特許無効審判
2023-800069
断面画像検出装置
- 審判番号
- 2023-800069
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 無効審判(無効の審決)
- 出願番号
- 特願2009-164315
- 登録番号
- 5231350
- 請求日
- 2023年10月31日
- 審決日
- 2024年12月18日
- 公報発行日
- 2026年06月26日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】デンツプライシロナ インコーポレイテッド
- 【請求人代理人】阿部 達彦
- 【請求人代理人】崔 允辰
- 【請求人代理人】▲高▼橋 史生
- 【請求人代理人】田中 研二
- 【請求人代理人】塚田 悠貴
- 【請求人代理人】松本 慶
- 【被請求人】株式会社 アイキャット
- 【被請求人代理人】田中 宏樹
- 【被請求人代理人】山本 健策
- 【被請求人代理人】福永 聡
- 【被請求人代理人】本田 輝人
- 【被請求人代理人】池田 有沙
- 審判長/審判官
- 審判長 三崎 仁
- 審判官 樋口 宗彦
- 審判官 渡▲辺▼ 純也
- 分類
- P1113.113-Y (A61B) / P1113.121-Y (A61B) / P1113.536-Y (A61B) / P1113.537-Y (A61B) / P1113.14 -Y (A61B) / P1113.55 -Y (A61B)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第44条第1項、特許法第123条第1項第2号、特許法第29条第2項、特許法第123条第1項第4号、特許法第29条第1項、特許法第17条の2第3項、特許法第36条第4項第1号、特許法第36条第6項第1号、特許法第36条第6項第2号、特許法第163条第3項、特許法第168条第5項、特許法第168条第6項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
上記当事者間の特許第5231350号発明「断面画像検出装置」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
審判費用は、請求人の負担とする。
理由
理 由
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
審判費用は、請求人の負担とする。
理 由
第1.請求の趣旨及び答弁の趣旨
1 請求の趣旨
次を結論とする審決を求める。
(1)特許第5231350号の請求項1~2に係る発明についての特許を無効とする。
(2)審判費用は被請求人の負担とする。
2 答弁の趣旨
次を結論とする審決を求める。
(1)本件審判請求は成り立たない。
(2)審判費用は請求人の負担とする。
第2.手続の経緯の概略
1 出願分割の経緯の概略
本件無効審判の請求に係る特許第5231350号(以下「本件特許」という。)に係る出願(以下「本件特許出願」という。)は、平成20年7月21日に出願した特願2008-187993号(以下「親出願」という。)の一部を特許法第44条第1項の規定により平成21年7月12日に新たな特許出願としたものであって、該親出願は、2005年(平成17年)9月26日(優先権主張 平成16年9月24日(以下「優先日」という。)、平成17年3月9日)を国際出願日とする特願2006-536445号(以下「原出願」という。)の一部を特許法第44条第1項の規定により新たな特許出願としたものである。
2 本件特許の手続の経緯の概略
(1)本件特許の出願から設定登録までの経緯
本件特許の請求項1~2に係る発明についての、出願から本件無効審判請求の前までの手続の経緯の概略は、次のとおりである。ここで、原出願・親出願の手続経緯の一部について、「※」印を付して共に示した。
※平成17年 9月26日 :原出願 国際出願日
(特願2006-536445号)
(優先権主張:平成16年9月24日(以下「優先日」)
※平成20年 7月21日 :親出願 出願日
(特願2008-187993号)
平成21年 7月12日 :本件特許出願
(特願2009-164315号)
※平成21年 9月8日付け:親出願 特許査定)
平成22年10月25日付け:拒絶理由通知
平成23年 1月21日 :意見書・手続補正書の提出
(手続補正書1)
同年 4月 8日付け:拒絶理由通知(最後)
同年 6月13日 :手続補正書の提出
(手続補正書2)
同年 9月 2日付け:拒絶査定
同年 12月23日 :拒絶査定不服審判の請求に係る
審判請求書の提出
(以下「不服審判請求書」という。)
平成24年 2月21日 :不服審判請求書についての
手続補正書の提出
平成25年 2月20日付け:審決(原査定取消)
同日付け :特許査定
(特許法第163条第3項で準用する同第51条の規定による。)
同年 3月29日 :設定登録
以下、平成23年1月21日提出の手続補正書を「手続補正書1」、同年6月13日提出の手続補正書を「手続補正書2」という。
(2)本件無効審判の手続の経緯
本件無効審判における手続の経緯の概略は、以下のとおりである。
令和5年10月31日 :審判請求書の提出
(以下単に「審判請求書」という。)
令和6年 3月 5日 :答弁書の提出
同年 7月 1日付け:審理事項通知
同年 8月20日付け:口頭審理陳述要領書の提出(請求人)
同日付け :口頭審理陳述要領書の提出(被請求人)
同年 9月 3日 :第1回口頭審理
なお、本件に関連する、東京地裁 令和05(ワ)70096号 侵害訴訟事件について、東京地方裁判所より特許庁長官に対し特許法168条第5項に基づく本件特許(特許5231350号)についての無効抗弁の通知があったことから、特許法第168条第6項に基づく無効抗弁に関する書面の写し送付を、裁判所に求めることに替えて被請求人に求めた。被請求人はこれに応じ、上申書添付の形式にて無効抗弁に係る原被告の準備書面計4通を第1回口頭審理と同日に提出した。本審決において該各準備書面の記載事項を参照することはなく、前記上申書においても、本件無効審判についての被請求人の新たな主張はなされていない。
前記添付された準備書面の内訳は以下のとおり。
原告準備書面(4)・(5)
被告準備書面(4)・(5)
第3.本件発明
1 本件発明
本件特許の請求項1~2に係る発明(以下、請求項の番号に従って「本件発明1」などという。また、これらを総称して「本件発明」という。)は、それぞれ本件特許の特許請求の範囲の請求項1~2に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、請求項1~2の記載は、次のとおりである。
「 【請求項1】
ディスプレイ上に表示された歯列を含む上顎部及び/又は下顎部の3次元撮影画像上に、歯科用インプラントを任意に位置決めすることで、基準軸としての歯科用インプラント長軸を含む所定の平面領域の画像を生成する断面画像検出装置であって、
前記歯科用インプラントは、前記ディスプレイ上を移動させることで任意に位置決められ、該歯科用インプラントが任意に位置決めされると前記平面領域も位置決められ、
また、前記歯科用インプラントは、
上顎部及び/又は下顎部の座標系を固定した状態で任意の方向に傾斜させることができ、且つ前記平面領域は前記歯科用インプラントとともに傾斜させることができ、
前記平面領域は前記歯科用インプラント長軸を中心に、軸周りに回転させることができる、ことを特徴とする断面画像検出装置。
【請求項2】
前記歯科用インプラントの傾斜に拘わらず、前記平面領域を表示するディスプレイ上に表示される断面画像は、基準となる咬合平面を固定状態で表示させる、ことを特徴とする請求項1記載の断面画像検出装置。」
2 本件発明の分説
説示の便宜のため、本件発明について各構成単位ごとに「A」等の分説記号を付して次のとおり分説することとする。以下、該各構成単位について分説記号を用い「構成要件A」などと呼ぶことがある。
「 【請求項1】
A ディスプレイ上に表示された歯列を含む上顎部及び/又は下顎部の3次元撮影画像上に、歯科用インプラントを任意に位置決めすることで、基準軸としての歯科用インプラント長軸を含む所定の平面領域の画像を生成する断面画像検出装置であって、
B1 前記歯科用インプラントは、前記ディスプレイ上を移動させることで任意に位置決められ、
B2 該歯科用インプラントが任意に位置決めされると前記平面領域も位置決められ、
C また、前記歯科用インプラントは、
上顎部及び/又は下顎部の座標系を固定した状態で任意の方向に傾斜させることができ、
D 且つ前記平面領域は前記歯科用インプラントとともに傾斜させることができ、
E 前記平面領域は前記歯科用インプラント長軸を中心に、軸周りに回転させることができる、ことを特徴とする
F 断面画像検出装置。
【請求項2】
G 前記歯科用インプラントの傾斜に拘わらず、前記平面領域を表示するディスプレイ上に表示される断面画像は、基準となる咬合平面を固定状態で表示させる、ことを特徴とする
H 請求項1記載の断面画像検出装置。」
第4.請求人の主張及び証拠方法
請求人の主張及び証拠方法については以下のとおりである。
ここで、各証拠については、例えば「甲第1号証」については「甲1」、「甲第2-1号証」については「甲2の1」のように略称する(以下同様。)。
1 請求人の主張の概要
請求人が主張する無効理由は、第1回口頭審理調書 審判長欄の2 において整理し、その要点を記載した、次のとおりのものである。
(1)無効理由1(新規性及び進歩性の欠如)
ア 無効理由1-1(甲1に記載された発明に基づく進歩性欠如)
本件発明は、甲1に記載された発明(甲1発明)、並びに、甲3~5の記載により裏付けられる周知技術1、甲2の1・甲2の2の記載により裏付けられる公知発明1、甲3・6・7・8の記載により裏付けられる周知技術2、及び甲4・5の記載事項に基づいて、当業者が容易に発明することができたものである。
よって、本件発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、本件発明に係る特許は、特許法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきものである。
イ 無効理由1-2(甲2の1・甲2の2に記載された公知発明に基づく進歩性欠如)
本件発明は、公知発明1、並びに、甲1・10~12の記載により裏付けられる周知技術3、甲1発明、及び周知技術2に基づいて、当業者が容易に発明することができたものである。
よって、本件発明1は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、本件発明1に係る特許は、特許法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきものである。
ウ 無効理由1-3(甲3に記載された発明に基づく進歩性欠如)
本件発明は、甲3に記載された発明(甲3発明)、並びに、甲1発明、及び公知発明1に基づいて、当業者が容易に発明することができたものである。
よって、本件発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、本件発明に係る特許は、特許法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきものである。
エ 無効理由1-4(甲13に記載された発明に基づく新規性及び進歩性の欠如)
本件審判請求書の無効理由1-4に係る7(4)カ及び無効理由4に係る7(4)ケの分割要件違反に係る(ウ)の記載事項、並びに7(1)の表中「無効理由1-4」項の記載事項を総合すると、第1回口頭審理調書の「審判長 2」の「無効理由1-4」の項に記載したとおり、請求人の無効理由1-4の主張趣旨は以下のとおりのものであると認められる。
本件発明1は、甲13に記載された甲13-1発明と同一である。また、本件発明1は、甲13-1発明に基づいて当業者が容易に想到し得たものである。
本件発明2は、甲13に記載された甲13-2発明と同一である。また、本件発明2は、甲13-2発明に基づいて当業者が容易に想到し得たものである。
よって、本件発明1及び本件発明2は、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものである。
また、本件発明1及び本件発明2は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
したがって、本件発明に係る特許は、特許法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきものである。
ただし、本件特許出願が、手続補正書1による明細書の補正により、原出願の出願当初明細書等に記載された事項の範囲を超えるものとなり、また、親出願の記載事項を超える内容を含むために、本件特許に係る出願は、特許法第44条第1項柱書に規定する分割出願の要件を満たさないから、出願の遡及効は認められない。よって、本件特許の特許要件は、現実の出願日である平成21年7月12日を基準として判断されるべきものである。
(2)無効理由2(実施可能要件違反)
本件発明においては、「所定の平面領域の画像を生成する断面画像検出装置」(構成要件A)と記載され、歯科用インプラント及び平面領域が位置決め、傾斜、及び回転可能であるとして、歯科用インプラント及び平面領域の概念的な挙動が記載されている(構成要件B、D及びE)。
しかしながら、本件特許明細書の【発明の詳細な説明】からは、このような歯科用インプラント及び平面領域の概念的な挙動を、ハードウェアあるいはソフトウェアによってどのように実行又は実現されるのか把握することができない。
したがって、本件特許明細書の【発明の詳練な説明】は、当業者が本件発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものではなく、実施可能要件、すなわち特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たさない。
したがって、本件発明に係る特許は、特許法第123条第1項第4号に該当し、無効とすべきものである。
(3)無効理由3(発明該当性欠如)
本件発明は、3次元画像上で歯科用インプラントを任意に動かすことで、当該歯科用インプラント長軸を含む所定の平面領域の画像を生成するという人為的取り決めに基づく仕組みが特定されているにすぎず、「自然法則を利用した技術的思想の創作」に該当するといえない。よって、本件発明は、特許法第29条第1項柱書に規定する要件を満たさない。
したがって、本件発明に係る特許は、特許法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきものである。
(4)無効理由4(新規事項追加)
手続補正書1によりなされた[発明の詳細な説明]における補正(以下「補正1」という。)は、補正前の【0046】~【0049】に記載された「歯列欠損部に歯冠画像208を嵌合させることを前提として、歯冠画像208に付随するインプラント、基準軸206、および平面領域204の操作を行うことができ、歯列欠損箇所に対して歯冠の埋入位置を確認しながら断面画像を取得することができる」という技術的事項を、「歯冠画像206の有無にかかわらず、ディスプレイ上で歯科用インプラント206自体を任意に移動させて位置決めする」という技術的事項に置き換えるものである。
また、本件特許の出願当初明細書等には、歯冠画像208とは独立してインプラント、基準軸206、及び平面領域204を移動させる態様については、何ら記載されていない。
また、前記補正1前の【0046】~【0049】に記載された、歯列欠損部に歯冠画像208を位置決めした上で、歯冠画像208に付随するインプラント、基準軸206、及び平面領域204に基づいて断面画像を取得するという技術的事項は、「歯列欠損箇所に対する歯冠の埋入位置を確認しながら断面画像を取得する」という課題を解決する点に技術的意義を有し、当該課題を解決するために必要不可欠な事項である。これに対し、上記補正1後の技術的事項は、補正前の上記技術的意義を失わせるものであるので、補正前の記載事項とは全く異なる新たな技術的事項である。
したがって、補正1は、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものでなく、また、これらすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入するものであり、特許法第17条の2第3項の規定に違反するものである。
したがって、特許法第17条の2第3項の規定に違反する特許出願に対してされた本件発明に係る特許は、特許法第123条第1項第1号に該当し、無効とすべきものである。
(5)無効理由5(サポート要件違反)
本件発明は下記ア~エのとおり、サポート要件(特許法第36条第6項第1号に規定する要件)を満たさない。
したがって、本件発明に係る特許は、特許法第123条第1項第4号に該当し、無効とすべきものである。
ア 歯科用インプラントの位置決めについて
本件発明は、歯冠画像を使用する点、歯科用インプラントが歯冠画像と一体に移動して位置決めされる点、及び歯科用インプラン卜を歯列欠損箇所に位置決めする点、が特定されていないので、歯列欠損部に歯科用インプラントを埋入するという課題に照らして、サポート要件を満たさない。
イ 回転について
本件発明は、平面領域が歯科用インプラント長軸を中心に歯科用インプラントと独立して回転する態様を含むと解釈し得る記載ぶりとなっているが、【発明の詳細な説明】には、平面領域と歯科用インプラント長軸とが連動して回転する態様のみが記載され、独立して回転することは記載がない。よって、本件発明は、サポート要件を満たさない。
ウ 頬舌方向の傾斜について
本件発明は、歯科用インプラントを頬舌方向に傾斜させる場合には平面領域を歯科用インプラントとともに傾斜させない点が特定されていないので、「基準軸206の傾斜が頬舌方向であるときには歯科医師にとって基準軸206周りの情報は不要若しくは却って判断を困難にさせる情報となる」という課題に照らして、サポート要件を満たさない。
エ 人体情報抽出装置について
【発明の詳細な説明】には、位置決め部材を用いた人体情報抽出装置により抽出された人体情報に基づいて3次元画像の断面画像を検出する装置のみが記載されている。従って、位置決め部材の装着を前提としない態様を含む本件発明は記載されていない。
(6)無効理由6(明確性違反)
本件発明は下記ア~エのとおり、明確性要件(特許法第36条第6項第2号に規定する要件)を満たさない。
したがって、本件発明に係る特許は、特許法第123条第1項第4号に該当し、無効とすべきものである。
ア 位置決め、傾斜、及び回転について
本件発明では、平面領域の位置決め、傾斜、及び回転と、生成される平面領域の画像との関係が明確ではなく、平面領域の傾斜及び回転を行う技術的意味も不明確である。
イ 平面領域の画像について
本件発明では、「平面領域の画像」と「断面画像」との関係、及び「平面領域の画像」と「平面領域」の関係が明確ではない。
ウ 基準軸について
本件発明における「基準軸」とは、何の基準を意味するのか不明である。
エ ディスプレイについて
本件発明では、記載される物理的構成要素である「ディスプレイ」及び「断面画像検出装置」との関係が明確ではなく、歯科用インプラントをどのように制御するものであるか不明である。
2 証拠方法
請求人は、請求書に添付して下記甲1~甲14(各枝番含む)を、口頭陳述要領書(請求人)に添付して下記甲15~甲18の5(各枝番含む)を、それぞれ提出した。これらの証拠方法は、第1回口頭審理調書に記載されているとおり、すべて書証申出されたものであり、被請求人は、その成立を認めている。
甲1:R.Cucchiara et al.、「An image analysis approach for automatically re-orienteering CT images for dental implants」、Computerized Medical Imaging and Graphics 28 (2004) 、p185?201
甲1の2:R.Cucchiara et al.、「An image analysis approach for automatically re-orienteering CT images for dental implants」、Computerized Medical Imaging and Graphics 28 (2004) 、p185?201、[online]、[令和5年11月28日検索]、インターネット<URL: https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S0895611104000254>
甲2の1:株式会社横河マテリアライズ、「SimPlant 8.1 Training Manual(第2版)」、2003年8月20日(発行日)
甲2の2:審判請求人代理人 田中研二、「写真報告書-SimPlant 8.1の動作等-」、令和5年10月31日(動作確認実施日:令和5年8月22日)
甲3:特開2003-245289号公報
甲4:欧州特許出願公開第1036543号明細書
甲5:Lewis S. Benjamin、「THE EVOLUTION OF MULTIPLANAR DIAGNOSTIC IMAGING:PREDICTABLE TRANSFER OF PREOPERATIVE ANALYSIS TO THE SURGICAL SITE」、Journal of Oral Implantology、Vol.XXVIII、No.Three(2002)、p135-144
甲6:特開2001-51593号公報
甲7:国際公開第03/084407号
甲8:特開2002-11000号公報
甲9:Kris Verstreken et al.、「An Image-Guided Planning System for Endosseous Oral Implants」、IEEE TRANSACTIONS ON MEDICAL IMAGING, VOL. 17, NO. 5, OCTOBER(1998)、p842-852
甲10:Munetaka Naitoh et al.、「Measurement accuracy of reconstructed 2-D images obtained by multi-slice helical computed tomography」、Clin. Oral Impl. Res. 15(2004)、p570?574
甲10の2:Munetaka Naitoh et al.、「Measurement accuracy of reconstructed 2-D images obtained by multi-slice helical computed tomography」、Clin. Oral Impl. Res. 15(2004)、abstract、2004年7月14日、[online]、インターネット<URL: https://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1111/j.1600-0501.2004.01034.x>
甲11:R.Cucchiara et al.、「Enhancing implant surgery planning via computerized image processing」、International Journal of Computerized Dentistry、Vol.4、No.1、2001年1月、p9-24
甲12:国際公開第03/037189号
甲13:特開2008-253808号公報
甲14:再公表特許WO2006/033483号公報
甲15の1:「インプラント治療計画とシミュレーション」(株式会社横河マテリアライズ社の「SimPlant」製品紹介ページ)、[online]、インターネット<URL: http://www.simplant.jp/dentist/index.htm>のウェイバックマシン(Wayback Machine)<URL:https://web.archive.org/>によるウェブページ出力物、2003年9月20日(登録日)、2024年8月2日(出力日)
甲15の2:「インプラント治療計画とシミュレーション」(株式会社横河マテリアライズ社の「SimPlant」製品紹介ページ)、[online]、インターネット<URL: http://www.simplant.jp/dentist/simplant/pindex.htm>の目次ページのウェイバックマシン(Wayback Machine)<URL:https://web.archive.org/>によるウェブページ出力物、2003年9月20日(登録日)、2024年8月2日(出力日)
甲15の3:「インプラント治療計画とシミュレーション」(株式会社横河マテリアライズ社の「SimPlant」製品紹介ページ)、[online]、インターネット<URL: http://www.simplant.jp/dentist/simplant/pindex.htm>の「SimPlantとは?」と題するページのウェイバックマシン(Wayback Machine)<URL:https://web.archive.org/>によるウェブページ出力物、2003年9月20日(登録日)、2024年8月2日(出力日)
甲15の4:「インプラント治療計画とシミュレーション」(株式会社横河マテリアライズ社の「SimPlant」製品紹介ページ)、[online]、インターネット<URL: http://www.simplant.jp/dentist/simplant/pindex.htm>の「SimPlant利用ガイド」と題するページのウェイバックマシン(Wayback Machine)<URL:https://web.archive.org/>によるウェブページ出力物、2003年9月20日(登録日)、2024年8月2日(出力日)
甲15の5:「インプラント治療計画とシミュレーション」(株式会社横河マテリアライズ社の「SimPlant」製品紹介ページ)、[online]、インターネット<URL: http://www.simplant.jp/dentist/simplant/pindex.htm>の「SimPlantの価格」と題するページのウェイバックマシン(Wayback Machine)<URL:https://web.archive.org/>によるウェブページ出力物、2003年9月20日(登録日)、2024年8月2日(出力日)
甲15の6:「インプラント治療計画とシミュレーション」(株式会社横河マテリアライズ社の「SimPlant」製品紹介ページ)、[online]、インターネット<URL: http://www.simplant.jp/dentist/simplant/pindex.htm>の「SimPlantの動作環境」と題するページのウェイバックマシン(Wayback Machine)<URL:https://web.archive.org/>によるウェブページ出力物、2003年9月20日(登録日)、2024年8月2日(出力日)
甲16:デンツプライシロナ株式会社 営業本部 大坪力、「陳述書」、令和6年8月16日
甲17:審判請求人代理人 田中研二、「甲2の2で使用したSimPlant 8.1の操作画面のスクリーンキャプチャ画像」、令和6年8月15日(撮影日)
甲18の1:日本文教出版、「「情報の科学」教科書PDF」と題する
ウェブページ、[online]、インターネット<URL:https://www.nichibun-g.co.jp/textbooks/joho/2013_shidousho/download/pdf_25JK_06.pdf>、令和6年8月14日(出力日)
甲18の2:「第19章 ソフトウェア」と題するウェブページ、平成30年3月30日(作成日・最終更新日時)、[online]、インターネット<URL:https://www.toyoeiwa.ac.jp/ksj/19.pdf>、令和6年8月14日(出力日)
甲18の3:シフトシステム株式会社、「一週間で身につくコンピュータリテラシ 第3日目:ソフトウェア1」と題するウェブページ、[online]、インターネット<URL:https://sevendays-study.com/computer-literacy/day3.html>、令和6年8月14日(出力日)
甲18の4:ITmedia、「Windowsの互換性テクノロジの仕組み(前編)」と題するウェブページ、[online]、インターネット<URL:https://atmarkit.itmedia.co.jp/fwin2k/tutor/wcompat01/wcompat01_01.html>、令和6年8月14日(出力日)
甲18の5:Microsoft、「古いアプリやプログラムを Windows と互換性のあるものにする」と題するウェブページ、[online]、インターネット<URL:https://support.microsoft.com/ja-jp/windows/古いアプリやプログラムを-windows-と互換性のあるものにする-783d6dd7-b439-bdb0-0490-54eea0f45938>、令和6年8月14日(出力日)
第5.被請求人の主張及び証拠方法
1 被請求人の主張の概要
本件発明には、請求人が主張する各無効理由は存在しない。
ここで、各証拠については、例えば「乙第1号証」については「乙1」のように略称する。
2 証拠方法
被請求人は、答弁書に添付して下記乙1~乙4を提出した。これらの証拠方法は、第1回口頭審理調書に記載されているとおり、すべて書証申出されたものであり、請求人は、その成立を認めている。
乙1:医療法人さかの歯科、「ワックスアップについて」と題するウェブページ、[online]、インターネット<URL: https://sakanoshika.com/blog/%E3%83%AF%E3%83%83%E3%82%AF%E3%82%B9%E3%82%A2%E3%83%83%E3%83%97%E3%81%AB%E3%81%A4%E3%81%84%E3%81%A6>、令和5年11月30日(印刷日)
乙2:Foundation for Oral Rehabilitation、「診断用模型およびワックスアップ」と題するウェブページ、[online]、インターネット<URL: https://www.for.org/ja/treat/treatment-guidelines/single-tooth/diagnostics/prosthodontic-tools/zhenduanyongmoxingoyohiwatsukusuatsufu>、令和5年11月30日(印刷日)
乙3:九州歯科大学、「ステントの作成方法」と題するウェブページ、[online]、インターネット<URL: http://www2.kyu-dent.ac.jp/depart/hoshasen/stmaking.html>、令和5年11月30日(印刷日)
乙4:東京地裁令和5年(ワ)第70096号 被告準備書面(1)、令和5年6月21日裁判所提出
(合議体註:当該事件の被告は本件審判請求の請求人、同原告は同被請求人)
第6.当審の判断
1 甲号証の記載事項
(1)甲1の記載
ア 甲1の記載事項
甲1には次の記載がある。摘記記載に続く括弧内に当審訳を記載した(他の英文甲号証についても同様。)。なお、当審訳における下線は、以下の2に関与する箇所に付与したものである(以下同様)。
・記載1-185-1(185頁上部)
「Abstract
In the last decade, computerized tomography (CT) has become the most frequently used imaging modality to obtain a correct pre-operative implant planning. In this work, we present an image analysis and computer vision approach able to identify, from the reconstructed 3D data set, the optimal cutting plane specific to each implant to be planned, in order to obtain the best view of the implant site and to have correct measures. If the patient requires more implants, different cutting planes are automatically identified, and the axial and cross-sectional images can be re-oriented accordingly to each of them. In the paper, we describe the defined algorithms in order to recognize 3D markers (each one aligned with a missed tooth for which an implant has to be planned) in the 3D reconstructed space, and the results in processing real exams, in terms of effectiveness and precision and reproducibility of the measure.」
(当審訳:「概要
この10年間で、コンピュータ断層撮影法(CT)は、インプラントの術前計画に最も頻繁に使用される画像診断手段となっている。この研究では、インプラント部位の最良のビューを得、正しい測定を行うために、再構築された3Dデータセットから、計画される各インプラントに固有の最適な切断面を特定することができる画像解析とコンピュータビジョンアプローチを紹介する。患者がより多くのインプラントを必要とする場合、異なる切断面が自動的に特定され、軸方向画像および断面画像はそれぞれに応じて再方向付けすることができる。本論文では、3D再構成空間内の3Dマーカー(各マーカーは、インプラントを計画する必要のある欠損歯と一致している)を認識するために定義されたアルゴリズムと、実際の検査を処理した結果について、測定の有効性と精度、再現性の観点から説明する。」)
・記載1-185-2(1.項;185頁左欄2~7行)
「The use of computerized tomography (CT) images and their 3D reconstruction is spreading in maxillo-facial and dental surgery: image processing, computer graphic and human?computer interfaces (HCI) techniques are now exploited to visualize the CT exam in 2D/3D fashion and achieve measures of size, distance and texture. 」
(当審訳:「コンピュータ断層撮影(CT) 画像とその3D再構成の使用が、顎顔面外科及び口腔外科で広まっている。現在、画像処理、コンピュータグラフィックス、及びヒューマン・コンピュータ・インターフェース(HCI) 技術が、CT検査を2D/3D方式で視覚化し、サイズ、距離、及びテクスチャの測定を実現するために利用されている。」)
・記載1-185-3(1.項;185頁右欄下から8行~186頁左欄4行)
「In particular, the proposed approach, by a single CT acquisition and despite the patient orientation or the considered missed tooth, enhances implant surgical planning in order to get exact morphological measurements of the underlying bone and the implant to be planned. This is achieved by applying image-processing, pattern recognition and computer vision techniques to the original CT images, in order to produce new CT images lying on different planes, and possibly perpendicular to a different axis. The main advantage of this approach is that a single CT acquisition is needed, despite the number of dental implants to be installed, or the patient orientation.」
(当審訳:「特に、提案されるアプローチでは、1回のCT撮影により、患者の向きや考慮される欠損歯にかかわらず、土台となる骨及び予定しているインプラントの正確な形態学的測定値を得られるように、インプラントの外科計画が改善される。これは、異なる平面上の、場合によっては異なる軸に垂直な平面上の新しいCT画像を生成するために、画像処理、パターン認識、及びコンピュータビジョン技術を元のCT画像に適用することによって実現される。この方法の主な利点は、埋入するインプラントの数や患者の向きにかかわらず、1回のCT撮影で済むことである。」)
・記載1-186-1(1.項;186頁左欄5~16行)
「In the proposed approach, the act of determining the best implant plan starts with the construction of the diagnostic wax-up, which provides a physical model before starting the implant design. On the basis of the diagnostic wax-up, it is then built a radiographic stent, made of acrylic resin. Then, for each missed tooth, a titanium-made marker is inserted in the radiographic stent, aligned with the corresponding missed tooth, as built in the diagnostic wax-up. The patient must wear this radiographic stent during the CT scanning, and the titanium-made markers are exploited as references in the 3D space for the application of further image processing and computer vision techniques.」
(当審訳:「提案されるアプローチでは、最良なインプラント計画を決定する行為は、インプラントの設計を開始する前の物理的な模型を提供する診断用ワックスアップの構築からスタートする。この診断用ワックスアップに基づいて、アクリル樹脂製の放射線用ステントが作られる。次いで、診断用ワックスアップにおいて作られたとおりに、欠損歯ごとに、対応する欠損歯に位置合わせされて、チタン製マーカが放射線用ステントに挿入される。患者は、CTスキャンの間、この放射線用ステントを装着する必要があり、チタン製マーカは、さらなる画像処理及びコンピュータ・ビジョン技術を適用するための3D空間内の基準として利用される。」)
・記載1-186-2(1.項;186頁左欄29~47行)
「Automatically identifying and localize the markers (radio-opaque cylinders) and their axes. In order to have reference points, normally the patient wears a radiographic stent with radio-opaque markers (i.e. cylinders), one for each missed tooth, during the CT examination. We defined a model-based vision approach, using Hough Transform and a section clustering in order to identify and localize all the cylinders in the 3D space as well as their axes;
Re-orienteering the axial images and generating the relative cross-sectional images for the best multi-view representation. The cutting plane of the 3D space can be manually selected by the operator, or automatically identified by previous steps. In fact, in order to compute correct measures in the underlying bone structure, for each marker and therefore each implant to be installed, once its axis has been computed, the optimal cutting plane (containing a cross-sectional image) is the one orthogonal to such axis.」
(当審訳:「マーカ(放射線不透過性シリンダ)及びその軸を自動的に識別し、位置を特定する。基準点を持つために、患者は通常、CT検査中、各欠損歯に対して1つずつ放射線不透過性マーカ(すなわちシリンダ)を備えた放射線用ステントを装着する。我々は、3D空間内のすべてのシリンダとその軸を識別し、位置を特定するために、ハフ変換及び断面クラスタリングを使用した、モデルベースの視覚的アプローチを定義した;アキシャル画像を再配向させ、最適な多視点表現のために相対的なクロスセクショナル画像を生成する。3D空間の切断面は、オペレータが手動で選択することも、前のステップで自勲的に特定することもできる。実際、各マーカ、ひいては埋入される各インプラントについて、その下にある骨構造における正確な測定値を計算するために、各マーカの軸が計算されると、最適な切断面(クロスセクショナル画像を含む)は、その軸に直交する平面となる。」)
・記載1-186-3(2.項;186頁右欄11~32行)
「2. Related work
Many tools are now available for reformatting CT images, which provide both 3D visualization and visualization based on a series of images, namely axial, panoramic and cross-sectional images. Among them, it is worth mentioning the pioneering software system DentaScan [2], and SIM/Plant by Columbia Scientific (now acquired by Materialise [3] ). As shown in Fig. 1, axial images are directly acquired from the instrument (or computed by interpolation, but lying on a plane always parallel to the acquisition one). Panoramic images are obtained as orthogonal to a curves ( panoramic cutting curve) drawn on an axial image that follows the curvature of the maxillary or mandibular ridge. Oblique (or cross-sectional) images are orthogonal to the previous mentioned series of images. Cross-sectional images are not parallel each other, and converge into an accumulation line containing the accumulation point where teeth axes, in their turn, converge. In the following we refer to this type of visualization as multi-view visualization. The definition of cross-sectional images depends on both the panoramic line and orientation in the 3D space of the acquisition plane for the CT scanning.」
(当審訳:「2.関連する研究
現在、CT画像を再フォーマットするための多くのツールが利用可能であり、3Dビジュアリゼーションと、アキシャル画像、パノラミック画像、クロスセクショナル画像という一連の画像に某づくビジュアリゼーションとの両方を提供している。その中でも、先駆的なソフトウェアシステムであるDentaScan [2]や、Columbia Scientific社のSIM/Plant(現在はMaterialise社が買収[3])を挙げることができる。図1に示すように、アキシャル画像は装置から直接取得される(あるいはアキシャル画像が補間によって計算されるが、取得面と常に平行な平面上にある)。パノラミック画像は、アキシャル画像上に描かれた、上顎堤又は下顎堤の湾曲に沿った曲線(パノラミック切断曲線)に直交するものとして取得される。オブリーク(又はクロスセクショナル)画像は、前述した一連の画像と直交する。クロスセクショナル画像は、互いに平行ではなく、歯軸が収束する集積点を含む集積線に収束する。以下では、このタイプの可視化をマルチビュー可視化と呼ぶ。クロスセクショナル画像の定義は、パノラミックラインとCTスキャンの取得面の3D空間における向きとの両方に依存する。」)
・記載1-186-4(2.項;186頁右欄下から14行~187頁左欄8行)
「While the 3D visualization is an impressive way to have a qualitative evaluation of the implant site, implanthologists prefer provide quantitative measures (the bone density, the distance between meaningful cues, the bone size, etc.) directly in the multi-view that is more immediate, intuitive and easy-to-understand. However, in [6] we have outlined that, whenever the axial plane in not precisely perpendicular to the axis of a chosen tooth or of the planned implant, measures obtained on cross-sectional images are possibly affected by a measure error. Let us assume that the solid in Fig. 2(a) represents a tooth, crossed by a cross-sectional image (gray plane in Fig. 2(b)). Then, when measuring the height of the solid as reported in this cross-sectional image, you will measure a height d' equal to d*(1/cos(φ)); where φis the angle between the vertical axis of the solid and the plane of the cross-sectional image. Thus, the measure error on cross-sectional images is proportional to 1/cos(φ): Due to this systematic error and possible imprecision of the operator interacting manually with the tool, non-negligible measure displacements can occur, as shown in Fig. 2(c) where the measured length is 8.19 mm instead of 10 mm (as shown in Fig. 2(d)). 」
(当審訳:「3Dビジュアリゼーションは、インプラント部位を定性的に評価する素晴らしい方法であるが、インプラント専門医は、定量的な測定値(骨密度、意味のある手がかり間の距離、骨の大きさなど)を、より即時的かつ直感的で理解しやすいマルチビューで直接提供することを好む。しかしながら、我々は[6]で、アキシャル面と選択した歯の軸や計画しているインプラントの軸とが厳密に直交しない場合は常に、クロスセクショナル画像で得られた測定値が測定誤差の影響を受ける可能性があることを概説した。図2(a)の立体が歯を表しており、これがクロスセクショナル画像(図2 (b)の灰色面)と交差しているものとする。そして、このクロスセクショナル画像においてレポートされるとおりに立体の高さを測定する場合、高さd’=d*(l/cos(φ))を測定することになる。ここで、φは立体の縦軸とクロスセクショナル画像の平面との間の角度である。したがって、クロスセクショナル画像上の測定誤差は、l/cos(φ)に比例する。この系統誤差と、オペレータがツールを手動で操作する際に生じ得る不正確さとによって、図2(c)に示すように、測定された長さが(図2(d)に示すように)10mmではなく8.19mmとなるような、無視できない測定のずれが生じる可能性がある。」)
・記載1-187-1(2.項;187頁左欄下から2行~同頁右欄下から4行)
「An error-free measure is possible only when axial images
are acquired, or reconstructed as we propose, on a plane, which is perpendicular to the axis of the dental implant to be installed. Nonetheless, teeth axes change their direction along the dental arcs (i.e. on the frontal plane axes are orthogonal to Wilson’s curve, and on the sagittal plane they are orthogonal to Spee's curve). Therefore, a CT scan made with respect to a tooth (i.e. with an acquisition plane orthogonal to the tooth axis) will not be directly useful for planning an implant of another tooth, possibly having an axis with a different direction. Therefore, when more than one implant have to be installed, eventually with very different axes, axial image re-orientation is then the only possible solution to be adopted. In this respect, our approach is fundamental to automate the process of determining the (para-) axial plane. To this purpose, it suffices that, during the CT scan, the patient wears a stent with a radio-opaque cylinder installed along the axis of each missed tooth as built in the diagnostic wax-up. 」
(当審訳:「誤差のない測定が可能なのは、アキシャル画像が、埋入予定の歯科用インプラントの軸に直交する平面上で取待された場合、又は我々が提案するように当該平面上で再構成された場合のみである。しかしながら、歯軸は歯列円弧に沿ってその方向を変える(すなわち、前頭面では歯軸はウィルソン曲線に直交し、矢状面では歯軸はスピー曲線に直交する)。このため、ある歯に関して作成された(すなわち、取得面を歯軸に直交するようにした)CTスキャンは、軸の方向が異なる可能性のある別の歯のインプラント計画には直接役立たない。したがって、複数のインプラントが埋入予定であり、最終的にこれらの軸が大きく異なる場合には、アキシャル画像の再配向が唯一の解決策となる。この点で、我々のアプローチは、(パラ)アキシャル面を決定するプロセスを自動化する基本的なものである。この目的のためには、CTスキャンの間、患者が、診断用ワックスアップで作られたとおりに放射線不透過性シリンダを各欠損歯の軸に沿って取り付けたステントを装着していれば、それで十分である。」)
・記載1-187-2(2.項;187頁図1)
「
[図:0001435520000001.jpg]
」
・記載1-187-3(2.項;187頁図2)
「
[図:0001435520000002.jpg]
」
・記載1-189(3.項;189頁左欄下から2行~同頁右欄26行)
「Starting from axial images, a ‘good” panoramic line must be defined. This process is generally manually performed by a radiologist that manually selects a good (well visible) axial image where the maxillary or mandibular ridge is outlined, and draws a line possibly equidistant from the bone border. We propose an efficient method able to extract the panoramic line automatically. Then, crosssectional images are computed as orthogonal to the panoramic line and to the axial images too. However, these images might have no correlation with the real 3D axes system connected with a given tooth or an implant marker, and measures obtained from them might be affected by errors.
Nevertheless, the availability of the interpolated volumetric
data set allows for re-orienteering the reference planes as a new reference axis is given. For this reason, we defined a tool that interactively asks the radiologist or implanthologist for identifying the best tooth or cylinder axis. Then, images are rotated according to the chosen axis, and new images are provided: those are error free from the point of view of angular displacement.
In this paper, we further improve the approach, and define a method to automatically recognize and localize the markers (the radio-opaque cylinders). For each identified cylinder, it computes its axis, and reformats axial images according with the axis, and computes the best cross-sectional view by rotating the space so as to have a correct measure (multiview). This method is proposed in detail in Section 5.」
(当審訳:「アキシャル画像からスタートして、「良い」パノラミックラインを定義しなければならない。このプロセスは一般的に放射線技師によって手動で行われる。放射線技師は、上顎堤又は下顎堤の輪郭を描く良好な(よく見える)アキシャル画像を手動で選択し、骨の境界から等距離にあると考えられる線を引く。我々は、パノラミックラインを自動的に抽出できる効率的な方法を提案する。次いで、クロスセクショナル画像が、パノラミックライン及びアキシャル画像に直交するように計算される。しかしながら、これらの画像は、特定の歯やインプラントマーカと紐づく実際の3D軸システムとの相関がない可能性があり、このような画像から得られる測定値は誤差の影響を受ける可能性がある。
しかしながら、補間された体積データセットを利用することで、新しい基準軸が与えられたときに基準面を再配向させることができる。このような理由で、我々は、放射線科医やインプラント医に最適な歯軸やシリンダ軸をインタラクティブに尋ねるツール[6]を定義した。これにより、選択された軸に従って画像が回転されて、新しい画像が提供される。これらの画像は、角度ずれの点で誤差のないものとなる。
本論文では、このアプローチをさらに改良し、マーカ(放射線不透過性シリンダ)を自動的に認識し、位置を特定する方法を定義する。本方法は、識別された各シリンダについて、その軸を計算し、軸に従ってクロスセクショナル画像を再フォーマットし、正しい測定ができるように空間を回転させることによって最適なクロスセクショナル図を計算する(マルチビュー)。」)
・記載1-191-1(5.項;191頁左欄8行~下から1行)
「A further goal of the system is the automatic detection of 3D markers and their axis. This allows for automatically computing the best multi-view representation, with the paraaxial images oriented as the maker is. This problem corresponds to the pattern recognition problem of detecting the 3D marker in the data set.
The marker used is a radio-opaque cylinder as in Fig. 8. Instead of looking for a 3D rotation solid in the 3D space (that should be a process geometrically more correct but requiring a higher computational load), we prefer a less costly computational process. In particular, we search for a group of circular (as an approximation of their elliptic appearance) patterns sharing some geometrical properties: their center should be on the same axis; their area and shape should be among the same.
Two main steps define the process: (a) circular pattern detection; (b) model-based clustering. In the first step, all possible circular patterns have to be detected, and then they must be grouped in clusters dealing with the constraints of the marker’s model.」
(当審訳:「使用するマーカは、図8のような放射線不透過性シリンダである。3D空間内で3D回転立体を探す(これは幾何学的にはより正確な処理のはずだが、より高い計算負荷を必要とする)代わりに、我々はよりコストのかからない計算処理を好む。特に、幾何学的特性を共有する円形(楕円状の外観の近似として)パターン群(すなわち、それらの中心が同じ軸上にあり、それらの面積及び形状が同じであるもの)を探索する。2つの主要なステップ、すなわち(a)円形パターン検出と、(b)モデルに基づくクラスタリングとが、プロセスを定義する。第1ステップでは、考えられるすべての円形パターンを検出する必要があり、それらをマーカのモデルの制約に対応してクラスタにグルーピングしなければならない。」)
・記載1-191-2(5.項;191頁 図8及び図8の注釈)
「
[図:0001435520000003.jpg]
Fig. 8. The marker model: the markers used are radio-opaque cylinders of length L and diameter D as in (a); since the marker could be oblique th respect to the axial slices, the detected sections are not circular but elliptic, and the distance between their centers is affected by an error due to the inclination angle as in (b).Moreover, the length is affected also by a discretization error due to the inter slice distance as in (c), and the center distance is also affected by an error due to the pixel discretization as in (d).」
(当審訳:「図8 マーカのモデル:使用するマーカは、(a)のように、長さL、直径Dの放射線不透過性シリンダである。マーカはアキシャルスライスに対して斜めである可能性があるので、検出される断面は円形ではなく楕円形となり、その中心間距離は(b)のように傾斜角による誤差の影響を受ける。また、その長さも(c)のようにスライス間距離による離散化誤差の影響を受け、中心距離も(d)のように画素の離散化による誤差の影響を受ける。」)
・記載1-192(5.1項;192頁 図9及び図9の注釈)
「
[図:0001435520000004.jpg]
Fig. 9. The process of marker recognition and location: each slice is processed with an edge finder operator. We use the algorithm of Canny for close edge detection. From each edge image the HT for circles allows for the detection and location of ‘circular’ sections. As well as correct marker sections, some false positive due to tooth and artifacts are detected too. Then, a section clustering process has been defined that aims at grouping sections, which satisfy some model constraints. Finally the cylinder is recognized, and its axis is computed.」
(当審訳:「図9 マーカ認識及び位置決めのプロセス:各スライスがエッジ検出演算子で処理される。我々は、近傍エッジの検出にCannyのアルゴリズムを使用する。各エッジ画像から、円のHTにより、「円」の断面の検出及び位置決めが可能になる。正しいマーカ断面だけでなく、歯及びアーチファクトによる偽陽性も検出される。そして、いくつかのモデル制約を満たす断面をグルーピングすることを目的とした断面クラスタリング処理が定義されている。最後にシリンダが認識され、その軸が計算される。」)
・記載1-195(5.2項;195頁右欄3~24行)
「In this manner, for each possible target, we are able to compute the axis in 3D space. Starting from the 3D space we can extract a new set of axial images, normal to the given axis where the panoramic line can be computed again. Cross-sectional planes are then extracted as orthogonal to the new axial plane and the panoramic line. This new multiview will be the one where measures of the marker and the neighborhood zone are error-free. Fig. 2(c) and (d) show a cross-sectional image before and after re-orienteering: the former is produced from the original axial image set and shows that the measured length is affected by an error, the latter is produced after the process here described.
Starting from this surely correct view the specialist can interact with the environment, and using some graphics tools, can move a virtual marker in another position and ask to the system for constructing the new multi-view taking into account the new marker position.
The overall approach is fully automated in this way, and the whole process can be done for each target object (i.e. each missed tooth for which a marker has been posed on the radiographic stent, on the basis of the tooth axis in the diagnostic wax-up). 」
(当審訳:「このようにして、我々は、可能性のある各ターゲットについて、3D空間で軸を計算することができる。我々は、3D空間からスタートして、与えられた軸に垂直な新しいアキシャル画像のセットを抽出し、このアキシャル画像上でパノラミックラインを再び計算することができる。そして、新しいアキシャル面及びパノラミックラインに直交するものとして、クロスセクショナル面が抽出される。この新しいマルチビューは、マーカ及びその近傍領域の測定に誤差がないものとなる。図2(c)及び(d)は、再配向の前後のクロスセクショナル画像を示している。前者は元のアキシャル画像セットから作成されたもので、測定された長さが誤差の影響を受けることを示しており、後者は、本論文で説明する処理後に作成されたものである。
この確かに正しいビューからスタートして、専門家は、環境とインタラクトすることができ、いくつかのグラフィックツールを使用して、仮想的なマーカを別の位置に移動させ、新しいマーカの位置を考慮して新しいマルチビューを構築するようにシステムに要求することができる。
このように、アプローチ全体が完全に自動化されており、全プロセスを、各ターゲットオブジェクト(つまり、診断用ワックスアップの歯軸に基づいて、放射線用ステント上にマー力が配置された各欠損歯)に対して行うことができる。」)
・記載1-197-1(6.2項;197頁右欄5~17行)
「Figs. 13 and 14 shows a multi-view representation of a CT examination without and with a plane re-orienteering according with a target detected. Fig. 13 contains the crosssectional images concerning the right-upper molar tooth: in these images some sections of the cylindrical reference marker are not a rectangle, being the original CT acquisition not aligned with respect to this marker. The system is able to identify the marker axis (by a manual selection or by the automatic process described before). In Fig. 14, reformatted images are shown after re-orienteering with respect to the chosen marker. Notice that, this time, in all the shown crosssectional images, sections of the cylindrical reference marker are perfectly rectangular.」
(当審訳:「図13及び図14は、検出されたターゲットに応じた平面の再配向なし及び再配向ありのCT検査のマルチビュー表示である。図13には、右上の臼歯に関するクロスセクショナル画像が含まれている。これらの画像では、円柱状の基準マーカの一部の断面が長方形になっておらず、元のCT撮影はこのマーカに対して位置合わせされていない。システムはマーカの軸を(手動選択又は前述の自動処理によって)識別することができる。図14では、選択されたマーカを基準にして再配向を行った後の再フォーマット画像が示されている。今度は、表示されている全クロスセクショナル画像において、円筒形の基準マーカの断面が完全に長方形になっていることに注目されたい。」)
・記載1-197-2(図13)
「
[図:0001435520000005.jpg]
」
・記載1-198(図14)
「
[図:0001435520000006.jpg]
」
・記載1-199(7.項;199頁左欄24行~同頁右欄5行)
「In conclusion, we summarize the practical steps to be
taken in the clinical practice:
1. The act of determining the best implant plan starts with the construction of the diagnostic wax-up. The diagnostic wax-up provides a physical model before starting the implant design, and it is the basis for the construction of a radiographic stent, in acrylic resin, where titanium-made markers are inserted. Each marker is then aligned with the axis of a missed tooth, as built in the diagnostic wax-up.
2. The patient must wear the radiographic stent with the markers, i.e. the radio-opaque cylinders, during the CT scanning. Indeed, markers are used only to allow a robust and error-free identification and measurement of the correct dimension (being known the marker dimensions): the described software approach is able to re-orient them in the 2D and 3D visualization;
3. A CT examination is provided for the patient wearing the radiographic stent. A single CT is enough for many possible implants since the system, using each marker as a reference, is able to re-orient the CT dataset and then furnish correct measures of each of the 3D implant sites;
4. The CT images are reformatted and processed in order to create the 3D visualization;
5. The automatic or semi-automatic panoramic cutting curve is computed either in the original axial planes or in new planes extracted perpendicular to the marker’s axis. Then, panorex images are extracted and 2D or 3D visualization is given in order to obtain an error-free measure;
6. If, after the visualization and possible 3D animation, the implanthologist decides to move the marker in another position, the marker is virtually moved in the computer-based animation, the new axis is computed, and the points 4 and 5 are iterated as well.」
(当審訳:「結論として、臨床現場で取るべき実践的なステップを以下にまとめる。
1.最良のインプラント計画を決定する行為は、診断用ワックスアップの構築から始まる。診断用ワックスアップは、インプラントの設計を開始する前の物理的な模型であり、チタン製マーカが挿入される放射線用ステントをアクリル樹脂で構築するための基礎となる。各マーカは、診断用ワックスアップで作られたとおりに、欠損歯の軸に位置合わせされる。
2.患者は、CTスキャンの間、マーカ(すなわち、放射線不透過性シリンダ)付きの放射線用ステントを装着しなければならない。実際には、マーカは、正確な寸法を確実かつ誤差なく識別及び測定可能とするためにのみ使用される(マーカの寸法は既知である)。上述のソフトウェア・アプローチは、それらを2Dビジュアリゼーション及び3Dビジュアリゼーションにおいて再配向することができる。
3.放射線用ステントを装着した患者にCT検査を行う。システムは、各マーカを基準として使用し、CTデータセットを再配向させて、3Dインプラント部位の各々の正確な測定を提供することができるので、可能性のある多数のインプラントに対して一度のCTを行えば十分である。
4.3D画像を作成するために、CT画像が再フォーマットされて処理される。
5.自動又は半自動のパノラミック切断曲線が、元のアキシャル面において、又はマーカの軸に対して垂直に抽出された。
6.視覚化及び可能な3Dアニメーションの後、インプラント専門医がマーカを別の位置に移動させることを決定した場合には、マーカは、コンピュータベースのアニメーションで仮想的に移動され、新しい軸が計算され、ポイント4及びポイント5が同様に繰り返される。」)
イ 甲1の記載事項から看取・認定される事項
(ア)看取・認定事項1-1
a 記載1-197-1は、基準マーカ、即ち患者の欠損歯に装着された放射線用マーカに挿入されたチタン製マーカの実体物を含む上顎骨のマルチビュー表示についての言及である。
b ここで、再配向前のマルチビュー表示である図13(記載1-197-2)について、記載1-197-1に「円柱状の基準マーカの一部の断面が長方形になっておらず、元のCT撮影はこのマーカに対して位置合わせされていない。」、「図14では、選択されたマーカを基準にして再配向を行った後の再フォーマット画像が示されている。今度は、表示されている全クロスセクショナル画像において、円筒形の基準マーカの断面が完全に長方形になっていることに注目されたい。」と記載されるのは、図13下部のパノラミック画像及び同左上の6枚のクロスセクショナル画像において、マーカの像に対応する並列する高輝度の2本線が非平行であるのに対し、図14(記載1-198)では両画像共に平行となっていることをいうものと理解される。
c また、6枚のクロスセクショナル画像において、中空の円筒体を呈する前記マーカの像の長軸が図13では鉛直線に対し傾斜しており、また、ほとんどマーカ像が映っていないものもあるところ、図14ではいずれのマーカ像も平行二本線として映出されていることから、明記はないものの、該各画像はいずれも、前記マーカの中心軸線をほぼ含む(平面についての)画像であると推察される。
(2-1)甲2の1の記載
ア 甲2の1の記載事項
「SimPlant8.1練習マニュアル」(当審訳)と題する甲2の1には、次の記載がある。
・記載2(1)-表紙(甲2の1の第1葉)
「
[図:0001435520000007.jpg]
」
・記載2(1)-3(3頁)
「
[図:0001435520000008.jpg]
」
・記載2(1)-13(13頁)
「
[図:0001435520000009.jpg]
」
・記載2(1)-15(15頁)
「
[図:0001435520000010.jpg]
」
・記載2(1)-16(16頁)
「
[図:0001435520000011.jpg]
」
・記載2(1)-17(17頁)
「
[図:0001435520000012.jpg]
」
・記載2(1)-21(21頁)
「
[図:0001435520000013.jpg]
」
・記載2(1)-24(24~25頁)
「
[図:0001435520000014.jpg]
・・・
[図:0001435520000015.jpg]
[図:0001435520000016.jpg]
」
・記載2(1)-35(35頁)
「
[図:0001435520000017.jpg]
」
・記載2(1)-36(36頁)
「
[図:0001435520000018.jpg]
」
・記載2(1)-37(37頁)
「
[図:0001435520000019.jpg]
」
・記載2(1)-47(47頁)
「
[図:0001435520000020.jpg]
」
・記載2(1)-48(48頁)
「
[図:0001435520000021.jpg]
」
・記載2(1)-49(49頁3の図)
「
[図:0001435520000022.jpg]
」
・記載2(1)-50(50頁)
「
[図:0001435520000023.jpg]
」
・記載2(1)-51(51頁)
「
[図:0001435520000024.jpg]
」
・記載2(1)-55(55頁)
「
[図:0001435520000025.jpg]
[図:0001435520000026.jpg]
」
・記載2(1)-59(59頁)
「
[図:0001435520000027.jpg]
」
・記載2(1)-76(76頁)
「
[図:0001435520000028.jpg]
」
・記載2(1)-78(78頁)
「
[図:0001435520000029.jpg]
」
・記載2(1)-85(85頁)
「
[図:0001435520000030.jpg]
」
・記載2(1)-86(86頁)
「
[図:0001435520000031.jpg]
」
・記載2(1)-92(92頁)
「
[図:0001435520000032.jpg]
」
・記載2(1)-93(93頁)
「
[図:0001435520000033.jpg]
」
・記載2(1)-105(105頁)
「
[図:0001435520000034.jpg]
」
・記載2(1)-奥付
甲2-1の124葉目(最終頁)
「
[図:0001435520000035.jpg]
」
イ 甲2の1の記載から看取・認定される事項
(ア)看取事項2(1)-37
記載2(1)-37左部の「長さの調整」と題する写真には、記載2(1)-35で「クロスセクショナル画像」と説明される歯の断面画像を背景に、桃色の長方形とその上下端に計2つの白い正方形の記号が描かれていることが視認できる。一方、該写真の説明書きである該写真上方の「インプラントの長さを調節する(簡易編)」と題する枠内には「インプラント体の白い正方形にカーソルを合わせ、左ボタンで長さを調節する。」と記載されている。
これらから、前記桃色の長方形が埋入されるインプラントの位置・姿勢・長さを表すもの、つまり、インプラントのマーカであると解され、前記計2つの白い正方形の記号はそれぞれ該インプラントの上端付近及び下端付近に付された、インプラントのマーカの長さ調節をする際の操作部位(カーソルの合わせ位置)を示す記号であると解される。
また、前記インプラントのマーカは、向きも調節できる(決められる)ことが記載2(1)-35(枠内「B.」の記載)から理解される。
ここで、前記「インプラント」と称するマーカは、表示上の仮想的なものであり、現実の撮影対象の患者に装着されたインプラントの実体物ではないことが明らかである。甲2の1では単に「インプラント」と記載されているが、以下、実体物との区別のため、前記桃色の長方形を呈する絵について「インプラントのマーカ」と呼ぶこととする。
(イ)看取事項2(1)-48
a 記載2(1)-48における青色背景の3D画像(画面画像の右上領域)において、「1」なる番号の上下に一対の白い正方形の記号が表示され、さらに、該一対の白い正方形の記号を結んで上下に延長する赤い線分が表示されている。
b 一方、該3D画像の左側領域に9分割で表示されたクロスセクショナル画像及び前記3D画像下方のパノラミック画像には、共に、「1」なる番号が表示された桃色の長方形、すなわち看取事項2(1)-37にいう「インプラントのマーカ」が重畳表示され、その上下端付近には白い正方形の記号が表示されている。
c 上記a,bの対応関係からみて、前記3D画像上の一対の白い正方形の記号と、他の各断面画像(クロスセクショナル画像及びパノラミック画像)のインプラントのマーカ上下端付近の一対の白い正方形の記号とは相互に対応するものと解される。
d ただし、前記3D画像においては、他の各断面画像のように、一対の白い正方形の記号の間にインプラントのマーカは表示されていない。
e 3D画像上に、前記インプラントのマーカ近傍の表示と同様の「1」なる番号が表示されている画像は記載2(1)-50下部の「正面図」、「背面図」、「左側面図」、「右側面図」と称する青色背景の3D画像や、記載2(1)-59下部の3D画像にもみられるが、これらにおいても、前記番号の表示のみでインプラントのマーカも一対の白い正方形の記号も重畳表示されていない。
(ウ)看取事項2(1)-51
a 記載2(1)-51には、「3Dを半透明にした図」と題する3D画像が記載され、半透明の3D画像に、「1」~「4」の番号が付された立体的なインプラントのマーカ(桃色の円柱体)が合成表示されている。
b また、外殻立体的なインプラントのマーカの上下方向には、その軸に沿った赤色の線分が延長されている。
c 上記a,bの合成表示においても、各インプラントのマーカ近傍には一対の白い正方形は表示されておらず、前記3D画像を含む「3D画像を半透明にする」と題する当該頁全体をみても、インプラントのマーカを移動・回転等することについて言及する記載は存在しない。
d 上記bと同様の、赤色の線分を伴う立体的なインプラントのマーカは、記載2(1)-55における、表示CT値を1600とした「B図の見本」と題する3D画像においても一部表示されている。
(エ)看取事項2(1)-13
a 記載2(1)-13,2(1)-76,2(1)-78、2(1)-103には、「パソコン」との記載がある。
b 記載2(1)-3には「SimPlantを起動する」、「プログラムを起動する」なる記載がある。
c 「SimPlant製品情報」と題するWebページの記載に関する甲15の1~甲15の6のうち、甲15の5の「SimPlantの価格」と題するページには「SimPlantソフトウェア」との記載があり、甲15の6の「SimPlantの動作環境」と題するページには、「必要機器構成」と題する表に「パソコン」、その内訳として「OS」欄に「Windows98/Me」「WindowsNT/2000」「WindowsXP」なる記載がある。
d 上記a~cの記載から、甲2の1に係る「SimPlant8.1」はパソコンのWindowsOS上で動作するコンピュータソフトウェアの名称であると理解される。
(オ)看取事項2(1)-24
記載2(1)-24の「CT値」なる用語や「(参考)」「(抜粋)」と題する記載事項、並びに、2(1)-15の「SurgiCase Settings画面」、「SIM/Plant Settings画面」とそれぞれ題する画面写真をはじめとする甲2の1に掲載される各断層像や3D画像が、少なくとも患者の下顎部についてX線CT撮影されたデータをもとに生成されたものであることが理解される。
(2-2)甲2の2の記載
ア 甲2の2の記載事項
「写真報告書」と題する甲2の2には次の記載がある。
・記載2(2)-1(1~2頁)
1~2頁には、下記(2)、(3)のキャプチャ画像と共に、下記(1)の動作過程説明が記載されている。
・・記載2(2)-1(1)(1頁)
「1 画像の表示
一連のCT画像から、3次元画像と、患者の咬合面に相当するアキシャル面の断面画像と、上顎堤又は下顎堤の湾曲に沿った曲線に直交するパノラミック面に沿った断面画像と、アキシャル面及びパノラミック面の両方と直交するクロスセクショナル面に沿った断面画像と、が生成され、下図のようにディスプレイに各画像が表示される。」
・・記載2(2)-1(2)(2頁)
「
[図:0001435520000036.jpg]
」
・・記載2(2)-1(3)(2頁)
「
[図:0001435520000037.jpg]
」
・・記載2(2)-1(4)(1頁)
「当職は、被告準備書面(2)において「公知発明1」と称されるSimPlant8.1の動作等を確認するために、同プログラムを当職が使用しているPC(Windows11)にダウンロードした。本書面において、当職は、適宜関連する画面のキャプチャー画像をコピーしながら、同プログラムの動作を確認した結果を報告するものである。」
・記載2(2)-2(2~3頁)
2~3頁には、下記(2)のキャプチャ画像と共に、下記(1)の動作過程説明が記載されている。
・・記載2(2)-2(1)(2頁)
「2 3次元画像におけるクロスセクショナル面等の表示
下図のように、ユーザは、アキシャル画像、パノラミック画像、及びクロスセクショナル画像にそれぞれ対応する、アキシャル面を表す赤色の平面板、パノラミック面を表す黄色の曲面板、及びクロスセクショナル面を表す水色の平面板を、顎骨の3次元画像上に重畳表示することができる。」
・・記載2(2)-2(2)(3頁)
「
[図:0001435520000038.jpg]
」
・記載2(2)-3(3~4頁)
3~4頁には、下記(2)、(3)のキャプチャ画像と共に、下記(1)の動作過程説明が記載されている。
・・記載2(2)-3(1)(3頁)
「3 仮想的な歯科用インプラントの配置等
ユーザは、仮想的な歯科用インプラントをディスプレイ上で移動させて、上顎部及び/又は下顎部の撮影画像上の任意の位置に配置することができる。ただし、歯科用インプラントを最初に配置する際には、アキシャル画像、パノラミック画像、又はクロスセクショナル画像上で位置決めする必要があり、3次元撮影画像上に歯科用インプラントを直接位置決めすることはできない。歯科用インプラントを配置すると、下図のように、配置された歯科用インプラントの近傍の断面画像を表示するように、アキシャル面、パノラミック面、及びクロスセクショナル面の位置が自動的に変更される。」
・・記載2(2)-3(2)(3頁)
「
[図:0001435520000039.jpg]
」
・・記載2(2)-3(3)(4頁)
「
[図:0001435520000040.jpg]
」
・記載2(2)-4(4~6頁)
4~6頁には、下記(2)~(4)のキャプチャ画像と共に下記(1)の動作過程説明が記載され、下記(6)のキャプチャ画像と共に下記(5)の動作過程説明が記載されている。
・・記載2(2)-4(1)(4頁)
「4 仮想的な歯科用インプラントの平行移動
ユーザは、3次元撮影画像上で、仮想的な歯科用インプラントをドラッグアンドドロップすることによって、歯科用インプラントを平行移動させて、別の位置に位置決めすることができる。なお、この平行移動は、アキシャル画像、パノラミック画像、又はクロスセクショナル画像上で実行することもできる。このとき、下図のように、各画面の変化は歯科用インプラントの傾斜のみであり、上顎部及び/又は下顎部の座標系は特に変化せず、固定されている。」
・・記載2(2)-4(2)(4頁)
「
[図:0001435520000041.jpg]
」
・・記載2(2)-4(3)(5頁)
「
[図:0001435520000042.jpg]
」
・・記載2(2)-4(4)(5頁)
「
[図:0001435520000043.jpg]
」
・・記載2(2)-4(5)(5~6頁)
「歯科用インプラントを平行移動させた後、移動後の歯科用インプラントをクリックすると、下図のように、移動後の歯科用インプラントの近傍の断面画像を表示するように、アキシャル面、パノラミック面、及びクロスセクショナル面の位置が自動的に変更される。たとえば、上図(歯科用インプラントを平行移動させた後の画面)と下図(歯科用インプラントをクリックした後の画面)との比較から確認できるように、平行移動後の歯科用インプラントをクリックすると、3次元画像上の水色の平面板が歯科用インプラントを通るように再配置される。これに伴い、アキシャル面及びパノラミック面上の水色の点線(クロスセクショナル面の取得範囲を示す)が歯科用インプラントを中心として再配置され、クロスセクショナル面に沿った9枚の断面画像のうち中央に「歯科用インプラントに最も近い断面画像」が表示されるように、クロスセクショナル面が再配置される。」
・・記載2(2)-4(6)(6頁)
「
[図:0001435520000044.jpg]
」
・記載2(2)-5(6~8頁)
6~8頁には、下記(2)~(4)のキャプチャ画像と共に、下記(1)の動作過程説明が記載されている。
・・記載2(2)-5(1)(6頁)
「5 仮想的な歯科用インプラントの傾斜
ユーザは、3次元撮影画像上で、仮想的な歯科用インプラントを通って延在する仮想的な赤色の直線をドラッグアンドドロップすることによって、歯科用インプラントを傾斜させることができる。なお、この傾斜は、アキシャル画像、パノラミック画像、又はクロスセクショナル画像上で実行することもできる。このとき、下図のように、各画面の変化は歯科用インプラントの傾斜のみであり、上顎部及び/又は下顎部の座標系は特に変化せず、固定されている。」
・・記載2(2)-5(2)(7頁上)
「
[図:0001435520000045.jpg]
」
・・記載2(2)-5(3)(7頁下)
「
[図:0001435520000046.jpg]
」
・・記載2(2)-5(4)(8頁)
「
[図:0001435520000047.jpg]
」
イ 甲2の2の記載から看取・認定される事項
(ア)看取事項2(2)-3(3)
記載2(2)-3(3)の画面表示写真の右下欄には、青色背景に3D画像が表示され、同写真の左上欄には9枚のクロスセクショナル画像が、左下欄にはパノラミック画像が、右上欄にはアキシャル画像が、それぞれ表示されている。
前記パノラミック画像には「1」なる番号が付された長方形、及び該長方形の上方・下方に離れた位置に回転矢印が重畳表示されている。前記長方形内の上部と下部には白い丸印が付されている。また、前記長方形の長軸、回転矢印、白い丸印を貫通する線分が表示されている。
前記アキシャル画像では、前記パノラミック画像に長方形が重畳表示された位置に対応すると推察される位置に白い丸印が重畳表示されている。
前記3D画像には、下顎歯列と下顎骨との境界近傍に沿ってほぼ水平に、アキシャル画像平面を示すと推察される赤色の平面が表示され、前記パノラミック画像における重畳表示がされた歯の部位に対応すると推察される位置に、クロスセクショナル画像平面を示すと推察される青色のほぼ鉛直の平面が表示されている。
前記3D画像において、前記パノラミック画像で重畳表示がされた歯に対応すると推察される位置の下顎骨上に、上下一対の白い記号(丸印か正方形か、それ以外の形状かは不明)が重畳表示されている。ただし、前記パノラミック画像に重畳表示された長方形に対応する図形が表示がされているとは視認できない。
(3)甲3の記載
ア 甲3の記載事項
甲3には次の記載がある。中略は「・・・」で示す(他の甲号証についても同様。)。
「【請求項1】患者の歯牙の欠損部分について取得した印象を基に作成され、少なくとも3点以上の3次元位置決め用マーカを設けたステントを装着して撮影した前記患者の顎部X線CT画像と、前記欠損部分について用いるべき歯科用インプラント画像とを重畳表示し、前記顎部X線CT画像上での前記歯科用インプラント画像の埋入位置方向を決めることができるようにした画像表示操作装置と、こうして決められた埋入位置方向データから前記ステントにインプラント埋入ガイド穴を加工するためのガイド穴加工データを前記位置決め用マーカの位置を基準として作成するデータ処理装置とから構成されることを特徴とする歯科用インプラント施術支援装置。
・・・
【請求項4】請求項1から3のいずれかに記載の歯科用インプラント施術支援装置において、前記画像表示操作装置には、データ記憶装置が接続され、このデータ記憶装置には既存の歯科用インプラントの形状データとこれに対応したインプラントアイコンが記憶され、前記画像表示操作装置では、複数のインプラントアイコンが表示され、このインプラントアイコンから所望のインプラントアイコンを選択操作することにより、前記欠損部分について用いるべき前記歯科用インプラント画像が選択できるようにしたことを特徴とする歯科用インプラント施術支援装置。
・・・
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、患者の歯牙の欠損部分について取得した印象を基に作成され、この欠損部位を含む歯牙列に冠せて用いられるステントに、この欠損部位に植え立てる義歯を固定するためのインプラント埋入ガイド穴を加工する歯科用インプラント施術支援装置に関する。
【0002】
【従来の技術】近年、歯科の分野では、歯牙の欠損部分に確実、強固に義歯を植え立てる方法として、歯科用インプラントが広く用いられているが、このインプラントが成功するには、インプラントを埋入する位置と方向が重要であり、このインプラントの埋入位置方向を正確に決定するために、特開2001-170080号公報、欧州特許1043960号公報などに種々の方法、装置が提案されている。
・・・
【0016】
【発明が解決しようとする課題】本願発明は、このような問題を解決しようとするもので、余分な手間や介在部品を必要とすることなく、精密にインプラントの埋入位置方向を決めることを可能とする歯科用インプラント施術支援装置を提供することを目的とする。
【0017】
【課題を解決するための手段】請求項1に記載の歯科用インプラント施術支援装置は、患者の歯牙の欠損部分について取得した印象を基に作成され、少なくとも3点以上の3次元位置決め用マーカを設けたステントを装着して撮影した前記患者の顎部X線CT画像と、前記欠損部分について用いるべき歯科用インプラント画像とを重畳表示し、前記顎部X線CT画像上での前記歯科用インプラント画像の埋入位置方向を決めることができるようにした画像表示操作装置と、こうして決められた埋入位置方向データから前記ステントにインプラント埋入ガイド穴を加工するためのガイド穴加工データを前記位置決め用マーカの位置を基準として作成するデータ処理装置とから構成されることを特徴とする。
【0018】この装置は、通常歯牙の欠損部分に植え立てる義歯の製作・位置決めなどに用いられるステントに3次元位置決め用マーカ(X線不透過性)を設け、この位置決め用マーカを、画像表示操作装置でのインプラントの埋入位置方向の決定、データ処理装置でのガイド穴加工データの作成の基準として共用しているので、この位置決め用マーカが、それぞれの処理での座標基準となり、正しいインプラント埋入穴のガイド穴加工データを得ることができる。
・・・
【0025】請求項4に記載の歯科用インプラント施術支援装置は、請求項1から3のいずれかに記載の歯科用インプラント施術支援装置において、前記画像表示操作装置には、データ記憶装置が接続され、このデータ記憶装置には既存の歯科用インプラントの形状データとこれに対応したインプラントアイコンが記憶され、前記画像表示操作装置では、複数のインプラントアイコンが表示され、このインプラントアイコンから所望のインプラントアイコンを選択操作することにより、前記欠損部分について用いるべき前記歯科用インプラント画像が選択できるようにしたことを特徴とする。
・・・
【0027】請求項5に記載の歯科用インプラント施術支援装置は、請求項1から4のいずれかに記載の歯科用インプラント施術支援装置において、前記歯科用インプラントの形状データおよび前記顎部X線CT画像を構成する画像データは3次元データであり、前記画像表示操作装置には前記歯科用インプラント画像と前記顎部X線CT画像とを3次元的に表示できるようにしたことを特徴とする。
【0028】この装置は、画像表示操作装置で、歯科用インプラント画像と顎部X線CT画像とが3次元的に表示されるので、歯科用インプラント画像の埋入位置方向をより実感的に決めることができる。
・・・
【0044】画像表示操作装置1は、その表示画面1cに、マーカ7a(表示画面1c上では、マーカ像I7a)を設けたままステント7(表示画面1c上では、ステント像I7)を装着して撮影した患者の顎部X線CT画像IGと、この欠損部分について用いるべき歯科用インプラント画像IIとを重畳表示し、マウス1aやキーボード1bを操作することで、顎部X線CT画像IG上で歯科用インプラント画像IIの位置と向きを自由に変えることができ、最終的に、この歯科用インプラント画像IIの最適な埋入位置方向を決めることができるようになっている。
【0045】例えば、この図では、表示画面1cで点線で表示された位置方向II(0)から、最終的に、実線で表示された位置方向II(1)に決められている。この場合、位置方向決めをするための顎部X線CT画像IGは、そのために、最適のものを選ぶことができる。
・・・
【0071】図4は、本発明の画像表示操作装置での3次元スライス画像表示の一例を示す図である。
【0072】図1に比べ、ここでは、表示画面1cに表示された3次元スライス画像ISは、顎部X線CT画像IGを、相互に直交するX断層面、Y断層面、Z断層面についてのスライス断層面画像IX、IY、IZとして予め複数枚準備しておき、これらを3つ組み合わた画像であり、データ記憶装置5に記憶保存されており、カーソルCX,CY,CZの操作に応じて選択された所望の組み合わせのスライス断層面画像IX、IY、IZが図のように3面表示されている。
【0073】スライス断層面画像IX、IY、IZには、ステント7の画像I7が、また、スライス断層面画像IX、IYは、このステント7に設置された3次元位置決め用マーカ7aの画像が点線で示されている。
【0074】この3次元スライス画像ISは、ステント7を装着した状態の顎部をX線CT撮影し、下顎のX線吸収係数の3次元データを得、この3次元データを、X断層面、Y断層面、Z断層面に平行な断面で、細かいピッチ、例えば、0.1ミリピッチで、スライス断層面画像IX、IY、IZとして80枚から100枚用意されたものである。
【0075】ここで、一つのスライス断層面画像上(IX、IY、IZのいずれか)で、その画像に表示されたカーソル(CX、CY、CZのうち表示されたもののいずれか)を移動することによって、これに対応して他のスライス断層面画像が連動して次々と表示されるので、インプラントを埋め込むのに適切なスライス画像を簡単に見つけ出すことができる。
【0076】こうして、所望の位置の3次元スライス画像ISが表示され、つまり、より適切なスライス断層面画像IX、IY、IZが表示されるので、この最適画面上で歯科用インプラント画像Iの埋入位置方向を決めることができ、便利がよい。
・・・
【0079】なお、図の「再スライス」は、この装置では、XYZ軸の座標軸の回転をすることができるが、その場合に、回転後の座標軸について、スライス断層面画像IX、IY、IZを改めて作成させるためのアイコン、「ROI設定」は、輪郭線上の点を画面上でマウスクリックすることにより、画面上の所望の部分を抽出させるためのアイコン、「スライス角度設定」は、座標軸回転のための角度を設定するためのアイコン、「カーソル表示」は、カーソルCX,CY,CZを画面上に表示させるかどうかの指示をするためのアイコン、「インプラント選択」は、所望のインプラントアイコンIiの選択が可能であることを示す表示である。
【0080】これらの機能のうち、この3次元スライス画像表示ISを用いて、インプラント埋入位置を決める際に、便利なのは、「スライス角度設定」、「再スライス」のアイコンである。例えば、これらを用いて、インプラントを埋入しようとする部分が、XYZ軸に対して傾いている場合には、その角度を「スライス角度設定」アイコンをクリックして設定し、「再スライス」アイコンをクリックして、回転した座標軸について、改めてスライス断層面画像IX、IY、IZを作成して、保存させることができる。
【0081】具体的には、この図では、スライス断層面画像IXで、顎骨の断面がカーソルCY,CZに対して傾いているが、この場合には、「スライス角度設定」アイコンをクリックして、この顎骨の傾斜を示す二点をクリックすることで、顎骨がカーソルCYに平行になるように座標軸の角度を設定でき、「再スライス」アイコンをクリックするとその回転後の座標軸について、再スライスされ、新たなスライス断層面画像IX、IY、IZが表示され、スライス断層面画像IXでも、顎骨、インプラントが垂直となって表示され、便利がよい。
・・・
【0096】また、図7に示す画面では、図5の場合と全く同様に、X、Y、Zカーソルcx、cy、czを移動させてスライス断層面画像IX、IY、IZを順次表示させることができる。
【0097】こうして、図6でだいたいの見当をつけた所望部分のより詳しいスライス断層面画像を見ることができるので、縮小表示の問題も解消され、また、スライス断層面画像が3次元表示されるので、直感的に理解しやすく、カーソル移動によってスライス断層面画像が順次表示されるので、希望部位の立体的な画像がより見つけ易い。
【0098】なお、この図7において、画像ICは、3次元スライス画像表示の基となるX、Y、Z断層面が、3次元領域Sに対してどのような関係にあるのかを立体的に示すガイド画像である。このようがガイド画像ICを参照することによって、スライス断層面画像IX、IY、IZが3次元領域Sをどのように切り出した画像であるかを、より明確に把握することができる。
・・・
【0102】このような一覧表示と3次元スライス画像表示とを組み合わせると、インプラントを植え立てる部分の断層面画像の選択が容易になる。
【0103】図8は、本発明の画像表示操作装置での3次元的表示の一例を示す図である。
【0104】図1では、顎部X線CT画像IG、歯科用インプラント画像IIは平面的な画像として表示されていたが、この表示画面1cでは、それぞれ、3次元的に表示されている。
【0105】したがって、歯科用インプラント画像の埋入位置方向をより実感的に決めることができる。また、条件がよければ、一度に、XYZ三方向の位置と方向を決めることができる。
・・・
[図:0001435520000048.jpg]
[図:0001435520000049.jpg]
・・・
[図:0001435520000050.jpg]
[図:0001435520000051.jpg]
・・・
[図:0001435520000052.jpg]
[図:0001435520000053.jpg]
」
イ 甲3の記載から看取・認定される事項
(ア)看取事項3(F4)
a 【0080】の、
「この3次元スライス画像表示ISを用いて、インプラント埋入位置を決める際に、便利なのは、「スライス角度設定」、「再スライス」のアイコンである。例えば、これらを用いて、インプラントを埋入しようとする部分が、XYZ軸に対して傾いている場合には、その角度を「スライス角度設定」アイコンをクリックして設定し、「再スライス」アイコンをクリックして、回転した座標軸について、改めてスライス断層面画像IX、IY、IZを作成して、保存させることができる。」
なる記載は、【0071】~【0080】の記載における文脈によれば、図4の3次元スライス画像ISの表示画面についてのものであると理解される。
b 【0081】の「スライス断層面画像IXで、顎骨の断面がカーソルCY,CZに対して傾いている」との記載を合わせ読めば、図4右下のスライス断層面画像IXにおいて、ステント7の像I7の下方に描出される、一部に点描が施された像は、顎骨の断面像であると解され、前記【0081】の記載は、該顎骨の断面が、鉛直方向に延びるY軸(カーソルcy(CY))に対し傾斜していることを説明したものと理解される。
c 図4左下のスライス断層面画像IY及び右下のスライス断層面画像IXからは、ステント7の像I7の下方の顎部X線CT画像IG部分(顎骨の断面像部分)に、歯科用インプラント画像IIが重畳表示されていることを看取できる。
d また、図4からは、前記画像IXにおいて、Y軸に平行な方向を示すYカーソルcy(CY)に対し、歯科用インプラント画像IIの中心軸が傾斜して表示されていることを看取できる。
e 【0081】では、
「この図では、スライス断層面画像IXで、顎骨の断面がカーソルCY,CZに対して傾いているが、この場合には、「スライス角度設定」アイコンをクリックして、この顎骨の傾斜を示す二点をクリックすることで、顎骨がカーソルCYに平行になるように座標軸の角度を設定でき、「再スライス」アイコンをクリックするとその回転後の座標軸について、再スライスされ、新たなスライス断層面画像IX、IY、IZが表示され、スライス断層面画像IXでも、顎骨、インプラントが垂直となって表示され、便利がよい。」
と記載され、顎骨の断面がカーソルCY・CZに対し傾いている場合に、顎骨がカーソルCYに平行になるように座標軸の角度を設定し、再スライスして新たなスライス断層面画像IX、IY、IZを表示することで、つまり、顎骨の傾斜に合わせてスライス画像の直交座標系を傾斜させることで、結果的にスライス断層面画像IXにおいて顎骨と共にインプラント画像IIも垂直(カーソルCYに平行)な表示となることが説明されていると理解できる。
(イ)看取事項3(F1)
【0044】~【0045】には、顎部歯科用インプラント画像IIを患者の顎部X線CT画像IG上で、「表示画面1cで点線で表示された位置方向II(0)から、最終的に、実線で表示された位置方向II(1)に決め」るように位置と向きを変える操作が説明され、これについて図1では、静止した画像IGに対し、II(0)とII(1)の像が相互に位置ズレして表示されている。
このことから、顎部歯科用インプラント画像IIは、表示座標系に対し静止した顎部X線CT画像上で位置と向きとが変えられるとの技術的事項を看取できる。
(4)甲4の記載
甲4には次の記載がある。
・記載4-4(1欄)
「[0004] However, if a dentist fails to insert the implant screw into an appropriate region in an accurate direction during the above surgery, the implant screw cannot satisfactorily support the artificial tooth or the inappropriately inserted implant screw may encroach on alveolar nerves, causing facial paralysis. Thus, the most important step in implantation is to assess accurately the density of the jawbone in the vicinity of a desired implantation location. In particular, contact between the implant screw and a low-density area and particularly encroachment on the nerves in the jawbone should be avoided.」
(当審訳:「しかしながら、上記手術中、歯科医師がインプラントスクリューを適切な部位に正確な方向で挿入できなかった場合には、インプラントスクリューが人工歯を満足に支持できなかったり、不適切に挿入されたインプラントスクリューが歯槽神経を侵してしまい、顔面神経麻痺を引き起こすおそれがある。したがって、インプラント埋入において最も重要なステップは、所望のインプラント埋入位置の近傍の顎骨密度を正確に評価することである。特に、インプラントスクリューと低密度領域との接触、特に顎骨の神経への侵入は避けるべきである。」)
・記載4-17(4欄)
「[0017] The main idea for such visualisation is in positioning the modelled implant screw into an image obtained from CT slices, and colouring the surface of the screw according to density values. Here, colouring is performing by a predetermined colour map which has been set corresponding to each CT number. Here, the simulation method can be simplified by modelling the implant screw as elements and then colouring the elements. The details are as follows: (1) the modelled implant screw is modelled as a mesh consisting of elements, (2) the modelled implant screw is positioned at a surgical region of the image obtained by CT, by the necessary translation and rotation, (3) density values (CT numbers) corresponding to each node of the elements are computed by an interpolation method, such as a linear interpolation method, and (4) parts, preferably faces, of elements, i.e., the surface of the modelled implant screw, are coloured according to node values using a colour map.」
(当審訳:「このような視覚化の主なアイデアは、CTスライスから得られた画像にモデル化されたインプラントスクリューを配置し、密度値に応じてスクリューの表面を着色することである。ここで、着色は、各CT数に対応して設定された所定のカラーマップによって行われる。ここで、シミュレーション方法は、インプラントスクリューを要素としてモデル化し、当該要素に着色することによって簡略化され得る。その詳細は以下のとおりである。すなわち、(1)モデル化インプラントスクリューは、要素からなるメッシュとしてモデル化され、(2)このモデル化されたインプラントスクリューが、必要な平行移動および回転によって、CTによって得られた画像の手術部位に位置決めされ、(3)要素の各ノードに対応する密度値(CT数)が、線形補間法などの補間法によって計算され、(4)要素の一部(好ましくは面)、すなわちモデル化されたインプラントスクリューの表面が、カラーマップを用いて、ノード値に応じて着色される。」)
・記載4-20(5欄)
「[0020] A plurality of CT slices for a jawbone are obtained in a direction perpendicular to the cervical bone, and a 3-dimensional CT image of the jawbone, as shown in figure 2, is obtained using the CT slices. The CT number of each pixel in the CT slice ranges from 0 to(2N-1) (where N is the number of bits used to represent each pixel) . If the number of bits is 16, the maximum CT number becomes 65,535. The jawbone image can be restored into a 3-dimensional structure or at an arbitrary angle by stacking the CT slices and is also reformed into an oblique cross-sectional image therefrom (step 31).」
(当審訳:「複数枚の顎骨のCTスライスが、頸骨に直交する方向に得られ、そのCTスライスを用いて、図2に示すような顎骨の3次元CT画像が得られる。CTスライスの各画素のCT数は、0から(2N-1)(Nは各画素を表現するために使用されるビット数)の範囲である。ビット数が16の場合、最大CT数は65,535となる。顎骨の画像は、CTスライスを重ねることによって3次元構造に復元、又は任意の角度で復元することができ、そこからオブリーク断面画像に再構成される(ステップ31)。」)
・記載4-31(7~8欄)
「[0031] In step 35, the implant screw model is inserted into an implant area of a jawbone. Figure 6 shows the state where the modelled implant screw 62 is inserted into an surgical region of the image of the jawbone 61 obtained through CT. A dental surgeon can arbitrarily determine the location, orientation and depth of the modelled implant screw to be inserted.」
(当審訳:「ステップ35では、インプラントスクリューモデルが、顎骨のインプラント領域に挿入される。図6は、CTにより得られた顎骨61の画像の手術部位に、モデル化されたインプラントスクリュー62が挿入された状態を示す。歯科医師は、モデル化されたインプラントスクリューを挿入する位置、向き、深さを任意に決定することができる。」)
・記載4-図6(14頁)
「
[図:0001435520000054.jpg]
」
(5)甲5の記載
甲5には次の記載がある。
・記載5-138R(138頁右欄)
「The software provides 4 interactive windows from the reformatted CT data. The axial image in which the panoramic curve is drawn is represented in the upper right quadrant (Figure 3b). The software allows the practitioner to view the entire study of axial images by scrolling through this window. The panoramic view of the axial image represented in the upper right quadrant window appears in the lower left quadrant window (Figure 3d). Cross-sectional images in a 3 × 3
format are represented in the upper left quadrant window (Figure 3a). The 3D reformat is represented in the lower right quadrant window (Figure 3c).」
(当審訳:「本ソフトウェアは、再フォーマットされたCTデータから4つのインタラクティブウィンドウを提供する。パノラミック曲線が描かれたアキシャル画像は右上の象限に表示される(図3b)。本ソフトウェアは、このウィンドウをスクロールすることで、施術者がアキシャル画像の全体を見ることを可能にする。右上の象限のウィンドウに表示されたアキシャル画像のパノラミックビューは、左下の象限のウィンドウに表示される(図3d)。3×3フォーマットでのクロスセクショナル画像は左上の象限のウィンドウに表示される(図3a)。3次元再フォーマットは、右下の象限のウィンドウに表示される(図3c)。」)
・記載5-140L(140頁左欄~中央欄)
「Prosthetic tooth position is generally determined from the 3D reformat. When the cursor is placed on the 3D reformatted image, the corresponding cross-sectional view of the bony site appears. The software has the ability to change the cross-sectional images from a 3 × 3 format to a 1 × 1 format by using the zoom function on the toolbar. An implant is planned in this 1 × 1 cross-sectional format (Figure 4).
The software allows the practitioner practitioner to manipulate the length, diameter, and position of the implant body. The software provides a database of all major implant manufacturers with the individual implant specifications as well as generic specifications. Once an implant is placed, the position can be checked in the other images and in the 3D view. The position of an implant can be changed from any view.
Figure 5 represents a planned implant case. The panoramic reformatted image is in the X-ray mode. The cursor is placed on the right first molar implant. The corresponding cross-sectional image is represented as well as the position on the axial image. The horizontal redline on the panoramic and cross-sectional images represent the axial image shown. The 3D image can be rotated to determine implant placement relative to simulated, anticipated prosthetic tooth position.
The software allows the practitioner to view a longitudinal and a concentric graph of bone density value around each individual implant (Figure 6). Should the practitioner feel inadequate density of bone exists, then repositioning of the particular implant may be required or bone augmentation indicated.
The software provides for 3 main mouse modes. The navigation and implant selection mode, the panoramic curve mode, and the nerve mode. The software provides the nerve mode to clearly represent the inferior alveolar nerve canal in the panoramic and the cross-sectional views (Figure 7). Using this information, irregularities in and misinterpretation of the position of the inferior alveolar nerve canal are avoided when planning mandibular implant reconstructions.」
(当審訳:「人工歯の位置は一般的に3次元リフォーマットから決定される。3次元リフォーマット画像上にカーソルを置くと、骨部の対応するクロスセクショナルビューが表示される。本ソフトウェアには、ツールバーのズーム機能を使用して、クロスセクショナル画像を3×3フォーマットから1×1フォーマットに変更する機能を有している。この1×1のクロスセクションフォーマット上でインプラントが計画される(図4)。
本ソフトウェアは、インプラント体の長さ、直径、位置を操作することを可能にする。本ソフトウェアには、個々のインプラントの仕様や一般的な仕様を伴う、全ての主要なインプラントメーカーのデータベースが用意されている。インプラントを埋入すると、他の画像や3次元ビューで位置を確認することができる。インプラントの位置は、全てのビューから変更することができる。
図5は、計画されたインプラントのケースを示す。パノラミック・リフォーマット画像はX線モードである。カーソルは右第一大臼歯のインプラント上に置かれている。対応するクロスセクション画像が、アキシャル画像上の位置と同様に表示される。パノラミック画像及びクロスセクショナル画像上の水平な赤線は、表示されているアキシャル画像を表す。シミュレートされ予想される人工歯の位置に対してインプラントの埋入位置を決定するために、3次元画像を回転させることができる。
本ソフトウェアでは、個々のインプラント周囲の骨密度値を長手方向の同心状グラフで表示することができる(図6)。施術者が、十分な骨密度が存在しないと感じた場合、特定のインプラントの再配置が必要になるか、又は骨増生が指示され得る。本ソフトウェアは3つの主なマウスモードを提供する。ナビゲーション・インプラント選択モード、パノラミック曲線モード、及び神経モードである。神経モードでは、パノラミックビュー及びクロスセクショナルビューで、下歯槽神経管を明確に表示する(図7)。この情報を使用することで、下顎インプラントの再構成の計画を立てる際に、下歯槽神経管の位置の不規則性や誤解を避けることができる。」)
(6)甲6の記載
甲6には次の記載がある。
「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、再構成画像、つまり、予め得られた三次元データを基に再構成された歯顎模型の断面や斜視の画像を用いた歯科実習方法、歯科実習システム、この方法を実現するプログラムを記録した記録媒体、及び、再構成画像、つまり、予め得られた三次元データを基に再構成された歯顎の断面や斜視の画像を用いた歯科表示システム、このシステムを実現するプログラムを記録した記録媒体に関する。
・・・
【0125】歯顎の3次元データが与えられると、本発明の画像再構成手段5によって、種々の画像を得ることができる。図9(a)は、画像表示手段7の表示部7aに表示されたものであり、その左側は、図7または図8の方法で得られた歯牙S7の3次元データを基に再構成した歯牙S7の立体斜視の再構成画像を示している。
【0126】この立体斜視画像において、図に示すように、適宜、断面B1を指定すると、表示部7aの右側にその断面の画像が表示される。表示部7aの左側で、順次、断面B1を移動、回転させていくと、それに合わせて、右側の断面図もそれに対応したものが表示されるようになっている。こうして、非常に便利に希望の歯牙や歯顎の断面、斜視の再構成画像を得、表示させることができる。なお、この右の部分で、Raは歯牙S7を支える歯槽骨、Rbは歯槽骨Raを覆う歯肉である。
・・・
【0131】この場合、適宜、インプラントIを選択し、歯牙6の適当な部分に、角度を決めて模擬的に植え立てて見る。この植え立て状態が、図中に点線で示すように、不都合の場合には、システム20は、警告を表示したり、警告音を発する。適当な位置と角度で植え立てられた場合は、OKサインを出す。OKサインがあった場合、システムは、そのインプラントIに合わせた植え立て穴のデータを治療目標形状のデータとして記録保存し、インプラント用の穴の穿孔の際に利用する。
【0132】こうして、再構成画像を用いると、インプラントの植え立て治療も、的確に行うことができる。この際、図に示した歯牙6の側方から見た画像だけでなく、前方あるいは後方から見た画像も合わせ表示するようにすると、前後、左右方向からの植え立て状態の検討を同時にすることができる。
・・・
[図:0001435520000055.jpg]
」
(7)甲7の記載
甲7には次の記載がある。
・記載7-1(明細書1頁)
「技術分野
本発明は、X線旋回中心を被写体内部の撮影関心領域に固定させ、この撮影関心領域だけにX線を旋回照射し、この撮影関心領域のX線吸収係数を再構成したX線画像である第2のX線断層画像を生成することができるX線CT撮影装置であって、この被写体の曲面X線断層画像や平面X線断層画像などの第1のX線断層画像も生成することができるX線CT撮影装置に関する。」
・記載7-42(明細書42頁)
「こうして得られたX、Y、Z断層面画像の内、3次元領域S内の任意の一点Pを含むものを取り出し、更に、Xカーソルcx、Yカーソルcy、Zカーソルczと共に表示した画面の概要が図21(b)である。
このような処理を第2のX線断層撮影時に行うため、図22の処理が可能となる。
すなわち、図22(a)に示すように、先述の第1のX線断層撮影により撮影された歯科用パノラマ画像や耳鼻科用曲面X線断層画像中に表示されている十文字ポイントPをカーソル移動すれば、その位置に対応して、先述する手順により予め切り出したX線断層画像、つまり、第2のX線断層撮影によって撮影され、前記断層画像関連付け手段13で前記第1のX線断層画像と関連付けられた、対応する前記第2のX線断層画像が前記画像記録手段14から前記対応画像呼出手段100により呼び出され、図22(b)のように表示される。」
・記載7-43(明細書43頁)
「なお、上記においては、図25(a)のように、画像の切り出し方向を、X、Y、Z軸方向のうち、少なくとも1方向に所定間隔で切り出した例を示したが、図25(b)のように、撮影関心領域内に軸CTRを定め、その軸CTRを中心に、回動させるよう、画像処理により、画像を切り出していく方式も考えられる。」
・記載7-図21(図面21/25頁)
「
[図:0001435520000056.jpg]
[図:0001435520000057.jpg]
」
・記載7-図25(図面25/25頁)
「
[図:0001435520000058.jpg]
」
(8)甲8の記載
甲8には次の記載がある。
「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、CT撮影などして得られた3次元領域の3次元CTデータを再構成し、断層面画像を表示する表示方法、表示装置、この方法を実現するプログラムを記録した記録媒体に関する。
【0002】
【従来の技術】CT撮影などして得られた3次元領域の3次元CTデータを再構成して、任意の断層面を指定することによって、断層面画像、つまり、指定された断層面上の3次元CTデータを画像化したものを得ることが出来るが、従来は、必要な断層面について得られた断層面画像を複数枚、所定の大きさのフィルムに焼き付けたり、断層面を指定して、その都度得られた断層面画像を表示装置の画面に表示させていた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、フィルムに焼き付ける方法では、表示枚数に限界があり、表示された断層面画像を見て更に別の断層面の断層面画像が欲しい場合には再度、断層面を指定して3次元CTデータを画像化し、フィルムに焼き付ける必要があるため、機動性に欠けていた。
【0004】また、表示装置の画面に表示させる場合も含めて、断層面画像は、所望の部分について、相互に直交する3方向から見たものを、相互に対比させて見られるようにすると解りやすいが、このような配慮はなされていなかった。更に、表示装置に表示させる場合には、断層面を指定して断層面画像を表示させるのに、その画像処理のために一定の時間が必要となり、断層面画像を利用する者にもどかしさを与えていた。
【0005】本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、3次元領域の3次元CTデータを用いて、直感的に解りやすい断層面画像が容易に得られ、診療目的に最適な位置と方向から見た断層面画像の選定が容易な断層面画像の表示方法、表示装置、この方法を実現するプログラムを記録した記録媒体を提供することを目的とする。
・・・
【0058】
【発明の実施の形態】以下、添付図とともに、本発明の実施の形態について説明する。
【0059】図1、2、3は、本発明の断層面画像の表示方法によって表示された画面の例を示す図である。
【0060】これらの図において、Sは、本発明の断層面画像を表示する対象となる3次元領域であり、ここでは、歯科診療の対象となる歯列弓の一部分を例として用いている。3は3次元領域Sの断層面画像などの画像が表示される画面、IX、IY、IZは、それぞれ、画面3に表示された3次元領域SのX断層面画像、Y断層面画像、Z断層面画像であり、cx、cy、czは、X断層面画像、Y断層面画像、Z断層面画像の画像を切り出す断層面であるX断層面、Y断層面、Z断層面のそれぞれの他の断層面への投影線であるXカーソル、Yカーソル、Zカーソルである。Pは、3次元領域Sの中の任意の点であり、ここでは、この点Pに注目して、この点Pを含む断層面画像が表示されている。
【0061】これらの図では、任意の1点Pを含むZ断層面画像IZ、Y断層面画像IY、X断層面画像IXが、通常の平面図、正面図、側面図のように配列表示されており、任意の1点を上面、正面、側面から見た断層面画像が対比されて表示されるので直感的に解り易い。
【0062】Z断層面画像IZ、Y断層面画像IY、X断層面画像IXのそれぞれには、Xカーソルcx、Yカーソルcy、Zカーソルczが表示されている。つまり、Z断層面画像IZにはXカーソルcx、Yカーソルcy、Y断層面画像IYにはZカーソルcz、Xカーソルcx、X断層面画像IXにはYカーソルcy、Zカーソルczが表示されている。
【0063】つまり、それぞれ、Z断層面画像IZに表示されたXカーソルcxはX断層面の位置、YカーソルcyはY断層面の位置、Y断層面画像IYに表示されたZカーソルczはZ断層面の位置、XカーソルcxはX断層面の位置、X断層面画像IXに表示されたYカーソルcyは、Y断層面の位置、ZカーソルczはZ断層面Yの位置を示している。
【0064】こうして、3つのX断層面画像、Y断層面画像、Z断層面画像の相対的な関係が直感的に解り易い。
・・・
【0091】この表示装置では、元のxyz座標系に対して、希望の角度回転させたuvz座標系についても、座標軸回転手段8によって、座標軸の回転処理を行うことによって、同様に、3つの断層面画像の配列表示や、カーソル移動に伴う断層面画像の順次表示をすることができるが、その詳細について以下に説明する。
【0092】図7は本発明の断層面画像の表示方法において用いる回転角度の指定方法の一例を示す図、図8は図7で指定した回転をさせ再構成した画面で、更に、回転角度の指定を行う方法を示す図、図9は図8で指定した回転をさせ再構成した画面を示す図である。
【0093】図7では、図1と同じ3次元領域Sについて、この3次元領域Sが、xyz座標系のZ座標面内で、幾分斜めになっている状態で、それぞれのX、Y、Z断層面画像IX、IY、IZが画面3に表示されている。こので、「2点でスライス角度を設定」のボタンをクリックし、座標軸の回転角度を指定するモードに入る。
【0094】ここで、Z断層面画像IZで、2点P1、P2を指定すると、それを結ぶ直線P1-P2が表示され、この直線P1-P2をマウス4Bなどでプレスして保持し、例えば、Z断層面画像IZのYカーソルcyになるように回転させると、このZ断層面画像IZの中心点Rに対する直線P1-P2の回転角度θが決まる。
【0095】次に、「再スライスを実行」ボタンをクリックすると、座標軸回転手段8によって、この回転角度θだけ、xyz座標が、Z断層面画像IZに垂直な座標軸、つまりz軸を中心として回転され、新しいuvw座標系が生成される。
・・・
【0099】図8において、cu、cv、cwは、回転された新しいuvw座標系のUカーソル、Vカーソル、Wカーソルを示し、IU、IV、IWは、この新しいuvw座標系におけるU断層面画像、V断層面画像、W断層面画像を示している。
【0100】この図8を見ると解るように、W断層面画像IWで、3次元領域Sが座標系に沿うような方向となっており、この3次元領域Sについて術者が見たい部分の見たい方向からの断層面画像が表示されている。
【0101】この画面3において、U断層面画像IUを見ると、歯牙の植え立て方向とVカーソルcvの方向とが幾分傾いた状態であるのが解る。この状態で、特に、この歯牙の植え立て方向に直交する方向から見た断層面画像を希望する場合、更に、「2点でスライス角度を設定」のボタンをクリックし、回転角度指定モードに入り、2点P3、P4を指定し、直線P3-P4をVカーソルcvになるように回転させると回転角度θが決定され、座標回転が行われ、新しいuvw座標系について同様に、断層面画像の切り出しが行われ、図9で示すように画面3に表示される。
【0102】この画面3においても、図1、2、3で示したのと同様に、カーソルを移動させることによって、断層面画像を順次表示させることができるのは、もちろんである。
【0103】こうして、本発明の断層面画像の表示方法や装置においては、初めの座標系においても、カーソルを移動させながら、断層面画像を順次表示できるので、見たい部分の画像が素早く、簡単に見つけ出せる上に、さらに、ここで述べたように、見たい方向に座標軸を回転させて、同様に、断層面画像を順次表示させることができるので、希望の部分を希望の方向から見た断層面画像をいち早く、簡単に得ることができる。
【0104】図10は、本発明の断層面画像の表示方法において用いる回転角度の指定方法の他例を示す図である。
【0105】この指定方法は、図7、8で説明したように、一回毎に一つのカーソルの回転方向と角度を指定して座標軸回転をするのでなく、一度に、元のxyz座標系の3つのx、y、x軸のうち複数の座標軸回りの回転角度を指定しようとするものである。
【0106】その方法を、図7と同じxyz座標系によって表示された3次元領域Sについて、同じように回転させる場合について説明する。
【0107】図7と同様に表示された画面3で、「2点でスライス角度を設定」をクリックすると、角度設定モードとなる。
【0108】ここで、Z断層面画像IZで点P5、P6を指定し、直線P5-P6を同様に回転させ、回転角度θ1を得る。ついで、X断層面画像IXで点P7、P8を指定し、直線P7-P8を同様に回転させ、回転角度θ2を得る。この後に、「再スライスを実行」ボタンをクリックすると、座標軸回転手段8によって、この回転角度θ1だけ、まず、z軸回りの座標回転が行われ、次いで、回転角度θ2だけx軸回りの座標回転が行われ、その後に、新しいuvw座標系において、断層面画像の切り出しが行われ、画面3に表示されるが、その表示内容は図9と同じである。これより、本発明の断層面画像の表示方法の更なる特徴である断層面画像の一覧表示について説明する。
・・・
[図:0001435520000059.jpg]
・・・
[図:0001435520000060.jpg]
・・・
[図:0001435520000061.jpg]
[図:0001435520000062.jpg]
[図:0001435520000063.jpg]
[図:0001435520000064.jpg]
」
(9)甲9の記載
甲9には次の記載がある。
・記載9-842-1(842頁「要約」欄)
「Abstract?A preoperative planning system for oral implant surgery was developed which takes as input computed tomographies (CT’s) of the jaws. Two-dimensional (2-D) reslices of these axial CT slices orthogonal to a curve following the jaw arch are computed and shown together with three-dimensional (3-D) surface rendered models of the bone and computer-aided design (CAD)-like implant models. A technique is developed for scanning and visualizing an eventual existing removable prosthesis together with the bone structures. Evaluation of the planning done with the system shows a difference between 2-D and 3-D planning methods. Validation studies measure the benefits of the 3-D approach by comparing plans made in 2-D mode only with those further adjusted using the full 3-D visualization capabilities of the system. The benefits of a 3-D approach are then evident where a prosthesis is involved in the planning. For the majority of the patients, clinically important adjustments and optimizations to the 2-D plans are made once the 3-D visualization is enabled, effectively resulting in a better plan. The alterations are related to bone quality and quantity (p<0.05), biomechanics (p<0:005), and esthetics (p<0.005), and are so obvious that the 3-D plan stands out clearly (p<0.005): The improvements often avoid complications such as mandibular nerve damage, sinus perforations, fenestrations, or dehiscences.」
(当審訳:「顎のコンピュータ断層撮影(CT)像を入力情報とする、口腔インプラント手術のための術前計画システムが開発された。顎弓に沿った曲線に直交する、これらのアクシャルCTスライスの2次元(2-D)再スライスが計算され、骨の3次元(3-D)表面のレンダリングモデル及びコンピュータ支援設計(CAD)様のインプラントモデルとともに表示される。既存の最終的な取外し可能補綴物を、骨構造とともにスキャン及び視覚化する技術が開発される。このシステムによるプランニングの評価により、2-Dプランニング方法と3-Dプランニング方法との違いが示される。検証研究では、2-Dモードのみで作成した計画と、本システムの完全な3-D可視化能力を使用してさらに調整された計画とを比較することにより、3-Dアプローチの利点を測定する。そして、3-Dアプローチの利点は、補綴物がプランニングに関与する場合に明らかになる。大半の患者において、3-D可視化が可能になると、2-Dプランに対して臨床的に重要な調整及び最適化が行われ、より良い計画が効果的に得られる。この変更は、骨質及び骨量(p<0.05)、バイオメカニクス(p<0.005)、審美性(p<0.005)に関連しており、3-Dの計画が明確に卓越している程度に明白なものである(p<0.005)。この改善によって、多くの場合、下顎神経の損傷、副鼻腔穿孔、開窓、離開などの複雑な問題が回避される。」)
・記載9-842-2(842頁右欄最下段落)
「Aside from the design criteria, there exist constraints inherent to the anatomy of the region. Vulnerable structures such as the mandibular nerve and, to a lesser extent, the sinus cavities, must be avoided. These constraints often severely limit the number of available locations and so result in an absolute contraindication for endosseous oral implants for a significant number of patients. They are the reason that a preoperative plan is routinely made for the more demanding cases. A preoperative planning aims at optimizing all the design specifications, which can related to bone quality/quantity, biomechanics and esthetics, while remaining within the constraints.」
(当審訳:「設計基準とは別に、その部位の解剖学的構造に固有の制約が存在する。下顎神経や(比較的程度が低いが)副鼻腔のような脆弱な構造は避けなければならない。これらの制約により、使用可能な部位の数が極端に制限されることが多く、その結果、かなりの数の患者にとって、骨内口腔インプラントは絶対的な禁忌となる。これが、難易度の高いケースについて術前計画が定期的に行われる理由である。術前計画は、制約の範囲肉で、骨質/骨量、バイオメカニクス、及び審美性に関連し得るすべての設計仕様を最適化することを目的とする。」)
・記載9-849-1(849頁右欄~850頁左欄)
「B. Qualitative Validation
Representative examples of the adjustments to the 2-D plan that were made in 3-D mode are now given. They provide further evidence in favor of the 3-D approach. Corrections involving the parallelism of the implant axes are quite frequent (Fig. 6). Aberrations are indeed readily visible once the slice is tilted. Parallelism is not only important for the biomechanics: Prosthesis design is also facilitated by parallel axes since it is then easier to slide the prosthesis over the abutments. If the abutments are not parallel, the prosthesis often has to be made in several parts, which is more expensive.
Some alterations to the plan were related to the better visualization of the remaining teeth from 3-D images (Fig. 7). But also the ability to show reslices along every direction makes a difference. The CAD models of the implants are visible on every reslice they intersect, and corrections on these slices are quite often done. An example of this is a sinus bottom that dips in between the roots of two teeth. A sinus perforation on adjacent slices of the slice whereupon the implant was defined would not be visible in the manual planning procedure (Figs. 8 and 9). Wedging of the tip of the implant in a place where the cortex configuration allows it, is commonly used to enhance the primal stability. Previously, the wedging was planned for the labio-oral (normal to the jaw arc) directions since it is mostly seen on the orthogonal reslices, but the computerized system also allows assessment of mesio-distal (tangential to the jaw arc) wedging of the implant tip through the use of tangential reslices. An example is found in Fig. 8, where the implant tip could better be wedged before the sinus.」
(当審訳:「B.定性的検証
次に、3Dモードで実行された、2D平面視に対する調整の代表例を示す。これらの例は、3Dアプローチを支持するさらなる証拠となる。インプラント軸の平行度に関する補正は、非常に頻繁に行われる(図6)。スライスを傾斜させると、収差が実に容易に視認できる。平行度は、バイオメカニクスにとって重要なだけではない。すなわち、軸が平行であることによって、アバットメント上で補綴物をスライドさせやすくなるので、補綴物の設計も容易になる。アバットメントが平行でない場合、補綴物をいくつかのパーツで製作しなければならないことが多く、より高価になる。
平面視に対する一部の変更点は、3D画像から残存歯がより見やすくなったことである(図7)。しかしながら、あらゆる方向に沿ってリスライスを表示できることも異なる点である。インプラントのCADモデルは、当該モデルが交差するすべてのリスライスで視認することができ、これらのスライス上での修正が非常に頻繁に行われる。この例として、2本の歯根の間にある副鼻腔底部が挙げられる。インプラントが画定されたスライスに隣接するスライス上の副鼻腔穿孔は、手動の計画手順では視認できない(図8、図9)。皮質楕造が許容する場所にインプラントの先端を押し込むことは、主要な安定性を高めるために一般的に使用される。以前は、このような押し込みは、直交するリスライス上で最もよく見えるので、唇-ロ腔方向(顎の弧に垂直な方向)で計画されていたが、コンピュータ化されたシステムでは、接線方向のリスライスを使用することによってインプラント先端の近遠心方向(顎の円弧の接線方向)の押し込みを評価することもできる。その一例が図8であり、インプラント先端は、この図8よりも良い形で副鼻腔の手前に押し込むことができる。」)
・記載9-849-図8(849頁図8)
「
[図:0001435520000065.jpg]
」
(図8注釈の当審訳:「図8 (a)1枚のスライスだけ見ると、インプラントを挿入するのに良い位置に見える。インプラントの軸は、補綴物から歯の方を向いている(矢印)。(b)側面視では、副鼻腔穿孔のリスクが明らかである(矢印)。副鼻腔の手前(三角)に押し込むのがより良い選択肢であろう。」)
(10)甲10の記載
甲10には次の記載がある。
・記載10-570(570頁中央欄下から8行~同右欄最下行)
「It was suggested that a multi-slice helical CT is useful in imaging diagnosis of dental implant treatment (Cavalcanti et al. 2002). The former multi-planar reconstructed images and present dental reconstructed images (Dental CTR, DentaScanR, etc.) consist of continuously piled-up axial CT images that are perpendicular to the axial CT plane (Besimo et al. 1995). In the mandibular posterior region, the angles of designed implants vary and frequently differ from the angles perpendicular to the axial CT plane. In such cases, measurement of the mandibular height is inaccurate, differing from the real angles of implants (Naitoh et al. 2002).
Recently, double-oblique reconstructed images, which can be set to the free angles of the axial CT plane, were obtained using multi-slice helical CT (Fig.1). In order to apply the imaging diagnosis for dental implant treatment, this study was performed to clarify the measurement accuracy of double-oblique reconstructed images using dried mandibles. The measurement values of mandibles by micro-CT were obtained as a gold standard.」
(当審訳:「歯科用インプラント治療の画像診断において、マルチスライスしたヘリカルCTが有用であることが示された(Cavalcanti他)。以前の多断面再構成像や現在の歯科用再構成画像(Dental CTR、DentaScanR等)は、軸方向CT平面に垂直となるような連続的に積み上げられた軸方向CT画像で構成される(Besimo他1995年)。
下顎臼歯部では、計画されたインプラントの角度は様々であり、軸方向CT平面に垂直な角度とは異なることが多い。そのような場合、インプラントの実際の角度とは異なり、下顎高径の測定は不正確である(内藤他2002年)。近年、マルチスライス・ヘリカルCTを用いて、軸方向CT平面の自由な角度が設定可能なダブル-オブリーク再構成画像が得られるようになった(図1)。
本研究では、この画像診断を歯科用インプラント治療に応用するため、乾燥下顎骨を用いてダブル-オブリーク再構成画像の測定精度を明らかにすることを目的とした。マイクロCTによる下顎骨の測定値をゴールドスタンダードとして取得した。」)
・記載10-571-図1(571頁左上)
「
[図:0001435520000066.jpg]
」
(当審訳図:「
[図:0001435520000067.jpg]
」)
・記載10-571-1(571頁左欄)
「Dried mandibles
Three semi-lateral dried mandibles were used in this investigation. Two pieces of acrylic plate were fixed at right angles, and then the mandible was set on the acrylic plate base. The imaginary occlusal plane was set parallel to the acrylic plate base and the ortho-radial bucco-lingual direction in the posterior region was set parallel to the perpendicular acrylic plate (Fig. 2). The diagnostic templates, which were originally designed for the CT examination, contained aluminum tubes indicating the simulated position of the implants (Naitoh et al. 2000).」
(当審訳:「乾燥した下顎骨
この研究では、3つの片側乾燥下顎骨を用いた。2枚のアクリル板を直角に固定し、下顎骨をこのアクリル板ベースにセットした。仮想的な咬合平面はアクリル板底面と平行に設定し、臼歯部の正放線頬舌方向は、垂直なアクリル板と平行に設定した(図2)。診断用ひな形はもともとCT検査用に設計されたもので、インプラントの模擬位置を示すアルミニウム・チューブが入っている(内藤等2000)。」)
・記載10-571-2(571頁中央欄)
「The axial images in the helical scans were performed at 0.5-mm thick slices with 0.25mm intervals. The cross-sectional images in the aluminum tube sites were reconstructed using a double-oblique program (Fig. 4a, b).」
(当審訳:「ヘリカル・スキャンのアキシャル画像は、0.25mm間隔で0.5mm厚のスライスにより行った。アルミニウム・チューブ位置でのクロスセクショナル画像は、二重傾斜プログラムを用いて再構成した。」)
・記載10-572-図4(572頁上部)
「
[図:0001435520000068.jpg]
」
(当審訳図:「
[図:0001435520000069.jpg]
」)
・記載10-573(573頁左欄~中央欄)
「Discussion
Cross-sectional images reconstructed from the axial images have been used in imaging diagnosis of dental implant treatment (Stephen & Rothman 1998; Naitoh et al. 2000). It is suggested that the angles of designed implants in the mandibular posterior region frequently differ from the angles perpendicular to the axial CT plane (Naitoh et al. 2002). Detailed 3-D reconstructed images and free 2-D reconstructed images in any plane can be obtained using multi-slice helical CT. The double-oblique reconstructed images were just one type of 3-D post processing. It was reported that the 3-D reconstructed images allowed highly accurate measurement for dental implant placement (Cavalcanti et al. 2002). This study was performed to clarify the measurement accuracy of double-oblique reconstructed images using dried mandibles. The measurement values of mandibles obtained using micro-CT were used as the gold standard. We reported that the accuracy of micro-CT images measurements is high and a micro-CT can replace bone slice segments for assessments of the accuracy of medical X-ray units (Naitoh et al. in press). The thickness of the average micro- CT image was adjusted to the thickness of the double-oblique image. Although a small difference was observed at some hundredths of millimeters between the micro-CT and the double-oblique image, the difference did not have an important influence on the present results.」
(当審訳:「歯科用インプラント治療の画像診断には、アキシャル画像から再構成したクロスセクショナル画像が用いられてきた(Stephen及びRothman1998、内藤他)。下顎臼歯部では、計画されたインプラントの角度が軸方向CT平面に垂直な角度と異なることが多いと示されている(内藤他2002)。マルチスライス・ヘリカルCTを使用することで、詳細な3次元再構成画像と任意の平面における自由な2次元再構成画像を得ることができる。ダブルオプリーク再構成画像は、3次元の後処理の一種にすぎない。3次元再構成画像は、歯科用インプラント埋入のための高精度な計測を可能にすることが報告されている(Cavalcanti他2002)。本研究では、乾燥下顎骨を用いて二重傾斜再構成画像の測定精度を明らかにすることを目的とした。マイクロCTを用いて得られた下顎骨の測定値をゴールドスタンダードとして用いた。我々は、マイクロCT画像の測定精度は高く、医療用X線装置の精度評価において、骨スライスセグメントの代わりにマイクロCTが使用できることを報告した(内藤他、印刷中)。平均的なマイクロCT画像の厚みを二重傾斜画像の厚みに調整した。マイクロCT画像と二重斜位画像の間には、数百分の一ミリメートルのわずかな差が認められたが、この差は今回の結果に重要な影響を及ぼさなかった。」)
・記載10-574(574頁右欄)
「
[図:0001435520000070.jpg]
」
(当審註:甲10の当審訳において「double-oblique」の訳語は「二重傾斜」としている。)
(11)甲11の記載
甲11には次の記載がある。当審訳において文末等の論文参照番号は訳文において省略した。
・記載11-9(9頁左欄・10頁左欄(「Abstract」項))
「
[図:0001435520000071.jpg]
」
(当審訳:「概要
コンピュータ断層撮影法(CT)と磁気共嗚画像法(MRI)は、人体の断面画像を提供する医療用画像モダリティである。この10年で、CTは歯科用インプラントのための顎の評価に最も頻繁に使用される画像モダリティとなった。さらに、オッセオインテグレーテッドインプラントに関する正しい術前診断と治療計画とを得るために、画像再フォーマット・ソフトウェアが開発されている。以前の研究では、CT画像は0%から6%の歪み率の影響を受けることが示された。これは、スキャン中の患者のアライメント、患者の動き、又は画像を構成するピクセルの飽和に起因する可能性がある。以前の問題を解決するために、口腔内ステントを使用して、埋入するインプラントの軸に対して垂直に患者の頭部をセンタリングすることができる。しかし、複数のインプラントを埋入しなければならない場合(軸が大きく異なる可能性もある)、計画された1本の歯の軸にそれぞれ垂直なアキシャル画像を、対応する数だけ取得する必要がある。もちろん、患者を何度もCTスキャンにさらすことは避けなければならない。
本研究では、1回のCT撮影で骨と計画される歯の正確な形態学的測定を得るために、インプラント手術計画を向上させるソフトウェアアプローチを紹介する。これは、オリジナルのCT画像に画像処理技術を適用することで、異なる平面の上に横たわる新たなCT画像を生成し、場合によっては異なる歯に対して垂直な平面上のCT画像を生成することで達成される。本ソフトウェアシステム(DentalVox)はC++で実装され、Windowsオペレーティングシステムの下、Intelベースのパーソナルコンピュータで動作する。DentalVoxは、他の類似のソフトウェアツールに比べ、歯科用インプラントの設計と計画において、より優れた機械的結果を確保する。そして、任意の方向を選択すれば、アキシャル画像(並びにパノラミック及びクロスセクショナル画像)を再構成できる。これによって、機械的及び審美的に優れた人口歯を、土台となる顎の形態に埋め込むことが可能になる。」)
・記載11-10(10頁左欄~右欄(「Introduction」項))
「
[図:0001435520000072.jpg]
」
(当審訳:「コンピュータ断層撮影法(CT)と磁気共嗚画像法(MRI)は、人体の断面画像を提供する医療用画像モダリティである。この10年で、CTは歯料用インプラントのための顎の評価に最も頻繁に使用される画像モダリティとなった。さらに、オッセオインテグレーテッドインプラントに関する正しい術前診断と治療計画とを得るために、画像再フォーマット・ソフトウェア、たとえば、DentaScan(GE Medical Systems社、米国ウィスコンシン州ミルウォーキー)、3D/Dental(Columbia Scientific社、米国メリーランド州コロンビア)、及びSIM/Plant(Columbia Scientific社)が開発されている。ソフトウェアツールは、インプラント外科医のために、インプラント部位の3次元的な観察を可能にする画像のセットを作成する。このようなツールにより、距離、歯及びインプラントのサイズの測定、骨質の評価、インプラント埋入のシミュレーションが可能になる。
しかし、これまでの研究により、CT画像は0%~6%の歪み率の影響を受け、この歪みが外科手術の結果に影響を及ぼす可能性があることが示されている。この歪みは、スキャン中の患者のアライメント、患者の動き、画像を構成するピクセルの飽和に起因する可能性がある。最初の問題に対する可能な解決策は、スキャン中に患者が装着する口腔内ステントである。このステントは、Franchini(Centrascan, Anthos, Imola/Bologna,イタリア)が開発した口腔外装置に接続され、口腔外装置は、CT技師に、撮影面とスキャンする領域(通常1.0mm単位)を示す。アキシャル平面が、計画された歯の軸に垂直にスキャンされるように、患者がアライメントされるべきである。この点で、CentrascanRは、挿入するインプラントの軸に垂直なアキシャル平面を揃えるように、患者の頭部をセンタリングするように設計されている。また、これはCT技師に、計画された歯の軸の口腔外画像をも提供する。しかし、この方法は、複数のインプラントが必要な場合、アライメントの問題を解決するには不十分である。この場合、計画された歯の1つの軸に対してそれぞれ垂直方向に異なるCT撮影を行う必要があるため、患者は、複数回のCTスキャンに過度に晒されることを意味する。
本論文では、1回のCT撮影で、患者の方向や選択した歯に関係なく、インプラント手術計画を向上させ、土台となる骨と計画した歯の正確な形態学的測定を得るソフトウェアシステム(DentalVox)を紹介する。これは、オリジナルのCT画像に画像処理技術を適用することで、異なる平面(場合によっては異なる歯に垂直な平面)上に横たわる新しいCT画像を生成することで実現する。本ソフトウェアは、オリジナルのCT画像セットに補間アルゴリズムを適用し、インプラント部位の再構築された3次元視覚化を管理するための強力なツールを提供する。DentalVoxはC++で実装され、Windows/95/98/NTオペレーティングシステムの下、Intelベースのパーソナルコンピュータで動作する。」)
・記載11-12(12頁中央欄、14頁左欄)
「
[図:0001435520000073.jpg]
」
(当審訳:「このように、ソフトウェアツールは、外科医が自由に使用できる画像のセットを用意し、画像のセットは、インプラント部位の3次元的な探索を可能にするとともに、測定、インプラント部位の骨質評価、インプラント埋入シミュレーションのためのツールも提供する(図3)。図3に描かれるように、インプラントを皮質骨に固定するためには、インプラントの深さを測定できることが基本的に重要である。しかし、クロスセクショナル画像には必ずしも所与の歯の軸が含まれているとは限らない。これは、選択した歯の軸に垂直な平面でアキシャル画像を取得した場合にのみ成功する。アキシャル平面が咬合平面と平行にスキャンされない場合、クロスセクショナル画像で得られる値には、歯軸とクロスセクショナル画像の平面との間の角度Φに依存する誤差要素が含まれる(図4)。」)
・記載11-15-図4(15頁下部)
「
[図:0001435520000074.jpg]
」
(注釈の当審訳:「図4 ラジアル画像の空間的配向及び関連する測定誤差d’=d*(1/cos(Φ))」)
・記載11-14-1(14頁左欄~中央欄)
「
[図:0001435520000075.jpg]
」
(当審訳:「インプラントの深さ及びその角度方向の測定誤差は、歯科用インプラントの計画及び設計の誤差につながる。このような問題を回避するためには、埋入する歯科用インプラントごとにCTスキャンを行い、埋入された歯の1つの軸に垂直に各撮影を行うのが有利である。アキシャル面が咬合平面に平行にスキャンされるように、つまり計画されたインプラントの軸に垂直にスキャンされるように患者をアライメントするために、口腔内ステント又はCentrascanRを使用することができる。
しかし、歯軸は歯列円弧に沿ってその方向を変えるため(つまり、前頭面上では軸はウィルソン曲線に直交し、サジタル面上では軸はスピー曲線に直交する)、ある歯に対して(つまり、歯軸に直交する撮影面で)撮影されたCTスキャンは、軸が別の方向を向いている可能性のある別の歯のインプラント計画には直接的に役立たない。そのため、複数のインプラントを埋入しなければならない場合、患者を何度もCTスキャンに晒すことは推奨されないため、この方法は適用できない。それにもかかわらず、取得したCT画像に画像処理技術を適用することにより、任意の歯に垂直なアキシャル画像を取得することが可能であり、より一般的には、1回のCT撮影から可能なすべてのアキシャル及びクロスセクショナル画像を作成することが可能である。これは、次の章で説明するソフトウェアツールであるDentalVoxによって実現される。DentalVoxを使用することで、一旦歯が選択され、その軸の方向が決定されると、その軸を含むラジアル画像を作成することができるため、測定誤差をなくすことができる。」)
・記載11-14-2(14頁右欄~16頁左欄)
「
[図:0001435520000076.jpg]
」
(当審訳:「DentalVox
DentalVoxは、歯軸とCTスキャナ撮影面との間の差による誤差を補正することができる。特に、DentalVoxは、取得されたCT画像に画像処理技術を適用し、異なる平面上に横たわる、すなわち異なる方向に直交し得る新しいCT画像のセットを取得する。この新しいCT画像に基づいて、オリジナルのCT撮影の基準となった歯以外の選択された歯に、さらなる歯科用インプラントを計画することができる。DentalVoxは、この新しいCT(アキシャル)画像から、アプリケーションに必要なその他の関連画像(パノラミック画像及びアキシャル画像)を作成することができる。
Dental Vox tools
Dental Voxは、CT技師とインプラント外科医が自由に使用できる2つのソフトウェアツール群を提供する。最初のグループは、CT画像に画像処理技術を適用し、新しい改良画像(アキシャル画像)を取得する。DentalVoxは、ユーザーが歯の軸を選択すると、この新しいアキシャル画像のセットを自動的に作成する。」)
・記載11-18-1(18頁左欄~中央欄)
「
[図:0001435520000077.jpg]
」
(当審訳:「歯の軸を中心としてCTスキャンを受ける患者のケースを考えてみる。この患者はCentrascanRステント(図8)を装着する。このステントにはX線不透過性のシリンダがいくつか入っており、各シリンダは歯の軸に合わせて配置されている。このようにして、ステントは、提案される歯の位置を特定するだけでなく、歯の軸を特定し、各シリンダの軸を口腔外に移動させることでCT技師に提示する。ステントによって特定された1つのシリンダ(歯の代替)の軸に対して直交するアキシャル面がスキャンされるようにCT技師は患者を位置合わせすることができる。
一旦CT画像が行われると、操作者は、容易に搬影スキャン方向を確認することができる。CT画像を見ると、基準となるシリンダの断面は、常に同じ位置にあり、完全な円形である(図9)。一方で、他のシリンダの断面は、その位置と形状(通常は軸が異なるため楕円形)が異なる。CT技師やインプラント外科医は、任意のアキシャル画像上で、下顎堤の曲率に沿った曲線を描くことができる。DentalVoxは、この情報とアキシャル画像のセットから、新しいインプラント埋入のための手術計画に使用するパノラミック画像とクロスセクショナル画像を計算する。DentalVoxを使用することで、インプラントを埋入する骨構造を正しく正確に示す画像(パノラミックなど)を作成することができる(図10)。」)
・記載11-18-2(18頁右欄・20頁左欄)
「
[図:0001435520000078.jpg]
」
(当審訳:「DentalVoxの主な新規性は、(選択された歯の軸に直交する)オリジナルのCTアキシャル画像のセットから出発して、異なる平面及び方向を考慮して新しいアキシャル画像のセットを計算できることである。この例では、歯について取得されたCT画像のセットが与えられると、たとえば、歯の軸に直交する平面上に横たわるアキシャル画像の新しいセットを得ることができる。これは、オリジナルのアキシャル画像における異なるシリンダの軸の方向を特定することによって容易に得ることができる。この軸は、シリンダを含む最初と最後のラジアル画像で利用可能なシリンダの断面の中心に対応する2つの点を(マウスクリックで)選択することで特定される。新しい軸の角度方向が計算されると、DentalVoxはこの新しい軸に直交するアキシャル画像のセットを算出する。新しいアキシャル画像のセットは、オリジナルの画像と質的に同等であり、新しい方向に直交するさらなるCTスキャンによって得られるものと同様に正しいと考えることができる。」)
(12)甲12の記載
甲12には次の記載がある。使用可能な文字種の関係上、○内に数字が記載された記号は括弧内に同数字を記載した番号に置き換えた。
・記載12-1(明細書1頁3行~同2頁8行)
「技術分野
この発明は、医用画像処理装置および医用画像処理プログラムに関し、特に、CT、MRI等で撮影された多段層画像から三次元画像を構築し、その三次元画像の任意の筒所の切断面画像を作成するための画像処理装置、方法および画像処理プログラムに関する。
従来技術
近年のコンピュータ技術の発達により、CT、MRI等で撮影された多断層画像から三次元画像を構築する技術が公知である。また、構築された三次元画像の、任意の箇所の切断面画像を作成することも可能となっている。たとえば、オブリーク(Oblique)と言われる機能を使って、三次元画像上で任意の向きの切断面を作成する医用画像処理システムが知られている。
従来の医用画像処理システムにおける切断面の作成機能では、
(1)三次元画像に対して任意の切断面を作成できる。
(2)任意に作成した切断面を基準平面にして、その基準平面に垂直な切断面を作成することができる。
という処理が可能である。
ところが、従来の医用画像処理システムにおいて作成される切断面は、
(1)解剖学的な特徴点(ランドマーク)に基づいて基準平面や切断面が作成されていないので、臨床上、表示画像と実体(患者)との相関関係が正確でなく、画像診断に十分に活用できない場合がある。
(2)切断面を基準平面にして、さらにその基準平面に垂直な切断面を作成できるが、基準平面に垂直でなく、所望の角度で交差する切断面は作成することができない。
等の欠点があった。
発明の開示
この発明は、かかる欠点を解消するためになされたもので、医用画像処理において、臨床上必要な切断面を表示することのできる画像処理装置、方法および画像処理プログラムを提供することを目的とする。
この発明は、また、解剖学的な特徴点(ランドマーク)に基づいて、正しく再現可能な切断面を表示することのできる医用画像処理装置、方法および医用画像処理プログラムを提供することを目的とする。
この発明は、さらに、臨床上の画像診断に有効に活用できる画像処理装置、方法および画像処理プログラムを提供することを目的とする。」
・記載12-4(明細書4頁19行~同5頁最下行)
「たとえば、上顎の犬歯欠損部位に人工歯根を植立する場合、植立想定部位に、隣接歯の歯軸を参考にして、犬歯の歯軸を定め、その定めた歯軸に沿って人工歯根を植立する必要がある。
そのために、犬歯の歯軸に沿って植立予定方向に切断した顎骨断面画像を作成し、診断に用いる。もし、顎骨断面画像が犬歯の歯軸と異なる向きの画像であれば、それは植立想定部位と異なる顎骨内部を表示していることになる。よつて、植立想定部位での顎骨内の状態や、植立に必要な人工歯根の長さ、大きさ、形態等を適正に診断し、決定することはできない。
そこでこの実施形態では、図1~図3に示すような画像を表示器に表示し、臨床上、画像診断に活用可能な切断面を提供する。
図1は、顔面頭蓋骨部の上顎および上歯列の三次元画像を示す。この三次元画像は、CT、MRI等で撮影した患者の頭部の多断層画像から構築されたものである。
上顎および上歯列の三次元画像に対し、咬合平面を特定する。
特定した咬合平面は、コンピュータによって基準平面Rと認識され、表示器には基準平面Rに直交方向から見た三次元画像が表示される。すなわち、図2に示すような基準平面R(咬合平面)の下方から見た、基準平面Rに垂直な視点方向の画像が表示される。
図2の画像において、歯科医師等(以下「ユーザ」という)により切断線が指定される。切断線は、たとえば、始点Aおよび終点Bを入力することにより行える。設定した切断線は画像とともに表示される。
そして、切断線方向に、図2に示す画像を側方から見た三次元画像が表示される。これが図3A,B,Cである。
図3Aの三次元画像は、基準平面(咬合平面)方向に見た上顎および上歯列を示し、基準平面Rと基準平面Rに直交方向の切断面C(図2で指定した切断線に基づく切断面)とが一緒に表示されている。
図3Aに示すように、通常、切断面Cは、基準平面Rに対して垂直方向になる。
この実施形態の特徴は、図3Bに示すように、切断面Cを基準平面Rに対して傾斜できることである。すなわち、基準平面Rと切断面Cとの交線を軸に切断面Cを図3Bに示すように傾斜できる。切断面Cを傾斜させることにより、犬歯歯軸の角度に切断面Cを合わせることができる。この処理は、切断面上方C1を右側にドラッグする等により行うことができる。
さらに、図3Cに示すように、切断面Cの位置を基準平面Rに沿って平行移動させることができる。この移動は、切断面Cと基準平面Cとの交線部分Eを左側にドラッグすること等により行うことができる。切断面Cの移動により、切断面Cの傾斜角度は変化しない。切断面Cの移動により、犬歯歯軸相当部位に切断面Cを合わせることができる。
そしてその結果得られる切断面Cが表示される。この切断面Cは、顎骨の犬歯欠損部位(人工歯根の植立想定部位)の断面である。」
・記載12-6(明細書6頁12行~21行)
「図5は、図4に示すマイクロコンピュータ1により実行される画像処理動作の内容を示すフローチャートである。
図5の流れに従って説明する。まず、マイクロコンピュータ1は三次元画像15を構築する(ステップS1)。三次元画像は、メモリ2等に記憶されている多断層画像データに基づいて構築される。構築された三次元画像は、表示器4に表示される(ステップS2)。表示器4に表示された三次元画像は、必要に応じて視点方向を変えるように移動させたり、回転させたりできる。三次元画像を見ながら、操作部3を操作することにより、基準平面の設定が行われる(ステップS3)。基準平面が設定されると、図1に示すように、三次元画像とともに、設定された基準平面R(たとえば咬合平面)が表示される。」
・記載12-図1(図1)
「
[図:0001435520000079.jpg]
」
・記載12-図2(図2)
「
[図:0001435520000080.jpg]
」
・記載12-図3(図3)
「
[図:0001435520000081.jpg]
」
(13)甲13の記載
甲13(本件特許の親出願の出願公開公報)には次の記載がある。
「【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人体要素を精緻に位置決めして撮影されていないCT等撮影情報から人体要素の基準面に対する人体情報を抽出し、処理する装置、またはCT等撮影情報を人体要素の基準面に対する撮影情報に変換する方法に関する。さらに、本発明は、人体要素のCT撮影情報から、任意に選択された基準軸を含む断面情報を検出する断面情報検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
患者を患部の疾患を検出する一つ方法としてCT撮影が存在する。このCT撮影は患者内部の断層画像を取得する撮影方法であるが、2次元のアナログ情報であるため撮影部位の任意断層を平面的に視認することはできても3次元イメージとして把握することができないという不具合があった。近年、この不具合を解消するためにCT撮影から取得された2次元アナログ情報を3次元デジタル情報に変換し、変換された情報をディスプレイ上に3次元画像として表示するシステムが開発されてきた。このシステムでは、オペレータがディスプレイ上の患者部位の3次元イメージを視認しながら該イメージの任意位置を指定することで目的とする患者部位の断層画像を取得することができる。実際には、CT撮影より得た患者部位の3次元情報をディスプレイ上に画像表示するには、その処理上、ワールド領域なる絶対座標を有する仮想空間上に患者部位の情報(以下、「人体情報」とも称する)を配設して画像表示することとなる。
【0003】
しかしながら、上記システムではオペレータがディスプレイに表示された3次元画像を視認することはできても、歯科医師等が所望する基準位置からの見た画像情報を取得することはできない。これは、CT撮影情報がワールド領域上の絶対的な座標上に撮影情報が配置されているにすぎないからであり、基準位置に対する相対的な撮影情報の設定がなされていないからである。例えば歯列欠損部に歯科用インプラント(以下、人工歯根とも称する)を埋入する目的で患者の顎部をCT撮影した場合で説明すれば、CT撮影は患者の頭部を寝台に載置してなすものであり撮影された断層情報は寝台を位置基準とする断面情報となる。
【0004】
これに対して歯科医師が要求する断層情報はその治療態様に応じて歯科医師が所望する人体要素を位置基準とした情報である。従って、CT撮影を実行する歯科医師(又は歯科医師の指示を受けたオペレータ)は所望する位置基準に基づいて患者を位置決めして撮影する必要がある。これは非常に困難且つ経験を要する作業である反面、患者の被爆度を考慮すれば撮影やり直しを繰り返すことができない事情がある。このような事情により、従来から医療関係者の間では任意の位置に位置決めされた患者部位のCT撮影情報を患者部位の基準面(咬合面のごとき)からの相対的位置情報を含む人体情報として検出する手段が求められてきた。
【0005】
また、CT撮影情報からの3次元情報を画像表示した場合、人体情報とそれ以外のノイズとが混在して表示されることが多く、所望の人体情報を視認し難いという実情があった。例えば、代表的には人体要素に付加された金属片等の他の要素から生じるアーティファクトと称されるノイズ情報が存在する。このようなノイズ情報を含んだまま医師がCT撮影による患者部位の3次元情報を視認し理解しようとしても上記ノイズ情報が邪魔になり、所望部位情報を正確に取得することができないという問題があった。
【0006】
さらに、上記問題を解決するために近年、種々の技術が開発検討されてきたが、処理速度が遅い又は装置が大型化するという問題も指摘されている。
【0007】
とりわけ、インプラント手術を実行する歯科医師にとってCT等撮影情報から埋入するインプラントを基準とした断面情報の取得が望ましいが、従来のCT等撮影の場合、歯科医師は患者の前方から咬合平面を視認した状態の視点座標に基づいて施術を実行するのに対してCT撮影情報はワールド領域を外部から視認した座標系で画像表示され、歯科医師にとって施術段階での視点と異なる断面画像が提供されるという問題もあった。これは断面画像を見て施術する歯科医師の豊富な経験を要する作業である。このような事情により、従来から歯科関係者の間では任意の基準位置に基づいた患者の断面情報、さらには歯科医師の施術視点で要求される断面画像の提供が望まれていた。
・・・
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、以上の事情に鑑みて創作されたものであり、簡易な処理により精緻に位置決めされていない3次元人体情報を所望の基準面に位置決めすることができ、さらにはノイズ情報を排除可能である人体情報抽出装置を提供することを目的とする。また、本発明は、簡易且つ確実な処理によりCT撮影情報等の患者の3次元撮影情報を人体的基準面に基づく3次元撮影情報に変換する人体撮影情報の基準面変換方法を提供することをも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の人体情報抽出装置によれば、空間内の任意の位置に位置決めされた上顎部及び/又は下顎部の3次元撮影情報から該上顎部及び/又は下顎部の所望部分の撮影情報を抽出する人体情報抽出装置を提供する。この装置では、歯科医療上の目的となる基準面と相対的に固定された位置に位置決めされる位置決め部材を配設した状態の該上顎部及び/又は下顎部の3次元撮影情報を仮想空間としてのワールド領域内の任意位置に配置する人体情報配置手段と、ワールド領域内に配置された3次元撮影情報の中で前記位置決め部材の3点以上の特定部分がそれぞれ占有するワールド領域内の位置情報を検出し、該位置情報からワールド領域内の前記基準面の位置情報を検出する基準面検出手段と、前記基準面に対して前記ワールド領域における前記上顎部及び/又は下顎部の相対的位置情報を検出する基準位置情報検出手段と、を有している。
【0010】
また、前記位置決め部材の3点以上の特定部分は、該3点以上の特定部分をつなぐ平面は前記歯科医療上の目的となる基準面と固定の位置関係を有する。
【0011】
また、前記位置決め部材は、前記上顎部及び/又は下顎部に位置決めされたときに該上顎部及び/又は下顎部から外部に突出しても良い。
【0012】
また、本人体情報抽出装置は、前記上顎部及び/又は下顎部の所望部分と略同一外形を有するように作成された人体模型の3次元撮影情報を仮想空間としての前記ワールド領域内で一体のオブジェクトとして変位可能に配置する模型情報配置手段と、ワールド領域内で前記模型情報配置手段により配置された人体模型の3次元撮影情報と重複する領域内に配置された上顎部及び/又は下顎部の3次元撮影情報を検出する重複情報検出手段と、前記重複情報検出手段により検出された上顎部及び/又は下顎部の3次元撮影情報を人体撮影情報として設定する手段と、を有する場合もある。
【0013】
さらに別の本発明では、少なくとも上下方向に所定距離の位置関係を有する上当接部と下当接部と、該上当接部と下当接部とを連結する連結部と、を有する人体模型の3次元撮影を行うための3次元撮影用治具が提供されている。前記上当接部は、下面に歯列模型の上顎部を直接又は所定の部材を介して当接維持することができるとともに離間することができ、前記下当接部は、上面に前記歯列模型の下顎部を直接又は所定の部材を介して当接維持することができるとともに離間することができる。
【0014】
さらに、前記上当接部又は下当接部は、両者に歯列模型の上顎部と下顎部とが当接維持された状態で咬合平面に配置させる位置決め部材の模型が歯列模型の上顎部と下顎部との間に介挿維持できるように前記連結部に対して上下移動する。
【0015】
また、他の本発明では、空間内の任意の位置に位置決めされた上顎部及び/又は下顎部の3次元撮影情報を歯科医療上の一の人体的基準面を基準位置とした情報に変換する人体撮影情報の基準面変換方法を提供する。
【0016】
この基準面変換方法は、患者の上顎部及び/又は下顎部の模型を固定治具に固定するときに固定治具の一部材を該模型における歯科医療上の他の人体的基準面と一致させて、前記固定治具の一部材に対する前記歯科医療上の一の人体的基準面を検出する模型基準面検出工程と、前記模型が固定された固定治具を撮影して3次元画像情報を取得する固定治具画像取得工程と、患者の上顎部及び/又は下顎部の撮影により取得された3次元画像情報における歯科医療上の他の人体的基準面の位置に、前記固定治具画像取得工程により取得された固定治具の3次元画像情報における前記固定部材の一部材を位置決めることによって両3次元画像情報を重ね合わせ、これによって固定治具の3次元画像情報のうち前記模型基準面検出工程により検出された前記歯科医療上の一の人体的基準面に位置する患者の3次元画像情報を患者の前記歯科医療上の一の人体的基準面として検出する患者画像基準面検出工程と、該患者画像基準面検出工程により検出された前記歯科医療上の一の人体的基準面を基準位置とした画像情報に患者の上顎部及び/又は下顎部を撮影した3次元画像情報を変換する変換工程と、を有している。
【0017】
さらに、本発明の断面情報検出装置によれば、歯列を含む上顎部及び/又は下顎部の3次元撮影情報から、任意に位置決めされた基準軸である歯科用インプラント長軸(以下、「基準軸」又は「歯科用インプラント長軸」のいずれかで称する)を含む所定の平面領域の3次元撮影情報を断面情報として抽出する。この装置は、人体の一部である歯列を含む上顎部および下顎部の3次元撮影画像上の任意の位置に、歯科用インプラント長軸を設定し位置決めする手段と、3次元撮影画像上に付与され位置決めされた歯科用インプラント長軸を含む所定の平面領域を生成する手段と、平面領域に位置する歯列を含む上顎部及び/又は下顎部の3次元撮影情報を抽出する人体情報抽出手段と、を有している。ここでの基準軸たる歯科用インプラント長軸は、予め作成された任意の歯科用インプラントの軸線であって前記歯列を含む上顎部及び/又は下顎部の3次元撮影画像上に設定され表示されるものである。
【0018】
また、本断面情報検出装置によれば、上記歯科用インプラント長軸は所定の方向に傾斜させることができ、且つ上記平面領域は歯科用インプラント長軸とともに傾斜させることができる。また、歯科用インプラント長軸が所定の方向に傾斜したときには歯科用インプラント長軸と平面領域とはその傾斜状態を維持したまま回転させることがもできる。
【0019】
さらに、上記歯科用インプラント長軸は所定の方向に傾斜させたときに、平面領域を歯科用インプラント長軸の傾斜に拘わらず咬合平面を基準として表示させることもできる。
【0020】
また、断面情報検出装置は、平面領域に2以上の所望の位置検出点の座標を設定する位置検出点設定手段と、設定された前記位置検出点が2点であるときには該検出点それぞれの座標を用いて検出点間の距離を測定し、設定された前記位置検出点が3点以上であるときには該検出点のうち任意の2点で形成される線分同士の角度及び/又は該線分の距離を検出点の座標を用いて測定する、平面領域内の位置関係測定手段と、を有しても良い。
【0021】
さらに、前記上顎部及び下顎部の3次元撮影情報は、該上顎部及び下顎部に含まれる歯列を少なくとも有する中空又は薄肉表面のみで形成された人体模型の3次元撮影情報と重ね合わせて設定され、人体情報抽出手段は、平面領域に位置する上下顎部の3次元撮影情報と、該平面領域に位置する人体模型の3次元撮影情報とを抽出しても良い。
【発明の効果】
【0022】
本発明の人体情報抽出装置によれば、患者を精緻に位置決めできないCT撮影情報等から得た人体要素、とりわけ歯列を含む上顎部及び/又は下顎部の3次元情報をディスプレイ上で位置決めすることができる。具体的には、咬合平面等の基準面に位置決め部材を配設してCT撮影等を実行し、撮影情報を3次元デジタル化した情報(又はこれに医療データを包摂させた情報:総じて「人体要素の3次元情報」、「人体情報」とも称し、より具体的には「上顎部及び/又は下顎部の3次元情報」、「上顎部及び/又は下顎部の情報」とも称する)を人体情報配置手段によりワールド座標系を有するワールドエリア(ワールド領域)で画像表示する。この表示画像では患者以外に患者に固定の位置決め部材も表示されており、ディスプレイ上でこれを歯科医師等のオペレータが視認し、その特定部分を指定することで位置基準となる基準面(咬合面等)を検出することができる。ここで基準面とは医療上の目的となる基準面であり、特に歯科医療上の基準面、例えば咬合平面や眼耳平面等があげられる。
【0023】
また、本発明の人体情報抽出装置によれば上記基準面の検出をからの3次元情報のみならず、歯型模型のCT撮影情報からの3次元情報でも実行し、これをディスプレイ上で一致させ、歯型模型からの情報に対応する患者の撮影情報を抽出する(以下、「フィッティング」とも称する)。これにより、位置決めされておらず単にワールドエリア上に配設されているにすぎない患者の撮影情報を基準面に基づいて相対的に位置決めされたローカル座標系で位置決めすることができ、さらにCT撮影時に生じるノイズ情報を排除した人体情報を抽出することができる。
【0024】
また、位置決め部材の他の兼用機能として人体のCT等撮影情報のうち所望する範囲のデータのみを抽出することも可能である。例えば、位置決め部材により検出された咬合面を基準とした着目部位の抽出や、上顎部又は下顎部の自動分離を実行することができる。これによって抽出領域を所望範囲に限定することができ、その後の各処理を大幅に迅速化することができる。また、本発明の人体情報抽出装置では、歯冠画像を患者の欠損部近傍に配置することができる。さらに、本発明の撮影用治具によれば、人体模型の上顎部と下顎部とに位置決め部を介挿維持させた状態でCT撮影可能であるとともに、上下顎部の位置関係を維持したままでそれぞれCT撮影可能となる。これによって、人体情報抽出装置によって抽出された人体情報のうち上下顎部のみを画像表示し、位置決め部材の画像化を排除することができ、その後に画像を視認しながら処理するオペレータの作業性を向上させることができる。
【0025】
また、本発明の人体撮影情報の基準面変換方法では、患者のCT撮影画像300を上下咬合平面それぞれを基準としたCT撮影画像とすることができる。これによって、患者がどのような姿勢でCT撮影したとしても歯科医師に理解し易い咬合平面を基準にした撮影情報を取得することができる。また、噛合わせが正常にできない程度まで歯列欠損している患者においても容易に咬合平面を基準としたCT撮影情報を取得することができる。また、固定治具は鼻聴導線や眼耳平面を用いて咬合平面を検出するものであり、その意味で平均値咬合器、調節性咬合器と称する既知の咬合器(咬合平面確認装置)と同様の機能を有しているため通常よりこれを使用する歯科医師にとっても使用し易い。固定治具がアクリル等のX線透過率の低い材料で構成されているため、アーティファクトの問題も回避することができる。
【0026】
本発明の断面情報検出装置では、歯科医師が所望する基準軸周り、とりわけ歯科用インプラント長軸周りの断面情報を取得することができる。また、この基準軸には医療部材を表示することもできるため、医師はディスプレイ上で自己の治療状態をイメージしながら医療部材を基準とした座標系で断面情報を取得することができる。例えば、インプラントの埋入位置を画定させたい歯科医師においては歯冠を歯列画像に埋入させた様子を視認しつつ下顎管等の神経に当接しないインプラント位置を検出することができる。さらに、本発明の断面情報検出装置では、歯科医師等が施術の際に思考する視点座標で断面情報を取得することができる。さらに、本発明の断面情報検出装置によれば、CT撮影画像特有の画像の不明確性を排除し、とりわけ歯科医師にとって歯科用インプラントの軸周りの断面画像を視認でき且つ歯科医師の医療上基準として考える咬合平面を基準と画像を表示させることができる。従って、CT撮影画像及びその断面情報に基づいて人工歯根の埋入画像処理を実行する歯科医師のユーザビリティが大幅に向上する。
・・・
【0059】
次に、上記人体情報抽出装置により抽出された人体情報に基づく3次元画像の断面情報を検出する装置について説明する。図6は本装置により処理されるステップをディスプレイ上の画像表示で示しており、図7はそのステップのフローチャートが示されている。まず、ディスプレイ上の画像で説明すれば図6(a)に示すようにディスプレイ上にはCT撮影により得た3次元情報に基づいて顎部200が表示されている。この表示画像はワールドエリア上に配設されたものである。オペレータは、この画像を視認しながら歯列の欠損部(図示しない)を認識する。欠損部が認識されるとまず最初にオペレータは歯冠画像208を欠損部に嵌合させてみる。
【0060】
ここで、歯冠画像208の嵌合について説明する。歯冠画像208は予め作成された歯冠形状の模型をCT撮影しておき、その撮影情報に基づいて一つのオブジェクトとしてワールドエリア上の任意の位置に配置される。通常、この画像(オブジェクト)をオペレータがワールドエリア上で移動させ、上記欠損部に重ね合わせ適当と判断される位置に画像配置する。しかしながら、患者によっては多数の歯列欠損が生じている場合もあり、オブジェクトの移動実行前に欠損箇所から離間した任意の位置に複数の歯冠画像208が配置されているとオペレータにとってどの歯冠画像が各欠損歯列に適合するものか判りにくくなり、処理効率が悪くなる可能性がある。このため本実施形態では、自動的に歯冠画像を欠損歯列の近傍に配置し、歯冠画像がどの欠損歯列に適合するか明白にさせておくようにしている。具体的には、上述する位置決め部材10から検出された基準面(咬合平面)を利用する。詳細には、まず予め検出された咬合平面上に歯列を設定し、その歯列上に各歯冠画像情報を配置しておき、画面には各歯冠画像を非表示としておく。そして、欠損部に歯冠画像を重ね合わす処理をオペレータが実行する段階において該当する欠損箇所に対応する咬合平面上の歯冠画像208を表示する。このような処理を行うと、歯冠画像を移動させる前の初期段階においてもオペレータが所望する歯冠画像をある程度欠損部に近接した位置に自動的に表示することができ、逆に直近に所望しない歯冠画像を表示させないようにすることができる。
【0061】
次に、歯冠画像208が欠損箇所に適合したと視認された後の処理について説明する。この歯冠画像208の下端には基準軸に沿ってインプラント206(参照番号206は基準軸としてのインプラント長軸をも示している)が表示されており、さらに基準軸206には該軸を含む所定の平面領域204が付与されている。
【0062】
従って、オペレータが歯冠画像208を歯列欠損部に嵌合するようにワールドエリア上を移動させ位置決めすると、これに応じてインプラントおよび基準軸206も位置決めされる。さらに、基準軸206が位置決めされると平面領域204も位置決めされることとなる。この平面領域204こそが断面情報を所望する平面である。ここで平面領域204の位置決めについて言及すれば、断面検出用画像202はワールドエリア内で該画像が配設されたローカルエリアを設定すれば、歯冠画像位置、基準軸206の傾斜角、平面領域204の回転角を設定することができる。図6(a)では、基準軸206をZ軸としてワールドエリア内を回転させることで基準軸を矢印A方向に回転させ、これに伴ってインプラント(206と平面領域204とを回転させる様子を略示している。この際、基準軸206をZ軸とし、平面領域204をXY平面とするローカル座標系を設定すれば、該座標系に対応するワールド座標系での3次元撮影情報が所望する平面領域204上の断面情報となる。また、図6(b)では、基準軸206に基づくローカル座標系をワールド座標系に対して傾斜させることで基準軸を矢印B方向に傾斜させ、これに伴ってインプラント206と平面領域204とを回転させる様子を略示している。このようにして位置決めされたローカル座標系での平面領域の人体情報に対応するワールドエリア上の人体情報を取得すれば、該平面領域上の人体情報を取得できる。従って、本装置によれば歯冠およびインプラントの埋入位置を確認しながら、その断面情報を取得することが可能となる。
【0063】
以上が本発明の断面情報検出装置の説明であるが、この装置で具体的に処理されるステップの一例についても説明しておく。図7に示すようにオペレータは上述するように基準軸の回転、傾斜を実行することで平面領域204、すなわち所望する検出断面を設定する(STEP20)。次に検出断面内における検出点を設定する。具体的には検出断面に配置された多数のvoxelから予め設定された位置に存在するvoxelを検出し、これを検出点として設定する(STEP22)。次に設定された平面領域における複数の検出点から1つの検出点を検出中心として設定する(STEP24)。さらに、検出中心の近傍に位置する隣接点を検出し、設定する(STEP26)。このステップで設定される隣接点は、検出中心から予め設定された領域(voxel群領域)内に存在する点(voxel)を検出することにより実行される。そして、設定された検出中心と隣接点とに対応するワールドエリア上の人体情報を取得し(STEP28)、取得された複数の人体情報を平均化する(STEP30)。さらに、このようにして検出中心に対応する人体情報が平面領域全体に亘って検出(取得)されたか否かが判定され、検出されるまではSTEP22~30を繰り返すこととなる(STEP32)。そして、平面領域全体に亘って人体情報が検出されると、これを別途設定した画面内に2次元情報として設定することで(STEP34)、ディスプレイ上にインプラント等基準軸周りの断面情報を提供することが可能となる。なお、図7では、検出領域ごとに人体情報を取得し、平均化するステップが示されているが、一旦、平面領域全体に亘って各検出点の人体情報を取得した後に、各検出中心および隣接点を有する検出領域における人体情報を平均化するステップであっても差し支えない。具体的には、図7のSTEP28、STEP32をSTEP22~24の間に介挿させること等が考えられる。
【0064】
なお、平面領域204の任意の2点間の距離を測定することも、任意の3点間の角度を測定することも可能である。具体的には、所望する2点以上の位置検出点(voxel)のワールドエリア上の座標を設定し、設定された位置検出点が2点であるときには検出点それぞれの座標を用いて検出点間の距離を測定する。また、設定された位置検出点が3点以上であるときには検出点のうち任意の2点で形成される線分を2点の座標から測定し、該線分同士の角度及び/又は該線分の距離を検出点の座標を用いて測定する。
【0065】
さらに、本発明の断面情報検出装置では他の実施形態をも提供する。この断面情報検出装置では、基準軸206を人体要素に基づく所定の方向に傾斜させることができ、且つ平面領域204は基準軸206とともに傾斜することができる。ここで、人体要素の所定の方向の傾斜とは例えば、図6においてX方向で示す歯列方向の傾斜(近遠心の傾斜とも称する)やY方向で示す頬舌方向の傾斜を意味するものであり、前者は基準軸206の上端近傍(人工歯根画像においてはその頸部)を中心に近遠心に傾斜させ、後者は基準軸206の上端近傍を中心に頬舌方向に傾斜させるものである。この傾斜における座標概念は、ワールドエリアにおいて通常意味する座標系とは異なる歯科医師等が施術時に想定している座標概念である。ここで歯科医師が施術時に想定している座標概念についてさらに言及する。歯科医師は、その施術の際に位置基準としているのは通常、咬合平面であり、患者の前方から咬合平面を見た状態の視点座標で施術の適正を判断している。従って、歯科医師にとってワールドエリア上の座標平面で断面情報検出しても、それを施術に反映させようとすると実質的に咬合平面前方からの視点座標で再度変換想起する過程が必要とされる。本実施形態では、この点に注目し従来、歯科医師が実質的に自己の頭の中で座標系を変換している過程を排除し、断面情報(これに基づく断面画像)自体を咬合平面を前方から視認した視点座標系で検出することとしている。従って、歯科医師にとって所望する断面情報は必ずしも人工歯根の長軸を形成する基準軸206周りの断面情報が必要であるとは限らない。具体的には、人工歯根を傾斜させて埋入させようと企図する場合、その傾斜が近遠心方向であるときには所望する断面情報は基準軸206周りの情報であるが、傾斜が頬舌方向であるときには基準軸206周りの情報は不要若しくは却って判断を困難にさせる情報となる。この事情に鑑みて実施形態においては、基準軸は歯列方向(近遠心方向)にも頬舌方向にも傾斜させることができるが、断面情報を検出する平面領域204は、歯列方向の傾斜の場合にのみ基準軸206とともに歯列方向に傾斜させて基準軸周りに回転させることとし、頬舌方向の傾斜の場合には基準軸206は画像表示上は頬舌方向の傾斜状態を維持したまま回転させるが平面領域206は頬舌方向に傾斜していない状態を維持したまま回転させることとしている。参照までに、図9は平面領域204に位置する断面情報を示した実際の画像図であり、参照番号206は基準軸を示している。図10は、平面領域204と上下顎部との位置関係を示した画像図である。
【0066】
さらに、上顎部及び下顎部の3次元撮影情報(CT撮影情報)は上述するフィッティングにより上顎部及び下顎部の模型の3次元撮影情報と重ね合わされているが、人工歯根等の基準軸206周りの平面領域204に位置する上記断面情報に基づいて断面画像を表示する際には模型の断面情報をも含めて表示することが好ましい。図9に示すように断面画像は前記CT値に基づいて濃淡表示されるが、歯列付近の軟組織形状(歯茎の形状)は空気部分とのCT差が小さく上下顎骨歯列に比してその外形が視認し難い。その一方、上下顎部の模型(歯列模型)は硬質材の中空又は薄肉で形成されておりX吸収率も高いため、平面領域204に位置する上下顎部の3次元撮影情報と、平面領域に位置する人体模型の3次元撮影情報(図9の白点線又は図10の上下顎骨画像と歯列画像の間に位置する歯茎画像参照)とを抽出すれば同一断面画像上で軟組織形状を視認することが容易となり、オペレータのユーザビリティが大幅に向上する。さらに、図10のごときCT撮影情報において断面情報を検出し人工歯根の埋入位置を検出する処理を実行する際に、オペレータは該断面画像を視認しながら人工歯根画像を歯列欠損部に嵌合させるが、このときに人工歯根画像や平面領域画像に予め規定したハンスフィールド値に相当するCT値をマッピングしても良い。このようなマッピング処理を実行すれば、CT値に基づく濃淡で画像表示された上下顎部のCT撮影画像と同じ基準のグレースケールで仮想の人工歯根等を表示することができ、人工歯根表面やその周囲の人体組織(皮質骨や海綿骨)の状況を3次元的にも2次元的にも視認可能であり、オペレータのユーザビリティが向上する。
・・・
[図:0001435520000082.jpg]
[図:0001435520000083.jpg]
・・・
[図:0001435520000084.jpg]
[図:0001435520000085.jpg]
」
(14)甲14の記載
甲14は原出願の再公表特許全頁であり、証拠説明書の立証趣旨の記載によれば、無効理由1-4及び同4に関連して提出されたものである。
しかし、下記第6.6で説示するとおり、本件特許出願の原出願に対する分割要件については検討を要しないため、甲14の記載事項についての摘記は省略する。
(15)甲15(甲15の1~6)の記載
ア 甲15の1の記載
甲15の1には次の各記載がある。各記載を囲む矩形枠や、丸囲みの数字は請求人が引用箇所を表示するために付したものである(以下甲15について同様。)。
・最上部の記載
「
[図:0001435520000086.jpg]
」
・最下部の記載
「
[図:0001435520000087.jpg]
」
・左上部の記載
「
[図:0001435520000088.jpg]
」
イ 甲15の2の記載
・左上部の記載
「
[図:0001435520000089.jpg]
」
ウ 甲15の3の記載
・上部の記載
「
[図:0001435520000090.jpg]
」
・下部の記載
「
[図:0001435520000091.jpg]
」
・左部の記載
「
[図:0001435520000092.jpg]
」
エ 甲15の4の記載
・左部の記載
「
[図:0001435520000093.jpg]
」
オ 甲15の5の記載
・「購入価格」表の記載
「
[図:0001435520000094.jpg]
」
・左部の記載
「
[図:0001435520000095.jpg]
」
カ 甲15の6の記載
・「必要機器構成」表の記載
「
[図:0001435520000096.jpg]
」
(16)甲17の記載
「
[図:0001435520000097.jpg]
」
2 甲号証に記載された発明及び技術的事項
(1) 甲1発明
上記1(1)によれば、甲1には次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。ここで各構成単位末尾括弧内には、主たる認定根拠とした記載箇所を示す。
「1a11 患者の各欠損歯に装着された放射線用ステントにチタン製マーカが挿入された状態でCTスキャンすることで生成されたCT画像において、前記チタン製マーカの軸に直交する新しいアキシャル画像を抽出し、該新しいアキシャル画像及び該新しいアキシャル画像上で計算したパノラミックラインに直交する再配向後のクロスセクショナル画像を生成し、また、(記載1-185-3、記載1-186-2、記載1-195)
1a12 前記新しいアキシャル画像及び前記再配向後のクロスセクショナル画像を含む新しいマルチビューにおいて、仮想的なマーカを別の位置に移動させ、新しいマーカの位置を考慮した新しいマルチビューを構築する、ソフトウェア・システム、又は、(記載1-186-3、記載1-195)
1a13 チタン製マーカーは、インプラントを計画する必要のある欠損歯と一致しているものであり、(記載1-185-1)
1a2 前記チタン製マーカについて構築した新しいマルチビューからスタートして、仮想的なマーカが別の位置に移動され、該仮想的なマーカの軸に垂直に抽出された新しいアキシャル面においてパノラミック切断曲線が計算され、パノラミック画像が抽出され、新しいマルチビューが構築されるソフトウェア・システムであって、(記載1-186-3、記載1-195、記載1-199)
1b11 前記チタン製マーカは欠損歯に装着されており、(記載1-186-1、記載1-186-2)
1b12 また、グラフィックツールを使用することで、仮想的なマーカがコンピュータベースのアニメーションで別の位置に移動させられるものであり、(記載1-195、記載1-199の「6.」)
1b21 患者の前記各欠損歯にチタン製マーカが挿入された状態で生成されたCT画像において、前記チタン製マーカの軸は自動的に識別されその位置が特定され、該軸に直交する新しいアキシャル画像が抽出され、該新しいアキシャル画像及び該新しいアキシャル画像上で計算したパノラミックラインに直交する再配向後のクロスセクショナル画像が生成され、(記載1-192、記載1-197)
1b22 また、前記仮想的なマーカが別の位置に移動させられた場合、新しい軸が計算され、該軸に垂直に抽出された新しいアキシャル面においてパノラミック切断曲線が計算され、その後パノラミック画像が抽出され、新しいマルチビューが構築されるものであり、(記載1-192,記載1-197-1、記載1-199)
1c11 前記チタン製マーカは、CT画像のスキャン・生成前に患者の各欠損歯に装着された放射線用ステントに挿入されるものであって、
1c12 該挿入後、CT画像のスキャン・生成が行われ、前記チタン製マーカの軸に直交する新しいアキシャル画像を抽出し、該新しいアキシャル画像及び該新しいアキシャル画像上で計算したパノラミックラインに直交する再配向後のクロスセクショナル画像が生成されるものであり、(記載1-186-1)
1c2 前記仮想的マーカは、前記チタン製マーカについて構築した新しいマルチビューからスタートして、別の位置にコンピュータベースのアニメーションにより仮想的に移動されるものであり、(記載1-195、記載1-199)
1d1 患者の前記各欠損歯にチタン製マーカが挿入された状態で生成されたCT画像において、前記チタン製マーカの軸は自動的に識別されその位置が特定され、該軸に直交する新しいアキシャル画像が抽出され、該新しいアキシャル画像及び該新しいアキシャル画像上で計算したパノラミックラインに直交する再配向後のクロスセクショナル画像が生成され、(記載1-195)
1d2 前記仮想的なマーカは、別の位置に移動させられた場合、新しい軸が計算され、該軸に垂直に抽出された新しいアキシャル面においてパノラミック切断曲線が計算され、その後パノラミック画像が抽出され、新しいマルチビューが構築されるものである、(記載1-195、記載1-199)
1f ソフトウェア・システム。」
(2)甲2公知発明
ア 「SimPlant8.1」について
(ア)「SimPlant8.1」及びそれに類する名称の製品について
a(a)甲2-1は、「SimPlant8.1 Training Manual」(記載2(1)-表紙・記載2(1)-奥付;当審訳:「SimPlant8.1 練習マニュアル」)と題する文書であり、その記載2(1)-3の「SimPlantを起動する」、「プログラムを起動する」、及び、「「全てのプログラム(P)」から「・・・SimPlant Planner8.1」を選択します。」なる記載から、「SimPlant」及び「SimPlant Planner8.1」がコンピュータ上で起動・実行されるコンピュータ・ソフトウェア(プログラム)であること、及び、「SimPlant」なるコンピュータ・ソフトウェアが甲2-1において具体的には「SimPlant Planner8.1」なる名称であること、が推認される。
(b)前記(a)の推認事項から、甲2-1の表題における「SimPlant8.1」もまた、コンピュータ上で動作するコンピュータ・ソフトウェアの名称であること、「SimPlant8.1 練習マニュアル」なる表題に対し上記aのとおり具体的には「SimPlant Planner8.1」なる名称のコンピュータ・ソフトウェアが起動されていることから、「SimPlant8.1」及び「SimPlant Planner8.1」は同一のコンピュータ・ソフトウェアを指す用語であることも推認される。
(c)甲2-1の記載2(1)-表紙及び記載2(1)-奥付の「株式会社 横河マテリアライズ」なる記載から、甲2の1が「株式会社横河マテリアライズ」により作成され、該甲2の1が対象とする上記(b)のコンピュータ・ソフトウェアに「株式会社 横河マテリアライズ」社が関与していることが推認される。
b(a)甲15の1に示されたウェブページ下部には「Materialise Yokogawa Inc.」なる社の著作権表記があり、該社名は邦名「株式会社横河マテリアライズ」の英語表記であることが自明である(逐一摘記しないが、同様の著作権表記は甲15の2~6にも存在する。)。
そして、該甲15の1の「SimPlant製品情報」と表示されるリンクから表示される甲15の2のウェブページの、「SimPlantとは」と表示されるリンクから表示される甲15の3のウェブページの「ドキドキ一発勝負から解放されませんか?」と題する記事には、「SimPlantは、CT撮影のデータを再構成し、3方向画像や3D画像により、多方面に各種測定やインプラント埋入シミュレーションができるソフトです。」との記載がある。
(b)上記甲15の3のウェブページ左欄の「機能一覧」と表示されるリンクから表示される甲15の4のウェブページの左欄の「価格」と表示されるリンクから表示される甲15の5のウェブページには「SimPlantソフトウェア」との記載があり、該ウェブ頁左欄の「動作環境」と表示されるリンクから表示される甲15の6のウェブページには、「SimPlantの動作環境」と題する記事が記載され、該記事に表示された「必要機器構成」と題する表には、その左セルに「パソコン」と記載された行内に、「OS | Windows98/Me↓Windows NT/2000↓WindowsXP」なる記載(ここで「|」は表の縦罫線、「↓」はセル内での改行を表す。以下同様。)がある。
(c)上記(ア)・(イ)で認定した甲15の1~6における記載事項から、「SimPlant」とは、Windows98/Me・Windows NT/2000・WindowsXPのいずれかのOSがインストールされたパソコン上で動作する、株式会社横河マテリアライズ社が関与するコンピュータ・ソフトウェアであることが推認される。
(イ)甲2の1と甲2の2との関係について
a 甲2の2は、記載2(2)-1(4)から、請求人が、「SimPlant8.1」なるプログラム(コンピュータ・ソフトウェア)の動作を、当該プログラムをWindows11をOSとするコンピュータにインストールして確認した結果の報告と主張するものである。
b(a)甲2の2に掲載されるコンピュータ・ディスプレイのキャプチャ画像が、甲2の1に係る「SimPlant8.1」なるソフトウェアによるものであるかは、甲2の2に示されたいずれのキャプチャ画像にも「SimPlant8.1」との表記がないことから、不明である。
(b)また、上記(ア)b(b)で引用した甲15の6に記載された「SimPlant」なるコンピュータ・ソフトウェアの動作OSと、甲2の2でプログラムのインストール対象としたOS(Windows11)とが相違することも、請求人による甲2の1・2の2・15の6に基づく「SimPlant8.1」なるコンピュータ・ソフトウェアの動作環境に関する主張と整合せず、甲2の2が当該コンピュータ・ソフトウェアによるものであるのかについて疑義を生じさせている。
c(a)上記bの各点について請求人は、甲17として、甲2の2の記載2(2)-2(2)と類似したレイアウト及び被写体画像内容の表示画面に、ソフトウェア情報を重畳表示したもののキャプチャ画像を示し、該ソフトウェア情報が「SimPlant Planner V8.1.0.23 for Intel X86」と表示されていることを以て、甲2の2が、甲2の1の記載2(1)-3に記載される「SimPlant Planner 8.1」と同一のコンピュータ・ソフトウェアについての動作画面をキャプチャしたものであることの立証を試みている。
(b)上記bの疑義及び上記c(a)の立証について検討する。
甲17のキャプチャ画像の背景に表示されている動作画面と同一の動作画面は甲2の2に見出せないが、類似のレイアウト及び被写体についてのキャプチャ画像は、例えば記載2(2)-4(2)等にみられる。また、前記ソフトウェア情報の記載は、背景のキャプチャ画像が「SimPlant Planner V8.1」なるコンピュータ・ソフトウェアによるものであることを示すといえる。
また、WindowsシリーズのOSをインストールされたパソコン(PC)において、旧バージョンのOS用のコンピュータ・ソフトウェアが、該ソフトウェアが動作可能対象として明記しない、後発バージョンのWindowsOS上でも正常に動作する事象(OSの上位互換性)は、日常よく見聞きするものである。
以上から、甲2の2は、甲2の1が対象とする「SimPlant8.1」(SimPlant Planner8.1)なる、同一のコンピュータ・ソフトウェアについての動作内容を示すものであると認められる。
(ウ)「SimPlant8.1」の頒布時期について
a 甲2の1に係る「SimPlant8.1」又は「SimPlant Planner8.1」なるコンピュータ・ソフトウェア自体の頒布日を直接示す証拠は請求人の提出した証拠の中にない。
例えば、甲15の1の最上部にはウェブページのアーカイブサービスであるウェイバックマシンによる保存日として、「SEP↓20↓2003」すなわち2003年9月20日であることが示され、このことから、甲15の1~6が同日現在においてウェブ上に表示可能な状態にて存在していたウェブページであることがわかる。
しかし、甲15の1~6のいずれにも、「SimPlant8.1」又は「SimPlant Planner8.1」なるコンピュータ・ソフトウェアについての記載は見出せない。
甲16の陳述書も、前記コンピュータ・ソフトウェア自体の発売の事実について示す客観的な証拠を伴うものではない。
b 一方で、甲2の1奥付(記載2(1)-奥付)には、甲2の1の練習マニュアルの発行日として「2003年8月20日 第2版」との表記がある。
c コンピュータ・ソフトウェアの使用方法についてのマニュアルは、当該コンピュータ・ソフトウェアの発売と同時またはそれに遅行して発行されるというのが、商慣行上の常識である。
そうすると、甲2の1・2に係る「SimPlant8.1」又は「SimPlant Planner8.1」なるコンピュータ・ソフトウェアは、その発売日を直接示す証拠が上記aのとおり提示されていなくとも、上記bのとおり、商慣行上の常識に照らせば、当該コンピュータ・ソフトウェアのうち、甲2の1に示された機能を備えるバージョンの頒布時期は、そのマニュアルである甲2の1の第2版発行日である2003年8月20日当日か、それ以前であると推認される。
イ 甲2公知発明について
上記1(2-1)・1(2-2)において摘記・認定した甲2の1・甲2の2の記載事項を総合し、上記アの検討結果をふまえると、本件特許出願の(原出願の)最先の優先日である平成16年(2004年)9月24日以前に頒布された「SimPlant8.1と称するソフトウェアをインストールしたコンピュータ」の公知発明(以下「甲2公知発明」という。)を認定することができる。
「2a1 ディスプレイ上に表示された、少なくとも患者の下顎部のX線CT画像をもとに生成された、複数のクロスセクショナル、アクシャル、パノラミックの各画像を領域分けして表示させ、前記各クロスセクショナル画像は相互に等距離間隔の面における画像を並べて配置したものであり、(記載2(1)-16、看取事項2(1)-24)
2a2 前記表示されたクロスセクショナル画像内の歯科用インプラントを埋入したい位置をクリックで指定し、さらに埋入するインプラントの長さと向きを決めてクリックすることで、上下端位置にそれぞれ白い正方形の記号を備える長方形形状の歯科用インプラントのマーカを前記クロスセクショナル画像上に配置し、(記載2(1)-35、看取事項2(1)-37、看取事項2(1)-48)
2a3 さらに、ディスプレイ上に少なくとも患者の下顎部のX線CT画像をもとに生成された3D画像を選択的に表示させ、(記載2(1)-48、看取事項2(1)-24)
2a41 該表示させた3D画像には、アクシャル面(赤色)及びクロスセクショナル面(青色)を示す表示が重畳される機能があり、(記載2(2)-2(1)・(2)、看取事項2(2)-3(3))
2a42 該機能において、アクシャル画像上で、複数表示されているうちの任意の歯科用インプラント表示をクリックすることで、クロスセクショナル画像位置を示す青色ラインを該クリック対象の歯科用インプラント位置に移動させ、クロスセクショナル画像表示領域の中心の位置に、前記青色ラインに対応するクロスセクショナル画像を表示させる機能をさらに備え、(記載2(1)-17)
2a43 さらに、クロスセクショナル画像上にインプラントのマーカを配置したあと、3D画像上でも歯科用インプラントのマーカを移動することができるものであり、(記載2(1)-50)
2a5 前記3D画像上には、前記歯科用インプラントのマーカの上下端に白い正方形の記号が重畳表示される機能があり、(看取事項2(2)-3(3)、看取事項2(1)-37)
2a6 また、前記3D画像には、前記歯科用インプラントのマーカの軸を上下方向にそれぞれ延長した赤色の線分が表示され、(看取事項2(1)-48a)
2a7 前記3D画像において、骨を半透明にしたり、表示するCT値を調整して骨の部分を非表示(透過)にしたりすることで、前記赤色の線分を上下方向に伴う円柱状の歯科用インプラント表示が表示される、(看取事項2(1)-48a、看取事項2(1)-51a・d)
2a8 SimPlant8.1と称するソフトウェアをインストールしたコンピュータであって、(看取事項2(1)-13)
2b1 歯科用インプラントは、ディスプレイ上のアキシャル画像及びパノラミック画像上で、既に表示されている歯科用インプラント表示を複写または定まった距離水平移動させることができ、(記載2(1)-85,86)
2b2 アキシャル画像上で、複数表示されているうちの任意の歯科用インプラント表示をクリックすることで、クロスセクショナル画像位置を示す青色ラインを該クリック対象の歯科用インプラント位置に移動させ、クロスセクショナル画像表示領域に該青色ラインに対応するクロスセクショナル画像をその中央に表示させる機能をさらに備え、(記載2(1)-17)
2c1 クロスセクショナル画像又は3D画像に重畳された歯科用インプラント表示は、マウス操作により軸線方向を回転させることができ、(記載2(1)-37)
2c2 前記回転の前後において、3D画像に重畳されているアキシャル面(赤)及びクロスセクショナル面(青)の表示に変化はなく、該回転の前後で、歯科用インプラント表示の軸と前記両面との成す角が前記回転の分だけ変化することになっている、(記載2(2)-5)
2f SimPlant8.1と称するソフトウェアをインストールしたコンピュータ。(看取事項2(1)-13)」
(3)甲3発明
上記1(3)によれば、甲3には次の発明(以下「甲3発明」という。)が記載されていると認められる。
「3a1 患者の歯牙の欠損部分について取得した印象を基に作成され、この欠損部位を含む歯牙列に冠せて用いられる、3点以上のX線不透過性3次元位置決め用マーカを設けたステントに、この欠損部位に植え立てる義歯を固定するためのインプラント埋入ガイド穴を加工する歯科用インプラント施術支援装置において、(【0001】、【0017】、【0018】)
3a2 前記ステントを装着して撮影した患者の顎部X線CT画像が取得され、(【0017】)
3a3 前記顎部X線CT画像は前記歯科用インプラント施術支援装置が備える画像表示操作装置に3次元的に表示できるものであり、(【0027】、【0103】~【0105】、図8)
3a4 前記画像表示操作装置には複数のインプラントアイコンが表示され、該インプラントアイコンから所望のインプラントアイコンを選択操作することにより、欠損部分に用いるべき歯科用インプラント画像が選択され、(【0025】)
3a5 前記画像表示操作装置の表示画面1cにおいて、前記顎部X線CT画像IGに前記欠損部分に用いるべき歯科用インプラント画像IIを重畳表示し、(【0044】、図1、図2、図8)
3a61 この場合の顎部X線CT画像は、マウスやキーボードを操作することで位置と向きを自由に変えることができる顎部X線CT画像IGであり、かつ/若しくは、3次元的に表示された顎部X線CT画像であるか、又は、(【0027】~【0028】、【0103】~【0105】、図8)
3a62 予め複数枚準備された、相互に直交するXYZ座標軸における相互に直交するX断層面、Y断層面、Z断層面についてのスライス断層面画像IX、IY、IZから選択された所望の組み合わせのスライス断層面画像IX,IY,IZからなる3次元スライス画像ISであり、(【0072】、図1)
3a7 前記3次元スライス画像ISは、ステント7を装着した状態の顎部をX線CT撮影し、下顎のX線吸収係数の3次元データを得、この3次元データを、X断層面、Y断層面、Z断層面に平行な断面で、細かいピッチ、例えば、0.1ミリピッチで、スライス断層面画像IX、IY、IZとして80枚から100枚用意されたものであり、(【0074】)
3a8 インプラントを埋入しようとしている部分がXYZ軸に対し傾いている場合には、前記表示画面1c上の「スライス角度設定」アイコンのクリックにより座標軸の角度を設定し、前記表示画面1c上の「再スライス」アイコンのマウスクリックによって前記XYZ座標軸を回転し、該回転した座標軸について改めてスライス断層面画像IX,IY,IZを作成する機能を備え、(【0079】~【0081】、図4)
3b1 画面1c上に表示されたインプラントアイコンIiから所望のインプラントアイコンIIを選択操作して欠損部分に用いるべき歯科用インプラント画像IIを選択し、マウスやキーボードを操作することで歯科用インプラント画像IIの位置と向きを自由に変えることができ、最終的に、該歯科用インプラント画像IIの最適な埋入位置方向を決めることができ、例えば一旦埋入位置に表示した歯科用インプラント画像II(0)の位置方向を、顎部X線CT画像IGが表示座標系に対し静止した状態で変更して最終的に歯科用インプラント画像II(1)とすることができ、(【請求項4】、【0025】、【0044】~【0045】、図1,看取事項3(F1))
3b2 インプラントを埋入しようとしている部分がXYZ軸に対し傾いている場合には、前記表示画面1c上の「スライス角度設定」アイコンクリックにより座標軸の角度を設定し、前記表示画面1c上の「再スライス」アイコンのマウスクリックによって前記XYZ座標軸を回転し、該回転した座標軸について改めてスライス断層面画像IX,IY,IZを作成することができ、(【0079】~【0081】、図4)
3c1 前記、XYZ軸の回転は、歯科用インプラント画像IIが顎骨の埋入位置にXYZ軸に対し傾斜した状態で表示された画像に対し、アイコン操作により行われるものであり、(【0079】~【0081】、看取事項3(F4))
3c2 また、例えば、顎部X線CT画像IG上の埋入位置に一旦表示した歯科用インプラント画像II(0)の位置方向を、顎部X線CT画像IGが表示座標系に対し静止した状態で変更して最終的に歯科用インプラント画像II(1)とすることができ、(【0044】~【0045】、図1、看取事項3(F1))
3d 前記XYZ軸の回転は、具体的には例えば、X,Y,ZカーソルをそれぞれCX,CY,CZとしたとき、顎骨の断面がカーソルCY,CZに対して傾いている場合には、[スライス角度設定]アイコンをクリックして、この顎骨の傾斜を示す2点をクリックすることで、顎骨がカーソルCYに平行になるように座標軸の角度を設定でき、[再スライス]アイコンをクリックするとその回転後の座標軸について再スライスされ、新たなスライス断層面画像IX、IY、IZが表示され、スライス断層面画像IXでも、顎骨、インプラントが垂直となって表示されるものである、(【0081】、【0096】)
3f 歯科用インプラント施術支援装置。(【0001】)」
3 無効理由1-1について
第1回口頭審理において確認されたとおり、請求人が主張する無効理由1-1は、本件発明1及び2に対する甲1に記載された発明に基づく進歩性欠如、である。
(1)本件発明1について
ア 本件発明1と甲1発明との対比
本件発明1と甲1発明とを対比する。
(ア)構成要件A・Fについて
a 構成1a11の「患者の各欠損歯に装着された放射線用ステントにチタン製マーカが挿入された状態でCTスキャンすることで生成されたCT画像において」「抽出し」「生成した」「前記チタン製マーカの軸に直交する新しいアキシャル画像」、及び、同生成した「該新しいアキシャル画像上で計算したパノラミックラインに直交する再配向後のクロスセクショナル画像」についての、構成1a12における「前記新しいアキシャル画像及び前記再配向後のクロスセクショナル画像を含む新しいマルチビュー」は、構成1a12において「新しいマルチビューにおいて、仮想的なマーカを別の位置に移動させ・・・」と特定されるとおり、該「マルチビュー」上で「仮想的なマーカ」なる画像要素を(ユーザーが)移動操作可能なものであるから、何らかの表示手段に表示されるものであることが明らかである。
よって、甲1発明は構成要件Aの「ディスプレイ」に相当する要素を備えているといえる。
b 構成1a11の「患者の各欠損歯に装着された放射線用ステントにチタン製マーカが挿入された状態でCTスキャンすることで生成されたCT画像」から抽出・生成した「前記新しいアキシャル画像及び前記再配向後のクロスセクショナル画像を含む新しいマルチビュー」は、前記「患者の欠損歯」が患者の上顎部または下顎部の歯列の一部に位置するから、構成要件Aの「ディスプレイ上に表示された歯列を含む上顎部及び/又は下顎部の3次元撮影画像」と、≪ディスプレイ上に表示された歯列を含む上顎部及び/又は下顎部の撮影画像≫である点で共通する。
c(a)構成1a11の「チタン製マーカ」は、「CT画像」が、前記マーカが「患者の欠損歯に挿入された状態でCTスキャンすることで生成された」ものであることから、前記「CT画像」上で実画像として存在するものであり、構成1a13によれば「インプラントを計画する必要のある欠損歯と一致している」、つまり、「CT画像」上において欠損歯の位置に静止して存在するものと理解される。
(b)一方、構成1a12の「仮想的なマーカ」は、構成1b12における「グラフィックツールを使用することで、仮想的なマーカがコンピュータベースのアニメーションで別の位置に移動させられる」、と特定されることから、実画像(CT画像)ではなく、該CT画像上に重畳された「コンピュータベースのアニメーション」である。
そうすると、構成要件Aの「歯科用インプラント」と、甲1発明(構成1a12)の「仮想的なマーカ」とは、共に≪歯科人工物の画像オブジェクト≫である点で共通する。
(c)構成1a12の「仮想的なマーカを別の位置に移動させ」ることは、構成1b12における「グラフィックツールを使用することで、仮想的なマーカがコンピュータベースのアニメーションで別の位置に移動させられる」ことである。
また、ここでの「別の位置」は、構成1a2で「仮想的なマーカが別の位置に移動され、該仮想的なマーカの軸に垂直に抽出された新しいアキシャル面においてパノラミック切断曲線が計算され、パノラミック画像が抽出され、新しいマルチビューが構築される」と特定されることから、該移動によって「仮想的なマーカ」の軸に垂直なアキシャル面が変更を要する状態になり得るということで、「仮想的なマーカ」について、その軸の向きが前記移動に伴って変化し得ることが前提となっていると理解される。
そうすると、既述の対比結果も踏まえれば、構成要件Aの「ディスプレイ上に表示された歯列を含む上顎部及び/又は下顎部の3次元撮影画像上に、歯科用インプラントを任意に位置決めする」ことについて、甲1発明は、≪ディスプレイ上に表示された歯列を含む上顎部及び/又は下顎部の撮影画像上に、歯科人工物の画像オブジェクトの移動した位置と変化した向きを位置決めする≫点で共通する。
d 構成1a2の「仮想的なマーカが別の位置に移動され、該仮想的なマーカの軸に垂直に抽出された新しいアキシャル面においてパノラミック切断曲線が計算され、パノラミック画像が抽出され、新しいマルチビューが構築される」ことについて、「新しいマルチビュー」とは構成1a12において「前記新しいアキシャル画像及び前記再配向後のクロスセクショナル画像を含む」と定義されるものであり、「クロスセクショナル画像」とは、構成1a11によれば、「該新しいアキシャル画像及び該新しいアキシャル画像上で計算したパノラミックラインに直交する再配向後の」「画像」と定義される画像セットである。
そうすると、甲1発明の「クロスセクショナル画像」は、構成要件Aの「基準軸としての歯科用インプラント長軸を含む所定の平面領域の画像」と、≪歯科人工物の画像オブジェクトの軸に平行な画像≫である点で共通する。
e 構成1a12・1a2・1fの「ソフトウェア・システム」は、少なくともアキシャル画像やクロスセクショナル画像を生成する機能を備える(構成1a11ほか)点で、構成要件A・Fの「断面画像検出装置」に相当する
(イ)構成要件B1について
上記(ア)の主としてcにおける説示もふまえると、構成1b12の「グラフィックツールを使用することで、仮想的なマーカがコンピュータベースのアニメーションで別の位置に移動させられる」ことは、構成要件B1の「前記歯科用インプラントは、前記ディスプレイ上を移動させることで任意に位置決められ」ることと、≪前記歯科人工物の画像オブジェクトは、前記ディスプレイ上を移動させることで移動した位置と変化した向きを位置決められ≫ることである点で共通するといえる。
(ウ)構成要件B2について
上記(ア)のc,dにおける説示を踏まえると、構成1b22は構成要件B2と、≪歯科人工物の画像オブジェクトの位置と向きが位置決めされると歯科人工物の画像オブジェクトの軸に平行な画像も位置決められ≫る点で共通する。
(エ)構成要件Cについて
上記(ア)のc,dにおける説示を踏まえると、甲1発明は本件発明1の構成要件Cと、≪歯科人工物の画像オブジェクトの変化した向きを位置決めすることができ≫る点で共通する。
(オ)構成要件Dについて
構成1d2の「前記仮想的なマーカは、別の位置に移動させられた場合、新しい軸が計算され、該軸に垂直に抽出された新しいアキシャル面」に対し「新しいマルチビューが構築される」ことにおいて、「新しいマルチビュー」が「前記新しいアキシャル画像及び前記再配向後のクロスセクショナル画像を含む」画像群であることは上記(ア)dで説示したとおりであり、「別の位置に移動」とは、上記(ア)c(d)の説示によれば、(仮想的なマーカの)位置が移動し向きが変化することを意味すると解される。
そうすると、構成1d2の「前記仮想的なマーカは、別の位置に移動させられた場合、新しい軸が計算され、該軸に垂直に抽出された新しいアキシャル面」に対し「新しいマルチビューが構築される」ことは、[仮想的なマーカの位置が移動し向きが変化させられると、該移動と向きの変化を経たマーカの新たな軸が計算され、該軸に直交するアキシャル面と、該アキシャル面上のパノラミック切断曲線ラインとに直交するクロスセクショナル面からなるマルチビューが構築される]こと、つまり、仮想的なマーカの軸の向きが変化したことを契機として、該軸に平行なクロスセクショナル画像が構築されることを意味すると解される。
そうすると、甲1発明(構成1d1)は構成要件Dと、≪歯科人工物の画像オブジェクトの変化した向きについて、歯科人工物の画像オブジェクトの軸に平行な画像が生成される≫点で共通する。
イ 一致点・相違点
上記アから、本件発明1と甲1発明とは下記(ア)の点で一致し、下記(イ)の各点で相違する。
(ア)一致点
一致点は以下のとおり。本件発明1と甲1発明との共通事項は「≪≫」括弧で示す。
「A’ ディスプレイ上に表示された歯列を含む上顎部及び/又は下顎部の≪撮影画像≫上に、≪歯科人工物の画像オブジェクト≫の≪移動した位置と変化した向き≫を位置決めすることで、≪歯科人工物の画像オブジェクトの軸に平行な画像≫を生成する断面画像検出装置であって、
B1’ 前記≪歯科人工物の画像オブジェクト≫は、前記ディスプレイ上を移動させることで≪移動した位置と変化した向きを≫位置決められ、
B2’ 該≪歯科人工物の画像オブジェクトの位置と向きが≫位置決めされると≪歯科人工物の画像オブジェクトの軸に平行な画像≫も位置決められ、
C’ また、≪歯科人工物の画像オブジェクトの変化した向きを位置決めすることができ≫、
D’ 且つ≪歯科人工物の画像オブジェクトの変化した向きについて、歯科人工物の画像オブジェクトの軸に平行な画像が生成される≫ことができる、
F 断面画像検出装置。」
(イ)相違点
a 相違点1-1(構成要件A)
ディスプレイ上に表示され、位置決めされる歯科人工物の画像オブジェクトが、本件発明1では歯科用インプラントのものであるのに対し、甲1発明では患者の欠損歯に装着された放射線用ステントに挿入されたチタン製マーカの仮想的マーカである点。
b 相違点1-2(構成要件A)
歯科用インプラントが位置決めされる対象の、歯列を含む上顎部及び/又は下顎部の撮影画像が、本件発明1では3次元撮影画像であるのに対し、甲1発明では、CTスキャンすることで生成されたCT画像ではあるものの、表示形式が、それぞれ2次元断面像であるアキシャル画像、クロスセクショナル画像及びパノラミック画像を含む「新しいマルチビュー」(構成1a11~1a2)であり、3次元画像ではない点。
c 相違点1-3(構成要件A)
≪歯科人工物の画像オブジェクトの軸に平行な画像≫(平面領域の画像)が、本件発明1では、歯科人工物の画像オブジェクトの長軸を含むのに対し、甲1発明では、前記軸に平行な断面の画像(クロスセクショナル画像)ではあるものの、前記軸を該画像が含むかについては不明である点。
d 相違点1-4(構成要件B1)
歯科人工物の画像オブジェクトのディスプレイ上を移動させることによる位置決めが、本件発明1では任意であるのに対し、甲1発明では、位置の移動を行うことが特定され、該移動の際に向きの変化が生じることが示唆されるにとどまる点。
e 相違点1-5(構成要件C)
歯科用人工物の画像オブジェクトの向きの変化の際、本件発明1では上顎部及び/又は下顎部の座標系が固定された状態であるのに対し、甲1発明では、上顎部及び/又は下顎部の座標系の動態については不明である点。
f 相違点1-6(構成要件E)
構成要件Eについて、本件発明1の構成要件E「前記平面領域は前記歯科用インプラント長軸を中心に、軸周りに回転させることができる」ことに相当または対応する構成を甲1発明は備えない点。
ウ 相違点について
(ア)相違点1-1・1-2について
甲1発明と同様に、歯科用インプラントの施術支援に用いるCT画像生成表示装置において、CT画像上で移動させる画像オブジェクトを歯科用インプラントの画像オブジェクトとし、3次元表示した顎部CT画像上で前記画像オブジェクトを移動や向きの変更を行うようにすることは、甲3発明(構成3a5~3a61)として認定された事項、また、甲4の記載4-31・4-図6、甲5の記載5-140Lに記載されている事項によって裏付けられるとおり、周知技術であるといえる。
甲1発明の放射線用ステントに挿入されるチタン製マーカをもとにした仮想的マーカも、前記周知技術で用いる歯科用インプラント(人工歯根部分)の画像も、歯科用インプラント施術計画における実施段階は相違するものの、歯科用インプラント施術時の人工歯根の顎骨に対する挿入位置を模擬する画像オブジェクトである点で共通するから、歯科用インプラントの画像に関する前記周知技術を、放射線用ステントのマーカの画像に関する甲1発明に適用して相違点1-1・1-2に係る構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。
(イ)相違点1-3について
上記甲1の看取・認定事項1-1(上記1(1)イ(ア))において認定したとおり、甲1には、歯科用人工物の実体物であるチタン製マーカの像の長軸がマルチビューのパノラミック画像やクロスセクショナル画像の鉛直軸に対し傾いている場合に、再配向により該各画像の鉛直軸と前記マーカ像の長軸とが平行になるようにすると共に、クロスセクショナル画像が前記マーカの長軸(中心軸線)をほぼ含むものとすることが記載されていると認められる。
よって、甲1発明において、向きが変化させられた仮想的マーカの軸に平行になるようにクロスセクショナル画像を再配向した際にも、前記看取・認定事項1-1にならって、該クロスセクショナル画像を、前記該向きが変化したあとの仮想的マーカの中心軸を含む断面について生成するようにして、相違点1-3の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。
(ウ)相違点1-4について
甲1発明において、歯科人工物の画像オブジェクト(仮想的マーカ)が移動に際し「任意に位置決め」されるとは特定されないものの、上記一致点構成B1’で認定したとおり、前記ディスプレイ上を移動させることで移動した位置と変化した向きを位置決めする点で、本件発明1と共通する構成を備えるのであり、位置、すなわち重心位置が移動できて、向きが変化させられ得るのであれば、実質的に任意の位置と姿勢を採り得るといえるから、相違点1-4は実質的な相違点とはいえない。
(エ)相違点1-5についてa 実質的な相違点ではないこと
甲1発明において、仮想的マーカは、
・工程1:「患者の各欠損歯に装着された放射線用ステントにチタン製マーカが挿入された状態でCTスキャンすることで生成されたCT画像」(構成1a11)取得、
・工程2:前記チタン製マーカの軸に直交する新しいアキシャル画像を抽出し、該新しいアキシャル画像及び該新しいアキシャル画像上で計算したパノラミックラインに直交する再配向後のクロスセクショナル画像が生成(構成1c12)
・工程3:仮想的マーカは、前記チタン製マーカについて構築した新しいマルチビューからスタートして、別の位置にコンピュータベースのアニメーションにより仮想的に移動される(構成1c2)
・工程4:前記仮想的なマーカは、別の位置に移動させられた場合、新しい軸が計算され、該軸に垂直に抽出された新しいアキシャル面においてパノラミック切断曲線が計算され、その後パノラミック画像が抽出され、新しいマルチビューが構築される(構成1d2)
との手順を経て向きの変化を伴う移動と、それに伴う座標系(マルチビュー)の再配向が行われる。
そうすると、仮想的マーカはその移動が開始される時点で、既にチタン製マーカの軸を基準とする座標系に1回目の再配向がされているから、工程1の、当初のCT画像における座標系とは相違しているが、該一回目の再配向後の座標系を基準とした場合、次に座標系の2回目の再配向が行われるのは、仮想的マーカを移動させた後の工程4であり、甲1には仮想的マーカの移動に従ってリアルタイムに座標系の再配向を行うような技術的事項は記載されていないから、甲1発明において、仮想的マーカの移動開始から移動終了までの期間において、マルチビューの座標系は再配向されない。つまり、該期間において、マルチビューにおける上下顎部の像は回転せず、座標系は固定されていると解される。
よって、相違点1-5は実質的な相違点であるとはいえない。
b 容易想到であること
仮に上記aが成り立たず、相違点1-5が実質的な相違点であるとした場合について、念のため検討する。
上記2(2)のとおり、甲2公知発明は、クロスセクショナル画像又は3D画像に重畳された歯科用インプラント表示を、マウス操作により軸線方向を回転させる際に、該回転の前後において、3D画像に重畳されているアキシャル面(赤)及びクロスセクショナル面(青)の表示に変化はなく、該回転の前後で、歯科用インプラント表示の軸と前記両面との成す角が前記回転の分だけ変化する、との構成を備えている。
また、上記2(3)のとおり、甲3発明も、「顎部X線CT画像IG上の埋入位置に一旦表示した歯科用インプラント画像II(0)の位置方向を、顎部X線CT画像IGが表示座標系に対し静止した状態で変更して最終的に歯科用インプラント画像II(1)とすることができ」るとの構成(構成3c2)を備えている。
つまり、歯科用インプラント表示(歯科人工物の画像オブジェクト)をCT画像上で移動・回転させる際に、座標系により定義されるアキシャル面とクロスセクショナル面とを固定、つまり表示座標系を固定することは、甲2公知発明や甲3発明によっても裏付けられるとおり、周知技術である(該周知技術も含め、一般に、相手方の画像や物品に対し位置決めしようとオブジェクトを手動で移動等している際に、相手方の画像や物品を静止状態としなければ作業効率が低下することは技術常識であるともいえる。)。そして、該裏付けとなる甲2公知発明及び甲3発明は、歯科用インプラントの施術計画のための画像表示技術である点で技術分野が甲1発明と共通する。
よって、仮に上記aが成り立たず、相違点1-5が実質的な相違点であるとしても、甲1発明において、前記周知技術を適用して相違点1-5の構成とすることは、当業者が容易になし得たことである。
(オ)相違点1-6についてa 甲3・6~8の記載・認定事項
(a)上記1(6)に摘記したとおり、甲6には、インプラントの植え立て状態の検討にも用いることができる技術として、歯顎の3次元データに基づく歯牙の再構成画像において、任意の断面B1を指定し、該断面B1の位置を移動・回転させることで、任意の断面の画像を表示する技術が記載されている(【0125】~【0126】、【0131】~【0132】)。
(b)上記1(7)に摘記したとおり、甲7には、歯科用を含むX線CT画像において、任意に定めた軸を中心に回動させるように断面画像を切り出す技術が記載されている(記載7-43、図25)。
(c)上記1(8)に摘記したとおり、甲8には、歯牙と顎骨についての3次元画像データにおいて、歯軸と直交3座標軸とが特段一致していないXYZ座標系(図7)で表示されたXY平面(図中左上欄)、XZ平面(図中左下欄)、YZ平面(図中右下欄)からなるマルチビューを起点として、XY平面画像上で歯列方向とY軸とを一致させる座標系の回転(図7から図8)を行ってuvw座標系として各断層面画像の切り出しを行い、次いでvw平面上で歯軸をy軸に一致させるよう座標系の回転(図8から図9)を行って新しいuvw座標系として各断層面画像の切り出しを、順次、または最初のXYZ座標系に対し一度に(図10)行う技術が記載されている。
(d)甲3発明は、3次元画像データにおいて、インプラントを埋入しようとしている部分や顎骨の断面がXYZ軸に対し傾いている場合に、該傾きに座標軸を一致させるように座標軸を回転させる旨の構成(構成3a8、構成3d)を備える。
b 判断
(a)相違点1-6に係る構成要件Eの「前記平面領域」は、構成要件A・C・Dで特定されるとおりの、「上顎部及び/又は下顎部の3次元撮影画像上に」「任意に位置決め」され、「上顎部及び/又は下顎部の座標系を固定した状態で任意の方向に傾斜させることができ」る「歯科用インプラント」の、「歯科用インプラント長軸を含」み、「前記歯科用インプラントとともに傾斜させることができ」る「平面領域」である。
これに対し、上記aの各記載や認定事項における技術的事項はいずれも、任意に移動され、また、傾斜させられた歯科用インプラントの画像オブジェクトの軸に基づいた座標系や断層面の回転についてのものではない。
よって、この点において、相違点1-6に係る構成は請求人の証拠方法によるいずれの証拠にもなく、甲号証に基づくまでもなく自明であるといえる程度に周知技術であるともいえないから、甲1発明において相違点1-6の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たこととはいえない。
(b)また、上記(a)の判断が前提とする、「平面領域」の回転軸が「傾斜させられた歯科用インプラントの画像オブジェクトの軸」である点を措き、相違点1-6に直接係る「前記平面領域は前記歯科用インプラント長軸を中心に、軸周りに回転させることができる」点のみについて検討したとしても、下記i)~iii)のとおり、甲1発明において相違点1-6の構成とすることを当業者が容易に想到し得たとはいえない。
i)上記a(a)・(c)・(d)の各記載・認定事項は、直交座標系を維持した状態での、該直交座標系全体を、そのうちの1軸または2軸が指定した軸に一致するように回転させる技術であって、特定の断面を特定の1軸の周りに回転させるものではない。
ii)甲7に係る上記a(b)の記載事項は、歯科分野のX線CT画像において、任意の1軸の周りに切り出し断面を回転させる技術ではあるが、実体物である顎骨や歯牙、埋入済みの歯科用インプラントの画像を対象とする技術であり、歯科用のX線CT画像自体に仮想的に配置した歯科用インプラントの軸周りに回転する断面を生成するという技術思想を含むものではないし、よって当然に、該仮想的に配置した歯科用インプラント(歯科人工物の画像オブジェクト)の長軸を含む平面領域の画像を切り出すという相違点1-6に係る構成の前提(軸周り回転させる平面領域)となる技術的事項を備えるものでもない。
したがって、甲1発明において、歯科人工物の画像オブジェクトの軸に対し甲7記載の技術的事項を適用しても、相違点1-6に係る構成を備えるに至らないし、そもそも技術の前提が異なり、前記適用をする動機付けを欠いてもいる。
iii)件発明1と甲1発明とは、相違点1-1として、歯科人工物の画像オブジェクトが、患者の欠損歯に装着された放射線用ステントに挿入されたチタン製マーカの仮想的マーカであるのか、歯科用インプラント(の画像オブジェクト)であるのかについても相違しているから、甲1発明に対し甲7に記載された任意の軸周りの回転断面を作成する技術を適用して本件発明1の構成に至るためには、歯科用人工物の画像オブジェクトとして、仮想的マーカを歯科用インプラント(の画像オブジェクト)に変更することに想到し、さらに、甲7記載の技術的事項を該歯科用インプラント(の画像オブジェクト)に適用して、その軸周りに平面領域を回転させるようにすることに想到するとの、2つの段階を要するものである。このように、主引用発明から複数の段階を経て相違点に係る構成に想到することは、当業者であっても、格別の努力を要するといえ、当業者にとって容易になし得たこととはいえない。
c 構成要件Eの解釈について
構成要件Eに関し、仮に、構成要件C・Dに係る歯科用インプラントの傾斜操作を行う前の、傾斜しない状態で位置決めされた歯科用インプラントについて、構成要件Eに係る機能が備われば足るとの解釈を採用するとしても、上記b(b)iii)で説示したとおりの、相違点1-6の構成に想到するために複数の段階(いわゆる「容易の容易」の論理)を要することに変わりはない。
その他、上記判断の結果は、審理事項通知書における構成要件の解釈、及びそれに対する特許権者の口頭審理陳述要領書における陳述によって左右されるものではない。
エ 小括
上記ア~ウのとおりであるから、本件発明1は、少なくとも相違点1-6について、甲1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明することができたものとはいえない。
(2)本件発明2について
本件発明2は、本件発明1に対し、さらに構成要件Gに係る事項について限定されたものであるから、上記(1)のとおり、本件発明1について甲1に記載された発明に基づく容易想到性がない以上、本件発明2についても、構成要件Gについて検討するまでもなく、甲1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明することができたものとはいえない。
4 無効理由1-2について
第1回口頭審理において確認されたとおり、請求人が主張する無効理由1-2は、本件発明1及び2に対する甲2の1及び甲2の2に記載された公知発明に基づく進歩性欠如、である。
(1)本件発明1について
ア 本件発明1と甲2公知発明との対比
本件発明1と甲2公知発明とを対比する。
(ア)構成要件A・Fについて
a 構成2a3の「ディスプレイ上に少なくとも患者の下顎部のX線CT画像をもとに生成された3D画像」は、構成要件Aの「ディスプレイ上に表示された歯列を含む上顎部及び/又は下顎部の3次元撮影画像」に相当する。
b 構成2a2の「上下端位置にそれぞれ白い正方形の記号を備える長方形形状のインプラントのマーカ」は、構成要件Aの「歯科用インプラント」に相当する。
c 構成2a43の「クロスセクショナル画像上にインプラントのマーカを配置したあと、3D画像上でも歯科用インプラントのマーカを移動すること」は、上記a、bをふまえると、構成要件Aの「ディスプレイ上に表示された歯列を含む上顎部及び/又は下顎部の3次元撮影画像上に、歯科用インプラントを任意に位置決めすること」に相当する。
ここで、構成2a43ほかの「歯科用インプラントのマーカ」は、構成要件Aほかの「歯科用インプラント」に相当する。
d 歯顎のX線CT画像から生成する断層面として、アクシャル画像(面)とは、CT撮像装置に由来し、一般にはほぼ咬合面に平行な断層面の断層画像を意味し、パノラミック画像とは、アクシャル面上で決定した歯列の湾曲線(上顎堤または下顎堤の湾曲線)を含みアキシャル面に直交する曲面の断層画像を意味し、クロスセクショナル画像とは、アクシャル面及びパノラミック面に直交する面の断層画像を意味する、というのが技術常識である(甲1の記載1-186-3の記載によっても裏付けられる)ところ、構成2a42の、
「アクシャル画像上で、複数表示されているうちの任意の歯科用インプラント表示をクリックすることで、クロスセクショナル画像位置を示す青色ラインを該クリック対象の歯科用インプラント位置に移動させ、クロスセクショナル画像表示領域の中心の位置に、前記青色ラインに対応するクロスセクショナル画像を表示させる」
ことによって生成・表示された「クロスセクショナル画像」は、平面画像である点で、構成要件Aの「所定の平面領域の画像」と共通する。
また、ここで、構成2a42の「歯科用インプラント表示」も、構成要件Aほかの「歯科用インプラント」に相当する。
e 構成2a8・2fの「SimPlant8.1と称するソフトウェアをインストールしたコンピュータ」は、クロスセクショナル画像やアクシャル画像など各種断面画像を生成する点で、構成要件A・Fの「断面画像検出装置」に相当するといえる。
(イ)構成要件B1について
構成2b1の「歯科用インプラントは、ディスプレイ上のアキシャル画像及びパノラミック画像上で、既に表示されている歯科用インプラント表示を複写または定まった距離水平移動させることができ」ること、及び構成2c1の「クロスセクショナル画像又は3D画像に重畳された歯科用インプラント表示は、マウス操作により軸線方向を回転させることができ」ることは、共に構成要件B1の「前記歯科用インプラントは、前記ディスプレイ上を移動させることで任意に位置決められ」ることに相当する。
(ウ)構成要件Cについて
a 構成2c1の、「クロスセクショナル画像又は3D画像に重畳された歯科用インプラント表示」を「マウス操作により軸線方向を回転させる」ことは、構成要件Cの「歯科用インプラント」を「任意の方向に傾斜させる」ことに相当する。
b 構成2c1~2c2の、
「クロスセクショナル画像又は3D画像に重畳された歯科用インプラント表示は、マウス操作により軸線方向を回転させることができ、
前記回転の前後において、3D画像に重畳されているアキシャル面(赤)及びクロスセクショナル面(青)の表示に変化はなく、該回転の前後で、歯科用インプラント表示の軸と前記両面との成す角が前記回転の分だけ変化することになっている」
ことは、歯科用インプラント表示の回転(傾斜)操作の前後において、座標軸に由来するアキシャル面・クロスセクショナル面が静止していること、つまり、座標軸が固定していることを意味すると理解されるから、構成要件Cの「前記歯科用インプラントは、上顎部及び/又は下顎部の座標系を固定した状態で任意の方向に傾斜させることができ」ることに相当するといえる。
イ 一致点・相違点
上記アから、本件発明1と甲2公知発明とは、下記(ア)の点で一致し、下記(イ)の各点で相違する。
(ア)一致点
「A’ ディスプレイ上に表示された歯列を含む上顎部及び/又は下顎部の3次元撮影画像上に、歯科用インプラントを任意に位置決めし、平面領域の画像を生成する断面画像検出装置であって、
B1 前記歯科用インプラントは、前記ディスプレイ上を移動させることで任意に位置決められ、
C また、前記歯科用インプラントは、
上顎部及び/又は下顎部の座標系を固定した状態で任意の方向に傾斜させることができる、
F 断面画像検出装置。」
(イ)相違点
a 相違点2-1(構成要件A)
生成される「所定の平面領域の画像」が、本件発明1では「基準軸として歯科用インプラント長軸を含む」のに対し、甲2公知発明では、生成するいずれの平面画像も歯科用インプラント長軸を含むとの特定がされない点。
b 相違点2-2(構成要件B2)
本件発明1が構成要件B2として、「該歯科用インプラントが任意に位置決めされると前記平面領域」(すなわち、構成要件Aにいう「基準軸としての歯科用インプラント長軸を含む所定の平面領域」)「も位置決められ」るとの特定事項を備えるのに対し、甲2公知発明は、前提となる相違点2-1に係る「基準軸としての歯科用インプラント長軸を含む所定の平面領域」の生成がされないから、前記構成要件B2に係る特定事項に相当する構成も備えないし、歯科用インプラントの位置決めを契機としていずれかの平面(断面)を位置決めする機能も備えない点。
c 相違点2-3(構成要件D)
本件発明1が構成要件Dとして、構成要件Aにいう「基準軸としての歯科用インプラント長軸を含む所定の平面領域」を前記歯科用インプラントとともに傾斜させる機能を備えるのに対し、甲2公知発明は、前提となる相違点2-1に係る「基準軸としての歯科用インプラント長軸を含む所定の平面領域」の生成がされないから、前記構成要件Dに係る特定事項に相当する構成も備えないし、歯科用インプラントの傾斜とともにいずれかの断面を傾斜させる機能も備えない点。
d 相違点2-4(構成要件E)
本件発明1が、構成要件Eとして、「歯科用インプラント長軸を含む所定の平面領域」を歯科用インプラント長軸を中心に、軸周りに回転させることができる機能を備えるのに対し、甲2公知発明は、前提となる相違点2-1に係る「基準軸としての歯科用インプラント長軸を含む所定の平面領域」の生成がされないから、前記構成要件Eに係る特定事項に相当する構成を備えない点。
ウ 相違点について
(ア)相違点2-1について
a 上記甲1の看取・認定事項1-1(上記1(1)イ(ア))において認定したとおり、甲1には、歯科用人工物の実体物であるチタン製マーカの像の長軸がマルチビューのパノラミック画像やクロスセクショナル画像の鉛直軸に対し傾いている場合に、再配向により該各画像の鉛直軸と前記マーカ像の長軸とが平行になるようにすると共に、クロスセクショナル画像が前記マーカの長軸(中心軸線)をほぼ含むものとすることが記載されていると認められる。
しかし、前記看取・認定事項1-1においてクロスセクショナル画像の再配向の基準となるのは、相違点2-1に係る歯科用インプラント(の画像オブジェクト)ではなく、実体物の像であることに加え、該実体物は、インプラントの施術計画を行うために歯の欠損部に挿入されるチタン製マーカの像である。
また、前記看取・認定事項1-1において、再配向後のクロスセクショナル画像は、実体物であるチタン製マーカの像の長軸にほぼ平行であることは推察できるものの、前記画像に前記マーカの像が含まれるとまでいえるかは不明である。
よって、甲2公知発明において相違点2-1の構成を備えるようにするためには、看取・認定事項1-1におけるチタン製マーカの実体物の像を、画像上の仮想的な表示である歯科用インプラント(の画像オブジェクト)に変更した技術的事項を適用する必要があるし、仮に該適用がなされて再配向後のクロスセクショナル画像が生成されたとしても、甲2公知発明は、前記画像が歯科用インプラントの長軸を含むように生成されるとの技術的事項は含まないから、相違点2-1の構成を備えるに至らない。
b 相違点2-1に係る、任意に位置決めされた、画像オブジェクトである歯科用インプラントについて、歯科用インプラント長軸を含む所定の平面領域の画像を生成するとの技術的事項は、他のいずれの甲号証にも記載されない。
例えば甲3発明は、歯科用インプラントの画像オブジェクトをCT画像上に配置し、傾斜させるとの技術的事項(構成3b1)、画像のスライス面を決めるXYZ直交座標系を顎骨の傾斜に合わせて手動操作によって回転させるとの技術的事項(構成3d)、その結果としてスライス断層画像IXにインプラントが垂直に表示されるとの技術的事項(構成3d)を含むが、座標系の回転は顎骨の傾斜に合わせて行われるのであり、その結果として、歯科用インプラントの画像オブジェクトも垂直に表示されるとするものにとどまり、工程上、歯科用インプラントの画像オブジェクトの軸線とスライス画像との平行性が担保されるものではないし、該スライス画像に前記画像オブジェクトの軸線が含まれるようにする工程の存在についても明示的ではない。
甲10~12の記載事項はいずれも、実体物である顎骨や歯の像、インプラントを模したアルミウム・チューブ、ステントの像に対しスライス画像の切断面を再構築する旨の技術に関するものであり、任意に位置決めした歯科用インプラントの画像オブジェクトに対する前記再構築を行う技術について開示するものではない。
その他、いずれの甲号証にも、相違点2-1に相当する技術的事項は記載されていない。
よって、甲2公知発明において相違点2-1の構成とすることは、請求人の証拠方法によっては、当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。
(イ)相違点2-2・2-3について
上記(ア)のとおり、相違点2-2・2-3の前提となる相違点2-1に係る構成を甲2公知発明が備えるようにすることが、請求人の証拠方法によっては当業者にとって容易に想到し得ないのであるから、甲2公知発明において相違点2-2・2-3の構成とすることも、請求人の証拠方法によっては、当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。
(ウ)相違点2-4について
a 上記(イ)と同様に相違点2-4も相違点2-1を前提とするから、上記(イ)と同様の理由により、甲2公知発明において相違点2-4の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。
b さらに、相違点2-4は相違点1-6と同様の相違点であるから、仮に相違点2-1が請求人の証拠方法によって当業者にとって自明である(実質的な相違点でない)としても、上記3(1)ウ(オ)と同様の理由により、甲2公知発明において相違点2-4の構成とすることは、請求人の証拠方法によっては当業者が容易に想到し得たものとはいえない。
エ 小括
上記ア~ウのとおりであるから、本件発明1は甲2公知発明に基づいて当業者が容易に発明することができたものとはいえない。
(2)本件発明2について
本件発明2は、本件発明1に対し、さらに構成要件Gに係る事項について限定されたものであるから、上記(1)のとおり、本件発明1について甲2公知発明に基づく容易想到性がない以上、本件発明2についても、構成要件Gについて検討するまでもなく、甲2公知発明に基づいて当業者が容易に発明することができたものとはいえない。
5 無効理由1-3について
第1回口頭審理において確認されたとおり、請求人が主張する無効理由1-3は、本件発明1及び2に対する甲3に記載された発明に基づく進歩性欠如、である。
(1)本件発明1について
ア 本件発明1と甲3発明との対比
本件発明1と甲3発明とを対比する。
(ア)構成要件A・Fについて
a 構成3a3の「画像表示操作装置」は、構成要件Aの「ディスプレイ」に相当する。
b 構成3a2~3a3の「画像表示操作装置」に「3次元的に表示」される「ステントを装着して撮影した患者の顎部X線CT画像」は、構成要件Aの「歯列を含む上顎部及び/又は下顎部の3次元撮影画像」に相当する。
c 構成3a4の「欠損部分に用いるべき歯科用インプラント画像」は、構成要件Aの「歯科用インプラント」に相当する。
d 上記a~cをふまえ、構成3a4~3a5の、「画像表示操作装置」に「表示され」る「複数の」「インプラントアイコンから」「選択され」た、「前記顎部X線CT画像IGに前記欠損部分に用いるべき歯科用インプラント画像IIを」、「前記画像表示操作装置の表示画面1cにおいて、前記顎部X線CT画像IGに」「重畳表示」することは、構成要件Aの「ディスプレイ上に表示された歯列を含む上顎部及び/又は下顎部の3次元撮影画像上に、歯科用インプラントを任意に位置決めすること」に相当する。
e 構成3a8の「回転した座標軸について改めて」「作成」された「スライス断層面画像IX,IY,IZ」は、構成要件Aの「所定の平面領域の画像」に相当する。
f 構成3a1・3fの「歯科用インプラント施術支援装置」は、上記eのとおり歯の「断層面画像」を作成するものであるから、構成要件A・Fの「断面画像検出装置」に相当する。
(イ)構成要件B1について
a 構成3b1の「インプラントアイコンIi」、「インプラントアイコンII」も、構成要件B1(A)の「歯科用インプラント」に相当する。
b 構成3b1で、「歯科用インプラント画像II」について「マウスやキーボードを操作することで歯科用インプラント画像IIの位置と向きを自由に変えることができ、最終的に、該歯科用インプラント画像IIの最適な埋入位置方向を決めることができ、例えば一旦埋入位置に表示した歯科用インプラント画像II(0)の位置方向を顎部X線CT画像IGが表示座標系に対し静止した状態で変更して最終的に歯科用インプラント画像II(1)とすることができ」ることは、構成要件B1の「前記歯科用インプラントは、前記ディスプレイ上を移動させることで任意に位置決められ」ることに相当する。
(ウ)構成要件B2について
上記(ア)eをふまえ、構成3b2で前記「スライス断層面画像IX,IY,IZ」が「該回転した座標軸について改めて」「作成」されることは、構成要件B2の「平面領域」が「位置決めされる」ことに相当する。
(エ)構成要件Cについて
構成3c2の、「顎部X線CT画像IG上の埋入位置に一旦表示した歯科用インプラント画像II(0)の位置方向を、顎部X線CT画像IGが表示座標系に対し静止した状態で変更して最終的に歯科用インプラント画像II(1)とすること」は、構成要件Cの「歯科用インプラントは、上顎部及び/又は下顎部の座標系を固定した状態で任意の方向に傾斜させること」に相当する。
(オ)構成要件Dについて
構成3dの、
「X,Y,ZカーソルをそれぞれCX,CY,CZとしたとき、顎骨の断面がカーソルCY,CZに対して傾いている場合には、[スライス角度設定]アイコンをクリックして、この顎骨の傾斜を示す2点をクリックすることで、顎骨がカーソルCYに平行になるように座標軸の角度を設定でき、[再スライス]アイコンをクリックするとその回転後の座標軸について再スライスされ、新たなスライス断層面画像IX、IY、IZが表示され、スライス断層面画像IXでも、顎骨、インプラントが垂直となって表示される」
という特定事項は、「スライス断面画像IX」が、座標軸の回転前の状態において「インプラント」すなわち歯科用インプラント画像が垂直(鉛直)でない状態から、「垂直(鉛直)となって表示」される「新たなスライス断面画像IX」に変化する機序を含んでいるということができ、該機序は、結果として構成要件Dの「前記平面領域は前記歯科用インプラントとともに傾斜させる」機序に相当するといえる。
イ 一致点・相違点
上記アから、本件発明1と甲3発明とは、下記(ア)の点で一致し、下記(イ)の各点で相違する。
(ア)一致点
A’ ディスプレイ上に表示された歯列を含む上顎部及び/又は下顎部の3次元撮影画像上に、歯科用インプラントを任意に位置決めすることで、所定の平面領域の画像を生成する断面画像検出装置であって、
B1 前記歯科用インプラントは、前記ディスプレイ上を移動させることで任意に位置決められ、
B2’ 前記平面領域も位置決められ、
C また、前記歯科用インプラントは、
上顎部及び/又は下顎部の座標系を固定した状態で任意の方向に傾斜させることができ、
D 且つ前記平面領域は前記歯科用インプラントとともに傾斜させることができる、
F 断面画像検出装置。
(イ)相違点
a 相違点3-1(構成要件A)
所定の平面領域やその画像が、本件発明1では基準軸としての歯科用インプラント長軸を含むのに対し、甲3発明では相当する構成を備えない点。
b 相違点3-2(構成要件B2)
平面領域の位置決めが行われるのが、本件発明1では「歯科用インプラントが任意に位置決めされる」ことを契機とするのに対し、甲3発明では、表示座標系やそれに応じた平面領域(画像)の回転は、「インプラントを埋入しようとしている部分」(構成3b2)や「顎骨」(構成3c1)の傾きに応じて行われるのであり、歯科用インプラントの位置決めを契機としない点。
c 相違点3-3(構成要件E)
本件発明1が、平面領域を歯科用インプラント長軸を中心に、軸周りに回転させることができるのに対し、甲3発明は、そのような構成を備えない点。
ウ 相違点について
(ア)相違点3-1について
上記4(1)ウ(ア)で説示したとおり、画面上に任意に位置決めした歯科用インプラント(の画像オブジェクト)の長軸を含むように平面領域の画像を生成することについて、請求人の証拠方法に係るいずれの甲号証にも記載がない。
関連する上記相違点1-3が甲1発明から当業者が容易に想到し得るとしても、甲1発明に当該相違点に係る構成が記載されているものではないから、甲3発明に甲1発明を適用しても相違点3-1に係る構成を備えるには至らず、さらに上記3(1)エ(イ)で容易想到とした変更を要し、全体として複数の段階を経ることとなり、当業者にとって格別の努力を要し、容易になし得たこととはいえない。
(イ)相違点3-2について
上記(ア)のとおり、相違点3-2の前提となる相違点3-1に係る構成(歯科用インプラントの長軸を含む平面領域の画像の生成)を甲3発明が備えるようにすることが、請求人の証拠方法によっては当業者にとって容易に想到し得ないのであるから、甲3発明において相違点3-2の構成とすることも、請求人の証拠方法によっては、当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。
(ウ)相違点3-3について
a 上記(ア)のとおり、相違点3-3の前提となる相違点3-1に係る構成(歯科用インプラントの長軸を含む平面領域の画像の生成)を甲3発明が備えるようにすることが、請求人の証拠方法によっては当業者にとって容易に想到し得ないのであるから、甲3発明において相違点3-3の構成とすることも、請求人の証拠方法によっては、当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。
b さらに、相違点3-3は上記相違点1-6と同様の相違点であるから、仮に相違点3-1が請求人の証拠方法によって当業者にとって自明(実質的な相違点でない)としても、上記3(1)ウ(オ)と同様の理由により、甲3発明において相違点3-3の構成とすることは、請求人の証拠方法によっては当業者が容易に想到し得たものとはいえない。
エ 小括
上記ア~ウのとおりであるから、本件発明1は、甲3に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明することができたものとはいえない。
(2)本件発明2について
本件発明2は、本件発明1に対し、さらに構成要件Gに係る事項をについて限定されたものであるから、上記(1)のとおり、本件発明1について甲3に記載された発明に基づく容易想到性がない以上、本件発明2についても、構成要件Gについて検討するまでもなく、甲3に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明することができたものとはいえない。
6 無効理由1-4・無効理由4について
(1)無効理由1-4に係る請求人の主張
第1回口頭審理において確認されたとおり、請求人が主張する無効理由1-4は、本件特許出願が分割要件を満たさないものとして、本件特許出願に係る実際の出願日を基準に判断される(ことを前提とした)、本件発明1及び2に対する甲13に記載された発明に基づく新規性及び進歩性欠如、である。
前記分割要件を満たさない旨の主張は、新規事項追加に係る無効理由4の中で主張されている。
(2)無効理由4に係る請求人の主張
請求人が無効理由4においてする主張は概略以下のとおりである。
ア 手続補正書1による補正が新規事項追加に当たること(無効理由4)
手続補正書1によりなされた【発明の詳細な説明】の【0046】~【0049】についての補正は、下記(ア)、(イ)の点で当業者によって出願当初の明細書又は図面のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものであるから、出願当初の明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものではないので、特許法第17条の2第3項の規定に違反する。
(ア)主張4-1
補正前の【0046】~【0049】には、「歯列欠損部に歯冠画像208を嵌合させることを前提として、歯冠画像208に付随するインプラント、基準軸206、及び平面領域204の操作を行うことができ、歯列欠損箇所に対して歯冠の埋入位置を確認しながら断面画像を取得することができる」という技術的事項が記載されていたのに対し、補正後の【0046】~【0049】では、「歯冠画像206の有無にかかわらず、ディスプレイ上で歯科用インプラント206自体を任意に移動させて位置決めする」という技術的事項に置き換わっている。すなわち、上記補正は、本件特許の当初明細書又は図面に記載された、歯冠画像208が歯列欠損部の近傍に位置決めされ、インプラント、基準軸206、及び平面領域204が歯冠画像208とともに移動するという記載事項を抽象化するものである。しかしながら、本件特許の出願当初明細書等には、歯冠画像208とは独立してインプラント、基準軸206、及び平面領域204を移動させる態様については、何ら記載されていない。
(イ)主張4-2
補正前の【0046】~【0049】に記載された、歯列欠損部に歯冠画像208を位置決めした上で、歯冠画像208に付随するインプラント、基準軸206、及び平面領域204に基づいて断面画像を取得するという技術的事項は、「歯列欠損箇所に対する歯冠の埋入位置を確認しながら断面画像を取得する」という課題を解決する点に技術的意義を有し、当該課題を解決するために必要不可欠な事項である。これに対し、上記補正後の技術的事項は、補正前の上記技術的意義を失わせるものであるので、補正前の記載事項とは全く異なる新たな技術的事項であるといえる。
イ 分割要件違反について(主張4-3)
本件特許明細書等に記載された事項は、本件特許の親出願である特願2008-187993の親出願である原出願の特願2006-536445号の出願当初明細書等に記載された事項の範囲を超えるものである。したがって、本件特許に係る出願は、特許法第44条第1項柱書に規定する分割出願の要件を満たさないから、出願日の遡及効は認められない。以上より、本件特許の特許要件は、現実の出願日である平成21年7月12日を基準として判断されるべきものである、
(3)出願分割と記載事項変更の経緯について
ア 分割出願の経緯
(ア)分割の経緯
本件特許出願は、平成21年(2009年)7月12日を現実の出願日とし、平成20年(2008年)7月21日を現実の出願日として出願された特願2008-187993号(以下「親出願」という。公開特許公報は甲13。)の分割出願である。該親出願の出願公開日は平成20年10月23日であり、本件特許出願は、親出願に対し平成21年4月27日付けで通知された拒絶理由通知に対する手続補正書の提出と同日になされたものであるから、親出願の明細書等の補正をすることができる時期になされた分割出願である。
また、前記親出願は、平成17年(2005年)9月26日を国際出願日とする特願2006-536445号(以下「原出願」という。再公表特許公報は甲14。)の分割出願であり、該原出願の国際公開日は平成18年(2006年)3月30日(WO2006/033483)である。
(イ)分割の実体要件の考え方
上記(ア)の経緯から、本件特許出願は親出願の明細書等について補正をすることができる時期になされていることから、本件特許出願が親出願に対し出願日の遡及を認められるために満たすべき分割出願の実体的要件は、
・親出願の分割直前の明細書等に記載された発明の全部が本件特許出願の請求項に係る発明とされたものでないこと(要件1)、及び、
・本件特許出願の明細書等に記載された事項が、親出願の出願当初の明細書等に記載された事項の範囲内であること(要件2)
である。
そこで、まず、親出願に対し本件特許出願が出願分割の実体的要件を満たすかについて、上記(2)アで請求人が新規事項追加を主張する本件特許明細書【0046】~【0049】に対応する箇所(以下「新規事項疑い箇所」という。)の記載、及び、特許請求の範囲など前記箇所の記載事項に関連する記載について、補正及び分割に係る変遷について検討する。
イ 親出願から本件特許出願にかけての明細書等の記載事項の変遷について
上記主張4-1~4-3に係る、親出願及び本件特許出願の明細書等の記載事項は以下のとおり。
(ア) 本件特許明細書の記載事項
本件特許明細書の【0046】~【0049】の記載は手続補正書1により補正された次のとおりのものである。
「 【0046】
次に、上記人体情報抽出装置により抽出された人体情報に基づく3次元画像の断面画像を検出する装置について説明する。図6は本装置により処理されるステップをディスプレイ上の画像表示で示しており、図7はそのステップのフローチャートが示されている。まず、ディスプレイ上の画像で説明すれば図6(a)に示すようにディスプレイ上にはCT撮影により得た3次元情報に基づいて顎部200が表示されている。オペレータは、この画像を視認しながら歯列の欠損部(図示しない)を認識する。欠損部が認識されるとまず最初にオペレータは歯冠画像208を欠損部に嵌合させてみる。
【0047】
ここで、歯冠画像208の嵌合について説明する。歯冠画像208は予め作成された歯冠形状の模型をCT撮影しておき、その撮影情報に基づいた画像208を一つのオブジェクトとしてディスプレイ上の任意の位置に配置される。通常、この画像(オブジェクト)をオペレータがディスプレイ画像内で移動させ、上記欠損部に重ね合わせ適当と判断される位置に適宜配置する。しかしながら、患者によっては多数の歯列欠損が生じている場合もあり、オブジェクトの移動実行前に欠損箇所から離間した任意の位置に複数の歯冠画像208が配置されているとオペレータにとってどの歯冠画像が各欠損歯列に適合するものか判りにくくなり、処理効率が悪くなる可能性がある。このため自動的に歯冠画像を欠損歯列の近傍に配置しておくようにしても良い。具体的には、上述する位置決め部材10から検出された基準面(咬合平面)を利用する。まず予め検出された咬合平面上に歯列を設定し、その歯列上に各歯冠画像情報を配置しておき、画面には各歯冠画像を非表示としておく。そして、欠損部に歯冠画像を重ね合わす処理をオペレータが実行する段階において該当する欠損箇所に対応する咬合平面上の歯冠画像208を表示する。このような処理を行うと、歯冠画像を移動させる前の初期段階においてもオペレータが所望する歯冠画像をある程度欠損部に近接した位置に自動的に表示することができ、逆に直近に所望しない歯冠画像を表示させないようにすることができる。
【0048】
また、この歯冠画像208の下端には基準軸に沿って歯科用インプラント206(参照番号206は基準軸としての歯科用インプラント長軸をも示している)が画像表示されており、さらに基準軸206には歯科用インプラント及び歯科用インプラント長軸を含む所定の平面領域204が付与されている。
【0049】
従って、オペレータがディスプレイ上を移動させ、歯科用インプラント206が任意に位置決め画像表示される。さらに、歯科用インプラント206が位置決めされると平面領域204も位置決めされ、画像表示されることとなる。この平面領域204こそがここで断面画像を所望する平面である。ここで平面領域204の位置決めについて言及すれば、断面検出用画像202はワールドエリア内で該画像が配設されたローカルエリアを設定すれば、歯科用インプラント画像206の任意の傾斜角、平面領域204の任意の回転角を選択、設定することができる。図6(a)では、歯科用インプラント長軸206を中心として画像表示を回転させ(矢印A方向の回転)、これに伴ってインプラント206と平面領域204とを回転させる様子を略示している。歯科用インプラント長軸206をZ軸とし、平面領域204をXY平面とする歯科医視点の座標系を設定すれば、3次元撮影画像内の任意の歯科用インプラント206の軸周りに回転させた平面領域204上の断面画像が表示される。また、図6(b)では、歯科用インプラント206を3次元撮影画像内で移動・傾斜させ、これとインプラント206と平面領域204とを軸周りに回転させる様子を略示している。このようにしてディスプレイの撮影画像上に任意に位置決めされた歯科用インプラント206を移動・軸回転・傾斜させたときの該インプラント長軸周りの平面領域の画像を取得すれば、ディスプレイの撮影画像上の歯科用インプラントの埋入位置を確認しながら、その断面画像を取得することが可能となる。」
(イ)本件特許出願の出願当初の明細書等の記載
a 出願当初明細書の記載事項
本件特許出願の願書に最初に添付された明細書(以下「本件出願当初明細書」という。)における【0046】~【0049】の記載は次のとおり。
「 【0046】
次に、上記人体情報抽出装置により抽出された人体情報に基づく3次元画像の断面情報を検出する装置について説明する。図6は本装置により処理されるステップをディスプレイ上の画像表示で示しており、図7はそのステップのフローチャートが示されている。まず、ディスプレイ上の画像で説明すれば図6(a)に示すようにディスプレイ上にはCT撮影により得た3次元情報に基づいて顎部200が表示されている。この表示画像はワールドエリア上に配設されたものである。オペレータは、この画像を視認しながら歯列の欠損部(図示しない)を認識する。欠損部が認識されるとまず最初にオペレータは歯冠画像208を欠損部に嵌合させてみる。
【0047】
ここで、歯冠画像208の嵌合について説明する。歯冠画像208は予め作成された歯冠形状の模型をCT撮影しておき、その撮影情報に基づいて一つのオブジェクトとしてワールドエリア上の任意の位置に配置される。通常、この画像(オブジェクト)をオペレータがワールドエリア上で移動させ、上記欠損部に重ね合わせ適当と判断される位置に画像配置する。しかしながら、患者によっては多数の歯列欠損が生じている場合もあり、オブジェクトの移動実行前に欠損箇所から離間した任意の位置に複数の歯冠画像208が配置されているとオペレータにとってどの歯冠画像が各欠損歯列に適合するものか判りにくくなり、処理効率が悪くなる可能性がある。このため本実施形態では、自動的に歯冠画像を欠損歯列の近傍に配置し、歯冠画像がどの欠損歯列に適合するか明白にさせておくようにしている。具体的には、上述する位置決め部材10から検出された基準面(咬合平面)を利用する。詳細には、まず予め検出された咬合平面上に歯列を設定し、その歯列上に各歯冠画像情報を配置しておき、画面には各歯冠画像を非表示としておく。そして、欠損部に歯冠画像を重ね合わす処理をオペレータが実行する段階において該当する欠損箇所に対応する咬合平面上の歯冠画像208を表示する。このような処理を行うと、歯冠画像を移動させる前の初期段階においてもオペレータが所望する歯冠画像をある程度欠損部に近接した位置に自動的に表示することができ、逆に直近に所望しない歯冠画像を表示させないようにすることができる。
【0048】
次に、歯冠画像208が欠損箇所に適合したと視認された後の処理について説明する。この歯冠画像208の下端には基準軸に沿ってインプラント206(参照番号206は基準軸としてのインプラント長軸をも示している)が表示されており、さらに基準軸206には該軸を含む所定の平面領域204が付与されている。
【0049】
従って、オペレータが歯冠画像208を歯列欠損部に嵌合するようにワールドエリア上を移動させ位置決めすると、これに応じてインプラントおよび基準軸206も位置決めされる。さらに、基準軸206が位置決めされると平面領域204も位置決めされることとなる。この平面領域204こそが断面情報を所望する平面である。ここで平面領域204の位置決めについて言及すれば、断面検出用画像202はワールドエリア内で該画像が配設されたローカルエリアを設定すれば、歯冠画像位置、基準軸206の傾斜角、平面領域204の回転角を設定することができる。図6(a)では、基準軸206をZ軸としてワールドエリア内を回転させることで基準軸を矢印A方向に回転させ、これに伴ってインプラント(206と平面領域204とを回転させる様子を略示している。この際、基準軸206をZ軸とし、平面領域204をXY平面とするローカル座標系を設定すれば、該座標系に対応するワールド座標系での3次元撮影情報が所望する平面領域204上の断面情報となる。また、図6(b)では、基準軸206に基づくローカル座標系をワールド座標系に対して傾斜させることで基準軸を矢印B方向に傾斜させ、これに伴ってインプラント206と平面領域204とを回転させる様子を略示している。このようにして位置決めされたローカル座標系での平面領域の人体情報に対応するワールドエリア上の人体情報を取得すれば、該平面領域上の人体情報を取得できる。従って、本装置によれば歯冠およびインプラントの埋入位置を確認しながら、その断面情報を取得することが可能となる。」
b 出願当初の特許請求の範囲の記載事項
本件特許出願の願書に最初に添付された特許請求の範囲の請求項1には以下の記載がある。
「【請求項1】
歯列を含む上顎部及び/又は下顎部の3次元撮影情報から、任意に位置決めされた歯科用インプラント長軸を含む所定の平面領域の3次元撮影情報を抽出する断面情報検出装置であって、
前記歯列を含む上顎部及び/又は下顎部の3次元撮影画像上の任意の位置に、歯科用インプラント長軸を設定し位置決めする手段と、
前記3次元撮影画像上に付与され位置決めされた前記歯科用インプラント長軸を含む所定の平面領域を生成する手段と、
前記平面領域に位置する上顎部及び/又は下顎部の3次元撮影情報を抽出する人体情報抽出手段と、を有し、
前記歯科用インプラント長軸は、予め作成された任意の歯科用インプラントの軸線であって前記歯列を含む上顎部及び/又は下顎部の3次元撮影画像上に設定され表示されるものであり、
前記歯科用インプラント長軸は所定の方向に傾斜させることができ、且つ前記平面領域は前記歯科用インプラント長軸とともに傾斜し、
さらに前記歯科用インプラント長軸が前記所定の方向に傾斜したときには前記歯科用インプラント長軸と前記平面領域とはその傾斜状態を維持したまま回転可能である、ことを特徴とする断面情報検出装置。」
(ウ)親出願の出願当初明細書等の記載事項
a 親出願の出願当初明細書の記載
親出願の願書に最初に添付された明細書(以下「親出願当初明細書」という。)の、上記(イ)aに対応する箇所の記載は、【0059】~【0062】の次のとおりのものである。
「 【0059】
次に、上記人体情報抽出装置により抽出された人体情報に基づく3次元画像の断面情報を検出する装置について説明する。図6は本装置により処理されるステップをディスプレイ上の画像表示で示しており、図7はそのステップのフローチャートが示されている。まず、ディスプレイ上の画像で説明すれば図6(a)に示すようにディスプレイ上にはCT撮影により得た3次元情報に基づいて顎部200が表示されている。この表示画像はワールドエリア上に配設されたものである。オペレータは、この画像を視認しながら歯列の欠損部(図示しない)を認識する。欠損部が認識されるとまず最初にオペレータは歯冠画像208を欠損部に嵌合させてみる。
【0060】
ここで、歯冠画像208の嵌合について説明する。歯冠画像208は予め作成された歯冠形状の模型をCT撮影しておき、その撮影情報に基づいて一つのオブジェクトとしてワールドエリア上の任意の位置に配置される。通常、この画像(オブジェクト)をオペレータがワールドエリア上で移動させ、上記欠損部に重ね合わせ適当と判断される位置に画像配置する。しかしながら、患者によっては多数の歯列欠損が生じている場合もあり、オブジェクトの移動実行前に欠損箇所から離間した任意の位置に複数の歯冠画像208が配置されているとオペレータにとってどの歯冠画像が各欠損歯列に適合するものか判りにくくなり、処理効率が悪くなる可能性がある。このため本実施形態では、自動的に歯冠画像を欠損歯列の近傍に配置し、歯冠画像がどの欠損歯列に適合するか明白にさせておくようにしている。具体的には、上述する位置決め部材10から検出された基準面(咬合平面)を利用する。詳細には、まず予め検出された咬合平面上に歯列を設定し、その歯列上に各歯冠画像情報を配置しておき、画面には各歯冠画像を非表示としておく。そして、欠損部に歯冠画像を重ね合わす処理をオペレータが実行する段階において該当する欠損箇所に対応する咬合平面上の歯冠画像208を表示する。このような処理を行うと、歯冠画像を移動させる前の初期段階においてもオペレータが所望する歯冠画像をある程度欠損部に近接した位置に自動的に表示することができ、逆に直近に所望しない歯冠画像を表示させないようにすることができる。
【0061】
次に、歯冠画像208が欠損箇所に適合したと視認された後の処理について説明する。この歯冠画像208の下端には基準軸に沿ってインプラント206(参照番号206は基準軸としてのインプラント長軸をも示している)が表示されており、さらに基準軸206には該軸を含む所定の平面領域204が付与されている。
【0062】
従って、オペレータが歯冠画像208を歯列欠損部に嵌合するようにワールドエリア上を移動させ位置決めすると、これに応じてインプラントおよび基準軸206も位置決めされる。さらに、基準軸206が位置決めされると平面領域204も位置決めされることとなる。この平面領域204こそが断面情報を所望する平面である。ここで平面領域204の位置決めについて言及すれば、断面検出用画像202はワールドエリア内で該画像が配設されたローカルエリアを設定すれば、歯冠画像位置、基準軸206の傾斜角、平面領域204の回転角を設定することができる。図6(a)では、基準軸206をZ軸としてワールドエリア内を回転させることで基準軸を矢印A方向に回転させ、これに伴ってインプラント(206と平面領域204とを回転させる様子を略示している。この際、基準軸206をZ軸とし、平面領域204をXY平面とするローカル座標系を設定すれば、該座標系に対応するワールド座標系での3次元撮影情報が所望する平面領域204上の断面情報となる。また、図6(b)では、基準軸206に基づくローカル座標系をワールド座標系に対して傾斜させることで基準軸を矢印B方向に傾斜させ、これに伴ってインプラント206と平面領域204とを回転させる様子を略示している。このようにして位置決めされたローカル座標系での平面領域の人体情報に対応するワールドエリア上の人体情報を取得すれば、該平面領域上の人体情報を取得できる。従って、本装置によれば歯冠およびインプラントの埋入位置を確認しながら、その断面情報を取得することが可能となる。」
b 親出願の出願当初の特許請求の範囲の記載事項
親出願の願書に最初に添付された特許請求の範囲には以下の記載がある。
「【請求項7】
歯列を含む上顎部及び/又は下顎部の3次元撮影情報から、任意に位置決めされた歯科用インプラント長軸を含む所定の平面領域の3次元撮影情報を抽出する断面情報検出装置であって、
前記歯列を含む上顎部及び/又は下顎部の3次元撮影画像上の任意の位置に、歯科用インプラント長軸を設定し位置決めする手段と、
前記3次元撮影画像上に付与され位置決めされた前記歯科用インプラント長軸を含む所定の平面領域を生成する手段と、
前記平面領域に位置する上顎部及び/又は下顎部の3次元撮影情報を抽出する人体情報抽出手段と、を有し、
前記歯科用インプラント長軸は、予め作成された任意の歯科用インプラントの軸線であって前記歯列を含む上顎部及び/又は下顎部の3次元撮影画像上に設定され表示されるものであり、
前記歯科用インプラント長軸は所定の方向に傾斜させることができ、且つ前記平面領域は前記歯科用インプラント長軸とともに傾斜し、
さらに前記歯科用インプラント長軸が前記所定の方向に傾斜したときには前記歯科用インプラント長軸と前記平面領域とはその傾斜状態を維持したまま回転可能である、ことを特徴とする断面情報検出装置。」
ウ 新規事項疑い箇所の記載の変遷
(ア)上記イ(イ)a・(ウ)aによれば、親出願の出願当初明細書及び本件特許出願当初明細書において、新規事項疑い箇所の記載内容に相違はない。
(イ)また、上記イ(イ)b・(ウ)bによれば、新規事項疑い箇所の記載事項と関連する構成を備える請求項として、親出願の出願当初の請求項7と、本件特許出願の出願当初の請求項1とは、記載事項が一致している。
(ウ)そうすると、手続補正書1による新規事項疑い箇所の補正が、本件特許出願当初明細書及び特許請求の範囲に対し新規事項を追加するものにあたるか否かについて判断することで、本件特許出願が親出願に対し出願分割の実体的要件(以下単に「分割要件」という。)を満たすかについても判断できるといえる。
(4)手続補正書1による補正が新規事項追加にあたるかついて
ア 手続補正書1による、新規事項疑い箇所の変更内容
手続補正書1による本件特許出願当初明細書に対する変更事項はおおむね次のとおり。
(ア)変更事項46
【0046】において、「ディスプレイ上に」「表示される」「CT撮影により得た3次元情報に基づい」た「顎部200」の画像について、「この表示画像はワールドエリア上に配設されたものである。」との記載が削除された点。
(イ)変更事項47-1
【0047】において、「予め作成された歯冠形状の模型をCT撮影してお」いた「歯冠画像208」について、補正前は「撮影情報に基づいて一つのオブジェクトとしてワールドエリア上の任意の位置に配置され」、「通常、この画像(オブジェクト)をオペレータがワールドエリア上で移動させ」るとしていたものを、補正後は「撮影情報に基づいた画像208を一つのオブジェクトとしてディスプレイ上の任意の位置に配置される。通常、この画像(オブジェクト)をオペレータがディスプレイ画像内で移動させ」ると変更した点。
(ウ)変更事項47-2
【0047】において、「患者によっては多数の歯列欠損が生じている場合もあり、オブジェクトの移動実行前に欠損箇所から離間した任意の位置に複数の歯冠画像208が配置されているとオペレータにとってどの歯冠画像が各欠損歯列に適合するものか判りにくくなり、処理効率が悪くなる可能性がある。」との課題を解決するための、
「具体的には、上述する位置決め部材10から検出された基準面(咬合平面)を利用する。まず予め検出された咬合平面上に歯列を設定し、その歯列上に各歯冠画像情報を配置しておき、画面には各歯冠画像を非表示としておく。そして、欠損部に歯冠画像を重ね合わす処理をオペレータが実行する段階において該当する欠損箇所に対応する咬合平面上の歯冠画像208を表示する。このような処理を行うと、歯冠画像を移動させる前の初期段階においてもオペレータが所望する歯冠画像をある程度欠損部に近接した位置に自動的に表示することができ、逆に直近に所望しない歯冠画像を表示させないようにすることができる。」
なる具体例(補正前後で共通、変更なし)の概説ついて、補正前は「このため本実施形態では、自動的に歯冠画像を欠損歯列の近傍に配置し、歯冠画像がどの欠損歯列に適合するか明白にさせておくようにしている。」と記載しているところ、補正後に「このため自動的に歯冠画像を欠損歯列の近傍に配置しておくようにしても良い。」と変更した点。
(エ)変更事項48-1
【0048】について、歯冠画像208とインプラント(の画像)206との関係について、補正前の
「この歯冠画像208の下端には基準軸に沿ってインプラント206(参照番号206は基準軸としてのインプラント長軸をも示している)が表示されており、さらに基準軸206には該軸を含む所定の平面領域204が付与されている。」
との記載が、
「この歯冠画像208の下端には基準軸に沿って歯科用インプラント206(参照番号206は基準軸としての歯科用インプラント長軸をも示している)が画像表示されており、さらに基準軸206には歯科用インプラント及び歯科用インプラント長軸を含む所定の平面領域204が付与されている。」
との記載に変更された。
この変更により、「インプラント206」は「歯科用インプラント206」に、「表示」は「画像表示」に、「所定の平面領域204」が含むものとして、補正前は「基準軸206」(「該軸」)のみであったところ、補正後は「基準軸206」について、補正後は「歯科用インプラント及び歯科用インプラント長軸」と変更された点。
(オ)変更事項48-2
【0048】について、上記変更事項48-1に係る歯冠画像208とインプラント(の画像)206との関係についての説明について、補正前に記載されていた前記説明を概説した「次に、歯冠画像208が欠損箇所に適合したと視認された後の処理について説明する。」との記載が補正後は削除された。
(カ)変更事項49-1
【0049】について、オペレータによる画像の位置決め操作について、補正前は
「オペレータが歯冠画像208を歯列欠損部に嵌合するようにワールドエリア上を移動させ位置決めすると、これに応じてインプラントおよび基準軸206も位置決めされる。」
と記載していたものを、補正後は
「ディスプレイ上を移動させ、歯科用インプラント206が任意に位置決め画像表示される。」
と変更した点。
(キ)変更事項49-2
【0049】について、補正前の
「さらに、基準軸206が位置決めされると平面領域204も位置決めされることとなる。この平面領域204こそが断面情報を所望する平面である。」との記載を、
「さらに、歯科用インプラント206が位置決めされると平面領域204も位置決めされ、画像表示されることとなる。この平面領域204こそがここで断面画像を所望する平面である。」と
と変更した点。
(ク)変更事項49-3
【0049】において、補正前の
「断面検出用画像202はワールドエリア内で該画像が配設されたローカルエリアを設定すれば、歯冠画像位置、基準軸206の傾斜角、平面領域204の回転角を設定することができる。」との記載を、
「断面検出用画像202はワールドエリア内で該画像が配設されたローカルエリアを設定すれば、歯科用インプラント画像206の任意の傾斜角、平面領域204の任意の回転角を選択、設定することができる。」
と変更した点。
(ケ)変更事項49-4
【0049】において、図6(a)の説明について、補正前の
「図6(a)では、基準軸206をZ軸としてワールドエリア内を回転させることで基準軸を矢印A方向に回転させ、これに伴ってインプラント(206と平面領域204とを回転させる様子を略示している。この際、基準軸206をZ軸とし、平面領域204をXY平面とするローカル座標系を設定すれば、該座標系に対応するワールド座標系での3次元撮影情報が所望する平面領域204上の断面情報となる。」との記載を、
「図6(a)では、歯科用インプラント長軸206を中心として画像表示を回転させ(矢印A方向の回転)、これに伴ってインプラント206と平面領域204とを回転させる様子を略示している。歯科用インプラント長軸206をZ軸とし、平面領域204をXY平面とする歯科医視点の座標系を設定すれば、3次元撮影画像内の任意の歯科用インプラント206の軸周りに回転させた平面領域204上の断面画像が表示される。」
と変更した点。
(コ)変更事項49-5
【0049】において、図6(b)の説明について、補正前の
「図6(b)では、基準軸206に基づくローカル座標系をワールド座標系に対して傾斜させることで基準軸を矢印B方向に傾斜させ、これに伴ってインプラント206と平面領域204とを回転させる様子を略示している。このようにして位置決めされたローカル座標系での平面領域の人体情報に対応するワールドエリア上の人体情報を取得すれば、該平面領域上の人体情報を取得できる。従って、本装置によれば歯冠およびインプラントの埋入位置を確認しながら、その断面情報を取得することが可能となる。」との記載を、
「図6(b)では、歯科用インプラント206を3次元撮影画像内で移動・傾斜させ、 これとインプラント206と平面領域204とを軸周りに回転させる様子を略示している。このようにしてディスプレイの撮影画像上に任意に位置決めされた歯科用インプラント206を移動・軸回転・傾斜させたときの該インプラント長軸周りの平面領域の画像を取得すれば、ディスプレイの撮影画像上の歯科用インプラントの埋入位置を確認しながら、その断面画像を取得することが可能となる。」
と変更した点。
イ 各変更事項について
上記各変更事項について検討する。
(ア)変更事項46について
本件特許出願当初明細書【0002】には「実際には、CT撮影より得た患者部位の3次元情報をディスプレイ上に画像表示するには、その処理上、ワールド領域なる絶対座標を有する仮想空間上に患者部位の情報(以下、「人体情報」とも称する)を配設して画像表示することとなる。」と記載されるから、当初明細書において「ワールド」とは3次元情報等を画像表示するディスプレイ上の領域を指すと理解される。変更事項46に係る「ワールドエリア」は前記【0002】の「ワールド領域」と同義と理解され、変更事項46に係る削除箇所の前段には「ディスプレイ上にはCT撮影により得た3次元情報に基づいて顎部200が表示されている。」と記載されているから、削除箇所の記載は前記前段の記載を重ねて述べたものにすぎないといえ、これを削除したことは、新たな技術的事項を導入するものとはいえない。
(イ)変更事項47-1について
a ワールドエリアをディスプレイと変更した点が新規事項追加に該当しないことについては上記(ア)で説示したことおりである。
b 配置対象として加入された「画像208」は、直前の「歯冠画像208」と同義であることが図面番号の一致からも明らかであり、文章構成上、補正前の記載における配置対象は「歯冠画像208」であることも明らかであるから、当該変更事項は、配置する対象の明確化のために再度配置対象を記載することを目的としたものと理解され、新規事項にはあたらない。
(ウ)変更事項47-2について
補正前の「歯冠画像がどの欠損歯列に適合するか明白にさせておくようにしている」は、前段の「自動的に歯冠画像を欠損歯列の近傍に配置」するとの技術的事項について意図する効果・目的の言及であるから、これを削除しても前記技術的事項の内容が変更されることはなく、前後の「本実施形態では」、「詳細には」を削除したことも含め、新規事項の追加にはあたらない。
(エ)変更事項48-1について
a 「インプラント」を「歯科用インプラント」と変更した点は、「インプラント」自体は歯科用に限らない埋入物を意味する一般用語であること、本件特許明細書が歯科用のインプラント技術について述べているものであることから、表現の正確性を目的として明細書全体の記載に合わせて変更したにすぎず、新規事項の加入にはあたらない。
b 「表示」を「画像表示」と変更した点も、自明な事項を明確化したにすぎず、新規事項の加入にはあたらない。
c 「該軸」を「歯科用インプラント及び歯科用インプラント長軸」と補正した点は以下のとおり。
補正前の記載において、「該軸」が直前に記載される「基準軸206」を意味し、前段部の「参照符号206は基準軸としてのインプラント長軸をも示している」との定義記載から、「基準軸206」がインプラント206でもありインプラント206の長軸をも示すと理解されるところ、変更事項48-1により、該理解される内容を「歯科用インプラント及び歯科用インプラント長軸」と明文化したものといえるから、新規事項を加入する補正にはあたらない。
(オ)変更事項48-2について
補正前の【0048】において、削除対象の「次に、歯冠画像208が欠損箇所に適合したと視認された後の処理について説明する。」に続く記載は、歯冠画像208とインプラント画像206との表示に関する説明であり、処理内容についての言及がないから、変更事項48-2による前記削除対象の記載と後続の文とに関連性がなく、よって、変更事項48-2により後続の文意が変更されたともいえない。よって、当該変更事項は新規事項の追加にあたるものではない。
(カ)変更事項49-1について
a ワールドエリアとディスプレイ、インプラントと歯科用インプラント、についての表現変更が新規事項追加に当たらないことについては上述のとおりである。
b 補正後の記載において移動対象が「歯科用インプラント206」であることは文章構成上自明である。
また、補正前後の【0048】の記載によれば、歯冠画像208の下端にはインプラント206が表示されているのであるから、逆にインプラント206の上端には歯冠画像208が表示されているといえ、すなわち歯冠画像208とインプラント206とは上下に連なる一体の画像と理解されるから、前記変更前後の表現の相違は、該一体の画像をオペレータが移動する際にインプラント部分に注目するか歯冠部分に注目するかの表現上の相違にすぎず、該変更により新たな技術的事項が加入されたとか技術的事項が変更されたとはいえない。
(キ)変更事項49-2について
a 「206」と付番される要素として基準軸としてのインプラント長軸及び(歯科用)インプラントが含まれ、これらの言い換えが新規事項にあたらないことは上述のとおりである。
b 「位置決めされる」を「位置決めされ、画像表示される」と変更した点は、先行文の記載から文脈上変更箇所もインプラントのディスプレイ上での位置決めについての既述であると理解されることから、自明な事項を加筆したにすぎず、新規事項加入にはあたらない。
c 「断面情報」を「断面画像」と変更したことも、前項同様、文脈上ディスプレイ上での表示についての論及であることから、自明な事項を加筆したにすぎず、新規事項加入にはあたらない。
(ク)変更事項49-3について
a 「206」と付番される要素として基準軸としてのインプラント長軸及び(歯科用)インプラントが含まれ、これらの言い換えが新規事項にあたらないことは上述のとおりである。
b 歯冠画像がオペレータによるオブジェクトの移動によりワールドエリア上、すなわちディスプレイ上の任意の位置に配置できることは当初明細書の【0047】に記載されているから、インプラントの傾斜角について「任意」と追記した点は当初明細書の記載事項の範囲内のことである。
c 平面領域の回転角について、当初明細書では単に「設定」としていたものを、補正により「任意の回転角を選択・設定」と変更した点は、出願当初の【0049】に「基準軸206をZ軸とし、平面領域204をXY平面とするローカル座標系を設定すれば、該座標系に対応するワールド座標系での3次元撮影情報が所望する平面領域204上の断面情報となる。」、つまり、「所望の」すなわち任意の平面領域204上の断面情報を得ることについて記載されることから、出願当初の明細書の記載事項の範囲内の変更であるといえる。
(ケ)変更事項49-4について
a 上記(ア)で説示したとおり、ワールドエリアはディスプレイ上の領域つまりディスプレイに表示された画像(内)を意味するから、「ワールドエリア内を回転」、との記載を「画像表示を回転」と変更した点は、特段、新たな技術的事項を導入するものとはいえない。
b 基準軸206を歯科用インプラント206と変更した点は、上記(エ)cで説示したとおり、新規事項の加入にはあたらない。
c 「ローカル座標系」を「歯科医視点の座標系」と変更した点は以下のとおりである。
当初明細書【0002】の「インプラント手術を実行する歯科医師にとってCT等撮影情報から埋入するインプラントを基準とした断面情報の取得が望ましいが、従来のCT等撮影の場合、歯科医師は患者の前方から咬合平面を視認した状態の視点座標に基づいて施術を実行するのに対してCT撮影情報はワールド領域を外部から視認した座標系で画像表示され、歯科医師にとって施術段階での視点と異なる断面画像が提供されるという問題もあった。」なる記載があり、同【0049】には「この平面領域204こそが断面情報を所望する平面」との記載がある。また、変更事項49-4に係る記載箇所で参照される図6(a)において描かれた平面204は咬合面内で患者前方方向に対面していることが看取され、少なくとも平面領域204としてこのような面を設定し得ると理解される。
これらの記載を合わせ読めば、インプラント軸を含み患者前方に対面した配位を採り得る平面領域(画像)204は、前記【0002】にいう、歯科医師が所望する、歯科医師にとっての施術段階での視点による平面(画像)であるといえるから、このような配位を採り得る、インプラントの基準軸206をZ軸とする座標系を、「歯科医視点の座標系」と表現するように変更したことは、当初明細書及び図面の記載事項の範囲内のことであるといえる。よって、本項の変更点は新規事項を追加する変更事項にあたらない。
d 平面領域204について追加された「任意の歯科用インプラント206の軸周りに回転させた」ことは、当初明細書【0049】の「図6(a)では、基準軸206をZ軸としてワールドエリア内を回転させる」なる記載及びこれに対応した図6(a)の記載事項に基づく追加事項であるといえるから、該追加事項の付加が新規事項の追加にあたるとはいえない。
(コ)変更事項49-5について
a 変更事項49-5は図6(b)の看取事項についての記載に関する。
図6(b)からは、インプラント206が下顎部の3D画像に対し傾斜する様子が看取できるから、これを補正前のように、先行文の、インプラント206の基準軸206がローカル座標系のZ軸にあたるとの記載をもとに、「基準軸206に基づくローカル座標系をワールド座標系に対して傾斜させる」と表現することも、補正後のように「歯科用インプラント206を3次元撮影画像内で移動・傾斜させ」ると表現することも、いずれも図6(b)の記載事項の範囲内での表現の変更であるといえるから、新たな技術的事項を導入する記載の変更であるとはいえない。
b 変更前の「このようにして位置決めされたローカル座標系での平面領域の人体情報に対応するワールドエリア上の人体情報を取得すれば、該平面領域上の人体情報を取得できる。」とは、位置決めされた基準軸206に応じたローカル座標系での平面領域204についての下顎部の断面情報について、ディスプレイ上に表示することをいうものと理解され、当初明細書【0049】の先行部分の記載及び図6各図からの看取事項に基づく表現であるといえる。
同様に、変更後の「このようにしてディスプレイの撮影画像上に任意に位置決めされた歯科用インプラント206を移動・軸回転・傾斜させたときの該インプラント長軸周りの平面領域の画像を取得す」るとの記載も、当初明細書【0049】の先行部分の記載及び図6各図の看取事項に基づく表現であるといえる。
よって、該変更の前後で、共に当初明細書の記載事項の範囲内の事項が記載されているものといえるから、該変更によって新たな技術的事項が加入されることになったものとはいえない。
c なお、当初明細書【0052】には、基準軸206が任意方向に傾斜できるのに対し、断面情報を検出する平面領域204は、歯列方向の傾斜の場合にのみ基準軸206とともに歯列方向に傾斜させる旨の態様が記載されているが、これは該【0052】冒頭に「本発明の断面情報検出装置では他の実施形態をも提供する。」と記載されるとおり、上記において検討してきた【0046】~【0049】に係る実施形態とは別の実施形態についての既述であるから、【0046】~【0049】においても前記【0052】の記載に従って平面領域204の傾斜方向や回転形態が制限されると解すべきものではない。
(5)無効理由4に係る主張についての判断
ア 主張4-1について
(ア)請求人は手続補正書1による補正により「歯冠画像206の有無にかかわらず、ディスプレイ上で歯科用インプラント206自体を任意に移動させて位置決めする」という技術的事項が新たに加入された旨主張するものと認められる。
しかし、上記(4)イ(カ)で説示したとおり、歯冠画像208とインプラント206とが一体の画像であるとの前提は当該補正前後においてかわりないから、当該補正後の明細書の記載が前記主張のようにインプラント206のみを単独で移動させるような技術的事項が加入されたとはいえず、前記主張は失当である。
(イ)また、本件特許出願の出願当初の請求項1には、上記(4)イ(イ)bに摘記したとおり、「歯科用インプラント長軸」を上下額部の3次元撮影画像上で任意の位置に位置決めすることや傾斜させることについて、既に記載されている。
よって、手続補正書1による補正いかんに関わらず、「ディスプレイ上で歯科用インプラント206自体を任意に移動させて位置決めする」という技術的事項は本件特許出願の出願当初において記載されていたといえる。
(ウ)さらに、上記(3)イ(イ)bと(3)イ(ウ)bとの比較から明らかなとおり、本面特許出願の出願当初の請求項1の記載事項は、親出願の出願当初の請求項7の記載事項と一致しているから、上記(3)イ(イ)bに係る事項は、親出願の出願当初の特許請求の範囲にも記載されている。
(エ)以上のとおりであるから、主張4-1に係る技術的事項について、本件特許出願の出願当初明細書等及び親出願の出願当初明細書等の記載事項に対し、新たに加入されたものとはいえない。
イ 主張4-2について
上記アで説示したとおり、補正前の【0046】~【0049】に記載された、歯列欠損部に歯冠画像208を位置決めした上で、歯冠画像208に付随するインプラント、基準軸206、及び平面領域204に基づいて断面画像を取得するという技術的事項は、歯冠画像208とインプラント206とが一体化した画像要素であるという前提に補正前後で変わりがないから、該補正により技術的意義が喪失・変更されたということもなく、主張4-2は前提を欠き失当である。
ウ 小括
手続補正書1による補正により、請求人が主張4-1・4-2として特に主張するような技術的事項や技術的意義の変更が生じていないことは上記ア、イのとおりであるし、その他、手続補正書1による新規事項疑い箇所についての補正の細部についても、上記イで検討したとおり、本件特許出願当初の請求項1の記載事項も勘案し、新たな技術的事項を加入するものとはいえない。
よって、請求人の無効理由4に係る主張は成り立たない。
(6)無効理由1-4に係る主張についての判断
ア 上記(5)のとおり手続補正書1による補正は本件特許出願の当初明細書及び特許請求の範囲の請求項1の記載に対し、新たな技術的事項を加入するものではない。
また、親出願の出願当初の新規事項疑い箇所及び請求項7の記載事項はそれぞれ、本件特許出願の出願当初の新規事項疑い箇所及び請求項1の記載事項と一致する。よって、本件特許明細書等に記載された事項は、親出願の出願当初明細書等に記載された事項の範囲を超えるものではないから、上記分割要件2を満たしている。
さらに、親出願の分割直前の明細書等に記載された発明の全部が本件特許出願の請求項に係る発明とされていないことから、上記分割要件1も満たしている。
よって、本件特許出願は、少なくとも親出願に対し、分割の実体的要件を満足し、特許法第44条第1項柱書に規定する分割出願の要件を満たすといえるから、少なくとも親出願に対し出願日の遡及効を有する。
したがって、本件特許出願の出願日は、少なくとも、親出願の出願日である平成20年(2008年)7月21日に遡及する。
イ 無効理由1-4は、本件発明1・2は、甲13に記載された発明と同一である、また、本件発明1は、甲13に記載された発明に基づいて当業者が容易に想到し得たものである、というものである。甲13は親出願の公開公報であるから、その公知日は親出願の出願公開日であって平成20年10月23日である。
上記アによれば、本件特許出願の出願日は遡及し、遅くとも平成20年(2008年)7月21日である。
そうすると、甲13は本件特許出願日後に公知となったものであるから、無効理由1-4はその主張の前提を欠いており、無効理由1-4についての主張は、甲13の記載事項や本件発明との対比をするまでもなく、失当である。
ウ 主張4-3において請求人は、原出願に対する分割の実体的要件の不充足を主張する。
しかし、分割要件の充足性それ自体(主張4-3それ自体)は無効理由にはあたらないし、該主張4-3を前提とする無効理由1-4の成立性は、上述のとおり、本件特許出願の親出願に対する分割要件の充足性と出願日の遡及について判断すれば足りるのであり、主張4-3の成立性それ自体は、無効理由1-4の成立性と直接関係しない。
また、無効理由1-4以外に、主張4-3の成立性を前提とする無効理由の主張はない。
よって、主張4-3については、親出願に対する分割要件充足性を検討すれば足り、原出願に対する分割要件充足性については検討を要さず、当否の判断も示さない。
(7)無効理由4及び無効理由1-4のまとめ
以上(1)~(6)のとおりであるから、無効理由4に係る主張は成り立たず、よって、無効理由4を前提とする無効理由1-4についての主張も成り立たない。
7 無効理由2(実施可能要件)について
第1回口頭審理において確認されたとおり、請求人が主張する無効理由2は、本件発明1及び2に対する実施可能要件違反、である。
(1)請求人の主張の概要
請求書において請求人は、無効理由2及び関連する事項について、概略、以下の主張を行っている。
ア 本件発明1においては、「所定の平面領域の画像を生成する断面画像検出装置」(構成要件A)と記載され、歯科用インプラント及び平面領域が位置決め、傾斜、及び回転可能であるとして、歯科用インプラント及び平面領域の概念的な挙動が記載されている(構成要件B、D及びE)。しかしながら、本件特許明細書の【発明の詳細な説明】からは、このような歯科用インプラント及び平面領域の概念的な挙動を、ハードウェアあるいはソフトウェアによってどのように実行又は実現されるのか把握することができない。(請求書7(4)キ)
イ(ア)本件発明1を概して言えば、(i)歯科用インプラントをディスプレイ上で位置決めし、(ii)歯科用インプラントの位置に連動するように平面領域を位置決めし、(iii)歯科用インプラントの位置決めに応じて平面領域の画像を生成する装置であるといえる。
【発明の詳細な説明】には、任意位置の断面画像の作成処理が説明されており、当該説明は、上記(iii)に対応するものである。
一方で、上記(i)の処理が出願時の技術常識であるとしても、上記(ii)に関して、【発明の詳細な説明】は、歯科用インプラントと連携した平面領域の挙動を、具体的にどのようなアルゴリズム/計算手順で実装するかについて何ら説明を行っていない。
(イ)本件発明1では、「歯科用インプラント長軸を含む所定の平面領域」(構成要件A)と特定され、歯科用インプラントがどのように動いても必ず歯科用インプラントを含むように平面領域が生成されるものであるが、これを具体的にどのようなアルゴリズムにより実現し、コンピュータ上で実装されるのか、【発明の詳細な説明】には記載がなく、不明である。(請求書7(4)キ)
ウ 「前記平面領域は前記歯科用インプラント長軸を中心に、軸周りに回転させることができる」(構成要件E)機能についても、同様に、【発明の詳細な説明】は、これを具体的にどのようなアルゴリズムにより実現し、コンピュータ上で実装されるのか、【発明の詳細な説明】には記載がなく、不明である。(請求書7(4)キ)
エ 周知技術1:甲第3号証、甲第4号証、及び甲第5号証によれば、歯顎などのX線CT画像を用いた画像診断の分野において、歯科用インプラントの埋入治療における術前計画にあたり、仮想的な歯科用インプラントをディスプレイ上で移動させて、上顎骨や下顎骨の3次元撮影画像上に位置決めすること、及び当該歯科用インプラントを任意の方向に傾斜させることは、本件特許出願の優先日当時において広く行われていた周知技術である。(請求書7(4)イ(カ))
オ 周知技術2:甲第3号証、甲第6号証、甲第7号証、及び甲第8号証によれば、歯顎などのX線CT画像を用いた画像診断の分野において、歯軸など特定の基準軸を中心として、軸周りの様々な角度で断面画像を取得することは、本件特許出願の優先日当時において広く行われていた周知技術である。(請求書7(4)イ(コ))
カ 傾きを変えた再構成画像を生成する具体的な手法は、甲第1号証、甲第10号証、甲第11号証、及び甲第12号証の各々に記載されているほか、甲第3号証や甲第8号証などにも記載されている。(請求書7(4)イ(ソ))
(2)被請求人の主張の概要
被請求人は無効理由2について、概略、以下のとおり主張している。
ア 前提として、平面領域の位置決めには回転及び傾斜も含まれる(「・・・位置決めについて言及すれば・・・歯科用インプラント画像206の任意の傾斜角、平面領域204の任意の回転角を選択設定することができる」本件特許明細書【0049】参照)。
イ 「平面領域」とは、答弁書44頁(第9の2)で主張するとおり領域そのものであってオブジェクトではない。よって、その(ソフトウェア上の)挙動も観念し得ないから、請求人の主張は失当である。
ウ 平面領域を表すオブジェクトの挙動に関しても、本件特許明細書において当業者が実施可能な程度の記載がなされている。
エ 3次元表示されたディスプレイ上でオブジェクトの移動、傾斜及び回転を実現することは、オブジェクトに対する基本的な操作にすぎず、本件特許出願の最先の優先日である平成16年9月24日当時の技術常識を参酌すれば、当業者において十分実行・実現し得るものであるし、この点は請求人も争わないと思われる(審判請求書158頁下15行、乙4の2頁11行以下)。
オ 特定の線分を含む平面領域を表す式を計算することは初歩的な数学の問題であるから、「平面領域を表すオブジェクト」が歯科用インプラント長軸を含む平面となるよう、「平面領域を表すオブジェクト」の挙動を制御することも初歩的な操作にすぎず、当業者の技術常識の範疇といえる。
カ 平面領域の回転についても、オブジェクト一般の回転と何ら異なる挙動ではないから、当業者の技術常識の範疇である。請求人も、別件訴訟において「・・・それを回転させること等についても・・・先行技術により開示されていた内容」(乙4同上)と主張しており、請求人自身もこの点を認めている。
(3)当審の判断
本件発明1及び2は、構成要件Aとして特定されるとおり、「ディスプレイ上に表示された歯列を含む上顎部及び/又は下顎部の3次元撮影画像上に、歯科用インプラントを任意に位置決めすることで、基準軸としての歯科用インプラント長軸を含む所定の平面領域の画像を生成する断面画像検出装置」という装置(物)の発明である。
物の発明について、発明の詳細な説明の記載が実施可能要件に適合するというためには、当業者が明細書及び図面の記載並びに出願時の技術常識に基づいて、過度の試行錯誤を要することなく、その物を作ることができ、かつ、その物を使用できることである。
三次元空間内で任意の軸線、つまりベクトルを含む、またはそれに垂直な平面の方程式表現は代数幾何学上で解決済みの技術常識であり、三次元空間内での平面の傾斜や回転もその範疇である。
そして、請求人も上記(1)オ・カに挙げたとおり認めるように、CT画像を扱う医学分野など、三次元データをディスプレイ上に画像表示する技術分野においても、任意の平面、つまり断面のデータを切り出して表示したり、ディスプレイ上で該平面(断面)の画像を三次元的に表示したり、さらには傾斜・回転・移動などの動的表示(アニメーション表示)したりする技術自体は、それをコンピュータ上で行うための各種アルゴリズムと共に、本件特許出願の出願時において周知慣用の技術であったといえる。
よって、本件特許明細書中に、構成要件A・B・D・Eを実現するための具体的なアルゴリズム等が開示されていないとしても、本件特許明細書に接した当業者であれば、前記技術常識及び周知慣用技術を参考に、過度の試行錯誤を要することなく、本件発明1及び2の装置を作ることができ、かつ、その装置を使用できることから、本件発明1・2を実施することができたものといえる。
したがって、請求人による無効理由2に係る主張は失当であり、本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載は、特許法第36条第4項第1号の要件を満たすものである。
8 無効理由3(発明該当性)について
第1回口頭審理において確認されたとおり、請求人が主張する無効理由3は、本件発明1及び2の発明該当性欠如、である。
(1)請求人の主張の概要
請求人の無効理由3についての主張は、概略以下のとおりである。
ア 本件発明1、2がソフトウェア関連発明であるとして、自然法則を利用した技術的思想の創作ではない。
イ 本件発明1、2がソフトウェア関連発明であるとして、歯科用インプラント及び平面領域等を制御するための具体的なハードウェアの記載がなく、仮にコンピュータが通常有するハードウェア資源で実現されうるものであるとしても、生成される画像がどのような画像であるかや、どのような目的で生成されるかが明らかではなく、全体としては、3次元画像上で歯科用インプラントを任意に動かすことで、当該歯科用インプラント長軸を含む所定の平面領域の画像を生成するという人為的取り決めに基づく仕組みが特定されているにすぎない。よって、本件発明1,2は、ソフトウェアとハードウェア資源とが協働した具体的手段又は具体的手順によって使用目的に応じた特有の情報の演算又は加工が実現されているものではない。
ウ したがって、本件発明1,2は、特許法第29条第1項柱書に規定する要件を満たさない。
(2)被請求人の主張の概要
被請求人は答弁書において、本件発明1,2が発明該当性を備えることについて、概略下記のとおり主張する。
ア 本件発明1,2は、「対象の技術的性質を表す数値、画像等の情報に対してその技術的性質に基づく演算又は処理を施して目的とする数値、画像等の情報を得るもの」、すなわち人体情報に対して、平面領域を設定して本件特許明細書段落【0050】のような演算処理を施して目的とするその断面画像を得るものであるから、ソフトウェアという観点から検討されるまでもなく、「発明」に該当する。
イ 本件発明特有の情報の演算又は加工は、いずれもコンピュータが通常有するハードウェア資源(CPUやメモリ等)のみで実現されうるものであり、本件発明1は、特殊なハードウェア資源を必要としないから、その請求項に使用目的に応じた特有の情報の演算又は加工が記載されていれば足りる。
ウ 本件発明の「使用目的」は画像の生成であり、該生成される画像が「平面領域の断面画像」を指すことが明らかであり、特有の情報の演算又は加工である平面領域の位置決め(移動、傾斜及び回転)に係る操作に関し、本件発明1,2は、十分具体的に挙動を記載している。
(3)当審の判断
ア 本件発明1及び2は、上記7(3)で述べたとおり、構成要件Aとして特定されるとおり、「ディスプレイ上に表示された歯列を含む上顎部及び/又は下顎部の3次元撮影画像上に、歯科用インプラントを任意に位置決めすることで、基準軸としての歯科用インプラント長軸を含む所定の平面領域の画像を生成する断面画像検出装置」という装置の発明である。
そして、該装置は、構成要件B1~Eにおいて、
・(オペレータの操作に応じた)歯科用インプラント(の画像オブジェクト)のディスプレイ上での移動や位置決め(の表示)(構成要件B1)、
・位置決めされた歯科用インプラント(の画像オブジェクト)に応じた平面領域の位置決め(位置の計算、平面領域の画像の生成)(構成要件B2)、
・(オペレータの操作に応じた)歯科用インプラント(の画像オブジェクト)の傾斜(の計算と表示)(構成要件C)、
・歯科用インプラント(の画像オブジェクト)(の傾斜)に応じた平面領域の傾斜(及び該傾斜した平面領域の画像の生成)(構成要件D)、
・平面領域の歯科用インプラント長軸周りの回転(の計算、対応する平面領域の画像の生成)(構成要件E)、
なる各機能を備えるものとして特定されていると理解される。
イ 本件発明は、本件特許明細書【0001】の
「顎骨等の頭部のCT撮影画像の任意に位置決めされた歯科用インプラント画像の軸周りの断面画像を検出・表示する断面画像検出装置に関する。」
なる記載から、顎部の三次元CT画像から任意の断面画像を検出表示する、3次元データ解析や画像処理を行うことを目的とする装置の技術分野に属することが理解される。
ウ また、3次元データ解析や画像処理はコンピュータ資源を利用して行われることが技術常識であるし、このことは、同【0016】の
「本実施形態ではまず、CT撮影時に医療的見地からの位置決めがなされていない3次元人体情報をコンピュータ上で位置決めする前提となる基準面の検出、すなわちワールド座標系での人体情報から位置決めの基準面を検出する装置が提供されている。」
との記載からも裏付けられる。
エ 上記ア~ウにおける3次元CT画像(3次元撮影画像)は、3次元に分布する物質(本件発明では顎骨や顎部)の、例えばX線透過率の分布という物理的性質に基づくデータを画像表示したものであるから、本件発明1,2が備える、前記3次元CT画像(データ)の、歯科用インプラントの位置決めに応じた特定の平面領域(断面)(のデータ)を求める一連の処理は、審査基準附属書B第1章2.1.1.1(1)(ii-1)にいう「対象の技術的性質を表す数値、画像等の情報に対してその技術的性質に基づく演算又は処理を施して目的とする数値、画像等の情報を得るもの」に該当するから、「自然法則を利用した技術的思想の創作」すなわち「発明」に該当する。
本件発明1,2は上記アのとおり装置の発明であるが、仮に上記構成要件B1~Eの機能について実質的に、コンピュータソフトウェアにより実現される方法の手順に該当するとしても、前記のとおり、当該機能が「発明」に該当するから、該仮定において該方法の手順を実行するシステム・装置に該当することとなる本件発明1,2もまた、全体として自然法則を利用した技術的思想の創作であって、「発明」に該当するといえる。
オ 以上のとおりであるから、無効理由3に係る請求人の主張は失当であり、本件発明1,2は発明該当性を有し、特許法第29条第1項柱書に規定される要件を満たす。
9 無効理由5(サポート要件)について
第1回口頭審理において確認されたとおり、請求人が主張する無効理由5は、本件発明1及び2のサポート要件違反、である。
(1)請求人の主張の概要
主張ア 歯科用インプラントの位置決めについて
本件発明1は、歯冠画像を使用しない態様や、歯冠画像と独立して歯科用インプラントのみを位置決めする態様、歯列欠損箇所でない位置に歯科用インプラントを位置決めする態様も包含しているが、発明の詳細な説明にはそのような態様の記載はなく、前記各態様が課題解決可能な手段と当業者が認識できるものでもない。
主張イ 回転について
構成要件Eには、歯科用インプラントと独立して平面領域が回転する態様が含まれるが、発明の詳細な説明には、平面領域204を回転させる際には、基準軸に付与されている歯科用インプラント206も一体となって回転することが説明されている(【0050】)一方、歯科用インプラントと独立して平面領域が回転するとの記載はない。
この相違は、「インプラントの埋入位置を画定させたい歯科医師においてはディスプレイ上でインプラント画像に埋入させた様子を視認しつつ下顎管等の神経に当接しないインプラント位置を検出することができる。」(【0012】)との課題に照らし、インプラント側面に形成された凸部が各回転角に対して神経などに当接しないかを確認することを可能にするか否かにおいて、インプラントと神経との当接の有無を確認するという課題をどのように解決するかという課題解決のための手法が異なるから、平面領域が歯科用インプラントと独立して回転する態様を含む本件発明の構成要件Eの内容にまで拡張ないし一般化し得るものではない。
主張ウ 頬舌方向の傾斜について
構成要件Dは、あらゆる方向に平面頷域を歯科用インプラントとともに傾斜させることができる態様を包含する。
しかし、発明の詳細な説明の【0052】には、人工歯根を傾斜させて埋入させようと企図する場合、その傾斜が近遠心方向であるときには所望する断面情報は基準軸206周りの情報であるが、傾斜が頬舌方向であるときには基準軸206周りの情報は不要、又は、かえって判断を困難にさせる情報となることを理由として、基準軸206を頬舌方向に傾斜させる場合には平面領域204を傾斜させないことが記載されており、【発明の詳細な説明】には、頬舌方向を含む任意の方向に平面領域を歯科用インプラントとともに傾斜させる態様は開示されていない。
よって、本件発明は、本件優先日当時の技術常識を有する当業者が本件特許明細書の【発明の詳細な説明】において本件発明の課題が解決できることを認識できるように記載された範囲を超えるものである。
主張エ 人体情報抽出装置について
本件発明は、本件特許明細書の【発明の詳細な説明】の【0046】から【0052】に記載される実施形態(以下、「実施形態B」という。)に対応するが、同【発明の詳細な説明】においては、実施形態Bに加えて、【0016】に、「位置決めの基準面を検出する装置」の実施形態(以下、「実施形態A」という。)が記載されており、同【発明の詳細な説明】において、実施形態Bが実施形態Aと別途独立して実施可能であるという記載も見当たらない。そうすると、位置決め部材の使用により得られた人体情報が用いられることが特定されていない本件発明は、本件特許明細書の【発明の詳細な説明】に記載も示唆もされていない。また、位置決め部材の装着により得られた基準面に対する人体要素の相対的位置の取得が前提となっている実施形態Bを、位置決め部材の使用により得られた人体情報が用いられることが特定されていない本件発明まで、拡張ないし一般化できるともいえない。
(2)被請求人の主張
答弁書における被請求人の主張は、概略以下のとおりである。
ア 主張ア(歯科用インプラントの位置決め)について
本件発明1の課題が「上顎部及び/又は下顎部の3次元撮影画像内に位置決めされた歯科用インプラントの軸周りの断面画像を検出・・・すること」(本件特許明細書【0008】。なお、省略部分は本件発明2に付加される課題。)であることは一見明白であるから、請求人の主張はその前提を欠き失当である。
イ 主張イ(回転)について
請求人の主張する「課題」が独自の理解に基づくものであり失当であることは前項のとおり。
仮に、インプラントのネジ山の隙間に神経を通したいという需要が現実に存在するとしても、その場合、平面領域のみを回転させる必要がある(ネジ山の隙間はインプラント長軸に対して回転非対称な領域であるからインプラントを固定して断面を検出する必要がある)ことは、論理的に明らかであって、このことは当業者において容易に理解される。
ウ 主張ウ(頬舌方向の傾斜)について
請求人の主張する「課題」が独自の理解に基づくものであり失当であることは上記アのとおり。
本件特許明細書【0052】には、「・・・断面画像検出装置では、基準軸206を人体要素に基づく所定の方向に傾斜させることができ、且つ平面領域204は基準軸206とともに傾斜することができる。ここで、人体要素の所定の方向の傾斜とは例えば、・・・?Y方向で示す頬舌方向の傾斜を意味する」、すなわち、平面領域が基準軸とともに、頬舌方向に傾斜することができることが明記されている。
エ 主張エ(人体情報抽出装置)について
請求人の主張する「課題」が独自の理解に基づくものであり失当であることは上記アのとおり。
また、本件発明の課題(歯科用インプラントの軸周りの断面画像の検出。さらに請求人の主張においてはインプラント埋入位置の検出。)は、位置決め部材の使用により得られた人体情報か否かにかかわらず解決されるから、「位置決め部材の使用により得られた人体情報を用いること」は本件発明の課題解決手段ではない。すなわち、実施形態Bの本件発明1にかかる挙動のうち、歯科用インプラントの移動及び傾斜並びに平面領域の回転(構成要件B1乃至E)は、本件図6上で行われているところ、これは、図1と同じくCT撮影画像等から得られる一般的な顎部の3次元画像である。相対的位置情報とは、医療的見地からの位置決め基準(咬合平面、顔耳平面など)との相対的位置が特定された人体情報であるところ、上記の操作において医療的見地からの位置決め基準は使用されないため、相対的位置情報と無関係に処理されていることは明らかである。
(3)当審の判断
ア 主張ア(歯科用インプラントの位置決め)について
本件特許明細書の【発明が解決しようとする課題】に係る【0008】には「上顎部及び/又は下顎部の3次元撮影画像内に位置決めされた歯科用インプラントの軸周りの断面画像を検出」することが記載され、【課題を解決するための手段】に係る【0009】~【0010】には、「本発明の断面画像検出装置によれば、ディスプレイ上に表示された歯列を含む上顎部及び/又は下顎部の3次元撮影画像上に、歯科用インプラントを任意に位置決めすること」、「前記歯科用インプラントは、前記ディスプレイ上を移動させることで任意に位置決められ、該歯科用インプラントが任意に位置決めされると前記平面領域も位置決められる」こと、「歯科用インプラントは、上顎部及び/又は下顎部の座標系を固定した状態で任意の方向に傾斜させることができ」ることが記載されている。
また【発明の効果】に係る【0012】には、「本発明の断面画像検出装置では、歯科医師がディスプレイ上の任意の位置に位置決めされた歯科用インプラント画像の軸周りの断面画像を取得することができる」こと、「インプラントの埋入位置を画定させたい歯科医師においてはディスプレイ上でインプラント画像に埋入させた様子を視認しつつ下顎管等の神経に当接しないインプラント位置を検出することができる」こと、が記載されている。
また、【0046】~【0049】には「人体情報抽出装置により抽出された人体情報に基づく3次元画像の断面画像を検出する装置について」の説明として、「歯冠画像208の下端には基準軸に沿って歯科用インプラント206(参照番号206は基準軸としての歯科用インプラント長軸をも示している)が画像表示されて」いること、「オペレータがディスプレイ上を移動させ、歯科用インプラント206が任意に位置決め画像表示される」こと、が記載されている。
以上より、発明が解決しようとする課題としても、その解決手段としても、歯科用インプラントを位置決めすることが記載されているといえるから、本件発明1及び2の記載において、発明の詳細な説明に記載された、発明の課題を解決するための手段が反映されていないとはいえず、請求人の主張アは失当である。
イ 主張イ(回転)について
(ア)本件特許明細書【0049】には下記記載がある。
記載49a:「図6(a)では、歯科用インプラント長軸206を中心として画像表示を回転させ(矢印A方向の回転)、これに伴ってインプラント206と平面領域204とを回転させる様子を略示している。」
記載49b:「歯科用インプラント長軸206をZ軸とし、平面領域204をXY平面とする歯科医視点の座標系を設定すれば、3次元撮影画像内の任意の歯科用インプラント206の軸周りに回転させた平面領域204上の断面画像が表示される。」
記載49c:「図6(b)では、歯科用インプラント206を3次元撮影画像内で移動・傾斜させ、これとインプラント206と平面領域204とを軸周りに回転させる様子を略示している。」
記載49d:「このようにしてディスプレイの撮影画像上に任意に位置決めされた歯科用インプラント206を移動・軸回転・傾斜させたときの該インプラント長軸周りの平面領域の画像を取得すれば、ディスプレイの撮影画像上の歯科用インプラントの埋入位置を確認しながら、その断面画像を取得することが可能となる。」
(イ)本件特許の図6(a)は以下のとおり。
[図:0001435520000098.jpg]
(ウ)本件特許の図6(b)は以下のとおり。
[図:0001435520000099.jpg]
(エ)上記(ア)の記載49a~cはいずれも、歯科用インプラント206の長軸周りに平面領域を回転させることを述べるにとどまり、両者が連動して回転すると解し得る記載ではない。
上記(ア)の記載49dにおける「歯科用インプラントの長軸周りの平面領域」とは、該長軸を軸に周回する方向の任意の平面を意味すると解されるところ、該記載49dの「位置決めされた歯科用インプラント206を移動・軸回転・傾斜させたときの該インプラント長軸周りの平面領域の画像」との記載からは、歯科用インプラント206の移動・軸回転・傾斜と、歯科用インプラント長軸を軸に周回する方向の平面領域(の定義)とは独立である、つまり、移動したとき、軸回転させたとき、傾斜させたときそれぞれにおいて歯科用インプラント長軸を軸に周回する平面領域が設定されることを意味していると理解される。
(オ)また、請求人が挙げる本件発明の効果に係る本件特許明細書【0012】には以下の記載がある。
a 記載12a:「歯科医師がディスプレイ上の任意の位置に位置決めされた歯科用インプラント画像の軸周りの断面画像を取得することができる。」
b 記載12b:「歯科医師はディスプレイ上で自己の治療状態をイメージしながら歯科用インプラント画像を基準とした座標系で断面情報を取得することができる。」
c 記載12c:「例えば、インプラントの埋入位置を画定させたい歯科医師においてはディスプレイ上でインプラント画像に埋入させた様子を視認しつつ下顎管等の神経に当接しないインプラント位置を検出することができる。」
(カ)上記(オ)の記載12aからは、期待される効果として、歯科用インプラントがディスプレイ上で位置決めされた状態での軸周りの断面画像(平面領域の画像)を取得可能であることを読み取ることができるが、断面画像が歯科用インプラントと共に回転、つまり歯科用インプラントを位置決めしながら断面画像の軸周り回転可能であるような効果まで期待されていると読み取ることはできない。
同記載12bにおいても、歯科用インプラント画像を基準とした座標系が歯科用インプラントと共に動的に回転することまで読み取ることはできない。
また、同記載12a~12cのいずれの効果も、請求人が主張する「インプラント側面に形成された凸部が各回転角に対して神経などに当接しないかを確認することを可能にするか否かにおいてインプラントと神経との当接の有無を確認するという課題をどのように解決するかという課題」を解決する効果を直ちに想起させるものではないし、仮にそのような課題が存在するとしても、上記(エ)で説示したとおり、歯科用インプラントと平面領域(の画像;断面画像)とが個別に回転できれば解決されるものであるから、両者が連動して回転する構成が必要不可欠となるとはいえない。
(キ)以上、(ア)~(カ)のとおりであるから、請求人の主張イは失当である。
ウ 主張ウ(頬舌方向の傾斜)について
請求人が主張ウの根拠とする本件特許明細書【0052】は、同【0046】~【0051】に記載された「人体情報抽出装置により抽出された人体情報に基づく3次元画像の断面画像を検出する装置について」の説明について、「さらに、本発明の断面画像検出装置では他の実施形態をも提供する」(【0052】冒頭)として、別の実施形態を提示するものである。同【0049】に記載された実施形態では、「ここで平面領域204の位置決めについて言及すれば、断面検出用画像202はワールドエリア内で該画像が配設されたローカルエリアを設定すれば、歯科用インプラント画像206の任意の傾斜角、平面領域204の任意の回転角を選択、設定することができる。」、「歯科用インプラント長軸206をZ軸とし、平面領域204をXY平面とする歯科医視点の座標系を設定すれば、3次元撮影画像内の任意の歯科用インプラント206の軸周りに回転させた平面領域204上の断面画像が表示される。」と記載されるとおり、歯科用インプラントの傾斜も、平面領域の設定も任意であり、請求人が主張する、【0052】記載の別の実施形態にあるような、歯科用インプラントの傾斜のうち頬舌方向の傾斜については平面領域の基準軸に反映しないといった制限についての言及はない。
よって、請求人の【0052】記載の実施形態のみを前提とする上記主張ウは失当である。
エ 主張エ(人体情報抽出装置)について
本件発明の課題は本件特許明細書【0008】記載の「上顎部及び/又は下顎部の3次元撮影画像内に位置決めされた歯科用インプラントの軸周りの断面画像を検出し、さらにはその断面画像を歯科医師等が所望する視点で提供する断面画像検出装置を提供すること」であり、前提となる下顎部の3次元撮影画像が、どのような部材を用いてどのような座標系で撮像されているとしても、目的となる断面画像は歯科用インプラント(の画像オブジェクト)が基準となるのであるから、前記課題の解決に影響しない。
よって、請求人の主張エは失当である。
(4)小括
以上のとおりであるから、無効理由5に係る請求人の主張はいずれも失当であり、本件発明1,2は共に、本件特許明細書の発明の詳細な説明に記載されたものであり、請求項1、2の記載は特許法第36条第6項第1号の要件を満たす。
10 無効理由6(明確性要件)について
第1回口頭審理において確認されたとおり、請求人が主張する無効理由6は、本件発明1及び2の明確性要件違反、である。
(1)請求人の主張
請求人は請求書において概略次の主張をする。
ア 主張6ア 位置決め、傾斜及び回転について
本件発明1の構成要件Aには、「歯科用インプラントを任意に位置決めするごとで、・・・平面領域の画像を生成する断面画像検出装置」との記載があり、歯科用インプラントの「位置決め」との操作に応じて、上記「画像」が生成されることが特定される。
しかし、構成要件B1~Eには、平面領域の位置決め、傾斜、及び回転との概念的な挙動が示されているが、これらの平面領域の動きに応じて、平面領域の画像の生成が行われることは明らかではない。すなわち、平面領域は歯科用インプラント長軸を含むため、歯科用インプラントの平行移動と、平面領域の平行移動とが同じ意味を持つとしても、平面領域の傾斜や回転では、「平面領域の画像」の生成が行われるか明らかではない。本件発明2についても同様。
イ 主張6イ 平面領域の画像について
(ア)主張6イ1
本件発明1の構成要件Aには、「断面画像検出装置」との記載があるから、本件発明1は、断面画像を検出する装置に係るものである。一方で、同構成要件Aには、「所定の平面領域の画像を生成する断面画像検出装置」とも記載され、「所定の平面領域の画像」が当該装置により生成されることも記載されている。本件発明1では、生成される「所定の平面領域の画像」と、検出する「断面画像」との関係は特定されておらず、両者の関係は不明確である。本件発明2についても同様。
(イ)主張6イ2
本件発明1の構成要件Aは、「所定の平面領域の画像を生成する断面画像検出装置」と記載し、所定の平面領域を生成するのではなく、所定の平面領域の画像を生成することが特定されている。「所定の平面領域の画像」が、ディスプレイ上の表示される3次元画像上の平面領域を示すのか、又は平面領域に対応する断面画像を示すのかが不明であり、発明を明確に理解することができない。また、【発明の詳細な説明】の記載を参酌しても、上記の点は、依然として不明である。本件発明2についても同様。
ウ 主張6ウ 基準軸について
本件発明1の構成要件Aには、「基準軸としての歯科用インプラント長軸」との記載があるが、「基準軸」とは、何の基準を意味するのか不明であり、発明を明確に特定できない。本件発明2についても同様。
エ 主張6エ ディスプレイについて
本件発明1の構成要件B1では「歯科用インプラントは、前配ディスプレイ上を移動させる」と特定されており、歯科用インプラントはディスプレイ上に表示されると解される。しかしながら、本件発明1において、ディスプレイと平面領域との関係は特定されておらず、平面領域とディスプレイとの関係が不明確である。
また、本件発明1の構成要件A・B1では、物理的な構成要素である「ディスプレイ」が特定されている。しかしながら、ディスプレイと「断面画像検出装置」との関係も、何ら特定されておらず、明確ではない。
たとえば、構成要件B1においては、内部処理の結果、移動する歯科用インプラントがディスプレイ上に出力されるという記載ではなく、ユーザ等がディスプレイ上で歯科用インプラントを操作する記載ぶりとなっている。すなわち、本件発明1では、ディスプレイと断面画像検出装置とが相互に連携しているような操作が記載されている。しかしながら、「断面画像検出装置」と「ディスプレイ」との関係が明確でないことに起因して、歯科用インプラント等のディスプレイ上の表示を、断面画像検出装置がいかに制御するかが不明であり、発朗を明確に理解できない。
本件発明2についても同様。
(2)被請求人の主張
無効理由6に関する被請求人の主張は、概略次のとおりである。
ア 主張6ア(位置決め、傾斜及び回転)について
本件発明1は平面領域の画像(断面画像)を生成する装置であり、平面領域を傾斜・回転させるのは所望の断面に平面領域を合わせてその画像を生成するためであることは、当業者において請求項自体の記載から容易に理解されるし、本件特許明細書にも明記されている(【0049】)。
したがって、構成要件Dの「前記平面領域は・・・傾斜させることができ」とは、「前記平面領域を傾斜させその画像を生成することができ」るという意味であり、構成要件Eの「前記平面領域は・・・回転させることができる」とは、「前記平面領域を回転させその画像を生成することができ」るという意味であることは明らかである。
イ 主張6イ(平面領域の画像)について
本件発明1の請求項には、画像の取得に係る発明特定事項が、「平面領域の画像を生成」しかない。よって、当業者であれば、「平面領域の画像を生成」が「断面画像検出」に当たると容易に理解され、「平面領域の画像」が「断面画像」であると分かる。
このことは、本件特許明細書で、平面領域204と断面検出用画像202(歯科用インプラント長軸の全体を含み、一定の面積を有する平面状のオプジェクト)が使い分けられていることから、「平面領域」はオブジェクトではなく領域自体を意味するものと理解され、よって、「平面領域の画像」が、平面状オブジェクトの3次元表示画像ではなく、平面領域に対応する断面画像を意味するものと理解されることからも明らかである。
ウ 主張6ウ(基準軸)について
構成要件Aの記載内容(「〈基準軸・・・〉を含む所定の平面領域」)からして、ここでの基準軸が、平面領域の位置を決める基準となる軸という意味であることは明らかであるし、本件特許明細書【0049】でも、「歯科用インプラント206(※基準軸としての歯科用インプラント長軸)が位置決めされると平面領域204も位置決めされ」ることが説明されている。
エ 主張6エ(ディスプレイ)について
ディスプレイ(出力装置)は、処理装置が処理した結果を出力する装置である。本件発明1においては、断面画像検出装置が処理(制御)した結果が、本件発明とともに使用されるディスプレイ(出力装置)上に出力されているという関係にあることは、当業者において容易に理解される。
(3)当審の判断
ア 主張6ア(位置決め、傾斜及び回転)について
構成要件Aには「ディスプレイ上に表示された歯列を含む上顎部及び/又は下顎部の3次元撮影画像上に、歯科用インプラントを任意に位置決めすることで、基準軸としての歯科用インプラント長軸を含む所定の平面領域の画像を生成する」と特定され、ディスプレイ上の事象として、歯科用インプラントがディスプレイ上で移動されるもの、つまり画像要素であり、平面領域は、平面領域の画像として(ディスプレイ上に)生成されるものであることが記載されている。
請求項1の文章構成上、構成要件B1~Eは、構成要件B1において「前記歯科用インプラント」が「前記ディスプレイ上を移動させる」ことが前提となっていることからも理解されるとおり、構成要件Aで特定される「歯科用インプラント」や「平面領域」についての「ディスプレイ上」における表示の詳細を特定するものと位置づけられるから、平面領域が3次元空間内の仮想平面であるとしても、それに対応する「平面領域の画像」が構成要件B2・D・Eにおいて、ディスプレイ上の表示画像として特定されていると理解することができる。
また、この理解は本件特許明細書の発明の詳細な説明における記載(特に【0046】~【0051】の実施形態の記載)とも矛盾しない。
よって、構成要件B1~Eが逐一、「平面領域の画像」の生成や表示に関する特定を伴わないとしても、請求項1やそれを引用する請求項2の記載が、発明特定事項に当業者が理解不能なほどの技術的な不備があるとまでいうことはできない。よって請求人の主張6アは失当である。
イ 主張6イ(平面領域の画像)について
「平面領域」と「断面検出」との関係について、本件特許明細書の発明の詳細な説明における【0046】には、
「ここで平面領域204の位置決めについて言及すれば、断面検出用画像202はワールドエリア内で該画像が配設されたローカルエリアを設定すれば、歯科用インプラント画像206の任意の傾斜角、平面領域204の任意の回転角を選択、設定することができる。」
と記載され、「断面検出画像202」が「平面領域」についての画像である、という関係が定義されているといえる。
また、同【0050】には、
「図7に示すようにオペレータは上述するように基準軸の回転、傾斜を実行することで平面領域204、すなわち所望する検出断面を設定する(STEP20)。次に検出断面内における検出点を設定する。具体的には検出断面に配置された多数のvoxelから予め設定された位置に存在するvoxelを検出し、これを検出点として設定する(STEP22)。次に設定された平面領域における複数の検出点から1つの検出点を検出中心として設定する(STEP24)。さらに、検出中心の近傍に位置する隣接点を検出し、設定する(STEP26)。このステップで設定される隣接点は、検出中心から予め設定された領域(voxel群領域)内に存在する点(voxel)を検出することにより実行される。そして、設定された検出中心と隣接点とに対応するワールドエリア上の人体情報を取得し(STEP28)、取得された複数の人体情報を平均化する(STEP30)。さらに、このようにして検出中心に対応する人体情報が平面領域全体に亘って検出(取得)されたか否かが判定され、検出されるまではSTEP22~30を繰り返すこととなる(STEP32)。そして、平面領域全体に亘って人体情報が検出されると、これを別途設定した画面内に2次元情報として設定することで(STEP34)、ディスプレイ上にインプラント等基準軸周りの断面情報を提供することが可能となる。」
と説明され、「平面領域」について人体情報(3次元画像情報)をvoxel平均により検出したものが「検出断面」(「断面情報」)であることが示されているといえる。
これら実施形態についての記載を参酌して請求項1の記載をみれば、「平面領域の画像」が「断面画像」に対応することが理解できるし、「断面画像」は「平面領域の画像」であるのだから、構成要件B1~Eにおける平面領域の位置決めや移動は、平面領域の断面つまり断面画像を検出する処理を特定するものであると当業者は理解できる。
よって、請求人の主張6イは失当である。
ウ 主張6ウ(基準軸)について
請求項1の構成要件Aに「基準軸としての歯科用インプラント長軸」と記載されているのであるから、「基準軸」の定義は請求項1の記載において明確である。よって請求人の主張6ウは失当である。
エ 主張6エ(ディスプレイ)について
請求項1の構成要件Aには「・・・ディスプレイ上に表示された歯列を含む上顎部及び/又は下顎部の3次元撮影画像上に、・・・歯科用インプラントを・・・位置決めすることで、・・・平面領域の画像を生成する」こと、つまり、3次元撮影画像が表示されたディスプレイ上において、歯科用インプラントの位置決めと、平面領域の画像を生成することが記載されていると理解される。
この理解は、上記イで摘記した本件特許明細書【0050】の「検出中心に対応する人体情報が平面領域全体に亘って検出(取得)されたか否かが判定され、検出されるまではSTEP22~30を繰り返す・・・平面領域全体に亘って人体情報が検出されると、これを別途設定した画面内に2次元情報として設定することで(STEP34)、ディスプレイ上にインプラント等基準軸周りの断面情報を提供する」との記載によっても裏付けられる。
よって、ディスプレイと平面領域との関係に関し請求項1の記載は当業者にとって明確に理解されるものであり、請求人の主張6エは失当である。
(4)小括
上記(3)のとおりであるから、無効理由6における明確性に関する請求人の主張はいずれも採用できず、本件特許の請求項1及びこれを引用する請求項2の記載は特許法第36条第6項第2号の要件を満たす。
第7.むすび
以上のとおりであるから、請求人の無効理由1~6に係る主張及び証拠方法によっては、本件特許請求の範囲の請求項1,2に係る特許を無効とすることはできない。
そして、審判に関する費用については、特許法第169条第2項で準用す る民事訴訟法第61条の規定により、請求人が負担すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
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2023-800069