特許拒絶査定不服審判
2024-001414
キッチンタオルロール
- 審判番号
- 2024-001414
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2019-141512
- 請求日
- 2024年01月26日
- 審決日
- 2025年06月17日
- 公報発行日
- 2025年07月25日
- 結論
- 原査定取消(特許/登録すべき)
- 当事者
- 【請求人】日本製紙クレシア株式会社
- 【請求人代理人】杉村 憲司
- 【請求人代理人】杉村 光嗣
- 【請求人代理人】柿沼 公二
- 【請求人代理人】唐牛 乾
- 審判長/審判官
- 審判長 吉田 美彦
- 審判官 脇岡 剛
- 審判官 林 毅
- 分類
- P18 .113-WY (B31F) / P18 .121-WY (B31F) / P18 .536-WY (B31F)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第36条第4項第1号、特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2019-141512「キッチンタオルロール」拒絶査定不服審判事件〔令和 3年 2月22日出願公開、特開2021- 24124、請求項の数(5)〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
原査定を取り消す。
本願の発明は、特許すべきものとする。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、令和元年7月31日を出願日とする出願であって、令和5年3月31日付けで拒絶理由が通知され、令和5年7月24日に意見書及び手続補正書が提出され、令和5年10月30日付けで拒絶査定(原査定)がされ、これに対し、令和6年1月26日に拒絶査定不服審判の請求がされたものである。
第2 原査定の概要
原査定(令和5年10月30日付け拒絶査定)の拒絶の理由の概要は次のとおりである。
1 理由1(新規性欠如)
本願請求項1、3-5に係る発明は、以下の引用文献1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
2 理由2(進歩性欠如)
本願請求項1、3-5に係る発明は、以下の引用文献1に記載された発明に基いて、また、本願請求項2に係る発明は、以下の引用文献1、2に記載された発明に基いて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
3 理由3(実施可能要件違反)
この出願は、発明の詳細な説明の記載が、請求項1-5に係る発明の「キッチンタオルロール」を、当業者が過度な試行錯誤を要することなく製造することができる程度に明確かつ十分に記載されていないので、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。
(引用文献)
引用文献1:特開2019-013336号公報
引用文献2:特開2017-104499号公報
第3 本願発明
本願請求項1-5に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」ないし「本願発明5」という。)は、令和5年7月24日に提出された手続補正書に係る手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1-5に記載された事項により特定される発明であり、このうち、本願発明1は以下のとおりの発明である。
「 ドット状のエンボスパターンが付与されたシートをグルーで接着処理し、2プライに積層したキッチンタオルシートをロール状に巻取ったキッチンタオルロールであって、
前記キッチンタオルシートは、前記エンボスパターンとは異なる抄紙工程由来の凹凸のパターンを有しており、
前記エンボスパターンは前記抄紙工程由来の凹凸のパターン上に形成されており、前記エンボスパターンにおけるエンボスの深さ/キッチンタオルシート全体の紙厚の比が、0.05以上0.30以下であり、
2プライの坪量が32g/m2以上65g/m2以下、紙厚が1.6mm/10枚以上4.7mm/10枚以下、比容積が7cm3/g以上16cm3/g以下であり、
プライ剥離強度が0.05N/75mm以上2.0N/75mm以下であり、
2プライの1m2あたりの吸水量が155g以上520g以下であり、かつ、1gあたりの吸水量が4.3g以上9.5g以下であり、2プライ間の1m2あたりの吸水量が63g以上250g以下であり、
前記キッチンタオルロールの巻長が15m以上40m以下、巻直径が113mm以上180mm以下であることを特徴とする、キッチンタオルロール。」
なお、本願発明1の「1m2」は、「1m2」の誤記と認められる。
また、本願発明2-5は、本願発明1を減縮した発明である。
第4 理由1(新規性欠如)及び理由2(進歩性欠如)について
1 引用文献、引用発明等
(1)引用文献1について
ア 引用文献1記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献1には、図面とともに次の事項が記載されている。(下線は、強調のため当審が付与した。これ以降についても同様。)
「【0007】
従って本発明は、坪量を下げずにシートの吸水性に優れると共に1ロール当りの巻長を長くし、コストや生産性を損なわずにコアを潰れ難くし、持ち運びや保管時の省スペース性に優れた長尺のキッチンタオルロールの提供を目的とする。」
「【0022】
<凹凸>
本発明のキッチンタオルロール10(キッチンタオルシート10x)は、凹凸を複数有する。この凹凸は、例えばエンボス加工により施すことができる。本発明では、シートが2plyの場合シングルエンボス又はダブルエンボスとなるが、ダブルエンボスが好ましい。もちろん、公知のダブルハイトのエンボスロールを用いたり、シングルエンボスを複数回、施すことができる。又、シートが1plyの場合、シングルエンボスとなる。
ダブルエンボス加工は、2プライのシートにそれぞれエンボス加工し、各シートのエンボスの凸面同士、または、凸面と凹面を対向させるように2プライに積層したものである。ダブルエンボスにすることで、紙厚や比容積を高くし易く、吸水性をより高くしやすい。また、ダブルエンボスにする際は、エッジエンボスや糊によって2プライにすることができるが、糊を使用するとエンボスの形状を保ちやすくできるため好ましい。また、ダブルエンボスとしては、ネステッドエンボスが好ましい。 また、エンボスパターン(エンボスの大きさ、深さ、個数、面積率)を適宜変更することができる。
なお、本発明のキッチンタオルロールを構成するシートのプライ数は限定されないが、2~3プライが好ましく、2プライがより好ましい。」
「【0027】
図7にダブルエンボス加工装置の例を示す。エンボス加工装置においては、エンボス2の凸面40xが形成された凸エンボスロール40と、対向するゴム製抑えロールとの間に、ロール表面10a側のシートを通し、エンボス2を付与する。同様に、エンボス2の凸面40xが形成された凸エンボスロール40と、対向するゴム製抑えロールとの間に、ロール裏面10b側の1プライのシートを通し、エンボス2を付与する。そして、片方のシートのエンボスの凸面等に適宜糊(プライボンド)6を塗布した後、重ね合せロールにて、各シートのエンボスの凸面と凸面同士が対向するようにして2プライに重ねて接着され、適宜巻き取る。もちろん、10a側のシートがロール裏面、10b側のシートがロール表面側となっても良い。」
「【0046】
製品プライ数のシートの面積当たりの吸水量が105~250Water-g/m2であることが好ましい。吸水量が105Water-g/m2未満であると吸水性が低下し、250Water-g/m2を超えるとコストアップになったり、風合いが硬くなることがある。
吸水量が130~220Water-g/m2であることがより好ましく、150~190Water-g/m2であることがさらに好ましい。
【0047】
製品プライ数のシートの質量当たりの吸水量が3.2~5.4Water-g/gであることが好ましい。吸水量が3.2Water-g/g未満であると吸水性が低下し、5.4Water-g/gを超えると紙厚が高くなって巻直径DRも大きくなり、ロールホルダー等に収まり難くなることがある。
吸水量が3.6~4.9Water-g/gであることがより好ましく、3.9~4.5Water-g/gであることがさらに好ましい。」
「【0065】
キッチンタオルシートは、例えば以下のように、(1)抄紙及びクレーピング、(2)エンボス処理及びロール巻取り加工、の順で製造することができる。このうち、(2)については既に説明したので省略する。」
「【0078】
【表2】
[図:0001424204000001.jpg]
」
イ 引用発明
上記ア(特に、下線部と、【表2】の実施例22)より、引用文献1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。なお、「ply」と「プライ」は同じ意味であることが明らかであるので、「プライ」に統一した。
「 凹凸を複数有するキッチンタオルロールであって、
この凹凸はエンボス加工により施すことができ、シートが2プライの場合、ダブルエンボスが好ましく、ダブルエンボス加工は、2プライのシートにそれぞれエンボス加工し、各シートのエンボスの凸面同士を対向させるように2プライに積層したものであり、
エンボス加工装置においては、片方のシートのエンボスの凸面等に適宜糊(プライボンド)6を塗布した後、重ね合せロールにて、各シートのエンボスの凸面と凸面同士が対向するようにして2プライに重ねて接着され、適宜巻き取り、
キッチンタオルシートは、(1)抄紙及びクレーピング、(2)エンボス処理及びロール巻取り加工、の順で製造することができ、
実施例22は、
製品プライ数が2であり、
エンボスの深さが0.50mmであり、
製品プライ数当たりの坪量が41.2g/m2であり、紙厚が、2.09mm/10枚であり、比容積が10.1cm3/gであり、
製品プライ数のシートの面積当たりの吸水量が、212Water-g/m2であり、
製品プライ数のシートの質量当たりの吸水量が、5.1Water-g/gであり、
キッチンタオルロールの巻長が35m、巻直径が143mmである
ことを特徴とする、キッチンタオルロール。」
(2)引用文献2について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献2には、図面とともに次の事項が記載されている。
「【0023】
本実施形態のキッチンペーパーロール100は、2枚のシート11A、11Bが積層された2プライであり、各シート11A,11Bがクレープ紙で構成された紙製のキッチンペーパー1を紙管に巻き取ったものである。
【0024】
本実施形態に係るキッチンペーパー1は、両シート11A,11Bにエンボス12,12…が付与されており、その両シート11A,12Bのエンボス凸部の頂部12a,12bが対向するように位置し、そのエンボス凸部の頂部12a,12b同士が接着剤40により接着されて積層一体化されている。」
「【0037】
本実施形態に係るキッチンペーパー1のエンボス12の平面視の具体的形状やそのエンボス12の多数により描かれるエンボスパターンは限定されないが、好ましいエンボス12の形状は、接着剤40の付与性と各シート相互の接着性のために頂部12a,12bが平坦なものである。その場合、特に頂部12a,12bの面積が0.5~40.0mm2、より好適には0.75~4.0mm2、最も望ましくは1.0~2.0mm2であるのがよい。
【0038】
また、好適なエンボス12の深さDは、0.2~2.0mmである。0.2mm未満では十分な空隙13を確保できず、また、伸びの差による吸液時の嵩高発現効果、空隙向上効果、表面凹凸の発現効果、吸液性向上効果が発現し難くなる。また、2.0mmを超えるとエンボス12が潰れやすくなる。
【0039】
単位面積あたりのエンボス12の好適な個数(エンボス密度)は10~50個/m2である。10個未満では、各シート11A,11Bの伸び差による嵩高発現効果、空隙向上効果、表面凹凸の発現効果、吸液性向上効果が十分に発現しないおそれがある。50個を超えるとキッチンペーパー1が硬くなる。」
2 本願発明1について
(1)対比
以下、本願発明1と引用発明とを対比する。
ア 引用発明の「キッチンタオルロール」は、「各シートのエンボスの凸面同士、または、凸面と凹面を対向させるように2プライに積層したもの」であるところ、「エンボス」は、所定の“パターン”で構成されたものといえる。
よって、引用発明の「エンボス」と、本願発明1の「ドット状のエンボスパターン」とは、「エンボスパターン」である点において共通する。
また、引用発明の「シート」、「糊(プライボンド)6」、「接着」はそれぞれ、本願発明1の「シート」及び「キッチンタオルシート」、「グルー」、「接着処理」に相当する。
また、引用発明において、「キッチンタオルロール」は、「各シート」を「2プライに重ねて接着され」たものを「巻き取り」及び「ロール巻き取り加工」より製造されるものであるところ、当該「各シート」を「巻き取り」及び「ロール巻き取り加工」することは、本願発明1の「キッチンタオルシートをロール状に巻取」る処理に相当する。
そうすると、引用発明において「片方のシートのエンボスの凸面等に適宜糊(プライボンド)6を塗布した後、重ね合せロールにて、各シートのエンボスの凸面と凸面同士が対向するようにして2プライに重ねて接着され、適宜巻き取り」、「(1)抄紙及びクレーピング、(2)エンボス処理及びロール巻取り加工、の順で製造することができ」る、「エンボス加工により施」された「複数の凹凸を有するキッチンタオルロール」と、本願発明1の「ドット状のエンボスパターンが付与されたシートをグルーで接着処理し、2プライに積層したキッチンタオルシートをロール状に巻取ったキッチンタオルロール」とは、「エンボスパターンが付与されたシートをグルーで接着処理し、2プライに積層したキッチンタオルシートをロール状に巻取ったキッチンタオルロール」である点において共通する。
イ 引用発明において、「キッチンタオルロール」が「(1)抄紙及びクレーピング、(2)エンボス処理及びロール巻取り加工、の順で製造することができ」ることと、本願発明1において、「前記エンボスパターンは前記抄紙工程由来の凹凸のパターン上に形成されて」いることとは、「前記エンボスパターンは前記抄紙工程の後に形成されて」いることである点において共通する。(請求人は、令和5年7月24日に提出した意見書において、「出願当初明細書の段落[0045]には、(1)抄紙及びクレーピング、(2)エンボス処理、(3)ロール巻取り加工の順で製造する旨が記載されています。また、抄紙工程において、エンボスパターンとは異なる抄紙工程由来の凹凸のパターンがキッチンタオルシート1xに施され、その後にエンボス処理が行われることから、エンボスパターンは抄紙工程由来の凹凸のパターン上に形成されていることは記載されているに等しい事項です。」と主張している。)
ウ 引用発明の「前記エンボスパターンにおけるエンボスの深さ」、「キッチンタオルシート全体の紙厚」及び「紙厚」はそれぞれ、本願発明1の「エンボスの深さ」、「紙厚」に相当する。
そして、引用発明の「実施例22」において、「エンボスの深さが0.50mm」、「紙厚が、2.09mm/10枚」であるところ、その比は、0.50/2.09=0.239であるから、本願発明1の「前記エンボスパターンにおけるエンボスの深さ/キッチンタオルシート全体の紙厚の比が、0.05以上0.30以下」であることに含まれる。
エ 引用発明の「実施例22」は、「製品プライ数が2」であることを前提としているところ、引用発明の「製品プライ数当たりの坪量」は、本願発明1の「2プライの坪量」に相当する。
そうすると、引用発明において、「製品プライ数当たりの坪量が41.2g/m2」であることは、本願発明1の「2プライの坪量が32g/m2以上65g/m2以下」であることに含まれる。
オ 引用発明において、「紙厚が、2.09mm/10枚」であることは、本願発明1の「紙厚が1.6mm/10枚以上4.7mm/10枚以下」であることに含まれる。
カ 引用発明において、「比容積が10.1cm3/g」であることは、本願発明1の「比容積が7cm3/g以上16cm3/g以下」であることに含まれる。
キ 引用発明の「実施例22」は、「製品プライ数が2」であることを前提としているところ、引用発明の「製品プライ数のシートの面積当たりの吸水量」は、本願発明1の「2プライの1m2あたりの吸水量」に相当する。
そうすると、引用発明において、「製品プライ数のシートの面積当たりの吸水量が、212Water-g/m2」であることは、本願発明1の「2プライの1m2あたりの吸水量が155g以上520g以下」であることに含まれる。
ク 引用発明の「実施例22」は、「製品プライ数が2」であることを前提としているところ、引用発明の「製品プライ数のシートの質量当たりの吸水量」は、本願発明1の「2プライの」「1gあたりの吸水量」に相当する。
そうすると、引用発明において、「製品プライ数のシートの質量当たりの吸水量が、5.1Water-g/g」であることは、本願発明1の「1gあたりの吸水量が4.3g以上9.5g以下」であることに含まれる。
ケ 引用発明において、「キッチンタオルロールの巻長が35m、巻直径が143mmである」ことは、本願発明1の「前記キッチンタオルロールの巻長が15m以上40m以下、巻直径が113mm以上180mm以下であること」に含まれる。
(2)一致点、相違点
よって、本願発明1と引用発明とは、次の点において一致ないし相違する。
●一致点
「 エンボスパターンが付与されたシートをグルーで接着処理し、2プライに積層したキッチンタオルシートをロール状に巻取ったキッチンタオルロールであって、
前記エンボスパターンは前記抄紙工程の後に形成されており、前記エンボスパターンにおけるエンボスの深さ/キッチンタオルシート全体の紙厚の比が、0.05以上0.30以下であり、
2プライの坪量が32g/m2以上65g/m2以下、紙厚が1.6mm/10枚以上4.7mm/10枚以下、比容積が7cm3/g以上16cm3/g以下であり、
2プライの1m2あたりの吸水量が155g以上520g以下であり、かつ、1gあたりの吸水量が4.3g以上9.5g以下であり、2プライ間の1m2あたりの吸水量が63g以上250g以下であり、
前記キッチンタオルロールの巻長が15m以上40m以下、巻直径が113mm以上180mm以下であることを特徴とする、キッチンタオルロール。」
●相違点
(相違点1)
「エンボスパターン」が、本願発明1においては、「ドット状」であるのに対し、引用発明の「エンボス」は、どのような形状であるのかを具体的に特定していない点。
(相違点2)
本願発明1は、「前記キッチンタオルシートは、前記エンボスパターンとは異なる抄紙工程由来の凹凸のパターンを有しており」及び「前記エンボスパターンは前記抄紙工程由来の凹凸のパターン上に形成されており」との構成を備えるのに対し、引用発明は、「抄紙工程由来の凹凸パターン」に関する構成を具体的に特定していない点。
(相違点3)
本願発明1は、「プライ剥離強度が0.05N/75mm以上2.0N/75mm以下であり」との構成を備えるのに対し、引用発明は、「プライ剥離強度」について具体的に特定していない点。
(3)相違点についての判断
上記各相違点は、形式的なものではなく、実質的なものであるから、本願発明1は、引用文献1に記載された発明とはいえない。
また、相違点について、事案に鑑みて相違点3について先に検討する。
引用発明は、「坪量を下げずにシートの吸水性に優れると共に1ロール当りの巻長を長くし、コストや生産性を損なわずにコアを潰れ難くし、持ち運びや保管時の省スペース性に優れた長尺のキッチンタオルロールの提供を目的とする」(引用文献1の【0022】)ものであるところ、「プライ剥離強度」を改善することを目的としたものではない。また、引用文献1には、「実施例22」又はその他の実施例が、相違点3に係る本願発明1の「プライ剥離強度が0.05N/75mm以上2.0N/75mm以下」との構成を備えていることを記載又は示唆する記載はなく、また、当該構成を備えていることが、本願出願時における技術常識から自明ともいえない。
また、引用文献2にも、相違点3に係る本願発明1の上記構成は記載されておらず、「キッチンタオルロール」が当該構成を備えることが、本願出願時における技術常識であるとも認められない。
よって、相違点3に係る本願発明1の構成は、当業者が容易に想到し得たものではない。
したがって、相違点1及び2について検討するまでもなく、本願発明1は、当業者であっても、引用文献1に記載された発明に基いて容易に発明をすることができたものとはいえない。
3 本願発明2-5について
本願発明2-5は、相違点3に係る本願発明1の構成を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用文献1に記載された発明又は引用文献1及び2に記載された発明に基いて容易に発明をすることができたものとはいえない。
4 小括
以上のとおりであるから、原査定の理由1(新規性欠如)又は理由2(進歩性欠如)によって、本願を拒絶することはできない。
第5 理由3(実施可能要件)について
特許法第36条第4項第1号に規定する実施可能要件については、明細書の発明の詳細な説明が、当業者において、その記載及び出願当時の技術常識に基づいて、過度の試行錯誤を要することなく、特許請求の範囲に記載された発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されているかを検討すべきであるので、この考え方に従って、以下検討する。
まず、本願発明1について検討する。
また、本願明細書の【0018】の記載「本発明のキッチンタオルロール1は、ドット状のエンボスパターンが付与されたシートをグルーで接着処理し、2プライに積層したキッチンタオルシート1xをロール状に巻取ったキッチンタオルロール1である。」、同【0045】の記載「キッチンタオルシート1x及びキッチンタオルロール1は、例えば(1)抄紙及びクレーピング、(2)エンボス処理、(3)ロール巻取り加工の順で製造することができる。製造工程においては、スルーエアードライヤー技術を用いないことが好ましい。このとき、抄紙工程において、上述のエンボスパターンとは異なる抄紙工程由来の凹凸のパターンがキッチンタオルシート1xに施される。」を参酌すれば、明細書には、本願発明1の「ドット状のエンボスパターンが付与されたシートをグルーで接着処理し、2プライに積層したキッチンタオルシートをロール状に巻取ったキッチンタオルロールであって、前記キッチンタオルシートは、前記エンボスパターンとは異なる抄紙工程由来の凹凸のパターンを有しており、前記エンボスパターンは前記抄紙工程由来の凹凸のパターン上に形成されており、」との構成を実施するための構成が具体的に記載されているといえる。
また、本願明細書の【0050】~【0052】の表1~表3には、実施例1~26により、本願発明1の「前記エンボスパターンは前記抄紙工程由来の凹凸のパターン上に形成されており、前記エンボスパターンにおけるエンボスの深さ/キッチンタオルシート全体の紙厚の比が、0.05以上0.30以下であり、2プライの坪量が32g/m2以上65g/m2以下、紙厚が1.6mm/10枚以上4.7mm/10枚以下、比容積が7cm3/g以上16cm3/g以下であり、プライ剥離強度が0.05N/75mm以上2.0N/75mm以下であり、2プライの1m2あたりの吸水量が155g以上520g以下であり、かつ、1gあたりの吸水量が4.3g以上9.5g以下であり、2プライ間の1m2あたりの吸水量が63g以上250g以下であり、前記キッチンタオルロールの巻長が15m以上40m以下、巻直径が113mm以上180mm以下であること」との構成により良好な評価結果が得られることが記載されており、また、本願明細書の【0025】の記載「キッチンタオルシート1xの2プライの坪量は、32g/m2以上65g/m2以下である。2プライの坪量が32g/m2未満であると、キッチンタオルシート1xの吸水量に劣る。」、同【0027】の記載「キッチンタオルシート1xの紙厚は1.6mm/10枚以上4.7mm/10枚以下である。紙厚が1.6mm/10枚未満であると、キッチンタオルシート1xの吸水量に劣り、4.7mm/10枚を超えると、嵩張る割に吸水量が向上しにくい。」、同【0029】の記載「ドット状のエンボスパターンが表面1aに施されることで、該エンボスパターンのエンボス部にグルーを塗布して接着処理することができ、キッチンタオルシート1xのプライ剥がれが起こりにくくなり、吸水量を一定の範囲とすることができる。エンボスパターンにおいて、大きさが1mm2以上40mm2以下の面積であるエンボスの単位面積100cm2あたりの個数が、20個以上1800個以下であることが好ましい。エンボスの個数が20個未満であると、本願のような吸水性が良好なキッチンタオルシート1xの場合、プライ同士が剥がれやすくなる。エンボスの個数が1800個を超えると、キッチンタオルシート1xの紙が潰れて、吸水量に劣る。」、同【0030】の記載「エンボスパターンにおいて、大きさが1mm2以上40mm2以下の面積であるエンボスの深さが、0.07mm以上0.80mm以下であることが好ましい。エンボスの深さが0.07mm未満であると、キッチンタオルシート1xの2プライ間の1m2あたりの吸水量が低くなり、全体として吸水量に劣る。深さが0.80mmを超えると、キッチンタオルシート1xの比容積が高くなり、嵩張る割に吸水量が向上しにくくなる。」、同【0034】の記載「キッチンタオルシート1x全体の紙厚に対する、エンボスパターンにおけるエンボスの深さの比である、エンボスパターンにおけるエンボスの深さ/キッチンタオルシート1x全体の紙厚の比が、0.05以上0.30以下であることが好ましい。比が0.05未満であると、キッチンタオルシート1xの2プライ間の1m2あたりの吸水量が低くなり、全体として吸水量に劣り、かつ、プライが剥がれやすくなる。比が0.30を超えると、嵩張る割に吸水量が向上しにくくなる。」、同【0041】の記載「キッチンタオルシート1xの比容積は7cm3/g以上16cm3/g以下である。キッチンタオルシート1xの比容積が7cm3/g未満であると、キッチンタオルシート1xの吸水量に劣り、16cm3/gを超えると、嵩張る割に吸水量が向上しにくい。」、同【0045】の記載「抄紙工程の一部において、脱水ロール31とヤンキードライヤー32の間に配置される、ベルトプレス部30にて凹凸を付与することができる。ベルトプレス部30では、湿紙34と凹凸ベルト33(凹凸ベルト33は、ベルトプレス部30とヤンキードライヤー32をループしている)を一緒にプレスすることで、湿紙に凹凸のパターンを付与することができる。また、凹凸のパターンは、ベルトのパターン(細かいパターン、荒いパターン)を変更することで、適宜変更することができる。凹凸のパターンを変更すると比容積(紙厚)が変わるが、原紙の比容積(紙厚)が後述する数値範囲内になるようなパターンを選定することが好ましい。」を参酌すれば、明細書には、2プライの坪量、エンボスパターン(面積、個数、深さ)、紙厚に対するエンボスパターンにおけるエンボスの深さの比、比容積により、給水量及びプライ剥離強度を調整することができること、並びに、抄紙工程において形成される凹凸パターンにより比容積を調整することができることが具体的に記載されている。加えて、坪量、紙厚、エンボスパターンの調整方法は、特に文献等を挙げるまでもない技術常識と解される。
そうすると、明細書には、「前記エンボスパターンは前記抄紙工程由来の凹凸のパターン上に形成されており、前記エンボスパターンにおけるエンボスの深さ/キッチンタオルシート全体の紙厚の比が、0.05以上0.30以下であり、2プライの坪量が32g/m2以上65g/m2以下、紙厚が1.6mm/10枚以上4.7mm/10枚以下、比容積が7cm3/g以上16cm3/g以下であり、プライ剥離強度が0.05N/75mm以上2.0N/75mm以下であり、2プライの1m2あたりの吸水量が155g以上520g以下であり、かつ、1gあたりの吸水量が4.3g以上9.5g以下であり、2プライ間の1m2あたりの吸水量が63g以上250g以下であり、前記キッチンタオルロールの巻長が15m以上40m以下、巻直径が113mm以上180mm以下であること」との構成を実施するための構成が具体的に記載されているといえる。
以上から、発明の詳細な説明は、当業者において、その記載及び出願当時の技術常識に基づいて、過度の試行錯誤を要することなく、本願発明1を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されているといえる。
本願発明2-5についても同様である。
したがって、原査定の理由3(実施可能要件違反)によって本願を拒絶することはできない。
第6 むすび
上記第4及び第5のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
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2024-001414