の前記1次電子を細く絞ってサンプルに照射すると共に、サンプルから放出された2次電子を前記第2制御装置に入射させる対物レンズからなる結像系と、 前記第2制御装置で偏向に伴って分散される前記2次電子を、該第2制御装置の偏向方向と逆方向に偏向するに伴って該2次電子を逆分散して前記分散の無い2次電子の状態に戻し、前記第2制御装置における1次電子の走路と該第3制御装置における2次電子の走路とを軸対称に構成した第3制御装置と、 前記第3制御装置で偏向に伴って逆分散して分散の無い2次電子に戻して検出する2次電子検出系とを備え、 前記偏向に伴って分散される前記1次電子および前記2次電子の走路をそれぞれ軸対称にし、かつそれぞれ逆分散して分散の無い1次電子および2次電子の状態にそれぞれ戻し、前記1次電子および前記2次電子を分散させることなくあるいは分散を低減させる、 ことを特徴とする走査型電子顕微鏡。 【請求項2】 前記第1制御装置および前記第3制御装置は、磁界あるいは電界あるいは磁界と電界の4極以上を有する偏向装置としたことを特徴とする請求項1に記載の走査型電子顕微鏡。 【請求項3】 前記第2制御装置は、磁界と電界の各4極以上を有し、前記1次電子の進行方向と逆方向の前記2次電子を分離することを特徴とする請求項1から請求項2のいずれかに記載の走査型電子顕微鏡。 【請求項4】 前記サンプルと対物レンズの先端部分との間にリターディング電圧を印加し、サンプルに低加速電圧の1次電子にして照射したことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の走査型電子顕微鏡。 【請求項5】 前記対物レンズの部分に隔膜を設けて、該隔膜を境にサンプル側を低真空、反対側を高真空に保持したことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載の走査型電子顕微鏡。 【請求項6】 1次電子をサンプルに照射し、該サンプルから放出された2次電子を検出して該サンプルの2次電子画像を生成する走査型電子顕微鏡の2次電子検出方法において、 1次電子を生成して加速する1次電子照射系と、 前記1次電子照射系で生成された1次電子について、偏向に伴って該1次電子を分散させる第1制御装置と、 前記第1制御装置で偏向された1次電子を逆方向に偏向するに伴って該1次電子を逆分散して前記分散の無い1次電子の状態に戻し、かつ結像系の軸に一致させてサンプルに照射させると共に、該サンプルから放出された2次電子を前記1次電子と逆方向に偏向に伴って該2次電子を分散させる、少なくとも磁界で構成し、前記1次電子の走路と前記2次電子の走路とを軸対称に構成した第2制御装置と、 前記第2制御装置で偏向されて結像系の軸に一致させた後の前記1次電子を細く絞ってサンプルに照射すると共に、サンプルから放出された2次電子を前記第2制御装置に入射させる対物レンズからなる結像系と、 前記第2制御装置で偏向に伴って分散される前記2次電子を、該第2制御装置の偏向方向と逆方向に偏向するに伴って該2次電子を逆分散して前記分散の無い2次電子の状態に戻し、前記第2制御装置における1次電子の走路と該第3制御装置における2次電子の走路とを軸対称に構成した第3制御装置と、 前記第3制御装置で偏向に伴って逆分散して分散の無い2次電子に戻して検出する2次電子検出系とを設け、 前記偏向に伴って分散される前記1次電子および前記2次電子の走路をそれぞれ軸対称にし、かつそれぞれを逆分散して分散の無い1次電子および2次電子の状態にそれぞれ戻し、前記1次電子および前記2次電子を分散させることなくあるいは分散を低減させる、 ことを特徴とする走査型電子顕微鏡の2次電子検出方法」 (2) 本件補正後 「【請求項1】 1次電子をサンプルに照射し、該サンプルから放出された2次電子を検出して該サンプルの2次電子画像を生成する走査型電子顕微鏡において、 1次電子を生成して加速する1次電子照射系と、 前記1次電子照射系で生成された1次電子について、偏向に伴って該1次電子を分散させる第1制御装置と、 前記第1制御装置で偏向された1次電子を逆方向に偏向するに伴って該1次電子を逆分散して前記分散の無い1次電子の状態に戻し、かつ結像系の軸に一致させてサンプルに照射させると共に、該サンプルから放出された2次電子を前記1次電子と逆方向に偏向に伴って該2次電子を分散させる、少なくとも磁界で構成し、前記1次電子の軌道と前記2次電子の軌道とを互いに略対称に配置しかつ通過する電子が互いに逆になるようにした第2制御装置と、 前記第2制御装置で偏向されて結像系の軸に一致させた後の前記1次電子を細く絞ってサンプルに照射すると共に、サンプルから放出された2次電子を前記第2制御装置に入射させる対物レンズからなる結像系と、 前記第2制御装置で偏向に伴って分散される前記2次電子を、該第2制御装置の偏向方向と逆方向に偏向するに伴って該2次電子を逆分散して前記分散の無い2次電子の状態に戻し、前記第2制御装置における1次電子の軌道と2次電子の軌道とを互いに略対称に配置しかつ通過する電子が互いに逆になるようにした、第3制御装置と、 前記第3制御装置で偏向に伴って逆分散して分散の無い2次電子に戻して検出する2次電子検出系とを備え、 前記偏向に伴って分散される前記1次電子の軌道と前記2次電子の軌道とを互いに略対称に配置しかつ通過する電子が互いに逆になるようにし、かつそれぞれ逆分散して分散の無い1次電子および2次電子の状態にそれぞれ戻し、前記1次電子および前記2次電子を分散させることなくあるいは分散を低減させる、 ことを特徴とする走査型電子顕微鏡。 【請求項2】 前記第1制御装置および前記第3制御装置は、磁界あるいは電界あるいは磁界と電界の4極以上を有する偏向装置としたことを特徴とする請求項1に記載の走査型電子顕微鏡。 【請求項3】 前記第2制御装置は、磁界と電界の各4極以上を有し、前記1次電子の進行方向と逆方向の前記2次電子を分離することを特徴とする請求項1から請求項2のいずれかに記載の走査型電子顕微鏡。 【請求項4】 前記サンプルと対物レンズの先端部分との間にリターディング電圧を印加し、サンプルに低加速電圧の1次電子にして照射したことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の走査型電子顕微鏡。 【請求項5】 前記対物レンズの部分に隔膜を設けて、該隔膜を境にサンプル側を低真空、反対側を高真空に保持したことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載の走査型電子顕微鏡。 【請求項6】 1次電子をサンプルに照射し、該サンプルから放出された2次電子を検出して該サンプルの2次電子画像を生成する走査型電子顕微鏡の2次電子検出方法において、 1次電子を生成して加速する1次電子照射系と、 前記1次電子照射系で生成された1次電子について、偏向に伴って該1次電子を分散させる第1制御装置と、 前記第1制御装置で偏向された1次電子を逆方向に偏向するに伴って該1次電子を逆分散して前記分散の無い1次電子の状態に戻し、かつ結像系の軸に一致させてサンプルに照射させると共に、該サンプルから放出された2次電子を前記1次電子と逆方向に偏向に伴って該2次電子を分散させる、少なくとも磁界で構成し、前記1次電子の軌道と前記2次電子の軌道とを互いに対称に配置しかつ通過する電子が互いに逆になるようにした第2制御装置と、 前記第2制御装置で偏向されて結像系の軸に一致させた後の前記1次電子を細く絞ってサンプルに照射すると共に、サンプルから放出された2次電子を前記第2制御装置に入射させる対物レンズからなる結像系と、 前記第2制御装置で偏向に伴って分散される前記2次電子を、該第2制御装置の偏向方向と逆方向に偏向するに伴って該2次電子を逆分散して前記分散の無い2次電子の状態に戻し、前記第2制御装置における1次電子の軌道と2次電子の軌道とを互いに略対称に配置しかつ通過する電子が互いに逆になるようにした、第3制御装置と、 前記第3制御装置で偏向に伴って逆分散して分散の無い2次電子に戻して検出する2次電子検出系とを設け、 前記偏向に伴って分散される前記1次電子の軌道と前記2次電子の軌道とを互いに略対称に配置しかつ通過する電子が互いに逆になるようにし、かつそれぞれを逆分散して分散の無い1次電子および2次電子の状態にそれぞれ戻し、前記1次電子および前記2次電子を分散させることなくあるいは分散を低減させる、 ことを特徴とする走査型電子顕微鏡の2次電子検出方法。」 2 本件補正の適否について (1) 本件補正の目的について ア 請求項1、6について 本件補正で請求項1、6(これらの請求項は独立項に係るものである。)についてする補正は、次の補正事項(i)~(iii)からなるものである。 (i) 本件補正前の請求項1、6に記載した発明を特定するために必要な事項(以下「発明特定事項」という。)である「第2制御装置」について、「前記1次電子の走路と前記2次電子の走路とを軸対称に構成した」ものであったのを、「前記1次電子の軌道と前記2次電子の軌道とを互いに略対称に配置しかつ通過する電子が互いに逆になるようにした」ものと補正する補正事項。 (ii) 本件補正前の請求項1、6に記載した発明特定事項である「第3制御装置」について、「前記第2制御装置における1次電子の走路と該第3制御装置における2次電子の走路とを軸対称に構成した」ものであったのを、「前記第2制御装置における1次電子の軌道と2次電子の軌道とを互いに略対称に配置しかつ通過する電子が互いに逆になるようにした」ものと補正する補正事項。 (iii) 本件補正前の請求項1、6に記載した発明特定事項である「走査型電子顕微鏡」又は「走査型電子顕微鏡の2次電子検出方法」について、「前記1次電子および前記2次電子の走路をそれぞれ軸対称に[する]」ものであったのを、「前記1次電子の軌道と前記2次電子の軌道とを互いに略対称に配置しかつ通過する電子が互いに逆になるように[する]」ものと補正する補正事項。 これらの補正事項のうち、前記(ii)の補正事項の目的について検討すると、本件補正前は、対称に構成又は配置される2次電子の走路又は軌道が「第3制御装置における」2次電子であったものを、「第2制御装置における」2次電子に変更するものであり、本件補正前の請求項1、6に記載した発明特定事項を限定するものとはいえないから、本件補正で請求項1、6についてする補正は、特許法17条の2第5項2号に掲げる特許請求の範囲の限定的減縮を目的とするものではない。 また、前記(ii)の補正事項により第3制御装置が明確になるとはいえないことから、本件補正で請求項1、6についてする補正は、同項4号に掲げる明りょうでない記載の釈明を目的としたものでもない。 さらに、本件補正で請求項1、6についてする補正は、同項1号に掲げる請求項の削除、同項3号に掲げる誤記の訂正を目的とするものでもないことは明らかである。 イ 請求人の主張について 請求人は、本件補正は、不明瞭な記載を明瞭にし、構成要素を限定したものであって、下位概念であり、減縮に相当する旨主張しているが、本件補正が、特許請求の範囲の限定的減縮を目的とするものではなく、明りょうでない記載の釈明を目的とするものでもないことは、前記アで検討したとおりである。 ウ 小括 以上のとおりであるから、本件補正で特許請求の範囲の請求項1、6についてする補正は、特許法17条の2第5項各号に掲げるいずれの事項を目的とするものにも該当せず、同項の規定に違反するものである。 (2) 新規事項の追加について ア 第2制御装置について (ア) 本件補正により、本件補正後の請求項1、6の「第2制御装置」が、「前記1次電子の軌道と前記2次電子の軌道とを互いに略対称に配置しかつ通過する電子が互いに逆になるようにした」ものであること(以下「電子軌道対称構成」という。)が特定されることとなった(前記(1)アの(i))。 しかしながら、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「当初明細書等」という。)には、電子軌道対称構成について、明示的な記載はない。 (イ) 次に、当初明細書等には、電子軌道対称構成に関連する記載として、次の記載がある。 「【0203】 以上によって、図1、図2の構成のもとで、第1偏向装置4、第2偏向装置5、第3偏向装置6の電界、磁界による回転方向を実験で求めた初期値に初期設定し、これから偏向器を通過して検出される2次電子の量が最大となるように電界、磁界の対向する極の強さなどを加減して回転方向を調整することにより、第1偏向装置4、第2偏向装置5、第3偏向装置6の電圧、磁界による回転方向を最適に調整することが可能となる。原理の上では偏向装置を本来の電子ビーム軌道に対してお互いに対称に配置してかつ通過する電子ビームが出来るだけ同じようにかつお互いに逆に成るように調節すると収差を最も小さくすることが出来る。」 また、【図1】は次のとおりである。 「【図1】 [図:0001435583000001.jpg] 」 (ウ) 前記(イ)の記載と技術常識を踏まえて、電子軌道対称構成が当初明細書等の記載から自明な事項であるであるか否かについて検討する。 まず、【0203】には「通過する電子ビームが出来るだけ同じようにかつお互いに逆に成るように調節する」との記載があり、【図1】には、第2制御装置に対応する第2偏向装置において、1次電子の軌道と2次電子の軌道が略対称であるように図示されている。 しかしながら、【図1】は原理構成図であり(【0040】)、【図1】中の矢印は正確な電子の軌道を表すものではない。また、第2偏向装置においては、同一の電界及び磁界内を1次電子と2次電子が逆向きに進行するところ、1次電子と2次電子のエネルギー及びその分散は大きく異なることが技術常識であるから(このことは、本願の明細書【0027】~【0029】にも記載されているとおりである。)、電子軌道対称構成で特定されるように、1次電子の軌道と2次電子の軌道が略対称に配置されるとは考えがたい。したがって、電子軌道対称構成が、当初明細書等の記載から自明な事項であるとはいえない。 なお、【0203】の「偏向装置を本来の電子ビーム軌道に対してお互いに対称に配置して」との記載は、偏向装置の配置が対称である旨の記載であり、偏向装置の配置が対称であることが、必ずしも電子軌道対称構成のように電子の軌道が対称であることを意味しないことは上述のとおりである。 (エ) このように、電子軌道対称構成は、当初明細書等に記載されておらず、当初明細書等の記載から当業者に自明な事項であるとも認められないから、電子軌道対称構成を特定する本件補正は、当初明細書等の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものである。 イ 第3制御装置について 本件補正により、本件補正後の請求項1、6の「第3制御装置」が、「前記第2制御装置における1次電子の軌道と2次電子の軌道とを互いに略対称に配置しかつ通過する電子が互いに逆になるようにした」ものであるとの事項が特定されることとなったが(前記(1)アの(ii))、そのような事項は、明らかに当初明細書等には記載されておらず、当初明細書等の記載から自明な事項でないこともまた明らかである。 すなわち、第3制御装置の構成は、第2制御装置における電子の軌道とは本質的に無関係であるから、前記事項が当初明細書等に開示されているとは到底考えられない。 したがって、前記事項を特定する本件補正は、当初明細書等の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものである。 ウ 走査型電子顕微鏡について 本件補正後の請求項1、6において、「走査型電子顕微鏡」又は「走査型電子顕微鏡の2次電子検出方法」が「前記1次電子の軌道と前記2次電子の軌道とを互いに略対称に配置しかつ通過する電子が互いに逆になるように[する]」ことを追加する補正(前記(1)アの(iii))についても、前記アと同様の理由により、当初明細書等の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものである。 エ 請求人の主張について 請求人は、電子軌道対称構成は、当初明細書等の【0203】、【図1】に記載されている旨主張しているが、これらの記載については前記ア(ウ)で検討したとおりである。なお、請求人は、前記イの第3制御装置に関する補正について、補正の根拠を何ら説明していない。 オ 小括 以上のとおり、本件補正は、当初明細書等の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものであるから、新規事項を追加するものである。したがって、本件補正は、当初明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものではない。 (3) 本件補正の適否についてのまとめ 前記(1)で検討したとおり、本件補正で特許請求の範囲についてする補正は、特許法17条の2第5項各号に掲げるいずれの事項を目的とするものにも該当せず、同項の規定に違反するものである。 また、前記(2)で検討したとおり、本件補正は、当初明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものではないから、同条3項の規定に違反するものである。 したがって、本件補正は、同法159条1項で読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下されるべきものである。 よって、前記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。 第3 先の補正について 1 当審拒絶理由の概要 本件補正前に通知された当審拒絶理由の概要は、次のとおりである。 (新規事項)令和7年7月17日にされた手続補正(以下「先の補正」という。)は、当初明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものでないから、特許法17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。 2 先の補正の内容 先の補正は、特許請求の範囲についてする補正であって、先の補正前(令和6年4月23日にされた手続補正後)の特許請求の範囲の請求項1~6の記載及び先の補正後の特許請求の範囲の請求項1~6の記載(前記第2の1(1)に示した本件補正前のものであるが、再掲する。)は、それぞれ次の(1)及び(2)に示すとおりである。下線は補正箇所を示す。 (1) 先の補正前 「【請求項1】 1次電子をサンプルに照射し、該サンプルから放出された2次電子を検出して該サンプルの2次電子画像を生成する走査型電子顕微鏡において、 1次電子を生成して加速する1次電子照射系と、 前記1次電子照射系で生成された1次電子について、偏向に伴って該1次電子を分散させる第1制御装置と、 前記第1制御装置で偏向された1次電子を逆方向に偏向するに伴って該1次電子を逆分散して前記分散の無い1次電子の状態に戻し、かつ結像系の軸に一致させてサンプルに照射させると共に、該サンプルから放出された2次電子を前記1次電子と逆方向に偏向に伴って該2次電子を分散させる、少なくとも磁界で構成される第2制御装置と、 前記第2制御装置で偏向されて結像系の軸に一致させた後の前記1次電子を細く絞ってサンプルに照射すると共に、サンプルから放出された2次電子を前記第2制御装置に入射させる対物レンズからなる結像系と、 前記第2制御装置で偏向に伴って分散される前記2次電子を、該第2制御装置の偏向方向と逆方向に偏向するに伴って該2次電子を逆分散して前記分散の無い2次電子の状態に戻す第3制御装置と、 前記第3制御装置で偏向に伴って逆分散して分散の無い2次電子に戻して検出する2次電子検出系とを備え、 前記偏向に伴って分散される前記1次電子および前記2次電子をそれぞれ逆分散して分散の無い1次電子および2次電子の状態にそれぞれ戻し、前記1次電子および前記2次電子を分散させることなくあるいは分散を低減させる、 ことを特徴とする走査型電子顕微鏡。 【請求項2】 前記第1制御装置および前記第3制御装置は、磁界あるいは電界あるいは磁界と電界の4極以上を有する偏向装置としたことを特徴とする請求項1に記載の走査型電子顕微鏡。 【請求項3】 前記第2制御装置は、磁界と電界の各4極以上を有し、前記1次電子の進行方向と逆方向の前記2次電子を分離することを特徴とする請求項1から請求項2のいずれかに記載の走査型電子顕微鏡。 【請求項4】 前記サンプルと対物レンズの先端部分との間にリターディング電圧を印加し、サンプルに低加速電圧の1次電子にして照射したことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の走査型電子顕微鏡。 【請求項5】 前記対物レンズの部分に隔膜を設けて、該隔膜を境にサンプル側を低真空、反対側を高真空に保持したことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載の走査型電子顕微鏡。 【請求項6】 1次電子をサンプルに照射し、該サンプルから放出された2次電子を検出して該サンプルの2次電子画像を生成する走査型電子顕微鏡の2次電子検出方法において、 1次電子を生成して加速する1次電子照射系と、 前記1次電子照射系で生成された1次電子について、偏向に伴って該1次電子を分散させる第1制御装置と、 前記第1制御装置で偏向された1次電子を逆方向に偏向するに伴って該1次電子を逆分散して前記分散の無い1次電子の状態に戻し、かつ結像系の軸に一致させてサンプルに照射させると共に、該サンプルから放出された2次電子を前記1次電子と逆方向に偏向に伴って該2次電子を分散させる、少なくとも磁界で構成される第2制御装置と、 前記第2制御装置で偏向されて結像系の軸に一致させた後の前記1次電子を細く絞ってサンプルに照射すると共に、サンプルから放出された2次電子を前記第2制御装置に入射させる対物レンズからなる結像系と、 前記第2制御装置で偏向に伴って分散される前記2次電子を、該第2制御装置の偏向方向と逆方向に偏向するに伴って該2次電子を逆分散して前記分散の無い2次電子の状態に戻す第3制御装置と、 前記第3制御装置で偏向に伴って逆分散して分散の無い2次電子に戻して検出する2次電子検出系とを設け、 前記偏向に伴って分散される前記1次電子および前記2次電子をそれぞれ逆分散して分散の無い1次電子および2次電子の状態にそれぞれ戻し、前記1次電子および前記2次電子を分散させることなくあるいは分散を低減させる、 ことを特徴とする走査型電子顕微鏡の2次電子検出方法。」 (2) 先の補正後 「【請求項1】 1次電子をサンプルに照射し、該サンプルから放出された2次電子を検出して該サンプルの2次電子画像を生成する走査型電子顕微鏡において、 1次電子を生成して加速する1次電子照射系と、 前記1次電子照射系で生成された1次電子について、偏向に伴って該1次電子を分散させる第1制御装置と、 前記第1制御装置で偏向された1次電子を逆方向に偏向するに伴って該1次電子を逆分散して前記分散の無い1次電子の状態に戻し、かつ結像系の軸に一致させてサンプルに照射させると共に、該サンプルから放出された2次電子を前記1次電子と逆方向に偏向に伴って該2次電子を分散させる、少なくとも磁界で構成し、前記1次電子の走路と前記2次電子の走路とを軸対称に構成した第2制御装置と、 前記第2制御装置で偏向されて結像系の軸に一致させた後の前記1次電子を細く絞ってサンプルに照射すると共に、サンプルから放出された2次電子を前記第2制御装置に入射させる対物レンズからなる結像系と、 前記第2制御装置で偏向に伴って分散される前記2次電子を、該第2制御装置の偏向方向と逆方向に偏向するに伴って該2次電子を逆分散して前記分散の無い2次電子の状態に戻し、前記第2制御装置における1次電子の走路と該第3制御装置における2次電子の走路とを軸対称に構成した第3制御装置と、 前記第3制御装置で偏向に伴って逆分散して分散の無い2次電子に戻して検出する2次電子検出系とを備え、 前記偏向に伴って分散される前記1次電子および前記2次電子の走路をそれぞれ軸対称にし、かつそれぞれ逆分散して分散の無い1次電子および2次電子の状態にそれぞれ戻し、前記1次電子および前記2次電子を分散させることなくあるいは分散を低減させる、 ことを特徴とする走査型電子顕微鏡。 【請求項2】 前記第1制御装置および前記第3制御装置は、磁界あるいは電界あるいは磁界と電界の4極以上を有する偏向装置としたことを特徴とする請求項1に記載の走査型電子顕微鏡。 【請求項3】 前記第2制御装置は、磁界と電界の各4極以上を有し、前記1次電子の進行方向と逆方向の前記2次電子を分離することを特徴とする請求項1から請求項2のいずれかに記載の走査型電子顕微鏡。 【請求項4】 前記サンプルと対物レンズの先端部分との間にリターディング電圧を印加し、サンプルに低加速電圧の1次電子にして照射したことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の走査型電子顕微鏡。 【請求項5】 前記対物レンズの部分に隔膜を設けて、該隔膜を境にサンプル側を低真空、反対側を高真空に保持したことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載の走査型電子顕微鏡。 【請求項6】 1次電子をサンプルに照射し、該サンプルから放出された2次電子を検出して該サンプルの2次電子画像を生成する走査型電子顕微鏡の2次電子検出方法において、 1次電子を生成して加速する1次電子照射系と、 前記1次電子照射系で生成された1次電子について、偏向に伴って該1次電子を分散させる第1制御装置と、 前記第1制御装置で偏向された1次電子を逆方向に偏向するに伴って該1次電子を逆分散して前記分散の無い1次電子の状態に戻し、かつ結像系の軸に一致させてサンプルに照射させると共に、該サンプルから放出された2次電子を前記1次電子と逆方向に偏向に伴って該2次電子を分散させる、少なくとも磁界で構成し、前記1次電子の走路と前記2次電子の走路とを軸対称に構成した第2制御装置と、 前記第2制御装置で偏向されて結像系の軸に一致させた後の前記1次電子を細く絞ってサンプルに照射すると共に、サンプルから放出された2次電子を前記第2制御装置に入射させる対物レンズからなる結像系と、 前記第2制御装置で偏向に伴って分散される前記2次電子を、該第2制御装置の偏向方向と逆方向に偏向するに伴って該2次電子を逆分散して前記分散の無い2次電子の状態に戻し、前記第2制御装置における1次電子の走路と該第3制御装置における2次電子の走路とを軸対称に構成した第3制御装置と、 前記第3制御装置で偏向に伴って逆分散して分散の無い2次電子に戻して検出する2次電子検出系とを設け、 前記偏向に伴って分散される前記1次電子および前記2次電子の走路をそれぞれ軸対称にし、かつそれぞれを逆分散して分散の無い1次電子および2次電子の状態にそれぞれ戻し、前記1次電子および前記2次電子を分散させることなくあるいは分散を低減させる、ことを特徴とする走査型電子顕微鏡の2次電子検出方法。」 3 当合議体の判断 (1) 判断の概要 当合議体は、以下に示すとおり、当審拒絶理由は妥当なものであり、先の補正は、当初明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものではない、と判断する。 (2) 判断の詳細な説明 ア 第2制御装置について 先の補正により、先の補正後の請求項1、6の「第2制御装置」が、「前記1次電子の走路と前記2次電子の走路とを軸対称に構成した」ものであること(以下「電子走路軸対称構成」という。)が特定されることとなった。 しかしながら、前記第2の2(2)アで電子軌道対称構成について検討したのと同様の理由により、電子走路軸対称構成は、当初明細書等に記載されておらず、当初明細書等の記載から当業者に自明な事項であるとも認められないから、電子走路軸対称構成を特定する先の補正は、当初明細書等の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものである。 イ 第3制御装置について 先の補正により、先の補正後の請求項1、6の「第3制御装置」が、「前記第2制御装置における1次電子の走路と該第3制御装置における2次電子の走路とを軸対称に構成した」ものであるとの事項が特定されることとなったが、そのような事項は、明らかに当初明細書等には記載されておらず、当初明細書等の記載から自明な事項でないこともまた明らかである。 したがって、前記事項を特定する先の補正は、当初明細書等の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものである。 ウ 走査型電子顕微鏡について 先の補正後の請求項1、6において、「走査型電子顕微鏡」又は「走査型電子顕微鏡の2次電子検出方法」が「前記1次電子および前記2次電子の走路をそれぞれ軸対称に[する]」ことを追加する補正についても、前記アと同様の理由により、当初明細書等の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものである。 エ 小括 以上のとおり、先の補正は、当初明細書等の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものであるから、新規事項を追加するものである。したがって、先の補正は、当初明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものではない。 第4 むすび 以上のとおり、令和7年7月17日提出の手続補正書でした補正は、特許法17条の2第3項に規定する要件を満たしておらず、同法49条1号に該当するから、本願は拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。

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2024-006867

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