特許拒絶査定不服審判
2023-017549
清掃システム
- 審判番号
- 2023-017549
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2019-088623
- 請求日
- 2023年10月17日
- 審決日
- 2024年09月18日
- 公報発行日
- 2024年12月27日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】三菱電機株式会社
- 【請求人代理人】弁理士法人高田・高橋国際特許事務所
- 【請求人】三菱電機ホーム機器株式会社
- 【請求人代理人】弁理士法人高田・高橋国際特許事務所
- 審判長/審判官
- 審判長 柿崎 拓
- 審判官 窪田 治彦
- 審判官 関口 哲生
- 分類
- P18 .112-Z (A47L) / P18 .575-Z (A47L)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条、特許法第17条の2第5項、特許法第17条の2第6項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2019- 88623号「清掃システム」拒絶査定不服審判事件〔令和2年11月12日出願公開、特開2020-182689号〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、令和元年5月8日の出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。
令和5年 1月27日付け:拒絶理由通知書
令和5年 3月27日 :意見書、手続補正書の提出
令和5年 7月13日付け:拒絶査定
令和5年10月17日 :審判請求書、手続補正書の提出
第2 令和5年10月17日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和5年10月17日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
1 本件補正について(補正の内容)
(1)本件補正後の特許請求の範囲の請求項1の記載
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は次のとおり補正された(下線部は、補正箇所である。)。
「【請求項1】
被清掃面上の塵埃を除去して室内を清掃する清掃手段の被清掃面に接触している部分の三次元の位置を示す三次元位置情報および当該位置において当該清掃手段が除去した塵埃の量を示す塵埃情報を取得する情報取得手段と、
前記情報取得手段が取得した前記三次元位置情報および前記塵埃情報に応じて、前記室内の清掃を支援する情報を出力する出力手段を備え、
前記出力手段によって出力される情報には、前記室内において塵埃が堆積する位置の三次元の情報および当該位置における塵埃の堆積量に関する情報である優先的に清掃するべき位置の三次元の情報が含まれる清掃システム。」
(2)本件補正前の特許請求の範囲の請求項1の記載
本件補正前の令和5年3月27日の手続補正による特許請求の範囲の請求項1の記載は次のとおりである。
「【請求項1】
被清掃面上の塵埃を除去して室内を清掃する清掃手段の三次元の位置を示す三次元位置情報および当該位置において当該清掃手段が除去した塵埃の量を示す塵埃情報を取得する情報取得手段と、
前記情報取得手段が取得した前記三次元位置情報および前記塵埃情報に応じて、前記室内の清掃を支援する情報を出力する出力手段を備え、
前記出力手段によって出力される情報には、前記室内において塵埃が堆積する位置の三次元の情報および当該位置における塵埃の堆積量に関する情報である優先的に清掃するべき位置の三次元の情報が含まれる清掃システム。」
2 補正の適否
本件補正は、本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である、「被清掃面上の塵埃を除去して室内を清掃する清掃手段」の「三次元の位置」について、上記のとおり限定を付加するものであって、本件補正前の請求項1に記載された発明と本件補正後の請求項1に記載される発明(以下「本件補正発明」という。)の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法17条の2第5項2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正発明が、同条6項において準用する同法126条7項の規定に適合するか(特許出願の際に独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下、検討する。
(1) 本件補正発明
本件補正発明は、前記1(1)に記載したとおりのものである。
(2) 引用文献
ア 引用文献1の記載
原査定の拒絶の理由で引用された本願の出願日前に頒布された刊行物である、特開2017-99540号公報(以下「引用文献1」という。)には、図面とともに、次の記載がある(下線は、当審で付与した。以下、同様である。)。
・「【0013】
図1および図2に示されるように、集塵システム100は、取得部101、記憶部102、制御部105、送風部106、集塵部107、および、出力部103を備える。また、図1には、清掃機器112、位置センサ113および表示装置114も図示されている。図2中の破線は、集塵システム100によって集塵が行われるときの気流を模式的に示す。」
・「【0015】
なお、所定空間は、閉じられた空間でもよいし、開かれた空間でもよい。すなわち、所定空間は、外部から閉鎖された空間でなくてもよい。しかし、基本的には、所定空間は、壁などの構造物(仕切り)によって囲まれた空間である。例えば、所定空間は、家、部屋、事務所または工場等のような施設の空間である。
【0016】
取得部101は、所定空間内を清掃する清掃機器112の当該所定空間内の位置を示す位置情報を取得する。取得部101は、具体的には、天井の四隅に設けられた4つのセンシングデバイス113a(図2では2つのみ図示)を含む位置センサ113から清掃機器112の位置情報を取得する。なお、清掃機器112が位置情報を検出するような場合には、取得部101は、清掃機器112から位置情報を取得してもよい。」
【0017】
また、取得部101は、清掃機器112が回収した塵埃に関する塵埃情報を取得する。塵埃情報には、例えば、清掃機器112が回収した塵埃の量、及び、塵埃を回収した時間帯などの情報が含まれる。取得部101は、例えば、清掃機器112から塵埃情報を取得する。」
・「【0025】
また、制御部105は、塵埃の発生位置を上記塵埃の発生態様として推定し、推定された塵埃の発生位置を示す塵埃位置情報を生成してもよい。制御部105は、塵埃の発生量を上記塵埃の発生態様として推定し、推定された塵埃の発生量に基づいて所定空間における掃除のタイミングを決定し、決定した掃除のタイミングを示すタイミング情報を生成してもよい。」
・「【0031】
出力部103は、制御部105によって生成された塵埃位置情報および制御部105によって生成されたタイミング情報を出力する。出力部103は、例えば、表示装置114に塵埃位置情報およびタイミング情報を出力する。この結果、表示装置114には、塵埃の位置を示す画像(塵埃発生マップ)および掃除のタイミングを示す画像が表示される。」
・「【0035】
清掃機器112は、所定空間内の塵埃を回収する機器である。清掃機器112は、具体的には、所定空間内の床面に位置する塵埃を吸引等の手段を用いて回収する。清掃機器112は、具体的には、清掃中にユーザの操作を必要としない、いわゆる掃除ロボットであってもよいし、ユーザ操作に応じて清掃を行う汎用の掃除機であってもよい。」
・「【0040】
図3に示されるような構成において、4つのセンシングデバイス113aは、清掃機器112によって発せられたビーコン信号を受信する。位置センサ113は、4つのセンシングデバイスそれぞれにおけるビーコン信号の受信強度に基づいて、4つのセンシングデバイス113aのそれぞれから清掃機器112までの距離を検出することができる。つまり、位置センサ113は、清掃機器112の2次元位置を特定することができる。」
・「【0057】
このように、制御部105は、清掃機器112の位置情報および塵埃情報に基づいて所定空間内における塵埃の発生態様を推定する。また、制御部105は、推定された発生態様に基づいて送風部106および集塵部107を制御する。これにより、集塵システム100は、効率的に塵埃を回収することができる。」
・「【0071】
次に、制御部105は、推定された塵埃の発生位置を示す塵埃位置情報を生成し(S22)、出力部103は、生成された塵埃位置情報を表示装置114に出力する(S23)。この結果、表示装置114には図6に示されるような画像が表示される。図6は、表示装置114に表示される塵埃の発生位置を示す画像の一例を示す図である。
【0072】
図6の例では、所定空間内を上面視したときの塵埃の発生位置が表示される。図6に示される所定空間内を上面視したときの背景画像(間取り図)などは、あらかじめ記憶部102に記憶され、制御部105は、このような背景画像に塵埃の発生位置を示すオブジェクトを重畳する。
【0073】
なお、図6で示される画像は一例である。オブジェクトは、最も塵埃の量が多いと推定される位置のみに重畳されてもよいし、オブジェクトは、複数の塵埃の発生位置に対応して複数重畳されてもよい。オブジェクトが複数重畳されるときには、塵埃の発生量に応じてオブジェクトの大きさまたは色が変更されてもよい。」
・「【図6】
[図:0001417344000001.jpg]
」
・「【0097】
また、制御部105は、塵埃の発生位置を塵埃の発生態様として推定し、推定された塵埃の発生位置を示す塵埃位置情報をさらに生成してもよい。集塵システム100は、さらに、生成された塵埃位置情報を出力する出力部103を備えてもよい。
【0098】
これにより、集塵システム100は、塵埃位置情報を出力することができる。塵埃位置情報に基づいて表示装置114が表示する画像を視認するユーザは、推定された塵埃の発生位置を認識することができる。
【0099】
また、制御部105は、塵埃の発生量を前記塵埃の発生態様として推定し、推定された塵埃の発生量に基づいて所定空間内の掃除のタイミングをさらに決定し、決定した掃除のタイミングを示すタイミング情報をさらに生成してもよい。集塵システム100は、さらに、生成されたタイミング情報を出力する出力部103を備えてもよい。
【0100】
これにより、集塵システム100は、タイミング情報を出力することができる。タイミング情報に基づいて表示装置114が表示する画像を視認するユーザは、掃除のタイミングを認識することができる。」
イ 引用発明1
引用文献1の【0031】、【0071】~【0073】の記載、図6の図示内容からすると、出力部103及び表示装置114によって塵埃位置情報を出力する場合、表示装置114の画面には、塵埃の発生位置を示すオブジェクトが表示され、オブジェクトが複数重畳されるときには、塵埃の発生量に応じてオブジェクトの大きさまたは色が変更されてもよいことから、塵埃位置情報には、塵埃の発生位置の情報および当該位置における塵埃の堆積量に関する情報が含まれていることがわかる。
そうすると、引用文献1の記載事項及び図面の図示内容を総合すると、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。
(引用発明1)
「床面上の塵埃を回収して所定空間内を清掃する清掃機器112の2次元位置を示す位置情報および当該位置において清掃機器112が回収した塵埃の量を示す塵埃情報を取得する取得部101と、
取得部101が取得した清掃機器112の位置情報および塵埃情報に応じて、塵埃位置情報およびタイミング情報を出力する出力部103および表示装置114を備え、
出力部103および表示装置114によって出力される前記塵埃位置情報には、前記所定空間内における塵埃の発生位置の情報および当該塵埃の発生位置における塵埃の堆積量に関する情報が含まれる集塵システム100。」
ウ 引用文献2の記載
原査定(令和5年7月13日付け拒絶査定)の拒絶の理由で引用された本願の出願日前に頒布された刊行物である、特開2015-205681号公報(以下「引用文献2」という。)には、図面とともに、次の記載がある(下線は、当審で付与した。以下、同様である。)。
・「【0008】
本開示の非限定的で例示的な一態様は、塵埃の飛散源となる塵埃堆積場所を検出することにより、ユーザが塵埃を効果的に除去することができる塵埃検出装置である。」
・「【0018】
また、塵埃検出装置100は、各超音波センサ20及び複眼カメラ30によって、空間(例えば、室内)における障害物(天井、壁及び什器(家具)など)の位置を検知する。そして、塵埃検出装置100は、検知結果に基づいて、塵埃検出装置100と障害物との衝突を回避するように、塵埃検出装置100の飛行を制御する。なお、超音波センサ20及び複眼カメラ30は、図1A及び図1Bに示すように、塵埃検出装置100の側面に設置される場合に限らず、塵埃検出装置100の上部又は下部に設置されてもよい。
【0019】
集塵部40は、塵埃計測部(後述する)の空気取入口である。塵埃計測部は、集塵部40から取り入れた空気中の塵埃量を計測する。なお、集塵部40の設置位置は、図1に示す塵埃検出装置100の上部に限定されず、下部又は側面でもよい。
【0020】
GPS受信機50は、塵埃検出装置100の現在位置を示す位置データを取得する。
【0021】
また、塵埃検出装置100は、サーバとの通信を行うためのアンテナ(図1に示せず)を備える。例えば、塵埃検出装置100は、塵埃検出結果(塵埃堆積場所及び塵埃量など)を示す塵埃情報をアンテナを介してサーバへ送信する。ここで、サーバは、例えば、室内にある家電の中に具備されていてもよいし、インターネットを介して塵埃検出装置100と接続されるクラウドサーバでもよい。また、サーバは、例えば、スマートフォン、タブレット端末、パーソナルコンピュータ、又は、インターネットなどの通信機能を備えたテレビ(スマートテレビと呼ばれることもある)等のデバイス機器と接続可能であって、塵埃検出装置100から受け取った検出結果をこれらのデバイス機器に送信する。各デバイス機器は、受け取った検出結果を表示することにより、ユーザに対して、どの場所にどの程度の塵埃が堆積しているかを提示することが可能となる。」
・「【0023】
塵埃計測部101は、塵埃検出装置100の現在位置において、図1に示す集塵部40から取り入れた空気中の塵埃量を計測する。例えば、塵埃計測部101は、特許文献2に開示された方法を用いて塵埃量を計測してもよい。塵埃計測部101は、塵埃量の計測値(塵埃計測値)を全体制御部103へ出力する。
【0024】
位置特定部102は、塵埃検出装置100の現在位置を特定し、特定した位置情報を全体制御部103へ出力する。位置特定部102は、例えば、図1に示すGPS受信機50から受け取る塵埃検出装置100の位置データ(緯度、経度)を取得する。また、例えば、位置特定部102は、ジャイロセンサ(図示せず)を備え、塵埃検出装置100の動き(挙動)を検知し、検知結果に基づいて位置データを補正してもよい。」
・「【0038】
ここで、例えば、全体制御部103は、塵埃検出装置100が飛行可能な空間の構造(部屋、及び、部屋に設置された什器などの大きさ、配置など)を予め把握していてもよい。この場合、塵埃情報は、塵埃検出装置100が飛行可能な空間を示す3次元マップにおける、塵埃堆積場所及び塵埃計測値を示す情報であってもよい。
【0039】
または、塵埃検出装置100と接続するサーバが、上記塵埃検出装置100が飛行可能な空間の構造を予め把握してもよい。この場合、塵埃情報は、塵埃堆積場所を示す位置情報、及び、塵埃計測値を示す情報である。そして、サーバは、塵埃検出装置100から受け取った塵埃情報を用いて、塵埃検出装置100が飛行可能な空間を示す3次元マップにおける塵埃堆積場所及び塵埃計測値を示す情報を作成する。
【0040】
そして、サーバは、塵埃検出装置100が飛行可能な空間における、塵埃堆積場所及び塵埃計測値をユーザに提示する。例えば、サーバは、ユーザが保持するデバイス機器へ塵埃堆積場所及び塵埃計測値を示す情報を送信することにより、デバイス機器が備えるディスプレイなどに当該情報を提示させる。」
【0041】
このようにして、本実施の形態によれば、塵埃検出装置100は、飛行して、塵埃の飛散源である塵埃堆積場所を検出しこれをサーバに送信することができ、ユーザはサーバから塵埃堆積場所及び塵埃計測値の提示を受け、どの場所にどの程度の塵埃が堆積しているのかを特定することができる。よって、本実施の形態によれば、塵埃検出装置100が塵埃の飛散源となる塵埃堆積場所を検出することにより、ユーザは塵埃を効果的に除去することができる。」
エ 引用文献2に記載された事項
引用文献2【0024】、【0038】、【0039】の記載によると、塵埃情報は、3次元マップにおける、塵埃堆積場所及び塵埃計測値を示す情報であるから、位置特定部102が特定した塵埃検出装置100の位置データは、3次元であることがわかる。
また、【0021】、【0038】~【0040】の記載から、デバイス機器によって出力される塵埃情報には、塵埃堆積場所の3次元の情報が含まれていることがわかる。
そうすると、引用文献2の記載事項及び図面の図示内容を総合すると、引用文献2には、次の事項(以下「引用文献2に記載された事項」という。)が記載されていると認められる。
(引用文献2に記載された事項)
「室内における塵埃堆積場所の3次元の位置情報、当該位置における塵埃量を検出し、塵埃堆積場所の3次元の位置情報及び塵埃量などの塵埃検出結果を示す塵埃情報を、ユーザが保持するデバイス機器に提示するシステム。」
(3) 対比
本件補正発明と引用発明1とを、その有する機能に照らして対比する。
ア(ア) 引用発明1の「床面」は、本件補正発明の「被清掃面」に相当する。
また、引用文献1によれば、「所定空間は、壁などの構造物(仕切り)によって囲まれた空間である。例えば、所定空間は、家、部屋、事務所または工場等のような施設の空間である。」(【0015】)であるから、引用発明1の「所定空間内」は、本件補正発明の「室内」に相当する。
そして、引用発明1の「清掃機器112」は、本件補正発明の「清掃手段」に相当する。
(イ) 引用発明1の「位置情報」は、「清掃機器112の2次元位置を示す」ものであるから、本件補正発明の「三次元位置情報」と、「清掃手段」の「位置を示す」「位置情報」の点で共通する。
また、引用発明1の「塵埃情報」は、「当該位置において清掃機器112が回収した塵埃の量を示す」ものであるが、この「回収した塵埃の量」は、本件補正発明の「除去した塵埃の量」に相当するから、引用発明1の「塵埃情報」は、本件補正発明の「塵埃情報」に相当する。
そして、引用発明1の「取得部101」は、「位置情報」および「塵埃情報」を取得するものであるから、本件補正発明の「情報取得手段」に相当する。
イ 引用発明1の「出力部103」及び「表示装置114」は、「取得部101が取得した清掃機器112の位置情報および塵埃情報に応じて、所定空間内の清掃を支援する塵埃位置情報およびタイミング情報を出力する」ものである。
引用文献1によれば、「塵埃位置情報に基づいて表示装置114が表示する画像を視認するユーザは、推定された塵埃の発生位置を認識することができる。」(【0098】)、「タイミング情報に基づいて表示装置114が表示する画像を視認するユーザは、掃除のタイミングを認識することができる。」(【0100】)ものであるから、「塵埃位置情報」及び「タイミング情報」は、ユーザの清掃を支援する情報といえる。
そうすると、引用発明1の「塵埃位置情報」及び「タイミング情報」は、本件補正発明の「前記室内の清掃を支援する情報」に相当し、引用発明1の「出力部103」及び「表示装置114」は、本件補正発明の「出力手段」と、「前記情報取得手段が取得した」前記位置情報および「前記塵埃情報に応じて、前記室内の清掃を支援する情報を出力する」点で共通する。
ウ 引用発明1の「塵埃位置情報」には、「前記所定空間内における塵埃の発生位置の情報および当該塵埃の発生位置における塵埃の堆積量に関する情報」が含まれるが、「塵埃の発生位置」、「塵埃の堆積量」は、それぞれ、本件補正発明の「塵埃が堆積する位置」、「塵埃の堆積量」に相当する。
そして、「塵埃の発生位置の情報」及び「塵埃の堆積量に関する情報」によって、ユーザは優先的に清掃するべき位置を認識し得ることは技術的に明らかであるから、「塵埃の発生位置の情報」及び「塵埃の堆積量に関する情報」は、優先的に清掃するべき位置の情報といえる。
そうすると、引用発明1は、本件補正発明と、「前記出力手段によって出力される情報には、前記室内において塵埃が堆積する位置の」「情報」および「当該位置における塵埃の堆積量に関する情報」である「優先的に清掃するべき位置」の「情報が含まれる」点で共通する。
エ 引用発明1の「集塵システム100」は、本件補正発明の「清掃システム」に相当する。
オ 以上のとおりであるから、本件補正発明と引用発明1とは、以下の点で一致し、相違するものと認められる。
(一致点)
「被清掃面上の塵埃を除去して室内を清掃する清掃手段の位置を示す位置情報および当該位置において当該清掃手段が除去した塵埃の量を示す塵埃情報を取得する情報取得手段と、
前記情報取得手段が取得した前記位置情報および前記塵埃情報に応じて、前記室内の清掃を支援する情報を出力する出力手段を備え、
前記出力手段によって出力される情報には、前記室内において塵埃が堆積する位置の情報および当該位置における塵埃の堆積量に関する情報である優先的に清掃するべき位置の情報が含まれる清掃システム。」
(相違点1)
清掃手段の位置を示す位置情報について、本件補正発明では、清掃手段の「被清掃面に接触している部分」の位置を示すものであるのに対して、引用発明1では、「清掃機器112」中の何れの部分の位置を示すものであるか不明である点。
(相違点2)
清掃手段の位置を示す位置情報、塵埃が堆積する位置の情報及び優先的に清掃するべき位置の情報について、本件補正発明では、「三次元」であるのに対して、引用発明1では、2次元である点。
(4)判断
ア 相違点について
まず、相違点1について検討する。
引用発明1において、清掃機器112の位置情報は、当該位置において清掃機器112が回収した塵埃の量を示す塵埃情報を特定するためのものである。すなわち、当該位置情報は、清掃機器112が実際に塵埃を回収した位置を具体的に特定するための情報であるから、その趣旨に照らせば、実際に塵埃を回収した箇所により近い位置である、被清掃面に接触している部分の位置を取得することが好適であることは技術的に明らかである。引用文献1に、清掃機器112自体により位置情報を検出してもよい旨記載されているように(【0016】)、実際に塵埃を回収した箇所を適切に把握することが示唆されており、被清掃面に接触している部分の位置を取得する点について、引用発明1においても想定されていることが窺える。
また、清掃手段の位置を示す位置情報を取得するに際して、清掃手段の被清掃面に接触している部分の位置を取得することは、周知の技術である(例えば、特許第5805841号公報(【0021】~【0025】)、特開2015-27345号公報(【0047】~【0051】)、特開2017-199190号公報(【0023】、【0035】及び【0038】)等を参照。)。
そして、当業者にとって塵埃の位置の情報をより高精度に取得する課題は自明な課題で、引用発明1においても内在することは明らかであることから、引用発明1に上記周知の技術を適用し、塵埃情報に関連する、より高精度な位置情報を取得するために、清掃機器112の被清掃面に接触している部分の位置情報を取得する構成とし、相違点1に係る構成とすることは、当業者が適宜なし得たことである。
次に、相違点2について検討する。
引用文献2には、前記(2)エの引用文献2に記載された事項が記載されているところ、引用文献2に記載された事項に係るシステムは、塵埃堆積場所の3次元の位置情報及び塵埃量などの塵埃検出結果を示す塵埃情報をユーザに提示することで、ユーザが塵埃を効果的に除去するものである(【0008】、【0041】)。
引用文献1には、清掃機器112として、ユーザ操作に応じて清掃を行う汎用の掃除機であってもよい旨記載されており(【0035】)、一般的に、このようなユーザ操作に応じて清掃を行う汎用の掃除機によって、床面よりも高いところも清掃するものであるから、引用文献1には、清掃機器112によって床面だけでなく床面よりも高いところを清掃することの示唆があるといえる。
その場合、清掃機器112の位置や塵埃の発生位置を適切に把握するためには、2次元の情報だけでなく、高さ方向も含めた3次元の情報を取得することが好適であることは技術的に明らかであるから、引用発明1において、清掃機器112の位置や塵埃の発生位置を3次元の情報とすることについて、動機が十分に認められる。
そして、引用発明1も、ユーザに提示される出力部103及び表示装置114によって出力される情報には、所定空間内における塵埃の発生位置の情報および当該塵埃の発生位置における塵埃の堆積量に関する情報が含まれており、こうした情報をユーザに提示することにより、ユーザに清掃すべき位置を知らせるものであるから、引用発明1と引用文献2に記載された事項とは、ユーザに清掃すべき位置を知らせる点で軌を一にするものである。
そうすると、引用発明1において、清掃機器112の位置や塵埃の発生位置を適切に把握し、ユーザが塵埃を効果的に除去するために、引用文献2に記載された事項を適用し、清掃機器112の位置や塵埃の発生位置を3次元の情報とし、相違点2に係る構成とすることは、当業者が容易に想到することができたものと認められる。
イ 本件補正発明の作用効果について
本件補正発明の作用効果についてみても、引用発明1、引用文献2に記載された事項及び周知の技術から当業者が予測できる範囲のものである。
ウ 請求人の主張について
請求人は、概ね、次のように主張している(審判請求書3.(2))。
・引用文献1には、清掃手段の「どの部分の」位置情報を取得するかについては、一切の開示および示唆がない。
・引用文献2では、塵埃検出装置100が備える集塵部40が空気中の塵埃を取り入れており、塵埃検出装置100は飛行することを前提としている。引用文献2に記載の飛行する塵埃検出装置100は、被清掃面(例えば床)と接触することはない。引用文献2においては、塵埃検出装置100が被清掃面に接触して塵埃を吸引することについては、一切の開示及び示唆がない。
・本願発明であれば、「清掃手段の被清掃面に接触している部分の三次元の位置」という実際に塵埃の吸引が行われる箇所(例えば、電気掃除機のヘッド部)の情報を用いることで、各引用文献に記載の発明に比べて、塵埃の吸引箇所の位置の情報をより高精度で取得することができる。本願発明であれば、「塵埃堆積予測モデルの作成精度を向上することができる」という、各引用文献に対して有利な効果を奏することができる。
しかしながら、すでに述べたとおり、引用発明1における、清掃機器112の位置情報の趣旨に照らせば、実際に塵埃を回収した箇所により近い位置である、被清掃面に接触している部分の位置を取得することが好適であることは技術的に明らかで、引用発明1においても想定されていることが窺える上、引用発明1に周知の技術を適用し、清掃手段の被清掃面に接触している部分の位置情報を取得する構成とすることは、当業者が適宜になし得たことである。
また、すでに述べたとおり、引用文献1には、床面だけでなく床面よりも高いところを清掃することの示唆があるといえ、清掃機器112の位置や塵埃の発生位置を適切に把握するためには、高さ方向も含めた3次元の情報を取得することが好適であることは技術的に明らかであるから、引用発明1において、清掃機器112の位置や塵埃の発生位置を3次元の情報とすることについて、動機が十分に認められる。
引用文献2に記載された技術において、塵埃堆積場所を3次元的に検出する点は、検出手段が飛行することに必ずしも拘束されないことは、当業者であれば容易に理解することができる。
そして、引用発明1に引用文献2に記載された事項を適用し、清掃機器112の位置や塵埃の発生位置を3次元の情報とすることは、当業者が容易に想到することができたものであって、清掃手段の被清掃面に接触している部分の位置情報を取得する点について考慮しても、当業者にとって格別困難なことではない。
請求人が主張する効果についても、位置情報を取得する際に、清掃機器112の位置や塵埃の発生位置を適切に把握する、より高精度の位置情報を取得するといったことは、当業者にとって自明の課題であって、すでに述べたとおり、引用発明1、引用文献2に記載された事項及び周知技術から当業者が予測できる範囲内のものである。
よって、請求人の主張は採用することができない。
エ まとめ
以上のとおり、本件補正発明は、引用発明1、引用文献2に記載された事項及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
3 本件補正についてのむすび
以上のとおりであるから、本件補正は、特許法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に違反するので、同法159条1項の規定において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。
よって、補正の却下の決定の結論のとおり決定する。
第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は、前記第2のとおり却下されたので、この出願の各請求項に係る発明は、令和5年3月27日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1~3に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、明細書及び図面の記載からみて、その請求項1に記載された事項により特定される、前記第2[理由]1(2)に記載のとおりのものである。
2 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、この出願の請求項1及び2に係る発明は、この出願の出願日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献1及び2に記載された発明に基いて、この出願の請求項3に係る発明は、この出願の出願日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献1~3に記載された発明に基いて、それぞれ、その出願日前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない、というものである。
(引用文献1)
引用文献1:特開2017-099540号公報
引用文献2:特開2015-205681号公報
引用文献3:特開2003-061882号公報
3 引用文献の記載及び引用発明
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1及び2の記載事項は、前記第2[理由]2(2)に記載したとおりである。
4 対比及び判断
本願発明は、本件補正発明から、清掃手段の三次元位置情報について、「被清掃面に接触している部分」という限定を削除したものであり、その余の発明特定事項は本件補正発明と同じである。
そこで、本願発明と引用発明1とを、その有する機能に照らして対比すると、前記一致点で一致し、前記相違点2で相違する(前記第2[理由]2(3))。
そして、前記相違点2についての検討は、第2[理由]2(4)に記載したとおりであり、本願発明は、本件補正発明と同様の理由により、引用発明1及び引用文献2に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
第4 むすび
以上のとおり、本願発明(請求項1に係る発明)は、特許法29条2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2023-017549