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特許異議申立

2023-700168

プログラム、画像処理装置及び画像処理方法

審判番号
2023-700168
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2021-024897
登録番号
7121818
請求日
2023年02月16日
審決日
2023年05月15日
公報発行日
2023年06月30日
結論
維持
当事者
  • 【権利者】PDRファーマ株式会社
  • 【権利者代理人】弁理士法人ウィルフォート国際特許事務所
  • 【異議申立人】柴山 紗貴子
  • 【異議申立人代理人】鈴木 守
審判長/審判官
  • 審判長 石井 哲
  • 審判官 渡戸 正義
  • 審判官 松本 隆彦
分類
P1651.121-Y (G01T) / P1651.111-Y (G01T) / P1651.537-Y (G01T)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第113条第2号、特許法第29条第2項、特許法第113条第4号、特許法第29条第1項第1号、特許法第29条第1項、特許法第36条第6項第1号、特許法第36条第6項第2号
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特許第7121818号発明「プログラム、画像処理装置及び画像処理方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第7121818号の請求項1ないし5に係る特許を維持する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第7121818号の請求項1ないし5に係る特許についての出願は、令和3年2月19日に出願され、令和4年8月9日にその特許権の設定登録がされ、同月18日に特許掲載公報が発行された。その後、その特許に対し、令和5年2月16日に特許異議申立人柴山紗貴子(以下「申立人」という。)は、特許異議の申立てを行った。 第2 本件発明 特許第7121818号の請求項1ないし5に係る発明(以下それぞれ請求項の番号に対応して「本件発明1」などといい、それらを総称して「本件発明」という。)は、それぞれ特許請求の範囲の請求項1ないし5に記載された事項により特定される、次のとおりのものである。 【請求項1】 心筋及び横隔膜下の臓器に集積した放射性医薬品の分布を示す断層画像データに対して、前記心筋に集積した放射性医薬品の分布である心筋分布を写した領域を関心領域として設定し、 前記関心領域に基づいて、前記断層画像データから前記心筋分布を示す心筋断層画像データを抽出し、 前記心筋断層画像データに対してスムージング処理を行う、画像処理方法。 【請求項2】 前記関心領域の設定では、ユーザにて指定された領域を前記関心領域として設定する、請求項1に記載の画像処理方法。 【請求項3】 前記心筋断層画像データの抽出では、前記関心領域以外の領域の画素値を零に設定することで、前記心筋断層画像データを抽出する、請求項1 又は2 に記載の画像処理方法。 【請求項4】 前記断層画像データは、スムージング処理が行われる前の断層画像データである、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の画像処理方法。 【請求項5】 前記スムージング処理は、画像上の画素値の変化を滑らかにする処理である、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の画像処理方法。 第3 特許異議申立理由の概要 申立人の特許異議申立理由の概要は、以下の1ないし6のとおりである。また、申立人は、証拠方法として、下記7の甲第1号証ないし甲第17号証を提出した。 1 (進歩性)本件発明1ないし5は、本件特許に係る出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物である甲第1号証に記載された発明、並びに甲第2号証ないし甲第6号証及び甲第15号証ないし甲第17号証に記載された技術事項に基いて、本件特許に係る出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、その特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 したがって、請求項1ないし5に係る特許は、特許法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。 2 (新規性)本件発明1、2、4及び5は、2019年6月22日に開催された第10回東北Symbia User's Meetingにおいて小室敦司氏が行った講演(甲第7号証ないし甲第10号証及び甲第5号証)により本件特許に係る出願前に日本国内又は外国において公然知られた発明であって、特許法第29条第1項第1号に該当するから、その特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。 したがって、請求項1、2、4及び5に係る特許は、特許法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。 3 (進歩性)本件発明3は、2019年6月22日に開催された第10回東北Symbia User's Meetingにおいて小室敦司氏が行った講演(甲第7号証ないし甲第10号証及び甲第2号証ないし甲第5号証)により本件特許に係る出願前に日本国内又は外国において公然知られた発明、及び甲第2号証ないし甲第4号証に記載された技術事項に基いて、本件特許に係る出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、その特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 したがって、請求項3に係る特許は、特許法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。 4 (進歩性)本件発明1ないし5は、本件特許に係る出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物である甲第11号証に記載された発明、並びに甲第2号証ないし甲第4号証及び甲第12号証ないし甲第14号証に記載された技術事項に基いて、本件特許に係る出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、その特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 したがって、請求項1ないし5に係る特許は、特許法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。 5 (サポート要件)本件発明1ないし5は、課題を解決するために必要な手段である「関心領域の精密設定」に係る「心筋及び横隔膜下臓器に集積した放射性医薬品の分布を示し、かつ、スムージング処理が行われる前の断層画像データにおける心臓の中心よりも上側に対応する領域の最大の画素値である基準画素値に基づいて、前記断層画像データに対して、前記心筋に集積した放射性医薬品の分布である心筋分布を写した領域を関心領域として設定する設定部」が反映されていないから、その特許は、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。 したがって、請求項1ないし5に係る特許は、特許法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。 6 (明確性)本件発明1ないし5は、特許異議申立理由5で指摘した課題を解決するために必要な手段が反映されていない結果、作用効果を奏することはなく、発明の技術的意味を理解することができないから、その特許は、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。 したがって、請求項1ないし5に係る特許は、特許法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。 7 証拠方法 (1)甲第1号証:「Syngo MI ワークプレイス クイックリファレンスガイド」,シーメンス旭メディテック株式会社,2005年8月,p.iii-xvii,1.1|1-5,2.1|8-21,5.7|12,5.8|1-7,6.3|6,6.4|1-7 (2)甲第2号証:特開2013-223620号公報 (3)甲第3号証:望月優輝のウェブサイト「OpenCV画像解析入門」に掲載された「2015.12.17 マスク処理で余分な場所を隠す」と題された記事を掲載したウェブページ,2020年12月2日アーカイブ,<URL:https://web.archive.org/web/20201202220543/https://cvtech.cc/mask/> (4)甲第4号証:「Dr.View/LINUX ユーザーズマニュアル」,第3版,旭化成情報システム株式会社,2004年1月31日,p.405-408 (5)甲第5号証の1:日本メジフィジックス株式会社内にあるsyngo MI Workplace.Turbo Vの画面キャプチャ,2022年11月2日出力 (6)甲第5号証の2:日本メジフィジックス株式会社内にあるsyngo MI Workplace.Turbo Vの画面キャプチャ,2022年11月2日出力 (7)甲第5号証の3:日本メジフィジックス株式会社内にあるsyngo MI Workplace.Turbo Vの画面キャプチャ,2022年11月2日出力 (8)甲第5号証の4:シーメンス旭メディテック株式会社の作業票No.728100562023/1の作業報告書,2008年3月31日 (9)甲第5号証の5:シーメンス旭メディテック株式会社の作業票No.728100702636/1の作業報告書,2008年11月28日 (10)甲第5号証の6:シーメンス・ジャパン株式会社の作業票No.728101123508/1の作業報告書,2010年7月12日 (11)甲第6号証:ヴィスコ・テクノロジーズ株式会社のウェブサイトの「画像コラム・画検新聞」という項目に掲載された「画像フィルタ~より容易な欠陥検出のために(前編)」と題された記事,2023年2月1日出力,<URL:https://www.visco-tech.com/newspaper/column/detail19/> (12)甲第7号証:「Gaussian Filter」と題されたSymbia User's Meeting 2019 Key Word講座の白河厚生総合病院小室敦司の講演資料 (13)甲第8号証:第10回東北Symbia User's Meeting プログラム,Siemens Healthineers (14)甲第9号証:「MI Applicationsの基本操作 簡易取扱説明書」,シーメンス旭メディテック株式会社,p.1-5,13-1-13-9,17-1-17-7 (15)甲第10号証:オートメーション新聞のウェブサイトに掲載された「旭メディテックを子会社化シーメンス」と題された2010年6月30日の記事,<URL:https://www.automation-news.jp/2010/06/7415/> (16)甲第11号証:高木昭浩他,「99mTc心筋血流製剤を用いたSPECT撮像における肝の高集積が心筋に及ぼす影響の軽減;マスク処理法の有用性と問題点」,核医学,1999年,36巻5号,p.459-465 (17)甲第12号証:医用画像工学ハンドブック,日本医用画像工学会,平成24年9月15日,p.612-613 (18)甲第13号証:根元清貴,「最新のMRI脳画像 Voxel Based Morphometry」,認知神経科学,2008年,Vol.10,No.1,p.28-32 (19)甲第14号証:山下典生,「MRI構造画像を用いたVoxel-based morphometry」,MEDICAL IMAGING TECHNOLOGY,2016年1月,Vol.34,No.1,p.3-7 (20)甲第15号証:実践 医用画像解析ハンドブック,株式会社オーム社,平成24年11月1日,p.86-89 (21)甲第16号証:改訂第2版 診療放射線技師 スリム・ベーシック 核医学,株式会社メジカルビュー社,2019年8月10日,p.143-153 (22)甲第17号証:核医学画像処理,山代印刷株式会社出版部,2010年11月10日,p.46-73 第4 各甲号証等の記載事項 1 甲第1号証(以下「甲1」という。他の甲号証についても同様。)の記載事項及び甲1に記載された発明 (1)甲1の記載事項 甲1には以下の記載がある(下線は当審で付加した。)。 (甲1-ア)「本書の使用方法 本書の対象ユーザー このe.soft Quick Reference Guide(QRG)では、e.softTMアプリケーションを使用して核医学(NM)データを収集、処理、表示するための全般的な手順を説明しています。」(1.1|1頁1~5行) (甲1-イ)「ワークフロー 1つのワークフローは、アクティビティと呼ばれる一連のタスクで構成されます。アクティビティは臨床診断法を自動化するシーケンスに組み込まれています。ワークフロー内の各アクティビティは、ワークフロー内での位置と同じ順序で実行されます。標準的なワークフローには、撮像、処理、表示、ハードコピーなどのアクティビティが含まれます。これらのアクティビティの設定は、保存して他のワークフローで使用することもできます。 1つのワークフローテンプレートは、ワークステーションに保存されている、アクティビティのシーケンスです。ワークフローを実行するために、被検者データとともに立ち上げられます。テンプレートは何度でも使用でき、他の設定ファイルを選択したり、パラメーターを変更することも可能です。各ワークステーションには標準ワークフロー一式が搭載されており、これを利用してさまざまな手順を自動化することができます。さらに、各ワークステーションで独自のワークフローテンプレートを作成し、ネットワークで接続されている複数のワークステーションと共有することも可能です。」(2.1|9頁6~22行) (甲1-ウ)「Series Filterアクティビティ 目的 Series Filterアクティビティは、シリーズに空間や周波数のフィルタを適用する場合に使用します。新たにアウトプットとして生成されるシリーズには、更新内容が適用されています。 ・・・ 以下の手順にしたがって、Series Filter Processingを実行します。 ステップ1. e.soft Patient Browserからシリーズを1つ選択します。1 ステップ2. Workflow Template BrowserのCategoryメニューから、Processing Activitiesを選択します。 ステップ3. Series Fi1ter Generic Procワークフローテンプレートをダブルクリックします。 ステップ4. ワークフローが、Series FilterアクティビティのSeries Filterタブ画面で開きます。 ステップ5. ツールバーで、Spatial FilterボタンまたはFrequency Filterボタンをクリックします。2 ステップ6. Select Filterプルダウンメニューをクリックしてフィルターを選択し、パラメータを設定します。 フィルタを適用した結果が、Test Specified FilterエリアのAfterフィルタシネディスプレイに表示されます。 ステップ7. さまざまなフィルタの効果を比較するには、Select Filterプルダウンメニューからフィルタを選択して、Trial Filterボタンをクリックします。 ステップ8. Trial Viewsエリアの画像の下にあるフィルタのラベルをクリックしてからOKボタンをクリックすると、選択したフィルタがデータセット全体に適用されます。 ワークフローがSeries Filterアクティビティページに戻り、新しいフィルタがFilter Appliedエリアに表示されます。3 ステップ9. 保存画面やハードコピーが必要な場合は、Hard Copyアクティビティをクリックして、適宜選択を行います。 ステップ10. Setupボタンをクリックして、設定を確認します。4 ステップ11. OKボタンをクリックして、設定を確認します。 ステップ12. Completeボタンをクリックすると、ワークフローが完了します。 Series Filterアクティビティが完了します。」(5.8|1頁1行~6頁末行) (甲1-エ)「Cardiac Tomo Reconstruction (心臓断層画像再構成) ・・・ 処理 心血流データを使用して心断層画像を再構成する一例として、工場出荷時に設定されているワークフローテンプレートCardiac Perfusion Procを以下に示します。 ・・・ 心血流再構成は、以下の手順で行います。 ステップ1. e.soft被検者ブラウザからスタディを選択します。 ステップ2. ワークフローテンプレートブラウザのCategoryメニューから、Cardiacを選択します。 ステップ3. Cardiac Perfusion Procワークフローテンプレートをダブルクリックします。1 (図省略) ステップ4. ワークフローではFlexible DisplayアクティビティのComprehensiveタブが開きます。 (図省略) ステップ5. Quality Controlアクティビティをクリックしてスタディデータを解析します。2 ステップ6. Autocardiacアクティビティをクリックします。 ステップ7. Settingsタブをクリックします。3 (図省略) ステップ8. 必要に応じて、Change Filterボタンをクリックしてフィルターを調整します。4,5,6 ステップ9. Reconstructionタブをクリックします。 ステップ10. 再構成範囲と方向角度が自動的に設定されています。これらの範囲と角度を検証し、必要に応じて調整します。7,8,9 [図:0001398309000001.jpg] ステップ11. Masking/Centeringタブをクリックします。 ステップ12. 各シリーズ上の十字線が心臓の中心で交差するように、十字線を調整します。10 ステップ13. 黄色いハンドルをクリック&ドラッグしてマスクのサイズと位置を調整します。11 ステップ14. Flexible Displayアクティビティをクリックして各画像を表示します。 [図:0001398309000002.jpg] ステップ15. 保存画面やハードコピーが必要であれば、Hard Copyアクティビティをクリックしてから目的のメニュー項目を選択します。 ステップ16. 設定を確認するには、Setupボタンをクリックします。 ステップ17. ワークフローを完了するには、Completeボタンをクリックします。 心断層画像の再構成が完了します。」(6.4|1頁1行~6頁末行) (甲1-オ)「11 再構成画像をマスキングしない場合は、Apply Maskチェックボックスのチェックを外します。」(6.4|6頁の脚注) (2)甲1の記載から看取される事項 ア 上記(甲1-エ)のステップ9.及び10.並びに図6.4-4.の記載から、Reconstructionタブにおいて、設定された再構成範囲と方向角度に従って、周辺臓器を含む心臓の断層画像が生成されて表示されることが理解できる。 イ 上記(甲1-エ)のステップ11.ないし14.及び図6.4-5.の記載から、Masking/Centeringタブにおいて、各シリーズの断層画像上でマスクの位置及びサイズを調整し、Flexible Displayアクティビティにおける各断層画像の表示において、マスクされた部分が黒く表示されることが理解できる。 (3)甲1に記載された発明及び技術事項 上記(2)ア及びイを踏まえると、上記(甲1-ア)ないし(甲1-オ)の記載から、甲1には、以下の発明(以下「甲1発明」という。)及び技術事項(以下「甲1技術事項」という。)が記載されているものと認められる。 (甲1発明) 「e.softTMアプリケーションを使用して核医学データを処理する方法であって、 心臓断層画像再構成の心血流再構成において、 Settingsタブをクリックし、 必要に応じて、Change Filterボタンをクリックしてフィルターを調整し、 Reconstructionタブをクリックし、 設定された再構成範囲と方向角度に従って、周辺臓器を含む心臓の断層画像が生成されて表示され、 Masking/Centeringタブをクリックし、 各シリーズの断層画像上の十字線が心臓の中心で交差するように、十字線を調整し、 黄色いハンドルをクリック&ドラッグしてマスクのサイズと位置を調整し、 Flexible Displayアクティビティをクリックして、各断層画像を表示し、ここで、表示される各断層画像は、マスクされた部分が黒く表示される、 方法。」 (甲1技術事項) 「e.softTMアプリケーションを使用して核医学データを処理する方法において、シリーズに空間や周波数のフィルタを適用する場合には、Series Filterアクティビティを使用して、ツールバーで、Spatial FilterボタンまたはFrequency Filterボタンをクリックし、Select Filterプルダウンメニューをクリックしてフィルターを選択し、パラメータを設定すること。」 2 甲7の記載事項及び甲7に記載された発明 (1)甲7の記載事項 甲7には以下の記載がある。 (甲7-ア)「 [図:0001398309000003.jpg] 」(2枚目) (甲7-イ)「 [図:0001398309000004.jpg] 」(3枚目) (甲7-ウ)「 [図:0001398309000005.jpg] 」(4枚目) (甲7-エ)「 [図:0001398309000006.jpg] 」(6枚目) (甲7-オ)「 [図:0001398309000007.jpg] 」(7枚目) (甲7-カ)「 [図:0001398309000008.jpg] 」(23枚目) (甲7-キ)「 [図:0001398309000009.jpg] 」(24枚目) (甲7-ク)「 [図:0001398309000010.jpg] 」(25枚目) (2)甲7に記載された発明 上記(甲7-ア)ないし(甲7-ク)の記載から、甲7には、 「SPECT/CT装置としてSiemens社製SymbiaT6、画像処理装置としてSiemens社製syngo MI Apps(version.VA60C)を使用した心臓シンチにおいて、心筋外集積の影響を低下させる方法であって、 Auto ReconでPost FilterをNo Filteringにし、Series FilterでFilteringする、 方法。」 の発明(以下「甲7発明」という。)が記載されているものと認められる。 3 甲11の記載事項及び甲11に記載された発明 (1)甲11の記載事項 甲11には以下の記載がある。なお、表記上の制限から、丸囲み数字は、「○1」のように記す。 (甲11-ア)「99mTc心筋血流製剤を用いたSPECT撮像における肝の高集積が心筋に及ぼす影響の軽減;マスク処理法の有用性と問題点」(459頁タイトル) (甲11-イ)「要旨99mTc心筋血流SPECT撮像時,心筋以外の集積部を投影データあるいは再構成データ上で削除して心筋のみにする補正法(以下マスク処理)の妥当性を心肝ファントム実験にて検村した.さらに99mTc心筋血流SPECTを実施した虚血性心疾患l20症例中,心筋以外の集積が臨床上読影に影響があると考えられた25例を対象として,臨床的有用性に関し検討した.」(459頁要旨1~4行) (甲11-ウ)「B) ファントム実験方法 ・・・画像再構成にあたり前処理フィルタには,Butterworth(order 8:0.25 cycles/pixel)を,また再構成フィルタには,Rampを使用した.今回,吸収および散乱補正は行っていない. C) 臨床的検討 ・・・撮影条件は,ファントム実験と同じである. D) マスク処理の方法 ○1 再構成データマスク処理(RM処理);投影データより再構成した体軸横断像の心筋部を矩形関心領域(region of interest; 以下ROI)で囲み,心筋部分を切り抜いたものに対して断面変換を行う.」 (2)甲11に記載された発明 上記(甲11-ア)ないし(甲11-ウ)の記載から、甲11には、 「99mTc心筋血流製剤を用いたSPECT撮像における肝の高集積が心筋に及ぼす影響の軽減を軽減する方法であって、 99mTc心筋血流SPECT撮像時、心筋以外の集積部を再構成データ上で削除して心筋のみにする補正法であり、 画像再構成にあたり前処理フィルタには、Butterworth(order 8:0.25 cycles/pixel)を、また再構成フィルタには、Rampを使用し、 投影データより再構成した体軸横断像の心筋部を矩形関心領域で囲み,心筋部分を切り抜いたものに対して断面変換を行う、 方法。」 の発明(以下「甲11発明」という。)が記載されているものと認められる。 第5 当審の判断 1 特許異議申立理由1:甲1に基づく進歩性について (1)本件発明1について ア 本件発明1と甲1発明とを対比する。 (ア)a 甲1発明の「断層画像」は、核医学データに関するものであるから、放射性医薬品の分布を示しているといえる。 b 甲1発明の「断層画像」は、「周辺臓器を含む心臓」を表示するものであるから、心筋及び横隔膜下の臓器を表示範囲に含んでいるといえる。 c 甲1発明の「マスク」は、Flexible Displayアクティビティで表示される領域を特定するものであるから、甲1発明において「マスクのサイズと位置を調整」することは、関心のある領域を設定することといえる。 d 甲1発明は「心血流再構成」を行うものであるから、マスクのサイズと位置を調整する際、心筋部分がマスクされないように調整することを想定しているといえる。 e 上記aないしdを踏まえると、甲1発明の「各シリーズの断層画像上の十字線が心臓の中心で交差するように、十字線を調整し、黄色いハンドルをクリック&ドラッグしてマスクのサイズと位置を調整」することと、本件発明1の「心筋及び横隔膜下の臓器に集積した放射性医薬品の分布を示す断層画像データに対して、前記心筋に集積した放射性医薬品の分布である心筋分布を写した領域を関心領域として設定」することとは、「心筋及び横隔膜下の臓器に集積した放射性医薬品の分布を示す断層画像データに対して、前記心筋に集積した放射性医薬品の分布である心筋分布を写した領域を含むように関心領域を設定」することの点で共通する。 (イ)a 甲1発明の「Flexible Displayアクティビティ」における「各断層画像」の表示は、「マスクされた部分が黒く表示される」から、表示前の「各断層画像」のデータに対して、「マスクされた部分」とそれ以外の部分とを区別し、それぞれに対して異なる処理を行うものである。 b 上記aを踏まえると、甲1発明の「Flexible Displayアクティビティをクリックして、各断層画像を表示し、ここで、表示される各断層画像は、マスクされた部分が黒く表示される」ことと、本件発明1の「前記関心領域に基づいて、前記断層画像データから前記心筋分布を示す心筋断層画像データを抽出し、前記心筋断層画像データに対してスムージング処理を行う」こととは、「前記関心領域に基づいて、前記断層画像データから前記心筋分布を含む心筋断層画像データを抽出し、前記心筋断層画像データとそれ以外のデータとで異なる処理を行う」ことの点で共通する。 (ウ)甲1発明の「e.softTMアプリケーションを使用して核医学データを処理する方法」は、「心臓断層画像再構成」を行うことを含んでいるから、本件発明1の「画像処理方法」に相当する。 イ そうすると、本件発明1と甲1発明とは、 「心筋及び横隔膜下の臓器に集積した放射性医薬品の分布を示す断層画像データに対して、前記心筋に集積した放射性医薬品の分布である心筋分布を写した領域を含むように関心領域を設定し、 前記関心領域に基づいて、前記断層画像データから前記心筋分布を含む心筋断層画像データを抽出し、前記心筋断層画像データとそれ以外のデータとで異なる処理を行う、画像処理方法。」 の発明である点で一致し、次の2点で相違する。 (相違点1) 「前記心筋に集積した放射性医薬品の分布である心筋分布を写した領域を含むように関心領域を設定」することについて、本件発明1においては、「前記心筋に集積した放射性医薬品の分布である心筋分布を写した領域」を「関心領域」として設定するのに対し、甲1発明においては、「心筋部分がマスクされないように調整する」といえるものの、「心筋分布を写した領域」そのものを「関心領域」としているかは明らかではない点。 (相違点2) 「前記心筋断層画像データとそれ以外のデータとで異なる処理を行う」ことについて、本件発明1においては、「前記心筋断層画像データに対してスムージング処理を行う」のに対し、甲1発明においては、「各断層画像を表示」する際、「マスクされた部分」を「黒く表示」する点。 ウ 事案に鑑み、最初に上記相違点2について検討する。 (ア)甲1技術事項は、「シリーズ」、すなわち各断層画像に対して、空間や周波数のフィルタを適用することができることを開示している。 甲6及び甲15ないし甲17の記載から、「空間フィルタを適用すること」が「スムージング処理を行うこと」であるといえるとしても、甲1技術事項は、断層画像のうち、マスクされなかった部分の断層画像データに対してのみ空間フィルタを適用することを、開示していない。 (イ)また、甲2ないし甲4の記載から、マスクされた領域又は関心領域以外の領域の画素値を「0」に設定することが従来周知であるとしても、特定の領域の画素値を「0」に設定することは、それ以外の領域に対して「スムージング処理を行うこと」と同義ではない。 (ウ)さらに、甲5の1ないし6も、断層画像のうち、マスクされなかった部分又は関心領域の断層画像データに対してのみスムージング処理を行うことを、開示していない。 (エ)したがって、甲1ないし甲6及び甲15ないし甲17に接した当業者といえども、甲1発明において、「断層画像のうち、マスクされなかった部分の断層画像データに対してのみスムージング処理を行う」ようにすることは、容易に想起し得ることであるとはいえない。 エ 以上のとおりであるから、上記相違点1について検討するまでもなく、本件発明1は、甲1発明、甲1技術事項並びに甲2ないし甲6及び甲15ないし甲17に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 (2)本件発明2ないし5について 本件発明2ないし5は、本件発明1の発明特定事項を全て含むものであるから、本件発明2ないし5は、上記(1)で検討した本件発明1と同じ理由により、甲1発明、甲1技術事項並びに甲2ないし甲6及び甲15ないし甲17に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 2 特許異議申立理由2・3:甲7に基づく新規性・進歩性について 甲7は、2019年6月22日に開催された第10回東北Symbia User's Meetingにて小室敦司氏が行った講演にて映写された資料として提出されたものである。しかしながら、甲7のタイトル「Gaussian Filter」と第10回東北Symbia User's Meetingのプログラムである甲8に記載された小室敦司氏の講演タイトル「Gaussian Filter」は一致するものの、甲7には日付の記載すらなく、甲7が第10回東北Symbia User's Meetingで小室敦司氏が使用した資料であると認めるに足る十分な証拠も提出されていない。そのため、甲7に記載された事項が本件特許に係る出願前に公然知られた事項であるか否かは、定かではない。 そこで、以下では、甲7が第10回東北Symbia User's Meetingにて小室敦司氏が行った講演にて映写された資料であり、それにより甲7の記載事項が公然知られたものとなったと仮定して、検討することとする。 (1)本件発明1について ア 本件発明1と甲7発明とを対比する。 (ア)甲7発明の「Recon」及び「Series」は、それぞれ「再構成」及び「一連の断層画像」を意味するものであるから、甲7発明の「Series FilterでFilteringする」ことは、再構成により得られた一連の断層画像に対してフィルタ処理を行うことである。 そして、甲7発明の「Filteringする」ことと、本件発明1の「スムージング処理を行う」こととは、「フィルタ処理を行う」ことの点で共通する。 (イ)甲7発明は「心臓シンチにおいて、心筋外集積の影響を低下させる」ものであるから、その断層画像は、心筋及び横隔膜下の臓器に集積した放射性医薬品の分布を示しているといえる。 (ウ)甲7発明の「心筋外集積の影響を低下させる方法」は、「Series FilterでFilteringする」ことを含んでいるから、本件発明1の「画像処理方法」に相当する。 イ そうすると、本件発明1と甲7発明とは、 「心筋及び横隔膜下の臓器に集積した放射性医薬品の分布を示す断層画像データに対して、フィルタ処理を行う、画像処理方法。」 の発明である点で一致し、次の2点で相違する。 (相違点3) フィルタ処理を行う対象となる断層画像データについて、本件発明1においては、「心筋及び横隔膜下の臓器に集積した放射性医薬品の分布を示す断層画像データに対して、前記心筋に集積した放射性医薬品の分布である心筋分布を写した領域を関心領域として設定し、前記関心領域に基づいて、前記断層画像データから前記心筋分布を示す心筋断層画像データを抽出し」た「前記心筋断層画像データ」であるのに対し、甲7発明においては、関心領域に基づく抽出を行っていない「Series」、すなわち「心筋及び横隔膜下の臓器に集積した放射性医薬品の分布を示す断層画像データ」そのものに対応する「断層画像データ」である点。 (相違点4) フィルタ処理について、本件発明1においては「スムージング処理」であるのに対し、甲7発明においてはフィルタの機能が明らかではない点。 ウ 上記相違点3について検討する。 (ア)上記(甲7-キ)及び(甲7-ク)の「Post Filter⇒No Filtering」と題された図における「VLA」及び「SA」の画像には、黒塗り領域との境界に位置する楕円(以下「外側楕円」という。)の内側に別の楕円(以下「内側楕円」という。)が記載されているが、外側楕円や内側楕円が「Series FilterでFilteringする」対象領域を表すことは記載されていない。 (イ)また、2019年6月22日に開催された第10回東北Symbia User's Meetingの講演において、外側楕円や内側楕円が「Series FilterでFilteringする」対象領域を表すことを小室敦司氏が発表したことを示す証拠は提示されていない。 (ウ)そして、外側楕円や内側楕円が「Series FilterでFilteringする」対象領域を表すことが、技術常識であるとはいえない。 (エ)そうすると、上記相違点3は実質的な相違点であるから、本件発明1は甲7発明ではなく、2019年6月22日に開催された第10回東北Symbia User's Meetingにおいて小室敦司氏が行った講演により公然知られた発明ではない。 (オ)甲9の記載からユーザが関心領域を設定することが公知であったとしても、甲9は関心領域として設定された領域のみに対してフィルタ処理を行うことを開示していない。 さらに、甲2ないし甲5、甲8及び甲10も、関心領域として設定された領域のみに対してフィルタ処理を行うことを開示していない。 (カ)したがって、甲2ないし甲5及び甲7ないし甲10に接した当業者といえども、甲7発明において、「Series FilterでFilteringする」対象を「関心領域として設定された領域のみ」とすることは、容易に想起し得ることであるとはいえない。 エ 以上のとおりであるから、上記相違点4について検討するまでもなく、本件発明1は、甲7発明並びに甲2ないし甲5及び甲8ないし甲10に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 (2)本件発明2ないし5について 本件発明2ないし5は、本件発明1の発明特定事項を全て含むものであるから、本件発明2ないし5は、上記(1)で検討した本件発明1と同じ理由により、甲7発明ではないし、甲7発明並びに甲2ないし甲5及び甲8ないし甲10に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 3 特許異議申立理由4:甲11に基づく進歩性について (1)本件発明1について ア 本件発明1と甲11発明とを対比する。 (ア)甲11発明の「体軸横断像」は、「99mTc心筋血流製剤を用いたSPECT撮像」で得られた「心筋以外の」「肝の高集積」部を含む「再構成データ」であるから、本件発明1の「心筋及び横隔膜下の臓器に集積した放射性医薬品の分布を示す断層画像データ」に相当する。 (イ)甲11発明の「体軸横断像の心筋部を矩形関心領域で囲」むことは、本件発明1の「断層画像データに対して、前記心筋に集積した放射性医薬品の分布である心筋分布を写した領域を関心領域として設定」することに相当する。 (ウ)甲11発明の「心筋部分を切り抜」くことは、本件発明1の「前記関心領域に基づいて、前記断層画像データから前記心筋分布を示す心筋断層画像データを抽出」することに相当する。 (エ)甲11発明の「Butterworth(order 8:0.25 cycles/pixel)」は、スムージング処理を行うフィルタであるから、甲11発明の「画像再構成にあたり前処理フィルタには、Butterworth(order 8:0.25 cycles/pixel)を」「使用」することと、本件発明1の「前記心筋断層画像データに対してスムージング処理を行う」こととは、「画像データに対してスムージング処理を行う」ことの点で共通する。 (オ)甲11発明の「99mTc心筋血流製剤を用いたSPECT撮像における肝の高集積が心筋に及ぼす影響の軽減を軽減する方法」は、「体軸横断像」から「心筋部分を切り抜いたものに対して断面変換を行う」ものであるから、本件発明1の「画像処理方法」に相当する。 イ そうすると、本件発明1と甲11発明とは、 「心筋及び横隔膜下の臓器に集積した放射性医薬品の分布を示す断層画像データに対して、前記心筋に集積した放射性医薬品の分布である心筋分布を写した領域を関心領域として設定し、 前記関心領域に基づいて、前記断層画像データから前記心筋分布を示す心筋断層画像データを抽出し、 画像データに対してスムージング処理を行う、画像処理方法。」 の発明である点で一致し、次の点で相違する。 (相違点5) スムージング処理を行う「画像データ」について、本件発明1においては、「前記関心領域に基づいて、前記断層画像データから前記心筋分布を示す心筋断層画像データを抽出し」た「前記心筋断層画像データ」であるのに対し、甲11発明においては、「画像再構成」の「前処理」であって、「心筋部を矩形関心領域で囲」む「体軸横断像」を生成する前のデータである点。 ウ 上記相違点5について検討する。 (ア)甲12ないし甲14の記載から、MRI構造画像を用いた脳体積解析において、セグメンテーションされた領域に対してスムージング処理を行うことが従来周知であるとしても、MRI構造画像を用いた解析でも脳体積解析でもない「99mTc心筋血流製剤を用いたSPECT撮像における肝の高集積が心筋に及ぼす影響の軽減を軽減する方法」である甲11発明において、「体軸横断像の心筋部を矩形関心領域で囲み」,「切り抜いた」「心筋部分」に対してスムージング処理を行うことを動機付ける事情があるとはいえない。 (イ)したがって、甲11ないし甲14に接した当業者といえども、甲11発明において、「体軸横断像の心筋部を矩形関心領域で囲み」,「切り抜いた」「心筋部分」に対してスムージング処理を行うことは、容易に想起し得ることであるとはいえない。 エ 以上のとおりであるから、本件発明1は、甲11発明及び甲12ないし甲14に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 (2)本件発明2ないし5について 本件発明2ないし5は、本件発明1の発明特定事項を全て含むものであるから、本件発明2ないし5は、上記(1)で検討した本件発明1と同じ理由により、甲11発明及び甲12ないし甲14に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 4 新規性・進歩性のまとめ 上記1ないし3で検討したとおり、特許異議申立理由1ないし4によっては、本件請求項1ないし5に係る特許を取り消すことはできない。 また、甲1ないし甲17を総合的にみても、本件発明の発明特定事項である「心筋に集積した放射性医薬品の分布である心筋分布を写した領域を」「設定し」た「関心領域に基づいて」「断層画像データから」「抽出し」た「心筋分布を示す心筋断層画像データ」「に対してスムージング処理を行う」ことを開示するものはなく、当該発明特定事項は、甲1ないし甲17から当業者が容易に想到し得ることとはいえない。 したがって、本件発明は、甲1ないし甲17に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 以上のとおりであるから、甲1ないし甲17により本件発明の新規性及び進歩性を否定することはできない。 5 特許異議申立理由5:サポート要件について (1)ア 本件特許の発明の詳細な説明(以下「本件説明」という。)には、発明が解決しようとする課題に関して以下の記載がある(下線は当審で付加した。)。 「【発明が解決しようとする課題】 【0007】 しかしながら、非特許文献1及び2に記載の方法では、心筋の核医学画像における放射性医薬品の横隔膜下臓器の集積による影響を必ずしも低減できるとは限らず、却って診断精度が低下する恐れがある。また、撮影を複数回行う必要があるため、検査時間が長くなり、被験者の負担が大きいという問題もある。 【0008】 本開示は、上記問題を鑑みてなされたものであり、被験者の負担を軽減しつつ診断精度を向上させることが可能なプログラム、画像処理装置及び画像処理方法を提供することを目的とする。」 イ 本件説明の上記記載によれば、本件発明が解決しようとする課題(以下「本件課題」という。)は、「放射性医薬品の横隔膜下臓器の集積による影響を低減することにより、撮影を複数回行う必要をなくし、被験者の負担を軽減しつつ診断精度を向上させることが可能な画像処理方法を提供すること」であると認められる。 (2)ア 本件説明には、本件課題を解決するための手段に関して、以下の記載がある。 「【課題を解決するための手段】 ・・・ 【0019】 本開示の一態様に従う画像処理方法は、心筋及び横隔膜下の臓器に集積した放射性医薬品の分布を示し、かつ、スムージング処理が行われる前の断層画像データにおける心臓の中心よりも上側に対応する領域の最大の画素値である基準画素値に基づいて、前記断層画像データに対して、前記心筋に集積した放射性医薬品の分布である心筋分布を写した領域を関心領域として設定し、前記関心領域に基づいて、前記断層画像データから前記心筋分布を示す心筋断層画像データを抽出し、前記心筋断層画像データに対してスムージング処理を行う。」 「【発明を実施するための形態】 ・・・ 【0045】 図3は、ステップS104の関心領域抽出処理の一例を説明するためのフローチャートである。 【0046】 関心領域抽出処理では、設定部3は、先ず、関心領域を精密に設定する精密設定を行うか否かを判断する(ステップS201)。例えば、精密設定を行うか否かが予め指定されていてもよいし、設定部3がこの段階でユーザに精密設定を行うか否かを問い合わせてもよい。 【0047】 精密設定を行わない場合、設定部3は、関心領域を簡易的に設定する簡易設定を行い(ステップS202)、処理を終了する。関心領域を簡易設定する方法としては、例えば、各断層画像データの中央を中心として所定の大きさの楕円体領域を関心領域として設定する方法、ユーザに手動で関心領域を設定させる方法などである。 【0048】 精密設定を行う場合、設定部3は、先ず、断層画像データにおける心臓の中心よりも上側に対応する上側領域の最大の画素値である基準画素値を求める(ステップS203)。上側領域は放射性医薬品の横隔膜下臓器の集積による影響を受けにくい領域であるため、基準画素値を、横隔膜下臓器の集積による影響を受けない最大の画素値とみなすことができる。上側領域は、本実施形態では、短軸断層画像データの上半分の領域であるとする。この場合、基準画素値をより適切に設定することができる。」 イ 本件説明の上記記載によれば、「断層画像データに対して、心筋に集積した放射性医薬品の分布である心筋分布を写した領域を関心領域として設定し、前記関心領域に基づいて、前記断層画像データから前記心筋分布を示す心筋断層画像データを抽出し、前記心筋断層画像データに対してスムージング処理を行う」ことにより、放射性医薬品の横隔膜下臓器の集積による影響を低減することができ、それにより診断精度を向上させることが可能であり、また、撮影を複数回行う必要がないので、被験者の負担を軽減することが可能となるものと認められる。 ウ 関心領域の設定について、本件説明には、(ア)精密設定と簡易設定とがあること、(イ)精密設定では、断層画像データにおける心臓の中心よりも上側に対応する上側領域の最大の画素値である基準画素値を用いること、(ウ)簡易設定には、各断層画像データの中央を中心として所定の大きさの楕円体領域を関心領域として設定する方法と、ユーザに手動で関心領域を設定させる方法とがあることが記載されている。 すなわち、本件説明には、関心領域の設定の仕方として、複数の方法が記載されている。 エ 精密設定を行った場合と簡易設定を行った場合とで、必ずしも関心領域の範囲が一致するとはいえない。そのため、関心領域の設定の仕方により、スムージング処理を行う領域が変化することから、関心領域の設定の仕方は、放射性医薬品の横隔膜下臓器の集積による影響を低減することができる程度、すなわち、本件発明の奏する作用効果の程度に影響するといえる。 そして、【発明が解決しようとする課題】の【0019】には、「本開示の一態様に従う画像処理方法」として精密設定に対応する記載がある。 オ しかしながら、簡易設定を行った場合に、放射性医薬品の横隔膜下臓器の集積による影響を低減することができないとはいえないから、放射性医薬品の横隔膜下臓器の集積による影響を低減することは、断層画像データから心筋に集積した放射性医薬品の分布である心筋分布を写した領域を示す心筋断層画像データを抽出し、前記心筋断層画像データに対してスムージング処理を行うことにより達成されるものと認められる。 そのため、作用効果の程度に影響があるとしても、関心領域の設定の仕方が精密設定に特定されていないことをもって、本件発明が、本件課題を解決するための手段が反映されていないものということはできない。 (3)したがって、本件特許の特許請求の範囲に、申立人の特許異議申立理由5に係る不備はない。 6 特許異議申立理由6:明確性について (1)上記5で説示したとおり、本件発明は、作用効果を奏することができないものとはいえない。 そして、本件発明は、その技術的意義を理解することができないものとはいえない。 (2)したがって、本件特許の特許請求の範囲に、申立人の特許異議申立理由6に係る不備はない。 第6 むすび 以上のとおり、本件請求項1ないし5に係る特許は、特許異議申立書に記載した特許異議申立理由及び証拠によっては取り消すことはできない。 また、他に本件請求項1ないし5に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。

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2023-700168

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