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特許拒絶査定不服審判

2023-017436

秘密データの通信方法、秘密データの通信プログラム及び秘密データの通信システム

審判番号
2023-017436
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2019-117078外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
請求日
2023年10月13日
審決日
2024年07月30日
公報発行日
2024年10月25日
結論
請求不成立
審判長/審判官
分類
P18 .536-WZ (H04L) / P18 .537-WZ (H04L)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法36条4項1号
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第36条第6項第2号、特許法第36条第6項第1号、特許法第36条第4項第1号、特許法第36条
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特願2019-117078「秘密データの通信方法、秘密データの通信プログラム及び秘密データの通信システム」拒絶査定不服審判事件〔令和 3年 1月14日出願公開、特開2021- 5745〕について、次のとおり審決する。

結論

結 論 本件審判の請求は、成り立たない。

理由

理 由 第1 手続の経緯 本願は、令和元年6月25日を出願日とする特許出願であって、以降の手続は次のとおりである。 令和5年 4月 4日付け:拒絶理由通知書 令和5年 5月26日 :意見書、手続補正書の提出 令和5年 8月 9日付け:拒絶査定 令和5年10月13日 :審判請求書の提出 令和6年 4月17日付け:拒絶理由通知書 令和6年 6月20日 :意見書、手続補正書の提出 第2 特許請求の範囲 令和6年6月20日付けの手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし8には、以下の事項が記載されている。 「 【請求項1】 送信装置から受信装置に送信される秘密データの通信方法であって、 前記送信装置及び前記受信装置は、カバー画像を生成する第1ニューラルネットワークをそれぞれ有し、 前記送信装置は、前記第1ニューラルネットワークによって生成されたカバー画像がカバー画像として相応しいか否かを判定する第2ニューラルネットワークを有し、 前記送信装置は、 前記送信装置が有する前記第1ニューラルネットワークに対して特定データの入力を行うことによって第1カバー画像を生成し、 生成した前記第1カバー画像を前記第2ニューラルネットワークに入力することによって、前記第1カバー画像がカバー画像として相応しいか否かを判定し、 前記第1カバー画像がカバー画像として相応しいと判定した場合、前記第1カバー画像に対して秘密データを埋め込むことによってステゴ画像を生成し、 生成した前記ステゴ画像を前記受信装置に送信し、 前記第1カバー画像がカバー画像として相応しくないと判定した場合、前記第1カバー画像を生成する工程及び前記判定する工程を再度行い、 前記受信装置は、 前記送信装置から送信された前記ステゴ画像を受信し、 前記受信装置が有する前記第1ニューラルネットワークに対して前記特定データの入力を行うことによって第2カバー画像を生成し、 前記ステゴ画像と前記第2カバー画像との差分データを特定することによって前記秘密データを抽出する、 ことを特徴とする秘密データの通信方法。 【請求項2】 請求項1において、 前記第1ニューラルネットワークは、GAN(Generative Adversarial Network)におけるgeneratorである、 ことを特徴とする秘密データの通信方法。 【請求項3】 請求項1において、 前記第2ニューラルネットワークは、GANにおけるdiscriminatorである、 ことを特徴とする秘密データの通信方法。 【請求項4】 請求項1において、 前記受信装置は、カバー画像が前記第1ニューラルネットワークによって生成されたカバー画像であるか否かを判定する第2ニューラルネットワークを有し、さらに、 前記受信装置は、前記送信装置から送信された前記ステゴ画像を前記受信装置が有する前記第2ニューラルネットワークに入力することによって、前記ステゴ画像が前記第1ニューラルネットワークによって生成された前記第1カバー画像を用いて生成されたものであるか否かを判定し、 前記受信装置は、前記送信装置から送信された前記ステゴ画像が前記第1ニューラルネットワークによって生成された前記第1カバー画像を用いて生成されたものであると判定した場合に、前記第2カバー画像を生成する工程及び前記秘密データを抽出する工程を行う、 ことを特徴とする秘密データの通信方法。 【請求項5】 送信装置から受信装置に送信される秘密データの通信処理を前記送信装置のコンピュータに実行させる通信プログラムであって、 前記送信装置及び前記受信装置は、カバー画像を生成する第1ニューラルネットワークをそれぞれ有し、 前記送信装置は、前記第1ニューラルネットワークによって生成されたカバー画像がカバー画像として相応しいか否かを判定する第2ニューラルネットワークを有し、 前記送信装置が有する前記第1ニューラルネットワークに対して特定データの入力を行うことによって第1カバー画像を生成し、 生成した前記第1カバー画像を前記第2ニューラルネットワークに入力することによって、前記第1カバー画像がカバー画像として相応しいか否かを判定し、 前記第1カバー画像がカバー画像として相応しいと判定した場合、前記第1カバー画像に対して秘密データを埋め込むことによってステゴ画像を生成し、 生成した前記ステゴ画像を前記受信装置に送信し、 前記第1カバー画像がカバー画像として相応しくないと判定した場合、前記第1カバー画像を生成する処理及び前記判定する処理を再度行う、 ことを特徴とする秘密データの通信プログラム。 【請求項6】 送信装置から受信装置に送信される秘密データの通信処理を前記受信装置のコンピュータに実行させる通信プログラムであって、 前記送信装置及び前記受信装置は、カバー画像を生成する第1ニューラルネットワークをそれぞれ有し、 前記受信装置は、カバー画像が前記第1ニューラルネットワークによって生成されたカバー画像であるか否かを判定する第2ニューラルネットワークを有し、 前記送信装置から送信されたステゴ画像を受信し、 受信した前記ステゴ画像を前記受信装置が有する前記第2ニューラルネットワークに入力することによって、前記ステゴ画像が前記第1ニューラルネットワークによって生成された第1カバー画像を用いて生成されたものであるか否かを判定し、 前記送信装置から送信された前記ステゴ画像が前記第1ニューラルネットワークによって生成された前記第1カバー画像を用いて生成されたものであると判定した場合、前記受信装置が有する前記第1ニューラルネットワークに対して特定データの入力を行うことによって第2カバー画像を生成し、 前記ステゴ画像と前記第2カバー画像との差分データを特定することによって前記秘密データを抽出する、 ことを特徴とする秘密データの通信プログラム。 【請求項7】 送信装置から受信装置に送信される秘密データの通信システムであって、 前記送信装置及び前記受信装置は、カバー画像を生成する第1ニューラルネットワークをそれぞれ有し、 前記送信装置は、前記第1ニューラルネットワークによって生成されたカバー画像がカバー画像として相応しいか否かを判定する第2ニューラルネットワークを有し、 前記送信装置は、 前記送信装置が有する前記第1ニューラルネットワークに対して特定データの入力を行うことによって第1カバー画像を生成し、 生成した前記第1カバー画像を前記第2ニューラルネットワークに入力することによって、前記第1カバー画像がカバー画像として相応しいか否かを判定し、 前記第1カバー画像がカバー画像として相応しいと判定した場合、前記第1カバー画像に対して秘密データを埋め込むことによってステゴ画像を生成し、 生成した前記ステゴ画像を前記受信装置に送信し、 前記第1カバー画像がカバー画像として相応しくないと判定した場合、前記第1カバー画像を生成する処理及び前記判定する処理を再度行い、 前記受信装置は、 前記送信装置から送信された前記ステゴ画像を受信し、 前記受信装置が有する前記第1ニューラルネットワークに対して前記特定データの入力を行うことによって第2カバー画像を生成し、 前記ステゴ画像と前記第2カバー画像との差分データを特定することによって前記秘密データを抽出する、 ことを特徴とする秘密データの通信システム。 【請求項8】 請求項7において、 前記受信装置は、カバー画像が前記第1ニューラルネットワークによって生成されたカバー画像であるか否かを判定する第2ニューラルネットワークを有し、さらに、 前記受信装置は、 前記送信装置から送信された前記ステゴ画像を前記受信装置が有する前記第2ニューラルネットワークに入力することによって、前記ステゴ画像が前記第1ニューラルネットワークによって生成された前記第1カバー画像を用いて生成されたものであるか否かを判定し、 前記送信装置から送信された前記ステゴ画像が前記第1ニューラルネットワークによって生成された前記第1カバー画像を用いて生成されたものであると判定した場合に、前記第2カバー画像を生成する工程及び前記秘密データを抽出する工程を行う、 ことを特徴とする秘密データの通信システム。」 第3 当審拒絶理由の概要 令和6年4月17日付けで当審が通知した拒絶の理由(以下、「当審拒絶理由」という。)は、概略、次のとおりのものである。 理由1 (明確性要件) この出願は、特許請求の範囲の請求項4ないし6、8に係る発明が、明確ではないので、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。 理由2 (サポート要件) この出願は、特許請求の範囲の請求項4ないし6、8に係る発明が、発明の詳細な説明に記載したものではないので、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。 理由3 (実施可能要件) この出願は、発明の詳細な説明が、当業者が特許請求の範囲の請求項1ないし8に係る発明を実施できる程度に明確かつ十分に記載していないので、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。 第4 判断 1 理由1(明確性要件)及び理由2(サポート要件)について (1)請求項1の記載において、「送信装置」が有する「第2ニューラルネットワーク」と、請求項1を引用する請求項4の記載において、「受信装置」が有する「第2ニューラルネットワーク」は、文言としては同一であるが、請求項4において初出の「第2ニューラルネットワークには「前記」が付されておらず、かつ、請求項1と請求項4とで「第2ニューラルネットワーク」を所有する主体が異なることに鑑みれば、請求項4に係る発明において、 ア 「送信装置」と「受信装置」とは、物理的にも論理的にも同一の「第2ニューラルネットワーク」を共有している、 イ 「送信装置」と「受信装置」とは、論理的には同一であるが物理的には同一ではない「第2ニューラルネットワーク」をそれぞれ有している、 ウ 「送信装置」と「受信装置」とは、物理的にも論理的にも異なる「第2ニューラルネットワーク」を有している、 のいずれであるのか、明確ではない。 なお、請求項1に記載の「第2ニューラルネットワーク」は、「前記第1ニューラルネットワークによって生成されたカバー画像がカバー画像として相応しいか否かを判定する」という機能(以下、「機能1」という。)を有するものであるのに対し、請求項4に記載の「第2ニューラルネットワーク」は、「カバー画像が前記第1ニューラルネットワークによって生成されたカバー画像であるか否かを判定する」という機能(以下、「機能2」という。)を有するものであるところ、機能1と機能2とは異なるものであって、かつ、異なる機能を有する手段が物理的にも論理的にも異なるものであることが本願出願時における技術常識であることに鑑みれば、上記アないしウのうち、上記ウであると解するのが合理的である。 しかしながら、明細書の【0011】の記載「前記第2ニューラルネットワークは、GANにおけるdiscriminatorである」、明細書の【0055】の記載「そして、送信装置1は、第1カバー画像113がカバー画像として相応しいか否か(第1カバー画像113が第三者によって不自然な画像データであると判断され得るものであるか否か)をdiscriminator122(以下、第2ニューラルネットワーク122とも呼ぶ)に判定させる(S22)。」及び明細書の【0063】の記載「送信装置1が保持するdiscriminator122と受信装置2が保持するdiscriminator222とは、同一のdiscriminatorである。」によれば、明細書には、送信装置の「第2ニューラルネットワーク」と、受信装置の「第2ニューラルネットワーク」は、「GAN」における同一の「discriminator」であるが、送信装置の「discriminator122」と受信装置の「discriminator222」は、区別して書き分けられているところ、明細書には、上記ア又はイに対応した事項が記載されていると認められる。 また、明細書の他の段落及び図面の記載を参酌しても、明細書に、上記ウに対応した事項が記載されているとは認められない。 よって、当業者であっても、請求項1に記載の「第2ニューラルネットワーク」との関係において、請求項4に記載の「第2ニューラルネットワーク」がどのようなものであるのかについて、明細書及び図面の記載並びに本願出願時における技術常識を参酌して、整合的かつ合理的に理解することができない。 したがって、請求項4に係る発明は、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確であるといわざるを得ないから、明確であるとはいえない。 請求項7に記載の「第2ニューラルネットワーク」との関係において、請求項7を引用する請求項8に記載の「第2ニューラルネットワーク」がどのようなものであるのかについても同様である。 したがって、請求項4及び8に係る発明は、明確ではないから、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。 また、請求項4に係る発明は、上記アないしウのいずれの態様であるとも解し得るが、明細書には、上記イの態様しか記載がなく、明細書に記載された事項を超えて特定したものであるから、発明の詳細な説明に記載したものとはいえない。 請求項8に係る発明についても同様である。 したがって、請求項4及び8に係る発明は、発明の詳細な説明に記載したものではないから、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。 2 理由3(実施可能要件)について (1)送信装置の「第1ニューラルネットワーク」及び「第2ニューラルネットワーク」について 請求項1、5及び7には、「送信装置」が、「前記第1ニューラルネットワークによって生成されたカバー画像がカバー画像として相応しいか否かを判定する第2ニューラルネットワーク」を有することが記載されている。 ここで、「送信装置」が有する「第1ニューラルネットワーク」及び「第2ニューラルネットワーク」について、明細書には、次の記載がある。 「 【0011】 上記目的を達成するための本発明における秘密データの通信方法において、前記第2ニューラルネットワークは、GANにおけるdiscriminatorである、ことを特徴とする。」 「 【0040】 送信装置1は、図4及び図5に示すように、GAN(Generative Adversarial Network)におけるgenerator121(以下、第1ニューラルネットワーク121とも呼ぶ)を用いることによって第1カバー画像113を生成する(S01)。 【0041】 すなわち、送信装置1は、画像データを生成可能なgenerator121を用いることによって、秘密データ111の埋め込みを行う第1カバー画像113を効率的に生成する。具体的に、送信装置1は、図5に示すように、キー112から生成したノイズ123をgenerator121に入力することによって、第1カバー画像113を生成する。」 「 【0055】 そして、送信装置1は、第1カバー画像113がカバー画像として相応しいか否か(第1カバー画像113が第三者によって不自然な画像データであると判断され得るものであるか否か)をdiscriminator122(以下、第2ニューラルネットワーク122とも呼ぶ)に判定させる(S22)。」 「 【0057】 すなわち、送信装置1は、第1カバー画像113がgenerator121によって生成されたものであるか否かを判定可能なdiscriminator122を用いる。そして、第1カバー画像113がgenerator121によって生成されたものであるとdiscriminator122が判定した場合、送信装置1は、第1カバー画像113が第三者によって不自然な画像データであると判断され得るものではなく、ステゴ画像115の生成に用いる画像データとして適した画像データであると判定し、後述するS24以降の処理を行う。一方、第1カバー画像113がgenerator121によって生成されたものでないとdiscriminator122が判定した場合、送信装置1は、第1カバー画像113が第三者によって不自然な画像データであると判断され得るものであり、ステゴ画像115の生成に用いる画像データとして適していない画像データであると判定し、第1カバー画像113の生成を再度行う。」 「【図3】 [図:0001414999000001.jpg] 」 「【図9】 [図:0001414999000002.jpg] 」 上記記載によれば、「送信装置」が有する「第2ニューラルネットワーク122」(discriminator122)は、一義的には、「第1カバー画像」が「第1ニューラルネットワーク121」(generator121)によって生成されたものであるか否かを判定する機能を有し、そのことにより、「第1ニューラルネットワーク121」によって生成された「第1カバー画像」であれば、「第三者によって不自然な画像であると判断され得るものではなく、ステゴ画像115の生成に用いる画像データとして適した画像データであると判定」するものと認められる。 そして、GAN(敵対的ネットワーク)は、generator(生成ネットワーク)とdiscriminator(識別ネットワーク)を備え、generatorは、discriminatorに偽物と見破られない精巧な疑似的な画像等を生成するように学習され、一方、discriminatorは、generatorが生成した疑似的な画像等を偽物であると見破ることができるように学習されるように構成されていることが本願出願時における技術常識である。 このような技術常識に鑑みれば、 ア 「第1ニューラルネットワーク121」によって生成された「第1カバー画像」であれば、「第三者によって不自然な画像データであると判断され得るものではなく、ステゴ画像115の生成に用いる画像データとして適した画像データであると判定」することができるとする技術的な根拠が不明である。 イ 「第2ニューラルネットワーク122」は、「第1ニューラルネットワーク121」によって生成された「第1カバー画像」であるか否かを判定するために、いかなる構造又は機能を備えているのか不明である。 以下、詳細に検討する。 ・上記アについて 上記明細書及び図面の記載によれば、「第1ニューラルネットワーク121」は、GANにおけるgeneratorであり、「キー112から生成したノイズ」を入力して「第1カバー画像113」を生成するものである。そして、【図3】の例によれば、「第1カバー画像113」として人の顔の画像が生成されている。 ここで、「第1ニューラルネットワーク121」(generator121)は、「キー112から生成したノイズ」をどのように処理することにより「ステゴ画像115の生成に用いる画像データとして適した画像データ」(例えば、人の顔の画像)が生成されるのか、明細書及び図面には具体的に記載されていないが、GANにおけるgeneratorが、入力データから擬似的な画像等を生成する機能を有することが本願出願時における技術常識であること、及び、GANにおけるgeneratorによって生成された擬似的な画像等が、ステゴ画像に適した画像データであることは本願出願時における技術常識ではないことに鑑みれば、「第1ニューラルネットワーク121」によって生成された「第1カバー画像」であれば、「第三者によって不自然な画像データであると判断され得るものではなく、ステゴ画像115の生成に用いる画像データとして適した画像データであると判定」することができることの根拠が不明である。 加えて、「第1ニューラルネットワーク121」がどの程度学習がなされたものであるのか何ら特定がないため、生成される画像が、「第2ニューラルネットワーク122」によって簡単に偽物と見破られるような態様も含まれる。しかしながら、そのように未熟な「第1ニューラルネットワーク121」であっても「第1ニューラルネットワーク121」によって生成された「第1カバー画像」であれば、「第三者によって不自然な画像データであると判断され得るものではなく、ステゴ画像115の生成に用いる画像データとして適した画像データであると判定」することができるとする根拠も不明である。 ・上記イについて 上記明細書及び図面の記載によれば、明細書には、「第2ニューラルネットワーク122」は、GANにおけるdiscriminator(discriminator122)であり、「第1カバー画像113」が「第1ニューラルネットワーク121」(generator121)によって生成されたものであるか否かを判定可能なものとして記定されている。 ここで、「第2ニューラルネットワーク122」(discriminator122)は、「第1カバー画像113」をどのように解析等することにより当該「第1カバー画像113」が、「第1ニューラルネットワーク121」(generator121)によって生成されたものであるか否かを判定するのか、また、そのための具体的な構造について、明細書及び図面には何ら記載されていない。 加えて、GANにおけるdiscriminatorは、自身に入力されたデータが擬似的な画像等であるか否かを判定する機能を有するものであることが本願出願時における技術常識であるが、GANにおけるdiscriminatorが、自身に入力された画像が、所定のニューラルネットワーク(「第1ニューラルネットワーク121」(generator121))によって生成されたものであるか否かを判定する機能を有することは、本願出願時における技術常識であったとは認められない。 また、正当なソフトウェア又はデータに基づいて処理がなされたか否かを判断するためには、一般的には、当該ソフトウェア又はデータの証明書又は署名を使用することが本願出願時における技術常識であるに鑑みれば、「第1ニューラルネットワーク121」によって生成された「第1カバー画像」であるか否かを判定するために、あえて「第2ニューラルネットワーク」を用いる技術的な理由も不明である。 以上より、「送信装置」が有する「前記第1ニューラルネットワークによって生成されたカバー画像がカバー画像として相応しいか否かを判定する第2ニューラルネットワーク」について、当業者が、発明の詳細な説明の記載及び本願出願時の技術常識に基づいて、請求項1、5及び7に係る「送信装置」の具体的な製造方法を理解し、過度の試行錯誤を要することなく、請求項1、5及び7に係る「送信装置」を生産し、使用することができるとはいえない。 請求項1、5又は7を引用する請求項2ないし4、6及び8に係る発明についても同様である。 (2)受信装置の「第2ニューラルネットワーク」について 請求項4、6及び8には、「受信装置」が、「カバー画像が前記第1ニューラルネットワークによって生成されたカバー画像であるか否かを判定する第2ニューラルネットワーク」を有することが記載されている。 ここで、「受信装置」が有する「第2ニューラルネットワーク」について、明細書及び図面には、次の記載がある。 「 【0011】 上記目的を達成するための本発明における秘密データの通信方法において、前記第2ニューラルネットワークは、GANにおけるdiscriminatorである、ことを特徴とする。」 「 【0062】 そして、受信装置2は、受信したステゴ画像がgenerator121によって生成されたものであるか否かをdiscriminator222に判定させる(S32)。 【0063】 ここで、送信装置1が保持するdiscriminator122と受信装置2が保持するdiscriminator222とは、同一のdiscriminatorである。そのため、discriminator222は、受信したステゴ画像がgenerator121によって生成された第1カバー画像113に基づくステゴ画像115であるか否かの判定を行うことが可能である。」 「【図10】 [図:0001414999000003.jpg] 」 上記明細書及び図面の記載によれば、明細書には、「受信装置」が有する「第2ニューラルネットワーク222」は、GANにおけるdiscriminator(discriminator222)であり、かつ、「送信装置」が有する「第2ニューラルネットワーク122」(discriminator122)と同一であり、受信した「ステゴ画像」が「第1ニューラルネットワーク121」(generator121)によって生成された「第1カバー画像113」に基づく「ステゴ画像115」であるか否かを判定可能なものとして記載されている。 ここで、「第2ニューラルネットワーク222」(discriminator222)は、受信した「ステゴ画像」をどのように解析等することにより当該「ステゴ画像」が、「第1ニューラルネットワーク121」(generator121)によって生成された「第1カバー画像113」に基づく「ステゴ画像115」であるか否かを判定するのか、また、そのための具体的な構造について、明細書及び図面には何ら記載されていない。 加えて、GANにおけるdiscriminatorは、自身に入力されたデータが疑似的な画像等であるか否かを判定する機能を有するものであることが本願出願時における技術常識であるが、GANにおけるdiscriminatorが、自身に入力された画像が、所定のニューラルネットワーク(「第1ニューラルネットワーク121」(generator121))によって生成されたものであるか否かを判定する機能を有することは、本願出願時における技術常識であったとは認められない。 さらに、「受信装置」が有する「第2ニューラルネットワーク222」は、「送信装置」が有する「第2ニューラルネットワーク122」(discriminator122)と同一であるため、同一の機能・構造を有するものと考えることが合理的である。しかしながら、「送信装置」が有する「第2ニューラルネットワーク122」は、「第1カバー画像113」を入力とし、当該「第1カバー画像113」が「第1ニューラルネットワーク121」(generator121)によって生成されたものであるか否かを判定する」ものであるのに対し、「受信装置」が有する「第2ニューラルネットワーク222」は、受信した「ステゴ画像」を入力とし、当該「ステゴ画像」が、「第1ニューラルネットワーク121」(generator121)によって生成された画像に基づくものであるか否かを判定するものであるところ、処理対象も処理の内容も異なっている。しかしながら、明細書及び図面には、同一の「第2ニューラルネットワーク」(discriminator)により異なる処理をどのように実現するのかについて何ら記載がなく、そのことが本願出願時における技術常識から自明ということもできない。 以上より、「受信装置」が有する「カバー画像が前記第1ニューラルネットワークによって生成されたカバー画像であるか否かを判定する第2ニューラルネットワーク」について、当業者が、発明の詳細な説明の記載及び本願出願時の技術常識に基づいて、請求項4、6及び8に係る「受信装置」の具体的な製造方法を理解し、過度の試行錯誤を要することなく、請求項4、6及び8に係る「受信装置」を生産し、使用することができるとはいえない。 したがって、発明の詳細な説明は、当業者が、請求項1ないし8に係る発明を実施できる程度に明確かつ十分に記載したものではない。 3 請求人の主張について (1)理由1(明確性要件)及び理由2(サポート要件)について ア 請求人の主張 請求人は、令和6年6月20日付け意見書において、次の主張をしている。 「3.法第36条第6項第2号及び法第36条第6項第1号について 上記の補正を行うことにより、法第36条第6項第2号の明確性の拒絶理由及び法第36条第6項第1号のサポート要件の拒絶理由は、解消されました。」 イ 請求人の主張についての検討 上記主張のとおり、請求人は、補正により、請求項4及び8に係る理由1(明確性要件)及び理由2(サポート要件)が解消したことについて具体的な根拠を述べていない。 そして、補正によっても、請求項4及び8に係る理由1(明確性要件)及び理由2(サポート要件)が解消していないことは、上記1で述べたとおりである。 (2)理由3(実施可能要件)について ア 請求人の主張 請求人は、令和6年6月20日付け意見書において、次の主張をしている。 「3.法第36条第4項第1号について 本願には、課題についての記載として、段落0006において、「しかしながら、多数の秘密データの送受信を行う必要がある場合、作業者は、各秘密データの送受信に用いられる多数のカバーデータを用意できず、各秘密データの送受信を行うことができない場合がある。そのため、ステガノグラフィ技術の分野では、多数のカバーデータを容易に生成することにより、多数の秘密データであっても容易に送受信を行うことを可能とする方法が求められている。」点が記載されています。 また、本願には、効果についての記載として、段落0051において、「第1の実施の形態における送信装置1は、generator121を用いることで、ステゴ画像115の生成に用いられる多数の第1カバー画像113を容易に生成することが可能になる。そのため、第1の実施の形態における送信装置1及び受信装置2は、多数の秘密データであっても容易に送受信を行うことが可能になる。」点が記載されています。 さらに、本願では、段落0006の課題を解決するための手段(段落0051における効果を奏するための手段)として、段落0054において、「送信装置1は、図7及び図9に示すように、generator121を用いることによって第1カバー画像113を生成する(S21)。」点が記載され、段落0055において、「そして、送信装置1は、第1カバー画像113がカバー画像として相応しいか否か(第1カバー画像113が第三者によって不自然な画像データであると判断され得るものであるか否か)をdiscriminator122・・・に判定させる(S22)。」点が記載され、段落0059において、「図7に戻り、第1カバー画像113がカバー画像として相応しいと判定した場合(S23のYES)、送信装置1は、第1カバー画像113に秘密データ111を埋め込むことによってステゴ画像115を生成する(S24)。」点が記載され、段落0060において、「その後、送信装置1は、ステゴ画像115を受信装置2に対して送信する(S25)。」点が記載されています。 すなわち、本願では、本来画像の生成を目的とする技術である「GAN」を構成する「generator」及び「discriminator」を、データ隠蔽技術である「ステガノグラフィ技術」に適用することを特徴としています。そして、この場合、本来データ隠蔽技術への適用が想定されていない「GAN」をそのまま「ステガノグラフィ技術」に適用することができず、「generator」が生成した画像が「ステガノグラフィ技術」において用いられる画像として相応しいか否かを判定する必要があるため、本願では、段落0055に記載されているように、「送信装置1は、第1カバー画像113がカバー画像として相応しいか否か(第1カバー画像113が第三者によって不自然な画像データであると判断され得るものであるか否か)をdiscriminator122・・・に判定させる(S22)。」処理を行います。 これにより、本願では、本願出願時における公知技術である「generator」及び「discriminator」を用いることによって、段落0051に記載されているように、「ステゴ画像115の生成に用いられる多数の第1カバー画像113を容易に生成することが可能にな」り、さらに、「多数の秘密データであっても容易に送受信を行うことが可能にな」ります。すなわち、本願では、本願出願時における公知技術である「generator」及び「discriminator」を用いることによって、本願出願時における「ステガノグラフィ技術」が有する課題を解決することが可能になります。 なお、本願出願時における「GAN」について記載された文献としては、例えば、以下の文献1から文献3があります。 文献1:https://arxiv.org/pdf/1406.2661 文献2:https://arxiv.org/pdf/1511.06434 文献3:https://arxiv.org/pdf/1812.04948 従って、本願は、法第36条第4項第1号の実施可能要件の拒絶理由を有しないものと思料いたします。」 イ 請求人の主張についての検討 請求人は、「本来画像の生成を目的とする技術である「GAN」を構成する「generator」及び「discriminator」を、データ隠蔽技術である「ステガノグラフィ技術」に適用することを特徴」としている旨主張しているが、請求項1、4ないし8に係る発明は「GAN」を構成する「generator」及び「discriminator」をその発明の構成として含まないため、請求人の主張は、少なくとも請求項1、4ないし8に係る発明については、特許請求の範囲の記載に基づいたものではない。 また、請求人は、「本来データ隠蔽技術への適用が想定されていない「GAN」をそのまま「ステガノグラフィ技術」に適用することができず、「generator」が生成した画像が「ステガノグラフィ技術」において用いられる画像として相応しいか否かを判定する必要があるため、本願では、段落0055に記載されているように、「送信装置1は、第1カバー画像113がカバー画像として相応しいか否か(第1カバー画像113が第三者によって不自然な画像データであると判断され得るものであるか否か)をdiscriminator122・・・に判定させる(S22)。」処理を行います。」と述べているが、「ステガノグラフィ技術」に適用することができない「GAN」における「generator」が生成した画像が「ステガノグラフィ技術」において用いられる画像として相応しいか否かを判定するために、同じく「ステガノグラフィ技術」に適用することができない「GAN」における「discriminator」により「第1カバー画像113がカバー画像として相応しいか否か(第1カバー画像113が第三者によって不自然な画像データであると判断され得るものであるか否か)」を判定させることにより「ステガノグラフィ技術」に適用できるようにしたと主張しているようであるが、「第1カバー画像113がカバー画像として相応しいか否か(第1カバー画像113が第三者によって不自然な画像データであると判断され得るものであるか否か)」の判定は、結局、「第1カバー画像113」が、「ステガノグラフィ技術」に使用される「カバー画像」として適切かどうかの判定に他ならないため、当該主張自体、矛盾したものであり、また、上記2で述べたように、明細書及び図面には、「GAN」における「discriminator」が、「第1カバー画像113がカバー画像として相応しいか否か(第1カバー画像113が第三者によって不自然な画像データであると判断され得るものであるか否か)」を判定させるための具体的な機能及び構造について何ら記載がなく、そのことが本願出願時における技術常識でもないから、当該主張は、採用することができない。 さらに、請求人は、本願出願時における「GAN」について記載された文献1ないし文献3のURLを挙げるが、その趣旨が不明であるし、また、文献1ないし文献3には、「GAN」が「ステガノグラフィ技術」に適用し得ることの根拠について具体的に記載されているとは認められない。 また、本件の特許出願の発明者は、本件特許出願よりも後の2019年12月17日に以下の文書を作成又は公開していると認められる。(当該文書の第17ページに本願の出願番号が記載されている。) (文書) 「深層学習に基づくカバー画像の生成と利用方法」 URL:https://shingi.jst.go.jp/pdf/2019/2019_u-aizu_2.pdf そして、当該文書の第13ページ及び第15ページには、以下の記載がある。 (第13ページ) [図:0001414999000004.jpg] (第15ページ) [図:0001414999000005.jpg] 上記記載によれば、本願の発明者は、本願の出願よりも後の時点で、カバー画像の自然さを評価するネットワーク(送信側のD1)、ステゴ画像の合法性を評価するネットワーク(受信側のD2)の設計方法について検証中であり、GANで得られたDiscriminatorはそのまま使えないことを認識していたと認められる。 そうすると、本願請求項1ないし8に係る「送信装置」及び「受信装置」の各々の「第2ニューラルネットワーク」に相当するネットワークについては、本願出願より後の時点において、(GANを使用するか否かに関わらず)「設計方法について検証中」であって、「GAN」の「Discriminator」は「そのまま使えない」ことを本願の発明者が認識していたといえるから、それよりも先の時点である本願出願時において、本願請求項1ないし8に係る「第2ニューラルネットワーク」を「GAN」を使用して実施することが本願の発明者であっても可能であったとはいえないと認められる。このような事情に鑑みても、本願出願時に公知又は周知であった「GAN」の技術そのもの(文献1ないし3)から、当業者により本願発明が実施可能であったということはできない。 したがって、請求人の主張は、いずれも採用することはできない。 第5 むすび 以上のことから、この出願は、特許請求の範囲の記載が特許法36条6項第1号及び第2号に規定する要件を満たしておらず、発明の詳細な説明の記載が特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。 よって、結論のとおり審決する。

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2023-017436

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