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特許訂正審判

2023-390014

取付部材

審判番号
2023-390014
法域
特許
審判種別
訂正審判(訂正の審決)
出願番号
特願2007-044278
登録番号
5197972
請求日
2023年02月03日
審決日
2023年04月06日
公報発行日
2023年07月28日
結論
訂正認容
当事者
  • 【請求人】城東テクノ 株式会社
  • 【請求人代理人】速見 禎祥
  • 【請求人代理人】溝内 伸治郎
  • 【請求人代理人】石田 知里
審判長/審判官
  • 審判長 居島 一仁
  • 審判官 有家 秀郎
  • 審判官 西田 秀彦
分類
P141 .841-Y (E04F) / P141 .851-Y (E04F) / P141 .857-Y (E04F) / P141 .856-Y (E04F)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第126条、特許法第29条、特許法第36条
データ出所
審決公報(XML)

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特許第5197972号に関する訂正審判事件について、次のとおり審決する。

結論

結 論 特許第5197972号の特許請求の範囲を、本件審判請求書に添付された特許請求の範囲のとおり訂正することを認める。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第5197972号の請求項1ないし4に係る特許についての出願は、平成19年2月23日に出願され、平成25年2月15日にその特許権の設定登録がなされたものである。 その後、令和5年2月3日に訂正審判の請求(以下、「本件訂正請求」という。)がなされた。 第2 訂正請求の趣旨 特許第5197972号の特許請求の範囲を本件審判請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり訂正することを認める、との審決を求めるものである。 第3 訂正事項 本件訂正審判の請求に係る訂正事項は、以下のとおりである。なお、下線は訂正箇所を示す。 [訂正事項1] 特許請求の範囲の請求項1に、 「取付対象面に対して垂直方向に奥行きのある取付孔が形成された取付体を、前記取付対象面に取り付けるための取付部材であって、」 と記載されているのを、 「床面、天井面又は壁面に形成された開口部の取付対象面に対して垂直方向に奥行きのある取付孔が形成された取付体を、 前記取付対象面に取り付けるための取付部材であって、」 と訂正する。 [訂正事項2] 特許請求の範囲の請求項1に、 「前記挿通孔に挿通された前記固定具が前記取付対象面に打設された際に、前記取付体に、前記取付対象面に対して水平な所定方向へ向かう力を加えるように構成されていることを特徴とする取付部材。」 と記載されているのを、 「前記挿通孔に挿通された前記固定具が前記取付対象面に打設された際に、前記取付体に、前記取付対象面に対して水平な所定方向へ向かう力を加えるための傾斜する面を有して構成されていることを特徴とする取付部材。」 と訂正する。 [訂正事項3] 特許請求の範囲の請求項2に、請求項1を引用して、 「前記取付孔に嵌挿される外形を有する本体部と、前記本体部に設けられた舌片とを備え、 前記挿通孔は、少なくとも前記舌片に形成されており、 前記舌片は、弾性を有し、その一端のみが前記本体部に固定されるとともに、その他端側が前記取付対象面から離れる方向に傾斜しており、 前記舌片は、前記挿通孔に挿通された前記固定具が前記取付対象面に打設された際に、前記取付対象面と水平になるように移動し、その際に生じる復元力によって、前記取付体に、前記取付対象面に対して水平な所定方向へ向かう力を加えるように構成されている請求項1に記載の取付部材。」 と記載されているのを、請求項1の構成を書き下して請求項1を引用しないものとし、独立形式請求項へと改めて、 「取付対象面に対して垂直方向に奥行きのある取付孔が形成された取付体を、前記取付対象面に取り付けるための取付部材であって、 前記取付孔に嵌挿される外形を有し、 前記取付対象面に対して略垂直方向に、固定具が挿通される挿通孔が形成され、 前記挿通孔に挿通された前記固定具が前記取付対象面に打設された際に、前記取付体に、前記取付対象面に対して水平な所定方向へ向かう力を加えるように構成され、 前記取付孔に嵌挿される外形を有する本体部と、前記本体部に設けられた舌片とを備え、 前記挿通孔は、少なくとも前記舌片に形成されており、 前記舌片は、弾性を有し、その一端のみが前記本体部に固定されるとともに、その他端側が前記取付対象面から離れる方向に傾斜しており、 前記舌片は、前記挿通孔に挿通された前記固定具が前記取付対象面に打設された際に、前記取付対象面と水平になるように移動し、その際に生じる復元力によって、前記取付体に、前記取付対象面に対して水平な所定方向へ向かう力を加えるように構成されていることを特徴とする記載の取付部材。」 と訂正する。 [訂正事項4] 特許請求の範囲の請求項3に、請求項1を引用して、 「前記取付孔に嵌挿され得る筒形状を有するとともに、その内側に前記取付対象面に対して傾斜する傾斜面を有する本体と、 前記本体の内側に設置され、前記傾斜面と当接する当接面を有する補助体と を備え、 前記挿通孔は、前記本体と前記補助体との両方に、互いに連通するように形成され、 前記補助体に形成された前記挿通孔は、前記固定具と略同じ径を有し、 前記本体に形成された前記挿通孔は、前記固定具を前記挿通孔に対して相対的に前記傾斜面の傾斜方向に沿って移動させ得る形状を有し、 前記本体は、前記挿通孔に挿通された前記固定具が前記取付対象面に打設された際に、前記傾斜面を前記補助体の前記当接面に摺接させながら移動することにより、前記取付体に、前記取付対象面に対して水平な所定方向へ向かう力を加えるように構成されている請求項1に記載の取付部材。」 と記載されているのを、請求項1の構成を書き下して請求項1を引用しないものとし、独立形式請求項へと改めて、 「取付対象面に対して垂直方向に奥行きのある取付孔が形成された取付体を、前記取付対象面に取り付けるための取付部材であって、 前記取付孔に嵌挿される外形を有し、 前記取付対象面に対して略垂直方向に、固定具が挿通される挿通孔が形成され、 前記挿通孔に挿通された前記固定具が前記取付対象面に打設された際に、前記取付体に、前記取付対象面に対して水平な所定方向へ向かう力を加えるように構成され、 前記取付孔に嵌挿され得る筒形状を有するとともに、その内側に前記取付対象面に対して傾斜する傾斜面を有する本体と、 前記本体の内側に設置され、前記傾斜面と当接する当接面を有する補助体と を備え、 前記挿通孔は、前記本体と前記補助体との両方に、互いに連通するように形成され、 前記補助体に形成された前記挿通孔は、前記固定具と略同じ径を有し、 前記本体に形成された前記挿通孔は、前記固定具を前記挿通孔に対して相対的に前記傾斜面の傾斜方向に沿って移動させ得る形状を有し、 前記本体は、前記挿通孔に挿通された前記固定具が前記取付対象面に打設された際に、前記傾斜面を前記補助体の前記当接面に摺接させながら移動することにより、前記取付体に、前記取付対象面に対して水平な所定方向へ向かう力を加えるように構成されていることを特徴とする取付部材。」 と訂正する。 [訂正事項5] 特許請求の範囲の請求項4に、請求項1を引用して、 「前記取付孔に嵌挿され得る形状を有し、前記取付対象面に対して傾斜する傾斜面を有する本体と、 前記傾斜面と当接する当接面を有するとともに、前記本体を介さずに前記取付体と接触する接触面を有する補助体と を備え、 前記挿通孔は、前記本体と前記補助体との両方に、互いに連通するように形成され、 前記補助体に形成された前記挿通孔は、前記固定具を前記挿通孔に対して相対的に前記傾斜面の傾斜方向に沿って移動させ得る形状を有し、 前記本体に形成された前記挿通孔は、前記固定具と略同じ径を有し、 前記補助体は、前記挿通孔に挿通された前記固定具が前記取付対象面に打設された際に、前記当接面を前記本体の前記傾斜面に摺接させながら移動することにより、前記取付体に、前記取付対象面に対して水平な所定方向へ向かう力を加えるように構成されている請求項1に記載の取付部材。」 と記載されているのを、請求項1の構成を書き下して請求項1を引用しないものとし、独立形式請求項へと改めて、 「取付対象面に対して垂直方向に奥行きのある取付孔が形成された取付体を、前記取付対象面に取り付けるための取付部材であって、 前記取付孔に嵌挿される外形を有し、 前記取付対象面に対して略垂直方向に、固定具が挿通される挿通孔が形成され、 前記挿通孔に挿通された前記固定具が前記取付対象面に打設された際に、前記取付体に、前記取付対象面に対して水平な所定方向へ向かう力を加えるように構成され、 前記取付孔に嵌挿され得る形状を有し、前記取付対象面に対して傾斜する傾斜面を有する本体と、 前記傾斜面と当接する当接面を有するとともに、前記本体を介さずに前記取付体と接触する接触面を有する補助体と を備え、 前記挿通孔は、前記本体と前記補助体との両方に、互いに連通するように形成され、 前記補助体に形成された前記挿通孔は、前記固定具を前記挿通孔に対して相対的に前記傾斜面の傾斜方向に沿って移動させ得る形状を有し、 前記本体に形成された前記挿通孔は、前記固定具と略同じ径を有し、 前記補助体は、前記挿通孔に挿通された前記固定具が前記取付対象面に打設された際に、前記当接面を前記本体の前記傾斜面に摺接させながら移動することにより、前記取付体に、前記取付対象面に対して水平な所定方向へ向かう力を加えるように構成されていることを特徴とする取付部材。」 と訂正する。 第4 当審の判断 1 訂正事項1について (1)訂正の目的について 訂正事項1は、本件訂正前の請求項1に係る発明における、「取付部材」が「取付体」を取り付ける「取付対象面」について、「床面、天井面又は壁面に形成された開口部の取付対象面」とする特定を付加する、訂正事項である。 したがって、訂正事項1に係る訂正は、特許法126条1項ただし書第1号に規定する、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 (2)新規事項の追加の有無について 願書に添付した明細書の段落【0001】には、「本発明は、例えば、床下収納庫、床下点検口、天井点検口、部屋のコーナー用のステッチ部材等の設置に用いられる取付部材に関する。」と記載され、段落【0012】には、「枠体等の取付体を、例えば、床面、天井面、壁面又はこれらに形成された開口部の側面等の取付対象面に設置する」と記載されている。 そうすると、「取付部材」が「取付体」を取り付ける「取付対象面」を、「床面、天井面又は壁面に形成された開口部の取付対象面」とすることは、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下、「明細書等」という。)に記載された全ての事項を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものではない。 したがって、訂正事項1に係る訂正は、願書に添付した明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものである。 よって、訂正事項1に係る訂正は、特許法126条5項の規定に適合する。 (3)特許請求の範囲の拡張・変更の存否について 訂正事項1に係る訂正は、上記(1)に示したとおり、訂正前の請求項1に係る発明について減縮を行うものであり、発明のカテゴリーや対象又は目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 したがって、訂正事項1に係る訂正は、特許法126条6項の規定に適合する。 (4)独立特許要件について 訂正事項1に係る訂正により、請求項1に係る発明は減縮が行われているところ、本件訂正後の請求項1に係る発明について、特許法126条7項に規定する、いわゆる独立特許要件を満たすか否かについては、請求項1について訂正事項1及び2に係る訂正がされていることも踏まえて、後記6において判断する。 2 訂正事項2について (1)訂正の目的について 訂正事項2は、本件訂正前の請求項1に係る発明における、「前記挿通孔に挿通された前記固定具が前記取付対象面に打設された際に、前記取付体に、前記取付対象面に対して水平な所定方向へ向かう力を加える」ための構成について、「取付部材」が「傾斜する面を有して」いることを限定する、訂正事項である。 したがって、訂正事項2に係る訂正は、特許法126条1項ただし書第1号に規定する、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 (2)新規事項の追加の有無について ア 願書に添付した明細書等における記載 請求項1における「前記挿通孔に挿通された前記固定具が前記取付対象面に打設された際に、前記取付体に、前記取付対象面に対して水平な所定方向へ向かう力を加える」ための構成に関し、願書に添付した明細書等には、次の(ア)ないし(ウ)の記載がある。 (ア)請求項2には、「取付部材」が「傾斜」した「舌片」を有する構成が記載されている。また、段落【0039】-【0052】及び【図1】-【図3】には、第1実施形態として、傾斜した「舌片42」を有する「取付部材40」により、釘等の固定具が打ち込まれた際に、取付対象面に対して垂直方向に奥行きのある取付孔内に取付部材を嵌挿した取付体である「枠部材10」に、取付部材を介して、取付対象面に対して水平な所定方向(鉛直下方)へ向かう力を加えることが、説明されている。 (イ)請求項3には、「取付部材」が「傾斜面」を有する構成が記載されている。また、段落【0053】-【0059】及び【図4】には、第2実施形態として、「傾斜面142」を有する「取付部材140」により、釘等の固定具が打ち込まれた際に、取付対象面に対して垂直方向に奥行きのある取付孔内に取付部材を嵌挿した取付体である「枠部材110」に、取付部材を介して、取付対象面に対して水平な所定方向(鉛直下方)へ向かう力を加えることが、説明されている。 (ウ)請求項4には、「取付部材」が「傾斜面」を有する構成が記載されている。また、段落【0060】-【0067】及び【図5】には、第3実施形態として、「傾斜面442」を有する「取付部材440」により、釘等の固定具が打ち込まれた際に、取付対象面に対して垂直方向に奥行きのある取付孔内に取付部材を嵌挿した取付体である「枠部材410」に、取付部材を介して、取付対象面に対して水平な所定方向(鉛直下方)へ向かう力を加えることが、説明されている。 イ 技術常識 一般に、傾斜した面を備えることにより、特定の面に向かう方向の力から、特定の面に平行(水平)な方向の力を派生させることは、古典力学の基礎原理として、証拠を示すまでもなく知られた、技術常識である。 ウ 新たな技術的事項を導入するものか否か 上記ア(ア)ないし(ウ)に示した各実施形態の記載、及び、上記イに示した技術常識を考慮すると、請求項1における「前記挿通孔に挿通された前記固定具が前記取付対象面に打設された際に、前記取付体に、前記取付対象面に対して水平な所定方向へ向かう力を加える」ための構成について、「取付部材」が「傾斜する面を有して」いる構成とする、訂正事項2は、願書に添付した明細書等に記載された全ての事項を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものではない。 エ 小括 したがって、訂正事項2に係る訂正は、願書に添付した明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものである。 よって、訂正事項2に係る訂正は、特許法126条5項の規定に適合する。 (3)特許請求の範囲の拡張・変更の存否について 訂正事項2に係る訂正は、上記(1)に示したとおり、訂正前の請求項1に係る発明について減縮を行うものであり、発明のカテゴリーや対象又は目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 したがって、訂正事項2に係る訂正は、特許法126条6項の規定に適合する。 (4)独立特許要件について 訂正事項2に係る訂正により、請求項1に係る発明は減縮が行われているところ、本件訂正後の請求項1に係る発明について、特許法126条7項に規定する、いわゆる独立特許要件を満たすか否かについては、請求項1について訂正事項1及び2に係る訂正がされていることも踏まえて、後記6において判断する。 3 訂正事項3について (1)訂正の目的について 訂正事項3は、本件訂正前の請求項2が請求項1の記載を引用する記載であったものを、本件訂正前の請求項1の記載を書き下して、請求項1の記載を引用しないものとする、訂正事項である。 したがって、訂正事項3に係る訂正は、特許法126条1項ただし書第4号に規定する、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものである。 (2)新規事項の追加の有無について 訂正事項3に係る訂正は、上記(1)に示したとおり、訂正前の請求項2に係る発明について、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとするものであるから、願書に添付した明細書等に記載された全ての事項を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものではない。 したがって、訂正事項3に係る訂正は、願書に添付した明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものである。 よって、訂正事項3に係る訂正は、特許法126条5項の規定に適合する。 (3)特許請求の範囲の拡張・変更の存否について 訂正事項3に係る訂正は、上記(1)に示したとおり、訂正前の請求項2に係る発明について、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとするものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 したがって、訂正事項3に係る訂正は、特許法126条6項の規定に適合する。 (4)独立特許要件について 訂正事項3に係る訂正は、上記(1)に示したとおり、訂正前の請求項2に係る発明について、特許法126条1項ただし書第4号に規定する、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものである。 そして、請求項2に係る発明について、同ただし書第1号又は第2号に掲げる事項を目的とする訂正は、行われていない。 したがって、本件訂正後の請求項2に係る発明について、同条7項の規定は適用されず、本件訂正後の請求項2に係る発明がいわゆる独立特許要件を満たすか否かは、本件訂正審判において判断すべき事項とはならない。 4 訂正事項4について (1)訂正の目的について 訂正事項4は、本件訂正前の請求項3が請求項1の記載を引用する記載であったものを、本件訂正前の請求項1の記載を書き下して、請求項1の記載を引用しないものとする、訂正事項である。 したがって、訂正事項4に係る訂正は、特許法126条1項ただし書第4号に規定する、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものである。 (2)新規事項の追加の有無について 訂正事項4に係る訂正は、上記(1)に示したとおり、訂正前の請求項3に係る発明について、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとするものであるから、願書に添付した明細書等に記載された全ての事項を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものではない。 したがって、訂正事項4に係る訂正は、願書に添付した明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものである。 よって、訂正事項4に係る訂正は、特許法126条5項の規定に適合する。 (3)特許請求の範囲の拡張・変更の存否について 訂正事項4に係る訂正は、上記(1)に示したとおり、訂正前の請求項3に係る発明について、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとするものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 したがって、訂正事項4に係る訂正は、特許法126条6項の規定に適合する。 (4)独立特許要件について 訂正事項4に係る訂正は、上記(1)に示したとおり、訂正前の請求項3に係る発明について、特許法126条1項ただし書第4号に規定する、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものである。 そして、請求項3に係る発明について、同ただし書第1号又は第2号に掲げる事項を目的とする訂正は、行われていない。 したがって、本件訂正後の請求項3に係る発明について、同条7項の規定は適用されず、本件訂正後の請求項3に係る発明がいわゆる独立特許要件を満たすか否かは、本件訂正審判において判断すべき事項とはならない。 5 訂正事項5について (1)訂正の目的について 訂正事項5は、本件訂正前の請求項4が請求項1の記載を引用する記載であったものを、本件訂正前の請求項1の記載を書き下して、請求項1の記載を引用しないものとする、訂正事項である。 したがって、訂正事項5に係る訂正は、特許法126条1項ただし書第4号に規定する、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものである。 (2)新規事項の追加の有無について 訂正事項5に係る訂正は、上記(1)に示したとおり、訂正前の請求項4に係る発明について、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとするものであるから、願書に添付した明細書等に記載された全ての事項を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものではない。 したがって、訂正事項5に係る訂正は、願書に添付した明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものである。 よって、訂正事項5に係る訂正は、特許法126条5項の規定に適合する。 (3)特許請求の範囲の拡張・変更の存否について 訂正事項5に係る訂正は、上記(1)に示したとおり、訂正前の請求項4に係る発明について、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとするものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 したがって、訂正事項5に係る訂正は、特許法126条6項の規定に適合する。 (4)独立特許要件について 訂正事項5に係る訂正は、上記(1)に示したとおり、訂正前の請求項4に係る発明について、特許法126条1項ただし書第4号に規定する、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものである。 そして、請求項4に係る発明について、同ただし書第1号又は第2号に掲げる事項を目的とする訂正は、行われていない。 したがって、本件訂正後の請求項4に係る発明について、同条7項の規定は適用されず、本件訂正後の請求項4に係る発明がいわゆる独立特許要件を満たすか否かは、本件訂正審判において判断すべき事項とはならない。 6 本件訂正後の請求項1に係る発明の独立特許要件について (1)別件侵害訴訟における無効の抗弁 上記1(1)及び2(1)のとおり、請求項1に係る発明は、訂正事項1及び訂正事項2により、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正がされているから、本件訂正が認められるか否かを判断するうえでは、本件訂正後の請求項1に係る発明について、上記1(4)及び2(4)のとおり、特許法126条7項に規定するいわゆる独立特許要件を満たすか否かも、判断の対象となる。 そして、本件特許に関し、大阪地方裁判所において特許権侵害行為差止等請求事件(令和4年(ワ)第2058号)(以下、「別件侵害訴訟」という。)が係属中であり、別件侵害訴訟においては、本件特許の請求項1に係る発明について、特許無効の抗弁がされている。 審判請求人による令和5年2月27日差出の上申書に添付された、別件侵害訴訟における原告及び被告の準備書面の抜粋によれば、本件特許の請求項1に係る発明(別件侵害訴訟における原告及び被告の準備書面においては、別件特許との関係で、「本件発明2」「本件発明2-1」等と表記されている)について、特許無効の抗弁の理由は、概略、次のものである。 ア 無効の抗弁1: サポート要件違反及び実施可能要件違反 イ 無効の抗弁2: 乙第19号証(実願昭51-88224号(実開昭53-8023号)のマイクロフィルム)を主たる引用例とした進歩性欠如 ウ 無効の抗弁3: 乙第23号証(特開平10-37936号公報)を主たる引用例とした新規性・進歩性欠如 そこで、別件侵害訴訟における無効の抗弁1ないし3の理由によって、本件訂正後の請求項1に係る発明が独立特許要件を満たさないこととなるか否かを、以下に判断する。 (2)無効の抗弁1について ア 無効の抗弁1の概要 別件侵害訴訟における無効の抗弁1は次のものである(別件侵害訴訟における被告準備書面(4)第47頁-第49頁「2 本件発明2の無効理由」)。 (ア)実施可能要件違反の抗弁の概要 固定具が打設された際に取付体に取付対象面に対して水平な所定方向へ向かう力を加えるための具体的構成について、本件特許の明細書等は、本体と舌片、あるいは傾斜面を有する本体と補助体という、2つの部材の相互作用を用いる実施形態しか記載されていないところ、2つの部材の相互作用を用いることを特定しない請求項1に係る発明は、発明の詳細な説明に当業者が実施することができる程度の記載がされたものではない。 したがって、本件特許の発明の詳細な説明の記載は、特許法36条4項1号の規定に適合しない。 (イ)サポート要件違反の抗弁の概要 作業者の技量によらず取付体の密着性や気密性等を確保することができる取付部材を提供する、という発明の課題を解決するうえでは、固定具が打設された際に取付体に取付対象面に対して水平な所定方向へ向かう力を加えることが必要であるところ、請求項1に係る発明は、固定具が打設された際にどのようにして取付体に取付対象面に対して水平な所定方向へ向かう力を加えることができるのか理解できないから、発明の課題を解決することができる範囲を超えている。 したがって、本件特許の特許請求の範囲の記載は、特許法36条6項1号の規定に適合しない。 イ 無効の抗弁1の理由で独立特許要件を満たさないか否か (ア)実施可能要件違反の抗弁について 本件訂正後の請求項1に係る発明は、「前記挿通孔に挿通された前記固定具が前記取付対象面に打設された際に、前記取付体に、前記取付対象面に対して水平な所定方向へ向かう力を加える」ために、「取付部材」が「傾斜する面を有して」いるものである。 そして、上記2(2)において訂正事項2が新規事項の追加か否かを判断したとおり、発明の詳細な説明に、取付体が有する取付対象面に対して垂直方向に奥行きのある取付孔内に嵌挿する取付部材が、傾斜した舌片または傾斜面を備える具体例が記載されていること、及び、一般に、傾斜した面を備えることにより、特定の面に向かう方向の力から、特定の面に平行(水平)な方向の力を派生させることは、古典力学の基礎原理として知られた技術常識であることを踏まえると、本件訂正後の請求項1に係る発明について、「取付体」に形成された「取付対象面に対して垂直方向に奥行きのある取付孔」に「嵌挿される外形」を有する「取付部材」が、「傾斜面を有して」いる構成により、「前記挿通孔に挿通された前記固定具が前記取付対象面に打設された際に、前記取付体に、前記取付対象面に対して水平な所定方向へ向かう力を加える」ことは、「取付部材」が有する「傾斜面」及び「取付孔に嵌挿される外形」を介した力の伝達により、2つの部材の相互作用を用いることを重ねて特定しなくとも実施可能であると理解される。 したがって、本件特許の発明の詳細な説明の記載は、本件訂正後の請求項1に係る発明について、当業者が実施をすることができる程度の説明を記載したものであり、特許法36条4項1号の規定に適合する。 (イ)サポート要件違反の抗弁について 作業者の技量によらず取付体の密着性や気密性等を確保することができる取付部材を提供する、という発明の課題を解決するために、本件特許に係る「取付部材」は、「前記挿通孔に挿通された前記固定具が前記取付対象面に打設された際に、前記取付体に、前記取付対象面に対して水平な所定方向へ向かう力を加える」ように構成するものであるところ、本件訂正後の請求項1に係る発明は、上記(ア)に示したとおり、「取付部材」が有する「傾斜面」及び「取付孔に嵌挿される外形」を介した力の伝達により、「前記挿通孔に挿通された前記固定具が前記取付対象面に打設された際に、前記取付体に、前記取付対象面に対して水平な所定方向へ向かう力を加える」ことができると、合理的に理解することができる。 したがって、本件特許の特許請求の範囲の記載は、本件訂正後の請求項1について、発明の課題を解決できない範囲まで拡張されたものではなく、特許法36条6項1号の規定に適合する。 (ウ)無効の抗弁1の小括 以上のとおり、本件訂正後の請求項1に係る発明は、別件侵害訴訟における無効の抗弁1の理由により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものではない。 (3)無効の抗弁2について ア 無効の抗弁2の概要 別件侵害訴訟における無効の抗弁2の概要は、乙第19号証(実願昭51-88224号(実開昭53-8023号)のマイクロフィルム)に記載された発明において、乙第20号証(特公昭62-26380号公報)の記載を考慮すると、乙第21号証(登録実用新案第3009720号公報)及び乙第22号証(特開平7-127208号公報)に示される、ねじにより鉛直方向に向かう力を発生させる技術を適用することは想到容易であるから、本件特許の請求項1に係る発明は進歩性がなく、特許法29条2項の規定に違反する、というものである(別件侵害訴訟における被告準備書面(5)第2頁-第8頁「1 本件発明2-1の無効理由」)。 イ 無効の抗弁2の理由で独立特許要件を満たさないか否か 乙第19号証には、床下収納用の吊下片4を根太3に固定する際、吊下片4のボックス固定面25下面に、係止突起24で係止して支持材5を嵌合し、吊下片4の垂下面26を根太3に当接し、ねじ9を支持材5内側からねぢ込み固定することが、記載されている(明細書第2頁下から2行-第3頁第10行、及び第1図参照)。 しかしながら、乙第19号証における支持材5は、ねじによる固定に関して、吊下片4の垂下面26を根太3に当接した状態で、支持材5内側からねぢ込み固定されるだけのものであるから、本件訂正後の請求項1に係る「取付部材」が備える、「前記挿通孔に挿通された前記固定具が前記取付対象面に打設された際に、前記取付体に、前記取付対象面に対して水平な所定方向へ向かう力を加えるための傾斜する面を有」するものではない。また、乙第19号証における支持材5は、吊下片4のボックス固定面25下面に係止突起24で係止されるものであるから、本件訂正後の請求項1に係る「取付部材」が備える、「取付体」に形成された「取付対象面に対して垂直方向に奥行きのある取付孔」に「嵌挿される」構成を有するものもない。 一方、乙第20号証には、床開口部2開口縁部に外枠4を取り付ける取付金具10に、傾斜面22を設け、止着子13を斜め下方に下地材23に打ち込むことが記載されているが(第4欄第19行-第5欄第6行及び第3図-第5図参照)、乙第19号証における支持材5とは基本的な取付構造が異なり、当業者に対して、乙第19号証における支持材5を変更する動機付けを与えるものではない。 また、乙第21号証、及び乙第22号証には、ネジによって位置調整する部材に傾斜面を設けることで、傾斜面と当接する部材の高さ調節を行うことが記載されているが、ネジは傾斜面を有する部材の位置調整のために用いられるものであるから、乙第19号証における吊下片4及び支持材5の両者を根太3にねじ込み固定のためのねじ9とは、基本的な構成及び目的が異なり、乙第19号証に適用する動機付けがあるものではない。 そして、乙第20号証ないし乙第22号証の記載を考慮しても、乙第19号証に記載される「支持材5」において、本件訂正後の請求項1に係る「取付部材」が備える、「前記挿通孔に挿通された前記固定具が前記取付対象面に打設された際に、前記取付体に、前記取付対象面に対して水平な所定方向へ向かう力を加えるための傾斜する面」を設けることは、記載も示唆もされていない。 したがって、本件訂正後の請求項1に係る発明は、乙第19号証に記載された発明及び乙第20号証~乙第22号証に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではなく、特許法29条2項の規定に違反するものではない。 よって、本件訂正後の請求項1に係る発明は、別件侵害訴訟における無効の抗弁2の理由により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものではない。 (4)無効の抗弁3について ア 無効の抗弁3の概要 別件侵害訴訟における無効の抗弁3の概要は、本件特許の請求項1に係る発明は、乙第23号証(特開平10-37936号公報)に記載された発明であるから、特許法29条1項3号に該当し、また、乙第23号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定に違反する、というものである(別件侵害訴訟における被告準備書面(6)第25頁-第31頁「1 本件発明2-1の無効理由」)。 イ 無効の抗弁3の理由で独立特許要件を満たさないか否か 乙第23号証には、先端部に凸部2を有するボルト1に対し、ボルト1が螺入されるネジ穴5内に配置されて、ボルト1先端の凸部2を受ける凹部3を有する、円盤状受部材4(【図3】、【図12】参照)が記載されている。 しかしながら、乙第23号証に記載される円盤状受部材4は、ボルト1が螺入されるネジ穴5内においてボルト1先端を受けるものであるから、本件訂正後の請求項1に係る「取付部材」のように、「取付対象面に対して垂直方向に奥行きのある取付孔が形成された取付体を、前記取付対象面に取り付けるための取付部材」には該当しない。 また、乙第23号証に記載される円盤状受部材4は、凹部3にボルト1を挿通したうえで、凹部3に挿通されたボルト1をネジ穴5が設けられた取付対象面に打設するものではないから、本件訂正後の請求項1に係る「取付部材」のように、「固定具が挿通される挿通孔が形成され、前記挿通孔に挿通された前記固定具が前記取付対象面に打設」されるものではない。 さらに、乙第23号証に記載される円盤状受部材4は、ボルト1が螺入されるネジ穴5内に配置されるものであってボルト1によりネジ穴5を有する面に取り付けられる部材に対しては当接せず、取付対象面に対して水平な方向に力を加えるものではないから、本件訂正後の請求項1に係る「取付部材」が備える、「前記挿通孔に挿通された前記固定具が前記取付対象面に打設された際に、前記取付体に、前記取付対象面に対して水平な所定方向へ向かう力を加えるための傾斜する面を有」するものではない。 したがって、本件訂正後の請求項1に係る発明は、乙第23号証に記載された発明ではなく、特許法29条1項3号に該当するものではない。 そして、乙第23号証において、円盤状受部材4について、ボルト1が螺入されるネジ穴5内においてボルト1先端の凸部2を受ける構成を、変更する動機付けはないから、本件訂正後の請求項1に係る発明は、乙第23号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではなく、特許法29条2項の規定に違反するものではない。 よって、本件訂正後の請求項1に係る発明は、別件侵害訴訟における無効の抗弁3の理由により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものではない。 (5)小括 以上のとおり、本件訂正後の請求項1に係る発明は、別件侵害訴訟における無効の抗弁1ないし3の理由によって、特許出願の際独立して特許を受けることができないものではない。 また、本件訂正後の請求項1に係る発明について、他に特許出願の際独立して特許を受けることができないとする理由を発見しない。 したがって、請求項1に係る発明について、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正を行う、訂正事項1及び訂正事項2に係る訂正は、特許法126条7項の規定に適合する。 第5 むすび 以上のとおりであるから、本件審判の請求は、特許法126条1項ただし書第1号及び第4号に規定された事項を目的とし、同条5項ないし7項の規定に適合するものである。 よって、結論のとおり審決する。

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2023-390014

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