特許拒絶査定不服審判
2023-019112
電場法を用いた形態可変型マイクロパターン化高分子触覚素材の製造方法
- 審判番号
- 2023-019112
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2021-564196外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2023年11月10日
- 審決日
- 2025年07月25日
- 公報発行日
- 2026年01月30日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】コリア アドバンスト インスティチュート オブ サイエンス アンド テクノロジー
- 【請求人代理人】山口 健次郎
- 分類
- P18 .113-Z (C08F) / P18 .575-Z (C08F)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条1項3号
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第1項第3号、特許法第17条の2第6項、特許法第17条の2第5項第2号、特許法第184条の14、特許法第30条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2021-564196「電場法を用いた形態可変型マイクロパターン化高分子触覚素材の製造方法」拒絶査定不服審判事件〔令和4年3月10日国際公開、WO2022/049424、令和4年12月5日国内公表、特表2022-550652〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、2021年(令和3年)5月25日(パリ条約による優先権主張 2020年(令和2年)9月1日(KR)大韓民国)を国際出願日とする出願であって、以降の手続の経緯は次のとおりである。
令和4年 3月14日 手続補正書の提出
令和5年 1月16日付け 拒絶理由通知
同年 4月21日 意見書及び手続補正書の提出
同年 7月 4日付け 拒絶査定
同年11月10日 審判請求書及び手続補正書の提出
同年11月20日付け 手続補正指令書
同年12月18日 手続補正書(方式)
第2 令和5年11月10日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和5年11月10日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
1 本件補正の内容
本件補正は、補正前の請求項1の
「次の段階を含む形態可変型マイクロパターン化高分子薄膜の製造方法:
(a)2つのパターン化された電極基板のそれぞれの上部に高分子配向膜を形成させる段階;
(b)前記高分子配向膜が形成されており、パターン化された電極基板2個を、一定の間隔をあけて交差するように結合させ、サンドウィッチ電極セルを作製する段階;
(c)前記サンドウィッチ電極セルの両基板の間に液晶有機モノマー混合物を注入する段階;及び
(d)前記液晶有機モノマー混合物が注入されているサンドウィッチ電極セルに電場を印加した状態で光硬化を行い、マイクロパターン化高分子薄膜を製造する段階、
を含み、前記形態可変型マイクロパターン化高分子薄膜は、電極の交差する部分に-1位相欠陥が形成されており、電極の垂直及び水平の間に+1の位相欠陥が形成されており、対角線中心に-1位相欠陥が形成されており、外部温度が増加するにつれて位相欠陥周囲の表面陥没変形が5~800nmまで増加して表面の粗さ又は摩擦力の変化が誘導される、前記形態可変型マイクロパターン化高分子薄膜の製造方法。」
を
「次の段階を含む形態可変型マイクロパターン化高分子薄膜の製造方法:
(a)2つのパターン化された電極基板のそれぞれの上部に高分子配向膜を形成させる段階;
(b)前記高分子配向膜が形成されており、パターン化された電極基板2個を、一定の間隔をあけて交差するように結合させ、サンドウィッチ電極セルを作製する段階;
(c)前記サンドウィッチ電極セルの両基板の間に液晶有機モノマー混合物を注入する段階;及び
(d)前記液晶有機モノマー混合物が注入されているサンドウィッチ電極セルに電場を印加した状態で光硬化を行い、マイクロパターン化高分子薄膜を製造する段階、
を含み、前記形態可変型マイクロパターン化高分子薄膜は、電極の交差する部分に-1位相欠陥が形成されており、電極の垂直及び水平の間に+1の位相欠陥が形成されており、対角線中心に-1位相欠陥が形成されており、外部温度が増加するにつれて位相欠陥周囲の表面陥没変形が5~800nmまで増加して表面の粗さ又は摩擦力の変化が誘導され、そして単位面積当たりのサンドイッチ電極セルの基板に接触しているマイクロパターン化高分子薄膜の部分の数が増加するにつれて、高分子薄膜の表面の摩擦力が増加する、前記形態可変型マイクロパターン化高分子薄膜の製造方法。」(下線は補正箇所である。)
とする補正を含むものである。
2 補正の適否
(1)補正の目的
本件補正のうち請求項1についてする補正は、補正前の請求項1の「形態可変型マイクロパターン化高分子薄膜」を、「単位面積当たりのサンドイッチ電極セルの基板に接触しているマイクロパターン化高分子薄膜の部分の数が増加するにつれて、高分子薄膜の表面の摩擦力が増加する」ものに限定するものであって、補正の前後の請求項1に係る発明の、産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。
(2)独立特許要件について
そこで、本件補正後の請求項1に係る発明が、特許法第17条の2第6項で準用する同法第126条第7項の規定に適合するか否か、すなわち、特許出願の際独立して特許を受けることができるものか否かについて、以下検討する。
ア 本件補正発明
本件補正後の請求項1に係る発明(以下「本件補正発明」という。)は、次のとおりである。
「次の段階を含む形態可変型マイクロパターン化高分子薄膜の製造方法:
(a)2つのパターン化された電極基板のそれぞれの上部に高分子配向膜を形成させる段階;
(b)前記高分子配向膜が形成されており、パターン化された電極基板2個を、一定の間隔をあけて交差するように結合させ、サンドウィッチ電極セルを作製する段階;
(c)前記サンドウィッチ電極セルの両基板の間に液晶有機モノマー混合物を注入する段階;及び
(d)前記液晶有機モノマー混合物が注入されているサンドウィッチ電極セルに電場を印加した状態で光硬化を行い、マイクロパターン化高分子薄膜を製造する段階、
を含み、前記形態可変型マイクロパターン化高分子薄膜は、電極の交差する部分に-1位相欠陥が形成されており、電極の垂直及び水平の間に+1の位相欠陥が形成されており、対角線中心に-1位相欠陥が形成されており、外部温度が増加するにつれて位相欠陥周囲の表面陥没変形が5~800nmまで増加して表面の粗さ又は摩擦力の変化が誘導され、そして単位面積当たりのサンドイッチ電極セルの基板に接触しているマイクロパターン化高分子薄膜の部分の数が増加するにつれて、高分子薄膜の表面の摩擦力が増加する、前記形態可変型マイクロパターン化高分子薄膜の製造方法。」
イ 本願明細書及び本願図面の記載事項
本願の願書に添付した明細書(以下「本願明細書」という。)及び本願の願書に添付した図面(以下「本願図面」という。)には、次の記載がある。
「【0053】
実施例1:形態可変型マイクロパターン化高分子薄膜の作製
1.パターン化された電極基板の作製
電場ベースの液晶配向プラットホームのために、パターン化された電極基板を作った。リフト-オフ(Lift-off)工程法を用いてガラス基板にITOパターンを具現した。一番目のITOガラス基板は、10μm幅と10μm間隔の縞パターンを有し、二番目のITOガラス基板は、10μm幅と30μm間隔の縞パターンを有する。
【0054】
2.VAPI高分子配向膜コーティング
ガラスITO電極パターン基板をアセトン(acetone,SAMCHUN chemical)、エタノール(ethyl alcohol,SAMCHUN chemical)、3次蒸留水(18.3MΩ/cm,Human Corp.)を順次に用いて洗浄した。液晶単量体分子の垂直配向誘導のためにイミド系高分子のうち、疏分子性高分子(molecular-phobic polyimide)溶液を基板上にスピンコートし、90℃及び200℃でそれぞれソフトベーキング(soft baking)及びハードベーキング(hard baking)で硬化させ、疏分子性高分子膜を得た。
【0055】
3.サンドウィッチセル作製
一定の間隔をあけて電場を印加する電極セルを作製するために、2枚の基板を使用し、両基板の間に5μmビーズ(bead)を配置して合わせた。UV硬化用糊(glue)を用いてビーズと混合した後、光硬化によって両基板を接着させた。特に、パターン化された基板を90゜の角度で交差して接合し、周期的な格子電極構造を作製した。合計2種のパターン化された電極基板を用いて3種の電極セルを作製した。
【0056】
4.液晶ネットワーク混合物材料の準備及び注入
実施例で用いられる混合物は、2個のアクリル基が付着した4-(3-アクリロイルオキシプロピルオキシ)ベンゾ酸2-フェニル-1,4-フェニレンエステル(4-(3-acryloyloxypropyloxy)-benzoic acid 2-methyl-1,4-phenylene ester,69wt%)、1個のアクリル基が付着した4-メトキシベンゾ酸4-(6-アクリロイルオキシ-ヘキシルオキシ)フェニルエステル(4-methoxybenzoic acid 4-(6-acryloyloxy-hexyloxy)phenyl ester,30wt%)、光開始剤である2,2-ジメトキシ-2-フェニル-アセトフェノン(2,2-dimethoxy-2-phenyl-acetophenone,1wt%)で構成された混合物を使用し、上の混合物は冷却過程で順に等方相、ネマチック相を有する。等方相からネマチック相への転移温度は、約87℃である。上の混合物を等方相状態でサンドウィッチセル内に注入し、毛細管力によって注入した。その後、ネマチック相となる75℃まで温度を下げて維持した。
【0057】
5.電場印加を用いたマイクロ構造体の作製及び光硬化を用いた高分子薄膜の作製
交流電場を用いて順次にトップ-ダウン(top-down)方法で電場を印加した。パターン1はf=100kHz、V0=10V、パターン2はf=100kHz、V0=15V、パターン3はf=100kHz、V0=30Vにおいて最も規則的なマイクロ構造体が形成された。その後、電場と温度を維持した状態でUV照射によって光硬化を行った。50~100mWの強度で20分以上照射して完全に硬化させ、高分子薄膜を作製した。
【0058】
実施例2:光学テクスチャー観察
温度調節装置(hearting stage,LINKAM)を用いて等方相温度から冷却させながら、ネマチック液晶相で電場を印加することによって現れる光学テクスチャーを、偏光顕微鏡(LV100-POL,Nikon)で観察した。また、高分子薄膜を作製した後、一方のガラス基板を除去した後、常温で薄膜の光学テクスチャーを観察し、それを図2及び図3に示した。
【0059】
図3の(a)で、x軸、y軸において20μmの周期で-1、+1位相欠陥が交互に存在する構造が現れ、図3の(b)で、x軸には20μmの周期で、y軸には40μmの周期で位相欠陥が交互に存在する構造が現れる。図3の(c)で、x軸、y軸において40μmの周期で位相欠陥アレイが交互に存在する。図3の(d)~(f)は、各パターン(a)~(c)に該当する分子配向を、上方から視た(top-down view)シミュレーション模式図と透視図(perspective view)である。
【0060】
電極の交差する部分に-1位相欠陥が形成され、その後、垂直、水平にその間に+1の位相欠陥が形成され、対角線中心に-1の位相欠陥が形成される。図3の(a)パターン1は、各位相欠陥が垂直、水平20μmの間隔で形成され、図3の(b)パターン2は、各位相欠陥が垂直40μm、水平20μmの間隔で形成され、図3の(c)パターン3は、各位相欠陥が垂直、水平40μmの間隔で形成される。この時、+1位相欠陥の場合、広がる様相の弾性変形(splay deformation)の様相に非等方的高分子配向が形成され、-1位相欠陥の場合、4個の曲がる様相の弾性変形(bend deformation)の様相で非等方的高分子配向が形成される。このような非等方的高分子配向は、等方的配向に外部刺激変化を与えるとき、液晶ネットワークの形状変形を誘導する機序を発生する原因として働き得る。
【0061】
実施例3:表面形状イメージ及び表面粗度グラフの観察
一方のガラス基板を除去した高分子薄膜コーティング基板を使用し、温度調節装置(hearting stage,LINKAM)を用いて常温から昇温及び冷却をしながら表面形状を変化させた。この時、現れる表面形状イメージと表面粗度グラフを表面分析機(surface profiler,msurf)で観察し、図4及び図5に示した。
【0062】
図4は、マイクロパターン化高分子薄膜の温度による表面形状変化イメージを示す図である。形態変形の結果をより具体的に確認するために、温度による表面粗度変化をグラフとして得た。
【0063】
各パターンにおいて、50℃、100℃、170℃の温度で表面形成イメージを得、全ての欠陥において陥没表面変形が観察される。これは、表面変化が能動的に熱刺激によって現れることを意味する。
【0064】
図5には、図4において緑色矢印で観察された表面形状変化の表面粗度グラフを示す。。図5の(a)~(c)の上段のイメージは、170℃で上方から視た(top-down view)た表面形状イメージである。図5の(d)は、上段のイメージで表示した100℃、170℃の緑色矢印の表面粗度グラフであり、図5の(e)は、上段のイメージで表示した100℃、170℃の黄色矢印の表面粗度グラフである。温度によって次第に表面陥没変形が深くなることが観察され、これは、能動的に表面変化が外部刺激によって次第に大きくなるということを意味する。図5の(f)~(h)は、非等方的高分子構造と温度上昇による欠陥周囲の活性化力分布を示す。」
【0065】
全ての位相欠陥において陥没変形が観察されることが再び確認できたし、温度が増加するにつれて表面変形程度が増加することも確認できる。特に、+1位相欠陥の場合、緑色表面粗度グラフにおいて、温度が100℃から170℃に変更されると、パターン1で226nm→498nm、パターン2で180nm→386nm、パターン3でそれぞれ185nm→326nmと陥没変形が観察される。これは、約5.11μm、4.76μm及び4.61μmのサンプル厚を使用した比例結果である。-1位相欠陥の場合、パターン1で36nm→112nm、パターン2で0nm→74nm、パターン3でそれぞれ0nm→~10nmと陥没変形が観察される。上の結果は、+1位相欠陥において-1位相欠陥に比べて変形が遥かに強いということを示す。その理由は、-1欠陥周囲の曲げ構造により、-1欠陥領域において変形が抑制される傾向があり、欠陥中心周辺の+1欠陥に比べて歪みがより分散され、<100nmの表面変形が弱く発生する。黄色の表面粗度グラフは、緑色の表面粗度グラフと同様の傾向を示す。+1位相欠陥構造の陥没変形は、-1欠陥よりも大きい。一方、緑色の表面粗度グラフよりも低い黄色の表面粗度グラフの変形が観察される。その理由は、次の通りである。まず、除去された電極の減少厚さによって変形程度が減少する。次に、表面固定がより強いため、裸ガラスに比べて底基板のITO存在部分において厚さが薄くなる効果がより強いことから、緑色の表面粗度グラフにおいて陥没変形がより深く発生するものと判断できる。要するに、液晶ネットワーク高分子パターン化薄膜の内部のポリマー形態の方向は、変形を分析するためにマップすることができる。これらが非等方的構造から等方的構造に変わると、図5の(f)~(h)の矢印で表示された力が発生する。以前に発表された論文において、高分子薄膜の場合、広がる様相の弾性変形を有するとき、+1位相中心を中心にして発散力を誘導し、陥没変形を誘導するという結果があった。また、-1双曲線位相欠陥は、曲げ変形が分散され、4個の山と谷が形成されるが、中心において陥没変形が発生し得る。したがって、結局、全ての位相中心において陥没変形が誘導され得る。このような結果は、電場でパターン化された液晶ネットワーク高分子薄膜が外部刺激によって作動でき、表面変化が微細に制御され得るということを証明できる結果である。
【0066】
実施例4:変形が深化するにつれて減少する摩擦係数の観察
図6の(a)は、温度による液晶ネットワーク高分子薄膜の摩擦係数を観察した実験設計図である。図6の(b)は、比較群として微細パターン無しで液晶単位体がいずれも垂直配列を維持したまま電極文様の表面構造だけを有している高分子薄膜と平らなガラス間の摩擦係数を温度によって観察したグラフである。このとき、ガラス転移温度以上の温度で高分子薄膜の粘弾性が急に減少して摩擦係数も大きい減少を示した後、それ以上の温度では類似の値を維持した。
【0067】
図6の(c)及び図6の(d)はそれぞれ、パターン1とパターン2を有する高分子薄膜が高温で変形された時にガラスとの接触した様相を、単位面積で描いた図である。このとき、パターン1番の場合が、単位面積当たりのガラスとの接触部がパターン2のそれよりも2倍多いということが分かる。図6の(e)は、パターン1と2を有する高分子薄膜と平らなガラスとの摩擦係数を、温度によって観察した実験結果グラフである。図6の(b)と対照的に、摩擦係数が温度が上がるにつれて次第に減少することが見られる。これは、高分子薄膜の陥没が深化するにつれて平らなガラスとの接触面積が次第に小さくなる現象による結果である。図6の(c)及び図6の(d)に示すように、200℃で変形の強度が最大である時、パターン1がパターン2に比べて約2倍も高い摩擦係数を有することが分かる。」
「【図1】
[図:0001430453000001.jpg]
」
「【図2】
[図:0001430453000002.jpg]
」
「【図3】
[図:0001430453000003.jpg]
」
「【図6】
[図:0001430453000004.jpg]
」
ウ 引用文献1及びその記載事項
拒絶査定において引用文献1として引用された下記の文献は、本願の優先日(令和2年9月1日)前の2020年(令和2年)5月28日に電気通信回線を通じて公衆に利用可能となったものである。
この文献は、国際出願の願書において、新規性喪失の例外に関する申し立ての欄に記載された文献であるが、特許法第184条の14で規定する「第29条第1項各号のいずれかに該当するに至つた発明が第30条第2項の規定の適用を受けることができる発明であることを証明する書面」が提出されていないため、特許法第30条第2項の規定の適用を受けることはできない。
引用文献1:You, Ra,Patterning of microstructures of organic molecules using electric field and its applications,Ph.D. Dissertation(Korea Advanced Institute of Science and Technology),2020年05月28日,http://library.kaist.ac.kr/search/detail/view.do?bibCtrlNo=924427&flag=dissertation
そして、引用文献1には、次の事項が記載されている。
「4.2 Experimental
4.2.1 Preparation of the LC cells
Patterned ITO glass substrates were chemically cleaned with acetone and ethanol to remove impurities, and then washed several times with deionized water. The cleaned substrates were treated with O2 plasma for 5 min to remove residual impurities. To induce vertical orientation, the substrates were coated using vertical alignment polyimide(VAPI: AL60702, JSR). Three kind of LC cells were assembled using two patterned ITO substrates with striped electrodes 10μm width and 10μm spacing(electrode 1) and 10μm width and 30μm spacing(electrode 2),i.e. LC cell 1 was fabricated with the crossing of two electrode 1s. LC cell 2 was made with the crossing of electrode 1 and electrode 2. LC cell 3 was fabricated with the crossing of two electrode 2s. LC cells having ~4.8±0.3μm-thickness were obtained using silica beads as spacers, and the exact thickness of the cells is measured by the Febry-Perot interference method.
4.2.2 Materials and liquid crystal network sample preparation
The reactive liquid crystal monomers 4-(3-acryloyloxypropyloxy)-benzoic acid 2-methyl-1,4-phenylene ester('RM257', Merck), 4-methoxybenzoic acid 4-(6-acryloyloxy-hexyloxy)phenyl ester('RM105', Synthon chemicals) and photoinitiator 2,2-dimethoxy-2-phenyl-acetophenone(Sigma aldrich) were mixed at a weight percent of 69.0 wt%, 30.0 wt%, and 1.0wt%, respectively. The mixture was heated to 100℃ for homogeneous mixing in an isotropic state and was injected into the LC cells by capillary action. The sample was than cooled to 75℃ for the nematic phase and kept during applying AC electric field and photo-polymerization. The temperature of the sandwich cells was controlled with a heating stage(LINKAM LTS420, Tadworth, UK) equipped with a temperature controller(LINKAM TMS94, Tadworth, UK). The photo-polymerization was performed using a 365nm diode lamp for 20min with an intensity of 50-100mW/cm2. After the polymerization, one substrate was detached in order to observe surface profiles and both substrates were detached for tensile testing.
4.2.3 Imaging and simulation of molecular distribution
The optical textures of the LC cells were observed by POM(LV100POL, Nikon) with a CCD camera(DS-Ril, Nikon). The LC director distribution with a top-down applied AC electric field was calculated using commercial software(Techwiz LCD 3D, Sanayi System Company, LTD., Korea
4.2.4 Surface topography images and profiles measurements
Dynamic surface topography images and each profile measurements were observed using optical surface profiler(μsurf, nanoscope) as a function of temperature.
4.2.5 Tensile testing of the LCN films and analysis of its fracture surfaces
LCN films with each pattern were fabricated on a glass substrate, and they were patterned by a femtosecond laser beam to prepare tensile testing specimens. Tensile testing of the prepared LCN films was conducted on a water surface which is exploited as an ideal platform for free-standing and manipulation of thin films owing to its high surface tension and low viscosity. Each specimen was floated on the water surface by separating an LCN-glass interface, and the floating LCN film was attached to PDMS-coated Al grips by van der Waals adhesion. All specimens were tested with a constant displacement rate, and their fracture surface were investigated by optical microscope(OM, LV100POL, Nikon) and scanning electron microscope (FE-SEM, SU8230, HITACHI,) after testing.
4.3 Results and discussion
4.3.1 Electric field-driven liquid crystal network
To achieve LCN films using electric field, we fabricated three LC cells using two kinds of ITO-patterned glass substrates with striped electrodes, i.e., 10μm width with 10μm spacing(electrode 1) and 10μm width with 30μm spacing(electrode 2)(Fig.4.1a). LC cell 1, LC cell 2 and LC cell 3 are fabricated by the crossing of two electrode 1, one electrode 1 with one electrode 2 and two electrode 2, respectively(Fig.4.1c). The red and blue indicate the top and bottom electrodes, which applied the AC electric field. The cell-gaps are maintained ~4.8±0.3μm. Here, we pretreat the substrates with vertical alignment polyimide(VAPI), proving a vertical orientation, which helps to the formation of uniform structure(Fig.4.1b). Thus, the LC mixtures in its monomeric state is fills the LC cells, the molecules have vertical orientation initially at nematic phase. Further, The LC director is reoriented by adjusting an AC electrical voltage V=V0sin2πft, which leads to making a uniform periodic micro-pattern. Here, V0 and f, which are the amplitude and frequency, respectively. When an AC electric field above V0=10V, V0=15V, and V0=25V with f=100kHz are applied respectively in the LC cell 1(Fig. 4.2a), LC cell 2(Fig.4.2b) and LC cell 3(Fig.4.2c), it generated a uniform LC defect arrays. The periodic LC patterns are generated gradually from the crossed electrodes region to the center in each unit as the voltage increased(Fig.4.2).
[図:0001430453000005.jpg]
[図:0001430453000006.jpg]
[図:0001430453000007.jpg]
The fabrication of LCN film is carried out under the specific condition of V0=10V in the LC cell 1, V0=15V in the LC cell 2 and V0=25V in the LC cell 3 at f=100kHz, T(temperature)=75℃. Here, the LCN films are made by in-situ polymerization by UV irradiation. The application of an electric field to a negative dielectric LC acrylate materials in a homeotropic boundary condition leads to a formation of umbilical +1 and -1 defect without half-integer defects occurring. In detail, The observation of the microscopic organization shows periodic microstructures of the LCN films(Fig.4.3a-c). The detailed molecular directors can be analyzed by inserting a first-order retardation plate(λ= 530 nm, the slow axis is the blue arrow in Fig.4.3a-c). The regular patterns are composed of defect arrays of +1 defect(red dot) and -1 defect(blue dot). The +1 and -1 defects are alternately repeated with a period of 20um in pattern 1. Pattern 2 has defects anisotropically with periods 20um in horizontal and 40 um in longitudinal, and pattern 3 repeats defects at intervals twice as wide as pattern 1. The director profile around the +1 defects radical director profiles and the -1 defects is hyperbolic configuration, respectively. The molecular arrangement affected by the electric field was estimated using commercial simulation software (Techwize LCD 3D, Sanayi System Company, LTD, Korea). Each rod represents the average director distribution in the top views and the perspective views(Fig.4.3d-f). The simulation results (Fig.4.3d-f)show the corresponding defects structure that marked in the yellow box in an upper row(Fig.4.3a-c); the blue dots indicate the +1 defects and the red dots represents the -1 defects, respectively.
The top view of simulations coincides with the optical images of the uniform textures shown as yellow box in upper row. On the other hand, there is a difference in the distribution of out-of-plane orientations when checked in the perspective view. From the initial vertical arrangement, the molecular directors gradually rotate perpendicular to the electric field as the electric field is applied to form a uniform structure, which confirms to the increase of the birefringence. At this time, the desired 3D structure can be immobilized by polymerizing while controlling the voltage of the electric field. Therefore, fabrication of LCN using E-field have the advantage to induce 3D orientation control that could not be induced by conventional photoalignment or surface treatment methods.
4.3.2 Surface actuation caused by periodic topological defects
To observe the surface deformation according to the temperature, one of the substrate is removed on the LC cells. The fabricated three differently programmed LCN films show only corrugated electrode pattern at 50℃(Fig.4.4a-c). The LCN films with the pattern of the periodic defect are deformed when the film is heated above the glass transition temperature(~87℃)(Fig.4.4d-f), which is all point defects produce depressions. The actuation behaviors are much increased in the higher temperature(Fig.4.4g-i).
The magnified top-view images of the surface topographic images of pattern 1(Fig.4.5a), 2(Fig.4.5b), and 3(Fig.4.5c) are figured out, which marked as black box in Fig.4.4g-f. And, the surface profiles of the center electrode and between electrodes are depicted along with green arrows and yellow arrows, respectively, according to temperature. It can be confirmed that the deformation enhances each pattern as increased temperature. The deformation gradually occurs near the grass transition temperature, and the degree of change is most significant at 170℃ as expected in surface topographic images(Fig.4.4). First, the depression pattern was observed in all areas with a topology of -1 defect and +1 defect as a result of checking on the green surface profile(Fig.4.5d). The depression appeared much larger in the regions having the +1 defect topology than the parts having the -1 defect topology. When the temperature is changed from 100℃ to 170℃, the deformations are changed in the +1 topological defect cores; 226nm → 498nm in pattern 1, 180nm → 386nm in pattern 2, and 185nm → 326nm in pattern 3, respectively. These are the proportional results using sample thicknesses of about 5.11μm, 4.76μm, and 4.61 μm. The depression also occurs around -1 defect structures. When the temperature is changed from 100℃ to 170℃, the deformations are changed in the -1 topological defect cores; 36nm → 112nm in pattern 1, 0nm → 74nm in pattern 2, and 0nm → ~10nm in pattern 3, respectively. Due to the bend conformation around -1 defects, the deformation tends to be suppressed in the regions -1 defects, in which the distortion is more dispersed than the +1 defect around the defect core, so that the depression <100nm occurs weakly. The yellow surface profile also showed the same tendency as the gree surface profile(Fig.4.5e). The depression deformations of the +1 defect structures are greater than the -1 defects. On the other hand, the deformations of yellow surface profiles lower than the green surface profile are observed. Comprehensively, the orientation of the polymer conformation inside the LCN film is mapped to analyze deformation(Fig.4.5f-h). When they change from anisotropic ordering to isotropic ordering, the occurred forces that are indicated by arrows. At this time, the forces occurring in the +1 defects and -1 defects are shown in blue and red. In the previously published paper, the author shows that the spray deformation exists in the +1 radial topological defect, which induces a divergence force, resulting in depression. In addition, the -1 hyperbola topological defect is complicated, but eventually bend deformation is distributed, resulting in 4 ridges and valleys, but depression may occur in the core. Thus, depression can occur in all defect cores with these principles. These results represent that the LCN film programmed with the electric field is capable of actuation on external stimuli, and it can be seen that the surface change can be finely controlled.」(30頁~38頁、但しFigure4.4及び4.5は省略)
以下、当審による日本語訳を示す。
「4.2 実験
4.2.1 液晶セルの調製
パターン化されたITOガラス基板をアセトン及びエタノールで化学的に洗浄し、不純物を除去した後、脱イオン水で数回洗浄した。洗浄した基板をO2プラズマで5分間処理し、残留不純物を除去した。垂直配向を誘導するため、基板に垂直配向ポリイミド(VAPI:AL60702、JSR)をコーティングした。幅10μm、間隔10μmのストライプ電極(電極1)と幅10μm、間隔30μmのストライプ電極(電極2)の2つのパターン形成ITO基板を用いて、3種類の液晶セルを組み立てた。すなわち、液晶セル1は2つの電極1を交差して組み立て、液晶セル2は電極1と電極2を交差して組み立て、液晶セル3は2つの電極2を交差して組み立てた。シリカ粒子をスペーサーとして用いることで、~4.8±0.3μmの厚みを有する液晶セルを作成し、正確な厚みはFebry-Perot干渉法で測定した。
4.2.2 材料及び液晶ネットワークサンプルの調製
反応性液晶モノマーの4-(3-アクリロイルオキシプロピルオキシ)-安息香酸2-メチル-1,4-フェニレンエステル(「RM257」、Merck社)及び4-メトキシ安息香酸4-(6-アクリロイルオキシ-ヘキシルオキシ)フェニルエステル(「RM105」、Synthon Chemicals社)、及び光開始剤である2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン(Sigma Aldrich社)を、それぞれ69.0質量%、30.0質量%、1.0質量%の割合で混合した。混合物を100℃に加熱し、等方相の均一混合物とし、毛細管現象を利用して液晶セルに注入した。その後試料をネマチック相となる75℃に冷却し、交流電場を印加し、光重合反応を行う間、温度を維持した。サンドイッチセルの温度は、温度コントローラー(LINKAM TMS94、英国Tadworth社製)を備えた加熱ステージ(LINKAM LTS420、英国Tadworth社製)によって制御した。光重合は365nmのダイオードランプを用い、50-100mW/cm2の強度で20分間行った。重合後、片方の基板を剥離して表面形状を観察し、両方の基板を剥離して引張試験を行った。
4.2.3 分子分布のイメージングとシミュレーション
液晶セルの光学組織は、CCDカメラ(DS-Ril、Nikon社製)を備えたPOM(LV100POL、Nikon社製)によって観察した。交流電場をトップダウンで印加した液晶配向分布は市販のソフトウェア(Techwiz LCD 3D、Sanayi System Company, LTD.、韓国)を用いて計算した。
4.2.4 表面トポグラフィー画像とプロファイル測定
光学式表面プロファイラー(μsurf、Nanoscope社)を用いて、温度の関数として動的表面トポグラフィー画像と各プロファイル測定を行った。
4.2.5 LCNフィルムの引張試験と破断面解析
各パターンのLCNフィルムをガラス基板上に作製し、フェムト秒レーザービームでパターン形成し、引張試験片を作製した。作製したLCNフィルムの引張試験は、高い表面張力と低い粘性により、薄膜の自立と操作に理想的なプラットフォームとして利用されている水面上で行った。各試験片はLCNとガラスの界面を分離して水面に浮かべ、浮かんだLCNフィルムをファンデルワールス力でPDMSコーティングされたAlグリップに接着した。全ての試験片は一定の移動速度で試験され、試験後、光学顕微鏡(OM、LV100POL、Nikon社)及び走査電子顕微鏡(FE-SEM、SU8230、HITACHI社)で破断面を観察した。
4.3 結果と考察
4.3.1 電場誘導型液晶ネットワーク
電場を用いてLCNフィルムを得るために、幅10μm、間隔の10μmのストライプ電極(電極1)と、幅10μm、間隔30μmのストライプ電極(電極2)を有する2種類のITOパターン形成ガラス基板を用いて3つの液晶セルを作製した(図4.1a)。液晶セル1、液晶セル2、液晶セル3は、それぞれ、2つの電極1、電極1と電極2、2つの電極2を交差させて作製した(図4.1c)。赤と青は交流電場を印加する上部電極と下部電極を示している。セルの間隔は~4.8±0.3μmに維持される。ここで、基板を垂直配向ポリイミド(VAPI)で前処理することで垂直配向を実現し、規則正しい構造の形成に貢献した(図4.1b)。こうして、モノマー状態の液晶混合物が液晶セルに充填され、分子はネマチック相の初期の段階で垂直配向している。さらに、液晶は交流電圧V=V0sin2πftを調節することで配向が転換され、規則正しい周期的なマイクロパターンを形成する。ここで、V0とfは、それぞれ強度と周波数を表す。f=100kHzでのV0=10V、V0=15V及びV0=25Vの交流電場を液晶セル1(図4.2a)、液晶セル2(図4.2b)、液晶セル3(図4.2c)に印加すると、規則正しい液晶欠陥群が形成される。電圧を上げるにつれて、周期的な液晶パターンが各ユニットの交差電極領域から中央に向かって徐々に形成される(図4.2)。
LCNフィルムの製造は、f=100kHz、T(温度)=75℃で、液晶セル1でV0=10V、液晶セル2でV0=15V、液晶セル3でV0=25Vという特定の条件で行われる。ここで、LCNフィルムはUV照射による反応混合物中での重合により作られる。垂直配向境界条件で負の誘電性液晶アクリレート材料に電場を印加すると、半整数欠陥が生じることなく、中央に+1及び-1の欠陥が形成される。詳細には、顕微鏡による組織の観察でLCNフィルムの周期的なマイクロ構造が観察される(図4.3a-c)。詳しい分子の配向は一次遅延プレート(λ=530nm、遅延軸は図4.3a-cの青い矢印)を挿入することで分析できる。規則的なパターンは+1欠陥(赤い点)及び-1欠陥(青い点)の欠陥群により構成される。パターン1では+1及び-1欠陥が20μmの周期で交互に繰り返される。パターン2は水平方向に20μm、垂直方向に40μmの周期を有する異方的な欠陥を有し、パターン3はパターン1の2倍の間隔で欠陥が繰り返される。+1欠陥周辺は放射形状を、-1欠陥は双曲線形状をそれぞれ有する。電場によって影響を受ける分子配列は、市販のシミュレーションソフトウェア(Techwize LCD 3D、Sanayi System Company、LTD、韓国)を用いて推定した。各ロッドは上面図及び透視図における平均配向分布を示す(図4.3d-f)。シミュレーションの結果(図4.3d-f)、上段の黄色い枠でマークされた対応する欠陥構造がみられた(図4.3a-c)。青い点は+1欠陥を、赤い点は-1欠陥をそれぞれ示す。
シミュレーションの上面図は、上段の黄色い枠で示される規則的な表面形状の光学画像と一致する。一方、透視図で確認すると、面外配向の分布に違いがある。初期の垂直配列から、電場が印加されて規則的な構造が形成されるにつれて、分子配向は徐々に回転し、電場に対して垂直になり、これは複屈折の増加を裏付ける。このとき、電場の電圧を調節しながら重合することで所望の3D構造が固定され得る。それゆえ、電場を用いたLCNの作製は、従来の光配向法や表面処理法では得られない3D配向制御を実現できるという利点がある。
4.3.2 周期的なトポロジカル欠陥によってもたらされる表面の変形
温度による表面変形を観察するために、基板の片方を液晶セルから除去する。作製した3つの異なる方向付けをされたLCNフィルムは、50℃では溝の電極パターンのみを示す(図4.4a-c)。周期的な欠陥のパターンを有するLCNフィルムは、フィルムをガラス転移温度(~87℃)超に加熱したときに変形し(図4.4d-f)、全ての点欠陥が陥没を形成する。高温では変形挙動はより大きくなる(図4.4g-i)。
パターン1(図4.5a)、2(図4.5b)、3(図4.5c)の表面トポグラフィック画像の上面図を拡大したものを図4.4g-fの黒枠でマークして示す。中心電極及び電極間の表面性状は、温度によって、それぞれ緑色の矢印と黄色の矢印に沿って描かれる。温度が高くなるにつれて各パターンの陥没が大きくなることがわかる。陥没は、ガラス転移温度の近くで徐々に発生し、表面トポグラフィック画像で予想されるように、170℃で変化の度合いが最も大きくなる(図4.4)。まず、緑色の表面性状を確認した結果、-1欠陥及び+1欠陥のトポリジーを持つ全ての領域で陥没のパターンが観察された(図4.5d)。+1欠陥トポロジーを持つ領域では、-1欠陥トポロジーを持つ領域よりも陥没がずっと大きく現れた。温度を100℃から170℃に変化させると、+1トポロジカル欠陥コアの変形が変化し、それぞれ、パターン1で226nm→498nm、パターン2で180nm→386nm、パターン3で185nm→326nmであった。これらはサンプル厚さ約5.11μm、約4.76μm、及び約4.61μmを使用した場合の比例結果である。陥没は、-1欠陥構造の周辺でも発生する。温度を100℃から170℃に変化させると、-1トポロジカル欠陥コアの変形が変化し、それぞれ、パターン1で36nm→112nm、パターン2で0nm→74nm、パターン3で0nm→~10nmとなる。-1欠陥周辺の屈曲構造の影響で、-1欠陥領域では変形が抑制される傾向にあり、そこでは欠陥コア周辺の+1欠陥よりも歪みが分散しているため、100nm超の陥没が弱く発生する。黄色の表面性状も緑の表面性状と同様の傾向を示す(図4.5e)。+1欠陥構造の陥没変形は、-1欠陥よりも大きい。一方、黄色の表面性状は、緑の表面性状よりも低い変形が観察される。包括的に、LCNフィルム内部のポリマー構造の配向をマッピングして変形を解析する(図4.5f-h)。異方性配向から等方性配向に変化すると、矢印で示される力が生じる。このとき、+1欠陥及び-1欠陥で生じる力は青と赤で示される。著者は以前の論文で、スプレー変形が+1の放射状トポロジカル欠陥に存在し、それによって発散力が生じ、陥没が起こることを示している。さらに、-1の双曲線状トポロジカル欠陥は複雑であるものの、最終的には屈曲変形が分散し、4つの尾根と谷になるが、コアに陥没が生じる可能性がある。したがって、これらの原理を適用すれば、陥没は全ての欠陥コアに生じる可能性がある。これらの結果は、電場によって方向付けられたLCNフィルムは外部の刺激によって駆動できることを示しており、表面変化を細かく制御できることがわかる。」(Figure4.1~4.3中の脚注の英文は省略)
エ 引用文献1に記載された発明
引用文献1の「4.2.1 液晶セルの調製」では、パターン化されたITOガラス基板を洗浄し、基板に垂直配向ポリイミドをコーティングし、幅10μm、間隔10μmの2つのストライプ電極(電極1)をシリカ粒子をスペーサーとして交差して液晶セル1を組み立てたことが記載されている。
また、「4.2.2 材料及び液晶ネットワークサンプルの調製」には、反応性液晶モノマーである「4-(3-アクリロイルオキシプロピルオキシ)-安息香酸2-メチル-1,4-フェニレンエステル」及び「4-メトキシ安息香酸4-(6-アクリロイルオキシ-ヘキシルオキシ)フェニルエステル」、及び光開始剤である「2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン」を、それぞれ69.0質量%、30.0質量%、1.0質量%の割合で混合し、混合物を100℃に加熱し、等方相の均一混合物とし、毛細管現象を利用して、上記の液晶セル1に注入し、試料をネマチック相となる75℃に冷却し、交流電場を印加し、光重合反応を行ったことが記載されている。
そして、「4.3.1 電場誘導型液晶ネットワーク」において、上記の液晶セル1(パターン1)において、交流電場は、f=100kHz、T(温度)=75℃、V0=10Vという条件で印加されたことが記載され、顕微鏡による組織の観察において、LCNフィルムに、+1及び-1欠陥が20μmの周期で交互に繰り返される、図4.3aのような周期的なマイクロ構造が観察されたことが記載されている。
また、「4.3.2 周期的なトポロジカル欠陥によってもたらされる表面の変形」には、液晶セル1(パターン1)は、温度が高くなるにつれて陥没が大きくなり、温度を100℃から170℃に変化させると、+1トポロジカル欠陥コアは、パターン1で226nm→498nmに増加し、-1トポロジカル欠陥コアは、パターン1で36nm→112nmに増加することが記載されている。
そうすると、上記記載のうち、液晶セル1に注入され、電場を印加して光重合することによって得られるLCNフィルムの製造方法に着目すると、引用文献1には以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。
「幅10μm、間隔10μmのパターン化されたストライプ電極1のITOガラス基板に垂直配向ポリイミドをコーティングし、得られた2つの電極1を交差し、シリカ粒子をスペーサーとして液晶セルを作製し、下記の混合物を100℃に加熱して等方相の均一混合物としたものを液晶セル内に注入し、混合物を75℃に冷却してネマチック相とし、f=100kHz、T(温度)=75℃、V0=10Vという条件で交流電場を印加し、温度を維持して光重合反応を行う、LCNフィルムの製造方法であって、
LCNフィルムは、顕微鏡による組織の観察において、+1及び-1欠陥が20μmの周期で交互に繰り返される構造を有し、温度が高くなるにつれて陥没が大きくなり、温度を100℃から170℃に変化させると、+1トポロジカル欠陥コアは226nm→498nmに増加し、-1トポロジカル欠陥コア36nm→112nmに増加する、LCNフィルムの製造方法。
<混合物>
反応性液晶モノマーである「4-(3-アクリロイルオキシプロピルオキシ)-安息香酸2-メチル-1,4-フェニレンエステル」を69.0質量%、反応性液晶モノマーである「4-メトキシ安息香酸4-(6-アクリロイルオキシ-ヘキシルオキシ)フェニルエステル」を30.0質量%、及び光開始剤である「2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン」を1.0質量%の割合で含有する混合物」
オ 本件補正発明と引用発明との対比
本件補正発明と引用発明を対比する。
引用発明の「LCNフィルム」は、2つの電極1内に注入された反応性液晶モノマーを含む「混合物」を光重合して得られるものであるから、本件補正発明の「高分子薄膜」に相当し、また、引用発明の「LCNフィルム」は「顕微鏡による組織の観察において、+1及び-1欠陥が20μmの周期で交互に繰り返される構造を有し、温度が高くなるにつれて陥没が大きくな」るものであるから、本件補正発明の「形態可変型マイクロパターン化高分子薄膜」に相当する。
引用発明では、「幅10μm、間隔10μmのパターン化されたストライプ電極1のITOガラス基板に垂直配向ポリイミドをコーティング」する工程によって、「2つの電極1」を得ていることから、この工程は本件補正発明の「(a)2つのパターン化された電極基板のそれぞれの上部に高分子配向膜を形成させる段階」に相当する。
引用発明の「得られた2つの電極1を交差し、シリカ粒子をスペーサーとして液晶セルを作製」する工程は、シリカ粒子をスペーサーとすることにより一定の間隔をあけて交差することになるから、本件補正発明の「(b)前記高分子配向膜が形成されており、パターン化された電極基板2個を、一定の間隔をあけて交差するように結合させ、サンドウィッチ電極セルを作製する段階」に相当する。
引用発明の「下記の混合物を100℃に加熱して等方相の均一混合物としたものを液晶セル内に注入」する工程は、「混合物」が「有機液晶モノマー」に相当する「4-(3-アクリロイルオキシプロピルオキシ)-安息香酸2-メチル-1,4-フェニレンエステル」及び「4-メトキシ安息香酸4-(6-アクリロイルオキシ-ヘキシルオキシ)フェニルエステル」を含むものであることから、本件補正発明の「(c)前記サンドウィッチ電極セルの両基板の間に液晶有機モノマー混合物を注入する段階」に相当する。
引用発明の「f=100kHz、T(温度)=75℃、V0=10Vという条件で交流電場を印加し、温度を維持して光重合反応を行う」工程は、それによって「顕微鏡による組織の観察において、+1及び-1欠陥が20μmの周期で交互に繰り返される構造を有」する「LCNフィルム」を得る工程であるから、本件補正発明の「(d)前記液晶有機モノマー混合物が注入されているサンドウィッチ電極セルに電場を印加した状態で光硬化を行い、マイクロパターン化高分子薄膜を製造する段階」に相当する。
引用発明の「+1欠陥」及び「-1欠陥」は、本件補正発明の「+1の位相欠陥」、「-1の位相欠陥」に相当する。
引用発明の「温度が高くなるにつれて陥没が大きくなり、温度を100℃から170℃に変化させると、+1トポロジカル欠陥コアは226nm→498nmに増加し、-1トポロジカル欠陥コア36nm→112nmに増加する」ことは、本件補正発明の「外部温度が増加するにつれて位相欠陥周囲の表面陥没変形が5~800nmまで増加する」ことに相当する。
そうすると、両者は
「次の段階を含む形態可変型マイクロパターン化高分子薄膜の製造方法:
(a)2つのパターン化された電極基板のそれぞれの上部に高分子配向膜を形成させる段階;
(b)前記高分子配向膜が形成されており、パターン化された電極基板2個を、一定の間隔をあけて交差するように結合させ、サンドウィッチ電極セルを作製する段階;
(c)前記サンドウィッチ電極セルの両基板の間に液晶有機モノマー混合物を注入する段階;及び
(d)前記液晶有機モノマー混合物が注入されているサンドウィッチ電極セルに電場を印加した状態で光硬化を行い、マイクロパターン化高分子薄膜を製造する段階、
を含み、前記形態可変型マイクロパターン化高分子薄膜は、-1位相欠陥が形成されており、+1の位相欠陥が形成されており、外部温度が増加するにつれて位相欠陥周囲の表面陥没変形が5~800nmまで増加する、前記形態可変型マイクロパターン化高分子薄膜の製造方法。」
である点において一致し、以下の点で一応相違する。
<一応の相違点1>
「形態可変型マイクロパターン化高分子薄膜」が、本件補正発明では「電極の交差する部分に-1位相欠陥が形成されており、電極の垂直及び水平の間に+1の位相欠陥が形成されており、対角線中心に-1位相欠陥が形成されて」いるのに対し、引用発明ではそのことが明らかでない点
<一応の相違点2>
「形態可変型マイクロパターン化高分子薄膜」が、本件補正発明では(外部温度が増加するにつれて位相欠陥周囲の表面陥没変形が5~800nmまで増加して)「表面の粗さ又は摩擦力の変化が誘導され」、かつ「単位面積当たりのサンドイッチ電極セルの基板に接触しているマイクロパターン化高分子薄膜の部分の数が増加するにつれて、高分子薄膜の表面の摩擦力が増加する」ものであるのに対し、引用発明ではそのことが明らかでない点
カ 一応の相違点についての判断
(ア)一応の相違点1について
本願明細書の実施例1~3(【0053】~【0065】)及び本願図面の図1~図3によると、本願明細書の実施例1では、「パターン1」(2つの電極1を交差して得られる、図1の「LCセル1」を用いたもの)として引用発明と実質的に同一の工程によって高分子薄膜が製造されており、用いる液晶ネットワーク混合物(本願明細書の【0056】)の組成も、そこに印加する電場の強度(本願明細書の【0057】)も引用発明と同じ条件で高分子薄膜が製造されている。
そして、その方法によって得られた高分子薄膜について、光学テクスチャー観察したものが図3(a)に示されており、その図3(a)で観察された結果について、本願明細書の【0060】には「電極の交差する部分に-1位相欠陥が形成され、その後、垂直、水平にその間に+1の位相欠陥が形成され、対角線中心に-1の位相欠陥が形成される。」と記載されている。
ここで、図3(a)は、引用発明1の方法で得られたLCNフィルムを顕微鏡で観察した際の結果である引用文献1の図4.3(a)と実質的に同一であり、本願図面の図3(a)から「電極の交差する部分に-1位相欠陥が形成され、その後、垂直、水平にその間に+1の位相欠陥が形成され、対角線中心に-1の位相欠陥が形成される。」ことが理解されるのであれば、引用発明のLCNフィルムも同様であると認められる。
そうすると、一応の相違点1は実質的な相違点ではない。
(イ)一応の相違点2について
引用発明のLCNフィルムは、「温度が高くなるにつれて陥没が大きくなり、温度を100℃から170℃に変化させると、+1トポロジカル欠陥コアは226nm→498nmに増加し、-1トポロジカル欠陥コア36nm→112nmに増加する」ものであり、「表面変化を細かく制御できる」(引用文献1の項目4.3.2の最終文を参照)ものであるから、「表面の粗さ」が変化し、よって、表面の摩擦力も変化することは明らかである。
そして、「陥没が大きくなる」ことにより、「単位面積当たりのサンドイッチ電極セルの基板に接触しているマイクロパターン化高分子薄膜の部分の数」も増加するものと認められるところ、「数が増加」するにつれて、「高分子薄膜の表面の摩擦力が増加する」ことは、(2つの物体の接触点が増えればそれにつれて摩擦力が増加するという)本願の優先日における技術常識であるといえるから、引用発明の「温度が高くなるにつれて陥没が大きくなり、温度を100℃から170℃に変化させると、+1トポロジカル欠陥コアは226nm→498nmに増加し、-1トポロジカル欠陥コア36nm→112nmに増加する」ことにより、「単位面積当たりのサンドイッチ電極セルの基板に接触しているマイクロパターン化高分子薄膜の部分の数が増加するにつれて、高分子薄膜の表面の摩擦力が増加する」ことは明らかである。
加えて、本願明細書の実施例4(【0066】、【0067】)及び本願図面の図6は、微細パターンを有する液晶ネットワーク高分子薄膜の摩擦係数を、パターンの形状及び温度を変化させて測定した結果、図6の(c)のようなパターンiの形状を有するものが、図6の(d)のようなパターンiiの形状を有するものと比較して、200℃において約2倍も高い摩擦係数を有することを示すものであり、これは微細パターンを有する液晶ネットワーク高分子薄膜についての記載であるから、本願明細書の実施例1において製造された「パターン1」の高分子薄膜についても当てはまるものである。
そして、一応の相違点2のうち「単位面積当たりのサンドイッチ電極セルの基板に接触しているマイクロパターン化高分子薄膜の部分の数が増加するにつれて、高分子薄膜の表面の摩擦力が増加する」というのは、高分子薄膜が有する特性を規定したものであるところ、上記(ア)で述べたように、引用発明のLCNフィルムは、本願明細書の実施例1において製造された「パターン1」の高分子薄膜と同じ方法で得られた実質的に同一のものと認められるところ、本願明細書の実施例1において製造された「パターン1」の高分子薄膜が、図6の(e)のような結果、すなわち「単位面積当たりのサンドイッチ電極セルの基板に接触しているマイクロパターン化高分子薄膜の部分の数が増加するにつれて、高分子薄膜の表面の摩擦力が増加する」という性質を有する以上、それと実質的に同一の高分子薄膜と認められる引用発明のLCNフィルムも、同じ性質を有するものと認められる。
したがって、一応の相違点2も実質的な相違点とはいえない。
キ 審判請求人の主張について
審判請求人は、審判請求書において、
「本願発明の形態可変型マイクロパターン化高分子薄膜の製造方法及び該方法により作製された形態可変型マイクロパターン化高分子薄膜は、単位面積当たりのサンドイッチ電極セルの基板に接触しているマイクロパターン化高分子薄膜の部分の数が増加するにつれて、すなわちパターン化液晶ネットワークポリマー薄膜の窪みが深くなるにつれて、ポリマー薄膜表面の摩擦力が増加するという技術的特徴を有するものであります。
引用文献1には、本願発明の前記特徴は、開示も示唆もされておりません。」
と主張する(審判請求書の項目3(3)「進歩性について」)。
しかし、この点については、上記カ(イ)で述べたとおり、引用文献1に上記特徴について開示や示唆がなくても、引用発明との相違点にはならない。したがって、審判請求人の主張は採用することができない。
ク 独立特許要件についての検討のまとめ
上記のとおり、一応の相違点1、2はいずれも実質的な相違点ではないから、本件補正発明は引用文献1に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許出願の際独立して特許を受けることができるものではない。
したがって、本件補正は、特許法第17条の2第6項で準用する同法第126条第7項の規定に違反するものである。
(3)補正の却下の決定のむすび
以上のとおりであるから、本件補正は特許法第17条の2第6項で準用する同法第126条第7項の規定に違反するものであるから、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
第3 本願発明
令和5年11月10日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、令和5年4月21日に提出された手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
「次の段階を含む形態可変型マイクロパターン化高分子薄膜の製造方法:
(a)2つのパターン化された電極基板のそれぞれの上部に高分子配向膜を形成させる段階;
(b)前記高分子配向膜が形成されており、パターン化された電極基板2個を、一定の間隔をあけて交差するように結合させ、サンドウィッチ電極セルを作製する段階;
(c)前記サンドウィッチ電極セルの両基板の間に液晶有機モノマー混合物を注入する段階;及び
(d)前記液晶有機モノマー混合物が注入されているサンドウィッチ電極セルに電場を印加した状態で光硬化を行い、マイクロパターン化高分子薄膜を製造する段階、
を含み、前記形態可変型マイクロパターン化高分子薄膜は、電極の交差する部分に-1位相欠陥が形成されており、電極の垂直及び水平の間に+1の位相欠陥が形成されており、対角線中心に-1位相欠陥が形成されており、外部温度が増加するにつれて位相欠陥周囲の表面陥没変形が5~800nmまで増加して表面の粗さ又は摩擦力の変化が誘導される、前記形態可変型マイクロパターン化高分子薄膜の製造方法。」
第4 拒絶査定における拒絶の理由
令和5年7月4日付け拒絶査定は、この出願の請求項1に係る発明は、その優先日前に日本国内又は外国において頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができない、という理由(理由2)を含むものである。
(引用文献1は、第2の2(2)ウで示したものと同じである。)
第5 当審の判断
本願発明は、第2の2(2)アで示した「本件補正発明」において、「形態可変型マイクロパターン化高分子薄膜」の要件である「単位面積当たりのサンドイッチ電極セルの基板に接触しているマイクロパターン化高分子薄膜の部分の数が増加するにつれて、高分子薄膜の表面の摩擦力が増加する」を削除したものに相当する。
そして、第2の2(2)で述べたように、本願発明の構成要件を全て満たす「本件補正発明」が引用文献1に記載された発明である以上、本願発明も引用文献1に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
第6 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものであるから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2023-019112