特許拒絶査定不服審判
2024-003271
植物性材料およびリサイクルされた材料から、パルプ、エネルギーおよびバイオ派生物を製造するための、方法およびシステム
- 審判番号
- 2024-003271
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2022-017130
- 請求日
- 2024年02月26日
- 審決日
- 2026年03月17日
- 公報発行日
- 2026年08月28日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】サーク,インコーポレイテッド
- 【請求人代理人】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
- 審判長/審判官
- 審判長 篠塚 隆
- 審判官 田中 秀樹
- 審判官 伊藤 隆夫
- 分類
- P18 .121-WZ (D21C)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2022- 17130「植物性材料およびリサイクルされた材料から、パルプ、エネルギーおよびバイオ派生物を製造するための、方法およびシステム」拒絶査定不服審判事件〔令和 4年 5月13日出願公開、特開2022- 70920〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、2016年(平成28年)6月13日(パリ条約による優先権主張 外国庁受理2015年 6月11日 アメリカ合衆国、2016年 5月 6日 アメリカ合衆国)を国際出願日とする特願2017-564526号の一部を令和 4年 2月 7日に新たな特許出願としたものであって、その手続の経緯は以下のとおりである。
令和 5年 2月22日付け:拒絶理由通知書
令和 5年 7月28日 :意見書・手続補正書の提出
令和 5年10月17日付け:拒絶査定
令和 6年 2月26日 :審判請求書の提出
令和 7年 6月17日付け:拒絶理由通知書(当審)
令和 7年 9月19日 :意見書・手続補正書の提出
第2 本願発明
本願の請求項1-19に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」-「本願発明19」という。)は、令和 7年 9月19日提出の手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1-19に記載された事項により特定される発明であり、本願発明1は以下のとおりの発明である。
「【請求項1】
機械的処理装置/材料処理装置を用いて原料をプロセシングサイズに加工する工程と、
上記原料を、リアクターアセンブリ内にて、亜臨界水による処理プロセスにて、1.5~10重量%以下の濃度のアルカリ系触媒を含んでいる触媒を用いて処理することによって、パルプの産物を作製する工程と、を有し、
上記リアクターアセンブリは、第1の鎖強度を有する炭水化物を分解するために、所定時間の間、圧力、および、温度が一定のレベルに維持される、稼働状態を有する、パルプの製造方法。」
第3 拒絶の理由
令和 7年6月17日付けで当審が通知した拒絶理由(以下、「当審拒絶理由」という。)は、次のとおりのものである。
本願発明1-11は、本願の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった以下の引用文献1に記載された発明及び引用文献2-4に記載された事項に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
本願発明12は、本願の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった以下の引用文献1に記載された発明及び引用文献2、3に記載された事項に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
本願発明13-19は、本願の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった以下の引用文献1に記載された発明及び引用文献2-4に記載された事項に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
引用文献等一覧
1.韓国登録特許第10-1391686号公報
2.特開2007- 91894号公報
3.特開2009-106244号公報
4.星野和義,高温高圧水処理による竹の繊維抽出とバイオマス利用,日本大学生産工学部研究報告A,日本,2010年12月,第69-74頁
第4 引用文献の記載及び引用発明
1.引用文献1について
引用文献1には、図面とともに次の事項が記載されている。(括弧内は、当審による仮訳、下線は当審により付与した。)
[図:0001437693000001.jpg]
([0013] 例示的な実施形態では、粉砕された木質系バイオマスと水を反応器内で混合することができる。前記木質系バイオマスと水は、反応器内に同時にまたは順次導入することができる。)
[図:0001437693000002.jpg]
[図:0001437693000003.jpg]
[図:0001437693000004.jpg]
[図:0001437693000005.jpg]
([0015] 例示的な実施例において、上記木質系バイオマスとして、セルロース、ヘミセルロース、リグニンを主成分とするバイオマスを使用することができる。上記木質系バイオマスの例として、松、モミ、カラマツ、カラマツ、ユリ、オーク、メタセコイア、イチョウ、カエデ、カエデ、カエデ、シラカバ、桑、ドクダミ、ジョウビタキ、サクラ、桐、柿、オーク、 ゴムノキなどの木本類、トウモロコシ穂軸、稲わら、稲わら、麦わら、サトウキビ残渣(baggase)、スイッチグラス、葦、ススキ、ヤグルマギク、パームフルーツ残渣、もみ殻、ミカンなどの草本類及び農業副産物、バイオマスの2次副産物としての紙などが含まれる。これらはそれぞれ単独で、または2種類以上を混合して使用することができる。上記の木質系バイオマスは、浮存量が非常に豊富で、大部分が他の産業の副産物から出てくるため、主に食糧資源として使われる澱粉質系バイオマスに比べ、非常に低コストで入手でき、他の化石資源に比べて資源の循環周期が短く、二酸化炭素発生量が少ないという利点がある。
[0016] 図1を参照すると、上記反応器を亜臨界条件に維持して、上記木質系バイオマスを臨界条件の水(以下、亜臨界水)と反応させて、第1固相反応物と第1液相反応物を形成する(S20)。
[0017] 例示的な実施例について、上記亜臨界条件とは、臨界温度以下の条件で飽和蒸気圧を超える条件、すなわち、界内に液体状態の水が一部または全部存在する状態を意味する。水は亜臨界条件になると、同じ圧力で温度が増加するほど密度と誘電率定数が低くなり、イオンの濃度が増加し、イオン積(ionic product)は最大約1000倍以上増加する。このようにイオン積が増加すると、酸を別に入れなくてもpHが低くなり、酸性を帯びるので、独自の酸触媒の役割を果たし、木質系バイオマスの加水分解速度を高めることができる。
[0018] 例えば、前記反応器の温度は約150℃~約250℃の範囲に維持することができ、前記反応器の圧力は約5 bar~約500 barの範囲に維持することができる。上記反応器の温度が約150℃未満であったり、圧力が約5 bar未満である場合は、亜臨界条件から離れることで水の加水分解能力が著しく低下することになり、上記反応器の温度が約250℃を超えたり、上記反応器の圧力が約500 barを超える場合は、既に加水分解されたヘミセルロースのさらなる加水分解とセルロースやリグニンのような他の成分の加水分解も促進され、望ましくない副産物の生成が多くなり、最終的な収率が低くなる。また、高温、高圧を維持するのに多くの費用がかかるため、経済的に不利になる。
[0019] 上記反応器内で行われる反応時間は、反応が行われる温度と密接に関連しているので、所望の反応物の条件に合わせて設定することができる。したがって、上記反応温度と反応時間の関係は単純に範囲として表すことはできない。例えば、約150度の反応温度で約5分の反応時間は、木質系バイオマスが十分に加水分解されるには短い時間であり、約250度で約1時間反応させる場合、加水分解が過度に進行し、所望の反応物の収率は低下する一方、望ましくない副産物の収率は増加することになる。上記のような理由から、適切な反応温度と反応時間の範囲をより具体的に示すために、下記の数学式1を利用することができる。
[0020] [数学式1]
[0021] R0 = t × exp( (T-100)/14.75)
[0022] ここで、tは反応時間(分)を意味し、Tは反応温度(℃)を意味する。上記反応温度の条件において、反応時間は上記係数R0に対数をとった値が3.5~5.5となる範囲内で調節することができる。
[0023] 再び図1を参照すると、濾過等の第1分離工程を経て、第1液体反応物と第1固相反応物を分離する(S30)。このとき、前記第1液体反応物は、加水分解されたヘミセルロースを含み、前記第1固相反応物は、セルロースとリグニンを含む。ただし、上記第1液体反応物は、一部のリグニン成分を含むことができる。
[0024] 図1を参照すると、セルロースとリグニンを主成分とする上記第1固相反応物が導入された反応器内に蟻酸を導入する(S40)。
[0025] 例示的な実施形態において、上記蟻酸を導入するステップは、その後の反応条件に応じて添加剤を追加的に導入するステップを含むことができる。例えば、上記添加剤には、水、酢酸(acetic acid)、プロピオン酸(propionic acid)、アクリル酸(acrylic acid)、塩酸、硫酸、リン酸、コハク酸、炭酸、および硝酸などがあり、これらはそれぞれ単独または混合して使用することができる。
[0026] 図1を参照すると、上記反応器を所定の条件(温度、圧力、時間)に維持して、上記第1固相反応物を蟻酸と反応させる(S50)。
[0027] 例示的な実施形態において、前記反応器の温度は約70~約120℃の範囲に維持することができ、反応器の圧力は反応温度に合わせて約1~約10 barに維持することができる。約70℃以下の温度では、反応速度が遅くなり、効率が低下し、120℃以上の温度では、所望の反応以外の副反応ないしは過反応が起こる可能性がある。
[0028] 前記反応器内で行われる反応時間は、約1時間から約12時間の範囲に維持することができる。前記反応時間は、蟻酸前処理が行われる温度と密接に関連しているので、所望の反応生成物の条件に合わせて設定することができる。一般的には、上記反応時間が約1時間未満の場合、リグニン成分が十分に分解されて出てこないし、上記反応時間が約12時間を超える場合、追加の分解反応により副産物の量が増加し、セルロースや糖の収率は低くなる。
[0029] 図1を参照すると、上記蟻酸反応工程において、生成物は濾過等の第2分離工程を経て、第2液体反応物と第2固相反応物に分離する(S60)。前記第2液体反応物は、蟻酸によって加水分解されたリグニンの分解生成物を含み、前記第2固相反応物にはセルロースが含まれる。前記第1液体反応物に残留する蟻酸は、抽出などの工程を経て精製すれば、再びリサイクルすることができ、経済性を確保することができる。上記蟻酸処理工程から得られた高純度のセルロースは、その用途に応じて必要に応じて漂白などの追加工程を導入することができる。
[0030] 図2を参照すると、2段階の分離工程(S30、S60)を通じて木質系バイオマスの主要な3つの成分が高純度で分離できることが確認できる。
[0031] 亜臨界水で処理した木質系バイオマスは、ヘミセルロースが加水分解されて液状の形で除去されるため、セルロースとリグニンの含有量が高く観察される。これを再び蟻酸で処理すると、リグニン成分が分離され、最終的に高純度のセルロースが得られることが確認できる。上記2段階の前処理工程を通じて最終的に得られた固体状態のセルロースは、高い純度と表面積を持つため、酵素糖化だけでなく、高分子量を持つセルロース誘導体の合成や触媒を利用したヒドロキシメチルフルフラール合成など、幅広く応用することができる。
[0032] 図3を参照すると、前処理されたバイオマスの表面積は、示差走査型熱量計(DSC)を用いて、前処理されたバイオマスの表面にある細孔内部に凍結している水の体積を測定することで計算した。
[0033] 一般的に本技術分野で使用される表面積は、全比表面積(total specific surface area)と有効比表面積(specific surface area)がある。全比表面積とは、全てのバイオマス粒子内部(すなわち、細孔)の表面積の合計を意味し、セルロースの糖化に利用される酵素がアクセスできる細孔の大きさより小さい細孔が持つ表面積を全て含む。一方、有効比表面積とは、セルロースの糖化に利用される酵素がアクセスできる大きさ以上の細孔が持つ表面積の合計を意味する。本工程を通じて得られたセルロースは、糖化にのみ利用されるのではなく、セルロース誘導体合成などの他の反応に多様に利用できるため、図3に示された表面積は全体比表面積を基準に表示した。)
[図:0001437693000006.jpg]
([0037] 図4を参照すると、上記反応器内に亜臨界水を導入し、上記木質系バイオマスと反応させる(S120)。
[0038] 上記亜臨界水をポンプを利用して連続的に上記反応器内に導入することもできる。上記亜臨界水を上記反応器内に連続的に導入する場合、反応時間及び加熱時間を短縮して経済性を向上させることができる。)
[図:0001437693000007.jpg]
([0042] 図5を参照すると、木質系バイオマスと水を混合する(S205)。上記木質系バイオマスは、図1を参照して説明した木質系バイオマスと実質的に同一または類似することができる。上記混合段階によって、木質系バイオマスと水が混合されたスラリーを形成することができる。
[0043] 図5を参照すると、上記木質系バイオマスと水が混合されたスラリーをポンプなどを用いて反応器内に連続的に導入する(S210)。上記スラリーを上記反応器内に連続的に導入する場合、前処理工程時間を短縮して経済性を向上させることができる。)
[図1]
[図:0001437693000008.jpg]
[図2]
[図:0001437693000009.jpg]
[図4]
[図:0001437693000010.jpg]
[図5]
[図:0001437693000011.jpg]
以上より、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「粉砕された木質系バイオマスと水を反応器内で混合することができ、
上記木質系バイオマスとして、セルロース、ヘミセルロース、リグニンを主成分とするバイオマスを使用することができ、上記木質系バイオマスの例として、松、モミ、カラマツ、カラマツ、ユリ、オーク、メタセコイア、イチョウ、カエデ、カエデ、カエデ、シラカバ、桑、ドクダミ、ジョウビタキ、サクラ、桐、柿、オーク、 ゴムノキなどの木本類、トウモロコシ穂軸、稲わら、稲わら、麦わら、サトウキビ残渣(baggase)、スイッチグラス、葦、ススキ、ヤグルマギク、パームフルーツ残渣、もみ殻、ミカンなどの草本類及び農業副産物、バイオマスの2次副産物としての紙などが含まれ、
上記反応器を亜臨界条件に維持して、上記木質系バイオマスを亜臨界水と反応させて、第1固相反応物と第1液相反応物を形成し、
前記反応器の温度は約150℃~約250℃の範囲に維持することができ、前記反応器の圧力は約5 bar~約500 barの範囲に維持することができ、
上記反応器内で行われる反応時間は、反応が行われる温度と密接に関連しているので、所望の反応物の条件に合わせて設定することができ、
濾過等の第1分離工程を経て、第1液体反応物と第1固相反応物を分離し、このとき、前記第1液体反応物は、加水分解されたヘミセルロースを含み、前記第1固相反応物は、セルロースとリグニンを含み、
セルロースとリグニンを主成分とする上記第1固相反応物が導入された反応器内に蟻酸を導入し、
上記蟻酸反応工程において、生成物は濾過等の第2分離工程を経て、第2液相反応物と第2固相反応物に分離し、前記第2液体反応物は、蟻酸によって加水分解されたリグニンの分解生成物を含み、前記第2固相反応物にはセルロースが含まれ、
上記蟻酸処理工程から得られた高純度のセルロースは、その用途に応じて必要に応じて漂白などの追加工程を導入することができ、
亜臨界水で処理した木質系バイオマスは、ヘミセルロースが加水分解されて液状の形で除去されるため、セルロースとリグニンの含有量が高く観察され、これを再び蟻酸で処理すると、リグニン成分が分離され、最終的に高純度のセルロースが得られることが確認でき、上記2段階の前処理工程を通じて最終的に得られた固体状態のセルロースは、高い純度と表面積を持ち、
本工程を通じて得られたセルロースは、糖化にのみ利用されるのではなく、セルロース誘導体合成などの他の反応に多様に利用でき、
上記亜臨界水をポンプを利用して連続的に上記反応器内に導入することもでき、
上記木質系バイオマスと水が混合されたスラリーをポンプなどを用いて反応器内に連続的に導入する前処理。」
第5 引用発明との対比
(1)本願発明1と引用発明とを対比する。
ア 引用発明の「粉砕された木質系バイオマス」は、「プロセシングサイズに加工」された「原料」といえ、引用発明が「原料をプロセシングサイズに加工する工程」を有することは明らかである。
イ 引用発明の「反応器」は、本願発明1の「リアクターアセンブリ」に相当する。
ウ 引用発明の「反応器」において、「亜臨界水で処理した木質系バイオマスは、ヘミセルロースが加水分解されて液状の形で除去される」から、上記ア、イを踏まえると、引用発明と本願発明1は、「上記原料を、リアクターアセンブリ内にて、亜臨界水による処理プロセスにて」「処理することによって、」中間生成物を「作製する工程」を有する点で共通する。
エ 引用発明は、「ヘミセルロース」を分解するために、「反応器を亜臨界条件に維持して、上記木質系バイオマスを亜臨界水と反応させ」るために、「前記反応器の温度は約150℃~約250℃の範囲に維持」し、「前記反応器の圧力は約5 bar~約500 barの範囲に維持」することができ、「上記反応器内で行われる反応時間は、・・・所望の反応物の条件に合わせて設定する」ことができるものである。ここで、「ヘミセルロース」は、「第1の鎖強度を有する炭水化物」といえるから、引用発明と本願発明1は、「上記リアクターアセンブリは、第1の鎖強度を有する炭水化物を分解するために、所定時間の間、圧力、および、温度が一定のレベルに維持される、稼働状態を有する」点で共通する。
オ 引用発明において精製される「高純度のセルロース」は、「セルロース誘導体合成などの他の反応に多様に利用できる」ものであり、所謂「溶解パルプ」といえるから、上記ウで説示した中間生成物は「パルプの産物」といえ、引用発明は、「パルプの製造方法」であるといえる。
(2)以上のことから、本願発明1と引用発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。
【一致点】
「原料をプロセシングサイズに加工する工程と、
上記原料を、リアクターアセンブリ内にて、亜臨界水による処理プロセスにて、パルプの産物を作製する工程と、を有し、
上記リアクターアセンブリは、第1の鎖強度を有する炭水化物を分解するために、所定時間の間、圧力、および、温度が一定のレベルに維持される、稼働状態を有する、パルプの製造方法。」
【相違点】
(相違点1)
本願発明1は、「機械的処理装置/材料処理装置を用いて原料をプロセシングサイズに加工する工程」を有するのに対し、引用発明において、「木質系バイオマス」を「粉砕」するのにどのような装置を用いて加工されるかは特定がない点。
(相違点2)
本願発明1においては、「亜臨界水による処理プロセス」にて、「1.5~10重量%以下の濃度のアルカリ系触媒を含んでいる触媒を用いて処理する」のに対し、引用発明における「亜臨界水」での処理には、そのような特定がない点。
第6 判断
上記相違点1、2について、それぞれ検討する。
(相違点1について)
引用文献2(【図3】等に記載の「一次破砕機40」を参照)、引用文献3(段落【0015】-【0017】等を参照)に記載されるように、「木質系バイオマス」を処理しやすくするため、所望のサイズに加工する装置は、様々なものが知られており、引用発明においても、「木質系バイオマス」を「粉砕」するために、どのような装置を用いるかは、原料の種類と適切なサイズに応じて、当業者が適宜選定する設計的事項にすぎない。
(相違点2について)
引用文献4の第70頁「2.1 竹繊維抽出」及び第72頁左欄第19-22行に記載されているように、「木質系バイオマス(竹)」を亜臨界水で処理する際に、水酸化ナトリウムを併用するとヘミセルロースの低分子化を促進することが記載されている(以下、「引用文献4記載技術」という)。
引用発明においても、「亜臨界水」での処理において、「ヘミセルロース」の低分子化を促進するため、引用文献4記載技術を用い、水酸化ナトリウムを併用することは、当業者が容易に想到し得たことといえる。この際、水酸化ナトリウムの濃度を、原料の種類や目標とする生成物の組成等に応じて最適化することは設計的事項である。
よって、本願発明1は、引用発明、引用文献2、3に記載の周知技術、及び引用文献4記載技術事項に基づいて、当業者が容易に想到し得たものといえる。
そして、本願発明1の奏する作用効果は、引用発明、上記周知技術及び引用文献4記載技術の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。
したがって、本願発明1は、引用発明、上記周知技術及び引用文献4記載技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。
第7 請求人の主張について
審判請求人は当審拒絶理由に対し、令和 7年 9月19日提出の意見書において、以下のように主張する。
ア 引用文献1について
「引用文献1は、リグノセルロースバイオマスの前処理方法であって、当該方法は、木質系バイオマスおよび水を反応器に導入し、反応器を加熱し、さらに木質系バイオマスを加工しています。引用文献1は、「機械的処理装置/材料処理装置を用いて原料をプロセシングサイズに加工する工程」を開示していません。引用文献1の示唆に基づいて、本発明の原料を加工することに想到することは自明ではなく、引用文献1にはそのようにすることのメリットもございません。
機械的処理装置を使用してプロセッシングサイズに原料を加工することに代えて、引用文献1は化学的手段を必要としています。例えば、引用文献1は、原料に対してギ酸で前処理を行い、これにより糖化酵素のアクセス性を高めることでセルロースの表面積を増加させています。引用文献1はこのような機械的処理装置を使用してプロセッシングサイズに原料を加工する課題に関するものではないため、当業者が、引用文献1の原料の加工から、機械的処理装置の使用によりプロセッシングサイズに加工することに想到するための示唆は存在していません。引用文献1は、酵素を原料にアクセスさせるための孔を提供することで、表面積を増加させているにすぎません。」
イ 引用文献2、3について
「また、引用文献2及び3は、引用文献1の本発明との上記相違点を埋め合わせることはできません。
引用文献2には、木質系バイオマス燃料の特別な生産システムであって、システムでは、木質系バイオマスが炭化され粉砕されることで発電所の燃料に用いられることが記載されています。特に、引用文献2には、木質系バイオマスが微粒子に粉砕されることが記載されています。しかしながら、引用文献2は、木質系バイオマスを微粒子にすることで引用文献1の発明の効果を与えることについては、何ら示唆していません。例えば、引用文献1は、引用文献2の方法を含む先行技術の前処理が不利益を有することを示しています。このことに関して、引用文献1は、酵素糖化率及び反応性を増加及び向上させるための前処理に関するものです。引用文献2には、前処理が、そのような目的の達成に効果的であることは示唆されていません。その結果、当業者は、引用文献2の示唆に基づいて引用文献1に前処理を導入することに想到することができません。
引用文献3は、酸、アルカリなどを使用しないで、緩やかな前処理条件下でセルロースの加水分解を促進することを記載しています。例えば、引用文献3には、酸及びアルカリの回収及び再利用のためのシステムを構築する必要がある一方、酸又はアルカリの前処理が、多くの投資エネルギーとともに大規模装置を必要とすることが記載されています。引用文献3は、前処理での酸又はアルカリの使用から遠ざかることを教示しています(反対の教唆)。一方、引用文献1は、前処理のギ酸を利用しています。引用文献3は引用文献1から遠ざかる教唆(反対の教唆)をしているため、当業者は、引用文献1を変更するときに、引用文献3の教示を考慮しないと思料いたします。」
ウ 引用文献4について
「引用文献4は、水熱処理により竹繊維の抽出及びバイオマスの利用を開示しています。しかしながら、引用文献4は、本発明と引用文献1との上記の相違点を穴埋めするために利用されません。」
(上記アについて)
引用文献1の段落[0013]には、「粉砕された木質系バイオマスと水を反応器内で混合することができる。」と明記されており、亜臨界水による処理(S20)、蟻酸による処理(S50)の前に、「木質系バイオマス」が「粉砕」されることが明らかである。そうすると、引用文献1には、予め「原料をプロセシングサイズに加工する」ことについて、明らかな示唆があるといえる。
(上記イについて)
引用文献2に記載の「一次破砕機40」は、段落【0017】に「・・・木質系バイオマスは、一次破砕機40に投入されて炭化炉に投入できるサイズまで裁断される」とあるように、請求人の主張する「微粒子に粉砕する」前の工程に用いられるものである。
また、引用文献3には、段落【0015】に「木質系バイオマス(例えば木材)を原料として糖化を行う場合、これを粉砕してチップ状にすることは広く行われているが、通常の粉砕では繊維の分離等が不十分であり、酸やアルカリによる前処理を行わざるを得なくなるおそれがある。そこで本発明では、物理的方法で十分な裁断、粉砕を行い、マイクロメートルレベルまで微細化しておくことが好ましい。」とあるように、「粉砕」の粒度は、多様であることが開示されている。
そうすると、引用発明の「木質系バイオマス」の「粉砕」の粒度について引用文献1に明記はされていないものの、所望の「プロセッシングサイズ」に「粉砕」することは明らかであり、「木質系バイオマス」を「粉砕」するために、引用文献2、3に記載の如き周知の機械的処理装置の中から、適当なものを選定することは、当業者が適宜選定する設計的な事項にすぎない。
(上記ウについて)
引用文献4は、相違点2に関する技術として引用する文献であって、相違点1に関するものではない。
したがって、請求人の主張は採用できない。
第8 結び
以上のとおり、本願発明1は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2024-003271