2024-003199
新規男性用パンツ
- 審判番号
- 2024-003199
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2023-159290外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2024年02月25日
- 審決日
- 2025年07月08日
- 公報発行日
- 2025年09月26日
- 結論
- 請求不成立
- 分類
- P18 .121-Z (A41B)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
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結論
理由
目次 ▾ 11項目
第1 手続の経緯
本願は、令和5年9月23日の出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。
第2 本願発明
本願の請求項1及び2に係る発明は、令和5年12月1日になされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1及び2に記載された事項により特定されるものと認められるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、以下のとおりのものである。
[請求項1]
「着用者の局部側とともに臀部側を覆うパンツ本体(A)と、局部側に位置し、着用者が着用時に着用者の陰茎を挿入および保持するための筒状の陰茎保持部(B)と、局部側に位置し、かつ当該筒状の陰茎保持部(B)の下方に位置し、着用者が着用時に着用者の陰嚢を収容および保持するための袋状の陰嚢収容部(C)とを備え、前記陰茎保持部(B)の上面部において、着用者の陰茎が上向きに保持されるように、陰茎保持部(B)とパンツ本体(A)とが連結部(D)に連結されている男性用パンツであって、前記陰嚢収容部(C)が、右陰嚢収容部(C1)および左陰嚢収容部(C2)とから構成されることを特徴とする男性用パンツ。」
第3 原査定の拒絶の理由
原査定(令和5年12月12日付け拒絶査定)の拒絶の理由は、
「この出願の請求項1に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。」というものを含むものであり、本願の請求項1に係る発明は、引用文献1、3に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである、というものである。
第4 引用発明、及び引用文献に記載された技術事項
1 引用文献1について
原査定の拒絶の理由で引用された、引用文献1(特開2001-207301号公報)には、以下の事項が記載されている。(下線は当審が付与。)
(1)
「【0001】【発明の属する技術分野】本発明は、猿股に関し、具体的には男性着用のパンツに関するものである。(中略)【0006】【課題を解決するための手段】前記の目的やその他の目的を達成するために本発明は改良した猿股を提案する。本発明の猿股は下辺を有する織物製のフロント布片(front piece)と、これに対応して下辺を有する織物製のリーア布片(rear piece)とを備える。」
(2)
「【0008】【発明の実施の形態】本発明をより明晰に理解するために本発明の実施の形態を図面に基づいて以下に詳述する。図1と図2は本発明の好ましい第1の実施形態を示す図である。図1に示す第1の好ましい実施形態における猿股1はフロント布片11、リーア布片12、袋片13及び蓋片14を備える。これらはすべて従来のパンツ用織物で製造される。フロント布片11には弾性伸縮帯111が縫い込まれた上辺とこれに相対する下辺を有する。同様にリーア布片12には弾性伸縮帯121が縫い込まれた上辺と、開口部110(図2を参照)を形成するように前記フロント布片11の下辺と縫合されて底縫線15を形成する下辺とを有する。尚、フロント布片11とリーア布片12はそれぞれ両側に互いに対向する側辺を有し、対応する各側辺を縫合して着用可能な猿股を完成し得る。【0009】袋片13は茶碗のような形状をなし、リーア布片12と袋片13で袋状空間(符号にて示されず)を構成するようにリーア布片12に縫合される。この袋状空間は開口部10(開口部110の誤記であることは明らかである。)に連通して着用者の陰のうが開口部10(開口部110の誤記であることは明らかである。)を通過してこれに収納されようになされる。これにより着用者の陰のうを鼠けい部から隔てることができる。【0010】蓋片14は管状体をなし、着用者の陰けいを収納可能な収納ホール140に形成される。蓋片14には上辺141とこれに対向する下辺142を有し、下辺142の外縁を袋片13に縫合するとともに内縁をフロント布片11の下辺に縫合することにより開口部110と袋片13の袋状空間が蓋片14の収納ホール14(収納ホール140の誤記であることは明らかである。)に連通する。それで着用者の陰けいが開口部110を通過して蓋片14の収納ホール140に収納可能になる。着用者の陰けいが蓋片14の収納ホール140に収納された状態では陰けいが下腹部の皮膚と頻繁に接触して皮膚病や不快感をもたらすことを解決することができる。【0011】更に図2に示すように蓋片14の上辺141は開口部110の上方の所定位置において、上辺141の近傍に位置する蓋片14の内面に設けられた一対の雄ベルクロファスナー143a、143bと、フロント布片11に設けられた一対の雌ベルクロファスナー113a、113bとの係離作用により、フロント布片11に分離可能に貼着されるようになる。しかし、ベルクロファスナーに代えて例えばボタン等の従来の固着手段を応用してもよい。手洗いの時、着用者が単に蓋片14の上辺141をフロント布片11からはずして済ませる。」
(3)
「[図:0001426442000001.jpg]」
引用文献1の上記記載から、次のことがいえる。
ア 上記「(1)」の段落0001には「本発明は、猿股に関し、具体的には男性着用のパンツに関するものである。」との記載、上記「(2)」の段落0008には「図1に示す第1の好ましい実施形態における猿股1はフロント布片11、リーア布片12、袋片13及び蓋片14を備える。」、「フロント布片11とリーア布片12はそれぞれ両側に互いに対向する側辺を有し、対応する各側辺を縫合して着用可能な猿股を完成し得る。」との記載があるから、引用文献1には、男性着用のパンツに関するものであり、該パンツは、フロント布片、リーア布片、袋片及び蓋片を備え、フロント布片とリーア布片は互いに対向する側辺を有し、対応する側辺を縫合して着用可能となる、ものが記載されている。
イ 上記「(2)」の段落0010には「蓋片14は管状体をなし、着用者の陰けいを収納可能な収納ホール140に形成される。蓋片14には上辺141とこれに対向する下辺142を有し、下辺142の外縁を袋片13に縫合するとともに内縁をフロント布片11の下辺に縫合することにより開口部110と袋片13の袋状空間が蓋片14の収納ホール14(収納ホール140の誤記であることは明らかである。)に連通する。それで着用者の陰けいが開口部110を通過して蓋片14の収納ホール140に収納可能になる。」との記載があるから、引用文献1には、蓋片は管状体をなし、着用者の陰けいを収納可能な収納ホールであって、蓋片の下辺の外縁を袋片に縫合し、着用者の陰けいが開口部を通過して蓋片の収納ホールに収納可能になる、ものが記載されている。
ウ 上記「(2)」の段落0009には「袋片13は茶碗のような形状をなし、リーア布片12と袋片13で袋状空間・・・を構成するようにリーア布片12に縫合される。この袋状空間は開口部10(開口部110の誤記であることは明らかである。)に連通して着用者の陰のうが開口部10(開口部110の誤記であることは明らかである。)を通過してこれに収納されようになされる。」との記載があるから、引用文献1には、袋片は茶碗のような形状をなし、リーア布片と袋片で袋状空間を構成するようにリーア布片に縫合され、着用者の陰のうが開口部を通過して袋状空間に着用者の陰のうが収納される、ものが記載されている。
エ 上記「(2)」の段落0011には「蓋片14の上辺141は開口部110の上方の所定位置において、上辺141の近傍に位置する蓋片14の内面に設けられた一対の雄ベルクロファスナー143a、143bと、フロント布片11に設けられた一対の雌ベルクロファスナー113a、113bとの係離作用により、フロント布片11に分離可能に貼着されるようになる。」との記載があるから、引用文献1には、蓋片の上辺は開口部の上方の所定位置において、上辺の近傍に位置する蓋片の内面に設けられた一対の雄ベルクロファスナーと、フロント布片に設けられた一対の雌ベルクロファスナーとの係離作用により、フロント布片に分離可能に貼着される、ものが記載されている。
以上を総合すると、引用文献1には、以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「 男性着用のパンツに関するものであり、該パンツは、フロント布片、リーア布片、袋片及び蓋片を備え、フロント布片とリーア布片は互いに対向する側辺を有し、対応する側辺を縫合して着用可能となるものであって、蓋片は管状体をなし、着用者の陰けいを収納可能な収納ホールであって、蓋片の下辺の外縁を袋片に縫合し、着用者の陰けいが開口部を通過して蓋片の収納ホールに収納可能になり、袋片は茶碗のような形状をなし、リーア布片と袋片で袋状空間を構成するようにリーア布片に縫合され、着用者の陰のうが開口部を通過して袋状空間は着用者の陰のうが収納され、蓋片の上辺は開口部の上方の所定位置において、上辺の近傍に位置する蓋片の内面に設けられた一対の雄ベルクロファスナーと、フロント布片に設けられた一対の雌ベルクロファスナーとの係離作用により、フロント布片に分離可能に貼着される、男性着用パンツ。」
2 引用文献3について
原査定の拒絶の理由で引用された、引用文献3(韓国公開実用新案第20-2018-0000657号公報)には、以下の事項が記載されている。(下線は当審が付与。)
(1)
「[図:0001426442000002.jpg](中略)[図:0001426442000003.jpg][図:0001426442000004.jpg]」
(当審仮訳:
考案の効果
[0005]
これにより、適切に着用した後、人体の生殖器の外観に応じて完全に包み込み、快適かつ確実に接触し、生殖器を効果的に分離して受け入れ、身体活動に応じた補助的なマッサージ機能を兼ね備える。これにより、パンツの着用が快適に包み込み、健康的な体型管理を可能にする実用的な機能と目的を達成する。
(中略)
[0007]
本発明によるパンツの改良構造は、主に一般男性が健康的に着用するためのパンツ構造の改良設計を提供するものである。図1から図3を参照すると、悪臭防止および抗菌のための混合処理設計を経た竹炭繊維と従来の混合紡績繊維素材を一緒に混合して編んだパンツ用の織物生地が製作されている。これは本発明の特徴部分ではないため、詳細には規定しない。パンツ構造の本体(10)は、前部シート(11)と後部シート(12)が互いに向かい合うように構成され、前後の側面が互いに接続されて対称に設置され、一般的にボクサーパンツやブリーフの構造で製作され、着用される。本体(10)の上部縁はフレーム型の着用開口部(13)として形成され、全体の着用開口部(13)の縁は弾性バンド(14)でフレームが作られ、着用後にウエストをバンディングして位置を固定する。下部の両側は逆V字型で互いに交差する開いた形のパンツ脚設計になっており、2つの開いた形のパンツ脚の下部は開いた着用出口(15)を形成し、完全なパンツの外観を共同で構成する。本発明は主に下側面を改良したものである。すなわち、前部シート(11)は、男性生殖器の位置に対して、それぞれ実際に包み込み、位置を固定し、快適に着用するための需要に応じて、やや前方に弧を描いて突き出た上部弧形バッグ(16)が設けられている。この弧形の突起形状は自然に下に垂れた弧線で設計されることが望ましく、下半部の位置が突き出た最外郭点が本体(10)表面の上側から3cm以内であることが美観上望ましい。そしてその上部弧形バッグ(16)の下部には、W字型曲線弧形の二重陥没型の小さな袋(17)がそれぞれパンツ面に接続される。これは主に一般男性の生殖器の外観を完全かつ別々に受け入れて包み支持するためのものである。また、上部弧形バッグ(16)の下部からV字型の弾性編み上部バンド生地部(18)が両側に向かって前部シート(11)上部の着用開口部(13)のフレームバンド(14)の下部に接続および延長され、弾性バンド面によってハンギング型で互いに接触する。これにより、着用後に生地が適切に密着し、平坦になるようにする。袋(17)の両側は、大きな弧を描くU字型弾性生地で織られた下部バンド生地部(19)が後部シート(12)と接続された側面位置に接続され、V字型および大きく弧を描くU字型に湾曲した弾性上部および下部バンド生地部(18、19)の編み物は、それぞれパンツの上部着用開口部(13)のバンド(14)の下部および後部シート(12)に接続された両側のエッジ面に延びている。これにより、着用時に適切な弾性拘束とハンギング補助を行い、着用および位置固定をしながら、内部に包まれる生殖器をその器官の外観に応じてそれぞれ受け入れ、包み、位置を固定することができる。したがって、確実に包む効果を得ることができるだけでなく、それぞれ別々に受け入れて包むことで、皮膚が互いにくっつかず、蒸し暑い不快感がない。また、袋(17)のW字型によって特に包むことで、生殖精液の製造元である睾丸と陰嚢を安全に密着させて包み、補助的に支持し、これらが身体活動に応じて身体の動きに合わせて変換できるようにする。これにより、マッサージおよび快適に接触する健康機能を兼ね備え、自然に相対的で独立した運動効果を形成することで、その生命活動力の緩和および維持を達成する。これは、現代人の業務、生活上のストレスまたは運動不足によって発生する男性の生育の困難に対して、非常に望ましい改善と健康維持効果を達成することができる。そして、パンツの密着着用特性に基づいて、上記の改良設計製作を通じて人体の健康維持を絶えず進行し、確保することができる。特に現代の悪臭除去および抗菌用のさまざまな竹炭繊維と弾性繊維および一般的な混合紡績繊維を共同で混合織布したパンツ編み生地の開発と特別な織り方の配置を利用して、柔らかい被覆面を織ることができる。したがって、敏感な肌表面に安全に接触し、通気性があり、快適な質感を提供することができる。特に本考案の突出弧形バック設置と、両側に弧形に延びた上部および下部の弾性編みバンド生地部(18、19)の補助的な拘束によって、着用後に相対的な吊り下げおよび位置固定の補助的効果を持ち、着用時に体に密着し、活動時に関連する器官または血に対して相対的な弾性マッサージの補助的効果を達成することができる。身体健康に対する相対的な支援は、通常のパンツ設計構造体が比較できるものではなく、または備えることができるものではない。そして、後部シート(12)はヒップ位置に対して、快適で弾性のある被覆生地を通じて、ヒップの突出弧形曲線に従って被覆外周面に特別な模様を持つ弾性繊維で補助的フレームを形成する。これにより、着用後にヒップを支持する補助的効果を達成し、ヒップの外観曲線が密着した曲線効果をさらに示すようにする。これによりパンツの着用は、密着し、美観があり、健康で快適で安全な実用的機能と目的を達成することができる。)
(2)
「[図:0001426442000005.jpg]」
(当審仮訳:
図面1
[図:0001426442000006.jpg]
)
ア
上記「(1)」の段落0007には「そしてその上部弧形バッグ(16)の下部には、W字型曲線弧形の二重陥没型の小さな袋(17)がそれぞれパンツ面に接続される。これは主に一般男性の生殖器の外観を完全かつ別々に受け入れて包み支持するためのものである。」との記載、及び「これにより、着用時に適切な弾性拘束とハンギング補助を行い、着用および位置固定をしながら、内部に包まれる生殖器をその器官の外観に応じてそれぞれ受け入れ、包み、位置を固定することができる。したがって、確実に包む効果を得ることができるだけでなく、それぞれ別々に受け入れて包むことで、皮膚が互いにくっつかず、蒸し暑い不快感がない。また、袋(17)のW字型によって特に包むことで、生殖精液の製造元である睾丸と陰嚢を安全に密着させて包み、補助的に支持し、これらが身体活動に応じて身体の動きに合わせて変換できるようにする。これにより、マッサージおよび快適に接触する健康機能を兼ね備え、自然に相対的で独立した運動効果を形成することで、その生命活動力の緩和および維持を達成する。」との記載、「健康で快適で安全な実用的機能と目的を達成する」との記載がある。
イ
図面1からは、「陰嚢を左右に分けて包む袋を備えるパンツ」が見て取れる。
そして、上記「ア」に摘記したとおり、段落0007には、「W字型曲線弧形の二重陥没型の小さな袋(17)がそれぞれパンツ面に接続される。これは主に一般男性の生殖器の外観を完全かつ別々に受け入れて包み支持するためのものである。」との記載があり、及び上記「イ」に述べたように、図面1からは「陰嚢を左右に分けて包む袋を備えるパンツ」であることが見て取れるから、W字型曲線弧形の二重陥没型の小さな袋が、一般男性の生殖器の外観を完全かつ別々に受け入れて包み支持するためのもの、すなわち陰嚢を左右に分けて包む袋といえるものである。また、段落0007には、「これにより、着用時に適切な弾性拘束とハンギング補助を行い、着用および位置固定をしながら、内部に包まれる生殖器をその器官の外観に応じてそれぞれ受け入れ、包み、位置を固定することができる。」との記載、「袋(17)のW字型によって特に包むことで、生殖精液の製造元である睾丸と陰嚢を安全に密着させて包み、補助的に支持し、これらが身体活動に応じて身体の動きに合わせて変換できるようにする。」との記載、及び「健康で快適で安全な実用的機能と目的を達成する」との記載があるから、該陰嚢を左右に分けて包む袋によって、快適であって、睾丸と陰嚢を安全に密着させて包み、位置を固定するパンツ、が構成されているものといえる。そして、該W字型曲線弧形の二重陥没型の小さな袋(17)は、一般男性の生殖器の外観を完全かつ別々に受け入れて包み支持するためのものであるから、該パンツは、男性用パンツであるといえる。
よって、上記記載をまとめると、引用文献3には、次の技術的事項が記載されていると認められる。
「陰嚢を左右に分けて包む袋を備えることで、快適であって、睾丸と陰嚢を安全に密着させて包み、位置を固定する男性用パンツ。」
第5 対比・判断
1 対比
本願発明と引用発明とを対比すると、以下のことがいえる。
(1) 引用発明の「男性着用パンツ」は「フロント布片とリーア布片は互いに対向する側辺を有し、対応する側辺を縫合して着用可能となる」ものであるから、男性着用のパンツは、フロント布片とリーア布片が縫合され着用可能なパンツとして構成されているものであり、該フロント布片と該リーア布片で構成されるパンツがパンツ本体であるといえる。そして、引用発明のフロント布片とリーア布片で構成されるパンツ本体は男性着用パンツであるから、パンツ本体が着用された際には、男性の陰けい及び陰嚢、すなわち着用者の局部を覆うと共に、臀部側を覆うものであることは明らかである。
そうすると、本願発明と引用発明は、「着用者の局部側とともに臀部側を覆うパンツ本体」を有する点で共通する。
(2) 引用発明の男性着用パンツの「蓋片」は「管状体をな」すものである。そして、「管状」の管とは、筒を表すものであるから、「管状」とは「筒状」と同義である。そうすると、引用発明の「管状体」とは、「筒状体」と同義であるといえるから、引用発明の男性着用パンツの「蓋片」が「管状体をなし、着用者の陰けいを収納可能な収納ホール」であるということは、「筒状体をなし、着用者の陰けいを収納可能な収納ホール」であることと同義である。そして引用発明の男性着用パンツの「蓋片」は「筒状体をなし、着用者の陰けいを収納可能な収納ホール」であるから、蓋片は、着用者の陰けい、すなわち、局部側に位置するものであることは明らかである。そして、蓋片は、筒状体をなし着用者の陰けいを収納可能な収納ホールであるから、着用者が着用時である着用者の陰けいを収納可能な収納ホールに収納する際には、陰けいは筒状体の蓋片に挿入され、挿入し続ける間、蓋片は装着者の陰けいを保持し続けることは明らかである。よって、蓋片は、着用者が着用時に着用者の陰けいを挿入および保持するための筒状の陰茎保持部であるといえる。
よって、引用発明の男性着用パンツは、「局部側に位置し、着用者が着用時に着用者の陰茎を挿入および保持するための筒状の陰茎保持部」を備えるものといえる。
そうすると、本願発明と引用発明は、「局部側に位置し、着用者が着用時に着用者の陰茎を挿入および保持するための筒状の陰茎保持部」を有する点で共通する。
(3) 引用発明の男性着用パンツの「袋片」は「茶碗のような形状をなし、リーア布片と袋片で袋状空間を構成するようにリーア布片に縫合され」るものであって、「袋状空間は着用者の陰のうが収納され」るものであるから、引用発明の男性着用パンツの、リーア布片と袋片で構成される袋状空間は、着用者が着用時に陰嚢を収納および保持するための袋状の陰嚢収容部であるといえる。
そして、引用発明の男性着用パンツは、「蓋片の下辺の外縁を袋片に縫合」するものであるから、袋片は蓋片の下方に位置するものといえ、上記「(2)」で述べたとおり、蓋片は陰茎保持部であるといえるから、袋片を用いて構成される袋状空間、すなわち陰嚢収容部は、筒状の陰茎保持部の下方に位置するものであるといえる。
また、袋状空間は蓋片の下方に位置するということは、蓋片、すなわち陰茎保持部が局部側に位置するものであるから、袋片を用いて構成される袋状空間、すなわち陰嚢収容部も局部側に位置するものであることは明らかである。
よって、引用発明の男性用パンツは、「局部側に位置し、かつ筒状の陰茎保持部の下方に位置し、着用者が着用時に着用者の陰嚢を収容および保持するための袋状の陰嚢収納部」を備えるものといえる。
そうすると、本願発明と引用発明は、「局部側に位置し、かつ筒状の陰茎保持部の下方に位置し、着用者が着用時に着用者の陰嚢を収容および保持するための袋状の陰嚢収納部」を有する点で共通する。
(4) 引用発明の男性着用パンツの「蓋片」は、「蓋片の上辺は開口部の上方の所定位置において、上辺の近傍に位置する蓋片の内面に設けられた一対の雄ベルクロファスナーと、フロント布片に設けられた一対の雌ベルクロファスナーとの係離作用により、フロント布片に分離可能に貼着される」ものであって、上記「(2)」で述べたとおり、蓋片は筒状の陰茎保持部であるといえる。
また、上記「(3)」で述べたように、引用発明の男性着用パンツは、「蓋片の下辺の外縁を袋片に縫合」するものであるから、袋片は蓋片の下方に位置するものといえ、蓋片は袋片の上方に位置するものといえる。
そして、着用者の陰嚢および陰けいは、いずれも開口部を通過して、陰嚢は袋状空間に収納され、陰けいは蓋片の収納ホールに収納されるものであって、蓋片の下辺の外縁は袋片に縫合され、蓋片の上辺は開口部の上方の所定位置においてフロント布片に貼着される、すなわち、蓋片は袋片の上部にあり、蓋片の下辺よりも上部に存在する蓋片の上辺がフロント布片に貼着されるのだから、蓋片の収納ホール、すなわち、筒状の陰茎保持部は開口部から蓋片の上辺に向けて上向きに収納ホールが構成されているといえる。
そして、着用者の陰けいは開口部を通過して蓋片の収納ホール、すなわち、筒状の陰茎保持部に収納および保持されるのであるから、筒状の陰茎保持部が開口部から上方に構成されている以上、着用者の陰けいは上向きに保持されることは自明である。
また、引用発明の男性着用パンツの「蓋片」は、蓋片の上辺の近傍に位置する蓋片の内面に設けられた一対の雄ベルクロファスナーと、フロント布片に設けられた一対の雌ベルクロファスナーとの係離作用により、フロント布片に貼着されるもの、すなわちベルクロファスナーは、蓋片とフロント布片をつなぎ合わせるものといえるから、該ベルクロファスナーは、蓋片、すなわち陰茎保持部とフロント布片を用いて構成される男性着用パンツ、すなわちパンツ本体を連結する連結部であるといえる。
さらに、蓋片の上辺は、開口部の上方の所定位置においてベルクロファスナーによって貼着されるものであって、ベルクロファスナーとは面ファスナーであることは技術常識であるから、蓋片の上辺、すなわち陰茎保持部の上辺の面を面ファスナーで貼着するものである。そして、蓋片の上辺、すなわち、陰茎保持部の面ファスナーが存在する上辺の面を上面部と称することは任意である。
よって、引用発明の男性着用パンツは、陰茎保持部の上面部において、着用者の陰茎が上向きに保持されるように、陰茎保持部とパンツ本体とが連結部に連結されている男性用パンツである、といえる。
そうすると、本願発明と引用発明は、「陰茎保持部の上面部において、着用者の陰茎が上向きに保持されるように、陰茎保持部とパンツ本体とが連結部に連結されている男性用パンツ」である点で共通する。
以上を総合すると、本願発明と引用発明とは、以下の点で一致し、また、相違している。
(一致点)
「 着用者の局部側とともに臀部側を覆うパンツ本体と、局部側に位置し、着用者が着用時に着用者の陰茎を挿入および保持するための筒状の陰茎保持部と、局部側に位置し、かつ当該筒状の陰茎保持部の下方に位置し、着用者が着用時に着用者の陰嚢を収容および保持するための袋状の陰嚢収納部とを備え、前記陰茎保持部の上面部において、着用者の陰茎が上向きに保持されるように、陰茎保持部とパンツ本体とが連結部に連結されている男性用パンツ。」
(相違点)
本願発明の男性用パンツが「前記陰嚢収容部(C)が、右陰嚢収容部(C1)および左陰嚢収容部(C2)とから構成される」との発明特定事項を有するのに対し、引用発明は当該発明特定事項を有していない点。
2 判断
上記「第4」の「2」で説示したように、引用文献3には、「陰嚢を左右に分けて包む袋を備えることで、快適であって、睾丸と陰嚢を安全に密着させて包み、位置を固定する男性用パンツ。」という公知の技術的事項が記載されている。男性用パンツを制作する際、快適であって、また、安全に着用できるように男性用パンツを構成することは、新たな証拠を提示するまでもなく、従来から当該分野に存在する課題であり、また、上記公知の技術的事項においても、快適であって、睾丸と陰嚢を安全に密着させて包み、位置を固定することを目的として、陰嚢を左右に分けて包む袋を備えるものである。そして、引用発明と公知の技術的事項はともに男性用パンツに関する技術であるから、引用発明において、より快適で安全な男性用パンツを提供するために、公知の技術的事項を採用することにより、男性用パンツにおける陰嚢収容部を陰嚢を左右に分けて包むように構成することは、当業者が容易に想到し得た事項である。
そして、本願発明が奏する効果も、引用発明及び引用文献3に記載された公知の技術的事項から、容易に予測できる範囲内のものである。
3 審判請求人の主張について
審判請求人は,令和6年2月25日に提出された審判請求書の【請求の理由】の「3.本件特許出願が特許されるべき理由」の「(3-5)」において、「引用文献3の内容を精査しても、本願発明のような、陰嚢の安定的な保持(あらゆる方向への陰嚢等の揺れの低減)などを通じて着用者の運動機能(スポーツ機能)を向上させるための手段はおろか、陰嚢収容部において、陰嚢を左右に分ける態様を採用することを教示するような記載は一切ない。」、「(3-3)」((3-6)の誤記であることは明らかである)において、「このように、引用文献1~3の内容を鑑みると、当業者が引用文献1~3に接したとしても、陰嚢の安定的な保持(あらゆる方向への陰嚢等の揺れの低減)などを通じて着用者の運動機能(スポーツ機能)の向上という課題解決手段に関する知見・示唆を得ることは極めて困難である。このような状況の下、各引用文献から、運動機能(スポーツ機能)の向上を目的として本願発明の構成に至ることは勿論、陰嚢収容部の構成を変更することさえも、過度の試行錯誤を要するものと言える。したがって、たとえ当業者であっても、引用文献1~3に基づいて、本願発明に容易に想到するものではないことは明らかである。」と主張している。
しかしながら、陰嚢収容部において、陰嚢を左右に分けて包むように構成する点は引用文献3から得られる構成に過ぎない。また、本願請求項1の記載には、男性用パンツであることの特定はされているものの、スポーツ用パンツであることの特定はないので、着用者の運動機能(スポーツ機能)の向上させるとの主張は、本願請求項1の記載に基づく主張ではない。さらに「前記陰嚢収容部(C)が、右陰嚢収容部(C1)および左陰嚢収容部(C2)とから構成される」という構成だけではあらゆる方向への揺れの低減が得られるとはいえず、あらゆる方向への陰嚢等の揺れの低減との主張も、本願請求項1の記載に基づく主張ではない。
そして、本願請求項1に係る発明の効果は引用発明において引用文献3に記載された公知の技術的事項を採用したことによる効果にすぎない。
よって、請求人の主張は採用できない。
第6 むすび
以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、引用文献1に記載された発明及び引用文献3に記載された技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、他の請求項について検討するまでもなく、拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
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2024-003199