特許拒絶査定不服審判
2024-005953
冷凍サイクル装置
- 審判番号
- 2024-005953
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2023-058393
- 請求日
- 2024年04月09日
- 審決日
- 2025年09月08日
- 公報発行日
- 2025年11月28日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】ダイキン工業株式会社
- 【請求人代理人】弁理士法人前田特許事務所
- 審判長/審判官
- 審判長 平瀬 知明
- 審判官 水野 治彦
- 審判官 鈴木 充
- 分類
- P18 .113-Z (F24F) / P18 .55 -Z (F24F) / P18 .572-Z (F24F)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条1項3号
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第17条の2第5項、特許法第17条の2第5項第2号、特許法第17条の2第3項、特許法第17条の2第5項第1号、特許法第29条、特許法第29条第1項第3号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2023-58393「冷凍サイクル装置」拒絶査定不服審判事件〔令和5年10月17日出願公開、特開2023-153086〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、令和5年3月31日(優先権主張令和4年3月31日)の出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。
令和5年 6月 7日付け:拒絶理由通知書
同年10月11日 :意見書、手続補正書の提出
同年12月27日付け:拒絶査定
令和6年 4月 9日 :審判請求書、手続補正書の提出
同年 9月25日 :上申書の提出
第2 令和6年4月9日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和6年4月9日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
1.本件補正について
(1)本件補正前の令和5年10月11日の手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1の記載は次のとおりである。
「【請求項1】
圧縮機(30)と、前記圧縮機(30)が接続された冷媒回路(2)と、を備えた冷凍サイクル装置であって、
前記圧縮機(30)を支持する第1防振部材(41)と、
前記第1防振部材(41)を支持する第1支持部材(51)と、
前記第1支持部材(51)を支持する第2防振部材(42)と、
前記第2防振部材(42)を支持する第2支持部材(52)と、
前記圧縮機(30)を覆う防音箱(60)と、を備え、
前記防音箱(60)は、前記第2支持部材(52)に支持され、
前記第1支持部材(51)と前記第2支持部材(52)との間には、隙間が設けられている冷凍サイクル装置。」
(2)そして、本件補正により、本件補正前の特許請求の範囲の請求項1の記載は以下のとおり補正された(下線は、補正箇所である。)。
「【請求項1】
圧縮機(30)と、前記圧縮機(30)が接続された冷媒回路(2)と、を備えた冷凍サイクル装置であって、
前記圧縮機(30)を支持する第1防振部材(41)と、
前記第1防振部材(41)を支持する第1支持部材(51)と、
前記第1支持部材(51)を支持する第2防振部材(42)と、
前記第2防振部材(42)を支持する第2支持部材(52)と、
前記圧縮機(30)を覆う防音箱(60)と、を備え、
前記防音箱(60)は、前記第2支持部材(52)に支持され、
前記第1支持部材(51)と前記第2支持部材(52)とは、間隔をあけて配置され、
前記第1支持部材(51)と前記第2支持部材(52)との間には、隙間が設けられている冷凍サイクル装置。」
2.補正の適否
(1)特許法第17条の2第5項の検討
本件補正は、本件補正前の請求項1に対し「前記第1支持部材(51)と前記第2支持部材(52)とは、間隔をあけて配置され」との事項(以下「本件補正事項」という。)によって補正をするものである。そこで、本件補正が、特許法第17条の2第5項に掲げる事項を目的とするものかについて検討する。
ア 特許法第17条の2第5項第2号の検討
請求人は審判請求書の3.(1)において、
『本願の請求項1の発明について、「第1支持部材(51)と第2支持部材(52)とは、間隔をあけて配置され、第1支持部材(51)と第2支持部材(52)との間には、隙間が設けられている」ことが明確となるようにしました。
この補正の根拠は、本願の出願当初の図面の図2、図3等にあります。
今般の補正は、特許請求の範囲の減縮(限定的減縮)を目的とするものであり適法な補正であると思料します。』
と主張している。
そこで、本件補正が、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる事項(特許請求の範囲の減縮)を目的とするものといえるかについて検討する。
(ア)本件補正事項の技術事項
請求人は、本件補正の根拠は、本願の出願当初の図面の図2、図3等である旨主張する。ここで、本願の出願当初の図2及び図3は次のとおりのものである。
あ 「【図2】
[図:0001428688000001.jpg]
」
い 「【図3】
[図:0001428688000002.jpg]
」
そして、図2及び図3に関し、出願当初の本願明細書には次のとおり記載されている。
う 「【0035】
〈室外ユニットの内部構成〉
図2に示すように、室外ユニット(20)は、本体ケーシング(27)を有する。本体ケーシング(27)は、箱状に形成される。本体ケーシング(27)の内部には、仕切部材(28)が立設して配置される。仕切部材(28)は、本体ケーシング(27)の内部を、機械室(S1)と、送風機室(S2)と、に仕切る。
【0036】
機械室(S1)は、本体ケーシング(27)の内部における仕切部材(28)よりも図2で右側の空間である。機械室(S1)には、圧縮機(30)と、水熱交換器(15)と、四方切換弁(24)と、アキュムレータ(25)と、配管(26)と、が配置される。
【0037】
送風機室(S2)は、本体ケーシング(27)の内部における仕切部材(28)よりも図2で左側の空間である。送風機室(S2)には、室外ファン(22)と、室外熱交換器(21)と、が配置される。」
え 「【0038】
〈圧縮機の配置〉
図3に示すように、圧縮機(30)は、支持脚(31)を有する。支持脚(31)は、複数の第1防振部材(41)に支持される。第1防振部材(41)は、例えば、ゴム又はウレタンで構成される。第1防振部材(41)は、第1支持部材(51)に支持される。第1支持部材(51)は、複数の第2防振部材(42)に支持される。
【0039】
第2防振部材(42)は、例えば、ゴム又はウレタンで構成される。第1防振部材(41)の材料及びバネ定数と、第2防振部材(42)の材料及びバネ定数とは、互いに同一であってもよいし、異なっていてもよい。第2防振部材(42)は、第2支持部材(52)に支持される。図3に示す例では、第2支持部材(52)は、本体ケーシング(27)の底板である。これにより、冷凍サイクル装置(1)の運転中に圧縮機(30)が振動しても、その振動は、第2支持部材(52)に伝達される前に、第1防振部材(41)及び第2防振部材(42)で減衰される。」
「あ」ないし「え」の図示事項及び記載事項から、本件補正事項に係る技術事項は、
「第2支持部材52に支持されている複数の第2防振部材42により第1支持部材51が支持され、これにより、第1支持部材51と第2支持部材52との間に圧縮機30からの振動が第2防振部材42で減衰される間隔を備えること」と理解できる。
(イ)本件補正前の請求項1の発明特定事項
本件補正前の請求項1は、1(1)の記載されたとおりのものであって、「前記第1支持部材(51)と前記第2支持部材(52)との間には、隙間が設けられている」との発明特定事項を備えている。
そして、当該発明特定事項は、令和5年10月11日の意見書の2.における『本願の新たな請求項1では、「第1支持部材(51)と第2支持部材(52)との間には、隙間が設けられている」ことが明確となるようにしました。この事項は、出願当初の図面の図3等に記載されています。
以上のように、上述した特許請求の範囲の補正は、出願当初の本願明細書に記載された事項の範囲内で行うものです。したがって、同日付の手続補正書において行った補正は、特許法第17条の2第3項に規定された要件を満たします。』との主張から、当該発明特定事項は、本願の出願当初の図3等に記載又は図示される技術事項を備えると理解できる。
ここで、本願の出願当初の図3である(ア)「い」の図示事項及び図3に関する記載である(ア)「え」の記載事項から、当該発明特定事項が備える技術事項は、次のものと理解できる。
「第2支持部材52に支持されている複数の第2防振部材42により第1支持部材51が支持され、これにより、第1支持部材51と第2支持部材52との間に圧縮機30からの振動が第2防振部材42で減衰される隙間を設けること」
(ウ)本件補正事項と(イ)に係る本件補正前の請求項1の発明特定事項との対比
本件補正事項と(イ)に係る本件補正前の請求項1の発明特定事項とを対比すると、両者が備える技術事項は、いずれも「第2支持部材52に支持されている複数の第2防振部材42により第1支持部材51が支持され、これにより、第1支持部材51と第2支持部材52との間に圧縮機30からの振動が第2防振部材42で減衰される」、「空間」を有するものであって、その技術的な意味内容に違いはない。
そうすると、本件補正事項は、(イ)に係る本件補正前の請求項1の発明特定事項を繰り返し記載したものであって、本件補正前の請求項1に記載されるいずれかの発明特定事項を減縮したものとはいえない。
(エ)まとめ
したがって、本件補正は、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものでない。
イ 特許法第17条の2第5項第1号、第3号及び第4号の検討
本件補正は、同項1号に掲げる「請求項の削除」、同項3号に掲げる「誤記の訂正」にも、同項4号に掲げる「明りょうでない記載の釈明」を目的としたものにも該当しない。
ウ 小括
したがって、本件補正は、特許法17条の2第5項各号に掲げるいずれの目的にも該当しない。
(2)特許法第17条の2第3項に関する予備的検討
本件補正事項に係る技術事項と本件補正前の請求項1の発明特定事項に係る技術事項との間の技術的な意味内容に違いがないことは(1)ア(ウ)において述べたとおりであるが、本件補正事項と本件補正前の請求項1の発明特定事項が異なる技術的な意味内容を有する可能性を踏まえ、更に予備的な検討を行う。
本件補正前の請求項1の発明特定事項である「前記第1支持部材(51)と前記第2支持部材(52)との間には、隙間が設けられている」ことは、本願の出願当初の図3等に記載されたもの、すなわち、(1)ア(ア)「い」及び(1)ア(ア)「え」から導くものであるから、その技術事項及び技術的な意味内容は、それぞれ、(1)ア(イ)及び(1)ア(ウ)で述べたとおりのものと解される。そして、本件補正事項は、本願の出願当初の図2、図3等に記載されたものである。
ここで、本件補正事項に係る技術事項及びその技術的な意味内容と本件補正前の請求項1の発明特定事項が異なるとすれば、相違する事項及び技術的な意味内容は、本願の出願当初の図2、図3等から導かれるものと解される。しかしながら、(1)ア(ア)「あ」ないし「え」から導くことができる本件補正発明に係る技術事項及びその技術的な意味内容は、それぞれ、(1)ア(ア)及び(1)ア(ウ)で述べたとおりのものである。そして、(1)ア(ア)「あ」ないし「え」を含む本願の出願当初の明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「当初明細書等」という。)の記載事項及び図示事項から、本件補正事項に係る技術事項が、本件補正前の請求項1の発明特定事項に係る技術事項と異なる技術的な意味内容であることを導くことはできない。
そうすると、本件補正前の請求項1の発明特定事項に係る技術事項と異なる技術的な意味内容を有する技術事項を備えた本件補正事項は、当初明細書等に記載も示唆もされておらず、技術常識を考慮しても当業者にとって自明であるとはいえない。
してみると、本件補正事項が本件補正前の請求項1の発明特定事項とは異なる技術的な意味内容を持つ技術事項を特定するものと仮定した場合、本件補正事項による補正は、当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものといわざるを得ない。
したがって、本件補正事項が、先の補正事項と異なる技術的な意味内容を持つと仮定した場合、本件補正は、当初明細書等に記載された事項の範囲内においてするものとはいえず、特許法17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。
(3)小括
上記のとおり、本件補正は特許法第17条の2第5項に掲げるいずれを目的としたものではない。あるいは、本件補正は、同法第17条の2第3項の規定に違反する。
したがって、本件補正は、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記のとおり決定する。
第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項に係る発明は、令和5年10月11日になされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし9に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、その請求項1に記載された事項により特定される、前記第2[理由]「1」(1)に記載のとおりのものである。
2 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由の理由1は、この出願の請求項1に係る発明は、本願の優先日前に頒布された以下の引用文献1に記載された発明であるから、特許法29条1項第3号に該当し、特許を受けることができない、というものである。
引用文献1:実願昭46-095132号(実開昭48-052910号)のマイクロフィルム
3 引用文献の記載及び引用発明
(1)引用文献1の記載
引用文献1には、「圧縮機の取付装置」に関し、次の記載事項及び図示事項がある(下線は当審が付したものである。以下同様。)。
ア 「本考案はたとえば冷凍サイクルに設けられ防音防振構造を有する圧縮機の取付装置に関する。
たとえば冷凍サイクルを有する空気調和機などから発生する騒音源として圧縮機の運転音が挙げられる。」(明細書第1ページ第13-17行)
イ 「第1図はたとえば空気調和機の冷凍サイクルを示していて、これは圧縮機1の吐出管1aを介して吐出される高温高圧の冷媒ガスを凝縮液化する凝縮器2が連結されている。この凝縮器2の吐出側には液化冷媒を低圧にするキヤピラリーチユーブ3が連結され、さらにこの吐出側には冷媒を蒸発させて蒸発潜熱を奪い被空調室を冷房する冷却器4が連結されている。そしてこの冷却器4の吐出側は吸込管1bを介して蒸発した冷媒ガスを吸込む圧縮機1に連結されている。」(明細書第2ページ第14行-3ページ第4行)
ウ 「また圧縮機1は第2図で詳図するような取付装置5に収容されている。すなわち、圧縮機1は内側に防音材を貼着した防音カバー6に被包されていて、この防音カバー6には上記吐出管1aと吸込管1bとの貫通用孔6aが穿設され、底板7に螺着されている。」(明細書第3ページ第5-10行)
エ 「また上記圧縮機1の底部には取付脚8,8が一体的に形成されていて、たとえばゴムなどの防振材からなる固定具9・・・を介して取付板10に固定されている。そして取付板10は上記固定具9・・・と同じような防振材からなる支持具11・・・を介して上記底板7に取着されている。この底板7と上記取付板10との間隙には防音材13が充填されている。」(明細書第3ページ第12-19行)
オ 「本考案は以上説明したように、圧縮機を防音カバーで被包し、このカバーの底部に上記圧縮機を防振材からなる固定具を介して取付板に支持し、この取付板の下部に防振材からなる支持具を介して底板を設け、底板と上記取付板との間に防音材を介在させたから、上記圧縮機底部から運転騒音が洩れても防音材により吸収され、防音効果が向上する。しかも圧縮機は2重の防振材を介して底板に取付けるようにしたから、これから伝わる振動を確実に吸収できるなどの効果を奏する。」(明細書第4ページ第3-13行)
カ 「第1図
[図:0001428688000003.jpg]
」
キ 「第2図
[図:0001428688000004.jpg]
」
ク イの記載事項及びカの図示事項から、空気調和機の冷凍サイクルは、圧縮機1、凝縮器2、キヤピラリーチユーブ3、冷却器4が連結され、冷却器4が圧縮機1に連結されるものといえる。
(2)引用発明
(1)の記載事項、図示事項及び認定事項を総合し、整理すると、引用文献1には以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。
「圧縮機1、凝縮器2、キヤピラリーチユーブ3、冷却器4が連結され、冷却器4が圧縮機1に連結される冷凍サイクルを有する空気調和機であって、
前記圧縮機1は防振材からなる固定具9を介して取付板10に固定され、
前記取付板10は防振材からなる支持具11を介して底板7に取着され、
前記圧縮機1は防音カバー6に被包され、
前記防音カバー6は底板7に螺着され、
前記取付板10と底板7との間隙を有する空気調和機。」
(3)対比・判断
本願発明と引用発明とを対比する。
後者の「圧縮機1」は、その機能、構成及び技術的意義からみて前者の「圧縮機」に相当する。同様に、後者の「空気調和機」は前者の「冷凍サイクル装置」に相当する。そして、後者の「圧縮機1、凝縮器2、キヤピラリーチユーブ3、冷却器4が連結され、冷却器4が圧縮機1に連結される冷凍サイクル」は、圧縮機1が接続されるとともに圧縮機1、凝縮器2、キャピラリーチューブ3、冷却器4及び圧縮機1がこの順で接続される冷凍サイクルであるから、前者の「前記圧縮機が接続された冷媒回路」に相当する。
そうすると、後者の「圧縮機1、凝縮器2、キヤピラリーチユーブ3、冷却器4が連結され、冷却器4が圧縮機1に連結される冷凍サイクルを有する空気調和機であって」は、前者の「圧縮機と、前記圧縮機が接続された冷媒回路と、を備えた冷凍サイクル装置であって」に相当する。
後者の「取付板10」は、その機能、構成及び技術的意義からみて前者の「第1支持部材」に相当する。同様に、後者の「防振材からなる固定具9」は、前者の「第1防振部材」に相当する。
そうすると、後者の「前記圧縮機1は防振材からなる固定具9を介して取付板10に固定され」ることは、前記圧縮機1を防振材からなる固定具9で支持し、当該防振材からなる固定具9を取付板10で支持することであるから、前者の「前記圧縮機を支持する第1防振部材と」及び「前記第1防振部材を支持する第1支持部材と」に相当する。
後者の「底板7」は、その機能、構成及び技術的意義からみて前者の「第2支持部材」に相当する。同様に、後者の「防振材からなる支持具11」は、前者の「第2防振部材」に相当する。
そうすると、後者の「前記取付板10は防振材からなる支持具11を介して底板7に取着され」ることは、前記取付板10を防振材からなる支持具11で支持し、当該防振材からなる支持具11を底板7で支持することであるから、前者の「前記第1支持部材を支持する第2防振部材と」及び「前記第2防振部材を支持する第2支持部材と」に相当する。
後者の「防音カバー6」は、その機能、構成及び技術的意義からみて前者の「防音箱」に相当する。同様に、後者の「被包され」ることは、前者の「覆う」ことに相当する。
そうすると、後者の「前記圧縮機1は防音カバー6に被包され」ることは、前者の「前記圧縮機を覆う防音箱と、を備え」ることに相当する。
後者の「前記防音カバー6は底板7に螺着され」ることは、防音カバー6が底板7に支持されることであるから、前者の「前記防音箱は、前記第2支持部材に支持され」ることに相当する。
後者の「間隙」は、その機能、構成及び技術的意義からみて前者の「隙間」に相当する。
そうすると、後者の「前記取付板10と底板7との間隙を有する」ことは、取付板10と底板7との間には間隙があることであるから、前者の「前記第1支持部材と前記第2支持部材との間には、隙間が設けられている」ことに相当する。
したがって、両者は
「圧縮機と、前記圧縮機が接続された冷媒回路と、を備えた冷凍サイクル装置であって、
前記圧縮機を支持する第1防振部材と、
前記第1防振部材を支持する第1支持部材と、
前記第1支持部材を支持する第2防振部材と、
前記第2防振部材を支持する第2支持部材と、
前記圧縮機を覆う防音箱と、を備え、
前記防音箱は、前記第2支持部材に支持され、
前記第1支持部材と前記第2支持部材との間には、隙間が設けられている冷凍サイクル装置。」
で一致し、相違する点はない。
したがって、本願発明は引用発明である。
(4)請求人の主張について
請求人は、審判請求書において、次のとおり主張している。
ア 『引用文献1の第2図を見ても、「取付板10」(本願の第1支持部材に相当)と「底板7」(本願の第2支持部材に相当)との間には、「防音材12」が存在しており、「隙間」は存在しないものと思料します。
また、審査官殿の指摘している明細書第3頁第17-19行を見ても、「この底板7と上記取付板10との間隙には防音材13が充填されている。」と記載されており、「取付板10」(本願の第1支持部材に相当)と「底板7」(本願の第2支持部材に相当)との間には隙間が存在しないものと思料します。』
イ 『ここで、広辞苑で「隙間」について調べたところ、広辞苑には、「物と物との間の少しあいている所。」と記載されています。
そのため、本願の請求項1の「第1支持部材(51)と第2支持部材(52)との間には、隙間が設けられている」という記載は、第1支持部材と第2支持部材との間にあいている所がある、と解釈するのが自然です。
つまり、引用文献1において、防音材12の充填前に、底板7と取付板10との間に隙間が存在していたとしても、隙間に防音材12を充填した後は、隙間が存在しなくなった状態である、と考えるのが妥当です。
このように、隙間に防音材が充填されている状態であっても隙間が存在する、という解釈は妥当ではないものと思料します。』
そこで、上記主張について検討する。
はじめに、本願発明の「第1支持部材(51)と第2支持部材(52)との間には、隙間が設けられている」との発明特定事項に係る技術事項の技術的な意味内容を確認する。
そもそも、本願明細書には「第1支持部材(51)と第2支持部材(52)との間には、隙間が設けられている」との記載はない。したがって、第1支持部材と第2支持部材が構成上どのように関連するかは、段落【0038】、【0039】に記載される事項及び図3の図示事項からその技術的な意味内容を理解せざるを得ない。このことは、令和5年10月13日の意見書における「この事項は、出願当初の図面の図3等に記載されています。」との主張とも整合する。そして、図3の図示事項及び明細書の段落【0038】及び【0039】から理解できる「第1支持部材(51)と第2支持部材(52)との間には、隙間が設けられている」との技術事項の技術的な意味内容は、「第2」「2.」「(1)」「ア」「(イ)」で述べた、次のとおりのものである。
「第2支持部材52に支持されている複数の第2防振部材42により第1支持部材51が支持され、これにより、第1支持部材51と第2支持部材52との間に圧縮機30からの振動が第2防振部材42で減衰される隙間を設けること」
そして、請求人が指摘する「物と物との間の少しあいている所。」である「隙間」の意味を踏まえると、「圧縮機30からの振動が第2防振部材42で減衰されるための、第1支持部材51と第2支持部材52との間に設けられる少しあいている所」が本願発明における「隙間」と解することができる。
当該理解を踏まえ、本願発明の「隙間」と引用発明の底板7と取付板10との「間隙」を対比する。
引用文献1の第3ページ第17-19行(3.(1)「エ」参照。)に、「この底板7と上記取付板10との間隙には防音材13が充填されている。」と記載されている。そして、この「間隙」は、防音材13が充填できる「底板7と取付板10との間の少し空いている所」と解するのが自然であるから、請求人が指摘する「隙間」に当てはまるものである。すなわち、引用文献1は底板7と取付板10との間に隙間を設けることは開示されているといえる。
そして、引用文献1の第4ページ第10-13行(3.(1)「オ」参照。)には「圧縮機は2重の防振材を介して底板に取り付けるようにしたから、これから伝わる振動を確実に吸収できるなどの効果を奏する。」と記載されている。すなわち、引用文献1の圧縮機の取付構造は、「この底板7と上記取付板10との間隙には防音材13が充填されている。」としても、二重の防振構造として機能することが開示されているといえる。
そうすると、引用文献1の底板7と取付板10との間隙は、防音材13の充填後においても「圧縮機1からの振動が防振材からなる支持具11で減衰されるための、底板7と取付板10との間の間隙」として機能するものと理解できる。
そうすると、引用発明の「底板7と上記取付板10」との「間隙」は、「防音材13が充填」されるか否かにかかわらず、「圧縮機1からの振動が防振材からなる支持具11で減衰されるため」のものであるから、本願発明の「隙間」に相当する。
したがって、上記審判請求人の主張は、採用することができない。
第4 むすび
以上のとおり、本願発明は特許法第29条第1項第3号に掲げる発明であって、特許を受けることができない発明であるから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2024-005953