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特許異議申立

2023-700040

透明木材及びその調製のための方法

審判番号
2023-700040
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2019-553428
登録番号
7101699
請求日
2023年01月16日
審決日
2023年07月10日
公報発行日
2023年08月25日
結論
維持
当事者
  • 【権利者】セルテック アーベー
  • 【権利者代理人】村山 靖彦
  • 【権利者代理人】実広 信哉
  • 【権利者代理人】阿部 達彦
  • 【権利者代理人】堀江 健太郎
  • 【権利者代理人】楠田 大輔
  • 【異議申立人】田中 秀行
審判長/審判官
  • 審判長 居島 一仁
  • 審判官 前川 慎喜
  • 審判官 津熊 哲朗
分類
P1651.161-Y (B27K) / P1651.113-Y (B27K) / P1651.121-Y (B27K) / P1651.55 -Y (B27K) / P1651.537-Y (B27K)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第17条の2第3項、特許法第36条第6項第2号、特許法第29条の2、特許法第29条第1項第3号
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特許第7101699号発明「透明木材及びその調製のための方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第7101699号の請求項1ないし11に係る特許を維持する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第7101699号の請求項1ないし11に係る特許(以下、「本件特許」という。)についての出願は、平成30年3月29日(パリ条約による優先権主張外国庁受理平成29年3月29日、スウェーデン)を国際出願日とするものであり、令和4年7月7日にその特許権の設定登録がされ、同月15日に特許掲載公報が発行され、その後、令和5年1月16日に特許異議申立人田中秀行(以下「申立人」という。)より、請求項1ないし11に係る特許に対して、特許異議の申立てがされ、令和5年3月6日付けで手続補正書が提出されたものである(令和5年3月6日付け手続補正書により補正された特許異議申立書を、以下「申立書」という。)。 第2 本件特許発明 特許第7101699号の請求項1ないし11の特許に係る発明は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1ないし11に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、請求項1ないし11の記載は、下記のとおりのものである(以下、それぞれ「本件特許発明1」等といい、総称して「本件特許発明」という。)。 なお、申立人が申立書において付した分説を踏まえて、各構成に分説を付した(以下、「構成要件A」などという。)。 【請求項1】 A 木材基板と少なくとも1種のポリマーとを含む透明木材であって、 B 前記透明木材は、0.3mm~10mmの厚さ及び C 400~1000nmの波長の電磁スペクトル内の波長で少なくとも60%の光透過率を有し、 D 前記木材基板は、Klasonリグニンとして測定して15%~22.4%のリグニンを含む、透明木材。 【請求項2】 E 400~1000nmの波長の電磁スペクトル内の波長で少なくとも60%のヘーズを更に有する、請求項1に記載の透明木材。 【請求項3】 C-1 前記光透過率が、少なくとも70%である、請求項1又は2に記載の透明木材。 【請求項4】 F 前記ポリマーが、1.3~1.7の屈折率を有する、請求項1から3のいずれか一項に記載の透明木材。 【請求項5】 G 透明木材を調製するための方法であって、 H a)少なくとも1片の木材基板を準備する工程; I b)前記木材基板において発色団を不活性化するための漂白液を添加し、 J それにより15%~22.4%のリグニンを含む漂白木材基板を得る工程; K c)(b)において得られる前記漂白木材基板に、プレポリマー若しくはモノマー又はそれらの組合せを含む溶液を含浸させる工程、 L d)含浸した前記プレポリマー若しくはモノマー又はそれらの組合せを重合させて、 M 木材基板と少なくとも1種のポリマーとを含む透明木材を得る工程を含む、方法。 【請求項6】 N 工程(b)における使用のための過酸化物系が、過酸化水素を含む、請求項5に記載の方法。 【請求項7】 O 前記方法が、工程(b)において前記漂白液を添加する前に、例えばDTPAを添加することによって、工程(a)における前記1片の木材から金属イオンを除去する工程を更に含む、請求項5又は6に記載の方法。 【請求項8】 P 工程(b)における前記木材の漂白が、前記木材基板が少なくとも70%の白色度を有するまで行われる、請求項5から7のいずれか一項に記載の方法。 【請求項9】 Q 工程(b)における前記漂白液が、安定剤及びキレート剤を更に含む、請求項5から8のいずれか一項に記載の方法。 【請求項10】 R 前記方法が、工程(b)において前記漂白木材を得た後、溶媒交換の工程を更に含む、請求項5から9のいずれか一項に記載の方法。 【請求項11】 S 工程(d)において得られる前記ポリマーが、1.3~1.7の屈折率を有する、請求項5から10のいずれか一項に記載の方法。 第3 申立理由の概要 申立人は、次の証拠方法とともに、概ね以下のとおり主張している。 理由1:特許法第29条の2(拡大先願) (同法第113条第2号) 「・請求項1~11 甲第1号証に記載されている発明と同一である。」(申立書15頁「理由の要点」欄。以下、理由2ないし5についても同様。)。 理由2:特許法第29条第1項第3号(新規性)及び理由3:同法第29条第2項(進歩性) (同法第113条第2号) 「・請求項1~5、10及び11 甲第2号証に記載されている、あるいは少なくとも甲第2号証の記載に基づいて容易に想到することができる。 甲第3号証、甲第4号証及び甲第5号証の記載に基づいて容易に想到することができる。 ・請求項6~9 甲第2号証の記載に基づいて容易に想到することができる。 甲第3号証、甲第4号証及び甲第5号証の記載に基づいて容易に想到することができる。」 理由4:特許法第17条の2第3項(新規事項) (同法第113条第1号) 「出願経過中の手続補正書によって加入された(リグニンに関する)「15%~22.4%」の範囲は、新規事項の追加である。」(下線は申立人による。) 理由5: 特許法第36条第6項第2号(明確性) (同法第113条第4号) 「・請求項1 リグニンの割合が漂白木材基板の総重量に対する重量%であることが規定されていない。 光透過率の測定方法が規定されていない。 Klasonリグニンの測定方法が規定されていない。 ・請求項2 ヘーズの測定方法が規定されていない。 ・請求項3 光透過率の測定方法が規定されていない。 ・請求項5 リグニンの割合が漂白木材基板の総重量に対する重量%であることが規定されていない。 ・請求項6 請求項5に従属する請求項6では「過酸化物系が、過酸化水素を含む」と規定しているが、請求項5では、「過酸化物系」について規定していない。 ・請求項8 白色度の測定方法が規定されていない。 ・請求項1~11 請求項1~11では「透明」の記載がある(又は「透明」の意味が含まれる)が、当該「透明」の定義が規定されていないため、かかる「透明」が「少なくとも60%の光透過率」を有することを意味するのか、又は「少なくとも70%の光学的透過率」を有することを意味するのか不明確である。」 [証拠方法] (なお、甲第1の2号証は、「甲第1号証(国際公開第2017/098149 号)の翻訳文」(証拠説明書1頁、「3 証拠の説明」の「甲1の2」の「立証の趣旨」。)として提出されているものである。 甲第1の2号証、並びに、甲第2ないし8号証に添付の申立人による翻訳文を、以下「翻訳文」という。) 甲第1号証:国際公開第2017/098149号 (国際出願日平成28年12月7日(2016.12.7)、国際公開日平成29年6月15日(2017.6.15.)) 甲第1の2号証:特表2019-505420号公報 甲第2号証:Foster Luce, "DELIGNIFIED IMPREGNATED WOOD",Mechanical Engineering,Volume 66,No.10,October 1944,p.654-655,657(及び翻訳文) 甲第3号証:Tian Li,外9名,”Wood Composite as an Energy Efficient Building Material: Guided Sunlight Transmittance and Effective Thermal Insulation”,Advanced Energy Materials,2016,Volume 6,1601122,p.1-7(及び翻訳文) 甲第4号証:Mingwei Zhu,外8名,"Transparent and haze wood composites for highly efficient broadband light management in solar cells",Nano Energy,Volume 26,August 2016,p.332-339(及び翻訳文) 甲第5号証:Mingwei Zhu,外9名,"Highly Anisotropic, Highly Transparent Wood Composites",Advanced Materials,2016,Volume 28,p.5181-5187(及び翻訳文) 甲第6号証:Evandro Novaes,外4名,"Lignin and Biomass: A Negative Correlation for Wood Formation and Lignin Content in Trees",Plant Physiology,October 2010,Volume 154,p.555-561(及び翻訳文) 甲第7号証:Ramos, E.,外2名," Bleaching with Hydrogen Peroxide. A Review",Afinidad,Volume 65,No.537,September-October 2008,p.366-373(及び翻訳文) 甲第8号証:米国特許第5242464号明細書(及び翻訳文) 第4 当審の判断 1 各甲号証の記載事項 (1)甲第1号証 ア 甲第1号証の記載事項 甲第1号証に係る特許出願(以下、「先願」という。)は、本件特許に係る出願の優先日前に出願され、優先日後に出願公開がされたものである。また、先願の発明者が本件特許に係る出願の発明者と同一の者ではなく、かつ、本件特許に係る出願の時にその出願人とが同一の者でもない。 先願の願書に最初に添付された明細書又は図面である甲第1号証には、以下の記載がある。 (以下、翻訳文を援用する。また、当審で下線を付与した。以下同様。) (ア)「【特許請求の範囲】 【請求項1】 リグノセルロース系材料の構造体を処理するための処理方法であって、前記リグノセルロース系材料は好ましくは木材であり、以下の工程を含む前記方法: (1)少なくとも1種の有機流体によりリグノセルロース系材料の前記構造体をソーキングして、前記材料中に存在するリグニンの少なくとも40質量%かつ最大で85質量%を溶解させる少なくとも1つの工程; (2)部分的脱リグニン化構造体を生じさせるために、ソーキング工程(1)からもたらされた溶解リグニンを排出するように、工程(1)からもたらされた構造体を少なくとも1種の有機流体により洗浄する少なくとも1つの工程; (3)充填された部分的脱リグニン化構造体を生じさせるために、洗浄工程(2)からもたらされた部分的脱リグニン化構造体に少なくとも1種の充填化合物を充填する少なくとも1つの工程;及び (4)セルロースとリグニンのネットワークに組み込まれた変換された充填化合物の三次元ネットワークから形成された複合材料構造体を得るために、充填工程(3)からもたらされた充填された部分的脱リグニン化構造体を仕上げる少なくとも1つの工程。 ・・・ 【請求項3】 ソーキング工程(1)の有機流体が、以下から選択される、請求項1又は2に記載の処理方法: - 塩化ナトリウムと水酸化ナトリウムの混合物を含む水溶液、もしくは、モノエタノールアミンを含む水性液体、又は、KOHを含む塩基性溶液; - 酢酸と過酸化水素の混合物を含む水溶液、あるいは、HBr、H2SO4又はH3PO4を含む酸性溶液; - 場合によっては少なくとも1種のイオン性液体の存在下又は少なくとも1種のイオン性液体と少なくとも1種の補助溶媒の存在下で、少なくとも1種の酵素を含む流体; - 純粋なイオン性液体; - 溶液中に1又は2種以上の酵素を含むイオン性液体; - イオン性液体と混和性の少なくとも1種の溶媒との混合物でイオン性液体; - 溶液中に1又は2種以上の酵素を含む少なくとも1種の混和性溶媒との混合物でイオン性液体; - 相の一方が、純粋な又は少なくとも1種の混和性溶媒と混合されたイオン性液体によって構成され、他の相が、超臨界流体によって構成される二相系; - 相の一方が、純粋な又は少なくとも1種の混和性溶媒との混合物でイオン性液体によって構成され、他の相が超臨界流体によって構成される二相系であって、さらに、イオン性液体を含む相中に1又は2種以上の酵素を溶液で含む二相系; - 少なくとも1種の酵素を含む、純粋な化合物又は化合物の混合物の任意の溶液;及び それらの混合物。 ・・・ 【請求項7】 前記充填工程(3)の前記充填化合物が、前記充填工程(3)の圧力及び温度の条件下でモノマー溶液中に存在する重合性モノマーであり、前記モノマー溶液はさらに少なくとも1種の触媒を含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の処理方法。 ・・・ 【請求項12】 リグニン、ヘミセルロース、セルロース及び少なくとも1種の充填化合物を含む複合材料構造体(62)であって、前記構造体が、請求項1~11のいずれか一項に記載の処理方法の実施によって得られ、前記複合材料構造体がセルロース及びリグニンの構造(44’、45,47,46)に組み込まれた変換された充填化合物の三次元ネットワーク(59)を形成している、複合材料構造体(62)。」(原文66頁2行~69頁24行) (イ)「【0017】 従って、第1の態様によれば、本発明は、リグノセルロース系材料の構造体を処理するための処理方法に向けられており、リグノセルロース系材料は好ましくは木材であり、当該方法は以下の工程を含む: (1)少なくとも1種の有機流体によりリグノセルロース系材料の構造体をソーキングして、当該材料中に存在するリグニンの少なくとも40質量%かつ最大で85質量%を溶解させる少なくとも1つの工程; (2)部分的脱リグニン化構造体を生じさせるために、ソーキング工程(1)からもたらされた溶解リグニンを排出するように、工程(1)からもたらされた構造体を少なくとも1種の有機流体により洗浄する少なくとも1つの工程; (3)充填された部分的脱リグニン化構造体を生じさせるために、洗浄工程(2)からもたらされた部分的脱リグニン化構造体に少なくとも1種の充填化合物を充填する少なくとも1つの工程;及び (4)セルロースとリグニンのネットワークに組み込まれた変換された充填化合物の三次元ネットワークから形成された複合材料構造体を得るために、充填工程(3)からもたらされた充填された部分的脱リグニン化構造体を仕上げる少なくとも1つの工程。 【0018】 第2の態様によれば、本発明は、リグニン、ヘミセルロース、セルロース及び少なくとも1種の充填化合物を含む複合材料構造体であって、前記構造体が本発明の第1の態様の処理方法の実施によって得ることができるものであり、複合材料が、セルロースとリグニンの構造体中に組み込まれた変換された充填化合物の三次元ネットワークを形成している複合材料構造体にも向けられている。」(原文4頁25行~5頁20行) (ウ)「【0035】 「リグノセルロース系材料の構造体」とは、本発明によれば、リグノセルロース系材料から構成された、少なくとも約2cm3の特定の体積(三次元)を有する三次元の物体を意味する。リグノセルロース系材料の構造体は、天然のリグノセルロース系材料の構造を実質的に維持したマクロスコピックな物体である。従って、好ましくは、リグノセルロース系材料の構造体は、少なくとも5mmで最大40cmの少なくとも1つの寸法を含む。リグノセルロース系材料が木材である場合、構造体は、典型的には、木材の切断部分(横方向切断、長手方向切断、ラジアル切断)であり、例えば厚さ5~7mm又は15mmを有するものであることができる。・・・」(原文9頁31行~10頁7行) (エ)「【0047】 リグノセルロース系材料 特に好ましくは、リグノセルロース系材料は木材である。この木材は、本発明によれば、生木材、湿潤木材又は乾燥木材であることができる。例えば、この木材は、より長い又はより短い期間(数日から数年)の可能な貯蔵の後に使用される木材であることができる。この木材は、伐採後に変換されたもの、すなわち、切り分けられ、所定長さに切断され、かんながけされ、その樹皮を取り除かれ、その辺材を取り除かれ又はその心材を取り除かれたものであるか、あるいは、エンジニアード・ウッド(engineered wood)であることができる。本発明によれば、生木材又は湿潤木材を処理できることは、木材の乾燥工程前の無視できない節約が可能となるため、特に有利である。 ・・・ 【0049】 リグニン含有量が15~35質量%、好ましくは18~32質量%、さらにより好ましくは20~30質量%である実質的にすべての種類の木材(木質系とも呼ばれる)は、それらが被子植物の科に属するか又は裸子植物の科に属するかにかかわらず、それらがオークもしくはアッシュタイプの高価値木材であるか、又は、例えばファニシングもしくは建築分野(建設)で一般的に使用されている木材、例えばアッシュなどのファニシング木材や、パイン、ブナもしくはダグラスファーなどの建設用木材、又はポプラもしくはある種のバルサなどの、木質部材の旋削や模型作製に使用されるより柔軟な木材であるかにかかわらず、本発明に従う方法により処理できる。」(原文12頁20行~13頁12行) (オ)「【0055】 任意の前処理工程 本発明によれば、ソーキング工程(1)の前に、一般的に抽出成分を部分的に抽出するための前処理工程があってもよく、この前処理工程は、一般的に材料中に存在する抽出成分の一部を溶解させるために、リグノセルロース系材料の構造体を少なくとも1種の有機流体によりプレソーキングする少なくとも1つのサブ工程と、それに続く、プレソーキングのサブ工程からもたらされた溶解した化合物を排出するように、プレソーキングのサブ工程からもたらされた構造体を少なくとも1種の有機流体によりプレ洗浄する少なくとも1つのサブ工程とを含む。前処理工程から生じるリグノセルロース系材料の構造体は、本発明の第1の態様に従う処理工程によって処理される構造体である。」(原文14頁21~29行) (カ)「【0060】 上記のプレソーキングサブ工程は、一般的に、リグノセルロース系材料の構造体からの抽出成分の所望の部分抽出を可能にする条件下で、下記のソーキング工程(1)と同様の操作条件で実施される。」(原文15頁28~31行) (キ)「【0068】 プレ洗浄サブ工程は、後述する洗浄工程(2)と同様の条件で実施することができる。従って、プレ洗浄サブ工程の流体は、後述する洗浄工程(2)の間に使用される任意の有機流体であることができる。」(原文17頁24~25行) (ク)「【0090】 水に加えて、洗浄工程(2)の有機流体は、化学的に溶媒として従来から使用されている任意の液体を含むことができる。好ましい共溶媒及び純粋な溶媒は、一般的に、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸メチル、アセト酢酸エチル、アセトン、酢酸、クエン酸、ギ酸、硝酸、シュウ酸、メタン酸、無水酢酸、ブタノール、ブタノン、シクロヘキサン、シクロペンタン、ジクロロエタン、ジクロロメタン、ジオキサン、水、ターペンタイン、エタノール、グリコールエーテル、石油エーテル、ジエチルエーテル、エチレングリコール、ヘプタン、イソプロパノール、メタノール、モノエタノールアミン、ペンタン、プロパノール、プロポキシプロパン、ピリジン、トルエン、キシレン;及びそれらの混合物から成る群から選択される。非水性溶媒は、好ましくは、アセトン、エタノール、ヘキサン、イソプロパノール、ヘプタン及びそれらの混合物からなる群から選択される。 【0091】 「酸」とは、液体状態又は溶解した固体塩の形態で、プロトンを放出することができる、単独の又は混合物中の、任意の化合物、例えば鉱酸又は有機酸などを意味する。従って、カルボン酸、カルボン酸から誘導された塩及び酸無水物、例えば非フェノール系有機酸、例えば、酢酸、アスコルビン酸、安息香酸、ホウ酸、炭酸、クエン酸、シアン酸、ジクロロ酢酸、ギ酸、アジ化水素酸、ビトリオール、乳酸、硝酸、シュウ酸、過塩素酸、プロピオン酸、シアン化水素;フェノール系有機酸:安息香酸、カフェイン酸、クロロゲン酸、フェルラ酸、没食子酸、ゲンチジン酸、パラオキシ安息香酸、パラクマリン酸、プロトカテキン酸、バニリン酸、サリチル酸、シナピン酸、シリング酸、フェノール酸、レゾルシノール;鉱酸:塩化水素酸、クロロ酢酸、臭化水素酸、ブロモ酢酸、塩化水素酸、フッ化水素酸、次亜臭素酸、次亜塩素酸、次亜ヨウ素酸、ヨウ素酸、ヨード酢酸、リン酸、亜リン酸、セレン酸、亜硫酸、硫酸、テルル酸、トリブロモ酢酸、トリクロロ酢酸、トリフルオロ酢酸、硝酸など;並びにこれらの混合物が挙げられる。 【0092】 「塩基」とは、液体状態で又は溶液中に置かれた無機塩の形態で、プロトンを受け入れることができる、単独の又は混合物中の任意の化合物を意味する。従って、アミン、アミド、アルカリ塩、例えば、酢酸ナトリウム、ナトリウムアミド、3-アミノ-3-メチルペンタン、アンモニア、アニリン、アゼチジン、ブロモピリジン、ブチルリチウム、カダベリン、2-クロロフェノール、3-クロロフェノール、4-クロロフェノール、コリン、シクロヘキシルアミン、リチウムジエチルアミド、ジエチルアミン、ジイソプロピルアミン、ジメチルアミン、2,4-ジメチルイミダゾール、1,2-ジメチルアミノエタン、1,2-ジメチルピロリジン、エチルアミン、エタンジアミン、エタノールアミン、ナトリウムエタノエート、カリウムエタノエート、ヘキサメチレンジアミン、ヘキシルアミン、ヒドラジン、水素化ナトリウム、水酸化バリウム、水酸化カルシウム、水酸化鉄、水酸化リチウム、水酸化マグネシウム、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、ヒドロキシルアミン、メチルアミン、2-メチル-2-ブタンアミン、3-メチル-1-ブタンアミン、メチルグリシン、1-メチルピペリジン、モノエタノールアミン、n-ブチルアミン、ニトロフェノール、N-メチルピロリジン、N-メチルピリジンアミン、3-ペンタナミン、ペンチルアミン、ピペリジン、プロピルアミン、1,3-プロパンジアミン、4-ピリジンアミン、ピリジン、ピロリジン、sec-ブチルアミン及びtert-ブチルアミン、トリエチルアミンなど;並びにこれらの混合物が挙げられる。 【0093】 「酸化性化合物(oxidizing compound)」とは、酸化作用を有する、すなわち1つ以上の電子を捕捉することができる、単独の又は混合物中の化合物を意味する。この酸化性化合物は、塩素化合物の誘導体、例えば、亜塩素酸ナトリウム、塩化カルシウム、塩化ナトリウム、塩素分子、漂白剤、次亜塩素酸カルシウム、次亜塩素酸ナトリウム、過酸化水素など、任意の過酸化化合物、例えば過酸化水素、あるいは、例えば、過酸化水素のような過酸化物と酸との反応から生じるペルオキシ酸のような別の分子に対する過酸化物化合物の先の作用から誘導された任意の化合物であることができる。」(原文21頁17行~23頁13行) (ケ)「【0096】 好ましくは、ソーキング工程(1)の有機流体は、 - 酢酸溶液、又は/及び、酸化剤、例えば過酸化水素などの混合物を含む酸化性酸性水溶液、又は、臭化水素、硫酸又はリン酸を含む酸性水溶液; - 塩基性溶液、例えば水酸化ナトリウム、モノエタノールアミンを含む水性液体、又は、水酸化カリウムなどと、酸化剤、例えば亜塩素酸ナトリウムなどとの混合物を含む酸化性水溶液、 から選択することができる。 有機流体は、イオン性液体及び/又は酵素、細菌、微生物又は菌類のような「生物有機体(biological organism)」であってもよい。」(原文24頁10~19行) (コ)「【0112】 ソーキング工程(1)の有機流体は、 - 塩化ナトリウムと水酸化ナトリウムの混合物を含む水溶液、もしくは、モノエタノールアミンを含む水性液体、又は、KOHを含む塩基性溶液(アルカリ性脱リグニン化用); - 酢酸と過酸化水素の混合物を含む水溶液、あるいは、HBr、H2SO4又はH3PO4を含む酸性溶液(酸性脱リグニン化用); - 場合によっては少なくとも1種のイオン性液体の存在下又は少なくとも1種のイオン性液体と少なくとも1種の補助溶媒の存在下で、少なくとも1種の酵素を含む流体(酵素的脱リグニン化用); - 植物材料から製造された純粋なイオン性液体(純粋なイオン性液体による脱リグニン化用); - 溶液中に1又は2種以上の酵素を含むイオン性液体(酵素作用によって補助/補完されるイオン性液体による脱リグニン化用); - イオン性液体と混和性の例えばエタノールなどの少なくとも1種の溶媒との混合物でイオン性液体(イオン性液体によって補助されるオルガノソルブ型の脱リグニン化用;この場合、イオン性液体はこの混合物の他の1種又は複数の混和性溶媒に対して少量であることができる); - 溶液中に1又は2種以上の酵素を含む少なくとも1種の混和性溶媒との混合物でイオン性液体; - 相の一方が、純粋な又は例えばエタノールなどの少なくとも1種の混和性溶媒と混合されたイオン性液体によって構成され、他の相が、例えばCO2などの超臨界流体によって構成される二相系(混合物の又は純粋なイオン性液体によって補助される超臨界流体による脱リグニン化); - 相の一方が、純粋な又は少なくとも1種の混和性溶媒との混合物でイオン性液体によって構成され、他の相が超臨界流体によって構成される二相系であって、さらに、イオン性液体を含む相中に1又は2種以上の酵素を溶液で含む二相系(混合物の又は純粋なイオン性液体によって補助され、酵素作用により補助/補完される、超臨界流体による脱リグニン化用); - 少なくとも1種の酵素を含む、純粋な化合物又は化合物の混合物の任意の溶液;及び それらの混合物; から選択してもよい。」(原文27頁20行~28頁23行) (サ)「【0130】 充填工程(3) 充填工程(3)は、充填化合物による部分的脱リグニン化構造体の充填(すなわち、部分的脱リグニン化構造体への浸透作用)を行う工程である。この充填工程は1回以上実施することができる。充填化合物は、ほとんどの場合、化学的又は物理化学的な固定によって構造体中に依然として存在するリグノセルロース系材料の繊維に結合する特性を有していなければならない。 【0131】 当業者に知られているように、この充填のために、様々な技術が可能である。一般的に、これらの技術は、真空下の反応器もしくはオートクレーブもしくはオーブン、又は当業者がこの工程を実施できる任意の他の装置で、真空下又は加圧下で、含浸による、注入(RTM型又はRTM Light型の真空による、RTMは「樹脂トランスファー成(Resin Transfer Molding)」を意味する)による、インフュージョン(RIFT、「フレキシブルツーリング下の樹脂インフュージョン」を意味する)による、連続型のものである(一連の繰り返しの数回の連続含浸の間に1工程毎に流体を別の流体に交換、充填化合物中の各流体の濃度は漸増、例えば指数関数的に増加)。 【0132】 充填条件の設定は、当業者の能力の範囲内である。 【0133】 オートクレーブを使用する本発明に従う好ましい場合においては、真空下の段階と加圧下の段階を交互に繰り返してリグノセルロース系材料を適切に含浸させることが推奨される。実際に、このように交互に行うことによって、その結果生じる圧力差のために、充填化合物を材料に浸透させることが有利になる。 【0134】 例示的な実施形態において、充填工程(3)は、充填化合物を含む溶液による部分的脱リグニン化構造体の加圧下での含浸工程を含む。この圧力は、一般的に0.1~2.5MPaである。 【0135】 充填工程(3)は、真空下又は窒素分子の存在下、酸素を含まない雰囲気下で、数分~24時間の時間で実施することもでき、例えば、及び、好ましくは、500mLの体積の充填化合物当たり20~24であり、この体積は、リグノセルロース系材料の腔中に存在する酸素の除去と、真空及び/又は加熱下に置く場合の充填化合物の可能な処方とを考慮に入れて、構造体の充填を確実にするように適合される。 【0136】 本発明に従う処理方法の充填工程(3)は、実質的に2つの実施形態に従って実施することができる。これらの2つの実施形態は、使用されるリグノセルロース系材料に従って適合させることができる。 第1の実施形態では、充填化合物は、配合されているか否かにかかわらず、ポリマー又はコポリマーである。 ・・・ 【0139】 好ましくは、ポリマー又はコポリマーは、ポリアクリレート、ポリアミド(例えばDuPont製のNylon(登録商標)など)、ポリエステル、フルオロポリマー(DuPont製のTeflon(登録商標)など)、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリスチレン、ポリ(フェニレンオキシド)、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリカーボネート、ポリ乳酸、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルイミド、ポリアリールエーテルケトン;並びに、上に列挙されていない、以下で列挙する第2の実施態様のモノマーから得られるポリマー及びコポリマーから成る群から選択される。 ・・・ 【0141】 第2の実施形態では、充填工程(3)の充填化合物は、充填工程(3)の圧力及び温度の条件下で、モノマー溶液又はモノマー配合物中に存在する重合性モノマーである。好ましくは、充填工程(3)の充填化合物は、充填工程(3)の圧力及び温度条件下でモノマー溶液中に存在する重合性モノマーであり、モノマー溶液は、さらに、少なくとも1種の触媒を含む。かかる重合性モノマーは、一般的に、熱可塑性(ポリマー)又は熱硬化性(ポリマー)を得ることをもたらす。」(原文32頁29行~35頁10行) (シ)「【0155】 モノマーは、好ましくは、石油から製造された(いわゆる石油由来の)モノマーから選択され、かかるモノマーには、メタクリレート、例えばメタクリル酸エチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸ヘキシル、メタクリル酸オクチル、メタクリル酸オクチル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸2-エチルヘキシル、シクロヘキシルメタクリレートなど;アクリレート、例えばエチルアクリレートなど;フタレート、例えばアルキルが例えば1~6個の炭素原子を含むジアルキルフタレートなど;ニトリル、例えばアクリロニトリルなど;スチレン及びスチレン誘導体、例えばα-メチルスチレン、クロロスチレン、スチレン、t-ブチルスチレン、ビニルトルエンなど;ビニル化合物、例えば酢酸ビニル、塩化ビニル、プロピオン酸ビニルなど;カルボキシル基を含有する不飽和化合物、例えばアクリル酸、フマル酸、マレイン酸、メタクリル酸など;エチレン化合物、例えばエチレングリコール、エチレンオキシドなど;ブタジエン;イソプレン;窒素原子を含有する不飽和モノマー、例えばアクリルアミド、アクリロニトリル、N-ブトキシジメチルアクリルアミド、ビニルピリジンなど;並びにそれらの混合物がある。これらのモノマーは、一般的に、熱可塑性ポリマーの形成をもたらす。 【0156】 また、例えば石油由来の化合物などの熱硬化性ポリマーの形成をもたらすモノマーも挙げることができ、かかるモノマーには、熱硬化性樹脂の前駆体、例えばエポキシ樹脂の前駆体など、例えばビスフェノールのプレポリマーエポキシド誘導体など、例えばビスフェノールAのジグリシジルエーテル(DGEBA)など、又は任意のビスフェノールエポキシド、及びアリルグリシジルエーテルのグリシジルメタクリレート、オキセタン樹脂の前駆体、フェノール樹脂の前駆体、尿素樹脂の前駆体、アクリル樹脂の前駆体など;並びにこれらの混合物がある。この場合、充填化合物中に少なくとも1種の硬化剤が一般的に存在する。硬化剤は、当業者に知られている熱硬化性樹脂の任意の硬化剤、例えばイソホロンジアミンのような脂肪族アミン、又は環状アミン、カルボン酸、酸無水物、又はイオン性液体であることができる。」(原文38頁8~39頁9行) (ス)「【0169】 一実施形態によれば、モノマーは、重合したら、実質的にセルロースと同じ光学密度を有するようなものである。このようにして得られたポリマーの屈折率は、典型的には、1.35~1.70、より具体的には1.44~1.65、さらにより具体的には1.52~1.60の範囲内に含まれ、しばしば、およそ1.47、1.53、1.56又は1.59の値をとり、これらの値周りの可能な変動は10%程度である。異なる実施形態では、ポリマーの屈折率は、典型的には1.40~1.60の範囲内、例えば約1.47であることができる。」(原文42頁8~15行) (セ)「【0172】 従って、この仕上げ工程(4)は、充填化合物が、しばしば充填溶液又は配合物の形態で存在する少なくとも1種のモノマーを含む場合、好ましくは重合及び/又は架橋によって、充填化合物を固定する工程である。この重合及び/又は架橋は、特に、リグノセルロース系材料の繊維が、仕上げ工程(4)の完了後に、化学的、物理的又は物理化学的な定着(anchorage)によって、変換された充填化合物に結合されるように行われる。」(原文42頁29行~43頁4行) (ソ)「【0185】 好ましい実施形態によれば、複合材料構造体は、天然のリグノセルロース系材料の性質に従って、実質的に均一な又は周期的な屈折率を、大部分で、又はその全体で有する。一実施形態によれば、リグノセルロース系材料の複合構造体は実質的に透明である。しかし、それは不透明であってもよい。好ましくは、リグノセルロース系材料の複合構造体は、実質的に半透明である。 【0186】 「透明」とは、入射光の少なくとも90%が透過することを可能にする視覚的に均一な物体の能力を意味する。この測定は、周囲照明の値(ルクス(lux)単位)と構造体内を通過後に得られる透過光束の値(ルクス単位)とを比較することによって、考慮した周囲照明について直接光の透過に対して行われる。 【0187】 「半透明」とは、入射光の5%~90%を通過させる物体の能力を意味する。半透明体が均一に見えない可能性がある。本発明の文脈において、リグノセルロース系材料の一部の脱リグニン化の程度が低い領域は、天然のリグノセルロース系材料の構造によって入射光線を吸収することができ、一方、最も脱リグニン化された領域は、より明るく見える傾向があり、脱リグニン化の程度がより低い領域よりも容易に光が通過させる傾向がある。 【0188】 「不透明」とは、構造体内の光の吸収又は拡散によって光線を通過させない物体の能力を意味する。天然のリグノセルロース系材料の構造体は、一般的に、その通常使用されるサイズで不透明材料である。この構造体の厚さが500μm未満まで小さくなると、天然のリグノセルロース系材料はその脆弱な柔軟なシート状であり、処理されていないにもかかわらず入射放射線を通過させて、半透明であることがあるが、最終的な複合材料の他の特性を有しない。」(原文46頁5行~47頁2行) (タ)「【0223】 実施例1:モミの構造体を処理するための本発明に従う方法 寸法0.5cm×4cm×8.5cm(b×l×h)のモミの平行六面体の試料を本発明に従う処理方法にかけた。これにより、実験室実験の文脈において、寸法0.45cm×3.6cm×8.2cm(b×l×h)の複合試料を得ることを可能にした、 使用したチャンバは真空オーブン(25)であった。 【0224】 こうして、各サブ工程が、真空下で、70℃の一定温度で、6%塩化ナトリウムと0.05%水酸化ナトリウムの溶液に試料を5時間浸漬することからなる3つの同じ連続するサブ工程による第1のソーキング工程(1)の間に試料を処理した。 【0225】 次に、各サブ工程が、前の工程又はサブ工程からもたらされた試料を、真空下で、60℃の一定温度で、99%エタノールの溶液中に4時間浸漬することからなる4つの同じ連続したサブ工程と、それに続く、各サブ工程が、前のサブ工程からもたらされた試料を、真空下で、50℃の一定温度で、99%ヘキサンの溶液中に3時間浸漬することからなる3つの第2の同じ連続したサブ工程とによる、前のソーキング工程(1)からもたらされた試料の浸漬によって、試料の洗浄工程(2)を実施した。 ・・・ 【0228】 充填工程(3)は、真空下での含浸によって、第2の実施形態に従って実施した。そのため、珪藻土から製造された濾過パウダーを用いてブチルメタクリレート及びスチレンを精製した後、1部のブチルメタクリレート及び3部のスチレンからなる「一次」モノマー溶液を調製した。この一次モノマー溶液は、第1シリーズの場合、50%エタノールに対して50体積%の比で混合した。一次モノマー溶液は、第2シリーズの場合、25%エタノールに対して75%の比で混合した。一次モノマー溶液(100%で)は、第3シリーズの溶液を構成した。0.05部の触媒(アゾイソブチロニトリル)に添加された一次モノマー溶液(95%)は第4シリーズの溶液を構成した。 【0229】 そのため、充填工程(3)は、4つのシリーズから構成され、各シリーズは、4つの連続するサブ工程を含み、第4シリーズの溶液(モノマー溶液+触媒)(24a)、エタノール(24b)、ヘキサン(24c)及びモノマー溶液(24d)から調製された以下の溶液によって、構造体(10)を操作せずに、空気と接触させずに、連続的に行った。この工程(3)の処理は、真空下及び周囲温度で、1シリーズ当たり24時間の時間で行った。 ・・・ 【0231】 その後の仕上げ工程(4)は、充填工程(3)からもたらされた試料を充填しているブチルメタクリレート及びスチレンモノマーを重合する工程であった。スチレン-ブチルメタクリレートコポリマーの形成をもたらすこの重合は、500mLのモノマー溶液(11)に対して20~24時間真空下で実施し、最初の2時間は80℃の温度であり、当該工程のその後の部分では50℃であった。 ・・・ 【0233】 ・・・このようにして得られた複合体の試料は半透明であった。 ・・・ 【0235】 以下の実施例2で説明するように、破壊的機械的試験及び非破壊的光学試験で評価したいくつかの複合モミ試料を得るために、実施例1を数回実施した。 【0236】 実施例2:本発明に従う処理プロセスからもたらされ、実施例1で得られた複合モミ構造体の評価 実施例1で得られた複合モミ構造体を形成するモミ試料を、その機械的強度の特性だけでなくその光学特性についても評価した。」(原文57頁4行~59頁25行) (チ)「【0254】 図15、図16及び図23に示す光学テスト 実施例1で得られた複合モミ構造体は半透明であった。・・・」(原文62頁18~19行) イ 上記アより、甲第1号証には、次の2つの発明(以下、それぞれ「甲1方法発明」及び「甲1発明」という。また、「甲1方法発明」及び/または「甲1発明」を「先願発明」ということがある。)が記載されていると認める。(便宜のために、翻訳文の段落番号を付した。) [甲1方法発明] 「リグノセルロース系材料の構造体を処理するための処理方法であって、リグノセルロース系材料は木材であり、(【0017】) この木材は、伐採後に変換されたもの、すなわち、切り分けられ、所定長さに切断され、かんながけされ、その樹皮を取り除かれ、その辺材を取り除かれ又はその心材を取り除かれたものであり、(【0047】) リグニン含有量が15~35質量%、好ましくは18~32質量%、さらにより好ましくは20~30質量%である実質的にすべての種類の木材であり、(【0049】 当該方法は以下の工程を含み、 (1)少なくとも1種の有機流体によりリグノセルロース系材料の構造体をソーキングして、当該材料中に存在するリグニンの少なくとも40質量%かつ最大で85質量%を溶解させる少なくとも1つの工程; (2)部分的脱リグニン化構造体を生じさせるために、ソーキング工程(1)からもたらされた溶解リグニンを排出するように、工程(1)からもたらされた構造体を少なくとも1種の有機流体により洗浄する少なくとも1つの工程; (3)充填された部分的脱リグニン化構造体を生じさせるために、洗浄工程(2)からもたらされた部分的脱リグニン化構造体に少なくとも1種の充填化合物を充填する少なくとも1つの工程;及び (4)セルロースとリグニンのネットワークに組み込まれた変換された充填化合物の三次元ネットワークから形成された複合材料構造体を得るために、充填工程(3)からもたらされた充填された部分的脱リグニン化構造体を仕上げる少なくとも1つの工程;(【0017】) 当該処理方法の実施によって、リグニン、ヘミセルロース、セルロース及び少なくとも1種の充填化合物を含む複合材料構造体を得ることができるものであり、(【0018】) 構造体は、例えば厚さ5~7mm又は15mmを有するものであることができ、(【0035】) ソーキング工程(1)の有機流体は、 酢酸と過酸化水素の混合物を含む水溶液、 を選択してよく、(【0112】) 充填工程(3)の充填のために、様々な技術が可能であり、一般的に、これらの技術は、含浸により、(【0130】、【0131】) 充填工程(3)の充填化合物は、充填工程(3)の圧力及び温度の条件下で、モノマー溶液又はモノマー配合物中に存在する重合性モノマーであり、(【0141】) モノマーは、重合したら、実質的にセルロースと同じ光学密度を有するようなものであり、(【0169】) 一実施形態によれば、リグノセルロース系材料の複合構造体は実質的に透明であり、しかし、それは不透明であってもよく、好ましくは、リグノセルロース系材料の複合構造体は、実質的に半透明であり、(【0185】) 「透明」とは、入射光の少なくとも90%が透過することを可能にする視覚的に均一な物体の能力を意味し、(【0186】) 「半透明」とは、入射光の5%~90%を通過させる物体の能力を意味し、(【0187】) 「不透明」とは、構造体内の光の吸収又は拡散によって光線を通過させない物体の能力を意味し、(【0188】) リグノセルロース系材料の一部の脱リグニン化の程度が低い領域は、天然のリグノセルロース系材料の構造によって入射光線を吸収することができ、一方、最も脱リグニン化された領域は、より明るく見える傾向があり、脱リグニン化の程度がより低い領域よりも容易に光が通過させる傾向があり、(【187】) 一例として、寸法0.5cm×4cm×8.5cm(b×l×h)のモミの平行六面体の試料を処理方法にかけ、これにより、寸法0.45cm×3.6cm×8.2cm(b×l×h)の複合試料を得、(【0223】) 得られた複合モミ構造体は半透明である、【0254】 方法。」 [甲1発明] 甲1方法発明により木材を処理して得られる、複合材料構造体。 (2)甲第2号証 ア 甲第2号証の記載事項 本件特許に係る出願の優先日前に発行された甲第2号証には、以下の記載がある。 (ア)「過去数年間における多数の研究の対象とされてきたのが自然木の改良である。 ほとんどの場合、これらの「含浸圧縮木材」は、安定化材料を含浸させた単板又は樹脂で接着してから高密度に圧縮した単板でできている。本稿では、既存の技術に関する改良点の候補として、木材の構造を破壊することなくリグニンを変性させた後に他の不安定な成分とともにそれを木材から除去するために、製紙業者が行っているように単板層を含浸又は接着する前に、木材に熱と圧力をかけて化学的に処理する、1つの予備的段階を紹介する。我々はこの処理を「脱リグニン」と呼ぶが、他の副次的な反応も含まれているに違いない。この考察を解明するためには、木材化学について相当数の研究が行われて大きく進歩してきたにもかかわらず、木材成分又はさまざまなパルプ化反応の正確な化学作用に関しては、専門家の間でいまだに完全に一致していないという点に留意しなければならない。したがって、最終的な証明は後日とし、本論文はより一般に受け入れられている理論に基づく必要がある。」(原文654頁左欄1~20行) (イ)「脱リグニンプロセスと含浸プロセス 本稿の最終製品は、脱リグニン木材と、天然樹脂や合成樹脂などのさまざまな含浸材料との組み合わせなので、脱リグニンのプロセスを論じるためには含浸のプロセスについて補足する必要がある。これら2つのプロセスにより、多くの点で大きく異なっている木材である材料はより均質になり、寸法安定性がより改善され、より信頼性のある、製造が容易にできる材料が技術者に提供される。これらの材料は、低比重で並外れた重量-強度関係により、偉大な航空機産業の技術者は言うまでもなく、他の重量を重視する分野にとって有用なものになり得る。最初に認めておかなければならないのは、特許係属中のこの開発は現在わずか2年であり、いまだに研究室における好奇心の段階にすぎないということである。このプロセスの可能性を完全に探究し、適切な管理を確立するために、なすべきことがいまだに山積みとなっている。」(原文654頁左欄21~36行) (ウ)「基礎的な木材化学から、木材物質が約50パーセントの純セルロース、25パーセントのヘミセルロース、及び2.5パーセントのリグニン、その他の少量の物質で構成されていることが分かる。セルロースは細胞壁の基本的な繊維を形成し、ヘミセルロースは「中間産物」に分類され、リグニンは垂直な毛髪状の細胞を一緒に保持する接合剤又は結合剤と考えられていることから、大部分は細胞間物質である。」(原文654頁左欄37~43行) (但し、上記「及び2.5パーセントのリグニン、」という翻訳文に対応する原文は、"and 25 per cent lignin,"である。) (エ)「製紙の化学パルプ化プロセスを行う中で、木材はチップに切断され、次に高温高圧下の「液」の中で「蒸解」される。いくつかのシステムが使用されているが、それぞれ液の調製に異なる化学物質又は化学物質の組み合わせを用いており、それぞれ温度と運転時間が異なっている。その目的は常に同じで、安定で、強度のある繊維状物質であるセルロース以外の木材成分を除去することである。ヘミセルロースは本質的に不安定で弱い材料なので望ましくない。リグニンは、最終的な紙製品を弱くするので、少量はともかくとして必要でなく、毛髪状の木の細胞を容易に分離して洗浄できるように、除去するか脆弱化する必要があることは言うまでもない。したがって、製紙業者は木材物質のうち、質が悪く不安定な部分を除去するが、そのように行う中で、強度を付与している自然の繊維の配向が完全に破壊される。その結果、抄紙機上で繊維の配向を再構成し、多少配向がランダムで、自然の結合が崩壊した、長尺シートを抄かなければならない。」(原文654頁左欄44~右欄9行) (オ)「脱リグニンに製紙技術を取り入れる 要求される最終製品を考えるとこの製法は理にかなっているが、木材の構造を無傷のまま残せるような蒸解プロセスの管理について検討する。リグニンを変性させて事実上除去し、ヘミセルロースを溶解する。これは、本稿の新しい木材製品の製造における、最初の不可欠なステップである。化学蒸解プロセス変更することで木材を崩壊させずに脱リグニンが可能となり、最終製品の強度を最大化することのできるシステムが一般に選択される。紙袋、包装材料、紙テープ、及び段ボール紙又は段ボール板製の容器によく見られる高強度紙の製造に用いられるプロセスである、蒸解のサルファイトシステム又は「クラフト」システムは、非常に満足できるシステムであることが分かっている。ある特定の木材に対してMitscherlichのプロセス又は他のプロセスにより強度値がさらにより高くなる可能性があり、装飾的な価値を目的とした場合には漂白剤を追加して最終色調をより明るくできる一部の蒸解システムが好都合である可能性がある。」(原文654頁右欄10~26行) (カ)「蒸解後、単板を水で慎重に洗浄する。一定のパーセンテージのリグニンを残したまま蒸解を抑制すると生成される製品の強度が高まることが分かっているので、機械的な価値のみが要求される場合には木材から脱リグニンする必要はない。紙の製造と含浸用の単板の製造を比較して、表1に必要な操作を列挙し、単板プロセスの単純さを示している。」(原文654頁右欄27~34行) (但し、上記「木材から脱リグニンする必要はない」という翻訳文に対応する原文は、"it is unnecessary to delignify the wood completely," (「木材から完全に脱リグニンする必要はない」)である。) (キ)「表1 含浸前の操作 紙 木材 丸太の破砕 単板の切り出し 蒸解 蒸解 洗浄 洗浄 ふるい分け 乾燥(必ずしも必要でない) 叩解(水和) 製紙」(原文654頁右欄35~42行) (ク)「何らかの含浸を行う前の脱リグニン木材単板は、元の木材からかなり変化した特性を示す。リグニンの変換及び/又は除去により、木材ははるかに脆くなり、薄板は非常に柔軟になる。言うまでもなく、これらの木材はより柔軟であり、より大きく膨潤しながら多量の水をすばやく吸収する。曲げ強さは大幅に低下しているが、引張強さと粗度係数は非常に大きく増加している。理由を評価すると、これらの結果は理にかなっているように思われる。細胞間にある接着性のリグニン接着剤を除去すると、必然的に構造の剛性は低下する。表面を覆う物質が除去された後の細長い細胞の柔軟性は、他のセルロース系繊維よりもはるかに高い。」(原文654頁右欄43~54行) (ケ)「より高い引張値は2つの現象によって説明できる。すなわち、(1)残存物質は、最も高い引張強さを有する天然木材中の1つの物質である繊維状セルロースをはるかにより高いパーセンテージで含有していること、(2)サルファイトプロセスなどのアルカリ蒸解が用いられ、単板蒸解システムのより低い温度を考慮すると、セルロース繊維の引張強さに非常に大きな影響を及ぼすことが知られている穏やかなマーセライズ効果が生じる可能性があるという非常に良好な可能性がある。」(原文654頁右欄55行~655頁左欄7行) (コ)「使用可能な含浸材料 脱リグニン木材はプロセスの第2のステップ、すなわち単板の含浸を行える状態になっている。木材構造に加えることができる材料は、天然材料及び合成材料の両方から幅広く選択する。この時点で、不安定な物質を安定な物質で、すなわち弱い物質を強い物質で置き換えることができる。含浸剤は、木材内部で重合するモノマーであってもよいし、いくつかの樹脂状物質の溶液であってもよい。変性させたより安定なリグニンであってもよい。最も自然な選択は、フェノール-ホルムアルデヒド樹脂などの、天然木材に対する価値が証明されている極性材料である。以下の所見は、含浸を目的としたさまざまな形態で入手可能な、この種の使用に限定される。」(原文655頁左欄8~20行) (サ)「天然木材に使用する含浸プロセスと、脱リグニン木材に使用する含浸プロセスとの間には、相当な違いが存在する。後者への化学蒸解の作用によって、構造が広げられ、透過性が極めて高くなっている。何らかの事前蒸煮、予洗、浸漬、又は減圧及び加圧ステップの代わりに、必要なのは脱リグニン単板を樹脂浴に数分間浸漬することだけであることが分かっている。浸漬時間は単板の厚さ、木材の種類、溶液の濃度と粘度、望ましい最終樹脂含有率、及びその他の因子によって変化する。例えば、1/32インチの蒸解済みカバ単板の場合、固形分50パーセントの水溶性フェノール浴に15分間浸漬すると最終乾燥重量で樹脂固形分30パーセントとなり、30分間浸漬すると樹脂含有率は45パーセントになった。」(原文655頁左欄21~35行) (シ)「一般に、未処理の木材を含浸させるとき、最高度の寸法安定性が要求される場合には、より小さな分子がセルロースとの密接な関係になることを可能にするよう低重合の樹脂を用いる必要があることが認められている。これらの低重合体により、一般に、より重合度の高いポリマーよりも衝撃強度と機械的強度が低くなり、このことはより良好な衝撃強度で、より高い強度であるが、より低い安定性を示す傾向にある。セルロース構造をある種の蒸解手順によってかなり変化させることで、脱リグニン木材の含浸により重合度の高いポリマーを使用することができ、良好な物理的数値と寸法的安定性を同時に得ることを示すいくつかの証拠がある。」(原文655頁左欄36~48行) (ス)「得られる特性 含浸後、単板を天然木材の含浸と同様に処理し、湿った状態で積層して樹脂を細胞壁内に拡散させる。次に、それらを乾燥させると成型加工ができる状態になる。乾燥操作を調節することにより、含浸させた樹脂の重合を管理する「早期硬化」の程度を変化させることができるようになる。より低温で徐々に乾燥させると単板は極めて柔軟になり、一部の木材の薄片は皮革の柔軟さに近づく。この形態で木材は非常に細い半径の周りに繊維を毛羽立たせることなく巻き付けることができ、裂けづらく、非常に丈夫で、湾曲させてもほとんど反発しない。数人の経験豊かな木材技術者は、それらの柔軟性を目の当たりにしたとき、この柔軟な形態が本当に木材であることがほとんど信じられなかった。」(原文655頁左欄49~62行) (セ)「我々は、この柔軟なタイプの中から、鋭利な湾曲や複雑な形状を伴う成型加工に有用で、圧力を印加するまで問題が最小限に抑えられる位置に保持することができる材料を発見している。25psiという低い圧力で良好な結合が確保される。圧縮量と得られる物理的特性値は用いる特定の圧力に依存するので、250psiという低い圧力でこの柔軟なタイプを高密度化することが可能であると思われる。一般的に言えば、これらの容易に圧縮可能な形態は、樹脂含有率が極めて高いと仮定すれば、相互に、又は天然木材と結合する。」(原文655頁左欄63行~右欄3行) (ソ)「その一方で、より高温の早期硬化から得られる木材は、重量を重視する技術者に、低い比重と良好な安定性の両方を備えた木材を提供する。ここから、湿度変化の下で寸法的に不安定であるという木材に固有の弱点を、密度を増加させずに克服する木材改良の目的について論じる。木材に樹脂を加えて軽量化できるというのは矛盾しているように聞こえるが、いくつかの理由で説明される。脱リグニンにより、相当な量のリグニンとアルカリ可溶性ヘミセルロースが除去される。これらの物質の特定の比重は非常に高い。それらが低比重の樹脂で置き換えられる。」(原文655頁右欄4~14行) (タ)「これらの事実以上に、低比重という結果が得られる最も重要な理由は、浸潤条件における木材構造の膨潤である。この、元の木材の体積を超える膨潤は、いくつかの因子によって引き起こされる可能性がある。すなわち、(1)各細胞の周囲を封じ込めているリグニンの被覆の除去により、セルロース系繊維を拡張させること(2)マーセライズ効果、(3)フェノール-ホルムアルデヒドによって生じる外因性の膨潤である。湿ったままの含浸単板の早期硬化は、補足的な原因となる可能性がある。木材が収縮して溶媒を失う可能性を有する前に、適切な管理の下で樹脂の重合をある程度達成することで、膨潤した低比重の状態に「セット」することができる。」(原文655頁右欄15~26行) (チ)「細胞腔は樹脂が充填されておらず、圧縮されて扁平にもなっていないので、この低密度「インプレグ」内には多数の空間が存在する。そのため、水が「取り込まれる」可能性があり、木材を水中に浸漬した場合にはわずかな重量増加を示すであろうが、細胞壁の正確な含浸が確保されていたならば、この水は「自由水」となり、木材には吸収されないであろう。重量よりも、むしろ膨潤について調べることにより、正しい結論に至ることができるであろう。言うまでもなく、この低比重タイプは非常に硬く、柔軟タイプのように小さな半径で湾曲させることはできない。低比重タイプは低比重パネル、及び軽量であるが湿度に対して安定な表面材の製造に適している。」(原文655頁右欄27~37行) (ツ)「これらのさまざまなタイプ、すなわち柔軟なタイプ、硬いタイプ、又はその中間タイプは、最終的に硬化した材料ではなく、物品を製造する原料にすぎないということに留意しなければならない。事実、硬化中に低い圧力を用いる場合、柔軟タイプの含浸木材から相当に低密度の最終製品が製造される。当然、すべてのタイプは熱と、各層を適切に結合して滑らかな表面を与えるのに必要とされる十分な圧力とによって硬化する。最終製品は強度が良好な、硬く、不溶性の、安定した複合体であり、例外的な重量-強度比を合わせ持っている。最高40パーセントの樹脂を含有するこの製品の積層物は、元の天然木材以上の重量増加を生じることなく固定することが可能であり、強度特性に及ぼす樹脂-セルロース複合体の効果は明らかである。」(原文655頁右欄38~50行) (テ)「ほとんどの木材を処理できる 多くの種類の木材の単板を実験的に処理したところ、一部の種に他より高い適性があるように見えたが、ほとんどの木材で問題なく蒸解と樹脂含浸を行うことができる。非常に柔軟な形態において特に好成績が得られたのはカバとマホガニーで、低密度タイプに適しているように見えるのはスプルース、ウェスタンヘムロック、及び米松である。厚い切片では均一な蒸解は事実上不可能であり、すすぎにおける変性した物質の浸出が非常に緩慢なので、板の厚さは重要である。蒸解は1/8インチ単板で行ったが、1/16インチ以下が好ましい。ロータリー単板及びスライス単板の両方で好結果がられ、硬材では前者で最も柔軟な形態が得られた。」(原文655頁右欄51~64行) (ト)「木材の大きな欠点の1つ(膨潤-収縮)が重量増加を伴わずにほとんど克服できたことは明白である。製造は、より容易になっている。インチ当たりの年輪の数、密度、秋材と春材の比率、木目の変化など、数多くの不均一な天然木材の品質のすべては、我々が脱リグニンによって天然物からさらに離れ、既知の接着充填剤の導入を通してよりいっそう均一な材料に近づいていくにつれて大部分は価値が無くなる。かくして、天然繊維の配向性を有するセルロース充填剤と、高い強度と安定性とを有するバインダーを用いて、新規の信頼性が向上した材料が誕生した。」(原文655頁右欄65~657頁右欄下から21行) (ナ)「加工コスト クラフト紙が低コストであることを考えると、この物質の経済的意味を容易に理解できる。クラフト紙は、その数多くの操作によって低コストの物品を製造しているが、単板の蒸解に用いる基材は操作が少ないのでさらに安価なはずであり、その上繊維は完全に配向されている。比較すると、木材処理に必要なのは単板の切り出し、蒸解、すすぎ、及び乾燥であるが、製紙業者は破砕、蒸解、洗浄、ふるい分け、叩解、次いで材料を非常に高価な装置の上でシート状に再形成しなければならない。脱リグニン単板の含浸は容易かつ安価であり、主なコスト要因は樹脂のコストである。この材料を、含浸紙ストックよりはるかに低いコストで製造できるのは明白であると思われる。」(原文657頁右欄下から20行~下から7行) (ニ)「この考察では1つの含浸処理にしか触れていない。処理済み木材に使用できる物質は他に数多く存在しており、なすべき研究が多く残されている。脱リグニン木材を基材として、熱可塑性及び熱硬化性両方の最終製品群全体に、強度、安定性、さらに-戦後には-審美性を期待することができる。」(原文657頁右欄下から6行~最下行) イ 上記アより、甲第2号証には、次の2つの発明(以下、それぞれ「甲2方法発明」及び「甲2発明」という。)が記載されていると認める。(便宜のために、上記アの関連する箇所を付した。以下、甲3ないし甲5についても同様。) [甲2方法発明] 「脱リグニンプロセスと含浸プロセスを有し、 脱リグニン木材と、天然樹脂や合成樹脂などのさまざまな含浸材料との組み合わせを最終製品とする、 新しい木材製品を製造するプロセスであって、((イ)、(オ)) 脱リグニンプロセスにおいては、 装飾的な価値を目的とした場合には漂白剤を追加して最終色調をより明るくでき、((オ)) 一定のパーセンテージのリグニンを残したまま蒸解を抑制すると生成される製品の強度が高まることが分かっているので、機械的な価値のみが要求される場合には木材から完全に脱リグニンする必要はなく、((カ)) プロセスの第2のステップである含浸プロセスにおいては、 含浸剤は、木材内部で重合するモノマーであってもよく、((コ)) 脱リグニンにより、相当な量のリグニンとアルカリ可溶性ヘミセルロースが除去され、これらの物質の特定の比重は非常に高く、それらが低比重の樹脂で置き換えられる、((ソ)) プロセス。」 [甲2発明] 甲2方法発明により得られる、木材製品。 (3)甲第3号証 ア 甲第3号証の記載事項 本件特許に係る出願の優先日前に発行された甲第3号証には、以下の記載がある。 (ア)「エネルギー効率の良い建築材料には、多くの他の要求事項の中でも、電力消費と耐候対策コストを削減するための効率的な日光収集と断熱が要求される。最も一般的に使用されている日光収集材料であるガラスの光マネジメント能力は限られており、断熱性は低い。ガラスと比較して以下に示す利点を有する建築材料として透明木材を初めて紹介する。すなわち、(1)可視波長範囲を超える高い光透過性(>85%)を有し、(2)広帯域のオプティカルヘイズ(>95%)により、1日中、グレア効果を生じることなく、均一及び一貫した日光の分配を作り出すことができ、(3)厚さ0.5cmの透明木材で前方から後方への散乱比が9と大きな、独特の光誘導効果を有し、(4)断熱に優れ、ガラスの熱伝導度(約1W m-1 K-1)と比較して、木の生長方向に沿った熱伝導度は約0.32W m-1 K-1、断面方向は0.15W m-1 K-1であり、(5)ガラスがしばしば呈する安全上の問題を排除する、高い衝撃エネルギー吸収を有し、(6)簡素で拡大縮小可能な製造で、性能に信頼が置ける建築材料である。例示する透明木材複合体には、特に、エネルギー効率の良い、持続可能な材料を用いた建築物のためのガラスの代替材料として、将来の建築材料としての大きな将来性がある。」(原文1頁左上欄全行~右欄28行) (イ)「1.背景 エネルギー消費量を削減するためには、屋内照明と耐候性の対策以前に、エネルギー効率の良い建築物が必要とされている。効率的かつ一貫した日光収集は、電力使用を大幅に削減することができると同時に、自然で快適な屋内照明を促進する。一方、この建築材料の効果的な断熱によって空調使用のコストを削減できるので、最終的にコストを回収することができる。米国エネルギー省によると、米国の建築物で使用される全エネルギーの約50%超を照明と空調が占めている。さらに、建築物のエネルギー管理においては窓が重要な役割を果たしている。我々は、日光を効率的に収集して一貫した、均一な室内照明を提供する建築材料として、透明な木材複合体を初めて例示した。天然木材の垂直に整列配置された木材繊維は、大きな前方から後方への散乱比により効率的な可視光誘導効果を呈する。窓や屋根に使用すると、透明木材は日光を効果的に屋内に誘導する。広帯域にわたる極めて高いオプティカルヘイズ(>95%)及び高い透過率(>85%)などの独特な光学特性により、建築物の内部にグレア効果のない、均一かつ快適な、屋内アンビエント照明が得られる。さらに、透明木材複合体は、ガラスと比較して断熱にも非常に優れており、熱伝導度は少なくとも3倍低い。住宅区域及び商業区域からの温室効果ガスの放出の主な原因は、建築物のエネルギー使用である。我々のエネルギー効率が良好な透明木材建築材料を適用することで、相当なエネルギーを節約でき、関連する温室効果ガスの放出も抑制することができる。木材ベースの透明な複合体は、次世代のエネルギー効率が高い建築物への応用に、幅広い可能性を見出すことができる。」(原文1頁左欄1行~右欄29行) (ウ)「2.序文 米国エネルギー省(DOE)が掲げているように、建築物のエネルギー消費を2020年までに20%、長期的目標として50%削減することが求められている。[1] 住宅用及び商業用の建築物では、照明と熱的快適さのために使用するエネルギーが総エネルギー使用量の50%超を占めている。[2] したがって、特に日中の空調と照明の使用を節約することで、エネルギーを相当節約することができる。日光は、日常生活ニーズの大部分にとって最良の、最も自然な光である。日光収集のために最も一般的に使用されている材料はガラスである。しかし、窓ガラス戸には以下の問題がある。第1に、ガラスは印影効果と不快グレアを生じることが多い。[3-5] 建築物の内部に効率的な、均一の、一貫した屋内照明を作り出すためには、集光性の窓は、(1)可視領域にわたる高い透過性と、(2)順方向における大きな散乱効果とを備えた、効果的な指向性散乱を生み出す必要がある。指向性散乱を実現するために用いられている現在の戦略は、ミー散乱又は他の共鳴散乱効果に基づく複雑なナノ構造を伴うことが多く、ナノ構造のサイズは細かく調整する必要がある。[6] その結果として、大規模な商業的用途に対するこのような技術の将来性は、限定的であることが明らかである。第2に、ガラス固有の高熱伝導性のため、建築物の暖房又は冷房に使用されるエネルギーの3分の1は、非効率的な窓ガラス戸で失われる。[7] 第3に、ガラスは非常に脆く、突然の衝撃で砕けるので、重大な安全上の問題を引き起こす。」(原文1頁右欄30行~2頁左欄16行) (エ)「ガラスとは対照的に、木材は優れた機械的強度を有する天然断熱材であり、住宅や小屋の構造材料として数千年にわたって使用されてきた。木材の細胞内腔は、光合成プロセス用の水と栄養分を輸送するために垂直方向に自然に生長し、[8,9] セルロースとヘミセルロースで構成され、[10-13] 内部にリグニンが存在している。[8] しかし、光を吸収するリグニンと光を散乱させる微小な細胞内腔のために、天然木材は不透明である。本研究において、我々は、以下の利点を有する透明木材の、エネルギー効率が高い集光性建築材料としての有用性を証明する。第1に、我々の透明木材は広帯域にわたり、>85%の透過度で日光を効率的に収集することができる。透明木材のヘイズは極めて高い(約95%)ので、屋内照明を均一かつ一貫して保つことができる。第2に、透明木材は指向性の前方散乱効果を示すので、これを用いて日光を効率的に建築物の内部に誘導することができる。第3に、木材の細胞は複数の限界を有する大きなフォノン抵抗を示す。木材のチャネルに沿う方向及び横断する方向の熱伝導度の測定値は低く、それぞれ0.32及び0.15 W m-1 K-1でしかない。透明な建築材料として使用した場合、木材複合体は標準的なガラスよりも良好な断熱が得られるので空調の使用低減に役立つ。さらに、我々の透明木材は高い衝撃吸収能力を示す。突然の衝撃が加えられたとき、浸透性ポリマーを含浸させたマイクロチャネルがエネルギーを吸収して分散させ、木材を粉砕から保護する。図1は、透明木材を日光収集ルーフトップに使用した例を示す図解である。透過光強度分布は太陽の方向に鈍感で、一日中室内光を一貫して維持する。さらに、伝導熱流も減らすことができるので、室内温度がより一定に保たれる。窓又はルーフトップの材料として使用された透明木材は、屋内における照明と空調のエネルギー使用で経費を削減でき、最終的に採算が取れる。」(原文2頁左欄17~53行) (オ)「図2aは、天然ウッドブロック(本研究ではシナノキを使用)の走査型電子顕微鏡(SEM)画像である。透明木材複合体は、リグニンを選択的に除去し、続いて屈折率が一致したポリマーを充填することによって製造した。[14-16] 細胞壁は、屈折率が1.5前後のセルロース及びヘミセルロースで構成されていた。図に示すように、木材細胞は生長の方向に沿って自然に整列配置されている。ウッドブロック内にある異方性の開放管腔により、迅速なリグニン除去とポリマー浸透が可能になり、微細構造が良好に保存された透明木材複合体が形成される。[14] ポリマー浸透後、木材の細胞壁と細胞内部のポリマーとの間の屈折率のミスマッチは大きく減少する。その結果、木材複合体は高い透過率を示す。図S1(補足資料)は、ポリマーを浸透させた木材細胞内腔の上面図及び側面図を示す。屈折率が1.5に近く、材料の粘性が低い限り、浸透ポリマーには数多くの適切な選択肢が存在することに留意されたい。セルロースとエポキシとの間に屈折率の小さなミスマッチがあるので光は生長方向に沿って伝播することができ、同時に木材細胞は、直径が天然木材の種に応じて数十~数百マイクロメートルにわたる損失性導波管として機能する。透明木材の光伝播を示すために、スポットサイズ200μmの入射光源として、DJ532-10(Thorlabs Inc.)、532nm緑色単一モードレーザーを使用している。光線は図2a、bの矢印で示すように右側から入力角45°で入射している。ウッドブロック内部の光線の伝播を明確に観察できるよう、厚さが1.4cmと大きなウッドブロックを使用した。木材複合体の上面図である図2bを見ると分かるように、光線は木材の上面に到達するとすぐに分岐し、次いで木材チャネルの方向に沿って伝播する。明るいレーザー光は適切に方向付けられ、誘導が効果的であることを示している。図S2(補足情報)は、緑色レーザー光線がそれぞれ垂直、45°、70°で入射した透光性木材ブロックの上面図と側面図を示す。図示されているように、木材内部の光封じ込めは入射光の角度ではなく、主として木材チャネルが整列配置されている方向によって決定される。」(原文2頁左欄54行~右欄最下行) (カ)「高密度に圧縮され、垂直に整列配置された透明木材のチャネルは、伝播中の散乱損失が大きい、円筒状の広帯域光導波管として機能する。透光性木材細胞が持つこの独特な光マネジメント能力によって、柔らかく広がる光伝播効果が生じる。ヘイズ、前方散乱、後方散乱などの光学特性を綿密に検討し、図2cに要約した。積分球を用いて光学特性を測定した。測定結果から、透明木材が90%前後の高い透過度を示し、同時に95%前後の高いオプティカルヘイズも示すことが分かる。波長範囲500~1100nmの透過度の平均が90%、反射が約10%とすると、前方散乱と後方散乱の指向性比率は9という高い値が得られる。比較のために挙げておくと、ミー散乱を用いる光マネジメントスキームの下で指向性散乱を達成するために、ナノコーン及びナノスフェアなどのナノ構造体がしばしば用いられる。[6,17-19] しかし、スペクトル反応は通常、波長に敏感で、前方から後方への散乱比は透明木材細胞が示す比率より小さいことが多い。高い透過率を示すと同時に、透明木材のヘイズは95%を超えることが可能であり、これは微細構造的な粗さによって垂直に伝播する光の散乱に起因している可能性がある。これは、基本的に、線維が主として平面方向かつ光伝播方向に対して垂直に配向されている、ヘイズ紙の散乱とは異なっている。[20,21] さらに、木材複合体の全体的な透明度は標準的なガラス、プラスチック、セルロースベースのナノペーパーに匹敵し、[22-24] 我々が開発した透明木材複合体の調製手順の有効性を裏付けている。図2dは、透明木材サンプルに傾斜した角度で入射する単一モードレーザーと、スクリーン上でキャプチャされる透過光のパターンを示す概略図である。興味深いことに、光線の強度は標準的なガウス分布からの顕著な逸脱を示さない。光のマネジメントは、太陽電池及び発光ダイオード(LED)における全体的な変換効率を改良する取り組みの中で重要な役割を果たしている。[17,25-28] これらの透明木材複合体は、その独特の光マネジメント能力により、有効な透明コーティング又は集積型光電装置構築用の基板材料に役立つ可能性を秘めている。[29,30]」(原文3頁左欄1行~4頁左欄8行) (キ)「図3aは、透光性木材、ヘイズ紙、及び典型的なソーダ石灰ガラスのヘイズを比較したものである。高い透過率の他に、透明木材複合体のヘイズは、典型的なヘイズ値である約60%を示す超高ヘイズナノペーパーよりも極めて高い95%に達する。[29,31,32] 高いヘイズと高い透過率(図3c)により効率的に日光を収集する建築材料としての、透明木材でできた窓の性能を実証するために、図S3(補足情報)に示す、8cm×12cmの透過性木材の屋根を備えた木造住宅モデルを構築した。グレアの発生源は、太陽の朝夕の位置、氷、自動車の反射表面、高度に磨かれた床、近接する建築物の窓などである。グレアは視覚像の鮮明さに干渉することがある。日常用途に使用した場合、透明木材で効果的なアンチグレア効果が得られることが分かった。図3bに示すように、透明木材複合体を通して見ると、グレアは完全に除去され、同時により均一な輝度が得られている。図3cでは、集光ルーフにソーダ石灰ガラスと透光性木材をそれぞれ使用した設計をモデルで検証し、有効性を比較している。白色光源としてOriel Instruments-Newport社製のソーラシミュレータを使用した。モデルハウスは、木材ルーフの効果をより明白に観察できるよう、故意に高く造られた。集光性建築材料を住宅モデルに組み込むと、均一な屋内照明が観察される。木材複合体では、ガラスのルーフトップと比較して、木材複合体の高いヘイズと高い透明度により建築物の日光収集が最大化され、1日を通して極めて一貫した光分布が得られた。較正済みのThorlabs社製Si検出器を用い、モデルハウス内部の光の分布を評価した。ガラストップのハウスと透光性木材トップのハウスそれぞれで、6か所の異なる場所を選択し、1~6と標識した。結果を図3dに示す。ガラスルーフのハウス内部では、最大光強度が12.3mWcm-2である一方で最小光強度は0.35mWcm-2にすぎず、照明の不均一性は35倍超であった。これとは対照的に、我々の透明木材ルーフトップを組み込んだハウスでは、最も明るい角(4.9mWcm-2)と最も暗い角(2.1mWcm-2)との光強度の差は2.3倍にすぎなかった。したがって、透明木材の建築材料は固有のヘイズを有していることにより、屋内照明エネルギーを節約し、さらに視覚的快適さとプライバシー保護を備えた均一な照明を提供するための、効果的なソリューションであることが実験的に証明される。」(原文4左欄9行~右欄23行) (ク)「日光収集及び機械的強度に関する要求事項に加えて、気候からの保護に関する要求事項も満たす必要がある。したがって、断熱性が強化された建築材料が非常に望ましい。[33] 効果的な断熱は建築物の外板を通過する熱流を遅延させ、住宅と外部環境との間に構造的障壁を提供する。断熱が良好であれば、住宅は、冬の間はより暖かく、夏の間はより涼しく保たれる。住宅及び商業ビルのほとんどの壁は、通常、木材や複合発泡体などの材料を用いることで良好に断熱される。[33] しかし、ガラスなどの透明な建築材料の熱伝導度は非常に高いため周囲の建築材料より熱流が大きくなり、建築物全体の断熱を低下させる。ガラスでできた透明な窓及び屋根を横断する熱架橋はエネルギー効率を低下させ、さらに結露を生じさせる可能性もあるので、窓の断熱は特に重要である。[34] 多層ガラスなどの、窓を通過する熱損失を低減するための現在の戦略はコストがかさむことが多く、さらに重量が著しく増加する。一方、木材は細胞構造にエアーポケットを有する天然断熱材である。[35,36] 図4aに示すように、透明木材複合体は、木材繊維の微細構造を通過するフォノンに対して高い抵抗を提供する。半径方向の熱の移動経路は、軸方向の移動経路よりもずっと大きなフォノン散乱効果を生じる。透明木材が持つ異方性の熱的性質は、リグニン除去とポリマー浸透の後にも木材細胞の整列配置が良好に保存されていることに起因している可能性がある。図4bに示すように、測定した熱伝導度は、軸方向が0.32W m-1 K-1、半径方向が0.15 W m-1 K-1 で、元のシナノキの熱伝導度と同等であった。[35] 興味深いことに、バルクのポリマーブロック(木材に浸透させたものと同じポリマー)は0.53 W m-1 K-1前後の高い熱伝導度を示した。透明木材の熱伝導度が低下したのは、木材細胞壁(主にセルロースとヘミセルロース)間の高いフォトン抵抗と、複数の境界によるフォノン散乱効果に起因すると考えられる。これに対し、ガラス(Fisher Scientific Microscopic Glass社製)の熱伝導度測定値は≒1.0W m-1 K-1と非常に高く(図4b)、伝導熱流の低減には透光性木材がより効果的であることを証明している。」(原文4頁右欄24行~5頁右欄5行) (ケ)「極めて高い光マネジメント能力に加えて、透明木材複合体の機械的特性も検討する必要がある。住宅及び商業用の構造物に建築用ブロックとして使用した場合、ガラスには重大な安全上の懸念がある。飛んできた鳥、地震など、さらには居住者の突然の動作などの突然の衝撃を受けた場合、ガラスは割れて全方向に破片を飛散させる可能性がある。ガラスは時として、端部又は表面に受けた損傷がクリープ荷重で伝播することにより、突然かつ自然発生的に破損することがある。ガラスが破損すると深刻な安全上の問題が生じるので、直ちに保守と注意喚起を行う必要がある。一方、木材はセルロースと微細構造に浸透させたエネルギー吸収ポリマーとの間のファンデルワールス相互作用により、より高い衝撃に耐えることができる。図5aは、落下する鋭利な物体を一気に衝突させて破損させた後の、ガラス及び透明木材の形態を示す。ガラスは直ちに尖った破片に砕けたが、我々の耐衝撃透明木材は無傷のままであり、安全で、手間がかからず、破片が飛び散らない、透明な建築材料として非常に望ましいものであるといえる。ガラスは相当硬いが、同時に脆くもある。[37] ガラスは負荷が加わったときに比較的低レベルでしか応力に適応できず、突然破損する。破損は、突然かつ大々的に発生する可能性がある。いったん亀裂が生じると、ガラスは構造的に亀裂の伝をほとんど止めることができない。その結果、ガラスの歪曲線及び応力曲線は、図5bに示すように線形に近い曲線を描くことになる。[38] 対照的に、透光性木材の歪度は6%と非常に大きく、標準的なソーダ石灰ガラスよりも2桁大きい。[38] この延性の大幅な増加は、構造材料としての用途にとって非常に望ましいことである。突然の衝撃によって破損した後でさえ、透明木材は複数の鋭利な破片に粉砕されず、折れ曲がって分割されるだけである。透明木材を建築材料として商業的に応用するためには、耐水性も要求される。図4cに示すように、我々は透明木材のサンプルを水に浸漬した。72時間後、サンプルは損なわれておらず、形状の歪みも、機械的特性及び光学的特性の劣化も認めなかった。さらに、浸水72時間後のエポキシ充填木材壁のSEM観察(図S4、補足情報)及び透明木材の機械的特性の測定(図S5、補足情報)も行った。結果は透明木材に対する水の影響は無視できるほど小さいことを示しており、この影響の小ささはポリマー成分が封入されていることに起因している可能性がある。」(原文5頁右欄6行~6頁左欄26行) (コ)「3.結論 本研究において、我々は、透明木材をエネルギー効率の良い建築材料に応用できることを実証した。透明木材がガラスに匹敵する高い透過度と、95%前後の非常に高いヘイズを有する独特な指向性前方散乱効果とを示すことを明らかにした。したがって、透明木材を使用し、日光を効率的に屋内に誘導することにより、1日を通して均一かつ一貫した照明を提供すると共に日中の照明エネルギー使用量を削減することが可能である。また、我々の透明木材はガラスと比較して熱伝導度が非常に低いので、二酸化炭素排出量の少ない良好な断熱建築材料になっている。さらに、ポリマー浸透木材の微細構造は高い延性による高い衝撃吸収能力を示すので、しばしばガラスによって生じる安全上の問題が排除される。透明木材ブロックは、簡素で規模拡大が可能なプロセスで製造できる可能性があることから、建築物のエネルギー管理を改善する有力な候補となっている。」(原文6頁左欄27~44行) (サ)「4.実験項 材料及び試薬:本研究では、シナノキを用いて透明木材を製造した。リグニンの選択的除去に使用した試薬はNaOH及びNa2SO3(シグマアルドリッチ)である。浸透させたポリマーはAeroMarine Epoxy #300/21で、粘性が低く、硬化後の収縮は極わずかである。 透明木材の製造:木材のリグニンは、木材を沸騰している希釈したNaOH(2.5mol L-1、DI水溶液)及びNa2SO3(0.4 mol L-1、DI水溶液)に3時間浸漬し、続いて沸騰しているH2O2(2.5mol L-1、DI水溶液)に木材の黄色い色調が完全に消えるまで2~3時間浸漬することによって選択的に除去した。その後、得られた白色の木材を後調製直後の液体エポキシ樹脂に浸漬して完全に浸透させた。エポキシを完全に固化させ、透明木材複合体を取得した。 光学特性の特性評価:積分球を接続したUV-vis Spectrometer Lambda 35(PerkinElmer,USA)を用い、ヘイズ、前方散乱、後方散乱を含む光学特性を測定した。安定化出力電源を接続した532nm(緑色)単一モードレーザーDJ532-10(Thorlabs社)を入射光熱源に使用した。レーザーを最初にコリメートしてから透明木材ブロックに対する入射角度を変化させた。透明木材の寸法は、幅×高さ×長さ=1.4cm×3.0cm×3.5cmである。透明木材ブロック透過後の透過光の2次元光強度分布は、較正済みのThorlabs社製Si検出器S-130Cを用いて特性評価した。透明木材ルーフトップ付きの住宅モデルにおける光誘導効果は、Newport社製ソーラシミュレータ下で検証した。キセノンランプを直径6cmの照明領域を有する白色光源として使用した。 熱伝導度の特性評価:・・・ 機械的特性の特性評価:機械的試験のために、透明木材複合体を長さ約5cm、幅1cm、厚さ3mmの試験用サンプルに切断した。Tinius OlsenH5KT試験器を用いてサンプルの応力-歪み関係測定を行った。」(原文6頁左欄45行~右欄45行) イ 上記アより、甲第3号証には、次の2つの発明(以下、それぞれ「甲3方法発明」及び「甲3発明」という。)が記載されていると認める。 [甲3方法発明] 「リグニンの選択的除去と、ポリマーの浸透を行う、透明木材を製造する方法であって、 シナノキの木材を用い、 木材のリグニンは、木材を沸騰している希釈したNaOH(2.5 mol L-1、DI水溶液)及びNa2SO3(0.4 mol L-1、DI水溶液)に3時間浸漬し、続いて沸騰しているH2O2(2.5 mol L-1、DI水溶液)に木材の黄色い色調が完全に消えるまで2~3時間浸漬することによって選択的に除去し、その後、得られた白色の木材を後調製直後の液体エポキシ樹脂に浸漬して完全に浸透させ、エポキシを完全に固化させ、透明木材複合体を取得する、((サ)) 方法。」 [甲3発明] 甲3方法発明により得られる、透明木材。 (4)甲第4号証 ア 甲第4号証の記載事項 本件特許に係る出願の優先日前に発行された甲第4号証には、以下の記載がある。 (ア)「要約 活性層内部への集光を強化する高効率広帯域光マネジメントは、薄層太陽電池及 び光電気化学電池などの多くのエネルギー装置にとって重要である。本研究では、自然に形成されたねじれの少ないチャネルに沿ってリグニンを迅速に抽出し、続けて迅速にポリマーを充填することによる、透明性の高い多孔性木材複合体を例示する。透明木材は、高い光学的透過度を示し、同時に400nm~1100nmの広い波長帯域において高いヘイズを示す。この独特な光学特性により、セルロースナノ繊維を有する透明木材複合体はさまざまなオプトエレクトロニクス、特に 装置の動作効率を向上させるために光マネジメントが重要となる太陽電池及び広角照明に利用することが可能である。我々は、新たに開発し透明木材複合体が、GaAs薄層太陽電池を単純に被覆したとき広帯域光マネジメント層として機能し、全体的なエネルギー変換効率を18%も大幅に改善できることを実証する。木材ベースの光マネジメント材料についての我々の研究は、効率的に光マネジメント が行われる、環境に優しい使い捨て式のオプトエレクトロニクス素子を取り巻く 将来の開発にとって魅力的なプラットフォームを提供する。」(原文332頁「ABSTRACT」欄全行) (イ)「1.序文 オプトエレクトロニクス素子にとって光マネジメントは重要である。例えば、ナノコーン構造[2,3]、ナノドームアレイ[4]、ナノチューブ格子[5]、ナノワイヤ配列[6]、金属ナノ粒子[7]など、活性層中の光輸送路を増やして素子のエネルギー変換効率を効果的に増加させるための、さまざまな集光戦略が開発されてきた。さらに、生物から発想を得た取り組みも行われ、集光用の先進的なナノ構造が設計されている[8,9]。多孔性木材繊維の可能性は、本来は光通信に向けられるものであるが、その発生量、独特な階層構造、豊富な化学的界面構造、高度に発達した加工技術により、もう一つの重要な研究対象とするのに値するものである。自然に構築された木材は、優れた機械的強度や水とイオンの効率的な輸送などの傑出した特性を生じ得る独特な多孔性構造を有している。典型的な木材は、主としてセルロース、ヘミセルロース、及びリグニンで構成されている[10-12]。木材細胞繊維は生長方向に沿って自然に整列配置され、一般的に長さ3~5mm 、直径25~50μmである。木材におけるセルロースナノ繊維の整列配置は、バイオポリマーとの強い相互作用とともに、マトリックス接着剤として機能するリグニンによって強化される[10-12]。木材細胞は複数のマイクロ繊維を含んでおり、個々のマイクロ繊維はさらにナノサイズの繊維に細分することができる[10,13-15] 。木材は直接的に構造材料として利用することも、セルロースマイクロ繊維を抽出して我々の日常生活に幅広く使用されている不透明な紙を作るための豊富な資源として利用することもできる[16]。詳細な研究から、マイクロサイズの繊維をナノスケールの基本繊維に分解することができ、透明ナノペーパーの作成に利用できることが分かっている[17-23]。近年、研究者たちは木材由来のバイオポリマー、特にセルロースナノ繊維(CNF)及びセルロースナノ結晶(CNC)の新しい用途を検討し始めている。CNF及びCNCは、環境に優しい電子機器、エネルギー貯蔵、及び生物学的装置などの幅広い新規用途にとって極めて魅力的である[24-31]。同時に、パルプ化プロセスの副産物であるリグニンは、高性能炭素又はエネルギー蓄積電極の低コスト製造の有望な材料としての探究が進められている[32,33]。」(原文332頁左欄1行~右欄下から5行) (ウ)「天然木材は、主に2つの理由で透明ではない。第1に、天然木材には可視領域の光を散乱させるマイクロサイズのチャネルがある。第2に、木材は最高で30質量%のリグニンで構成されており、リグニンは可視光を吸収するのでほとんどの木材の外観は不透明になる。本研究では、吸収性のリグニンを除去し、次いでナノ/マイクロサイズのチャネルを屈折率が一致するポリマーで埋め戻すことによって透明木材複合体を実現した(図1)。 適切に選択したポリマーをチャネルに充填することにより、屈折率(RI)のミスマッチを大きく低減し、光反射を抑制して透明度を増加させることができる。興味深いことに、元の木材にある明確なチャネルはねじれが少ないので、内部にある有色のリグニンを迅速に除去することが可能になる。リグニン除去後、開口しているチャネルを利用すると、ポリマーを急速に浸透させることができるようになり、木材/ポリマー複合体の光散乱を低減させ、機械的強度を向上させることが可能になる。得られた材料の可視波長範囲全体の光透過率は約90±5%と優れており、オプティカルヘイズは最高80±5%と良好であった(エラーバーは主に波長の仕様及びサンプルのばらつきによるものである)。本研究における複合体の厚さは、概して約100μm(一般的な紙の厚さ)から1ミリメートルの範囲であった。さらに、このプロセスを用いると、効果的な入射光散乱に寄与する、元の木材にあるCNFの良好に整列配置された微細構造を保存することが可能になる。最近実証された透明ヘイズペーパー[8,9,20]と比較して、本研究で実証した透明木材複合体は極めて簡単な製造プロセスで製造でき、充填するポリマーに応じて水中及び湿潤環境中における寸法安定性が強化されている。このような透明木材には幅広い用途、特に環境に優しい生物分解性のオプトエレクトロニクス用途を見出すことができる。概念の証明として、透明な薄い木材が、光マネジメントコーティングとして機能することによりGaAs太陽電池の効率を18%強化できることを実証することに成功した。」(原文332頁右欄下から4行~333頁左欄最下行) (エ)「異方性チャネルがほとんどの木材の幹内部に見出されることは周知である[3]。これらの多孔性チャネルの直径は25μm~50μmであり、チャネル方向に沿ったリグニンの抽出を可能にしている(図2)。シナノキを生長方向に対して垂直方向に切断することにより、概して厚さ100μm~1mmの乾燥厚板を取得した。薄切片にある開口したチャネルを利用することにより、リグニンを木材厚板から迅速に除去することが可能になる。通常、シナノキは質量比で18~21%のリグニン、79~82%のヘミセルロースとセルロースを含んでいる[34]。従来のNaOH処理による化学的方法でリグニンを除去した後、H2O2で漂白した[16]。有色のリグニンを除去すると、界面における大きな光反射により、木材厚板は明らかに白さが増して見える。このプロセスの間に、木材の褐色が徐々に薄れてゆき、最終的に白くなる様子を観察できる(図2(b)-挿入画像)。図2(b)及び(d)に示すように、リグニン除去プロセスの速度と継続時間を慎重に管理することにより、木材の微細構造を保存しつつリグニンをほぼ完全に除去することができる。さらに、木材内の良好に整列配置された微細構造が、リグニン除去プロセスの後も無事に保存されていることは注目に値する(図2(e)及び(f))。」(原文333頁右欄1行~下から9行) (オ)「さらに、リグニン除去後の開口した垂直チャネルを利用すると、新しい材料を迅速に浸透させて他の機能性を獲得することが可能になる(図2(d))。屈折率が一致したポリマーを用いてチャネルを満たして光散乱を低減し、高い光学的透明を実現した(方法の項を参照)。エポキシ樹脂、ポリジメチルシロキサン、ポリメタクリル酸メチル、ポリスチレンなど、多くの種類のポリマーを用いて透明木材を作成することができる。本稿では、充填物としてポリビニルピロリドン(PVP)を選択して実証を行った。PVPは、光学的に透明で、エタノール溶液は比較的粘度が低く、セルロースに対する湿潤性が良好である。PVPの特性を利用したことで、木材の微小規模の開口部を通して完全に浸透させることが可能になった。PVPは木材のナノ繊維と同様に、環境に優しく生物分解性である。図2(c)は、PVPポリマー充填後の木材の走査型電子顕微鏡(SEM)画像で、すべての開口がポリマーで完全に充填されている。図2(c)は、木材の構造を良好に保存したまま完成した透明木材を示す。さらに、木材の微細構造へのポリマー浸透は、残存するセルロースと屈折率が一致した材料として機能することに加えて、木材セルロースナノ繊維を互いに機械的に接着する機能も有している。透明木材複合体の新しい簡素な製造方法を用いると、CNFに元来備わっている整列配置を保存することが可能になる。図2(d)は細胞壁及びチャネルを示す。CFNは影響を受けずに明確に整列配置されている(図2(e))。これらの整列配置されたCNFにより、機械的特性が強化される[27,28]。整列配置されたCNFが密接して固められているため、SEMによる特徴描写が困難になっている。コントラストの高いSEM画像を得るために、我々は白色の木材を長時間さらに崩壊させる。さらなる加工により、整列配置された繊維は図2(f)に見られるような、ランダムに分散したネットワークに崩壊した。」(原文333頁右欄下から8行~334頁右欄1行) (カ)「リグニンの除去後、木材は全体的な透明度が低い、明るい白色を呈するが、これはセルロースと空気の間の屈折率の大きな違いによるものである。PVPは非常に透明度が高いポリマーで、波長λ=550nmにおける屈折率は約1.53であり[35]、セルロースの屈折率約1.48に近い値である[36]。セルロース(RI=1 .48)とPVP(RI=1 .53)との界面に直交する光反射は0.04%で、これと比較して空気(RI=1.00)とセルロース(RI=1.48)との界面では4.4%である。その結果、PVPを浸透させると木材マイクロチャネルに沿った光反射及び光散乱は大きく抑制されるが、完全には排除されていない。加えて、高い透明度は高いヘイズを伴って達成された。おそらく、異なる屈折率のポリマーを用いることで、光学特性をより精密に調整することが可能である。」(原文334頁右欄2行~下から7行) (キ)「図3(a)は、大きさ30mm×22mm×1mmの透明木材複合体を示す。この物質は透明度が非常に高く、下にある文字がはっきり見える(図3(b))。透明木材及び元の木材の透過率の測定値を、図3(c)にそれぞれ赤色と黒色の曲線で示す。元の木材の透過率は400nmから600nmまでの波長でほぼゼロであり、これは主にリグニンマトリックスの光吸収が大きいためである。測定した波長範囲全体にわたって、最大透過率が25%を超えることはない。これとはかなり対照的に、透明木材は空気中において可視領域(λ=400nm)から近赤外(λ=1100nm)まで、約90±5%の透過度を示した。厚さ1mmの木材複合体の全体的な透明度は、透明なガラス、プラスチック、セルロースを基材とするナノペーパーに匹敵する[19,20,37]。これらの結果は、透明木材複合体を製造するための、リグニン除去とポリマー浸透の2つの連続したプロセスの有効性を明確に裏付けている。」(原文334頁右欄下から6行~335頁左欄最下行) (ク)「リグニン含有量が木材の光学特性に及ぼす影響を定量化するために、加工中の異なる段階において光吸収を測定した。図4(a)は、リグニン含有量が異なる木材の透過率を示す。概して、リグニン含有量が増えるにつれて、吸収限界は長波長側にシフトする。未処理(黒線)のサンプル及び33%リグニン除去(LR)したサンプル(赤線)では、吸収範囲は可視光スペクトラム全体をカバーしている。(これ以降、%LRはリグニン除去の質量%を示す)。これと比較して、リグニンを完全に除去したサンプルでは、可視光線範囲全体にわたり透過度が大きく向上し、光吸収は最小限に抑えられている。さらに、リグニンは発色団を含んでいるので蛍光放射も示す[38]。ホトルミネセンス技術を用いて、さまざまな量のリグニンを含有する木材サンプル中のリグニン含有量を検証した[39]。結果を図4(b)~(e)に示す。概して、これらの結果は、発光を用いてリグニンの存在を明らかにするTAPPI標準リグニン測定法で示される結果と一致している[40]。元の木材の蛍光強度が LRサンプルよりも33%弱いことに注意されたい。この異常な挙動は、蛍光団の自己消光によって引き起こされる[39]。この挙動は、局所的な蛍光団濃度が消光濃度を超えたときに発生することが多い。3次元蛍光測定(図4(f)及び(g))は、木材の微細構造の明確な形態を示している。」(原文335頁右欄1行~336頁左欄13行) (ケ)「透明木材複合体は高い拡散性透過度に加えて高い透過度ヘイズも示す(図5)。図5(b)に示すように、ヘイズの測定値は波長範囲400nm~1100nmにわたり80±5%前後である。これは、透明なガラス材料やプラスチック材料のヘイズが1%未満であることに比べると非常に独特である[41]。さらに、透明木材複合体のヘイズ値も、超ヘイズナノペーパーのヘイズ値約60% よりもはるかに高い[42]。透明木材複合体の高いヘイズは、木材の独特な微細構造から生じている。図2(b)及び(d)のSEM画像で示すように、セルロースマイクロチャネルが木材の主要構成成分である。個々のマイクロチャネルはマイクロ繊維単位から成り、マイクロ繊維はさらにナノ繊維に加工できる。高いヘイズが測定された原因は2つある。第1に、木材の繊維及びチャネルは、隆起、微小な縞、微小空洞による微小な湾曲を有していることが多く(図2(d))、光を反射/散乱させる中核として機能する。第2に、マイクロ繊維及びマイクロチャネルは、入射光を軸方向に沿って誘導し、効率的に前方散乱させることができる。これは、セルロース繊維が主に水平方向に広がるナノペーパーの高ヘイズ機序とは根本的に異なっている。」(原文336頁左欄14行~右欄3行) (コ)「太陽電池の全体的な変換効率を向上させる取り組みの中で、光マネジメントは重要な役割を果たしている[43-47]。高い透過度と高いヘイズを有する透明木材複合体には、光検出器や太陽電池などの光電子装置用の、効率的な光マネジメントコーティング又は基板としての役割を果たせる可能性がある[42,48]。本稿では、透明木材複合体の有用性を、GaAs太陽電池の基板として実証する。使用した透明木材は、幅広い波長範囲にわたり透過度が90%前後、ヘイズが約8 0%である。セルの電流密度-電圧(J-V)特性の測定値を図5(d)に示す。短絡電流密度(Jsc)、開路電圧(Voc)、曲線因子(FF、太陽電池の最大出力と、VocとJscの積との比率)、J-V曲線から得られる全体的な変換効率などの、セルの電子特性を表1に示す。太陽光照明下において、短絡電流密度が15.67±3%増大し、これに対応して総変換効率が18.02±3%向上することが観察されている(エラーバーは、主にソーラシミュレータの光強度ゆらぎに起因する)。これは、主として、単に木材をGaAs太陽電池背セルの上面に装着したことで生じた、空気とGaAsとの間の前方散乱効果と屈折率マッチング効果によるものである。したがって、透明木材層は、1)GaAsと空気との間の屈折率マッチング層としての反射防止コーティング、2)GaSa太陽電池セルの活性層に拡大した光子移動経路を提供する集光層、として機能する。さらに、興味深いことに、界面屈折率のミスマッチが抑制されているPVPのみのコーティング(木材を用いない)を用いるとJscの増大は10.1±3%となり、透明木材コーティングに及ばない。曲線因子のわずかな増加も確認されており、このことは暗飽和電流が低下していないことの優れた指標としての役割を果たしている。透明木材基板は、透明紙で観察される効果と同様に[42 ,48]、光マネジメント層として、裸のGaAs単葉電池セルの性能を大幅に向上させる。透明度が高いので、光がGaAs太陽電池セルの表面に到達するまでの損失を小さくすることができる。ヘイズが高いため、垂直な入射光は太陽電池セルの上面に到達したとき極めて大きく拡散する。この現象により、太陽電離セル内の光子の移動経路が増加し、光子がセルの活性層内部に捕獲される可能性が高まる[49-52]。さらに、木材でコーティングすると、GaAsと空気との間の屈折率のミスマッチが減少することにより光反射が抑制され、その結果として太陽電池セル内への光束を増加させることが可能になる。」(原文336頁右欄4行~337頁左欄25行) (サ)「2.結論 結論として、非常に透明で(光透過率が最大90%)オプティカルヘイズが高い(最高80%)木材複合体が、2つの連続したプロセスによって開発された。生長方向に沿った開口チャネルを有する多孔性木材を利用することで、効果的なリグニン除去と屈折率が一致したポリマーの浸透が実現した。抽出したセルロースから製造した透明紙とはまったく対照的に、本研究で示した透明木材複合体には以下の利点がある。(1)本製造プロセスは、特に基板の厚さが薄くなるほど迅速になり、エネルギー効率も高くなる、(2)得られる透明木材には、潜在的に異方性特性を生じ得る、木材中に自然に整列配置されたナノスケールCNFが保存されている、(3)効率的なポリマー浸透により、ポリマーの溶解度に応じて、特に水分及び湿気がある場合の、最終的な基板の機械的特性及び寸法安定性を大きく改善することができる、(4)単に最初の木材材料の厚さを管理するだけで、透明木材複合体の厚さを容易に調整することが可能である、(5)屈折率が異なるポリマーを選択することにより、透明度を調整することが可能である。透明木材複合体は、生分解性電子機器、オプトエレクトロニクス及び構造材料の分野に幅広い用途を見出すことができる。初の実証として、透明木材は、GaAs薄層フィルム太陽電池セルの表面をコーティングすると、効果的な光散乱と太陽電池セル内部の光吸収の増加により総エネルギー変換率を18%向上させることが判明した。これらの結果は、効果的な広帯域光マネジメントを備えた、環境に優しい、使い捨て式の光電子工学装置を開発するための、有望なプラットフォームを提供する。」(原文337頁左欄26行~下から5行) (シ)「3.実験項 3.1. 材料と試薬 本研究にはシナノキを用いた。木材からリグニン成分を除去するために使用した試薬は、水酸化ナトリウム(>98%、シグマアルドリッチ)、及び亜硫酸ナトリウム(>98%、シグマアルドリッチ)である。浸透に使用したポリマーはポリビニルピロリドン(PVP、平均分子量約1300,000、シグマアルドリッチ) であった。使用した溶媒はエタノール(95% 、Pharmco-Aaper)及び脱イオン(DI)水であった。 3.2. 木材からのリグニンの除去 リグニン除去溶液は、NaOH及びNa2SO3をDI水に溶解して調製し、それぞれ2.5mol/L-1及び0.4mol/L-1に調製した。木材スライスをリグニン除去液に浸漬して12時間煮沸し続けた後、熱蒸留水で3回洗浄してほとんどの試薬を除去した。次に、ウッドブロックを漂白液(H2O2、2.5mol/L DI水溶液)に入れ、撹拌せずに煮沸し続けた。サンプルの黄色の色調が消失したところで取り出し、冷水ですすいだ。脱リグニンサンプルをエタノール中で保存した。 3.3. ポリマーの浸透 ポリビニルピロリドン(PVP)をポリマーが濃度15質量%となるようエタノールに溶解した。完全に溶解した後に、脱リグニン木材をシャーレの底に置き、PVP溶液に浸漬した。溶液の深さは木材の厚さの約10倍とした。次に、溶液を 200Paの減圧下にて約10分間脱気し、完全に浸透させた。最後に、シャーレを60℃のホットプレート上に置いた。溶媒が完全に蒸発した後、ポリマー浸透木材サンプルをシャーレの底からはがし取った。 3.4. 木材のGaAsセルへの装着 露出した太陽電池セルの表面に1滴のエタノールを滴下した。次に、透明木材をセルの上面に配置して親密接触を形成した。このサンドイッチ構造により、木材が GaAs太陽電池セルの表面に確実に装着されるまで室温で乾燥させることが可能になる。 3.5. 測定と特性評価 木材の形態については走査型電子顕微鏡(SE 、日立SU-70)を用いて特性を明らかにした。透過率スペクトラム及びヘイズは、UV-vis Spect rometer Lambda 35(PerklnElmer,USA.)で測定した。リグニン含有量は、リグニン測定の標準方法(Technical As sociation of Pulp and Paper Industry Standard Method T 222-om-83)で測定した[20]。サンプルをそれぞれの特性評価について、安定した結果が最低5回得られるまで測定した。概略を説明すると、約1g(m0)の乾燥木材を計量してエタノールで4時間抽出した。次に、15mLの冷H2SO4(72%)で激しく撹拌しながら 20℃にて2時間処理した。混合物をビーカーに移し、560mLのDI水を加えてH2SO4を3質量% に希釈し、4時間煮沸した。冷めてからろ過し、DI水で洗浄した。不溶性物質を乾燥させて秤量した(m1)。リグニン含有量を次式で求めた:[m1/m0]×100%。太陽電池の光電流―電圧特性は、Orel Solar Simulator(AM 1.5,100mW/cm-2)の照明下にて、電圧-電流源メーター(2400 Keithley )を用いて走査速度10mV/秒でモニタリングした。」(原文337頁左欄下から4行~右欄下から5行) (ス)図面 図4(a)及びその説明文は以下のものである。 [図:0001400490000001.jpg] 「図4.(a)リグニン除去(LR)のパーセンテージが異なる木材厚板の透過度。これらのサンプルに屈折率が一致したポリマーは浸透されていない。」 イ 上記アより、甲第4号証には、次の2つの発明(以下、それぞれ「甲4方法発明」及び「甲4発明」という。)が記載されていると認める。 [甲4方法発明] 「効果的なリグニン除去と屈折率が一致したポリマーの浸透という2つの連続したプロセスによって透明木材を得る方法であって、((サ)) シナノキを切断することにより、概して厚さ100μm~1mmの乾燥厚板を取得し、 NaOH処理による化学的方法でリグニンを除去した後、H2O2で漂白し、 通常、質量比で18~21%のリグニンを含むシナノキから、リグニン除去プロセスの速度と継続時間を慎重に管理することにより、木材の微細構造を保存しつつリグニンをほぼ完全に除去することができ、((エ)) エポキシ樹脂、ポリジメチルシロキサン、ポリメタクリル酸メチル、ポリスチレンなど、多くの種類のポリマーを用いて透明木材を作成することができるが、リビニルピロリドン(PVP)を選択すると、PVPは、光学的に透明で、エタノール溶液は比較的粘度が低く、セルロースに対する湿潤性が良好であり、木材の微小規模の開口部を通して完全に浸透させることが可能となり、((オ)) 空気中において可視領域(λ=400nm)から近赤外(λ=1100nm)まで、約90±5%の透過度を示す透明木材が得られる、((キ)) 方法。」 [甲4発明] 甲4方法発明により得られる、透明木材。 (5)甲第5号証 ア 甲第5号証の記載事項 本件特許に係る出願の優先日前に発行された甲第5号証には、以下の記載がある。 (ア)「木材は幅広く用いられている構造材料であり、自然な生長に由来する独特な構造により優れた機械的特性を有している。[1-3] 種類と地理的な違いにもよるが、種々の木材は桁外れに多様なメソ構造を示す。[3] 例えば、軟材は生長が早いため、概して多孔質な構造を有している。硬材は一般に密集した構造を有しており、軟材に比べて高密度である。木材は種類が違うと大規模構造が劇的に異なっていることがあるが、多孔構造はその階層構造に驚くべき類似性を共有している。[3] 木材で最も未処理の特徴は、それらの構造異方性(多くの整列配置された垂直チャネルが存在する)である。イオン、水、その他の成分が木材の垂直に整列配置されたチャネルを使って木の幹を通して輸送され、光合成を行うための要求を満たしている。[2,3] 細胞壁は直径約3~5nmのセルロースナノエレメンタリー繊維、リグニン、ペクチン、その他の成分で構成されている。[1,4-6] 階層構造と、セルロース、ヘミセルロール、リグニンの強力な相互作用とが、木材の優れた機械的特性を生じさせている。[7] 近年、木材から抽出される豊富なセルロースナノ繊維(CNF)とセルロースナノクリスタルは、そのナノ構造、優れた機械的特性、光学特性などにより、エレクトロニクス、エネルギー、その他の幅広い種類の用途において大きな関心を集めている。[8-14] 例えば、CNFを屈折率が一致するポリマーと混合することにより、透明な基板が開発されている。[15] セルロース及びヘミセルロースは光学的に無色である一方で、リグニンは暗色の極めて複雑な構造を有している。加えて、木材の多孔構造も可視領域における大きな光散乱の原因となる。その結果、木材は常に不透明で、特定の色が付いて見える。」(原文5181頁左欄1~29行) (イ)「木材の独特な微細構造を利用することにより、先進的な機能的構造が作られている。木材-ポリマー混成物、木材-鉱物混成物(磁性木材など)、生物に触発された構造体が実証されている。[16] Finkが実証したように、木材は、化学漂白した後にポリマーを封入することによって透明にすることができる。[17] 透明木材は、木製家具などの日常使用するものから自動車やオプトエレクトロニクスなどのより高度な用途まで、幅広い用途に使用することができる。ほぼすべての木材の異方構造は、透明化した後でも依然として異方特性を生じる。我々は、有色のリグニンを除去した後に屈折率が一致したポリマーを充填して高い光透過性を実現した異方性透明木材複合体についての初の研究を行った。我々は、木材の元のチャネルが木材の平面に対して垂直に整列配置されているものと、木材の平面に沿って整列配置されているものの、2種類の透明木材を製造した。木材における構造-プロセス-特性の関係を検討したところ、内腔に沿ってリグニンを除去しポリマーを充填する距離が違うため、製造プロセスを著しく変える必要があることが判明した。得られる異方性木材複合体には、整列配置された細胞壁及び内部のセルロース繊維などの、元の木材の微細構造及びナノ構造が維持される。この複合体は非凡な異方性光学特性及び異方性機械的特性を示す。」(原文5181頁左欄30行~右欄13行) (ウ)「図1aは、タイプ1透明木材の構造を強調した図で、開口した貫通チャネルが木材片の平面に対して垂直方向に整列配置されている。タイプ1木材は、木材の幹を半径方向に切断することによって得られており、本研究ではこれをR木材と呼んでいる。R木材ではセルロースの骨格構造が保存されているので、リグニンを容易に除去することができる。リグニンを除去すると、光が散乱することと、リグニンによる光吸収がなくなることにより、黄色がかった木材ブロックは白色になる。この時点で、脱リグニン木材の内腔により、屈折率が一致したポリマーを迅速に浸透させて光散乱を減少させることができるようになるので、透明度の高い木材複合体を作り出すことができる。同様の方法を、内腔が木材片の平面方向に整列配置されているタイプ2透明木材の製造に応用することもできる。タイプ2木材は、木材の幹を縦方向に切断することによって得られており、本研究ではこれをL木材と呼んでいる。リグニン除去とポリマー浸透のプロセスは、タイプ2でもタイプ1と同じだが、タイプ2では物質の移動距離がはるかに長い。図1bに示すように、これらの簡素なプロセスにより、文字通り有色のリグニンナノグルーが無色の、屈折率が一致したポリマーナノグルーで置き換えられ、元の木材の構造が良好に保存された、厚い透明な木材複合体を作成することができる。」(原文5181頁右欄14~35行) (エ)「木材の幹には生長方向に沿って多数の真っすぐなチャネルが存在している。[3] 図2aに示すように、2つの異なる方向に切断することにより、著しく微細構造が異なる木材厚板を容易に取得することができる。R木材及びL木材の定義は、それぞれ図2b、図2cで分かりやすく説明されている。R木材は内腔が平面に対して垂直で、奥行きは木材の厚さと同じであり、L木材にも全く同じ多孔性内腔があるが、内腔の奥行きはウッドブロックの全長と同じである。微細構造の違いは物質移動の異なる挙動を引き起こし、奥行きが浅いR木材ではリグニンを非常に容易に抽出することができる(図2b)。L木材からのリグニン抽出には、はるかに長時間を要すると予想される(図2c)。図2d、図2eは、それぞれR木材及びL木材の微細構造を示す。木材の内腔は直径が均一ではなく10~80μmの範囲にわたっており、これが原因でL木材のリグニン除去が困難になっている。」(原文5181頁右欄36行~5182頁左欄2行) (オ)「本実験では、寸法50mm×50mm、厚さ3mmのウッドブロックを使用した。製紙のパルプ化プロセスに使用されている従来の薬品とプロセスを本実験に用いた。簡単に説明すると、クラフトパルプ法を参考に、ウッドブロックをNaOHとNa2SO3を含む沸騰溶液中に浸漬して(プロセスI、図2f)リグニンの一部を溶解させた。[18] 次に、ウッドブロックをH2O2溶液に移して残存するリグニンを除去した(プロセスII、図2f)。リグニンは有色なのに対してセルロースは無色なので、ウッドブロックの色はウッドブロック表面に存在するリグニンの量を表す。リグニンが除去されているか、R木材とL木材の色を比較したのが図2g、図2hである。予想どおり、リグニンが除去されるにつれて色が薄くなる。R木材に対するプロセスは、L木材よりも極めて急速に進行する。また、図2fは実験環境も示しているが、この環境は、大規模製造のために多数のウッドブロックを同時に処理できるようスケールアップすることが可能である。」(原文5182頁左欄3行~5183頁左欄9行) (カ)「さらに我々は、両タイプの木材におけるリグニン除去も定量化し(図2i、図2j)、プロセスI及びIIで一定時間処理した後の、ウッドブロックのリグニン含有量をy軸とした。プロセスIで処理した両タイプの木材において、リグニンは最初の1時間で急速に除去されるが、リグニン喪失はR木材の方が最高約25%速かった。図2iはリグニン除去における動力学の明確な違いを示しており、プロセスはR木材の方が極めて早く進行している。プロセスIIによる処理の間も、R木材のリグニンの方が早く除去される(図2j)。これらの結果は、リグニン喪失の動力学の違いを決定するチャネルの長さが、L木材ではR木材よりもはるかに長いという事実と合致する。」(原文5183頁左欄10~21行) (キ)「ウッドブロックの異方性内腔は急速なリグニン除去を可能にするだけでなく、特にR木材に関して、ポリマーを急速に浸透させて透明木材複合体を形成することも可能にする。図3aは、ほとんどのリグニンが除去された後のウッドブロックの走査型電子顕微鏡(SEM)画像を示す。ウッドブロックは生長方向に沿った大量の内腔を示している。内腔はセルロースとヘミセルロースでできた細胞壁で囲まれている。さらに、拡大したSEM画像は、物質が木材の幹の半径方向に移動できるようにするための、内腔の内部表面上にある小さな穴を示している(図3b)。図3bの挿入画像は、リグニンを除去した後の脱リグニンウッドブロックの画像を示す。明確に画定されたチャネルを有する微細構造が脱リグニンプロセス中も良好に保存されることは驚くべきことであり、急速なポリマー浸透にとって重要なことである。さらに、拡大したSEM画像は、細胞壁上に整列配置され、高密度に圧縮されたセルロースナノ繊維も示している(図3c)。」(原文5183頁左欄22行~右欄10行) (ク)「次に、減圧による補助の下で、ポリマーを木材内部に浸透させる。[19] 本実験では、硬化速度が比較的遅い透明な液体エポキシ樹脂(#300樹脂と#21非白化脂環式硬化剤の混合物)を使用した。次に、リグニンが除去された白色の木材をポリマーに浸漬し、続いて減圧と減圧解除のプロセスを繰り返した。減圧と減圧解除のサイクルを約3回繰り返すと完全な浸透が達成された。図3dのSEM画像は、ポリマーが実際に内腔を満たすことができることを示している。SEM画像中に標識したように、元の脱リグニン木材の細胞壁と内部に充填されたポリマーとを明確に区別することができる。すべてのチャネルと開口がポリマーで完全に満たされていることを、SEM撮像後に木材-ポリマー複合体の中央を破壊することによって確認した。ポリマー浸透法は自然な木材にある微細構造の枠組みを破壊しないことに注意されたい。木材セルロースと浸透したポリマーとの間には、水素結合やファンデルワールス力などの強力な相互作用が予想される。ポリマーが浸透すると、白色のウッドブロック(図3bの挿入場像)は光学的に透明になる(図3dの挿入画像)。」(原文5183頁右欄11行~5184頁左欄2行) (ケ)「2種類の透明木材の異方性構造は、さまざまな異方性特性を生じる可能性がある。我々はR木材及びL木材の異方性光学特性を慎重に検討した。図4a、bは、2種類の透明木材複合体の光学測定を例示する。比較に用いたR木材及びL木材の厚さは2mmである。異方性測定のための入射光源として、532nmの単一モードレーザー(Thorlabs Inc)を用いた。レーザーを最初にスポットサイズ200μmでコリメートしてからサンプルに垂直に照射した。入射光は透明木材複合体における散乱によって急激に分岐する。散乱効果は、R木材の横断面平面における光伝播では等方性であるが(図4c)、L木材では高度に異方性である(図4d)。Thorlabs社製フォトダイオード電力センサーS130Cを用い、光の伝播方向(z方向)に垂直な、2次元平面のx方向及びy方向(図4e、fに標識)の両方向における散乱光の強度分布を記録した。R木材にポリマーを浸透させると、ポリマーとセルロース繊維との間の屈折率のミスマッチが単一モード緑色レーザー光線の角度依存性散乱を促進させる。したがって、その結果生じた散乱光は、x方向及びy方向に類似した散乱角度で散乱するガウス曲線様の分配を呈する。一方、L木材の木材繊維はx方向に整列配置されているので、y方向に不連続な屈折率の変化を生じる(図4f)。高密度に圧縮され、整列配置された、直径10~80μmの木材繊維細胞による強い光回折の結果、y方向に、極めて大きな散乱角で大きく横方向に拡張された光線が観察される。x方向では、屈折率変動がほとんどないので入射光はわずかしか散乱しないので、生じる光の空間分布は小さくなる。L木材の強固な異方性微細構造によって強度の異方性光学特性が生じている。」(原文5184頁左欄3行~右欄12行) (コ)「透過度とオプティカルヘイズが両方同時に高くなるのは、ポリマーと脱リグニン木材との界面における、透明木材全体を通した総体的な散乱に起因している可能性がある。図S9(補足情報)は、さまざまな厚さの透明木材の全光線透過率及びオプティカルヘイズを示す。オプティカルヘイズは厚さに強く依存する。表面上での散乱とバルク内における散乱の違いを証明するために、我々は新しいレーザー散乱実験をデザインした。側面を粗くしたバルクのエポキシ板を用いて透明木材複合体と比較した(図S10、補足情報)。側面からレーザー光線を照射すると、光は主としてエポキシサンプルの粗くした端部で散乱する。したがって、図S10a(補足情報)が示すように、周囲の側面が最も明るく見える。一方、入射レーザー光線をそのままにして透明木材複合体に照射したときには、最も明るい位置は木材細胞の内腔が生長する方向に沿ってサンプル内部に存在している。明らかに、エポキシ板の表面散乱とは大きく異なり、光は木材複合体により、その経路全体(バルク)に沿って反射/散乱していると思われる。さらに、強度反射/散乱が主としてセルロースとポリマーとの間の界面で生じていることを示す、内腔方向に沿った光の経路が明確に認められる(図S10b、補足情報)。さらに我々は、脱リグニンとポリマー浸透の前に研磨した木材と研磨しない木材を用いて木材複合体アンプルを調製し、それらの光学特性を比較した(図S11、補足情報)。表面粗度が変化しても全光線透過率及びヘイズの両方ともに変化はわずかであることを実験結果が示していることから、観察された光学特性は、表面ではなく、バルク内部における散乱によるものであることが確認される。」(原文5184頁右欄13行~5185頁左欄20行) (サ)「異方性透明木材複合体は、独特な撮像効果も生み出す。光散乱の角度依存性を示すために、我々は垂直線と水平線から成る格子をデザインした(図4g~j)。格子線の表面に接触しているときは、R木材及びL木材は両方ともに格子線を明確に認識することができる(図4g、i)。しかし、透明木材複合体を線から5mm浮かせると視覚効果は劇的に変化する。R木材では、高い透過ヘイズのため線は一切確認できない。L木材では際立って対照的に、図4fに示したヘイズ効果と一致して、格子線は平行線となり、内腔と平行な線は減弱する。」(原文5185頁左欄21~32行) (シ)「光学特性における異方性の挙動に加えて、透明木材複合体の全光線透過率及び光学ヘイズについても検討した(図4k、図4l)。積分球を用いて光透過率及び透過ヘイズを測定した。自然のL木材及びR木材は、リグニンによる吸収が強いため、ほとんど無視できる透過度しか示さない。リグニンを抽出してポリマーを浸透させると、図4kに示すように、両タイプの透明木材複合体が劇的に高い透過度を示す。R木材の透過度は最高90%でL木材よりも高いが、おそらく内腔の奥行きが小さいためポリマーが良好に充填されていることによるものである。興味深いことに、両方のサンプルは400~800nm可視波長範囲全体をカバーする広範なヘイズを示すが、R木材は概してL木材よりも高い値を示している(図4l)。マイクロサイズのセルロースとポリマーとの間の境界が入射光の波長よりも大きな粗さを有する透明木材複合体では、散乱強度は波長からほぼ独立している。この広帯域光マネジメントは、しばしばミー散乱と呼ばれる。[20]両方の種類の木材が示す高いオプティカルヘイズは、太陽電池やディスプレイなど、光結合及び光抽出効率を改善するために高度な光マネジメントが要求される幅広いオプトエレクトロニクス用途に利用できる可能性がある。[21-25] 」(原文5185頁左欄33行~下から4行) (ス)「透明木材複合体の独特なメソ構造は、異方性光学特性を生じるだけでなく、さまざまな方向に劇的に異方的な機械的特性も生じさせる。図5a、図5bに示す形状の透明R木材及び透明L木材を製造して実験を行った。機械的試験用の寸法は、およそ長さ50mm、幅10mm、厚さ3mmである。Tinius Olsen H5KT検査器を用いてサンプルの応力歪を測定した。比較のために、同様の寸法に切断した自然の木材も評価した。自然のR木材と比較して、透明木材の機械的特性は向上しており、破壊強度は最高23.38MPa、弾性係数は最高1.22GPaであった(図5c及び表1)。自然のR木材の破壊強度は4.46MPa、弾性係数は0.19 GPaにすぎなかったことに注目されたい。リグニン除去とポリマー充填により、強度が改善された透明R木材を製造することができる(図5c及び表1)。透明木材の歪みは自然の木材と同様の約3.7%であることに注目されたい。透明L木材の破壊強度は45.38MPa、弾性係数は2.37GPaで、透明R木材の値と比較して約2倍である(図5d及び表1)。さらに、透明L木材の延性は透明R木材よりも高い(靭性は最高1.20MJ m-3、表1)。自然のL木材と比較して、ポリマー充填後の透明L木材では強度と延性が向上している。強度と延性が同時に向上することは異常なことであるが、応用面にとっては非常に望ましいことである。ほとんどの材料においては機械的強度と延性は排他的であることに注目されたい。自然の木材と比較して、透明木材複合体では延性と強度の両方が向上することで靱性が非常に高くなるので(表1)、本研究で開発された透明木材は構造材料用途にとって非常に望ましいものになっている。」(原文5185頁左欄下から3行~右欄29行) (セ)「破壊が発生するまで行った応力-歪み試験の後、横断面を慎重に調査した。自然の木材の内腔はSEMで視認できる(図5e、図5f)。力は、R木材では内腔に対して垂直に印加され、L木材では平行に印加されることに注意されたい。SEM画像では破壊後に類似した形態が認められるが、破壊後の写真が示す肉眼的特徴は非常に異なっている。L木材の横断面は粗面で(図5fの挿入画像)、破壊はチャネル内部で発生している。一方、R木材はチャネルが平行に積層されているため脆い材料(小さな表面、図5eの挿入画像)に類似した横断面を示し、破壊はチャネル間で発生することが確認できる。透明木材複合体に対しても同様のマイクロスケール及びマクロスケールの観察を行い、破壊機構を調べた。透明なR木材及びL木材では、機械的破断後の横断面の目視的構造は類似しており、界面は滑らかである。透明木材複合体においては、ポリマーがリグニン除去後のセルロースバックボーンと架橋結合して3次元ネットワークを形成する。SEMで観察された整列配置構造により、透明L木材の機械的強度は透明R木材よりも高くなっている。」(原文5185頁右欄30~51行) (ソ)「我々は、木材に存在する独特な自然のマクロ構造を利用することにより、2種対の異方性木材複合体を初めて示した。R木材複合体及びL木材複合体の両方において、順序どおりに行う2つの簡素なステップ、すなわち、(1)内腔に沿ったリグニンの除去、及び(2)内腔に沿ったポリマーの浸透、を用いて異方性透明木材複合体を製造した。明確に画定され、整列配置されたチャネルが、2つのプロセスを大きく促進させた。透明木材の両方の種類において、自然のセルロース構造が良好に保存され、有色のリグニンが除去され、多孔質構造がポリマーで充填されることにより、最高90%の高い透明度が得られる。多数のポリマー-セルロース境界面が前方散乱を増強させ、その結果として高いオプティカルヘイズが生じる。さらに、2種類の透明木材複合体は劇的に異なる光散乱特性と機械的特性を示す。例えば、内腔が平面内に配置されている透明木材の方が、機械的な強度及び靱性が非常に向上している。容易に実現できる透明木材複合体には、機械的強度及び光学的外観が両方とも重要な構造材料としての数多くの用途を見出すことができる。」(原文5185頁右欄52行~5186頁右欄8行) (タ)「実験項 材料と試薬:本研究にはWalnut Hollow Companyから購入したシナノキを用いた。木材からリグニン成分を除去するために使用した試薬は、水酸化ナトリウム(>98%、シグマアルドリッチ)、亜硫酸ナトリウム(>98%、シグマアルドリッチ)及び過酸化水素(30%溶液、EMD Millipore Corporation)であった。浸透に使用したポリマーはエポキシ樹脂(#300樹脂及び#21 非白化脂環式硬化剤、AeroMarineProducts, Inc.)であった。使用した溶媒はエタノール(190プルーフ、Pharmco-Aaper)及び脱イオン(DI)水であった。 木材からのリグニンの除去:リグニン除去溶液は、NaOH(2.5mol L-1)及びNa2SO3(0.4mol L-1)をDI水に溶解して調製した。木材スライスをリグニン除去液に浸漬して12時間煮沸し続けた後、熱蒸留水で3回すすいでほとんどの試薬を除去した。次に、ウッドブロックを漂白液(H202、2.5mol L 1 DI水溶液)に入れ、撹拌せずに煮沸し続けた。サンプルの黄色の色調が消失したところで取り出し、冷水ですすいだ。脱リグニンサンプルをエタノール中で保存した。 ポリマーの浸透:2つの液体成分(#300樹脂及び#21 非白化脂環式硬化剤)を2:1で混合してエポキシ樹脂を調製した。次に、脱リグニン木材をシャーレの底に置き、液体樹脂に浸漬した。続いて200Paの減圧下にて脱気し、木材中の気体とエタノールを除去した。約5分後に減圧を解除し、大気圧によって樹脂を木材構造内に充填させた。このプロセスを3回繰り返した。ポリマーの固化を回避するため、上記すべてのプロセスを30分以内に完了した。最後に、木材サンプルと樹脂が入ったシャーレを30℃で12時間静置した。樹脂が完全に固化した後、樹脂が浸透した木材サンプルをシャーレからはがし取った。 測定と特性評価:木材の形態については走査型電子顕微鏡(SEM、日立SU-70)を用いて特性を明らかにした。透過率スペクトラム及びヘイズは、UV-vis Spectrometer Lambda 35(PerklnElmer, USA.)で測定した。リグニン含有量は、リグニン測定の標準方法(Technical Association of Pulp and Paper Industry Standard Method T 222-om-83)で測定した。概略を説明すると、木材(1g、m0)を計量してエタノールで4時間抽出した後、冷H2SO4(72%、15mL)で激しく撹拌しながら20℃にて2時間処理した。混合物をビーカーに移し、560mLのDI水を加えてH2SO4を3質量%に希釈し、4時間煮沸した。冷めてからろ過し、DI水で洗浄した。不溶性物質を乾燥させて秤量した(m1)。リグニン含有量を次式で求めた:[m1/m0]×100%。安定化出力電源を接続した532nm単一モードレーザーDJ532-10(Thorlabs社)を入射光熱源に使用した。レーザーを最初にスポットサイズ200μmでコリメートしてからサンプルに垂直に照射した。ガウスビームは透明木材複合体を通して伝搬した後、急速に発散される。散乱分布をマップするために、Thorlabs社製フォトダイオード電力センサーS130Cを用い、入射角度に対して垂直な2次元平面上の散乱光分布を記録した。5mmの一定直径を有するピンホールをフォトダイオードの前に配置し、x軸及びy軸に沿ってさまざまな角度で光パワーを記録した。機械的特性はTinius Olsen H5KT試験機を用いて検定した。節や継ぎ目のない、寸法約50mm×10mm×3mmの木材を選択した。」(原文5186頁右欄9行~5187頁左欄下から7行) (チ)図面 図2(i)、(j)及びその説明文は以下のものである。 [図:0001400490000002.jpg] [図:0001400490000003.jpg] 「i、j)それぞれリグニン除去プロセスI及びIIで処理中の木材の、リグニン含有量の変化の比較。R木材には開口している短いチャネルがあるためリグニン除去が極めて迅速に行われる。(i)の青色の円は、プロセスIIによる次の処理に移行するためのプロセスIの終了時間を示す。」 イ 上記アより、甲第5号証には、次の2つの発明(以下、それぞれ「甲5方法発明」及び「甲5発明」という。)が記載されていると認める。 [甲5方法発明] 「2つのステップ、すなわち、(1)リグニンの除去、及び(2)ポリマーの浸透、を用いて透明木材複合体を製造する方法であって、((ソ)) 寸法50mm×50mm、厚さ3mmのウッドブロックを使用し、 、ウッドブロックをNaOHとNa2SO3を含む沸騰溶液中に浸漬して(プロセスI)リグニンの一部を溶解させ、次に、ウッドブロックをH2O2溶液に移して残存するリグニンを除去し(プロセスII)、 ウッドブロックの色はウッドブロック表面に存在するリグニンの量を表すので、リグニンが除去されるにつれて色が薄くなり、((オ)) 次に、リグニンが除去された白色の木材をポリマーに浸漬し、続いて減圧と減圧解除のプロセスを繰り返して、ポリマーを木材内部に浸透させる、((ク)) 方法。」 [甲5発明] 甲5方法発明により得られる、透明木材複合体。 (6)甲第6号証 ア 甲第6号証の記載事項 本件特許に係る出願の優先日前に発行された甲第6号証には、以下の記載がある。 「リグニンのバリエーション リグニンは草本植物及び木本植物の生長と順応に必須であるが(Sarkanen及びLudwig、1971、Boerjanら、2003、Ralphら、2007、Heitnerら、2010、Vanholmeら、2010)、必要とされるリグニン量やリグニンの組成がどの程度変化するかは不明である。1本の植物の中でも組織によってリグニン含有量は非常に大きく異なる。例えば、リグニンは若い芽には非常に少なく、木質部には多い。木の種類が違うと木部のリグニン含有量が15%~40%違っていることがある(Sarkanen及びLudwig、1971)。種内では、木部におけるリグニンの平均含有量の変動は非常に少なく、多くの場合わずか数パーセントの範囲内である(Einspahrら、1964、van Buijtenenら、1968)。さらに、木部が重力屈性刺激や機械的応力の下で形成されるとリグニン含有量は増減する(あて材として知られている、Timell1969、1986、Andersson-Gunnerasら、2006)。軟材(裸子植物)を圧縮材にすると最高40%をリグニンが占める可能性がある。硬材(被子植物)の張力木質部線維は、リグニンをほとんど欠損した、分化したゼラチン状細胞層を有している(Timell、1969)。 リグニンの組成も非常に変動幅が非常に広い。リグニンのサブユニットは主に2種類ある。1つはコニフェリルアルコールモノマーから誘導されてグアヤシル(G)基を生じるもので、結果的に軟材の典型的リグニンとなる。第2のモノマーであるシナピルアルコールは、重合するとシリンジル(S)基を生じる。G基及びS基両方のリグニンが混在するタイプは硬材によくみられ、その比率(S/G比)によって特徴付けられる。硬材の間でもS/G比は大きく変化する(Sarkanen及びLudwig、1971)。 草本植物及び農作物においては伝統的な育種、自然突然変異、遺伝子組換えにより、リグニンを大幅に減らすことに成功している。一般に、リグニンの減少は収穫高の減少と関連している(Pedersenら、2005)。しかし、多くの場合、収量又は適合性を低下させることなくリグニンを減らすことができる。遺伝的背景と多様な環境が、重要な役割を果たしている。」(原文555頁右欄20行~556頁左欄16行) (7)甲第7号証 ア 甲第7号証の記載事項 本件特許に係る出願の優先日前に発行された甲第7号証には、以下の記載がある。 「水酸化ナトリウムを炭酸ナトリウムで置き換えると、過酸化水素で漂白したパルプの最終的な白色度をわずかに低下させる、さらに白色度の安定性を向上させる(52,53)。 さらに、ケイ酸塩添加物の存在下又は非存在下における過酸化物漂白プロセスでは、水酸化ナトリウムの代わりにカルシウム並びにマグネシウムの酸化物及び水酸化物を用いることができる。ケイ酸塩を添加しない場合であっても、マグネシウム化合物によって最終的な白色度レベルを向上させることができる。さらに、廃液の化学的酸素要求量(COD)が半減し、パルプの機械的特性が多少向上し、プロセスコストは同程度である(1,54)。 少なくとも80%のISO白色度レベルを確保しつつ過酸化物漂白プロセスにおけるコストを削減する方法の1つは、廃液中の未反応過酸化物をリサイクルすることである。このリサイクルは、パルプから抽出される有機化合物、ケイ酸物、カルシウムの存在によって困難になる。これらはケイ酸塩と、カルシウム及びマグネシウムとの相互作用によってパルプ繊維上に蓄積する。 真菌ベースの処理を用いて得られたポプラ由来のバイオメカニカルパルプを、アルカリ性過酸化物を用いて漂白した場合のISO白色度は、漂白剤にヒドロ亜硫酸ナトリウムを使用した場合の60%のみに対して80%であった(56)。 サーモメカニカルパルプのリライニング中にいくつかの添加剤を使用すると白色度が増加し(2~3パーセントポイント)、過酸化水素を用いた漂白時の色戻りが少なくなる(40%)(57)。 低温でのアルカリ性前処理と、それに続く、過酸化物処理を介在させて大気圧で行う2つの精錬ステップにより、ポプラから良好な強度関連特性を有するパルプを非常に高収率で得ることができる(58)。 代替的戦略の1つは過酸化物を用いて高圧で漂白を行っており、パルプ中に存在する金属イオンをコントロールするための少量の化学試薬を併用して、非常に良い結果(すなわち、ISO白色度80%、最小の粘性ロス、漂白の選択性が高い、より高い残存過酸化物濃度)が得られている(16)。 特に機械パルプに有効なのは、過酸化物ステップの前に水素化ホウ素ナトリウム及びケイ酸ナトリウムを用いる処理を行うP-Rプロセスである。P-Rプロセスは従来のプロセスと同様の過酸化物濃度で白色度を向上させることができる(59)。過酢酸のin situ 生成を低下させて過酸化剤の安定性を向上させ、褐変反応を妨害する、脱アセチル化作用が確認されている。さらに、ホウ化水素は遷移金属を、それが未漂白パルプ中に存在しているか先行するオゾン漂白ステップで生じたかにかかわらず減少させる。先に説明したように遷移金属の減少は過酸化物とリグニンのカルボキシル基の安定性に好ましい影響を及ぼし、それにより過酸化物漂白ステップにおけるデーキン反応及びセルロースの解重合反応が回避される。 パルプ漂白において二酸化塩素に過酸化物を添加すると、有機塩素化合物の生成が低減される(62,63)。さらに、過酸化物は二酸化塩素溶液から塩素を除去するので、その後の漂白ステップでの有機塩素化合物の生成量が減少する。Francisら(65)は、二酸化塩素を用いるパルプ漂白ステップに過酸化物を使用することが従来プロセスに対する有効な代替策になり、それによってモリブデン酸塩触媒を容易に回収できるようになることを明らかにした。 Gupta(65)は、漂白用の次亜塩素酸カルシウムを過酸化物で置き換えることによって得られた漂白パルプの質の改善について検討した。」(原文369頁右欄4行~下から3行) (8)甲第8号証 ア 甲第8号証の記載事項 本件特許に係る出願の優先日前に発行された甲第8号証には、以下の記載がある。 「本発明の方法で満足のいく結果が得られることが分かっている漂白剤の2パートの組成は以下の通りである: 水酸化ナトリウム2% ケイ酸ナトリウム1% ホウ酸ナトリウム1% 過酸化水素15% 当該技術分野で知られている木材漂白用の他の基本的な2パート組成を使用してもよい。過酸化水素の分解を遅延させるために、ケイ酸ナトリウム又はホウ酸ナトリウム以外の、硫酸マグネシア、リン酸ナトリウム、エチレンジアミン四酢酸亜鉛二ナトリウム及び当該技術分野において他の既知のものなどの安定剤を使用してもよい。安定剤の使用量は、当該時間間隔の間、過酸化水素の活性を維持できるような量である。この量は、一般に少なくとも漂白液の1%である。適量は実験に基づいて容易に決定することができる。」(原文第3欄10~28行) 2 理由1(拡大先願)、理由2(新規性)及び理由3(進歩性)について (1)本件特許発明5について 事案に鑑み、本件特許発明5から検討する ア 甲1方法発明を先願発明として (ア)対比 a 本件特許発明5の工程「b)前記木材基板において発色団を不活性化するための漂白液を添加し、それにより15%~22.4%のリグニンを含む漂白木材基板を得る工程」に関して、本件特許の明細書の発明の詳細な説明において、 「【発明が解決しようとする課題】【0006】本発明の目的は、脱リグニンを必要とすることなく環境に優しく工業的に拡張可能な方法で調製される、・・・透明木材を提供することである。また、1片の木材が脱リグニンなしで漂白され、続いて漂白木材基板にポリマーが含浸されて透明木材が得られる、透明木材を調製するための方法が提供される。」、 「【0022】・・・本発明による方法において使用される漂白液は、発色団の不活性化をもたらし、これは、発色団が不活性化されているとしてもリグニンが保持され、主な木材構造が保存されている漂白木材を実現し、木材の強度をほぼ維持することができる。」 と説明されるとおり、 透明木材を調製するための方法における、脱リグニンなしで漂白する工程であり、そこで添加する漂白液は「発色団を不活性化」してもリグニンは保持されるものであって、またそのリグニンの保持について、漂白木材基板は「15%~22.4%のリグニンを含む」と具体的に特定するものである。 一方、甲1方法発明は、 「(1)少なくとも1種の有機流体によりリグノセルロース系材料の構造体をソーキングして、当該材料中に存在するリグニンの少なくとも40質量%かつ最大で85質量%を溶解させる少なくとも1つの工程; (2)部分的脱リグニン化構造体を生じさせるために、ソーキング工程(1)からもたらされた溶解リグニンを排出するように、工程(1)からもたらされた構造体を少なくとも1種の有機流体により洗浄する少なくとも1つの工程;」 という、脱リグニン工程を有するものであり、工程(1)、(2)で得られる構造体のリグニン含量の特定も有しないものである。 b 前記aを踏まえ、本件特許発明5と甲1方法発明とは、少なくとも以下の点で相違する。 [相違点1] 本件特許発明5は、脱リグニン工程を有さず、また漂白工程(工程b)で得られる漂白木材基板が「15%~22.4%のリグニンを含む」との特定を有するのに対し、 甲1方法発明は、脱リグニン工程(工程(1)、(2))を有し、また当該工程からもたらされた構造体のリグニン含量についての特定も有しない点。 (イ)判断 a 検討 本件特許発明5と甲1方法発明との間に実質的な相違点が存在するから、本件特許発明5は、甲1方法発明ではない。 b 申立人の主張について 申立人は、上記相違点1に関連して、申立書において以下のように主張している。(申立人の主張中の各「[構成要件]」は、上記第2における分説のとおり。以下同様。) 「甲第1号証には・・・木材は一般に35重量%までのリグニンを含むことが記載されている。また、上述したように、一般的な技術知識を示す甲第6号証には、木材には、一般に40重量%までのリグニンが含まれることが記載されている・・・ よって、甲第1号証の工程(1)では、リグニンを35重量%含む木材の場合、21重量%(工程(1)に規定のように材料中に存在するリグニンの少なくとも40%を溶解することにより21重量%となる)から5.25重量%(工程(1)に規定のように材料中に存在するリグニンの最大85%を溶解することにより5.25重量%となる)のリグニンを含む構造体が得られる。 したがって、甲第1号証に記載の工程で漂白された木材には、リグニンが「5.25重量%~ 21重量」含まれる。したがって、甲第1号証には、本件特許発明5の[構成要件J]が記載されている。」(申立書36頁23行~37頁10行) 上記申立人の主張について検討する。 申立人は、「甲第1号証に記載の工程で漂白された木材には、リグニンが「5.25重量%~ 21重量」含まれる。したがって、甲第1号証には、本件特許発明5の[構成要件J]が記載されている。」と主張している。 しかしながら、まず、上記(ア)に示したとおり、本件特許発明5の工程bは、脱リグニン工程である甲1方法発明の工程(1)、(2)と、方法の発明として相違しており、申立人主張のように「甲第1号証には、本件特許発明5の[構成要件J]が記載されている」とはいえない。 そして、申立人主張の5.25~21重量%との数値範囲についても、脱リグニン化の程度が低い側の臨界値である21重量%の算出根拠をみると、「甲第1号証の工程(1)では、リグニンを35重量%含む木材の場合、21重量%(工程(1)に規定のように材料中に存在するリグニンの少なくとも40%を溶解することにより21重量%となる)・・・のリグニンを含む構造体が得られる。」との主張であり、すなわち、甲1方法発明において、材料としての木材のリグニン含有量が「リグニン含有量が15~35質量%、好ましくは18~32質量%、さらにより好ましくは20~30質量%である実質的にすべての種類の木材」である中の上限側である35重量%の木材に対し、工程(1)におけるリグニンの溶解量が「少なくとも40質量%かつ最大で85質量%」である中で最も脱リグニン化の程度が低い側の40質量%を選択することが主張の根拠となっているが、甲1方法発明は、「リグノセルロース系材料の一部の脱リグニン化の程度が低い領域は、天然のリグノセルロース系材料の構造によって入射光線を吸収することができ、一方、最も脱リグニン化された領域は、より明るく見える傾向があり、脱リグニン化の程度がより低い領域よりも容易に光が通過させる傾向があり」というもの、すなわち、脱リグニン化の程度が低い領域は入射光線が吸収され、最も脱リグニン化された領域は容易に光が通過させる傾向がある、とされるものであるから、透明な構造体を得るにもかかわらず、上限側のリグニン含有量の木材に対して、脱リグニン化の程度が下限側となるリグニン溶解量を選択する理由はない。 また、申立人が提出した他の証拠をみても、15%~22.4%のリグニンを保持することが技術常識といえるものではない。 以上のように、申立人の主張は採用できない。 (ウ)小括 以上のとおりであるから、本件特許発明5は甲1方法発明と同一ではない。 イ 甲第2号証を主引用例として (ア)対比 a 上記ア(ア)aで述べたとおり、本件特許発明5は、 脱リグニンなしで透明木材を調製するための方法であり、工程bで添加される漂白液も「発色団を不活性化」してもリグニンは保持されるものであって、またそのリグニンの保持について、漂白木材基板は「15%~22.4%のリグニンを含む」と具体的に特定するものである。 一方、甲2方法発明は、「相当な量のリグニン」が除去される「脱リグニンプロセス」を有し、また当該プロセスで得られる木材のリグニン含量の特定も有しないものである。 b 前記aを踏まえ、本件特許発明5と甲2方法発明とは、少なくとも以下の点で相違する。 [相違点2] 本件特許発明5は、脱リグニン工程を有さず、また漂白工程(工程b)で得られる漂白木材基板が「15%~22.4%のリグニンを含む」との特定を有するのに対し、 甲2方法発明は、「脱リグニンプロセス」を有し、また当該プロセスで得られる木材のリグニン含量の特定も有しない点。 (イ)判断 a 検討 相違点2について検討する。 本件特許発明5と甲2方法発明との間に実質的な相違点が存在するから、本件特許発明5は、甲2方法発明ではない。 また、甲第2号証全体、あるいは申立人が提出した他の証拠をみても、脱リグニンプロセス後も15%~22.4%のリグニンを保持することについて、記載も示唆もされておらず、よって相違点2に係る本件特許発明5の構成は、当業者が容易に想到できるものではない。 b 申立人の主張について 申立人は、上記相違点2に関連して、申立書において以下のように主張している。 ・「・・・甲第2号証には、・・・「木材を完全に脱リグニンする必要はない。なぜなら、ある割合のリグニンが残っている間に分解消化を停止すれば、得られる生成物はより強くなることが見出されているからである」、甲第2号証で用いられる木材は、約25重量%のリグニンを含むこと、さらに、甲第2号証の工程では、ヘミセルロースが「不安定で弱い物質」であり、リグニンが「縦の毛状細胞を一緒に保持するセメント又はバインダーであり、したがって大部分が細胞間(intercellular)に存在する」ことが記載されている。 したがって、甲第2号証の工程により溶解される木材物質のかなりの割合はヘミセルロースであり、リグニンは多くは除去されるものではない。したがって、甲第2号証の工程により、リグニンを「15~22.4%」程度含む漂白木材を得ることができる。したがって、甲第2号証には、本件特許発明5の「構成要件J」が記載されている。」(申立書48頁7行~48頁19行) しかしながら、甲第2号証には、プロセス前の自然木について、「基礎的な木材化学から、木材物質が約50パーセントの純セルロース、25パーセントのヘミセルロース、及び25パーセントのリグニン、その他の少量の物質で構成されていることが分かる。」(上記1(3)ア(ウ))との記載はあるが、プロセスを経た後のリグニン含量の数値については記載も示唆も無い。申立人は、「したがって、甲第2号証の工程により溶解される木材物質のかなりの割合はヘミセルロースであり、リグニンは多くは除去されるものではない。」と述べているが、甲2方法発明は「脱リグニンにより、相当な量のリグニンとアルカリ可溶性ヘミセルロースが除去され、これらの物質の特定の比重は非常に高く、それらが低比重の樹脂で置き換えられる」とされるものであって、「溶解される木材物質のかなりの割合はヘミセルロースであ」るとされるものでも、「リグニンは多くは除去されるものではない」とされるものでもない。 また、甲2方法発明においては、「一定のパーセンテージのリグニンを残したまま蒸解を抑制すると生成される製品の強度が高まることが分かっているので、機械的な価値のみが要求される場合には木材から完全に脱リグニンする必要はな」いとされているが、これは、「機械的な価値のみが要求される場合」と特定されるものであり、「機械的な価値のみ」でなく透明性が要求される場合について完全に脱リグニンする必要はないと特定するものではなく、また「完全に」脱リグニンする必要はないというものであって脱リグニン自体を省くことを示唆するものでもない。加えて、甲第2号証全体を見ても、「一定のパーセンテージ」の具体的な数値について記載も示唆もない。 以上のように、申立人の主張は採用できない。 (ウ)小括 以上のとおりであるから、本件特許発明5は甲2方法発明と同一ではない。 また、本件特許発明5は、当業者が、甲2方法発明に基づいて、容易に発明をすることができたものではない。 ウ 甲第3号証を主引用例として (ア)対比 a 上記ア(ア)aで述べたとおり、本件特許発明5は、 脱リグニンなしで透明木材を調製するための方法であり、工程bで添加される漂白液も「発色団を不活性化」してもリグニンは保持されるものであって、またそのリグニンの保持について、漂白木材基板は「15%~22.4%のリグニンを含む」と具体的に特定するものである。 一方、甲3方法発明は、 「木材のリグニンは、木材を沸騰している希釈したNaOH(2.5 mol L-1、DI水溶液)及びNa2SO3(0.4 mol L-1、DI水溶液)に3時間浸漬し、続いて沸騰しているH2O2(2.5 mol L-1、DI水溶液)に木材の黄色い色調が完全に消えるまで2~3時間浸漬することによって選択的に除去し」というリグニンを除去する工程を有するものである。 b 前記aを踏まえ、本件特許発明5と甲3方法発明とは、少なくとも以下の点で相違する。 [相違点3] 本件特許発明5は、脱リグニン工程を有さず、また漂白工程(工程b)で得られる漂白木材基板が「15%~22.4%のリグニンを含む」との特定を有するのに対し、 甲3方法発明は、リグニンを除去する工程を有し、また当該工程で得られる木材のリグニン含量の特定も有しない点。 (イ)判断 a 検討 相違点3について検討する。 甲第3号証全体、あるいは申立人が提出した他の証拠をみても、リグニンを除去する工程後も15%~22.4%のリグニンを保持することについて、記載も示唆もされておらず、よって相違点3に係る本件特許発明5の構成は、当業者が容易に想到できるものではない。 b 申立人の主張について 申立人は、上記相違点3に関連して、申立書において以下のように主張している。 ・「[構成要件J]は・・・甲第3号証には、・・・浸漬後の漂白木材基材が15%~22.4%のリグニンを含んでなることは明示的には記載されていない。しかしながら、本件特許発明5では、「それにより15%~22.4%のリグニンを含む漂白木材基板を得る」旨を規定することによる技術的な効果は記載されていない。したがって、本件特許発明5の技術的な課題は、甲第3号証の透明な木材複合体を製造する方法の代替手段を単に提供するものと考えることができ、本件特許発明5の[構成要件J]は甲第3号証の記載からいわゆる進歩性を有さない。 また、リグニンの含有量について、当業者は、甲第3号証に記載のような透明な木材複合体を製造するプロセスにおいて、一般的な技術知識を参酌して簡単な方法で、例えば外挿によりリグニン含有量を容易に求めることができる。ここで、一部繰り返しになるが、木材中のリグニンの量に関して、甲第4号証には、木材は30%までのリグニンを含むことが記載され、そして、甲第5号証には、・・・着色リグニンを除去することにより、リグニン含有量がおよそ9%減少することが記載されている。したがって、例えば、木材が30%のリグニンを含む場合、甲第5号証のリグニン除去プロセスによってリグニンを9%減少させると、(脱リグニン処理後の)木材中のリグニンの量が21%(=30%-9%)となり、この「21%」は、本件特許発明5の[構成要件J]の「15%~22.4%のリグニン」の範囲に含まれる。したがって、本件特許発明5の[構成要件J]は、当業者が甲第3号証の記載から一般的な技術知識(例えば、甲第4号証及び第5号証)を参酌して容易に想到することができる。」(申立書63頁4行~下から2行) しかしながら、上記ア(ア)aで述べたとおり、本件特許発明5は、脱リグニンなしで透明木材を調製するための方法であり、リグニンの保持について「15%~22.4%のリグニンを含む」と具体的に特定するもので、その技術的意味は明確であり、脱リグニンをせずにリグニンを保持すること、またそのリグニン含量の数値について開示しない甲3方法発明から進歩性を有しないといえるものではない。 また、後記エ(イ)、オ(イ)で検討したように、甲第4号証、甲第5号証を参照しても、相違点3に係る本件特許発明5の「15%~22.4%のリグニン」という構成に相当する事項が導かれるものではない。 以上のように、申立人の主張は採用できない。 (ウ)小括 以上のとおりであるから、本件特許発明5は、当業者が、甲3方法発明に基づいて、容易に発明をすることができたものではない。 エ 甲第4号証を主引用例として (ア)対比 a 上記ア(ア)aで述べたとおり、本件特許発明5は、 脱リグニンなしで透明木材を調製するための方法であり、工程bで添加される漂白液も「発色団を不活性化」してもリグニンは保持されるものであって、またそのリグニンの保持について、漂白木材基板は「15%~22.4%のリグニンを含む」と具体的に特定するものである。 一方、甲4方法発明は、 「NaOH処理による化学的方法でリグニンを除去した後、H2O2で漂白し、 通常、質量比で18~21%のリグニンを含むシナノキから、リグニン除去プロセスの速度と継続時間を慎重に管理することにより、木材の微細構造を保存しつつリグニンをほぼ完全に除去することができ」というリグニン除去プロセスを有するものである。 b 前記aを踏まえ、本件特許発明5と甲4方法発明とは、少なくとも以下の点で相違する。 [相違点4] 本件特許発明5は、脱リグニン工程を有さず、また漂白工程(工程b)で得られる漂白木材基板が「15%~22.4%のリグニンを含む」との特定を有するのに対し、 甲4方法発明は、リグニン除去プロセスを有し、また当該プロセス後の木材のリグニン含量の特定も有しない点。 (イ)判断 a 検討 相違点4について検討する。 甲第4号証全体、あるいは申立人が提出した他の証拠をみても、リグニン除去プロセス後も15%~22.4%のリグニンを保持することについて、記載も示唆もされておらず、よって相違点4に係る本件特許発明5の構成は、当業者が容易に想到できるものではない。 b 申立人の主張について 申立人は、上記相違点4に関連して、申立書において以下のように主張している。 ・「[構成要件J]については、・・・甲第4号証には、漂白溶液H2O2への浸漬後の漂白木材基材が15%~22.4%のリグニンを有することは明示的には記載されていない。しかしながら、本件特許では、「それにより15%~22.4%のリグニンを含む漂白木材基板を得る」旨を規定することによる技術的な効果は記載されていない。したがって、本件特許発明5の技術的な課題は、甲第4号証の透明な木材複合体を製造する方法の代替手段を単に提供するものと考えることができ、本件特許発明5の[構成要件J]は甲第4号証の記載からいわゆる進歩性を有さない。 また、甲第4号証には、木材は30%までのリグニンを含むことが記載されており・・・、材料中に存在するリグニンの33%のみを除去することが提案されている(第335頁右欄及び図4a参照)。したがって、甲第4号証には、木材が30%のリグニンを含む場合、(脱リグニン処理後の)木材中のリグニンの量が20.1%(=35%×(100%-33%)÷100%)となる。この木材が含む「20.1%」のリグニンの量は、[構成要件J]の「15%~22.4%のリグニン」の範囲に含まれる。したがって、[構成要件J]は、当業者が甲第4号証の記載から容易に想到することができる。」(申立書65頁1~19行) しかしながら、上記ア(ア)a及びウ(イ)bで述べたとおり、特許発明5における「15%~22.4%のリグニンを含む」との特定の技術的意味は明確であり、脱リグニンをせずにリグニンを保持すること、またそのリグニン含量の数値について開示しない甲4方法発明から進歩性を有しないといえるものではない。 また、甲第4号証には「材料中に存在するリグニンの33%のみを除去することが提案されている」と主張しているが、甲第4号証335頁及び図4(a)の実際の記載は、上記1(4)ア(ク)及び(ス)に摘記したとおりであり、33%リグニン除去のサンプルは、リグニン含有量が木材の光学特性に及ぼす影響を見る目的で、100%リグニン除去(「リグニンを完全に除去」)のサンプルが「可視光線範囲全体にわたり透過度が大きく向上し、光吸収は最小限に抑えられ」ることと対比して、33%リグニン除去では(リグニン除去が未処理のサンプルとほぼ同様に)「可視光スペクトラム全体」にわたって光が吸収されることを示すサンプルとしてあげられているものであり、リグニン33%除去で透明木材を得ることが甲第4号証において提案されているものではない。 以上のように、申立人の主張は採用できない。 (ウ)小括 以上のとおりであるから、本件特許発明5は、当業者が、甲4方法発明に基づいて、容易に発明をすることができたものではない。 オ 甲第5号証を主引用例として (ア)対比 a 上記ア(ア)aで述べたとおり、本件特許発明5は、 脱リグニンなしで透明木材を調製するための方法であり、工程bで添加される漂白液も「発色団を不活性化」してもリグニンは保持されるものであって、またそのリグニンの保持について、漂白木材基板は「15%~22.4%のリグニンを含む」と具体的に特定するものである。 一方、甲5方法発明は、 「ウッドブロックをNaOHとNa2SO3を含む沸騰溶液中に浸漬して(プロセスI)リグニンの一部を溶解させ、次に、ウッドブロックをH2O2溶液に移して残存するリグニンを除去し(プロセスII)、」というリグニンの除去ステップを有するものである。 b 前記aを踏まえ、本件特許発明5と甲5方法発明とは、少なくとも以下の点で相違する。 [相違点5] 本件特許発明5は、脱リグニン工程を有さず、また漂白工程(工程b)で得られる漂白木材基板が「15%~22.4%のリグニンを含む」との特定を有するのに対し、 甲5方法発明は、リグニンの除去ステップを有し、また当該ステップ後のウッドブロックのリグニン含量の特定も有しない点。 (イ)判断 a 検討 相違点5について検討する。 甲第5号証全体、あるいは申立人が提出した他の証拠をみても、リグニン除去ステップ後も15%~22.4%のリグニンを保持することについて、記載も示唆もされておらず、よって相違点5に係る本件特許発明5の構成は、当業者が容易に想到できるものではない。 b 申立人の主張について 申立人は、上記相違点5に関連して、申立書において以下のように主張している。 「[構成要件J]については、甲第5号証には、木材スライドを漂白溶液(H2O2・・・)中に入れ、さらに冷水で洗浄して着色リグニンを除去することは記載されているが、H2O2への浸漬後の木材基材が15%~22.4%のリグニンを含んでなることは明示的には記載されていない。しかしながら、本件特許発明5では、「それにより15%~22.4%のリグニンを含む漂白木材基板を得る工程を含む、」旨を規定することによる技術的な効果は記載されていない。したがって、本件特許発明5の技術的な課題は、甲第5号証の透明な木材複合体を製造する方法の代替手段を単に提供するものと考えることができ、本件特許発明5の[構成要件J]は甲第5号証の記載からいわゆる進歩性を有さない。 また、リグニン含有量について、・・・当業者は、甲第5号証に記載のような透明な木材複合材料を得るプロセスにおいて、公知技術を参酌して簡単な方法で、例えば外挿により、リグニン含有量を求めることができる。ここで、一部繰り返しになるが、甲第5号証には、リグニン除去プロセスによってリグニン含有量がおよそ9%減少することが記載され(図2i)及び図2j)、そして、木材中のリグニンの量に関して、例えば、甲第4号証には、木材は30%までのリグニンを含むことが記載されている。したがって、例えば、木材が30%のリグニンを含む場合、甲第5号証のリグニン除去プロセスによってリグニンを9%減少させると、(脱リグニン処理後の)木材中のリグニンの量が21%(=30%-9%)となる。この木材が含む「21%」のリグニンの量は、[構成要件J]の「15%~22.4%のリグニン」の範囲に含まれる。したがつて、甲第5号証において、当業者は上述した方法を行うことにより、[構成要件J]に容易に想到することができる。よって、[構成要件J]は、当業者が甲第5号証の記載から容易に想到することができる。」(申立書65頁16行~66頁10行) しかしながら、上記ア(ア)a及びウ(イ)bで述べたとおり、特許発明5における「15%~22.4%のリグニンを含む」との特定の技術的意味は明確であり、脱リグニンをせずにリグニンを保持すること、またそのリグニン含量の数値について開示しない甲5方法発明から進歩性を有しないといえるものではない。 また、「甲第5号証には、リグニン除去プロセスによってリグニン含有量がおよそ9%減少することが記載され(図2i)及び図2j)」と主張しているが、上記1(5)ア(タ)に摘記したとおり、甲第5号証の図2(i)、(j)は、リグニン除去プロセスI及びIIにより「リグニン含有量がおよそ9%減少すること」を示すものではない。すなわち、プロセスI、II開始前には20%以上あったリグニン含有量(図2(i))が、プロセスI、II後には(「R木材」でも「L木材」でも)3%を下回っており、申立人主張の「リグニン含有量がおよそ9%減少する」とは明らかに異なっている。(なお念のため補足すると、上記1(5)ア(オ)あるいは(ソ)の甲第5号証の記載、また図2(i)の「(i)の青色の円は、プロセスIIによる次の処理に移行するためのプロセスIの終了時間を示す。」(上記1(5)ア(タ))と説明されるように、リグニン除去プロセスI、IIは一続きのプロセスであり、一方のプロセスのみでリグニン除去を終えるようなことは、甲第5号証に記載も示唆もされていない。) 以上のように、申立人の主張は採用できない。 (ウ)小括 以上のとおりであるから、本件特許発明5は、当業者が、甲5方法発明に基づいて、容易に発明をすることができたものではない。 (2)本件特許発明1について 本件特許発明1を、甲1発明、並びに、甲2発明、甲3発明、甲4発明及び甲5発明と対比すると、いずれの甲号証記載の発明も、少なくとも、本件特許発明1の有する「15%~22.4%のリグニンを含む」という特定を有さない点で、本件特許発明1と相違している。 よって、上記(1)における検討と同様に、本件特許発明1は、甲1発明あるいは甲2発明と同一ではなく、また、甲2発明、甲3発明、甲4発明あるいは甲5発明に基づいて、当業者が容易に発明できたものでもない。 (3)本件特許発明2ないし4、及び、6ないし11について 本件特許発明2ないし4は、本件特許発明1の構成をすべて含み、更に減縮したものであるから、上記(2)と同様に、甲1発明あるいは甲2発明と同一ではなく、また、甲2発明、甲3発明、甲4発明あるいは甲5発明に基づいて、当業者が容易に発明できたものでもない。 本件特許発明6ないし11は、本件特許発明5の構成をすべて含み、更に減縮したものであるから、上記(1)と同様に、甲1発明あるいは甲2発明と同一ではなく、また、また、甲2発明、甲3発明、甲4発明あるいは甲5発明に基づいて、当業者が容易に発明できたものでもない。 3 理由4(新規事項)について (1)申立人の主張 「本件特許発明1の[構成要件D]及び本件特許発明5の[構成要件J]におけるリグニンの範囲「15%~22.4%」の上限値である「22.4%」は、2022年4月18日提出の手続補正書により「15%超のリグニン」が『15%~22.4%』に補正されて導入されたものである。 これに対し、当初明細書には、「15%~22.4%」の範囲は記載されておらず、また、「15%~22.4%」の範囲についての裏付けは記載されていない。 実際「22.4%」という値は、本明細書段落[0044]に記載の実施例5(例5)に関する、同段落[0045]の[表1]において、実施例1(例1)の特定のリグニン保持処理(特定の温度及び時間において特定の漂白液を使用)を受けたトリネコ(特定の寸法、厚さ及び密度を有する特定の木材)のリグニン含有量についての単一の値としてのみ(範囲の終点としてではなく、また、当初明細書の一般的な教示との組み合わせにおいてでもなく)開示されているに過ぎない。 したがって、特定の実施例に記載されたリグニン含有量の単一の値(範囲においてではなく、また、当初明細書の一般的な教示との組み合わせにおいてでもない)を、ジグニン含有量の範囲の終点の基準として使用し、さらに当初明細書(当初請求項1及び13並びに当初明細書段落[0007]等)に記載の「15%超の」の範囲と組み合わせることは認められない(一般的な教示の範囲は具体例1及び5と関連しない)。 このことは、独立請求項1及び5が、上記の特定の実施例1(例1)及び実施例5(例5)に記載された技術的特徴に限定されないことを考慮すれば、なおさら明らかである。 以上より、本件特許の出願の審査過程において、上記手続補正書により導入された「15%~22.4%」の範囲は、当初明細書の内容を超え、いわゆる新規事項の追加である。したがって、上記手続補正書による補正は、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。」(申立書75頁21行~76頁下から8行) (2)特許法第17条の2第3項(新規事項の追加)の考え方について 『明細書又は図面に記載した事項』とは,技術的思想の高度の創作である発明について,特許権による独占を得る前提として、第三者に対して開示されるものであるから,ここでいう『事項』とは明細書又は図面によって開示された発明に関する技術的事項であることが前提となるところ,『明細書又は図面に記載した事項』とは、当業者によって、明細書又は図面のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項であり、補正が、このようにして導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものであるときは、当該補正は、『明細書又は図面に記載した事項の範囲内において』するものということができる、とされている。(平成18年(行ケ)第10563号判決参照。) 以下、この観点に従って検討する。 (3)検討 上記(1)で申立人が指摘する、令和4年4月18日提出の手続補正書によりなされた、特許請求の範囲の補正(以下、「本件補正」という。)は、補正前の特許請求の範囲の請求項1及び6におけるそれぞれ「15%超のリグニンを含む」、及び「少なくとも15%のリグニンを含む」、という記載を、補正後の請求項1及び5における「15%~22.4%のリグニンを含む」という記載に補正するものであって、すなわち「22.4%」という、リグニン含量の上限値を導入するものである。 この上限値「22.4%」の導入が、出願当初の明細書又は図面(以下、「当初明細書等」という。)のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものか否か、以下検討する。 当初明細書等には、以下の記載がある(以下「(例5)関連記載」という。)。 ・「【実施例】 【0039】 本発明による透明木材及び比較例を、以下の例で例示する。 ・・・ 【0044】 (例5) 異なる源からの木材 異なる源からの木材の試料を、それぞれ例1に従うリグニン保持処理及び例2に従う脱リグニンにより調製した。漂白又は脱リグニン前の元の木材中のリグニン含量(Klasonリグニンとして測定)は、マツの場合37.3%、カバの場合24.2%、バルサの場合23.5%、トネリコの場合27.1%であった。機械的試験のために、試料を50×10×1.5mmの寸法に切断し、続いて表1に記載する化学的処理を行った。漂白又は脱リグニン木材基板におけるリグニン含量、及び引張強度試験により測定された湿潤強度を、Table 1(表1)に示す。 【0045】 【表1】 [図:0001400490000004.jpg] ・・・ 【0058】 引張強度 異なる木材源からのリグニン保持処理で調製された透明木材は、脱リグニン木材から調製された透明木材と比較して改善された湿潤強度特性を示した(Table 1(表1))。」 すなわち、上記(例5)関連記載では、(「脱リグニン」処理で調製された)「Klasonリグニン含量」が小さい各透明木材(2.5、3.3、5.2、5.3%)に対し、実際の測定結果として湿潤強度の改善が示された、(「リグニン保持処理」で調製された)同含量が大きい各透明木材(21.3、20.1、22.3、22.4%)の中で、同含量の最大値は22.4%であることが記載されている。(なお、当初明細書等には、上記(例5)関連記載以外、リグニン含量が大小な木材について特性を比較する測定結果は記載されていない。) そうすると、本件補正は、当初明細書等記載の、測定結果として特性が確認された中での最大値を採用して「22.4%」というリグニン含量の上限値を導入するものであって、「当初明細書等」のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものでなく、当初明細書等に記載された事項の範囲内においてするものである。 (4)申立人の主張について 上記(1)に摘記した通り、申立人は、概ね、「当初明細書には、「15%~22.4%」の範囲は記載されておらず」、「「15%超の」の範囲と組み合わせることは認められない」旨主張し、さらにその論拠として、「実際「22.4%」という値は・・・特定の実施例に記載されたリグニン含有量の単一の値としてのみ(範囲の終点としてではなく、また、当初明細書の一般的な教示との組み合わせにおいてでもなく)開示されているに過ぎない。」旨主張している。 しかしながら、上記(3)で検討したとおり、上記(例5)関連記載を見れば、当該「22.4%」は、実際の測定結果として特性(湿潤強度)の改善が示された透明木材の中での最大値であり、単なる一つの値ではない。 そして、「「15%超の」の範囲と組み合わせ」て記載されることについては、上限値「22.4%」は、「15%」と同じくリグニン含量についての数値であるところ、これを導入するにあたり「15%」とともに「15%~22.4%」と記述することに、当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入する点はない。 以上より、申立人の主張は採用できない。 (5)小括 以上のとおりであるから、本件補正が、特許法第17条の2第3項の要件を満たさないとの主張には理由がない。 よって、申立理由4により本件特許発明1ないし11に係る特許を取り消すことはできない。 4 理由5(明確性)について (1)申立人の主張 ア 本件特許発明1の[構成要件D]、本件特許発明5の[構成要件J]では、リグニンの割合が漂白木材基板の総重量に対する重量%であることが規定されていない。(申立書76頁下から6行~77頁6行) イ 本件特許発明1の[構成要件C]では、光透過率の測定方法が規定されていない。(申立書77頁7~11行) ウ 本件特許発明1の[構成要件D]では、Klasonリグニンの測定方法が規定されていない。(申立書77頁12~16行) エ 本件特許発明2の[構成要件E]では、ヘーズの測定方法が規定されていない。(申立書77頁17~21行) オ 本件特許発明3の[構成要件C-1]では、光透過率の測定方法が規定されていない。(申立書77頁22~26行) カ 本件特許発明8の[構成要件P]では、白色度の測定方法が規定されていない。(申立書77頁27行~78頁4行) キ 本件特許発明6が具備する[構成要件N]では「過酸化物系」と規定しているが、本件特許発明6が従属する本件特許発明5が具備する[構成要件I]では、「過酸化物系」について全く言及していない。(申立書78頁8~17行) ク 本件特許発明1の[構成要件A]、[構成要件B]及び[構成要件D]、本件特許発明2の[構成要件E]、本件特許発明3の[構成要件C-1]、本件特許発明4の[構成要件F]、本件特許発明5の[構成要件G]及び[構成要件M]には、用語「透明」と規定されている。しかしながら、本件特許発明1~11に関し、当該「透明」の定義が規定されていないから、用語「透明」が「少なくとも60%の光透過率」を有することを意味するのか、又は「少なくとも90%の光学的透過率を有することを意味するのか」明確でない。(申立書78頁18行~最下行) (2)特許法第36条第6項第2号(明確性)の考え方について 特許を受けようとする発明が明確であるか否かは、特許請求の範囲の記載だけではなく、願書に添付した明細書の記載及び図面を考慮し、また、当業者の出願当時における技術的常識を基礎として、特許請求の範囲の記載が、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確であるか否かという観点から判断されるべきことはいうまでもない、とされている。(平成21年(行ケ)第10434号判決参照。) 以下、この観点に従って検討する。 (3)検討 ア 上記(1)アの主張について 木材中のリグニン量は重量として測定されることが一般的であるという技術的常識を基礎とすれば、特許請求の範囲の記載が、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確であるとはいえない。 イ 上記(1)イないしカの主張について 明細書の、段落【0055】の光透過率の測定についての記載、段落【0016】、【0053】のKlasonリグニンとしての測定についての記載、段落【0015】のヘーズの測定についての記載、段落【0054】の白色度の測定についての記載を考慮すれば、特許請求の範囲の記載が、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確であるとはいえない。 ウ 上記(1)キの主張について 明細書の、段落【0019】における、「本発明による方法における使用のための漂白液」に含まれる薬剤として、(過酸化水素を含むことも含め)「工程(b)における使用に好適な過酸化物系」が説明されている記載を考慮すれば、請求項6が引用する請求項5に「過酸化物系」との記載がなくとも、特許請求の範囲の記載が、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確であるとはいえない。 エ 上記(1)クの主張について 「透明」という記載について、広辞苑にも「[理]物体が光などの電磁波をとおすこと」(広辞苑第六版)とされるように、その語の意味は明確であり、この記載に対応する光透過率が数値として一義的に定義されないからといって、特許請求の範囲の記載が第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確になるとはいえない。 (4)小括 以上のとおりであるから、特許請求の範囲の請求項1ないし11の記載は特許法第36条第6項第2号の要件を満たさないとの主張には理由がない。 よって、申立理由5により本件特許発明1ないし11に係る特許を取り消すことはできない。 第5 むすび したがって、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、請求項1ないし11に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に請求項1ないし11に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。

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2023-700040

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  • 2020-012195拒絶査定不服審判 / 2021-11-22 / 原査定取消(特許/登録すべき)加工木材製品とその製造方法
    共通の審決分類: 113・B27K、121・B27K、537・B27K
  • 2019-700221異議申立 / 2020-03-24 / 訂正認容表面処理木材、及び表面処理木材の製造方法
    共通の審決分類: 121・B27K、537・B27K
  • 2022-015549拒絶査定不服審判 / 2025-04-28 / 請求不成立複合材料および複合製品
    共通の審決分類: 121・B27K、537・B27K

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