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特許拒絶査定不服審判

2024-003074

予知保全サービスのための移動体の常時監視システム

審判番号
2024-003074
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2020-110742
請求日
2024年02月21日
審決日
2024年11月20日
公報発行日
2025年02月28日
結論
請求不成立
当事者
  • 【請求人】トーヨーカネツ株式会社
  • 【請求人代理人】友野 英三
審判長/審判官
  • 審判長 中屋 裕一郎
  • 審判官 尾崎 和寛
  • 審判官 横山 幸弘
分類
P18 .121-Z (B65G)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条、特許法第17条の2第5項、特許法第29条第2項、特許法第17条の2第6項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特願2020-110742「予知保全サービスのための移動体の常時監視システム」拒絶査定不服審判事件〔令和 4年 1月13日出願公開、特開2022- 7653〕について、次のとおり審決する。

結論

結 論 本件審判の請求は、成り立たない。

理由

理 由 第1 手続の経緯 本願は、令和2年6月26日の出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。 令和4年11月11日付け :拒絶理由通知書 令和5年 1月23日 :意見書、手続補正書の提出 令和5年 4月12日付け :拒絶理由(最後の拒絶理由)通知書 令和5年 8月16日 :意見書、手続補正書の提出 令和5年11月15日付け :令和5年8月16日の手続補正についての 補正の却下の決定、拒絶査定 令和6年 2月21日 :審判請求書、手続補正書の提出 第2 令和6年2月21日にされた手続補正についての補正の却下の決定 [補正の却下の決定の結論] 令和6年2月21日にされた手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。 [理由] 1 本件補正について (1)本件補正後の特許請求の範囲 本件補正により、特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおり補正された(下線は補正箇所である。)。 「物流倉庫における昇降機器及び/もしくは前記昇降機器を構造的に支保する構造体及び/もしくは前記構造体に関連する部品に設置され振動に係るセンシング情報をリアルタイムもしくは一定時間間隔ごとに取得する振動センサと、 前記振動センサが取得する、故障の兆候を予知する予知保全のための振動センシング情報を耐ノイズ信号処理を適用した無線伝送を通じて送信する無線送信部と、 前記無線送信部から送信されたセンシング情報を受信する受信部と、 前記受信部によって受信されたセンシング情報から、前記昇降機器の部品の交換時期を予知する常時監視サーバと、 前記昇降機器の稼働状況をモニタリングできるようにする見える化手段と を具備することを特徴とする予知保全サービスのための移動体の常時監視システム。」 (2)本件補正前の特許請求の範囲 本件補正前の、令和5年1月23日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1の記載は次のとおりである(なお、令和5年8月16日付け手続補正書でした補正は令和5年11月15日付けで決定により却下された。)。 「物流倉庫における昇降機器及び/もしくは前記昇降機器を構造的に支保する構造体及び/もしくは前記構造体に関連する部品に設置され振動を含む物理量に係るセンシング情報をリアルタイムもしくは一定時間間隔ごとに取得するセンサと、 前記センサが取得するセンシング情報を無線を通じて送信する無線送信部と、 前記無線送信部から送信されたセンシング情報を受信する受信部と、 前記受信部によって受信されたセンシング情報から、前記昇降機器の部品の交換時期を予知する常時監視サーバと、 前記昇降機器の稼働状況をモニタリングできるようにする見える化手段と を具備することを特徴とする予知保全サービスのための移動体の常時監視システム。」 2 補正の適否 本件補正は、本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「センサ」、及び「無線」について、上記のとおり限定を付加するものであって、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法17条の2第5項2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 そこで、本件補正後の請求項1に記載される発明(以下「本件補正発明」という。)が同条第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下、検討する。 (1)本件補正発明 本件補正発明は、上記1(1)に記載したとおりのものである。 (2)引用文献の記載事項等 ア 引用文献1 原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1(特開2020-76750号公報)には、次の記載がある(下線は当審で付したもの。以下同様。)。 「【0001】 本発明は、例えば物流センターの立体自動倉庫に設置されるマテハン機器の部品交換予知システム並びに部品交換予知方法に関する。」 「【0006】 上述した物流センターでは、ひとたび立体自動倉庫のマテハン機器(搬送装置、昇降装置(リフタ)、バッファコンベヤ等)に故障が発生して商品の搬送や入出庫がストップすると、搬送システムの回復に多くの時間を要するために、あらかじめ定められた店舗等への入荷時間が間に合わず、大きな損失を生じてしまうことがある。 【0007】 このため、物流センターでは立体自動倉庫のマテハン機器を定期的に点検・修理しており、また故障内容によってはマテハン機器の稼動を止めて点検・修理を行う必要がある。これらの点検・修理は迅速に行う必要があるが、故障の規模や内容によっては時間がかかってマテハン機器の停止時間が長くなったり、修理の見通しが立たなくなったりする場合等がある。このようなケースでは、物流センターの運営者に多大な不便を与えることになるため、こうした事態が発生しないよう、マテハン機器に故障が発生する兆候を事前に察知することが重要である。」 「【0011】 特に、マテハン機器の中でも保管用ケースを垂直方向に移動する昇降装置は、保守作業員の立ち入りが困難な保管倉庫部内の狭い空間に設置されているので定期的な点検作業の実施が困難である。そのため、マンパワーによる故障箇所の発見や部品交換時期の予知が困難であった。 【0012】 本発明は、このような従来技術上の問題点に鑑み、故障発生前に部品交換時期の予知を可能とする、マテハン機器の部品交換予知システム並びに部品交換予知方法を提供することを課題とする。」 「【0014】 すなわち、本発明の第1の態様に係るマテハン機器の部品交換予知システムは、マテハン機器に設置されたセンサからの出力を用いて人工知能(AI)技術によって、前記マテハン機器の部品の交換時期を予知する、構成を備える。より具体的には、立体自動倉庫のマテハン機器に振動センサを取り付け、前記マテハン機器を構成する部品から発生する振動の周波数の経時的変動量と前記部品の異常度との関係を学習済みモデルとする人工知能(AI)技術によって、前記部品の交換時期を予知するマテハン機器の部品交換予知システムとして具現化することができる。 【0015】 ここで、本願において、マテハン(Material Handling)機器とは、運搬や荷役作業を助ける機器のことをいい、特に、物流業務を効率化するために用いられる作業機械として、上述した搬送装置、昇降装置(リフタ)、バッファコンベヤのみならず、フォークリフト、パレット、一般コンベヤを含む概念である。」 「【0027】 図1は、物流センターに備わる立体自動倉庫の一例を示す概念図、図2は、図1に示す立体自動倉庫の保管倉庫部の一部(棚一列分)を示す斜視図、図3は、図1に示す立体自動倉庫を管理するWMS及びWCSのシステム構成を示すブロック図である。 【0028】 本実施の形態に係る立体自動倉庫1は、保管倉庫部(倉庫手段)100と、ピッキングステーション200と、梱包手段300とを備えている。」 「【0031】 保管倉庫部100には、各通路20の端部に配置された昇降装置50と、棚10の各段の端部に配置されたバッファコンベヤ60とがさらに備わっている。昇降装置50は、保管用ケース40を架台55に載せて垂直方向に移送する装置であり、バッファコンベヤ60は、搬送装置30と昇降装置50との間で保管用ケース40の受け渡しを行うコンベヤである。 【0032】 立体自動倉庫1は、倉庫業務を一括管理するホストコンピュータ(またはサーバ、クラウド等)を備えたWMS(倉庫管理システム)400と、WMS400のホストコンピュータに接続されたコンピュータを内蔵するWCS(倉庫制御システム:Warehouse Control System)500によって管理されている。」 「【0061】 昇降装置50は、受動回転手段である下部プーリ51及び上部プーリ52と、それらの間に懸架されたベルト53と、下部プーリ51を回転駆動する能動回転手段である減速機付きモータ54と、上部プーリ52の回転に連動して垂直方向に上下動する架台55等の駆動系(駆動部品)を備えている。下部プーリ51及び減速機付きモータ54は、ボルト56a,56b(固定手段)によってステージ57上に固定されており、上部プーリ53は、ボルト58(固定手段)によってフレーム59に固定されている。 【0062】 昇降装置50の駆動系を構成する上記各部品(下部プーリ51、上部プーリ52、減速機付きモータ54、ボルト56a、56b、58)の近傍には、各部品から発生する振動を検知する振動センサ2が取り付けられている。振動センサ2としては、定期的に振動レベルを自動計測し、その計測値を無線通信によってWCS500等の上位デバイスに送信することができる無線型振動センサが適している。」 「【0068】 昇降装置50の駆動系を構成する各部品は、経時的な劣化が進行するにつれて、当該部品から発生する周波数の変動量(固有周波数からの変動量)が大きくなるなどの変化をする。そこで、各部品から発生する周波数の変動量と部品の劣化の程度(異常度)との関係をあらかじめ学習し、その学習済みモデルに基づいて周波数の変動量に閾値を設けておく。 【0069】 そして、ある部品の周波数の変動量が当該閾値を超えたときには、振動センサ2の計測値を受信した上位デバイス(例えばWCS500)から物流センターの運営者の端末機に対し、インターネット等の情報通信網を通じて表1のような警告メールを自動送信する。 【0070】 【表1】(省略) また、振動センサ2の計測値を受信した上位デバイスは、図10に示すような深層学習等の人工知能(AI)技術を用い、部品の周波数の変動量(入力値)と、前述した学習済みモデルに基づいて設定した閾値との比較を行って部品の交換時期を予測し(出力値)、上記警告メールと共に物流センターの運営者に交換時期を通知する。そして、当該警告メール及び交換時期の通知を受信した物流センターの運営者は、保守作業員に対し、交換対象となる部品の交換を指示する。」 「【0074】 このように、本実施の形態に係る部品交換予知システムによれば、人工知能(AI)技術及びIoT技術を活用して故障の前に異常を検知し、事故発生前のメンテナンスを実施することにより、“予知保全”=“止めない物流”を実現することができる。また、これにより、トータルのコストを削減することができる。」 「【図1】 [図:0001419096000001.jpg] 」 「【図3】 [図:0001419096000002.jpg] 」 「【図5】 [図:0001419096000003.jpg] 」 上記引用文献1の記載より、引用文献1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているといえる。 [引用発明] 「物流センターに備わる自動倉庫1に設置される昇降装置50の駆動系を構成する、下部プーリ51、上部プーリ52、減速機付きモータ54、ボルト56a、56b、58の近傍に、下部プーリ51、上部プーリ52、減速機付きモータ54、ボルト56a、56b、58から発生する振動を定期的に自動計測する無線型振動センサ2を取り付け、 前記無線型振動センサ2によって自動計測された計測値を上位デバイスであるWCS500に、無線通信により送信し、 前記無線型振動センサ2の計測値を受信した上位デバイスであるWCS500によって昇降装置50の駆動系を構成する部品の交換時期を予測する、 部品交換予知システム。」 イ 引用文献2 原査定の拒絶の理由で引用された引用文献2(特開2001-178565号公報)には、次の記載がある。 「【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、電動力によって移動可能な棚を複数並べてなる電動式移動棚装置に関するもので、その制御状況、特に電動式移動棚にトラブルが発生したときこれを遠隔地の監視装置で把握することができるようにするとともに、移動棚装置側と遠隔地の監視装置との間でソフトウエアのダウンロード、アップロードを可能にし、かつ、移動棚装置の機能部品の劣化や寿命に関するデータを提供することができるようにしたものである。」 「【0015】図12は、本発明にかかる電動式移動棚装置の別の概念図を示す。図12において、メンテナンスの拠点となる遠隔地の監視装置1は、モデムを内蔵したパソコン5と、このパソコン5に接続されたモニタ6を有してなる。複数の移動棚からなる電動式移動棚装置3側は、一つの移動棚に主制御部21が設けられている。電動式移動棚装置3はマイクロコンピュータ(以下「マイコン」という)を備え、このマイコンによって制御される。上記主制御部21は、上記マイコンを備えたボードで構成され、通信ポートを有している。この主制御部21の通信ポートと監視装置1との間が電話回線でつながっている。上記パソコン5は電話網を通じて携帯電話の中継局43につながり、上記主制御部21の通信ポートは、モバイルデータアダプタ41を介して携帯電話機42につながっている。モバイルデータアダプタ41は、携帯電話用の一種のモデム装置である。上記携帯電話42はデータ通信ポートを備え、デジタル通信可能なものが用いられる。携帯電話機42と上記中継局43との間が電波で連絡され、電動式移動棚装置3側と遠隔地との間でデータの授受を行うことができるようになっている。モバイルデータアダプタ41、携帯電話機42、中継局43を含む構成部分は通信手段を構成している。 【0016】図13に示す例は、電動式移動棚装置3側と遠隔地とが有線の電話網で接続された例である。電動式移動棚装置3を構成する複数の移動棚の一つに主制御部21が設けられ、この主制御部21の通信ポートがモデム11に接続され、遠隔地の監視装置を構成するパソコン5のモデムと上記モデム11とが有線の電話網で接続され、電動式移動棚装置3側と遠隔地との間でデータの授受を行うことができるようになっている。電話網とモデム11を含む構成部分は通信手段を構成している。 【0017】次に、図1~図9を参照しながら本発明にかかる電動式移動棚装置の実施の形態について説明する。図1はこの実施の形態の全体的な構想を示すもので、移動棚制御系30と、テレメンテサービス系40と、ネットワーク系50とに大別することができる。・・・以下省略」 「【0018】上記テレメンテサービス系40は、図10、図11、図12、図13について説明した遠隔地からの監視装置を含む部分であって、この例では、電話回線として無線電話回線が用いられ、モバイルデータアダプタ41、無線電話機42、無線電話中継局43、パソコン5、モニタ6を含んでいる。移動棚制御系30から前述の各種蓄積データがモバイルデータアダプタ41に転送され、これらのデータはさらにPHS(パーソナル・ハンディフォン・システム)電話機またはデジタル携帯電話機など、デジタルデータを送信可能な無線電話機42から送信され、中継局43と、一般電話回線とを介してパソコン5に転送されるようになっている。パソコン5とモニタ6は前述の監視装置を構成している。」 「【0021】電動式移動棚を構成する各棚の制御系統のより具体的な構成例を図3に示す。上記主棚31には主制御部21と分散制御部25が設けられ、各分散棚32、・・・・・・には分散制御部25が設けられている。主制御部21は、CPUあるいはマイクロプロセッサ等を有してなる主制御基板24を中心として、これに液晶ディスプレイ等からなるモニタ14、一種のインターフェースであるCNVモジュール15が接続されている。さらに、主制御基板24には、設備電源から漏電ブレーカ、電源スイッチ接点を介して交流電源が供給され、また、この交流電源は主制御基板24の制御でオン・オフするパワー・リレー接点を介して各分散制御盤25に供給されるようになっている。主制御盤21にはまた、通路スイッチ、停止センサ、進入センサ、安全バースイッチ等の各種センサ類からの信号が入力され、さらに、照明灯、作動灯、リセットスイッチ、電源スイッチ等が接続されている。」 「【0023】図4は、前記テレメンテサービス系40の例を示す。図4において、前述の主棚31は、前述のように主制御基板24とモニタ14を有するとともに、これら主制御基板24とモニタ14をつなぐアダプタ18を有する。主制御基板24とモニタ14は、その棚装置の監視装置を構成していて、アダプタ18を介して主制御基板24から出力される様々なデータをモニタ14に表示し、モニタ14の表示を見ることによってその棚の制御状況を把握することができるようになっている。上記アダプタ18はまた、主制御基板24から出力される様々なデータを、モバイルデータアダプタ41、PHSまたはデジタル携帯電話等の無線電話機42を介して送信することができるようになっている。上記モバイルデータアダプタ41、無線電話機42は、移動棚装置の制御状況データを、電話回線を通じて送り出す送信手段を構成している。 【0024】この送信手段から送信された制御状況データは、中継局43、電話網、モデム10からなる通信手段を介して監視装置としてのパソコン5に入力され、パソコン5に付属するモニタ6により、移動棚装置に対し遠隔地において移動棚装置の制御状況データを表示するようになっており、メンテナンス要員等はこのモニタ6の表示を見ることによって移動棚装置の制御状況を把握することができるようになっている。上記送信手段から送り出される制御状況データには移動棚装置の異常な動作を示すトラブルデータが含まれ、上記パソコン5を含む監視装置によって移動棚のトラブルを把握することができる。メンテナンス要員等は移動棚装置にトラブルが発生しているときは、双方向通信によって、あるいは適宜の電話回線を通じてユーザーに対してトラブル解消のための的確な指示を行うことができる。双方向通信機能がある場合は、監視装置としてのパソコン5側から電話回線を通じて遠隔地より移動棚の制御信号を送信することができるようにしてもよい。」 「【0037】上記メイン画面の下位に位置する各種画面表示として次のものがある。 顧客データ画面:移動棚装置の客先、納入日付、製造番号、担当営業、物件仕様、オプション、メンテナンス記録、その他。 現地レイアウト画面:現地移動棚装置の位置状況、台数の把握など。なお、指定棚のセンサ等の電気的状況すなわち動作状況を把握するために、棚の詳細画面を表示できるようになっている。 ディスプレイ表示画面:現地移動棚装置におけるディスプレイ表示画面の表示内容を把握することができるようになっている。 故障履歴画面:移動棚の台車番号、故障内容、運転時間、発生回数などに関し、故障履歴を表示する。 パラメータ画面:パラメータ設定内容、およびその変更などを表示する。 センサ状態画面:各棚に設けられたセンサ類の作動状況を表示する。 内部メモリ画面:主制御部の内部メモリに記録されているデータメモリ、メモリI/O、外部入力メモリ、外部出力メモリYの内容を表示する。」 ウ 引用文献3 本願の出願日前に頒布された又は電気通信回路を通じて公衆に利用可能となった特開平11-157605号公報(以下、「引用文献3」という。)には、次の記載がある。 「【0001】 【発明の属する技術分野】この発明は、物品の搬送と入出庫を妨げるおそれのある異状が検知されたり、または物品が入出庫されるとき、その現場の状況を地上側からテレビ画面で監視し、その状況の的確な把握に基づいて、適切・迅速な異状の修復処置や、正確な物品払出し、正確・迅速な実地棚卸し、ひいては合理的な在庫管理などを可能にする、立体自動倉庫における監視装置に関する。」 「【0010】実施例(監視装置)の各構成ユニットは立体自動倉庫側と地上側とに分けることができる。図1において、立体自動倉庫側には、移動荷台1が、スタッカクレーン11の昇降台14に設置される。この移動荷台1の上面に門形の取付枠4を設け、その上表面に雲台3を介してズーム機能付きテレビカメラ2を設置する。取付枠4の中間棚に無線式の画像送信装置5を載置する。雲台3は、水平と垂直の固定された2軸の回りにそれぞれ回転して、テレビカメラ2の撮影方向を自在に変えることができる構造である。その回転の動力源は、2軸に対応する2個のモータである。また、移動荷台1の上面には、入出庫するためにパレット19上に物品18を載せて棚10aとの間を運ぶフォーク装置17が置かれる。このフォーク装置17は、たとえばスライドフォークやローラコンベヤの形式をとり、図の左方向はもちろん、門形の取付枠4の内部空間を通って図の右方向にも、入出庫すべき棚10aに対して物品18を運ぶことができる。 【0011】地上側は、無線式の画像受信装置6と、これに接続される画像表示装置7と、その近くに置かれる無線式の操作盤8と、別に立体自動倉庫を含めて全体的に制御する総合制御装置9である。画像受信装置6は、前記の画像送信装置5に対応し、ノイズの影響を受け難いSS(スペクトラム拡散)形の無線方式が採用される。操作盤8は、雲台3の姿勢を変えるためのジョイスティック(操縦桿)や、テレビカメラ2のズーム比を変える押しボタンを備える操作ユニットである。ここで、総合制御装置9は、図示してない入出庫端末機の入力に基づくスタッカクレーン11に対する移動信号の外に、テレビカメラ2に対する起動・停止信号を出力する。」 (3)引用発明との対比 ア 本件補正発明と引用発明とを対比する。 (ア)引用発明の「物流センターに備わる自動倉庫1」は、本件補正発明の「物流倉庫」に相当する。また、引用発明の「昇降装置50」は、本件補正発明の「昇降機器」に相当する。さらに、引用発明の「無線型振動センサ2」は、「昇降装置50の駆動系を構成する、下部プーリ51、上部プーリ52、減速機付きモータ54、ボルト56a、56b、58」「から発生する振動を定期的に自動計測する」ものであり、振動に係るセンシング情報を取得するものといえるから、本件補正発明の「振動センサ」に相当する。加えて、引用発明の「定期的に自動計測する」ことは、本件補正発明の「リアルタイムもしくは一定の時間間隔ごとに取得する」ことに相当する。 そして、引用発明の「無線型振動センサ2」を「昇降装置50の駆動系を構成する、下部プーリ51、上部プーリ52、減速機付きモータ54、ボルト56a、56b、58の近傍に」「取り付け」ることは、無線型振動センサ2を昇降装置50に設置することに他ならないから、本件補正発明の「振動センサ」を「昇降機器及び/もしくは前記昇降機器を構造的に支保する構造体及び/もしくは前記構造体に関連する部品に設置」することに相当する。 したがって、引用発明の「物流センターに備わる自動倉庫1に設置される昇降装置50に備えられた、下部プーリ51、上部プーリ52、減速機付きモータ54、ボルト56a、56b、58の近傍に、下部プーリ51、上部プーリ52、減速機付きモータ54、ボルト56a、56b、58から発生する振動を定期的に自動計測する無線型振動センサ2を取り付け」ることは、本件補正発明の「振動に係るセンシング情報をリアルタイムもしくは一定時間間隔ごとに取得する振動センサ」を「物流倉庫における昇降機器及び/もしくは前記昇降機器を構造的に支保する構造体及び/もしくは前記構造体に関連する部品に設置」することに相当する。 (イ)引用発明の「計測値」は、「上位デバイスであるWCS500によって昇降装置50の駆動系を構成する部品の交換時期を予測する」ための情報であり、故障発生前のメンテナンスを実施するための情報であるといえるから(引用文献1の段落【0012】、【0014】、【0068】、【0069】、及び【0074】を参照。)、故障の兆候を予知する予知保全のための振動センシング情報であるといえ、本件補正発明の「故障の兆候を予知する予知保全のための振動センシング情報」に相当する。また、引用発明の「前記無線型振動センサ2によって自動計測」することは、本件補正発明の「前記振動センサが取得する」ことに相当する。さらに、引用発明の「無線通信により送信」することは、本件補正発明の「無線伝送を通じて送信」することに相当する。 したがって、引用発明の「前記無線型振動センサ2によって自動計測された計測値を上位デバイスであるWCS500に、無線通信により送信」することは、本件補正発明の「前記振動センサが取得する、故障の兆候を予知する予知保全のための振動センシング情報を耐ノイズ信号処理を適用した無線伝送を通じて送信」することとの対比において、「前記振動センサが取得する、故障の兆候を予知する予知保全のための振動センシング情報を」「無線伝送を通じて送信」するとの限度で一致する。また、引用発明が、「前記無線型振動センサ2によって自動計測された計測値を上位デバイスであるWCS500に、無線通信により送信」するための無線送信部を具備していることは自明であるから、引用発明が「前記無線型振動センサ2によって自動計測された計測値を上位デバイスであるWCS500に、無線通信により送信」するという構成は、本件補正発明が「前記振動センサが取得するセンシング情報を」「無線伝送を通じて送信する無線送信部」「を具備する」という構成に相当する。 (ウ)引用発明の「上位デバイスであるWCS500」は「前記無線型振動センサ2の計測値を受信」するものであり、そのための受信部を具備することは自明であるから、引用発明の「上位デバイスであるWCS500」が「前記無線型振動センサ2の計測値を受信」するという構成は、本件補正発明が「前記無線送信部から送信されたセンシング情報を受信する受信部」を具備するという構成に相当し、引用発明における「上位デバイスであるWCS500」が受信する「前記無線型振動センサ2の計測値」が、本件補正発明における「前記受信部によって受信されたセンシング情報」に相当する。 引用発明の「上位デバイスであるWCS500」は、「昇降装置50の駆動系を構成する部品の交換時期を予測する」ものであり、その予測は、当然に上位デバイスであるWCS500が受信する「前記無線型振動センサ2の計測値」に基づき行われるから、引用発明の「上位デバイスであるWCS500」が「昇降装置50の駆動系を構成する部品の交換時期を予測する」ことは、本件補正発明の「前記受信部によって受信されたセンシング情報から、前記昇降機器の部品の交換時期を予知する」ことに相当し、引用発明の「上位デバイスであるWCS500」が本件補正発明の「常時監視サーバ」に相当する。 (エ)引用発明の「部品交換予知システム」は、移動体といえる昇降装置50の駆動系を構成する部品の交換時期を常時予知し、昇降装置50を保全するための監視システムであるといえるから、本件補正発明の「予知保全サービスのための移動体の常時監視システム」に相当する。 (オ)以上のとおりであるから、本件補正発明と引用発明の一致点及び相違点は次のとおりとなる。 [一致点] 「物流倉庫における昇降機器及び/もしくは前記昇降機器を構造的に支保する構造体及び/もしくは前記構造体に関連する部品に設置され振動に係るセンシング情報をリアルタイムもしくは一定時間間隔ごとに取得する振動センサと、 前記振動センサが取得する、故障の兆候を予知する予知保全のための振動センシング情報を無線伝送を通じて送信する無線送信部と、 前記無線送信部から送信されたセンシング情報を受信する受信部と、 前記受信部によって受信されたセンシング情報から、前記昇降機器の部品の交換時期を予知する常時監視サーバと、 を具備する予知保全サービスのための移動体の常時監視システム。」 [相違点1] 無線伝送に関し、本件補正発明が、「耐ノイズ信号処理を適用した」ものであるの対し、引用発明では耐ノイズ信号処理を適用したものとは特定されていない点。 [相違点2] 本件補正発明が、「前記昇降機器の稼働状況をモニタリングできるようにする見える化手段」を具備しているのに対し、引用発明は、昇降装置50の稼働状況をモニタリングできるようにする見える化手段を具備しているとは特定されていない点。 (4)判断 以下、相違点について検討する。 ア 相違点1について (ア)引用文献3には、倉庫側にテレビカメラ2及びこれに接続される無線式の画像送信装置5を設置し、無線式の画像送信装置5によりテレビカメラ2で撮影した映像信号を送信し、地上側に無線式の画像受信装置6及びこれに接続される画像表示装置7を設置し、テレビカメラ2で撮影した映像を画像表示装置7で表示する立体自動倉庫における監視装置において、無線方式としてノイズの影響を受け難いSS(スペクトラム拡散)形を採用するという技術的事項(以下、「引用文献3の技術的事項」という。)が記載されている(上記(2)ウ)。 ノイズが重畳しやすい環境下での無線通信に耐ノイズ信号処理を適用することは、自動倉庫の技術分野に限らず、さまざまな技術分野で広く行われている周知・慣用の技術的事項である。また、引用発明の物流センターに備わる自動倉庫1も、無線型振動センサ2によって自動計測された計測値を上位デバイスであるWCS500に無線通信により送信する際に、昇降装置50のモータ54などから無線通信に悪影響を及ぼすノイズが発生し、これに対処する必要があるという課題は、引用文献1に接した当業者であれば容易に認識しうるといえる。 そして、引用発明の無線通信に対して、自動倉庫における監視装置という技術分野の共通性があり、自動倉庫における無線通信に係る技術という点で共通性がある引用文献3の技術的事項を適用し、上記課題を解決しようと試みることは、当業者であれば容易に想到しうることといえる。 したがって、相違点1に係る本件補正発明の構成は、引用発明及び引用文献3の技術的事項に基いて当業者が容易に想到し得たものである。 (イ)この点、審判請求人(出願人)は、令和6年2月21日に提出した審判請求書において、「引用文献3と本願とでは、課題が異なる。すなわち、引用文献3における、テレビカメラによって撮像された画像信号は、「物品の搬送と入出庫の少なくとも一方を妨げるおそれのある異常状態、たとえば移動荷台上での荷崩れや、進路妨害となる障害物の存在・・・、棚群と移動荷台の移動中の接触、昇降台に用いられるチェーンの伸び、入出庫時の移動台と棚との位置ずれ、二重格納・・・、空出庫・・・などの検知」がなされたときに、「その実情を的確に把握したり、物品が入出庫されるときに、その物品の現物確認が容易にできる、立体自動倉庫における監視装置」を提供することを課題として掲げたものであり、ここには、本願に係る「故障の兆候を予知する予知保全のため」に振動センシング情報を取得・適用するという技術思想は、明らかに開示も示唆もない。」と主張する(第22頁第2行~第11行)。 しかしながら、「故障の兆候を予知する予知保全のため」に振動センシング情報を取得・適用するという本件補正発明と同様の技術思想は引用文献3が開示も示唆もしてないが、本件補正発明と同様の技術思想は、引用発明が開示している。また、引用文献1に接した当業者が引用発明の無線通信に耐ノイズ信号処理の必要性を容易に認識できることは、上記(ア)に説示のとおりであり、自動倉庫における監視装置という技術分野の共通性及び自動倉庫における無線通信という技術の共通性がある引用文献3の技術的事項を引用発明の無線通信に適用することが、当業者にとって容易に想到しうることも上記(ア)に説示のとおりである。そして、無線方式としてノイズの影響を受け難いSS(スペクトラム拡散)形を採用するとする引用文献3の技術的事項が奏する効果は、引用文献3の技術的事項を引用発明の無線型振動センサ2の計測値の無線送信に適用したとしても奏されるものであるし、また、引用文献3が本件補正発明と同様の技術思想を開示も示唆もしてないことが、引用文献3の技術的事項の引用発明への適用が困難だとする理由になるとはいえない。 したがって、審判請求人(出願人)の上記主張は採用できない。 イ 相違点2について 引用文献2には、倉庫20(物流倉庫)(( )内は本件補正発明の相当する構成を示す。以下同様。)における電動式移動棚装置3(昇降機器)に設置された停止センサ、進入センサ、安全バースイッチ等の各種センサ類と、各種センサからの信号(センシング情報)を無線を通じて送信するモバイルデータアダプタ41及び無線電話機42(無線送信部)と、送信された信号(センシング情報)を受信するモデム10(受信部)とを備えた監視装置1(常時監視システム)において、受信された信号を表示する(昇降機器の稼働状況をモニタリングできるようにする)モニタ6(見える化手段)とを具備する技術的事項(以下、「引用文献2の技術的事項」という。)が記載されている(上記(2)イ参照)。 引用発明の「物流センターに備わる自動倉庫1」も、倉庫に関連する装置が自動で制御されているものであるという性質上、その制御状況把握する必要があるという技術的課題を内在し、当業者であればかかる課題を容易に認識可能であったといえる。 したがって、当業者であれば、引用発明の上記内在する課題を認識したうえで、技術分野の共通性がある引用文献2の技術的事項を適用し、かかる課題を解決しようとすることは容易に想到し得たことといえる。 よって、相違点2に係る本件補正発明の構成は、引用発明及び引用文献2の技術的事項に基いて当業者が容易に想到し得たものである。 ウ 作用効果について そして、これらの相違点を総合的に勘案しても、本件補正発明の奏する作用効果は、引用発明及び引用文献2、3の技術的事項の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。 エ 小括 したがって、本件補正発明は、引用発明及び引用文献2、3の技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 3 本件補正についてのむすび 以上のとおりであるから、本件補正は、特許法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に違反するので、同法159条1項の規定において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。 よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。 第3 本願発明について 1 本願発明 令和6年2月21日にされた手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項に係る発明は、令和5年1月23日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1及び2に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、その請求項1に記載された事項により特定される、上記第2[理由]1(2)に記載のとおりのものである。 2 原査定の拒絶の理由 原査定の拒絶の理由は、この出願の請求項1及び2に係る発明は、本願の出願日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献1に記載された発明及び引用文献2に記載された事項に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない、というものである。 引用文献1:特開2020-76750号公報 引用文献2:特開2001-178565号公報 3 引用文献 原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1及び2は、上記第2の[理由]2(2)ア及びイの引用文献1及び2と同じであり、引用文献1及び2の記載は、上記第2の[理由]2(2)ア及びイに記載したとおりである。 4 対比・判断 本願発明は、前記第2の[理由]2で検討した本件補正発明から、「センサ」に係る限定事項である「振動」及び「故障の兆候を予知する予知保全のための振動」、並びに「無線」に係る限定事項である「耐ノイズ信号処理を適用した」「伝送」を削除したものである。そして、この「無線」に係る「耐ノイズ信号処理を適用した」「伝送」という限定事項は、上記第2の[理由]2(3)の相違点1に係る本件補正発明の発明特定事項である。 そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、さらに他の事項を付加したものに相当する本件補正発明が、上記第2の[理由]2(3)、(4)に記載したとおり、引用発明及び引用文献2及び3に記載された技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、引用文献3は相違点1に係る発明特定事項について開示する文献であるところ、相違点1に係る発明特定事項が削除された本願発明が、引用発明及び引用文献2に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであることは、上記第2の[理由]2(3)、(4)から明らかである。 第4 むすび 以上のとおり、本願発明は、特許法29条2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。

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2024-003074

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