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特許拒絶査定不服審判

2024-001575

ディスプレイ用フィルム、フォルダブルディスプレイ

審判番号
2024-001575
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2019-170674
請求日
2024年01月30日
審決日
2025年05月29日
公報発行日
2025年08月29日
結論
請求不成立
当事者
  • 【請求人】三菱ケミカル株式会社
  • 【請求人代理人】田口 昌浩
審判長/審判官
  • 審判長 岡田 吉美
  • 審判官 道祖土 新吾
  • 審判官 南川 泰裕
分類
P18 .121-Z (C08J) / P18 .575-Z (C08J)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条、特許法第17条の2第5項、特許法第17条の2第6項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特願2019-170674「ディスプレイ用フィルム、フォルダブルディスプレイ」拒絶査定不服審判事件〔令和 2年 4月 9日出願公開、特開2020- 56016〕について、次のとおり審決する。

結論

結 論 本件審判の請求は、成り立たない。

理由

理 由 第1 手続の経緯 本願は、令和元年9月19日(優先権主張 平成30年9月28日(以下「優先日」という。))の出願であって、その手続の経緯の概略は、次のとおりである。 令和5年 6月21日付け:拒絶理由通知書 同年 8月23日 :意見書、手続補正書の提出 同年10月20日付け:拒絶査定(以下「原査定」という。) (同月31日 :原査定の謄本の送達) 令和6年 1月30日 :審判請求書、手続補正書の提出 同年 4月11日付け:前置報告書 同年12月20日 :上申書の提出 第2 令和6年1月30日にされた手続補正についての補正の却下の決定 [補正の却下の決定の結論] 令和6年1月30日にされた手続補正を却下する。 [補正の却下の決定の理由] 1 補正の内容 令和6年1月30日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)は、特許請求の範囲の補正をするものであり、本件補正により、次の(1)に示す本件補正前(令和5年8月23日にされた手続補正後のものをいう。以下同じ。)の特許請求の範囲の請求項1の記載は、後記(2)に示す本件補正後の特許請求の範囲の請求項1の記載に補正された。下線は補正箇所を示す。 (1) 本件補正前 「【請求項1】 ポリエステル系樹脂(A)を主成分とし、ガラス転移温度が85℃以上150℃以下であり、23℃における引張試験を行った際に少なくとも一方向における降伏点ひずみが8.0%以上であることを特徴とするフレキシブルディスプレイ用フィルム。」 (2) 本件補正後 「【請求項1】 ジカルボン酸成分としてのテレフタル酸単位を含み、かつ、結晶融解熱量(ΔHm(A))が32J/g以上70J/g以下であるポリエステル系樹脂(A)を主成分とし、ガラス転移温度が85℃以上150℃以下であり、23℃における引張試験を行った際に少なくとも一方向における降伏点ひずみが8.0%以上であり、23℃における1000回の折り曲げ試験を屈曲半径(R)=1.5mmの条件で行った際、外観変化がないことを特徴とするフォルダブルディスプレイ用延伸フィルム。」 2 補正の目的 (1) 本件補正のうち請求項1についてする補正は、次のアからウの限定をするものである。 ア 本件補正前の請求項1に記載された「ポリエステル系樹脂(A)」について、「ジカルボン酸成分としてのテレフタル酸単位を含み、かつ、結晶融解熱量(ΔHm(A))が32J/g以上70J/g以下である」ものに限定すること。 イ 本件補正前の請求項1に記載された「フレキシブルディスプレイ用フィルム」について、「フォルダブルディスプレイ用延伸フィルム」であるものに限定すること。 ウ 本件補正前の請求項1に記載された「フィルム」の特性について、「23℃における1000回の折り曲げ試験を屈曲半径(R)=1.5mmの条件で行った際、外観変化がないこと」を限定すること。 (2) そして、本件補正前の請求項1に記載された発明と本件補正後の請求項1に記載される発明は、産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一である。 (3) したがって、本件補正は、特許法17条の2第5項2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とする補正に該当する。 3 独立特許要件の判断 本件補正は、前記2のとおり、特許法17条の2第5項2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とする補正に該当するから、本件補正後の請求項1に記載されている事項により特定される発明(以下「本件補正発明」という。)が、同法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に適合するか、すなわち、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるかについて、以下検討する。 (1) 本件補正発明 ア 本件補正発明の認定と分説 本件補正発明は、前記1(2)に摘記した本件補正後の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものと認める。 ここで、検討の便宜上、本件補正発明の構成を次のとおり構成Xと構成A1から構成B3までに分説する。 <本件補正発明の分説> A ジカルボン酸成分としてのテレフタル酸単位を含み、かつ、結晶融解熱量(ΔHm(A))が32J/g以上70J/g以下であるポリエステル系樹脂(A)を主成分とし、 B1 ガラス転移温度が85℃以上150℃以下であり、 B2 23℃における引張試験を行った際に少なくとも一方向における降伏点ひずみが8.0%以上であり、 B3 23℃における1000回の折り曲げ試験を屈曲半径(R)=1.5mmの条件で行った際、外観変化がないことを特徴とする X フォルダブルディスプレイ用延伸フィルム。 イ 課題・作用効果等に関連する明細書の発明の詳細な説明の記載 本願明細書の発明の詳細な説明の記載のうち、発明が解決しようとする課題及び作用効果等に関連する記載を抜粋すると、次の記載がある。 「【技術分野】 【技術分野】 【0001】 本発明は耐熱性、耐折性に優れたディスプレイ用フィルム、及び該フィルムを備えるフォルダブルディスプレイに関する。 【背景技術】 【0002】 ポリエステルは、耐熱性、耐候性、機械的強度、透明性、耐薬品性、ガスバリア性などの性質に優れており、かつ価格的にも入手し易いことから、汎用性が高く、現在、飲料・食品用容器や包装材、成形品、フィルムなどに広く利用されている樹脂である。 【0003】 一方、近年、フレキシブルなディスプレイに対するニーズが高まってきている中で、耐熱性が高く繰り返しの折り曲げ耐性に優れるフィルムが強く求められている。 【0004】 例えば、特許文献1には、環状オレフィン樹脂からなるフィルムによる、繰り返しの折り曲げ耐性のフィルムが検討されている。 【0005】 また、特許文献2,3には耐熱性や耐屈曲性の優れたフィルムとして、ポリイミドからなるフィルムが提案されている。 【先行技術文献】 【特許文献】 【0006】 【特許文献1】特開2014-104687号公報 【特許文献2】国際公開第2017/150377号パンフレット 【特許文献3】国際公開第2016/060213号パンフレット 【発明の開示】 【発明が解決しようとする課題】 【0007】 しかしながら、特許文献1に開示されているフィルムは、繰り返しの折り曲げ耐性のレベルとしては低く、市場の要求を満たすものではなかった。 また、環状オレフィン系樹脂は塗工性、接着性に乏しいため、フレキシブルディスプレイ用部材として他部材との積層が困難であると考えられる。 【0008】 また、特許文献2に記載されているポリイミドフィルムは耐熱性が高い反面、成型温度は350℃であり、その成形時間も長いため、生産性に難がある。 【0009】 特許文献3に記載のポリイミドフィルムは耐屈曲性を有するものの、その製造プロセスにおいて、溶剤を使用した塗布による成形方法であるため、生産性が悪く、コストもかかる。 【0010】 本発明で解決しようとする課題は、上記の問題点を解決し、耐折性、耐熱性に優れたディスプレイ用フィルム、及び該フィルムを備えるフォルダブルディスプレイを提供することにある。 …(中略)… 【発明の効果】 【0013】 本発明が提案するディスプレイ用フィルムは、耐折性、耐熱性に優れており、このフィルムを他部材と積層することによって耐折性、耐熱性に優れたフォルダブルディスプレイを得ることができる。」 「【0016】 本発明においては「主成分」とは、最も多い質量比率を占める成分であることをいい、具体的には50質量%以上であり、55質量%以上であるのがより好ましく、60質量%以上であるのがさらに好ましい。 【0017】 本発明者は、ガラス転移温度が85℃以上150℃以下であり、降伏点ひずみが特定の値以上であるポリエステル系樹脂系フィルムが、ディスプレイ用フィルムとして優れた耐折性、耐熱性を有し、特にフォルダブル用途に適することを見出し、本発明を完成した。 本発明者は、本フィルムは、塑性変形が始まるまでのひずみ量が比較的大きいため耐折性が発現しているものと考えている。 【0018】 本フィルムは薄膜、耐折性付与の観点から二軸延伸フィルムであることが好ましい。 【0019】 (1)ガラス転移温度 本フィルムのガラス転移温度(Tg)は、85℃以上150℃以下であり、86℃以上140℃以下がより好ましく、87℃以上130℃以下が更に好ましい。 本フィルムのTgが85℃以上であれば、ディスプレイ用途に本フィルムを用いた際にも変形することがないため、耐熱性に優れる。 一方、本フィルムのTgが150℃以下であれば、加工性にも適したものとなる。 本フィルムのガラス転移温度(Tg)は、JIS K7121(2012年)に準じて示差走査熱量計(DSC)を用いて加熱速度10℃/分で測定するものである。 なお、DSC測定において複数のガラス転移温度が確認される場合は、本発明におけるガラス転移温度(Tg)は、高温側のガラス転移温度を指すものとする。 【0020】 (2)降伏点ひずみ 本フィルムの23℃における引張試験を行った際に少なくとも一方向における降伏点ひずみが、8.0%以上である。 本フィルムの降伏点ひずみは、好ましくは8.5%以上、より好ましくは9.0%以上である。降伏点ひずみの上限は特に限定されるものではないが、50%以下である。少なくとも一方向における降伏点ひずみが8.0%以上であることでフィルムの折り曲げ耐性が実用範囲内に保たれる。降伏点ひずみは、本フィルムを製造する際の延伸条件などによって調整することができる。 【0021】 本フィルムは、一方向における降伏点ひずみが上記範囲であると共に、一方向に直交する方向における降伏点ひずみが、8.0%以上であることが好ましく、8.5%以上であることがより好ましく、9.0%以上であることがさらに好ましく、そして50%以下であることが好ましい。 なお、上記「一方向」とは、特に限定されないが、例えば本フィルムのMD(又はTD)を意味し、「一方向と直交する方向」とは、例えば本フィルムのTD(又はMD)を意味する。ここで、MDは「Machine Direction」を意味し、TDは「Transverse Direction」を意味する。 本フィルムの降伏点ひずみは、引張試験において得られる応力-ひずみ曲線の降伏点におけるひずみ(%)を意味し、JIS K 7127:1999に準じた方法により測定することができる。 【0022】 (3)降伏応力 23℃における引張試験を行った際の本フィルムの降伏応力は、50MPa以上であることが好ましく、より好ましくは55%以上、さらに好ましくは60MPa以上である。 上限は特に限定されるものではないが、ポリエステル系樹脂からなるフィルムの場合、通常は300MPa以下である。 本フィルムの降伏応力を50MPa以上とすることでフィルム強度が実用範囲内に保たれ、フィルムの折り曲げ耐性が実用範囲内に保たれる。降伏応力は延伸条件によって調整することができる。 本フィルムの降伏応力は、JIS K 7127:1999に準じた方法により測定することができる。 【0023】 (4)結晶融解温度 本フィルムの結晶融解温度(Tm)は255℃以上300℃以下であることが好ましい。 特に256℃以上295℃ 以下であることがより好ましく、257℃以上290℃以下であることがさらに好ましく、258℃以上285℃以下であることがとりわけ好ましい。本フィルムの結晶融解温度(Tm)がかかる範囲であれば、本フィルムは耐熱性と溶融成形性のバランスに優れる。 ここで、結晶融解温度(Tm)は、JIS K7121(2012年)に準じて、本フィルムについて示差走査熱量計(DSC)を用いて加熱速度10℃/分で測定するものである。 なお、結晶融解温度(Tm)とは、結晶融解ピーク温度を意味する。DSC測定において、複数の結晶融解温度が確認される場合は、本発明における結晶融解温度(Tm)は、最も高い温度の結晶融解温度を指すものとする。 【0024】 本フィルムの結晶融解温度(Tm)は、本フィルムを構成する樹脂材料を選択したり、結晶核剤を添加したり、本フィルムの製造において、溶融状態からの冷却温度、延伸倍率、延伸温度、延伸後の熱処理条件を調整したりすることで最適化することができる。 【0025】 (5)厚み 本フィルムの厚みは、1~250μmであることが好ましく、5~200μmであるのがより好ましい。1μm以上とすることでフィルム強度が実用範囲内に保たれる。250μm以下であることで、耐折性が発現しやすくなる。厚みは延伸条件によって調整することができる。 【0026】 (6)耐折性 本フィルムは、YUASA製折り曲げ試験装置(DLDMLH-FS-C)を用いて23℃における1000回の折り曲げ試験を屈曲半径(R)=1.5mmの条件で行った際、外観変化がないものであることが好ましい。これを満たすことにより本フィルムは耐折性に優れているものということができる。 【0027】 本発明は、一般的にポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂よりも比較的高い降伏応力を示すポリエステル系樹脂を主成分としたフィルムが耐折り曲げ性に優れることを、本発明者が見出し、成されたものである。 降伏応力が高いポリエステル系樹脂であっても、変形によって加えられた応力が大きい場合、変形が起こり、材料に解消されないひずみが残ってしまうという問題があった。 しかし、本発明者は、本発明において、降伏点ひずみが特定の数値以上であればひずみが発生しにくくなることを見出した。 弾性変形領域(降伏点)を越えてひずんでしまった場合に、折れ跡やシワなどの変形跡が残ってしまい、外観不良や、材料特性そのものに影響が出てしまうと考えている。 つまり、降伏点ひずみ量が大きければ大きいほど塑性変形が始まるまでのひずみ量が大きいため、大きなひずみが印加された場合でも、変形跡が付きにくく、変形耐性に優れていると考えている。 …(中略)… 【0031】 以下、本フィルムを構成するポリエステル系樹脂(A)について説明する。 【0032】 <ポリエステル系樹脂(A)> 本フィルムを構成するポリエステル系樹脂(A)は、ホモポリエステルであっても共重合ポリエステルであってもよい。 ホモポリエステルからなる場合、芳香族ジカルボン酸と脂肪族グリコールとを重縮合させて得られるものが好ましい。 芳香族ジカルボン酸としては、テレフタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸などが挙げられ、脂肪族グリコールとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,4-シクロヘキサンジメタノール等が挙げられる。 代表的なポリエステルとしては、ポリエチレンテレフタレート(PET)等が例示される。 一方、共重合ポリエステルのジカルボン酸成分としては、イソフタル酸、フタル酸、テレフタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、セバシン酸、オキシカルボン酸等の一種又は二種以上が挙げられ、グリコール成分として、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、ネオペンチルグリコール等の一種又は二種以上が挙げられる。 更に共重合成分として、P-オキシ安息香酸等のオキシカルボン酸を用いてもよい。 本発明においては、ガラス転移温度、降伏点ひずみの観点から、ポリエステル系樹脂(A)が、ジカルボン酸成分(a-1)としてテレフタル酸単位、ジオール成分(a-2)として1,4-シクロヘキサンジメタノール単位を含むポリシクロヘキシレンジメチレンテレフタレートであることが好ましい。 【0033】 ポリエステル系樹脂(A)の結晶融解熱量(ΔHm(A))は、35J/g以上70J/g以下であるのが好ましく、36J/g以上或いは65J/g以下であることがより好ましい。 ΔHm(A)がかかる範囲であれば、ポリエステル系樹脂(A)は耐熱性、耐湿熱性、溶融成形性、及び、延伸加工性にも優れる適度な結晶性を有する。 ポリエステル系樹脂(A)の結晶融解熱量(ΔHm(A))は、JIS K7122(2012年)に準じて、示差走査熱量計(DSC)を用いて加熱速度10℃/分で測定することができる。 なお、ポリエステル系樹脂(A)の結晶融解熱量(ΔHm(A))は、該(A)の構成単位、例えばポリシクロヘキシレンジメチレンテレフタレートであれば、テレフタル酸以外の他の酸成分及び/又は1,4- シクロヘキサンジメタノール単位以外の他のジオール成分の種類や配合割合を調整することにより、上記範囲内に調整することができる。 …(中略)… 【0051】 <ポリアリレート(B)> 本フィルムの別の実施形態の一例は、前記ポリエステル系樹脂(A)100質量部に対して、該ポリエステル系樹脂(A)よりもガラス転移温度が高いポリアリレート(B)を1質量部以上50質量部以下含むディスプレイ用フィルムである。 【0052】 ポリエステル系樹脂(A)とポリアリレート(B)のガラス転移温度の差は60℃以上であるのが好ましく、70℃以上であるのがより好ましく、80℃以上であるのが更に好ましく、90℃以上であるのが特に好ましく、100℃以上であるのがとりわけ好ましい。 ポリアリレート(B)のガラス転移温度は150℃以上350℃以下であるのが好ましく、160℃以上或いは340℃以下であるのがより好ましく、170℃以上或いは330℃以下であるのが更に好ましく、180℃以上或いは320℃以下であるのが特に好ましく、190℃以上或いは300℃以下であるのがとりわけ好ましい。 ポリエステル系樹脂(A)とポリアリレート(B)のガラス転移温度の差が上記を満たすことで、本フィルムのガラス転移温度が向上し、溶融成形性にも優れた本フィルムが得られる。 【0053】 ポリアリレート(B)の含有割合はポリエステル系樹脂(A)100質量部に対して、1質量部以上50質量部以下であり、3質量部以上或いは49質量部以下であることが好ましく、5質量部以上或いは47質量部以下であることがより好ましく、10質量部以上或いは45質量部以下であることが更に好ましい。ポリアリレート(B)の割合が1質量部以上であれば、結晶化速度を遅くすることができるためフィルムを延伸する際の延伸加工性が向上することができる。一方、ポリアリレート(B)の割合が50質量部以下であれば、フィルムの結晶性を維持され、ひいては得られる本フィルムの加熱時の耐収縮性が十分なものとなる。 【0054】 一般的に、樹脂組成物の耐熱性の向上は、ガラス転移温度(Tg)を向上させることで達成できる。ここで、ポリエステル系樹脂(A)よりTgの高いポリアリレート(B)を混合することで、ポリエステル系樹脂(A)単体よりもガラス転移温度の高い樹脂組成物が得られ、耐熱性、耐湿熱性に優れたフィルムを得ることができる。 一方、延伸時の結晶化が顕著に起こる場合、延伸時に結晶部分からの破断が起きやすくなるという問題を有する。 そこで後述するように、非晶性であるポリアリレート(B)を加えることにより、ポリエステル系樹脂(A)自体の結晶性を緩和し、延伸時の破断を抑え加工時のハンドリング性を向上させることができる。 …(中略)… 【実施例】 【0070】 以下に実施例を示すが、これらにより本発明は何ら制限を受けるものではない。 …(中略)… 【0076】 [ポリエステル系樹脂(A)] (A)-1:SKYPURA0502HC (SKケミカル社製、ジカルボン酸成分:テレフタル酸=100モル%、ジオール成分:1,4-シクロヘキサンジメタノール=100モル%、Tm=293℃、ΔHm=48J/g、Tg=110℃) 【0077】 (A)-2:SKYPURA0502 (SKケミカル社製、ジカルボン酸成分:テレフタル酸=100モル%、ジオール成分:1,4-シクロヘキサンジメタノール=100モル%、Tm=286℃、ΔHm=42J/g、Tg=104℃) 【0078】 (A)-3:SKYPURA1631 (SKケミカル社製、ジカルボン酸成分:テレフタル酸=91.8モル%、イソフタル酸=8.2モル%、ジオール成分:1,4-シクロヘキサンジメタノール=100モル%、Tm=274℃、ΔHm=32J/g、Tg=101℃) 【0079】 [ポリアリレート(B)] (B)-1:Uポリマー(登録商標) U-100 (ユニチカ社製、ジカルボン酸成分:テレフタル酸/イソフタル酸=50/50モル%、ビスフェノール成分: ビスフェノールA=100モル%、Tg(B)=210℃) 【0080】 [二軸延伸PETフィルム(C)] (C)-1:厚み50μmの二軸延伸PETフィルム 【0081】 [PENフィルム(D)] (D)-1:厚み50μmのPENフィルム(テオネックスQ51) 【0082】 (実施例1) ペレット状の(A)-1を70質量%に対して、ペレット状の(B)-1を30質量%の割合で添加し((A)-1が100重量部に対して、(B)-1が43質量部)、ドライブレンドした後、310℃に設定した同方向二軸押出機(東芝機械株式会社製、口径40mm、スクリューの有効長Lと外径Dの比L/D=32)に投入し、得られたストランドを水槽で冷却固化し、ペレタイザーでカットし、ペレットを作製した。 作製したペレットを、単軸押出機(三菱重工業株式会社製)を用いて、310℃で溶融混練後、ギャップ1.0mm、310℃のTダイより押出した溶融樹脂シートを115℃のキャストロールで引き取り、冷却固化し、厚み約500μmの膜状物を得た。 続いて、得られたキャストフィルムを縦延伸機に通し、125℃で縦方向(MD)に3倍延伸を行った。続いて、得られた縦延伸フィルムを横延伸機(テンター)に通し、予熱温度130℃、延伸温度130℃、熱固定温度260℃で横方向(TD)に3.5倍延伸を行い、その後テンター内にてフィルムの弛緩処理を10%行った。得られたフィルムについて、上記(1)~(5)の評価を行った。結果を表1に示す。 【0083】 (実施例2) ポリエステル系樹脂(A)に関して、(A)-1の代わりに(A)-2を使用した以外は実施例1と同様の方法でサンプルの作製及び評価を行った。結果を表1に示す。 【0084】 (実施例3) ポリエステル系樹脂(A)に関して、(A)-1の代わりに(A)-3を使用した以外は実施例1と同様の方法でサンプルの作製及び評価を行った。結果を表1に示す。 【0085】 (比較例1) 二軸延伸PETフィルム(C)-1について評価を行った結果を表1に示す。 【0086】 (比較例2) PENフィルム(D)-1について評価を行った結果を表1に示す。 【0087】 【表1】 [図:0001425279000001.jpg] 【0088】 実施例1~3では、成形時に特に問題なくフィルムを製造することができた。実施例1~3のフィルムは結晶融解温度、ガラス転移温度は高く、耐熱性も優れている。実施例1~3のフィルムはR=1、1.5における評価にて、比較例1、2との明確な優劣の差がついていた。よって、実施例1~3のフィルムは耐折性に優れている。」 (2) 引用文献1の記載事項及び引用発明の認定 ア 引用文献1に記載された事項 原査定の拒絶の理由において引用された、本願の優先日前に発行された文献である特開2018-104496号公報(以下「引用文献1」という。)には、次の記載がある(なお、当合議体により、後記(イ)の引用発明の認定に直接用いる記載に下線を付した。)。 (ア) 特許請求の範囲 「【請求項1】 ジカルボン酸成分(a-1)としてテレフタル酸単位を90モル%以上、ジオール成分(a-2)として1,4-シクロヘキサンジメタノール単位を90モル%以上含むポリシクロヘキシレンジメチレンテレフタレート樹脂(A)100質量部に対して、前記ポリシクロへキシレンジメチレンテレフタレート樹脂(A)よりも、JIS K7198Aに準じて測定されるガラス転移温度が高いポリアリレート樹脂(B)を1質量部以上50質量部以下の割合で含むポリエステル樹脂組成物。 【請求項2】 単一のガラス転移温度を有する請求項1に記載のポリエステル樹脂組成物。 【請求項3】 本樹脂組成物を加熱速度10℃/分で示差走査熱量計(DSC)を用いて、結晶融解温度より30℃高い温度まで昇温し、10℃/分で降温した際、結晶融解温度と降温結晶化温度の差は40℃以上80℃以下である請求項1または2に記載のポリエステル樹脂組成物。 【請求項4】 請求項1~3のいずれか一項に記載のポリエステル樹脂組成物からなるポリエステル系二軸延伸フィルム。」 (イ) 【0001】~【0009】 「【技術分野】 【0001】 本発明は透明性、耐熱性、及び、延伸加工性に優れたポリエステル樹脂組成物に関する。 【背景技術】 【0002】 ポリエステルは、耐熱性、機械的強度、透明性、耐薬品性、ガスバリアー性などの性質に優れており、かつ価格的にも入手し易い事から、汎用性が高く、現在、飲料・食品用容器や包装材、成形品、フィルムなどに広く利用されている樹脂である。中でも、酸成分としてテレフタル酸、ジオール成分として1,4-シクロヘキサンジメタノールをそれぞれ主成分とするポリシクロヘキシレンジメチレンテレフタレート(PCT)は、融点が290℃と高く、また、結晶化速度が速い事から、耐熱性が必要とされる射出成形用途として広く使用されており、二軸延伸フィルム用途としても各種検討がなされている。ポリシクロヘキシレンジメチレンテレフタレートを用いた二軸延伸フィルムは、その耐熱性を生かして、フレキシブル基板、ITOの保護フィルム、スマートフォンやタブレット用のプリズムシート、液晶の保護フィルム等の用途での使用が期待されている。これらの用途においては、使用時の温度が高温になるため、80~200℃×数分~数日間という過酷な耐熱試験にも耐える必要がある。 【0003】 例えば特許文献1には、ポリシクロヘキシレンジメチレンテレフタレートからなる二軸延伸配向ポリエステルフィルムであって、特定の延伸比及び延伸温度で延伸又は配向され、且つ続いて延伸されたフィルムが、260℃以上の実際のフィルム温度において、延伸フィルムの寸法を保持しながらヒートセットされた、耐熱性に優れたフィルムが開示されている。 【0004】 一方、特許文献2には、(a)テレフタル酸残基、(b)1,4-シクロヘキサンジメタノール残基、及び、(c)別のジカルボン酸又はジオール残基、を含んでなるポリエステルから製造された、耐熱性に優れた二軸延伸ポリエステルフィルムが開示されている。 【先行技術文献】 【特許文献】 【0005】 【特許文献1】特表2005-530908号公報 【特許文献2】特表2008-524396号公報 【発明の概要】 【発明が解決しようとする課題】 【0006】 しかしながら、特許文献1、2に開示されているフィルムは、フレキシブル回路基板のような、高温で長期間の環境下で使用される用途によってはフィルム収縮といった不具合が生じる。 本発明で解決しようとする課題は、上記の問題点を解決し、透明性、耐熱性、及び、延伸加工性に優れたポリエステル樹脂組成物を提供することにある。また透明性、加熱時の耐収縮性に優れたポリエステル系二軸延伸フィルムを提供することにある。 【課題を解決するための手段】 【0007】 本発明の要旨は以下のとおりである。 【0008】 [1] ジカルボン酸成分(a-1)としてテレフタル酸単位を90モル% 以上、ジオール成分(a-2)として1,4-シクロヘキサンジメタノール単位を90モル%以上含むポリシクロヘキシレンジメチレンテレフタレート樹脂(A)100質量部に対して、前記ポリシクロへキシレンジメチレンテレフタレート樹脂(A)よりも、JIS K7198Aに準じて測定されるガラス転移温度が高いポリアリレート樹脂(B)を1質量部以上50質量部以下の割合で含むポリエステル樹脂組成物。 [2] 単一のガラス転移温度を有する[1]に記載のポリエステル樹脂組成物。 [3] 本樹脂組成物を加熱速度10℃/分で示差走査熱量計(DSC)を用いて、結晶融解温度より30℃高い温度まで昇温し、10℃/分で降温した際、結晶融解温度と降温結晶化温度の差は40℃以上80℃以下である[2]または[3]に記載のポリエステル樹脂組成物。 [4] [1]~[3]のいずれか一項に記載のポリエステル樹脂組成物からなるポリエステル系二軸延伸フィルム。 [5] ジカルボン酸成分(a-1)としてテレフタル酸単位を90モル%以上、ジオール成分(a-2)として1,4-シクロヘキサンジメタノール単位を90モル% 以上含むポリシクロヘキシレンジメチレンテレフタレート樹脂(A)100質量部に対して、ポリアリレート樹脂(B)を1質量部以上50質量部以下の割合で、260℃以上350℃以下で溶融混練してなるポリエステル樹脂組成物の製造方法。 【発明の効果】 【0009】 本発明が提案するポリエステル樹脂組成物は、ポリシクロヘキシレンジメチレンテレフタレート樹脂の透明性を損なわずに耐熱性、延伸加工性が改善されており、この樹脂組成物から得られるポリエステル系二軸延伸フィルムは透明性、加熱時の耐収縮性に優れるので、耐熱性や光学特性が必要な用途にも好適に使用できる。」 (ウ) 【0011】~【0021】 「【0011】 以下、本発明を詳細に説明する。ただし、本発明の内容が以下に説明する実施形態に限定されるものではない。 【0012】 <ポリエステル樹脂組成物> 本発明の実施形態の一例に係るポリエステル樹脂組成物(以下、「本樹脂組成物」と称することがある)は、ジカルボン酸成分(a-1)としてテレフタル酸単位を90モル%以上、ジオール成分(a-2)として1,4-シクロヘキサンジメタノール単位を90モル%以上含むポリシクロヘキシレンジメチレンテレフタレート樹脂(A)100質量部に対して、前記ポリシクロへキシレンジメチレンテレフタレート樹脂(A)よりもガラス転移温度が高いポリアリレート樹脂(B)を1質量部以上50質量部以下の割合で含むポリエステル樹脂組成物である。 【0013】 ポリシクロヘキシレンジメチレンテレフタレート樹脂の耐熱性を改善する方法としては、結晶性の向上を目的として結晶核剤を添加する方法が知られている。この方法では、結晶核剤を添加する事により結晶化度が向上し、それに伴って耐熱性も向上するものの、一般に結晶化速度も向上する為、延伸加工性が悪化するという問題がある。 また、インライン工程またはアウトライン工程にて熱処理を施すことによって、結晶化を促し耐熱性を向上する方法が知られているが、最終的に到達する結晶化度には限界があり、熱処理という工程が加わるため生産性が低下するという問題もある。 本発明においては、ポリシクロヘキシレンジメチレンテレフタレート樹脂よりもガラス転移温度が高い非晶性樹脂であるポリアリレート樹脂がポリシクロヘキシレンジメチレンテレフタレート樹脂と相溶性を示す事を見出し、ポリシクロヘキシレンジメチレンテレフタレート樹脂とポリアリレート樹脂を含む樹脂組成物が、優れた透明性、耐熱性、延伸加工性を示すことを見出したものである。 本発明のポリエステル樹脂組成物は極めて耐熱性に優れる為、この樹脂組成物から得られるポリエステル系二軸延伸フィルムは透明性や加熱時の耐収縮性に優れ、耐熱性や光学特性が必要な用途にも好適に使用できる。 …(中略)… 【0017】 (1)ガラス転移温度 本樹脂組成物は、単一のガラス転移温度を有する事が好ましい。単一のガラス転移温度を有するとは、歪み0.1%、周波数10Hz、昇温速度3℃/分の条件にて動的粘弾性の温度分散測定(JIS K7198A法の動的粘弾性測定)を行った際、本樹脂組成物は損失正接(tanδ)の主分散のピークが1つだけ存在することを意味する。樹脂組成物のガラス転移温度が単一であれば、樹脂組成物に含まれる樹脂は相溶しており、透明性を有したポリエステル樹脂組成物となる。 【0018】 ここで、主分散についてさらに説明する。図1で示すように、一般に、結晶性樹脂の温度を低温から徐々に上げていくと、側鎖全体の熱運動(γ分散)、主鎖の局所的運動(β分散)、非晶領域における主鎖のミクロブラウン運動(αa分散)、結晶内分子鎖の運動(αc分散)、融解、流動といった緩和機構にそれぞれ対応したピークが観察される。これらの中でも、非晶領域における主鎖のミクロブラウン運動(αa分散)は、他の緩和機構に比べて活性化エネルギーが高く、それに対応するピークも大きくなる事から、主分散と呼ばれる(それより低温の緩和機構は副分散と呼ばれる)。ガラス転移温度は、非晶領域における主鎖のミクロブラウン運動が生じる際の温度であるので、動的粘弾性の温度分散測定における主分散のピークは、ガラス転移温度を示しているということができる。」 「【図1】 [図:0001425279000002.jpg] 」 「【0019】 続いて、ポリマーブレンド系の動的粘弾性挙動について説明する。ポリマーブレンド系は、相溶系の組み合わせと非相溶系の組み合わせとに分けられる。 相溶系とは、混合する2種類以上の樹脂が分子レベルで完全に混ざり合う系を意味する。この際、分子レベルで混ざり合っている非晶領域は単一の相と見なす事ができ、ミクロブラウン運動も単一の温度で生じる。従って、相溶系の場合、ガラス転移温度が単一であり、主分散のピークも単一となる。また、その温度は、ブレンド比率に応じて、ブレンドするそれぞれの樹脂の間の範囲に値をとる。 一方、非相溶系の場合、混合する2種類以上の樹脂が混ざり合っておらず、二相系(あるいはそれ以上)として存在する。従って、ガラス転移温度を示す主分散のピークは、ブレンドするそれぞれの樹脂と同じ位置に2つ以上存在する事になる。非相溶の場合、それぞれの樹脂の屈折率が極めて近い値になければマトリックスとドメインの界面で光が散乱し、樹脂組成物の透明性が損なわれる。また、引張や曲げ等の外力を加えた際に界面で剥離が生じ、機械物性の低下や白化を招く。さらに、延伸フィルムの製造の際、延伸時に界面剥離が生じ、破断や白化の原因となる。 本発明においては、本樹脂組成物を構成する樹脂が相溶しているため、本樹脂組成物及び該組成物を用いて得られる成形品は優れた透明性を有する。 【0020】 本樹脂組成物のガラス転移温度が単一である場合、その温度は110℃以上、300℃以下である事が好ましく、115℃以上或いは290℃以下である事がより好ましく、120℃以上或いは280℃以下である事が更に好ましく、125℃以上或いは270℃以下である事が特に好ましく、130℃以上或いは260℃以下である事がとりわけ好ましい。本樹脂組成物のガラス転移温度がかかる範囲にあれば、本樹脂組成物は耐熱性と延伸成型性のバランスに優れる。 ガラス転移温度は、JIS K7198Aに準じて、動的粘弾性の温度分散測定を用いて歪み0.1%、周波数10Hz、昇温速度3℃/分にて測定される損失正接(tanδ)の主分散のピークで評価される。 【0021】 (2)結晶融解熱量 本樹脂組成物の結晶融解熱量ΔHmは25J/g以上50J/g以下である事が好ましく、26J/g以上或いは45J/g以下である事がより好ましく、27J/g以上或いは40J/g以下である事が更に好ましい。ΔHmが25J/g以上であれば、本樹脂組成物は十分な結晶性を有しており、得られる二軸延伸フィルムの加熱時の耐収縮性に優れる。一方、ΔHmが50J/g以下であれば、本樹脂組成物の結晶性は延伸成形性にも適したものとなる。 本樹脂組成物の結晶融解熱量ΔHmは、JIS K7121(2012年)に準じて、示差走査熱量計(DSC)を用いて加熱速度10℃/分で測定するものである。」 (エ) 【0056】~【0077】 「【実施例】 【0056】 以下に実施例を示すが、これらにより本発明は何ら制限を受けるものではない。 【0057】 (1)ガラス転移温度 粘弾性スペクトロメーターDVA-200(アイティー計測制御株式会社製)を用い、JIS K7244(1999年)に準じて、歪み0.1%、周波数10Hz、昇温速度3℃/分で動的粘弾性の温度分散測定を用い、損失正接(tanδ)の主分散のピーク温度を測定した。ピークが単一であり、かつそのピーク温度が110℃以上、300℃以下のものを合格(○)、この範囲から外れるものを不合格(×)とした。 【0058】 (2)結晶融解温度、結晶融解エンタルピー、降温時の結晶化温度 得られたキャストフィルムについて、Diamond DSC(パーキンエルマージャパン社製)を用いて、JIS K7121(2012年)に準じて、加熱速度10℃/分で昇温過程における結晶融解温度及び結晶融解エンタルピーを測定した。結晶融解エンタルピーが25J/g以上、50J/g以下のものを合格(○)、この範囲から外れるものを不合格(×)とした。結晶融解温度より30℃高い温度まで昇温した後、10℃/分で降温した際の結晶化ピークの温度を測定し、結晶融解温度との差から結晶化速度を評価した。結晶融解温度と降温結晶化温度の差が40℃以上、80℃以下のものを合格(○)、この範囲から外れるものを不合格(×)とした。 【0059】 (3)成形性 キャストフィルムについて、二軸延伸を行った際、問題なく延伸できたものを合格(○)、破断が起こったものを不合格(×)とした。 【0060】 (4)加熱収縮率 熱処理オーブンベーキング試験装置(株式会社大栄科学製作所製)を用いて二軸延伸フィルムを200℃で30分間加熱し、加熱後の収縮率を測定した。収縮率が2%以下であるものを合格(○)、2%を超えるものを不合格(×)とした。 【0061】 (5)ヘーズ ヘーズメーターNDH-5000(日本電色工業社製)を用いて、JIS K7136(2000年)に基づいて、全光線透過率および拡散透過率を測定し、ヘーズを以下の式で算出した。 [ヘーズ]=([拡散透過率]/[全光線透過率])×100 ヘーズが5%以下であるものを合格(○)、5%を超えるものを不合格(×)とした。 【0062】 [ポリシクロヘキシレンジメチレンテレフタレート樹脂(A)] (A)-1:SKYPURA0502 (SKケミカル社製、ジカルボン酸成分:テレフタル酸=100モル%、ジオール成分:1,4-シクロヘキサンジメタノール=100モル%、Tm(A)=286℃、ΔHm(A)=42J/g、Tg(A)=104℃) 【0063】 [ポリアリレート樹脂(B)] (B)-1:Uポリマー U-100 (ユニチカ社製、ジカルボン酸成分:テレフタル酸/イソフタル酸=50/50モル%、ビスフェノール成分:ビスフェノールA=100モル%、Tg(B)=210℃) 【0064】 (B)-2:Uポリマー T-240AF (ユニチカ社製、ジカルボン酸成分:テレフタル酸/イソフタル酸=50/50モル%、ビスフェノール成分:ビスフェノールA/ビスフェノールTMC=60/40モル%、Tg(B)=244℃) 【0065】 (B)-3:Uポリマー T-200 (ユニチカ社製、ジカルボン酸成分:テレフタル酸/イソフタル酸=50/50モル%、ビスフェノール成分:ビスフェノールTMC=100モル%、Tg(B)=286℃) 【0066】 (B)-4:Uポリマー T-1000 (ユニチカ社製、Uポリマー T-200/ポリカーボネート樹脂=90/10質量%の混合物、Tg(B)=272℃) 【0067】 (実施例1) ペレット状の(A)-1を100質量部に対して、ペレット状の(B)-1を25質量部の割合で添加し、ドライブレンドした後、300℃に設定したΦ25mm二軸押出機にて溶融混練し、Tダイ内からフィルムとして押出し、20℃のキャストロールに密着急冷し、厚み450μmのキャストフィルムを得た。このキャストフィルムについて、結晶融解温度、結晶融解熱量、降温結晶化温度、ガラス転移温度の評価を行った。 続いて、得られたキャストフィルムを縦延伸機に通し、125℃で縦方向(MD)に3倍延伸を行った。続いて、得られた縦延伸フィルムを横延伸機(テンター)に通し、予熱温度125℃、延伸温度130℃、熱固定温度260℃で横方向(TD)に3倍延伸を行った。得られた二軸延伸フィルムについて、加熱収縮率及びヘーズの測定を行った。結果を表1に示す。 【0068】 (実施例2) (B)-1の代わりに(B)-2を使用し、成形温度を320℃、縦延伸温度を132℃、予熱温度を132℃、横延伸温度を142℃とした以外は実施例1と同様の方法でサンプルの作製及び評価を行った。結果を表1に示す。 【0069】 (実施例3) (B)-1の代わりに(B)-3を使用し、成形温度を330℃、縦延伸温度を140℃、予熱温度を140℃、横延伸温度を150℃とした以外は実施例1と同様の方法でサンプルの作製及び評価を行った。結果を表1に示す。 【0070】 (実施例4) (B)-1の代わりに(B)-4を使用し、成形温度を330℃、縦延伸温度を138℃、予熱温度を138℃、横延伸温度を148℃とした以外は実施例1と同様の方法でサンプルの作製及び評価を行った。結果を表1に示す。 【0071】 (実施例5) (A)-1を100質量部に対して、(B)-1を10質量部の割合で添加し、縦延伸温度を114℃、予熱温度を114℃、横延伸温度を124℃とした以外は実施例1と同様の方法でサンプルの作製及び評価を行った。結果を表1に示す。 【0072】 (実施例6) (A)-1を100質量部に対して(B)-1を40質量部の割合で添加し、縦延伸温度を134℃、予熱温度を134℃、横延伸温度を144℃とした以外は実施例1と同様の方法でサンプルの作製及び評価を行った。結果を表1に示す。 【0073】 (比較例1) (A)-1を単体で使用し、縦延伸温度を104℃、予熱温度を104℃、横延伸温度を114℃とした以外は実施例1と同様にサンプルの作製を行ったところ、横延伸過程において破断が起こった。評価結果を表1に示す。 【0074】 (比較例2) 縦方向(MD)に2.5倍、横方向(TD)に2.5倍で延伸を行った以外は比較例1と同様にサンプルの作成を行ったところ、問題なく二軸延伸フィルムが得られた。評価結果を表1に示す。 【0075】 (比較例3) (A)-1を100質量部に対して(B)-1を100質量部の割合で添加し、縦延伸温度を157℃、予熱温度を157℃、横延伸温度を167℃とした以外は実施例1と同様の方法でサンプルの作製及び評価を行った。結果を表1に示す。 【0076】 【表1】 [図:0001425279000003.jpg] 【0077】 実施例1~4では、ポリシクロヘキシレンジメチレンテレフタレート樹脂(A)100質量部に対して、ビスフェノール成分が異なるポリアリレート樹脂又はポリカーボネートを含むポリアリレート樹脂を、それぞれ2 5 質量部添加している。得られる樹脂組成物は、ポリシクロヘキシレンジメチレンテレフタレート樹脂(A)単体と比較してガラス転移温度が向上しており、より耐熱性に優れることがわかる。また、この樹脂組成物は特に問題なく二軸延伸フィルムを製造することができ、得られた二軸延伸フィルムは透明性と加熱時の耐熱性に優れることが分かる。 実施例5では、ポリシクロヘキシレンジメチレンテレフタレート樹脂(A)100質量部に対するポリアリレート樹脂(B)の配合割合を10質量部としている。実施例1と比較してポリアリレート樹脂(B)の配合割合が少ないためガラス転移温度の向上効果が小さく耐熱性が若干低下しているものの、優れた透明性、延伸加工性を示す樹脂組成物が得られている。 実施例6では、ポリシクロヘキシレンジメチレンテレフタレート樹脂(A)100質量部に対するポリアリレート樹脂(B)の配合割合を40質量部としている。実施例1と比較してポリアリレート樹脂(B)の配合割合が多いため樹脂組成物の結晶性が低下しており、耐熱性が若干低下しているものの、優れた透明性、延伸加工性を示す樹脂組成物が得られている。 比較例1、2では、ポリシクロヘキシレンジメチレンテレフタレート樹脂(A)を単体で使用している。この樹脂組成物は、結晶融解温度と降温結晶化温度の差が小さいことより、結晶性が高く、結晶化速度が大きい樹脂組成物であることがわかる。比較例1においては、キャスティングロールでの急冷過程において結晶性が高いシートが得られるため、実施例と等倍率での延伸をした時、破断を起こしてしまったと考えられる。一方、比較例2においては、実施例や比較例1よりも延伸倍率を下げているため延伸は可能であるものの、ポリアリレート樹脂を含まないため樹脂組成物のガラス転移温度が低く、得られる二軸延伸フィルムの加熱収縮率は大きくなっている。すなわち、耐熱性が低下している。 比較例3では、ポリシクロヘキシレンジメチレンテレフタレート樹脂(A)100質量部に対するポリアリレート樹脂(B)の配合割合を100質量部としている。この樹脂組成物は、結晶融解温度と降温結晶化温度の差が大きいこと、及び、結晶融解熱量が小さいことより、結晶化速度が小さく、結晶化度が低い樹脂組成物であることがわかる。当該樹脂組成物を用いた二軸延伸フィルムは、製造時の熱固定の際に十分な結晶化が起こらず、また、起こったとしても絶対的な結晶化度が低いため、加熱収縮率が大きい、すなわち耐熱性が低くなったと考えられる。」 イ 引用発明の認定 前記アに摘記した引用文献1の記載事項を総合すると、引用文献1には、実施例6に係る次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。なお、認定の根拠となる記載箇所を括弧内に示した。 <引用発明> 「透明性、加熱時の耐収縮性に優れたポリエステル系二軸延伸フィルムであって、(【0006】) 前記二軸延伸フィルムは、フレキシブル基板、ITO基板の保護フィルム、スマートフォンやタブレット用のプリズムシート、液晶の保護フィルム等での使用が想定されているものであり、(【0002】) ポリシクロヘキシレンジメチレンテレフタレート樹脂としての、ジカルボン酸成分がテレフタル酸100モル%からなり、結晶融解熱量ΔHm(A)=42J/gであるSKケミカル社製の「SKYPURA0502」と、(【0062】) ポリアリレート樹脂としてのユニチカ社製の「Uポリマー U-100」とからなり、(【0063】) ペレット状の前記「SKYPURA502」を100質量部に対して、ペレット状の「Uポリマー U-100」を40質量部の割合で添加しドライブレンドした後、300℃に設定したΦ25mm二軸押出機にて溶融混練し、Tダイ内からフィルムとして押出し、20℃のキャストロールに密着急冷し、厚み450μmのキャストフィルムを得て、(【0067】、【0072】) 前記キャストフィルムを縦延伸機に通し、134℃で縦方向(MD)に3倍延伸を行い、得られた縦延伸フィルムを横延伸機(テンター)に通し、予熱温度134℃、延伸温度144℃、熱固定温度260℃で横方向(TD)に3倍延伸を行うことで得られた二軸延伸フィルムであり、(【0067】、【0072】) 前記二軸延伸フィルムのガラス転移温度は134℃である、(【0076】の【表1】) 透明性、加熱時の耐収縮性に優れたポリエステル系二軸延伸フィルム。(【0006】】) ただし、ガラス転移温度は、次の方法で測定したものである。 粘弾性スペクトロメーターDVA-200(アイティー計測制御株式会社製)を用い、JIS K7244(1999年)に準じて、歪み0.1%、周波数10Hz、昇温速度3℃/分で動的粘弾性の温度分散測定を用い、損失正接(tanδ)の主分散のピーク温度を測定する。(【0057】)」 (3) 引用文献2~4の記載事項及び技術常識の認定 ア 引用文献2、3に記載された事項及び技術常識1の認定 (ア) 引用文献2に記載された事項 当審において新たに引用する、本願の優先日前に発行された文献である特開平9-300453号公報(以下「引用文献2」という。)には、次の記載がある。なお、下線は当合議体が付したものであり、以下同様である。 「【特許請求の範囲】 【請求項1】応力-歪曲線において縦方向の初期応力変曲点が伸度8~50%の範囲に存在し、かつ、縦方向のヤング率が2~10GPaであることを特徴とするポリエステルフィルム。 …(中略)… 【0001】 【発明の属する技術分野】本発明はポリエステルフィルムおよびそれからなる製品に関するものである。 【0002】 【従来の技術】ポリエステルフィルムとしては、ポリエチレンテレフタレートを主体とするポリエステルを二軸延伸したフィルムが知られている(例えば、特開平2-77431号公報など)。 【0003】 【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記従来のポリエステルフィルムは、フィルムを製造・加工したり、あるいは各種製品として使用する際に、フィルムの端部が座屈して折れシワが入ったり、折れ癖や巻癖がついて製品性能上の欠点となるなど、形態安定性が不十分という問題点があるために、使用できる用途に限界があった。 【0004】本発明は上記の問題点を解決し、形態安定性に優れたポリエステルフィルムを提供することを目的とする。 【0005】 【課題を解決するための手段】本発明は応力-歪曲線において縦方向の初期応力変曲点が伸度8~50%の範囲に存在し、かつ、縦方向のヤング率が2~10GPaであることを特徴とするポリエステルフィルムとしたものである。 …(中略)… 【0014】次に本発明フィルムの製造方法について説明する。 【0015】まず公知のポリエステルの原料を乾燥したのち、公知の溶融押出機に供給してスリット状の口金からシート状に押し出し、これをキャスティングロールで冷却して未延伸フイルムを作る。この場合、平均粒径0.025~1μmの無機または有機の粒子、あるいはその両方を合計で0.1~10重量%含有せしめるのが、望ましい範囲の表面粗度を得るのに有効である。 【0016】このフィルムを二軸延伸し、二軸配向せしめる。延伸方法としては、逐次二軸延伸法または同時二軸延伸法を用いることができる。ただし、最初に長手(縦)方向、次に幅(横)方向の延伸を行なう逐次二軸延伸法を用いるのが本発明範囲の初期応力降伏点を得るのに有効である。長手方向の延伸はロールの周速差を利用して行ない、延伸倍率は3~5倍、延伸速度は10000~50000%/分の範囲が有効である。この時、長手方向の延伸前のフィルムの予熱温度を冷結晶化温度Tcc―10℃以上、Tcc+10℃の範囲で3~10秒行ない、その後ガラス転移点Tg以上、Tcc+10℃の以下にして縦延伸する方法が本発明範囲の初期応力降伏点、ヤング率を得るのに有効である。 【0017】次に、幅方向の延伸はステンタを用いる方法が一般的であり、延伸速度は、1000~20000%/分が好適である。この時、ステンタ内で延伸した後、原長に対し、2~10%、好ましくは3~8%弛緩させつつ、150~200℃、特に160~190℃、時間は0.5~60秒の範囲で熱処理するのが、本発明範囲の初期応力降伏点、結晶サイスを得るのに有効である。 【0018】また、さらにこのフィルムを、長手方向、幅方向の少なくとも片方に、上記の熱処理温度よりも高い温度で、1.3~2倍延伸し、さらにそれより高い温度で3~15%弛緩させつつ熱処理することが、本発明範囲の初期応力降伏点、ヤング率を得るのに有効である。 …(中略)… 【0029】(5)ヤング率、初期応力変曲点 JIS-Z-1702に規定された方法にしたがって、インストロンタイプの引っ張り試験機を用いて、25 ℃、65%RHにて測定した。なお試料長は50mm、引張速度は200%/分とした。なお、初期応力変曲点は、上記の応力-歪曲線において初期弾性変形の直線から外れ、曲線へ変曲する点をいう。」 (イ) 引用文献3に記載された事項 当審において新たに引用する、本願の優先日前に発行された文献である特開2017-191319号公報(以下「引用文献3」という。)には、次の記載がある。 「【0001】 本開示は、概してフレキシブルシステムに関し、より具体的には、電子デバイス用のフレキシブル・ディスプレイ・スタックアップ(flexible display stack-up)に関する。 【背景技術】 【0002】 ポケットサイズのフォームファクタ内に広範囲の表示を可能にする折り畳み式電子デバイスには、大きな関心が寄せられている。しかしながら、構造物を屈曲する能力は、その剛性および破壊応力によって制限される。例えば、剛性および破壊応力は、ディスプレイをタッチパネルおよび保護層のような追加の層と一体化する際に問題となる。 …(中略)… 【0012】 ディスプレイ・スタックアップ102のいくつかの層、例えばディスプレイ224およびタッチパネル216は、デバイスハウジング230内に収容することができる。一方、他の層は、例えばレンズ204および/または耐引掻性コーティング202をハウジング230の頂部にボンディングすることによってハウジング230の外部に結合することができる。さらに、ディスプレイ・スタックアップ102の少なくとも1つの層の厚さは、サブミリメートル、すなわち1ミリメートル未満である。一例として、層202,204,216,220、および224は、ミクロンのオーダーの厚さ、例えば0.3ミリメートル以下の厚さを有する薄膜ラミネート層材料および/または薄膜ラミネート複合体であるかまたはそれを含む。しかしながら、テレビジョンやコンピュータ・ディスプレイ等のより大型製品のためのディスプレイ・スタックアップの少なくともいくつかの層は、より厚くなり得る。 【0013】 特定の実施形態では、各層の厚さ(t)は以下の式1によって制限される。 t=2*R*e (1) Rは曲げ半径であり、eは損傷(例えば、降伏ひずみ)が始まるときのひずみ基準、または他の基準である。例えば、5ミリメートルの所望の曲げ半径および2パーセント未満のひずみを有する携帯デバイスの場合、層の厚さは0.2ミリメートルを超えてはならない。より寛容性のある曲げ半径を有する他の用途では、その曲げ半径に応じて厚みを拡大することができる。 …(中略)… 【0016】 タッチパネル216は、ディスプレイ・スタックアップ102に触れるユーザを検出するために使用される1つまたは複数の導電層を含む。一実施形態では、タッチパネル層は、インジウムスズ酸化物(ITO)薄膜で構成される。他の実施形態では、PETフィルム等の特殊なポリエステルフィルムは、タッチパネル216の一部であり、ディスプレイ・スタックアップ102全体に、より大きな引張強度および透明性を提供する。」 (ウ) 技術常識1の認定 引用文献2に記載された前記(ア)の「初期応力変曲点」及び「初期応力降伏点」は、いずれも本件補正発明にいう「降伏点ひずみ」をいうものと認められる。また、引用文献3に記載された前記(イ)の「降伏ひずみ」は、本件補正発明にいう「降伏点ひずみ」のことと認められる。 そして、前記(ア)、(イ)に摘記した引用文献2、3の記載事項に例示されるように、次の技術事項は、当業者にとって技術常識であったと認められる(以下「技術常識1」という。)。なお、降伏点を超えて応力を加えると、物質の弾性変形の限界を超えて塑性変形するとの技術常識を踏まえれば、技術常識1は、当業者の直観としても明らかなことと認められる。 <技術常識1> 「ポリエステルフィルム等のフィルムは、降伏点ひずみが大きい方が、折り曲げに伴う問題が生じにくいこと。」 イ 引用文献4に記載された事項及び技術常識2の認定 (ア) 引用文献4に記載された事項 当審において新たに引用する、本願の優先日前に発行された文献である特開2017-33031号公報(以下「引用文献4」という。)には、次の記載がある。 「【特許請求の範囲】 【請求項1】 タッチパネルの表面材として用いられ、基材フィルムとハードコート層とを有するタッチパネル用ハードコートフィルムであって、 下記(条件1)及び(条件2)を充足することを特徴とするタッチパネル用ハードコートフィルム。 (条件1)3mmの間隔で前記タッチパネル用ハードコートフィルムの前記ハードコート層側の面を180°折り畳む試験を10万回繰り返し行った場合に割れ又は破断が生じない (条件2)前記ハードコート層のJIS K5600-5-4(1999)に規定する鉛筆硬度試験(1kg荷重)の硬度が、7H以上である」 「【発明の詳細な説明】 【技術分野】 【0001】 本発明は、タッチパネル用ハードコートフィルム、及び、折り畳み式画像表示装置に関する。 【背景技術】 【0002】 画像表示装置、とりわけ近年急速に普及してきているタッチパネルを搭載した画像幼児装置における画像表示面は、取り扱い時に傷がつかないように、優れた硬度が付与することが要求される。これに対し、例えば、基材フィルムにハードコート(HC)層を形成させたハードコートフィルムを利用することにより、画像表示装置の画像表示面の硬度を向上させることが一般になされている。 【0003】 このようなハードコートフィルムに要求される性能は、近年益々高くなってきているが、例えば、特許文献1には、3層以上の樹脂層から構成される基板上に、異形シリカ微粒子とアクリル系ポリマーとマトリクス樹脂とを含むハードコート層が形成されたハードコートフィルムが開示されている。 【0004】 ところで、近年、ハードコートフィルムには、優れた硬度とともに、ハードコートフィルムを繰り返し折り畳んでもクラックの生じることのない優れた耐久折り畳み性能が求められることがある。 しかしながら、硬度と折り畳み性能とは、通常、トレードオフの関係にあるため、従来のハードコートフィルムでは、硬度の向上を図ると耐久折り畳み性能は低下し、耐久折り畳み性能の向上を図ると硬度が低下してしまい、これらの性能を同時に優れたものとすることができなかった。 また、近年、タッチパネルを搭載した画像表示装置が急速に普及してきているが、該タッチパネルを搭載した画像表示装置は、表示画面にガラスが用いられている場合が多い。ところが、ガラスは、硬度は高いが折り畳むと割れてしまい折り畳み性能を付与することはできず、また、ガラスは、比重の大きい材料であるため、軽量化を図るには薄くする必要があるが、ガラスを薄くすると強度が低下して割れやすくなる問題があった。 【0005】 また、例えば、特許文献2には、ハードコート性と屈曲性とを備えたハードコートフィルムとして、透明基材の一方の面上にビッカース硬度の異なる2つのハードコート層を設けたハードコートフィルムが開示されている。 しかしながら、このようなハードコートフィルムは、ある程度優れた硬度及び屈曲性を備えているが、未だ充分とは言い難いものであった。 【0007】 本発明は、上記現状に鑑みて、極めて優れた硬度及び耐久折り畳み性能を有するタッチパネル用ハードコートフィルム、該タッチパネル用ハードコートフィルムを用いてなる折り畳み式画像表示装置を提供することを目的とするものである。 【課題を解決するための手段】 【0008】 本発明は、タッチパネルの表面材として用いられ、基材フィルムとハードコート層とを有するタッチパネル用ハードコートフィルムであって、 下記(条件1)及び(条件2)を充足することを特徴とするタッチパネル用ハードコートフィルム。 (条件1)3mmの間隔で上記タッチパネル用ハードコートフィルムの上記ハードコート層側の面を180°折り畳む試験を10万回繰り返し行った場合に割れ又は破断が生じない (条件2)上記ハードコート層のJIS K5600-5-4(1999)に規定する鉛筆硬度試験(1kg荷重)の硬度が、7H以上である」 「【0121】 (耐久折り畳み試験) 実施例及び比較例に係るタッチパネル用ハードコートフィルムを、30mm×100mmの長方形にカットして作製したサンプルを、耐久試験機(DLDMLH-FU、ユアサシステム機器社製)に曲げR半径が1.5mm(直径3.0mm)となるようにして取り付け、サンプルのハードコート層が形成された側の面が内側となるように全面を180°折り畳む試験を10万回行い、以下の基準にて評価した。 ○:サンプルに割れが生じていない ×:サンプルに割れが生じた」 (イ) 技術常識2の認定 前記(ア)に摘記した引用文献4の記載事項に例示されるように、次の技術事項は、当業者にとって技術常識であったと認められる。(以下「技術常識2」という。) <技術常識2> 「折り畳み式の画像表示装置に用いるためのフィルムの適正検査として、曲率半径が1.5mm程度となるような折り畳みを繰り返し行った後に外観を検査した場合に、異常が無ければ望ましいこと。」 (4) 本件補正発明と引用発明の対比 ア 対比分析 本件補正発明と引用発明を対比する。 (ア) 構成Xの観点(フォルダブルディスプレイ用延伸フィルム) 「フォルダブルディスプレイ用延伸フィルム」の発明である本件補正発明と、「フレキシブル基板、ITO基板の保護フィルム、スマートフォンやタブレット用のプリズムシート、液晶の保護フィルム等での使用が想定されている」「透明性、加熱時の耐収縮性に優れたポリエステル系二軸延伸フィルム」の発明である引用発明は、「ディスプレイ用」の「延伸フィルム」の発明である点において一致する。 一方、本件補正発明は「フォルダブルディスプレイ用」であるが、引用発明は「フレキシブル基板、ITO基板の保護フィルム、スマートフォンやタブレット用のプリズムシート、液晶の保護フィルム等での使用が想定されている」ものの「フォルダブルディスプレイ用」である点は特定されていない点において相違する。 (イ) 構成Aの点(ポリエステル系樹脂) a 構成Aは、「フォルダブルディスプレイ用延伸フィルム」が「ジカルボン酸成分としてのテレフタル酸単位を含み、かつ、結晶融解熱量(ΔHm(A))が32J/g以上70J/g以下であるポリエステル系樹脂(A)を主成分と[する]」ことである。 b 引用発明において、主成分として用いられている「ポリシクロヘキシレンジメチレンテレフタレート樹脂」としての「SKYPURA0502」は、本件補正発明の実施例2としても用いられているものであって(段落【0077】、【0083】及び【0087】の【表1】を参照)、「ジカルボン酸成分がテレフタル酸100モル%からなり」、「結晶融解熱量ΔHm(A)=42J/g」であるから、引用発明における「二軸延伸フィルム」は、本件補正発明における「延伸フィルム」が「ジカルボン酸成分としてのテレフタル酸単位を含み、かつ、結晶融解熱量(ΔHm(A))が32J/g以上70J/g以下であるポリエステル系樹脂(A)を主成分と[する]」との要件を満たす。 (ウ) 構成B1の点(延伸フィルム) a(a) 構成B1は、「延伸フィルム」の「ガラス転移温度が85℃以上150℃以下」であることである。 (b) 本件補正発明の「延伸フィルム」の「ガラス転移温度」は、明細書の【0019】によると、JIS K7121(2012年)に準じて示差走査熱量計(DSC)を用いて加熱速度10℃/分で測定するものである(以下「DSC法」という。)。 b 引用発明の「二軸延伸フィルム」の「ガラス転移温度は134℃」である。 ただし、ガラス転移温度は、次の方法(以下「DMA法」という。)で測定したものである。 粘弾性スペクトロメーターDVA-200(アイティー計測制御株式会社製)を用い、JIS K7244(1999年)に準じて、歪み0.1%、周波数10Hz、昇温速度3℃/分で動的粘弾性の温度分散測定を用い、損失正接(tanδ)の主分散のピーク温度を測定する。 c(a) 本願発明と引用発明は「ガラス転移温度が85℃以上150℃以下」程度である点において共通する。 (b) その一方で、「延伸フィルム」の「ガラス転移温度」が、 本願発明においては、DSC法による測定で85℃以上150℃以下であるのに対して、 引用発明においては、DMA法による測定で134℃であることの違いがある。 (エ) 構成B2の点 a 構成B2は、「フォルダブルディスプレイ用の延伸フィルム」が「23℃における引張試験を行った際に少なくとも一方向における降伏点ひずみが8.0%以上であ[る]」ことである。 b 引用発明における「二軸延伸フィルム」の降伏点ひずみは不明である点で、本件補正発明と相違する。 (オ) 構成B3の点 a 構成B3は、「フォルダブルディスプレイ用の延伸フィルム」が「23℃における1000回の折り曲げ試験を屈曲半径(R)=1.5mmの条件で行った際、外観変化がないこと」である。 b 引用発明における「二軸延伸フィルム」に対して折り曲げ試験を行うことは記載されていないから、引用発明における「ポリエステル系二軸延伸フィルム」が「23℃における1000回の折り曲げ試験を屈曲半径(R)=1.5mmの条件で行った際、外観変化がない」か不明である点で、本件補正発明と相違する。 イ 一致点及び相違点 前記アの対比分析の結果をまとめると、本件補正発明と引用発明の一致点及び相違点は、それぞれ次の(ア)及び(イ)に示すとおりである。 (ア) 一致点 「ジカルボン酸成分としてのテレフタル酸単位を含み、かつ、結晶融解熱量(ΔHm(A))が32J/g以上70J/g以下であるポリエステル系樹脂(A)を主成分とし、ガラス転移温度が85℃以上150℃以下程度である延伸フィルム」である点。 (イ) 相違点 a 相違点1 本件補正発明は、 「フォルダブルディスプレイ用」であるのに対して、 引用発明は 「フレキシブル基板、ITO基板の保護フィルム、スマートフォンやタブレット用のプリズムシート、液晶の保護フィルム等」での使用が想定されているものの「フォルダブルディスプレイ用」である点が特定されていない点。 b 相違点2 「ガラス転移温度」が、 本願発明においては、DSC法による測定で85℃以上150℃以下であるのに対して、 引用発明においては、DMA法による測定で134℃である点 c 相違点3 「23℃における引張試験を行った際に少なくとも一方向における降伏点ひずみ」が、 本件補正発明においては、「8.0%以上であ[る]」のに対して、 引用発明は、不明である点。 d 相違点4 「23℃における1000回の折り曲げ試験を屈曲半径(R)=1.5mmの条件で行った際」の結果が、 本件補正発明においては、「外観変化がない」のに対して、 引用発明は、不明である点。 (5) 判断 ア 相違点1について 引用発明は「スマートフォンやタブレット用のプリズムシート、液晶の保護フィルム」としての使用が想定されているところ、特に「スマートフォン」についていえば、ディスプレイを折り畳むことのできる「フォルダブル」なスマートフォンという概念は、当業者のみならず、一般的な消費者にとっても本願の優先日前に既に良く知られていたものと認められる(一例として、「Samsung、ディスプレイを畳めるスマートフォンを2017年に発売か、[online]、2016年6月7日、IT media」を参照)。そして、引用発明は「フレキシブル基板」としての使用が想定されており、可撓性を有する部分への使用が想定されているといえる。しかも、本願において比較例とされているPETやPENでさえ、フォルダブルディスプレイ用フィルムとしての用途は自明のことである(例えば、特表2018-525248号公報(段落【0025】、【0078】、【0082】、【0086】等参照)や特開2017-126061号公報(【0047】等参照)。そうすると、引用発明の透明性、加熱時の耐収縮性に優れたポリエステル系二軸延伸フィルムに接した当業者は、ディスプレイの用途の中でも、極めて自然にフォルダブルなディスプレイへの適用も想起するものといえる。 したがって、引用発明の「二軸延伸フィルム」を「フォルダブルディスプレイ用」として用いることとして、相違点1に係る本件補正発明の構成を備えるようにすることは、当業者が容易に想到し得たことと認められる。 イ 相違点2について (ア) 本願の明細書の【0019】を参照すると次のとおり記載されている。 「本フィルムのTgが85℃以上であれば、ディスプレイ用途に本フィルムを用いた際にも変形することがないため、耐熱性に優れる。 一方、本フィルムのTgが150℃以下であれば、加工性にも適したものとなる。」 (イ) 引用文献1の【0020】には、次のとおり記載されている。 「本樹脂組成物のガラス転移温度が単一である場合、その温度は110℃以上、300℃以下である事が好ましく、115℃以上或いは290℃以下である事がより好ましく、120℃以上或いは280℃以下である事が更に好ましく、125℃以上或いは270℃以下である事が特に好ましく、130℃以上或いは260℃以下である事がとりわけ好ましい。本樹脂組成物のガラス転移温度がかかる範囲にあれば、本樹脂組成物は耐熱性と延伸成型性のバランスに優れる。」 (ウ) そうすると、相違点2については、単に測定方法をどの方法にしたかの相違でしかなく、技術上の意義の観点からの相違はないから、実質的な相違点とはいえない。 ウ 相違点3について 前記(3)ア(ウ)に示すとおり、「ポリエステルフィルム等のフィルムは、降伏点ひずみが大きい方が、折り曲げに伴う問題が生じにくいこと」は技術常識である(技術常識1)。 したがって、引用発明を「フォルダブルディスプレイ用」として用いる際には、当該フィルムの降伏点ひずみが大きいことが望ましいことは、当業者にとって自明である。 前記相違点3は、このような自明のものを含むものであるから、相違点3をもって進歩性を認めることはできない。 なお、本件補正発明における「8.0%以上」との数値も、当業者が想起し得ないような特別な値であるともいえない(例えば、引用文献2では、「8~50%」との数値が記載されている。)。 エ 相違点4について (ア) 前記(3)イ(イ)に示すとおり、「折り畳み式の画像表示装置に用いるためのフィルムの適正検査として、曲率半径が1.5mm程度となるような折り畳みを繰り返し行った後に外観を検査した場合に、異常が無ければ望ましいこと」は技術常識である(技術常識2)。 したがって、相違点4に係る本件補正発明の構成である「23℃における1000回の折り曲げ試験を屈曲半径(R)=1.5mmの条件で行った際、外観変化がないこと」は、当業者にとって明らかな、達成すべき結果をそのまま請求項に記載したものと認められる。 そうすると、そのような課題を想起すること自体に格別の困難性がないことは明らかであるから、相違点4に係る本件補正発明の構成は、当業者が容易に想到することができたものである。 (イ) また、相違点4については、次の理由からも進歩性を認める根拠とはならない。 本願明細書の段落【0027】によれば、「本発明者は、本発明において、降伏点ひずみが特定の数値以上であればひずみが発生しにくくなることを見出した。弾性変形領域(降伏点)を越えてひずんでしまった場合に、折れ跡やシワなどの変形跡が残ってしまい、外観不良や、材料特性そのものに影響が出てしまうと考えている。つまり、降伏点ひずみ量が大きければ大きいほど塑性変形が始まるまでのひずみ量が大きいため、大きなひずみが印加された場合でも、変形跡が付きにくく、変形耐性に優れていると考えている。」ということであるから、相違点3に係る本件補正発明の構成に至った結果として、相違点4に係る本件補正発明の構成も、同時に到達できたものと認められる。 オ 相違点3、4についての補足(想到容易性と実現容易性の相違) 相違点3、4のように、達成すべき課題をそのまま請求項に記載した場合の進歩性判断について、東京高判平成15年11月27日(平成12年(行ケ)429号)では、次のように述べる。 「本件第1発明は、特定の種類の材料が少なくとも部分的に用いられており、全体が製造された状態において、上記部分が一定の物性を持つめがねフレーム、の発明である。その製造方法でも、ましてや上記材料自体ないしその製造方法でもない。本件で考案の対象とされる本件第1発明は、上記のようなめがねフレームそのものであって、上記製造方法、材料自体ないしその製造方法の容易想到性や、実現の困難性は,基本的に本件において問題になるものではない。」 (本件第1発明は)「・・・つまるところ、これらの技術を用いて達成すべき課題をそのまま構成要件としただけのものであり、それ以上に具体的な要素は何ら有するものではない(このような課題を実現する具体的手段に想到することは困難であり得ても、このような課題に想到することには何らの困難もない。両者の区別は明確に認識されなければならない。)」 このような判断手法が正当であることは、特許法において定義される「発明」が「自然法則を利用した技術的思想の創作」であり、進歩性評価はこのような「発明」に対して行われるものであって、「発明品」の製造容易を評価するものではないから、当然のことといえる。 したがって、相違点3や相違点4の進歩性の評価においては、本件補正発明の実施品を現実に製造すること容易か否か(実現容易性)を検討するのではなく、本件補正発明に包摂されるものに思い至ることが容易か否か(想到容易性)を判断すべきものである。 カ 総合評価 前記ア~オにおいて検討したとおり、引用発明において、前記相違点1~4に係る本件補正発明の構成を備えるようにすることは、引用発明、技術常識1及び技術常識2に基づいて当業者が容易に想到し得たことである。 そして、相違点1~4を総合的に勘案しても、本件補正発明が奏する効果としては、当該構成のものとして当業者が予測・発見困難であり、かつ、格別顕著な効果を認めることはできない。 したがって、本件補正発明は、引用発明、技術常識1及び技術常識2に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 キ 請求人の主張について 請求人は、審判請求書及び上申書において、概略下記(ア)a及び(イ)aの主張をしているものと認められるが、それぞれ下記(ア)b及び(イ)bで検討するように、いずれも採用することができないものである。 (ア) 請求人の主張1について(用途) a 請求人の主張1の内容 本件補正発明は「フォルダブルディスプレイ用」であるところ、引用発明の用途は「フレキシブル基板」である。フレキシブル基板とは、フレキシブルプリント配線板のことであり、曲げてもその電気的特性が変化しない基板のことであって、単に柔らかく曲げることが可能なフィルムであることを意味し、本件補正発明で課題とするような耐折性を想定したものではなく、フォルダブルディスプレイも意味包含するとまではいえないことは明らかである。 b 請求人の主張1についての検討 引用発明を「フォルダブルディスプレイ用」とすることが想到容易であることは、前記アで検討したとおりであるから、請求人の主張1は、前記カの結論を左右するものではない。 (イ) 請求人の主張2について(延伸条件及び弛緩処理の有無) a 請求人の主張内容2 本件補正発明は、製膜条件の調整等によって降伏点ひずみを8.0%以上とすることで、「23℃における1000回の折り曲げ試験を屈曲半径(R)=1.5mmの条件」という極めて過酷な条件で行っても、「外観変化がない」耐折性に極めて優れたフィルムとなることを見出した発明であり、このような格別な効果は、耐折性を考慮しておらず、フォルダブルディスプレイの記載もなく、8.0%以上の降伏点ひずみを示唆していない引用発明からでは、到底想起することはできないものである。 b 請求人の主張2についての検討 前記ウにおいて検討したとおり、延伸フィルムの降伏点を8.0%以上とすることは、「ポリエステルフィルム等のフィルムは、降伏点ひずみが大きい方が、折り曲げに伴う問題が生じにくいこと」との技術常識に鑑みれば、引用発明を「フォルダブルディスプレイ用」とした際に、当業者が容易に想到することができたものと認められる。 また、前記エにおいてで検討したとおり、「23℃における1000回の折り曲げ試験を屈曲半径(R)=1.5mmの条件で行った際、外観変化がなければよいこと」自体は自明のことにすぎない。 なお、前記オにおいて検討したように、本件補正発明は「延伸フィルム」という「物」の発明であって、「製造方法」の発明ではないから、進歩性を否定するにあたり、成膜条件の調整等、延伸フィルムを実際に製造できるかという実現容易性まで求められるものではない。 以上のとおりであるから、前記請求人の主張2は採用できない。 キ 独立特許要件の判断のまとめ 以上検討のとおり、本願補正発明は、引用発明、技術常識1及び技術常識2に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 したがって、本件補正により請求項1についてする補正は、特許法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に適合しない。 4 本件補正の却下の決定の理由のむすび 前記3(5)オのとおり、本件補正は、同法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に違反するから、同法159条1項において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。 よって、前記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。 第3 本願発明について 1 本願発明について 本件補正は、前記第2のとおり却下したので、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、本件補正前の特許請求の範囲の請求項1(前記第2の1(1)参照)に記載された事項により特定されるとおりのものである。 2 原査定における拒絶の理由の概要 原査定の本願発明に対する拒絶の理由(進歩性の欠如)の概要は、次のとおりである。 理由(進歩性の欠如) 本願発明は、優先日前に発行された下記の引用文献に記載された発明に基づいて、優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。 記 引用文献1.特開2018-104496号公報(主たる引用文献) 3 引用文献1に記載された事項及び引用発明の認定等 引用文献1に記載された事項並びに引用発明、技術常識1及び技術常識2は、前記第2の3(2)ア並びに(2)イ、(3)ア(ウ)及び(3)イ(イ)において示したとおりである。 4 対比・判断 本願発明は、本件補正発明から、前記第2の2(1)に示した限定を省いたものである。 そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、その発明特定事項の一部を限定したものに相当する本件補正発明が、前記第2の3(5)において説示したとおり、引用発明、技術常識1及び技術常識2に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により引用発明、技術常識1及び技術常識2に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 第4 むすび 以上検討のとおり、本願発明は、特許法29条2項の規定により、特許を受けることができない。 したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。

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2024-001575

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