特許拒絶査定不服審判
2024-005366
ワイパーモータの回転部品の回転角度位置を検出するための方法、およびワイパーモータ
- 審判番号
- 2024-005366
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2021-569132
- 請求日
- 2024年04月01日
- 審決日
- 2025年06月13日
- 公報発行日
- 2025年11月28日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】ヴァレオ システム デシュヤージュ
- 【請求人代理人】宮嶋 学
- 【請求人代理人】堀田 幸裕
- 【請求人代理人】塙 和也
- 審判長/審判官
- 審判長 濱野 隆
- 審判官 岡田 吉美
- 審判官 道祖土 新吾
- 分類
- P18 .121-Z (G01D)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2021-569132「ワイパーモータの回転部品の回転角度位置を検出するための方法、およびワイパーモータ」拒絶査定不服審判事件〔令和 2年11月26日国際公開、WO2020/233974、令和 4年 7月21日国内公表、特表2022-533230〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
1 手続の経緯
本願は、2020年(令和2年)5月4日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2019年5月21日、ドイツ)を国際出願日とする外国語特許出願であって、その手続の経緯の概略は、次のとおりである。
令和3年12月24日 :翻訳文の提出
令和5年 1月12日付け:拒絶理由通知書
同年 4月17日 :意見書、手続補正書の提出
同年 5月31日付け:拒絶理由通知書(最後)
同年10月16日 :意見書の提出
同年11月28日付け:拒絶査定(以下「原査定」という。)
(同年12月 8日 :原査定の謄本の送達)
令和6年 4月 1日 :審判請求書の提出
2 本願発明について
(1) 本願発明の認定
本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、令和5年4月17日に提出された手続補正書により補正された請求項1に記載された次に示す事項により特定されるものである。
「ワイパーモータ(10)の回転部品の回転角度位置(α,β)を検出するための方法であって、
前記ワイパーモータ(10)は、第1部品としてのブラシレス電気モータ(12)を有し、
第1部品としての前記ブラシレス電気モータ(12)は、第1回転軸線(14)を中心として回転するロータ(15)を備えるとともに、第2部品としてのギアホイール(24)を駆動し、
第2部品としての前記ギアホイール(24)は、第2回転軸線(28)を中心として回転するとともに、従動シャフト(26)を備え、
前記回転部品は、前記ロータ(15)および前記従動シャフト(26)であり、
2つの前記回転部品の前記回転角度位置(α,β)は、2つのセンサ装置(31,38)により検出され、
2つの前記センサ装置(31,38)の各々は、信号生成素子(30;30a;30b,36)と、前記信号生成素子(30;30a;30b,36)の変化する物理的パラメータを検出するためのセンサ素子(32;32a~32d;40;40a~40d)と、を有し、
前記回転部品の絶対角度位置(α,β)が、前記センサ装置(31,38)によりそれぞれ検出され、
前記従動シャフト(26)の特定の回転角度位置(β)が前記ロータ(15)の少なくとも1つの特定の回転角度位置(α)に一致するように、2つの前記回転部品の前記回転角度位置(α,β)を互いに一致させ、
2つの前記回転部品の現在一致している前記回転角度位置(α,β)が、記憶・評価ユニット(48)に記憶されている値と比較され、
現在の値と記憶された値との間の記憶された限界値(σ)を超えた場合、信号やエラーメッセージが生成されることを特徴とする方法。」
(2) 本願発明の分説
検討の便宜上、本願発明の構成を次のように構成Xと構成Aから構成Jまでに分説する。また、参考図として、本願の【図1】及び【図2】に部材名を記入したものを掲載する。
<本願発明の分説>
X ワイパーモータ(10)の回転部品の回転角度位置(α,β)を検出するための方法であって、
A 前記ワイパーモータ(10)は、第1部品としてのブラシレス電気モータ(12)を有し、
B 第1部品としての前記ブラシレス電気モータ(12)は、第1回転軸線(14)を中心として回転するロータ(15)を備えるとともに、第2部品としてのギアホイール(24)を駆動し、
C 第2部品としての前記ギアホイール(24)は、第2回転軸線(28)を中心として回転するとともに、従動シャフト(26)を備え、
D 前記回転部品は、前記ロータ(15)および前記従動シャフト(26)であり、
E 2つの前記回転部品の前記回転角度位置(α,β)は、2つのセンサ装置(31,38)により検出され、
F 2つの前記センサ装置(31,38)の各々は、信号生成素子(30;30a;30b,36)と、前記信号生成素子(30;30a;30b,36)の変化する物理的パラメータを検出するためのセンサ素子(32;32a~32d;40;40a~40d)と、を有し、
G 前記回転部品の絶対角度位置(α,β)が、前記センサ装置(31,38)によりそれぞれ検出され、
H 前記従動シャフト(26)の特定の回転角度位置(β)が前記ロータ(15)の少なくとも1つの特定の回転角度位置(α)に一致するように、2つの前記回転部品の前記回転角度位置(α,β)を互いに一致させ、
I 2つの前記回転部品の現在一致している前記回転角度位置(α,β)が、記憶・評価ユニット(48)に記憶されている値と比較され、
J 現在の値と記憶された値との間の記憶された限界値(σ)を超えた場合、信号やエラーメッセージが生成されることを特徴とする
X 方法。
<参考図>
【図1】
[図:0001428682000001.jpg]
【図2】
[図:0001428682000002.jpg]
(3) 課題・作用効果等に関連する明細書の発明の詳細な説明の記載
本願明細書の発明の詳細な説明の記載のうち、発明が解決しようとする課題及び作用効果等に関連する記載を抜粋すると、次の記載がある。
「【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1のプリアンブルの特徴を有するワイパーモータの回転部品の回転角度位置を検出するための方法に関する。さらに、本発明は、本発明による方法を実施するように構成されたワイパーモータに関する。
【背景技術】
【0002】
請求項1のプリアンブルによる方法を実施するように構成されたワイパーモータが、本件出願人によるDE 10 2017 121 222 A1から知られている。既知のワイパーモータまたは既知の方法は、ブラシレス電気モータのロータの回転角度位置、および電気モータにより駆動されるとともにワイパーを駆動するように少なくとも間接的に機能するギアホイールの回転角度位置を検出するために2つのセンサ装置が設けられている点で優れている。2つのセンサ装置の各々は、信号生成素子と、信号生成素子の変化する物理的パラメータを検出するためのセンサ素子と、を備えている。一般に、センサ装置は、ホールセンサの形態で構成されている。ホールセンサは、ホールセンサを通過して磁界を生成する素子の変化を検出する。既知のセンサ装置のさらなる重要な特徴は、磁界が最初に検出されたとき、または電気モータを始動させたとき、前記センサ装置が、回転部品(ロータまたはギアホイール)の絶対角度位置を検出することができないことである。それどころか、センサ装置の評価ユニットが回転部品の絶対角度に関する結論を導き得る前に、さらなる情報または回転部品の一定の回転角度が必要である。
【0003】
特にブラシレス電気モータに関して、ステータの個々のワイヤ巻線を通電または作動させるために、回転角度位置を可能な限り迅速かつ正確に把握することが望まれているか、または必要である。このことは、ワイパーモータの従動シャフトであって、ワイパーモータに接続された従動シャフトの回転角度位置を検出するためにも同様に望まれている。
【発明の概要】
【0004】
請求項1の特徴を有するワイパーモータの回転部品の回転角度位置を検出するための本発明による方法は、特にワイパーモータの始動時に、回転部品の絶対回転角度を非常に迅速かつ正確に検出できるという利点を有する。これは、回転部品の絶対回転角度位置がセンサ装置の少なくとも1つにより検出されるという請求項1の教示による本発明により、可能となる。この意味は、物理的パラメータの最初の情報または最初の検出のみから、角度基準(0度)に対する回転部品の絶対回転角度に関する結論が導かれ得るということである。これは、特に、電気モータがまだ回転していない状態をも含む。すなわち、別の回転部品の静止状態においても、角度位置が検出可能である。
…(中略)…
【0006】
本発明による方法の好適な改良点において、信号生成素子の磁界の変化が、絶対角度位置を検出するセンサ装置によって検出されることが提供される。したがって、特に、例えば、磁界の磁束密度の大きさとその向きとの組み合わせから、回転部品の絶対角度位置に関する結論を導くことができる。
【0007】
しかしながら、例えば、光学的に動作する測定装置や、インダクタンス等の他の物理的パラメータを検出するセンサ装置等の、他の物理的な動作原理も想定され得る。
【0008】
さらに好適な方法は、一方の部品(例えばギアホイールまたは従動シャフト)の特定の回転角度位置が、他方の部品(例えばロータ)の少なくとも1つの特定の回転角度位置に一致するように、2つの回転部品(具体的にはロータおよびギアホイール)の回転角度位置を互いに一致させ、2つの回転部品の現在一致している回転角度位置が、記憶ユニットに記憶されている値と比較され、現在の値と記憶された値との間の記憶された限界値を超えた場合、信号やエラーメッセージ等が生成されることを提供する。
【0009】
この好適な方法の背景は、一般に、新品の状態、または回転部品が互いに対してほとんど遊びがないか、若しくは全くないように配置されたワイパーモータの状態において、部品の一致した回転角度位置は、互いに対してほんのわずかな公差しか有していないということである。しかしながら、回転部品同士の摩耗が進んだり遊びが大きくなると、回転部品の検出された回転角度位置は、例えば、新品状態や遊びがない場合と比較して、回転角度位置間に大きな角度オフセットまたは大きな角度差が存在するように変化する。したがって、提供された好適な方法により、ワイパーモータの回転部品の摩耗に関する結論を導くことができる。そして、例えば検査や同様の測定の範囲において読み取られる対応エラーメッセージによって、ワイパーモータの修理や対応する交換を行うことができる。さらに、このような方法により、例えば、ワイパーモータ、および結果としてワイパーにおける同一の動作シーケンスを常に得ることができるように、ステータのワイヤ巻線の時間的または角度的に一致した作動を適応させたり修正したりすることも基本的に可能になる。」
「【0026】
ロータ15またはロータシャフト20は、第1磁気素子構成体30と作動可能に接続した状態で、ロータ15の付近に配置されている。具体的には、第1磁気素子構成体30は、ロータシャフト20に、これとともに回転するように接続されている。第1磁気素子構成体30は、ロータシャフト20の回転角度位置、したがってロータ15の回転角度位置を検出するための第1センサ装置31の一部である。この目的のために、第1磁気素子構成体30は、例えばセンサ素子32と相互作用する。センサ素子32は、例えば、ホールセンサ構成体を備えている。ホールセンサ構成体は、第1磁気素子構成体30の回転角度位置から、ロータ15またはロータシャフト20の絶対回転角度位置に関する結論を直接的に導くように構成されている。絶対回転角度位置は、ステータ18のワイヤ巻線19の位相が一致した通電、または角度が一致した通電を可能とするために必要である。絶対回転角度位置とは、固定した基準位置(0度の角度位置)に対する回転部品の回転角度を意味するものとして理解される。」
「【0033】
IC44は、ワイパーモータ10の付加的な機能を可能とする記憶・評価ユニット48を選択的に有している。図7は、ロータ15の絶対回転角度αおよびギアホイール24の絶対回転角度βに対して、センサ装置31、38によりそれぞれ検出された信号SR、SGを上下にして示す。ここで、ギアホイール24の約360°の回転(信号SGの最大値)において、構成要素が新品状態、または構成要素間に遊びのないロータ15は、例えば12回、回転したことがわかる。さらに、図7の下部において、破線で示された信号SGの信号プロファイルは、一定の動作継続時間後に生じる状況、または互いに作動可能に接続されたロータシャフト20若しくはロータ15の部品と、従動シャフト26若しくはギアホイール24の部品との間で摩耗が生じた状況を示している。具体的には、ロータ12の12回の回転後、ギアホイール24の信号SGがその最大値に達しなかったこと、すなわち、ギアホイール24が、約360°回転していないことがわかる。これは、追加角度オフセットδが生じる事例である。」
「【図7】
[図:0001428682000003.jpg]
」
「【0034】
角度オフセットδが、記憶・評価ユニット48に記憶された限界値を超えると直ちに、ワイパーモータ10の構成部品における摩耗に関する結論が導かれる。そして、このことは、エラーメッセージとして例えばエラーメモリに記憶され、対応する信号が生成されるなどする。」
3 原査定における拒絶の理由の概要
原査定の拒絶の理由のうち、本願発明に対する拒絶の理由(進歩性の欠如)の概要は、次のとおりである。
(進歩性の欠如) 本願発明は、優先日前に発行された下記の引用文献に記載された発明に基づいて、優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
記
引用文献1.特開2016-175638号公報(主たる引用文献)
引用文献2.特開2008-148412号公報
引用文献3.特許第6438176号公報
引用文献5.国際公開第2015/133291号
4 引用文献1の記載事項及び引用発明の認定
(1) 引用文献1に記載された事項
原査定の拒絶の理由において引用された前記引用文献1(特開2016-175638号公報)には、次の記載がある(下線は当合議体による。以下同様である。)。
ア 【0001】
「【0001】
本発明は、自動車等の車両に搭載される小型のブラシレスモータに係り、特に、ワイパ装置の駆動源に用いられるブラシレスモータに関する。」
イ 【0030】~【0036】、【図1】
「【0030】
図1に示すように、自動車等の車両を形成する車体10の前方側には、フロントガラス(ウィンドシールド)11が設けられている。フロントガラス11の前端部側(図中下側)で、かつ車体10の車幅方向(図中左右方向)に沿う運転席側部分および助手席側部分には、それぞれDR側ワイパ装置20およびAS側ワイパ装置30が搭載されている。このように、本実施の形態に係るワイパ装置は、運転席側および助手席側にそれぞれワイパ装置を備えた対向払拭式ワイパ装置を採用している。ここで、DR側は運転席側を、AS側は助手席側をそれぞれ示している。」
「【図1】
[図:0001428682000004.jpg]
」
「【0031】
DR側ワイパ装置20およびAS側ワイパ装置30は、それぞれDR側ワイパモータ21およびAS側ワイパモータ31を備えている。各ワイパモータ21,31は、それぞれDR側ワイパアーム22およびAS側ワイパアーム32(詳細図示せず)を所定の揺動角度で揺動駆動するようになっている。これにより、各ワイパアーム22,32の先端部にそれぞれ設けた各ワイパブレード(図示せず)が、フロントガラス11上を往復払拭動作し、ひいてはフロントガラス11に付着した雨水等を払拭して良好な視界が確保される。ここで、各ワイパアーム22,32および各ワイパブレードは、本発明におけるワイパ部材を構成している。
…(中略)…
【0036】
各ワイパモータ21,31は、それぞれ同様に形成されるため、以下、DR側ワイパモータ21を代表して、その詳細構造について図面を用いて説明する。」
ウ 【0037】~【0077】、【図2】~【図8】
「【0037】
図2ないし図6に示すように、DR側ワイパモータ(ブラシレスモータ,駆動源)21は、アルミニウム製のハウジング40、プラスチック製のモータカバー60およびプラスチック製のギヤカバー80を備えている。これらのハウジング40、モータカバー60およびギヤカバー80は、互いに複数の締結ねじS(図2において2つのみ示す)によって互いに連結されている。ここで、ハウジング40とモータカバー60との間、およびハウジング40とギヤカバー80との間には、それぞれOリング等のシール部材(図示せず)が設けられ、これによりDR側ワイパモータ21の内部への雨水等の進入が防止される。」
「【図2】
[図:0001428682000005.jpg]
」
「【図4】
[図:0001428682000006.jpg]
」
「【図6】
[図:0001428682000007.jpg]
」
「【0038】
ハウジング40は、溶融したアルミ材料を鋳造成形等することで所定形状に形成され、モータ収容部41と減速機構収容部42とを備えている。モータ収容部41は、図3に示すように有底筒状に形成されている。モータ収容部41の軸方向一端側(図3中右側)は開口されており、当該開口部分には、モータカバー60の装着部62aが装着される段付形状かつ環状のカバー装着部41aが設けられている。一方、モータ収容部41の軸方向他端側(図3中左側)には、環状底部41bが設けられ、当該環状底部41bの中心部分には、回転軸46が回転自在に貫通される貫通孔41cが形成されている。」
「【図3】
[図:0001428682000008.jpg]
」
「【0039】
モータ収容部41の内側には、環状の段差部43が設けられている。段差部43は、環状の底壁43aと筒状の側壁43bとから構成されている。そして、段差部43の内側には、ステータコア(固定子)44が収容されている。ステータコア44は、磁性体よりなる複数の鋼板44aを積層して互いに接着することで略円筒形状に形成されている。ステータコア44の外周部の軸方向に沿う減速機構収容部42側の略半分が、モータ収容部41の内周部を形成する側壁43bに圧入され、これにより両者は強固に固定されている。
【0040】
ステータコア44の軸方向両側には、絶縁体である樹脂製のコイルボビン44bが設けられている。コイルボビン44bには、U相,V相,W相(3相)のコイル44cが所定の巻き数で巻かれている。これらのU相,V相,W相のコイル44cにおける端部(図示せず)は、スター結線(Y結線)の巻き方となるよう電気的に接続されている。ただし、各コイル44cの結線方法としては、スター結線に限らず、例えばデルタ結線(三角結線)等、他の結線方法を採用しても良い。
【0041】
そして、各コイル44cは、ハウジング40の内部に設けられた配線ユニット(図示せず)を介して、ギヤカバー80の内側に固定された制御基板90(図6参照)に電気的に接続されている。各コイル44cには、制御基板90に設けられたFETモジュール96(図6参照)から、所定のタイミングで駆動電流が供給される。これにより、ステータコア44に電磁力が発生して、当該ステータコア44の内側にあるロータ45が、所定の回転方向に所定の駆動トルク(駆動力)で回転駆動される。
【0042】
ステータコア44の径方向内側には、所定の隙間(エアギャップ)を介してロータ(回転子)45が回転自在に設けられている。ロータ45は、磁性体である複数の鋼板(図示せず)を積層して互いに接着することで略円柱形状に形成されている。ロータ45の径方向外側の表面には、略円筒形状に形成された永久磁石45aが装着されている。
【0043】
永久磁石45aは、ロータ45の回転方向に沿って磁極(S極,N極)が交互に並ぶように(図示せず)配置されている。このように、DR側ワイパモータ21は、ロータ45の表面に永久磁石45aが装着されたSPM(Surface Permanent Magnet)構造のブラシレスモータを採用している。ただし、SPM構造のブラシレスモータに限らず、ロータ45に複数の永久磁石を埋め込んだIPM(Interior Permanent Magnet)構造のブラシレスモータを採用しても良い。
【0044】
また、略円筒形状の1つの永久磁石45aに換えて、ロータ45の軸線と交差する方向の断面形状が略円弧形状に形成された複数の永久磁石を、ロータ45の周方向に沿って磁極が交互に並ぶように等間隔で配置したものを採用しても良い。また、永久磁石45aの極数としては、DR側ワイパモータ21の仕様に応じて、2極あるいは4極以上等、任意に設定することができる。
【0045】
図3,図5および図7に示すように、ロータ45の軸心には、回転軸46の軸方向一端側(図中右側)が固定されている。回転軸46の軸方向他端側(図中左側)には、転造加工等により形成された螺旋状の歯部46aを備えたウォーム46bが一体に設けられている。ここで、回転軸46に設けられるウォーム46bは、貫通孔41cよりも減速機構収容部42側に配置され、ウォーム46bに噛み合うウォームホイール50とともに減速機構部SDを構成している。」
「【図5】
[図:0001428682000009.jpg]
」
「【0046】
ここで、ロータ45、永久磁石45aおよび回転軸46は、本発明における回転体を構成している。また、これらのロータ45、永久磁石45aおよび回転軸46に、ステータコア44、コイルボビン44bおよび各コイル44cを加えたものが、本発明におけるモータ部を構成している。
…(中略)…
【0052】
図5に示すように、回転軸46の軸方向に沿うウォーム46bと第1ボールベアリング47との間には、環状の第1センサマグネット(第1磁石)MG1が固定されている。つまり、ウォーム46bおよび第1センサマグネットMG1は、いずれも第1ボールベアリング47と第2ボールベアリング49との間に設けられている。
【0053】
ここで、ロータ45(永久磁石45a)の軸方向寸法L1は、回転軸46の軸方向に沿う第1ボールベアリング47と第2ボールベアリング49との間の間隔寸法L2よりも短い寸法とされている(L1<L2)。これにより、DR側ワイパモータ21の回転軸46の軸方向に沿う寸法を小さくしている。また、DR側ワイパモータ21はブラシレスモータであるため、整流子やブラシを備えない分、この点からもDR側ワイパモータ21の回転軸46の軸方向に沿う寸法を小さくしている。
【0054】
第1センサマグネットMG1には、図7および図8に示すように、回転軸46の回転方向に沿って複数の磁極(S極,N極)が設けられている。なお、本実施の形態においては、第1センサマグネットMG1の極数は、図8に示すように、90°度間隔で4極となっている。第1センサマグネットMG1は、回転軸46の径方向外側に固定されており、回転軸46と一体回転するようになっている。したがって、第1センサマグネットMG1の磁極(S極,N極)は、回転軸46の回転に伴って交互に出現するようになっている。」
「【図7】
[図:0001428682000010.jpg]
」
「【図8】
[図:0001428682000011.jpg]
」
「【0055】
そして、図7および図8に示すように、制御基板90の第1センサマグネットMG1との対向部分には、第1ホールIC(第1センサ)94a、第2ホールIC(第2センサ)94b、第3ホールIC(第3センサ)94cが配置されている。これにより、各ホールIC94a,94b,94cによって回転軸46の回転状態(回転数や回転方向等)が検出される。なお、第1センサマグネットMG1に対する各ホールIC94a,94b,94cの位置関係については、後述する。
…(中略)…
【0060】
ウォームホイール50の回転中心であって、かつ出力軸51が設けられる側とは反対側には、図4に示すように、円盤状の第2センサマグネット(第2磁石)MG2が固定されている。この第2センサマグネットMG2には、出力軸51の回転方向に沿って複数の磁極(S極,N極)が設けられている。なお、本実施の形態においては、第2センサマグネットMG2の極数は、図7に示すように、180°間隔で2極となっている。第2センサマグネットMG2は、出力軸51の軸方向一端側に設けられ、出力軸51およびウォームホイール50と一体回転するようになっている。したがって、第2センサマグネットMG2の磁極(S極,N極)は、出力軸51の回転に伴って交互に出現するようになっている。
【0061】
そして、図7および図8に示すように、制御基板90の第2センサマグネットMG2との対向部分には、MRセンサ(第4センサ)95が配置され、当該MRセンサ95は、出力軸51の中心軸C1上に配置されている。これにより、MRセンサ95によって出力軸51およびウォームホイール50の回転状態(回転方向や回転位置等)が検出される。なお、第2センサマグネットMG2に対するMRセンサ95の位置関係については、後述する。
…(中略)…
【0069】
制御基板90の第1面91には、DR側ワイパモータ21を統括的に制御するCPU93と、第1センサマグネットMG1(図7および図8参照)と対向する第1ホールIC94a,第2ホールIC94b,第3ホールIC94cのうちの第1ホールIC94aおよび第2ホールIC94bと、第2センサマグネットMG2(図7および図8参照)と対向するMRセンサ95とが設けられている。ここで、第1ホールIC94aおよび第2ホールIC94bは、図8に示すように、回転軸46(第1センサマグネットMG1)の回転方向ROに沿って所定間隔で配置されている。
【0070】
一方、制御基板90の第2面92には、駆動系の電子部品であるFETモジュール96と、第1センサマグネットMG1(図7および図8参照)と対向する第1ホールIC94a,第2ホールIC94b,第3ホールIC94cのうちの第3ホールIC94cと、他の電子部品であるキャパシタCPとが設けられている。ここで、第3ホールIC94cは、第2面92において、第1面91に設けた第1ホールIC94aと第2ホールIC94bとの間に配置されている。
【0071】
また、FETモジュール96は、3相の各コイル44c(図3参照)への通電状態を高速で切り替える複数のスイッチング素子によって構成されている。したがって、FETモジュール96は発熱し易くなっている。よって、FETモジュール96の放熱性を向上させるために、当該FETモジュール96は、熱伝導部材97aおよび熱伝導シート97b(図中網掛け部分)を介してハウジング40に接続されている。
【0072】
なお、図6に示すように、FETモジュール96は、制御基板90をギヤカバー80の底壁部81に装着する前に、一対の第2固定ねじSC2によってギヤカバー80の底壁部81に固定される。その後、FETモジュール96は、はんだ付け等の接続手段によって、制御基板90の第2面92に実装される。
【0073】
ここで、CPU93は本発明における制御部を構成し、FETモジュール96は本発明における駆動部を構成している。つまり、CPU93およびFETモジュール96は、DR側ワイパモータ21に駆動電流を供給して、ロータ45(図3参照)の回転を制御するようになっている。そして、CPU93は、各ホールIC94a,94b,94cおよびMRセンサ95で検出された検出値(図10参照)に基づいて、FETモジュール96を制御する。これにより、ロータ45の回転が制御される。
【0074】
図8に示すように、制御基板90の第1面91に設けた第1ホールIC94aと第2ホールIC94bとの間には、第3ホールIC94cが第1面91に無い分、スペースSPが形成されている。当該スペースSPには、第1センサマグネットMG1の一部が入り込んでいる。これにより、制御基板90は、第1センサマグネットMG1や第2センサマグネットMG2に対して、より近接配置されている。よって、DR側ワイパモータ21の薄型化(小型化)を実現しつつ、各ホールIC94a,94b,94cと第1センサマグネットMG1との距離およびMRセンサ95と第2センサマグネットMG2との距離をそれぞれ短くして、検出精度を向上させている。
【0075】
より具体的には、第1センサマグネットMG1から制御基板90の第1面91までの距離t1(約2.0mm)は、各ホールIC94a,94b,94cの第1面91および第2面92からの突出高さt2(約 4.0mm)よりも短くなっている(t1<t2)。また、第2センサマグネットMG2からMRセンサ95までの距離t3(約1.0mm)は、第1センサマグネットMG1から制御基板90の第1面91までの距離t1よりも短くなっている(t3<t1)。
【0076】
また、各ホールIC94a,94b,94cは、第1センサマグネットMG1の中心軸C2を中心としてα°(略30°)の等角度で配置されている。そして、各ホールIC94a,94b,94cと第1センサマグネットMG1との距離は、それぞれ略同じ距離t4となっている。これにより、各ホールIC94a,94b,94cは、第1センサマグネットMG1の回転に伴う磁極の変化を、それぞれ取りこぼすこと無く精度良く検出することができる。さらには、第2センサマグネットMG2からMRセンサ95までの距離t3もより短くなっているので、MRセンサ95においても、第2センサマグネットMG2の磁極の変化を、精度良く確実に検出することができる。
【0077】
ここで、第1センサマグネットMG1は上述のように4極に限らず、2極や6極等で構成することもできる。この場合、第1センサマグネットMG1を2極で構成した場合には、上記α°を略60°とする。また、第1センサマグネットMG1を6極で構成した場合には、上記α°は略20°とする。」
エ 【0080】~【0082】、【図9】
「【0080】
制御基板90には、図9に示すような電子回路が形成されている。より具体的には、制御基板90には、FETモジュール96およびCPU93に加えて、PWM信号発生回路98が設けられている。FETモジュール96には、車載バッテリBTが電気的に接続され、さらにU相,V相,W相よりなる各コイル44cが電気的に接続されている。FETモジュール96に設けられる複数のスイッチング素子は、車載バッテリBTの正極にそれぞれ接続され、U相,V相,W相に対応した3つの正極側スイッチング素子(図示せず)と、車載バッテリBTの負極にそれぞれ接続され、U相,V相,W相に対応した3つの負極側スイッチング素子(図示せず)とからなる。」
「【図9】
[図:0001428682000012.jpg]
」
「【0081】
CPU93は、FETモジュール96に電気的に接続され、当該FETモジュール96に設けられた各スイッチング素子のオン/オフを制御するようになっている。ここで、CPU93は、RAMやROM等(図示せず)を有する公知のマイクロコンピュータによって構成されている。
【0082】
PWM信号発生回路98は、FETモジュール96の各スイッチング素子を断続的にオン/オフ制御するためのデューティ比を決定し、当該デューティ比信号をCPU93に送出するようになっている。これにより、FETモジュール96の各スイッチング素子が別個にオンされる割合(オン時間)が調整されて、各コイル44cに供給される駆動電流の大きさが制御される。」
オ 【0083】~【0093】、【図10】
「【0083】
制御基板90には、上述のように、U相,V相,W相に対応した3つの第1ホールIC94a、第3ホールIC94c、第2ホールIC94bが実装され、かつ1つのMRセンサ95が実装されている。各ホールIC94a,94b,94cは、第1センサマグネットMG1の磁極の変化に基づいてスイッチング動作を行い、パルス信号(矩形波信号)を発生する(図10参照)。つまり、各ホールIC94a,94b,94cは、磁石とセットで用いられる非接触型の回転センサとなっている。」
「【図10】
[図:0001428682000013.jpg]
」
「【0084】
一方、MRセンサ95は磁気抵抗素子によって形成され、MRセンサ95からは電気信号である出力電圧が出力される。MRセンサ95は、対向配置された第2センサマグネットMG2の回転に伴う磁束の向きの変化により抵抗値が変化して、これにより図10に示すように出力電圧(0~500mV)が略リニアに変化する。より具体的には、DR側ワイパアーム22(図1参照)の反転位置である1.0secの時点で出力電圧が最大値となるよう、MRセンサ95は設定されている。これにより、出力軸51のハウジング40に対する回転位置(絶対位置)を検出することができる。
…(中略)…
【0087】
図10の「U相パルス」は第1ホールIC94aの出力波形を、「V相パルス」は第3ホールIC94cの出力波形を、「W相パルス」は第2ホールIC94bの出力波形をそれぞれ表している。なお、図10の符号「H」はホールICがオンにスイッチング動作した状態を、符号「L」はホールICがオフにスイッチング動作した状態を表している。また、MRセンサ95は、DR側ワイパアーム22の反転位置となる「1.0sec」の時点において、出力電圧が最大値の「500mV」を示す。
【0088】
操作者によりワイパスイッチWSが操作されて、DR側ワイパモータ21が回転駆動されると(0sec)、3相の各コイル44cに対して、車載バッテリBTからFETモジュール96を介して順次駆動電流が供給される。これにより、ロータ45が所定の回転数で回転して、DR側ワイパアーム22がフロントガラス11上の下反転位置(停止位置)から上反転位置に向けて払拭動作を開始する。ここで、ロータ45の回転数、つまりDR側ワイパアーム22の移動速度は、ワイパスイッチWSからの操作信号(HighまたはLowまたはInt)によって決定される。
【0089】
DR側ワイパモータ21が回転駆動されてロータ45が回転すると、当該ロータ45の回転に伴い、各ホールIC94a,94b,94cからは、所定の位相差でかつ比較的短い間隔のパルス信号が順次出力される(0sec~)。そして、これらのU相,V相,W相よりなるパルス信号の出現タイミングおよび発生回数は、それぞれCPU93に入力されて記憶される。ここで、図8に示すように、各ホールIC94a,94b,94cと第1センサマグネットMG1との距離は、それぞれ略同じ距離t4となっている。そのため、各ホールIC94a,94b,94cは、第1センサマグネットMG1の回転に伴う磁極の変化を取りこぼすことが無く、その検出精度は良好となっている。
【0090】
CPU93は、各ホールIC94a,94b,94cからの各パルス信号(3相)に基づいて、ロータ45のステータコア44に対する回転位置を検出しつつ、FETモジュール96に設けた各スイッチング素子のオン/オフを制御し、DR側ワイパモータ21を回転駆動する。また、CPU93は、各パルス信号のうちの2つに基づいて回転軸46の回転数を検出し、これにより、ワイパスイッチWSからの操作信号に見合った回転数となるようDR側ワイパモータ21を回転駆動する。
【0091】
DR側ワイパモータ21が回転駆動されてウォームホイール50および出力軸51が回転すると、当該ウォームホイール50(出力軸51)の回転に伴って、MRセンサ95からは、略リニアに変化する出力電圧が出力される(0sec~)。そして、MRセンサ95からの出力電圧はCPU93に入力されて記憶される。ここで、第2センサマグネットMG2とMRセンサ95との間の距離t3は、約1.0mmと極短くなっている。そのため、MRセンサ95は、第2センサマグネットMG2の回転状態(出力軸51の回転状態)を、精度良く確実に捉えることができる。
【0092】
CPU93は、MRセンサ95からの出力電圧に基づいて、出力軸51のハウジング40に対する回転位置を検出し、これによりDR側ワイパアーム22のフロントガラス11に対する位置を検出する。そして、CPU93は、FETモジュール96に設けた各スイッチング素子のオン/オフを制御してDR側ワイパモータ21を回転駆動することで、DR側ワイパアーム22をフロントガラス11上の所定位置で停止させたり反転動作させたりする。【0093】
ここで、図10に示すように、DR側ワイパアーム22は、0sec~2.0secの間でフロントガラス11上を一往復するようになっている。つまり、0sec~1.0secの間でDR側ワイパアーム22は上反転位置に向けて移動し、その後1.0secの時点でDR側ワイパモータ21が正転駆動から逆転駆動に反転動作され、それ以降は1.0sec~2.0secの間でDR側ワイパアーム22は下反転位置に向けて移動する。したがって、図10の反転位置矢印に示すように、当該時点(1.0secの時点)を境界として、3相のパルス信号および出力電圧が図中左右側で鏡像対象となっている。」
(2) 引用発明の認定
前記(1)に摘記した引用文献1の記載事項を総合すると、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。なお、認定の根拠となる記載箇所を括弧内に示した。
<引用発明>
「 自動車等の車両を形成する車体10の前方側に設けられたフロントガラス(ウィンドシールド)11の前端部側で、かつ車体10の車幅方向に沿う運転席側部分に搭載されており、DR側ワイパモータ21を備えるDR側ワイパ装置20において(【0030】、【0031】)、出力軸51のハウジング40に対する回転位置(絶対位置)、及び、ロータ45のステータコア44に対する回転位置を検出する方法であって、(【0084】、【0090】)
DR側ワイパモータ(ブラシレスモータ,駆動源)21は、アルミニウム製のハウジング40を備えており、(【0037】)
ハウジング40は、モータ収容部41と減速機構収容部42とを備えており、(【0038】)
モータ収容部41の内側には、環状の段差部43が設けられ、段差部43の内側には、ステータコア(固定子)44が収容されており、(【0039】)
ステータコア44の径方向内側には、所定の隙間(エアギャップ)を介してロータ(回転子)45が回転自在に設けられており、(【0042】)
ロータ45の軸心には、回転軸46の軸方向一端側が固定されており、回転軸46の軸方向他端側には、ウォーム46bが一体に設けられており、ウォーム46bは、ウォーム46bに噛み合うウォームホイール50とともに減速機構部SDを構成しており、(【0045】)
回転軸46の軸方向に沿うウォーム46bと第1ボールベアリング47との間には、環状の第1センサマグネット(第1磁石)MG1が固定されており、(【0052】)
第1センサマグネットMG1には、回転軸46の回転方向に沿って複数の磁極(S極,N極)が設けられており、(【0054】)
制御基板90の第1センサマグネットMG1との対向部分には、第1ホールIC(第1センサ)94a、第2ホールIC(第2センサ)94b、第3ホールIC(第3センサ)94cが配置されて、各ホールIC94a,94b,94cによって回転軸46の回転状態(回転数や回転方向等)が検出されるものであり、(【0055】)
DR側ワイパモータ21が回転駆動されてロータ45が回転すると、当該ロータ45の回転に伴い、各ホールIC94a,94b,94cからは、所定の位相差でかつ比較的短い間隔のパルス信号が順次出力され、(【0089】)
CPU93は、各ホールIC94a,94b,94cからの各パルス信号(3相)に基づいて、ロータ45のステータコア44に対する回転位置を検出するものであり、(【0090】)
ウォームホイール50の回転中心であって、かつ出力軸51が設けられる側とは反対側には、円盤状の第2センサマグネット(第2磁石)MG2が固定されており、(【0060】)
制御基板90の第2センサマグネットMG2との対向部分には、MRセンサ(第4センサ)95が配置され、当該MRセンサ95は、出力軸51の中心軸C1上に配置されて、MRセンサ95によって出力軸51およびウォームホイール50の回転状態(回転方向や回転位置等)が検出されるものであり、(【0061】)
MRセンサ95は、対向配置された第2センサマグネットMG2の回転に伴う磁束の向きの変化により抵抗値が変化して、出力電圧(0~500mV)が略リニアに変化することにより、出力軸51のハウジング40に対する回転位置(絶対位置)を検出するものであり、(【0084】)
CPU93は、MRセンサ95からの出力電圧に基づいて、出力軸51のハウジング40に対する回転位置を検出する(【0092】)
方法。」
5 引用文献2の記載事項及び引用文献2技術事項の認定
(1) 引用文献2に記載された事項
原査定の拒絶の理由において引用された前記引用文献2(特開2008-148412号公報)には、次の記載がある。なお、下線は当合議体が付したものであり、以下同様である。
ア 段落【0037】~【0046】、【図1】
「【0037】
(第1の実施の形態)
図1は、本実施の形態に係るワイパシステムの制御の流れを示す概略説明図である。
【0038】
図1に示すように、ワイパスイッチ10は、コントローラ12に接続されている。ワイパスイッチ10は、ワイパアーム14の作動や作動速度等の作動信号をコントローラ12に送出する。
【0039】
コントローラ12は、メモリ16を備えている。コントローラ12は、前記ワイパアーム14の駆動源であるモータ18に接続されている。コントローラ12では、ワイパスイッチ10からの作動信号に基づいて、モータ18を駆動制御し、ワイパアーム14を作動させる。
【0040】
メモリ16は、ワイパアーム14の作動状態、すなわち、所定の基準位置(例えば、下反転位置)からの回転角度(図4に示す絶対角度(θ2))の補正情報が記憶されている。補正情報に関しては、後述する。
【0041】
モータ18の回転軸は、減速機20に連結されている。減速機20は、前記モータ18の回転軸と同軸上に結合(共通でもよい)された入力軸22と、この入力軸22に取り付けられたウォームギヤ24と、ウォームギヤ24に噛み合っているウォームホイール26と、を備えている。前記ウォームホイール26の中心に出力軸28が取り付けられている。モータ18は、コントローラ12から供給される電力に基づいて、入力軸22を回転させ、入力軸22に連動して作動するウォームギヤ24、ウォームホイール26を介して回転速度を減速し、出力軸28に取り付けられたワイパアーム14を作動させる。
【0042】
減速機20では、所定の減速比により、出力軸28を360度の範囲で正転・逆転可能であるが、ワイパアーム14が車両ウィンドウを払拭する払拭範囲に応じて回転角度範囲が決定される。言い換えれば、360度の位置を全て認識しておけば、全ての払拭範囲に対応できる。
【0043】
ここで、前記入力軸22には相対角センサ30が設けられ、出力軸28には絶対角センサ32が設けられている。相対角センサ30、絶対角センサ32は、それぞれコントローラ12に接続され、それぞれの検出値をコントローラ12へ送出する。
【0044】
相対角センサ30は、モータパルスエンコーダで構成され、入力軸22の回転状態(図4に示す相対角度(θ1))を検出し、検出結果をコントローラ12へ送出する。
【0045】
絶対角センサ32は、マグネットと磁気センサの位置関係やマグネットの着磁状態によって誤差が生じるおそれのある出力軸パルスエンコーダで構成されている。具体的には、絶対角センサ32は、出力軸28が比較的粗い所定の角度を回転するとパルスを出力するホールIC等で構成され、予め基準位置が設定され、当該基準位置からの出力軸28の回転角度(図4に示す絶対角度(θ2))を検出し、検出結果をコントローラ12へ送出する。
【0046】
コントローラ12のメモリ16には、前述した補正情報が記憶されている。この補正情報は、予め、無負荷状態(すなわち、ワイパアーム14の非装着状態)で測定した入力軸22の相対角度(図4のθ1)の変化に対する出力軸28の絶対角度(図4のθ2)の変化の値から、出力軸28の1回転(360度)分の誤差に基づいて演算されるようになっている。なお、メモリ16には、補正情報ではなく、補正情報を演算する補正演算式を記憶させてもよい。」
「【図1】
[図:0001428682000014.jpg]
」
イ 段落【0072】~【0084】
「【0072】
(第2の実施の形態)
以下に本発明の第2の実施の形態について説明する。なお、この第2の実施の形態において、前記第1の実施の形態と同一構成部分について、同一の符号を付してその構成の説明を省略する。
【0073】
第2の実施の特徴は、第1の実施の形態で、ワイパアーム14の角度を精度良く検出し、角度を補正するために相対角センサ30と絶対角センサ32とを併用したことにより、表1に示される如く不具合のセンサや原因等の特定がし易くなり、トルクの演算が可能となることである。
【0074】
【表1】
[図:0001428682000015.jpg]
【0075】
モータ18へ電力を供給している状態で、入力軸22の相対角度(θ1)に変化があり、出力軸28の絶対角度(θ2)にも変化があって、絶対角度(θ2)と相対角度(θ1)との角度差が小さい場合は、正常と判断される。正常と判断された場合は、相対角度(θ1)を優先に制御し、後述する負荷トルクを検出することができる。
【0076】
モータ18へ電力を供給している状態で、入力軸22の相対角度(θ1)には変化はあるが、出力軸28の絶対角度(θ2)には変化が無い場合は、出力軸28の絶対角度(θ2)を検出する絶対角センサ32に不具合が生じたと判断し、入力軸22の相対角度(θ1)のみを用いて制御する。
【0077】
逆に、モータ18へ電力を供給している状態で、出力軸28の絶対角度(θ2)に変化はあるが、入力軸22の相対角度(θ1)に変化が無い場合には、入力軸22を検出する相対角センサ30に不具合が生じたと判断し、補正値(θ2’)のみを用いて制御する。
【0078】
また、相対角センサ30、絶対角センサ32の何れかに不具合が生じたと判断した場合は、上位のエレクトロニック・コントロール・ユニット(ECU)に対して不具合情報を伝達する。
【0079】
モータ18への電力の供給が所定のデューティ以下で、入力軸22の相対角度(θ1)に変化があるが、出力軸28の絶対角度(θ2)に変化が無い場合には、出力軸28の負荷がモータ18に伝わっていないと判断できるため、減速機20の異常を検出できる。
【0080】
ワイパアーム14は車両の走行状態、環境変化などにより、通常よりも出力軸28に負荷が加わると、出力軸28の絶対角度(θ2)または補正した角度(θ2’)と、減速機20の入力軸22の相対角度(θ1)との間に差が生じる。予め、減速機20の弾性変形の係数(k)を求めておくことにより、出力軸28の負荷トルク(T)は、角度差(θ2’-θ1)に減速機20の弾性係数(k)を掛けたT=k×(θ2’-θ1)を用いて演算することができる。
【0081】
特に、角度差から負荷トルクを検出し、減速機20に異常を来たす可能性のある所定以上のトルクが掛かった後に、減速機20の入力軸22の相対角度(θ1)に変化はあるが出力軸28の絶対角度(θ2)に変化が無い場合には、減速機20が異常を来たしたと判断できる。もし、相対角度(θ1)と絶対角度(θ2)との間に、ウォームギヤ1枚分の角度差が生じた場合には、ウォームギヤが1枚破損したと判断し、補正データ(θ2’)を基準として制御する。
【0082】
出力軸28の負荷トルクが検出できることにより、減速機20に異常を来たす可能性のある所定のトルクを検出した場合、減速機20を強制的に停止させ、ウォームギヤの破損等を防止することができる。
【0083】
なお、減速機20の入力軸22の相対角度(θ1)を検出する相対角センサ30は、リングマグネットとホールICの様に、信号をカウントするものでよい。
【0084】
また、出力軸28の絶対角度(θ2)を検出する絶対角センサ32は、出力軸28と結合されたマグネットと、その磁場の方向を検出するホール素子の組み合わせ又は磁気抵抗素子の組み合わせ、レゾルバ、2進数化された絶対角形のロータリーエンコーダでもよい。」
(2) 引用文献2技術事項の認定
前記(1)に摘記した引用文献2の記載事項から、次の技術事項は、引用文献2に記載されたものであると認められる。(以下「引用文献2技術事項」という。)
<引用文献2技術事項>
「減速機を有するワイパシステムにおいて、減速機の入力軸及び出力軸の回転角度の差を用いて減速機の異常を判断し、不具合情報を伝達すること。」
6 引用文献5に記載された事項及び技術常識1の認定
(1) 引用文献5に記載された事項
原査定の拒絶の理由において引用された前記引用文献5(国際公開第2015/133291号)には、次の記載がある。
ア 段落[0001]~[0002]
「[0001] 本開示は、アクチュエータ及びロボットアーム装置に関する。
背景技術
[0002] 自動車における電動ステアリングや、ロボット装置の関節部等、回転駆動される部材の回転角度を検出するためのセンサ装置として、ロータリエンコーダ(以下、単にエンコーダとも呼称する。)が広く用いられている。エンコーダを用いた回転角度の検出においては、その検出精度をより向上させるために、様々な技術が提案されている。」
イ 段落[0015]~[0023]、[図1]
「[0015] (1-1.全体構成)
まず、図1を参照して、本実施形態に係るアクチュエータの全体構成について説明する。図1は、本実施形態に係るアクチュエータの全体構成を示す分解斜視図である。」
「[図1]
[図:0001428682000016.jpg]
」
「[0016] 図1を参照すると、本実施形態に係るアクチュエータ300は、モータ310と、減速機320と、2つのロータリエンコーダ330、340(エンコーダ330、340)と、出力軸350と、ハウジング360と、を備える。アクチュエータ300では、モータ310の回転軸の回転が減速機320によって所定の減速比で減速され、出力軸350を介して後段の他の部材に伝達されることにより、当該他の部材が駆動されることとなる。また、エンコーダ330、340によって、モータ310の回転軸の回転角度及び出力軸350の回転軸の回転角度がそれぞれ検出される。
[0017] ここで、モータ310の回転角度は、減速機320の入力軸における回転角度でもあるため、以下の説明では、モータ310の回転角度及び回転速度のことを、それぞれ、入力軸の回転角度及び回転速度とも呼称する。また、出力軸350における回転軸の回転角度及び回転速度のことを、それぞれ、出力軸の回転角度及び回転速度とも呼称する。本実施形態は、減速機320を介して入力軸及び出力軸の双方に絶対角度エンコーダを配置することにより、出力軸の回転角度を高精度に検出するとともに、安全上求められる各種の要件を満たすことを実現するものである。
[0018] モータ310は、所定の制御値(電流値)が与えられた場合に、当該制御値に対応する回転速度で回転軸を回転させることにより、駆動力を生み出す駆動機構である。本実施形態では、モータ310としてブラシレスモータが用いられる。一般的に、モータでは、内部に設けられる回転子の回転に応じてコイルに流れる電流の向きを切り換え、磁界の方向を変化させる必要がある。ブラシレスモータでは、当該電流の向きの切り換えが、ブラシを用いて機械的に行われるのではなく、ブラシの代わりに半導体スイッチ等を用いて電気的に行われる。
[0019] モータ310の回転軸には、減速機320が連結される。減速機320は、連結されたモータ310の回転軸の回転速度(すなわち、入力軸の回転速度)を、所定の減速比で減速させて出力軸350に伝達する。本実施形態では、減速機320の構成は特定のものに限定されず、減速機320としては各種の公知の種類の減速機が用いられてよい。ただし、減速機320としては、例えばハーモニックドライブ(登録商標)等の、高精度に減速比が設定可能なものが用いられることが好ましい。減速機320の具体的な構成は、アクチュエータ300の構成に応じて、所望の回転速度及びトルクを出力軸350の後段に接続される部材に伝達するように、適宜設計され得る。
[0020] エンコーダ330は、入力軸の回転角度(すなわち、モータ310の回転角度)を検出する。本実施形態では、エンコーダ330は、絶対角度エンコーダであり、入力軸の絶対的な角度位置を検出することができる。以下では、エンコーダ330のことを入力軸エンコーダ330又は絶対角度エンコーダ330とも呼称する。エンコーダ330の具体的な構成については、下記(1-2.エンコーダの構成)で説明するため、ここでは詳細な説明は省略する。ただし、本実施形態では、エンコーダ330は絶対角度エンコーダであればよく、その構成は下記(1-2.エンコーダの構成)で説明する構成に限定されず、任意であってよい。
[0021] ここで、上述したように、モータ310はブラシレスモータであるため、電流の向きを切り換えるために、回転子の回転を検出するセンサ(例えばモータ駆動用ホールセンサ)が必要となる。当該回転子の回転は、入力軸の回転に対応しているため、本実施形態では、入力軸に設けられるエンコーダ330が、当該モータ駆動用ホールセンサの機能を兼ねることができる。このように、本実施形態では、エンコーダ330によって検出された入力軸の回転角度に基づいてモータ310が駆動されてよく、モータ駆動用ホールセンサは設けられなくてもよい。これにより、構成部材を減らすことができるため、アクチュエータ300の小型化、低コスト化を図ることができる。
[0022] また、入力軸にエンコーダ330が設けられることにより、減速機320の減速比を介している分、出力軸の回転角度を高精度に検出することが可能となる。例えば、減速比が1:100であれば、入力軸の回転角度が0(度)~360(度)の間で検出されたとき、出力軸の回転角度は0(度)~3.6(度)の間で変化していることになる。つまり、入力軸の回転角度を検出することは、出力軸の回転角度を減速比の分だけ拡大して検出していることに対応している。従って、エンコーダ330による入力軸の回転角度の検出値に基づいて、出力軸の回転角度を検出することにより、出力軸の回転角度を高分解能で検出することができる。なお、このような、入力軸の回転角度の検出値に基づいて、出力軸の回転角度を検出する具体的な方法については、下記<2.回転角度検出システムの構成>で詳しく説明する。
[0023] エンコーダ340は、出力軸の回転角度を検出する。本実施形態では、エンコーダ340は、絶対角度エンコーダであり、出力軸の絶対的な角度位置を検出することができる。以下では、エンコーダ340のことを出力軸エンコーダ340又は絶対角度エンコーダ340とも呼称する。なお、エンコーダ340は、エンコーダ330と同様の構成であってよく、例えば、エンコーダ340としては、下記(1-2.エンコーダの構成)で説明する構成が好適に適用され得る。ただし、本実施形態はかかる例に限定されず、エンコーダ340は絶対角度エンコーダであればよく、その構成は任意であってよい。」
(2) 技術常識1の認定
前記(1)に摘記した引用文献5の記載事項に例示されているように、次の技術事項は、当業者にとって技術常識であったと認められる。(以下「技術常識1」という。)
<技術常識1>
「ブラシレスモータにおいては、電流の向きを切り換えるために、回転子の回転を検出するセンサとして、絶対的な回転角度位置を検出するセンサが必要になること。」
7 本願発明と引用発明の対比
(1) 対比分析
本願発明と引用発明を対比する。
ア 構成Xの観点(ワイパーモータの回転角度位置検出方法)
(ア) 構成Xは、「ワイパーモータ(10)の回転部品の回転角度位置(α,β)を検出するための方法」の発明であることを特定するものである。
(イ)a 引用発明における「DR側ワイパ装置20」は、本願発明における「ワイパーモータ(10)」に相当する。
b そして、引用発明における「ウォームホイール50の回転中心」にある「出力軸51」及び「ロータ45」は、本願発明における「回転部品」に相当する。
c さらに、引用発明における「ロータ45」は、本願発明における「ロータ(15)」に相当し、引用発明における「ロータ45のステータコア44に対する回転位置」(以下「回転角度位置α’」という。)は、本願発明における「ロータ(15)」の「回転角度位置(α)」と「回転部品の回転角度位置」である点において共通する。
d さらにまた、引用発明における「ウォームホイール50の回転中心」にある「出力軸51」は、本願発明における「従動シャフト(26)」に相当し、引用発明における「出力軸51のハウジング40に対する回転位置(絶対位置)」は、本願発明における「従動シャフト(26)」の「回転角度位置(β)」に相当する。
(ウ) そうすると、「ワイパーモータ(10)の回転部品の回転角度位置(α,β)を検出するための方法」の発明である本願発明と、「DR側ワイパモータ21を備えるDR側ワイパ装置20において」「出力軸51のハウジング40に対する回転位置(絶対位置)、及び、ロータ45のステータコア44に対する回転位置を検出する方法」の発明である引用発明は、次の点において共通する。
「ワイパーモータの回転部品の回転角度位置(α又はα’,β)を検出するための方法」の発明である点。
イ 構成Aの観点(ブラシレス電気モータ)
(ア) 構成Aは、「前記ワイパーモータ(10)は、第1部品としてのブラシレス電気モータ(12)を有[する]」ことである。
(イ) 引用発明における「DR側ワイパモータ(ブラシレスモータ,駆動源)21」は、本願発明における「第1部品としてのブラシレス電気モータ(12)」に相当するところ、引用発明における「DR側ワイパ装置20」は、「DR側ワイパモータ(ブラシレスモータ,駆動源)21」を備えるものであるから、前記ア(イ)aを踏まえると、本願発明にいうところの「ブラシレス電気モータ」を有する「ワイパーモータ」であるといえる。
(ウ) したがって、本願発明と引用発明は、次の点において一致する。
「前記ワイパーモータは、第1部品としてのブラシレス電気モータを有[する]」点。
ウ 構成Bの観点(ロータ及びギアホイール)
(ア) 構成Bは、「第1部品としての前記ブラシレス電気モータ(12)は、第1回転軸線(14)を中心として回転するロータ(15)を備えるとともに、第2部品としてのギアホイール(24)を駆動[する]」ことである。
(イ)a 引用発明における「ウォームホイール50」は、本願発明における「ギアホイール(24)」に相当する。
b ここで、引用発明における「DR側ワイパモータ(ブラシレスモータ,駆動源)21」には、「ロータ(回転子)45が回転自在に設けられ」ており、また、「ロータ45の軸心には、回転軸46の軸方向一端側が固定され、回転軸46の軸方向他端側には、ウォーム46bが一体に設けられて、ウォーム46bは、ウォーム46bに噛み合うウォームホイール50とともに減速機構部SDを構成」しているところ、上記「回転軸46の軸方向」は、本願発明の「第1回転軸線」に相当し、「DR側ワイパモータ(ブラシレスモータ,駆動源)21」が「ロータ(回転子)45」を備えることは、本願発明の「第1部品としての前記ブラシレス電気モータ(12)」が「第1回転軸線(14)を中心として回転するロータ(15)を備える」ことに相当する。
c そして、引用発明の「ウォームホイール50」は、「回転軸46」と「一体に設けられ」た「ウォーム46b」と連動して、「DR側ワイパモータ(ブラシレスモータ,駆動源)21」により駆動されるのであるから、前記イの検討結果も踏まえると、引用発明における「DR側ワイパモータ(ブラシレスモータ,駆動源)21」は、本願発明にいうところの「第1回転軸線を中心として回転するロータを備えるとともに、第2部品としてのギアホイールを駆動[する]」「第1部品としての前記ブラシレス電気モータ」に相当する。
(ウ) したがって、本願発明と引用発明は、次の点において一致する。
「第1部品としての前記ブラシレス電気モータは、第1回転軸線を中心として回転するロータを備えるとともに、第2部品としてのギアホイールを駆動[する]」点。
エ 構成Cの観点(従動シャフト)
(ア) 構成Cは、「第2部品としての前記ギアホイール(24)は、第2回転軸線(28)を中心として回転するとともに、従動シャフト(26)を備え[る]」ことである。
(イ) 前記ア(イ)dの検討結果を踏まえると、引用発明における「出力軸51」は、「ウォームホイール50の回転中心」にあり、「ウォームホイール50」からみると「出力軸51」を備えているといえるから、このことは、本願発明における「第2部品としての前記ギアホイール」が「従動シャフト(26)」を備えることに相当する。
(ウ) また、引用発明における「出力軸51」は、「ウォームホイール50」が回転する回転軸線上にあるから、上記回転軸線は、本願発明の「第2部品としての前記ギアホイール(24)」が「回転する」「中心として」の「第2回転軸線(28)」に相当する。
(エ) したがって、本願発明と引用発明は、次の点において一致する。
「第2部品としての前記ギアホイールは、第2回転軸線を中心として回転するとともに、従動シャフトを備え[る]」点。
オ 構成Dの観点(ロータ及び従動シャフト)
(ア) 構成Dは、「前記回転部品は、前記ロータ(15)および前記従動シャフト(26)であ[る]」ことである。
(イ) 前記ア(イ)の検討結果を踏まえると、引用発明の「ロータ45」及び「出力軸51」は、本願発明の「回転部品」に相当し、それぞれ本願発明の「ロータ(15)」及び「従動シャフト(26)」に相当する。
(ウ) したがって、本願発明と引用発明は、次の点において一致する。
「前記回転部品は、前記ロータおよび前記従動シャフトであ[る]」点。
カ 構成Eの観点(センサ装置)
(ア) 構成Eは、「2つの前記回転部品の前記回転角度位置(α,β)は、2つのセンサ装置(31,38)により検出され[る]」ことである。
(イ)a 引用発明における「ロータ45の軸心」に固定される「回転軸46の回転状態(回転数や回転方向等)を検出する「第1センサマグネットMG1」及び「第1ホールIC(第1センサ)94a、第2ホールIC(第2センサ)94b、第3ホールIC(第3センサ)94c」並びに「各ホールIC94a,94b,94cからの各パルス信号(3相)に基づいて、ロータ45のステータコア44に対する回転位置を検出する」「CPU93」の組合せは、本願発明にいうところの「2つの前記回転部品」のうち「ロータ(15)」の「回転角度位置」を「検出」する「センサ装置(31)」に相当する。
b また、引用発明における「ウォームホイール50の回転状態(回転方向や回転位置等)」を検出する「第2センサマグネット(第2磁石)MG2」及び「MRセンサ(第4センサ)95」並びに「MRセンサ95からの出力電圧に基づいて、出力軸51のハウジング40に対する回転位置を検出する」「CPU93」の組合せも、本願発明にいうところの「2つの前記回転部品」のうち「従動シャフト(26)」の「回転角度位置」を「検出」する「センサ装置(38)」に相当する。
(ウ) そうすると、前記アの検討結果も踏まえると、本願発明と引用発明は、次の点において共通する。
「2つの前記回転部品の前記回転角度位置(α又はα’,β)は、2つのセンサ装置により検出され[る]」点。
キ 構成Fの観点(信号生成素子とセンサ素子)
(ア) 構成Fは、「2つの前記センサ装置(31,38)の各々は、信号生成素子(30;30a;30b,36)と、前記信号生成素子(30;30a;30b,36)の変化する物理的パラメータを検出するためのセンサ素子(32;32a~32d;40;40a~40d)と、を有[する]」ことである。
(イ)a 前記カの検討を踏まえると、引用発明における「第1センサマグネットMG1」は、本願発明にいうところの「2つの前記センサ装置(31,38)」のうち「センサ装置(31)」が有する「信号生成素子(30;30a;30b)」に相当する。
また、引用発明における「第2センサマグネット(第2磁石)MG2」は、本願発明にいうところの「2つの前記センサ装置(31,38)」のうち「センサ装置(38)」が有する「信号生成素子(36)」に相当する。
b また、引用発明における「第1ホールIC(第1センサ)94a、第2ホールIC(第2センサ)94b、第3ホールIC(第3センサ)94c」は、本願発明にいうところの「2つの前記センサ装置(31,38)」のうち「センサ装置(31)」が有する「前記信号生成素子(30;30a;30b)の変化する物理的パラメータを検出するためのセンサ素子(32;32a~32d)」に相当する。
また、引用発明における「MRセンサ(第4センサ)95」は、本願発明にいうところの「2つの前記センサ装置(31,38)」のうち「センサ装置(38)」が有する「前記信号生成素子の変化する物理的パラメータを検出するためのセンサ素子(40;40a~40d)」に相当する。
(ウ) したがって、本願発明と引用発明は、次の点において一致する。
「2つの前記センサ装置の各々は、信号生成素子と、前記信号生成素子の変化する物理的パラメータを検出するためのセンサ素子と、を有[する]」点。
ク 構成Gの観点(絶対角度位置)
(ア) 構成Gは、「前記回転部品の絶対角度位置(α,β)が、前記センサ装置(31,38)によりそれぞれ検出され[る]」ことである。
(イ) 前記ア、カ及びキを踏まえると、引用発明において、「ロータ45のステータコア44に対する回転位置」(α’)が「第1センサマグネットMG1」及び「第1ホールIC(第1センサ)94a、第2ホールIC(第2センサ)94b、第3ホールIC(第3センサ)94c」並びに「CPU93」の組合せにより検出されることは、本願発明において、「2つの前記回転部品」のうち「ロータ(15)」の「角度位置(α)」が「前記センサ装置(31)により」「検出」されることに相当する。
(ウ) 同様に、引用発明において、「出力軸51のハウジング40に対する回転位置(絶対位置)」が「第2センサマグネットMG2」、「MRセンサ(第4センサ)95」及び「CPU93」の組合せにより検出されることは、本願発明において、「2つの前記回転部品」のうち「従動シャフト(26)」の「絶対角度位置(β)」が「前記センサ装置(38)により」「検出」されることに相当する。
(エ) したがって、本願発明と引用発明の構成Gの観点における一致点及び相違点は、次のa及びbに示すとおりである。
a 構成Gの観点における一致点
「前記回転部品の絶対角度位置(β)と角度位置(α又はα’)が、前記センサ装置によりそれぞれ検出され[る]」点。
b 構成Gの観点における相違点
本願発明においては、
「回転部品の絶対角度位置(α)」が検出されるのに対して、
引用発明においては、
「回転角度位置α’」(「ロータ45のステータコア44に対する回転位置」)は、「角度位置」であるものの、「絶対角度位置」であるのか少なくとも明示されていない点。
ケ 構成H~Jの観点(回転角度位置(α,β)の相互関連)
(ア) 構成H~Jは、次のとおりである。
H 前記従動シャフト(26)の特定の回転角度位置(β)が前記ロータ(15)の少なくとも1つの特定の回転角度位置(α)に一致するように、2つの前記回転部品の前記回転角度位置(α,β)を互いに一致させ、
I 2つの前記回転部品の現在一致している前記回転角度位置(α,β)が、記憶・評価ユニット(48)に記憶されている値と比較され、
J 現在の値と記憶された値との間の記憶された限界値(σ)を超えた場合、信号やエラーメッセージが生成されること。
(イ) 引用発明は、本願発明の構成H~Jに相当する構成を備えていないから、本願発明と引用発明は、構成H~Jの点において相違する。
(2) 一致点及び相違点
前記(1)の対比分析の結果をまとめると、本願発明と引用発明の一致点及び相違点は、それぞれ次のア及びイに示すとおりである。
ア 一致点
「ワイパーモータの回転部品の回転角度位置(α又はα’,β)を検出するための方法であって、
前記ワイパーモータは、第1部品としてのブラシレス電気モータを有し、
第1部品としての前記ブラシレス電気モータは、第1回転軸線を中心として回転するロータを備えるとともに、第2部品としてのギアホイールを駆動し、
第2部品としての前記ギアホイールは、第2回転軸線を中心として回転するとともに、従動シャフトを備え、
前記回転部品は、前記ロータおよび前記従動シャフトであり、
2つの前記回転部品の前記回転角度位置(α又はα’,β)は、2つのセンサ装置により検出され、
2つの前記センサ装置の各々は、信号生成素子と、前記信号生成素子の変化する物理的パラメータを検出するためのセンサ素子と、を有し、
前記回転部品の絶対角度位置(β)と角度位置(α又はα’)が、前記センサ装置によりそれぞれ検出される
方法」の発明である点。
イ 相違点
(ア) 相違点1
本願発明においては、
「回転部品の絶対角度位置(α)」が検出されるのに対して、
引用発明においては、
「回転角度位置α’」(「ロータ45のステータコア44に対する回転位置」)は、「角度位置」であるものの、「絶対角度位置」であるのか少なくとも明示されていない点。
(イ) 相違点2
本願発明においては、
「前記従動シャフトの特定の回転角度位置(β)が前記ロータの少なくとも1つの特定の回転角度位置(α)に一致するように、2つの前記回転部品の前記回転角度位置(α,β)を互いに一致させ、
2つの前記回転部品の現在一致している前記回転角度位置(α,β)が、記憶・評価ユニットに記憶されている値と比較され、
現在の値と記憶された値との間の記憶された限界値(σ)を超えた場合、信号やエラーメッセージが生成される」
のに対して、
引用発明においては、このような構成は含まれていない点。
8 判断
(1) 相違点1について
ア 引用発明の「回転角度位置α’」の検討
(ア) 引用発明は、「各ホールIC94a,94b,94cからの各パルス信号(3相)に基づいて、ロータ45のステータコア44に対する回転位置を検出する」ものであり、円周上に三つのホールICが所定の角度間隔で配置されていることは自明であるから、「回転角度位置α’」は、ホールICの配置数に応じた角度分解能で検出されるものであるところ、3相のうちの一つの相を回転位置の基準にとれば、他の二つの相は、上記角度分解能の範囲で検出された、当該基準位置からみた絶対角度位置を示すことになる。
このことは、ホールICの配置数が大きくなれば、角度分解能が高くなり、特定のホールICの出力する信号の位相位置を基準とした、検出精度のより高い回転位置を検出できるようになることからも裏付けることができる。
(イ)a この点に関し、本願の明細書の【0026】を参照すると、「絶対回転角度位置とは、固定した基準位置(0度の角度位置)に対する回転部品の回転角度を意味するものとして理解される。」と記載されており、ある特定の位置を基準位置として固定し、当該基準位置からの変位を絶対回転角度位置として検出しているから、本願発明の「回転角度位置(α)」と引用発明の「回転角度位置α’」は、せいぜい角度分解能に程度の差異があることぐらいであって、その属性は同じものである。
b さらに、本願発明においても、前記アに摘記した本願明細書の【0026】に「第1磁気素子構成体30は、例えばセンサ素子32と相互作用する。センサ素子32は、例えば、ホールセンサ構成体を備えている。ホールセンサ構成体は、第1磁気素子構成体30の回転角度位置から、ロータ15またはロータシャフト20の絶対回転角度位置に関する結論を直接的に導くように構成されている。」と記載されており、引用発明と同様に磁極とホールセンサを組合せた手段により「絶対回転角度位置」が検出されているから、回転角度位置の検出原理からみても、両者に本質的な差異があるとは認められない。
(ウ) そうすると、引用発明において検出される「回転角度位置α’」は、「絶対角度位置」であると考えて差し支えないから、本願発明の「回転角度位置(α)」と引用発明の「回転角度位置α’」との間に実質的な差異は認められず、前記相違点1は、実質的には相違点ではないといえる。
イ 技術常識1を踏まえた検討
また、仮に引用発明の当該「回転位置」が「絶対角度位置」に相当するものではないとして検討しても、前記6(2)において「技術常識1」として認定したように、「ブラシレスモータにおいては、電流の向きを切り換えるために、回転子の回転を検出するセンサとして、絶対的な回転角度位置を検出するセンサが必要になること」は技術常識であるから、引用発明における「回転角度位置α’」を「絶対角度位置」として検出することは、当業者にとっては、自明の設計上の事項にすぎない。
ウ 相違点1の検討のまとめ
したがって、前記相違点1は実質的な相違点ではないか、引用発明及び技術常識1に基づいて当業者が容易に想到し得たことである。
(2) 相違点2について
ア 回転角度位置(α,β)を互いに一致させることについて
(ア) 相違点2に係る構成
相違点2に係る構成を再掲すると、次のとおりであり、構成H及び構成Iには、「一致」という語句が含まれているところ、以下では、この語句の意味について、本願の明細書や原文の記載を手がかりにして検討する。
「(構成H) 前記従動シャフトの特定の回転角度位置(β)が前記ロータの少なくとも1つの特定の回転角度位置(α)に一致するように、2つの前記回転部品の前記回転角度位置(α,β)を互いに一致させ、
(構成I) 2つの前記回転部品の現在一致している前記回転角度位置(α,β)が、記憶・評価ユニット(48)に記憶されている値と比較され、
(構成J) 現在の値と記憶された値との間の記憶された限界値(σ)を超えた場合、信号やエラーメッセージが生成される」
(イ) 本願明細書の記載
本願発明における「前記回転角度位置(α,β)を互いに一致させ[ること]」の技術内容を理解するために、本願明細書の【0033】~【0034】を参酌すると、次の記載がある。
「【0033】
IC44は、ワイパーモータ10の付加的な機能を可能とする記憶・評価ユニット48を選択的に有している。図7は、ロータ15の絶対回転角度αおよびギアホイール24の絶対回転角度βに対して、センサ装置31、38によりそれぞれ検出された信号SR、SGを上下にして示す。ここで、ギアホイール24の約360°の回転(信号SGの最大値)において、構成要素が新品状態、または構成要素間に遊びのないロータ15は、例えば12回、回転したことがわかる。さらに、図7の下部において、破線で示された信号SGの信号プロファイルは、一定の動作継続時間後に生じる状況、または互いに作動可能に接続されたロータシャフト20若しくはロータ15の部品と、従動シャフト26若しくはギアホイール24の部品との間で摩耗が生じた状況を示している。具体的には、ロータ12の12回の回転後、ギアホイール24の信号SGがその最大値に達しなかったこと、すなわち、ギアホイール24が、約360°回転していないことがわかる。これは、追加角度オフセットδが生じる事例である。
【0034】
角度オフセットδが、記憶・評価ユニット48に記憶された限界値を超えると直ちに、ワイパーモータ10の構成部品における摩耗に関する結論が導かれる。そして、このことは、エラーメッセージとして例えばエラーメモリに記憶され、対応する信号が生成されるなどする。」
(ウ) 原文の記載
また、本願の国際出願日における国際出願の請求の範囲の記載を見ると、本願発明に対応する請求項3の記載は次のとおりであり、「一致する」との記載に対応するものは、原文では「be matched with」との語句による表現が用いられている。
「3. Method according to Claim 1 or 2,
characterized in that
the rotary angle positions (α, β) of the two rotating parts are matched with each other in such a manner that a specific rotary angle position (β) of the driven shaft (26) is matched with at least one specific rotary angle position (α) of the rotor (15), that currently matched rotary angle positions (α, β) of the two rotating parts are compared to values stored in a storage and evaluation unit (48) and that a signal, an error message or the like is generated when a stored limit value (σ) between current values and stored values is exceeded.」
(エ) 「一致する」の意味
以上を考慮すると、相違点2に係る構成における「一致する」は、より正確には、「マッチされる(何らかの意味において最適な組合せになるように組み合わせられる)」という意味であることが理解できる。
イ 相違点2の検討
前記アを踏まえて以下検討する。
(ア) 引用文献2技術事項の適用について
a 前記5(2)において引用文献2技術事項として認定したように、引用文献2には「減速機を有するワイパシステムにおいて、減速機の入力軸及び出力軸の回転角度の差を用いて減速機の異常を判断し、不具合情報を伝達すること」が記載されている。
b ここで、引用発明は、「DR側ワイパ装置20」の「ハウジング40」が「減速機構収容部42」を備えていることを踏まえると、減速機構を有するワイパ装置を前提とする方法であるところ、引用発明の「DR側ワイパ装置20」においても減速機構の異常を判断する必要があることは自明のことである。
c そうすると、引用発明において、引用文献2技術事項を適用して、回転軸46と出力軸51の回転角度の差を用いて異常を判断し、その情報を伝達することは、当業者が容易に想到し得たものといえる。
(イ) 構成Hの導出について
a ここで、引用発明において引用文献2技術事項を適用すると、「出力軸51のハウジング40に対する回転位置(絶対位置)」と「ロータ45のステータコア44に対する回転位置」の差を用いて異常を判断することとなるところ、正常な場合にはその差が「ゼロ」となるようにすることは、あまりにも自明の選択肢にすぎない。
b そうすると、「出力軸51のハウジング40に対する回転位置(絶対位置)」のうちの特定の位置が「ロータ45のステータコア44に対する回転位置」のうちの特定の位置にマッチされることとなる。
このことは、本願発明の構成Hの「前記従動シャフト(26)の特定の回転角度位置(β)が前記ロータ(15)の少なくとも1つの特定の回転角度位置(α)に一致するように、2つの前記回転部品の前記回転角度位置(α,β)を互いに一致させ[る]」ことに相当する。
(ウ) 構成I及び構成Jの導出について
そして、異常の判断に際して、適当な基準値を設けて、メモリに記憶し、当該基準値を超えた場合に異常とすることは、あまりにも自明のことにすぎないから、引用発明において、「出力軸51のハウジング40に対する回転位置(絶対位置)」と「ロータ45のステータコア44に対する回転位置」の差が、メモリに記憶されている基準値を超えた場合に異常と判断し、その情報を伝達することは、当業者には自明のことにすぎない。
このことは、本願発明の構成I及びJの「2つの前記回転部品の現在一致している前記回転角度位置(α,β)が、記憶・評価ユニット(48)に記憶されている値と比較され、」「現在の値と記憶された値との間の記憶された限界値(σ)を超えた場合、信号やエラーメッセージが生成されること」に相当する。
(エ) 相違点2の検討のまとめ
以上のとおりであるから、前記相違点2に係る本願発明の構成は、引用発明及び引用文献2技術事項に基づいて当業者が容易に想到し得たことである。
(3) 総合評価
前記(1)及び(2)において検討したとおり、引用発明において、前記相違点1及び2に係る本願発明の構成を備えるようにすることは、引用発明、引用文献2技術事項及び技術常識1に基づいて当業者が容易に想到し得たことである。
そして、相違点1及び2を総合的に勘案しても、本願発明が奏する効果としては、当該構成のものとして当業者が予測・発見困難であり、かつ、格別顕著な効果を認めることはできない。
したがって、本願発明は、引用発明、引用文献2技術事項及び技術常識1に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
9 請求人の主張について
(1) 請求人の主張内容
請求人は、審判請求書において、次の主張をしている。
引用文献1-4には、相違点1及び相違点2について何も記載されていない。
引用文献5に記載されたものは、「アクチュエータ及びロボットアーム装置」であり、引用発明とは異なり、ロボットアームのアクチュエータの位置決定に向けられた文献であり、仮に、引用文献5の装置がモータとギアボックスと位置センサとを備えているからといって、その装置が、自動的にフロントガラス・ワイパー・システムでの使用に適するということにはならない。
フロントガラス・ワイパー・システムは、おそらく、高速かつ連続動作で実行される多くのサイクルにわたって、位置検出の「ズレ」を最小化又は防止することを目標としており、これに対して、引用文献5のロボットアームのアクチュエータは、短時間の離散的な移動操作の高精度の位置決定を目標としていると考えられる。したがって、引用文献5のような文献からの教示であって、ロボット工学及び運動制御に関連する教示が、フロントガラス用ワイパーモータの問題に適用できること、又は、その分野の問題に適用できる可能性があることを、当業者が必ずしも認識するわけではない。このため、引用文献5に記載された発明を引用発明に適用する動機付けは無い。
更に言えば、ワイパーモータは、ある対象物(ワイパー、ワイパーに関連するアーム及びワイパーリンク機構)を一定の範囲内で本質的に連続運動させることを意図しているのに対し、引用文献5に記載されたモータと同様に、ステアリングモータは、短く、個別の移動操作による高精度の位置決定を目標としており、当業者であれば、引用文献5からの教示が、フロントガラス用ワイパーモータの問題に対して適切であるとは認識せず、また、当業者であれば、相当な労力を費やし実験を行ったとしても、引用文献5からの教示が、フロントガラス用ワイパーモータの問題に適用できる可能性があることすら認識しないと考えられる。
(2) 請求人の主張についての検討
ア 相違点1に関する主張について
前記8(1)において検討したように、相違点1は実質的な相違点でないか、又は、引用発明及び技術常識1(ブラシレスモータにおいては、電流の向きを切り換えるために、回転子の回転を検出するセンサとして、絶対的な回転角度位置を検出するセンサが必要になること)に基づいて当業者が容易に想到し得たことである。
請求人は、引用文献5に記載されたものはロボットアームのアクチュエータに関するものであり、ワイパに関する引用発明との用途の相違を主張するが、引用文献5はブラシレスモータに関する技術常識1を例示する文献として挙げたものである。
以上のとおりであるから、相違点1に関する請求人の主張は、前記8(3)の結論を左右するものではない。
イ 前記相違点2に関する主張について
相違点2に係る本願発明の構成が引用発明及び引用文献2技術事項に基づいて当業者が容易に想到し得たことであることは、前記8(2)イにおいて検討したとおりである。
相違点2に係る構成の想到容易性の根拠となる記載が引用文献2に何も無いかのごとき請求人の主張は、採用することができない。
10 むすび
以上検討のとおり、本願発明は、特許法29条2項の規定により、特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2024-005366