特許拒絶査定不服審判
2024-001696
成分決定装置、成分決定方法及びプログラム
- 審判番号
- 2024-001696
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2020-509853
- 請求日
- 2024年01月31日
- 審決日
- 2024年11月14日
- 公報発行日
- 2025年02月28日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】株式会社タニタ
- 【請求人代理人】弁理士法人後藤特許事務所
- 審判長/審判官
- 審判長 相崎 裕恒
- 審判官 月野 洋一郎
- 審判官 田中 寛人
- 分類
- P18 .121-Z (G16H)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条、特許法第17条の2第5項、特許法第17条の2第6項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2020-509853「成分決定装置、成分決定方法及びプログラム」拒絶査定不服審判事件〔令和 1年10月 3日国際公開、WO2019/188259〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、2019年(平成31年)3月12日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2018年(平成30年)3月29日、日本国)を国際出願日とする出願であって、その手続の経緯は、令和5年4月6日付けの拒絶理由の通知に対し、同年8月9日に意見書が提出されるとともに手続補正がされたが、同年10月27日付けで拒絶査定がされ、これに対して令和6年1月31日に審判請求がされると同時に手続補正がされたものである。
第2 令和6年1月31日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和6年1月31日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
1 本件補正について
(1)本件補正後の請求項1に記載された発明
本件補正は、特許請求の範囲についてされたものであり、本件補正後の請求項1の記載は、次のとおりである(以下、本件補正後の請求項1に記載された発明を「本願補正発明」という。また、下線部は、本件補正により補正された箇所を示す。)。
「 利用者に対して提供される飲食物の栄養成分を決定する成分決定装置であって、
インピーダンス測定に基づいて得られた、利用者の筋肉量の程度を示す筋肉指標と、当該利用者の脂肪量の程度を示す脂肪指標と、を取得する取得手段と、
少なくとも、前記筋肉指標と前記脂肪指標とに基づいて前記栄養成分を決定する決定手段と、を含み、
前記決定手段は、前記筋肉指標と前記脂肪指標とである前記利用者の生活習慣の影響を反映しやすい指標に、主に基づいて前記栄養成分を決定する、
ことを特徴とする成分決定装置。」
(2)本件補正前の請求項1に記載された発明
本件補正前の請求項1(令和5年8月9日の手続補正による補正後の請求項1)の記載は、次のとおりである。
「 利用者に対して提供される飲食物の栄養成分を決定する成分決定装置であって、
インピーダンス測定に基づいて得られた、利用者の筋肉量の程度を示す筋肉指標と、当該利用者の脂肪量の程度を示す脂肪指標と、を取得する取得手段と、
少なくとも、前記筋肉指標と前記脂肪指標とに基づいて前記栄養成分を決定する決定手段と、
を含むことを特徴とする成分決定装置。」
2 補正の適否について
(1)補正の目的
本件補正は、本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「決定手段」を、「前記筋肉指標と前記脂肪指標とである前記利用者の生活習慣の影響を反映しやすい指標に、主に基づいて前記栄養成分を決定する」との事項を付加することにより、限定したものである。
そして、当該事項は、本願の願書に最初に添付した明細書(以下「当初明細書」という。)の段落【0092】、【0161】~【0181】、【0205】~【0209】の記載からみて、当初明細書に記載した事項の範囲内のものである。また、本件補正前の請求項1に記載された発明と本件補正後の請求項1に記載された発明(本願補正発明)の産業上の利用分野及び解決しようとする課題は同一であり、本件補正による請求項1の補正は、特許法17条の2第5項2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本願補正発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(本件補正が同条6項において準用する同法126条7項に規定される要件に適合するか)について、以下検討する。
(2)本願補正発明
本願補正発明は、上記1(1)に記載したとおりのものである。
(3)引用文献の記載、引用発明等
ア 引用文献1
(ア)引用文献1の記載
原査定の拒絶の理由に引用された文献であって、本願の優先権主張の日(以下「優先日」という。)前に公開された特開2011-204194号公報(以下「引用文献1」という。)には、次の記載がある(下線は当審において付与した。以下同じ。)。
「【技術分野】
【0001】
本発明は、遺伝子検査を含む種々の身体状態検査に基づいて、対象者ごとに最適なサプリメント処方箋を決定することができるサプリメント提供システムに関する。」
「【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、これらの先行技術文献に開示されたシステムは、対象者の身長、体重、生活習慣、自覚症状のみを対象者の健康データの対象としており、サプリメントの決定手段として充分とは言えなかった。すなわち、対象者ごとに必要な成分を特定し、その有効量を決定するためには、これらの先行技術文献に記載の収集データだけでは全く不十分である。また、このようなシステムでは、サプリメントと対象者が常用している医薬品等との禁忌情報についての調査手段についての記載もなく、そのような調査手段はまだ知られていない。
【0007】
本願発明は、このような従来技術の問題点を解決し、対象者の遺伝子検査や血液生化学的検査を含む多岐にわたる検査の結果を利用して、対象者毎に、最適な種類のサプリメントを、最適な有効量で提供できるサプリメント提供システム、プログラムおよび記録媒体を提供することを課題とする。
また、本願発明は、いったん決定したサプリメント成分の種類及び有効量を、対象者の常用医薬との併用禁忌まで判断した上で、サプリメントを提供できるサプリメント提供システム、プログラムおよび記録媒体を提供することを課題とする。」
「【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明に係るサプリメント提供システムについて、図面を用いて説明する。
図1は、本発明に係るサプリメント提供システムの実施の形態の一例を示すブロック構成図である。
本システムは、図示のように、対象者に対して行った遺伝子検査、血液生化学検査及び血圧検査の結果、また、必要に応じて行う身体計測検査、からだ年齢測定検査、食事分析検査及び脳年齢検査からなる群から選ばれる1または2以上の検査の結果を格納する個人データベース1と、
遺伝子に係る潜在的疾病リスク情報を格納する遺伝子データベース、血液生化学に係る健康異常情報を格納する血液生化学データベース及び血圧に係る健康異常情報を格納する血圧データベース、また、必要に応じて、身体測定に係る健康異常情報を格納する身体計測データベース、からだ年齢測定に係る健康異常情報を格納するからだ年齢データベース、食事分析の情報を格納する食事分析データベース及び脳年齢に係る情報を格納する脳年齢データベースからなる群から選ばれる1または2以上のデータベースを含むマスターデータベース2と、
個人データベースおよびマスターデータベースに接続されるコンピュータ10と
を備える。
コンピュータ10は、対象者の遺伝子検査、血液生化学検査及び血圧検査の結果、また、必要に応じて、身体計測検査、からだ年齢計測検査、食事分析検査及び脳年齢検査からなる群から選ばれる1または2以上の検査の結果を、マスターデータベースにおける対応する情報と照合し、当該対象者の1または2以上の不足栄養成分を特定するとともに、当該各不足栄養成分の有効量を決定してサプリメント処方箋を作成するサプリメント処方箋作成手段11を有する。」
「【0013】
本願発明において、サプリメントは、限定はされず、人体に有用なものであればよく、ビタミン類、ミネラル類、タンパク質・アミノ酸類、動植物抽出物や生薬等、菌類、食物繊維類、その他を例示することができる。
ビタミン類としては、ビタミンA(アルファカロテン、ベータカロテン、リコピン、ルテイン、ゼアキサンチン、アスタキサンチン、フコキサンチン等)、ビタミンC、ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB6、ビタミンB12、パントテン酸、葉酸、ナイアシン、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンP等、及びそれらを総合的に含むマルチビタミン類等を例として挙げることができる。
ミネラル類としては、カルシウム、マグネシウム、亜鉛、セレン、クロム、マンガン、銅、モリブデン、鉄、ヨウ素等を例として挙げることができる。
タンパク質・アミノ酸類としては、大豆タンパク、コラーゲン、イワシペプチド、ゴマペプチド、バリン、ロイシン、イソロイシン、リジン、メチオニン、フェニルアラニン、トレオニン、トリプトファン、ヒスチジン、シスチン、チロシン、アルギニン、アラニン、アスパラギン酸、グルタミン酸、グリシン、プロリン、セリン、グルタミン、タウリン、グルタチオン等を例として挙げることができる。
動植物抽出物や生薬等としては、いちょう葉エキス、ブルーベリーエキス、アイブライトエキス、キダチアロエエキス、ウコンエキス、マリアアザミエキス、GABA、セントジョーンズワートエキス、ホップエキス、ヤナギ樹皮キス、エキナセアエキス、エルダーベリーエキス、甜茶エキス、ルイボス茶エキス、シソ種子エキス、シソ葉エキス、カボチャ種子エキス、キウイ種子エキス、甘草抽出物、鳩麦エキス、チェストツリーエキス、イソフラボン、カモミールエキス、アシュワガンダエキス、カラス麦エキス、ガラナエキス、マカエキス、生姜抽出物、コラ種子エキス、ニンニクエキス、高麗人参エキス、のこぎりヤシエキス、プロポリスエキス、マイタケエキス、アガリクス茸エキス、桑の葉エキス、紅麹、ギルネマシルベスタエキス、トウガラシ、ガルシニアエキス、マカエキス、クローブエキス、インゲン豆エキス、そば若葉末、牡蛎肉エキス、スクワレン、ローヤルゼリー、クロレラ、スピルリナ等を例として挙げることができる。
菌類としては、ビフィズス菌、乳酸菌、納豆菌、納豆菌培養エキス、酪酸菌、乳清発酵物、メシマコブ菌糸体等を例として挙げることができる。
その他のサプリメントとしては、DHA、EPA、コエンザイムQ10、α-リポ酸、L-カルニチン、キトサン、ベータグルカン、ヒアルロン酸、各種リン脂質等を例として挙げることができる。
【0014】
図2は、図1のサプリメント提供システムの実施の形態の一例を説明するためのフローチャートである。
本願発明を実施する際には、最初に対象者の面談を行う(ステップ21)。対象者は、限定されず、全ての人が対象となり得る。対象者の例としては、何らかの疾病に罹っている者、何らかの愁訴を持っている者、症状ないし愁訴は持っていないが体調管理を希望する者等を挙げることができる。これらの対象者と面談をする際には、個人管理表を作成する(ステップ22)。
【0015】
次に、対象者の検査を実施する(ステップ23)。
検査は、必須の検査である遺伝子検査、血液生化学検査及び血圧測定の3つと、必要に応じて行う身体計測、からだ年齢測定、食事分析、脳年齢測定等の検査の1または2以上を行う。なお、検査や測定の種類はこれに限られず、サプリメントを決定するために必要な検査であれば、いずれの検査も適宜実施することができる。
【0016】
遺伝子検査は、例えば、肥満関連遺伝子多型、高血圧関連遺伝子多型、インスリン抵抗性関連遺伝子多型(メタボ・糖尿病)、血管(動脈硬化)関連遺伝子多型(血管の内張りをしている血管内皮細胞の働きに関連する遺伝子多型)、酸化ストレス関連遺伝子多型、脂質(コレステロール)関連遺伝子多型、血栓関連遺伝子多型、免疫・炎症関連遺伝子多型、骨粗鬆症関連遺伝子多型等の検査項目を挙げることができる。これらの検査の結果により、遺伝子に係る潜在的疾病リスクの調査が可能となる。
【0017】
血液生化学的検査は、例えば、血糖値(Glu)、HbA1c、血液総蛋白(TP),尿素窒素(BUN)、血清アルブミン(Alb)、クレアチニン(CRE)、総コレステロール(TC)、LDL-コレステロール(LDL-C)、HDL-コレステロール(HDL-C)、中性脂肪(TG)、GOT(AST)、GPT(ALT)、γ-GTP(γ-GT)、尿酸(UA)、フェリチン等の項目を挙げることができる。これらの血液生化学的検査により、血液に係る健康異常またはそのリスクの調査が可能となる。
血圧測定は、収縮期血圧(最大血圧)と拡張期血圧(最小血圧)の測定を行えばよい。これらの血圧測定検査の結果により、血圧に係る健康異常またはそのリスクの調査が可能となる。
【0018】
身体計測検査は、体成分分析、骨格筋・脂肪、肥満評価、筋肉バランスの評価からなる。体成分分析は、細胞内水分量、細胞外水分量、タンパク質量、ミネラル量及び体脂肪量からなる。骨格筋・脂肪は、体重、骨格筋量及び体脂肪量からなる。肥満評価は、BMI、体脂肪率及びウェスト・ヒップ比からなる。筋肉バランスは、右腕、左腕、体幹、右脚及び左脚のそれぞれ筋肉量と体重に対する発達率等から算出される。これらの身体計測検査の結果により、身体に係る健康異常またはそのリスクの調査が可能となる。
【0019】
からだ年齢測定検査は、内科的検査と、持久力、瞬発力、平衡感覚等の運動機能とを測定することにより、からだの状態を客観的に評価するものである。このからだ年齢測定は、筑波大学田中喜代次氏監修のもと開発された測定方法を用いることができる。この方法によると、前記内科的検査は、A)動脈硬化危険因子(1)(X1 最大血圧mmHg)、B)動脈硬化危険因子(2)(X2 LDL-コレステロールmg/dl)、C)動脈硬化危険因子(3)(X3 中性脂肪mg/dl)からなる。また、前記運動機能の測定は、D)全身持久力(1)(X4 乳酸性作業閾値に相当する酸素摂取量(ml/kg/分)、E)全身持久力(2)(X5 乳酸性作業閾値に相当する心拍数(d/分)、F)俊敏性(X6 回/20秒)、G)平衡性(バランス能力)(X7 閉眼片足立ち(秒)、H)肺機能(X8 -秒量(FEV1.0)からなる。
これらの測定結果を用いて、最初に活力指数(VS)を算出する。
VS=2.76+0.011X1+0.003X2+0.002X3-0.046X4-0.013X5-0.027X6-0.008X7-0.241X8
そして、この値を用いて、からだ年齢(VA)を算出することができる。
VA=15.16VS+0.188Age(実年齢)+33.70
このような計算式を用いてからだ年齢を測定することができる。これらのからだ年齢測定検査により、からだ年齢に係る健康異常またはそのリスクの調査が可能となる。
【0020】
食事分析検査は、例えば、食事バランス(料理・食品群の摂取バランス)、栄養バランス(エネルギー及び栄養素の摂取バランス)、摂取エネルギー推移(摂取エネルギーの日ごとの変化)、PFCバランス(三大栄養素のバランス)、食事時間と食事毎のエネルギー配分等の項目を挙げることができる。食事バランスは、例えば、穀物、肉類、魚介類、卵、豆・豆製品、緑黄色野菜、単色野菜、芋類、乳・乳製品、果物、砂糖・嗜好品、油脂等を対象者が摂取するバランスの分析を含む。栄養バランスは、例えば、エネルギー、タンパク質、脂質、炭水化物、ビタミンA、ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンC、カルシウム、鉄、食物繊維、コレステロール、食塩等を対象者が摂取するバランスの分析である。摂取エネルギー推移は、例えば、3日間の摂取エネルギーの日毎の変化の分析である。PFCバランスは、タンパク質と脂質と炭水化物のバランスの分析である。食事時間と食事毎のエネルギー配分は、食事時間と各食事のエネルギーが1日のエネルギーに占める割合の分析である。食事分析のためのテータは、対象者に3日間飲食したものの写真を送ってもらうことにより得ることができる。これらの食事分析検査により、対象者の食事に起因する健康異常またはそのリスクの調査が可能となる。」
「【0022】
上記した遺伝子検査、血液生化学検査及び血圧検査の3つの必須の検査と、必要に応じて行う上記の身体計測検査、からだ年齢計測検査、食事分析検査及び脳年齢検査のうち1または2以上を行った後、その結果を、個人データベース1に格納する。
また、これらの検査結果を、マスターデータベース2における対応する情報と照合する。マスターデータベース2は、遺伝子に係る潜在的疾病リスク情報を格納する遺伝子データベース、血液生化学に係る健康異常情報を格納する血液生化学データベース及び血圧に係る健康異常情報を格納する血圧データベースの3つの必須のデータベースの他、身体計測評価の情報を格納する身体計測評価データベース、からだ年齢に係る測定評価の情報を格納するからだ年齢評価データベース、食事分析に係る情報を格納する食事分析データベース及び脳年齢に係る情報を格納する脳年齢評価データベース等の1または2以上を含むものである。
【0023】
このように、対象者の検査結果とマスターデータベース2における対応情報と照合することにより、対象者の総合的健康状態を評価することができる(ステップ24)。なお、食事分析は、この段階で行ってもよい。
その後、得られた評価結果より、当該対象者の1または2以上の不足栄養成分を特定し、各不足栄養成分の有効量を決定することができる。不足栄養成分は、当該対象者にとって必要な栄養成分であるにもかかわらず、摂取がない成分または摂取が不足している成分である。また、得られた評価結果より、制限成分を特定することもできる。制限成分は、当該対象者の摂取そのもの、または摂取量が制限されるべき成分である。このような不足栄養成分および制限成分を特定し、さらに、不足栄養成分の適切な有効量を決定することにより、対象者ごとのサプリメント処方箋を作成することができる(ステップ25)。」
「【図1】
[図:0001419069000001.jpg]
」
「【図2】
[図:0001419069000002.jpg]
」
(イ)上記(ア)によれば、引用文献1の記載について、次のことがいえる。
a 段落【0001】によれば、引用文献1には、「遺伝子検査を含む種々の身体状態検査に基づいて、対象者ごとに最適なサプリメント処方箋を決定することができるサプリメント提供システム」が開示されており、また、段落【0011】によれば、前記「サプリメント提供システム」は、「コンピュータ(コンピュータ10)」を「備える」ものであるから、引用文献1には、「遺伝子検査を含む種々の身体状態検査に基づいて、対象者ごとに最適なサプリメント処方箋を決定することができるサプリメント提供システム」が「備える」「コンピュータ」が記載されている。
b 段落【0011】によれば、「コンピュータ」は、「個人データベースおよびマスターデータベースに接続される」ものである。
c 「遺伝子検査を含む種々の身体状態検査」について、段落【0015】によれば、「検査」は、「必須の検査である遺伝子検査、血液生化学検査及び血圧測定の3つと、必要に応じて行う身体計測、からだ年齢測定、食事分析、脳年齢測定等の検査の1または2以上」であり、このことから、引用文献1には、検査として、「必須の」検査である「遺伝子検査、血液生化学検査及び血圧測定」と「必要に応じて行う」検査である「身体計測、からだ年齢測定、食事分析、脳年齢測定等」のうち「身体計測」及び「食事分析」を行うものが記載されているといえる。
このうち、「身体計測」の検査は、段落【0018】の記載からみて、「細胞内水分量、細胞外水分量、タンパク質量、ミネラル量及び体脂肪量」からなる「体成分分析」、「体重、骨格筋量及び体脂肪量」からなる「骨格筋・脂肪」、「BMI、体脂肪率及びウェスト・ヒップ比」からなる「肥満評価」及び「右腕、左腕、体幹、右脚及び左脚のそれぞれ筋肉量と体重に対する発達率等から算出される」ものである「筋肉バランス」の評価を含むものであり、また、身体計測検査の結果によって「身体に係る健康異常またはそのリスクの調査が可能となる」ものである。
また、「食事分析」の検査は、段落【0020】の記載からみて、「栄養バランス(エネルギー及び栄養素の摂取バランス)」や「PFCバランス(三大栄養素のバランス)」等の項目を挙げることができるものであり、食事分析検査によって「対象者の食事に起因する健康異常またはそのリスクの調査が可能となる」ものである。
d 段落【0011】及び【0022】によれば、cの検査を行うにあたって、bの「個人データベース」は、対象者に対して行った検査の結果である、遺伝子検査、血液生化学検査及び血圧検査の結果、及び、身体計測検査、食事分析検査の結果を格納するものである。
e また、段落【0011】によれば、bの「マスターデータベース」は、上記cの検査を行うにあたっては、遺伝子に係る潜在的疾病リスク情報を格納する遺伝子データベース、血液生化学に係る健康異常情報を格納する血液生化学データベース及び血圧に係る健康異常情報を格納する血圧データベース、身体測定に係る健康異常情報を格納する身体計測データベース、食事分析の情報を格納する食事分析データベースを含む。さらに、段落【0022】によれば、「身体計測データベース」が格納する「身体測定に係る健康異常情報」は、「身体計測評価の情報」である。
f 段落【0011】によれば、「コンピュータ」は、上記cの検査の結果を、マスターデータベースにおける対応する情報と照合し、当該対象者の1または2以上の不足栄養成分を特定するとともに、当該各不足栄養分の有効量を決定してサプリメント処方箋を作成するサプリメント処方箋作成手段を有する。
そして、段落【0023】によれば、対象者ごとのサプリメント処方箋を作成するにあたっては、対象者の検査結果とマスターデータベースにおける対応情報と照合することにより、対象者の総合的健康状態を評価し、その後、得られた評価結果より、当該対象者にとって必要な栄養成分であるにもかかわらず、摂取がない成分または摂取が不足している成分である不足栄養成分、及び当該対象者の摂取そのもの、または摂取量が制限されるべき成分である制限成分を特定し、さらに、不足栄養分の適切な有効量を決定するものである。
g 段落【0013】によれば、fのサプリメント処方箋におけるサプリメントは、限定はされず、人体に有用なものであればよく、ビタミン類、ミネラル類、タンパク質・アミノ酸類、動植物抽出物や生薬等、菌類、食物繊維類、その他を例示することができ、タンパク質・アミノ酸類としてはロイシン等を例として挙げることができるものである。
(ウ)引用発明
してみると、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
[引用発明]
遺伝子検査を含む種々の身体状態検査に基づいて、対象者ごとに最適なサプリメント処方箋を決定することができるサプリメント提供システムが備えるコンピュータであって((イ)a)、
上記コンピュータは、個人データベースおよびマスターデータベースに接続されており((イ)b)、
上記身体状態検査として、必須の検査である遺伝子検査、血液生化学検査及び血圧測定と必要に応じて行う検査である身体計測及び食事分析を行うものであり((イ)c)、
この身体計測の検査は、細胞内水分量、細胞外水分量、タンパク質量、ミネラル量及び体脂肪量からなる体成分分析、体重、骨格筋量及び体脂肪量からなる骨格筋・脂肪、BMI、体脂肪率及びウェスト・ヒップ比からなる肥満評価、並びに、右腕、左腕、体幹、右脚及び左脚のそれぞれ筋肉量と体重に対する発達率等から算出されるものである筋肉バランスの評価を含むものであって、この身体計測検査の結果によって、身体に係る健康異常またはそのリスクの調査が可能となるものであり((イ)c)、
また、食事分析の検査は、栄養バランス(エネルギー及び栄養素の摂取バランス)やPFCバランス(三大栄養素のバランス)等の項目を挙げることができるものであり、食事分析検査によって対象者の食事に起因する健康異常またはそのリスクの調査が可能となるものであり((イ)c)、
上記個人データベースは、対象者に対して行った、遺伝子検査、血液生化学検査及び血圧検査の結果、及び、身体計測検査、食事分析検査の結果を格納するものであり((イ)d)、
上記マスターデータベースは、遺伝子に係る潜在的疾病リスク情報を格納する遺伝子データベース、血液生化学に係る健康異常情報を格納する血液生化学データベース及び血圧に係る健康異常情報を格納する血圧データベース、身体計測評価の情報である身体測定に係る健康異常情報を格納する身体計測データベース、食事分析の情報を格納する食事分析データベースを含むものであり((イ)e)、
上記コンピュータは、対象者に対して行った検査の結果を、マスターデータベースにおける対応する情報と照合し、当該対象者の1または2以上の不足栄養成分を特定するとともに、当該各不足栄養分の有効量を決定してサプリメント処方箋を作成するサプリメント処方箋作成手段を有し、対象者ごとのサプリメント処方箋を作成するにあたっては、対象者の検査結果とマスターデータベースにおける対応情報と照合することにより、対象者の総合的健康状態を評価し、その後、得られた評価結果より、当該対象者にとって必要な栄養成分であるにもかかわらず、摂取がない成分または摂取が不足している成分である不足栄養成分、及び当該対象者の摂取そのもの、または摂取量が制限されるべき成分である制限成分を特定し、さらに、不足栄養分の適切な有効量を決定するものであり((イ)f)、
上記サプリメントは、限定はされず、人体に有用なものであればよく、ビタミン類、ミネラル類、タンパク質・アミノ酸類、動植物抽出物や生薬等、菌類、食物繊維類、その他を例示することができ、タンパク質・アミノ酸類としてはロイシン等を例として挙げることができるものである((イ)g)、
コンピュータ。
イ 引用文献2~引用文献4
(ア)引用文献2の記載
原査定の拒絶の理由に引用された文献であって、本願優先日前に公開された特開2007-7445号公報(以下「引用文献2」という。)には、次の記載がある。
「【0001】
本発明は、被検者の身体の生体電気インピーダンス(以下、単に「インピーダンス」という)を測定し、このインピーダンスの測定値や身長、体重、年齢、性別等の身体特定化情報を利用して当該被検者の体脂肪量、筋肉量、筋力、骨密度、骨量、除脂肪量、体脂肪率、基礎代謝量等の身体組成や健康状態に関連した各種情報(ここでは、これら全てを含めて身体組成情報と称する)を推算して提示する身体組成測定装置に関し、更に詳しくは、立位姿勢でもって被検者が簡便に測定が行えることを意図した身体組成測定装置に関する。」
(イ)引用文献3の記載
原査定の拒絶の理由に引用された文献であって、本願優先日前に公開された特開2012-34770号公報(以下「引用文献2」という。)には、次の記載がある。
「【0011】
測定部10は、ユーザの内臓脂肪量および筋肉量を生体インピーダンス法により測定するためのインピーダンス測定部20と、ユーザの皮下脂肪量を近赤外線分光法により測定するための赤外線測定部30と、腹囲測定部としてのメジャー40とを含む。すなわち測定部10は、体組成パラメータとしての内臓脂肪量および筋肉量および皮下脂肪量および腹囲を測定するための機能を有する。メジャー40としては、ユーザの腹部の周囲に巻き付けて目盛により腹囲を視認するものが設けられている。」
(ウ)引用文献4の記載
本願優先日前に公開された特開2013-176424号公報(以下「引用文献4」という。)には、次の記載がある。
「【0029】
第1記憶部120は、各種データを予め記憶することができる。たとえば、各部位の生体電気インピーダンスを変数として体脂脂肪率や筋肉量を算出するための相関式又は相関テーブルが記憶されている。
CPU170は、被測定者の体幹中部の生体電気インピーダンス等の演算処理、被測定者の体重等の測定処理、および各種の入出力処理を制御する。なお、CPU170は、生体電気インピーダンス測定部200により体幹中部の生体電気インピーダンスに基づいて、骨格筋量、臓器量、内臓脂肪率、内臓脂肪量、皮下脂肪率、皮下脂肪量、体脂肪率その他の生体指標を演算することもできる。」
(4)対比
本願補正発明と、引用発明とを対比する。
ア 「利用者に対して提供される飲食物の栄養成分を決定する成分決定装置」について
引用発明の「サプリメント」は、「限定はされず、人体に有用なものであればよ」いものであって、飲食物として提供されるものを含むことから、本願補正発明の「飲食物」に相当するといえ、そうすると、引用発明の「サプリメント処方箋」は、飲食物の栄養成分を示すものとして決定されるものであり、引用発明の「飲食物の栄養成分」に相当するといえる。
そして、引用発明の「対象者」は、本願補正発明の「利用者」に相当し、引用発明の「対象者ごとに最適なサプリメント処方箋」の「決定」は、本願補正発明の「利用者に対して提供される飲食物の栄養成分」の「決定」に相当する。
してみると、引用発明の「対象者ごとに最適なサプリメント処方箋を決定することができるサプリメント提供システムが備えるコンピュータ」は、本願補正発明の「利用者に対して提供される飲食物の栄養成分を決定する成分決定装置」に相当する。
イ 「インピーダンス測定に基づいて得られた、利用者の筋肉量の程度を示す筋肉指標と、当該利用者の脂肪量の程度を示す脂肪指標と、を取得する取得手段」について
本願補正発明の「利用者の筋肉量の程度を示す筋肉指標」は、「例えば、全身又は各部位についての筋肉量、除脂肪量又は骨量、若しくは、BMI又は基礎代謝量等」(本願明細書段落【0034】)であるところ、引用発明の「BMI」は、本願補正発明の「利用者の筋肉量の程度を示す筋肉指標」に相当し、また、引用発明の「筋肉バランス」も、右腕、左腕、体幹、右脚及び左脚のそれぞれ筋肉量と体重に対する発達率等から算出されるものであり、全身又は各部位についての筋肉量を示すものであるといえることから、本願補正発明の「利用者の筋肉量の程度を示す筋肉指標」(以下単に「筋肉指標」という。)に相当する。
また、本願補正発明の「利用者の脂肪量の程度を示す脂肪指標」は、「例えば、全身又は各部位についての脂肪率、脂肪量又は皮下脂肪量、若しくは、内臓脂肪量、内臓脂肪レベル又は内臓脂肪面積等」(本願明細書段落【0033】)であるところ、引用発明の「体脂肪量」は、全身又は各部位についての脂肪量であることから、本願補正発明の「利用者の脂肪量の程度を示す脂肪指標」(以下単に「脂肪指標」という。)に相当する。
そして、引用発明では、不足栄養分の特定のためにマスターデータベースにおける対応する情報と照合されるものとして必要なものとして筋肉指標及び脂肪指標を含む検査の結果を得ている以上、引用発明のコンピュータが、対象者に対して行われた検査の結果をマスターデータベースにおける対応する情報と照合するために個人データベースから取得する手段を備えることは明らかであり、このことから、本願補正発明と引用発明とは、「利用者の筋肉量の程度を示す筋肉指標と、当該利用者の脂肪量の程度を示す脂肪指標と、を取得する取得手段」を備えている点で共通するといえる。
ウ 「少なくとも、前記筋肉指標と前記脂肪指標とに基づいて前記栄養成分を決定する決定手段と、を含み」について
引用発明の「対象者に対して行った検査の結果を、マスターデータベースにおける対応する情報と照合し、当該対象者の1または2以上の不足栄養成分を特定するとともに、当該各不足栄養分の有効量を決定してサプリメント処方箋を作成するサプリメント処方箋作成手段」は、飲食物の栄養成分を決定する手段といえるから、本願補正発明と引用発明とは、いずれも「前記栄養成分を決定する決定手段」を含むものである点で共通している。
そして、引用発明は、不足栄養分の特定のためにマスターデータベースにおける対応する情報と照合されるものとして必要な検査を行って、筋肉指標及び脂肪指標を含む検査の結果を得るのであることを踏まえれば、引用発明のコンピュータの「前記栄養成分を決定する決定手段」における飲食物の栄養成分の決定にあたって、ウの取得手段において取得した筋肉指標と脂肪指標を含む検査の結果がマスターデータベースにおける対応する情報と照合される必要があるから、本願補正発明と引用発明とは、「少なくとも、前記筋肉指標と前記脂肪指標とに基づいて前記栄養成分を決定する決定手段と、を含む」点で一致する。
エ 一致点及び相違点
上記ア~ウの検討を踏まえると、本願補正発明と引用発明とは、次の一致点及び相違点を有する。
[一致点]
利用者に対して提供される飲食物の栄養成分を決定する成分決定装置であって、
利用者の筋肉量の程度を示す筋肉指標と、当該利用者の脂肪量の程度を示す脂肪指標と、を取得する取得手段と、
少なくとも、前記筋肉指標と前記脂肪指標とに基づいて前記栄養成分を決定する決定手段と、を含む、
ことを特徴とする成分決定装置。
[相違点]
[相違点1]
筋肉指標と脂肪指標の取得に関して、本願補正発明は「インピーダンス測定に基づいて得られた」ものであるのに対して、引用発明はインピーダンス測定に基づいて得られるとはしていない点。
[相違点2]
決定手段に関して、本願補正発明は「前記決定手段は、前記筋肉指標と前記脂肪指標とである前記利用者の生活習慣の影響を反映しやすい指標に、主に基づいて前記栄養成分を決定する」としているのに対して、引用発明は、筋肉指標と脂肪指標を用いて栄養成分を決定し得るものの、「前記利用者の生活習慣の影響を反映しやすい指標に、主に基づいて」とはしていない点。
(5)判断
上記相違点について判断する。
ア 「相違点1」について
上記引用文献2(上記(3)イ(ア))には、被検者の身体の生体電気インピーダンスを測定し、当該被検者の体脂肪量、筋肉量等の身体組成を推算して提示することが記載されており、上記引用文献3(上記(3)イ(イ))には、ユーザの内臓脂肪量および筋肉量を生体インピーダンス法により測定することが記載されており、上記引用文献4(上記(3)イ(ウ))には、CPU170は、生体電気インピーダンス測定部200により体幹中部の生体電気インピーダンスに基づいて、骨格筋量、内臓脂肪量、皮下脂肪量を演算することが記載されている。
ここで、引用文献2に記載の「筋肉量」、引用文献3に記載の「筋肉量」、引用文献4に記載の「骨格筋量」は、いずれも筋肉量の程度を示す筋肉指標といえ、引用文献2に記載の「体脂肪量」、引用文献3に記載の「内臓脂肪量」、引用文献4に記載の「内臓脂肪量、皮下脂肪量」は、いずれも脂肪量の程度を示す脂肪指標といえる。
よって、引用文献2~引用文献4に記載の技術事項によれば、インピーダンス測定によって筋肉指標と脂肪指標を取得することは周知技術であると認められる。
そして、上記(4)イで検討したとおり、引用発明における「身体計測検査」の結果には筋肉指標と脂肪指標が含まれるものであるから、このような筋肉指標と脂肪指標を取得する「身体計測検査」に上記周知技術を採用し、インピーダンス測定によって筋肉指標と脂肪指標を取得することは、当業者であれば容易になし得たものである。
イ 「相違点2」について
(ア)引用発明は、身体計測及び食事分析を行い、これらの結果によって、身体に係る健康異常またはそのリスクの調査や対象者の食事に起因する健康異常またはそのリスクの調査が可能となるものであり、そのために、身体計測評価の情報である身体測定に係る健康異常情報を格納する身体計測データベース及び食事分析の情報を格納する食事分析データベースをマスターデータベースに含み、これらの検査結果の照合による栄養成分の決定を可能とするものであるところ、引用文献1には、「しかしながら、これらの先行技術文献に開示されたシステムは、対象者の身長、体重、生活習慣、自覚症状のみを対象者の健康データの対象としており、サプリメントの決定手段として充分とは言えなかった。」(段落【0006】)、「本願発明は、このような従来技術の問題点を解決し、対象者の遺伝子検査や血液生化学的検査を含む多岐にわたる検査の結果を利用して、対象者毎に、最適な種類のサプリメントを、最適な有効量で提供できるサプリメント提供システム、プログラムおよび記録媒体を提供することを課題とする。」(段落【0007】)の記載があることも踏まえれば、引用発明における「身体に係る健康異常またはそのリスク」や「対象者の食事に起因する健康異常またはそのリスク」に、いわゆる生活習慣病を含む生活習慣に起因する健康異常やそのリスクが含まれていること、引用文献1は、このようなリスクについて多岐にわたる検査を利用するものを記載したものであって、生活習慣の健康データを対象とする検査を行わないことを記載したものではないこと、が明らかである。
このことを踏まえれば、引用発明においても、生活習慣病を含む生活習慣に起因する健康異常やそのリスクを考慮したサプリメント処方箋の作成(飲食物の栄養成分の決定)にあたっては、利用者の生活習慣の影響を反映しやすい指標に主に基づいて飲食物の栄養成分を決定する必要があるといわざるを得ず、このことから、引用文献1において明示されていないものの、引用発明の決定手段は、利用者の生活習慣の影響を反映しやすい指標に、主に基づいて飲食物の栄養成分を決定するものといわざるを得ないものである。
(イ)引用発明は、サプリメントとして、ロイシン等のタンパク質・アミノ酸類を例示するものであるところ、ロイシンのようないわゆる必須アミノ酸の不足が筋肉量と関係するとともに、筋肉量の低下が上記(ア)に示した生活習慣に起因する健康異常やそのリスクを引き起こし得ることは、周知例を要しないような技術常識であるといえ、また、脂肪量が利用者の生活習慣の影響を反映しやすい指標であることも、同様の技術常識であり、いずれも、引用文献1に記載がなくとも記載されているのと同視できる程度の事項であるといえる。
このことを踏まえれば、引用発明における「身体に係る健康異常またはそのリスク」や「対象者の食事に起因する健康異常またはそのリスク」を踏まえたサプリメント処方箋の決定にあたって、利用者の生活習慣の影響を反映しやすい指標として、引用発明のBMIや筋肉バランス(筋肉指標)や体脂肪量(脂肪指標)を採用することは、当業者であれば当然に考慮すべきことであって、当業者が適宜選択設計すべきことである。
(ウ)以上を踏まえると、上記相違点2に係る構成である「前記決定手段は、前記筋肉指標と前記脂肪指標とである前記利用者の生活習慣の影響を反映しやすい指標に、主に基づいて前記栄養成分を決定する」ことは、当業者であれば容易になし得る事項である。
ウ 作用効果について
そして、上記相違点1~2を勘案しても、本願補正発明の奏する作用効果は、本願補正発明の構成が奏する作用効果として予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。
エ 審判請求人の主張について
(ア)審判請求人は、引用文献1記載の発明は、「遺伝子検査、血液生化学検査及び血圧測定」の3つの検査が「必須」であり、侵襲的な検査の結果を主に利用し、補助的に身体計測の結果を利用するものであり、本願発明とは、「栄養成分の決定に用いられるメインの指標が大きく異なる」旨等(審判請求書6ページ10行~7ページ9行)、及び、引用文献1記載の発明は、遺伝子検査の結果を用いることを必須としていることから、利用者の生活習慣の影響を範囲しやすい指標を用いて利用者に適した栄養素を判定するといった思想はなく、本願発明とは作用効果が異なる旨(審判請求書8ページ7~18行)を主張している。
しかし、上記(3)アのとおり、引用文献1には、上記引用発明が記載されているといえ、さらに、上記イのとおり、相違点2は、当業者であれば容易になし得ることであり、審判請求人は、引用文献1の記載を正解していない。
補足すると、引用文献1は、「遺伝子検査、血液生化学検査及び血圧測定」の3つの検査が「必須」であると記載しているものの、「身体に係る健康異常またはそのリスク」や「対象者の食事に起因する健康異常またはそのリスク」を考慮した飲食物の栄養成分の決定(サプリメント処方箋の作成)にあたってまで、3つの「必須」の検査の結果をメインの指標とすることを記載したものではない。
さらには、筋肉指標と脂肪指標に主に基づいて必須アミノ酸の処方を行うにしても、遺伝的な要因や血液検査の結果に応じて必須アミノ酸の処方を制限したり処方量を制限したりする必要がないともいえないのであり、このことからも、引用発明が遺伝子検査、血液生化学検査を必須の検査としていることは、引用発明が、筋肉指標と脂肪指標とである利用者の生活習慣の影響を反映しやすい指標に主に基づいて飲食物の栄養成分を決定するものでないことを意味するものでない。また、引用発明において血圧測定が必須であるとしても、生活習慣に起因する健康異常やそのリスクを評価するために血圧測定を行うか否かは、適宜選択すべきことにすぎず、血圧測定を行ったからといって、ロイシン等の必須アミノ酸の不足を判定するためにBMIや筋肉バランス(筋肉指標)を用いる必要がなくなるものでなく、また、生活習慣の影響を示す指標として体脂肪量(脂肪指標)を用いる必要がなくなるものでもない。
このように、引用発明において「遺伝子検査、血液生化学検査及び血圧測定」の3つの検査が「必須」であることは、引用発明の対比に影響を与えないし、相違点2に係る論理付けの阻害事由にもならない。
(イ)審判請求人は、引用文献1には、身体計測検査に関して、単に計測可能な指標が列挙されているにすぎず、相関性が低い筋肉指標と脂肪指標を主に利用することで栄養成分の決定を的確に行うことができることについて開示も示唆もない旨を主張している。
しかし、上記イの(イ)に示したとおり、引用文献1に例示されているロイシンのようないわゆる必須アミノ酸の不足が筋肉量と関係するものであり、上記(ア)に示した生活習慣に起因する健康異常やそのリスクを引き起こし得ること、及び、脂肪量が利用者の生活習慣の影響を反映しやすい指標であることは、いずれも常識であり、引用文献1に記載がなくとも記載されているのと同視できる事項であるといわざるを得ない。
このことを踏まえれば、筋肉指標と脂肪指標とが相関性が低いものであるか否かはともかく、これらを指標として用いることは、当業者が適宜選択設計すべきことにすぎない。
(6)小括
よって、本願補正発明は、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない。
3 補正の却下の決定のむすび
以上のとおり、本件補正は、特許法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に違反するから、同法159条1項の規定において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。
したがって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。
第3 本願発明について
1 本願発明の認定
本件補正は、上記第2のとおり却下されたので、本願の請求項1に記載された発明(以下「本願発明」という。)は、上記第2の1(2)に記載したとおりのものである。
2 原査定における拒絶の理由
本願発明についての原査定の拒絶の理由は、概略、本願発明は、本願の優先日前に日本国内において頒布された上記引用文献1に記載された発明、並びに、上記引用文献2、3に記載された周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない、というものである。
3 引用文献1~3の記載、引用発明等
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1~3の記載及び引用発明は、上記第2の2(3)のとおりである。
4 対比・判断
本願発明は、上記第2の2において検討した本願補正発明から、本件補正によって「決定手段」を限定する事項として付加された事項を削除したものに相当する。
そうすると、本願発明の発明特定事項をすべて含み、さらに他の事項を付加したものに相当する本願補正発明が、上記第2の2のとおり、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法29条2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
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2024-001696