特許拒絶査定不服審判
2024-003532
情報処理装置、情報処理方法及び情報処理プログラム
- 審判番号
- 2024-003532
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2023-092565外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2024年02月28日
- 審決日
- 2024年10月07日
- 公報発行日
- 2024年12月27日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】PayPay株式会社
- 【請求人代理人】弁理士法人酒井国際特許事務所
- 【請求人】PayPay証券株式会社
- 【請求人代理人】弁理士法人酒井国際特許事務所
- 分類
- P18 .113-Z (G06Q) / P18 .121-Z (G06Q)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第2項、特許法第17条の2第6項、特許法第17条の2第5項第2号、特許法第29条第1項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2023- 92565「情報処理装置、情報処理方法及び情報処理プログラム」拒絶査定不服審判事件〔令和 5年10月20日出願公開、特開2023-155224〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、令和4年4月8日の出願である特願2022-64635号の一部を同年9月12日に新たな特許出願(特願2022-144250号)とし、さらに、その一部を同5年6月5日に新たな特許出願としたものであり、その手続の経緯は以下のとおりである。
令和 5年 8月16日付け:拒絶理由通知書
令和 5年10月23日 :意見書、手続補正書の提出
令和 5年11月21日付け:拒絶査定
令和 6年 2月28日 :審判請求書、手続補正書の提出
令和 6年 8月 7日 :上申書の提出
第2 令和6年2月28日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和6年2月28日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
1 本件補正について(補正の内容)
(1)本件補正後の特許請求の範囲の記載
本件補正による補正後の特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおりである。(下線部は、補正箇所である。)
「金融商品を保有するユーザであって、当該ユーザが保有する金融商品の売却代金に関する債権を決済サービス事業者に譲渡したユーザから当該金融商品を売却する旨の指示を受け付けた場合は、前記決済サービス事業者の決済サーバであって、前記債券を譲渡する契約を前記ユーザから受け付け、前記債権を譲渡したユーザが金融商品を売却する旨の指示を行った当日に、前記債券の譲渡先となる決済サービス事業者の資産を原資として当該金融商品の売却代金に基づいた額の電子マネーを前記決済サービス事業者が提供する決済サービスにおける前記債権を譲渡したユーザの電子マネー口座にチャージする決済サーバに対し、前記金融商品の売却代金に関する情報を送信する
ことを特徴とする情報処理装置。」
(2)本件補正前の特許請求の範囲
本件補正による補正前の特許請求の範囲(令和5年10月23日にされた手続補正による補正後の特許請求の範囲)の請求項1の記載は、次のとおりである。
「金融商品を保有するユーザであって、当該ユーザが保有する金融商品の売却代金に関する債権を決済サービス事業者に譲渡したユーザから当該金融商品を売却する旨の指示を受け付けた場合は、前記決済サービス事業者の決済サーバであって、前記債権を譲渡したユーザが金融商品を売却する旨の指示を行った当日に、当該金融商品の売却代金に基づいた額の電子マネーを前記決済サービス事業者が提供する決済サービスにおける前記債権を譲渡したユーザの電子マネー口座にチャージする決済サーバに対し、前記金融商品の売却代金に関する情報を送信する
ことを特徴とする情報処理装置。」
2 補正の適否
本件補正による請求項1の補正は、本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「金融商品の売却代金に関する情報」の「送信」の送信先である「決済サービス事業者の決済サーバ」を、「前記債券を譲渡する契約を前記ユーザから受け付け」るものであるとし、かつ、本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「債権を譲渡したユーザの電子マネー口座」への「チャージ」を「前記債券の譲渡先となる決済サービス事業者の資産を原資として」行うものである旨を特定することで、「金融商品の売却代金に関する情報」の「送信」に限定を付加するものであり、全体として発明特定事項の減縮を目的としたものといえる。また、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題は同一である。
よって、本件補正による請求項1の補正は、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正による請求項1の補正が同条第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(本件補正後の請求項1に記載されている事項により特定される発明(以下「本件補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下、検討する。
(1)本件補正発明
本件補正発明は、前記1(1)に記載したとおりのものである。
なお、本件補正発明中「債券」とあるのは「債権」の誤記であることが
明らかであるので、以下、「債券」を「債権」と表記する。
(2)引用文献1の記載事項
ア 原査定の拒絶の理由で引用文献1として引用された特開2021-125263号公報(令和3年8月30日出願公開。以下「引用文献1」という。)には、図面とともに、次の記載がある。(下線は当審で付した。以下同じ。)
「【0076】
・・・
このような投資信託の換金については、従来のシステムで対応できるものの、上記[発明が解決しようとする課題]において説明したように、ユーザが投資信託の換金を申し込んでから解約代金(以下、「代金」という)である現金がユーザに受け渡されるまでに時間が掛かるという課題に対処できていなかった。
これに対し、本発明の一実施形態に係る投信取引システムSは、投資信託の換金の申込時における既知の時価に基づいて対価をすぐに算出し、電子マネーなどの電子有価財を用いて代金をユーザにすぐに受け渡すことで前記課題を解決するものである。
以下、投信取引システムSについて説明する。
【0077】
(投信取引システム)
図8は本発明の金融商品取引システムの一実施形態に係る投信取引システムSの全体構成を示す図である。
図8に示すように、投信取引システムSは、投資信託上の受益者であるユーザが使用するユーザ端末30、投資信託上の委託者である委託会社において管理される投信取引サーバ40、投資信託の取引業務の支援を行う業務支援サーバ50、及び所定の電子マネーサービスを運営する電子マネー会社において管理される電子マネー会社サーバ60等によって構成され、これら各装置と、資金運用支援システム1の各装置とがネットワーク2を介して通信可能に接続されている。
・・・
【0079】
図9は、投信取引システムSの機能構成を示す図である。
図9に示すように、ユーザ端末30は、ログイン部311、及び換金申込部312を備える。
投信取引サーバ40は、投資信託の取引に係る各種処理を行う装置であり、認証部401、申込受付部402、対価算出部403、手数料算出部404、課税額算出部405、取引基準価格決定部406、電子マネー発注部407、及び現金処理部408を備える。
【0080】
業務支援サーバ50は、投信取引サーバ40における投資信託の取引処理を支援する装置であり、ユーザ情報DB501、口座情報DB502、及び基準価額DB503を備える。
電子マネー会社サーバ60は、所定の電子マネーサービスを提供可能な装置であり、電子マネー処理部601を備える。
本実施形態の電子マネー会社サーバ60は、少なくとも、「前払式支払手段」に該当する電子マネー(以下、第1電子マネーと称する)のサービスと、「資金移動」に該当する電子マネー(以下、第2電子マネーと称する)のサービスと、を提供可能に構成されている。
第1電子マネーに係る「前払式支払手段」は、記録媒体であるカードや携帯電話に金銭的価値としての電子マネーをチャージすることで、その残高を増やすことができるものであり、残高の範囲内において商品やサービスを購入できるようになっている。
例えば、第1電子マネーには、所定のギフトサービスがあり、ギフトID発行者が発行する金銭的価値に相当するギフトIDを電子マネーサービスの会員に送り、当該会員が、受け取ったギフトIDや会員番号等を専用サイトにおいて入力することでもチャージ可能になっている。
便宜上、第1電子マネーにおいて、カードや携帯電話などの記録媒体を「nカード等」と称し、ギフトサービスを「nギフト」と称する。
第2電子マネーに係る「資金移動」は、犯罪収益移転防止法にて取引時確認をしなければならない取引と定められている。
例えば、第2電子マネーは、本人情報で本人確認を行った上で、Webサイト上に設けた会員の電子マネー口座(単に口座ともいう)に金銭的価値としての電子マネーを直接的にチャージできるようになっており、会員は、自身の口座の残高の範囲内において商品やサービスを購入できるようになっている。
なお、電子マネー会社サーバ60は、上記電子マネーに限らず様々なタイプの電子マネーを提供可能に構成することができる。
また、電子マネー会社サーバ60は、第1電子マネー(nギフト含む)と第2電子マネーの2つの電子マネーサービスを1台の装置で統括的に運営する態様でもよく、2台の装置でそれぞれ独立して運営する態様でもよい。
また、電子マネー会社サーバ60は、第1電子マネー及び第2電子マネーの運営の委託を受けた外部機関が運営する装置であってもよい。
・・・
【0082】
まず、業務支援サーバ50が備える各種データベース(ユーザ情報DB501、口座情報DB502、基準価額DB503)について説明する。
図10は、ユーザ情報DBの一例であり、図11は、口座情報DBの一例であり、図12は、基準価額DBの一例である。
ユーザ情報DB501は、お釣り運用サービスのユーザのアカウント情報(ユーザID、パスワード)により構成されるデータベースである。
図10に示すように、ユーザ情報DB501には、ユーザが第1電子マネーや第2電子マネーの会員でもある場合には、それぞれのサービスを利用する際に必要な情報(アカウント情報等)を紐付けて登録しておくこともできる。
例えば、第1電子マネーを利用する場合には、会員の会員番号とパスワードが求められるが、そのうちの会員番号を紐付けて登録することができる(図10参照)。
また、第2電子マネーを利用する場合には、会員の口座番号や本人情報(ユーザ名等)が求められるが、そのうちの口座番号を紐付けて登録しておくことができる。
なお、パスワード(第1電子マネーの場合)や本人情報(第2電子マネーの場合)を登録することもできる。」
「【0086】
投信取引サーバ40の認証部401は、ログイン情報を受信すると、業務支援サーバ50にログイン情報を送信することで、当該ログイン情報とユーザ情報DB501(図10)に記憶されているアカウント情報とを照合させる。
照合の結果、一致が確認された場合、ユーザ端末30は、ログイン画面として、図13に示すホーム画面(アプリ画面)を表示部36に表示する。
これにより、ユーザは、ホーム画面に設けられた各メニューのサービスを利用できるようになる。
例えば、ホーム画面の各メニューの中から「各種設定」ボタンを選択することで、ユーザのアカウント情報を表示部36に表示することができ、当該アカウント情報を確認したり、変更することができる。
【0087】
電子マネーサービス(第1電子マネー又は第2電子マネー)との連携処理を行う場合には、その都度、その電子マネーサービスを利用する際に必要な情報(電子マネーサービスのアカウント情報)の入力を求め、入力された情報を電子マネー会社サーバ60に送信して認証することができる。
例えば、第1電子マネーでのチャージ(以下、nチャージという)が選択された場合には、アプリ画面上に会員番号及びパスワードなどの入力を求め、入力された情報が認証された場合に「nチャージ」を実行できるようにすることができる。
同様に、第2電子マネーのチャージ(以下、dチャージという)が選択された場合には、アプリ画面上に口座番号及び本人情報(会員のユーザ名等)などの入力を求め、入力された情報が認証された場合に「dチャージ」を実行できるようにすることができる。
なお、一度連携処理が行われると、アカウント情報をサーバ側で保持するようにして、一定期間はアカウント情報の入力を不要にすることもできる。
【0088】
ユーザ端末30の換金申込部312は、所定操作に基づいてユーザが保有する投資信託の換金の申し込み処理を行う。
具体的には、ホーム画面(図13参照)の各メニューの中から「出金」を選択する。
なお、「出金」と「換金」とは同義であるが、主にアプリ上の用語として「出金」を用いる。
ホーム画面において「出金」を選択すると、図14に示す出金方法選択画面に遷移する。
出金方法選択画面には、現金による出金を選択する場合の操作手段として「現金で出金」ボタンb1が設けられており、電子マネーやポイントなどの電子有価財による出金(以下、電子チャージ出金という)を選択可能な操作手段として、「nチャージ」ボタンb2及び「dチャージ」ボタンb3が設けられている。
【0089】
「nチャージ」は、第1電子マネーにおけるnギフトを用いたチャージによる出金方法であって、金額に対応したギフトIDをユーザ宛に送ることで、ユーザのnカード等にその金額の電子マネーをチャージ可能にするものである。
「dチャージ」は、第2電子マネーによる出金方法であって、ユーザの電子マネー口座に直接的に電子マネーをチャージするものである。
なお、第1電子マネーや第2電子マネー以外の他の電子マネーやポイントを用いた電子チャージ出金方法を採用することもできる。これについては、後記「応用例・変形例」において説明する。
このように、投資信託の換金の申込みとして、電子有価財での受渡しを求める申込み(第1申込み)と、現金での受渡しを求める申込み(第2申込み)とがあり、このうちのいずれかを選択して申込みできるようになっている。」
「【0094】
投信取引サーバ40の申込受付部402は、ユーザが保有する投資信託の換金の申込みを受け付ける。
具体的には、申込受付部402は、ユーザ端末30から換金申込情報を受信することに基づいて投資信託の換金の申込みを受け付ける。
このとき、申込受付部402は、換金申込情報に電子チャージ選択情報が含まれていることに基づき電子マネーの受け渡しを求める第1申込みを受け付ける。
【0095】
また、申込受付部402は、換金申込情報を受信した日を「申込日」として特定し、当該申込日と、電子チャージ選択情報とを対価算出部403に出力する。
また、申込受付部402は、ユーザIDをキーとして業務支援サーバ50に口数残高要求情報を送信することにより、口座情報DB502(図11)からユーザが保有する投資信託の現在の口数残高を取得し、これを応答情報に含めてユーザ端末30に送信する。
ユーザ端末30の換金申込部312は、投信取引サーバ40から応答情報を受信すると、図15に示す出金内容入力画面を表示部36に表示する。
これにより、表示部36の画面は、出金方法選択画面(図14)から出金内容入力画面(図15)に遷移する。
【0096】
図15に示すように、出金内容入力画面には口数入力欄c1が設けられており、この口数入力欄c1に任意の換金口数を入力できるようになっている。
また、出金内容入力画面には、ユーザが保有する投資信託の現在の口数残高が表示される(領域c2参照)。
これにより、ユーザは、自身が保有する投資信託の口数残高を把握することでき、この口数残高の範囲内で円滑に換金口数を入力することができる。
ユーザ端末30の換金申込部312は、出金内容入力画面において換金口数が入力されると、当該入力された換金口数の情報を投信買取サーバ40(審決注:「投信取引サーバ40」の誤記と認められる。)の申込受付部402に送信する。
【0097】
投信取引サーバ40の申込受付部402は、ユーザ端末30から換金口数の情報を受信すると、当該換金口数を対価算出部403に出力する。
対価算出部403は、申込受付部402から「申込日」及び「電子チャージ選択情報」を入力すると、取引基準価格決定部406に対し「申込日」の前営業日の基準価額を取引基準価格とする情報の問い合わせを行う。
取引基準価格決定部406は、問い合わせに応じ、申込みを受け付けたときより前の時点における時価を取引基準価格として決定する。
具体的には、業務支援サーバ50の基準価額DB503(図12)にアクセスし、当該基準価額DB503に記憶されている過去の基準価額の中から申込日の前営業日の基準価額を抽出し取引基準価格として決定する。
なお、本実施形態では、申込日の前営業日の基準価額を取引基準価格としているが、これに限らず、例えば、申込日の2営業日前の基準価額を取引基準価格とすることもでき、申込日の過去の営業日における基準価額であれば、取引基準価格とすることができる。
取引基準価格決定部406は、決定した取引基準価格を対価算出部403に出力する。
【0098】
対価算出部403は、取引基準価格決定部406により決定した取引基準価格に基づいて、投資信託の対価を算出する。
具体的には、取引基準価格決定部406から入力した基準価額(申込日の前営業日の基準価額)と、申込受付部402から入力した換金口数とに基づいて、換金対象の投資信託の対価を算出する。
【0099】
また、対価算出部403は所定の手数料を加味して出金額を算出することもできる。
具体的には、対価算出部403の手数料算出部404が、手数料を算出する。
例えば、前営業日の基準価額が10,674円/1万口で、換金口数が3000口の場合、スプレッド(手数料5%)を控除した買取価額10,140円となるため、換金対象の投資信託の対価は3,042円と算出される。
つまり、元の対価(3,202円)から160円の手数料が控除された額(3,042円)が投資信託の対価として算出される。
【0100】
ところで、投信取引サーバ40は、所定の手数料を設定することが可能な手数料設定部を備えている(図示商略)。
手数料設定部においては、以下の(i)~(ii)の事項を加味して手数料を設定することができる。
(i)基準価額の変動リスクに対する委託会社のコスト負担
電子チャージ出金は、委託会社がユーザの保有する受益権(投資信託)の対価相当分の電子マネーをユーザに受け渡すことの引き換えに、ユーザが保有する受益権を委託会社が受け取ることで実現している。
つまり、委託会社が、ユーザが保有する受益権をユーザから買い取る形をとっている。
また、委託会社は、ユーザから買い取った受益権をその後に売却することで、電子マネーの購入、すなわち、受益権の買取りに要した費用を回収するようにしている。
このような仕組みでは、受益権を買い取ったときの基準価額と、買い取った受益権をその後に売却するときの基準価額との変動がある場合には、委託会社がその変動に伴うコスト(変動リスク)を負担しなければならない。
しかも、この変動リスクは、従来のブラインド方式においては、ユーザが負担していたものである。
【0101】
このような理由から、手数料設定部は、上記基準価額の変動リスクに対応した費用や料率を設定するなど、上記変動リスクを加味した手数料を設定することができる。
具体的には、手数料設定部は、ユーザが保有する金融商品としての投資信託を委託者が購入したときの時価と、委託者がユーザから購入した投資信託を換金するときの時価との変動を加味して手数料を設定することができる。
【0102】
(ii)即時出金可能としたことによる付加価値及びコスト
従来の方式(現金での出金)では、換金の申込みから代金の受渡しまでに時間が掛かるところ、電子チャージ出金にすることで、申込み時に即時に代金をユーザに受渡すことを可能としている。
これにより、利便性が向上するなど付加価値の高いサービスを実現していることでユーザに利益を与えている。
また、このようなサービスを実現するための諸々のコストがかかっている。
【0103】
このような理由から、手数料設定部は、上記利益及びコストに対応した費用や料率を設定するなど、上記利益及びコストを加味して手数料を設定することができる。
具体的には、手数料設定部は、申込受付部402が、電子マネー等の電子有価財での受渡しを求める第1申込みを受け付けた場合、電子マネー等をユーザが受け取ることによるユーザの利益を加味して手数料を設定することができる。
【0104】
対価算出部403は、これらの算出結果に基づき、ユーザに受け渡す代金である出金額を算出する。
また、対価算出部403は、課税額を加味して出金額を算出することもできる。
課税額は、課税額算出部405により算出することができる。
具体的には、前営業日の個別元本を用いて譲渡損益を算出する。算出した譲渡損益と年間の累計譲渡損益から、所得税及び住民税の源泉徴収額又は還付額を算出する。
【0105】
例えば、前営業日の個別元本が9,640円、譲渡損益は150円(譲渡益)、年間の累計譲渡損益の値が正の場合、譲渡益150円は全て源泉徴収対象となり、所得税及び住民税の合計は29円となる。
このため、投資信託の対価が3,042円、源泉徴収額が29円の場合、出金額は3,013円と算出される。
対価算出部403は、算出した出金額の情報をメモリ等の記憶手段に一時的に記憶させるとともに、上記各算出結果の情報をユーザ端末30に送信する。
【0106】
ユーザ端末30は、対価算出部403から受信した各算出結果を表示部36に表示する。
具体的には、図16の出金内容確認画面に示すように、「即時出金額」として出金額(3,013円)が表示され、「即時出金における取引価格」として換金対象の投資信託の対価(3,202円)が表示され、「源泉徴収(還付)」(-29円)が表示されるとともに、即時出金額(出金額)が、換金対象の投資信託の対価から源泉徴収を差し引いた金額であることを把握可能に表示される。
なお、本実施形態では、手数料込みで出金額を表示する表示態様を採用しているが(図16参照)、手数料を外だし表示することで、手数料がいくらかわかるようにすることもできる。
【0107】
ここで、出金内容確認画面の下部に設けられている「出金」ボタンb4が選択されると、出金手続きが完了する。
出金手続きが完了すると、ユーザ端末30は、図17に示すように、出金手続きが完了した旨のメッセージを含む出金手続完了画面を表示部36にすることができる。
また、ユーザ端末30は、出金手続きの操作に応じ、出金を実行する旨の情報を投信取引サーバ40の対価算出部403に送信する。
【0108】
投信取引サーバ40の対価算出部403は、ユーザ端末30から出金を実行する旨の情報を受信すると、メモリに記憶している出金額の情報と、電子チャージ選択情報とを電子マネー発注部407に出力する。
【0109】
電子マネー発注部407は、電子マネー会社サーバ60に対し、対価算出部403により算出した対価に相当する電子マネーに関する発注処理を行う。
電子マネー発注部407は、具体的には、以下の処理を実行する。」
「【0117】
電子チャージ選択情報に基づき、出金方法として「dチャージ」が選択されていることが判定された場合は、電子マネー発注部407は、第2電子マネーを運営する電子マネー会社サーバ60が提供するAPI(以下、d-APIという)を呼出す。
電子マネー発注部407は、d-APIを呼び出すと、メモリから出金額の情報を取出し、これを発注額として当該APIに入力するとともに、ユーザの口座番号等をユーザ情報DB501から取り出して当該APIに入力する。
なお、このように口座番号等を自動的に入力するのではなく、ユーザに入力させることもできる。
【0118】
電子マネー会社サーバ60は、d-API経由で口座番号等や発注額の情報を受け取ると、口座番号等の認証を行い、認証が得られた場合、発注額分の金銭をその口座番号の口座に送金(チャージ)する。
つまり、「dチャージ」の場合、ユーザの電子マネー口座に直接チャージが行われ、これにより、投資信託の換金の代金をユーザに受け渡すことができる。」
「【0130】
図22に示すように、従来の換金方法(現金での出金)では、換金の申込みがあった日(申込日)から、約定、対価・代金の算出、解約指図、を経てユーザ口座に現金が振り込まれる(受渡日)までに5営業日を要していた。また、ユーザ口座に資金移動業者を利用して振り込む場合、振込先金融機関に応じてさらに1営業日~3営業日を要していた。
これに対し、本発明の換金方法である電子チャージ出金においては、従来の換金方法で行われる「解約指図」や「現金の振り込み」を必要としていない。
つまり、本発明においては、「解約指図」、解約指図に基づく保有資産の売却、当該売却で得た現金を用いた「現金の振り込み」を省くことができることに加え、対価・代金の算出、電子マネーの購入・チャージといった各処理をすべて即時に行われる結果、即時に出金を完了することができる。
このように、従来の換金では、複数の処理工程を一連に直列的に行っていたところ、本発明においては、その一部の処理工程を除外する(後処理に回す)ことで、迅速化を図っている。」
「【0133】
(2)ブラインド方式を採用しないことでも他の投資家(他の受益者)に損害を与えない構成にしている。
ブラインド方式は投資家間の公平性の確保のためであるところ、電子チャージ出金の際に行われる受益権の売買は、ユーザと委託会社との間で個別に行われる相対取引である。
なお、委託会社は、ユーザから買い取った受益権は、後に売却するなど、自身の裁量で処理することになる(後記「後処理について」参照)。
このため、ブラインド方式を採用しない本発明の電子チャージ出金であっても、信託財産からの資金の流出を伴うものではなく、他の受益者に対して損害を与えることはない。
つまり、単にブラインド方式を採用しないだけでは他の受益者に損害を与えるおそれのあるところ、本発明では、そのような問題が生じないよう必要な措置を施している。」
「【0143】
(後処理について)
委託会社は、電子マネー会社に対し、ユーザに受け渡すために購入した電子マネーの代金の支払いを、電子チャージ出金後に行うようにしている。」
イ アから、引用文献1には、次の技術的事項が記載されているものと認められる。
(ア)段落【0077】の記載によれば、引用文献1には、投資信託上の受益者であるユーザが使用するユーザ端末、投資信託上の委託者である委託会社において管理される投信取引サーバ、投資信託の取引業務の支援を行う業務支援サーバ、及び所定の電子マネーサービスを運営する電子マネー会社において管理される電子マネー会社サーバ等によって構成される投信取引システム及びその投信取引システムの投信取引サーバが記載されている。
(イ)段落【0088】【0089】の記載によれば、(ア)のユーザ端末は、ユーザの所定操作に基づいてユーザが保有する投資信託の換金の申し込み処理を行うものであり、具体的には、ユーザの電子マネー口座に直接的に電子マネーをチャージする電子マネーによる出金方法である「dチャージ」による電子有価財での受渡しを求める申込みを選択して申込みできる。また、段落【0096】の記載によれば、ユーザ端末は、入力された換金口数の情報を投信取引サーバに送信し、段落【0106】【0107】の記載によれば、ユーザ端末は、出金手続きの操作に応じて出金を実行する旨の情報を投信取引サーバに送信する。
(ウ)段落【0094】【0095】の記載によれば、投信取引サーバは、ユーザ端末から換金申込情報を受信することに基づいてユーザが保有する投資信託の換金の申込みを受け付け、換金申込情報に電子チャージ選択情報が含まれていることに基づき電子マネーの受け渡しを求める申込みを受け付け、換金申込情報を受信した日を申込日として特定する。
さらに、段落【0097】の記載によれば、投信取引サーバは、ユーザ端末から換金口数の情報を受信する。
(エ)段落【0097】【0098】【0104】【0105】の記載によれば、投信取引サーバは、申込日の前営業日の基準価額と換金口数に基づいて換金対象の投資信託の対価を算出し、算出結果に基づき、ユーザに受け渡す代金である出金額を算出して、算出した出金額の情報をメモリ等の記憶手段に一時的に記憶させるとともに、算出結果の情報をユーザ端末に送信する。
(オ)段落【0108】【0109】【0117】の記載によれば、投信取引サーバは、ユーザ端末から出金を実行する旨の情報を受信すると、電子マネー会社サーバ60に対し、算出した対価に相当する電子マネーに関する発注処理を行い、具体的には、電子チャージ選択情報に基づき、出金方法として「dチャージ」が選択されていることが判定された場合は、第2電子マネーを運営する電子マネー会社サーバが提供するAPIであるd-APIを呼出し、メモリから出金額の情報を取出してこれを発注額として当該APIに入力し、ユーザの口座番号等を当該APIに入力する。
(カ)段落【0118】の記載によれば、電子マネー会社サーバは、d-API経由で口座番号等や発注額の情報を受け取ると、口座番号等の認証を行い、認証が得られた場合、発注額分の金銭をその口座番号の口座にチャージして、投信信託の換金の代金をユーザに受け渡すことができる
(キ)段落【0100】【0102】【0130】【0133】【0143】の記載によれば、委託会社は、ユーザが保有する受益権を委託会社がユーザから買い取って、電子チャージ出金にすることで、申込み時に即時に代金をユーザに受渡すことを可能としており、電子チャージ出金の際に行われる受益権の売買は、ユーザと委託会社との間で個別に行われる相対取引であり、委託会社は、ユーザから買い取った受益権を後に売却する等して自身の裁量で処理し、委託会社は、電子マネー会社に対し、ユーザに受け渡すために購入した電子マネーの代金の支払いを電子チャージ出金後に行うものである。
ウ ア、イから、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
(引用発明)
投資信託上の受益者であるユーザが使用するユーザ端末、投資信託上の委託者である委託会社において管理される投信取引サーバ、投資信託の取引業務の支援を行う業務支援サーバ及び所定の電子マネーサービスを運営する電子マネー会社において管理される電子マネー会社サーバ等によって構成される投信取引システムの投信取引サーバであって、(イ(ア))
ここで、ユーザ端末は、ユーザの所定操作に基づいてユーザが保有する投資信託の換金の申し込み処理を行うものであり、具体的には、ユーザの電子マネー口座に直接的に電子マネーをチャージする電子マネーによる出金方法である「dチャージ」による電子有価財での受渡しを求める申込みを選択して申込みでき、換金口数の情報を投信取引サーバに送信し、出金手続きの操作に応じて出金を実行する旨の情報を投信取引サーバに送信するものであり、(イ(イ))
投信取引サーバは、ユーザ端末から換金申込情報を受信することに基づいてユーザが保有する投資信託の換金の申込みを受け付け、換金申込情報に電子チャージ選択情報が含まれていることに基づき電子マネーの受け渡しを求める申込みを受け付け、換金申込情報を受信した日を申込日として特定し、さらに、ユーザ端末から換金口数の情報を受信し、(イ(ウ))
投信取引サーバは、申込日の前営業日の基準価額と換金口数に基づいて換金対象の投資信託の対価を算出し、算出結果に基づき、ユーザに受け渡す代金である出金額を算出して、算出した出金額の情報をメモリ等の記憶手段に一時的に記憶させるとともに、算出結果の情報をユーザ端末に送信し、(イ(エ))
投信取引サーバは、ユーザ端末から出金を実行する旨の情報を受信すると、電子マネー会社サーバに対し、算出した対価に相当する電子マネーに関する発注処理を行い、具体的には、電子チャージ選択情報に基づき、出金方法として「dチャージ」が選択されていることが判定された場合は、第2電子マネーを運営する電子マネー会社サーバが提供するAPIであるd-APIを呼出し、メモリから出金額の情報を取出してこれを発注額として当該APIに入力し、ユーザの口座番号等を当該APIに入力し、(イ(オ))
ここで、電子マネー会社サーバは、d-API経由で口座番号等や発注額の情報を受け取ると、口座番号等の認証を行い、認証が得られた場合、発注額分の金銭をその口座番号の口座にチャージして、投信信託の換金の代金をユーザに受け渡すことができるものであり、(イ(カ))
委託会社は、ユーザが保有する受益権を委託会社がユーザから買い取って、電子チャージ出金にすることで、申込み時に即時に代金をユーザに受渡すことを可能としており、電子チャージ出金の際に行われる受益権の売買は、ユーザと委託会社との間で個別に行われる相対取引であり、委託会社は、ユーザから買い取った受益権を後に売却する等して自身の裁量で処理し、委託会社は、電子マネー会社に対し、ユーザに受け渡すために購入した電子マネーの代金の支払いを電子チャージ出金後に行う、(イ(キ))
投信取引システムの投信取引サーバ。
(3)引用発明との対比
ア 本件補正発明と引用発明とを対比する。
(ア)引用発明の「ユーザ」、「ユーザが保有する投資信託」は、それぞれ本件補正発明の「金融商品を保有するユーザ」、「金融商品」に相当する。
なお、「ユーザ」が「当該ユーザが保有する金融商品の売却代金に関する債権を決済サービス事業者に譲渡した」者である点は、後述するとおり、相違点(相違点1)である。
(イ)引用発明の、「所定の電子マネーサービスを運営する電子マネー会社」は、本件補正発明の「決済サービス事業者」に相当し、引用発明の「電子マネー会社サーバ」は、電子マネーサービスという決済サービス事業者が提供する決済サービスを提供するためのサーバであり、電子マネーサービスとして電子マネーを「電子マネー口座」に「チャージ」する機能を有するサーバでもあることから、本件補正発明の「決済サーバ」に相当する。
なお、「決済サービス事業者」が金融商品の売却代金に関する債権の譲渡先となる点(相違点2)、及び「決済サーバ」が金融商品の売却代金に関する債権を譲渡する契約をユーザから受け付ける点(相違点3)は、後述するとおり、相違点である。
(ウ)引用発明の「投資信託上の委託者である委託会社において管理される投信取引サーバ」は、情報処理装置であり、下記の相違点を除いて、本件補正発明の「情報処理装置」に相当する。
(エ)引用発明の「ユーザが保有する投資信託の換金」は、金融商品を保有するユーザと委託会社との間での相対取引としての受益権の売買によるものであり、本件補正発明の「金融商品を保有するユーザ」の「当該金融商品の売却」であるといえ、引用発明の「出金額」は、この金融商品の売却に伴ってユーザに受け渡される代金の金額であるから、本件補正発明の「金融商品の売却代金」に相当する。
(オ)引用発明の「ユーザが保有する投資信託の換金」の「申込み」は、情報処理装置(「投信取引サーバ」)に対する当該金融商品の売却の指示であり、本件補正発明の「金融商品を保有するユーザ」からの「当該金融商品を売却する旨の指示」に相当し、引用発明における、「申込日」は、本件補正発明の「ユーザが金融商品を売却する旨の指示を行った当日」に相当する。
(カ)引用発明の情報処理装置は、決済サーバ(「電子マネー会社サーバ」)が提供するd-APIを呼び出し、d-API経由で金融商品を売却する旨の指示を行ったユーザの口座番号と金融商品の売却代金(「出金額」)である「発注額」を決済サーバに受け取らせており、このユーザの口座番号と金融商品の売却代金である「発注額」は、本件補正発明の「金融商品の売却代金に関する情報」に相当する。
そして、引用発明の情報処理装置は、d-APIの呼出すことにより、金融商品の売却代金に関する情報を決済サーバに送信しているといえるから、本件補正発明の「当該金融商品の売却代金に基づいた額の電子マネー」を「決済サービス事業者が提供する決済サービス」における「ユーザの電子マネー口座」に「チャージ」する「決済サーバ」に対する、「前記金融商品の売却代金に関する情報」の「送信」に相当する。
(キ)引用発明では「申込み時に即時に代金をユーザに受渡すことを可能と」するものであることから、本件補正発明と同様に、「決済サーバ」に対する、「前記金融商品の売却代金に関する情報」の「送信」を「ユーザが金融商品を売却する旨の指示を行った当日」に行うことは明らかであり、この点で両者は共通している。
(ク)引用発明では「委託会社は、電子マネー会社に対し、ユーザに受け渡すために購入した電子マネーの代金の支払いを、電子チャージ出金後に行う」とされており、「当該金融商品の売却代金に基づいた額の電子マネー」の「チャージ」の原資は、委託会社から事前に支払われた現金でなく、電子マネー会社の資産である委託会社に対するチャージ代金請求債権であるから、「当該金融商品の売却代金に基づいた額の電子マネー」を「決済サービス事業者が提供する決済サービスにおけるユーザの電子マネー口座」への「チャージ」は、本件補正発明と同様に「決済サービス事業者の資産を原資として」行われている。
イ 以上のことから、本件補正発明と引用発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。
<一致点>
金融商品を保有するユーザから当該金融商品を売却する旨の指示を受け付けた場合は、前記決済サービス事業者の決済サーバであって、ユーザが金融商品を売却する旨の指示を行った当日に、決済サービス事業者の資産を原資として当該金融商品の売却代金に基づいた額の電子マネーを前記決済サービス事業者が提供する決済サービスにおける前記ユーザの電子マネー口座にチャージする決済サーバに対し、前記金融商品の売却代金に関する情報を送信する
情報処理装置。
<相違点>
(相違点1)
ユーザが、本件補正発明では「当該ユーザが保有する金融商品の売却代金に関する債権を決済サービス事業者に譲渡したユーザ」ないし「前記債権を譲渡したユーザ」であるのに対し、引用発明ではそうではない点
(相違点2)
決済サービス事業者が、本件補正発明では「前記債権(金融商品の売却代金に関する債権)の譲渡先となる」者であるのに対し、引用発明ではそうではない点
(相違点3)
本件補正発明では、決済サーバが、「前記債権(金融商品の売却代金に関する債権)を譲渡する契約を前記ユーザから受け付け」るのに対し、引用発明ではそうではない点
(4)判断
相違点1~3は関連するのでまとめて検討する。
ア 本件補正発明の「情報処理装置」は、本願明細書記載の、利用者の端末10、証券サーバ200及び決済サービス事業者の決済サーバ100を含むシステムのうち、証券サーバ200に対応する構成である。これに対し、相違点1に係る、ユーザが「当該ユーザが保有する金融商品の売却代金に関する債権を決済サービス事業者に譲渡したユーザ」であることは、証券サーバ200ではなく利用者の端末10について特定するものであり、また、相違点2に係る、決済サービス事業者が「前記債権(金融商品の売却代金に関する債権)の譲渡先となる」者であること、及び相違点3に係る、決済サーバが、「前記債権(金融商品の売却代金に関する債権)を譲渡する契約を前記ユーザから受け付け」ることは、いずれも、証券サーバ200ではなく決済サービス事業者の決済サーバ100について特定するものである。
してみると、相違点1~3に係る事項は、いずれも、サブコンビネーション発明である「情報処理装置」の発明において、他のサブコンビネーションである「利用者の端末」、「決済サービス事業者の決済サーバ100」の機能及びそれらを利用する者を特定する事項であり、「情報処理装置」の構造、機能等を何ら特定するものではないため、「情報処理装置」の発明を特定するための意味を有しないものである。
よって、相違点1~3は、実質的な相違点でなく、本件補正発明の発明特定事項と、引用発明の発明特定事項との間に差違はない。
イ(ア)仮に相違点1~3を実質的な相違点であると捉えても、対比で述べたとおり、ユーザの電子マネー口座へのチャージを決済サービス事業者の資産を原資として行うこと自体は、本件補正発明と引用発明との一致点であるし、一旦決済サービス事業者の資産を原資としてチャージが行われるにしても、最終的には金融商品の売却代金を支払うべき金融商品の売却先となる者がチャージの代金を負担することが前提である点でも、両者に違いがない。
この点、相違点2に係る本件補正発明の「決済サービス事業者」が「金融商品の売却代金に関する債権の譲渡先となる」者である旨の特定、及び、相違点3に係る本件補正発明の決済サーバが「金融商品の売却代金に関する債権を譲渡する契約」を「ユーザ」から「受け付け」る旨の特定は、いずれも、文言上、複数の「決済サービス事業者」の存在を前提としたものということはできないし、さらには、「金融商品の売却代金に関する情報」の送信先となる「決済サーバ」の運営主体である「決済サービス事業者」と「金融商品を売却する旨の指示」を受ける事業者との提携関係を前提としたものであることが明らかであり(本願明細書段落【0017】【0062】【0064】等)、いずれの特定も、何らかの取り決めと無関係に「金融商品の売却代金に関する情報」の送信先となる「決済サーバ」を複数のものから選択する旨の特定でないことは明らかである。
(イ)(ア)に示したことを踏まえれば、相違点1~3は、ユーザの電子マネー口座へのチャージの原資となる決済サービス事業者の資産について、本件補正発明では、債権を譲渡する契約をユーザから受付けた決済サービス事業者における、ユーザから譲渡された金融商品の売却代金に関する債権を含むものとなっているのに対し、引用発明では、これを含まないという相違に帰着するのであり、いわば、相違点1~3は、金融商品の売却代金を現金として事前に受領しないままユーザにチャージした決済サービス事業者におけるチャージ代金請求債権について、その裏付け(担保価値)をユーザから決済サービス事業者に譲渡された証券会社に対する金融商品の売却代金に関する債権に求めるか否かという、契約や資産の項目の設定等の取り決めにおける違いとその違いに付随する設計事項ないし表現上の違いにすぎない。
そして、ユーザと決済サービス事業者との間で金融商品の売却代金に関する債権を譲渡するか否かそれ自体は、技術的な創意工夫を要する事項でなく、単なる取り決めにすぎないし、このような取り決めにあたって、これに付随する事項を設計することも当然のことである。
してみると、相違点1~3は、取り決めないし取り決めに付随する事項として、当業者が適宜設計すべき事項である。
ウ 相違点1~3を総合的に勘案しても、本件補正発明の奏する作用効果は、引用発明の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。
(5)小括
してみると、本件補正発明は、引用発明であるから、特許法第29条第1項第3号に掲げる発明に該当し、特許出願の際独立して特許を受けることができない、又は、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
よって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条7項の規定に違反するものである。
3 審判請求人の主張について
(1)審判請求書について
審判請求人は、引用文献1、2には、(ア)ユーザから決済サービス事業者に対して金融商品のファクタリングを行う点、(イ)金融商品の売買に関するサービスを提供する証券会社に代わり決済サービス事業者の資産を原資とした決済サービス事業者による立て替えのチャージが行われる点、が記載されていない旨主張している。
しかし、(ア)については、相違点であるものの、前記2の(4)アに示したとおり、契約や資産の項目の設定等の取り決めにおける違いに付随する設計事項にすぎない。(イ)については、前記2の(2)イ(キ)及び(3)ア(ク)に示したとおり、引用文献1の記載からみて、一致点である。よって、審判請求人の主張を採用することはできない。
(2)令和6年8月7日提出の上申書について
ア 審判請求人は、引用文献1には、利用者から決済サービス事業者に対して金融商品に関する債権があらかじめ譲渡されている点については、記載も示唆もなく、このため、引用文献1において、決済サービス事業者の建て替えにより電子マネーのチャージを行うことはできず、金融商品の売却などをおこなう証券会社から電子マネーの発注を行うことができるのは、金融商品の売却の指示が行われてから数日の時間を要することになるため、当日中のチャージを行うことが出来ない旨を主張している。
しかし、引用文献1では、利用者から決済サービス事業者に対して金融商品に関する債権があらかじめ譲渡されずとも、決済サービス事業者の建て替えにより電子マネーのチャージを行っているし、当日中のチャージも実現している。審判請求人の主張は、引用文献1の記載を正解しないものである。
イ 審判請求人は、補正案を示しているが、合議体としては、前記(1)に示したことに加え、次の点も考慮し、意見書及び手続補正書を提出するさらなる機会を与えることを要しないこととした。
引用文献1の段落【0090】には、「電子マネー」について、「第2電子マネーのほか、ドコモ(登録商標)口座、Paypay(登録商標)などのデポジット型電子マネーを例示することができる。」と記載されているところ、決済アプリであるPaypayにミニアプリないしスーパーアプリとして決済以外の機能が追加されていたことは、周知例を示すまでもなく本願出願時に広く知られており、このことを審判請求人が熟知していることも明らかである。(参考:「転機のスマホ決済 手数料バトルの行方」、日経コンピュータno.1053,2021年、46-51頁。)
4 本件補正についてのむすび
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、前記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。
第3 本願発明について
1 本願発明
令和6年2月28日にされた手続補正は、前記第2のとおり、却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、前記第2の[理由]1(2)に示した、令和5年10月23日にされた手続補正による補正後の請求項1の記載のとおりのものである。
2 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、この出願の請求項1に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明である、下記の引用文献1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に掲げる発明に該当し、特許を受けることができない、又は、下記の引用文献1に記載された発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。
引用文献1:特開2021-125263号公報
3 引用文献
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1の記載事項は、前記第2の[理由]2(2)に示したとおりである。
4 対比・判断
本願発明は、前記第2の[理由]2で検討した本件補正発明から、「金融商品の売却代金に関する情報」の「送信」についての限定(送信先である「決済サービス事業者の決済サーバ」が「前記債権を譲渡する契約を前記ユーザから受け付け」るものであり、債権を譲渡したユーザの電子マネー口座へのチャージを「前記債権の譲渡先となる決済サービス事業者の資産を原資として」行うものである旨の特定)を除いたものに相当する。
そして、本願発明の発明特定事項を全て含み、さらに他の事項を付加したものに相当する本件補正発明が、前記第2の[理由]2(3)~(5)に示したとおり、引用発明との間に差違がなく、あるいは、仮に相違点であるとしても、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであることから、本願発明も、本件補正発明と同様に、引用発明であるから、特許法第29条第1項第3号に掲げる発明に該当するか、あるいは、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
よって、本願の請求項1に係る発明は、特許法第29条第1項第3号に掲げる発明に該当し、特許を受けることができないか、あるいは、同条第2項の規定により特許を受けることができない
第4 むすび
以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、特許法第29条第1項又は第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
J-PlatPatの審決検索トップを開きます。番号入力で「審判番号」を選び、下の番号を貼り付けて検索してください。
J-PlatPat 審決検索を開く
2024-003532