特許拒絶査定不服審判
2023-020746
アクチュエータ
- 審判番号
- 2023-020746
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2020-091832
- 請求日
- 2023年12月06日
- 審決日
- 2025年01月21日
- 公報発行日
- 2025年02月28日
- 結論
- 原査定取消(特許/登録すべき)
- 当事者
- 【請求人】国立大学法人信州大学
- 【請求人】AssistMotion株式会社
- 審判長/審判官
- 審判長 河本 充雄
- 審判官 三浦 みちる
- 審判官 松永 稔
- 分類
- P18 .121-WY (H02N)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
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特願2020- 91832「アクチュエータ」拒絶査定不服審判事件〔令和 3年12月13日出願公開、特開2021-191048、請求項の数(1)〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
原査定を取り消す。
本願の発明は、特許すべきものとする。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、令和2年5月27日に出願された特許出願であって、その手続の経緯は次のとおりである。
令和5年 5月26日付け:拒絶理由通知書
同年 8月 8日 :意見書、手続補正書の提出
同年 8月22日付け:拒絶査定(以下、「原査定」という。)
同年12月 6日 :審判請求書、手続補正書の提出
第2 原査定の概要
原査定(令和5年8月22日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。
本願の請求項1~3、5、6に係る発明は、以下の引用文献1に記載された発明及び引用文献2~4に記載された周知技術に基づいて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
引用文献1 特開2017-108601号公報
引用文献2 特開2020-57340号公報(周知技術を示す文献)
引用文献3 特開2015-171225号公報(周知技術を示す文献)
引用文献4 特開2008-154447号公報(周知技術を示す文献)
第3 本願発明
本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、令和5年12月6日提出の手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】
ゲル状のポリ塩化ビニルでシート状に形成された誘電体シートと、前記誘電体シートの両面にそれぞれ配設された可撓性を有するシート状の電極とを備え、前記各電極を介して前記誘電体シートに電圧を供給したときに前記誘電体シートが面方向に伸長するアクチュエータであって、
難撓性を有する材料で線状または帯状に形成されると共に前記誘電体シートの少なくとも一方の面における一の方向に延在するように当該少なくとも一方の面と前記電極との間に配置されて当該誘電体シートの当該一の方向への伸長を規制する規制部材が当該少なくとも一方の面における当該一の方向と交差する交差方向に沿って間隔を空けて複数並設されていることを特徴とするアクチュエータ。」
第4 引用文献、引用発明等
1 引用文献1について
(1)引用文献1の記載
引用文献1には、次の記載がある。(下線は当審で付した。以下同じ。)
「【技術分野】
【0001】
本発明は誘電アクチュエータに関し、より詳細には湾曲作用あるいは平面内において伸縮する作用を有する誘電アクチュエータに関する。」
「【発明を実施するための形態】
【0011】
(誘電アクチュエータの構成)
図1(a)は本発明に係る誘電アクチュエータの組み立て斜視図、図1(b)は側面図である。本発明に係る誘電アクチュエータは、PVC(ポリ塩化ビニル)ゲルシートからなる誘電体10と、誘電体の厚さ方向の両面に対向させて配置した一対の電極12a、12bとから構成される。電極12a、12bはシート状の誘電体10を面的に被覆する電極であり、伸縮、曲げが容易に可能な柔軟電極である。
【0012】
図2(a)、(b)は、誘電アクチュエータの使用例を示したもので、図2(a)は誘電体10と電極12a、12bの外周縁を支持せずにフリー状態としたもの、図2(b)は誘電体の外周縁を支持した状態での使用例である。
【0013】
図2(a)に示すように、誘電体10と電極12a、12bの外周縁をフリー状態として電極(陰極)12a、電極(陽極)12b間に電圧を印加すると、陰極12bと陽極12aがともに伸長するものの、陽極12b側の伸長度が大きいことから、アクチュエータ全体としては陰極12a側が凹む湾曲変形が生じる。陰極12aと陽極12bの伸長度に差が生じるのは、PVCゲルシートに電圧を印加すると、陽極側にゲルが引き込まれるクリープ変形によるものと考えられる。
陽極12bと陰極12aに印加する電圧を解除すると、誘電体10と電極12a、12bはもとの平面形状に復帰する。
図2(a)に示す誘電アクチュエータは、電極に印加する電圧をON-OFF制御することにより、面形状が平面形状と湾曲形状との間で変化するアクチュエータとして利用することができる。
【0014】
図2(b)では、電極12a、12bに電圧を印加すると、電極(陰極)12a、電極(陽極)12bはともに伸長するが、陽極12b側の伸長度が陰極12a側よりも若干大きいため、陽極12bの側(図の下面側)が凸となるように若干湾曲しながら伸長する。
電極12a、12bに印加する電圧を解除するともとの平面形状に復帰する。したがって、図2(b)に示す誘電アクチュエータの構成の場合は、平面内で伸縮するアクチュエータとして利用することができる。」
「【図1】
[図:0001418979000001.jpg]
【図2】
[図:0001418979000002.jpg]
」
(2)引用文献1に記載された発明
上記(1)から、引用文献1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる(当審注:括弧内の段落番号は、引用文献1の記載箇所である。)。
「PVC(ポリ塩化ビニル)ゲルシートからなる誘電体10と、誘電体の厚さ方向の両面に対向させて配置した一対の電極12a、12bとから構成される誘電アクチュエータであって、(段落0011)
電極12a、12bはシート状の誘電体10を面的に被覆する電極であり、伸縮、曲げが容易に可能な柔軟電極であり、(段落0011)
電極(陰極)12a、電極(陽極)12b間に電圧を印加すると、陰極12bと陽極12aがともに伸長して、陰極12a側が凹む湾曲変形が生じ、陽極12bと陰極12aに印加する電圧を解除すると、誘電体10と電極12a、12bはもとの平面形状に復帰し、(段落0013)
電極に印加する電圧をON-OFF制御することにより、面形状が平面形状と湾曲形状との間で変化する、(段落0013)
誘電アクチュエータ。」
2 引用文献2について
(1)引用文献2の記載
引用文献2には、次の記載がある。
「【0025】
図2に示すように、DEA12は、誘電エラストマーからなるシート状の誘電層20と、誘電層20の厚さ方向の両側に配置された電極層としての正極電極21及び負極電極22とが複数、積層された多層構造体である。DEA12の最外層には絶縁層23が積層されている。誘電エラストマーアクチュエータ12は、正極電極21と負極電極22との間に直流電圧が印加されると、印加電圧の大きさに応じて、誘電層20が厚さ方向に圧縮されるとともに誘電層20の面に沿った方向(DEA12の面方向)に伸張するように変形する。
・・・
【0031】
図3及び図4に示すように、DEA12は、その面方向において、相対的に大きく伸長する方向(第1方向A)を有するように構成されている。そして、アクチュエータ対12aを構成する2個のDEA12は、第1方向Aが背中合わせになるように配置されている。
【0032】
詳述すると、基材11の内面における各DEA12の側方位置には、PP、ABS等の硬質樹脂により構成され、DEA12を囲むように位置する制限部13が設けられている。制限部13は、DEA12の伸長方向を制限するための部位であり、第1方向Aに交差する方向へのDEA12の伸長を制限する第1制限部13aと、第1方向Aの反対側の方向へのDEA12の伸長を制限する第2制限部13bとを備えている。なお、本実施形態において、第1方向Aは、環状部分11aの周方向に沿った方向に設定されている。
【0033】
第1制限部13aは、DEA12における第1方向Aに直交する方向(環状部分11aの軸方向)の端部をなす側縁に当接又は近接する位置に設けられている。第1制限部13aは、DEA12の側縁が当接することにより、第1方向Aに交差する方向へのそれ以上のDEA12の伸長を制限する。第2制限部13bは、DEA12における第1方向Aの反対側の方向の端部をなす側縁に当接又は近接する位置に設けられている。第2制限部13bは、DEA12の側縁が当接することにより、第1方向Aの反対側の方向へのそれ以上のDEA12の伸長を制限する。」
「【図2】
[図:0001418979000003.jpg]
」
「【図4】
[図:0001418979000004.jpg]
」
(2)引用文献2に記載された事項
上記(1)から、引用文献2には、正極電極21と負極電極22との間に直流電圧が印加されると誘電層20の面に沿った方向に伸張するように変形する静電エラストマーアクチュエータ(DEA)12において、DEA12の側方位置に、DEA12を囲むように位置する制限部13が設けられ、制限部13は、第1方向Aに交差する方向へのDEA12の伸長を制限する第1制限部13aと、第1方向Aの反対側の方向へのDEA12の伸長を制限する第2制限部13bとを備えることが記載されている。
3 引用文献3について
(1)引用文献3の記載
引用文献3には、次の記載がある。
「【0028】
[全体構成]
本発明に係るアクチュエータ装置1は、図1に示すように、アクチュエータ10と、当該アクチュエータ10の厚さ方向Xのあらかじめ設定された寸法よりもアクチュエータ10が伸張することを防止する伸張防止機構40とを備えている。なお、本明細書において、厚さ方向Xとは、図1に示すように、陽極部材11と陰極部材12とが交互に複数配置されている方向を意味する。なお、アクチュエータ装置1は、陽極部材11と陰極部材12とが交互に複数配置されたアクチュエータ10を用いた形態の他に、一組の陽極部材11と陰極部材11とが配置されたアクチュエータを用いた形態も含まれる。ただし、以下では、陽極部材11と陰極部材12とが交互に複数配置されたアクチュエータ10を用いた形態を例にしてアクチュエータ装置1について説明する。
【0029】
アクチュエータ10は、図2に示すように、陽極部材11と陰極部材12とが交互に複数配置され、陽極部材11と陰極部材12との間に誘電性を有する高分子材料からなるゲル層13が設けられることにより構成されている。図2に示す例では、陽極部材11は網状のメッシュ体で構成されている。このアクチュエータ10は、陽極部材11と陰極部材12との間に電圧を印加したり、電圧の印加を停止したりすることによって、陽極部材11と陰極部材12とが交互に配置された当該アクチュエータ10の厚さ方向Xに伸縮する。
【0030】
伸張防止機構40は、アクチュエータ10を内側に収容させている筐体20と、アクチュエータ10を内側に収容させている移動フレーム30とにより構成されている。筐体20は、第1の面21、第2の面22、第3の面23及び第4の面24が四角形の輪郭に一致するようにして配置されて形成されている。また、移動フレーム30は、取付板34、側板32,33及び接続板31が四角形の輪郭に一致するようにして配置されて形成されている。この移動フレーム30は、筐体20に対してアクチュエータ10の厚さ方向Xに移動可能に構成されている。
【0031】
アクチュエータ装置1は、アクチュエータ10が筐体20及び移動フレーム30の内側に配置されて構成されており、アクチュエータ10の厚さ方向Xの一端18が筐体20の第1の面21に取り付けられ、アクチュエータ10の厚さ方向Xの他端19が移動フレーム30の取付板34に取り付けられている。
【0032】
伸張防止機構40を構成している移動フレーム30は、アクチュエータ10の伸縮に伴って筐体20に対してアクチュエータ10の厚さ方向Xに移動するが、アクチュエータ10が、その厚さ方向Xの寸法があらかじめ設定された寸法に伸張されたときに、筐体20によって移動が停止されるように構成されている。」
「【0045】
〈伸張防止機構〉
次に、図1を参照して、伸張防止機構40について説明する。伸張防止機構40は、アクチュエータ10を内側に収容させている筐体20と、アクチュエータ10を内側に収容させている移動フレーム30とにより構成されている。この伸張防止機構40は、アクチュエータ10があらかじめ設定された寸法よりも伸張することを防止することによって、アクチュエータ10がその厚さ方向Xにおいて、自然長又は略自然長よりも伸張することがないようにアクチュエータ10の厚さ方向Xの寸法を規制している。」
「【図1】
[図:0001418979000005.jpg]
【図2】
[図:0001418979000006.jpg]
」
(2)引用文献3に記載された事項
上記(1)から、引用文献3には、陽極部材11と陰極部材12との間に誘電性を有する高分子材料からなるゲル層13が設けられることにより構成されたアクチュエータ10を備えるアクチュエータ装置1において、アクチュエータ10を内側に収容させている筐体20とアクチュエータ10を内側に収容させている移動フレーム30とにより構成された伸張防止機構40が、アクチュエータ10の厚さ方向Xの寸法を規制することが記載されている。
4 引用文献4について
(1)引用文献4の記載
引用文献4には、次の記載がある。
「【0015】
まず配線方法としては静電アクチュエータを並列的に集合する方法と、直列的に集合する方法とがある。
このうち並列積層した場合は固定子を相互で固定する構造体が必要となり、その構造体に各アクチュエータへの配線を設ければ良く、解決は比較的容易である。
問題は直列に積層した場合である。
この場合は固定子相互間の位置が変化するため、駆動電極に電圧を供給するための配線を柔軟に配することが必要となる。
そこで隣接固定子間をブリッジする配線を設けることにより電圧供給を可能にする方法が考えられる。
更に静電アクチュエータの過伸張防止構造に配線機能を含ませれば、より合理的に問題解決を図ることができる。」
「【0022】
図2に静電アクチュエータの動作原理を示す。
本静電アクチュエータは、電極を配置した固定子11と、その上を電極と接しながらスライドする移動子12とからなり、固定子11に配置された駆動電極13、14に電圧を印加することにより動作する構造となっている。
その電気的構成は、固定子側表面に設置されたプラス・マイナスの駆動電極13,14の2種類の電極及び駆動電極から駆動方向に伸びた突起電極15からなり、これらは駆動電力配線によって電圧が供給される。
供給された電圧は接触している移動子表面の帯電スリットに帯電される。(16)
この帯電電荷と固定子が形成する電場との相互作用により移動子に駆動力17が発生する。
【0023】
図3に、図2の静電アクチュエータを積層化した積層化構造体の模式図を示す。
積層化構造体は、複数のアクチュエータの固定子11ないし移動子12を固定する固定構造体18により、互いに固定子同士又は移動子同士が接する形で並列に結合されており、それらを一層として更に直列に複数層結合された構造をしている。
積層化構造体はそれらを囲む外被膜19で覆われ、個々のアクチュエータの固定子11と移動子12が離れないよう、外側から一定圧力で構造体を拘束している。
したがってこの方法では固定構造体にある程度柔軟性を持たせるか、外被膜に伸縮性を持たせるかしなければ、構造体自体の柔軟性はかなり悪くなる。」
「【0068】
図23に、伸張した積層化構造体への電力供給の方法としてもっとも単純な方法として各層の固定構造体18に柔軟性を有する導電体23を用いて給電し、各層の各静電アクチュエータへは固定構造体上の配線によって行う方法を示す。
また図24にその収縮状態を示す。
本例はである。
ところで静電アクチュエータは移動子が固定子から過引き抜きされると両者が分離してしまい、駆動機能が喪失してしまうため、各静電アクチュエータは過引抜を防止する機構が必要となる。
その一つの方法として、隣接固定構造体間で一定の距離以上に離れないよう拘束線ないし拘束被膜を用いる方法が考えられる。
その場合にはその線ないし膜に導電体を設けることができ、比較的容易に電力供給等を実現できる。
ただ導電体自体に柔軟性が求められるため、大きなアクチュエータ構造体の場合は導電体も太くしなければならず実現が困難となるし、導電体自体が収縮により変形するため、強度が弱いと断線等の不具合を生じやすいという欠点を持つ。」
「【図2】
[図:0001418979000007.jpg]
【図3】
[図:0001418979000008.jpg]
」
「【図23】
[図:0001418979000009.jpg]
【図24】
[図:0001418979000010.jpg]
」
(2)引用文献4に記載された事項
上記(1)から、引用文献4には、電極を配置した固定子11と、その上を電極と接しながらスライドする移動子12とからなり、固定子11に配置された駆動電極13、14に電圧を印加することにより動作する構造となっている静電アクチュエータにおいて、移動子が固定子から過引き抜きされる過引抜を防止する機構として、隣接固定構造体間で一定の距離以上に離れないよう拘束線ないし拘束被膜を用いることが記載されている。
第5 対比・判断
1 本願発明について
(1)対比
本願発明と引用発明とを対比する。
ア 引用発明の「誘電体10」は、「PVC(ポリ塩化ビニル)ゲルシートからなる」ことから、ゲル状のポリ塩化ビニルのシート状に形成された誘電体であるといえ、よって、本願発明の「ゲル状のポリ塩化ビニルでシート状に形成された誘電体シート」に相当する。
イ 引用発明の「電極12a、12b」は、「誘電体の厚さ方向の両面に対向させて配置」されることから、誘電体の両面にそれぞれ配設されるといえ、また、「伸縮、曲げが容易に可能な柔軟電極であり、」「シート状の誘電体10を面的に被覆する電極であ」ることから、可撓性を有するシート状の電極であるといえる。よって、引用発明の「電極12a、12b」は、本願発明の「前記誘電体シートの両面にそれぞれ配設された可撓性を有するシート状の電極」に相当する。
ウ 引用発明は、「誘電体10と、」「電極12a、12bとから構成される誘電アクチュエータ」であるから、上記ア、イの検討を参酌すると、本願発明と引用発明とは、「ゲル状のポリ塩化ビニルでシート状に形成された誘電体シートと、前記誘電体シートの両面にそれぞれ配設された可撓性を有するシート状の電極とを備え」る「アクチュエータ」である点で共通する。
エ 引用発明は、「電極に印加する電圧をON-OFF制御することにより、面形状が平面形状と湾曲形状との間で変化する」「誘電アクチュエータ」であり、電極に電圧を印加すると、「陰極12bと陽極12aがともに伸長して、陰極12a側が凹む湾曲変形が生じ」、電極に印加する電圧を解除すると、「誘電体10と電極12a、12bはもとの平面形状に復帰」することから、引用発明の「誘電体10」は、電極に電圧を印加したとき、「電極12a、12b」とともに、「面形状」、すなわち、面方向の形状が「もとの平面形状」から「湾曲形状」に伸長するものであるといえる。
よって、本願発明と引用発明とは、「前記各電極を介して前記誘電体シートに電圧を供給したときに前記誘電体シートが面方向に伸長するアクチュエータ」である点で共通する。
オ 以上によれば、本願発明と引用発明とは、次の点で一致し、相違する。
<一致点>
「ゲル状のポリ塩化ビニルでシート状に形成された誘電体シートと、前記誘電体シートの両面にそれぞれ配設された可撓性を有するシート状の電極とを備え、前記各電極を介して前記誘電体シートに電圧を供給したときに前記誘電体シートが面方向に伸長するアクチュエータ。」
<相違点>
本願発明は、「難撓性を有する材料で線状または帯状に形成されると共に前記誘電体シートの少なくとも一方の面における一の方向に延在するように当該少なくとも一方の面と前記電極との間に配置されて当該誘電体シートの当該一の方向への伸長を規制する規制部材が当該少なくとも一方の面における当該一の方向と交差する交差方向に沿って間隔を空けて複数並設されている」のに対し、引用発明は、そのような構成を備えていない点。
(2)相違点についての判断
ア 本願明細書の段落0012には、「本発明に係るアクチュエータによれば、誘電体シートにおける一の方向に延在する規制部材を一の方向と交差する交差方向に沿って複数並設したことにより、誘電体シートの一の方向の伸縮を規制し、これによって誘電体シートの交差方向の伸縮率を十分に高めることができる。」、同段落0024には、「また、このアクチュエータ10では、難撓性を有する複数の規制部材23がPVCゲルシート21の幅方向に延在するように配置されているため、PVCゲルシート21の幅方向の伸縮が規制されている。このため、このアクチュエータ10では、PVCゲルシート21の幅方向の伸縮が規制される分、PVCゲルシート21全体の伸縮量が長さ方向に集中し、この結果、規制部材23を設けていない構成と比較して、PVCゲルシート21が長さ方向に大きく伸縮する。」との記載がある。
これらの記載から、相違点に係る本願発明の構成は、誘電体シートの一の方向の伸縮を規制することによって、誘電体シートの交差方向の伸縮率を十分に高めることを考慮して、特定されているものである。
イ 一方、引用文献2~4には、相違点に係る本願発明の構成は、記載も示唆もされていない。
(ア)具体的には、引用文献2には、上記第4の2(2)のとおり、「静電エラストマーアクチュエータ(DEA)12において、DEA12の側方位置に、DEA12を囲むように位置する制限部13が設けられ」ることが記載されているものの、相違点に係る本願発明の構成、特に、「規制部材」が「誘電体シートの」「少なくとも一方の面と」「電極との間に配置され」る構成は、記載も示唆もされていない。
(イ)引用文献3には、上記第4の3(2)のとおり、「アクチュエータ10を内側に収容させている筐体20とアクチュエータ10を内側に収容させている移動フレーム30とにより構成された伸張防止機構40が、アクチュエータ10の厚さ方向Xの寸法を規制すること」が記載されているものの、相違点に係る本願発明の構成、特に、「規制部材」が「誘電体シートの」「少なくとも一方の面と」「電極との間に配置され」る構成は、記載も示唆もされていない。
(ウ)引用文献4には、上記第4の4(2)のとおり、「静電アクチュエータにおいて、移動子が固定子から過引き抜きされる過引抜を防止する機構として、隣接固定構造体間で一定の距離以上に離れないよう拘束線ないし拘束被膜を用いること」が記載されているものの、相違点に係る本願発明の構成、特に、「規制部材」が「誘電体シートの」「少なくとも一方の面と」「電極との間に配置され」る構成は、記載も示唆もされていない。
ウ したがって、引用発明の「誘電アクチュエータ」において、相違点に係る本願発明の構成とすること、すなわち、「難撓性を有する材料で線状または帯状に形成されると共に前記誘電体シートの少なくとも一方の面における一の方向に延在するように当該少なくとも一方の面と前記電極との間に配置されて当該誘電体シートの当該一の方向への伸長を規制する規制部材が当該少なくとも一方の面における当該一の方向と交差する交差方向に沿って間隔を空けて複数並設されている」ようにすることは、当業者が容易に想到し得たものとはいえない。
(3)小括
(2)のとおり、本願発明は、引用発明及び引用文献2~4に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
第6 原査定について
審判請求時の補正により、本願発明は、上記相違点に係る本願発明の構成を有するものとなっており、上記第5で検討したとおり、本願発明は、引用発明及び引用文献2~4に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではないから、原査定の理由を維持することはできない。
第7 むすび
以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
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